以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る光ピックアップ装置の概略構成図である。図1に示すように、第1の実施の形態に係る光ピックアップ装置1は、光源2と、偏光ビームスプリッタ3と、集光レンズ4,5と、4分の1波長板6と、立ち上げミラー7と、対物レンズ8と、受光素子9と、光フィルタ部10とを備える。
光ピックアップ装置1では、光源2から射出されたレーザ光が、複数の記録層を有する多層ディスクである光ディスク11で反射され、最終的に受光素子9で受光される。光源2から射出されてから光ディスク11に入射するまでの光の経路を往路、光ディスク11で反射されてから受光素子9に入射するまでの光の経路を復路とする。
光源2は、半導体レーザ等からなり、所定波長のレーザ光を射出する。偏光ビームスプリッタ3は、光源2から入射する光束を透過させるとともに、集光レンズ4から入射する復路の光束を偏光膜3aにより反射し、受光素子9に入射させる。光ピックアップ装置1では、光源2がS偏光の光束を射出し、偏光膜3aは、S偏光の光束を透過し、P偏光の光束を反射するものとする。
集光レンズ4は、偏光ビームスプリッタ3を通過した往路の光束を焦点Oに集光させるとともに、光フィルタ部10を介して入射する復路の光束を収束光とし、偏光ビームスプリッタ3に入射させる。集光レンズ5は、光フィルタ部10を介して入射する往路の光束を略平行光とし、4分の1波長板6に入射させるとともに、4分の1波長板6から入射する復路の光束を焦点O´に集光させる。
4分の1波長板6は、往路の光束をS偏光から円偏光に変換し、復路の光束を円偏光からP偏光に変換する。立ち上げミラー7は、4分の1波長板6からの往路の光束の光路を曲げて対物レンズ8に入射させるとともに、対物レンズ8を透過して入射する復路の光束の光路を曲げて4分の1波長板6に入射させる。
受光素子9は、入射した光を電気信号に変換し、この電気信号を外部の演算処理回路に出力する。
光フィルタ部10は、集光レンズ4,5間で焦点O´を内部に含むように配置され、往路の光束を透過させ、復路の光束に含まれるクロストーク光をフィルタリングする。
光ピックアップ装置1において、集光レンズ4,5は、その中間に1つの焦点O´を有するエキスパンダー光学系を構成している。
ここで、エキスパンダー光学系とは、通常、図2に示す光ピックアップ装置1Aの集光レンズ42,5のように、平行光が入射し、平行光を射出する光学系のことをいう。
図2の光ピックアップ装置1Aは、図1の光ピックアップ装置1の集光レンズ4を、レンズ系4Aに置き換えたものである。レンズ系4Aは、集光レンズ41,42を有する。集光レンズ41は、偏光ビームスプリッタ3を通過した往路の光束を略平行光として集光レンズ42に入射させるとともに、集光レンズ42から入射する復路の光束を収束光とし、偏光ビームスプリッタ3に入射させる。集光レンズ42は、集光レンズ41から入射する往路の光束を焦点Oに集光させるとともに、光フィルタ部10を介して入射する復路の光束を略平行光として集光レンズ41に入射させる。
本実施の形態では、エキスパンダー光学系の倍率を1とし、図2の集光レンズ41,42を共通化して図1の集光レンズ4としたものと見なして、図1の光ピックアップ装置1の集光レンズ4から集光レンズ5までを、上述のようにエキスパンダー光学系と呼ぶことにする。
図3は、クロストーク光と信号光とが混在する場合の、エキスパンダー光学系内の復路における焦点O´付近の様子を示す図である。ここで、信号光は、光ディスク11における情報信号の記録または再生が行われている記録層であるターゲット層からの反射光束であり、クロストーク光は、ターゲット層以外の記録層からの反射光束である。
信号光は、光ディスク11のターゲット層に合焦しているので、焦点O´は往路における焦点Oと一致する。そこで、以降において、信号光のエキスパンダー光学系内における焦点(信号光焦点)は焦点Oとして説明する。
一方、クロストーク光は、光ディスク11における反射位置にデフォーカスがあるため、焦点Oとは異なる位置にある焦点Pに集光される。すなわち、エキスパンダー光学系は、信号光の焦点Oとクロストーク光の焦点Pとを空間的に分離する役割を果たす。
ここで、焦点O,P間の距離をΔとし、光ディスク11のデフォーカス量(空気換算)をδとすると、近軸領域で、以下の(式5)が成り立つ。ただし、集光レンズ5の焦点距離と対物レンズ8の焦点距離との比を倍率Meとする。
2×δ×Me2=Δ …(式5)
次に、図4、図5を参照して、光フィルタ部10の構成について説明する。図4は、光フィルタ部10の概略構成を示す斜視図、図5は、図4におけるA−A線に沿った断面図である。
図4、図5に示すように、光フィルタ部10は、光を透過するガラス等の材料で直方体状に形成され、対向する平面10a,10bが入射する光束の光軸に略垂直となり、焦点Oが光フィルタ部10の内部(平面10a,10b間)に位置するように配置される。
平面10a,10bには、入射する光束の光軸を含む所定領域の通過光量を低減させるマスク12A,12Bがそれぞれ配置されている。マスク12A,12Bは、透過率が0%、もしくは、受光素子9に入射しても問題ない程度にクロストーク光を減衰させる透過率を有する。
マスク12A,12Bは、例えば、深さを回折効率最大に設定した2値の回折格子、金属薄膜によるミラー構造、すりガラス加工による拡散構造、楔形に加工した屈折構造により構成されるが、これらに限定されない。ただし、マスク12A,12Bにおける回折、屈折、反射、拡散等により生じた迷光が受光素子9に入射しないように留意する必要がある。
上記のような光フィルタ部10により、焦点Oを挟んで光ディスク11側(集光レンズ5側、対物レンズ8側)にマスク12A、受光素子9側(集光レンズ4側)にマスク12Bが配置される。図3に示したように、信号光の焦点Oとクロストーク光の焦点Pとが空間的に分離されているため、マスク12A,12Bは、信号光とクロストーク光の光束径に差がある箇所に配置されることになる。
入射する光束の光軸方向における焦点Oとマスク12A,12Bとの間の距離dm,dm´(空気換算)、およびマスク12A,12Bの半径相当の大きさhm,hm´は、受光素子9の受光セル(受光部)を焦点Oの位置に投影した場合の半径相当の大きさである受光素子実効サイズhe、光ディスク11により発生しうるクロストーク光のデフォーカス量等に基づいて決定される。
図5に示した受光素子実効サイズheについて説明する。受光素子9は、光量を検出する受光セル(図示せず)を有しており、その大きさを、光軸を中心とした半径相当でhe´とする。集光レンズ4から焦点Oまでの距離と、受光素子9から集光レンズ4までの距離との比を倍率Mとすると、エキスパンダー光学系内における受光素子実効サイズheは、以下の(式6)で表される。言い換えると、受光素子実効サイズheは、受光セルサイズhe´を、エキスパンダー光学系内の焦点Oに投影した場合の実効的なサイズと等価である。
he=M×he´ …(式6)
次に、光ディスク11により発生しうるクロストーク光のデフォーカス量の範囲について説明する。図6は、光ディスク11がL0層およびL1層の2層の記録層を有する2層ディスクである場合のクロストーク光を示す図である。
図6において、光ディスク11の奥側の記録層がL0層、表面側の記録層がL1層、層間間隔がt0であり、図6(a)はL0層、図6(b)はL1層がターゲット層である場合の信号光およびクロストーク光を示している。
図6(a)に示すように、L0層がターゲット層である場合のL1層からのクロストーク光は、L0層より光ディスク11の表面側(マイナス側)にデフォーカスしており、デフォーカス量δ−=t0/nとなる。ここで、nは光ディスク11の屈折率である。
また、図6(b)に示すように、L1層がターゲット層である場合のL0層からのクロストーク光は、L1層より光ディスク11の奥側(プラス側)にデフォーカスしており、デフォーカス量δ+=t0/nとなる。
光ディスク11が3層以上の多層ディスクである場合は、図6(a),(b)に示したようなクロストーク光がそれぞれ複数存在しうるため、光ディスク11におけるクロストーク光のプラス側のデフォーカス量δ+,およびマイナス側のデフォーカス量δ−の大きさの範囲が、以下の(式7),(式8)のように表される。
tmin+/n≦δ+≦tmax+/n …(式7)
tmin−/n≦δ−≦tmax−/n …(式8)
ここで、
tmin+:光ディスク11内の反射位置が信号光の反射位置よりも光ディスク11の奥側にあるクロストーク光における、クロストーク光の反射位置と信号光の反射位置との間の、光ディスク11の厚さ方向の距離の最小値
tmin−:光ディスク11内の反射位置が信号光の反射位置よりも光ディスク11の表面側にあるクロストーク光における、クロストーク光の反射位置と信号光の反射位置との間の、光ディスク11の厚さ方向の距離の最小値
tmax+:光ディスク11内の反射位置が信号光の反射位置よりも光ディスク11の奥側にあるクロストーク光における、クロストーク光の反射位置と信号光の反射位置との間の、光ディスク11の厚さ方向の距離の最大値
tmax−:光ディスク11内の反射位置が信号光の反射位置よりも光ディスク11の表面側にあるクロストーク光における、クロストーク光の反射位置と信号光の反射位置との間の、光ディスク11の厚さ方向の距離の最大値
である。
上記(式7),(式8)のtmin+,tmin−,tmax+,tmax−は、光ディスク11の記録層の層間間隔によって決まる値であり、nは記録層間のスペーサの材質(ポリカーボネート等)によって決まる値であるため、(式7),(式8)より、発生しうるクロストーク光のデフォーカス量の範囲は、光ディスク11の設計値により決まるものである。
プラス側のデフォーカス量δ+を有するクロストーク光は、図5における光ディスク11側(集光レンズ5側)のマスク12Aによってフィルタリングされ、hm、dmと関係する。マイナス側のデフォーカス量δ−を有するクロストーク光は、受光素子9側(集光レンズ4側)のマスク12Bによってフィルタリングされ、hm´,dm´と関係する。このため、信号光の焦点Oを挟んで、光軸方向に互いに離間して配置されたマスク12A,12Bが必要になる。
次に、マスク12Aの半径相当の大きさhm、およびマスク12Aと焦点Oとの距離dmの決め方について、図7、図8を参照して説明する。
図7は、光フィルタ部10におけるマスク12Aと、マスク12Aによりフィルタリングされるクロストーク光の焦点Pと焦点Oとの位置関係を示す図であり、図7(a)は、焦点Pが焦点Oに最も近い状態を示す図、図7(b)は、焦点Pが焦点Oに最も近い状態と最も遠い状態との中間の状態を示す図、図7(c)は、焦点Pが焦点Oから最も遠い状態を示す図である。なお、マスク12Aの半径相当の大きさhmは、受光素子実効サイズheよりも小さくする。
図7(a)は、焦点Pが焦点Oにこれ以上近づくと、マスク12Aの外側から受光素子9の受光セルへクロストーク光の光束が洩れてしまう状態であり、マスク12Aによりフィルタリングされるクロストーク光のうちプラス側のデフォーカス量が最も小さいクロストーク光に対応する。このとき、マスク12Aの位置は、信号光の焦点Oに対して、クロストーク光の焦点Pよりも遠くにある。このため、焦点Pの位置にマスク12Aを配置する場合に比べ、小さなデフォーカス量のクロストーク光に対して有利になる。
一方、図7(c)は、焦点Pと、マスク12Aの外周上の点を結んだ直線の延長線上に、焦点Oに投影した受光素子9の受光セルの最外周上の点が一致する状態である。焦点Pがこれ以上焦点Oから離れると、マスク12Aの外側から受光素子9の受光セルへ光束が洩れる。この状態は、マスク12Aによりフィルタリングされるクロストーク光のうちプラス側のデフォーカス量が最も大きいクロストーク光に対応する。このとき、マスク12Aの位置は、信号光の焦点Oに対して、クロストーク光の焦点Pよりも近くにある。このため、焦点Pの位置にマスク12Aを配置する場合に比べ、光フィルタ部10を小さくできるので、光ピックアップ装置1の構成の簡素化に有利である。
以上より、マスク12Aで完全にフィルタリングできるクロストーク光の焦点Pと焦点Oとの距離Δの範囲は、図8(a)に示すΔ1を最小とし、図8(b)に示すΔ2を最大とする。図8(a)は、発生しうるすべてのクロストーク光をマスク12Aで完全にフィルタリングできる場合において、プラス側のデフォーカス量が最も小さいクロストーク光の焦点Pと焦点Oとの距離が最小となる状態を示す模式図、図8(b)は、発生しうるすべてのクロストーク光をマスク12Aで完全にフィルタリングできる場合において、プラス側のデフォーカス量が最も大きいクロストーク光の焦点Pと焦点Oとの距離が最大となる状態を示す模式図である。
図8(a)におけるΔ1は、△POQと△PSRとの相似関係から、以下の(式9)で表される。
Δ1=he×dm/(he+hm) …(式9)
図8(b)におけるΔ2は、△POQと△RTQとの相似関係から、以下の(式10)で表される。
Δ2=he×dm/(he−hm) …(式10)
ここで、発生しうるクロストーク光のうちプラス側のデフォーカス量が最も小さいクロストーク光の焦点Pと焦点Oとの距離Δmin+、発生しうるクロストーク光のうちプラス側のデフォーカス量が最も大きいクロストーク光の焦点Pと焦点Oとの距離Δmax+とすると、Δmin+,Δmax+は、(式5),(式7)より、以下の(式11),(式12)で表される。
Δmin+=2×(tmin+)×Me2/n …(式11)
Δmax+=2×(tmax+)×Me2/n …(式12)
プラス側のデフォーカス量を有するクロストーク光をすべてマスク12Aでフィルタリングするためには、Δmin+≧Δ1、Δmax+≦Δ2となる必要がある。上記(式9)〜(式12)、およびΔmin+≧Δ1、Δmax+≦Δ2の関係から、以下の(式13),(式14)が得られる。
2×(tmin+)×Me2/n≧he×dm/(he+hm) …(式13)
2×(tmax+)×Me2/n≦he×dm/(he−hm) …(式14)
光ディスク11側(集光レンズ5側)のマスク12Aの半径相当の大きさhm、およびマスク12Aと焦点Oとの距離dmは、上記(式13),(式14)を満たすように決定される。
受光素子9側(集光レンズ4側)のマスク12Bの半径相当の大きさhm´、およびマスク12Bと焦点Oとの距離dm´についても、上述のマスク12Aの場合と同様の手法により、以下の(式15),(式16)が得られる。
2×(tmin−)×Me2/n≧he×dm´/(he+hm´) …(式15)
2×(tmax−)×Me2/n≦he×dm´/(he−hm´) …(式16)
マスク12Bに関するhm´,dm´の値は、上記(式15),(式16)を満たすように決定される。
前述のように、光ディスク11の設計値から、発生しうるクロストーク光のデフォーカス量が決まるため、使用する光ディスク11に応じて、(式13)〜(式16)を満たす範囲内でhm,dm,hm´,dm´を決定し、光フィルタ部10を構成する。
なお、非常に大きなデフォーカス量を持つクロストーク光成分などは、光束が十分に拡散し、光量が弱い可能性もある。また、光フィルタ部10と他のクロストーク光対策手法とを組み合わせることも考えられる。そのため、必要に応じてtmin+,tmin−,tmax+,tmax−を限定することも可能である。
また、マスク12A,12Bのサイズを少し大きめに設計し、マージンを確保するようにしてもよい。
次に、光ピックアップ装置1の作用について説明する。
光源2がレーザ光を射出すると、射出されたS偏光の光束は、偏光ビームスプリッタ3を通過し、集光レンズ4により収束光となり、光フィルタ部10を通過しながら、焦点Oに集光された後、再び発散光となり、集光レンズ5により略平行光となる。集光レンズ5を通過した光束は、4分の1波長板6を通過して円偏光に変換され、立ち上げミラー7を経て対物レンズ8に入射し、対物レンズ8により光ディスク11のターゲット層上に集光される。
光ディスク11に入射された光は、光ディスク11により反射される。この反射された復路の光束には、信号光およびクロストーク光が含まれる。
復路の光束は、対物レンズ8を通過し、立ち上げミラー7を経て4分の1波長板6に入射してP偏光に変換され、集光レンズ5によりエキスパンダー光学系内で集光される。
復路の光束のうち、信号光の光束は、光フィルタ部10を通過しながら、焦点Oに集光された後、再び発散光となって集光レンズ4に入射し、集光レンズ4で収束光となり、偏光ビームスプリッタ3の偏光膜3aで反射されて、受光素子9に入射する。
復路の光束のうち、クロストーク光の光束は、光フィルタ部10のマスク12A,12Bによりフィルタリングされる。
前述のように、使用する光ディスク11の設計値に応じて、マスク12A,12Bの大きさおよび配置位置に関するhm,dm,hm´,dm´の値を決定して光フィルタ部10を構成しているので、プラス側のデフォーカス量を有するクロストーク光が、光ディスク11側(集光レンズ5側、対物レンズ8側)のマスク12Aによってフィルタリングされ、マイナス側のデフォーカス量を有するクロストーク光が、受光素子9側(集光レンズ4側)のマスク12Bによってフィルタリングされる。これにより、クロストーク光が受光素子9の受光セルに入射することが抑制される。
上記説明のように第1の実施の形態によれば、光ディスク11の設計値に応じて大きさおよび配置位置を決定したマスク12A,12Bを有する光フィルタ部10を設けることで、光ディスク11が3層以上の多層ディスクである場合でも、簡素な構成で、クロストーク光を効率よく除去することができる。光フィルタ部10は、デフォーカス量の小さいクロストーク光のフィルタリングに対応する場合でも設計が容易であり、デフォーカス量が大きいクロストーク光のフィルタリングに対応する場合でも大型化が抑制される。
また、マスク12A,12Bは、信号光とクロストーク光の光束径に差がある箇所に配置されるため、その大きさを小さく抑えることができ、信号光のマスク12A,12Bによるロスを軽減することができる。
なお、光フィルタ部10は、図4に示した構成に限らず、焦点Oからdm,dm´の距離に、半径相当でhm,hm´の大きさのマスク12A,12Bが配置されていれば、どのような構成でもよい。例えば、図9に示すように、焦点Oを挟んで2枚のガラス板13,14を並設し、それぞれの1つの平面13a,14a上にマスク12A,12Bを配置した構成でもよい。
また、図1の光ピックアップ装置1の集光レンズ4をレンズ系4Aに置き換えた構成の図2の光ピックアップ装置1Aにおいても、光ピックアップ装置1と同様の作用効果を得ることができる。
(第2の実施の形態)
図10は、本発明の第2の実施の形態に係る光ピックアップ装置の概略構成図である。図10に示すように、第2の実施の形態に係る光ピックアップ装置1Bは、図1に示した光ピックアップ装置1に対し、光フィルタ部10を光フィルタ部20に置き換えた構成である。
図11、図12を参照して、光フィルタ部20の構成について説明する。図11は、光フィルタ部20の概略構成を示す斜視図、図12は、光フィルタ部20におけるマスクの配置を示す図である。
図11に示すように、光フィルタ部20は、光を透過するガラス等の材料からなる透光性板体21を備える。透光性板体21は、対向する平面21a,21bが光軸に略垂直となり、その内部(平面21a,21b間)に焦点Oが位置するように配置される。また、光フィルタ部20は、透光性板体21と同様の材料からなり、透光性板体21に対して光ディスク11側に互いに離間して並設される複数の透光性板体22と、透光性板体21に対して受光素子9側に互いに離間して並設される複数の透光性板体23とを備える。
透光性板体21の平面21a,21b、および透光性板体22,23の光軸に垂直な平面22a,23aには、第1の実施の形態におけるマスク12A,12Bと同様のマスクが形成されている。
焦点Oに対して光ディスク11側(集光レンズ5側、対物レンズ8側)である透光性板体21の平面21aおよび透光性板体22の平面22aにそれぞれ形成されるマスクを、マスク26Ak(k=1,2,…,K)とし、焦点Oに対して受光素子9側(集光レンズ4側)である透光性板体21の平面21bおよび透光性板体23の平面23aにそれぞれ形成されるマスクを、マスク26Bl(l=1,2,…,L)とする。図11に示すように、マスク26A1,26B1が焦点Oに最も近く、マスク26AK,26BLが焦点Oから最も遠くに配置されたものを示す。
ここで、図12に示すように、光軸方向における焦点Oとマスク26Ak,マスク26Blとの間の距離(空気換算)をそれぞれdmk,dm´lとし、マスク26Ak,マスク26Blの半径相当の大きさをそれぞれhmk,hm´lとする。
なお、光フィルタ部20は、図11に示した構成に限らず、焦点Oからdmk,dm´lの距離に、半径相当でhmk,hm´lの大きさのマスク26Ak,マスク26Blが配置されていれば、どのような構成でもよい。
次に、光ディスク11側のk番目のマスク26Akの半径相当の大きさhmk、およびマスク26Akと焦点Oとの距離dmkの決め方について説明する。
第1の実施の形態で(式9),(式10)を導いたのと同様の手法により、以下の(式17),(式18)が得られる。
Δ1(k)=he×dmk/(he+hmk) …(式17)
Δ2(k)=he×dmk/(he−hmk) …(式18)
ここで、Δ1(k)は、k番目のマスク26Akのみで完全にフィルタリング可能なクロストーク光のうち、プラス側のデフォーカス量が最も小さいクロストーク光の焦点Pと焦点Oとの距離である。また、Δ2(k)は、k番目のマスク26Akのみで完全にフィルタリング可能なクロストーク光のうち、プラス側のデフォーカス量が最も大きいクロストーク光の焦点Pと焦点Oとの距離である。
Δ1(1)が(式11)に示したΔmin+以下であり、Δ2(K)が(式12)に示したΔmax+以上であれば、K枚のマスクで(式7)に示した範囲のデフォーカス量を持つクロストーク光が受光素子9の受光セルに入射しないようにする設計が可能である。したがって、光ディスク11側のマスク26Akについては、以下の(式1),(式2)を満たすように設計される。
2×(tmin+)×Me2/n≧he×dm1/(he+hm1) …(式1)
2×(tmax+)×Me2/n≦he×dmK/(he−hmK) …(式2)
なお、マスク26Akの半径相当の大きさhmkは、受光素子実効サイズheよりも小さくする。
受光素子9側のマスク26Blについても、上述のマスク12Aの場合と同様の手法により、以下の(式3),(式4)が得られ、これらを満たすように設計される。
2×(tmin−)×Me2/n≧he×dm´1/(he+hm´1) …(式3)
2×(tmax−)×Me2/n≦he×dm´L/(he−hm´L) …(式4)
なお、マスク26Ak,26Blの半径相当の大きさhmk,hm´lは、受光素子実効サイズheよりも小さくする。
前述のように、光ディスク11の設計値から、発生しうるクロストーク光のデフォーカス量が決まるため、使用する光ディスク11に応じて、(式1)〜(式4)を満たす範囲内でhmk,dmk,hm´l,dm´lを決定し、光フィルタ部20を構成する。
なお、K=L=1の場合、(式1)〜(式4)は、第1の実施の形態で示した(式13)〜(式16)に相当する。
以上のように構成された光ピックアップ装置1Bでは、プラス側のデフォーカス量を有するクロストーク光を、光ディスク11側(集光レンズ5側、対物レンズ8側)の複数のマスク26A1,26A2,…によってフィルタリングし、マイナス側のデフォーカス量を有するクロストーク光を、受光素子9側(集光レンズ4側)の複数のマスク26B1,26B2,…によってフィルタリングする。これにより、クロストーク光が受光素子9の受光セル内に入射することが抑制される。
上記説明のように第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態の光ピックアップ装置1と同様の効果を得られるとともに、焦点Oの両側にそれぞれ複数のマスク26A1,26A2,…、マスク26B1,26B2,…を配置することで、各マスクの大きさをより小さく抑えることができ、信号光のマスクによる減衰をさらに軽減することができる。
次に、上述した本発明の各実施の形態の具体的な実施例について説明する。
(実施例1)
実施例1の光ピックアップ装置は、図1に示した第1の実施の形態の光ピックアップ装置1と同様の全体構成であるため、図1を参照して説明する。ただし、実施例1においては、光ピックアップ装置1は、往路の光学系内に、光源2からのレーザ光を3つのビームに分ける回折素子(図示せず)を備え、受光素子9が3つのビームに対応した3つの受光セルを有し、3つの受光セルで受光した光をそれぞれ電気信号に変換し、その差動演算からトラッキングエラー信号を検出する3ビームDPP(Differential Push Pull)法を適用したものとする。
光学系の定数は、対物レンズ8のNAが0.85、対物レンズ8、集光レンズ4,5の焦点距離は、それぞれ1.8mm,9mm、18mmであり、集光レンズ5と対物レンズ8との焦点距離の比である倍率Me=10である。また、集光レンズ4から焦点Oまでの距離と、受光素子9から集光レンズ4までの距離との比である倍率M=1である。また、光源2は、BDに対応する波長405nmのレーザ光を射出する。
受光素子9の受光セル91〜93とクロストーク光とが重なる様子を図13に示す。実施例1では上述のように3ビームDPP法を適用するため、光ディスク11の記録トラックに沿う方向であるTAN方向と、これに垂直なRAD方向とでセル範囲が異なる。
そこで、信号光のロスを最小限にするために、マスク12A,12Bを、TAN方向に長い長方形の形状とする。マスク12A,12Bを受光素子9上に投影した大きさとしては、図13に示すように、マージンも含めてTAN方向に300μm、RAD方向に100μmとし、光軸からの半径相当の距離としてhe_tan´=150μm,he_rad´=50μmを設定した。ここで、「_tan」はTAN方向、「_rad」はRAD方向を示す記号であり、TAN方向、RAD方向をまとめて議論するときは省略するものとする。
なお、実施例1では、M=1であるため、エキスパンダー光学系内の焦点Oにおける、TAN方向の受光素子実効サイズhe_tan、RAD方向の受光素子実効サイズhe_radに関しては、受光素子9上と同じ大きさであり、he_tan=he_tan´=150μm,he_rad=he_rad´=50μmとなる。
実施例1に係る光ピックアップ装置1が対応を想定した3層ディスクである光ディスク11の断面構造を図14に示す。図14に示すように、光ディスク11の最下層、中間層、最表層をそれぞれL0層、L1層、L2層とし、L0層とL1層との間のスペーサの厚さt0=15μm、L1層とL2層との間のスペーサの厚さt1=10μmとし、光ディスク11の屈折率n=1.6とした。
次に、光ディスク11で発生しうるクロストーク光について、図15を参照して説明する。
L0層がターゲット層であるときは、図15(a)に示すように、それぞれL1層、L2層で反射されたクロストーク光C1,C2が発生する。L1層がターゲット層であるときは、図15(b)に示すように、それぞれL0層、L2層で反射されたクロストーク光C3,C4が発生する。L2層がターゲット層であるときは、図15(c)に示すように、それぞれL0層、L2層で反射されたクロストーク光C5,C6が発生する。
図15(a)〜(c)におけるクロストーク光C1〜C6の反射位置と信号光の反射位置との間の、光ディスク11の厚さ方向における距離td(μm)を表1にまとめて示す。
表1において、クロストーク層は、クロストーク光が反射した記録層を示す。また、ターゲット層に対して光ディスク11の奥側の記録層で反射するクロストーク光に対応する値をプラス、表面側の記録層で反射するクロストーク光に対応する値をマイナスの符号を付して表記している。例えば、ターゲット層がL0層であるときにL1層で反射されたクロストーク光C1については、td=t0=15μmであり、クロストーク光C1の反射位置がターゲット層よりも光ディスク11の奥側であるため、表1中では−15と表記している。
表1より、実施例1では、前述の(式7),(式8)におけるtmin+,tmin−,tmax+,tmax−の値は、以下のようになる。
tmax+=tmax−=25μm
tmin+=tmin−=10μm
ここで、tmax+はクロストーク光C5、tmax−はクロストーク光C2、tmin+はクロストーク光C6、tmin−はクロストーク光C4にそれぞれ対応している。
以上で得られた値を(式13),(式14)に代入することにより、マスク12Aの設計値を求めることができる。実施例1では、RAD方向とTAN方向とで長さの異なるマスクを用いるため、RAD方向については(式13),(式14)から得られる以下の(式19),(式20)、TAN方向については(式13),(式14)から得られる以下の(式21),(式22)により設計する。
2×10×102/1.6≧50×dm/(50+hm_rad) …(式19)
2×25×102/1.6≦50×dm/(50−hm_rad) …(式20)
2×10×102/1.6≧150×dm/(150+hm_tan) …(式21)
2×25×102/1.6≦150×dm/(150−hm_tan) …(式22)
なお、tmax+=tmax−,tmin+=tmin−であるため、dm=dm´,hm=hm´としてマスク12Bを設計すればよい。したがって、(式15),(式16)を用いた計算は省略する。
上記(式19)〜(式22)の範囲を満たす値として、実施例1では、hm_rad=23μm,hm_tan=69μm,dm=1.8mmを選んだ。
図16は、実施例1におけるエキスパンダー光学系内の信号光の焦点O、マスク12A,12B、およびクロストーク光の焦点の位置関係を示す図である。図16において、(Lsi,Lcj)は、Li層がターゲット層であるときの、Lj層からのクロストーク光の焦点の位置を示している(i≠j)。また、太い点線は信号光を示し、細い点線はクロストーク光を示す。
仮に、クロストーク光の焦点にマスクを配置してクロストーク光を除去する構成であれば、(Ls2,Lc0)〜(Ls2,Lc1)、および(Ls1,Lc2)〜(Ls0,Lc2)の範囲内すべてにマスキングが必要となる。これに対し、実施例1では、図16に示したマスク12A,12Bの適用範囲に、一箇所ずつマスクを配置することで、すべてのクロストーク光を除去できるので、光フィルタ部10の構成の簡素化、小型化が可能である。
実施例1における光フィルタ部10は、図9に示すように、薄いガラス板13,14の平面13a,14aの中央部にマスク12A,12Bを形成し、ガラス板13,14を並設したものである。ガラス板13,14は、その屈折率と厚みを考慮した上で、マスク12A,12B間の距離がdm=dm´となるように配置している。
また、マスク12A,12Bは、前述のhm_rad=23μm,hm_tan=69μmより、46μm×138μmのアルミニウム薄膜とし、マスク12A,12Bに入射された光は100%反射される構造である。反射された光は受光素子9の受光セルには到達しないものとする。上記のようなマスク12A,12Bは、例えばフォトリソグラフィによるレジストパターンを形成後にエッチングを行うなど、公知の手法で容易に実現可能である。
以上のように、実施例1では、3層ディスクにおけるクロストーク光が受光素子9に入射することを防ぐことができる。また、3ビームのDPP法であっても安定したクロストーク光の除去作用を得ることができる。
なお、光学系の構成によっては、ターゲット層と、それに対応したクロストーク光の、エキスパンダー光学系内におけるNAが、それぞれ異なるため、それを考慮してdm,dm´,hm,hm´をさらに最適化し、dm≠dm´,hm≠hm´となることも考えられる。
実施例1では、3層ディスクを用いる場合を示したが、その他の多層ディスクについても、実施例1と同様にtmin+,tmin−,tmax+,tmax−の値を求め、これを用いてマスク12A,12Bを設計すればよい。N層ディスク(N≧2)において、最表層をLN−1層、最下層をL0層とし、Li層とLi+1層(0≦i≦N−2)の間のスペーサ厚さtiとした場合、tmin+,tmin−,tmax+,tmax−の値は、以下の(式23),(式24)により算出される。ただし、Min(ti)は、tiのうちの最小の値である。
tmin+=tmin−=Min(ti) …(式23)
tmax+=tmax−=Σ(ti) …(式24)
(実施例2)
実施例2の光ピックアップ装置は、実施例1と同様の構成であるため、実施例1と同様に図1を参照して説明する。実施例2において実施例1と異なるのは、対応を想定する光ディスクの構造である。
実施例2において光ピックアップ装置1が対応を想定した光ディスク11Aの断面構造を図17に示す。図14に示した実施例1に対応する光ディスク11と異なる点は、L0層とL1層との間のスペーサの厚さt0=17μmである点である。
光ディスク11Aで発生しうるクロストーク光は、実施例1で図15を用いて説明したものと同様であるが、実施例2ではさらに、図18に示す多重反射クロストーク光C7も除去する点が、実施例1と異なる点である。
図18に示す多重反射クロストーク光C7は、L0層がターゲット層である場合において、まずL1層で光ディスク11Aの表面側(L2層側)へ反射されたクロストーク光がL2層の裏面で反射され、再びL1層で反射されたものである。
多重反射クロストーク光C7は、反射回数が通常のクロストーク光より2回多く強度が弱いが、場合によってはトラッキングエラー信号に影響を及ぼす可能性があるため、実施例2ではこの多重反射クロストーク光C7も除去する。
多重反射クロストーク光C7は、ターゲット層であるL0層に対して、t0−t1=7μmだけ表面側に離れた位置から反射された光束と等価である。つまり、多重反射クロストーク光C7は、図18に示す仮想的な反射面である実効反射層41上の任意の位置(実効反射位置)で1回だけ反射した光と見なすことができる。
図15(a)〜(c)、図18におけるクロストーク光C1〜C6および多重反射クロストーク光C7の実効反射位置と信号光の反射位置との間の、光ディスク11Aの厚さ方向における距離td(μm)を表2にまとめて示す。なお、多重反射でないクロストーク光C1〜C6の実効反射位置は、実際の反射位置となる。
表2より、実施例2では、前述の(式7),(式8)におけるtmin+,tmin−,tmax+,tmax−の値は、以下のようになる。なお、実施例2のように多重反射を考慮する場合は、(式7),(式8)におけるtmin+,tmin−,tmax+,tmax−の値を求める際のクロストーク光の反射位置は、実効反射位置とする。
tmax+=tmax−=27μm
tmin+=10μm
tmin−=7μm
ここで、tmax+はクロストーク光C5、tmax−はクロストーク光C2、tmin+はクロストーク光C6、tmin−は多重反射クロストーク光C7にそれぞれ対応している。
以上で得られた値を(式13)〜(式16)に代入することにより、マスク12A,12Bの設計値を求めることができる。RAD方向については(式13)〜(式16)から得られる以下の(式25)〜(式28)、TAN方向については(式13)〜(式16)から得られる以下の(式29)〜(式32)により設計する。
2×10×102/1.6≧50×dm/(50+hm_rad) …(式25)
2×27×102/1.6≦50×dm/(50−hm_rad) …(式26)
2×7×102/1.6≧50×dm´/(50+hm_rad´) …(式27)
2×25×102/1.6≦50×dm´/(50−hm_rad´) …(式28)
2×10×102/1.6≧150×dm/(150+hm_tan) …(式29)
2×27×102/1.6≦150×dm/(150−hm_tan) …(式30)
2×7×102/1.6≧150×dm´/(150+hm_tan´) …(式31)
2×27×102/1.6≦150×dm´/(150−hm_tan´)
…(式32)
上記(式25)〜(式32)の範囲を満たす値として、実施例2では、hm_rad=23μm,hm_tan=69μm,dm=1.8mm,hm_rad´=29μm,hm_tan´=87μm,dm´=1.35mmを選んだ。
実施例2の光フィルタ部10は、実施例1と同様に、ガラス板13,14の平面13a,14aの中央部にマスク12A,12Bを形成した構成である。ただし、マスク12A,12B間の間隔は、真空中の距離に換算してdm+dm´=1.8+1.35=3.15μmとする。また、マスク12Aと焦点Oとの間が1.8μm、マスク12Bからと焦点Oとの間が1.35μmとなるように配置する。
図19は、実施例2におけるエキスパンダー光学系内の信号光の焦点O、クロストーク光および多重反射クロストーク光の焦点、およびマスク12A,12Bの位置関係を示す図である。
図19において、(Lsi,Lcj)は、実施例1で示した図16と同様の意味であり、(Lsi,Lcjkj)は、Li層がターゲット層であるときの、Li層→Lk層→Lj層と多重反射する多重反射クロストーク光の焦点の位置を示している。また、太い点線は信号光、細い点線はクロストーク光、一点鎖線は多重反射クロストーク光を示す。
実施例2では、図19に示したマスク12A,12Bの適用範囲に一箇所ずつマスクを配置することで、実施例1と同様に簡素な構成で小型の光フィルタ部10によりクロストーク光を除去できるとともに、多重反射クロストーク光も除去できる。
また、信号光の焦点Oに近い位置(Ls0,Lc121)に集光する多重反射クロストーク光を、焦点Oからみて多重反射クロストーク光の焦点(Ls0,Lc121)よりも遠くに配置したマスク12Bで除去するので、信号光のロスを抑えて高い安定性が得られる。
なお、4層以上の多層ディスクでは、さらに複雑な多重反射が発生するが、Li層がターゲット層である場合に、Li+1層→Li+2層→Li+1層と3回反射する多重反射クロストーク光が最も反射率が高い。このため、4層以上の多層ディスクでも、多重反射クロストーク光については、上記のような3回反射のもののみを考慮してtmin+,tmin−の値を決定すればよい。tmax+,tmax−の値については、実施例1と同様に(式24)から求めればよい。
N≧3のN層ディスクにおいて、上記のような3回反射の多重反射クロストーク光のみを考慮した場合、tmin+,tmin−は、以下のように求められる。まず、最下層であるL0層から最表層であるLN−1層に向かって、層間のスペーサ厚さtiが単調に減少する(ti>ti+1)構成である場合、tmin+,tmin−は以下の(式33),(式34)により算出される。
tmin+=Min(ti) …(式33)
tmin−=Min(|ti−(ti+1)|,ti) …(式34)
逆に、L0層からLN−1層に向かって、層間のスペーサ厚さtiが単調に増加する(ti<ti+1)構成である場合、tmin+,tmin−は以下の(式35),(式36)により算出される。
tmin+=Min(|ti−(ti+1)|,ti) …(式35)
tmin−=Min(ti) …(式36)
光ディスクのスペーサ厚さtiが単調減少でも単調増加でもない構成である場合は、ti<ti+1となるiに対応するtiの集合に対して、(式35)を用いることによりtmin+を求め、ti>ti+1となるiに対応するtiの集合に対して、(式34)を用いることによりtmin−を求めることができる。
なお、その他の多重反射にも対応する場合でも、同様に複数のスペーサの厚さに基づいて、デフォーカス量を示すことができるので、対応する多重反射により、適切にtmin+,tmin−を設定すれば、光フィルタ部10の設計が可能になる。
(実施例3)
実施例3の光ピックアップ装置は、図10に示した第2の実施の形態の光ピックアップ装置1Bと同様の全体構成であるため、図10を参照して説明する。ただし、実施例3の光ピックアップ装置1Bは、実施例1と同様に3ビームDPP法を適用したものとし、往路の光学系内に、光源2からのレーザ光を3つのビームに分ける回折素子(図示せず)を備え、図13に示したように、受光素子9が3つのビームに対応した3つの受光セル91〜93を有する。
光学系の定数についても実施例1と同様であり、対物レンズ8のNAが0.85、対物レンズ8、集光レンズ4,5の焦点距離は、それぞれ1.8mm,9mm、18mmであり、集光レンズ5と対物レンズ8との焦点距離の比である倍率Me=10である。また、集光レンズ4から焦点Oまでの距離と、受光素子9から集光レンズ4までの距離との比である倍率M=1である。
さらに、TAN方向の受光素子実効サイズhe_tan、RAD方向の受光素子実効サイズhe_radも実施例1と同様であり、he_tan=150μm,he_rad=50μmである。
実施例3において光ピックアップ装置1Bが対応を想定した光ディスク11Bの断面構造を図20に示す。図20に示すように、光ディスク11Bの最下層から最表層に向かって順にL0層、L1層、L2層、L3層とし、L0層とL1層との間のスペーサの厚さt0=10μm、L1層とL2層との間のスペーサの厚さt1=15μm、L2層とL3層との間のスペーサの厚さt2=10μmとし、光ディスク11の屈折率n=1.6とした。
次に、光ディスク11Bで発生しうるクロストーク光について、図21を参照して説明する。
L0層がターゲット層であるときは、図21(a)に示すように、それぞれL1層、L2層、L3層で反射されたクロストーク光C11,C12,C13が発生する。L1層がターゲット層であるときは、図21(b)に示すように、それぞれL0層、L2層、L3層で反射されたクロストーク光C14,C15,C16が発生する。L2層がターゲット層であるときは、図21(c)に示すように、それぞれL0層、L1層、L3層で反射されたクロストーク光C17,C18,C19が発生する。L3層がターゲット層であるときは、図21(d)に示すように、それぞれL0層、L1層、L2層で反射されたクロストーク光C20,C21,C22が発生する。
図21(a)〜(d)におけるクロストーク光C11〜C22の反射位置と信号光の反射位置との間の、光ディスク11Bの厚さ方向における距離td(μm)を表3にまとめて示す。
表3より、実施例3では、前述の(式7),(式8)におけるtmin+,tmin−,tmax+,tmax−の値は、以下のようになる。
tmax+=tmax−=35μm
tmin+=tmin−=10μm
ここで、tmax+はクロストーク光C20、tmax−はクロストーク光C13、tmin+はクロストーク光C14,C22、tmin−はクロストーク光C11,C19にそれぞれ対応している。
以上で得られた値を(式1),(式2)に代入することにより、マスク26A1,26AKの設計値を求めることができる。
なお、tmax+=tmax−,tmin+=tmin−であるため、dm1=dm´1,dmK=dm´L,hm1=hm´1,hmK=hm´Lとしてマスク26B1,26BKを設計すればよい。したがって、(式3),(式4)を用いた計算は省略する。
実施例3では、K=L=2、すなわち、焦点Oに対して光ディスク11B側および受光素子9側に2枚ずつのマスクを配置するものとした。
RAD方向については(式1),(式2)から得られる以下の(式37),(式38)、TAN方向については(式1),(式2)から得られる以下の(式39),(式40)により設計する。
2×10×102/1.6≧50×dm1/(50+hm1_rad) …(式37)
2×35×102/1.6≦50×dm2/(50−hm2_rad) …(式38)
2×10×102/1.6≧150×dm1/(150+hm1_tan)
…(式39)
2×35×102/1.6≦150×dm2/(150−hm2_tan)
…(式40)
上記(式37)〜(式40)の範囲を満たす値として、実施例3では、hm1_rad=14μm,hm1_tan=41μm,dm1=1.3mm,hm2_rad=24μm,hm2_tan=73μm,dm2=2.3mmを選んだ。
図22は、実施例3におけるエキスパンダー光学系内の信号光の焦点O、クロストーク光の焦点、およびマスク26A1,26A2,26B1,26B2の位置関係を示す図である。図22(a)において、点線は、焦点Oに近い、光ディスク11B側のマスク26A1および受光素子9側のマスク26B1で除去可能なクロストーク光の範囲を示すものであり、図22(b)において、点線は、焦点Oから遠い、光ディスク11B側のマスク26A2および受光素子9側のマスク26B2で除去可能なクロストーク光の範囲を示す。
また、図22(a)において、発生しうるクロストーク光のエキスパンダー光学系内における焦点の位置を、表3に基づいてtdの値を併記して示した。
図22(a),(b)によれば、マスク26A1,26A2の適用範囲を合成した範囲A、およびマスク26B1,26B2の適用範囲を合成した範囲B内に、発生しうるすべてのクロストーク光が集光していることがわかる。
したがって、図21(a)〜(d)に示したすべてのクロストーク光C11〜C22が、実施例3では合計4枚のマスクで除去可能なため、光フィルタ部20の構成の簡素化、小型化が可能である。
実施例3における光フィルタ部20は、図23に示すように、ガラス板31の両面31a,31bの中央部にマスク26A1,26A2を形成し、ガラス板32の両面32a,32bの中央部にマスク26B1,26B2を形成し、ガラス板31,32を並設したものである。
マスク26A1,26A2については、焦点Oから、マスク26A1,26A2までの距離が空気換算でdm1=1.3mm,dm2=2.3mmとなるよう、ガラス板31の厚さおよび焦点Oとの距離を調整する。
また、マスク26A1,26A2は、前述のようにTAN方向、RAD方向で大きさの異なる長方形とする。マスク26A1については、hm1_rad=14μm,hm1_tan=41μmなので、28μm×82μmの長方形とし、マスク26A2については、hm2_rad=24μm,hm2_tan=73μmなので、48μm×146μmの長方形とする。マスク26B1,26B2については、dm=dm´,hm=hm´なので、マスク26A1,26A2と同様に構成し、焦点Oを中心に対称な位置に配置すればよい。
マスク26A1,26A2,26B1,26B2は、実施例1のマスク12A,12Bと同様にアルミニウム薄膜とし、入射された光は100%反射される構造であり、反射された光は受光素子9の受光セルには到達しないものとする。
以上のように、実施例3では、4層ディスクにおけるクロストーク光が受光素子9に入射することを防ぐことができる。
実施例3では、4層ディスクを用いる場合を示したが、その他の多層ディスクについても、実施例1で示した(式23),(式24)により、tmin+,tmin−,tmax+,tmax−の値を求め、これを用いてマスク26A1,26AK,26B1,26BKを設計すればよい。
なお、光学系の構成によっては、ターゲット層と、それに対応したクロストーク光の、エキスパンダー光学系内におけるNAが、それぞれ異なるため、それを考慮してマスク26A1,26A2,26B1,26B2をさらに最適化し、dm1≠dm´1,dmK≠dm´L,hm1≠hm´1,hmK≠hm´Lとなることも考えられる。
(実施例4)
実施例4の光ピックアップ装置は、実施例3と同様の構成であるため、実施例3と同様に図10を参照して説明する。実施例4において実施例3と異なるのは、対応を想定する光ディスクの構造である。
実施例4において光ピックアップ装置1Bが対応を想定した光ディスク11Cの断面構造を図24に示す。光ディスク11Cが、図20に示した実施例3に対応する光ディスク11Bと異なる点は、L1層とL2層との間のスペーサの厚さt1=17μmである点である。
光ディスク11Cで発生しうるクロストーク光は、実施例3で図21を用いて説明したものと同様であるが、実施例4ではさらに、図25(a)に示す多重反射クロストーク光C31、および図25(b)に示す多重反射クロストーク光C32も除去する点が、実施例3と異なる。
図25(a)に示す多重反射クロストーク光C31は、L0層がターゲット層である場合において、まずL1層で光ディスク11Cの表面側(L2層側)へ反射されたクロストーク光がL2層の裏面で反射され、再びL1層で反射されたものである。図25(b)に示す多重反射クロストーク光C32は、L1層がターゲット層である場合において、まずL2層で光ディスク11Cの表面側(L3層側)へ反射されたクロストーク光がL3層の裏面で反射され、再びL2層で反射されたものである。
多重反射クロストーク光C31,C32は、反射回数が通常のクロストーク光より2回多く強度が弱いが、場合によってはトラッキングエラー信号に影響を及ぼす可能性があるため、実施例4ではこの多重反射クロストーク光C31,C32も除去する。
図25(a)の多重反射クロストーク光C31は、ターゲット層であるL0層に対して、t1−t0=7μmだけ奥側に離れた位置から反射された光束と等価である。つまり、多重反射クロストーク光C31は、図25(a)に示す仮想的な反射面である実効反射層51上の任意の位置(実効反射位置)で1回だけ反射した光と見なすことができる。
また、図25(b)の多重反射クロストーク光C32は、ターゲット層であるL1層に対して、t1−t2=7μmだけ表側に離れた位置から反射された光束と等価である。つまり、多重反射クロストーク光C32は、図25(b)に示す仮想的な反射面である実効反射層52上の任意の位置(実効反射位置)で1回だけ反射した光と見なすことができる。
図21(a)〜(d)、図25(a),(b)におけるクロストーク光C11〜C22および多重反射クロストーク光C31,C32の実効反射位置と信号光の反射位置との間の、光ディスク11Cの厚さ方向における距離td(μm)を表4にまとめて示す。なお、多重反射でないクロストーク光C11〜C22の実効反射位置は、実際の反射位置となる。
表4より、実施例4では、前述の(式7),(式8)におけるtmin+,tmin−,tmax+,tmax−の値は、以下のようになる。
tmax+=tmax−=37μm
tmin+=tmin−=7μm
ここで、tmax+はクロストーク光C20、tmax−はクロストーク光C13、tmin+は多重反射クロストーク光C31、tmin−は多重反射クロストーク光C32にそれぞれ対応している。
以上で得られた値を(式1),(式2)に代入することにより、マスク26A1,26AKの設計値を求めることができる。
なお、tmax+=tmax−,tmin+=tmin−であるため、dm1=dm´1,dmK=dm´L,hm1=hm´1,hmK=hm´Lとしてマスク26B1,26BKを設計すればよい。したがって、(式3),(式4)を用いた計算は省略する。
実施例4では、実施例3と同様に、K=L=2、すなわち、焦点Oに対して光ディスク11B側(集光レンズ5側、対物レンズ8側)および受光素子9側(集光レンズ4側)に2枚ずつのマスクを配置するものとした。
RAD方向については(式1),(式2)から得られる以下の(式41),(式42)、TAN方向については(式1),(式2)から得られる以下の(式43),(式44)により設計する。
2×7×102/1.6≧50×dm1/(50+hm1_rad) …(式41)
2×37×102/1.6≦50×dm2/(50−hm2_rad) …(式42)
2×7×102/1.6≧150×dm1/(150+hm1_tan)…(式43)
2×37×102/1.6≦150×dm2/(150−hm2_tan)
…(式44)
上記(式41)〜(式44)の範囲を満たす値として、実施例4では、hm1_rad=15μm,hm1_tan=45μm,dm1=1.0mm,hm2_rad=30μm,hm2_tan=89μm,dm2=2.0mmを選んだ。
図26は、実施例4におけるエキスパンダー光学系内の信号光の焦点O、クロストーク光および多重反射クロストーク光の焦点、およびマスク26A1,26A2,26B1,26B2の位置関係を示す図である。図26(a)において、点線は、焦点Oに近い、光ディスク11C側のマスク26A1および受光素子9側のマスク26B1で除去可能なクロストーク光の範囲を示すものであり、図26(b)において、点線は、焦点Oから遠い、光ディスク11C側のマスク26A2および受光素子9側のマスク26B2で除去可能なクロストーク光の範囲を示す。
また、図26(a)において、発生しうるクロストーク光および多重反射クロストーク光のエキスパンダー光学系内における焦点の位置を、表4に基づいてtdの値を併記して示した。
図26(a),(b)によれば、マスク26A1,26A2の適用範囲を合成した範囲C、およびマスク26B1,26B2の適用範囲を合成した範囲D内に、発生しうるすべてのクロストーク光および多重反射クロストーク光が集光していることがわかる。
したがって、図21(a)〜(d)、図25(a),(b)に示したすべてのクロストーク光C11〜C22および多重反射クロストーク光C31,C32が、実施例4では合計4枚のマスクで除去可能なため、光フィルタ部20の構成の簡素化、小型化が可能である。
実施例4における光フィルタ部20は、図23に示した実施例3の構成と同様であり、マスク26A1,26A2,26B1,26B2のサイズおよび焦点Oからの距離のみが異なる。すなわち、マスク26A1,26A2については、焦点Oから、マスク26A1,26A2までの距離が空気換算でdm1=1.0mm,dm2=2.0mmとなるよう、ガラス板31の厚さおよび焦点Oとの距離を調整する。
また、マスク26A1,26A2は、前述のようにTAN方向、RAD方向で大きさの異なる長方形とする。マスク26A1については、hm1_rad=15μm,hm1_tan=45μmなので、30μm×90μmの長方形とし、マスク26A2については、hm2_rad=30μm,hm2_tan=89μmなので、60μm×178μmの長方形とする。マスク26B1,26B2については、dm=dm´,hm=hm´なので、マスク26A1,26A2と同様に構成し、焦点Oを中心に対称な位置に配置すればよい。
以上のように、実施例4では、実施例3と同様に簡素な構成で小型の光フィルタ部20によりクロストーク光を除去できるとともに、多重反射クロストーク光も除去できる。また、信号光の焦点Oに近い位置に集光する多重反射クロストーク光を、焦点Oからみて多重反射クロストーク光の焦点よりも遠くに配置したマスク26A1,26B1で除去するので、信号光のロスを抑えて高い安定性が得られる。
(実施例5)
実施例5の光ピックアップ装置は、実施例3と同様の構成であり、実施例5において実施例4と異なるのは、対応を想定する光ディスクの構造である。
実施例5において光ピックアップ装置1Bが対応を想定するのは、実施例1と同様であり、図14に示した3層の光ディスク11である。
光ディスク11で発生しうるクロストーク光および多重反射クロストーク光は、実施例1,2で図15、図18を用いて説明したものと同様であるが、t0−t1=5μmであるため、多重反射クロストーク光C7の実効反射位置が実施例2とは異なる。
実施例5において発生しうるクロストーク光C1〜C6および多重反射クロストーク光C7の実効反射位置と信号光の反射位置との間の、光ディスク11の厚さ方向における距離td(μm)を表5にまとめて示す。
表5より、実施例5では、前述の(式7),(式8)におけるtmin+,tmin−,tmax+,tmax−の値は、以下のようになる。
tmax+=tmax−=25μm
tmin+=10μm
tmin−=5μm
なお、多重反射クロストーク光C7の実効反射位置がターゲット層に対してマイナス側(表面側)なので、エキスパンダー光学系において、多重反射クロストーク光C7は焦点Oより受光素子9側に集光される。また、t0−t1の値がt0,t1より小さいので、多重反射クロストーク光C7がクロストーク光C1〜C6よりも焦点Oに近くで集光する。
以上で得られた値を(式1)〜(式4)に代入することにより、マスク26A1,26AK,マスク26B1,26BLの設計値を求めることができる。
なお、実施例5では、光ディスク11側(集光レンズ5側、対物レンズ8側)と受光素子9側(集光レンズ4側)とでデフォーカス量の範囲が異なる(tmin+≠tmin−)ため、K=1,L=2、すなわち、焦点Oに対して光ディスク11側に1枚、受光素子9側に2枚のマスクを配置するものとした。
RAD方向については(式1)〜(式4)から得られる以下の(式45)〜(式48)、TAN方向については(式1)〜(式4)から得られる以下の(式49)〜(式52)により設計する。
2×10×102/1.6≧50×dm1/(50+hm1_rad) …(式45)
2×25×102/1.6≦50×dm1/(50−hm1_rad) …(式46)
2×5×102/1.6≧50×dm´1/(50+hm1_rad´)…(式47)
2×25×102/1.6≦50×dm´2/(50−hm2_rad´)
…(式48)
2×10×102/1.6≧150×dm1/(150+hm1_tan)
…(式49)
2×25×102/1.6≦150×dm1/(150−hm1_tan)
…(式50)
2×5×102/1.6≧150×dm´1/(150+hm1_tan´)
…(式51)
2×25×102/1.6≦150×dm´2/(150−hm2_tan´)
…(式52)
上記(式45)〜(式52)の範囲を満たす値として、実施例4では、hm1_rad=23μm,hm1_tan=69μm,dm1=1.8mm,hm1_rad´=8μm,hm1_tan´=24μm,dm´1=0.6mm,hm2_rad´=23μm,hm2_tan´=69μm,dm´2=1.8mmを選んだ。
図27は、実施例5におけるエキスパンダー光学系内の信号光の焦点O、クロストーク光および多重反射クロストーク光の焦点、およびマスク26A1,26B1,26B2の位置関係を示す図である。図27(a)において、点線は、光ディスク11側のマスク26A1、および受光素子9側の焦点Oから遠いマスク26B2で除去可能なクロストーク光の範囲を示すものであり、図27(b)において、点線は、焦点Oに近い受光素子9側のマスク26B1で除去可能なクロストーク光の範囲を示す。
また、図27(a)において、発生しうるクロストーク光および多重反射クロストーク光のエキスパンダー光学系内における焦点の位置を、表5に基づいてtdの値を併記して示した。
図27(a),(b)によれば、マスク26A1,26B1,26B2の適用範囲内に、発生しうるすべてのクロストーク光および多重反射クロストーク光が集光していることがわかる。
したがって、発生しうるすべてのクロストーク光C1〜C6および多重反射クロストーク光C7が、実施例5では合計3枚のマスクで除去可能なため、光フィルタ部20の構成の簡素化、小型化が可能である。
実施例5における光フィルタ部20は、図28に示すように、ガラス板31の一方の面31bの中央部にマスク26A1を形成し、ガラス板32の両面32a,32bの中央部にマスク26B1,26B2を形成し、ガラス板31,32を並設したものである。マスクの形成方法は実施例1と同様である。
焦点Oに対して光ディスク11側にはガラス板31を、受光素子9側にはガラス板32を、焦点Oからマスク26A1,26B1,26B2をまでの距離がそれぞれ空気換算でdm1=1.8mm,dm´1=0.6mm,dm´2=1.8mmとなるよう、ガラス板31,32の厚さおよび焦点Oとの距離を調整する。
また、各マスクは、前述のようにTAN方向、RAD方向で大きさの異なる長方形とする。マスク26A1については、hm1_rad=23μm,hm1_tan=69μmなので、46μm×138μmの長方形とし、マスク26B1については、hm1_rad´=8μm,hm1_tan´=24μmなので、16μm×48μmの長方形とする。マスク26B1はマスク26A1と同じ大きさである。
なお、光フィルタ部20は図28の構成に限らず、例えば、片面にマスクを形成したガラス板3枚を適切な距離関係で配置する構成でもよい。
以上のように、実施例5では、多重反射クロストーク光C7を除去するための専用のマスク26B1を設けることで、単純な構成で多重反射クロストーク光C7を除去できる。
実施例4,5では、それぞれ4層、3層の光ディスクにおいて、多重反射クロストーク光については、Li層がターゲット層である場合に、Li+1層→Li+2層→Li+1層と3回反射する多重反射クロストーク光のみを除去する構成とした。実施例2で述べたように、上記のような3回反射の多重反射クロストーク光が、すべての多重反射クロストーク光の中で最も反射率が高いため、上記のような3回反射の多重反射クロストーク光のみを考慮すれば十分である。
実施例4,5で示した4層、3層以外の多層ディスクに対応する場合でも同様であり、tmin+,tmin−は、実施例2で説明した(式33)〜(式36)を用いた手法により求められる。tmax+,tmax−の値についても前述した(式24)から求めることができる。