JP2011007501A - 多層膜ミラー - Google Patents
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Abstract
【課題】広い範囲の入射角度で反射特性を持ち、膜厚設計の自由度を向上させた軟X線ミラーを実現する。
【解決手段】Si層11とMo層12の交互層の一定膜厚構造に対して、各層の厚さ又は周期長を不均一にして、軟X線領域に対する反射特性を拡大するための最適化を行う。Si層11とMo層12の間には、この2種類の材料の界面拡散を防止する機能を有するB4C層13を設けた不均一膜厚構造とすることで、MoSixの形成による反射率の低下を防ぐとともに、膜厚設計の自由度を向上させる。
【選択図】図1
【解決手段】Si層11とMo層12の交互層の一定膜厚構造に対して、各層の厚さ又は周期長を不均一にして、軟X線領域に対する反射特性を拡大するための最適化を行う。Si層11とMo層12の間には、この2種類の材料の界面拡散を防止する機能を有するB4C層13を設けた不均一膜厚構造とすることで、MoSixの形成による反射率の低下を防ぐとともに、膜厚設計の自由度を向上させる。
【選択図】図1
Description
本発明は、軟X線領域の露光装置に使用される多層膜ミラーに関するものである。
近年、半導体集積回路素子の微細化の進展に伴い、従来の紫外線に代わって、さらに波長の短い軟X線(波長11〜14nm程度)のEUV(極端紫外線)領域を使用したリソグラフィー技術が開発されている。EUVリソグラフィーでは、ミラーによる反射光学系が用いられる。このミラーは、EUV領域で吸収が少なく、互いの屈折率の差が大きい2種類の物質を交互に何層も積層した多層膜で構成されている。EUVリソグラフィー用として広く用いられているのは多層膜の構成材料としてはMoとSiがあげられる。
この多層膜ミラーは、EUVで一般に用いられる波長13.5nmに対して約半分となる、7nm程度をMoとSiの2層を合わせて1周期として、40〜60周期程度積層したものである。このような周期構造はブラッグ反射の条件を満たしており、各境界面からの微弱な反射光が同位相で多数重畳されるため、全体として高い反射率を得ることができる。この方法で、形成される多層膜ミラーの理論反射率は、最大で70%を超える。
しかしながら、上記のような一定膜厚での周期構造では、高反射率を得るためのEUV光の入射角度範囲は狭く、その範囲を超える入射角で入射する光線に対しては急激な反射率の低下を招く。実際のミラーには、様々な入射角度で光が入射しており、その入射角度の範囲も狭いものから広いものと、反射光学系の設計によって変わる。
広い入射角度範囲に対応したミラーを実現するために、ミラー面内の各点における膜厚、もしくはγ比(周期長に対するMoの割合)に対して、入射する光の角度に対して最も高い反射率になるように、分布を形成する方法が知られている(特許文献1参照)。この方法は、分布さえ付けられれば広い入射角度に対応することが可能であるが、リソグラフィー装置における照明光学系などで要求されるようなミラー面内の1点に対して複数の入射角度で光が入射するミラーには対応できない。そこで、多層膜中のSi、Moの各層の厚さを一定にしない不均一膜厚構造にすることが提案されている(非特許文献1、特許文献2参照)。
Thomas Kuhlmann,Sergiy Yulin,Torsten Feigl,Norbert Kaiser,Helmut Bernitzki,Hans Lauth、「Design and fabrication of broadband EUV multilayer mirrors」、Proceedings of SPIE Vol.4688(2002)
しかしながら、SiとMoの不均一膜厚構造では、SiとMoが反応しやすいため、界面においてMoSixの化合物となり、その結果、膜の反射特性が劣化する場合がある。この課題に対して、MoSixの形成を想定して不均一膜厚構造に含まれる膜厚を1.5nm以上に限定することで実際にできる膜と設計値の反射特性の乖離をなくすようにしている(特許文献2参照)。
しかし、このように不均一膜厚構造に含まれる膜厚を限定してしまうことにより、不均一膜厚構造の設計の自由度が減少するという課題が生じる。また、設計値との乖離は防ぐことはできても、MoSixが形成されること自体による反射率の低下という課題は残る。
本発明は、不均一膜厚構造における界面拡散による反射率の低下を防ぎ、光学特性を向上させることのできる多層膜ミラーを提供することを目的とするものである。
本発明の多層膜ミラーは、軟X線領域にて反射特性を持つ多層膜を有する多層膜ミラーにおいて、前記多層膜は、2種類の材料を不均一な膜厚で交互に積層した交互層を有し、前記交互層は、前記2種類の材料を一定膜厚で交互に積層した一定膜厚構造の交互層に対して、前記2種類の材料の層間に界面拡散を防止する中間層を介在させ、反射特性を拡大するために各層の膜厚又は周期長を調整した不均一膜厚構造の交互層であることを特徴とする。
中間層を介在させた不均一膜厚構造にすることで、MoSix等の形成を抑制して反射率の低下を防ぐと同時に、膜厚設計の自由度を大きく取ることを可能とし、リソグラフィー装置の高機能化に対応できる多層膜ミラーを実現する。
図1(a)は、一実施形態による多層膜ミラーの膜構成を示す。このミラーは、軟X線領域において反射特性を持ち、基板10上に、Si層11とMo層12を不均一な膜厚で交互に積層した層間に、中間層であるB4C層13を介在させたSi/B4C/Mo/B4Cの交互層からなる多層膜を有する。Si層11、Mo層12、及びB4C層13は、一定膜厚で交互に積層したSi、Moの周期構造(一定膜厚構造)に対して、より広い入射角度範囲で一定の反射率を得られるように反射特性を拡大するために膜厚又は周期長を調整した不均一膜厚構造を構成する。この不均一膜厚構造は、公知の薄膜設計プログラムを用いて交互層の各層の膜厚を最適化処理したもので、Si層11、Mo層12はそれぞれ10nm以下、B4C層13は0.1〜0.75nmの範囲内に設定される。
B4C層13を、界面拡散を防止する中間層として介在させる(挟み込む)ことによって、反射率の低下は抑えられるうえ、MoSixの形成が抑制されるため、設計値に限りなく近い多層膜を実現することが可能となり、膜厚設計の自由度を上げることができる。さらに、B4C層13の膜厚という最適化対象の膜厚パラメータが増えることも、設計の自由度向上につながっている。
B4Cを挟みこむ効果は実験的に検証した。Mo/Si交互層をスパッタリング法等によって成膜すると、図1(b)に示すように、SiとMoの間の膜界面に厚さ0.4〜1nm程度のMoSix層114が生じる。設計値の反射特性にはMoSixが形成されることは考慮されていないので、反射率は低下する。
これに対して、MoとSiの間にB4Cなどの中間層を挟むことによって、MoSixの形成を防ぐことができることが、図2(a)に示すように断面透過型電子顕微鏡観察によって判明した。
中間層には、MoSixの形成を抑制する効果があるが、その材料自体には軟X線に対する吸収を持っており、また、本来の軟X線の反射に最適なSi/Mo交互層の周期構造を崩すことにもつながるので、厚すぎると反射率の低下を招く。一方で、薄すぎてもMoSixの形成を抑制する効果が働かない。実験によれば、SiとMoの間に挟む材料がB4Cの場合、図2(b)に示すように、その膜厚は0.5nm近傍が最も反射率が高い。そして、0.1〜0.75nmの範囲内であれば、最も高い反射率からの減少率が1%程度に抑えられて、ミラーに適用できる許容範囲であることが判明した。
中間層の材料は、B、C、Ru、Rh、Li、Pd並びにこれらの化合物のうちの1つを主成分とする材料を用いることが可能である。中間層の、種類、層数、挟みこむ箇所に制限はなく、交互層は同一順である必要はない。
なお、目標波長が変われば膜材料も変化するため、交互層の2種類の材料はSi、Moに限定することなく、例えば、11nm付近の波長の光に対してBeとMoを使用するなどが可能である。
上記の多層膜ミラーの作成には図3に示すスパッタリング成膜装置を用いる。この成膜装置は、真空チャンバ901と、真空ポンプ902と、可動マスク904と、シャッタ906と、基板回転機構907と、各種ターゲット908、909と、制御系とを有する。真空チャンバ901は真空ポンプ902によって真空又は減圧環境に維持され、各構成要素を収納する。制御系は、マスク可動制御装置903、シャッタ制御装置905、DC電源910、RF電源911、Arガス導入制御装置913等を含み、コンピュータ912に接続されて制御される。
ターゲットは、直径4インチのBドープした多晶質のSiターゲット908、Moターゲット909に加えて、図示しないB4C等の中間部のターゲットが用いられる。ターゲットが回転し、各材料を切り替えて、基板上に成膜することができる。ターゲットは交換してもよい。
基板は、直径500mm、厚さ300μmのシリコンを用いており、成膜時自転している。基板とターゲットの間には、シャッタ制御装置905によって開閉制御されるシャッタ906と、マスク可動制御装置903によって移動制御され、基板上の膜厚分布を制御するための可動マスク904がある。成膜時はプロセスガスとしてArガス導入制御装置913からArガスを30sccm導入する。ターゲットに投入する電力は、DC電源910で所定の電力を維持し、RF電源911にて13.56MHzのRF高周波150Wとした。コンピュータ912は各層の膜厚を時間制御する。
成膜方法はスパッタを用いたが、製法はこの限りではなく、例えば蒸着法を用いてもよい。
(比較例1)
Mo/Si交互層において、各層の膜厚が一定である周期構造(一定膜厚構造)に対して、より広い入射角度範囲で一定の反射率を得られるように反射特性を拡大するために、最適化処理によって決定された不均一膜厚構造とする。実際には、図1(b)に示すように、Si層111とMo層112の間にMoSix層114が0.4〜1nm程度形成されるので、それを加味しての不均一膜厚構造となっている。この膜構成の60周期の多層膜を基板110に積層した多層膜ミラーは、図4(a)に示すように、波長13.5nmの軟X線に対する高反射率帯域の反射率平均が45%程度で、その入射角度範囲が0〜18度である。
Mo/Si交互層において、各層の膜厚が一定である周期構造(一定膜厚構造)に対して、より広い入射角度範囲で一定の反射率を得られるように反射特性を拡大するために、最適化処理によって決定された不均一膜厚構造とする。実際には、図1(b)に示すように、Si層111とMo層112の間にMoSix層114が0.4〜1nm程度形成されるので、それを加味しての不均一膜厚構造となっている。この膜構成の60周期の多層膜を基板110に積層した多層膜ミラーは、図4(a)に示すように、波長13.5nmの軟X線に対する高反射率帯域の反射率平均が45%程度で、その入射角度範囲が0〜18度である。
(比較例2)
比較例1と同様の不均一膜厚構造において、比較例1とは異なる入射角度範囲で最適化した場合の角度反射特性を図4(b)に示す。波長13.5nmの軟X線に対する高反射率帯域の反射率平均が40%程度で、その入射角度範囲は15〜22度である。
比較例1と同様の不均一膜厚構造において、比較例1とは異なる入射角度範囲で最適化した場合の角度反射特性を図4(b)に示す。波長13.5nmの軟X線に対する高反射率帯域の反射率平均が40%程度で、その入射角度範囲は15〜22度である。
比較例1、比較例2ともに、積層体内で一定膜厚の周期構造に対して、より広い入射角度範囲で一定の反射率を得られるように反射特性を拡大しているが、MoSix形成の影響があり充分に広いとは言えない。
図1(a)に示すような、Si/B4C/Mo/B4Cの交互層を60周期積層した膜構成において、比較例1と同じ入射角度範囲で一定の反射率を得られるように反射特性を拡大する最適化処理によって決定された不均一膜厚構造の多層膜を製作した。この多層膜の各層ごとの膜厚を図5(a)に示す。層数1が基板上から1層目を示し、全体で240層(実際はこれにキャップ層が加わり241層)の膜構成である。
本実施例による多層膜ミラーの角度反射特性を図5(b)に示す。波長13.5nmの軟X線に対する高反射率帯域の反射率平均が45%程度で、その入射角度範囲は0〜19度である。比較例1と比較して入射角度範囲が1度広くなったことがわかった。
Si/B4C/Mo/B4Cの交互層を60周期積層した膜構成において、比較例2と同じ入射角度範囲で一定の反射率を得られるように最適化処理によって決定された不均一膜厚構造の層ごとの膜厚を図6(a)に示す。
本実施例による多層膜ミラーの角度反射特性を図6(b)に示す。波長13.5nmの軟X線に対する高反射率帯域の反射率平均が40%程度で、その入射角度範囲は15〜25度である。比較例2と比較して入射角度範囲が3度広くなったことがわかった。
本実施例は、Si/B4C/Mo/B4Cの交互層を基本例として、B4C層をSi層の上にのみ挟み込んだSi/B4C/Moの交互層(実際には、Mo層上にはMoSix層が形成されるのでSi/B4C/Mo/(MoSix)交互層)を有する。この交互層を60周期積層した場合において、広い入射角度範囲で一定の反射率を得られるに最適化処理によって決定された不均一膜厚構造の層ごとの膜厚を図7(a)に示す。自然発生するMoSix層は各層一定である。
本実施例による多層膜ミラーの角度反射特性を図7(b)に示す。波長13.5nmの軟X線に対する高反射率帯域の反射率平均が45%程度で、その入射角度範囲は0〜20度である。比較例1と比較して入射角度範囲が2度広くなったことがわかった。
本実施例は、Si/B4C/Mo/B4Cの交互層を基本例として、B4C層を一部にのみ挟みこんだ交互層を有する。1〜40層目までをSi/Mo交互層、41〜240層目までをSi/B4C/Moの交互層とした。実際には、Mo層上にはMoSix層が形成されるている。この交互層を60周期積層した場合において、広い入射角度範囲で一定の反射率を得られるように最適化処理によって決定された不均一膜厚構造の層ごとの膜厚を図8(a)に示す。自然発生するMoSix層は各層一定である。
本実施例による多層膜ミラーの角度反射特性を図8(b)に示す。波長13.5nmの軟X線に対する高反射率帯域の反射率平均が45%程度で、その入射角度範囲は0〜20度である。比較例1と比較して入射角度範囲が2度広くなったことがわかった。
本実施例による多層膜ミラーの角度反射特性を図8(b)に示す。波長13.5nmの軟X線に対する高反射率帯域の反射率平均が45%程度で、その入射角度範囲は0〜20度である。比較例1と比較して入射角度範囲が2度広くなったことがわかった。
本実施例は、Si/B4C/Mo/B4Cの交互層を基本例として、B4C層の代わりにC層を挟みこんだSi/C/Mo/Cの交互層を有する。この交互層を60周期積層した場合において、広い入射角度範囲で一定の反射率を得られるように最適化処理によって決定された不均一膜厚構造の層ごとの膜厚を図9(a)に示す。
本実施例による多層膜ミラーの角度反射特性を図9(b)に示す。波長13.5nmの軟X線に対する高反射率帯域の反射率平均が40%程度で、その入射角度範囲は15〜25度である。比較例2と比較して入射角度範囲が3度広くなったことがわかった。
本実施例は、Si/B4C/Mo/B4Cの交互層を基本例として、挟みこむ中間層がB4C層とC層が混在した交互層を有する。1〜200層目までをSi/C/Mo/Cの交互層、200〜240層目までをSi/B4C/Mo/B4Cの交互層とした。この交互層を60周期積層した場合において、広い入射角度範囲で一定の反射率を得られるように最適化処理によって決定された不均一膜厚構造の層ごとの膜厚を図10(a)に示す。
本実施例による多層膜ミラーの角度反射特性を図10(b)に示す。波長13.5nmの軟X線に対する高反射率帯域の反射率平均が40%程度で、その入射角度範囲は15〜25度である。比較例2と比較して入射角度範囲が3度広くなったことがわかった。
10 基板
11 Si層
12 Mo層
13 B4C層
11 Si層
12 Mo層
13 B4C層
Claims (5)
- 軟X線領域にて反射特性を持つ多層膜を有する多層膜ミラーにおいて、
前記多層膜は、
2種類の材料を不均一な膜厚で交互に積層した交互層を有し、
前記交互層は、前記2種類の材料を一定膜厚で交互に積層した一定膜厚構造の交互層に対して、前記2種類の材料の層間に界面拡散を防止する中間層を介在させ、反射特性を拡大するために各層の膜厚又は周期長を調整した不均一膜厚構造の交互層であることを特徴とする多層膜ミラー。 - 前記中間層の材料は、Cを主成分とすることを特徴とする請求項1に記載の多層膜ミラー。
- 前記中間層の材料は、B4Cを主成分とすることを特徴とする請求項1に記載の多層膜ミラー。
- 前記中間層の膜厚は、0.1〜0.75nmの範囲内であることを特徴とする請求項3に記載の多層膜ミラー。
- 前記2種類の材料は、SiとMoであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の多層膜ミラー。
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-
2009
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