以下、図面を参照して本発明の第1乃至第4の実施形態について説明する。
図1は第1乃至第4の実施形態に係る磁気共鳴映像装置(MRI装置)100の構成を示す図である。このMRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイルユニット2、傾斜磁場電源3、寝台4、寝台制御部5、送信RFコイル6、送信部7、受信RFコイル8、受信部9、計算機システム10、映像伝送システム11および表示システム12を具備する。
静磁場磁石1は、中空の円筒形をなし、内部の空間に一様な静磁場を発生する。この静磁場磁石1としては、例えば永久磁石または超伝導磁石等が使用される。
傾斜磁場コイルユニット2は、中空の円筒形をなし、静磁場磁石1の内側に配置される。傾斜磁場コイルユニット2は、互いに直交するX,Y,Zの各軸に対応する3種類のコイルが組み合わされている。傾斜磁場コイルユニット2は、上記の3種類のコイルが傾斜磁場電源3から個別に電流供給を受けて、磁場強度がX,Y,Zの各軸に沿って変化する傾斜磁場を発生する。なお、Z軸方向は、例えば静磁場と同方向とする。X,Y,Z各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Geおよびリードアウト用傾斜磁場Grにそれぞれ任意に使用される。スライス選択用傾斜磁場Gsは、任意にイメージング断面を決めるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場Geは、空間的位置に応じてNMR信号の位相を変化させるために利用される。リードアウト用傾斜磁場Grは、空間的位置に応じてNMR信号の周波数を変化させるために利用される。
被検体200は、寝台4の天板4aに載置された状態で傾斜磁場コイルユニット2の空洞内に挿入される。寝台4が有する天板4aは寝台制御部5により駆動され、その長手方向および上下方向に移動する。通常、この長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように寝台4が設置される。
送信RFコイル6は、傾斜磁場コイルユニット2の内側に配置される。送信RFコイル6は、送信部7から高周波パルスの供給を受けて、高周波磁場を発生する。
送信部7は、ラーモア周波数に対応する高周波パルスを送信RFコイル6に送信する。
受信RFコイル8は、傾斜磁場コイルユニット2の内側に配置される。受信RFコイル8は、上記の高周波磁場の影響により被検体から放射されるNMR信号を受信する。受信RFコイル8からの出力信号は、受信部9に入力される。
受信部9は、受信RFコイル8からの出力信号に基づいてNMR信号データを生成する。
計算機システム10は、インタフェース部10a、データ収集部10b、再構成部10c、記憶部10d、表示部10e、入力部10fおよび主制御部10gを有している。
インタフェース部10aには、傾斜磁場電源3、寝台制御部5、送信部7、受信RFコイル8、受信部9、映像伝送システム11およびECGユニット300等が接続される。インタフェース部10aは、これらの接続された各部に対応したインタフェース回路を個々に有し、当該各部と計算機システム10との間で授受される信号の入出力を行う。なおECGユニット300は、被検体200に取り付けられたECGセンサを介して被検体200のECG信号を入力し、当該ECG信号にR波が生じたタイミングにてR波検出信号を出力する。インタフェース部10aはこのR波検出信号を入力し、主制御部10gに通知する。
データ収集部10bは、受信部9から出力されるデジタル信号をインタフェース部10aを介して収集する。データ収集部10bは、収集したデジタル信号、すなわちNMR信号データを、記憶部10dに格納する。
かくしてこのMRI装置100では、静磁場磁石1、傾斜磁場コイルユニット2、傾斜磁場電源3、送信RFコイル6、送信部7、受信RFコイル8、受信部9およびデータ収集部10bが、被検体200からの磁気共鳴信号を収集する収集手段として機能する。
再構成部10cは、記憶部10dに記憶されたNMR信号データに対して、後処理、すなわちフーリエ変換等の再構成を実行し、被検体200内の所望核スピンのスペクトラムデータあるいは画像データを求める。
記憶部10dは、NMR信号データと、スペクトラムデータあるいは画像データとを、患者毎に記憶する。
表示部10eは、スペクトラムデータあるいは画像データ等の各種の情報を主制御部10gの制御の下に表示する。表示部10eとしては、液晶表示器などの表示デバイスを利用可能である。
入力部10fは、オペレータからの各種指令や情報入力を受け付ける。入力部10fとしては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスを適宜に利用可能である。また入力部10fは、心臓全体などのイメージング領域、横隔膜などの同期対象部位としての励起スライスあるいは励起スラブのオペレータにより指定を受け付ける。
主制御部10gは、図示していないCPUやメモリ等を有しており、MRI装置100を総括的に制御する。また主制御部10gは、呼吸レベルが前記許容範囲内であるか否かを表す映像の映像信号を生成する。この映像信号は、例えばNTSC(national television system committee)信号である。
映像伝送システム11は、主制御部10gにより生成された映像信号を光で伝送する。
表示システム12は、映像信号に基づいて映像を、撮影状態に置かれた被検体200が目視可能なように表示する。
(第1の実施形態)
第1の実施形態において主制御部10gは、次のような複数の機能を備える。なおこれら複数の機能は、主制御部10gが備えるプロセッサにプログラムを実行させることによって実現できる。
上記の機能の1つは、被検体200の呼吸レベルを検出するためのNMR信号(以下、モニタ用NMR信号と称する)をデータ収集部10bに取得させるように関係各部を制御する。上記の機能の1つは、データ収集部10bにより取得されたモニタ用NMR信号に基づいて被検体200の呼吸レベルを検出する。上記の機能の1つは、画像を再構成するためのNMR信号(以下、再構成用NMR信号と称する)を、検出された呼吸レベルが許容範囲内であるときにデータ収集部10bに収集させるように関係各部を制御する。上記の機能の1つは、モニタ用NMR信号に基づいて被検体200の横隔膜の位置を検出する。上記の機能の1つは、上記の検出した横隔膜の位置の基準位置からのずれ量を測定する。上記の機能の1つは、再構成用NMR信号を収集する範囲を、上記の測定したずれ量に応じた移動量だけ移動させるように関係各部を制御する。上記の機能の1つは、上記の検出された呼吸レベルの変化に基づいて許容範囲の中心レベルを変更する。
次に第1の実施形態のMRI装置100の動作について説明する。
この第1の実施形態のMRI装置100では、RMC法を利用したWH MRCAを周知のシーケンスに従って実行する。
図2はRMC法を利用したWH MRCAのシーケンスの一例を示す図である。
RMC法は、通常は心電同期を伴って実施される。すなわち、ECGユニット300から出力されるR波検出信号に同期してシーケンスが実施される。具体的には、心電信号にR波が表れてから(R波検出信号が生じてから)一定の遅延時間が経過したのちに、モニタ用NMR信号としてのMPP(motion probing pulse)を収集する。そしてこの直後に、撮影のためのデータ収集を行うための期間が設定される。
MPPは、図25に示すような領域Rについて、例えば位相エンコード用傾斜磁場を印加しないで取得される。かくして、このMPPを1次元フーリエ変換することにより得られる信号から、体軸方向に関しての横隔膜の位置が検出できる。体軸方向に関する横隔膜の位置は呼吸に応じて周期的に上下するから、上記のように検出される横隔膜の位置は、呼吸レベルとしてそのまま利用できる。
そこで主制御部10gは、MPPに基づいて横隔膜の位置(呼吸レベル)を検出する。そして主制御部10gは、検出した呼吸レベルが所定の許容範囲内である場合にのみ、直後のデータ収集期間にデータ収集を行うように関係各部を制御する。あるいは主制御部10gは、検出した呼吸レベルが許容範囲内であるか否かに拘わらずに、直後のデータ収集期間にデータ収集を行うように関係各部を制御するが、検出した呼吸レベルが許容範囲内である場合にのみ、収集されたデータを有効とする。またデータ収集を行う場合に主制御部10gは、検出した横隔膜の位置の所定の基準位置からのずれ量を測定し、このずれ量を補償するように再構成用NMR信号を収集する範囲(撮影範囲)を調整するように関係各部を制御する。ただし、この撮像範囲の調整は省略可能である。
なお、許容範囲は、撮像開始前における被検体200の呼吸レベルに基づいて初期設定される。この初期設定は、主制御部10が操作者からの指示に応じて行っても良いし、主制御部10gが自動的に行っても良い。初期の許容範囲は任意であって良いが、典型的には呼吸レベルのピークの平均値付近を中心レベルとした一定幅として定める。また基準位置も、撮像開始前における横隔膜の位置として初期設定される。基準位置の初期設定は、主制御部10が操作者からの指示に応じて行っても良いし、主制御部10gが自動的に行っても良い。さらには、撮影範囲も、撮像開始前に初期設定される。撮影範囲の初期設定も、主制御部10が操作者からの指示に応じて行っても良いし、主制御部10gが自動的に行っても良い。なお、ここでの撮像開始前とは、再構成用NMR信号を実際に収集するための動作を開始する前を意味する。撮像開始前における横隔膜の位置を検出するためには、再構成用NMR信号を収集するために図2に示したシーケンスを開始するのに先立って、図2に示したシーケンスを数回繰り返せば良い。この場合、データ収集期間に収集されるデータは破棄し、MPPのみを横隔膜の位置を検出するために用いる。あるいは、図2におけるデータ収集を行わずに、MPPの収集のみを数回繰り返しても良い。
以上のような撮像を行うのと並行して主制御部10gは、所定のタイミング毎に図3に示すような処理を行う。この処理を行うタイミングは、任意であって良いが、例えば新たに呼吸レベルが検出される毎、あるいは一定の時間が経過する毎とすることが考えられる。
ステップSa1において主制御部10gは、その直前に検出された例えば図4に示すようなN点の呼吸レベルに基づいて呼吸レベルのピーク値を複数検出する。Nは任意の整数であって良いが、複数のピーク値を検出可能とするために、N点の呼吸レベルを測定するのに要する時間内に複数の呼吸周期を含む必要がある。
呼吸レベルのピーク値は、実際に検出された呼吸レベルの中から、前後の呼吸レベルのいずれよりも大きな呼吸レベルとして検出することができる。すなわち、N点の呼吸レベルのそれぞれについて、その前後1つずつの呼吸レベルと比較し、前後1つずつの呼吸レベルのいずれよりも高い呼吸レベルをピーク値とする。なお、1呼吸周期内において検出される呼吸レベルの点数が十分に多いならば、前後複数ずつの呼吸レベルとの比較を行うことによって、ピーク値検出の精度を向上することもできる。
図5は図4に示すように実際に検出された呼吸レベルのうちからピーク値を検出した様子を示す図である。図5では検出されたピーク値を白丸で表している。
ただし、図2に示すようなシーケンスを採用している場合、呼吸レベルの検出は1心拍につき1回しか行われていない。つまり呼吸レベルの検出は、1回の呼吸について数回しか行われておらず、呼吸レベルのピーク値が実際に検出される保証はない。このため上記のような方法は、処理は簡単であるが、検出されたピーク値の誤差が大きくなってしまう恐れがある。
そこで、ピーク値の誤差を小さくするために、多項式近似やスプライン関数などを用いた補間によってピーク値を検出しても良い。
図6は図4に示すように実際に検出された呼吸レベルに基づいて補間によってピーク値を検出した様子を示す図である。図6では検出されたピーク値を白丸で表しており、そのうちの補間によって検出された値は破線で表している。
なお、図7に示すようなシーケンスを採用することによって呼吸レベルの検出頻度を増大させても良い。このようにして呼吸レベルの検出頻度を増大させれば、上記のいずれの方法によりピーク値を検出する場合であってもピーク値の誤差を減少できる。
図7に示すシーケンスでは、1心拍内にMPPが複数回収集される。複数のMPPは、イメージング領域のデータ収集期間直前に収集される主MPPと、データ収集期間を避けかつ主MPPとは別のタイミングで収集される副MPPとに分類される。副MPPは、イメージング領域のデータ収集期間を除く期間であれば、主MPPの前、後のいずれに収集されても良い。例えば主MPPの前に複数の副MPPを収集しても良い。また1心拍内で複数のMPP(副MPPだけでなく主MPPを含む)を等間隔に収集するようにしても良い。この場合、等間隔に設定された複数のMPPのいずれかがイメージング領域のデータ収集期間に含まれる場合は、そのMPPは収集しないようにする。
ステップSa2において主制御部10gは、ステップSa1で検出した複数のピーク値の平均値(以下、平均ピーク値と称する)を求める。
ステップSa3において主制御部10gは、ステップSa2で求めた平均ピーク値が許容範囲内であるか否かを確認する。
平均ピーク値が許容範囲内であるならば、主制御部10gはそのまま図3の処理を終了する。したがってこの場合には、許容範囲は変更されない。
平均ピーク値が許容範囲外であるならば、主制御部10gはステップSa3からステップSa4へ進む。ステップSa4において主制御部10gは、平均ピーク値に基づいて許容範囲を変更する。
図8は新たな許容範囲を決定する様子の一例を示す図である。
この図8に示す例では、平均ピーク値に規定値aを加えた値を上限閾値USLとし、平均ピーク値から規定値aを減じた値を下限閾値LSLとする。規定値aは、初期に設定された許容範囲の幅の1/2である。従ってこの図8に示す例では、許容範囲の幅は変化させずに、中心レベルのみを新たに求められた平均ピーク値に併せるように許容範囲がシフトされる。
図9は新たな許容範囲を決定する様子の別の一例を示す図である。
この図9に示す例では、平均ピーク値に規定値bを加えた値を上限閾値USLとし、平均ピーク値から規定値bを減じた値を下限閾値LSLとする。規定値a,bは、初期に設定された許容範囲に対して係数Ca,Cbを乗じた値である。係数Ca,Cbは、Ca<Cbとなるように予め定められている。従ってこの図9に示す例では、許容範囲の幅は変化させずに、中心レベルのみを新たに求められた平均ピーク値に併せるように許容範囲がシフトされることは図8に示す例と同様である。ただし図9に示す例では、平均ピーク値から下限閾値LSLまでのマージンが平均ピーク値から上限閾値USLまでのマージンよりも大きくなるように許容範囲が設定される。係数Ca,Cbは、固定値であっても良いし、ユーザが任意に指定した値としても良い。
この図9に示す方法を採用すると、この後に検出される呼吸レベルが許容範囲内となる確率を図8に示す方法を採用する場合に比べて高めることができ、検査効率を向上できる。
かくして、許容範囲は呼吸レベルの変化に応じて例えば図10に示すように変更される。
このように許容範囲を変更することにより、図10に示すように一旦は許容範囲に入らなくなった呼吸レベルが再度許容範囲に入るようにすることができる。従って、撮像を継続することが可能となる。
なお、この第1の実施形態は、自然呼吸下での撮像、息止め撮像、あるいはマルチブレスホールド撮像のいずれにおいても適用可能である。
息止め撮像およびマルチブレスホールド撮像においては、従来は被検体が呼吸レベルが許容範囲内に納まるように息止めをする必要がある。そして、呼吸レベルが許容範囲外にある状態で息止めがなされると、その息止め期間には有効なデータを収集することができない。しかしながら第1の実施形態とマルチブレスホールド撮像を併用すれば、息止めがなされた呼吸レベルに応じて許容範囲が変更されるために、息止めが行われさえすればデータ収集を行うことが可能となる。これにより、撮像時間の短縮を図ることが可能である。また被検者は許容範囲を気にせずに息止めを行うことが可能になる。さらには、このような撮像時間の短縮と息止めの自由度向上との結果として、被検者の負担を大幅に軽減できる。
ただしこの場合、Nの値が大きい程に息止めされてから許容範囲が変更されるまでのタイムラグが大きくなってしまう。すなわち、息止め期間におけるデータ収集を行えない無駄時間の割合が大きくなってしまう。このため、Nの値は、自然呼吸下での撮像を行う場合に比べて息止め撮像またはマルチブレスホールド撮像を行う場合には小さく設定することが好ましい。
息止め撮像またはマルチブレスホールド撮像を採用すれば、呼吸に伴う心臓の位置変化がほとんど生じない状態でデータ収集を行うことができるので、このように収集されたデータからは精度の高い画像を再構成できる。
またマルチブレスホールド撮像の場合には、間欠的な息止め期間のみにデータ収集のための動作を行い、自然呼吸期間にはデータ収集のための動作を行わないようにしても良いし、呼吸状態に拘わらずにデータ収集のための動作を継続しても良い。ただし、後者によれば、RF励起が連続的に行われるので、再構成画像のコントラストが安定する。
また、息止め期間内で呼吸レベルが許容範囲内にある場合に収集されたデータのみを画像再構成に有効なデータとしても良いし、息止め期間であるか否かに拘わらずに呼吸レベルが許容範囲内にある場合に収集されたデータを画像再構成に有効なデータとしても良い。ただし後者によれば、息止め期間どうしの間の自然呼吸期間にも画像再構成に有効なデータを収集することができることになり、撮像時間を短縮可能である。
ところで、息止め撮像またはマルチブレスホールド撮像においては、音声発生装置を用いて息止め開始を被検者に指示することがある。この場合には、音声発生装置の動作に連動して許容範囲の変更のための処理を実行することにより、許容範囲の変更を速やかに行うことが可能となる。
続いて、第1の実施形態におけるいくつかの工夫について説明する。
(1) 撮像範囲の調整は前述したように、検出した横隔膜の位置の所定の基準位置からのずれ量を測定し、このずれ量を補償するように行われる。上記のずれ量の測定は例えば、基準撮像範囲が設定された際に呼吸レベルを検出するために得られたフーリエ変換信号を基準信号として保持しておき、データ収集を行う毎にその際に呼吸レベルを検出するために得られたフーリエ変換信号と上記の基準信号とを図11に示すように比較することにより上記のずれ量を算出することが行われる。なお図11においては、基準信号を実線により、データ収集を行う際のフーリエ変換信号を一点鎖線により表している。またずれ量を測定するために具体的には、エッジ検出法やクロスコリレーション法などの周知の方法が利用される。
具体的には例えば、初期設定された撮像範囲を、ずれ量に応じた移動量だけ移動させた範囲として調整後の撮像範囲を設定すれば良い。この場合、許容範囲を変更しても、上記の基準位置は変更しない。つまり、許容範囲を変更しても、基準信号の再取得は行わない。しかし、許容範囲を変更する毎に、基準信号の再取得を行って、基準位置を更新しても良い。ただしこの場合には、基準位置の更新の前後において、基準位置と初期設定された撮像範囲との位置関係が変わってしまう。そこで基準位置を更新した場合には、ずれ量と移動量との対応関係を変更する。
なお、横隔膜の移動に同期して心臓の位置が変化するが、横隔膜の移動量と心臓位置の変化量とは必ずしも一致しない。従って、移動量は、ずれ量に係数を乗じて求められる。すなわち、基準位置が変更されていない初期状態における移動量は例えば、求められたずれ量に予め定められた係数を乗じることによって求められる。しかし、基準位置を変更した後には、最新の基準位置の初期の基準位置からの移動量を求められたずれ量に加算して求まる値に予め定められた係数を乗じることによって求められる。
ちなみにここでの係数は、呼吸レベルに応じて変更しても良い。具体的には、呼吸レベルが中程度である場合に比べて、呼吸レベルが高い場合および低い場合には、周囲の臓器の影響により心臓の位置の変化量が小さくなるので、このような関係を考慮して呼吸レベルに応じて係数を変更するのである。
(2) 心臓などの一部の撮像対象部位は、呼吸レベルに応じて位置が変化するのみならず、その形状も変化する。例えば心臓は、横隔膜がより下方に位置するほど大きくなる。このため、許容範囲の変更前後では、それぞれ異なる形状の撮像対象部位に関するデータ収集が行われることになる。これは、撮像対象部位の形状の変化率が小さい場合や、画質を重視しない場合には何ら対策しなくても良い。しかしながら撮像対象部位の形状の変化率が大きい場合や、画質を重視する場合には、対策を講じることが望ましい。
この対策の1つは、各データが収集された際の許容範囲のずれ量に応じた比率で、各データに拡大・縮小、あるいはアフィン変換などを施したのちに、これら処理後のデータに基づいて画像を再構成する。拡大・縮小、あるいはアフィン変換などは、例えば再構成部10cまたは主制御部10gで行うことができる。
(3) 呼吸変動の状態が途中で早くなった場合等にも対応できるように、平均ピーク値を求めるために参照する呼吸レベルの数Nは、呼吸変動の程度に応じて変化させても良い。すなわち、平均ピーク値を求めるために参照する呼吸レベルの数を、例えば図12に示すような呼吸変動が小さいときをNa、例えば図13に示すような呼吸変動が大きいときをNbと表すならば、Na>Nbとする。これを実現するためには、主制御部10gは呼吸変動の程度を表す指標値を求める。そしてこの指標値とあらかじめ定めた閾値との比較により、NaおよびNbのいずれかを採用することとする。Na、Nbおよび閾値は、MRI装置100の設計者または使用者によって任意に定められて良い。呼吸変動は具体的には、呼吸の深さの変化、呼吸の平均レベルの変化、あるいは呼吸数の変化などが含まれる。呼吸の深さの変化の指標値としては、例えば予め定められた期間に検出される呼吸レベルの分散を用いることができる。呼吸の平均レベルの変化の指標値としては、例えば予め定められた2つの期間のそれぞれにおける呼吸レベルの平均値または分散の差分値を用いることができる。呼吸数の変化の指標値としては、例えば単位時間内に検出されるピークの数を用いることができる。もちろん、平均ピーク値を求めるために参照する呼吸レベルの数の候補をM個(Mは3以上の整数)と、閾値をM−1個定めておき、平均ピーク値を求めるために参照する呼吸レベルの数を3段階以上に変更することも可能である。あるいは、指標値に応じてNの値を決定する式に基づいてNの値を求めるようにしても良い。
(第2の実施形態)
第2の実施形態において主制御部10gは、次のような複数の機能を備える。なおこれら複数の機能は、主制御部10gが備えるプロセッサにプログラムを実行させることによって実現できる。
上記の機能の1つは、モニタ用NMR信号をデータ収集部10bに取得させるように関係各部を制御する。上記の機能の1つは、データ収集部10bにより取得されたモニタ用NMR信号に基づいて被検体200の呼吸レベルを検出する。上記の機能の1つは、再構成用NMR信号を、検出された呼吸レベルが許容範囲内であるときにデータ収集部10bに収集させるように関係各部を制御する。上記の機能の1つは、モニタ用NMR信号に基づいて被検体200の横隔膜の位置を検出する。上記の機能の1つは、上記の検出した横隔膜の位置の基準位置からのずれ量を測定する。上記の機能の1つは、再構成用NMR信号を収集する範囲を、上記の測定したずれ量に応じた移動量だけ移動させるように関係各部を制御する。上記の機能の1つは、上記の検出された呼吸変動に基づいて許容範囲の幅を変更する。
次に第2の実施形態のMRI装置100の動作について説明する。
第2の実施形態における動作は、多くの点で第1の実施形態と同様である。そして第2の実施形態における動作が第1の実施形態と異なるのは、許容範囲の変更法である。
第1の実施形態にて説明したような撮像を行うのと並行して主制御部10gは、図3に示すような処理を行うのに代えて、呼吸変動の程度を表す指標を求める。この指標としては、予め定められた期間に検出される呼吸レベルの分散や、予め定められた2つの期間のそれぞれにおける呼吸レベルの平均値または分散の差分値などを用いることができる。
そして主制御部10gは、求めた指標の大きさに応じて許容範囲の幅を変化させる。具体的には、図14および図15に示すように、呼吸変動が小さいときの許容範囲に比べて呼吸変動が大きいときの許容範囲の幅を大きくする。
この第2の実施形態によれば、呼吸変動が小さいときには撮像範囲の調整精度を高めつつ、呼吸変動が大きくなったときにもデータ収集を継続することが可能となる。
この第2の実施形態は、画質よりも検査効率を重視する場合に有用である。
(第3の実施形態)
第3の実施形態において主制御部10gは、次のような複数の機能を備える。なおこれら複数の機能は、主制御部10gが備えるプロセッサにプログラムを実行させることによって実現できる。
上記の機能の1つは、モニタ用NMR信号をデータ収集部10bに取得させるように関係各部を制御する。上記の機能の1つは、データ収集部10bにより取得されたモニタ用NMR信号に基づいて被検体200の呼吸レベルを検出する。上記の機能の1つは、再構成用NMR信号を、検出された呼吸レベルが許容範囲内であるときにデータ収集部10bに収集させるように関係各部を制御する。上記の機能の1つは、モニタ用NMR信号に基づいて被検体200の横隔膜の位置を検出する。上記の機能の1つは、上記の検出した横隔膜の位置の基準位置からのずれ量を測定する。上記の機能の1つは、再構成用NMR信号を収集する範囲を、上記の測定したずれ量に応じた移動量だけ移動させるように関係各部を制御する。上記の機能の1つは、上記の検出された呼吸変動に基づいて許容範囲の幅を変更する。
次に第3の実施形態のMRI装置100の動作について説明する。
第3の実施形態における動作は、多くの点で第1および第2の実施形態と同様である。そして第3の実施形態における動作が第1および第2の実施形態と異なるのは、許容範囲の変更法である。
第3の実施形態において主制御部10gは、求めた指標の大きさに応じて許容範囲の幅を変化させる。具体的には、図16および図17に示すように、呼吸変動が小さいときの許容範囲に比べて呼吸変動が大きいときの許容範囲の幅を小さくする。
この第3の実施形態によれば、呼吸変動が大きくなったときに、呼吸レベルが大幅に異なる状態のそれぞれでのデータ収集が行われることを防ぐことができる。
この第3の実施形態は、検査効率よりも画質を重視する場合に有用である。
(第4の実施形態)
第4の実施形態において主制御部10gは、次のような複数の機能を備える。なおこれら複数の機能は、主制御部10gが備えるプロセッサにプログラムを実行させることによって実現できる。
上記の機能の1つは、モニタ用NMR信号をデータ収集部10bに取得させるように関係各部を制御する。上記の機能の1つは、データ収集部10bにより取得されたモニタ用NMR信号に基づいて被検体200の呼吸レベルを検出する。上記の機能の1つは、再構成用NMR信号を、検出された呼吸レベルの変化速度が所定以下であるときにデータ収集部10bに収集させるように関係各部を制御する。
次に第4の実施形態のMRI装置100の動作について説明する。
第4の実施形態においても、第1の実施形態と同様に例えば図2に示すシーケンスが適用される。
そして主制御部10gは、MPPが取得される毎に、図18に示す処理を実行する。
ステップSb1において主制御部10gは、横隔膜の速度を計測する。具体的には、まず新たに取得されたMPPに基づいて現在の呼吸レベルを検出する。そして主制御部10gは、ここで検出した呼吸レベルの過去に検出した呼吸レベルからの変化の様子に基づいて現在の横隔膜の速度を計測する。具体的には、連続して検出された2つの呼吸レベルをLi,Li+1と表し、かつこれら2つの呼吸レベルLi,Li+1が検出されたタイミングの時間差をΔtと表す場合、横隔膜の速度Vは次式により算出できる。
V=(Li+1−Li)/Δt
なお、図2に示すシーケンスを採用している場合には、Δtは心電図におけるR−R間隔に相当する。
ステップSb2において主制御部10gは、ステップSb1で計測した速度が規定速度以下であるか否かを確認する。規定速度は、横隔膜の最大速度よりも十分小さな任意な値で予め定められる。
横隔膜速度が規定速度以下であったならば、主制御部10gはステップSb2からステップSb3へ進む。そしてステップSb3において主制御部10gは、再構成用NMR信号をデータ収集部10bに収集させるように関係各部を制御する。
しかしながら、横隔膜速度が規定速度以下ではなかったならば、主制御部10gは再構成用NMR信号の収集を行うことなく図18の処理を終了する。
かくして、MPPから求まる現在の横隔膜速度が十分に小さい場合にのみ、その直後のデータ収集期間におけるデータ収集が行われることになる。ここで横隔膜の速度は、呼吸レベルがピークとなるときに0になる。従って、呼吸レベルがピーク近辺にあるときにのみデータ収集が行われることになる。このような動作は、図19に示すように呼吸レベルの変化に応じて閾値SLが変更されつつ、この閾値SLを呼吸レベルが上回る場合にのみデータ収集が行われるのと等価である。
このように第4の実施形態によれば、呼吸レベルが変化しても撮像を継続することが可能である。
(第5の実施形態)
第5の実施形態において主制御部10gは、次のような複数の機能を備える。なおこれら複数の機能は、主制御部10gが備えるプロセッサにプログラムを実行させることによって実現できる。
上記の機能の1つは、被検体200の呼吸レベルを検出するためのNMR信号(以下、モニタ用NMR信号と称する)をデータ収集部10bに取得させるように関係各部を制御する。上記の機能の1つは、データ収集部10bにより取得されたモニタ用NMR信号に基づいて被検体200の呼吸レベルを検出する。上記の機能の1つは、画像を再構成するためのNMR信号(以下、再構成用NMR信号と称する)を、検出した呼吸レベルが許容範囲内であるときにデータ収集部10bに収集させるように関係各部を制御する。上記の機能の1つは、検出した呼吸レベルについて被検体200の呼吸動作における1周期内でのピーク値を繰り返し検出する。上記の機能の1つは、第1の期間(後述するN2心拍期間)に検出したピーク値の平均値に基づいて許容範囲を設定する。上記の機能の1つは、複数の第2の期間(例えば、連続した2つのピーク値が検出される期間)のそれぞれに関して、当該第2の期間内に検出した複数のピーク値に基づいてピーク値の変動量を算出する。上記の機能のもう1つは、算出した変動量が第3の期間(後述するN3心拍期間)中において基準値を超える頻度に応じて第1の期間の長さを設定する。
次に第5の実施形態のMRI装置100の動作について説明する。
第5の実施形態においても、撮像には第1の実施形態と同様に例えば図2に示すシーケンスが適用される。
そして撮像を行うのと並行して主制御部10gは、図20に示すような処理を行う。
ステップSc1において主制御部10gは、変数N2を予め定められた初期値に初期化するとともに、ピーク値の検出を開始する。変数N2は、ここではN2fast、N2middleおよびN2slowの3つの値を取り得ることとする。ただし、N2fast<N2middle<N2slowなる関係にある。この場合に変数N2の初期値は、例えばN2fast、N2middleおよびN2slowのいずれとしても良い。ピーク値の検出のための処理は、第1の実施形態と同様であるので、その説明は省略する。なお、ピーク値検出のために参照する呼吸レベルの点数をN1と表すとき、N1<N2の関係が常に成り立つように変数N2を定める。
そしてピーク値の検出を行いながら、これと並行して主制御部10gは以下の処理を行う。
ステップSc2において主制御部10gは、変数Ncと変数Nrをともに0にクリアする。
ステップSc3において主制御部10gは、このステップSc3に移行してから最初にR波検出信号が入力された時刻を記憶部10dまたは内部メモリに記録するとともに、R波検出回数のカウントを開始する。R波検出回数のカウントは、次からのR波検出信号が入力される毎に、変数Nrを1つずつカウントアップする処理である。この処理は、上記のピーク値検出の処理および以下に説明する処理に並行して行われる。
ステップSc4およびステップSc5において主制御部10gは、ステップSc1においてピーク値検出を開始してから2回目以降のピーク値を検出するか、あるいは変数Nrが予め定められた値N3以上になるのを待ち受ける。
2回目以降のピーク値を検出した場合に主制御部10gは、ステップSc4からステップSc6へ進む。そしてステップSc6において主制御部10gは、新たに検出したピーク値とそれよりも1つ前に検出したピーク値との差として求まるピーク値の変動量が予め定められた基準量よりも大きいか否かを確認する。
変動量が基準量よりも大きければ、主制御部10gはステップSc6からステップSc7へ進む。そしてステップSc7において主制御部10gは、変数Ncを1つカウントアップする。こののちに主制御部10gは、ステップSc7からステップSc8へ進む。なお、変動量が基準量未満であれば、主制御部10gはステップSc7をパスしてステップSc6からステップSc8に直接進む。かくして変数Ncは図21に示すように、連続して検出された2つのピーク値の差が基準値よりも大きくなるような大幅なピーク値変動、すなわち呼吸変動が生じた回数のカウント値となる。
ステップSc8において主制御部10gは、直近のN2心拍の間に検出したピーク値の平均値(以下、平均ピーク値と称する)を算出する。
ステップSc9において主制御部10gは、上記の平均ピーク値が許容範囲内であるか否かを確認する。
平均ピーク値が許容範囲外であるならば、主制御部10gはステップSc9からステップSc10へ進む。ステップSc10において主制御部10gは、平均ピーク値に基づいて許容範囲を変更する。このときの変更後の許容範囲の決定は、例えば第1の実施形態と同様に行って良い。そして主制御部10gは、ステップSc4およびステップSc5の待ち受け状態に戻る。
なお、平均ピーク値が許容範囲内であるならば、主制御部10gはステップSc10を行わずに、そのままステップSc4およびステップSc5の待ち受け状態に戻る。したがってこの場合には、許容範囲は変更されない。
さて、変数Nrが値N3以上になると、主制御部10gはステップSc5からステップSc11へ進む。そしてステップSc11において主制御部10gは、変動周波数Fbを次の式により算出する。
Fb=Nc/(Tend−Tstart)
なおここで、TendはNrがN3にカウントアップされるトリガとなったR波検出の時刻であり、TstartはステップSc3において記録しておいた時刻である。すなわち、R波がN3回だけ検出されるのに要する期間中において変動量が基準量を超えるようなピーク値の変動が生じた割合として変動周波数Fbが算出される。
ステップSc12において主制御部10gは、上記のように算出した変動周波数Fbに応じて変数N2を設定する。変動周波数Fbと変数N2との関係は、MRI装置100の設計者による設定値として、設置作業者や保守作業者による設定値として、あるいはユーザによる設定値としてなどのように任意に定められて良いが、基本的には変動周波数Fbが小さい程に変数N2が小さく設定されるようにする。例えば、TH1>TH2なる関係の2つの閾値TH1,TH2を定めておき、Fb>TH1ならばN2をN2fastとし、TH1≧Fb>TH2ならばN2をN2middleとし、FB≦TH2ならばN2をN2slowとする。なお、十分な制御特性が得られるように、N2fast、N2middleおよびN2slowのそれぞれの値は、閾値TH1,TH2との関係から、Fc=1/(THi×RR)>Fbなる関係を満たすように定めることが望ましい。ただし、iは1または2であり、RRはR波の検出間隔である。なお、呼吸レベルの変動周波数Fbが低い場合は、制御系としては高いFcのままでも良いが、一方で動き補正として理想的には、閾値の変動は無い方が良い。このため、制御系の応答特性Fcとしては十分な値を保ちつつ、許容範囲の変更頻度は必要最低限に留めることで、より最適な動き補正精度の確保が期待できる。
このように値N2を設定し終えたならば、主制御部10gはステップSc2に戻り、それ以降の処理を前述したのと同様に繰り返す。この結果、R波がN3回だけ検出されるのに要する期間毎に、その期間中における呼吸変動の頻度に応じて値N2が設定される。そしてステップSc8において主制御部10gは、最も新しく設定された値N2を適用する。この結果、呼吸変動の頻度に応じて平均ピーク値を算出するために参照されるピーク値の点数が変更される。
かくして第5の実施形態によれば、呼吸変動の頻度が高い程、より短い期間で算出した平均ピーク値に基づいて頻繁に許容範囲が変更される。このため、呼吸変動が頻繁であっても許容範囲の変更が呼吸変動に追従して行われることになり、許容範囲をより適切な範囲に維持することが可能となる。一方、呼吸が安定している場合には、いたずらに許容範囲を変更するのではなく、必要最低限の許容範囲変更頻度に留めることが可能となり、最適な動き補正精度を確保できる様になる。
(第6の実施形態)
第6の実施形態において主制御部10gは、次のような複数の機能を備える。なおこれら複数の機能は、主制御部10gが備えるプロセッサにプログラムを実行させることによって実現できる。
上記の機能の1つは、被検体200の呼吸レベルを検出するためのNMR信号(以下、モニタ用NMR信号と称する)をデータ収集部10bに取得させるように関係各部を制御する。上記の機能の1つは、データ収集部10bにより取得されたモニタ用NMR信号に基づいて被検体200の呼吸レベルを検出する。上記の機能の1つは、画像を再構成するためのNMR信号(以下、再構成用NMR信号と称する)を、検出した呼吸レベルが許容範囲内であるときにデータ収集部10bに収集させるように関係各部を制御する。上記の機能の1つは、検出した呼吸レベルについて被検体200の呼吸動作における1周期内でのピーク値を繰り返し検出する。上記の機能の1つは、上記の再構成用NMR信号を収集し始めた際またはそれ以前に検出された呼吸レベルに基づいて追尾可能範囲を設定する。上記の機能のもう1つは、呼吸レベルが複数個検出される期間におけるピーク値の平均値に基づいて、追尾可能範囲内で許容範囲を設定する。
次に第6の実施形態のMRI装置100の動作について説明する。
第6の実施形態においては、許容範囲を初期設定するためにプレスキャンを行う。このプレスキャンは、再構成用NMR信号を収集するためのメインスキャンを開始するのに先立って、モニタ用NMR信号を収集するために行われる。このプレスキャンについても、図2に示したシーケンスが、そのままで、あるいはデータ収集を省略して適用できる。なおこのプレスキャンを行う期間は、平均ピーク値を検出するために十分な点数の呼吸レベルを検出できる期間であれば任意であって良い。このプレスキャンは、既存のMRI装置にて他の目的で既に実施されているプレスキャンを流用しても良い。
このプレスキャンが行われている状態において主制御部10gは、図22に示す処理を実行する。
ステップSd1において主制御部10gは、プレスキャン中に検出された呼吸レベルの中から複数のピーク値を検出する。ピーク値の検出の手法は、第1の実施形態と同様であって良い。
そしてプレスキャンが終了したならば、主制御部10gはステップSd1からステップSd2へ進む。そしてステップSd2において主制御部10gは、プレスキャンの期間内に検出した複数のピーク値についての平均ピーク値を求める。
ステップSd3において主制御部10gは、上記の求めた平均ピーク値に基づいて許容範囲を設定する。この許容範囲の設定は、予め定めたルールに従って行えば良く、そのルールは任意で合って良い。例えば、平均ピーク値を中心レベルとした一定幅として許容範囲を定めることができる。すなわち、図3中のステップSa4の処理に関して前述した処理を適用できる。
ステップSd4において主制御部10gは、上記のように設定した許容範囲に基づいて追尾可能範囲を設定する。この追尾可能範囲の設定は、予め定めたルールに従って行えば良く、そのルールは任意で合って良い。例えば図24に示すように、許容範囲の上下に一定幅ずつのマージンを加えた範囲として追尾可能範囲を設定することができる。
さて、プレスキャンが終了して上記のように許容範囲および追尾可能範囲を設定し終えたならば、メインスキャンが開始される。メインスキャンは、RMC法を利用したWH MRCAにより行われ、例えば図2に示したシーケンスが適用される。
そしてメインスキャンが実行されるのと並行して主制御部10gは、所定のタイミング毎に図23に示すような処理を行う。この処理を行うタイミングは、任意であって良いが、例えば新たに呼吸レベルが検出される毎、あるいは一定の時間が経過する毎とすることが考えられる。なお図23において図3に示されるのと同一のステップには同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
主制御部10gは、ステップSa1乃至ステップSa3を第1の実施形態と同様に行う。そして平均ピーク値が許容範囲外であるならば、主制御部10gはステップSa3からステップSe1へ進む。
ステップSe1において主制御部10gは、ステップSa2で求めた平均ピーク値が図22中のステップSd4にて設定した追尾可能範囲内であるか否かを確認する。
平均ピーク値が追尾可能範囲内であるならば、主制御部10gはステップSe1からステップSa4へ進み、第1の実施形態と同様にして許容範囲を変更する。しかしながら平均ピーク値が追尾可能範囲外であるならば、主制御部10gはステップSe1からステップSa4を実行することなく図23の処理を終了する。
このように第6の実施形態においては、メインスキャンの開始直前の呼吸レベルに基づいて許容範囲および追尾可能範囲がそれぞれ設定される。そして許容範囲は、平均ピーク値が追尾可能範囲内である場合にのみその平均ピーク値に応じて変更され、平均ピーク値が追尾可能範囲外である場合には例えば図24に示すように許容範囲は変更されない。従って、メインスキャンの開始直前に対する呼吸レベルの変動量が平均ピーク値が追尾可能範囲外となるほどに大きくなった場合には、そのような平均ピーク値に応じての許容範囲の変更はなされない。このため、呼吸レベルのピーク値が許容範囲内とならない状態が継続されることとなって画像再構成に有効なNMR信号を収集できなくなる。しかしながら、上記のような呼吸レベルの大幅な変動が生じた状態にあっては心臓の形状がメインスキャンの開始当初と異なってしまう恐れがあるために、そのような状態で収集されるNMR信号は画像再構成に使用しないようにする。
この実施形態は、次のような種々の変形実施が可能である。
呼吸レベルの検出は、別手段により行っても良い。例えば、呼吸同期センサや呼気量計などを用いることができる。ただし呼吸同期センサは、被検体200の腹部に取り付けられ、当該腹部の物理的な動きに基づいて呼吸レベルを検出するものである。
第1の実施形態におけるステップSa3では、許容範囲とは異なる範囲を定めておき、この範囲内に平均ピーク値が入っているか否かを確認しても良い。
第1の実施形態におけるステップSa3は省略しても良い。すなわち、新たに求められた平均ピーク値がどのような値であろうとも、当該平均ピーク値に基づいて許容範囲を設定し直しても良い。
第1乃至第6の実施形態では、許容範囲が変更された様子を被検体200が認識可能とする画像を表示システム12に表示させても良い。このようにすれば、被検体200は変更されたのちの許容範囲に呼吸レベルのピークを合わせるように呼吸を調整することが可能となる。なお、このような表示を行わないのであれば、映像伝送システム11および表示システム12は設けなくても良い。
第2または第3の実施形態は、第1の実施形態と組み合わせて実施することが可能である。
第2および第3の実施形態をユーザの希望に応じて選択的に実施すれば、検査効率重視の動作と画質重視の動作とをユーザニーズに応じて使い分けることができて便利となる。
第5の実施形態は、完全に自動で値N2を選択するのでなく、操作者が予め決めたN2の基準点数を、被検体200の呼吸の変動状態に応じて選択する様にしても良い。このようにすることにより、被検体200の呼吸レベル変動の頻度が変化しても、良好に呼吸レベルの追尾が可能となる。また、いたずらに許容範囲を変化させるのではなく、必要最低限の許容範囲変更頻度に留めることが可能となり、最適な動き補正精度を確保できる様になる。
第5の実施形態では、値N2として設定され得る値は、2つまたは4つ以上としても良い。あるいは、値N2を変動周波数Fbの連続関数として設定しても良い。具体的には例えば、制御対象の周波数変化に対し、十分な制御系としてのf特を持つようにFc=1/(N2×RR)>Fbを設定する。
第6の実施形態において、追尾可能範囲はユーザの指定に応じて設定されても良い。または、ユーザの指定に応じて設定された許容範囲に基づいて主制御部10gが追尾可能範囲を自動設定しても良い。
第5および第6の実施形態においては、2つのピーク値が検出される期間を第2の期間としている。そして当該期間に検出された2つのピーク値の差として変動量を算出している。しかしながら第2の期間と変動量の算出方法は、適宜に変更が可能である。例えば、第2の期間を3つ以上のピーク値が検出される期間とし、当該期間に検出された3つ以上のピーク値のうちの最小値と最大値との差として変動量を算出しても良い。あるいは、第2の期間を2つの平均ピーク値が検出される期間とし、当該期間に検出された2つの平均ピーク値どうしの差として変動量を算出しても良い。
また第2の期間は、第5および第6の実施形態のように異なる第2の期間にの一部が時間的に重複するように設定されても良いが、異なる第2の期間が時間的に重複しないように設定されても良い。例えば第5および第6の実施形態では、n番目のピーク値とn+1番目のピーク値とが検出される期間と、n+1番目のピーク値とn+2番目のピーク値とが検出される期間とがそれぞれ第2の期間となり、それらの第2の期間は一部が時間的に重複する。しかしながら例えば、n番目のピーク値とn+1番目のピーク値とが検出される期間を先行する第2の期間とするならば、その次の第2の期間をn+2番目のピーク値とn+3番目のピーク値とが検出される期間として、それらの第2の期間が時間的に重複しないようにしても良い。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。