JP2010276825A - ネガ型平版印刷版原版及びその製造方法、並びに、平版印刷版の製版方法 - Google Patents

ネガ型平版印刷版原版及びその製造方法、並びに、平版印刷版の製版方法 Download PDF

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Abstract

【課題】赤外線レーザーによる直接描画が可能であり、高耐刷性及び耐汚れ性に優れ、明室下での取り扱いが簡便であるネガ型平版印刷版原版及びその製造方法、並びに、平版印刷版の製版方法を提供すること。
【解決手段】平均開口径0.5〜5μmの中波構造と平均開口径0.01〜0.2μmの小波構造とを重畳した構造の砂目形状を表面に有し、かつ有機ホスホン酸化合物により親水化処理を施した支持体上に、(A)赤外線吸収剤、(B)オニウム塩、(C)分子内にウレタン結合及び複数のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物、並びに、(D)ポリウレタンバインダーを含有する記録層と、保護層と、をこの順に有することを特徴とするネガ型平版印刷版原版及びその製造方法、並びに、前記ネガ型平版印刷版原版を使用した平版印刷版の製版方法。
【選択図】なし

Description

本発明は記録層を設けたネガ型平版印刷版原版、特に、CTP用の感光性平版印刷版に関するものである。さらに詳しくは、黄色灯や白灯などの明室での取り扱いが可能で、赤外線レーザー光に対して高感度であり、印刷時の汚れ難さ(耐汚れ性)と耐刷性との両立ができるネガ型平版印刷版原版に関するものである。
ネガ型平版印刷版は、一般に、粗面化処理されたアルミニウム板等の支持体上に感光性組成物を塗布し、これに所望の画像を露光し、露光部を重合あるいは架橋させて現像液に不溶化させ、未露光部を現像液で溶出するプロセスにて画像形成が行われる。従来このような目的に使用される組成物としては、光重合性組成物がよく知られており、一部が実用に供されている。また最近の可視光に高感度な光開始系技術を取り入れた高感度フォトポリマーは、可視レーザーによる直接製版に使用される領域まで高感度化が進み、いわゆるCTP版として普及している。
また、従来の平版印刷版原版としては、次のようなものが知られている。
特許文献1には、親水性支持体上に、i)カルボキシル基を0.4meq/g以上有するポリウレタン樹脂バインダーの少なくとも1種、ii)付加重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物の少なくとも1種、及びiii)光開始系の少なくとも1種を含有する感光層を有し、この感光層上に、水溶性の酸素遮断性物質を含有する保護層を有するレーザ走査露光用平版印刷版原版が開示されている。
特許文献2には、平均開口径0.5〜5μmの中波構造と平均開口径0.01〜0.2μmの小波構造とを重畳した構造の砂目形状を表面に有する平版印刷版用支持体を、有機ホスホン酸化合物により親水化処理した後に、付加重合可能なエチレン性不飽和化合物、重合開始剤及び高分子バインダーを含有する重合層と、酸素遮断性のオーバーコート層とを、前記支持体上に順次設けたことを特徴とする感光性平版印刷版が開示されている。
特許文献3には、(A)側鎖に炭素−炭素不飽和結合とを有する水又はアルカリ水溶液に可溶或いは膨潤するポリウレタン樹脂と、(B)ラジカル開始剤と、を含有する重合性組成物であって、前記(A)ポリウレタン樹脂が、カルボキシル基を有するポリウレタン樹脂に、炭素−炭素不飽和結合を有するエポキシ化合物を付加させて得られたものであることを特徴とする重合性組成物が開示されている。
特開平11−352691号公報 特開2006−91575号公報 特開2005−48143号公報
本発明の目的は、赤外線レーザーによる直接描画が可能であり、高耐刷性及び耐汚れ性に優れ、明室下での取り扱いが簡便であるネガ型平版印刷版原版及びその製造方法、並びに、平版印刷版の製版方法を提供することである。
上記目的は、下記<1>、<9>又は<11>に記載の手段により達成された。好ましい実施態様である<2>〜<8>及び<10>と共に以下に示す。
<1>平均開口径0.5〜5μmの中波構造と平均開口径0.01〜0.2μmの小波構造とを重畳した構造の砂目形状を表面に有し、かつ有機ホスホン酸化合物により親水化処理を施した支持体上に、(A)赤外線吸収剤、(B)オニウム塩、(C)分子内にウレタン結合及び複数のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物、並びに、(D)ポリウレタンバインダーを含有する記録層と、保護層と、をこの順に有することを特徴とするネガ型平版印刷版原版、
<2>前記有機ホスホン酸化合物がポリビニルホスホン酸である、上記<1>に記載のネガ型平版印刷版原版、
<3>前記支持体の親水化処理を施した部分にアルカリ土類金属の陽イオンが吸着している、上記<1>又は<2>に記載のネガ型平版印刷版原版、
<4>前記支持体の親水化処理を施した部分に吸着しているアルカリ土類金属の陽イオンの重量が0.5〜3.0mg/m2である、上記<3>に記載のネガ型平版印刷版原版、
<5>前記(D)ポリウレタンバインダーが側鎖に重合性基を有する、上記<1>〜<4>のいずれか1つに記載のネガ型平版印刷版原版、
<6>前記(B)オニウム塩がスルホニウム塩である、上記<1>〜<5>のいずれか1つに記載のネガ型平版印刷版原版、
<7>前記(A)赤外線吸収剤がシアニン色素である、上記<1>〜<6>のいずれか1つに記載のネガ型平版印刷版原版、
<8>前記保護層が、水溶性高分子化合物を含有している、上記<1>〜<7>のいずれか1つに記載のネガ型平版印刷版原版、
<9>支持体表面に硝酸を主体とする電解液を用いた第1の電気化学的粗面化処理を行う工程と、支持体表面に塩酸を主体とする電解液を用いた第2の電気化学的粗面化処理を行う工程と、粗面化された支持体表面に対して有機ホスホン酸化合物により親水化処理を行う工程と、(A)赤外線吸収剤、(B)オニウム塩、(C)分子内にウレタン結合及び複数のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物、並びに、(D)ポリウレタンバインダーを含有する記録層を形成する工程と、保護層を形成する工程と、をこの順で有する、上記<1>〜<8>のいずれか1つに記載のネガ型平版印刷版原版の製造方法、
<10>記録層を形成する前に、親水化処理された支持体表面をアルカリ土類金属の陽イオンを含む水溶液で水洗する工程をさらに含む、上記<9>に記載のネガ型平版印刷版原版の製造方法、
<11>上記<1>〜<8>のいずれか1つに記載のネガ型平版印刷版原版、又は、上記<9>若しくは<10>に記載の製造方法により製造されたネガ型平版印刷版原版を赤外線レーザーで画像露光する露光工程、及び、アルカリ珪酸塩と界面活性剤とを含有し、pHが11.5〜12.8の範囲にある現像液の存在下で非露光部の記録層を除去する現像工程、を含むことを特徴とする平版印刷版の製版方法。
本発明によれば、赤外線レーザーによる直接描画が可能であり、高耐刷性及び耐汚れ性に優れ、明室下での取り扱いが簡便であるネガ型平版印刷版原版及びその製造方法、並びに、平版印刷版の製版方法を提供することができた。
支持体の作製における電気化学的粗面化処理に用いられる交番波形電流波形図の一例を示すグラフである。 支持体の作製における交流を用いた電気化学的粗面化処理におけるラジアル型セルの一例を示す側面図である。 支持体の作製における陽極酸化処理に用いられる陽極酸化処理装置の概略図である。
(ネガ型平版印刷版原版及びその製造方法)
本発明のネガ型平版印刷版原版(以下、単に「平版印刷版原版」ともいう。)は、平均開口径0.5〜5μmの中波構造と平均開口径0.01〜0.2μmの小波構造とを重畳した構造の砂目形状を表面に有し、かつ有機ホスホン酸化合物により親水化処理を施した支持体上に、(A)赤外線吸収剤、(B)オニウム塩、(C)分子内にウレタン結合及び複数のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物、並びに、(D)ポリウレタンバインダーを含有する記録層と、保護層と、をこの順に有することを特徴とする。
本発明のネガ型平版印刷版原版の製造方法は、特に制限はないが、支持体表面に硝酸を主体とする電解液を用いた第1の電気化学的粗面化処理を行う工程と、支持体表面に塩酸を主体とする電解液を用いた第2の電気化学的粗面化処理を行う工程と、粗面化された支持体表面に対して有機ホスホン酸化合物により親水化処理を行う工程と、(A)赤外線吸収剤、(B)オニウム塩、(C)分子内にウレタン結合及び複数のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物、並びに、(D)ポリウレタンバインダーを含有する記録層を形成する工程と、保護層を形成する工程と、をこの順で有する製造方法であることが好ましい。
本発明について、詳細に説明する。
〔支持体〕
<表面の砂目形状>
本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体は、その表面が、平均開口径0.5〜5μmの中波構造と、平均開口径0.01〜0.2μmの小波構造とを重畳した構造の砂目形状を有することを特徴とする。
本発明において、平均開口径0.5〜5μmの中波構造は、主にアンカー(投錨)効果によって画像形成層を保持し、耐刷力を付与する機能を有する。中波構造のピットの平均開口径が0.5μm以上であれば、支持体表面の上層に設けられる画像形成層との密着性が良く、平版印刷版の耐刷性に優れる。また、中波構造のピットの平均開口径が5μm以下であれば、アンカーの役割を果たすピット境界部分の数の減少を抑えることができるので、やはり耐刷性の向上に有用である。
上記中波構造に重畳される平均開口径0.01〜0.2μmの小波構造は、主に耐汚れ性を改良する役割を果たす。中波構造に小波構造を組み合わせることで、印刷時に平版印刷版に湿し水が供給された場合に、その表面に均一に水膜が形成され、非画像部の汚れの発生を抑制することができる。小波構造のピットの平均開口径が0.01μm以上であると、水膜形成に大きな効果が得られ、小波構造のピットの平均開口径が0.2μm以下であると、上述した中波構造による耐刷性向上の効果を損なわない。
この小波構造については、ピットの開口径だけでなく、ピットの深さをも制御することで、更に良好な耐汚れ性を得ることができる。すなわち、小波構造の開口径に対する深さの比の平均を0.2以上にすることが好ましい。これにより均一に形成された水膜が表面に確実に保持され、非画像部の表面の耐汚れ性が長く維持される。
上記の中波構造と小波構造とを重畳した構造は、更に、平均波長5〜100μmの大波構造と重畳した構造であってもよい。この大波構造は、平版印刷版の非画像部の表面における保水量を増加させる効果を有する。この表面に保持された水が多いほど、非画像部の表面は雰囲気中の汚染の影響を受けにくくなり、印刷途中で版を放置した場合にも汚れにくい非画像部を得ることができる。また、大波構造が重畳されていると、印刷時に版面に与えられた湿し水の量を目視で確認することが容易となる。即ち、平版印刷版の検版性が優れたものとなる。
大波構造の平均波長が上記範囲であれば、中波構造との差による効果的な波形状を達成でき、さらに、露光現像後、大波構造に起因する露出された非画像部のぎらつきや、検版性の低下を抑制できる。なお、大波構造の平均波長は、10〜80μmであるのがより好ましい。
本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体において、支持体表面の、中波構造の平均開口径、小波構造の平均開口径及び開口径に対する深さの平均、並びに、大波の平均波長の測定方法は、以下の通りである。
(1)中波構造の平均開口径
電子顕微鏡を用いて支持体の表面を真上から倍率2,000倍で撮影し、得られた電子顕微鏡写真においてピットの周囲が環状に連なっている中波構造のピット(中波ピット)を少なくとも50個抽出し、その直径を読み取って開口径とし、平均開口径を算出する。大波構造を重畳した構造の場合も同じ方法で測定する。また、測定のバラツキを抑制するために、市販の画像解析ソフトによる等価円直径測定を行うこともできる。この場合、上記電子顕微鏡写真をスキャナーで取り込んでデジタル化し、ソフトウェアにより二値化した後、等価円直径を求める。本発明者が測定したところ、目視測定の結果とデジタル処理の結果とは、ほぼ同じ値を示した。大波構造を重畳した構造の場合も同様であった。
(2)小波構造の平均開口径
高分解能走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて支持体の表面を真上から倍率50,000倍で撮影し、得られたSEM写真において小波構造のピット(小波ピット)を少なくとも50個抽出し、その直径を読み取って開口径とし、平均開口径を算出する。
(3)小波構造の開口径に対する深さの比の平均
小波構造の開口径に対する深さの比の平均は、高分解能SEMを用いて支持体の破断面を倍率50,000倍で撮影し、得られたSEM写真において小波ピットを少なくとも20個抽出し、開口径と深さとを読み取って比を求めて平均値を算出する。
(4)大波構造の平均波長
触針式粗さ計で2次元粗さ測定を行い、ISO4287に規定されている平均山間隔Smを5回測定し、その平均値を平均波長とする。
<表面処理>
本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体は、後述するアルミニウム板に表面処理を施すことによって、上述した表面の砂目形状をアルミニウム板の表面に形成させたものであることが好ましい。
本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体は、例えば、アルミニウム板に粗面化処理及び陽極酸化処理を施して得ることができるが、この支持体の製造工程は、特に限定されず、粗面化処理及び陽極酸化処理以外の各種の工程を含んでいてもよい。
以下に示すように、上述した表面の砂目形状を形成させるための代表的方法として、アルミニウム板に機械的粗面化処理、アルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理及び電解液を用いた電気化学的粗面化処理を順次施す方法、アルミニウム板に機械的粗面化処理、アルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理及び異なる電解液を用いた電気化学的粗面化処理を複数回施す方法、アルミニウム板にアルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理及び電解液を用いた電気化学的粗面化処理を順次施す方法、アルミニウム板にアルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理及び異なる電解液を用いた電気化学的粗面化処理を複数回施す方法が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではない。
これらの方法において、前記電気化学的粗面化処理の後、更に、アルカリエッチング処理及び酸によるデスマット処理を施してもよい。これらの方法により得られた本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体は、上述したような2種以上の異なる周期の凹凸を重畳した構造が表面に形成されており、平版印刷版としたときの耐汚れ性及び耐刷性のいずれにも優れる。以下、表面処理の各工程について、詳細に説明する。
−機械的粗面化処理−
機械的粗面化処理は、電気化学的粗面化処理と比較してより安価に、平均波長5〜100μmの凹凸のある表面を形成することができるため、粗面化処理の手段として有効である。
機械的粗面化処理方法としては、例えば、アルミニウム表面を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、研磨球と研磨剤でアルミニウム表面を砂目立てするボールグレイン法、特開平6−135175号公報及び特公昭50−40047号公報に記載されているナイロンブラシと研磨剤で表面を砂目立てするブラシグレイン法を用いることができる。また、凹凸面をアルミニウム板に圧接する転写方法を用いることもできる。即ち、特開昭55−74898号公報、特開昭60−36195号公報、特開昭60−203496号公報の各公報に記載されている方法のほか、転写を数回行うことを特徴とする特開平6−55871号公報、表面が弾性であることを特徴とした特開平6−24168号公報に記載されている方法も適用可能である。
以下、機械的粗面化処理として好適に用いられるブラシグレイン法について説明する。ブラシグレイン法は、一般に、円柱状の胴の表面に、ナイロン(登録商標)、プロピレン、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂からなる合成樹脂毛等のブラシ毛を多数植設したローラ状ブラシを用い、回転するローラ状ブラシに研磨剤を含有するスラリー液を噴きかけながら、上記アルミニウム板の表面の一方又は両方を擦ることにより行う。上記ローラ状ブラシ及びスラリー液の代わりに、表面に研磨層を設けたローラである研磨ローラを用いることもできる。ローラ状ブラシを用いる場合、曲げ弾性率が好ましくは10,000〜40,000kg/cm2、より好ましくは15,000〜35,000kg/cm2であり、かつ、毛腰の強さが好ましくは500g以下、より好ましくは400g以下であるブラシ毛を用いる。ブラシ毛の直径は、一般的には、0.2〜0.9mmであることが好ましい。ブラシ毛の長さは、ローラ状ブラシの外径及び胴の直径に応じて適宜決定することができるが、一般的には、10〜100mmであることが好ましい。
研磨剤は、公知のものを用いることができる。例えば、パミストン、ケイ砂、水酸化アルミニウム、アルミナ粉、炭化ケイ素、窒化ケイ素、火山灰、カーボランダム、金剛砂等の研磨剤;これらの混合物を用いることができる。中でも、パミストン、ケイ砂が好ましい。特に、ケイ砂は、パミストンに比べて硬く、壊れにくいので粗面化効率に優れる点で好ましい。研磨剤の平均粒径は、粗面化効率に優れ、かつ、砂目立てピッチを狭くすることができる点で、3〜50μmであるのが好ましく、6〜45μmであるのがより好ましい。研磨剤は、例えば、水中に懸濁させて、スラリー液として用いる。スラリー液には、研磨剤のほかに、増粘剤、分散剤(例えば、界面活性剤)、防腐剤等を含有させることができる。スラリー液の比重は0.5〜2であるのが好ましい。
機械的粗面化処理に適した装置としては、例えば、特公昭50−40047号公報に記載された装置を挙げることができる。
−電気化学的粗面化処理−
電気化学的粗面化処理(以下、「電解粗面化処理」ともいう。)には、通常の交流を用いた電気化学的粗面化処理に用いられる電解液を用いることができる。中でも、塩酸又は硝酸を主体とする電解液を用いることで、支持体に特徴的な凹凸構造を表面に形成させることができる。
本発明における電解粗面化処理としては、陰極電解処理の前後に酸性溶液中での交番波形電流による第1の電気化学的粗面化処理及び第2の電気化学的粗面化処理を行うことが好ましい。陰極電解処理により、アルミニウム板の表面で水素ガスが発生してスマットが生成することにより表面状態が均一化され、その後の交番波形電流による電解処理の際に均一な電解粗面化が可能となる。この電解粗面化処理は、例えば、特公昭48−28123号公報及び英国特許第896,563号明細書に記載されている電気化学的グレイン法(電解グレイン法)に従うことができる。この電解グレイン法は、正弦波形の交流電流を用いるものであるが、特開昭52−58602号公報に記載されているような特殊な波形を用いて行ってもよい。また、特開平3−79799号公報に記載されている波形を用いることもできる。
電解槽及び電源については、種々提案されているが、米国特許第4203637号明細書、特開昭56−123400号公報、特開昭57−59770号公報、特開昭53−12738号公報、特開昭53−32821号公報、特開昭53−32822号公報、特開昭53−32823号公報、特開昭55−122896号公報、特開昭55−132884号公報、特開昭62−127500号公報、特開平1−52100号公報、特開平1−52098号公報、特開昭60−67700号公報、特開平1−230800号公報、特開平3−257199号公報の各公報等に記載されているものを用いることができる。
電解液である酸性溶液としては、硝酸、塩酸のほかに、米国特許第4,671,859号明細書、同第4,661,219号明細書、同第4,618,405号明細書、同第4,600,482号明細書、同第4,566,960号明細書、同第4,566,958号明細書、同第4,566,959号明細書、同第4,416,972号明細書、同第4,374,710号明細書、同第4,336,113号明細書、同第4,184,932号明細書の各明細書等に記載されている電解液を用いることもできる。
酸性溶液の濃度は0.5〜2.5重量%であるのが好ましいが、上記のスマット除去処理での使用を考慮すると、0.7〜2.0重量%であるのが特に好ましい。また、液温は20〜80℃であるのが好ましく、30〜60℃であるのがより好ましい。
塩酸又は硝酸を主体とする水溶液は、濃度1〜100g/Lの塩酸又は硝酸の水溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム等の硝酸イオンを有する硝酸化合物又は塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム等の塩酸イオンを有する塩酸化合物の少なくとも一つを1g/Lから飽和するまでの範囲で添加して使用することができる。また、塩酸又は硝酸を主体とする水溶液には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカ等のアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。好ましくは、塩酸又は硝酸の濃度0.5〜2重量%の水溶液にアルミニウムイオンが3〜50g/Lとなるように、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等を添加した液を用いることが好ましい。
更に、Cuと錯体を形成し得る化合物を添加して使用することによりCuを多く含有するアルミニウム板に対しても均一な砂目立てが可能になる。Cuと錯体を形成し得る化合物としては、例えば、アンモニア;メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、シクロヘキシルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)等のアンモニアの水素原子を炭化水素基(脂肪族、芳香族等)等で置換して得られるアミン類;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等の金属炭酸塩類が挙げられる。また、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム等のアンモニウム塩も挙げられる。温度は10〜60℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。
電気化学的粗面化処理に用いられる交流電源波は、特に限定されず、サイン波、矩形波、台形波、三角波等が用いられるが、矩形波又は台形波が好ましく、台形波が特に好ましい。台形波とは、図1に示したものをいう。この台形波において電流がゼロからピークに達するまでの時間(TP)は1〜3msecであるのが好ましい。上記範囲であると、アルミニウム板の進行方向と垂直に発生するチャタマークという処理ムラの発生を抑制でき、また、特に硝酸電解液を用いる場合、電解処理で自然発生的に増加するアンモニウムイオン等に代表される電解液中の微量成分の影響を少なくすることができ、均一な砂目立てが行われる。その結果、耐汚れ性により優れた平版印刷版原版が得られる。
台形波交流のduty比は1:2〜2:1のものが使用可能であるが、特開平5−195300号公報に記載されているように、アルミニウムにコンダクタロールを用いない間接給電方式においてはduty比が1:1のものが好ましい。台形波交流の周波数は0.1〜120Hzのものを用いることが可能であるが、50〜70Hzが設備上好ましい。50Hzよりも低いと、主極のカーボン電極が溶解しやすくなり、また、70Hzよりも高いと、電源回路上のインダクタンス成分の影響を受けやすくなり、電源コストが高くなる。
電解槽には1個以上の交流電源を接続することができる。主極に対向するアルミニウム板に加わる交流の陽極と陰極との電流比をコントロールし、均一な砂目立てを行うことと、主極のカーボンを溶解することとを目的として、図2に示したように、補助陽極を設置し、交流電流の一部を分流させることが好ましい。
図2において、11はアルミニウム板であり、12はラジアルドラムローラであり、13a及び13bは主極であり、14は電解処理液であり、15は電解液供給口であり、16はスリットであり、17は電解液通路であり、18は補助陽極であり、19a及び19bはサイリスタであり、20は交流電源であり、40は主電解槽であり、50は補助陽極槽である。整流素子又はスイッチング素子を介して電流値の一部を二つの主電極とは別の槽に設けた補助陽極に直流電流として分流させることにより、主極に対向するアルミニウム板上で作用するアノード反応にあずかる電流値と、カソード反応にあずかる電流値との比を制御することができる。主極に対向するアルミニウム板上で、陽極反応と陰極反応とにあずかる電気量の比(陰極時電気量/陽極時電気量)は、0.3〜0.95であるのが好ましい。
電解槽は、縦型、フラット型、ラジアル型等の公知の表面処理に用いる電解槽が使用可能であるが、特開平5−195300号公報に記載されているようなラジアル型電解槽が特に好ましい。電解槽内を通過する電解液は、アルミニウムウェブの進行方向に対してパラレルであってもカウンターであってもよい。
《硝酸電解》
硝酸を主体とする電解液を用いた電気化学的粗面化処理により、平均開口径0.5〜5μmの中波構造を形成することができる。ただし、電気量を比較的多くしたときは、電解反応が集中し、5μmを超えるハニカムピットも生成する。このような砂目を得るためには、電解反応が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和が、1〜1,000C/dm2であるのが好ましく、50〜300C/dm2であるのがより好ましい。この際の電流密度は20〜100A/dm2であるのが好ましい。また、高濃度又は高温の硝酸電解液を用いると、平均開口径0.2μm以下の小波構造を形成させることもできる。
《塩酸電解》
塩酸はそれ自身のアルミニウム溶解力が強いため、わずかな電解を加えるだけで表面に微細な凹凸を形成させることが可能である。この微細な凹凸は、平均開口径が0.01〜0.2μmであり、アルミニウム板の表面の全面に均一に生成する。このような砂目を得るためには電解反応が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和が、1〜100C/dm2であるのが好ましく、20〜70C/dm2であるのがより好ましい。この際の電流密度は20〜50A/dm2であるのが好ましい。
このような塩酸を主体とする電解液での電気化学的粗面化処理では、アノード反応にあずかる電気量の総和を400〜1,000C/dm2と大きくすることでクレーター状の大きなうねりを同時に形成することも可能であるが、この場合は平均開口径10〜30μmのクレーター状のうねりに重畳して平均開口径0.01〜0.4μmの微細な凹凸が全面に生成する。したがって、この場合、平均開口径0.5〜5μmの中波構造を重畳させられないため、本発明の特徴である支持体表面の砂目形状を作ることができない。
本発明に用いることができる支持体、特にアルミニウム支持体を製造するにあたっては、第1の電解粗面化処理として、上述した硝酸を主体とする電解液を用いた電解粗面化処理(硝酸電解)を行い、第2の電解粗面化処理として、上述した塩酸を主体とする電解液を用いた電解粗面化処理(塩酸電解)を行うのが好ましい。すなわち、特定表面形状を有する本発明に係るアルミニウム支持体は、粗面化処理として、硝酸電解及び塩酸電解を順次施し、更に陽極酸化処理を施して製造されることが好ましい。
特に、第1の電解粗面化処理として硝酸電解を行い、第2の電解粗面化処理として塩酸電解を行う場合において、(a)〜(e)の少なくとも一つを満たすようにすると、小波構造の開口径の標準偏差を0.2以下とすることが容易になるので好ましい。
(a)塩酸電解において、電解液の塩酸濃度を1〜8g/Lとする。
(b)塩酸電解において、電気量をアノード反応にあずかる電気量の総和で10〜100C/dm2とする。
(c)塩酸電解において、交流の周波数を100〜300Hzとする。
(d)塩酸電解において、交流の波形のTPを2msec以下とする。
(e)塩酸電解後に後述するアルカリエッチング処理を行い、該アルカリエッチング処理において、エッチング量を0.1〜0.5g/m2とする。
上記の硝酸、塩酸等の電解液中で行われる第1及び第2の電解粗面化処理の間に、アルミニウム板は陰極電解処理を行うことが好ましい。この陰極電解処理により、アルミニウム板表面にスマットが生成するとともに、水素ガスが発生してより均一な電解粗面化処理が可能となる。この陰極電解処理は、酸性溶液中で陰極電気量が好ましくは3〜80C/dm2、より好ましくは5〜30C/dm2で行われる。陰極電気量が上記範囲であれば、スマット付着量が過不足なく好ましい。また、電解液は上記第1及び第2の電解粗面化処理で使用する溶液と同一であっても異なっていてもよい。
−アルカリエッチング処理−
アルカリエッチング処理は、上記アルミニウム板をアルカリ溶液に接触させることにより、表層を溶解する処理である。
電解粗面化処理より前に行われるアルカリエッチング処理は、機械的粗面化処理を行っていない場合には、前記アルミニウム板(圧延アルミ)の表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜等を除去することを目的として、また、既に機械的粗面化処理を行っている場合には、機械的粗面化処理によって生成した凹凸のエッジ部分を溶解させ、急峻な凹凸を滑らかなうねりを持つ表面に変えることを目的として行われる。
アルカリエッチング処理の前に機械的粗面化処理を行わない場合、エッチング量は、0.1〜10g/m2であるのが好ましく、1〜5g/m2であるのがより好ましい。エッチング量が0.1g/m2以上あれば、表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜等の除去が十分に行われるため、後段の電解粗面化処理において均一なピット生成ができ、ムラの発生を抑えることができる。一方、エッチング量が、10g/m2以内であれば、経済的に好ましい。
アルカリエッチング処理の前に機械的粗面化処理を行う場合、エッチング量は、3〜20g/m2であるのが好ましく、5〜15g/m2であるのがより好ましい。エッチング量が3g/m2以上であれば、機械的粗面化処理等によって形成された凹凸を平滑化することができ、後段の電解処理において均一なピット形成をすることができる。また、印刷時の汚れを防止することができる。一方、エッチング量が20g/m2以下であれば、凹凸構造の消滅を防止することができる。
電解粗面化処理の直後に行うアルカリエッチング処理は、酸性電解液中で生成したスマットを溶解させることと、電解粗面化処理により形成されたピットのエッジ部分を溶解させることを目的として行われる。電解粗面化処理で形成されるピットは電解液の種類によって異なるためにその最適なエッチング量も異なるが、電解粗面化処理後に行うアルカリエッチング処理のエッチング量は、0.1〜5g/m2であるのが好ましい。硝酸電解液を用いた場合、塩酸電解液を用いた場合よりもエッチング量は多めに設定する必要がある。電解粗面化処理が複数回行われる場合には、それぞれの処理後に、必要に応じてアルカリエッチング処理を行うことができる。
アルカリ溶液に用いられるアルカリとしては、例えば、苛性アルカリ、アルカリ金属塩が挙げられる。具体的には、苛性アルカリとしては、例えば、苛性ソーダ、苛性カリが挙げられる。また、アルカリ金属塩としては、例えば、メタケイ酸ソーダ、ケイ酸ソーダ、メタケイ酸カリ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩;炭酸ソーダ、炭酸カリ等のアルカリ金属炭酸塩;アルミン酸ソーダ、アルミン酸カリ等のアルカリ金属アルミン酸塩;グルコン酸ソーダ、グルコン酸カリ等のアルカリ金属アルドン酸塩;第二リン酸ソーダ、第二リン酸カリ、第三リン酸ソーダ、第三リン酸カリ等のアルカリ金属リン酸水素塩が挙げられる。中でも、エッチング速度が速い点及び安価である点から、苛性アルカリの溶液、及び、苛性アルカリとアルカリ金属アルミン酸塩との両者を含有する溶液が好ましい。特に、苛性ソーダの水溶液が好ましい。
アルカリ溶液の濃度は、エッチング量に応じて決定することができるが、1〜50重量%であるのが好ましく、10〜35重量%であるのがより好ましい。アルカリ溶液中にアルミニウムイオンが溶解している場合には、アルミニウムイオンの濃度は、0.01〜10重量%であるのが好ましく、3〜8重量%であるのがより好ましい。アルカリ溶液の温度は20〜90℃であるのが好ましい。処理時間は1〜120秒であるのが好ましい。
アルミニウム板をアルカリ溶液に接触させる方法としては、例えば、アルミニウム板を、アルカリ溶液を入れた槽の中を通過させる方法、アルミニウム板を、アルカリ溶液を入れた槽の中に浸せきさせる方法、アルカリ溶液をアルミニウム板の表面に噴きかける方法が挙げられる。
−デスマット処理−
電解粗面化処理又はアルカリエッチング処理を行った後、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗い(デスマット処理)が行われる。用いられる酸としては、例えば、硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、フッ化水素酸、ホウフッ化水素酸が挙げられる。上記デスマット処理は、例えば、上記アルミニウム板を塩酸、硝酸、硫酸等の濃度0.5〜30重量%の酸性溶液(アルミニウムイオン0.01〜5重量%を含有する。)に接触させることにより行う。アルミニウム板を酸性溶液に接触させる方法としては、例えば、アルミニウム板を酸性溶液を入れた槽の中を通過させる方法、アルミニウム板を酸性溶液を入れた槽の中に浸せきさせる方法、酸性溶液をアルミニウム板の表面に噴きかける方法が挙げられる。デスマット処理においては、酸性溶液として、上述した電解粗面化処理において排出される硝酸を主体とする水溶液若しくは塩酸を主体とする水溶液の廃液、又は、後述する陽極酸化処理において排出される硫酸を主体とする水溶液の廃液を用いることができる。デスマット処理の液温は、25〜90℃であるのが好ましい。また、処理時間は、1〜180秒であるのが好ましい。デスマット処理に用いられる酸性溶液には、アルミニウム及びアルミニウム合金成分が溶け込んでいてもよい。
−陽極酸化処理−
以上のように処理されたアルミニウム板には、更に、陽極酸化処理が施される。陽極酸化処理はこの分野で従来行われている方法で行うことができる。この場合、例えば、硫酸濃度50〜300g/Lで、アルミニウム濃度5重量%以下の溶液中で、アルミニウム板を陽極として通電して陽極酸化皮膜を形成させることができる。陽極酸化処理に用いられる溶液としては、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸等を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
この際、少なくともアルミニウム板、電極、水道水、地下水等に通常含まれる成分が電解液中に含まれていても構わない。更には、第2、第3の成分が添加されていても構わない。ここでいう第2、第3の成分としては、例えば、Na、K、Mg、Li、Ca、Ti、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等の金属のイオン;アンモニウムイオン等の陽イオン;硝酸イオン、炭酸イオン、塩化物イオン、リン酸イオン、フッ化物イオン、亜硫酸イオン、チタン酸イオン、ケイ酸イオン、ホウ酸イオン等の陰イオンが挙げられ、0〜10,000ppm程度の濃度で含まれていてもよい。
陽極酸化処理の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度1〜80重量%、液温5〜70℃、電流密度0.5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間15秒〜50分であるのが適当であり、所望の陽極酸化皮膜量となるように調整される。
中でも、特開昭54−12853号公報及び特開昭48−45303号公報に記載されているように、電解液として硫酸溶液を用いるのが好ましい。電解液中の硫酸濃度は、10〜300g/L(1〜30重量%)であるのが好ましく、また、アルミニウムイオン濃度は、1〜25g/L(0.1〜2.5重量%)であるのが好ましく、2〜10g/L(0.2〜1重量%)であるのがより好ましい。このような電解液は、例えば、硫酸濃度が50〜200g/Lである希硫酸に硫酸アルミニウム等を添加することにより調製することができる。
硫酸を含有する電解液中で陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板と対極との間に直流を印加してもよく、交流を印加してもよい。アルミニウム板に直流を印加する場合においては、電流密度は、1〜60A/dm2であるのが好ましく、5〜40A/dm2であるのがより好ましい。連続的に陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板の一部に電流が集中していわゆる「焼け」が生じないように、陽極酸化処理の開始当初は、5〜10A/m2の低電流密度で電流を流し、陽極酸化処理が進行するにつれ、30〜50A/dm2又はそれ以上に電流密度を増加させるのが好ましい。連続的に陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板に、電解液を介して給電する液給電方式により行うのが好ましい。このような条件で陽極酸化処理を行うことによりポア(マイクロポア)と呼ばれる孔を多数有する多孔質皮膜が得られるが、その平均ポア径は5〜50nm程度であることが好ましく、また、その平均ポア密度は300〜800個/μm2程度であることが好ましい。
陽極酸化皮膜の量は1〜5g/m2であるのが好ましい。1g/m2以上であると版に傷が入りにくく、一方、5g/m2以下であると電力を抑えて製造することができ、経済的にも好ましい。陽極酸化皮膜の量は、1.5〜4g/m2であるのがより好ましい。また、アルミニウム板の中央部と縁部近傍との間の陽極酸化皮膜量の差が1g/m2以下になるように行うのが好ましい。
陽極酸化処理に用いられる電解装置としては、特開昭48−26638号公報、特開昭47−18739号公報、特公昭58−24517号公報の各公報等に記載されているものを用いることができる。中でも、図3に示す装置が好適に用いられる。
図3は、アルミニウム板の表面を陽極酸化処理する装置の一例を示す概略図である。陽極酸化処理装置410において、アルミニウム板416は、図3中矢印で示すように搬送される。電解液418が貯溜された給電槽412にてアルミニウム板416は給電電極420によって(+)に荷電される。そして、アルミニウム板416は、給電槽412においてローラ422によって上方に搬送され、ニップローラ424によって下方に方向変換された後、電解液426が貯溜された電解処理槽414に向けて搬送され、ローラ428によって水平方向に方向転換される。ついで、アルミニウム板416は、電解電極430によって(−)に荷電されることにより、その表面に陽極酸化皮膜が形成され、電解処理槽414を出たアルミニウム板416は後工程に搬送される。前記陽極酸化処理装置410において、ローラ422、ニップローラ424及びローラ428によって方向転換手段が構成され、アルミニウム板416は、給電槽412と電解処理槽414との槽間部において、前記ローラ422、424及び428により、山型及び逆U字型に搬送される。給電電極420と電解電極430とは、直流電源434に接続されている。
図3の陽極酸化処理装置410の特徴は、給電槽412と電解処理槽414とを1枚の槽壁432で仕切り、アルミニウム板416を槽間部において山型及び逆U字型に搬送したことにある。これによって、槽間部におけるアルミニウム板416の長さを最短にすることができる。よって、陽極酸化処理装置410の全体長を短くできるので、設備費を低減することができる。また、アルミニウム板416を山型及び逆U字型に搬送することによって、各槽412及び414の槽壁にアルミニウム板416を通過させるための開口部を形成する必要がなくなる。よって、各槽412及び414内の液面高さを必要レベルに維持するのに要する送液量を抑えることができるので、稼働費を低減することができる。
−封孔処理−
本発明においては、必要に応じて陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアを封じる封孔処理を行ってもよい。封孔処理は、沸騰水処理、熱水処理、蒸気処理、ケイ酸ソーダ処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム処理等の公知の方法に従って行うことができる。例えば、特公昭56−12518号公報、特開平4−4194号公報、特願平4−33952号明細書(特開平5−202496号公報)、特願平4−33951号明細書(特開平5−179482号公報)等に記載されている装置及び方法で封孔処理を行ってもよい。
<有機ホスホン酸化合物による親水化処理>
陽極酸化処理後又は封孔処理後は、有機ホスホン酸化合物による親水化処理を行う。有機ホスホン酸化合物による親水化処理としては、以下に述べる処理が好ましい。具体的には独国特許第1,134,093号明細書及び英国特許第1,230,447号明細書に記載されているポリビニルホスホン酸処理、特公昭44−6409号公報に記載されているホスホン酸処理が挙げられる。
ホスホン酸基又はリン酸基を側鎖に有する重合体又は共重合体が耐刷性向上の観点から好ましい。共重合体の場合、これらの基を有する重合成分を10〜90モル%有することが好ましく、20〜50モル%有することがより好ましい。さらに、共重合体が側鎖にエチレン性不飽和結合、及び/又はスルホン酸基を有することが好ましい。側鎖にエチレン性不飽和結合を有する重合成分を10〜90モル%有することが好ましく、15〜40モル%有することがより好ましい。
また、特開昭63−145092号公報に記載されているカルボキシ基又はヒドロキシ基を含む有機ホスホン酸、特開昭63−165183号公報に記載されているアミノ基とホスホン酸基を有する化合物、特開平5−246171号公報に記載されているフェニルホスホン酸等の脂肪族又は芳香族ホスホン酸処理を挙げることができる。
これらの中で、特にポリビニルホスホン酸による処理が、耐汚れ性及び耐刷性の観点から好ましい。
また、有機ホスホン酸化合物による親水化処理に使用する有機ホスホン酸化合物含有水溶液のpHは、2.0未満であることが好ましく、1.8以上2.0未満であることがより好ましい。
有機ホスホン酸化合物の支持体への付着量は、リン原子Pの付着量(P量)として、1.0〜40.0mg/m2付着させることが好ましい。2.0〜30.0mg/m2がより好ましい。1.0mg/m2以上であると印刷時に汚れ難く、40.0mg/m2以下であると耐刷性が良好となる。
なおP量は、例えば、蛍光X線分析装置を用いて検量線法によりP原子の量(mg/m2)として測定される。例えば、下記のように蛍光X線分析装置として理学電機工業(株)製RIX3000を用い、ピーク高さよりP原子の量を測定することができる。
装置:理学電機工業(株)製RIX3000
X線管球:Rh
測定スペクトル:P−Kα
管電圧:50kV
管電流:50mA
スリット:COARSE
分光結晶:RX4
検出器:F−PC
分析面積:30mmφ
ピーク位置(2θ):144.75deg.
バックグランド(2θ):140.70deg.,146.85deg.
積算時間:80秒/sample
<水洗処理>
上述した各処理の工程終了後には水洗を行うのが好ましい。
水洗には、純水、井水、水道水等を用いることができる。水洗水は二価の陽イオンを含む水溶液であることが好ましく、二価の陽イオンは、耐汚れ性、耐刷性の観点から、アルカリ土類金属の陽イオンが好ましく、カルシウム、マグネシウムの陽イオンがさらに好ましい。支持体に吸着される陽イオンの重量は、0.5〜3.0mg/m2が好ましく、1.0〜2.5mg/m2がより好ましく、1.5〜2.5mg/m2が更に好ましい。水洗処理後は、処理液の次工程への持ち込みを防ぐためにニップ装置を用いてもよい。
<アルミニウム板>
支持体の材料としては、公知のアルミニウム板を用いることができる。本発明に用いられるアルミニウム板は、寸度的に安定なアルミニウムを主成分とする金属であり、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる。純アルミニウム板のほか、アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板を用いることもできる。
本明細書においては、上述したアルミニウム又はアルミニウム合金からなる各種の基板をアルミニウム板と総称して用いる。前記アルミニウム合金に含まれてもよい異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等があり、合金中の異元素の含有量は10重量%以下である。
このように本発明に用いられるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、例えば、アルミニウムハンドブック第4版(1990年、軽金属協会発行)に記載されている従来公知の素材、例えば、JIS A1050、JIS A1100、JIS A1070、Mnを含むJIS A3004、国際登録合金 3103A等のAl−Mn系アルミニウム板を適宜利用することができる。また、引張強度を増す目的で、これらのアルミニウム合金に0.1重量%以上のマグネシウムを添加したAl−Mg系合金、Al−Mn−Mg系合金(JISA3005)を用いることもできる。更に、ZrやSiを含むAl−Zr系合金やAl−Si系合金を用いることもできる。更に、Al−Mg−Si系合金を用いることもできる。
Al−Mg系合金に関しては、特公昭62−5080号、特公昭63−60823号、特公平3−61753号、特開昭60−203496号、特開昭60−203497号、特公平3−11635号、特開昭61−274993号、特開昭62−23794号、特開昭63−47347号、特開昭63−47348号、特開昭63−47349号、特開昭64−1293号、特開昭63−135294号、特開昭63−87288号、特公平4−73392号、特公平7−100844号、特開昭62−149856号、特公平4−73394号、特開昭62−181191号、特公平5−76530号、特開昭63−30294号及び特公平6−37116号の各公報に記載されている。また、特開平2−215599号公報、特開昭61−201747号公報等にも記載されている。
本発明に用いられる支持体、好ましくはアルミニウム板の厚みは、0.1mm〜0.6mmであるのが好ましく、0.15mm〜0.4mmであるのがより好ましく、0.2mm〜0.3mmであるのが更に好ましい。この厚みは、印刷機の大きさ、印刷版の大きさ、ユーザーの希望等により適宜変更することができる。
支持体(アルミニウム板の場合には、上記の如く適宜表面処理を施されたアルミニウム板が好ましい。)上に、例えば、記録層を塗工し、次いで保護層を塗工することで、平版印刷版原版が形成されるが、記録層を塗工する前に必要に応じて有機又は無機の下塗層を設けてもよいし、特開平7−159983号公報に開示されているようなラジカルによって付加反応を起こし得る官能基を支持体表面に共有結合させるゾル−ゲル処理を施してもよい。
また、本発明の平版印刷版原版は、支持体上に前記有機ホスホン酸化合物による親水化処理を施した後に形成してもよい無機下塗層や有機下塗層の構成としては、以下に示す層が例示できる。
有機下塗層を形成する物質としては、水溶性の樹脂、例えば、ポリビニルホスホン酸、スルホン酸基を側鎖に有する重合体及び共重合体、ポリアクリル酸、黄色染料、アミン塩等が挙げられる。
具体的には、有機下塗層に用いられる有機化合物としては例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノエチルホスホン酸等のアミノ基を有するホスホン酸類、置換基を有してもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、ポリビニルホスホン酸、メチレンジホスホン酸及びエチレンジホスホン酸等の有機ホスホン酸、置換基を有してもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸及びグリセロリン酸等の有機リン酸、置換基を有してもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸及びグリセロホスフィン酸等の有機ホスフィン酸、グリシンやβ−アラニン等のアミノ酸類、及びトリエタノールアミンの塩酸塩等のヒドロキシル基を有するアミンの塩酸塩等から選ばれる。これらは二種以上混合して用いてもよい。
有機下塗層は次のような方法で設けることができる。すなわち、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトン等の有機溶剤若しくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液を支持体上に塗布、乾燥して設ける方法と、水又はメタノール、タノール、メチルエチルケトン等の有機溶剤若しくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液に、支持体を浸漬して上記有機化合物を吸着させ、しかる後、水等によって洗浄、乾燥して有機下塗層を設ける方法である。
前者の方法では、有機化合物の0.005〜10重量%の溶液を種々の方法で塗布できる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布等いずれの方法を用いてもよい。
また、後者の方法では、溶液の濃度は好ましくは0.01〜20重量%、より好ましくは0.05〜5重量%であり、浸漬温度は好ましくは20〜90℃、より好ましくは25〜50℃であり、浸漬時間は好ましくは0.1秒〜20分、より好ましくは2秒〜1分である。
これに用いる溶液は、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウム等の塩基性物質や、塩酸、リン酸等の酸性物質によりpHを調節することにより、pH1〜12の範囲で使用することもできる。また、平版印刷版原版の調子再現性改良のために、黄色染料を添加することもできる。
有機下塗層の乾燥後の被覆量は、2〜200mg/m2が好ましく、5〜100mg/m2がより好ましい。上記範囲であると、十分な耐刷性が得られる。
無機下塗層に用いられる物質としては、酢酸コバルト、酢酸ニッケル、フッ化チタン酸カリウム等の無機塩等が挙げられる。無機下塗層の設け方は、上記した有機下塗層と同様である。
〔記録層〕
特定平版印刷版原版における記録層(以下、「重合型記録層」又は「特定記録層」という場合がある。)は、必須成分として、(A)赤外線吸収剤、(B)オニウム塩、(C)分子内にウレタン結合及び複数のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物、及び(D)ポリウレタンバインダーを含有し、更に必要に応じて、着色剤や他の任意成分を含有する重合性ネガ型の記録層である。
特定記録層は、赤外光に感応するため、CTPに有用な赤外線レーザーにより記録可能である。記録層に含まれる赤外線吸収剤は、赤外線レーザーの照射(露光)に対し高感度で電子励起状態となり、かかる電子励起状態に係る電子移動、エネルギー移動、発熱(光熱変換機能)などが、記録層中に併存するオニウム塩に作用して、該オニウム塩に化学変化を生起させてラジカルを生成させる。
ラジカルの生成機構としては、赤外線吸収剤の光熱変換機能により発生した熱が、後述するオニウム塩(例えば、スルホニウム塩)を熱分解しラジカルを発生させる機構が挙げられる。そして、生成したラジカルにより重合性化合物が重合反応を起こし、露光部が硬化して画像部を形成する。
本発明の平版印刷版原版は、特定記録層が赤外線吸収剤を含有することにより、750nm〜1,400nmの波長を有する赤外線レーザー光での直接描画される製版に特に好適であり、従来の平版印刷版原版に比べ、高い画像形成性を発現することができる。
以下に、特定記録層を構成する各成分について説明する。
[(A)赤外線吸収剤]
特定記録層は、感度向上の観点から、700〜1,200nmに吸収極大を有する化合物として、赤外線吸収剤を含有する。赤外線吸収剤を含有することで、特定平版印刷版原版は赤外線波長域に感応性を有することになる。
本発明に用いられる赤外線吸収剤としては、入手容易な高出力レーザーへの適合性の観点から、波長760〜1,200nmに吸収極大を有する赤外線吸収性染料又は赤外線吸収性顔料であることが好ましい。
前記赤外線吸収性染料としては、市販の染料、及び、例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体、オキソノール染料、ジイモニウム染料、アミニウム染料、クロコニウム染料等の染料が挙げられる。
好ましい赤外線吸収性染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等の各公報に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等の各公報に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等の各公報に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号公報等に記載されているスクアリリウム色素、英国特許434,875号明細書に記載のシアニン染料等を挙げることができる。
また、米国特許第5,156,938号明細書記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号明細書記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号公報(米国特許第4,327,169号明細書)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号の各公報に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号公報に記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号明細書に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号公報、同5−19702号公報に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。
また、赤外線吸収性染料として好ましい別の例として、米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
これらの赤外線吸収性染料のうち好ましいものとしては、シアニン色素、フタロシアニン染料、オキソノール染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、チオピリリウム染料、ニッケルチオレート錯体が挙げられ、シアニン色素がより好ましく挙げられる。更に、下記式(a)で示されるシアニン色素は、本発明における記録層中で使用した場合に、高い重合活性を与え、且つ、安定性、経済性に優れるため最も好ましい。
Figure 2010276825
式(a)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−NArX 2、X2−L1又は以下に示す基を表す。ここで、ArXは炭素数6〜14の芳香族炭化水素基を表し、この芳香族炭化水素基は、ハロゲン原子、アルキル基、アリル基、アルケニル基、アルキニル基、シアノ基、カルボキシ基、ニトロ基、アミド基、エステル基、アルコキシ基、アミノ基、及び複素環基からなる群より選択される1以上の置換基を有していてもよく、これらの置換基は、前記置換基により置換されたものであってもよい。また、X2は酸素原子、硫黄原子、又は、−N(RX)−を示し、RXは水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表す。L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。
Figure 2010276825
前記式中、Xa -は後述するZa -と同様に定義され、Raは水素原子、アルキル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。記録層塗布液の保存安定性から、R1及びR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、また、R1とR2とは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることも好ましい。
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7及びR8は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za -は、対アニオンを示す。ただし、式(a)で示されるシアニン色素がその構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合は、Za -は必要ない。好ましいZa -は、記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及び、スルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
本発明において、好適に用いることのできる式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、特開2005−250158号公報の段落番号〔0155〕〜〔0157〕以下に例示するものの他、特開2001−133969号公報の段落番号〔0017〕〜〔0019〕、特開2002−40638号公報の段落番号〔0012〕〜〔0038〕、特開2002−23360号公報の段落番号〔0012〕〜〔0023〕に記載されたものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
その他の増感色素として、特開2005−250158号公報の段落番号〔0158〕〜〔0173〕に記載の化合物が挙げられる。
本発明において、赤外線吸収剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用することもできる。
本発明における(A)赤外線吸収剤としては、感度の観点からは、式(a)で示されるシアニン色素がより好ましく、式(a)で示されるシアニン色素の中でも、X1がジアリールアミノ基又はX2−L1であるシアニン色素が好ましく、ジアリールアミノ基を有するシアニン色素がさらに好ましい。
また、本発明における(A)赤外線吸収剤として、両末端のインドレニン部位に、電子求引性基又は重原子含有置換基を有するシアニン色素も好ましい。最も好ましくは、X1がジアリールアミノ基であり、両末端のインドレニン部位に電子求引性基を有するシアニン色素である。
(A)赤外線吸収剤は、記録層を構成する全固形分に対し、0.5〜5重量%添加されることが好ましい。この範囲において、露光による特性変化における良好な感度が得られ、十分な膜の均一性や強度が維持される。
[(B)オニウム塩]
特定記録層は、後述する(C)ウレタン結合及び複数のエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物の硬化反応を開始、進行させる機能を有する重合開始剤として、オニウム塩を含有する。本発明ではオニウム塩の中でも、特に、スルホニウム塩が好ましい。
本発明における重合開始剤として、好適に用いられるスルホニウム塩(スルホニウム塩重合開始剤)としては、下記式(I)で表されるスルホニウム塩が挙げられる。
Figure 2010276825
式(I)中、R11、R12及びR13は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。Z11-はハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、カルボキシレートイオン、及び、スルホン酸イオンからなる群より選択される対イオンを表し、好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、カルボキシレートイオン、及び、アリールスルホン酸イオンである。
以下に、式(I)で表されるスルホニウム塩の具体例は、特開2007−47742号公報の段落番号〔0205〕、〔0208〕〜〔0209〕に記載の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記したものの他、特開2002−148790公報、特開2002−148790公報、特開2002−350207公報、特開2002−6482公報に記載の特定の芳香族スルホニウム塩も好適に用いられる。
本発明においては、上記スルホニウム塩重合開始剤の他、他の重合開始剤(他のラジカル発生剤)を併用することができる。
他のラジカル発生剤としては、スルホニウム塩以外の他のオニウム塩、トリハロメチル基を有するトリアジン化合物、過酸化物、アゾ系重合開始剤、アジド化合物、キノンジアジド、オキシムエステル化合物、トリアリールモノアルキルボレート化合物などが挙げられる。
本発明において好適に用い得る他のオニウム塩としては、ヨードニウム塩及びジアゾニウム塩が挙げられる。本発明において、これらのオニウム塩は酸発生剤ではなく、ラジカル重合の開始剤として機能する。
本発明における他のオニウム塩としては、下記式(II)及び(III)で表されるオニウム塩が挙げられる。
Figure 2010276825
式(II)中、Ar21とAr22は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を示す。このアリール基が置換基を有する場合の好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。Z21-はZ11-と同義の対イオンを表す。
式(III)中、Ar31は、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、炭素原子数12個以下のアリールオキシ基、炭素原子数12個以下のアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のジアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のアリールアミノ基又は、炭素原子数12個以下のジアリールアミノ基が挙げられる。Z31-はZ11-と同義の対イオンを表す。
以下に、本発明において、好適に用いることのできる式(II)で示されるオニウム塩、及び、式(III)で示されるオニウム塩は、それぞれ特開2007−47742号公報の段落番号〔0202〕〜〔0203〕に記載の[OI−1]〜[OI−12]及び段落番号〔0204〕の記載の[ON−1]〜[ON−5]の具体例が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明において重合開始剤(ラジカル発生剤)として好適に用いることのできるオニウム塩の具体例としては、特開2001−133696号公報に記載されたもの等を挙げることができる。
なお、本発明に用いられるオニウム塩は、極大吸収波長が400nm以下であることが好ましく、360nm以下であることがより好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、平版印刷版原版の取り扱いを白灯下で実施することができる。
本発明におけるオニウム塩の総含有量は、感度、及び、印刷時の非画像部における汚れの発生の観点から、記録層を構成する全固形分に対し、0.1〜50重量%であることが好ましく、0.5〜30重量%であることがより好ましく、1〜20重量%であることが特に好ましい。
本発明におけるオニウム塩としては、スルホニウム塩重合開始剤を必須成分として含むことが好ましいが、これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上の重合開始剤を併用する場合は、スルホニウム塩重合開始剤のみを複数種用いてもよいし、スルホニウム塩重合開始剤と他の重合開始剤を併用してもよい。
スルホニウム塩重合開始剤と他の重合開始剤とを併用する場合の含有比(重量比)としては、100/1〜100/50が好ましく、100/5〜100/25がより好ましい。
また、重合開始剤は、他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。
本発明において、記録層に、高感度であるスルホニウム塩重合開始剤を用いた場合には、ラジカル重合反応が効果的に進行し、形成された画像部の強度が非常に高いものとなる。また、特定平版印刷版原版が記録層上に保護層を有する態様であれば、かかる保護層の酸素遮断機能とあいまって、高い画像部強度を有する平版印刷版を作製することができ、その結果、耐刷性が向上する。また、スルホニウム塩重合開始剤は、それ自身が経時安定性に優れていることから、作製された平版印刷版原版を保存した際にも、所望されない重合反応の発生を抑制することができる。
[(C)分子内にウレタン結合及び複数のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物]
(C)分子内にウレタン結合及び複数のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物(以下、「特定重合性化合物」という場合がある。)をエチレン性不飽和基の数が2の場合と、3以上の場合に分けて説明する。
分子内にウレタン結合と2つのエチレン性不飽和基を有する重合性化合物(以下、「2官能重合性化合物」という場合がある。)は、下記式(1)で表される。
X−R−U−A−U−R−X・・・(1)
前記式(1)中、Aはアルキレン基、アラルキレン基、アリレン基、又は、オキシアルキレン基を表し、Uはウレタン結合を表し、Xはそれぞれ独立に、メタクリロイル基、アクリロイル基、又は、ビニル基を表し、Rはそれぞれ独立に、二価の連結基、例えば、オキシアルキレン基、アルキレンオキシ基、又は、アラルキレン基を表す。
式(1)におけるAとしては、2,2,4−トリメチルヘキシル基、エチレンオキシド基、プロピレンオキシド基、シクロヘキシル基などが好ましい。
式(1)におけるXとしては、メタクリロイル基が好ましい。
式(1)において、Rで表されるオキシアルキレン基、アルキレンオキシ基、アラルキレン基における好ましい基は、Aで表されるオキシアルキレン基、アルキレンオキシ基、アラルキレン基における好ましい基と同様である。
2官能重合性化合物の具体例として、特開2006−276274号公報の段落番号〔0107〕〜〔0111〕に記載の重合性化合物(M−1〜M−39)を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
また、特定重合性化合物には、エチレン性不飽和結合を分子内に3つ以上含む構造でもよい。ウレタン結合と4つ以上のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物は、下記式(3)で表されるものが用いられる。
Figure 2010276825
式(3)中、nは2又は3を表す。Dは2価又は3価の基を表す。Uはウレタン結合を表し、Rはそれぞれ独立に、三価又は四価の炭素原子と水素原子とで構成される連結基あるいは炭素原子と水素原子と酸素原子とで構成される連結基を表す。Xはそれぞれ独立に、メタクリロイル基、アクリロイル基、又は、ビニル基を表す。
エチレン性不飽和基を分子内に4つ以上含む特定重合性化合物の具体例として、特開2006−276274号公報の段落番号〔0114〕〜〔0116〕に記載の重合性化合物(N−1〜N−25)を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
特定重合性化合物としては、以上の具体例の中でも、下記構造式(M−1)が好ましい。
Figure 2010276825
特定重合性化合物は、一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
これら特定重合性化合物の記録層の全固形分に対する添加量(総量)は、10〜60重量%が好ましく、20〜50重量%がより好ましく、30〜45重量%が更に好ましい。前記2官能重合性化合物の添加量が10〜60重量%であると、低感度となる場合や、記録層がべたつき、製造適性が劣る場合もない。
[(D)ポリウレタンバインダー]
本発明で用いられるポリウレタンバインダーは、特に制限はなく、公知のポリウレタン樹脂を用いることができるが、(i)ジイソシアネート化合物、(ii)少なくとも1つのカルボキシル基を有するジオール化合物、(iii)架橋性基を有するジイソシアネート化合物及び必要であれば(iv)カルボキシル基を有さないジオール化合物、を重付加反応させることにより得ることが好ましい。
また、本発明で用いられるポリウレタンバインダーとして、側鎖に重合性基(架橋性基)を有するポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。側鎖に架橋性基を導入することによって高耐刷性が得られる。
ここで架橋性基とは、ネガ型平版印刷版原版を露光した際に記録層中で起こるラジカル重合反応の過程でバインダーを架橋させる基のことである。このような機能の基であれば特に限定されないが、例えば、付加重合反応し得る官能基としてエチレン性不飽和結合基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。また光照射によりラジカルになり得る官能基であってもよく、そのような架橋性基としては、例えば、チオール基、ハロゲノ基、オニウム塩構造等が挙げられる。中でも、エチレン性不飽和基が好ましく、下記式(41)〜(43)で表される官能基が特に好ましい。
Figure 2010276825
前記式(41)において、Rl〜R3はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表すが、R1としては、好ましくは、水素原子又は置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、中でも、水素原子、メチル基がラジカル反応性の高いことから好ましい。また、R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基がラジカル反応性の高いことから好ましい。
前記式(41)において、Xは、酸素原子、硫黄原子、又はN(R12)−を表し、R12は、水素原子、又は1価の有機基を表す。ここで、R12は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、中でも、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基がラジカル反応性の高いことから好ましい。
ここで、アルキル基を置換する置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基などが挙げられる。
前記式(42)において、R4〜R8は、それぞれ独立に水素原子、1価の有機基を表すが、R4〜R8は、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基が好ましい。
4〜R8において、更に置換する置換基としては、式(41)における更に置換する置換基と同様のものが例示される。また、Yは、酸素原子、硫黄原子、又はN(R12)を表す。R12は、式(41)のR12の場合と同義であり、好ましい例も同様である。
前記式(43)において、R9としては、好ましくは、水素原子又は置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、中でも、水素原子、又はメチル基がラジカル反応性の高いことから好ましい。R10、R11は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基がラジカル反応性の高いことから好ましい。
ここで、R10、R11において、更に置換する置換基としては、一般式(41)における更に置換する置換基と同様のものが例示される。また、Zは、酸素原子、硫黄原子、N(R12)、又は置換基を有してもよいフェニレン基を表す。R12は、一般式(41)のR12の場合と同義であり、好ましい例も同様である。
以下に上記ポリウレタン樹脂の原料であるジイソシアネート化合物及びジオール化合物について説明する。
(i)ジイソシアネート化合物
ジイソシアネート化合物としては、下記式(4)で表されるジイソシアネート化合物が挙げられる。
OCN−L−NCO (4)
式(4)中、Lは置換基を有していてもよい二価の脂肪族又は芳香族炭化水素基を示す。必要に応じ、Lはイソシアネート基と反応しない他の官能基、例えばカルボニル、エステル、ウレタン、アミド、ウレイド基を有していてもよい。より具体的にはLは、単結合、置換基(例えば、アルキル、アラルキル、アリール、アルコキシ、ハロゲノの各基が好ましい。)を有していてもよい2価の脂肪族又は芳香族炭化水素基を示す。好ましくは炭素数1〜20個のアルキレン基、炭素数6〜15個のアリレン基、さらに好ましくは炭素数1〜8個のアルキレン基を示す。また必要に応じ、L中にイソシアネート基と反応しない他の官能基、例えばカルボニル、エステル、ウレタン、アミド、ウレイド、エーテル基を有していてもよい。
具体的には以下に示すものが挙げられる。すなわち、2,4−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートの二量体、2,6−トリレンジレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート等のような芳香族ジイソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等のような脂肪族ジイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4(又は2,6)−ジイソシアネート、1,3−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等のような脂環式ジイソシアネート化合物;1,3−ブチレングリコール1モルとトリレンジイソシアネート2モルとの付加体等のようなジオールとジイソシアネートとの反応物であるジイソシアネート化合物等が挙げられる。
ジイソシアネート化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。耐刷性と汚れ性とのバランスの点で、2種以上を組み合わせて用いるのが好ましく、芳香族ジイソシアネート化合物(Lが芳香族基)と脂肪族ジイソシアネート化合物(Lが脂肪族基)とをそれぞれ少なくとも1種ずつ用いることが特に好ましい。
ジイソシアネートの使用量は、モル比で、ジオール化合物の総量を1としたときに、好ましくは0.8〜1.2、より好ましくは0.9〜1.1である。ジイソシアネート化合物をジオール化合物に対して過剰に用い、ポリマー末端にイソシアネート基が残存するような場合には、ウレタン化反応終了後にアルコール類又はアミン類等で処理することにより、最終的にイソシアネート基が残存しない形で合成されることが好ましい。
(ii)少なくとも1つのカルボキシル基を有するジオール化合物
少なくとも1つのカルボキシル基を有するジオール化合物としては、式(5)、(6)、(7)のジオール化合物、及び/又は、テトラカルボン酸二無水物をジオール化合物で開環させた化合物が挙げられる。カルボン酸二無水物を開環させるために使用されるジオール化合物を使用することができる。
Figure 2010276825
式(5)〜(7)中、R1は水素原子、置換基(例えば、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子(−F、−Cl、−Br、−I)、−CONH2、−COOR113、−OR113、−NHCONHR113、−NHCOOR113、−NHCOR113、−OCONHR113(ここで、R113は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜15のアラルキル基を示す。)などの各基が含まれる。)を有していてもよいアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基を示し、好ましくは水素原子、炭素数1〜8個のアルキル基、炭素数6〜15個のアリール基を示す。L10、L11、L12はそれぞれ同一でも相違していてもよく、単結合、置換基(例えば、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲノ基が好ましい。)を有していてもよい二価の脂肪族又は芳香族炭化水素基を示す。好ましくは炭素数1〜20個のアルキレン基、炭素数6〜15個のアリレン基、さらに好ましくは炭素数1〜8個のアルキレン基を示す。また必要に応じ、L10、L11、L12中にイソシアネート基と反応しない他の官能基、例えばカルボニル基、エステル結合、ウレタン結合、アミド結合、ウレイド結合、エーテル結合を有していてもよい。なおR1、L10、L11、L12のうちの2又は3個で環を形成してもよい。Arは置換基を有していてもよい三価の芳香族炭化水素基を示し、好ましくは炭素数6〜15個の芳香族基を示す。
式(5)、(6)又は(7)で示される少なくとも1つのカルボキシル基を有するジオール化合物としては具体的には以下に示すものが含まれる。
すなわち、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2−ビス(3−ヒドロキシプロピル)プロピオン酸、ビス(ヒドロキシメチル)酢酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、酒石酸、N,N−ジヒドロキシエチルグリシン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−カルボキシ−プロピオンアミド等が挙げられる。
また、少なくとも1つのカルボキシル基を有する少なくとも1種のジオール化合物の生成において用いられる好ましいテトラカルボン酸二無水物としては、特開2007−57597号公報の段落番号〔0062〕〜〔0063〕に記載の式(8)、(9)、(10)で示されるものが挙げられる。
式(8)、(9)又は(10)で示される化合物としては、具体的には、特開2007−57597号公報の段落番号〔0065〕に記載の化合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
これらのテトラカルボン酸二無水物をジオール化合物で開環することにより、(ii)少なくとも一つのカルボキシル基を有する少なくとも1種のジオール化合物を合成することができる。ただし、ジオール化合物と(i)ジイソシアネート化合物との反応を初めに行い、この反応物と上記テトラカルボン酸二無水物とを反応させることにより本発明のポリウレタン樹脂を合成することも可能であり、この方法も本発明の観点に包含される。すなわち、テトラカルボン酸二無水物とジオール化合物から由来する構造単位をポリウレタン樹脂中に導入する方法としては、以下の方法がある。
少なくとも1つのカルボキシル基を有する少なくとも1種のジオール化合物のうち、式(5)で表される化合物は、溶剤溶解性が高く、合成が容易であるためより好ましい。また、少なくとも1つのカルボキシル基を有する少なくとも1種のジオール化合物は、該ポリウレタン樹脂バインダーがカルボキシル基を0.2〜4.0meq/g、好ましくは0.3〜3.0meq/g、更に好ましくは0.4〜2.0meq/g、特に好ましくは0.5〜1.5meq/g、最も好ましくは0.6〜1.2meq/gの範囲で有するような量においてポリウレタン樹脂バインダーに導入される。従って、少なくとも一つのカルボキシル基を有する少なくとも1種のジオール化合物由来の構造のポリウレタン樹脂バインダー中における含有量は、カルボキシル基の数、他のジオール成分として何を用いるか、得られるポリウレタン樹脂バインダーの酸価や分子量、現像液の組成やpH等によって適宜選択されるが、好ましくは5〜45モル%、より好ましくは10〜40モル%、更に好ましくは15〜35モル%である。
(iii)架橋性基を有するジイソシアネート化合物
架橋性基を有するジイソシアネート化合物としては、例えば、トリイソシアネート化合物と、架橋性基を有する単官能のアルコール又は単官能のアミン化合物1当量とを付加反応させて得られる生成物がある。
トリイソシアネート化合物としては、具体的には、特開2007−57597号公報の段落番号〔0070〕〜〔0071〕に示すものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
架橋性基を有する単官能のアルコール又は単官能のアミン化合物としては、具体的には、特開2007−57597号公報の段落番号〔0073〕〜〔0076〕に示すものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
ここで、ポリウレタン樹脂の側鎖に架橋性基を導入する方法としては、ポリウレタン樹脂製造の原料として、側鎖に架橋性基を含有するジイソシアネート化合物を用いる方法が好適である。トリイソシアネート化合物と架橋性基を有する単官能のアルコール又は単官能のアミン化合物1当量とを付加反応させることにより得ることできるジイソシアネート化合物であって、側鎖に架橋性基を有するものとしては、例えば、特開2007−57597号公報の段落番号〔0078〕〜〔0085〕に示すものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
(iv)その他のジオール化合物
ポリウレタン樹脂の側鎖に不飽和基を導入する方法としては、前述の方法の他に、ポリウレタン樹脂製造の原料として、側鎖に不飽和基を含有するジオール化合物を用いる方法も好適である。そのようなジオール化合物は、例えば、トリメチロールプロパンモノアリルエーテルのように市販されているものでもよいし、ハロゲン化ジオール化合物、トリオール化合物、アミノジオール化合物と、不飽和基を含有するカルボン酸、酸塩化物、イソシアネート、アルコール、アミン、チオール、ハロゲン化アルキル化合物との反応により容易に製造される化合物であってもよい。これら化合物の具体的な例として、下記に示す化合物や特開2007−57597号公報の段落番号〔0087〕〜〔0090〕に示す化合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
Figure 2010276825
さらに別のその他のジオール化合物としては下記式(A’)で表されるエチレングリコール化合物を挙げることができる。
HO−(CH2CH2O)n−H (A’)
(式中、nは1以上の整数を表す。)
また、末端に水酸基を有するエチレンオキシドとプロピレンオキシドのランダム共重合体やブロック共重合体も挙げられる。
さらに、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加体(エチレンオキシドの付加数が27以上100以下)、ビスフェノールFのエチレンオキシド付加体(エチレンオキシドの付加数が22以上100以下)、水添ビスフェノールAのエチレンオキシド付加体(エチレンオキシドの付加数が23以上100以下)、水添ビスフェノールFのエチレンオキシド付加体(エチレンオキシドの付加数が18以上100以下)も用いることができる。
より具体的には、前記一般式(A’)で表されるエチレングリコール化合物が汚れ性の点で好ましく、nが2〜50のエチレングリコール化合物がより好ましく、nが3〜30のエチレングリコール化合物がさらに好ましく、nが4〜10のエチレングリコール化合物が特に好ましい。
具体的には、特開2007−57597号公報の段落番号〔0095〕に記載の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、式(A)、(B)、(C)、(D)、(E)で表される化合物のポリエーテルジオール化合物も好適に用いることができる。
Figure 2010276825
式(A)〜(E)中、R6は水素原子又はメチル基を表す。ただし、式(A)においては、R6はメチル基を表す。また、Xは、以下の基を表す。
Figure 2010276825
a,b,c,d,e,f,gはそれぞれ独立に、2以上の整数を示す。好ましくは2〜100の整数である。
さらに、特開2007−57597号公報の段落番号〔0102〕〜〔0106〕に記載の式(11)、(12)で表されるポリエステルジオール化合物や、式(13)で表されるポリカーボネートジオール化合物も具体例として挙げることができる。
さらに、式(13)で表されるポリカーボネートジオール化合物も具体例として挙げることができる。
式(11)、(12)又は(13)で示されるジオール化合物としては具体的には、特開2007−57597号公報の段落番号〔0108〕〜〔0110〕に示すものが含まれる。具体例中のnは2以上の整数である。
また更に、カルボキシル基を有せず、イソシアネートと反応しない他の置換基を有してもよいジオール化合物を用いることもできる。
このようなジオール化合物としては、特開2007−57597号公報の段落番号〔0112〕〜〔0113〕に記載の式(14)、(15)に示すものが含まれる。
式(14)又は(15)で示される化合物の具体例としては、特開2007−57597号公報の段落番号〔0115〕〜〔0118〕に示すものが含まれるが、これらに限定されるものではない。
また、特開2007−57597号公報の段落番号〔0120〕〜〔0132〕に記載のジオール化合物も好適に使用できる。
(v)その他のアミノ基含有化合物
本発明におけるポリウレタン樹脂バインダーにおいて、さらに特開2007−57597号公報段落番号〔0134〕〜〔0135〕に記載の式(31)、(32)に示すアミノ基含有化合物を組み合わせてジイソシアネート化合物と反応させ、ウレア構造を形成してポリウレタン樹脂の構造に組み込んでもよい。
式(31)、(32)で示される化合物の具体例としては、特開2007−57597号公報の段落番号〔0137〕に示すものが含まれるが、これらに限定されるものではない。
本発明に用いられるポリウレタンバインダーは、画像形成性及び耐刷性の観点から、好ましい分子量(重量平均分子量)としては、2,000〜1,000,000、より好ましくは5,000〜500,000、更に好ましくは10,000〜200,000の範囲である。
本発明において、ポリウレタンバインダーは、一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
ポリウレタンバインダーの記録層の全固形分に対する添加量(総量)は、画像形成性及び耐刷性の観点から、10〜90重量%であることが好ましく、20〜80重量%であることがより好ましく、30〜70重量%であることが更に好ましい。
(E)その他の成分
特定記録層を構成する組成物中には、更にその用途、製造方法等に適したその他の成分を適宜添加することができる。以下、好ましい添加剤について説明する。
感光層は、さらに連鎖移動剤を含有することが好ましい。連鎖移動剤は感度及び保存安定性向上に寄与する。連鎖移動剤としては、例えば、分子内にSH、PH、SiH、GeHを有する化合物群が用いられる。これらは、低活性のラジカル種に水素供与して、ラジカルを生成するか、若しくは、酸化された後、脱プロトンすることによりラジカルを生成し得る。
連鎖移動剤としては、チオール化合物(例えば、2−メルカプトベンズイミダゾール類、2−メルカプトベンズチアゾール類、2−メルカプトベンズオキサゾール類、3−メルカプトトリアゾール類、5−メルカプトテトラゾール類、等)を好ましく用いることができる。中でも、下記式(T)で表されるチオール化合物が特に好適に使用される。
Figure 2010276825
式(T)中、Rはアルキル基又はアリール基を表し、AはN=C−N部分と共に炭素原子を有する5員又は6員のヘテロ環を形成する原子団を表し、Aはさらに置換基を有してもよい。
また、本発明においては以上の基本成分の他にネガ型平版印刷版の製造中あるいは保存中において重合可能なエチレン性不飽和基を有する化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合禁止剤を添加することが好ましい。適当な熱重合禁止剤としてはハロイドキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン第一セリウム塩、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。熱重合禁止剤の添加量は、記録層を構成する全固形分に対して0.01重量%〜5重量%が好ましい。
更に記録層の着色を目的として、着色剤を添加してもよい。着色剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料(C.I.Pigment Blue 15:3、15:4、15:6など)、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アゾ染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料がある。染料及び顔料の添加量は、記録層の全固形分の0.5重量%〜20重量%が好ましい。加えて、硬化皮膜の物性を改良するために、無機充填剤やジオクチルフタレート、ジメチルフタレート、トリクレジルホスフェート等の可塑剤等の添加剤を加えてもよい。これらの添加量は記録層の全固形分の10重量%以下が好ましい。
特定平版印刷版原版は、前記(A)〜(D)成分を含有する記録層塗布液や、保護層等の所望の層の塗布液用成分を溶媒に溶かして、適当な支持体上に塗布することにより製造することができる。
ここで使用する溶媒としては、特開2007−249037号公報の〔0159〕に記載の化合物が好ましく用いられ、これらの溶剤は、単独又は混合して使用される。塗布溶液中の固形分の濃度は、2〜50重量%が好ましい。
記録層塗布液の後述する支持体への塗布量は、記録層の感度、現像性、露光膜の強度・耐刷性等の影響を考慮し、用途に応じ適宜選択することが好ましい。塗布量が少なすぎる場合には、耐刷性が十分でなくなる場合がある。一方多すぎる場合には、感度が下がり、露光に時間がかかる上、現像処理にもより長い時間を要する場合がある。本発明において、平版印刷版原版に対する記録層塗布液の塗布量は、一般的には、乾燥後の重量で0.l〜10g/m2の範囲が好ましく、0.5〜5g/m2の範囲がより好ましい。
〔保護層〕
特定平版印刷版原版には、露光時の重合反応を妨害する酸素の拡散侵入を遮断するため、記録層上に保護層(「酸素遮断層」ともいう。)を設けることが好ましい。本発明に用いられる保護層は25℃、1気圧下における酸素透過性Aが1.0≦A≦20(cc/m2・day)であることが好ましい。酸素透過性Aが1.0(cc/m2・day)以上であれば、製造時・生保存時に不要な重合反応が生じることもなく、また画像露光時に、不要なカブリ、画線の太りが生じたりという問題を生じることもない。
また、酸素透過性Aが20(ml/m2・day)以下であれば、感度の低下を招くこともない。また、保護層に望まれる特性としては、上記酸素透過性以外に、さらに、露光に用いる光の透過は実質阻害せず、記録層との密着性に優れ、かつ、露光後の現像工程で容易に除去できる事が望ましい。この様な保護層に関する工夫が従来よりなされており、米国特許第3,458,311号明細書、特公昭55−49729号公報に詳しく記載されている。
保護層に使用できる材料としては例えば、比較的結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いることが好ましく、具体的には、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドなどのような水溶性ポリマーが挙げられ、これらは単独又は混合して使用できる。これらの内、ポリビニルアルコールを主成分として用いる事が、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性的にもっとも良好な結果を与える。
保護層に使用するポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を有するための、未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル、及び、アセタールで置換されていてもよい。また、同様に一部が他の共重合成分を有していてもよい。ポリビニルアルコールの具体例としては71〜100モル%加水分解され、重合繰り返し単位が300から2400の範囲のものをあげる事ができる。具体的には、株式会社クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8等が挙げられ、これらは単独又は混合して使用できる。好ましい態様としてはポリビニルアルコールの保護層中の含有率が20〜95重量%、より好ましくは、30〜90重量%である。
ポリビニルアルコールと混合して使用する成分としてはポリビニルピロリドン又はその変性物が酸素遮断性、現像除去性といった観点から好ましく、保護層中の含有率が、3.5〜80重量%であることが好ましく、10〜60重量%であることがより好ましく、15〜30重量%であることが更に好ましい。
保護層の成分(PVAの選択、添加剤の使用)、塗布量等は、酸素遮断性・現像除去性の他、カブリ性や密着性・耐傷性を考慮して選択される。一般には使用するPVA(ポリビニルアルコール)の加水分解率が高い程(保護層中の未置換ビニルアルコール単位含率が高い程)、膜厚が厚い程酸素遮断性が高くなり、感度の点で有利である。しかしながら、極端に酸素遮断性を高めると、製造時・生保存時に不要な重合反応が生じたり、また画像露光時に、不要なカブリ、画線の太りが生じたりという問題を生じる。本発明における保護層の、25℃、1気圧下における酸素透過性Aが1.0≦A≦20(ml/m2・day)であることが好ましく、より好ましくは1.5≦A≦12(ml/m2・day)、更に好ましくは2.0≦A≦8.0(ml/m2・day)の範囲である。上記ポリビニルアルコール(PVA)等の(共)重合体の分子量は、2,000〜1,000万の範囲のものが使用でき、好ましくは2万〜300万範囲のものが適当である。
保護層の他の組成物として、グリセリン、ジプロピレングリコール等を(共)重合体に対して数重量%相当量添加して可撓性を付与することができ、また、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤;アルキルアミノカルボン酸塩、アルキルアミノジカルボン酸塩等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン界面活性剤を(共)重合体に対して数重量%添加することができる。保護層の膜厚は、0.5〜5μmが好ましく、1〜3μmが特に好ましい。
また、画像部との密着性や、耐傷性も版の取り扱い上極めて重要である。即ち、水溶性ポリマーからなる親水性の層を親油性の重合層に積層すると、接着力不足による膜剥離が発生しやすく、剥離部分が酸素の重合阻害により膜硬化不良などの欠陥を引き起こす。これに対し、これら2層間の接着性を改良すべく種々の提案がなされている。例えば、主にポリビニルアルコールからなる親水性ポリマー中に、アクリル系エマルジョン又は水不溶性ビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体などを20〜60重量%混合し、重合層の上に積層することにより、十分な接着性が得られる。本発明における保護層に対しては、これらの公知の技術をいずれも適用することができる。このような保護層の塗布方法については、例えば、米国特許第3,458,311号明細書、特公昭55−49729号公報に詳しく記載されている。
なお、保護層には、記録層を露光する際に用いる光の透過性に優れ、かつ、露光に関わらない波長の光を効率よく吸収し得る、着色剤(水溶性染料)を添加してもよい。これにより、感度を低下させることなく、セーフライト適性を高めることができる。
保護層の塗設量は、乾燥重量として、0.1〜10g/m2であること好ましく、0.5〜5g/m2であることがより好ましい。
〔バックコート層〕
支持体に表面処理を施した後又は中間層を形成させた後、必要に応じて、支持体の裏面にバックコートを設けることができる。
バックコートとしては、例えば、特開平5−45885号公報に記載されている有機高分子化合物、特開平6−35174号公報に記載されている有機金属化合物又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好適に挙げられる。中でも、Si(OCH34、Si(OC254、Si(OC374、Si(OC494等のケイ素のアルコキシ化合物を用いることが原料を安価で入手しやすい点で好ましい。
(平版印刷版の製版方法)
次に、本発明の平版印刷版の製版方法、すなわち、製版プロセスについて説明する。
本発明の平版印刷版の製版方法は、本発明のネガ型平版印刷版原版から平版印刷版を製版する方法であれば特に制限はないが、本発明のネガ型平版印刷版原版を赤外線レーザーで画像露光する露光工程、及び、アルカリ珪酸塩と界面活性剤とを含有し、pHが11.5〜12.8の範囲にある現像液の存在下で非露光部の記録層を除去する現像工程、を含む製版方法であることが好ましい。
本発明において、平版印刷版原版から平版印刷版を製造する製版プロセスにおいては、必要に応じ、露光前、露光中、露光から現像までの間に、平版印刷版原版の全面を加熱してもよい。このような加熱により、感光層中の画像形成反応が促進され、感度の向上、耐刷性の向上及び感度の安定化という利点が得られる。さらに、画像強度及び耐刷性の向上を目的として、現像により得られた画像を後加熱したり、全面露光することも有効である。通常現像前の加熱は150℃以下の穏和な条件で行うことが好ましい。現像後の加熱にはより強い条件を利用する。200〜500℃の温度範囲が好ましい。
〔露光〕
露光処理に用いられる光源としては、750nm〜1,400nmの波長で露光し得るものであれば、如何なるものでもよいが、赤外線レーザーが好適なものとして挙げられる。中でも、750nm〜1,400nmの波長の赤外線を放射する固体レーザー又は半導体レーザーにより画像露光されることが好ましい。
レーザーの出力は100mW以上が好ましく、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザデバイスを用いることが好ましい。また、1画素あたりの露光時間は20μ秒以内であることが好ましい。平版印刷版原版に照射される単位あたりのエネルギー量は10〜300mJ/cm2であることが好ましい。
この露光処理では、光源の光ビームをオーバーラップさせて露光することができる。オーバーラップとは副走査ピッチ幅がビーム径より小さい条件下で露光が行われることをいう。オーバーラップは、例えば、ビーム径をビーム強度の半値幅(FWHM)で表したとき、FWHM/副走査ピッチ幅(オーバーラップ係数)で定量的に表現することができる。本発明では、このオーバーラップ係数が0.1以上であることが好ましい。
露光装置の光源の走査方式は特に限定はなく、円筒外面走査方式、円筒内面走査方式、平面走査方式などを用いることができる。また、光源のチャンネルは単チャンネルでもマルチチャンネルでもよいが、円筒外面方式の場合にはマルチチャンネルが好ましく用いられる。
画像露光後、現像までの間に、記録層の硬化率を高める目的で50℃〜140℃の温度で1秒〜5分の時間の加熱プロセスを設けることを行ってもよい。加熱温度が前記の範囲において、硬化率アップの効果があり、未露光部での暗重合による残膜も生じない。
〔現像〕
また、本発明におけるネガ型平版印刷版原版の記録層の上には、前述したように、酸素遮断層(保護層)が設けてあり、現像液を用いて、酸素遮断層の除去と記録層の未露光部の除去を同時に行う方法、又は、水、温水で酸素遮断層を先に除去し、その後未露光部の記録層を現像で除去する方法が知られている、これらの水又は温水には特開平10−10754号公報に記載の防腐剤等、特開平8−278636号公報に記載の有機溶剤等を含有させることができる。
本発明におけるネガ型平版印刷版原版の現像液は、アルカリ珪酸塩と界面活性剤とを含有する、pHが11.5〜12.8の範囲にある現像液であることが特に好ましい。このような現像液としては、特開2003−107743号公報に記載の現像液が例示できる。
アルカリ珪酸塩としては、水に溶解したときにアルカリ性を示すものであって、例えば珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム、珪酸アンモニウムなどが例示できる。これらのアルカリ珪酸塩は1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明に用いることができる現像液は、基板の親水化成分としての珪酸塩の成分である酸化ケイ素SiO2と、アルカリ成分としてのアルカリ酸化物M2O(Mはアルカリ金属又はアンモニウム塩を表す)との混合比率、及び、濃度の調整により、最適な範囲に容易に調節することができる。酸化ケイ素SiO2とアルカリ酸化物M2Oとの混合比率(SiO2/M2Oのモル比)は、好ましくは0.75〜4.0であり、より好ましくは0.75〜3.0、更に好ましくは0.75〜1.5の範囲で使用される。上記範囲であると、現像性に優れ、溶解アルミと珪酸との錯体形成による不溶性のカスや珪酸塩の縮合した不溶性のカスが発生を抑制することができる。
また、現像液中のアルカリ珪酸塩の濃度としては、アルカリ水溶液の重量に対して、0.5〜10重量%が好ましく、より好ましくは3〜8重量%の範囲で使用される。上記範囲であると、現像性、現像処理能力に優れ、また、沈殿や結晶を生成し易くなり、また廃液時の中和の際にゲル化を抑制でき、廃液処理が容易である。
界面活性剤としては、ノニオン型、アニオン型、カチオン型及び両性型界面活性剤の何れの化合物も使用できる。例えば、分子中にエチレンオキシ鎖及び/又はプロピレンオキシ鎖を有する長鎖アルコールのエチレンオキシ及び/又はプロピレンオキシ付加体、具体的にはポリオキシエチレンステアレート等のポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート等のエチレンオキシ及び/又はプロピレンオキシ付加体、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレート等のエチレンオキシ及び/又はプロピレンオキシ付加体、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンナフチルエーテル等のポリオキシエチレンアリールエーテル類、ポリオキシエチレンメチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類等のノニオン界面活性剤:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩類、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ペンチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ヘキシルナフタレンスルホン酸ナトリウム、オクチルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルナフタレンスルホン酸塩類、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩類、ドデシルスルホン酸ソーダ等のアルキルスルホン酸塩類、ジラウリルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸エステル塩類等のアニオン界面活性剤:ラウリルベタイン、ステアリルベタイン等のアルキルベタイン類、アミノ酸類等の両性界面活性剤が使用可能である。これらの界面活性剤は1種単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
本発明に用いることができる現像液としては、公知のアルカリ剤を含有していてもよい。例えば、第三リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第二リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウム及び同リチウム等の無機アルカリ塩が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン等の有機アルカリ剤も用いられる。これらのアルカリ剤は1種単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
本発明におけるネガ型平版印刷版の前記現像液による現像は、常法に従って、好ましくは0〜60℃、より好ましくは15〜40℃程度の温度で、例えば、露光処理したネガ型平版印刷版を現像液に浸漬してブラシで擦る等により行う。
さらに自動現像機を用いて現像処理を行う場合、処理量に応じて現像液が疲労してくるので、補充液又は新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させてもよい。このようにして現像処理されたネガ型平版印刷版は特開昭54−8002号、同55−115045号、同59−58431号等の各公報に記載されているように、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムやデンプン誘導体等を含む不感脂化液で後処理される。本発明においてネガ型平版印刷版の後処理にはこれらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
上記のような処理により得られた印刷版は特開2000−89478号公報に記載の方法による後露光処理やバーニングなどの加熱処理により、耐刷性を向上させることができる。このような処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に用いられる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は重量基準である。
(実施例1)
<支持体Aの作製>
表面処理は、以下の(a)〜(e)の各種処理を連続的に行った。なお、各処理及び水洗の後にはニップローラで液切りを行った。
処理(a)
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質1050)の表面の圧延油を除去するため、10重量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間、脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径30μmのパミス−水懸濁液(比重1.1g/cm3)を用いブラシ回転数250rpmでアルミ表面を砂目立てして、水でよく洗浄した。
処理(b)
この板を45℃の25%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、さらに60℃で20%硝酸に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/m2であった。
処理(c)
次に、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1重量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5重量%含む)、液温50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dm2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
処理(d)
次に、塩酸0.5重量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5重量%含む)、液温50℃の電解液にて、アルミニウム板が陽極時の電気量50C/dm2の条件で、硝酸電解と同様の方法で、電気化学的な粗面化処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
処理(e)
この板を、15%硫酸(アルミニウムイオンを0.5重量%含む)を電解液として電流密度15A/dm2で2.5g/m2の直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗、乾燥し支持体Aとした。この基板の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.51μmであった。
以上のようにして支持体Aを作製した。
[親水化処理(PVPA処理)、及び、水洗処理]
このようにして得られた支持体を、4g/Lのポリビニルホスホン酸を含有する40℃の水溶液(pH=1.9)に10秒間浸漬し、20℃のカルシウムイオンを含む脱塩水で2秒間洗浄し、乾燥した。処理後支持体上のP量及びCa量はそれぞれ、25mg/m2、1.9mg/m2であった。
(記録層の形成)
親水化処理を施した前記支持体上に、下記組成の光重合性組成物P−1を乾燥塗布重量が1.4g/m2となるように塗布し、100℃で1分間乾燥させ、記録層を形成した。一方、これとは別に比較例用として、下記光重合性組成物P−2を調製した。
[光重合性組成物P−1]
・(C)ウレタン結合及び複数のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物(AM−1)
4.2重量部
・(D)ポリウレタンバインダー(BT−1) 3.6重量部
・(A)赤外線吸収剤(IR−1) 0.31重量部
・(B)オニウム塩(OS−12) 1.2重量部
・ε−フタロシアニン分散物(1) 0.92重量部
〔顔料:15部、分散剤としてアリルメタクリレート/メタクリル酸(80/20)共重合体(分子量7万):10部、溶剤としてシクロヘキサノン/メトキシプロピルアセテート/1−メトキシ−2−プロパノール=15部/20部/40部〕
・フッ素系ノニオン界面活性剤メガファックF780
(大日本インキ化学工業(株)製) 0.05重量部
・メチルエチルケトン 62重量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 57重量部
Figure 2010276825
(保護層の形成)
上記の記録層表面に、ポリビニルアルコール(ケン化度98モル%、重合度500)と、ポリビニルピロリドン(BASF社製、ルビスコールK−30)との混合水溶液をワイヤーバーで塗布し、温風式乾燥装置にて125℃75秒間乾燥させて保護層を形成して、平版印刷版原版(ネガ型平版印刷版原版)を作製した。なお、ポリビニルアルコール/ポリビニルピロリドンの含有量の比率は、4/1(重量比)であり、塗布量は(乾燥後の被覆量)は2.45g/m2であった。
(実施例2)
実施例1の平版印刷版原版の製造工程中、支持体Aの作製の処理(a)において、ブラシ回転数を190rpmに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の平版印刷版原版を得た。なお、このようにして得られた支持体を支持体Bとする。この基板の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.40μmであった。
(実施例3)
実施例1の平版印刷版原版の製造工程中、支持体Aの作製の処理(a)において、ブラシ回転数を310rpmに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の平版印刷版原版を得た。なお、このようにして得られた支持体を支持体Cとする。この基板の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.60μmであった。
(実施例4)
実施例1の平版印刷版原版の製造工程中、支持体Aの作製の処理(d)において、交流電圧の周波数を30Hzに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例4の平版印刷版原版を得た。なお、このようにして得られた支持体を支持体Dとする。
(実施例5)
実施例1の平版印刷版原版の製造工程中、支持体Aの作製の処理(c)において、電流密度を電流のピーク値で15A/dm2に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例5の平版印刷版原版を得た。なお、このようにして得られた支持体を支持体Eとする。
(実施例6)
実施例1の平版印刷版原版の製造工程中、親水化処理(PVPA処理)を、5g/Lのポリビニルホスホン酸を含有する40℃の水溶液に10秒間浸漬することに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例6の平版印刷版原版を得た。なお、処理後支持体上のP量及びCa量はそれぞれ、28mg/m2、2.0mg/m2であった。
(実施例7)
実施例1の平版印刷版原版の製造工程中、光重合性組成物を下記P−2に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例7の平版印刷版原版を得た。
[光重合性組成物P−2]
・(C)ウレタン結合及び複数のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物(AM−2)
4.2重量部
・(D)ポリウレタンバインダー(BT−1) 3.6重量部
・(A)赤外線吸収剤(IR−1) 0.31重量部
・(B)オニウム塩(OS−12) 1.2重量部
・ε−フタロシアニン分散物(1) 0.92重量部
・フッ素系ノニオン界面活性剤メガファックF780
(大日本インキ化学工業(株)製) 0.05重量部
・メチルエチルケトン 62重量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 57重量部
Figure 2010276825
(実施例8)
実施例1の平版印刷版原版の製造工程中、光重合性組成物を下記P−3に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例8の平版印刷版原版を得た。
[光重合性組成物P−3]
・(C)ウレタン結合及び複数のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物(AM−1)
4.2重量部
・(D)ポリウレタンバインダー(BT−1) 3.6重量部
・(A)赤外線吸収剤(IR−1) 0.31重量部
・(B)オニウム塩(OS−13) 1.2重量部
・ε−フタロシアニン分散物(1) 0.92重量部
・フッ素系ノニオン界面活性剤メガファックF780
(大日本インキ化学工業(株)製) 0.05重量部
・メチルエチルケトン 62重量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 57重量部
Figure 2010276825
(実施例9)
実施例1の平版印刷版原版の製造工程中、親水化処理を、4g/Lのポリビニルホスホン酸を含有する40℃の水溶液に10秒間浸漬した後、20℃のカルシウムイオン非含有の脱塩水で2秒間洗浄し乾燥すること以外は実施例1と同様にして、実施例9の平版印刷版原版を得た。
(比較例1)
実施例1の平版印刷版原版の製造工程中、支持体Aの作製の処理(d)において、交流電圧の周波数を10Hzに変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の平版印刷版原版を得た。なお、このようにして得られた支持体を支持体Fとする。
(比較例2)
実施例1の平版印刷版原版の製造工程中、支持体Aの作製の処理(c)において、交流電圧の周波数を15Hzに変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例2の平版印刷版原版を得た。なお、このようにして得られた支持体を支持体Gとする。
(比較例3)
実施例1の平版印刷版原版の製造工程中、支持体Aの作製の処理(c)において、電解液の液温を80℃とし、かつTPを0msecとした以外は、実施例1と同様にして、比較例3の平版印刷版原版を得た。なお、このようにして得られた支持体を支持体Hとする。
(比較例4)
実施例1の平版印刷版原版の製造工程中、支持体Aの作製の処理(d)を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例4の平版印刷版原版を得た。なお、このようにして得られた支持体を支持体Iとする。
(比較例5)
実施例1の平版印刷版原版の製造工程中、親水化処理を行わず、代わりに下記の中間層を支持体と記録層との間に形成した以外は実施例1と同様にして、比較例5の平版印刷版原版を得た。
(中間層の形成)
前記電界粗面化処理されたアルミニウム板に、まずバーコーターを用いて下記中間層液を塗布したあと80℃で20秒間乾燥した。乾燥後の中間層塗布重量は25mg/m2であった。
[中間層液]
・下記ゾル液 100重量部
・メタノール 900重量部
[ゾル液]
・ホスマーPE(ユニケミカル(株)製) 5重量部
・メタノール 45重量部
・水 10重量部
・85重量%リン酸 5重量部
・テトラエトキシシラン 20重量部
・3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン 15重量部
(比較例6)
実施例1の平版印刷版原版の製造工程中、親水化処理を行わないこと以外は実施例1と同様にして、比較例6の平版印刷版原版を得た。
(比較例7)
実施例1の平版印刷版原版の製造工程中、光重合性組成物を下記P−4に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例7の平版印刷版原版を得た。
[光重合性組成物P−4]
・ウレタン結合及び複数のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物(AM−1)
4.2重量部
・ポリウレタンバインダー(BT−1) 3.6重量部
・増感剤(C−1) 0.21重量部
・重合開始剤(D−1) 0.81重量部
・連鎖移動剤(E−1) 0.3重量部
・ε−フタロシアニン分散物(1) 0.76重量部
・フッ素系ノニオン界面活性剤メガファックF780 0.05重量部
(大日本インキ化学工業(株)製)
・メチルエチルケトン 58重量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 53重量部
Figure 2010276825
[評価]
(1)耐刷性
得られた平版印刷版原版を、実施例1〜9及び比較例1〜6については、Creo社製Trendsetter3244にて、解像度2,400dpiで80%平網画像を、出力4.5W、外面ドラム回転数150rpm、版面エネルギー70mJ/cm2で露光した。比較例7については、富士フイルム(株)製Vx9600CTP(光源波長:405nm)にて、版面エネルギー50μJ/cm2となるように調整して露光した。なお、露光は25℃50%RHの条件下で行った。現像液は、富士フイルム(株)製シリケート(ケイ酸カリウム SiO2/K2O=1.7)及び界面活性剤(ポリオキシエチレンナフチルエーテル)含有現像液LP−DZ(原液使用、水での希釈不要、25℃でのpH12.30)を用い、フィニッシャーは、富士フイルム(株)製FP−5Wの1:3水希釈液を用いた。現像機はG&J社製PSプロセッサーIP850HDを用い、プレヒート温度115℃、液温を25℃に保ち、現像時間20秒で現像した。現像して得られた平版印刷版を、(株)小森コーポレーション製のリスロン印刷機で、大日本インキ化学工業(株)製のDIC−GEOS(N)墨のインキを用いて印刷し、ベタ画像の濃度が薄くなり始めたと目視で認められた時点の印刷枚数により、耐刷性を評価した。その結果を表1に示す。
(2)耐汚れ性
得られた平版印刷版原版を合紙とともにアルミクラフト紙で密閉し、60℃で3日放置したものを用いた以外は耐刷性評価時とすべて同じ方法で露光、現像を行い上記と同様の処理により得られた平版印刷版を、小森コーポレーション(株)製印刷機リスロンを用いて印刷し非画像部の汚れ性能を評価した。その結果を表1に示す。非画像部の汚れは、下記基準で官能評価し、3が実用下限レベル、2以下は実用上不可レベルである。
5:全く問題なかった。
4:ルーペで観察すると分かる程度の汚れが見られた。
3:ごく接近すると目視で分かる、ごく一部の汚れが見られた。
2:目視で分かる、部分的な汚れが見られた。
1:目視で一目で分かる、全面的な汚れが見られた。
(3)セーフライト安全性評価
得られた平版印刷版原版から合紙を外し、25℃30%RHの環境下にて東芝ライテック(株)製FLR40S W/M N.U.型UVカット白色蛍光灯に、照度400Luxで20分間曝光した。平版印刷版原版を上記の方法でセーフライトに曝光した後はただちに、セッターによる画像露光は行わず、(1)耐刷性評価と同様の方法で現像を行った。目視にて残膜なく現像できたものを○、感光層が残膜したものを×と評価した。その結果を表1に示す
Figure 2010276825
表1より、本発明の実施例1〜9では、耐刷性、耐汚れ性のバランスがよく、また、明室取り扱い性にも優れていることがわかる。
1:アルミニウム板
2,4:ローラ状ブラシ
3:研磨スラリー液
5,6,7,8:支持ローラ
11:アルミニウム板
12:ラジアルドラムローラ
13a,13b:主極
14:電解処理液
15:電解液供給口
16:スリット
17:電解液通路
18:補助陽極
19a,19b:サイリスタ
20:交流電源
40:主電解槽
50:補助陽極槽
410:陽極酸化処理装置
412:給電槽
414:電解処理槽
416:アルミニウム板
418,426:電解液
420:給電電極
422,428:ローラ
424:ニップローラ
430:電解電極
432:槽壁
434:直流電源

Claims (11)

  1. 平均開口径0.5〜5μmの中波構造と平均開口径0.01〜0.2μmの小波構造とを重畳した構造の砂目形状を表面に有し、かつ有機ホスホン酸化合物により親水化処理を施した支持体上に、
    (A)赤外線吸収剤、(B)オニウム塩、(C)分子内にウレタン結合及び複数のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物、並びに、(D)ポリウレタンバインダーを含有する記録層と、
    保護層と、をこの順に有することを特徴とする
    ネガ型平版印刷版原版。
  2. 前記有機ホスホン酸化合物がポリビニルホスホン酸である、請求項1に記載のネガ型平版印刷版原版。
  3. 前記支持体の親水化処理を施した部分にアルカリ土類金属の陽イオンが吸着している、請求項1又は2に記載のネガ型平版印刷版原版。
  4. 前記支持体の親水化処理を施した部分に吸着しているアルカリ土類金属の陽イオンの重量が0.5〜3.0mg/m2である、請求項3に記載のネガ型平版印刷版原版。
  5. 前記(D)ポリウレタンバインダーが側鎖に重合性基を有する、請求項1〜4のいずれか1つに記載のネガ型平版印刷版原版。
  6. 前記(B)オニウム塩がスルホニウム塩である、請求項1〜5のいずれか1つに記載のネガ型平版印刷版原版。
  7. 前記(A)赤外線吸収剤がシアニン色素である、請求項1〜6のいずれか1つに記載のネガ型平版印刷版原版。
  8. 前記保護層が、水溶性高分子化合物を含有している、請求項1〜7のいずれか1つに記載のネガ型平版印刷版原版。
  9. 支持体表面に硝酸を主体とする電解液を用いた第1の電気化学的粗面化処理を行う工程と、
    支持体表面に塩酸を主体とする電解液を用いた第2の電気化学的粗面化処理を行う工程と、
    粗面化された支持体表面に対して有機ホスホン酸化合物により親水化処理を行う工程と、
    (A)赤外線吸収剤、(B)オニウム塩、(C)分子内にウレタン結合及び複数のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物、並びに、(D)ポリウレタンバインダーを含有する記録層を形成する工程と、
    保護層を形成する工程と、をこの順で有する、
    請求項1〜8のいずれか1つに記載のネガ型平版印刷版原版の製造方法。
  10. 記録層を形成する前に、親水化処理された支持体表面をアルカリ土類金属の陽イオンを含む水溶液で水洗する工程をさらに含む、請求項9に記載のネガ型平版印刷版原版の製造方法。
  11. 請求項1〜8のいずれか1つに記載のネガ型平版印刷版原版、又は、請求項9若しくは10に記載の製造方法により製造されたネガ型平版印刷版原版を赤外線レーザーで画像露光する露光工程、及び、
    アルカリ珪酸塩と界面活性剤とを含有し、pHが11.5〜12.8の範囲にある現像液の存在下で非露光部の記録層を除去する現像工程、を含むことを特徴とする
    平版印刷版の製版方法。
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