JP2010275405A - 樹脂組成物およびそれを用いた発光源 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐熱性および熱伝導性に優れ、光透過性を損なうことなく、LEDの高輝度化および長寿命化を可能な樹脂組成物およびそれを用いた発光源を提供することを目的とする。
【解決手段】LEDモジュール1の放熱基板3の基台部3aと、LEDチップ5とを接着する接着材4として、高光透過性および高熱伝導性樹脂組成物であるシリコーン樹脂に金属ふっ化物を充填した樹脂組成物を用い、さらにシリコーン樹脂は、非アリール基の炭化水素基、水酸基又は水素を側鎖として有するものであることを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】LEDモジュール1の放熱基板3の基台部3aと、LEDチップ5とを接着する接着材4として、高光透過性および高熱伝導性樹脂組成物であるシリコーン樹脂に金属ふっ化物を充填した樹脂組成物を用い、さらにシリコーン樹脂は、非アリール基の炭化水素基、水酸基又は水素を側鎖として有するものであることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、樹脂および金属ふっ化物からなる樹脂組成物およびそれを用いた発光源に関する。さらに詳しくは、熱伝導性と光透過性を付与したLED用接着剤に関するものである。
従来、自動車や携帯電話、デジタルカメラなどの幅広い分野においてLEDが使用されている。LEDはほかの発光デバイスに比べ、軽量、小型、薄型、低消費電力などの面で優れた特性を有するため、輝度や寿命など著しい品質改善を行うことで照明分野での開発も進められている。LEDには封止材料、レンズや接着剤などの多くの樹脂材料が用いられている。LEDは、基板の上に接着剤を塗布し、この上にLEDを固定して、さらにその上を樹脂で覆った構成となっている。このような構成のLEDにおいて、LEDに塗布される接着剤は、LEDと基板を接着すると共に、LEDの輝度を上げるためにLEDから発生した光を透過して効率よく光を取り出し、発生した熱を速やかに外部に放出する必要がある。
近年、LEDは、高輝度化を目的として、発光効率の高効率化、光束の向上と共に、大電流化が進んでいる。大電流化に伴い発熱量が増大し、その際のLEDの周辺温度は150〜200℃にもなるため、LED近傍の樹脂などの周辺材料に及ぼす影響が大きくなり、LEDの劣化を加速させ、その結果LEDの使用寿命を短くしてしまう恐れがある。このため、樹脂材料には高い光透過性に加え、高い耐熱性と熱伝導性が求められるようになってきている。現在の白色LEDは青色+YAG蛍光体の擬似白色が多く使用されているが、将来は演色性の高いRGB型や紫外LED+RGB蛍光体型のものがより多く使用される可能性もある。また、接着性の面では、樹脂が軟らかすぎると、LEDと基板との接着工程の後に行われるワイヤー接着工程において接着ができないという不具合が生じるため、接着剤にはある程度の硬度が必要となる。
従来、この接着剤としては高硬度の接着剤であるエポキシ樹脂が使用されてきた。しかし、エポキシ樹脂は150℃以上の高温下では熱劣化し、また紫外光を照射すると吸収し黄変するため出力光が妨げられ、LEDの輝度の低下およびLED自体の劣化を招く。これら2つの理由から、エポキシ樹脂では対応が困難となってきている。
上記のような要求に応えるために、耐熱安定性、透明性および低波長領域での光透過性に優れたシリコーンを用いた樹脂組成物が提案されている(例えば特許文献1)。これにより高硬度、高密着性、優れた耐熱安定性、透明性および低波長領域での光透過性を確保していた。
しかしながら、従来の技術では、以下のような問題が生じていた。
すなわち、従来のシリコーン樹脂組成物からなる接着剤では、高い耐熱性、光透過性は確保できるものの、樹脂自身の熱伝導性が低いためにLEDから発生する熱を逃がすことができず、LEDの温度上昇により変質しその結果LEDの劣化が進んでしまうという問題があった。
そこで本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、耐熱性および熱伝導性に優れ、しかも光透過性をも確保することにより、LEDの高輝度化および長寿命化が可能な樹脂組成物およびそれを用いた発光源を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明のLED用接着剤は、シリコーン樹脂に金属ふっ化物を充填した樹脂組成物であることを特徴とする。
本発明は上記構成により、広い波長範囲で高い光透過性を有し、高耐熱性かつ高熱伝導性を有することができる。すなわち、シリコーン樹脂は元々透明で高い耐熱性を有している。金属ふっ化物は耐熱性に加えて高熱伝導性を有しており、これをシリコーン樹脂に充填すれば、シリコーン樹脂の熱伝導性の低さを補うことができる。こうして、LEDを本発明の接着剤を用いて固定させることにより効率よく光を導くと共に、LEDにおいて発生する熱を外部に逃がすことができるので、LEDの高輝度化および長寿命化が可能となる。
以下、本発明の実施の形態について、実施例を用いて説明する。
まず、本発明の樹脂組成物をLED光源に用いた例について、図1〜3を用いて説明する。図1はLEDモジュールの断面図である。LEDモジュール1は、リードフレーム2が表面に形成され、樹脂またはセラミックからなる放熱基板3の基台部3a上に、本発明のシリコーン樹脂組成物による接着剤4を用いてLEDチップ5が接着されている。LEDチップ5のp型電極5aはリードフレーム2のプラス電極部2aと、LEDチップ5のn型電極5bはリードフレーム2のマイナス電極部2bと、それぞれボンディングワイヤ6aおよび6bを介して接続される。
放熱基板3のLEDチップ5が実装されている面には、例えば樹脂またはセラミックなどにより成型されるキャビティ7が設けられる。キャビティ7には、LEDチップ5およびボンディングワイヤ6a・6bに接触せず取り囲むように、開口部7aが設けられている。キャビティ7の開口部7aの内面には通常、テーパが設けられ、開口部7aには高い光透過性を有する封止樹脂8が充填される。これにより、基台部3a、接着剤4、LEDチップ5、およびボンディングワイヤ6a・6bの全体と、プラス電極部2aおよびマイナス電極部2bの一部が封止樹脂8により封止され、外気と遮断される。なお、キャビティ7の開口部7aには、封止樹脂8を開口部7a内に留める役割のほかに、LEDチップ5より発せられる光を効率よく反射し、封止樹脂8の外部へと導く役割を有する。また、封止樹脂8には蛍光体が分散されている場合もある。
プラス電極部2bおよびマイナス電極部2cは、封止樹脂8により封止されたキャビティ7の開口部7aからキャビティ7の外部へと配線されている。これらの電極は、放熱基板3が樹脂基板の場合には、銅合金に金メッキや銀メッキが施されたものであり、放熱基板3がセラミック基板の場合には、タングステンやモリブデンに金メッキや銀メッキが施されたものである。キャビティ7の外部において、プラス電極部2aおよびマイナス電極部2bの両端に電圧源9が接続され、LEDチップ5の発光可能な電圧が印加されると、開口部7aの内部に配置されたLEDチップ5のp型電極5aおよびn型電極5bに対し、ボンディングワイヤ6aおよび6bを介して、電圧源9による電圧が印加される。これによりLEDチップ5は光を発する。
図2はLEDチップ5から発せられる光の進路の例を示す図である。LEDチップ5から発せられる光は、直接光10aのほかに、キャビティ7の開口部7aの内面による反射光10bや10cなどが存在する。
しかしながらこのとき、もし接着剤4が高い光透過性を有しなければ、キャビティ7の開口部7aから見てLEDチップ5の背面方向に発せられる光は、LEDモジュール1全体の発光光量に全く寄与しないことになる。
詳細については後に述べるが、本発明のシリコーン樹脂組成物による接着剤4は、高い光透過性を有する組成となっている。これにより、キャビティ7の開口部7aから見てLEDチップ5の背面方向に発せられる光は、例えば光路10dのように、キャビティ7の開口部7aの内面へと導かれ、そこで反射した後、LEDモジュール1の外部へと出射される。その結果、LEDモジュール1全体の発光光量の増加が期待できる。
次に、LEDチップ5からは発光と同時に熱も発生することになる。図3はLEDから発生する熱の伝達経路の例を示す図である。
これまで、LEDチップ5と放熱基板3とを接着する接着剤としては、光透過性のない高熱伝導性接着剤あるいは熱伝導性のない高光透過性接着剤のどちらかしか用いられていなかった。しかし近年では、高輝度化を目的として、発光効率の高効率化、光束の向上と共に、大電流化が進み、それに伴い発熱量が増大している。そして、その際のLEDチップ5の周辺温度は150〜200℃にもなるため、LEDチップ5近傍の樹脂などの周辺材料に及ぼす影響が大きくなり、LEDチップ5の劣化を加速させ、その結果LEDチップ5の使用寿命を短くしてしまう恐れがある。
先にも述べたように、本発明のシリコーン樹脂組成物による接着剤4は、LEDモジュール1全体の発光光量を増加させるために、LEDチップ5から発生した光を透過して効率よく光を取り出せるよう、光透過性を有する必要がある。それに加えて、本発明のシリコーン樹脂組成物による接着剤4は、LEDチップ5の発光と同時に発生する熱を、図3に示す放熱路11aを介して、速やかに放熱基板3へと伝導させて、放熱路11bにより外気へと放熱しなければならない。さらに、それらの高い光透過性や放熱機能は劣化しないようにする必要がある。すなわち、本発明のシリコーン樹脂組成物による接着剤4は、耐熱性および熱伝導性に優れ、しかも光透過性をも確保することにより、LEDの高輝度化および長寿命化が可能でなければならない。
後に詳細を述べる本発明のシリコーン樹脂組成物は、高い光透過性に加え、高い熱伝導性をも有している。その結果、放熱基板から熱を逃がすことができ、その結果LEDに蓄積される熱の温度が下がるので、LEDチップ5自体の性能劣化を防ぐことができる。すなわち、本発明の樹脂組成物を接着剤として利用することにより、LEDの高輝度化および長寿命化が可能となる。
以上に説明したような、例えばLEDチップと放熱基板との接着に用いることのできる、本発明のシリコーン樹脂組成物の詳細についてこれより述べる。
まず、本発明の樹脂組成物の調製方法については以下のとおりである。
(1)ベース樹脂であるシリコーン樹脂A重量部と、フィラーであるふっ化リチウムもしくはふっ化カルシウムB重量部を計り取り、瑪瑙鉢で混ぜ合わせる。
(2)その混合物を自公転式撹拌混合機(V−mini300、株式会社EME製)の専用容器に入れ、真空環境、自転回転数1600rpm、公転回転数800rpmの条件で脱泡撹拌を1分間行う。
なお、シリコーン樹脂と金属ふっ化物との混合方法に関しては、乳鉢を使った混合でもよいし、自公転式の脱泡撹拌混合機やシェーカー方式の混合機等を用いて行ってもよく、特に混合方法に限定はない。脱泡撹拌混合機のように樹脂ペーストを流動させて混合する場合は、粒子同士の摩擦により温度が上昇しやすく、これにより樹脂の硬化反応が進行してしまう恐れがあるため、できるだけ温度が上がらないような、温和な条件で撹拌する必要がある。
本実施例では、硬化性ベース樹脂として、付加硬化型のシリコーン樹脂を用いたが、屈折率が混合する金属ふっ化物の屈折率と等しいあるいは近いシリコーン樹脂であれば縮合反応硬化型のものでも用いることができる。しかしながら縮合硬化型のシリコーン樹脂を用いる場合、大気中の水分を取り込んで硬化反応が進行し、硬化反応中に副生成物としてアルコールやアセトンなどのガスが発生するので、注意が必要である。また、縮合硬化型の硬化収縮率は付加硬化型のそれよりも大きく、硬化反応時間が付加硬化型よりも長いというデメリットがある。これらのことを考えると、硬化時にガスの発生や硬化収縮の心配がなく、硬化反応の時間を温度によって調整可能な付加硬化型のシリコーン樹脂をベース樹脂に用いることがより好ましい。
次に、本発明のポイントである光透過率・熱伝導率・屈折率そのほかの物性の測定方法について説明する。樹脂組成物の物性については、それぞれ以下のようにして測定を行う。
<屈折率>
ベースであるシリコーン樹脂の未硬化状態の25℃における屈折率を、アッベ屈折計(アタゴ社製、NAR−2T)を用いて測定する。なお、測定光には可視光(589nm)の光源を用いる。
ベースであるシリコーン樹脂の未硬化状態の25℃における屈折率を、アッベ屈折計(アタゴ社製、NAR−2T)を用いて測定する。なお、測定光には可視光(589nm)の光源を用いる。
<熱伝導率>
上記の方法により調製した樹脂組成物を、ガラスで挟んだテフロン(登録商標)製の型枠に流し込み、100〜150℃の恒温槽に1〜4時間保持して硬化させ、長さ20mm×幅10mm×厚み0.1mmの板状成型物を得た。硬化物の熱伝導率は定常熱流法により測定する。
上記の方法により調製した樹脂組成物を、ガラスで挟んだテフロン(登録商標)製の型枠に流し込み、100〜150℃の恒温槽に1〜4時間保持して硬化させ、長さ20mm×幅10mm×厚み0.1mmの板状成型物を得た。硬化物の熱伝導率は定常熱流法により測定する。
<光透過率>
上記で調製した樹脂組成物をガラスで挟んだテフロン(登録商標)製の型枠に流し込み、100〜150℃の恒温槽に1〜4時間保持して硬化させ、長さ40mm×幅10mm×厚み1mmの板状成型物を得る。硬化物の光透過率は分光光度計(日立社製)を用いて評価する。測定条件は25℃における波長350nm〜750nmの光透過率を、積分球を用いて測定し、450nmにおける全光束透過率を得る。
上記で調製した樹脂組成物をガラスで挟んだテフロン(登録商標)製の型枠に流し込み、100〜150℃の恒温槽に1〜4時間保持して硬化させ、長さ40mm×幅10mm×厚み1mmの板状成型物を得る。硬化物の光透過率は分光光度計(日立社製)を用いて評価する。測定条件は25℃における波長350nm〜750nmの光透過率を、積分球を用いて測定し、450nmにおける全光束透過率を得る。
<粘度>
上記の調製方法により調製した未硬化の樹脂組成物の粘度を、BHII形粘度計(東機産業株式会社製)を用いて評価する。25℃における樹脂組成物の粘度を、回転数10rpmの条件で測定する。
上記の調製方法により調製した未硬化の樹脂組成物の粘度を、BHII形粘度計(東機産業株式会社製)を用いて評価する。25℃における樹脂組成物の粘度を、回転数10rpmの条件で測定する。
以上に述べる方法により調製され、測定された結果について述べる。(表1)は本実施例における透過率および熱伝導率の全測定結果である。
本発明の樹脂組成物の例として本実施例において用いるシリコーン樹脂は、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製TSE3150、TSE3250、IVS4542、信越化学(株)社製KE109の4種類である。金属ふっ化物は和光純薬工業(株)社製ふっ化リチウムである。なお、光透過率および熱伝導率の各データは、1個〜5個の測定値を平均した値となっている。これらの実験結果およびほかの参考データを適宜用いながら、耐熱性および熱伝導性に優れ、しかも光透過性をも確保することにより、LEDの高輝度化および長寿命化が可能な樹脂組成物についての説明を行う。
まず、本発明の樹脂組成物に用いるシリコーン樹脂について説明する。今回、(表1)において取り上げているシリコーン樹脂は、全て側鎖にアリール基を持たない。側鎖にアリール基を持つシリコーン樹脂は、可視〜紫外領域の短波長側の光を吸収するため、その光透過性が著しく低下してしまうからである。光吸収物質を紫外〜可視領域の光が通過すると電子が基底状態から励起状態に遷移するエネルギー準位の差に応じた波長の光を吸収することが知られており、特にアリール基を持つ化合物は紫外領域にその物質特有の吸収を持つ。従って、本発明の樹脂組成物が広い波長域にわたって高い光透過性を有するためには、本発明に用いるシリコーン樹脂が側鎖にアリール基を持たない、すなわち非アリール基のみの側鎖を有する必要がある。
より詳細に述べるのならば、一般にシリコーン樹脂は、ケイ素原子に結合した非アリール基を含有し、下記(化1)の化学式で表される。
本発明の樹脂組成物に用いるシリコーン樹脂において、側鎖であるR1は各々同種もしくは異種のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基など)であり、アリール基以外の有機基で構成され、そのほかにも水酸基や水素原子も側鎖となり得る。シリコーン樹脂には付加硬化型と縮合硬化型の2種類があり、その種類としては、例えば、ジメチルシリコーン、ジエチルシリコーン、メチルエチルシリコーンなどがある。
また、本発明に用いることの可能な付加硬化型シリコーン樹脂は、オルガノポリシロキサンと、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとが付加重合することにより生成する。付加硬化型シリコーン樹脂は、ケイ素原子に結合した1分子中に少なくとも2個のアルケニル基と非アリール基を含有するオルガノポリシロキサン、すなわち下記(化2)で表されされるものと、
ケイ素原子に結合した1分子中に少なくとも2個の水素原子と非アリール基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、すなわち下記(化3)を主成分として含有している。
ここで、側鎖R2は各々同種もしくは異種のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基など)および/又はアルケニル基(例えば、ビニル基、アリール基など)、R3は各々同種もしくは異種のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基など)であり、アリール基以外の有機基で構成される。また、0<a≦3、b≧0、c≧0、1<b+c≦3である。
繰り返しになるが、本発明の樹脂組成物は、アリール基を側鎖として持たないシリコーン樹脂を含有する。言い換えれば、平均組成式が上記一般式(2)と(3)とが付加重合することにより平均組成式が生成されるシリコーン樹脂を含有する場合、すなわち側鎖に非アリール基を有するシリコーン樹脂を含有している、とも言える。これにより本発明の樹脂組成物は、可視〜紫外領域の短波長の光に対する透過性が高く、LEDと放熱基板とを固定する接着剤として用いた場合に、LEDの発熱や発光による劣化が無く耐熱性および耐光性に優れたものとなる。
本発明におけるシリコーン樹脂のベースポリマーとなるオルガノポリシロキサンとしては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジビニルメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、などや、これらのオルガノポリシロキサンの二種類以上からなる混合物が挙げられる。
本発明におけるシリコーン樹脂の架橋剤として作用するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1、1、3、3−テトラメチルジシロキサン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)メチルシラン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、などが挙げられる。
なお、先に述べた付加硬化型シリコーン樹脂については、市販品を用いる場合、オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンが混合してある一液性のものを用いてもよいし、別々になっている二液性のものを用いてもよい。
次に、本発明の樹脂組成物に用いるシリコーン樹脂および金属ふっ化物が有する光透過率の高さと、互いの光屈折率の重要性について述べることにする。(表2)は、(表1)に示す全測定結果に取り上げている各シリコーン樹脂および金属ふっ化物の一つであるふっ化リチウム(LiF)の光透過率、熱伝導率および屈折率を抜き出したものである。
参考データとして、ふっ化リチウムと同じ金属ふっ化物であるふっ化カルシウム(CaF2)、熱伝導性の高いアルミナ(Al2O3)および酸化亜鉛(ZnO)の光透過率、熱伝導率および屈折率も併記している。
(表2)を見ればわかるように、本実施例において用いる4種類のシリコーン樹脂単体の光透過率はいずれも93%以上であり、高い光透過率を有するが、熱伝導率については0.15〜0.17W/m・Kであり、極めて低い。これに対して従来、シリコーン樹脂による樹脂組成物に高い熱伝導性を持たせるために充填されているアルミナや酸化亜鉛の熱伝導率は20〜36W/m・Kあり、桁違いに高い熱伝導率を有するが、光透過性はそれほど高くないことがわかる。
そこで本発明のシリコーン樹脂による樹脂組成物には、ふっ化リチウムやふっ化カルシウムなどの金属ふっ化物を用いることにする。ふっ化リチウムやふっ化カルシウムは、いずれも波長200〜1500nmにおいて90%以上という高い光透過率を有し、同時に、シリコーン樹脂よりも高い熱伝導性を有するからである。
すなわち、本発明の樹脂組成物に用いる金属ふっ化物としては、本実施例において実際に測定を行うために用いたふっ化リチウムのほかに、参考データとして(表2)に掲載したふっ化カルシウムも候補として考えられる。しかしながら(表2)を見ればわかるように、ふっ化カルシウムに比べてふっ化リチウムのほうが光透過率も熱伝導率も高い。よって本発明の樹脂組成物に用いる金属ふっ化物としては、ふっ化リチウムのほうがより望ましいと言える。これにより、耐熱性に加えて高い光透過性と熱伝導率を兼ね備えた樹脂組成物が得られる。
金属ふっ化物はシリコーン樹脂と比べて熱伝導率が高いので、金属ふっ化物の充填率を上げていけば、本発明の樹脂組成物の熱伝導率も当然のことながら高くなるわけであるが、だからといって無制限に充填率を上げればよいというものでもない。ここからは、金属ふっ化物のシリコーン樹脂への充填率と、光透過性・熱伝導率との関係について説明する。
(表3)は、本発明の樹脂組成物に用いるシリコーン樹脂としてTSJ3150を、金属ふっ化物としてふっ化リチウムを選択し、それらの重量比率を変化させたときの光透過率および熱伝導率の変化を示すものである。
これはすなわち、(表1)における試料1〜4のデータを抜き出している。なお、(表3においては参考として、シリコーン樹脂TSJ3150単体の光透過率および熱伝導率も)併記している。ふっ化リチウムを4種類のシリコーン樹脂のそれぞれに加えることで、それらの樹脂組成物、すなわち試料2および試料5〜7の熱伝導率はいずれも、単体のシリコーン樹脂(TSJ3150)の2倍以上の値が得られていることがわかる。そして、単体のシリコーン樹脂よりは劣るものの、いずれも80%という高い光透過率をも依然として有している。
これら(表3)のデータをグラフに示したものが図4である。図4は本実施例の樹脂組成物における金属ふっ化物の充填率と、本実施例の樹脂組成物の熱伝導率および全光束透過率との関係を表したグラフである。
図4によれば、まず、ふっ化リチウムの充填量を増加させると共に熱伝導率も高くなっていることがわかる。それはある意味当然のことであるが、同時に、ふっ化リチウムの充填量を増やすと全光束透過率が低くなり、ふっ化リチウムの充填量を減らすと全光束透過率が高くなっていることも、図4からわかる。
LEDを長寿命化するには高い熱伝導率が必要であるため、その点だけを考えるのならば、できるだけふっ化リチウムの充填量を高くする方が良い。しかしながら、LEDの輝度を上げるには高い透過率を有する必要があるため、今度はできるだけふっ化リチウムの充填量を少なくする必要がある。これら2つの条件を同時に実現することは困難である。すなわち、ふっ化リチウムを多量に充填すれば熱高伝導率が得られるが、充填量を過剰に増加させると、全光束透過率の低下を招く。
先ほども述べたように、樹脂を光学部材に用いる場合、その樹脂組成物の光透過率は80%以上を有していることが好ましいことが一般に知られている。図4より、樹脂組成物が80%以上の光透過率を有するためには、樹脂組成物に対する金属ふっ化物の充填率が65重量部以下であることが必要であることがわかる。
また、熱伝導率に関しては、図4より、樹脂組成物に対する金属ふっ化物の充填率が35重量部以上であれば、金属ふっ化物を充填しない場合に比べ、2倍以上の熱伝導率の値を有することがわかる。そうすれば、金属ふっ化物を充填しない場合よりもLEDから発生する熱を、より効率よく放熱基板に伝導し放熱することができる。よって、本発明の金属ふっ化物の充填率は、樹脂組成物に対して35〜65重量部であることが好ましいと言える。
ところで先の(表2)に示すように、TSJ3150を始めとする4種類のシリコーン樹脂と、ふっ化リチウムを始めとする2種類の金属ふっ化物は、それぞれ単体で90%以上という高い光透過率を有している。単純に考えれば、このような元々単体で高い透過性を有する2種類の物質を混ぜ合わせて樹脂組成物を生成しても、その樹脂組成物の光透過性は何ら損なわれないように思える。しかしながら実は、シリコーン樹脂と金属ふっ化物が個別に高い光透過性を有していても、それらを配合することにより得られる樹脂組成物が、必ずしも高い光透過性を有するとは限らない。
(表4)は、本発明の樹脂組成物に用いる金属ふっ化物としてふっ化リチウムを選択し、本実施例において用いる4種類のシリコーン樹脂のそれぞれと50重量部ずつの組み合わせにより生成した樹脂組成物、すなわち(表1)における試料2および試料5〜7の光透過率および熱伝導率の実験データである。
ここでも参考として、本実施例において用いる4種類のシリコーン樹脂単体の光透過率および熱伝導率を併記している。
一般に、混合する物質同士の屈折率の差が小さいほどその物質は光を透過しやすく、屈折率の差が大きいほど光を透過しにくいことが知られている。よって、高い透過性を有する樹脂組成物を得るには、互いに屈折率の等しい、あるいは近似した屈折率を有する樹脂および熱伝導性粒子を用いる必要がある。例えば(表2)には掲載していないが、ふっ化リチウムなどと同じふっ化物であるふっ化バリウムも、波長200〜1500nmにおける光透過率が90%以上である。しかしながらその屈折率は2.42であり、シリコーン樹脂の屈折率と大きく離れている。よって、シリコーン樹脂にふっ化バリウムを配合すると、それらの硬化物は光透過率が低下してしまう。このため、ふっ化バリウムは、本発明の樹脂組成物に用いることはできない。
このように、2種類以上の物質による組成物において高い光透過率を確保するためには、それぞれの物質単体の光透過率が高いことはいうまでも無いが、それと同時に、組成物を構成する物質の光屈折率は、互いに同一、または似通ったものでなければならない。
(表2)を参照すると、本実施例において用いる金属ふっ化物であるふっ化リチウムの屈折率は1.392であり、参考のために同じ金属ふっ化物として掲載しているふっ化カルシウムの屈折率は1.399で、ふっ化リチウムとほぼ同一である。
(表2)を参照すると、本実施例において用いる金属ふっ化物であるふっ化リチウムの屈折率は1.392であり、参考のために同じ金属ふっ化物として掲載しているふっ化カルシウムの屈折率は1.399で、ふっ化リチウムとほぼ同一である。
これに対して、本実施例において用いる4種類のシリコーン樹脂の屈折率は、いずれも1.404〜1.41であり、ふっ化リチウムやふっ化カルシウムと非常に近い値となっている。しかしながら、互いの屈折率がこれだけ近い値であるにもかかわらず、先ほどの(表4)に示す本実施例の測定結果によれば、4種類のシリコーン樹脂とふっ化リチウムとの組み合わせによる樹脂組成物の光透過率は、いずれも80%以上を確保するのが精一杯であり、90%には届いていない。ということは、シリコーン樹脂の屈折率と金属ふっ化物の屈折率の差が少なくともこの程度以下で無ければ、高い光透過率を確保できないということを意味している。
一般に樹脂を光学部材に用いる場合、その樹脂組成物の光透過率は80%以上を有していることが好ましい。それに加えて、(表2)に示すシリコーン樹脂の屈折率も金属ふっ化物の屈折率も、波長589nmにおける参考値であり、測定光の波長や測定環境によって変化する。また、(表2)の屈折率および(表4)に示す試料6の光透過率のデータから、屈折率の差が最も大きい組み合わせであるIVS4542とふっ化リチウムを混合した場合でもその樹脂組成物は80%以上の光透過率を有していることがわかる。これらのことを勘案すれば、樹脂組成物に対する金属ふっ化物(すなわち本実施例1におけるふっ化リチウム)の充填率が50重量部の場合において、シリコーン樹脂の屈折率と金属ふっ化物の屈折率との差は、少なくとも1.41−1.392=0.018以内でなければならないと言える。これにより本発明の樹脂組成物は、LEDと放熱基板とを固定する接着剤として用いた場合に、耐熱性および熱伝導性に優れ、しかも可視〜紫外領域の短波長の光に対して光透過性をも確保することにより、LEDの高輝度化および長寿命化が可能となる。
さらに、先の(表3)および図4におけるシリコーン樹脂TSJ3150とふっ化リチウムとの組み合わせにおいては、図4より、ふっ化リチウムの充填率が35重量部以上65重量部以下であれば、熱伝導性に優れ、しかも光透過性も確保されていることがわかる。(表2)より、シリコーン樹脂TSJ3150の屈折率は1.404、ふっ化リチウムの屈折率は先ほどと同様に1.392である。従って、ふっ化リチウムの充填率が35重量部以上65重量部以下の場合において、シリコーン樹脂の屈折率と金属ふっ化物の屈折率との差が1.404−1.392=0.012以内であれば、耐熱性および熱伝導性に優れ、しかも可視〜紫外領域の短波長の光に対して光透過性をも確保される。これにより、LEDの高輝度化および長寿命化が可能となる。
最後に本発明の樹脂組成物は、シリコーン樹脂と金属ふっ化物を均一に混合させることが必要なので、混合時の作業性も問題となる。ふっ化リチウムを多量に充填すると、粘度の増加による作業性の悪化等の不具合の生じる恐れがあるためである。
(表5)は、(表1)における試料1〜7、すなわち、4種類のシリコーン樹脂とふっ化リチウムとをそれぞれ混合させた各樹脂組成物の粘度と、混合時の作業性の評価(すなわち混ぜやすさ)を示したものである。作業性が特に良好なものは◎、良好なものは○、困難なものは×とした。
(表5)によれば、作業性の良好なものは粘度が2.0〜104Pa・sであり、特に良好なものは6.4〜23.5Pa・sであることがわかる。試料4はほかの試料に比べて粘度の値が著しく大きく、またその樹脂組成物が硬いため、成型が非常に困難であった。樹脂組成物の粘度が2.0〜104Pa・s、特に6.4〜23.5Pa・sの範囲内であれば、各成型方法に応じた適切な流動性を得られるため、樹脂組成物の作業性が良好となる。
以上に説明したように、本発明に記載の樹脂組成物を用いれば、光透過性と熱伝導性を確保できる。すなわち、シリコーン樹脂に金属ふっ化物を充填することにより、高い光透過性を有したまま熱伝導性も同時に有した樹脂組成物が得られる。また、本発明の樹脂組成物を用いてLEDチップと基材とを接着した発光源であれば、LEDチップにおいて発生する熱を効率よく放熱基板に伝導させることが可能となるので、LEDの高輝度化および長寿命化が可能となる。
本発明の樹脂組成物およびそれを用いた発光源は、LED用接着剤として使用した場合、LEDから発生した熱を放熱基板に伝導させながら光を効率よく取り出すことができ、LEDの高輝度化および長寿命化を可能にすることができる。よって、LED用接着剤に好適である。
1 LEDモジュール
2 リードフレーム
2a プラス電極部
2b マイナス電極部
3 放熱基板
3a 基台部
4 接着剤
5 LEDチップ
5a p型電極
5b n型電極
6a ボンディングワイヤ
6b ボンディングワイヤ
7 キャビティ
7a 開口部
7b 開口部
8 封止樹脂
9 電圧源
10a 直接光
10b 反射光
10c 反射光
10d 接着剤を透過する光の光路
11a LEDチップから接着剤への放熱路
11b 接着剤から放熱基板への放熱路
2 リードフレーム
2a プラス電極部
2b マイナス電極部
3 放熱基板
3a 基台部
4 接着剤
5 LEDチップ
5a p型電極
5b n型電極
6a ボンディングワイヤ
6b ボンディングワイヤ
7 キャビティ
7a 開口部
7b 開口部
8 封止樹脂
9 電圧源
10a 直接光
10b 反射光
10c 反射光
10d 接着剤を透過する光の光路
11a LEDチップから接着剤への放熱路
11b 接着剤から放熱基板への放熱路
Claims (9)
- シリコーン樹脂に金属ふっ化物を充填した樹脂組成物。
- 前記シリコーン樹脂は、非アリール基の炭化水素基、水酸基又は水素を側鎖として有する請求項1に記載の樹脂組成物。
- 前記金属ふっ化物が少なくともふっ化リチウムである請求項1に記載の樹脂組成物。
- 前記金属ふっ化物の充填率が樹脂組成物に対して35重量部以上65重量部以下である請求項1に記載の樹脂組成物。
- 前記樹脂組成物に対する前記金属ふっ化物の充填率が50重量部の場合において、前記シリコーン樹脂の屈折率と前記金属ふっ化物の屈折率との差が少なくとも0.018以内である請求項1に記載の樹脂組成物。
- 前記シリコーン樹脂の屈折率と前記金属ふっ化物の屈折率との差が少なくとも0.012以内である請求項4に記載の樹脂組成物。
- 粘度が2.0〜104Pa・sである請求項1に記載の樹脂組成物。
- 粘度が6.4〜23.5Pa・sである請求項1に記載の樹脂組成物。
- 請求項1に記載の樹脂組成物を用いてLEDチップと基材とを接着することにより構成される発光源。
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JP2009128472A JP2010275405A (ja) | 2009-05-28 | 2009-05-28 | 樹脂組成物およびそれを用いた発光源 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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-
2009
- 2009-05-28 JP JP2009128472A patent/JP2010275405A/ja active Pending
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