JP2010249295A - 固定式等速自在継手およびその製造方法 - Google Patents

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啓助 曽根
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Abstract

【課題】 固定式継手部の外輪の強度および耐久性を確保し、固定式継手部の最大作動角を大きくする。
【解決手段】 単一の外輪30の一端側に、外輪30のトラック溝31と対をなすトラック溝16が形成された内輪12、外輪30のトラック溝31と内輪12のトラック溝16との間に介在するボール14、および外輪30と内輪12との間に介在してボール14を保持するポケット17が形成されたケージ13からなる固定式継手部を配設すると共に他端側に摺動式継手部を配設し、凸球面部と凹球面部からなる球対偶を介して固定式継手部と摺動式継手部を連結した固定式等速自在継手の製造方法であって、固定式継手部のケージ13を傾けてそのポケット17を摺動式継手部側に開口させ、その摺動式継手部側に開口させたポケット17に、固定式継手部のボール14を外輪30の他端側のトラック溝31を通過させて組み込む。
【選択図】 図3

Description

本発明は、例えば、自動車などの動力伝達系において使用され、駆動側と従動側の二軸間で作動角度変位のみを許容する固定式等速自在継手およびその製造方法に関する。
例えば、自動車のエンジンから車輪に回転力を等速で伝達する手段として使用される等速自在継手には、固定式等速自在継手と摺動式等速自在継手の二種がある。これら両者の等速自在継手は、駆動側と従動側の二軸を連結してその二軸が作動角をとっても等速で回転トルクを伝達し得る構造を備えている。
自動車のエンジンから駆動車輪に動力を伝達するドライブシャフトは、エンジンと車輪との相対的位置関係の変化による角度変位と軸方向変位に対応する必要があるため、エンジン側(インボード側)に摺動式等速自在継手を、駆動車輪側(アウトボード側)に固定式等速自在継手をそれぞれ装備し、両者の等速自在継手をシャフトで連結した構造を具備する。
一般的に、前述した固定式等速自在継手としては、バーフィールド型等速自在継手(以下、BJと称す)や作動角の大きなアンダーカットフリー型等速自在継手(以下、UJと称す)が広く知られている。また、摺動式等速自在継手としては、ダブルオフセット型等速自在継手(以下、DOJと称す)やレブロ型等速自在継手(以下、LJと称す)が広く知られている。
近年、自動車の乗車空間拡大の観点からホイールベースを長くすることがあるが、それに伴って車両回転半径が大きくならないようにするため、自動車のドライブシャフトの連結用継手として使用されている固定式等速自在継手の高角化による前輪の操舵角の増大が求められている。
この要望に対して、本出願人は、前述の問題点を改善するため、二つの等速自在継手、例えばUJとDOJを組み合わせて、構造が簡単で高角化を実現容易にした軽量コンパクトな固定式等速自在継手を先に提案している(例えば、特許文献1参照)。
この等速自在継手は、図10に示すように、単一の円筒状外輪130を共通にしてその一端側(図示左側)に固定式継手部110(UJ)を配設すると共に他端側(図示右側)に摺動式継手部120(DOJ)を配設し、その固定式継手部110のDOJ側端部に凹球面部115を設けると共に摺動式継手部120のUJ側端部に凸球面部125を設け、その凹球面部115と凸球面部125からなる球対偶140を介して固定式継手部110と摺動式継手部120とを連結した構造を具備する。
このように固定式継手部110と摺動式継手部120を共通の外輪130に組み込み、固定式継手部110と摺動式継手部120を球対偶140で連結した構造としたことにより、固定式継手部110と摺動式継手部120のそれぞれの作動角を加えた大きな作動角を実現することができ、固定式継手部110と摺動式継手部120との間に凸球面部115と凹球面部125からなる球対偶140が介在するのみであるため、構造が簡単で軽量コンパクトな等速自在継手を実現している。
固定式継手部110は、軸方向に延びる複数のトラック溝131が内周面に円周方向等間隔に形成された外輪130を摺動式継手部120と共通にし、外輪130のトラック溝131と対をなして軸方向に延びる複数のトラック溝116が外周面に円周方向等間隔に形成された内輪112と、外輪130のトラック溝131と内輪112のトラック溝116との間に介在してトルクを伝達する複数のボール114と、外輪130の内周面と内輪112の外周面との間に介在してボール114を保持するケージ113とを備えている。複数のボール114は、ケージ113に形成されたポケット117に収容されて円周方向等間隔に配置されている。内輪112にスプライン嵌合されたシャフト111の端部に凹球面部115が一体的に形成されている。
この固定式継手部110における内輪112から延びるシャフト111と外輪130との間には、内部からのグリース漏洩および外部からの異物侵入を防止するために蛇腹状のブーツ150が装着されている。このブーツ150の大径端部152は外輪130の外周面にブーツバンド154により固定され、その小径端部156はシャフト111に取り付けられたアダプタ151の外周面にブーツバンド158により固定されている。
摺動式継手部120は、前述の固定式継手部110と共通にする外輪130と、その外輪130のトラック溝131と対をなして軸方向に延びる複数のトラック溝126が外周面に円周方向等間隔に形成された内輪122と、外輪130のトラック溝131と内輪122のトラック溝126との間に介在してトルクを伝達する複数のボール124と、外輪130の内周面と内輪122の外周面との間に介在してボール124を保持するケージ123とを備えている。複数のボール124は、ケージ123に形成されたポケット127に収容されて円周方向等間隔に配置されている。内輪122にスプライン嵌合されたシャフト121の端部に凸球面部125が一体的に形成されている。
この摺動式継手部120における内輪122から延びるシャフト121と外輪130との間にも、内部からのグリース漏洩および外部からの異物侵入を防止するために蛇腹状のブーツ160が装着されている。このブーツ160の大径端部162は外輪130の外周面にブーツバンド164により固定され、その小径端部166はシャフト121の外周面にブーツバンド168により固定されている。
特開2008−196591号公報
ところで、前述した特許文献1に開示された等速自在継手における外輪130のトラック溝131は、図11に示すようにその外輪130の一端側(図示左側)に位置する固定式継手部110の円弧状トラック131a、およびその円弧状トラック131aに連続して繋がった軸方向と平行な直線状トラック131bと、その固定式継手部110の直線状トラック131bに連続して繋がって外輪130の他端側(図示右側)に延びる摺動式継手部120の直線状トラック131cとで構成されている(特許文献1の段落番号[0039]参照)。
このように外輪130のトラック溝131を他端側に直線状トラック131cで開いた形状とすることにより、外輪130の鍛造成形でトラック溝131を同時に形成し易くしており、また、固定式継手部110と摺動式継手部120との間に配される球対偶140の可動スペースを容易に確保できるようにしている。
一方、この等速自在継手の製造において、固定式継手部110のボール組み込みは、ケージ113に内輪112を組み込み、その内輪112が組み込まれたケージ113を外輪130に組み込み、図11に示すようにケージ113および内輪112を最大作動角以上(ケージ113の傾き角度γ)に大きく傾けた状態で、外輪130の一端側(図示左側)に位置する開口端部にケージ113のポケット117を覗かせてそのポケット117にボール114を組み込むようにしている(特許文献1の段落番号[0060]参照)。
前述したように外輪130のトラック溝131は、その外輪130の一端側(図示左側)で円弧状となっており(円弧状トラック131a)、外輪130の開口端部で円弧状トラック131aの溝底と継手中心軸との距離が外輪130の他端側(図示右側)よりも短くなっているため、固定式継手部110にボール114を組み込むに際して、外輪130の開口端部にケージ113のポケット117を覗かせることができるようにケージ113を大きく傾ける必要がある。
ここで、固定式継手部110のボール114を組み込むに際しては、外輪130の開口端部にケージ113のポケット117を覗かせて複数のボール114を順次挿入していくが、このボール組み込み時、外輪130の奥側(他端側)に位置するポケット117に収容されたボール114が周方向に移動してそのポケット117の端部と干渉することになる。従って、固定式継手部110のボール114を組み込むに際してケージ113を大きく傾けると、ポケット117内でのボール114の周方向移動量が大きくなり、ポケット117の端部と干渉し易くなる。
このボール114の周方向移動によるポケット117との干渉を抑制するためには、ケージ113のポケット117の周方向長さを大きくする必要があり、その場合、ポケット117間に位置する柱部の周方向長さが小さくなってケージ113の強度が低下する。そのため、ボール組み込み時のケージ113の傾き角度γは、ケージ113の柱部の周方向長さを必要なケージ強度以上に確保できる程度に規制されることになる。その結果、固定式継手部110のボール114を組み込むに際して、ケージ113を大きく傾けることが困難となる場合がある。
このようにボール組み込み時におけるケージ113の傾き角度γが規制されると、外輪130のトラック溝底の端部と外輪130の一端側端面との角部(図11の点a)が、固定式継手部110の最大作動角時においてボール114がトラック溝131と接触するボール接触点(図11の点b)に接近することになる。つまり、そのボール接触点から外輪130の端面までの距離Aが小さくなることから、最大作動角時での外輪130の強度および耐久性が低下することになる。その結果、最大作動角時での外輪130の強度および耐久性を確保しようとすると、最大作動角が小さく規制されてしまうことになる。
そこで、本発明は前述の点を改善して提案されたもので、その目的とするところは、固定式継手部における外輪の強度および耐久性を確保し、固定式継手部の最大作動角を大きくし得る固定式等速自在継手およびその製造方法を提供することにある。
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、軸方向に延びる複数のトラック溝が内周面に形成された円筒状外輪を共通にしてその一端側に、外輪のトラック溝と対をなして軸方向に延びる複数のトラック溝が外周面に形成された内輪、外輪のトラック溝と内輪のトラック溝との間に介在してトルクを伝達するボール、および外輪の内周面と内輪の外周面との間に介在してボールを保持するポケットが形成されたケージからなる固定式継手部を配設すると共に、他端側に摺動式継手部を配設し、固定式継手部および摺動式継手部のいずれか一方の対向端部に凸球面部を設けると共に他方の対向端部に凹球面部を設け、凸球面部と凹球面部からなる球対偶を介して固定式継手部と摺動式継手部を連結した固定式等速自在継手およびその製造方法であって、以下の点を特徴とする。
本発明に係る固定式等速自在継手は、固定式継手部のケージを傾けてそのポケットを摺動式継手部側に開口させ、その摺動式継手部側に開口するポケットの端面とケージの外周面との角部と、外輪のトラック溝底との距離がボールの外径と同一になる作動角をとった状態で、外輪の一端側に開口するポケットの端面とケージの外周面との角部と、外輪のトラック溝底の端部との距離がボールの外径以下となるように規定したことを特徴とする。
また、本発明に係る固定式等速自在継手の製造方法は、固定式継手部のケージを傾けてそのポケットを摺動式継手部側に開口させ、その摺動式継手部側に開口するポケットの端面とケージの外周面との角部と、外輪のトラック溝底との距離がボールの外径と同一になる作動角をとった状態で、外輪の一端側に開口するポケットの端面とケージの外周面との角部と、外輪のトラック溝底の端部との距離がボールの外径以下となるように規定することにより、摺動式継手部側に開口するポケットに、固定式継手部のボールを外輪の他端側のトラック溝を通過させて組み込むことを特徴とする。
本発明では、固定式継手部と摺動式継手部とで円筒状外輪を共通にしたことにより、その外輪内に固定式と摺動式の二つの継手部を組み合わせた構造を具備する。さらに、固定式継手部および摺動式継手部のいずれか一方の対向端部に凸球面部を設けると共に他方の対向端部に凹球面部を設け、凸球面部と凹球面部からなる球対偶を介して固定式継手部と摺動式継手部を連結したことにより、その球対偶を、固定式継手部と摺動式継手部で共通の一点を中心とした球面案内機構とすることで、この球面中心を作動角の中心とする固定式等速自在継手を実現できる。
このように固定式継手部と摺動式継手部を共通の外輪に組み込み、固定式継手部と摺動式継手部を球対偶で連結した構造としたことにより、固定式継手部と摺動式継手部のそれぞれの作動角を加えた大きな作動角を実現することができ、固定式継手部と摺動式継手部との間に凸球面部と凹球面部からなる球対偶が介在するのみであるため、構造が簡単で軽量コンパクトな固定式等速自在継手を提供できる。
また、本発明では、固定式継手部のケージを傾けてそのポケットを摺動式継手部側に開口させ、その摺動式継手部側に開口するポケットの端面とケージの外周面との角部と、外輪のトラック溝底との距離がボールの外径と同一になる作動角をとった状態で、外輪の一端側に開口するポケットの端面とケージの外周面との角部と、外輪のトラック溝底の端部との距離がボールの外径以下となるように規定することにより、摺動式継手部側に開口するポケットに、固定式継手部のボールを外輪の他端側のトラック溝を通過させて組み込むようにしている。
これにより、固定式継手部のボールを従来のように外輪の一端側に位置する開口端部からケージに組み込まなくて済むので、ボール組み込み時におけるケージの傾き角度に規制されることがなく、外輪の端部の軸方向位置を任意に設定できる。その結果、固定式継手部の最大作動角時においてボールがトラック溝と接触するボール接触点から外輪の端面までの距離を従来よりも大きく取ることができるので、最大作動角時での外輪の強度および耐久性を確保することができる。
本発明における外輪のトラック溝は、外輪の一端側に位置する固定式継手部の円弧状トラックおよびその円弧状トラックに連続して繋がった固定式継手部の直線状トラックと、固定式継手部の直線状トラックに連続して繋がって外輪の他端側に延びる摺動式継手部の直線状トラックとで構成され、摺動式継手部の直線状トラックPCRを固定式継手部の直線状トラックPCRよりも大きくし、摺動式継手部のボールの外径と固定式継手部のボールの外径を同一とすることが望ましい。
このようにすれば、摺動式継手部の直線状トラックの溝底径を固定式継手部の直線状トラックの溝底径よりも大きくすることができ、固定式継手部のボールを摺動式継手部の直線状トラックからケージのポケットに組み込むに際してそのケージの傾き角度を、摺動式継手部の直線状トラックの溝底径と固定式継手部の直線状トラックの溝底径とが同一の場合よりも小さくすることができる。その結果、ボール組み込み時にケージを傾けた場合におけるボールのポケット内での周方向移動量を小さくすることができるので、ケージのポケットの周方向長さを小さくして柱部の周方向長さを大きくすることができ、ケージの強度および耐久性を向上させることが容易となる。
また、本発明における外輪のトラック溝は、外輪の一端側に位置する固定式継手部の円弧状トラックおよびその円弧状トラックに連続して繋がった固定式継手部の直線状トラックと、固定式継手部の直線状トラックに連続して繋がって外輪の他端側に延びる摺動式継手部の直線状トラックとで構成され、摺動式継手部の直線状トラックPCRと固定式継手部の直線状トラックPCRを同一とし、摺動式継手部のボールの外径を固定式継手部のボールの外径よりも大きくすることが望ましい。
このようにすれば、摺動式継手部の直線状トラックPCRを固定式継手部の直線状トラックPCRよりも大きくし、摺動式継手部のボールの外径と固定式継手部のボールの外径を同一とした場合と同様、摺動式継手部の直線状トラックの溝底径を固定式継手部の直線状トラックの溝底径よりも大きくすることができ、固定式継手部のボールを摺動式継手部の直線状トラックからケージのポケットに組み込むに際してそのケージの傾き角度を、摺動式継手部の直線状トラックの溝底径と固定式継手部の直線状トラックの溝底径とが同一の場合よりも小さくすることができる。その結果、ボール組み込み時にケージを傾けた場合におけるボールのポケット内での周方向移動量を小さくすることができるので、ケージのポケットの周方向長さを小さくして柱部の周方向長さを大きくすることができ、ケージの強度および耐久性を向上させることが容易となる。
さらに、本発明における外輪の固定式継手部の直線状トラックと摺動式継手部の直線状トラックとの間に、固定式継手部のボール組み込み時にボールが落ち込む凹み部を設けることが望ましい。
このようにすれば、固定式継手部のボールを摺動式継手部の直線状トラックからケージのポケットに組み込むに際して、ボールを摺動式継手部の直線状トラックから凹み部へ一旦落とし込むことができるので、ボール組み込み時におけるケージの傾き角度を、摺動式継手部の直線状トラックの溝底径を固定式継手部の直線状トラックの溝底径よりも大きくした場合よりもさらに小さくすることができる。その結果、ボール組み込み時にケージを傾けた場合におけるボールのポケット内での周方向移動量を小さくすることができるので、ケージのポケットの周方向長さを小さくして柱部の周方向長さを大きくすることができ、ケージの強度および耐久性をより一層向上させることが容易となる。
本発明における外輪は、固定式継手部が位置する一端側のトラック溝の端部を除く部位に熱処理による焼入れ硬化層が形成されていることが望ましい。
本発明では、前述したように固定式継手部の最大作動角時においてボールがトラック溝と接触するボール接触点から外輪の端面までの距離を従来よりも大きく取ることができることから、固定式継手部が位置する一端側のトラック溝の端部を焼き入れせずに生のままとすることが容易となり、焼き割れが発生し難い外輪の製作が可能となって歩留まりの向上が図れて製品のコスト低減が図れる。
本発明によれば、固定式継手部と摺動式継手部を共通の外輪に組み込み、両者の固定式継手部と摺動式継手部を球対偶で連結した構造としたことにより、固定式継手部と摺動式継手部のそれぞれの作動角を加えた大きな作動角を実現することができ、固定式継手部と摺動式継手部との間に凸球面部と凹球面部からなる球対偶が介在するのみであるため、構造が簡単で軽量コンパクトな固定式等速自在継手を提供できる。
しかも、この固定式等速自在継手では、固定式継手部のケージを傾けてそのポケットを摺動式継手部側に開口させ、その摺動式継手部側に開口するポケットの端面とケージの外周面との角部と、外輪のトラック溝底との距離がボールの外径と同一になる作動角をとった状態で、外輪の一端側に開口するポケットの端面とケージの外周面との角部と、外輪のトラック溝底の端部との距離がボールの外径以下となるように規定することにより、摺動式継手部側に開口するポケットに、固定式継手部のボールを外輪の他端側のトラック溝を通過させて組み込むようにしている。
これにより、固定式継手部のボールを従来のように外輪の一端側に位置する開口端部からケージに組み込まなくて済むので、ボール組み込み時におけるケージの傾き角度に規制されることがなく、外輪の端部の軸方向位置を任意に設定できる。その結果、固定式継手部の最大作動角時においてボールがトラック溝と接触するボール接触点から外輪の端面までの距離を従来よりも大きく取ることができるので、最大作動角時での外輪の強度および耐久性を確保することができる。
以上のことから、本発明では、固定式継手部における外輪の強度および耐久性を確保すると共に、固定式継手部の最大作動角を大きくすることができ、例えば、近年における自動車のドライブシャフトに使用される固定式等速自在継手の高角化による前輪の操舵角の増大への要望に迅速に対応することができる。
本発明の実施形態で、固定式等速自在継手の全体構成を示す断面図である。 図1の固定式継手部と摺動式継手部とが最大作動角をとった状態を示す断面図である。 本発明の実施形態で、固定式継手部のボールを組み込む要領を説明するための断面図である。 長窓のポケットと短窓のポケットを周方向に交互に配置したケージを示す断面図である。 本発明の他の実施形態で、固定式継手部のボールを組み込む要領を説明するための断面図である。 本発明の他の実施形態で、固定式継手部のボールを組み込む要領を説明するための断面図である。 本発明の他の実施形態で、固定式継手部のボールを組み込む要領を説明するための断面図である。 ボールを外輪の一端側の開口部から組み込む従来の場合と、ボールを外輪の摺動式継手部のトラック溝側から組み込む本発明の場合とを比較するための断面図である。 図1の固定式等速自在継手を組み立てる要領を説明するための断面図である。 従来の固定式等速自在継手を示す断面図である。 従来方法で固定式継手部のボールを組み込む要領を説明するための断面図である。
本発明に係る固定式等速自在継手の実施形態を以下に詳述する。図1に示す実施形態の固定式等速自在継手は、固定式継手部10としてUJ、摺動式継手部20としてDOJをそれぞれ適用して組み合わせた構造を例示する。なお、固定式継手部10としてはBJ、摺動式継手部20としてはLJを適用して組み合わせることも可能である。
この実施形態の固定式等速自在継手は、以下の構造を具備する。図1に示すように円筒状をなす単一の外輪30を共通にしてその一端側(図示左側)に固定式継手部10(UJ)を配設すると共に他端側(図示右側)に摺動式継手部20(DOJ)を配設し、その固定式継手部10のDOJ側端部に凹球面部15を設けると共に摺動式継手部20のUJ側端部に凸球面部25を設け、その凹球面部15と凸球面部25からなる球対偶40を介して固定式継手部10と摺動式継手部20とを連結した構造を具備する。
固定式継手部10は、軸方向に延びる複数のトラック溝31が内周面に円周方向等間隔に形成された外輪30を摺動式継手部20と共通にし、外輪30のトラック溝31と対をなして軸方向に延びる複数のトラック溝16が外周面に円周方向等間隔に形成された内輪12と、外輪30のトラック溝31と内輪12のトラック溝16との間に介在してトルクを伝達する複数のボール14と、外輪30の内周面と内輪12の外周面との間に介在してボール14を保持するケージ13とを備えている。複数のボール14は、ケージ13に形成されたポケット17に収容されて円周方向等間隔に配置されている。内輪12にスプライン嵌合されたシャフト11の端部に凹球面部15が一体的に形成されている。
この内輪12にスプライン嵌合されたシャフト11と外輪30との間で作動角度変位を許容しながらトルク伝達が可能な構造となっている。なお、シャフト11の外周面のスプライン端部に形成された環状凹溝にサークリップ等の止め輪19を嵌合させ、内輪12の外輪開口側端部で止め輪19を係止させることにより、内輪12に対するシャフト11の抜け止め構造としている。
外輪30とシャフト11との間には、内部からのグリース漏洩および外部からの異物侵入を防止するために樹脂あるいはゴム製の蛇腹状ブーツ50が装着され、このブーツ50により外輪30の開口部を閉塞している。この蛇腹状ブーツ50の大径端部52は外輪30の外周面にブーツバンド54により固定され、その小径端部56はシャフト11の外周面にブーツバンド58により固定されている。
この固定式継手部10では、外輪30のトラック溝31の曲率中心O11と内輪12のトラック溝16の曲率中心O12とを、継手中心O10に対して等距離fだけ軸方向に互いに反対向きにオフセットしており、シャフト11と外輪30とが角度変位すると、ケージ13のポケット17に収容されたボール14は常にどの作動角においても、その作動角の二等分面内に維持され、継手の等速性が確保される。
一方、摺動式継手部20は、前述の固定式継手部10と共通にする外輪30と、その外輪30のトラック溝31と対をなして軸線と平行に延びる複数のトラック溝26が外周面に円周方向等間隔に形成された内輪22と、外輪30のトラック溝31と内輪22のトラック溝26との間に介在してトルクを伝達する複数のボール24と、外輪30の内周面と内輪22の外周面との間に介在してボール24を保持するケージ23とを備えている。複数のボール24は、ケージ23に形成されたポケット27に収容されて円周方向等間隔に配置されている。内輪22にスプライン嵌合されたシャフト21の端部に凸球面部25が形成されている。
この内輪22にスプライン嵌合されたシャフト21と外輪30との間で作動角度変位を許容しながらトルク伝達が可能な構造となっている。また、シャフト21の外周面のスプライン端部に形成された環状凹溝にサークリップ等の止め輪29を嵌合させ、内輪22の外輪奥側端部に形成された凹段部で止め輪29を係止させることにより、内輪22に対するシャフト21の抜け止め構造としている。
また、外輪30とシャフト21との間には、内部からのグリース漏洩および外部からの異物侵入を防止するために樹脂あるいはゴム製の蛇腹状ブーツ60が装着され、このブーツ60により外輪30の開口部を閉塞している。この蛇腹状ブーツ60の大径端部62は外輪30の外周面にブーツバンド64により固定され、その小径端部66は内方へ折り返し成形されてシャフト21の外周面にブーツバンド68により固定されている。
このようにブーツ60の小径端部66を内方へ折り返し成形して固定した構造としたことにより、ブーツ60の小径端部66をブーツ内部でシャフト21にブーツバンド68により固定することになり、ブーツ60を軸方向にコンパクトに配置することができる。
この摺動式継手部20では、ケージ23の外周面の曲率中心O21と内周面の曲率中心O22とを継手中心O20に対して等距離Fだけ軸方向にオフセットさせている。このケージオフセットにより、シャフト21と外輪30とが角度変位すると、ケージ23のポケット27に収容されたボール24は常にどの作動角においても、その作動角の二等分面内に維持され、継手の等速性が確保される。
固定式継手部10と摺動式継手部20とで共通する外輪30のトラック溝31は、外輪の一端側(図示左側)に位置する固定式継手部10の円弧状トラック31a、およびその円弧状トラック31aに連続して繋がった軸方向と平行な直線状トラック31bと、その固定式継手部10の直線状トラック31bに連続して繋がって外輪30の他端側(図示右側)に延びる摺動式継手部20の直線状トラック31cとで構成されている。
なお、固定式継手部10における内輪12のトラック溝16は、外輪30の一端側に位置する直線状トラック16bとその直線状トラック16bに連続して繋がった円弧状トラック16aとで構成されている。また、摺動式継手部20における内輪22のトラック溝26は直線状をなす。
これら固定式継手部10と摺動式継手部20を組み込んだ固定式等速自在継手では、摺動式継手部20の凸球面部25を、凹球面部15の内球面に球面嵌合された中空形状の頭部25aと、その頭部25aの中空部に嵌挿され、シャフト21の先端に設けられた首部21aとで構成している。この首部21aの外周面に形成された環状凹溝にサークリップ等の止め輪41を嵌合させ、頭部25aの内周面に形成された環状凹溝で止め輪41を係止させることにより、頭部25aに対する首部21aの抜け止め構造としている。
この凸球面部25の球面中心Oはシャフト21の中心軸M2上に配置されている。一方、固定式継手部10のシャフト11の先端部(摺動式継手部20のシャフト21との対向端部)に、凸球面部25を受ける凹球面部15が一体的に形成されている。この凹球面部15の球面中心Oはシャフト11の中心軸M1上に配置され、シャフト11の中心軸M1は摺動式継手部20のシャフト21の中心軸M2と一致する。凸球面部25の球面中心Oと凹球面部15の球面中心Oは一致して継手中心、つまり、球対偶40の中心となる。
凹球面部15と凸球面部25からなる球対偶40を、固定式継手部10のシャフト11と摺動式継手部20のシャフト21で共通の一点を中心Oとして球面案内機構とし、球対偶40の凸球面部25の頭部25aにシャフト21の首部21aを嵌挿したことにより、この球対偶40の中心Oを作動角の中心とする固定式等速自在継手となる。
このように固定式継手部10と摺動式継手部20を共通の外輪30に組み込み、固定式継手部10のシャフト11と摺動式継手部20のシャフト21を球対偶40で連結した構造とすることにより、固定式継手部10の作動角と摺動式継手部20の作動角を加えた大きな作動角を実現することができ、固定式継手部10と摺動式継手部20との間に凸球面部15と凹球面部25からなる球対偶40が介在するのみであるため、構造が簡単で軽量コンパクトな固定式等速自在継手80を提供できる。
図2は固定式継手部10のシャフト11と摺動式継手部20のシャフト21が最大作動角θをとった状態を示す。なお、ブーツ50,60は図示省略している。この最大作動角θは、固定式継手部10の最大作動角αと摺動式継手部20の最大作動角βの合計となり、図1に示すように固定式継手部10の作動角が0°での球対偶40の球面中心Oから固定式継手部10の継手中心O10までの距離L1と、摺動式継手部20の作動角が0°での球対偶40の球面中心Oから摺動式継手部20の継手中心O20までの距離L2との関係によって決定される。
なお、図2に示すように固定式継手部10と摺動式継手部20が最大作動角θをとった時に、凸球面部25の首部21aの根元部分が縊れた形状をなすことにより、凹球面部15との干渉を回避している。また、凹球面部15の外周面にボール14の配列ピッチに合わせて複数の凹所15aが形成されていることにより、最大作動角時にボール14との干渉を回避している。
通常、単体の固定式等速自在継手(UJ)の最大作動角が50°で単体の摺動式等速自在継手(DOJ)の最大作動角が30°であることから、固定式継手部10が摺動式継手部20よりも構造上大きな作動角をとることができるので、球対偶40の球面中心Oから固定式継手部10の継手中心O10までの距離L1と、球対偶40の球面中心Oから摺動式継手部20の継手中心O20までの距離L2については、L1<L2の条件を満足するように設定すればよい。
このように設定することにより、固定式継手部10に摺動式継手部20よりも大きな作動角を分担させることになり(固定式継手部10の最大作動角α>摺動式継手部20の最大作動角β)、例えば、固定式継手部10の最大作動角αを37°、摺動式継手部20の最大作動角βを23°とすることで、固定式等速自在継手としては、より大きな最大作動角(θ=60°)が得られる。
最大作動角θは、固定式継手部10と摺動式継手部20に分配されることから、それぞれの最大作動角が単体の等速自在継手よりも小さくて済むため、ボールトラック端部に余裕ができ、荷重が各ボールトラックに均一に付与されることから強度の向上が図れる。また、固定式継手部10および摺動式継手部20の構成部材間の相対変位が小さくなるため、耐久性の向上も図れる。これは、車両の常用角(直進状態での作動角)が大きい場合に特にその効果が顕著である。
なお、ボール14,24が8個の場合には、6個ボールタイプに比べて内輪12,22のシャフトスペースを広く確保することができるので、固定式継手部10と摺動式継手部20のシャフト11,21間に位置する球対偶40(凹球面部15および凸球面部25)を形成し易くなる。特に、8個ボールの摺動式継手部20とすることで、6個ボールの摺動式継手部と比べてボール径が小さく径方向外方に位置するため、内輪22のスプライン内径を大きくすることができる。
この固定式等速自在継手の製造において、固定式継手部10のボール14の組み込みは、以下の要領でもって行う。
まず、外輪30の一端側に固定式継手部10を組み込む。この固定式継手部10の組み込みは、単体の固定式等速自在継手(UJ)を組み立てる場合と同様で、ケージ13に内輪12を組み込み(ケージ13の軸線に対して内輪12を90°傾けた状態でケージ13に内輪12を挿入し、その後、内輪12を90°逆方向に傾けて正規の姿勢に配置する)、その内輪12が組み付けられたケージ13を外輪30に組み込む(外輪30の軸線に対してケージ13を90°傾けた状態で外輪30にケージ13を挿入し、その後、ケージ13を90°逆方向に傾けて正規の姿勢に配置する)。
そして、図3に示すようにケージ13および内輪12を最大作動角以上(ケージ13の傾き角度γ1)に大きく傾けた状態で、外輪30の他端側、つまり、摺動式継手部20の直線状トラック31c側にケージ13のポケット17を覗かせてボール14を摺動式継手部20の直線状トラック31cを通過させて摺動式継手部側に開口するポケット17に組み込む。
この固定式等速自在継手では、固定式継手部10のケージ13を傾けてそのポケット17を摺動式継手部20側に開口させ、その摺動式継手部側に開口するポケット17の端面とケージ13の外周面との角部(図3の点c)と、外輪30のトラック溝底(図3の点g)との距離Dがボール14の外径d1と同一になる作動角(ケージ13の傾き角度γ1)をとった状態で、外輪30の一端側に開口するポケット17の端面とケージ13の外周面との角部(図3の点e)と、外輪30のトラック溝底の端部と外輪30の一端側端面との角部(図3の点a)の距離Eがボール14の外径以下となるように規定する。
このように、固定式継手部10のケージ13を傾けてそのポケット17を摺動式継手部20側に開口させ、その摺動式継手部側に開口するポケット17の端面とケージ13の外周面との角部(図3の点c)と、外輪30のトラック溝底(図3の点g)との距離Dがボール14の外径d1と同一になる作動角(ケージ13の傾き角度γ1)をとった状態で、外輪30の一端側に開口するポケット17の端面とケージ13の外周面との角部(図3の点e)と、外輪30のトラック溝底の端部と外輪30の一端側端面との角部(図3の点a)の距離Eがボール14の外径以下となるように規定することにより、摺動式継手部側に開口するポケット17に、固定式継手部10のボール14を外輪30の他端側のトラック溝31を通過させて組み込むようにしたことから、固定式継手部10のボール14を従来のように外輪130の一端側(図示左側)に位置する開口端部からケージ113に組み込まなくて済むので(図11参照)、ボール組み込み時におけるケージ13の傾き角度γ1に規制されることがなく、外輪30の端部の軸方向位置を任意に設定できる。
その結果、固定式継手部10の最大作動角時においてボール14がトラック溝31と接触するボール接触点(図3の点b)から外輪30の端面までの距離Bを従来の場合(図11参照)よりも大きく取ることができるので(B>A)、最大作動角時での外輪30の強度および耐久性を確保することができる。
また、固定式継手部10の最大作動角時においてボール14がトラック溝31と接触するボール接触点(図3の点b)から外輪30の端面までの距離Bを従来よりも大きく取ることができることから、外輪30は、固定式継手部10が位置する一端側のトラック溝31の端部を除く部位に熱処理による焼入れ硬化層m(図中のクロスハッチング部分)を形成することが可能となる。
このようにすれば、固定式継手部10が位置する一端側のトラック溝31の端部を焼き入れせずに生のままとすることが容易となり、焼き割れが発生し難い外輪30の製作が可能となって歩留まりの向上が図れて製品のコスト低減が図れる。
ここで、図4に示すように固定式継手部10のボール組み込み時におけるケージ13の傾き角度γ1を許容し得るポケット17aの周方向長さW1を長窓とし、例えば37°の最大作動角αを許容するポケット17bの周方向長さW2を短窓とし、これら長窓のポケット17aと短窓のポケット17bを周方向に交互に配置したケージ13を使用することで、固定式継手部10のボール14を外輪30の他端側のトラック溝31を通過させてケージ13のポケット17に組み込むことが可能となる。なお、このケージ13は、例えば50°の最大作動角を持つ単体の固定式等速自在継手(UJ)に使用されるケージ、つまり、全てのポケットの周方向長さが同一のケージ以上の柱部の断面積を確保している。
前述したように、外輪30のトラック溝31は、外輪30の一端側に位置する固定式継手部10の円弧状トラック31aおよびその円弧状トラック31aに連続して繋がった固定式継手部10の直線状トラック31bと、固定式継手部10の直線状トラック31bに連続して繋がって外輪30の他端側に延びる摺動式継手部20の直線状トラック31cとで構成されている。
図3に示す実施形態では、摺動式継手部20の直線状トラックPCR(PCR2)と固定式継手部10の直線状トラックPCR(PCR1)とを同一とし、摺動式継手部20のボール24の外径d2と固定式継手部10のボール14の外径d1を同一とした場合について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、以下のような構造とすることが可能である。
なお、図3に示す実施形態では、摺動式継手部20の最大作動角が固定式継手部10の最大作動角よりも小さく設定されていることから、外輪30における固定式継手部10側の外径D1よりも摺動式継手部20側の外径D2を小さくすることにより外輪30における摺動式継手部20側を薄肉にしても、摺動式継手部20側での強度を十分に確保することができる。
図5に示す実施形態では、摺動式継手部20の直線状トラックPCR(PCR2)を固定式継手部10の直線状トラックPCR(PCR1)よりも大きくし、摺動式継手部20のボール24の外径d2と固定式継手部10のボール14の外径d1を同一としている。
これにより、摺動式継手部20の直線状トラック31cの溝底径を固定式継手部10の直線状トラック31bの溝底径よりも大きくすることができ、固定式継手部10のボール14を摺動式継手部20の直線状トラック31cからケージ13のポケット17に組み込むに際してそのケージ13の傾き角度γ2を、図3に示す実施形態のように摺動式継手部20の直線状トラック31cの溝底径と固定式継手部10の直線状トラック31bの溝底径とが同一の場合よりも小さくすることができる。
その結果、ボール組み込み時にケージ13を傾けた場合におけるボール14のポケット17内での周方向移動量を小さくすることができるので、ケージ13のポケット17の周方向長さを小さくして柱部の周方向長さを大きくすることができ、ケージ13の強度および耐久性を向上させることが容易となる。
なお、図3に示す実施形態では、外輪30における固定式継手部10側の外径D1よりも摺動式継手部20側の外径D2が小さくなっていることから、この摺動式継手部20側の外径D2が固定式継手部10側の外径D1よりも大きくならない程度、例えば、図5に示すように摺動式継手部20側の外径D2が固定式継手部10側の外径D1と同一になるように摺動式継手部20の直線状トラックPCR(PCR2)を固定式継手部10の直線状トラックPCR(PCR1)よりも大きくすることができる。
その結果、図3に示す実施形態の場合よりもボールPCDを大きくすることができ、摺動式継手部20におけるトラック荷重、面圧の低下、および強度、耐久性の向上が図れ、また、摺動式継手部20での発熱が少なくなることで継手全体の耐久性も向上する。
また、図6に示す実施形態では、摺動式継手部20の直線状トラックPCR(PCR2)と固定式継手部10の直線状トラックPCR(PCR1)を同一とし、摺動式継手部20のボール24の外径d2を固定式継手部10のボール14の外径d1よりも大きくしている。
これにより、図5に示す実施形態のように摺動式継手部20の直線状トラックPCR(PCR2)を固定式継手部10の直線状トラックPCR(PCR1)よりも大きくし、摺動式継手部20のボール24の外径d2と固定式継手部10のボール14の外径d1を同一とした場合と同様、摺動式継手部20の直線状トラック31cの溝底径を固定式継手部10の直線状トラック31bの溝底径よりも大きくすることができ、固定式継手部10のボール14を摺動式継手部20の直線状トラック31cからケージ13のポケット17に組み込むに際してそのケージ13の傾き角度γ3を、図3に示す実施形態のように摺動式継手部20の直線状トラック31cの溝底径と固定式継手部10の直線状トラック31bの溝底径とが同一の場合よりも小さくすることができる。
その結果、ボール組み込み時にケージ13を傾けた場合におけるボール14のポケット17内での周方向移動量を小さくすることができるので、ケージ13のポケット17の周方向長さを小さくして柱部の周方向長さを大きくすることができ、ケージ13の強度および耐久性を向上させることが容易となる。
さらに、図7に示す実施形態では、図3に示す実施形態における固定式継手部10の直線状トラック31bと摺動式継手部20の直線状トラック31cとの間に、固定式継手部10のボール組み込み時にボール14が落ち込む凹み部31dを設けている。
これにより、固定式継手部10のボール14を摺動式継手部20の直線状トラック31cからケージ13のポケット17に組み込むに際して、ボール14を摺動式継手部20の直線状トラック31cから凹み部31dへ一旦落とし込むことができるので、ボール組み込み時におけるケージ13の傾き角度γ4を、図5および図6に示す実施形態のように摺動式継手部20の直線状トラック31cの溝底径を固定式継手部10の直線状トラック31bの溝底径よりも大きくした場合よりもさらに小さくすることができる。
その結果、ボール組み込み時にケージ13を傾けた場合におけるボール14のポケット17内での周方向移動量を小さくすることができるので、ケージ13のポケット17の周方向長さを小さくして柱部の周方向長さを大きくすることができ、ケージ13の強度および耐久性をより一層向上させることが容易となる。
なお、この場合、ケージ13における全てのポケット17の周方向長さが同一としても、例えば50°の最大作動角を持つ単体の固定式等速自在継手(UJ)に使用されるケージ、つまり、全てのポケット17の周方向長さが同一のケージ13における柱部と同程度の断面積を確保することができる。
このように全てのポケット17の周方向長さが同一のケージ13を使用できれば、ケージ13を製作することが容易となり、外輪30へケージ13を組み込む際の位相合わせも不要になると共にボール14をポケット17に挿入する順番も規制されないので、組み込み作業性が向上し、製品のコスト低減が図れる。
図8は、従来のようにボール14を外輪30の一端側(図示左側)の開口部から組み込む場合と、本発明のようにボール14を外輪30の摺動式継手部20のトラック溝側から組み込む場合とを比較するものである。従来のように、ボール14を外輪30の一端側の開口部から組み込む場合、ボール14をケージ13のポケット17に押し込んだ時、内輪12のトラック溝底の端部(図中の点h)と、ケージ13の内周面とポケット17の端面との角部(図中の点i)との間にボール14が嵌まり込み、内輪12を元の角度に戻し難くなる。
これに対して、本発明のように、ボール14を外輪30の摺動式継手部20のトラック溝側から組み込む場合、ボール14をケージ13に押し込んだ時、ケージ13の外周面とポケット17の端面との角部(図中の点j)にボール14が当接し、この状態で内輪12のトラック溝16とボール14との間に隙間nが形成されることで、内輪12を元の角度に戻すことが容易であり、固定式継手部を組み立てやすい。
従って、従来のようにボール14を外輪30の一端側(図示左側)の開口部から組み込む場合よりも、本発明のようにボール14を外輪30の摺動式継手部20のトラック溝側から組み込む場合の方が有利である。
以上のようにして、固定式継手部10のボール14を組み込んだ後、図9に示すように摺動式継手部20にシャフト21を組み付け、そのシャフト21に球対偶40を介してシャフト11を連結したアッセンブリ体を、外輪30および固定式継手部10に組み付ける。つまり、シャフト11を固定式継手部10の内輪12に挿通してスプライン嵌合させる。その後、ブーツ60の大径端部62を外輪30の外周面にブーツバンド64により固定し、図示しないが、固定式継手部10のブーツ50の小径端部56をシャフト11の外周面にブーツバンド58により固定すると共にその大径端部52を外輪30の外周面にブーツバンド54により固定することにより、固定式等速自在継手80の組立を完了する(図1参照)。
以上の実施形態における固定式等速自在継手では、固定式継手部10と摺動式継手部20とで共通にした単一の外輪30を使用した場合について説明したが、外輪30を固定式継手部10と摺動式継手部20のそれぞれで二部材により分割構成し、両部材を同軸的に突き合わせて溶接などにより接合一体化した構成とすることも可能である。
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
10 固定式継手部(UJ)
12 固定式継手部の内輪
13 固定式継手部のケージ
14 固定式継手部のボール
16 内輪のトラック溝
15 凹球面部
17 ケージのポケット
20 摺動式継手部(DOJ)
25 凸球面部
30 外輪
31 外輪のトラック溝
31a 固定式継手部の円弧状トラック
31b 固定式継手部の直線状トラック
31c 摺動式継手部の直線状トラック
31d 凹み部
40 球対偶
c,e ポケットの端面とケージの外周面との角部
g 外輪のトラック溝底
D,E ケージの外周面との角部と外輪のトラック溝底の端部との距離
1 固定式継手部のボールの外径
2 摺動式継手部のボールの外径
PCR1 固定式継手部の直線状トラックPCR
PCR2 摺動式継手部の直線状トラックPCR
m 焼入れ硬化層

Claims (10)

  1. 軸方向に延びる複数のトラック溝が内周面に形成された円筒状外輪を共通にしてその一端側に、前記外輪のトラック溝と対をなして軸方向に延びる複数のトラック溝が外周面に形成された内輪、外輪のトラック溝と内輪のトラック溝との間に介在してトルクを伝達するボール、および外輪の内周面と内輪の外周面との間に介在してボールを保持するポケットが形成されたケージからなる固定式継手部を配設すると共に、他端側に摺動式継手部を配設し、前記固定式継手部および摺動式継手部のいずれか一方の対向端部に凸球面部を設けると共に他方の対向端部に凹球面部を設け、前記凸球面部と凹球面部からなる球対偶を介して前記固定式継手部と摺動式継手部を連結した固定式等速自在継手であって、
    前記固定式継手部のケージを傾けてそのポケットを前記摺動式継手部側に開口させ、その摺動式継手部側に開口するポケットの端面と前記ケージの外周面との角部と、前記外輪のトラック溝底との距離がボールの外径と同一になる作動角をとった状態で、前記外輪の一端側に開口するポケットの端面とケージの外周面との角部と、外輪のトラック溝底の端部との距離がボールの外径以下となるように規定したことを特徴とする固定式等速自在継手。
  2. 前記外輪のトラック溝は、外輪の一端側に位置する固定式継手部の円弧状トラックおよびその円弧状トラックに連続して繋がった固定式継手部の直線状トラックと、前記固定式継手部の直線状トラックに連続して繋がって外輪の他端側に延びる摺動式継手部の直線状トラックとで構成され、前記摺動式継手部の直線状トラックPCRを前記固定式継手部の直線状トラックPCRよりも大きくし、摺動式継手部のボールの外径と固定式継手部のボールの外径を同一とした請求項1に記載の固定式等速自在継手。
  3. 前記外輪のトラック溝は、外輪の一端側に位置する固定式継手部の円弧状トラックおよびその円弧状トラックに連続して繋がった固定式継手部の直線状トラックと、前記固定式継手部の直線状トラックに連続して繋がって外輪の他端側に延びる摺動式継手部の直線状トラックとで構成され、前記摺動式継手部の直線状トラックPCRと前記固定式継手部の直線状トラックPCRを同一とし、摺動式継手部のボールの外径を固定式継手部のボールの外径よりも大きくした請求項1に記載の固定式等速自在継手。
  4. 前記外輪の前記固定式継手部の直線状トラックと前記摺動式継手部の直線状トラックとの間に、前記固定式継手部のボール組み込み時にボールが落ち込む凹み部を設けた請求項2又は3に記載の固定式等速自在継手。
  5. 前記外輪は、固定式継手部が位置する一端側のトラック溝の端部を除く部位に熱処理による焼入れ硬化層が形成されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の固定式等速自在継手。
  6. 軸方向に延びる複数のトラック溝が内周面に形成された円筒状外輪を共通にしてその一端側に、前記外輪のトラック溝と対をなして軸方向に延びる複数のトラック溝が外周面に形成された内輪、外輪のトラック溝と内輪のトラック溝との間に介在してトルクを伝達するボール、および外輪の内周面と内輪の外周面との間に介在してボールを保持するポケットが形成されたケージからなる固定式継手部を配設すると共に、他端側に摺動式継手部を配設し、前記固定式継手部および摺動式継手部のいずれか一方の対向端部に凸球面部を設けると共に他方の対向端部に凹球面部を設け、前記凸球面部と凹球面部からなる球対偶を介して前記固定式継手部と摺動式継手部を連結した固定式等速自在継手の製造方法であって、
    前記固定式継手部のケージを傾けてそのポケットを前記摺動式継手部側に開口させ、その摺動式継手部側に開口するポケットの端面と前記ケージの外周面との角部と、前記外輪のトラック溝底との距離がボールの外径と同一になる作動角をとった状態で、前記外輪の一端側に開口するポケットの端面とケージの外周面との角部と、外輪のトラック溝底の端部との距離がボールの外径以下となるように規定することにより、前記摺動式継手部側に開口するポケットに、前記固定式継手部のボールを前記外輪の他端側のトラック溝を通過させて組み込むことを特徴とする固定式等速自在継手の製造方法。
  7. 前記外輪のトラック溝は、外輪の一端側に位置する固定式継手部の円弧状トラックおよびその円弧状トラックに連続して繋がった固定式継手部の直線状トラックと、前記固定式継手部の直線状トラックに連続して繋がって外輪の他端側に延びる摺動式継手部の直線状トラックとで構成され、前記摺動式継手部の直線状トラックPCRを前記固定式継手部の直線状トラックPCRよりも大きくし、摺動式継手部のボールの外径と固定式継手部のボールの外径を同一とした請求項6に記載の固定式等速自在継手の製造方法。
  8. 前記外輪のトラック溝は、外輪の一端側に位置する固定式継手部の円弧状トラックおよびその円弧状トラックに連続して繋がった固定式継手部の直線状トラックと、前記固定式継手部の直線状トラックに連続して繋がって外輪の他端側に延びる摺動式継手部の直線状トラックとで構成され、前記摺動式継手部の直線状トラックPCRと前記固定式継手部の直線状トラックPCRを同一とし、摺動式継手部のボールの外径を固定式継手部のボールの外径よりも大きくした請求項6に記載の固定式等速自在継手の製造方法。
  9. 前記外輪の前記固定式継手部の直線状トラックと前記摺動式継手部の直線状トラックとの間に、前記固定式継手部のボール組み込み時にボールが落ち込む凹み部を設けた請求項7又は8に記載の固定式等速自在継手の製造方法。
  10. 前記外輪は、固定式継手部が位置する一端側のトラック溝の端部を除く部位に熱処理による焼入れ硬化層が形成されている請求項6〜9のいずれか一項に記載の固定式等速自在継手の製造方法。
JP2009102150A 2009-04-20 2009-04-20 固定式等速自在継手およびその製造方法 Pending JP2010249295A (ja)

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CN113738780A (zh) * 2021-08-30 2021-12-03 杭州腾励传动科技股份有限公司 一种球笼式等速万向节用高强度保持架的结构设计方法

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CN113738780A (zh) * 2021-08-30 2021-12-03 杭州腾励传动科技股份有限公司 一种球笼式等速万向节用高强度保持架的结构设计方法
CN113738780B (zh) * 2021-08-30 2022-06-17 杭州腾励传动科技股份有限公司 一种球笼式等速万向节用高强度保持架的结构设计方法

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