JP2010214987A - 車両の操舵装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 車両の横方向に加わる外乱による挙動変化に伴って発生する横加速度を適切に寄与させて車輪を転舵制御する車両の操舵装置を提供すること。
【解決手段】 目標横加速度演算部101は、目標とするθMA−γ特性を実現するθMA−G特性に基づいて設定されるフィルタX(s)と操舵角θMAとを乗算して、目標横加速度G*を計算する。フィードフォワード演算部102は、目標横加速度G*に基づいてフィードフォワード制御値δffを演算する。横加速度偏差演算部103は、目標横加速度G*と実横加速度Gとの偏差ΔGを計算し、PI制御部104が偏差ΔGに応じたフィードバック制御値Δδfbを演算する。そして、目標転舵角演算部105は、制御値δffと制御値Δδfbとを加算して目標転舵角δ*を計算する。
【選択図】 図2
【解決手段】 目標横加速度演算部101は、目標とするθMA−γ特性を実現するθMA−G特性に基づいて設定されるフィルタX(s)と操舵角θMAとを乗算して、目標横加速度G*を計算する。フィードフォワード演算部102は、目標横加速度G*に基づいてフィードフォワード制御値δffを演算する。横加速度偏差演算部103は、目標横加速度G*と実横加速度Gとの偏差ΔGを計算し、PI制御部104が偏差ΔGに応じたフィードバック制御値Δδfbを演算する。そして、目標転舵角演算部105は、制御値δffと制御値Δδfbとを加算して目標転舵角δ*を計算する。
【選択図】 図2
Description
本発明は、車両の挙動変化、特に、横方向に加わる外乱による挙動変化に対応して車輪を転舵制御し、安定走行を可能とする車両の操舵装置に関する。
従来から、例えば、特許文献1に示すように、車両用操舵装置は知られている。この従来の車両用操舵装置においては、車両の横加速度およびヨーレートとこれら各物理量の加重比とを用いて操作部材の回転操作角に対応する目標挙動指標値を演算するとともに、車両に発生して検出された横加速度およびヨーレートとこれら検出値の加重比とを用いて舵角変化による車両の挙動変化に対応する挙動指標値を演算するようになっている。そして、従来の車両用操舵装置においては、目標挙動指標値に対応するフィードフォワード項としての目標舵角と、目標挙動指標値と挙動指標値との偏差に対応するフィードバック項としての舵角修正値との和を最終的な目標舵角とし、転舵用アクチュエータをフィードバック制御するようになっている。
ここで、上記従来の車両用操舵装置においては、舵角変化に対する車両挙動の過渡応答特性に関して、応答初期では横加速度が支配的であり、その後はヨーレートが支配的であるため、横加速度の加重比を適当に小さく設定するようにしている。そして、このように横加速度に対する加重比を小さく設定してフィードバック制御による補償を行うことにより、舵角変化に対する横加速度とヨーレートの過渡応答において、低車速での速応性を確保しつつ高車速での安定性を確保するようになっている。
ところで、車両の挙動変化として、例えば、横風外乱による挙動変化に対応して車輪を転舵制御する場合には、一般的に、車両に発生した横加速度を用いたフィードバック制御によって車両の挙動を安定化させることが有効であるといわれている。これに対して、上述したように、従来の車両用操舵装置においては、横加速度の加重比を小さくして、言い換えれば、ヨーレートの加重比を大きくすることによって車両の挙動を安定化させる。
このため、例えば、横風外乱が存在しない状態では所望の安定した挙動を発生させることができるものの、横風外乱が存在する状態では横加速度の寄与が小さく上記フィードバック制御の効果が低減してしまう可能性がある。その結果、車両の挙動を安定化させることができない場合がある。したがって、車両に発生するヨーレートを用いて車両の挙動を安定化させるとともに、横風外乱が存在する状態では車両に発生する横加速度を適切に寄与させて車両の挙動を安定化させることが必要である。しかしながら、単に横加速度の寄与を大きくしてフィードバック制御を行うと、車両の応答が過敏となりすぎる可能性がある。
本発明は、上記問題に対処するためになされたものであり、その目的は、車両の横方向に加わる外乱による挙動変化に伴って発生する横加速度を適切に寄与させて車輪を転舵制御する車両の操舵装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、車両を操舵するために操作される操舵ハンドルと、車輪を転舵する転舵アクチュエータと、車両の車速を検出する車速検出手段と、車体の車幅方向に発生する実際の横加速度を検出する横加速度検出手段と、前記操舵ハンドルの操作に応じて前記車体の車幅方向に発生すべき目標横加速度を演算する目標横加速度演算手段と、前記目標横加速度演算手段により演算した目標横加速度に応じて指令値を設定する指令値設定手段と、前記指令値設定手段により設定した指令値と、前記検出した実際の横加速度と前記演算した目標横加速度との偏差とに基づいて前記転舵アクチュエータを駆動して前記車輪を転舵する転舵制御手段とを備えた車両の操舵装置において、前記目標横加速度演算手段は、前記操舵ハンドルの操作とこの操作に応じて前記車体の重心点回りに発生するヨーレートとの関係を表していて予め設定された目標伝達特性を実現する目標横加速度を演算することにある。
この場合、前記目標横加速度演算手段は、前記予め設定された目標伝達特性を表していて前記操舵ハンドルの操作に応じて発生するヨーレートの伝達関数に対して、前記車輪の転舵に応じて発生する横加速度の伝達関数を前記車輪の転舵に応じて発生するヨーレートの伝達関数で除算したものを乗算するとともに、前記車速検出手段によって検出された車速に応じて変化する車速ゲインを乗算して設定されるフィルタを用い、前記操舵ハンドルの操作に応じた目標横加速度を演算するとよい。
また、この場合、前記予め設定された目標伝達特性は、車両の所定の車速における前記操舵ハンドルの操作とこの操作に応じて前記車体の重心点回りに発生するヨーレートとの関係を表す伝達特性であるとよい。
この場合、前記目標横加速度演算手段は、前記所定の車速以上であるときに、前記予め設定された目標伝達特性を実現する目標横加速度を演算するとよい。
これらによれば、目標横加速度演算手段は、操舵ハンドルの操作とこの操作に応じて車体の重心点回りに発生するヨーレートとの関係を表していて予め設定された目標伝達特性を実現する目標横加速度を演算することができる。この場合、予め設定される目標伝達特性は、例えば、車両の車速に応じて変化する伝達特性のうち、任意の車速おける伝達特性を用いて決定されるとよい。そして、指令値設定手段は、この目標横加速度に応じて指令値(例えば、車輪の目標転舵角)を計算することができる。また、転舵制御手段は、この指令値に基づいて転舵アクチュエータを駆動して車輪を転舵させるときに、目標横加速度に対して実際の横加速度をフィードバックして実際の横加速度が目標横加速度と一致するように転舵アクチュエータを駆動して車輪を自動的に転舵することができる。
したがって、フィードバック制御によって車輪を転舵させる場合、車両挙動の過渡応答特性(周波数特性)において支配的なヨーレートの目標伝達特性を実現するように演算される目標横加速度を用いることができる。これにより、フィードバック制御において周波数特性を考慮した横加速度を適切に寄与させることができ、外乱が存在する状態での車両の挙動を良好に安定化させるとともに、運転者は良好な操舵フィーリングを知覚することができる。
以下、本発明の実施形態に係る車両の操舵装置について図面を用いて説明する。図1は、実施形態に係る車両の操舵装置のシステム構成を概略的に示している。
この車両の操舵装置は、運転者によって操舵操作される操舵操作装置10と、転舵輪としての左右前輪FW1,FW2を運転者の操舵操作に応じて転舵する転舵装置20とを機械的に分離して備えたステアリングバイワイヤ方式を採用している。操舵操作装置10は、運転者によって回動操作される操作部としての操舵ハンドル11を備えている。操舵ハンドル11は操舵入力軸12の上端に固定され、操舵入力軸12の下端には減速機構を内蔵した反力発生用の操舵反力用電動モータ13が組み付けられている。
転舵装置20は、車両の左右方向に延びて配置された転舵軸21を備えている。この転舵軸21の両端部には、タイロッド22a,22bおよびナックルアーム23a,23bを介して、左右前輪FW1,FW2が転舵可能に接続されている。左右前輪FW1,FW2は、転舵軸21の軸線方向の変位により左右に転舵される。転舵軸21の外周上には、図示しないハウジングに組み付けられた転舵用電動モータ24が設けられている。転舵用電動モータ24の回転は、ねじ送り機構26により減速されるとともに転舵軸21の軸線方向の変位に変換される。この転舵用電動モータ24が本発明の転舵アクチュエータに相当する。
次に、操舵反力用電動モータ13、転舵用電動モータ24の回転駆動を制御する電気制御装置30について説明する。電気制御装置30は、操舵角センサ31、転舵角センサ32、車速センサ33および横加速度センサ34を備えている。操舵角センサ31は、操舵ハンドル11の操舵角を検出する操舵角検出手段であって、操舵入力軸12に組み付けられて、操舵ハンドル11の基準点からの回転角を検出して操舵角θMAを表す信号を出力する。
転舵角センサ32は、転舵輪の転舵角を検出する転舵角検出手段であって、転舵軸21の基準点からの軸線方向の変位量を検出して左右前輪FW1,FW2の転舵角δを表す信号を出力する。ここで、転舵用電動モータ24のロータの回転角度は、転舵軸21の軸線方向の移動量、すなわち、転舵角δの変化量に対応した値を取る。したがって、本実施形態における転舵角センサ32は、転舵用電動モータ24のロータの基準位置に対する回転角度を検出する相対角センサ(例えば、レゾルバセンサ)と、基準位置を与えるための絶対角センサ(例えば、エンコーダ)とを備え、この両センサにより得られた転舵用電動モータ24の回転角度から転舵角δを検出する。車速センサ33は、本発明の車速検出手段に相当するもので、車両の走行速度である車速Vを表す車速信号を出力する。横加速度センサ34は、本発明の横加速度検出手段に相当するもので、車体に固定され車幅方向に働く横加速度Gを表す信号を出力する。
なお、上述した操舵角θMA、実転舵角δおよび横加速度Gは、その方向を識別できるものであり、例えば、基準点に対して左方向に向いている、あるいは、左方向に作用している場合には正の値で表され、右方向に向いている、あるいは、右方向に作用している場合には負の値で表される。また、本明細書においては、方向を区別せずに検出値の大小関係について論じる場合には、その絶対値の大きさについて論じることとする。
また、電気制御装置30は、互いに接続された操舵反力用電子制御ユニット(以下、単に、操舵反力用ECUという)35と、転舵用電子制御ユニット(以下、単に、転舵用ECUという)36とを備えている。操舵反力用ECU35および転舵用ECU36は、それぞれ、CPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータを主要構成部品とするものであり、操舵反力用ECU35の入力側には操舵角センサ31および車速センサ33が接続され、転舵用ECU36の入力側には操舵角センサ31、転舵角センサ32、車速センサ33および横加速度センサ34が接続されている。
また、操舵反力用ECU35の出力側には操舵反力用電動モータ13を駆動制御するための駆動回路37が接続されており、転舵用ECU36の出力側には転舵用電動モータ24を駆動制御するための駆動回路38が接続されている。駆動回路37,38内には、電動モータ13,24に流れる駆動電流をそれぞれ検出するための電流検出器37a,38aが設けられている。電流検出器37a,38aによって検出された駆動電流は、電動モータ13,24を駆動制御するために、操舵反力用ECU35と転舵用ECU36に対してそれぞれフィードバックされている。
次に、上記のように構成した操舵装置の動作について、操舵反力用ECU35による反力制御から説明する。
操舵反力用ECU35は、操舵角センサ31により検出された操舵角θMAに基づいて、目標操舵反力トルクT*を計算し、この目標操舵反力トルクT*に応じた制御信号(例えば、PWM制御信号)を駆動回路37に出力することで、目標操舵反力トルクT*に応じた駆動電流を操舵反力用電動モータ13に流す。これにより、目標操舵反力トルクT*に等しい操舵反力が操舵入力軸12を介して操舵ハンドル11に付与される。したがって、運転者による操舵ハンドル11の回動操作に対して適切な反力トルクが付与され、運転者は、この操舵反力を知覚しながら操舵ハンドル11を快適に回動操作できる。このような操舵反力トルクの制御は、操舵反力用ECU35が図示しないROMなどに記憶した制御プログラムを実行することにより行われる。
なお、目標操舵反力トルクT*の計算にあたっては、例えば、操舵角θMA(または車両に発生する横加速度)に比例するバネ反力トルク成分と、操舵角θMAを時間で微分した操舵角速度の大きさに比例する摩擦反力トルク成分と、操舵角速度の大きさに比例する粘性反力トルク成分とをそれぞれ計算し、各トルク成分を合算することにより求めることができる。また、目標操舵反力トルクT*の大きさに関しては、車速センサ33によって検出された車速Vに応じて変更されるとよく、例えば、検出車速Vが小さいときには目標操舵反力トルクT*が小さくなるように計算され、検出車速Vが大きいときには目標操舵反力トルクT*が大きくなるように計算されるとよい。これにより、低速走行においては運転者が軽快に操舵ハンドル11を操舵操作することができ、中高速走行においては運転者がしっかりとした反力トルクを知覚しながら操舵ハンドル11を操舵操作することができて、良好な操舵操作性を確保することができる。
次に、転舵用ECU36により実施される転舵角制御について説明する。この転舵角制御は、本発明の特徴部分に係るものであるため、転舵用ECU36内にてコンピュータプログラム処理により実現される機能を表す図2の機能ブロック図を用いて詳細に説明する。
転舵用ECU36は、目標横加速度演算部101を備えている。目標横加速度演算部101は、操舵角センサ31により検出された操舵角θMAと車速センサ33により検出された車速Vとを入力し、目標横加速度G*を計算する。以下、この計算を具体的に説明する。
一般的に、車両における横加速度Gとヨーレートγとの関係は、下記式1によって表すことができる。
ここで、前記式1中のFδγ(s)は下記式2で表されるように転舵角δを入力としヨーレートγを出力とする伝達関数であり、Fδg(s)は下記式3で表されるように転舵角δを入力とし横加速度Gを出力とする伝達関数である。
ただし、前記式2,3中のGγ(V)は車速Vごとに設定される転舵角δ−ヨーレートγの定常ゲインを表し、ωn(V)は車速Vごとに設定される車両の応答の固有振動数(共振周波数)を表し、ζは車両の応答の減衰比を表す。また、前記式2,3中のsはラプラス演算子を表す。また、前記式2中のTrは下記式4で表され、前記式3中のTy1,Ty2はそれぞれ下記式5,6で表される。
なお、前記式4中のmは車両の質量を表し、Lfは車両重心点と前車軸間の距離を表す。また、前記式5中のLrは車両重心点と後車軸間の距離を表す。また、前記式6中のIzは車両のヨーイング慣性モーメントを表す。さらに、前記式4,6中のKrは車両後輪のコーナリングパワーを表し、Lは車両のホイールベースを表す。
ここで、本実施形態においては、目標とする操舵角θMA−ヨーレートγの特性(以下、単にθMA−γ特性という)を設定し、この目標とするθMA−γ特性を実現する操舵角θMA−横加速度Gの特性(以下、単にθMA−G特性という)に基づいて目標横加速度G*を計算する。この場合、目標とするθMA−γ特性を表す伝達関数をFMAγ(s)とするとともに目標ヨーレートをγ*として、前記式1に基づけば、下記式7が成立する。
そして、前記式7を成立させるためのθMA−G特性は、前記式7を変形した下記式8によって表すことができる。
そして、目標加速度演算部101は、前記式9により表される、目標とするθMA−γ特性を実現するθMA−G特性に基づいて設定されるフィルタX(s)を用いて、目標横加速度G*を計算する。すなわち、目標加速度演算部101は、操舵角センサ31から入力した操舵角θMAとフィルタX(s)とを乗算することによって目標横加速度G*を計算する。なお、この目標横加速度演算部101は、本発明の目標横加速度演算手段に相当する。
また、転舵用ECU36は、目標転舵角δ*を計算するために、フィードフォワード演算部102、横加速度偏差演算部103、PI制御部104および目標転舵角演算部105を備えている。目標横加速度演算部101によって計算された目標横加速度G*は、フィードフォワード演算部102と横加速度偏差演算部103とに入力される。フィードフォワード演算部102は、目標横加速度G*を入力し、下記式10を用いて転舵角のフィードフォワード制御値δffを計算する。
一方、横加速度偏差演算部103は、横加速度センサ34によって検出された実横加速度Gをフィードバックして入力し、目標横加速度G*と実横加速度Gとの偏差ΔG(=G*−G)を計算する。すなわち、横加速度偏差演算部103は、例えば、横風等の外乱の影響によって変化する実横加速度Gとの偏差ΔGを計算する。そして、計算された偏差ΔGは、PI制御部104に入力される。PI制御部104は、下記式11に示すように、入力した偏差ΔGに比例した比例項と偏差ΔGを積分した積分項とを加算して、転舵角のフィードバック制御値Δδfbを計算する。
フィードフォワード制御値δffおよびフィードバック制御値Δδfbは、目標転舵角演算部105に入力される。目標転舵角演算部105は、フィードフォワード制御値δffとフィードバック制御値Δδfbとを加算して目標転舵角δ*(=δff+Δδfb)を計算する。
また、転舵用ECU36は、更に、転舵角偏差演算部106、目標電流演算部107、電流偏差演算部108、PI制御部109、PWM電圧発生部110を備えている。目標転舵角演算部105にて計算された目標転舵角δ*は、転舵角偏差演算部106に入力される。転舵角偏差演算部106は、転舵角センサ32から転舵角δ(以下、実転舵角δと呼ぶ)を入力し、目標転舵角δ*と実転舵角δとの偏差Δδ(=δ*−δ)を計算する。計算された偏差Δδは、目標電流演算部107に入力される。
目標電流演算部107は、目標転舵角δ*と実転舵角δとの偏差Δδを入力して、それに比例した目標電流i*を計算する。この目標電流i*は、電動モータ24に通電する目標電流値である。目標電流i*は、電流偏差演算部108に入力される。電流偏差演算部108は、目標電流演算部107により算出された目標電流i*と、電流検出器38aにより検出した電動モータ24に流れる実際の電流iとを入力し、両者の偏差Δi(=i*−i)を算出する。電流偏差演算部108にて算出された偏差Δiは、PI制御部109に入力される。
PI制御部109は、入力した偏差Δiに比例した比例項と偏差Δiを積分した積分項とを加算して、電動モータ24を駆動するための目標電圧v*を計算する。つまり、偏差Δiがゼロになるように目標電圧v*を計算する。PI制御部109により計算された目標電圧v*は、PWM電圧発生部110に入力される。PWM電圧発生部110は、目標電圧v*に対応したPWM制御電圧信号を駆動回路38に出力する。駆動回路38は、スイッチング素子から構成され、例えば、インバータ回路やHブリッジ回路である。駆動回路38は、PWM制御電圧信号に対応したデューティ比でスイッチング素子をオンオフして、目標電圧v*を電動モータ24に印加する。これにより左右前輪FW1,FW2は、電動モータ24の駆動力により転舵される。
次に、上記のように転舵制御された場合の効果について説明する。今、前記式3の両辺をGγ(V)*Vで除算し、Fδg(s)/Gγ(V)*Vのボード線図を表すと図3に示すような周波数特性となる。すなわち、図3(a)から明らかなように周波数および車速Vの増加に伴ってゲインが変化し、図3(b)から明らかなようにある周波数において位相遅れが増大する周波数特性を有する。一方、前記式2の両辺をGγ(V)で除算し、Fδγ(s)/Gγ(V)のボード線図を表すと図4に示すような周波数特性となる。すなわち、図4(a)から明らかなようにある周波数において車速Vの増加に伴ってゲインが変化し、図4(b)から明らかなように周波数の増大に伴って位相遅れが増大する周波数特性を有する。
また、このような周波数特性を有する伝達関数Fδγ(s)および伝達関数Fδg(s)を用いるとともに横加速度Gをフィードバック入力して転舵角制御する図2の機能ブロック図において、例えば、フィルタX(s)=1とした場合すなわち本発明の特徴事項であるフィルタX(s)を適用しない通常の車両の場合には、操舵角θMAを入力とし横加速度Gを出力とする伝達関数G(s)/θMA(s)が一定となる。このとき、操舵角θMAを入力としヨーレートγを出力とする伝達関数γ(s)/θMA(s)はγ(s)/G(s)となり、車速Vが大きいときに非常に振動的になる。すなわち、フィルタX(s)=1のときにおける伝達関数γ(s)/θMA(s)のボード線図は図5に示すように表され、車速Vの増大に伴ってある周波数におけるゲインが増大し、また、ある周波数における位相進みが大きくなる。そして、この場合における伝達関数γ(s)/θMA(s)のステップ応答を示すと、図6に示すように、車速Vの増大に伴って振幅が大きくなり振動的になることが理解できる。
これに対して、前記式9により決定されるフィルタX(s)を採用した場合には、目標とするθMA−γ特性を実現するθMA−G特性に基づいて目標横加速度G*が計算される。すなわち、前記式9中のFMAγ(s)を任意に設定することにより、目標とするθMA−γ特性を実現する目標横加速度G*が計算される。このため、例えば、全車速域においてθMA−γ特性を一定にする場合には、図7に示すθMA−γ特性(ステップ応答)のように、ある車速Vaにおける伝達関数Fδγ(s)|V=Vaを目標とするθMA−γ特性としてFMAγ(s)に設定する。そして、このように設定されたFMAγ(s)を有するフィルタX(s)を用いて目標横加速度G*を計算することにより、θMA−G特性は目標とするθMA−γ特性を実現するものとなり、例えば、θMA−G特性(ステップ応答)は、図8に示すように、車速Vよって振幅の大きさが異なるものの、時間の経過に従って緩やかに収束する傾向を有するものとなる。
したがって、本実施形態によれば、目標とするθMA−γ特性を実現するθMA−G特性に基づいて目標横加速度G*が計算され、この目標横加速度G*を用いて転舵角をフィードバック制御することができる。これにより、横加速度Gを用いた転舵角のフィードバック制御においては、目標とするθMA−γ特性を実現するθMA−G特性すなわち周波数特性を考慮した目標横加速度G*を用いることができるため、車両の過敏な応答を抑制して良好な操舵フィーリングを確保することができるとともに、本来の外乱安定化制御を安定して実現することができる。
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
例えば、上記実施形態においては、ある車速Vaにおける伝達関数Fδγ(s)|V=Vaを目標とするθMA−γ特性としてFMAγ(s)に設定するように実施した。そして、このように設定したFMAγ(s)を有するフィルタX(s)を用いて目標横加速度G*を計算するように実施した。これにより、特に、車速Vが大きな高速時において伝達関数γ(s)/θMA(s)の振動(共振)を抑制できるようにした。
このように、FMAγ(s)を有するフィルタX(s)を用いて目標横加速度G*を計算することは、高速時における特性を良好に変更するものであるため、車速Vの小さな低速時にはフィルタX(s)を別の定義としてもよい。この場合、図3に示したように、Fδg(s)/Gγ(V)*Vの周波数特性は、ある車速Vbを境として、低周波におけるゲインの大きさと高周波におけるゲインの大きさとが入れ替わることが理解できる。この特性の変化に基づき、例えば、車速Vが車速Vb未満であるときにはフィルタX(s)を車速Vbにおける横加速度に関する伝達関数Fδg(s)|V=Vbを用いてX(s)= Fδg(s)|V=Vbとし、車速Vが車速Vb以上であるときには車速Vbにおけるヨーレートに関する伝達関数Fδγ(s)|V=Vbを用いてFMAγ(s)= Fδg(s)|V=Vbとして前記式9に従ってフィルタX(s)を決定するように実施することも可能である。これにより、車速Vb未満の低速時においては横加速度Gの変化を抑制することができ、車速Vb以上の中高速時においては特に高周波域におけるθMA−G特性の大きなゲインによる車両挙動変化の敏感さを抑制することができるとともにヨーレートγの変化を抑制することができる。また、車速Vbを境としてフィルタX(s)を変更することにより、変更に伴って運転者が知覚する違和感を抑制することができる。
さらに、本実施形態においては、ステアリングバイワイヤ方式の操舵装置を採用して実施した。しかしながら、ステアリングギヤ比を自在に調整可能なギヤ比可変操舵装置に適用することもできる。この場合であっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
10…操舵操作装置、11…操舵ハンドル、20…転舵装置、24…転舵用電動モータ、30…電気制御装置、31…操舵角センサ、32…転舵角センサ、33…車速センサ、34…横加速度センサ、35…操舵反力用ECU、36…転舵用ECU、101…目標横加速度演算部、102…フィードフォワード演算部、103…横加速度偏差演算部、104…PI制御部、105…目標転舵角演算部、106…転舵角偏差演算部
Claims (4)
- 車両を操舵するために操作される操舵ハンドルと、車輪を転舵する転舵アクチュエータと、車両の車速を検出する車速検出手段と、車体の車幅方向に発生する実際の横加速度を検出する横加速度検出手段と、前記操舵ハンドルの操作に応じて前記車体の車幅方向に発生すべき目標横加速度を演算する目標横加速度演算手段と、前記目標横加速度演算手段により演算した目標横加速度に応じて指令値を設定する指令値設定手段と、前記指令値設定手段により設定した指令値と、前記検出した実際の横加速度と前記演算した目標横加速度との偏差とに基づいて前記転舵アクチュエータを駆動して前記車輪を転舵する転舵制御手段とを備えた車両の操舵装置において、
前記目標横加速度演算手段は、前記操舵ハンドルの操作とこの操作に応じて前記車体の重心点回りに発生するヨーレートとの関係を表していて予め設定された目標伝達特性を実現する目標横加速度を演算することを特徴とする車両の操舵装置。 - 請求項1に記載した車両の操舵装置において、
前記目標横加速度演算手段は、
前記予め設定された目標伝達特性を表していて前記操舵ハンドルの操作に応じて発生するヨーレートの伝達関数に対して、前記車輪の転舵に応じて発生する横加速度の伝達関数を前記車輪の転舵に応じて発生するヨーレートの伝達関数で除算したものを乗算するとともに、前記車速検出手段によって検出された車速に応じて変化する車速ゲインを乗算して設定されるフィルタを用い、前記操舵ハンドルの操作に応じた目標横加速度を演算することを特徴とする車両の操舵装置。 - 請求項1に記載した車両の操舵装置において、
前記予め設定された目標伝達特性は、
車両の所定の車速における前記操舵ハンドルの操作とこの操作に応じて前記車体の重心点回りに発生するヨーレートとの関係を表す伝達特性であることを特徴とする車両の操舵装置。 - 請求項3に記載した車両の操舵装置において、
前記目標横加速度演算手段は、
前記所定の車速以上であるときに、前記予め設定された目標伝達特性を実現する目標横加速度を演算することを特徴とする車両の操舵装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009060593A JP2010214987A (ja) | 2009-03-13 | 2009-03-13 | 車両の操舵装置 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013075614A (ja) * | 2011-09-30 | 2013-04-25 | Ntn Corp | ステアバイワイヤ式操舵機構の制御装置 |
CN113002620A (zh) * | 2021-03-12 | 2021-06-22 | 重庆长安汽车股份有限公司 | 自动驾驶方向盘角度偏差修正方法、***及车辆 |
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2009
- 2009-03-13 JP JP2009060593A patent/JP2010214987A/ja active Pending
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