JP2010209227A - 芳香族系ポリマーおよび透明フィルムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は透明性に優れる芳香族系ポリマー、およびこれを用いる透明フィルムの製造方法に関する。
本発明の芳香族系ポリマーは高い屈折率を容易に発揮できるため、種々の形態(例えば、種々の光学素子)の光学樹脂材料として有用である。
フェノール樹脂は、フェノールとホルムアルデヒドから容易に合成できる熱硬化性ポリマーであり、ベークランドによって1900年代初頭に実用化された最初の人工プラスチックである。フェノール樹脂は優れた耐熱性、機械特性、耐薬品性、絶縁性を有しておりかつ安価なため多くの工業製品の材料として使われることになった(小西玄一「デザイン型フェノールの精密重合:フェノール樹脂の新展開」有機合成化学協会誌,66巻,705頁,2008年)。
しかしながら、従来の「フェノール樹脂」の用途においては、現在では成形性の勝る汎用プラスチック、高い機能性を狙い設計されてきたエンジニアプラスチックに置き換わってしまった部分も多い。これは、フェノール樹脂のもつ重合制御の難しさや、不溶性や透明性の低さなどの材料としての扱いにくさに原因がある。
本発明者らは、最近、新しい性能を有する芳香族系高分子を提案している。例えば、WO 2005−103105号公報に開示された立体規則性芳香族系ポリマーや、特許第4177685号に開示された、アルコキシ基を有するベンゼンを出発原料とするフェノール系ポリマーが挙げられる。これらの新しい性能を有する芳香族系ポリマーの特徴等に関しては、例えば、上記の総説(小西玄一「デザイン型フェノールの精密重合:フェノール樹脂の新展開」有機合成化学協会誌,66巻,705頁,2008年)に纏められている。
小西玄一「デザイン型フェノールの精密重合:フェノール樹脂の新展開」有機合成化学協会誌,66巻,705頁,2008年。
しかしながら、より広範な用途(例えば、光学樹脂)として利用可能とするという観点からは、これらの芳香族系ポリマーを更に改良した「新たなポリマー」が求められていた。
例えば、光学樹脂は,ガラスの代替材料(例えば新幹線の窓)やレンズとして幅広く利用されている。しかしながら、各種の特性(力学的性質および/又は光学的性質)から、ガラスの代替材料としては、従来の光学樹脂は、未だ満足できるレベルには達していなかった。光学的性質の点からは、例えば、更に高屈折率,低複屈折,高アッベ数(色収差が小さい)の特性を有する素材の開発が求められている。
本発明の目的は、上述した芳香族系ポリマーの欠点を解消できる芳香族系ポリマーを提供することにある。
本発明の他の目的は、従来のフェノール樹脂の特徴を実質的に維持しつつ、良好な透明性をも有する芳香族系ポリマーを提供することにある。
本発明の更に他の目的は、ガラスの代替材料として幅広く利用可能で、しかも、高屈折率,低複屈折,高アッベ数(色収差が小さい)の特性を有する芳香族系ポリマーを提供することにある。
本発明者は鋭意研究の結果、従来のフェノール樹脂と、ほぼ同等の特徴(例えば、緻密で硬いという特性)を有し、しかも透明性をも有するポリマーを見出し、本発明を完成した。
本発明の芳香族系ポリマーは上記知見に基づくものであり、より詳しくは、下記一般式(1)〜(3)のいずれかで示され,アルコキシ基を1つ以上有することを特徴とする透明な芳香族系ポリマーである。
(式中,R1およびR2は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,アルキルカルボニル基,アルコキシカルボニル基,フェニルメチル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R3およびR4は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルコキシ基,フェニル基,塩素,臭素であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R5は,水素または炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,およびフェニル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい);
(式中,R1およびR2は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,アルキルカルボニル基,アルコキシカルボニル基,フェニルメチル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R3およびR4は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルコキシ基,フェニル基,塩素,臭素であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R5は,水素または炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,およびフェニル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい);
(式中,R1は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,アルキルカルボニル基,アルコキシカルボニル基,フェニルメチル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。またlは1〜4の整数である。R2は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルコキシ基,フェニル基,塩素,臭素であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。またmは0または1〜4の整数である。R3は,水素または炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,およびフェニル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。nは1〜3の整数である)。
本発明の芳香族系ポリマーは、上述した特許第4177685号に開示されたフェノール系ポリマーや、WO 2005−103105号公報に開示された立体規則性芳香族系ポリマーと比較して、明らかに優れた透明性を有する。換言すれば、本発明の芳香族系ポリマーは、目視による着色性の有無で、上述した従来のフェノール系ポリマーとは明確に区別することができる。
更に付言するならば、フェノール樹脂は、従来より、成形加工の点から、低分子量のノボラックやレゾールを用いて熱硬化させる方法に特化されてきたと言える。高分子量でかつ熱可塑で、光学材料に用いるという発想は、本発明が初めてである。これまでにフェノール樹脂単独でのフィルム化への試みは存在するが、ポリベンゾオキサジンからのフィルムであって、ポリマーの主鎖構造がフェノール樹脂とは異なり、かっ透明光学材料を指向したものではない(竹市力ら、High performance Polybenzoxazines as a Novel Type of Phenolic ReSin,PoJym J.第40巻、1121頁(2008))。
上述の着色性に加えて、本発明の芳香族系ポリマーは、上述したフェノール系ポリマーと比較して、明らかに優れたフィルム形成性を有する。
本発明において、立体規則性とは、隣り合うベンゼン環の位置関係に規則性があるということである。本発明者の知見によれば、たとえば1,3,5−トリメトキシベンゼンや3、4、5−トリメトキシベンゼン由来のポリマーの場合、ベンゼン環どうしが直交した位置関係にある。この場合、屈折率には影響を与えないが、本明細書で後述するように、複屈折を低下させる効果があり、本発明における「低複屈折」低下に大きく寄与している。このようにモノマーユニットを、異方性を持って配置することが重要である。さらに立体規則性を示す高分子は、その立体障亭により構造が固定されており、結果的に高いガラス転移点(ふつう100℃以上)を示し、室温(−20〜50℃)で使用されるべきフイルム材料として適切である。
上述したように本発明によれば、従来のフェノール樹脂と、ほぼ同等の特徴(例えば、緻密で硬いという特性)を有し、しかも良好な透明性を有する芳香族系ポリマーが提供される。したがって、本発明の芳香族系ポリマーは、光学樹脂として好適に利用可能である。
より具体的には、本発明によれば、ポリカーボネート等の「光学樹脂」と実質的に同等の光学的特性(屈折率・アッベ数)を示すことができ、しかも「低い複屈折」の点では、ポリカーボネートと比較して、より優れた性能を有する芳香族系ポリマーが提供される。
更に、本発明の芳香族系ポリマーを、既存の光学樹脂と組み合わせて複合材料を作製した場合には,該「既存の光学樹脂の屈折率を実質的に損なうことなく光学特性を発揮することが可能である。また、低屈折率の材料(例えば、アクリル樹脂,シクロオレフィン樹脂)の屈折率を制御する目的でも利用可能である。
加えて、本発明の芳香族系ポリマーは、従来のフェノール樹脂と同様に熱硬化性樹脂として用いることが可能であるため,高温で使用可能な透明接着剤としても応用することが可能である。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ本発明を更に具体的に説明する。以下の記載において量比を表す「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準とする。
(芳香族系ポリマー)
本発明の芳香族系ポリマーは、下記一般式(1)〜(3)で示され,アルコキシ基を1つ以上有する透明な芳香族系ポリマーである。
(式中,R1およびR2は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,アルキルカルボニル基,アルコキシカルボニル基,フェニルメチル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R3およびR4は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルコキシ基,フェニル基,塩素,臭素であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R5は,水素または炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,およびフェニル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい);
(式中,R1およびR2は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,アルキルカルボニル基,アルコキシカルボニル基,フェニルメチル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R3およびR4は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルコキシ基,フェニル基,塩素,臭素であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。R5は,水素または炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,およびフェニル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい);
(式中,R1は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,アルキルカルボニル基,アルコキシカルボニル基,フェニルメチル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。またlは1〜4の整数である。R2は,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルコキシ基,フェニル基,塩素,臭素であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。またmは0または1〜4の整数である。R3は,水素または炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖または環状構造を有するアルキル基,およびフェニル基であり,それらは同一環内または異なる環内で互いに同一であってもよく,異なっていてもよい。nは1〜3の整数である)。
(芳香族系モノマー)
本発明の芳香族系ポリマーを与えるべきモノマーは特に制限されない。例えば、ベンゼン環1つにつき,アルコキシ基を1〜4個有するモノマーを出発原料として好適に使用可能である。更に、立体規則性を有し、低複屈折の実現の点からは、下記(4)〜(6)に示すモノマー群から選ばれる1以上のモノマーが特に好適に使用可能である。
本発明の芳香族系ポリマーを与えるべきモノマーは特に制限されない。例えば、ベンゼン環1つにつき,アルコキシ基を1〜4個有するモノマーを出発原料として好適に使用可能である。更に、立体規則性を有し、低複屈折の実現の点からは、下記(4)〜(6)に示すモノマー群から選ばれる1以上のモノマーが特に好適に使用可能である。
(透明度)
本発明の芳香族系ポリマーは、光学樹脂として使用可能なレベルの透明度を有する。この透明度は、透過率で好適に表すことができる。本発明の芳香族系ポリマーは、UV−可視スペクトルの下記3つの波長領域の1以上において、透過率(transmittance)の値が90%以上((a)〜(c)のいずれか1つの領域において、更には94%以上、特に96%以上、とりわけ98%以上)であることが好ましい。この透過率は、下記(a)〜(c)の領域の2以上(特に3領域の全て)において、透過率の値が好適な値(例えば、90%以上)であることが好ましい。
本発明の芳香族系ポリマーは、光学樹脂として使用可能なレベルの透明度を有する。この透明度は、透過率で好適に表すことができる。本発明の芳香族系ポリマーは、UV−可視スペクトルの下記3つの波長領域の1以上において、透過率(transmittance)の値が90%以上((a)〜(c)のいずれか1つの領域において、更には94%以上、特に96%以上、とりわけ98%以上)であることが好ましい。この透過率は、下記(a)〜(c)の領域の2以上(特に3領域の全て)において、透過率の値が好適な値(例えば、90%以上)であることが好ましい。
(a)領域a: 484〜488nm
(b)領域b: 588〜592nm
(c)領域c: 654〜658nm
(b)領域b: 588〜592nm
(c)領域c: 654〜658nm
このようなUV−可視スペクトルは、後述の「実施例」に示す方法で好適に測定することができる。
(屈折率)
本発明の芳香族系ポリマーは、光学樹脂として使用可能なレベルの屈折率を有する。本発明の芳香族系ポリマーは、1.52以上、更には1.55以上(特に1.57以上)の屈折率を有することが好ましい。この屈折率は、後述の「実施例」に示す方法で好適に測定することができる。
本発明の芳香族系ポリマーは、光学樹脂として使用可能なレベルの屈折率を有する。本発明の芳香族系ポリマーは、1.52以上、更には1.55以上(特に1.57以上)の屈折率を有することが好ましい。この屈折率は、後述の「実施例」に示す方法で好適に測定することができる。
(複屈折)
本発明の芳香族系ポリマーは、光学樹脂として使用可能なレベルの複屈折を有する。本発明の芳香族系ポリマーは、0.005以下、更には0.002以下(特に0.001以下)の複屈折を有することが好ましい。この複屈折は、後述の「実施例」に示す方法で好適に測定することができる。
本発明の芳香族系ポリマーは、光学樹脂として使用可能なレベルの複屈折を有する。本発明の芳香族系ポリマーは、0.005以下、更には0.002以下(特に0.001以下)の複屈折を有することが好ましい。この複屈折は、後述の「実施例」に示す方法で好適に測定することができる。
(アッベ数)
本発明の芳香族系ポリマーは、光学樹脂として使用可能なレベルのアッベ数を有する。本発明の芳香族系ポリマーは、25以上、更には28以上(特に30以上)のアッベ数を有することが好ましい。また、本発明の芳香族系ポリマーは、50以下、更には40以下(特に35以下)のアッベ数を有することが好ましい。このアッベ数は、後述の「実施例」に示す方法で好適に測定することができる。
本発明の芳香族系ポリマーは、光学樹脂として使用可能なレベルのアッベ数を有する。本発明の芳香族系ポリマーは、25以上、更には28以上(特に30以上)のアッベ数を有することが好ましい。また、本発明の芳香族系ポリマーは、50以下、更には40以下(特に35以下)のアッベ数を有することが好ましい。このアッベ数は、後述の「実施例」に示す方法で好適に測定することができる。
(分子量)
本発明の芳香族系ポリマーは、1,000以上、更には5,000〜20,000程度(特に8,000〜20,000程度)の数平均分子量を有することが好ましい。この分子量は、後述の「実施例」に示す方法で好適に測定することができる。
本発明の芳香族系ポリマーは、1,000以上、更には5,000〜20,000程度(特に8,000〜20,000程度)の数平均分子量を有することが好ましい。この分子量は、後述の「実施例」に示す方法で好適に測定することができる。
(耐熱性)
本発明の芳香族系ポリマーは、成形・加工等において好適な耐熱性を有する。この耐熱性は、「10%質量損失温度」の数値で好適に表すことができる。該「10%質量損失温度」の数値で、本発明の芳香族系ポリマーは、300℃以上、更には320℃以上(特に350℃以上)の耐熱性を有することが好ましい。
本発明の芳香族系ポリマーは、成形・加工等において好適な耐熱性を有する。この耐熱性は、「10%質量損失温度」の数値で好適に表すことができる。該「10%質量損失温度」の数値で、本発明の芳香族系ポリマーは、300℃以上、更には320℃以上(特に350℃以上)の耐熱性を有することが好ましい。
上記の「10%質量損失温度」は、後述の「実施例」に示す方法(熱重量分析法)で好適に測定することができる。
[ポリマーの合成方法]
本発明の芳香族系ポリマーの合成方法は、特に制限されない。安価で着色が少ないポリマーを簡便に合成可能な点からは、該合成は,ホルムアルデヒドに代表されるアルデヒド類を酸または塩基触媒を用いて縮合することが好ましい(このような合成方法の詳細に関しては、必要に応じて、例えば、WO 2005/103105号を参照することができる)。
本発明の芳香族系ポリマーの合成方法は、特に制限されない。安価で着色が少ないポリマーを簡便に合成可能な点からは、該合成は,ホルムアルデヒドに代表されるアルデヒド類を酸または塩基触媒を用いて縮合することが好ましい(このような合成方法の詳細に関しては、必要に応じて、例えば、WO 2005/103105号を参照することができる)。
[光学フィルムの作製について]
本発明の芳香族系ポリマーを使用するフィルム作製方法は、特に制限されない。簡便な操作の点からは、下記の方法のいずれかを使用することが好ましい(このようなフィルム作製方法の詳細に関しては、必要に応じて、例えば、野瀬卓平ほか「有機・高分子測定ラボガイド」講談社サイエンティフィク(2006年)を参照することができる)。
本発明の芳香族系ポリマーを使用するフィルム作製方法は、特に制限されない。簡便な操作の点からは、下記の方法のいずれかを使用することが好ましい(このようなフィルム作製方法の詳細に関しては、必要に応じて、例えば、野瀬卓平ほか「有機・高分子測定ラボガイド」講談社サイエンティフィク(2006年)を参照することができる)。
(1)ポリマーを適切な有機溶媒に溶解し,キャストする方法
(2)ポリマーを適切な有機溶媒に溶解し,スピンコーティングする方法
(3)ポリマーを融解しプレスする方法
(2)ポリマーを適切な有機溶媒に溶解し,スピンコーティングする方法
(3)ポリマーを融解しプレスする方法
(ポリマー合成例A)
後述する実施例1と同様な方法により、下記反応式に従って、合成を行った。
後述する実施例1と同様な方法により、下記反応式に従って、合成を行った。
上記により、下記表に示す分子量および熱的データが得られた。
(ポリマー合成例B)
後述する実施例1と同様な方法により、下記反応式に従って、合成を行った。
後述する実施例1と同様な方法により、下記反応式に従って、合成を行った。
上記により、下記表に示す分子量および熱的データが得られた。
(ポリマー合成例C)
後述する実施例1と同様な方法により、下記反応式に従って、合成を行った。
後述する実施例1と同様な方法により、下記反応式に従って、合成を行った。
上記により、得られた直鎖状フェノール樹脂はポリマーにもかかわらずモノマーに匹敵するほどシャープな1H−NMRスペクトル(図1に示す)を示した。
上記により、下記表に示す633nm屈折率、複屈折率およびアッベ数のデータが得られた。屈折率の値はλ=633nmの値であり、複屈折率はスピンコートで製膜したフィルムのものを測定した値である。
上記により、図2に示す透過率のデータが得られた。すなわち、ポリカーボネートと同様の屈折率を持ち、複屈折も低いポリマーが得られた。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
[使用実験機器]
(1)1H NMR、13C NMRスペクトルはJEOL社製のLNM−EX400を用い、TMSを基準物質とし測定した。
(1)1H NMR、13C NMRスペクトルはJEOL社製のLNM−EX400を用い、TMSを基準物質とし測定した。
(2)FT−IRスペクトルはJASCO社製のFT−IR 460 plus spectrometerを用い測定した。
(3)UV−VisスペクトルはBECKMAN COULTER社製DU 800 SPECTROMETERを用い測定した。
(4)GPCにはJASCO社製UV−2070検出器とRI−2031検出器、TOSOH社製TSK−gel GMH−HRカラムを用い、THFを展開溶媒にして行った。検量線作成は標準ポリスチレンを用いた。
(5)熱重量分析にはSII社製TG/DTA 6200を用い、窒素下で昇温速度は10 oC/minで行った。
(6)示差走査熱量測定にはSII社製DSC 6220を用い、窒素下で昇温速度は10oC/MINで行った。
ポリマーのフィルムの作成はMIKASA社製Spincoater 1H−DTを用い行った。
(7)フィルム水平方向の屈折率(nTE)と垂直方向(nTM)の屈折率をHe−Neレーザーと半波長板を使いMetricon社製Prism coupler PC−2010を用い測定した。
実施例1
[ポリマーA合成:1,3,5−トリメトキシベンゼンとパラホルムの付加縮合]
50mLナスフラスコに、1,3,5−トリメトキシベンゼン(3.36g,20mmol)とパラホルム(0.63g,20mmol)を入れ、THF(20mL)を加え攪拌した。この溶液に濃塩酸(4mL)を氷冷下においてゆっくり滴下し、室温で3時間半攪拌させた。攪拌停止後、この溶液をメタノールにゆっくり注ぎ沈殿させ目的の白色固体(2.89g)を得た。
[ポリマーA合成:1,3,5−トリメトキシベンゼンとパラホルムの付加縮合]
50mLナスフラスコに、1,3,5−トリメトキシベンゼン(3.36g,20mmol)とパラホルム(0.63g,20mmol)を入れ、THF(20mL)を加え攪拌した。この溶液に濃塩酸(4mL)を氷冷下においてゆっくり滴下し、室温で3時間半攪拌させた。攪拌停止後、この溶液をメタノールにゆっくり注ぎ沈殿させ目的の白色固体(2.89g)を得た。
Mn=7,200,Mw/Mn=12,400(GPC,eluent:THF,polystyrenestandards);IR(KBr):3447(νO-H−CH2OH),2938,2830(νC-H−CH3),1595,1455(νc-cPh),1197,1106,1027(νC-O-CAr−O−C);1H−NMR(400MHz,CDCl3,δ,ppm):3.40−3.87(s,9H,Ar−OCH3),3.75−3.87(s,2H,Ar−CH2−Ar)6.05−6.12(s,1H,Ar−H1),
実施例2
[ポリマーB合成:3,4,5−トリメトキシベンゼンとパラホルムの付加縮合]
100 mLナスフラスコに、3,4,5−トリメトキシベンゼン(9.10 g, 50 mmol)とパラホルム(1.575 g, 50 mmol)、酢酸(20 mL)を入れ攪拌した。この溶液に濃硫酸(3 mL)を氷冷下においてゆっくり滴下した。この溶液を室温において攪拌していくと、ゲル状の不溶な物質が浮かんでくる。これにクロロホルム(20 mL)をさらに加え、室温で5時間攪拌した。攪拌停止後、この溶液をメタノールにゆっくり注ぎ沈殿させ目的の白色固体(7.60 g)を得た。
[ポリマーB合成:3,4,5−トリメトキシベンゼンとパラホルムの付加縮合]
100 mLナスフラスコに、3,4,5−トリメトキシベンゼン(9.10 g, 50 mmol)とパラホルム(1.575 g, 50 mmol)、酢酸(20 mL)を入れ攪拌した。この溶液に濃硫酸(3 mL)を氷冷下においてゆっくり滴下した。この溶液を室温において攪拌していくと、ゲル状の不溶な物質が浮かんでくる。これにクロロホルム(20 mL)をさらに加え、室温で5時間攪拌した。攪拌停止後、この溶液をメタノールにゆっくり注ぎ沈殿させ目的の白色固体(7.60 g)を得た。
Mn= 12,600,Mw/Mn= 1.7 (GPC, eluent: THF,polystyrene standards);IR (KBr): 3448 (νO-H −CH2OH), 2935,2828 (νC-H −CH3), 1570,1461 (νc-c Ph), 1197,1099,1046 (νC-O-C Ar−O−C); 1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ, ppm): 1.97(3H, Ar−CH3 ), 3.47(6H, Ar−OCH3−3,5), 3.77(6H, Ar−OCH3−4), 3.94(2H, Ar−CH2−Ar)
実施例3
[ポリマーのフィルムの作成]
ポリマー(0.5g)をジクロロエタン(1mL)に溶解させ、更に1時間攪拌を続けた。得られた溶液を、ろ過しスピンコーターを用い合成石英製の基板上に製膜した(条件は,1000rpm,15sec,および2000rpm,10sec)。得られた薄膜を真空下で乾燥した。
[ポリマーのフィルムの作成]
ポリマー(0.5g)をジクロロエタン(1mL)に溶解させ、更に1時間攪拌を続けた。得られた溶液を、ろ過しスピンコーターを用い合成石英製の基板上に製膜した(条件は,1000rpm,15sec,および2000rpm,10sec)。得られた薄膜を真空下で乾燥した。
実施例4
[ポリマーの屈折率の測定]
プリズムカップラー法により屈折率を測定した。平均の屈折率navはnav=[(2nTE 2+nTM 2)/3]1/2から求め、複屈折はnTEとnTMの差より求めた。測定した波長は633nm、845nm、1558nmであり、これらの波長の屈折率をCauchyの式(nλ=n∞+D/λ2)にフィッティングし屈折率分散係数Dと絶対屈折率nλを求めた。アッベ数は求めたDとnλを用いCauchyの式より、486.1nm、589.2nm、656.3nmの屈折率を計算で求め、アッベ数の定義(νd=(nd−1)/(nF−nC))より算出した。
[ポリマーの屈折率の測定]
プリズムカップラー法により屈折率を測定した。平均の屈折率navはnav=[(2nTE 2+nTM 2)/3]1/2から求め、複屈折はnTEとnTMの差より求めた。測定した波長は633nm、845nm、1558nmであり、これらの波長の屈折率をCauchyの式(nλ=n∞+D/λ2)にフィッティングし屈折率分散係数Dと絶対屈折率nλを求めた。アッベ数は求めたDとnλを用いCauchyの式より、486.1nm、589.2nm、656.3nmの屈折率を計算で求め、アッベ数の定義(νd=(nd−1)/(nF−nC))より算出した。
[屈折率の測定結果]
下記のテーブルに示す。
下記のテーブルに示す。
上記表中、屈折率は633nmの波長で測定した値である
複屈折はスピンコーター(1000rpm,15sec,2000rpm,10sec)を用いて製膜したフィルムのものを測定した値
実施例5
[従来のフィルムとの透過率の違い]
下図に示すとおりポリマーのフィルムでのUV−Visスペクトルを計測し、可視光領域の486.1nm、589.2nm、656.3nmの光線における透過率を比較した。比較したものはポリマーAと従来の公報(WO 2005/103105号)で合成されたA’のフィルムであり、膜厚は各々が51マイクロメートル、49マイクロメートルのものを使用した。
[従来のフィルムとの透過率の違い]
下図に示すとおりポリマーのフィルムでのUV−Visスペクトルを計測し、可視光領域の486.1nm、589.2nm、656.3nmの光線における透過率を比較した。比較したものはポリマーAと従来の公報(WO 2005/103105号)で合成されたA’のフィルムであり、膜厚は各々が51マイクロメートル、49マイクロメートルのものを使用した。
実施例6
[モノマー合成:4−ブロモ−1,3,5−トリメトキシベンゼン]
200mLナスフラスコに、1,3,5−トリメトキシベンゼン(2.0g, 12 mmol)とエンカメチレン(80 mL)、メタノール(20 mL)を加え攪拌した。この溶液にテトラブチルアンモニウムトリブロミド塩(6.36 g, 13.2mmol)をゆっくり加え、室温で10分攪拌させた。攪拌停止後、エバポレーターにより溶媒を飛ばし、残留物に水(20 mL)を加え、ジエチルエーテル(40 mL, 三回)により抽出した。エバポレーター溶媒を飛ばした後、へキサンにより再結晶を行い目的の化合物を白色の結晶にて得た。(85.6%)
[モノマー合成:4−ブロモ−1,3,5−トリメトキシベンゼン]
200mLナスフラスコに、1,3,5−トリメトキシベンゼン(2.0g, 12 mmol)とエンカメチレン(80 mL)、メタノール(20 mL)を加え攪拌した。この溶液にテトラブチルアンモニウムトリブロミド塩(6.36 g, 13.2mmol)をゆっくり加え、室温で10分攪拌させた。攪拌停止後、エバポレーターにより溶媒を飛ばし、残留物に水(20 mL)を加え、ジエチルエーテル(40 mL, 三回)により抽出した。エバポレーター溶媒を飛ばした後、へキサンにより再結晶を行い目的の化合物を白色の結晶にて得た。(85.6%)
mp 84−86 oC IR (KBr):2944, 2839, 1589, 1574, 1462, 1377, 1346, 1155, 1027, 1128 cm-1, 1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ, ppm): 3.82(s, 3H, Ar−OCH3−1), 3.88(s, 6H, Ar−OCH3−3,5), 6.18(s, 2H, Ar−H ), 13C NMR (100MHz, CDCl3, δ, ppm): 55.3, 56.1, 91.4, 91.6, 157.2, 160.3
実施例7
[ポリマーC合成:4−ブロモ−1,3,5−トリメトキシベンゼンとパラホルムの付加縮合]
[ポリマーC合成:4−ブロモ−1,3,5−トリメトキシベンゼンとパラホルムの付加縮合]
5 mLナスフラスコに、4−ブロモ−1,3,5−トリメトキシベンゼン(0.75g, 3 mmol)とパラホルム(0.09 g, 3 mmol)を入れ、酢酸(1.2 mL)とクロロホルム(0.5 mL)を加え攪拌した。この溶液に濃塩酸(0.2 mL)を氷冷下においてゆっくり滴下し、室温で6時間半攪拌させた。攪拌停止後、この溶液をメタノールにゆっくり注ぎ沈殿させ目的の白色固体(0.43 g)を得た。
Mn= 5,900, Mw/Mn= 2.1(GPC, eluent: THF, polystyrene standards); IR (KBr); 2938. 1577, 1457, 1401, 1109, 1010, 1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ, ppm): 3.1−3.6(9H, Ar−OCH3), 3.7−4.3(2H, Ar−CH2−Ar)
(屈折率の測定結果)
下記の表に示す。
下記の表に示す。
上記表中の屈折率は、633nmの波長で測定した値である。
複屈折は、スピンコーター(1000 rpm, 15 sec ,2000 rpm, 10 sec)を用いて製膜したフィルムのものを測定した値である。
複屈折は、スピンコーター(1000 rpm, 15 sec ,2000 rpm, 10 sec)を用いて製膜したフィルムのものを測定した値である。
上述したように、本発明の芳香族系ポリマーは、以下のように好適な光学的性質を示すことができる。
(1)ポリカーボネートと同等の屈折率(1.58)を示すことが容易である。また低複屈折で比較的アッベ数が高い。
(2)透明性が高い(多くの場合,無色透明である)。
(3)耐熱性が高い。
(3)耐熱性が高い。
上記特性を活かして、本発明の芳香族系ポリマーは、以下のような用途に好適に使用することができる。
(1)光学的性質を有するフィルムとして,ポリカーボネートの代替材料またはポリカーボネートとブレンドすることによりその性能・強度・耐久性などの改質。
(2)複屈折が低く,アッベ数が比較的高いことを利用して,他の成分との複合化によりレンズとしての利用。
(3)高耐熱性の透明接着剤としてハンダフリーの接合に用いる。
Claims (9)
- 下記一般式(1)〜(3)のいずれかで示され,アルコキシ基を1つ以上有することを特徴とする透明な芳香族系ポリマー。
- UV−可視スペクトルの下記3つの波長領域の1以上において、透過率(transmittance)の値が90%以上である請求項1に記載の芳香族系ポリマー。
(a)領域a: 484〜488nm
(b)領域b: 588〜592nm
(c)領域c: 654〜658nm - 屈折率が1.52以上である請求項1または2に記載の芳香族系ポリマー。
- 複屈折が0.005以下である請求項1〜3のいずれかに記載の芳香族系ポリマー。
- アッベ数が25〜40である請求項1〜4のいずれかに記載の芳香族系ポリマー。
- ジメトキシベンゼンまたはトリメトキシベンゼンに由来する請求項1〜5のいずれかに記載の芳香族系ポリマー。
- フィルムの形状を有する請求項1〜6のいずれかに記載の芳香族系ポリマー。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の芳香族系ポリマーに、フィルム形状を付与することを特徴とする透明フィルムの製造方法。
- 前記フィルム形状の付与が、下記のいずれかによる請求項8に記載の透明フィルムの製造方法。
(a)ポリマーを有機溶媒に溶解し,キャストする方法;
(b)ポリマーを有機溶媒に溶解し,スピンコーティングする方法;および
(c)ポリマーを融解し、プレスする方法。
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---|---|---|---|
JP2009057149A JP2010209227A (ja) | 2009-03-10 | 2009-03-10 | 芳香族系ポリマーおよび透明フィルムの製造方法 |
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