JP2010189269A - 光学ガラス、精密プレス成形用プリフォームおよび光学素子 - Google Patents

光学ガラス、精密プレス成形用プリフォームおよび光学素子 Download PDF

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Abstract

【課題】光学的に均質で高品質であり、精密プレス成形用プリフォームを製造したときに脈理を生じない光学ガラスを提供する。
【解決手段】フッ素含有ガラスであって、該ガラスの屈折率の値をnd(1)、該ガラスを窒素雰囲気中において900℃、1時間再熔融し、ガラス転移温度まで冷却し、その後、毎時30℃の降温速度で25℃まで冷却した後の屈折率の値をnd(2)としたときに、nd(1)とnd(2)とが実質的に等しい光学ガラスとする。
【選択図】なし

Description

本発明は、光学ガラス、該光学ガラスからなる精密プレス成形用プリフォームとその製造方法、および前記光学ガラスからなる光学素子とその製造方法に関する。
ガラスを研削、研磨せずにプレス成形することによりガラス製光学素子を製造する方法として精密プレス成形法が知られている。この方法は、プレス成形型の内表面の形状を精密に被成形ガラス素材に転写することにより、非球面レンズ、マイクロレンズ、回折格子などの、研削、研磨では作製しにくい光学素子を生産性よく量産可能にする方法である。
精密プレス成形法で使用する被成形ガラス素材はプリフォームと呼ばれ、プレス成形品の重量と正確に等しい重量のガラスからなるガラス成形体である。ガラスの熔融から光学素子の成形までを一連のプロセスとして見た場合、プリフォームを熔融ガラスから直接成形することができれば、プロセス全体の生産性をより一層向上することができる。
ところで、フツリン酸ガラスなどのフッ素含有ガラスは低分散のガラスとして非常に有用な光学ガラスであり、このようなフツリン酸光学ガラスとしては特許文献1に記載されているようなガラスが知られている。
特表平3−500162号公報
ガラス原料を加熱、熔解し、得られた熔融ガラスを成形することにより精密プレス成形用プリフォーム(ガラス成形体ということがある)を製造する際、上記に従来のフツリン酸塩ガラスなどのフッ素含有ガラスを用いると、ガラス中のフッ素が高温のガラス表面から揮発し、得られるプリフォームの表面近傍層に脈理と呼ばれる光学的に不均一な部分が生じる。
そのため、プリフォームの表面層を何らかの方法で除去しないと、光学素子製造用の材料としては利用できないという問題がある。
また上記プリフォームを成形する場合以外においても、熔融ガラスから板状ガラスや棒状ガラスを成形する場合、高温のガラス表面から揮発性の高い物質が揮発して脈理が発生するという問題がおきる。
このように、ガラス原料を加熱、熔解して、フッ素含有ガラスを製造する際、ガラスの光学的な均質性が損なわれるという問題があった。
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、光学的に均質で、高品質なフッ素含有光学ガラスを提供し、さらに該光学ガラスからなる精密プレス成形用プリフォームとその製造方法、および前記光学ガラスからなる光学素子とその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明は、下記の(1)〜(17)を提供するものである。
(1) フッ素含有ガラスであって、該ガラスの屈折率の値をnd(1)、該ガラスを窒素雰囲気中において900℃、1時間再熔融し、ガラス転移温度まで冷却し、その後、毎時30℃の降温速度で25℃まで冷却した後の屈折率の値をnd(2)としたときに、nd(1)とnd(2)とが実質的に等しいことを特徴とする光学ガラス、
(2) nd(2)−nd(1)の絶対値が0.00300以下である、上記(1)に記載の光学ガラス、
(3) フッ素含有ガラスがフツリン酸ガラスである、上記(1)又は(2)に記載の光学ガラス、
(4) フツリン酸ガラスが、カチオン%表示で、
5+ 5〜50%、
Al3+ 0.1〜40%、
Mg2+ 0〜20%、
Ca2+ 0〜25%、
Sr2+ 0〜30%、
Ba2+ 0〜30%、
Li 0〜30%、
Na 0〜10%、
0〜10%、
3+ 0〜10%、
La3+ 0〜5%
Gd3+ 0〜5%
を含有する、上記(3)に記載の光学ガラス、
(5) FとO2−の合計量に対するFの含有量のモル比F/(F+O2−)が0.25〜0.95である、上記(3)又は(4)に記載の光学ガラス、
(6) Liを2〜30カチオン%含む、上記(3)〜(5)のいずれか1項に記載の光学ガラス、
(7) ガラスの屈折率の値nd(1)が1.40000〜1.60000、アッベ数(νd)が67以上である、上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の光学ガラス、
(8) フツリン酸ガラスがCu2+を含む、上記(3)に記載の光学ガラス、
(9) カチオン%表示で、
5+ 11〜45%、
Al3+ 0〜29%、
Li、NaおよびKを合計で0〜43%、
Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+およびZn2+を合計で14〜50%、
Cu2+ 0.5〜13%、
を含み、さらにアニオニック%表示で、
17〜80%
を含む、上記(8)に記載の光学ガラス、
(10) フッ素含有ガラスがフツホウ酸ガラス又はフツケイ酸ガラスである、上記(1)又は(2)に記載の光学ガラス、
(11) 上記(1)〜(10)のいずれか1項に記載の光学ガラスからなることを特徴とする精密プレス成形用プリフォーム、
(12) 全表面が熔融状態のガラス表面が固化して形成されたものである、上記(11)に記載の精密プレス成形用プリフォーム、
(13) 上記(1)〜(10)のいずれか1項に記載の光学ガラスからなる熔融ガラスを流出させて、熔融ガラス塊を分離し、ガラスが冷却する過程でプリフォームに成形することを特徴とする精密プレス成形用プリフォームの製造方法、
(14) 上記(1)〜(10)のいずれか1項に記載の光学ガラスからなることを特徴とする光学素子、
(15) 上記(11)又は(12)に記載の精密プレス成形用プリフォーム又は上記(13)に記載の方法により得られた精密プレス成形用プリフォームを加熱し、プレス成形型で精密プレス成形することを特徴とする光学素子の製造方法、
(16) プレス成形型に精密プレス成形用プリフォームを導入し、一緒に加熱して精密プレス成形する、上記(15)に記載の光学素子の製造方法、および
(17) 加熱したプレス成形型に、別途加熱した精密プレス成形用プリフォームを導入し、精密プレス成形する、上記(15)に記載の光学素子の製造方法、
を提供するものである。
本発明によれば、熔融ガラスから高品質の精密プレス成形用プリフォームを製造するのに適し、さらに、得られたプリフォームを精密プレス成形して光学素子を製造するのに適したフッ素含有光学ガラスを提供することができる。
また、上記光学ガラスからなる精密プレス成形用プリフォームとその製造方法を提供すること、および上記光学ガラスからなる光学素子とその製造方法を提供することができる。
また、揮発物の量が低減されているので、熔融や成形時、屈折率などの光学特性の変動が少ない光学ガラスを提供することもできる。
本発明の実施例で用いた精密プレス成形装置の概略図である。
ガラス原料を熔解して、フツリン酸ガラスなどのフッ素含有ガラスからなるプリフォームを得ようとすると、熔融ガラスの表面から激しい揮発がおこり、その揮発によりプリフォーム表面の近傍に脈理が生じる。何らかの手段によりプリフォーム成形に供するガラスから揮発しやすい物質を低減すれば揮発が抑制され、脈理を解消することが期待できる。しかし、揮発しやすい物質を低減すると、求めるガラスの組成自体が変わってしまうことになりかねない。
本発明者らは、求めるガラス組成を実現しつつ、ガラス中における揮発性物質の濃度を低減し、脈理を解消するにはどのようにすればよいか考察した結果、いくつかの知見を得た。本発明者らの知見は以下のとおりである。
(1)ガラス原料を加熱、熔融して得た熔融ガラス中には揮発性物質と非揮発性物質が存在すると考えられる。
(2)ガラス中の揮発性物質はガラス原料を加熱、熔融する際に生成し、その後、生成されることはないか、あるいは生成したとしても原料を加熱、熔融したときの生成量に比べれば無視できる程度しか生成されないと考えられる。
(3)揮発性物質の濃度を低減するには、容器内に蓄積した熔融ガラスから揮発性物質を揮発させればよい。揮発性物質の濃度が十分低下するまではガラスを流出しないようにすべきである。
(4)揮発性物質の濃度が低下した熔融ガラスを成形してプリフォームを製造し、これを室温まで冷却した後、加熱、再熔融しても、既に最初の熔融によって原料からのガラス化は終了しているので、揮発性物質の濃度が増加することはないと考えられる。実際、揮発性物質の濃度を低減したガラスを再熔融してもさほど揮発は見られない。
(5)脈理低減に必要なレベルまで揮発性物質の濃度が低下しているかどうかを見極めることは容易でない。理論的には揮発性物質を同定し、揮発性物質の濃度を測定する方法や、再熔融したときに単位体積あたりのガラスから揮発する揮発性物質の量を測定し、その量の多少によって評価する方法が考えられるが、現実的ではない。幸いにして本発明のガラスは光学ガラスであり、屈折率が高精度に決められている。
ガラスの屈折率は組成を反映しており、組成の変化により屈折率も変化する。揮発性物質の濃度変化は組成上、極めて僅かな変化であるが、屈折率が高精度に決められている光学ガラスでは、このような僅かな変化も屈折率変化としてモニターすることができる。例えば、再熔融の前後でガラスの屈折率を精密に測定し、再熔融の前後における屈折率差が大きければ、再熔融前のガラス中に揮発性物質が多量に残留していることになり、逆に、屈折率差が小さければ、再熔融前のガラス中に揮発性物質が少ないことになる。
(6)再熔融の前後での屈折率差の大小と脈理解消の可否を関連付け、再熔融の前後での屈折率を実質的に等しくすること、より具体的には再熔融前後での屈折率の差の絶対値を所定の値以下にすることにより、脈理解消を可能にする光学ガラスを提供することができる。
本発明者らは、上記推論に基づき、再熔融の前後の屈折率差を測定し、この屈折率差の絶対値を所定の値以下に抑えることにより、成形時の脈理を解消した。
以下、本発明について具体的に説明する。
[光学ガラス]
本発明の光学ガラスは、フッ素含有ガラスであって、該ガラスの屈折率の値をnd(1)、該ガラスを窒素雰囲気中において900℃、1時間再熔融し、ガラス転移温度まで冷却し、その後、毎時30℃の降温速度で25℃まで冷却した後の屈折率の値をnd(2)としたとき、nd(1)とnd(2)とが実質的に等しいことを特徴とするものである。
ここにnd(1)とnd(2)とが実質的に等しいとは、光学ガラスにおいて、脈理が生じないようにnd(1)とnd(2)とが近似していることを意味する。
本発明の光学ガラスにおいて、nd(2)−nd(1)の絶対値は、0.00300以下であるのが好ましい。nd(2)−nd(1)の絶対値が0.00300を超えると熔融ガラスをプリフォームに成形する際に、プリフォーム表面に脈理が発生する。前記絶対値が0.00300以下であれば、脈理防止可能なガラス材料を提供することができる。前記絶対値の好ましい範囲は0.00200以下、より好ましい範囲は0.00150以下、さらに好ましい範囲は0.00100以下である。フッ素含有ガラスにおいてフッ素はガラスの屈折率を相対的に低下させる成分なので、nd(2)−nd(1)の値は一般に正となる。
nd(2)を測定するために行われる再熔融時の雰囲気は、ガラスと雰囲気の反応により揮発以外の要因によりガラスの屈折率が影響を受けないようにするため、窒素とする。再熔融は900℃で1時間の所定条件下で行われ、その後、ガラス転移温度まで冷却する。nd(2)の値は冷却時の降温速度にも影響を受けるので、冷却は毎時30℃の所定の降温速度で行われ、25℃まで冷却される。
屈折率の測定は公知の方法を用いることができ、有効桁数6桁(小数点以下5桁)の精度で測定することが望ましい。屈折率の測定例としては、日本光学硝子工業会規格JOGIOS01−1994「光学ガラスの屈折率の測定方法」を適用することができる。
ガラスの形状、体積などによっては、例えばガラスが小さな球状であったり、肉薄のレンズに成形されている場合には、上記規格に定められた形状、寸法の試料にガラスを加工することができない場合もある。その場合には、ガラスを加熱、軟化してプレス成形し、アニールして2つの平面が所定の角度で交わるプリズム形状にする。そして、上記規格と同じ測定原理に基づき、屈折率を測定する。プレス成形によるプリズム形状への成形時の加熱温度は高々ガラスを軟化できればよい温度域であって、ガラスが熔融する温度よりも極めて低いから、揮発性物質の濃度への影響は無視できる程度であり、上記加熱前後の屈折率変化量は無視して差支えない。
ガラスの脈理低減、解消には揮発性物質の濃度低下に加え、成形温度を低下させることがより効果的である。
次に本発明の光学ガラスにおける好ましい態様について説明する。
本発明の光学ガラスは、フッ素含有ガラスからなるが、その具体例として、フツリン酸ガラス、フツホウ酸ガラス、フツケイ酸ガラスなどがある。以下、フツリン酸ガラスからなる光学ガラスを光学ガラスI、フツホウ酸ガラス又はフツケイ酸ガラスからなる光学ガラスを光学ガラスIIという。
フツリン酸ガラスからなる光学ガラスIの好ましい第1の態様(以下、光学ガラスI−Aという)は、
カチオン%表示で、
5+ 5〜50%、
Al3+ 0.1〜40%、
Mg2+ 0〜20%、
Ca2+ 0〜25%、
Sr2+ 0〜30%、
Ba2+ 0〜30%、
Li 0〜30%、
Na 0〜10%、
0〜10%、
3+ 0〜10%、
La3+ 0〜5%
Gd3+ 0〜5%
を含有する光学ガラスである。
光学ガラスI−Aにおいて、アニオン成分FとO2−の配分は、FとO2−の合計量に対するFの含有量のモル比F/(F+O2−)が0.25〜0.95の範囲であることが好ましい。アニオン成分の量を上記のように設定することにより、ガラスに低分散特性を付与することができる。
上記光学ガラスI−Aによれば、屈折率の値nd(1)が1.40000〜1.60000、アッベ数(νd)が67以上の光学特性を実現することができる。なお、アッベ数(νd)の上限については特に限定されないが、100以下を目安にすることがガラスを安定に製造する面から好ましい。
上記光学ガラスI−Aにおいて、2価カチオン成分(R2+)としてCa2+、Sr2+およびBa2+のうちの2種以上を含むものが好ましい。
また、上記光学ガラスI−Aは、2価カチオン成分(R2+)であるMg2+、Ca2+、Sr2+およびBa2+の合計含有量が1カチオン%以上であるものが好ましく、Mg2+、Ca2+、Sr2+およびBa2+の含有量がそれぞれ1カチオン%以上であるのがより好ましい。
以下、上記光学ガラスI−Aの組成について詳説するが、各カチオン成分の割合をモル比をベースにしたカチオン%で表示するとともに、各アニオン成分の割合もモル比をベースにしたアニオン%で表示するものとする。
5+はガラスのネットワークフォーマーとして重要なカチオン成分であり、5%未満ではガラスの安定性が低下し、50%超ではP5+は酸化物原料で導入する必要があるため酸素比率が大きくなり目標とする光学特性を満たさない。したがって、その量を5%〜50%とし、より好ましくは5%〜40%とし、特に好ましくは5%〜35%とする。なお、P5+の導入にあたっては、PClを使用することは、白金を侵食しまた揮発も激しいため安定な製造の妨げになるため適当でなく、リン酸塩として導入することが好ましい。
Al3+はフツリン酸塩ガラスの安定性を向上させる成分であり、0.1%未満では安定性が低下し、また40%超ではガラス転移温度(Tg)及び液相温度(LT)が大きく上昇するため、成形温度が上昇し成形時の表面揮発による脈理が強く生じ、均質なガラス成形体、特にプレス成形用プリフォームを得ることができなくなる。したがって、その量を0.1%〜40%とし、より好ましくは5%〜40%とし、特に好ましくは10%〜35%とする。
2価カチオン成分(R2+)であるMg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+の導入はガラスの安定性の向上に寄与する。ただし、過剰の導入により、ガラスとしての安定性が低下するので、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+を次の範囲にすることが好ましい。
まず、Mg2+の好ましい含有量は0〜20%、より好ましくは1〜20%、さらに好ましくは5〜15%、特に好ましくは5〜10%とする。
Ca2+の好ましい含有量は0〜25%、より好ましくは1〜25%、さらに好ましくは5〜20%、特に好ましくは5〜16%とする。
Sr2+の好ましい含有量は0〜30%、より好ましくは1〜30%、さらに好ましくは5〜25%、特に好ましくは10〜20%とする。
Ba2+の好ましい含有量は0〜30%、より好ましくは1〜30%、さらに好ましくは1〜25%、より一層好ましくは5〜25%、特に好ましくは8〜25%とする。
Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+を、それぞれを単独で導入するよりも2種以上を導入することが好ましく、Ca2+、Sr2+およびBa2+のうちの2種以上導入することがより好ましい。2価カチオン成分(R2+)の導入効果をより高める上から、Mg2+、Ca2+、Sr2+およびBa2+の合計含有量を1カチオン%以上とすることが好ましい。またそれぞれの上限値を超えて導入すると安定性は急激に低下する。Ca2+、Sr2+は比較的多量に導入できるがMg2+、Ba2+は多量の導入は特に安定性を低下させる。しかしBa2+は低分散を保ちつつ高屈折率を実現できる成分であるため安定性を損なわない範囲で多く導入するのが好ましい。
Liは安定性を損なわずにガラス転移温度(Tg)を下げる成分であるが、しかし、30%超ではガラスの耐久性を損ない同時に加工性も低下する。したがって、その量を0〜30%とする。好ましい範囲は0〜25%、より好ましい範囲は0〜20%である。
ただし、精密プレス成形用途など、特にガラス転移温度をより低下させたい場合は、Li+の量を2〜30%にすることが好ましく、5〜25%にすることがより好ましく、5〜20%にすることがさらに好ましい。
Na、KはそれぞれLiと同様にガラス転移温度(Tg)を低下させる効果があるが同時に熱膨張率をLiに比べてより大きくする傾向がある。またNaF、KFは水に対する溶解度がLiFに比べて非常に大きいことから耐水性の悪化ももたらすため、Na、Kの量をそれぞれ0〜10%とする。Na、Kともに好ましい範囲は0〜5%であり、導入しないのがより好ましい。
3+、La3+、Gd3+はガラスの安定性、耐久性を向上させ、屈折率を上昇させる効果があるが、Y3+が10%超、La3+、Gd3+が5%超では安定性が逆に悪化し、ガラス転移温度(Tg)も大きく上昇するため、その量をY3+の場合、0〜10%、La3+、Gd3+の場合、0〜5%とする。好ましい範囲はY3+が0〜3%、La3+、Gd3+が0〜3%である。
なお、高品質な光学ガラスを安定して製造する上から、P5+、Al3+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、LiおよびY3+、La3+、Gd3+の合計量をカチオン%で95%超とすることが好ましく、98%超とすることがより好ましく、99%超とすることがさらに好ましく、100%とすることがより一層好ましい。
上記光学ガラスI−Aは、上記したカチオン成分以外にTi、Zr、Znなどやランタノイドなどのカチオン成分や、Bなどのカチオン成分を本発明の目的を損なわない範囲で含有することができる。
アニオン成分の割合は、所望の光学特性を実現しつつ、優れた安定性を有する光学ガラスを得るために、FとO2−の合計量に対するFの含有量のモル比F/(F+O2−)を0.25〜0.95とする。
なお、光学ガラスI−Aは研削、研磨により光学素子を作るためのガラスとして見ても、あるいは精密プレス成形によって光学素子を作るためのガラスとして見ても優れたガラスである。
上記光学ガラスI−Aの一態様として、2〜30カチオン%のLiを含むガラス(以下、光学ガラスI−A−aという)があり、この光学ガラスI−A−aによれば、液相温度における粘度を低下させ、成形温度を低下させることができる。Liを2カチオン%以上導入することで、ガラスの成形温度、ガラス転移温度をより低下させることができ、プリフォームの表面からの揮発をより一層低減することができる。一方、Liの量が30カチオン%を超えると耐久性や加工性が低下してしまう。なお、Liの導入により、精密プレス成形温度も低下できるので、プリフォームの加熱に要する時間、プレス成形後の降温に要する時間を短縮化できるため全体としてタクトタイムの短縮が可能になり、スループットが向上する。また、プレス成形温度の低下によってガラスとプレス成形型の反応を抑制することができ、プレス成形品の表面状態を良好にし、プレス成形型の寿命を延ばすこともできる。
フツリン酸ガラスからなる本発明の光学ガラスIは、着色剤を添加する場合を除いて、可視光域において高い透過率を示し、両面が平坦かつ互いに平行な厚さ10mmの試料に、前記両面に対して垂直方向から光を入射したときの波長400nm〜2000nmにおける透過率(試料表面における反射損失を除く)が80%以上、好ましくは95%以上の光透過率特性を示す。
上記光学ガラスI−A−aは、Liを所定量含むため、そのガラス転移温度(Tg)は470℃以下、好ましくは430℃以下となる。
また、上記光学ガラスI−A−aは、アルカリ金属イオンのうちLiを積極的に含有させたため、熱膨張率が比較的小さく、また比較的優れた耐水性を示す。したがって、ガラスを研磨してプレス成形用プリフォームに加工したり、光学素子に加工によって、ガラス表面を滑らかで高品質に仕上げることができる。
上記光学ガラスI−A(光学ガラスI−A−aを含む)は優れた耐水性、化学的耐久性を示すので、精密プレス成形用プリフォームを作製してからプレス成形に供するまでの間、長期に保存してもプリフォーム表面が変質することがない。また、光学素子の表面も変質しにくいので、長期にわたり表面が曇らない良好な状態で光学素子を使用することもできる。
また、光学ガラスI−A−aによれば、ガラス熔解温度を前記態様のガラスと同等の光学恒数を有し、Liを含まないガラスに比べて50℃程度低下することができるので、熔解時の容器からの白金溶け込みによるガラスの着色、泡の混入、脈理といった不具合も低減、解消することができる。
一般的にフツリン酸ガラスは流出時の粘度が高く、流出する熔融ガラスから所望重量の熔融ガラス塊を分離して成形してプリフォームを製造する際、分離部分でガラスが細い糸を引き、その糸状部分が成形したガラス塊表面に残って突起を形成するなどの不具合が生じる。流出粘度を低下させてこのような不具合を解消しようとするとガラスの流出温度を上昇させなければならず、前述のようにガラス表面からフッ素の揮発を助長し、脈理が著しくなるという問題が生じる。
上記光学ガラスI−A−aはこのような問題を解消すべく、熔融ガラスの成形に適した温度を低下させるため、所定の粘度を示す温度が、従来のフツリン酸ガラスよりも低くなるようにガラス組成を決定している。ガラス転移温度は熔融ガラスの成形温度よりも遥かに低い温度ではあるが、ガラス転移温度が低いガラスは上記成形温度も低くできるので、成形時の糸引き、脈理などの問題を低減、解消するには、ガラス転移温度が上記範囲になるようにガラス組成を調整する。
また、ガラス転移温度を低くすることにより、前述のようにプリフォームのプレス成形、特に精密プレス成形におけるガラスの加熱温度を低下させることができ、ガラスとプレス成形型との反応が緩和されたり、プレス成形型の寿命を延ばすことができるなどの効果を得ることもできる。
したがって、上記光学ガラスI−A−aは、プレス成形用のガラス素材、特に精密プレス成形用のガラス素材として好適であるが、研削、研磨によって光学素子を作るためのガラス素材としても好適である。なお、光学ガラスI−A−aの好ましい態様は、Liの量を上記の範囲とした以外は光学ガラスI−Aと同じである。
フツリン酸ガラスからなる光学ガラスIの好ましい第2の態様(以下、光学ガラスI−Bという)は、Cu2+を含むフツリン酸ガラスであり、このガラスは近赤外線吸収ガラスとして機能する。光学ガラスI−Bは、特にCCDやCMOSなどの半導体撮像素子の色補正用フィルタとして好適であり、前記用途に使用する場合は、Cu2+の含有量を0.5〜13カチオン%とすることが望ましい。
光学ガラスI−Bの特に好ましい組成は、カチオン%表示で、
5+ 11〜45%、
Al3+ 0〜29%、
Li、 NaおよびKを合計で0〜43%、
Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+およびZn2+を合計で14〜50%、
Cu2+ 0.5〜13%、
を含み、さらにアニオニック%表示で、
17〜80%
を含むものである。
上記組成においてアニオン成分の残量はすべてO2−とすることが好ましい。
上記組成において、P5+はフツリン酸ガラスの基本成分であり、Cu2+の赤外域の吸収をもたらす重要な成分である。P5+の含有量が11%未満では色が悪化して緑色を帯び、逆に45%を超えると耐候性、耐失透性が悪化する。したがって、P5+の含有量は11〜45%とすることが好ましく、20〜45%とすることがより好ましく、23〜40%とすることがさらに好ましい。
Al3+はフツリン酸ガラスの耐失透性と耐熱性、耐熱衝撃性、機械的強度、化学的耐久性を向上させる成分である。ただし、29%を越えると近赤外吸収特性が悪化する。したがって、Al3+の含有量を0〜29%とすることが好ましく、1〜29%とすることがより好ましく1〜25%とすることがさらに好ましく、2〜23%とすることがより一層好ましい。
Li、NaおよびKはガラスの熔融性、耐失透性を改善させ、可視光域の透過率を向上する成分であるが、合計量で43%を超えると、ガラスの耐久性、加工性が悪化する。したがって、Li、NaおよびKの合計含有量を0〜43%とすることが好ましく、0〜40%とすることがより好ましく、0〜36%とすることがさらに好ましい。
アルカリ成分の中でもLiは上記作用に優れており、Liの量を15〜30%とすることがより好ましく、20〜30%とすることがさらに好ましい。
Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+およびZn2+はガラスの耐失透性、耐久性、加工性を向上させる有用な成分であるが、過剰導入により耐失透性が低下するので、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+およびZn2+の合計量を14〜50%にすることが好ましく、20〜40%にすることがより好ましい。
Mg2+含有量の好ましい範囲は0.1〜10%、より好ましい範囲は1〜8%である。
Ca2+含有量の好ましい範囲は0.1〜20%、より好ましい範囲は3〜15である。
Sr2+含有量の好ましい範囲は0.1〜20%、より好ましい範囲は1〜15%である。
Ba2+含有量の好ましい範囲は0.1〜20%、より好ましい範囲は1〜15%、さらに好ましい範囲は1〜10である。
Cu2+は近赤外光吸収特性の担い手である。その量が0.5%未満では近赤外吸収が小さく、逆に13%を越えると耐失透性が悪化する。したがって、Cu2+の含有量は0.5〜13%が好ましく、0.5〜10%がより好ましく、0.5〜5%がさらに好ましく、1〜5%がより一層好ましい。
は光学ガラスI−Bにおいてガラスの融点を下げ、耐候性を向上させる重要なアニオン成分である。光学ガラスI−BはFを含有することによって、ガラスの熔融温度を下げ、Cu2+の還元を抑え、所要の光学特性を得ることができる。17%未満では耐候性が悪化し、逆に80%を越えるとO2−の含有量が減少するため1価のCuによる400nm付近の着色を生じる。従ってFの含有量を17〜80%とすることが好ましい。上記特性を一層向上させる上から、Fの量を25〜55%にすることがより好ましく、30〜50%にすることがさらに好ましい。
2−は光学ガラスI−Bにおいて重要なアニオン成分であり、全アニオン成分のFを除く残部全量をO2−成分で構成することが好ましい。したがって、O2−の好ましい量は上記F−の好ましい量を100%から差し引いた範囲となる。O2−が少な過ぎると2価のCu2+が還元され1価のCuとなるため短波長域、特に400nm付近の吸収が大きくなってしまい、緑色を呈するようになる。逆に過剰になるとガラスの粘度が高く、熔融温度が高くなるため透過率が悪化する。
なお、Pb、Asは有害性が強いから、使用しないことが望ましい。
光学ガラスI−Bの好ましい透過率特性は以下のとおりである。
波長500〜700nmの分光透過率において透過率50%を示す波長が615nmである厚さに換算し、波長400〜1200nmの分光透過率が下記のような特性を示すものである。
波長400nm78%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは83%以上、さらに好ましくは85%以上、
波長500nm85%以上、好ましくは88%以上、より好ましくは89%以上、
波長600nm51%以上、好ましくは55%以上、より好ましくは56%以上、
波長700nm12%以下、好ましくは11%以下、より好ましくは10%以下、
波長800nm5%以下、好ましくは3%以下、より好ましくは2.5%以下、さらに好ましくは2.2%以下、より一層好ましくは2%以下、
波長900nm5%以下、好ましくは3%以下、より好ましくは2.5%以下、さらに好ましくは2.2%以下、より一層好ましくは2%以下、
波長1000nm7%以下、好ましくは6%以下、より好ましくは5.5%以下、さらに好ましくは5%以下、より一層好ましくは4.8%以下、
波長1100nm12%以下、好ましくは11%以下、より好ましくは10.5%以下、さらに好ましくは10%以下、
波長1200nm23%以下、好ましくは22%以下、より好ましくは21%以下、さらに好ましくは20%以下である。
即ち、波長700〜1200nmの近赤外線の吸収は大きく、波長400〜600nmの可視光線の吸収は小さい。ここで、透過率とは互いに平行かつ光学研磨した2つの平面を有するガラス試料を想定し、前記平面の一方に垂直に光を入射したとき、前記平面の他方から出射した光の強度を、前記入射光の試料入射前における強度で割った値であり、外部透過率とも呼ばれる。
このような特性によりCCDやCMOSなどの半導体撮像素子の色補正を良好に行うことができる。
本発明の光学ガラスは、フツホウ酸ガラス又はフツケイ酸ガラスからなる光学ガラス(光学ガラスII)を含むものである。
光学ガラスIIもガラス原料中にフッ素およびホウ素またはケイ素を含むため、ガラス原料の加熱、熔融によって易揮発物が生成する。したがって、フツリン酸ガラスからなる光学ガラスIの場合と同様、熔融ガラスを成形してプリフォームを製造する前に易揮発物(揮発性物質)を実質的に排除することにより、成形時の揮発物質の揮発による脈理の発生および屈折率の変動を低減、防止することができる。なお、上記光学ガラスIIにおいても、ガラスの屈折率の値をnd(1)とし、窒素雰囲気中において900℃、1時間再熔融し、ガラス転移温度まで冷却し、その後、毎時30℃の降温速度で25℃まで冷却した後の屈折率の値をnd(2)としたとき、nd(1)とnd(2)とが実質的に等しい、より具体的にはnd(2)−nd(1)の絶対値が0.00300以下であるガラスを、易揮発性物質が実質的に排除されたガラスの目安と考えることができる。屈折率の測定法、再熔融の条件、上記絶対値の好ましい範囲については、光学ガラスIと同様である。
なお、光学ガラスIおよびIIのいずれの場合も、揮発性物質をガラス中から排除、低減するので、原料調合にあたっては、揮発によって失われる物質を多めに導入する留意する。このような組成の補正は、nd(2)−nd(1)の絶対値を所定の値以下にしつつ、nd(1)が所望の値になるように行う。揮発によって減少する成分の代表的なものはフッ素である。その他の成分については、目的とするガラス組成により様々なので、上記指針に基づき組成の補正を行えばよい。
本発明の光学ガラスは、ガラス原料を加熱、熔融した後、容器内で揮発性物質の濃度を低下させてから流出、成形することにより製造される。各熔融条件は、得られるガラスのnd(2)−nd(1)の絶対値が0.00300以下になるように適宜、設定すればよい。
成形時、高温のガラスは雰囲気中の水分と反応しやすく、この反応によりガラスの品質が低下するので、熔融ガラスの流出、成形は乾燥雰囲気中で行うことが好ましい。乾燥雰囲気中の水分量は露点−30℃以下相当が望ましい。ガスの種類は窒素、アルゴンなどの不活性ガスを使用すればよい。
このようにして成形したガラス成形体に切断、研削、研磨などの機械加工を施し、プレス成形用ガラス素材や以下で詳説する精密プレス成形用プリフォームにしたり、レンズ、プリズム、フィルタなどの光学素子にすることができる。
[精密プレス成形用プリフォームとその製造方法]
本発明の精密プレス成形用プリフォームは、上述した本発明の光学ガラスからなることを特徴とするものである。ここで精密プレス成形用プリフォームとは、プレス成形品の重量と等しい重量のガラスを、精密プレス成形に適した形状に予め成形したものである。
フツリン酸ガラスは、他の一般的な光学ガラスと比較し、磨耗度が大きく、熱膨張係数も大きいという性質を有する。このような性質は、研磨加工にとって好ましくない。磨耗度が大きいと、加工精度が低下したり、研磨時の傷がガラス表面に残留しやすい。また、研磨は切削液をガラスにかけながら行うが、研磨によって温度上昇したガラスに切削液をかけたり、超音波洗浄時に温度上昇した洗浄液に表面に研磨による傷が存在するガラスを投入すると、ガラスが大きな温度変化に晒され、熱膨張係数が大きいフツリン酸ガラスでは熱衝撃によってガラスが破損するという問題がおきやすい。したがって、精密プレス成形用プリフォームにしても、光学素子にしても研磨によらない方法で製造することが望ましい。このような観点から精密プレス成形用プリフォームは全表面が熔融状態のガラスを固化して形成された面とすることが望ましく、光学素子としては、精密プレス成形により作製されたものが望ましい。
プリフォームの全表面を熔融状態のガラスを固化して形成される面とすることにより、プリフォームを洗浄したり、精密プレス成形に先立って加熱する際のプリフォームの破損を防止、低減することができる。
次に本発明のプレス成形用プリフォームの製造方法について説明する。
本発明のプレス成形用プリフォームの製造方法の第1の態様(以下、プリフォームの製法Iという。)は、パイプから熔融ガラスを流出させて、熔融ガラス塊を分離し、ガラスが冷却する過程でプリフォームに成形することを特徴とする。
熔融ガラスの作製はプリフォームの製法Iでも後述するプリフォームの製法IIでも、上述した本発明の光学ガラスの製造方法と同様にすればよい。揮発性物質の濃度を低減した熔融ガラスを所定温度に加熱した白金合金製あるいは白金製のパイプから一定流量で連続して流出する。流出した熔融ガラスからプリフォーム1個分の重量、あるいはプリフォーム1個分の重量に後述する除去分の重量を加えた重量の熔融ガラス塊を分離する。熔融ガラス塊の分離にあたっては、切断痕が残らないように、切断刃の使用を避けることが望ましく、例えば、パイプの流出口から熔融ガラスを滴下させたり、流出する熔融ガラス流先端を支持体により支持し、目的重量の熔融ガラス塊が分離できるタイミングで支持体を急降下して熔融ガラスの表面張力を利用して熔融ガラス流先端から熔融ガラス塊を分離する方法を用いることが好ましい。
分離した熔融ガラス塊はプリフォーム成形型の凹部上においてガラスが冷却する過程で所望形状に成形する。その際、プリフォーム表面にシワができたり、カン割れと呼ばれるガラスの冷却過程における破損を防止するため、凹部上でガラス塊に上向きの風圧を加え浮上させた状態で成形することが好ましい。その際、ガラス塊表面にガスを吹き付けて前記表面の冷却を促進することは、脈理を低減、防止する上から好ましい。
プリフォームに外力を加えても変形しない温度域にまでガラスの温度が低下してから、プリフォームをプリフォーム成形型から取り出して、徐冷する。
なお、ガラス表面からの揮発をより一層低減するため、ガラス流出、プリフォーム成形を前述のとおり、乾燥雰囲気中(乾燥窒素雰囲気、乾燥空気雰囲気、窒素と酸素の乾燥混合ガス雰囲気など)で行うことが好ましい。
本発明のプレス成形用プリフォームの製造方法の第2の態様(プリフォームの製法IIという。)は、熔融ガラスを成形してガラス成形体を作製し、該ガラス成形体を機械加工して本発明の光学ガラスからなるプリフォームを作製するプレス成形用プリフォームの製造方法である。
ここで熔融ガラスの作製は前述のとおりである。プリフォームの製法IIでは、まず、熔融ガラスを連続してパイプから流出し、パイプ下方に配置した鋳型に流し込む。鋳型には、平坦な底部と底部を三方から囲む側壁を備え、一方の側面が開口したものを使用する。開口側面および底部を両側から挟む側壁部は互いに平行に対向し、底面の中央がパイプの鉛直下方に位置するように、また底面が水平になるように鋳型を配置、固定して鋳型内に流し込まれる熔融ガラスを側壁で囲まれた領域内に均一な厚みになるように広げ、冷却後に鋳型側面の開口部から一定の速度で水平方向にガラスを引き出す。引き出したガラス成形体はアニール炉内へと送られ、アニールされる。このようにして一定の幅と厚みを有する本発明の光学ガラスからなる板状ガラス成形体を得る。このようにして表面の脈理を低減、抑制したガラス成形体が得られる。
次に、板状ガラス成形体を切断あるいは割断してカットピースと呼ばれる複数のガラス片に分割し、これらガラス片を研削、研磨して目的重量のプレス成形用プリフォームに仕上げる。
また別の方法としては、円柱状の貫通孔を有する鋳型を貫通孔の中心軸が鉛直方向を向くようにパイプの鉛直下方に配置、固定する。このとき、貫通孔の中心軸がパイプの鉛直下方に位置するよう鋳型を配置することが好ましい。そして、パイプから鋳型貫通孔内に熔融ガラスを一定流量にて流し込んで貫通孔内にガラスを充填し、固化したガラスを貫通孔の下端開口部から一定速度で鉛直下方に引き出し、徐冷して、円柱棒状のガラス成形体を得る。このようにして得られたガラス成形体をアニールした後、円柱棒状の中心軸に対して垂直な方向から切断あるいは割断して複数のガラス片を得る。次にガラス片を研削、研磨して所望重量のプレス成形用プリフォームに仕上げる。これらの方法においても、熔融ガラスの流出、成形を前述同様、乾燥雰囲気中で行うことが好ましい。さらにこれらの方法においても、ガスを成形中のガラス表面に吹き付けて冷却を促進することが脈理の低減、防止を行う上で効果的である。
プリフォームの製法I、IIとも高品質かつ重量精度の高いプリフォームを作製することができるので、精密プレス成形用のプリフォームを製造する方法として好適である。
プリフォームの製法IIは、ガラス成形体に機械加工を加えるため、ガラス成形体を100%、プリフォームに利用するものではないが、ガラス成形体表面の脈理を低減、抑制できれば、ガラス成形体の有効利用体積を増加することができる。フツリン酸ガラスは光学ガラスの中でも原料費が高いので、ガラスを有効利用することによりプリフォーム、光学素子の生産コストを低減することができる。
上記プリフォームは、目的に応じ、本発明の光学ガラスIおよびIIのいずれかのガラスを用いて作製すればよい。
[光学素子とその製造方法]
本発明の光学素子は、本発明の光学ガラスからなることを特徴とするものである。本発明の光学素子は上記の本発明の光学ガラスからなるので、本発明によれば、低分散特性を活かした光学素子を提供することができる。また、本発明の光学素子は耐水性、化学的耐久性が優れたガラスからなるため、本発明によれば、長期にわたる使用によっても表面が曇るなどの不具合が生じない光学素子を提供することができる。
光学素子の種類、形状などについては特に限定はないが、非球面レンズ、球面レンズ、マイクロレンズ、レンズアレイ、プリズム、回折格子、レンズ付きプリズム、回折格子付きレンズなどに好適である。
用途の面からは、撮像系を構成する光学素子、例えばデジタルカメラのレンズやカメラ付き携帯電話のカメラ用レンズ、光ピックアップレンズ、コリメータレンズなどに好適である。
光学素子の表面には必要に応じて反射防止膜などの光学薄膜を形成してもよい。
次に本発明の光学素子の製造方法について説明する。
本発明の光学素子の製造方法は、本発明の精密プレス成形用プリフォームまたは本発明のプリフォームの製造方法により作製した精密プレス成形用プリフォームを加熱し、プレス成形型で精密プレス成形することを特徴とするものである。
上記精密プレス成形はモールドオプティクス成形とも呼ばれ、当該技術分野において周知の方法である。光学素子において、光線を透過したり、屈折させたり、回折させたり、反射させたりする面を光学機能面(レンズを例にとると非球面レンズの非球面や球面レンズの球面などのレンズ面が光学機能面に相当する)というが、精密プレス成形によればプレス成形型の成形面を精密にガラスに転写することにより、プレス成形によって光学機能面を形成することができ、光学機能面を仕上げるために研削や研磨などの機械加工を加える必要がない。
したがって、本発明の光学素子の製造方法は、レンズ、レンズアレイ、回折格子、プリズムなどの光学素子の製造に好適であり、特に非球面レンズを高い生産性のもとに製造する方法として適している。
本発明の光学素子の製造方法によれば、いずれも上記光学特性を有する光学素子を作製できるとともに、ガラスの転移温度(Tg)が低いために、プレス成形温度を低くすることができるので、プレス成形型の成形面へのダメージが軽減され、成形型の寿命を延ばすことができる。またプリフォームを構成するガラスが高い安定性を有するので、再加熱、プレス工程においてもガラスの失透を効果的に防止することができる。さらに、ガラス熔解から最終製品を得る一連の工程を高い生産性のもとに行うことができる。
精密プレス成形に使用するプレス成形型としては公知のもの、例えば炭化珪素、ジルコニア、アルミナなどの耐熱性セラミックスの型材の成形面に離型膜を設けたものを使用することができるが、中でも炭化珪素製のプレス成形型が好ましく、離型膜としては炭素含有膜などを使用することができる。耐久性、コストの面から特にカーボン膜が好ましい。
精密プレス成形では、プレス成形型の成形面を良好な状態に保つため成形時の雰囲気を非酸化性ガスにすることが望ましい。非酸化性ガスとしては窒素、窒素と水素の混合ガスなどが好ましい。
次に本発明の光学素子の製造方法で用いられる精密プレス成形の態様として、以下に示す精密プレス成形1と2の2つの態様を示すことができる。
(精密プレス成形1)
精密プレス成形1は、プレス成形型にプリフォームを導入し、一緒に加熱し、精密プレス成形するものである。
この精密プレス成形1においては、前記プレス成形型と前記プリフォームの温度をともに、プリフォームを構成するガラスが10〜1012dPa・sの粘度を示す温度に加熱して精密プレス成形を行うことが好ましい。
また前記ガラスが、好ましくは1012dPa・s以上、より好ましくは1014dPa・s以上、さらに好ましくは1016dPa・s以上の粘度を示す温度にまで冷却してから精密プレス成形品をプレス成形型から取り出すことが望ましい。
上記の条件により、プレス成形型成形面の形状をガラスにより精密に転写することができるとともに、精密プレス成形品を変形することなく取り出すこともできる。
(精密プレス成形2)
精密プレス成形方法2は、予熱したプレス成形型に、別途加熱したプリフォームを導入し、精密プレス成形するするものである。
この精密プレス成形2によれば、前記プリフォームをプレス成形型に導入する前に予め加熱するので、サイクルタイムを短縮化しつつ、表面欠陥のない良好な面精度を有する光学素子を製造することができる。
なおプレス成形型の予熱温度は、プリフォームの予熱温度よりも低く設定することが好ましい。このようにプレス成形型の予熱温度を低くすることにより、プレス成形型の消耗を低減することができる。
精密プレス成形2において、前記プリフォームを構成するガラスが10dPa・s以下、より好ましくは10dPa・sの粘度を示す温度に予熱することが好ましい。
また、前記プリフォームを浮上しながら予熱することが好ましく、さらに前記プリフォームを構成するガラスが105.5〜10dPa・sの粘度を示す温度に予熱することがより好ましく、105.5dPa・s以上10dPa・s未満の粘度を示す温度に予熱することがさらに好ましい。
またプレス開始と同時又はプレスの途中からガラスの冷却を開始することが好ましい。
なお、プレス成形型の温度は、前記プリフォームの予熱温度よりも低い温度に調温するが、前記ガラスが10〜1012dPa・sの粘度を示す温度を目安にすればよい。
この方法において、プレス成形後、前記ガラスの粘度が1012dPa・s以上にまで冷却してから離型することが好ましい。
精密プレス成形された光学素子はプレス成形型より取り出され、必要に応じて徐冷される。成形品がレンズなどの光学素子の場合には、必要に応じて表面に光学薄膜をコートしてもよい。
以上が本発明の光学素子の製造方法であるが、前述した方法以外でも、例えば、熔融ガラスを流出してガラス成形体を成形し、アニールした後に機械加工を施して本発明の光学素子を製造することもできる。例えば、上述した円柱棒状のガラス成形体を円柱軸に対して垂直方向からスライス加工し、得られた円柱状のガラスに研削、研磨加工を施して各種レンズなどの光学素子を作ることもできる。
なお、上記光学素子は目的に応じて、光学ガラスIおよびIIのいずれかのガラスを使用すればよい。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1(光学ガラスの製造例)
ガラスの原料として、各ガラス成分に相当するリン酸塩、フッ化物などを使用し、表1に示すNo.1〜11の組成を有するガラスとなるように前記原料を秤量し、十分混合した。
上記調合原料を白金坩堝を使用し850℃で1時間熔解を行った後急冷し粉砕したものをラフメルトカレットとして使用した。このラフメルトカレットを蓋により密閉された白金ルツボに10kg投入して900℃に加熱し、熔融した。次いで、白金ルツボ中に十分な乾燥ガスを導入して乾燥雰囲気を保ちつつ1100℃、2時間かけて熔融ガラスを清澄した。乾燥ガスの種類としては、窒素などの不活性ガス、不活性ガスと酸素の混合ガス、酸素などを例示することができる。
清澄後、ガラスの温度を清澄時の温度よりも低い850℃まで下げた後、ルツボ底部に接続したパイプからガラスを流出させた。なお、ルツボに導入したガスはフィルターを通して清浄化し、外部に排出した。上記各工程では、均質なガラスを得るためにルツボ内のガラスを撹拌した。
得られた熔融ガラスを乾燥窒素雰囲気中でカーボン製金型に鋳込んだ。鋳込んだガラスを転移温度まで放冷してから直ちにアニール炉に入れ、転移温度付近で1時間アニールし、アニール炉内で室温まで徐冷して、表1および表2に示すNo.1〜11の各光学ガラスを得た。
得られた各光学ガラスNo.1〜11を顕微鏡によって拡大観察したところ、結晶の析出や原料の熔け残りは認められなかった。
得られた光学ガラスNo.1〜11について、屈折率(nd)、アッべ数(νd)、ガラス転移温度(Tg)を、以下のようにして測定した。測定結果を表1〜2に示す。
(1)屈折率(nd)及びアッべ数(νd)
屈折率(nd)及びアッべ数(νd)は徐冷降温速度を−30℃/時にして得られた光学ガラスについて測定した。
なお、屈折率ndに関しては、上記条件で測定された光学ガラスNo.1〜11の各屈折率の値をnd(1)とし、光学ガラスNo.1〜11の再熔融、冷却後の屈折率nd(2)を次のようにして測定した。
上記光学ガラスNo.1〜11のそれぞれ30gを、2リットル/分の乾燥窒素ガスを導入した容量2リットルの石英ガラス製チャンバー内のグラッシーカーボン製ルツボに投入し、このチャンバーごと900℃に加熱し、その温度で1時間再熔融した。その後、チャンバー内でガラス転移温度付近まで冷却し、その後、毎時30℃の降温速度で室温25℃まで冷却した。そして、このようにして得られた光学ガラスNo.1〜11の各屈折率nd(2)を測定した。
光学ガラスNo.1〜11のガラスについてnd(2)−nd(1)およびnd(2)−nd(1)の絶対値を表1および表2に示す。
(2)ガラス転移温度(Tg)
ガラス転移温度(Tg)は理学電機株式会社の熱機械分析装置により昇温速度を4℃/分にして測定した。
Figure 2010189269
Figure 2010189269
表1および表2に示すように、本発明の光学ガラスNo.1〜11のいずれも、所望の屈折率、アッベ数、ガラス転移温度を有し、優れた低温軟化性、熔解性を示し、プレス成形用の光学ガラスとして好適なものであった。
また、nd(2)−nd(1)およびnd(2)−nd(1)の絶対値はいずれも0.00300より小さかった。
実施例2 (光学ガラスの製造例)
ガラスの原料として、各ガラス成分に相当するリン酸塩、フッ化物、酸化物などを使用し、表3に示すNo.12、13の組成を有するガラスとなるように前記原料を秤量し、十分混合した後、蓋により密閉された白金ルツボに投入して電気炉で790〜850℃で攪拌しながら実施例1と同様に、乾燥不活性ガス雰囲気中で加熱、熔融し、清澄後、温度を低下してから流出を開始した。なお、ルツボから排気したガスはフィルターを通して清浄化し、外部に排出した。
得られた熔融ガラスをカーボン製金型に鋳込み、得られたガラスを転移温度まで放冷してから直ちにアニール炉に入れ、転移温度付近で1時間アニールし、アニール炉内で室温まで徐冷して、表3に示す光学ガラスNo.12および13を得た。なお、光学ガラスNo.12および13のガラス転移温度Tg、代表的な波長における透過率を表3に示す。透過率は、波長615nmにおいて透過率が50%になる厚みでの値である。光学ガラスNo.12では前記厚みは1.0mmであり、光学ガラスNo.13では前記厚みは0.45mmである。なお、透過率の測定は、平板形状で対向する面を互いに平行に光学研磨した試料を用いて分光光度計で測定した。
光学ガラスNo.12および13についてもnd(2)−nd(1)は0.00300以下、nd(2)−nd(1)の絶対値も0.00300以下であった。
Figure 2010189269
比較例1
表4に示す比較例1のガラスが得られるようにガラス原料を熔融したが、熔融の際、ルツボ内には乾燥不活性ガスを流さなかった。また50リットルの容量をもつ連続熔解炉を使用し、熔融温度は1100℃、熔融から流出開始までのガラスの炉内滞在時間は20時間とした。このようにして用意した熔融ガラスから上記手順と同じ流れでガラスを作製したところ、表4に示すようにnd(1)に対してnd(2)が大幅に増加し、nd(2)−nd(1)の絶対値が0.00300よりも大きくなった。
Figure 2010189269
実施例3 (プリフォームの製造例)
光学ガラスNo.1〜11および比較例1のガラスからなる各熔融ガラスを、ガラスが失透することなく、安定した流出が可能な温度域に温度調整された白金合金製のパイプから一定の流量で流出させ、滴下又は支持体を用いて熔融ガラス流先端を支持した後、支持体を急降下してガラス塊を分離する方法にて目的とするプリフォームの重量の熔融ガラス塊を分離した。次いで、得られた各熔融ガラス塊をガス噴出口を底部に有する受け型に受け、ガス噴出口からガスを噴出してガラス塊を浮上しながら成形し、精密プレス成形用プリフォームを作製した。プリフォームの形状は、熔融ガラスの分離間隔を調整、設定することにより、球状や扁平球状とした。得られた各プリフォームの重量は設定値に精密に一致しており、いずれも全表面が滑らかで、熔融状態のガラスが固化して形成された面となっていた。
次いでプリフォームの内部を観察したところ、本発明の光学ガラスNo.1〜11には脈理が認められなかったが、比較例1のガラスの表面には放射状に顕著な脈理が認められた。
また、別途、熔融ガラスを鋳型に鋳込んでガラス表面に乾燥ガスを吹き付けて冷却を促進しながら板状ガラスや円柱棒状に成形し、アニールした後、これを切断して得たガラス片の表面を研削、研磨して、全表面が滑らかなプリフォームを得た。この場合も、雰囲気置換を行って得た熔融ガラスを鋳込んで成形した板状ガラスや円柱棒状の表面には脈理は見られなかったが、雰囲気置換しなかった場合にはガラス表面に脈理が認められた。
実施例4 (光学素子の製造例)
実施例3で得られた、光学ガラスNo.1〜11からなる各プリフォームを、図1に示すプレス装置を用いて精密プレス成形して非球面レンズを得た。具体的にはプリフォーム4を、上型1、下型2および胴型3からなるプレス成形型の下型2と上型1の間に設置した後、石英管11内を窒素雰囲気としてヒーター12に通電して石英管11内を加熱した。プレス成形型内部の温度を、成形されるガラスが10〜1010dPa・sの粘度を示す温度に設定し、同温度を維持しつつ、押し棒13を降下させて上型1を押して成形型内にセットされたプリフォームをプレスした。プレスの圧力は8MPa、プレス時間は30秒とした。プレスの後、プレスの圧力を解除し、プレス成形されたガラス成形品を下型2及び上型1と接触させたままの状態で前記ガラスの粘度が1012dPa・s以上になる温度まで徐冷し、次いで室温まで急冷してガラス成形品を成形型から取り出し非球面レンズを得た。得られた非球面レンズは、極めて高い面精度を有するものであった。
なお、図1において、参照数字9は支持棒、参照数字10は下型、胴型ホルダー、参照数字14は熱電対である。
精密プレス成形により得られた非球面レンズには、必要に応じて反射防止膜を設けた。
実施例5 (光学素子の製造例)
実地例3で得られた、光学ガラスNo.1〜11からなる各プリフォームを実施例4とは別の方法で精密プレス成形した。この方法では、先ず、プリフォームを浮上しながら、プリフォームを構成するガラスの粘度が10dPa・sになる温度にプリフォームを予熱した。一方で上型、下型、胴型を備えるプレス成形型を加熱して、前記プリフォームを構成するガラスが10〜1012dPa・sの粘度を示す温度にし、上記予熱したプリフォームをプレス成形型のキャビティ内に導入して、10MPaで精密プレス成形した。プレス開始とともにガラスとプレス成形型の冷却を開始し、成形されたガラスの粘度が1012dPa・s以上となるまで冷却した後、成形品を離型して非球面レンズを得た。得られた非球面レンズは、極めて高い面精度を有するものであった。
精密プレス成形により得られた非球面レンズには必要に応じて反射防止膜を設けた。このようにして、内部品質の高いガラス製光学素子を生産性よく、しかも高精度に得ることができた。
実施例6 (板状ガラスおよび光学素子の製造例)
光学ガラスNo.1〜11からなる各熔融ガラスをパイプから連続して鋳型に流し込み、乾燥窒素雰囲気中で板状ガラスに成形し、徐冷した。次いでガラス内部を観察したところ、脈理は認められなかった。
次に上記板状ガラスを切断、研削、研磨してプレス成形用素材とし、この素材を加熱、軟化、プレス成形して光学素子ブランクを作製した。このブランクを徐冷してから研削、研磨して球面レンズを得た。
これら光学素子の表面には適宜、反射防止膜を形成したり、近赤外光反射膜をコートしてもよい。
実施例7
上記光学ガラスNo.12および13のそれぞれからなるプリフォーム、板状ガラス、丸棒状ガラスを前述の実地例3、6などに記載の方法により作製した。次に、光学ガラスNo.12からなる板状ガラスをスライスして平板形状に加工し、互いに平行な主表面を光学研磨して厚さ1.0mmの近赤外光吸収フィルタとした。この近赤外光吸収フィルタと互いに平行な主表面を光学研磨した水晶平板と光学ガラス(ホウケイ酸ガラスBK−7)からなる2枚の平板を貼り合わせ、撮像装置に組み込むための近赤外吸収フィルタ機能と光ローパスフィルタ機能を合わせもつ複合フィルタを作製した。
同様にして光学ガラスNo.13からなる板状ガラスをスライスしたのち、両面光学研磨して、厚さ0.45mmの平板にした。この平板を水晶平板と光学ガラス(ホウケイ酸ガラスBK−7)平板と貼り合わせ、複合フィルタを作製した。
なお、光学ガラスNo.12、13からなる丸棒状ガラスをスライス後、両面光学研磨したものを、水晶平板と光学ガラス(ホウケイ酸ガラスBK−7)平板と貼り合わせて、複合フィルタとしてもよい。
次に光学ガラスNo.12、13からなるプリフォームを精密プレス成形し、近赤外光吸収機能を有する非球面レンズを作製した。
上記のようにして得られた各種光学素子とも光学的に均質なものであり、脈理は認められなかった。
本発明によれば、脈理のないフッ素含有光学ガラスを得ることができる。そして、低分散で、かつガラス転移温度が低く、精密プレス成形が可能な低温軟化性を有する光学ガラスを得ることができ、該光学ガラスを用いて精密プレス成形用プリフォーム、さらには各種レンズ等の光学素子を製造することができる。
1・・・上型
2・・・下型
3・・・胴型
4・・・プリフォーム
9・・・支持棒
10・・・下型、胴型ホルダー
11・・・石英管
12・・・ヒーター
13・・・押し棒
14・・・熱電対

Claims (11)

  1. ガラス原料を加熱、熔融して熔融ガラスとし、前記熔融ガラスを成形してフッ素含有ガラスを作製する光学ガラスの製造方法において、
    熔融ガラスに含まれる揮発性物質を揮発させ、その濃度を低下させた後、該熔融ガラスを成形することにより、得られるガラスの屈折率の値をnd(1)、該ガラスを窒素雰囲気中において900℃、1時間再熔融し、ガラス転移温度まで冷却し、その後、毎時30℃の降温速度で25℃まで冷却した後の屈折率の値をnd(2)としたときに、nd(1)とnd(2)の差の絶対値(|nd(2)−nd(1)|)が0.00300以下である光学ガラスを作製することを特徴とする光学ガラスの製造方法。
  2. ガラス原料を加熱、熔融して熔融ガラスとし、前記熔融ガラスを成形してフッ素含有ガラスを作製する光学ガラスの製造方法において、
    熔融ガラスに含まれる揮発性物質を揮発させ、その濃度を低下させた後、該熔融ガラスを成形することにより、脈理を解消した光学ガラスを作製することを特徴とする光学ガラスの製造方法。
  3. 容器内に乾燥ガスを導入し、該容器内の熔融ガラスの揮発性物質の濃度を低下させる、請求項1または2に記載の光学ガラスの製造方法。
  4. フッ素含有ガラスがフツリン酸ガラスである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学ガラスの製造方法。
  5. フツリン酸ガラスが、カチオン%表示で、
    5+ 5〜50%、
    Al3+ 0.1〜40%、
    Mg2+ 0〜20%、
    Ca2+ 0〜25%、
    Sr2+ 0〜30%、
    Ba2+ 0〜30%、
    Li 0〜30%、
    Na 0〜10%、
    0〜10%、
    3+ 0〜10%、
    La3+ 0〜5%
    Gd3+ 0〜5%
    を含有する、請求項4に記載の光学ガラスの製造方法。
  6. とO2−の合計量に対するFの含有量のモル比F/(F+O2−)が0.25〜0.95であるフツリン酸ガラスを作製する、請求項4又は5に記載の光学ガラスの製造方法。
  7. Liを2〜30カチオン%含むフツリン酸ガラスを作製する、請求項4〜6のいずれか1項に記載の光学ガラスの製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法により光学ガラスを製造し、得られた光学ガラスからなる熔融ガラスを流出させて、熔融ガラス塊を分離し、ガラスが冷却する過程でプリフォームに成形することを特徴とする脈理を解消した精密プレス成形用プリフォームの製造方法。
  9. 請求項8に記載の方法により精密プレス成形用プリフォームを製造し、得られたプリフォームを加熱し、プレス成形型で精密プレス成形することを特徴とする光学素子の製造方法。
  10. プレス成形型に精密プレス成形用プリフォームを導入し、一緒に加熱して精密プレス成形する、請求項9記載の光学素子の製造方法。
  11. 加熱したプレス成形型に、別途加熱した精密プレス成形用プリフォームを導入し、精密プレス成形する、請求項9記載の光学素子の製造方法。
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