JP2010120802A - チタン酸バリウム粉末の製造方法 - Google Patents

チタン酸バリウム粉末の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明はチタン酸バリウム粉末の粒子の粒子サイズの細かさと結晶性の高さを両立させたチタン酸バリウム粉末の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明におけるチタン酸バリウム粉末の製造方法は素材用チタン酸バリウム粉末を用意する準備工程と、前記素材用チタン酸バリウム粉末にバリウム化合物を添加して混合する添加工程と、素材用チタン酸バリウム粉末およびバリウム化合物の混合物を熱処理する熱処理工程を含むチタン酸バリウム粉末の製造方法であり、前記添加工程は、前記混合物に含まれるバリウムとチタンとのモル比がBa/Ti>1.000となるようにバリウム化合物を添加し、且つ、熱処理雰囲気の酸素分圧が大気中の酸素分圧より低い条件で熱処理を行うことを特徴とする。この方法により、熱処理時の素材用チタン酸バリウム粉末の粒子の粒成長を抑えながら粒子の結晶性を高めることができる。
【選択図】図2

Description

本発明はセラミック電子部品等に用いられるチタン酸バリウム粉末の製造方法に関する発明である。
近年、技術進歩により電子機器の小型化が急速に進んでいる。それに伴い、電子部品であるコンデンサについても小型化が求められ、積層セラミックコンデンサの需要が急激に伸びている。積層セラミックコンデンサとしては、例えば誘電体層と内部電極とを交互に積層したコンデンサ素体に端子電極を形成したものが知られている。このような積層セラミックコンデンサでは、小型化のために誘電体層の薄層化が求められ、薄層化を実現するために誘電体の材料として用いられているチタン酸バリウム粉末をいかに微粒子化させるかが重要となり、その微粒子化に関する技術開発がこれまで積極的に行われてきた。
その中で従来では、誘電体層の信頼性を高めるために、チタン酸バリウム粉末の製造方法において、酸化チタン粉末に水可溶性の有機溶媒を混合させ、この混合物において前記有機溶媒の体積比率が50%以上100%未満とした上で、この混合物を80℃以上の条件下において水熱反応を生じさせるチタン酸バリウムの製造方法が開示されている。
なお、この出願に関する先行技術文献情報として、例えば特許文献1が知られている。
特開2006−036603号公報
従来のチタン酸バリウム粉末の製造方法では、チタン化合物とバリウム化合物とを合成した後にチタン酸バリウムに熱処理を施すことによって、得られるチタン酸バリウム粉末の結晶性を高め、チタン酸バリウム粉末を構成するチタン酸バリウムの粒子の誘電性を向上させてきた。しかしながら、熱処理工程の際に熱処理の温度を上げていく中で、チタン酸バリウム粉末を構成するチタン酸バリウムの粒子どうしが結合して粒成長するため、大きな粒子が形成されやすくなり、結晶性が高く、且つ、微粒子化されたチタン酸バリウム粉末を得ることが困難であるという課題があった。
そこで、本発明では、チタン酸バリウム粉末を熱処理する際、チタン酸バリウムの粒子に生じる粒成長を抑え、微粒子化と高結晶性を両立させたチタン酸バリウム粉末の製造方法を提供することを目的とする。
本発明におけるチタン酸バリウム粉末の製造方法は、素材用チタン酸バリウム粉末を用意する準備工程と、前記素材用チタン酸バリウム粉末にバリウム化合物を添加して混合する添加工程と、前記素材用チタン酸バリウム粉末および前記バリウム化合物の混合物を熱処理する熱処理工程を含むチタン酸バリウム粉末の製造方法であり、前記添加工程は、前記混合物に含まれるバリウム(Ba)とチタン(Ti)とのモル比がBa/Ti>1.000となるように前記バリウム化合物を添加し、且つ、前記熱処理工程では熱処理雰囲気中の酸素分圧が大気雰囲気中の酸素分圧より低い分圧であることを特徴としている。
上記のように製造すると、本発明におけるチタン酸バリウム粉末は、熱処理工程の際にチタン酸バリウム粉末を構成するチタン酸バリウムの粒子に対して、酸素が少ない雰囲気中で熱処理を行うことにより、添加工程において添加した過剰のバリウム原子あるいはバリウム化合物における酸化バリウムの生成を抑えながら、バリウム原子あるいはバリウム化合物を上記粒子の表面に付着させることができる。そして、この付着するバリウム原子あるいはバリウム化合物により、上記粒子どうしが結合することによって従来生じていた粒成長を抑えることができ、熱処理工程を経ることによって得られるチタン酸バリウム粉末の結晶性の向上という効果を奏するものである。このようにして、本発明により微粒子かつ結晶性の高いチタン酸バリウム粉末を得ることができる。
(実施の形態1)
以下に実施の形態1におけるチタン酸バリウム粉末の製造方法および請求項1〜9を説明していくが、本発明の製造方法は下記の手段に限定されない。
図1は本実施の形態におけるチタン酸バリウム粉末を用いた積層セラミックコンデンサの正面断面図である。
まず始めに、準備工程において本実施の形態に用いる素材用チタン酸バリウム粉末を用意する。例えばチタン化合物(図示なし)及びバリウム化合物(図示なし)を用いて合成させることによって素材用チタン酸バリウム粉末を作製する。
本実施の形態では、密封された空間の中で溶媒の中にチタン化合物およびバリウム化合物を入れてこの溶媒を加熱させて上記化合物を反応させる水熱合成法で素材用チタン酸バリウム粉末を得る。原料として例えば酸化チタンおよび水酸化バリウムを用いる。原料となるチタン化合物およびバリウム化合物を水などの液体とともに圧力容器(オートクレーブ)の中に入れて密閉し、150〜300℃の温度で反応させ、素材用チタン酸バリウム粉末を得る。この水熱合成法は、他の合成方法に比べて得られる素材用チタン酸バリウム粉末の粒子サイズが小さく、且つ、粒子サイズの均一性、つまり良好な粒度分布に優れている。
さらに、図1のように誘電体層1とその誘電体層1の上に引出電極2を印刷したものを多層積層して積層体を形成し、この積層体の内部の引出電極2と電気的に接続するように外部電極3が上記積層体の表面へ配設されている積層セラミックコンデンサの材料としてチタン酸バリウム粉末を用いて誘電体層1を作製する時には、誘電体層1内でのチタン酸バリウム粉末の分散性が優れるという効果を奏する。
また、夫々の粒子の大きさにバラつきが少ないことにより、積層セラミックコンデンサの誘電体層1として積層した際に誘電体層1に平坦性をもたせることができる。従って、積層した誘電体層1の上に引出電極2を安定して印刷することができる。
次に、添加工程において上記準備工程で得られた素材用チタン酸バリウム粉末にバリウム化合物(図示なし)を添加し、それらを混合して混合物を作製する。添加する際、混合物に含まれるバリウム(Ba)とチタン(Ti)とのモル比Ba/TiがBa/Ti>1.000となるように添加する。本実施の形態では添加するバリウム化合物としては、炭酸バリウムや水酸化バリウムが挙げられる。
これら素材用チタン酸バリウム粉末と炭酸バリウムとを混合する際、本実施の形態では例えばボールミルによって混合する。
ボールミルでは、円筒状の容器に上記素材用チタン酸バリウム粉末および炭酸バリウムと共に、粉末の粉砕に用いられるジルコニアボール、水を入れて容器を封止した状態で、その容器を回転させることによって、混合を行う。ボールミルによる混合は、一定の混合の時間までは時間をかければかけるほど混合が進むため、本実施の形態では約1日かけて混合を行うこととするが、混合時間はこれに限定されない。
ボールミルによる混合の後、容器内からふるいなどを用いて、ジルコニアボールを取り除く。分離後、残った素材用チタン酸バリウム粉末と炭酸バリウムならびに水を例えば150℃の温度で乾燥させ、素材用チタン酸バリウム粉末と炭酸バリウムとの混合物を得る。得られる混合物をより細かくするために、乾燥後、乳鉢などを用いて必要に応じて混合物を解砕してもよい。
次に、熱処理工程として、粉末状の混合物を例えばるつぼに入れ電気炉などを用いて熱処理を行う。熱処理時の加熱温度は400℃〜950℃の間で行う。また、熱処理を行う際に用いる電気炉内を、大気圧を100000Paとした場合に酸素分圧200Pa以下の低酸素分圧雰囲気中で熱処理を行う。このような条件で熱処理を行う理由は後ほど行う。
上記熱処理工程後、本実施の形態におけるチタン酸バリウム粉末が得られる。
図2は本実施の形態における熱処理時の素材用チタン酸バリウム粉末の様子を示した図である。
図3は従来の熱処理時のチタン酸バリウム粉末の様子を示した概略図である。
図2において本実施の形態では、上記のように素材用チタン酸バリウム粉末にバリウム化合物として炭酸バリウムを、含まれるBaとTiとのモル比がBa/Ti>1.000となるように添加することによって、素材用チタン酸バリウムと炭酸バリウムとの混合物を作製し、その混合物を酸素分圧200Pa以下の低酸素雰囲気中で熱処理を行っている。
図3のように従来の方法では熱処理時にチタン酸バリウム6どうしが熱処理により結晶性を高めていく際に互いに一体となり、粒成長して一つ一つの粒子サイズが大きくなっていた。そのため、チタン酸バリウム粉末6の微粒子化が困難であった。
ところが、本実施の形態における添加工程および熱処理工程を経ることによって、図1のように熱処理工程で上記混合物を熱処理する際に、まず、酸素が少ない雰囲気中で混合物の熱処理を行うため、素材用チタン酸バリウム粉末の粒子4を被覆しようと熱処理中に粒子表面を移動するバリウム原子を、酸素と結合して酸化バリウムとなって固化し、バリウム原子の移動を阻害してしまう現象から保護することができる。このように上記現象から保護されたバリウム原子が素材用チタン酸バリウム粉末の粒子4表面に付着し、素材用チタン酸バリウム粉末の粒子4どうしの粒成長を抑制する粒成長抑制層5を形成する。以上のメカニズムから本実施の形態では粒子サイズの細かく、且つ、結晶性の高いチタン酸バリウム粉末が得られるのである。
上記熱処理工程のような酸素分圧が低い、酸素量の少ない状態を作るために例えば他の気体を雰囲気中に多く含ませることが考えられるが、その際、水素を多く含ませることによって雰囲気が還元雰囲気になるため、上記効果を高めることができる。
また、熱処理雰囲気中の酸素分圧を大気雰囲気中の酸素分圧より下げることによって、添加工程を設けていない従来の製造方法と比較して、素材用チタン酸バリウム粉末からより微粒子化されたチタン酸バリウム粉末が得られる。
そこで、さらに酸素分圧を200Pa以下という低酸素雰囲気中で熱処理を行うことによって、従来では実現することが困難であったBET値15m2/g以上であり、且つ、構成している結晶の格子定数を測定するリートベルト解析から得られる値が1006以上であるという、より細かくより結晶性が高いチタン酸バリウム粉末を得ることができる。
なお、本実施の形態の準備工程において、用意する素材用チタン酸バリウム粉末の粒子4は、BET法により測定される比表面積(BET値)が30m2/g以上のものであることが好ましい。この数値は結晶性を考慮して従来の固相法によってチタン酸バリウム粉末を得たときの上限値である。この数値から熱処理工程を経て結晶性を高めていくと、BET値は大きく減少していく。
因みにBET法とは、測定対象に対して分子サイズが判明している分子を吸着させて、その吸着量から測定対象の比表面積を求める手段である。
本実施の形態におけるチタン酸バリウム粉末の製造方法は、添加工程以降の各工程を見ると、混合する化合物は違うが、従来の固相法と同等の手順を踏んでいる。
つまり、上記BET値が30m2/g以上である素材用チタン酸バリウムを用いることによって、本実施の形態では、熱処理工程後も従来の製造方法では困難である非常に細かい粒子を維持し、且つ、結晶性に優れたチタン酸バリウムを得ることができるものである。
また、本実施の形態における準備工程では水熱合成法によって得られた素材用チタン酸バリウム粉末を用いたが、素材用チタン酸バリウム粉末を得る方法としては、他に、溶媒の中にバリウム化合物とチタン化合物を入れ、溶媒中でバリウム化合物とチタン化合物を反応させる湿式合成法でもよいし、粉末状のバリウム化合物およびチタン化合物を混合したものを直接電気炉へ入れ、加熱された電気炉内で反応させて素材用チタン酸バリウム粉末を得る固相法で行ってもよい。
湿式合成法としては蓚酸塩法、アルコキシド法などが知られている。湿式合成法で行った場合、得られる素材用チタン酸バリウム粉末は粒度分布が良いため、キャパシタの誘電体層として用いた場合、平坦性に優れた誘電体層を得ることができ、誘電体層の割れなどを低減させることができる。
固相法で行った場合は合成の際に溶媒、特に水を必要としないため、湿式合成法に比べて素材用チタン酸バリウム粉末の粒子4内部に水酸基を含みにくくなる。そのため、粒子内部に空隙が形成される可能性を低減させることができ、積層セラミックコンデンサの誘電体層として用いた場合、信頼性を高めることができる。そして、本実施の形態では、素材用チタン酸バリウム粉末を作製するために酸化チタンと炭酸バリウムを用いたが、これらの材料に限定されない。
また、上記のように素材用チタン酸バリウム粉末を独自に作製するのではなく、既成品のチタン酸バリウム粉末を本実施の形態における素材用チタン酸バリウム粉末の粒子4として用意してもよい。
また、添加工程で添加するバリウム化合物としては可溶性のバリウム化合物が好ましい。これは、添加工程において素材用チタン酸バリウム粉末の粒子4との混合物を作製する際に、水中で素材用チタン酸バリウム粉末とバリウム化合物とを混合する場合、可溶性のバリウム化合物であれば、水中で均一に分布し、素材用チタン酸バリウム粉末の粒子4に過剰のバリウムが付着しやすくなり、熱処理の前に過剰のバリウムを付着させた素材用チタン酸バリウム粉末が得られるためである。ここで、「可溶性」とは、溶媒に対して少しでも溶解する物質であるということを指している。
また、本実施の形態ではその溶媒に水を用いて素材用チタン酸バリウム粉末およびバリウム化合物を混合したが、溶媒は水に限定されない。
そして、可溶性バリウム化合物の中で、本実施の形態では炭酸バリウムを用いた。これは、炭酸バリウムは、可溶性であるとともに、微細な粒子径のものが市販され、容易に入手可能であるということから選定した。炭酸バリウムは、混合時に一部溶解されずに粉末状態で混合されるが、炭酸バリウムの粉末自体が微細であるため、素材用チタン酸バリウム粉末の粒子と均一に混合されやすい。このため、熱処理の際にバリウム過剰による粒成長抑制層5が早期に形成され、生成されるチタン酸バリウム粉末もより微細で高結晶性とすることができる。また、炭酸バリウムの他に、水酸化バリウムなどを用いてもよい。
なお、本実施の形態では熱処理工程時に200Pa以下の低酸素分圧雰囲気中で上記素材用チタン酸バリウム粉末と炭酸バリウムから成る混合物の熱処理を行い、得られるチタン酸バリウム粉末の結晶性を高めていったが、これを電気炉の内圧を1000Pa以下の低圧雰囲気下で熱処理を行う構成であるとさらに好ましい。これは、減圧下で熱処理を行うことにより、必然的に全体の酸素量を低減できるだけでなく、さらに素材用チタン酸バリウム粉末の粒子内部に存在している水酸基が脱離することを促すことができるため熱処理後のチタン酸バリウムの粒子内部の空孔の量を低減することができる。
さらに、格子欠陥や転位を含む結晶粒子においては結晶を構成している原子が移動して結晶格子の再配列が起こり、熱処理工程後に得られるチタン酸バリウム粉末(図示なし)の粒子内部の結晶格子配列がより均質となり、結晶性をさらに高めることができる。
また本実施の形態における製造方法によって得られるチタン酸バリウム粉末を素材用チタン酸バリウム粉末として、さらに上記製造方法を経てチタン酸バリウム粉末を得てもよい。
(実施の形態2)
続いて、実施の形態2におけるチタン酸バリウム粉末の製造方法および請求項10について説明を行う。なお、実施の形態2の製造方法において実施の形態1と共通である部分については説明を省略する。
ここで、前記準備工程において実施の形態1と同様の方法を用いて素材用チタン酸バリウム粉末を用意するが、準備する量は実施の形態1で用意した素材用チタン酸バリウムの量より少量である。
そして、添加工程において、上記素材用チタン酸バリウム粉末にバリウム化合物(図示なし)とチタン化合物(図示なし)を実施の形態1と同様の混合方法を用いて、BaとTiのモル比がBa/Ti>1.000となるように添加する。
そして、添加工程で得られた混合物を実施の形態1と同様の熱処理工程を経てチタン酸バリウム粉末(図示なし)を得る。
このように、実施の形態1では、添加工程において、バリウム化合物だけを添加していたのに対して、本実施の形態では、添加工程において、バリウム化合物およびチタン化合物を添加している。
これは、素材用チタン酸バリウム粉末は、湿式合成法、水熱合成法、あるいは固相法の後に粉砕や分級を伴う方法であるため高価であるためである。
だからと言って、素材用チタン酸バリウム粉末を用いず、単にチタン化合物とバリウム化合物を反応させてチタン酸バリウム粉末を得るという、固相法がよく知られているが、この固相法は熱処理工程において、チタン化合物とバリウム化合物が反応してチタン酸バリウムが生成する前に、一部チタン化合物どうしの結合による粒成長を伴うため、微粒子化には不利である。
そこで、本実施の形態では、素材用チタン酸バリウム粉末が熱処理工程時に混在することによって、上記チタン化合物どうしの結合が阻害されるため、チタン化合物とバリウム化合物とを反応させて生成するチタン酸バリウムの粒子についても、微粒子かつ高結晶性とすることができ、最終的に得られるチタン酸バリウム粉末も、従来の製造方法で得られるチタン酸バリウム粉末よりも微粒子かつ高結晶性となる。
なお、本実施の形態の添加工程においては、添加するチタン化合物のTiモル量は、素材用チタン酸バリウム粉末のTiモル量以下となるように添加することが望ましい。これは、添加するチタン化合物の量が多くなることによって、チタン化合物どうしの距離が近付きやすくなって、チタン化合物どうしの粒成長がしやすくなるためである。そのため、素材用チタン酸バリウム粉末による、チタン化合物同士の結合を抑制する効果が小さくなってしまうのである。
このようにして素材用チタン酸バリウム粉末は、上記のとおり、高価であるが、本実施の形態におけるチタン酸バリウム粉末の製造方法で得られるチタン酸バリウム粉末は、その高価な素材用チタン酸バリウム粉末の必要とする量を少なくすることができるため、実施の形態1に比べ、さらに生産性が向上する。
なお、添加工程に用いるバリウム化合物は実施の形態1の準備工程に用いるもので良い。また、実施の形態1に記載されている化合物に限定されることはない。また、用いるチタン化合物としては、例えば酸化チタン粉末が挙げられるが、特に限定されない。四塩化チタンなどでもかまわない。
(性能評価試験)
まず、実施例1として素材用チタン酸バリウム粉末に水熱合成法にて製造されたBa/Ti=1.000でBET値が30m2/gのチタン酸バリウム粉末を準備し、添加工程におけるバリウム化合物としてはBET値が30m2/gの炭酸バリウム粉末を添加して、950℃、酸素分圧が200Pa以下の略大気圧中(100000Pa)で熱処理を行った。以上の製造方法から得られるチタン酸バリウム粉末を実施例1とした。
次に実施例2として、熱処理工程時の雰囲気の全圧が実施例1と異なり、1000Paの雰囲気中で熱処理を行いチタン酸バリウム粉末を得た。
そして、実施例3として、素材用チタン酸バリウム粉末が実施例1および実施例2より少量であり、添加工程において更にチタン化合物としてBET値が30m2/gである酸化チタンを添加した構成以外は実施例1と同様であるチタン酸バリウム粉末を得た。
また、比較例1として、実施例1の準備工程において素材用チタン酸バリウム粉末を用意せず、添加工程において同等のモル比となるように炭酸バリウムおよび酸化チタンを添加および混合を行い、大気雰囲気中で加熱温度950℃の熱処理を経てチタン酸バリウム粉末を得た。つまり、炭酸バリウムおよび酸化チタンを固相法からチタン酸バリウム粉末を得ることと略同じである。
次に比較例2として、準備工程において実施例1と同じ条件で水熱合成法によって合成された素材用チタン酸バリウム粉末を、添加工程を設けずにそのままで熱処理してチタン酸バリウム粉末を得た。熱処理時の温度などは実施例1と同じ条件である。
さらに、比較例3として、比較例1と同様に準備工程で素材用チタン酸バリウム粉末を用意せず、添加工程で炭酸バリウムおよび酸化チタンをBa/Ti>1.000となるように添加および混合を行い、全圧1000Paの雰囲気中で熱処理を経てチタン酸バリウム粉末を得た。
熱処理によって得られた実施例1〜3のチタン酸バリウム粉末について、BET法にて比表面積を測定し、XRD測定およびリートベルト解析によりc/aを算出した。その結果を比較例1および2と比較したものを表1として下記に示す。
Figure 2010120802
なお、実施例1と比較例2とを見ると、比較例2のようにモル比がBa/Ti=1.000となるように用意した素材用バリウムをそのまま熱処理してしまっているため、本発明の課題のように、比較例2は熱処理工程において粒成長を従来どおり行い、非常にBET値が低いチタン酸バリウム粉末となってしまっている。このことからも、本発明の効果を奏する条件として添加工程においてBa/Ti>1.000となるようにバリウム化合物を添加および混合を行うことが必要であることがわかる。
加えて、本発明では素材用チタン酸バリウム粉末に対して添加工程においてバリウム化合物をモル比がBa/Ti>1.000となるように素材用チタン酸バリウム粉末へ添加し、且つ、酸素分圧が大気圧下の酸素分圧より低い状態の雰囲気下で熱処理していることを発明の特徴としているが、従来のチタン酸バリウム粉末の製造方法の発明において、Ba/Ti>1.000となる混合比でチタン酸バリウム粉末を得る発明は考えられてきた。しかし、本発明は素材用チタン酸バリウム粉末を用い、その素材用チタン酸バリウム粉末にバリウム化合物を添加するという製造方法であり、この製造方法によって初めて粒子サイズの細かさと結晶性の高さを両立させたチタン酸バリウム粉末を得るものである。つまり、従来の製造方法のようにチタン酸バリウム粉末を得るために混合するチタン化合物とバリウム化合物についてモル比がBa/Ti>1.000であっても本発明のように、粒子サイズの細かさと結晶性の高さを両立させたチタン酸バリウム粉末を得ることは困難である。これは、上記表1の実施例1と比較例3とを比較することによっても読み取ることができる。
なお、各実施の形態ならびに性能評価試験において大気圧を100000Paとしているが、大気圧というものはその時の気候条件などによってその数値に変動が生じるため、上記の数値に限定されない。
以上のように、本発明におけるチタン酸バリウム粉末の製造方法は、素材用チタン酸バリウムにバリウム化合物を、含まれるBaとTiの量の関係がBa/Ti>1.000となるように混合して混合物を作製し、この混合物に酸素分圧200Pa以下の雰囲気下で熱処理を行いチタン酸バリウム粉末を得るものである。
この製造方法により、従来はチタン酸バリウム粉末を熱処理することによりチタン酸バリウム粉末の結晶性を高めていく一方で、熱処理中のチタン酸バリウム粉末の粒子が粒成長を行い、粒子の微粒子化を損なっていたことに対して、過剰に混合物へ添加されたバリウム原子あるいはバリウム化合物が大気中の酸素と反応して酸化バリウムを生成しないように素材用チタン酸バリウム粉末の粒子に付着させ、素材用チタン酸バリウム粉末の粒子どうしの粒成長を抑えることができる。そのため、本発明により、得られるチタン酸バリウム粉末の微粒子化を維持したまま熱処理工程による高い結晶性も同時に得ることができるものである。従って、セラミック電子部品として、従来にない高い誘電性および積層時の薄層化の両立を実現させることが可能である。
本発明の製造方法から得られるチタン酸バリウム粉末は、素材用チタン酸バリウム粉末にバリウム化合物を混合したものを熱処理してチタン酸バリウムを得ることにより、得られたチタン酸バリウム粉末の粒子の微粒子化に優れ、且つ、高い結晶性を有しているため、更なる低背化および誘電特性が望まれている積層セラミックコンデンサの誘電体層などのセラミックス電子部品に用いられることが有用である。
本発明の実施の形態1におけるチタン酸バリウム粉末を用いた積層セラミックコンデンサを示した正面断面図 本発明の実施の形態1における熱処理工程時の素材用チタン酸バリウム粉末の様子を示した概略図 従来の熱処理時のチタン酸バリウム粉末の様子を示した概略図
符号の説明
1 誘電体層
2 引出電極
3 外部電極
4 素材用チタン酸バリウム粉末の粒子
5 粒成長抑制層
6 従来のチタン酸バリウム

Claims (10)

  1. 素材用チタン酸バリウム粉末を用意する準備工程と、前記素材用チタン酸バリウム粉末にバリウム化合物を添加して混合させる添加工程と、前記素材用チタン酸バリウム粉末および前記バリウム化合物の混合物を熱処理する熱処理工程を含むチタン酸バリウム粉末の製造方法であり、前記添加工程は、前記混合物に含まれるバリウム(Ba)とチタン(Ti)とのモル比がBa/Ti>1.000となるように前記バリウム化合物を添加し、且つ、前記熱処理工程では熱処理雰囲気中の酸素分圧が大気雰囲気中の酸素分圧より低い分圧であることを特徴とするチタン酸バリウム粉末の製造方法。
  2. 前記熱処理工程において熱処理雰囲気中の酸素分圧が200Pa以下であることを特徴とする請求項1に記載のチタン酸バリウム粉末の製造方法。
  3. 前記熱処理工程において熱処理雰囲気中の全圧が1000Pa以下であることを特徴とする請求項2に記載のチタン酸バリウム粉末の製造方法。
  4. 前記準備工程にて用意される前記素材用チタン酸バリウム粉末は、BET法により測定される比表面積が30m2/g以上であることを特徴とする請求項1に記載のチタン酸バリウムの製造方法。
  5. 前記準備工程において用意する前記素材用チタン酸バリウム粉末は、湿式合成法により製造したものであることを特徴とする請求項1に記載のチタン酸バリウム粉末の製造方法。
  6. 前記準備工程において用意される前記素材用チタン酸バリウム粉末は、水熱合成法により製造したものであることを特徴とする請求項5に記載のチタン酸バリウム粉末の製造方法。
  7. 前記準備工程において用意される前記素材用チタン酸バリウム粉末は、固相法により製造したものであることを特徴とする請求項1に記載のチタン酸バリウム粉末の製造方法。
  8. 前記添加工程において添加するバリウム化合物が可溶性のバリウム化合物であることを特徴とする請求項1に記載のチタン酸バリウム粉末の製造方法。
  9. 前記添加工程において添加する前記可溶性のバリウム化合物は、炭酸バリウムあるいは水酸化バリウムであることを特徴とする請求項8に記載のチタン酸バリウム粉末の製造方法。
  10. 前記添加工程において、添加する前記バリウム化合物に加えて、さらにチタン化合物を添加して混合させることを特徴とする請求項1に記載のチタン酸バリウム粉末の製造方法。
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