JP2009208981A - グリーンシートの製造方法、グリーンシート、窒化珪素セラミックス基板 - Google Patents

グリーンシートの製造方法、グリーンシート、窒化珪素セラミックス基板 Download PDF

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Abstract

【課題】窒化珪素セラミックスとなるグリーンシートにおける膜厚の均一性を向上させると共に、粒子の配向度の制御を適切に行い、良好な特性の窒化珪素セラミックス基板を容易に製造する。
【解決手段】マイラーシート12が巻き取り側ロール16で巻き取られ、生シートがマイラーシート12から離脱した(離脱工程)後でも、生シート14においてはそのままシート状となった形態が維持される。離脱工程後の生シート14は、加熱装置18を通過する(加熱工程)。この加熱装置18中においては、生シート14は再び加熱され、その中に含まれるバインダー成分が軟化する。生シート14においては、乾燥工程で有機溶媒が蒸発することによって定形性が得られ、その後でバインダーの軟化温度以上での圧延工程を行うことにより、β型窒化珪素粒子の配向が進み、窒化珪素セラミックス基板における面内配向度を0.4以上の値とすることができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、窒化珪素セラミックス基板を製造する際に用いられるグリーンシートの製造方法、この製造方法によって製造されたグリーンシート、及びこのグリーンシートを焼成することにより製造された窒化珪素セラミックス基板に関する。
機械的強度、熱伝導率、及び電気的絶縁性が高いセラミックス基板(例えば窒化珪素セラミックス)は、例えば、電動車両用インバータとして高電圧、大電流動作が可能なパワー半導体モジュール等に用いられている。こうしたセラミックス基板を製造するにあたっては、このセラミックスを構成する材料粉末がバインダー、有機溶媒等と混合されて定形化されたグリーンシートが製造され、このグリーンシートが高温で焼成されてセラミックス基板となる。一般に、グリーンシートは、この焼成の際に収縮してセラミックス基板となる。
この際、セラミックス基板の厚さを所定の値に設定し、かつその厚さを均一とすることが必要であるが、これらの特性は、主にグリーンシートの製造工程で決定される。すなわち、グリーンシートにおいては、厚さが適切に設定され、その厚さが均一であり、かつその密度が均一であることが要求される。従って、特にこうした特性を良好とすることのできるグリーンシートの製造方法が提案されている。
特許文献1には、キャリアフィルム上にドクターブレード法によってグリーンシートを形成し、これを乾燥炉を通過させてから、回転するローラ間を通過させる、アルミナセラミックスのグリーンシートの製造方法が記載されている。
ここで、ドクターブレード法においては、ドクターブレードの刃先とキャリアフィルムとの間隔の設定によって、略一定の厚さのシート(生シート)が形成される。ただし、この箇所を通過した後の生シートにおいては、厚さの均一性と、密度の均一性は不充分である。従って、ここでは乾燥炉で生シート中の有機溶媒を蒸発させ、ある程度の定形性が保たれるが可塑性のある状態にした上で、回転するローラ間を通過させ、厚さの均一性と密度の均一性とを向上させたグリーンシートを得る。この方法によって製造されたグリーンシートを焼成した場合、厚さ、密度の均一性が向上し、機械的強度、熱伝導率、電気的絶縁性が良好なセラミックス基板となる。
また、グリーンシートが焼成されて焼結体となる際には、有機成分が蒸発して、かつ構成粒子同士が焼結されるために収縮するが、その収縮率に異方性があると、セラミックス基板の膜厚の制御性に悪影響を与える。特許文献2には、グリーンシート表面を一旦凹凸形状にしてからその後にこれを平坦化する製造方法が記載されている。この方法においては、粒子の向きをランダムにして、この方法によって異方性が低減される。従って、この方法によって、配向性が適度に調整され、良好な特性のセラミックス基板を得ることができる。
一方、特に窒化珪素セラミックスの場合には、これを構成するβ型窒化珪素粒子の異方性が高いため、その配向性によって、得られるセラミックス基板の特性は大きく異なる。特許文献3には、このセラミックス基板においては、面内配向度の値を0.4〜0.8の範囲とすることによって特にクラックに対する耐性と熱伝導率とを高くすることができることが記載されている。この面内配向度はその材料(グリーンシートの材料)等を調整することによって調整でき、その値を上記の範囲とすることができる。
特開昭55−111207号公報 特開昭58−96508号公報 国際公開WO2006/118003
特許文献1、2に記載されたグリーンシートの製造方法においては、アルミナのセラミックス基板を製造することが想定されていた。これに対し、より機械的強度、熱伝導率、及び電気的絶縁性が高いセラミックス材料として、窒化珪素の重要性が近年高まっている。特許文献3に記載されるように、窒化珪素セラミックスの場合には、面内配向度を適切な範囲に設定することによって特に良好な特性が得られるが、膜厚や密度の均一性を向上させると共に、粒子の配向度を適切な範囲に容易に設定することのできるグリーンシートの製造方法は存在しなかった。
すなわち、窒化珪素セラミックスとなるグリーンシートにおける膜厚の均一性を向上させると共に、粒子の配向度の制御を適切に行い、良好な特性の窒化珪素セラミックス基板を容易に製造することは困難であった。
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
請求項1に記載の発明の要旨は、焼成後に窒化珪素セラミックス基板となるグリーンシートを製造する、グリーンシートの製造方法であって、少なくともα型窒化珪素粉末、バインダー、及び有機溶媒が混合されたスラリーを、ドクターブレード法によってキャリアフィルム上に生シートとして形成する成形工程と、前記生シートを加熱して前記有機溶媒を蒸発させる乾燥工程と、該乾燥工程後の生シートを前記キャリアフィルムから離脱させる離脱工程と、前記離脱された生シートを、前記バインダーの軟化温度以上の温度に加熱する加熱工程と、前記加熱された生シートを圧延してグリーンシートを製造する圧延工程と、を具備することを特徴とする、グリーンシートの製造方法に存する。
請求項2に記載の発明の要旨は、前記加熱工程における加熱温度は50℃以上、150℃未満であることを特徴とする請求項1に記載のグリーンシートの製造方法に存する。
請求項3に記載の発明の要旨は、前記成形工程における、前記キャリアフィルムとドクターブレードとの間隔は1.6〜1.9mmとし、前記圧延工程において、前記生シートは0.03〜0.2mmの間隔の圧延ローラ間を通過することを特徴とする請求項1または2に記載のグリーンシートの製造方法に存する。
請求項4に記載の発明の要旨は、膜厚の均一性の工程能力指数が1.33以上であり、かつ密度が50%以上であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のグリーンシートの製造方法によって製造されたことを特徴とするグリーンシートに存する。
請求項5に記載の発明の要旨は、焼成時の厚さ方向の収縮率が20%以下であることを特徴とする請求項4に記載のグリーンシートに存する。
請求項6に記載の発明の要旨は、請求項4または5に記載のグリーンシートを焼成することによって製造された窒化珪素セラミックス基板であって、面内配向度が0.4〜0.8の範囲であることを特徴とする窒化珪素セラミックス基板に存する。
請求項7に記載の発明の要旨は、厚さ方向の破壊靱性値が、面内方向の破壊靱性値よりも大きなことを特徴とする請求項6に記載の窒化珪素セラミックス基板に存する。
本発明は以上のように構成されているので、窒化珪素セラミックスとなるグリーンシートにおける膜厚の均一性を向上させると共に、粒子の配向度の制御を適切に行い、良好な特性の窒化珪素セラミックス基板を容易に製造することができる。
発明者は、特に窒化珪素セラミックス基板を製造するためのグリーンシートを製造する際には、グリーンシートの製造工程において、乾燥後に、更に加熱された状態で圧延する工程を設け、その際の加熱温度を適度に調整することによって、配向度が適度に調整されることを知見した。ここで配向度が調整されたグリーンシートを焼成することによって、厚さ及び配向の制御が容易かつ十分に行われ、良好な特性の窒化珪素セラミックシートを容易に製造することができる。
以下、本発明について具体的な実施形態を示しながら説明する。ただし、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
本発明の実施の形態となる製造方法を実現する製造装置10の構成図が図1である。この製造装置10においては、所望の混合比率となった窒化珪素セラミックス製造用グリーンシート原料となるスラリー11は、ドクターブレード法によって、マイラーシート(キャリアフィルム)12とドクターブレード13との間の隙間から、この隙間と略等しい所望の厚さとなってマイラーシート12上に生シート14となって流れ出す(成形工程)。可撓性のあるマイラーシート12は、巻き出し側ロール15から巻き出され、巻き取り側ロール16に巻き取られる。この間に、マイラーシート12上の生シート14は、乾燥炉17中を通過する(乾燥工程)。この際、スラリー11(生シート14)中の揮発成分は揮発し、乾燥炉17を通過後にはその定形性が得られる。このため、マイラーシート12が巻き取り側ロール16で巻き取られ、生シートがマイラーシート12から離脱した(離脱工程)後でも、生シート14においてはそのままシート状となった形態が維持される。ただし、この状態の生シート14においては、シート状の形態は保たれているが、可塑性が全く無くなった状態となってはいない。
ここで、この製造装置10においては、定形性が保たれた離脱工程後の生シート14は、加熱装置18を通過する(加熱工程)。この加熱装置18中においては、生シート14は再びバインダーの軟化温度以上に加熱され、その中に含まれるバインダー成分が軟化する。なお、この加熱工程においては、前記の乾燥工程とは異なり、マイラーシート12は存在しないため、生シート14を、図1における上下方向から均一に加熱することが可能である。
その後、この生シート14は2個の圧延ロール19間を通過して、グリーンシート20となる(圧延工程)。なお、便宜上図1においては加熱装置18と圧延ロール19とを分離して記載しているが、これらを同一の装置に設け、加熱工程と圧延工程とを同時に行うことも可能である。
ここで用いられるスラリー11には、生シート14を構成する材料として、α型窒化珪素粉末、バインダー、有機溶媒が少なくとも含まれる。
α型窒化珪素粉末はグリーンシート20の主成分であり、このグリーンシート20が焼成された後には、例えば特許文献3に記載されるように(002)面をその長手方向に持つアスペクト比の大きな、すなわち異方性の大きな細長い粒子で構成され、この細長い粒子同士が結合され、窒化珪素セラミックス基板を構成する。従って、このセラミックス基板の特性、例えば破壊靱性や熱伝導率は、この粒子の配向度に左右される。
有機溶媒としては、例えばトルエン・ブタノール溶液が用いられる。この有機溶媒は、液状のスラリー11における溶媒として用いられ、乾燥工程において蒸発する揮発成分となる。トルエン・ブタノール溶液の場合、例えば乾燥炉17で50℃以上に加熱されること(乾燥工程)によって蒸発するため、乾燥炉17を通過後の生シート14においては、シート形状が保たれる。
バインダーとしては、例えばポリビニル系の有機バインダー(PVB)が用いられる。この材料は、グリーンシート20(生シート14)において、窒化珪素粒子同士を結合させ、その定形性を保つために添加される。ポリビニル系の有機バインダーの場合、その軟化温度は50℃である。ここで、加熱装置18においては、この軟化温度以上の温度に生シート14が加熱される(加熱工程)。
更に、必要に応じ、焼結を良好に行うための焼結助剤としてY2やMgO等を複合添加し、原料粉の凝集を防ぐための分散剤として例えばカチオン系セルロース誘導体を用いた界面活性剤(商品名レオガードGP)等、生シートに可塑性を持たせるための可塑剤としてジメチルフタレート等を更にスラリー11に混合することができる。
製造されたグリーンシート20に対して、よく知られるように、その後に例えば窒素雰囲気中で1700〜2000℃程度の温度での焼成を行うことによって、窒化珪素セラミックス基板が得られる。
この製造装置10において、加熱工程前(乾燥工程後)の生シート14の進行方向に垂直な断面における形状が図2(a)である。この生シート14の厚さは、ドクターブレード13を通過した直後には、マイラーシート12とドクターブレード13との間隔で決まる厚さに均一に設定されている。しかしながら、乾燥炉17において有機溶媒が蒸発する際には、有機溶媒の蒸発は均一に進まずに端部から進み、かつその際に収縮が発生して歪むために、結局、図2(a)のように、中心部から端部にかけて不均一な膜厚となる。ただし、有機溶媒が蒸発したこの状態の生シート14はまだ可塑性を有しているため、圧延工程後には、この生シート14は図2(b)に示す断面形状となる。すなわち、圧延ロール19によって成形されて、膜厚及び密度の均一性が向上する。この場合、グリーンシート20の最終的な膜厚は、マイラーシート12とドクターブレード13との間隔、及び圧延ロール19の間隔によって決まる。
以上の作用・効果については特許文献1に記載されたものと同様である。すなわち、圧延工程によってグリーンシート20の膜厚の均一性と密度の均一性が向上する。
前記の通り、グリーンシート20は、α型窒化珪素粉末(粒子)をその主成分とする。グリーンシート20におけるα型窒化珪素粒子の配向性は、これを焼成して得られる窒化珪素セラミックス基板におけるβ型窒化珪素粒子の配向度、すなわち、窒化珪素セラミックスにおける配向度に直接関連する。そして、特にβ型窒化珪素粒子の異方性は、アルミナ粒子等と比べて大きいために、この配向度が窒化珪素セラミックス基板の特性に与える影響も、アルミナセラミックスの場合よりも大きい。
特に窒化珪素セラミックス基板となるグリーンシート20をこの製造装置10で製造する場合、前記の厚さの均一性に対する影響に加え、グリーンシート20中におけるα型窒化珪素粒子の配向性も、この加熱工程以降の影響を受ける。すなわち、この製造方法によって製造されたグリーンシート20を焼成した窒化珪素セラミックス基板における配向性も、この加熱工程以降の影響を受ける。
図3は、加熱工程における加熱温度と、得られた窒化珪素焼結体の配向度との関係を測定した結果である。ここで、スラリー11の組成は窒化珪素78mol%、酸化物換算でMgO:20mol%、Y23:2mol%とし、乾燥工程は100℃で行い、全体の移動速度(マイラーシート12の移動速度)は8cm/minとした。マイラーシート12とドクターブレード13との間隔は1.8mmとし、圧延ロール18間の間隔は0.03mmとした。
ここでいう配向度とは、窒化珪素セラミックスに対してX線回折を行った結果から得られ、式(1)で定義される面内配向度faである(特許文献3あるいはF.K.Lotgerling:J.Inorg,Nucl.Chem.,9(1959)113.参照)。
Figure 2009208981
式(1)において、Pは式(2)で表され、試料となる窒化珪素セラミックスにおいて、β型窒化珪素粒子の長軸を法線とする面のX線回折強度の和の、X線回折において現れる全ての面の回折強度の和に対する比率である。一方、Pは式(3)で表され、配向性が全くない(ランダムな)窒化珪素セラミックスにおけるPの値である。ここで、I(110)等は試料における(110)面等のX線回折強度を表し、I’(110)は、無配向の窒化珪素セラミックスにおける(110)面等のX線回折強度を表す。すなわち、ここでは、β型窒化珪素粒子の長手方向は(110)、(200)、(210)、(310)、(320)方向となることを反映している。
Figure 2009208981
Figure 2009208981
窒化珪素セラミックス基板はβ型窒化珪素の粗大な柱状粒子と微細な粒子を主成分として構成されているが、面内配向度faは粗大なβ型窒化珪素の柱状粒子の向きによって決まる。面内配向度faが0の場合は粗大な柱状粒子が無秩序に配置されているが、面内配向度faが0より大きい場合は窒化珪素基板の厚さ方向に対する長軸の傾きが45°より大きい柱状粒子をより多く含んでいることを示しており、面内配向度faの値が1に近いほど、窒化珪素基板の厚さ方向に対する柱状粒子の長軸の向きが90°に近いことを示している。
図3において、加熱工程を行わない場合(加熱温度20℃)には面内配向度faが0.4未満であったものが、加熱温度を50℃とした場合に面内配向度faが0.4近傍まで上昇し、その後も上昇傾向にある。加熱温度を120℃とした場合には面内配向度faは0.4以上の高い値を示すことが確認できる。しかし120℃を越えるとバインダーの熱分解の影響が出始めて面内配向度faは徐々に下降傾向を示す。
更に、この生シート14に対して、加熱工程と圧延工程とを複数回連続して行うこともできる。この場合のこれらの回数(圧延回数)と、面内配向度faとの関係を調べた結果が図4である。圧延回数を増やすことによって徐々に面内配向度faが向上することが確認できる。圧延回数2回以上で面内配向度faは0.4程度以上となった。また、この圧延回数に代えて圧延ローラの送り速度を遅くすることによっても同等の効果を得ることができることを確認している。従って、製造現場や工程の都合によって圧延回数あるいは送り速度を設定するかの選択をすることが望ましい。
この効果は、バインダーの軟化温度以上の温度で圧延が行われる際には、グリーンシート20(生シート14)において、細長い形状のβ型窒化珪素粒子の配向が進むために得られる。すなわち、生シート14においては、乾燥工程で有機溶媒が蒸発することによって定形性が得られ、その後でバインダーの軟化温度以上での圧延工程を行うことにより、β型窒化珪素粒子の配向が進み、窒化珪素セラミックス基板における面内配向度を0.4以上の値とすることができる。従って、加熱工程における温度は、バインダーの軟化温度以上とすることが必要であり、バインダーとしてポリビニル系有機バインダーを用いた場合には、50℃以上となる。一方、この温度が150℃以上となると、バインダーが熱分解し、生シートの形状が維持できなくなるため、この温度は150℃以下とすることが好ましい。このように通常のバインダー材を用いた加熱工程における加熱温度は50℃以上、150℃未満で行われる。図3に示すように望ましくは80℃以上、120℃以下である。
面内配向度faを0.4〜0.8の範囲とすることにより、特許文献3に記載されるように、厚さ方向の破壊靱性値を面内の破壊靱性値と比べて大きくすることができ、クラックに対する耐性が向上する。ここで、破壊靱性値とは、図5に示すように、ビッカース圧子を被測定点に打ち込み、その際に発生した圧痕の寸法とクラックの大きさとからJISR1607に規定されるIF(Indentation Fracture)法によって算出される。
すなわち、特許文献3に記載されるように、JISR1607に準拠して、窒化珪素質基板の側面にビッカース圧子を所定荷重(例えば、2kgf)で押し込む。このとき、ビッカース圧子はビッカース圧痕の一方の対角線が基板の厚さ方向と垂直になるように押し込む。この場合、図5に示すように、ビッカース圧痕の上端部及び下端部から厚さ方向に、及びビッカース圧痕の左端部及び右端部から面内方向(厚さ方向と垂直な方向)にクラックがそれぞれ伸びる。
特に半導体モジュール等における回路基板にこの窒化珪素セラミックス基板が用いられる際の構造を図6(配線等は省略)に示す。この半導体モジュール30は、窒化珪素セラミックス基板31の両面に金属回路板32と金属放熱板33がそれぞれ接合された形態の回路基板において、金属回路板32上に半導体チップ34が搭載されて構成される。金属回路板32と金属放熱板33は共に銅をその主成分とする。ここで、半導体チップ34は使用の際には発熱する。従って、この半導体モジュールの使用の際には加熱と冷却とが繰り返され、その冷熱サイクルの際には、窒化珪素と銅との熱膨張差によって歪みが発生し、図6に示すようにクラック40が発生する。このクラックは、図6に示すように、例えば金属回路板32の端部から発生して、初めに厚さ方向に進展し、その後で水平方向(面内方向)に大きく進展して、この窒化珪素セラミックス基板31を破壊させる。従って、特にこの初期の厚さ方向のクラックの進展を抑制することが、窒化珪素セラミックス基板31の耐久性(機械的強度)を高める上で有効である。
従って、ここでは、厚さ方向にクラックが生じにくい窒化珪素セラミックス基板を得ることが重要である。そのための指針として、ここでは厚さ方向の破壊靱性値を図5の形態から算出した。厚さ方向の破壊靱性値とは、図5におけるビッカース圧痕の厚さ方向の対角線の長さ、上端部及び下端部から伸びるクラックの長さを用いてIF法によって算出する。同様に、面内方向の破壊靱性値とは、図5におけるビッカース圧痕の面内方向の対角線の長さ、左端部及び右端部から伸びるクラックの長さを用いてIF法によって算出する。
ここで、厚さ方向の破壊靭性値は6MPa・m1/2以上、面内方向の破壊靭性値は3MPa・m1/2以上であることが好ましい。この厚さ方向と面内方向の破壊靱性値は共にβ型窒化珪素粒子の配向性、すなわち、面内配向度faの影響を受けるが、β型窒化珪素粒子の配向が一方に有利であれば、他方に不利となることは明らかである。従って、これらの破壊靱性値においては、厚さ方向の破壊靱性値の面内方向の破壊靱性値に対する比率を大きくすることが、クラックの発生を抑制するためには有効となる。このためには、面内配向度faを0.4〜0.8の範囲とすることが特に有効である。
前記の通りにグリーンシートの製造条件を変えて得られた窒化珪素セラミックス基板の面内配向度faと、厚さ方向及び面内方向の破壊靱性値との関係を調べた結果を図7に示す。また、同様の資料において、面内配向度faと、厚さ方向の破壊靱性値の面内方向の破壊靱性値に対する比率との関係を調べた結果を図8に示す。
この結果から、上記の製造方法によって面内配向度faを向上させ、これを特に0.4以上とすることにより、厚さ方向の破壊靱性値の面内方向の破壊靱性値に対する比率を1.2以上、2.6以下と高めることが好ましく、これによりセラミックス基板のクラックに対する耐性を高めることができる。ただし、faが0.8よりも大きいと面内方向の破壊靭性値が3MPa・m1/2以下となり、面内でのクラック進展速度が大きくなり、面内方向に大きなクラックが発生する。例えば半導体モジュールの回路側金属板の剥離が発生するため、面内配向度faは0.8以下が好ましい。
このセラミックス基板においては、破壊靱性と同様に、熱伝導率にも異方性が生ずる。図6に示す構造の半導体モジュール30においては、金属回路板32上に搭載される半導体チップ34からの発熱が窒化珪素セラミックス基板31を介して金属放熱板33に伝わり、放熱される。この場合、特に望ましいのは、厚さ方向(図6における上下方向)における熱伝導率が高いことである。これに対して、面内配向度faを0.4以上とすることにより、熱伝導において抵抗となる粒界相の割合を厚さ方向において小さくすることができるため、厚さ方向の熱伝導率を高く保つことができる。
従って、この製造方法によって面内配向度faを0.4〜0.8の範囲とすることにより、クラックに対する耐性が高く、かつ半導体モジュールに使用する際に重要である厚さ方向の熱伝導率も高くすることができる。
また、加熱工程においては、キャリアフィルムが存在しないため、生シート14に対する加熱を均一かつ容易に行うことができる。従って、ここで用いられる加熱装置18としては、単純な構成のものを用いることができ、例えば特許文献1に記載の技術と比べても特にその製造工程は複雑にはならない。すなわち、容易にこの製造方法を実現することができる。
なお、前記の通り、この製造方法においては、グリーンシートの膜厚及び密度の均一性も向上する。図9は、加熱工程における温度と、グリーンシートの膜厚の均一性の工程能力指数Cpとの関係である。図9に示すように、厚さ分布Cpは、加熱工程における温度を50℃以上とすることでCp=1.33以上が得られ、温度の上昇と共に厚さ分布Cpも上昇している。120℃を越えての測定はしていないが、150℃付近でバインダーの熱分解が始まるので120℃〜150℃の間に臨界点があると考えられる。そこでシートの軟化度合いや加熱装置の能力、コストを加味すれば加熱温度は120℃程度までが良いと考えられる。ここで、Cpは以下の式で定義される。工程能力指数Cpは高い数値であれば望ましいが通常1.33以上であれば良好である。尚、Cpは一般には工程能力指数であるが、図9ではグリーンシートの幅方向の厚さ分布の指標として、厚さ分布Cpで示した。
Figure 2009208981
ここで、σは膜厚の標準偏差である。加熱圧延を行うことによって、この工程能力指数も向上することが確認できる。また、図10は、この工程能力指数Cpと面内配向度faとの関係を調べた結果であり、Cpの向上と共に面内配向度faが高くなることも確認できる。
上記の製造方法においては、成形工程におけるグリーンシートの設定厚さ及び圧延工程後のグリーンシートの設定厚さから、キャリアフィルムとドクターブレードとの間隔と、圧延工程における圧延ローラ間の間隔が重要となる。すなわち、焼結体の厚さは0.3mm±10%の範囲で、かつ焼結体の厚さ分布Cp値が1.55以上が要求されるため、それに合うようなグリーンシートの厚さ及び圧延後のグリーンシートの厚さを得ることが逆に必要となってくる。表1にこれらの間隔を求めた実験例(実施例)を示す。キャリアフィルムとドクターブレードとの間は、1.6〜1.9mmの間隔とすることによって設定内のグリーンシートの厚さを得ることができている。また、その後の圧延工程における圧延ローラ間の間隔は、0.03〜0.2mmとすることによって設定内の圧延後グリーンシート厚さを得ることができた。なお、No.3〜5のようにグリーンシートの厚さに対して圧延ローラの間隔が狭い場合でも圧延後の厚みは設定内に納めることが出来るが、このときのローラ間の押圧力はかなり高くなる。このような負荷の点でNo.2のような条件の方が量産製造には望ましいと言える。また、キャリアフィルムとドクターブレードとの間隔が1.9mmを越えるとグリーンシートが厚くなりすぎてシート材料の無駄が増える。一方、圧延ローラ間の間隔を0.03mm未満にすることは設備面や設計面で困難をともなう。このようなことから、キャリアフィルムとドクターブレードとの間隔を1.6〜1.9mmの範囲とし、圧延工程における圧延ロール19の間隔を0.03〜0.2mmの範囲とすることが、特にグリーンシート20の厚さ分布を向上させ、かつその密度を高めることができるために好ましい。この場合、このグリーンシートが焼成されて窒化珪素セラミックスとなる場合の収縮率が小さくなるために、基板の設計寸法の制御が容易である。
Figure 2009208981
表2に、長辺方向が170mm、短辺方向が142mmの矩形のグリーンシートを、バインダーとしてポリビニル系有機バインダーを用いた同様のスラリーを用いて、従来の製造方法(加熱工程なし)、と本発明の実施例の製造方法(加熱工程で120℃に加熱)を用いて製造した場合をそれぞれ比較例、実施例として比較した結果を示す。ここで、グリーンシートの密度は、焼結体密度に対する比率(%)で示してある。実施例では比較例と比べて1.33以上の値の高いCpが得られ、厚さの均一性が向上しており、密度が50%以上と高くなった。これを反映して、実施例では焼成の際の収縮率が小さくなり、特に厚さ方向でも20%以下と小さくなることが確認できた。なお、得られた窒化珪素セラミックスの面内配向度faが0.4以上となり、クラックに対する耐性と厚さ方向の熱伝導率が高いことは前記の通りである。
Figure 2009208981
本発明の実施の形態に係るグリーンシートの製造方法を実現する製造装置の構成図である。 本発明の実施の形態に係るグリーンシートの製造方法において、加熱工程前の生シートの断面形状(a)と圧延工程後の生シートの断面形状(b)を示す図である。 グリーンシートを焼成後の窒化珪素セラミックス基板における面内配向度と、加熱工程における加熱温度との関係を示す図である。 グリーンシートを焼成後の窒化珪素セラミックス基板における面内配向度と、加熱・圧延回数との関係を示す図である。 厚さ方向及び面内方向の破壊靱性値を測定する原理を説明する図である。 本発明の窒化珪素セラミックス基板が用いられる半導体モジュールの構造を示す断面図である。 厚さ方向及び面内方向の破壊靱性値の、面内配向度依存性を調べた結果である。 厚さ方向の破壊靱性値の面内方向の破壊靱性値に対する比率の、面内配向度依存性を調べた結果である。 グリーンシートの膜厚の均一性の工程能力指数と、加熱工程における加熱温度との関係を示す図である。 窒化珪素セラミックス基板における面内配向度と、グリーンシートの膜厚の均一性の工程能力指数との関係を示す図である。
符号の説明
10 グリーンシート製造装置
11 スラリー
12 マイラーシート(キャリアフィルム)
13 ドクターブレード
14 生シート
15 巻き出し側ロール
16 巻き取り側ロール
17 乾燥炉
18 加熱装置
19 圧延ロール
20 グリーンシート
30 半導体モジュール
31 窒化珪素セラミックス基板
32 金属回路板
33 金属放熱板
34 半導体チップ
40 クラック

Claims (7)

  1. 焼成後に窒化珪素セラミックス基板となるグリーンシートを製造する、グリーンシートの製造方法であって、
    少なくともα型窒化珪素粉末、バインダー、及び有機溶媒が混合されたスラリーを、ドクターブレード法によってキャリアフィルム上に生シートとして形成する成形工程と、
    前記生シートを加熱して前記有機溶媒を蒸発させる乾燥工程と、
    該乾燥工程後の生シートを前記キャリアフィルムから離脱させる離脱工程と、
    前記離脱された生シートを、前記バインダーの軟化温度以上の温度に加熱する加熱工程と、
    前記加熱された生シートを圧延してグリーンシートを製造する圧延工程と、
    を具備することを特徴とする、グリーンシートの製造方法。
  2. 前記加熱工程における加熱温度は50℃以上、150℃未満の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のグリーンシートの製造方法。
  3. 前記成形工程における、前記キャリアフィルムとドクターブレードとの間隔は1.6〜1.9mmとし、
    前記圧延工程において、前記生シートは0.03〜0.2mmの間隔の圧延ローラ間を通過することを特徴とする請求項1または2に記載のグリーンシートの製造方法。
  4. 膜厚の均一性の工程能力指数が1.33以上であり、かつ密度が50%以上であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のグリーンシートの製造方法によって製造されたことを特徴とするグリーンシート。
  5. 焼成時の厚さ方向の収縮率が20%以下であることを特徴とする請求項4に記載のグリーンシート。
  6. 請求項4または請求項5に記載のグリーンシートを焼成することによって製造された窒化珪素セラミックス基板であって、面内配向度が0.4〜0.8の範囲であることを特徴とする窒化珪素セラミックス基板。
  7. 厚さ方向の破壊靱性値が、面内方向の破壊靱性値よりも大きなことを特徴とする請求項6に記載の窒化珪素セラミックス基板。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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EP2599603A3 (de) * 2011-12-02 2014-07-02 Fraunhofer-Gesellschaft zur Förderung der angewandten Forschung Vorrichtung zur Herstellung von Grünfolien aus keramischem und/oder metallischem Werkstoff
US11046617B2 (en) 2017-09-20 2021-06-29 Lg Chem, Ltd. Tape casting slurry composition for preparing silicon nitride sintered body

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