JP2018184333A - 窒化珪素基板の製造方法、及び窒化珪素基板 - Google Patents

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Abstract

【課題】希土類元素を低減しても緻密な焼結体が得られ、その結果、粒界相を低減し、熱伝導率の向上及びコストダウンが可能な窒化珪素基板の製造方法、及び高い機械的特性を維持しながら、厚み方向の熱伝導率の高い窒化珪素基板を提供する。【解決手段】珪素、希土類元素酸化物及びマグネシウム化合物を含む原料粉末を粉砕しスラリーを得る工程、スラリーをシート状に成形する工程、及び成形体を窒素雰囲気中で焼結して窒化珪素焼結体とする工程を有し、原料粉末中に希土類元素酸化物を0.5 mol%以上2 mol%未満、マグネシウム化合物(87質量%以上のMgSiN2を含む)を8 mol%以上15 mol%未満含み、スラリー中の珪素粒子のBET比表面積(m2/g)及びメジアン径D50(μm)が、1.5≦BET≦4.5、2.5≦D50≦6及び13≦BET×D50≦18を満たす窒化珪素基板の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、パワーモジュール等に使用される窒化珪素基板の製造方法、及び窒化珪素基板に関する。
パワーモジュール等に使用される回路基板は、高い絶縁性、高い機械的強度、高い熱伝導率等をもつセラミックス基板と、セラミックス基板に接合された金属製の回路板や放熱板とで構成されている。パワーモジュールにおいては、この回路板に更に半導体チップがはんだ等によって接合される。動作時における半導体チップの放熱を行うため、セラミックス基板、回路板及び放熱板には、高い熱伝導率が要求される。セラミックス基板に対しては、同時に高い絶縁性(電気抵抗率)も要求される。
こうしたセラミックス基板として、窒化珪素(Si3N4)を主成分としたものが極めて有望である。このため、窒化珪素を主成分とした良質のセラミックス基板(以下、窒化珪素基板という場合がある。)を安価に製造するための各種の技術が提案されている。
窒化珪素基板は、片面に実装されている半導体素子からの発熱を反対面に逃がす必要があるため、特に厚み方向の熱伝導率が重要である。しかしながら、市販の窒化珪素基板の熱伝導率は90 W/m・K程度にとどまっている。窒化珪素基板の熱伝導率の阻害要因としては、窒化珪素粒子内の欠陥、及び1 W/m・K程度と低い熱伝導率の粒界相の存在があり、高熱伝導化のためにはこの二つの阻害要因の影響を減らす必要がある。
窒化珪素粒子内の欠陥は主に粒子内の酸素量を減らすことで低減できるが、窒化珪素焼結体の原料粉となるSi3N4粉には少量の酸素が含まれているため、高温長時間の条件での焼結や高価な焼結助剤の添加などの特殊な条件を適用しない限り、プロセス内で酸素量を低減するには限界がある。
一方、粒界相は焼結前に添加する焼結助剤に主に由来するので、焼結助剤を低減することで粒界相の低減が熱伝導率の向上に効果的だと考えられる。しかしながら、窒化珪素は共有結合性が高く難焼結性であるため、焼結助剤の添加無しに緻密な焼結体を得ることは困難である。また、粒界相は窒化珪素粒子同士の結合を強固にし、窒化珪素焼結体の高い機械的特性を実現するためにも不可欠であるため、粒界相を大幅に減らすことも困難である。
一般的に、こうした窒化珪素基板は、(1)窒化珪素粉末に焼結助剤(MgO等)、バインダー、可塑剤等を混合してスラリーを形成する工程、(2)スラリーを脱泡、増粘してシート状に成形し、乾燥、脱脂した成形体を得る工程、(3)成形体を焼結して焼結体を得る工程を経て製造される。ここで、焼結体である窒化珪素基板の機械的強度(曲げ強度)や熱伝導率等は、例えば(焼結体)中の空孔率や粒界相の状態の影響を大きく受ける。すなわち、窒化珪素基板の曲げ強度や熱伝導率は焼結体の空孔率や粒界相の状態に大きく依存するため、これらの特性が良好となる製造方法、製造条件が選択される。
このような方法に代えて、珪素粉末と、希土類元素酸化物と、マグネシウム化合物とを原料として、焼結時に珪素を窒化することで窒化珪素基板を製造する方法が報告されている。この方法は、例えば、酸素含有量が比較的少ない珪素粉末を出発原料とすることで、窒化珪素焼結体中の窒化珪素粒子の酸素量を減らすことができ、熱伝導率の高い窒化珪素焼結体が得られるため、パワー半導体用窒化珪素基板への適用が検討されている。しかしながら、この方法では、緻密な焼結体を得るためには希土類元素の添加量を多くする必要があり、希土類元素酸化物の添加量が多いと熱伝導率を下げる要因となる粒界相が増えるだけでなく、コスト高になり、パワー半導体用窒化珪素基板への適用の妨げとなる。
特開2007-197229号(特許文献1)は、珪素粉末と、窒化珪素換算での珪素に対して、0.5〜7 mol%の希土類元素の酸化物と、1〜7 mol%のマグネシウム混合物(MgO、Mg2Si及びMgSiN2から選択される少なくとも一種)とからなる混合物(酸素量:0.1〜1.8質量%)を成形して窒化し、さらに0.1 MPa以上の窒素中でポスト焼結して相対密度が95%以上に緻密化された窒化珪素基板を製造する方法を開示しており、優れた機械特性と高熱伝導性を有する窒化珪素基板が得られると記載している。
特開2007-197226号(特許文献2)は、珪素粉末の反応焼結を利用した窒化珪素焼結体の製造方法において、(1)珪素粉末あるいは珪素粉末と窒化珪素粉末の混合粉末に、希土類酸化物とマグネシウム化合物を同時に添加する、(2)珪素粉末の不純物酸素とマグネシウム化合物に含まれる酸素の総量を同時に制御する、(3)それにより、高熱伝導、高強度、高靭性を共生させた窒化珪素焼結体を製造する方法を開示している。
特許文献1及び2の実施例では、珪素(窒化珪素換算)に対して焼結助剤として希土類酸化物(Y2O3)を2〜7 mol%添加して窒化珪素を製造しているため、粒界相を十分に低減できているとは言えず、従って熱伝導率の低下及びコストアップの要因となる。また特許文献1及び2は、焼結助剤として希土類酸化物(Y2O3)を0.3 mol%使用した比較例を記載しているが、これらの比較例で作製した窒化珪素焼結体は、2 mol%以上の希土類酸化物を焼結助剤として使用した場合に比べて、密度、熱伝導率及び強度が低く十分な性能が得られていない。
特開2015-199657号(特許文献3)は、珪素粉末と、希土類元素化合物と、マグネシウム化合物とを含有する原料粉末であって、原料粉末中の珪素を窒化珪素に換算した場合に、前記希土類元素化合物を酸化物換算で1 mol%以上7 mol%以下含有し、前記マグネシウム化合物を酸化物換算で8 mol%以上15 mol%以下含有する原料粉末を準備する原料粉末準備工程と、前記原料粉末をシート状に成形してシート体を形成するシート成形工程と、前記シート体を窒素雰囲気中、1200℃以上1500℃以下で加熱し、シート体に含まれる珪素を窒化する窒化工程と、前記窒化工程を終えた前記シート体を窒素雰囲気下で焼結する焼結工程とを有する窒化珪素基板の製造方法を開示しており、この方法により、120 W/m・K前後の窒化珪素基板が得られると記載している。しかしながら、特許文献3は、得られた窒化珪素基板の強度に関する記載がなく、熱伝導率は面内方向の熱伝導率のみを評価しており厚み方向の記載がない。
"インターナショナル・ジャーナル・オブ・アプライド・セラミック・テクノロジー (International Journal of Applied Ceramic Technology)", 9[2], p.229-238 (2012)(非特許文献1)は、工業用低グレードの珪素粉末(1.6質量%の不純物酸素と500 ppmの金属不純物とを含む)に焼結添加剤としてY2O3及びMgO/MgSiN2を添加し、反応焼結法によって窒化珪素を製造したことを報告している。この反応焼結法は、0.1 MPaの窒素雰囲気下で1400℃8時間窒化した後、更に0.9 MPaの窒素雰囲気下で1900℃6時間焼結することによって行う。さらには、焼結添加剤のMgOをMgSiN2に置き換えることにより、曲げ強度を低下させることなく、熱伝導率を約89 W/m・Kから100 W/m・K以上に向上させることができたと記載している。
非特許文献1は、工業用低グレードの珪素粉末(粉末L、メジアン径d50=5.27μm、BET=3.21 m2/g、酸素濃度1.58質量%)及び試薬グレードの高純度珪素(粉末H、メジアン径d50=8.50μm、BET=1.70 m2/g、酸素濃度0.28質量%)の2種の珪素粉末を、珪素粉末に焼結助剤としてY2O3及びMgO又はMgSiN2をSi3N4:Y2O3:MgO=95:2:5又はSi3N4:Y2O3:MgSiN2=95:2:5となるよう添加して、遊星ボールミルで2h粉砕し、前記条件で焼結することによって窒化珪素焼結体を得ている。非特許文献1は、粉末L及び粉末Hを前記条件で粉砕することにより、それぞれメジアン径d50が約1.8μm、BET=6.76 m2/g、酸素濃度1.81質量%の粉砕粉末L、及びメジアン径d50が約3.0μm、BET=4.83 m2/g、酸素濃度0.51質量%の粉砕粉末Hが得られると記載している。
特許文献3の実施例及び非特許文献1も、珪素(窒化珪素換算)に対して焼結助剤として希土類酸化物(Y2O3)を2 mol%添加して窒化珪素を製造しているため、粒界相を十分に低減できているとは言えず、従って熱伝導率の低下及びコストアップの要因となる。また非特許文献1に記載の粉砕粉末は、粉砕効率の高い遊星ボールミルで短時間で粉砕し得られたものであるため、比表面積が比較的高く珪素粉末中の酸素量が増え、熱伝導率が低下するおそれがある。
特開2000-128643号(特許文献4)は、珪素粉末をSi3N4換算で99〜80重量%と、イットリウム及びランタノイド系列から選ばれた少なくとも1種の元素の化合物粉末1〜20重量%とを混合し、その混合粉末の成形体を窒素含有雰囲気中にて1200〜1400℃の温度で加熱して、遊離珪素量が全体の0.01〜10重量%になるまで窒化した後、さらに窒素含有雰囲気中にて1500〜2000℃の温度で焼結し、遊離珪素量が全体の0.0001〜0.01重量%となるように焼結することにより高熱伝導性窒化珪素焼結体を製造する方法を開示している。
特許文献4は、焼結助剤として1.21 mol%の希土類酸化物(Sm2O3)及び6.3 mol%のMgO添加して窒化珪素焼結体を製造した実施例(試料17)を報告しているが、これらの例は厚さ5 mmの成形体を焼結して得られた比較的厚い窒化珪素焼結体であるため、厚さ1 mm以下の基板で加工代がない又は数10μm程度をブラスト加工などで削るのみの場合は、必ずしも同様の性能が得られるわけではない。
国際公開第2006/118003号(特許文献5)は、β型窒化珪素と、少なくとも1種類の希土類元素とを含有し、前記β型窒化珪素の所定格子面のそれぞれのX線回折線強度の割合から定まる厚さ方向に垂直な面内における配向割合を示す面内配向度faが0.4〜0.8である窒化珪素基板を開示している。特許文献5は、面内配向度を制御することで厚み方向の熱伝導率を110 W/m・K以上とした窒化珪素基板を例示しているが、いずれの例も高価なLu2O3を焼結助剤に用いて、1950℃の高温での焼結が必要であるため、さらなる改良が望まれている。
特開2007-197229号公報 特開2007-197226号公報 特開2015-199657号公報 特開2000-128643号公報 国際公開第2006/118003号
従って、本発明の目的は、希土類元素の添加量を低減した場合でも緻密な焼結体を得ることができ、その結果、粒界相を低減し、もって熱伝導率の向上及びコストダウンが可能な窒化珪素基板の製造方法を提供することである。
本発明のもう一つの目的は、高い機械的特性を維持しながら、厚み方向の熱伝導率の高い窒化珪素基板を量産に適した条件で提供することである。
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、珪素粉末に焼結助剤として希土類元素酸化物及びマグネシウム化合物を添加してなる原料粉末を粉砕してなるスラリーを成形し窒素雰囲気下で焼結して窒化珪素基板を製造する方法において、マグネシウム化合物としてMgSiN2を使用し、BET比表面積(m2/g)(単に「BET」と記載する場合もある。)及びメジアン径D50(μm)が特定の条件を満たすような条件で粉砕することにより、希土類元素酸化物の含有量が2 mol%未満であっても、高熱伝導率、高強度、高密度の窒化珪素基板(板状の窒化珪素焼結体)を得ることができることを見出し、本発明に想到した。
さらに上記のようにして作製した窒化珪素焼結体からなる窒化珪素基板は、厚み方向の単位長さあたりの粒界相の数が、面方向の単位長さ当たりの粒界相の数よりも少ない断面組織を有しているため、機械的特性を維持しながら、厚み方向の熱伝導率が向上することを見出し、本発明に想到した。
すなわち、窒化珪素基板を製造する本発明の方法は、珪素、希土類元素酸化物及びマグネシウム化合物を含有する原料粉末を粉砕しスラリーを作製する工程、前記スラリーをシート状に成形し成形体を得る工程、及び前記成形体を窒素雰囲気中で焼結して前記珪素を窒化し窒化珪素焼結体とする工程を有し、
前記珪素が全て窒化したときに得られる窒化珪素(Si3N4)のモル数xと、前記希土類元素酸化物を三価の酸化物RE2O3(REは希土類元素)に換算したときのモル数yと、前記マグネシウム化合物をMgOに換算したときのモル数zとの合計(x+y+z)を100 mol%としたとき、前記原料粉末は、前記希土類元素酸化物(三価の酸化物RE2O3換算(REは希土類元素))の含有量[y/(x+y+z)]が0.5 mol%以上2 mol%未満、及び前記マグネシウム化合物(MgO換算)の含有量[z/(x+y+z)]が8 mol%以上15 mol%未満であり、
前記マグネシウム化合物が、前記マグネシウム化合物の合計に対して87質量%以上のMgSiN2を含み、
前記スラリー中の珪素粒子のBET比表面積(m2/g)及びメジアン径D50(μm)が、式:
1.5≦BET≦4.5、
2.5≦D50≦6、及び
13≦BET×D50≦18
(なおBETとはBET比表面積を表す。)を満たすことを特徴とする。
粉砕前の前記珪素は、メジアン径D50が6 μm以上、BET比表面積が3 m2/g以下、及び酸素量が0.6質量%以下の粉末であるのが好ましい。
前記原料粉末の粉砕は直径5 mm以上のメディアを用いて、スラリー中の前記原料粉末の濃度が40質量%以上で、ボールミルで6時間以上粉砕するのが好ましい。
前記原料粉末中の珪素中の不純物C量が0.15質量%以下であり、
前記スラリーを作製する工程において、スラリー粘度が1 Pa・s以上15 Pa・s未満であり、
前記成形体を得る工程において、成形速度が600 mm/min.以下であり、
前記窒化珪素焼結体とする工程は、80 Pa以下の真空雰囲気下、900℃以上1300℃以下の雰囲気温度を保持し、前記成形体から炭素を除去する工程を含み、かつ前記成形体に10〜1000 Paの荷重が作用するよう加圧しながら焼結するのが好ましい。
本発明の窒化珪素基板は、窒化珪素粒子と前記窒化珪素粒子の粒界を形成する粒界相とを有する窒化珪素焼結体からなり、
前記粒界相が、希土類元素及びマグネシウムを含み、
断面写真において、面方向に引いた直線(10μm当たり)と交差する粒界の数nsと厚み方向に引いた直線(10μm当たり)と交差する粒界の数ntとの比:ns/ntが、
1<ns/nt≦1.3
を満たすような断面組織を有し、
前記窒化珪素粒子の平均長軸径が3〜15μm、及び粒子内の酸素量が0.05質量%以下であり、
相対密度が98%以上であることを特徴とする。
前記粒界相中の希土類元素(三価の酸化物RE2O3換算(REは希土類元素))の含有量が0.5〜2.3 mol%及びマグネシウム(MgO換算)の含有量が0.5〜10 mol%[ただし、窒化珪素(Si3N4)のモル数と、前記希土類元素を三価の酸化物RE2O3(REは希土類元素)に換算したときのモル数と、前記マグネシウムをMgOに換算したときのモル数との合計を100 mol%とする。]であるのが好ましい。
本発明の窒化珪素基板は、高い密度を有し、優れた熱伝導性(特に厚み方向の高い熱伝導率)及び機械的強度を有するため、パワー半導体モジュール等に使用される回路基板に好適である。また、本発明の方法は、長時間の焼成や高価な原料を使用せずに前記本発明の窒化珪素基板を製造することができる。
窒化珪素基板の断面組織において、面方向及び厚み方向の粒界数を求める方法を説明するための模式図である。
本発明の実施形態を具体的に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識にも基づいて、以下の実施形態に適宜変更、改良が加えられたものも本発明の範囲内に含まれる。
[1] 窒化珪素基板の製造方法
窒化珪素基板を製造する本発明の方法は、珪素、希土類元素酸化物及びマグネシウム化合物を含有する原料粉末を粉砕しスラリーを作製する工程、前記スラリーをシート状に成形し成形体を得る工程、及び前記成形体を窒素雰囲気中で焼結して前記珪素を窒化し窒化珪素焼結体とする工程を有し、前記珪素が全て窒化したときに得られる窒化珪素(Si3N4)のモル数xと、前記希土類元素酸化物を三価の酸化物RE2O3(REは希土類元素)に換算したときのモル数yと、前記マグネシウム化合物をMgOに換算したときのモル数zとの合計(x+y+z)を100 mol%としたとき、前記原料粉末は、前記希土類元素酸化物(三価の酸化物RE2O3換算(REは希土類元素))の含有量が0.5 mol%以上2 mol%未満、及び前記マグネシウム化合物(MgO換算)の含有量が8 mol%以上15 mol%未満であり、前記マグネシウム化合物が、前記マグネシウム化合物の合計に対して87質量%以上のMgSiN2を含み、前記スラリー中の珪素粒子のBET比表面積(m2/g)及びメジアン径D50(μm)が、式:1.5≦BET≦4.5、2.5≦D50≦6、及び13≦BET×D50≦18を満たすことを特徴とする。
前記原料粉末中の珪素中の不純物C量が0.15質量%以下であり、
前記スラリーを作製する工程において、スラリー粘度が1 Pa・s以上15 Pa・s未満であり、
前記成形体を得る工程において、成形速度が600 mm/min.以下であり、
前記窒化珪素焼結体とする工程は、80 Pa以下の真空雰囲気下、900℃以上1300℃以下の雰囲気温度を保持し、前記成形体から炭素を除去する工程を含み、かつ前記成形体に10〜1000 Paの荷重が作用するよう加圧しながら焼結することが好ましい。
なお本願において、前記珪素が全て窒化したときに得られる窒化珪素(Si3N4)のモル数と、前記希土類元素酸化物を三価の酸化物RE2O3(REは希土類元素)に換算したときのモル数と、前記マグネシウム化合物をMgOに換算したときのモル数との合計を、単に「珪素(窒化珪素に換算)、希土類元素酸化物(三価の酸化物換算)及びマグネシウム化合物(MgO換算)の合計」ということもある。
本発明の製造方法は、珪素粉末を原料として使用し、焼結時に珪素粉末の窒化反応(3Si+2N2→Si3N4)を行うことによって窒化珪素基板を得る方法である。緻密な窒化珪素基板を作製するために、焼結助剤として使用する希土類元素酸化物及びマグネシウム化合物の含有量を最適な範囲に設定するとともに、マグネシウム化合物としてマグネシウム化合物の合計に対して87質量%以上のMgSiN2を使用すること、さらに原料粉末の粉砕条件を最適化して、スラリー中の珪素粒子のBET比表面積(m2/g)及びメジアン径D50(μm)が特定の条件を満たすようにする。
また、好ましい条件として、前記原料粉末中の珪素中の不純物C量を0.15質量%以下、成形体を形成するスラリー粘度を1 Pa・s以上15 Pa・s未満として、前記成形体の成形を600 mm/min.以下の速度で行うとともに、成形体から炭素を除去する工程を含み、かつ成形体に10〜1000 Paの荷重が作用するよう加圧しながら焼結することが挙げられる。
なお、本願明細書においてBET比表面積(m2/g)は、BET比表面積計でBET一点法(JIS R 1626:1996「ファインセラミックス粉体の気体吸着 BET 法による比表面積の測定方法」)によって求めた値であり、メジアン径D50(μm)は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布において累積度数が50%となるときの粒径である。
(1) スラリーを作製する工程
本発明の方法では、珪素粉末に、焼結助剤として希土類元素酸化物及びマグネシウム化合物を、前記珪素が全て窒化したときに得られる窒化珪素(Si3N4)のモル数xと、前記希土類元素酸化物を三価の酸化物RE2O3(REは希土類元素)に換算したときのモル数yと、前記マグネシウム化合物をMgOに換算したときのモル数zとの合計(x+y+z)を100 mol%としたとき、前記希土類元素酸化物(三価の酸化物RE2O3換算(REは希土類元素))の含有量[y/(x+y+z)]が0.5 mol%以上2 mol%未満、及び前記マグネシウム化合物(MgO換算)の含有量[z/(x+y+z)]が8 mol%以上15 mol%未満(ただし、前記マグネシウム化合物は、前記マグネシウム化合物の合計に対して87質量%以上のMgSiN2を含む。)となるように添加して得られる原料粉末を、メディア分散等の方法で粉砕し、スラリーを作製する。
(a)珪素
本発明で使用する珪素としては、工業的に入手可能なグレードの珪素粉末を使用することができる。粉砕前の珪素は、メジアン径D50が6 μm以上、BET比表面積が3 m2/g以下、酸素量が0.6質量%以下、及び珪素中の不純物C量が0.15質量%以下の粉末であるのが好ましく、メジアン径D50が7μm以上、BET比表面積が2.5 m2/g以下、酸素量が0.5質量%以下、及び珪素中の不純物C量が0.10質量%以下の粉末であるのがより好ましい。珪素粉末の純度は99%以上であるのが好ましく、99.5%以上であるのがより好ましい。珪素に含まれる不純物酸素は、反応焼結によって得られる窒化珪素基板の熱伝導を阻害する要因の一つなので、できるだけ少ない方が好ましい。さらに本発明では、後述するように、マグネシウム化合物からの酸素量を制限することで、珪素粉末に含まれる不純物酸素及びマグネシウム化合物からの酸素の総量が、窒化珪素に換算した珪素に対して、0.1〜1.1質量%の範囲となるように原料粉末を調整するのが好ましい。また、珪素に含まれる不純物炭素は、反応焼結によって得られる窒化珪素基板において、窒化珪素粒子の成長を阻害する。その結果、緻密化不足となり熱伝導や絶縁が低下する要因の一つとなる。
本発明の製造方法においては必須ではないが、原料粉末に窒化珪素の粉末を含んでもよい。ただし、珪素に比べて窒化珪素を使用した場合はコストがかかるので、窒化珪素の使用量はできるだけ少ない方がよい。窒化珪素の使用量は、珪素(窒化珪素換算)の20 mol%以下であるのが好ましく、10 mol%以下であるのがより好ましく、5 mol%以下であるのがさらに好ましい。
(b) 希土類元素酸化物
本発明に用いる希土類元素酸化物としては、入手が容易であり、また、酸化物として安定なY、Yb、Gd、Er、Lu等の酸化物が好ましい。希土類元素酸化物の具体例としては、Y2O3、Yb2O3、Gd2O3、Er2O3、Lu2O3等が挙げられる。希土類元素酸化物の含有量は、珪素(窒化珪素に換算)、希土類元素酸化物(三価の酸化物換算)及びマグネシウム化合物(MgO換算)の合計に対して、0.5 mol%以上2 mol%未満である。希土類元素酸化物の含有量が0.5 mol%未満である場合、焼結助剤としての効果が不十分となり密度が十分に上がらないため好ましくない。希土類元素酸化物の含有量が2 mol%以上である場合、低熱伝導率の粒界相が増えることにより焼結体の熱伝導率を下げるとともに、高価な希土類元素酸化物の使用量が増えることとなり好ましくない。希土類元素酸化物の含有量は、好ましくは0.6 mol%以上2 mol%未満であり、より好ましくは1 mol%以上1.8 mol%以下である。
(c) マグネシウム化合物
マグネシウム化合物としては、Si、N又はOを含有するマグネシウム化合物を1種又は2種以上使用することができる。特に、酸化マグネシウム(MgO)、窒化珪素マグネシウム(MgSiN2)、ケイ化マグネシウム(Mg2Si)、窒化マグネシウム(Mg3N2)等を使用するのが好ましい。ここで、マグネシウム化合物の合計に対して、87質量%以上がMgSiN2となるように選択する。87質量%以上のMgSiN2を使用することにより、得られる窒化珪素基板中の酸素濃度を低減することができる。マグネシウム化合物中のMgSiN2が87質量%未満である場合、焼結後の窒化珪素粒子内の酸素量が多くなることで焼結体の熱伝導率が低い値となり好ましくない。マグネシウム化合物中のMgSiN2は好ましくは90質量%以上である。
窒化珪素基板中のマグネシウム化合物の含有量(MgO換算)は、珪素(窒化珪素に換算)、希土類元素酸化物(三価の酸化物換算)及びマグネシウム化合物(MgO換算)の合計に対して、8 mol%以上15 mol%未満である。マグネシウム化合物の含有量が8 mol%未満である場合、焼結助剤としての効果が不十分となり密度が十分に上がらないこととなり好ましくない。マグネシウム化合物の含有量が15 mol%以上である場合、低熱伝導率の粒界相が増えることにより焼結体の熱伝導率を下げることとなり好ましくない。マグネシウム化合物の含有量は、好ましくは8 mol%以上14 mol%未満であり、より好ましくは9 mol%以上13 mol%未満である。
(d)粉砕
珪素粉末に、焼結助剤として希土類元素酸化物及びマグネシウム化合物を所定の比率となるように添加して、分散媒(有機溶剤)及び必要に応じて分散剤を添加し、ボールミルで粉砕しスラリー(原料粉末の分散物)を作製する。メディアは直径5 mm以上、スラリー中の前記原料粉末の濃度(スラリー濃度とも言う。)は40質量%以上であるのが好ましく、6時間以上粉砕するのが好ましい。メディアは、窒化珪素の熱伝導率を下げる要因となるAlやFeを主成分としない材質のものを使用するのが好ましく、窒化珪素製であるのが特に好ましい。分散媒及び分散剤の種類は、特に限定されるものではなく、シート成形する方法等に応じて任意に選択することができる。
分散媒としては、エタノール、n-ブタノール、トルエン、MEK、MIBK等を使用することができ、分散剤としては、例えば、ソルビタンエステル型分散剤、ポリオキシアルキレン型分散剤等を使用できる。分散媒の使用量は、例えば、前記粉末の総量に対して40〜70質量%であるのが好ましく、分散剤の使用量は、例えば、0.3〜2質量%であるのが好ましい。なお分散後に必要に応じて分散媒の除去、又は他の分散媒への置換を行ってもよい。
粉砕を行う時間は使用するミリング装置や出発原料の量、特性等により異なるため特に限定されないが、原料粉末を十分に粉砕、混合できるように時間を選択することが好ましい。粉砕時間は例えば6時間以上48時間以下で行うのが好ましく、12時間以上24時間以下で行うのがより好ましい。粉砕時間が短すぎる場合、十分な粉砕ができず本発明の条件を満たす粉砕後珪素粉末が得られない場合がある。粉砕時間が長過ぎる場合、不純物酸素量が徐々に増加し、窒化珪素基板の熱伝導率が低下する場合がある。
粉砕によって得られたスラリー中の珪素粒子(粉砕後珪素粒子とも言う)は、BET比表面積が1.5〜4.5 m2/gである。スラリー中の珪素粒子がこのようなBET比表面積を有することにより、より緻密で熱伝導率が高い窒化珪素基板が得られる。BET比表面積が1.5 m2/g未満では、比表面積が小さいため焼結時に緻密化が進み難く、密度が低下し、曲げ強度も低くなる。BET比表面積が4.5 m2/gより大きいと、Si粉末中の酸素量が増えることで熱伝導率が115 W/m・K未満に低下する。BET比表面積は、2〜4.2 m2/gであるのがより好ましく、3〜4 m2/gであるのが最も好ましい。
粉砕後珪素粒子は、メジアン径D50が2.5〜6 μmである。スラリー中の珪素粒子がこのようなメジアン径を有することにより、より緻密で熱伝導率が高い窒化珪素基板が得られる。メジアン径D50は、3.0〜5.0 μmであるのがより好ましく、3.5〜4.5 μmであるのが最も好ましい。
粉砕後珪素粒子は、BET比表面積(m2/g)及びメジアン径D50(μm)が、式:13≦BET×D50≦18を満たす。このような条件を満たすことにより、より緻密で熱伝導率が高い窒化珪素基板が得られる。
粉砕後珪素粒子は、酸素量が1.0質量%以下であるのが好ましく、0.7質量%以下であるのがより好ましい。できるだけ少ない酸素量の珪素粒子とすることにより、窒化珪素の熱伝導率を向上させることができる。
粉砕によって得られたスラリー中の珪素粒子のBET比表面積(m2/g)、メジアン径D50(μm)及び酸素量は、希土類元素酸化物及びマグネシウム化合物を添加しない以外同様にして粉砕した珪素粒子を用いて測定した値である。希土類元素酸化物の粉末及びマグネシウム化合物の粉末は、珪素粉末に対してごく少量しか添加していないので、粉砕効率にほとんど影響を与えず、このようにして求めた値はスラリー中の珪素粒子と実質的に同じであると考えられる。
(2) シート状の成形体を得る工程(成形工程)
得られたスラリーに、必要に応じて分散媒、有機系バインダー、分散剤等を加えて、必要に応じて真空脱泡を行い、粘度を所定の範囲内に調整し、塗工用のスラリーを作製する。前記スラリー粘度は1 Pa・s以上15 Pa・s未満の範囲内に調整するのが好ましい。スラリーの粘度は、回転型粘度計を用いて、温度:25℃、回転数10 rpmで測定した値である。場合によっては、前述したように、分散媒の除去や置換を行ってもよい。作製した塗工用スラリーを、シート成形機を用いてシート状に成形し、所定の大きさに切断した後、乾燥することによってシート状成形体を得る。塗工用スラリー作製に用いる有機系バインダーは、特に限定されないが、PVB系樹脂(ポリビニルブチラール樹脂)、エチルセルロース系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。分散媒、有機系バインダー、分散剤等の添加量は塗工条件に応じて適宜調整するのが好ましい。
塗工用スラリーをシート状に成形する方法は、特に限定されるものではないが、ドクターブレード法、押し出し成形法等のシート成型法を用いることができる。本実施形態の窒化珪素基板の製造方法においては変質層が形成されず、除去する必要はないため、変質層分の厚さは考慮する必要がない。このため、薄いシート状に容易に成形できるシート成形を好ましく用いることができる。
ドクターブレード法や押し出し成形法によりシート状に成形する場合は、塗工用スラリーの成形速度は600 mm/min以下とするのが好ましい。本願発明で用いる塗工用スラリーは、チクソトロピー性を有するため、塗工用スラリーがドクターブレード法のドクターブレードや押し出し法の金型を通過する際に、塗工用スラリーにせん断応力がかかり、塗工用スラリーの粘度の低下が起こる。従って、成形速度が600 mm/minを超えると、塗工用スラリーが容易に流動し空孔の要因となる泡を巻き込み易くなり緻密化が阻害される場合がある。
塗工用スラリーの乾燥速度は0.8 質量%/min以下とするのが好ましい。塗工用スラリーの乾燥速度が0.8質量%/minを超えると、分散媒が急激に揮発することによりシート内に気泡が生成し易くなり緻密化が阻害される。塗工後のシートは乾燥ゾーンを通過させることで、徐々に昇温して乾燥させるために、乾燥過程における乾燥速度は一定ではなく変動する。そのため、最大乾燥速度が0.8 質量%/minを超えないようにするのが好ましい。
形成するシート体の形状、サイズは特に限定されるものではなく、窒化珪素基板とした際に要求される形状、サイズに応じて任意の形状、サイズとすることができる。成形工程において形成するシート状形成体の厚さは、例えば、0.15〜0.8 mmとする。得られたシート体は、必要に応じて例えば打ち抜き機等で所定の大きさにカットを行うことができる。
(3) 成形体を焼結する工程(焼結工程)
得られたシート状の成形体を窒素雰囲気下で焼結することにより、成形体に含まれる珪素を窒化した後、緻密化する。焼結工程は成形体中の有機バインダーを除去する脱脂工程、成形体中の炭素を除去する脱炭素工程、成形体中に含まれるSiと窒素を反応させて窒化させる窒化工程、及び窒化後に緻密化する緻密化焼結工程を含んでいる。これらの工程は、別々の炉で逐次的に行っても良いし、同じ炉で連続で行ってもよい。
例えば、作製したシート状成形体をBN製の板上に一枚もしくは分離材を挟んで複数枚積層して電気炉内に設置し、脱脂(有機バインダー等の除去)したのち、900〜1300℃で脱炭素し、窒素雰囲気下で、所定の温度まで昇温して窒化し、その後、焼結する。このとき成形体に10〜1000 Paの荷重をかけながら焼結するのが好ましい。ここで、得られた焼結体に対して熱間静水圧(HIP)処理を行う必要はない。脱脂は800℃以下の温度で行うのが好ましい。
なおシート状成形体を複数枚積層する場合、前記分離材として厚さ約3〜20μmの窒化硼素(BN)粉を用いるのが好ましい。BN粉末層は焼結後の窒化珪素焼結体基板の分離を容易にするためのものであり、各シート状成形体の一面にBN粉末のスラリーを、例えばスプレー、ブラシ塗布又はスクリーン印刷することにより形成することができる。BN粉末は95%以上の純度及び1〜20μmの平均粒径(D50)を有するのが好ましい。BN粉末層厚みが3 μm未満だと、焼結後に窒化珪素基板同士を分離することが困難になるだけでなく、基板間の隙間が小さくなるため、脱脂及び脱炭素工程後に炭素が残留しやすく、窒化工程では、基板間に窒素が侵入し難く、窒化不十分となりSiが残留しやすい。BN粉末層厚みが20 μm超では、焼結工程でBN粉末層により、収縮が阻害されるため緻密化が困難になる。
脱炭素工程は、脱脂工程よりも炭素が揮発しやすい条件でシート状成形体を処理することにより、シート状成形体中の炭素をより完全に除去する工程である。シート状成形体中の炭素を除去することにより、焼結によって発生する炭素起因のボイドを防止することができる。脱炭素は、焼結炉内の雰囲気温度を室温から900〜1300℃まで昇温し、この範囲内の温度で、30分〜2時間保持する。脱炭素は、減圧下(80 Pa以下)で行うのが好ましい。昇温速度は、例えば、6O℃/hr程度で行う。シート状成形体を減圧下で加熱及び保持し、シート状成形体中の炭素を効率よく除去することができる。雰囲気温度が900℃よりも低い場合、炭素の除去が十分に行われない可能性がある。また、1300℃よりも高い場合、焼結助剤も除去される可能性がある。焼結炉内の雰囲気温度は1000〜1200℃であるのがより好ましい。
窒化工程において、窒化時の窒素分圧は0.05〜0.7 MPaであるのが好ましく、0.07〜0.2 MPaであるのがより好ましい。窒化温度は、1350〜1500℃であるのが好ましく、1400〜1450℃であるのがより好ましい。窒化温度まで加熱した後の保持時間は、3〜12時間であるのが好ましく、5〜10時間であるのが好ましい。窒化温度が1350℃未満の場合、又は保持時間が3時間未満である場合、シート体に未反応の珪素粉末が残存し、窒化工程後に行う緻密化焼結工程によって緻密体を得ることができない場合がある。窒化温度が1500℃超である場合、珪素粉末が窒化する前に溶融してしまうことで窒化せずに残存したり、焼結助剤成分が揮発して緻密化焼結工程において焼結助剤成分が不足し、緻密な焼結体を得ることが難しくなる場合がある。保持時間が12時間超である場合、焼結助剤成分が揮発して緻密化焼結工程において焼結助剤成分が不足し、緻密な焼結体を得ることが難しくなる場合がある。
緻密化焼結時の窒素分圧は、0.1〜0.9 MPaであるのが好ましく、0.5〜0.9 MPaであるのがより好ましい。焼結温度は、1800〜1950℃であるのが好ましく、1850〜1900℃であるのがより好ましい。焼結温度まで加熱した後の保持時間(焼結時間)は、3〜12時間であるのが好ましく、5〜10時間であるのが好ましい。焼結温度が1800℃未満の場合、又は保持時間が3時間未満である場合、窒化珪素粒子の成長や再配列が不十分で緻密体を得ることができない場合がある。焼結温度が1950℃超である場合、又は保持時間が12時間超である場合、焼結助剤成分が揮発して不足し、緻密な焼結体を得ることが難しくなる場合がある。
[2] 窒化珪素基板
本発明の窒化珪素基板は、窒化珪素粒子と前記窒化珪素粒子の粒界を形成する粒界相とを有する窒化珪素焼結体からなり、
前記粒界相が、希土類元素酸化物及びマグネシウム化合物を含み、
断面写真において、面方向に引いた直線(10μm当たり)と交差する粒界の数nsと厚み方向に引いた直線(10μm当たり)と交差する粒界の数ntとの比:ns/ntが、
1<ns/nt≦1.3
を満たすような断面組織を有し、
前記窒化珪素粒子の平均長軸径が3〜15μm、及び粒子内の酸素量が0.05質量%以下であり、
相対密度が98%以上であることを特徴とする。
(1)組成
焼結後の窒化珪素基板は、β相窒化珪素を主成分とし、希土類元素及びマグネシウムを含有する。希土類元素は単体の状態であってもよく、他の物質と化合物を形成していても良い。窒化珪素基板に含まれるマグネシウムは単体の状態であってもよいし、他の物質との化合物であってもよい。
前記粒界相中の希土類元素(三価の酸化物RE2O3換算(REは希土類元素))の含有量は0.5〜2.3 mol%及びマグネシウム(MgO換算)の含有量は0.5〜10 mol%であるのが好ましい。なお、本願の窒化珪素基板において、希土類元素の含有量及びマグネシウムの含有量は、窒化珪素(Si3N4)のモル数と、前記希土類元素を三価の酸化物RE2O3(REは希土類元素)に換算したときのモル数と、前記マグネシウムをMgOに換算したときのモル数との合計を100 mol%として求めた値である。以下、前記合計を、単に「窒化珪素、希土類元素(三価の酸化物換算)及びマグネシウム(MgO換算)の合計」ということもある。
ここで、前記粒界相中の希土類元素(三価の酸化物RE2O3換算(REは希土類元素))の含有量及びマグネシウム(MgO換算)の含有量の合計(粒界相の総量)は、1.0〜12.3 mol%であるのが好ましい。
窒化珪素基板中の窒化珪素、希土類元素及びマグネシウムの含有量は、製造時に添加した珪素粉末、並びに焼結助剤として添加した希土類元素酸化物及びマグネシウム化合物の添加量に依存する。本願発明の方法においては、焼成時に、主にマグネシウム化合物が揮発により減少するため、製造時に添加した量に対して、焼結後の窒化珪素基板中のマグネシウムの含有量は減少する。一方、希土類元素酸化物はほとんど揮発しないため、マグネシウム化合物が減少したことにより、窒化珪素、希土類元素(三価の酸化物換算)及びマグネシウム(MgO換算)の合計に対する含有率としてはやや増加する場合がある。なおマグネシウム化合物の揮発量は、成形体の形状、焼成条件等によって変動する。
(2)組織
断面写真において、面方向に引いた直線(10μm当たり)と交差する粒界の数nsと厚み方向に引いた直線(10μm当たり)と交差する粒界の数ntとの比:ns/ntが、1<ns/nt≦1.3を満たすような断面組織を有する。すなわち、本願発明の窒化珪素基板は、厚み方向の粒界の数が、面方向の粒界の数よりも多く存在する。このような組織を有することにより、面方向の熱伝導率よりも厚み方向の熱伝導率が高くなるため、窒化珪素粒子のサイズを小さくして粒界の数が増えた場合でも厚み方向の熱伝導率を高く保つことができ、窒化珪素基板の機械的強度と厚み方向の熱伝導率との両立が可能となる。
面方向の粒界の数ns及び厚み方向の粒界の数ntの求め方を以下に説明する。図1に示すように、3000〜10000倍程度の倍率で撮影した窒化珪素基板の面に垂直な断面の組織写真に、厚み方向及び面方向に約2 μm間隔で8〜15本の線を引き、粒界(2粒子界面及び3重点)を横切る数を数える。その数を線の総長さで割り、10 μm当たりの粒界の数(ns及びnt)を求める。なお、窒化珪素基板の断面は、あらかじめ鏡面研磨、CF4ガスによるプラズマエッチング及び金蒸着の処理を逐次行ってから観察を行うことが好ましい。断面の組織写真において、白く抜けた部分が粒界である。
断面写真において、窒化珪素粒子の平均長軸径は3〜15μmである。平均長軸径が3μm未満であると粒界の数が多くなりすぎて熱伝導率が低下する。平均長軸径が15μm超であると機械的強度が低下する。窒化珪素粒子の平均長軸径は4〜14μmであるのが好ましく、5〜14 μmであるのがより好ましい。なお窒化珪素粒子の長軸径は、断面写真において、個々の窒化珪素粒子の最も長い部分の長さで定義され、平均長軸径は、少なくとも100個の粒子について測定した長軸径の平均値である。窒化珪素粒子の長軸径は、前記粒界の数を求めたのと同じ組織写真から画像処理によって求めることができる。
窒化珪素粒子内の酸素量は0.05質量%以下である。酸素量が0.05質量%超であると高い熱伝導率が得られない。
(3)その他
窒化珪素基板は、相対密度が98%以上の緻密な構造を有している。窒化珪素基板の相対密度が98%未満であると高い熱伝導率が得られない。このような緻密な窒化珪素基板は、ボイドによる熱伝導の阻害が起こりにくく、特に本発明の窒化珪素基板は、厚み方向の熱伝導率が115 W/m・K以上である。
窒化珪素基板の曲げ強度は、700 MPa以上である。窒化珪素基板にろう材を介して銅板などの回路を接合したパワーモジュール用の窒化珪素回路基板とした場合、実装時や駆動時に高い応力がかかるため、その方式にも依るが曲げ強度は700 MPa以上であることが好ましい。また、曲げ強度が700 MPa以上と高いことにより、窒化珪素基板を薄くすることも可能である。
窒化珪素基板の厚さは、特に限定されるものではなく、任意の厚さとすることができるが、例えば、半導体素子や電子機器の絶縁放熱基板として用いる場合、0.05〜2.5 mmとするのが好ましく、0.1〜1 mmとするのがより好ましく、特に、パワーモジュール用の窒化珪素回路基板とする場合には0.2〜0.6 mmとするのがさらに好ましい。焼結後の窒化珪素基板の厚さは、シート成形工程において形成するシート成形体の厚さを調整することにより調節することができる。
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
(1)試料No.1(実施例)の窒化珪素基板の作製
(スラリー作製工程)
表1に示すように、BET比表面積が2.1 m2/g、メジアン径D50が8.2 μm、酸素量が0.3質量%の珪素粉末に、珪素(窒化珪素換算)、希土類元素酸化物(三価の酸化物換算)及びマグネシウム化合物(MgO換算)の合計に対して、1.2 mol%のY2O3の粉末及び9.8 mol%のマグネシウム化合物の粉末を焼結助剤として添加し、原料粉末を得た。この原料粉末に、表2に示すように、分散媒(トルエン)及び原料粉末の合計に対して0.5質量%の分散剤(ソルビタン酸トリオレート)を添加して、42質量%の濃度のスラリーとし、ボールミルを用いて、メディアとして窒化珪素製5φボールを使用し、24時間粉砕を行った。マグネシウム化合物は、酸化マグネシウム(MgO)と窒化珪素マグネシウム(MgSiN2)との10:90(質量比)の混合物を使用した。なおマグネシウム化合物の添加量は、マグネシウム化合物を全てMgOに換算したときのmol%で示した。粉砕前の珪素粉末のBET比表面積、メジアン径D50及び酸素量は、それぞれBET一点法のBET比表面積計、レーザー回折・散乱法の粒度分布計、及び不活性ガス融解-非分散型赤外線吸収法の酸素分析装置を用いて測定した。
注(1):Y2O3及びMg化合物の添加量は、珪素(窒化珪素換算)、Y2O3及びMg化合物(MgO換算)の合計に対するmol%で示した。
注(2):Mg化合物(MgO+MgSiN2)中のMgSiN2の割合である。
粉砕後の珪素粒子のBET比表面積(m2/g)、D10(μm)、メジアン径D50(μm)及びD90(μm)、並びに酸素量は、Y2O3の粉末及びマグネシウム化合物の粉末を添加しない以外上記と同じ条件で粉砕して得られた珪素の粉砕粒子を用いて測定した。なお粉砕後の珪素粒子は、乾燥して溶剤を揮発させた後、大気中500℃に加熱して分散剤を除去してから測定に使用した。またBET比表面積、D10(μm)、メジアン径D50(μm)及びD90(μm)、並びに酸素量の測定は粉砕前の珪素粉末と同様の方法で行った。なおD10は粉砕後の珪素粒子の累積頻度が10%となる粒径であり、メジアン径D50は累積頻度が50%となる粒径であり、D90は累積頻度が90%となる粒径である。結果を表3に示す。
(シート成形工程)
得られたスラリーは、分散媒及び有機系バインダー(アクリル系樹脂)を加えて濃度調製し、脱泡処理を施してスラリー状の塗工液とした。この塗工用スラリーをドクターブレード法により、キャリアフィルムに塗工し、厚さ0.4 mmのシート状に成形し、45 mm×45 mmの大きさに切断し成形体を得た。なお、塗工時にキャリアフィルムを送る速度が成形速度に相当し、この成形速度を600 mm/min.以下とした。
(焼結工程)
得られたシート状成形体をBN粉末層(厚さ4.5μm)を挟んで複数枚積層し、BN板上に設置し、カーボン製ルツボ中、窒素雰囲気下(窒素分圧0.1 MPa)及び750℃で5時間脱脂し、BN製ルツボ中、真空下及び1000℃で1時間脱炭素し、BN製ルツボ中、窒素雰囲気下(窒素分圧0.1 MPa)及び1450℃で10時間窒化し、引き続きBN製ルツボ中、窒素雰囲気下(窒素分圧0.9 MPa)及び1900℃で12時間焼結し、窒化珪素焼結体からなる本発明の基板を得た。
窒化珪素基板の表面を清浄化と適度な粗さとすることを目的に液体ホーニング処理した。ホーニング処理は水中にアルミナ砥粒を適量添加し、0.5 MPaの圧力で焼結体表裏に吹き付けて行うことができる。
清浄化と液体ホーニング処理の後、窒化珪素基板の相対密度、曲げ強度及び熱伝導率を測定した。相対密度は、水中置換法(アルキメデス法)により測定した焼結体密度と、窒化珪素の真密度とから、焼結体密度/真密度として算出した。各々の試料の真密度はSi3N4,Y2O3, MgO及びMgSiN2の真密度と配合割合から計算して求めた値とした。曲げ強度の測定は得られた窒化珪素基板から幅4 mm及び長さ10 mmの試験片を作製し3点曲げ試験(スパン7 mm、クロスヘッド速度 0.5 mm/min.)で行い、熱伝導率(厚み方向)の測定は同様に10 mm角に切り出した試験片を使いフラッシュ法で行った。結果を表4に示す。
(2)試料No.2〜20の窒化珪素基板の作製
珪素粉末、焼結助剤及び粉砕条件を表1及び表2に示すように変更した以外は試料No.1と同様にして原料粉末を粉砕し、分散媒及び有機系バインダー(アクリル系樹脂)を加えて濃度調製し、脱泡処理を施して塗工用スラリーを得た。粉砕後の珪素粒子の性状を表3に示す。この塗工用スラリーをドクターブレード法により試料No.1と同様にして塗工し、厚さ0.4 mmのシート状に成形した。得られたシートを45 mm×45 mmの大きさに切断しシート状成形体を得た。
得られたシート状成形体を用いて、試料No.1と同様にして焼結を行い、窒化珪素焼結体からなる基板を得た。これらの窒化珪素基板に、清浄化処理と液体ホーニング処理とを施し、試料No.1と同様にして相対密度、曲げ強度及び熱伝導率を測定した。これらの試料が本発明例に含まれるか比較例かは表1及び表2の右端欄に実施例及び比較例と記載して示した。結果を表4に示す。
本発明例の試料No. 1、2、7〜10、12及び18〜20の窒化珪素基板は、相対密度が98.1%以上、曲げ強度が702 MPa以上であり、熱伝導率が115 W/m・K以上と優れた性能を有していた。
これに対して、試料No.3〜5及び11(比較例)の窒化珪素基板は、粉砕後の珪素粒子のBET比表面積が4.5 m2/gを超えていたため、熱伝導率が低い傾向にあった。
試料No.13(比較例)及び試料No.14(比較例)の窒化珪素基板は、粉砕後の原料粉末のメジアン径D50がそれぞれ1.7μm及び2.3μmと小さく、かつBET×D50の値がそれぞれ12.2及び11.0と低かったため、相対密度及び曲げ強度は本発明例と同等であったが、熱伝導率がそれぞれ92 W/m・K及び95 W/m・Kと低い値だった。
試料No.15(比較例)の窒化珪素基板は、BET×D50の値が19.4と高かったため、相対密度が97.5%と低く、曲げ強度が681 MPaと低く、かつ熱伝導率も98 W/m・Kと低い値だった。
試料No.6(比較例)、試料No.16(比較例)及び試料No.17(比較例)の窒化珪素基板は、原料のマグネシウム化合物に含まれるMgSiN2の割合がそれぞれ85質量%、50質量%及び0質量%と低かったため、相対密度及び曲げ強度は本発明例と同等であったが、熱伝導率がそれぞれ109 W/m・K、98 W/m・K及び94 W/m・Kと低い値だった。
(3)試料No.21, 22の窒化珪素基板の作製
珪素粉末、焼結助剤及び粉砕条件を表1及び表2に示すように変更した以外は試料No.1と同様にして原料粉末を粉砕し、分散媒及び有機系バインダー(アクリル系樹脂)を加えて濃度調製し、脱泡処理を施して塗工用スラリーを得た。使用した珪素粉末の炭素量は0.03質量%であった。粉砕後の珪素粒子の性状を表3に示す。得られた塗工用スラリーの粘度は、試料No.21及び22ともに5.0 Pa・sであった。この塗工用スラリーをドクターブレード法により、330 mm/min.の速度で塗工し、厚さ0.4 mmのシート状に成形した。得られたシートを45 mm×45 mmの大きさに切断し、シート状成形体を得た。なお珪素粉末中の炭素量は炭素分析計で測定した。
得られたシート状成形体をBN粉末層(厚さ4.5μm)を挟んで複数枚積層し、BN板上に設置し、カーボン製ルツボ中、窒素雰囲気下(窒素分圧0.1 MPa)及び750℃で5時間脱脂し、BN製ルツボ中、真空下及び1000℃で1時間脱炭素し、BN製ルツボ中、窒素雰囲気下(窒素分圧0.1 MPa)及び1450℃で10時間窒化し、引き続きBN製ルツボ中、窒素雰囲気下(窒素分圧0.9 MPa)で、複数枚積層したうちの最上層に重しを載せて40 Paの荷重をかけながら1900℃で12時間(試料No.21)又は15時間(試料No.22)焼結し、窒化珪素焼結体からなる本発明の基板を得た。試料No.21及び22の成形条件、BN塗布層厚み、脱脂条件、脱炭素条件、窒化条件及び焼結条件を表5にまとめた。
これらの窒化珪素基板に、清浄化処理と液体ホーニング処理とを施し、試料No.1と同様にして相対密度、曲げ強度及び熱伝導率を測定した。結果を表4に示す。
(組織観察)
試料No.21及び22の窒化珪素基板の断面写真を撮影し、厚み方向及び面方向の粒界の数、粒界数の比及び平均長軸径を測定した。窒化珪素基板の面に垂直な断面を鏡面研磨した後、CF4ガスによるプラズマエッチング及び金蒸着の処理を逐次行ってSEM観察用試料を作製した。この試料を用いて断面のSEM写真を3000〜10000倍程度の倍率で撮影し、図1に示すような窒化珪素基板の断面の組織写真を得た。この組織写真に、厚み方向及び面方向に約2 μm間隔で8〜15本の線を引き、粒界(2粒子界面及び3重点。写真中で白い部分)を横切る数を数えた。その数を線の総長さで割り、厚み方向及び面方向の、10 μm当たりの粒界の数(ns及びnt)を求めた。結果を表6に示す。
(焼結後組成分析)
粒子内酸素量、希土類元素(三価の酸化物RE2O3換算)の含有量及びマグネシウム(MgO換算)の含有量を以下のようにして測定した。粒内酸素量は、北山らにより報告されている方法(J. Am. Ceram. Soc.,82[11], 3263-3265 (1999).)に従い、微粉砕した窒化珪素焼結体から酸洗浄により粒界相を除去して、窒化珪素粒子を取り出した後、酸素分析計で測定した。希土類元素とマグネシウムの含有量はJIS R1603に準拠し、微粉砕した窒化珪素焼結体を酸に溶解した後、ICP発光分析計で測定した。結果を表7に示す。
試料No.21及び22では、原料粉末中の不純物C量を所定の範囲内としたことと脱炭素工程を設けたことにより、焼結工程で粒成長が進む前のC量を制御した。また、成形工程でスラリー粘度と速度を、所定の範囲内とすることで、シート状成形体中の粒子の分散を制御した。さらに、焼結工程での荷重を所定の範囲とすることで、焼結工程中の粒成長が起こる過程でシート状成形体の厚み方向にかかる圧力を制御した。これらの要因が関連して、粒界数の比ns/ntが1<ns/nt≦1.3を満たしていた。

Claims (6)

  1. 珪素、希土類元素酸化物及びマグネシウム化合物を含有する原料粉末を粉砕しスラリーを作製する工程、前記スラリーをシート状に成形し成形体を得る工程、及び前記成形体を窒素雰囲気中で焼結して前記珪素を窒化し窒化珪素焼結体とする工程を有する窒化珪素基板の製造方法であって、
    前記珪素が全て窒化したときに得られる窒化珪素(Si3N4)のモル数xと、前記希土類元素酸化物を三価の酸化物RE2O3(REは希土類元素)に換算したときのモル数yと、前記マグネシウム化合物をMgOに換算したときのモル数zとの合計(x+y+z)を100 mol%としたとき、前記原料粉末は、前記希土類元素酸化物(三価の酸化物RE2O3換算(REは希土類元素))の含有量[y/(x+y+z)]が0.5 mol%以上2 mol%未満、及び前記マグネシウム化合物(MgO換算)の含有量[z/(x+y+z)]が8 mol%以上15 mol%未満であり、
    前記マグネシウム化合物が、前記マグネシウム化合物の合計に対して87質量%以上のMgSiN2を含み、
    前記スラリー中の珪素粒子のBET比表面積(m2/g)及びメジアン径D50(μm)が、
    式:
    1.5≦BET≦4.5、
    2.5≦D50≦6、及び
    13≦BET×D50≦18
    (なおBETとはBET比表面積を表す。)を満たすことを特徴とする窒化珪素基板の製造方法。
  2. 請求項1に記載の窒化珪素基板の製造方法において、
    粉砕前の前記珪素が、メジアン径D50が6 μm以上、BET比表面積が3 m2/g以下、及び酸素量が0.6質量%以下の粉末であることを特徴とする窒化珪素基板の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の窒化珪素基板の製造方法において、前記原料粉末の粉砕は直径5 mm以上のメディアを用いて、スラリー中の前記原料粉末の濃度が40質量%以上で、ボールミルで6時間以上粉砕することを特徴とする窒化珪素基板の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の窒化珪素基板の製造方法において、
    前記原料粉末中の珪素中の不純物C量が0.15質量%以下であり、
    前記スラリーを作製する工程において、スラリー粘度が1 Pa・s以上15 Pa・s未満であり、
    前記成形体を得る工程において、成形速度が600 mm/min.以下であり、
    前記窒化珪素焼結体とする工程は、80 Pa以下の真空雰囲気下、900℃以上1300℃以下の雰囲気温度を保持し、前記成形体から炭素を除去する工程を含み、かつ前記成形体に10〜1000 Paの荷重が作用するよう加圧しながら焼結することを特徴とする窒化珪素基板の製造方法。
  5. 窒化珪素粒子と前記窒化珪素粒子の粒界を形成する粒界相とを有する窒化珪素焼結体からなる窒化珪素基板であって、
    前記粒界相が、希土類元素及びマグネシウムを含み、
    断面写真において、面方向に引いた直線(10μm当たり)と交差する粒界の数nsと厚み方向に引いた直線(10μm当たり)と交差する粒界の数ntとの比:ns/ntが、
    1<ns/nt≦1.3
    を満たすような断面組織を有し、
    前記窒化珪素粒子の平均長軸径が3〜15μm、及び粒子内の酸素量が0.05質量%以下であり、
    相対密度が98%以上であることを特徴とする窒化珪素基板。
  6. 請求項5に記載の窒化珪素基板において、
    前記粒界相中の希土類元素(三価の酸化物RE2O3換算(REは希土類元素))の含有量が0.5〜2.3 mol%及びマグネシウム(MgO換算)の含有量が0.5〜10 mol%[ただし、窒化珪素(Si3N4)のモル数と、前記希土類元素を三価の酸化物RE2O3(REは希土類元素)に換算したときのモル数と、前記マグネシウムをMgOに換算したときのモル数との合計を100 mol%とする。]であることを特徴とする窒化珪素基板。
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