JP2009149503A - カーボンナノチューブ組成物の製造方法 - Google Patents

カーボンナノチューブ組成物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】多層カーボンナノチューブを硝酸溶液中で処理することによって導電性を向上させる方法を提供することを課題とし、高い導電性を有するカーボンナノチューブ組成物を簡便かつ収率よく製造することができる方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
波長633nmのラマン分光分析によるGバンドとDバンドの高さ比(G/D比)が5以上である多層カーボンナノチューブ組成物を硝酸溶液中で加熱することによって導電性を向上させることを特徴とする多層カーボンナノチューブ組成物の製造方法である。
【選択図】なし

Description

波長633nmのラマン分光分析によるGバンドとDバンドの高さ比(G/D比)が5以上である多層カーボンナノチューブ組成物を硝酸溶液中で加熱することによって導電性を向上させることを特徴とするカーボンナノチューブ組成物の製造方法に関する。
カーボンナノチューブは、その理想的な一次元構造に起因する様々な特性、例えば良電気伝導性、熱伝導性や力学強度などによって様々な工業的応用が期待されている物質であり、直径、層数、長さを制御することにより、それぞれの用途での性能向上および応用性の広がりも期待されている。
また、カーボンナノチューブは、通常層数の少ない方が高グラファイト構造を有し、単層カーボンナノチューブや2層カーボンナノチューブは電気導電性や熱導電性などの特性も高いことが知られている。また、カーボンナノチューブの中でも層数の比較的少ない2〜5層カーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブの特性と多層カーボンナノチューブの両方の特性を有しているために、種々の用途において有望な素材として注目を集めている。
一方、層数の多い多層カーボンナノチューブは、一般に直径も太く、グラファイト層に欠陥も多く、品質が劣るため、特に優れた光透過率と導電性が求められる透明導電フィルム、成型品、膜等への用途において実用性を発揮させることは困難であった。
公知のカーボンナノチューブの製造方法としては、レーザーアブレーション法、化学気相成長法(CVD(Chemical Vapor Deposition)法)などによる合成が知られている。なかでも、CVD法による合成法は、炭素原料の種類、原料供給速度、合成温度、触媒密度等の反応条件をコントロール可能であり、比較的簡単にカーボンナノチューブの大量合成ができる。最近では、直径、長さ、層数を選択的に合成できるようになりつつあり、化学気相成長法では、カーボンナノチューブの層数を単層、2〜5層に制御して製造出来ることが知られている。
しかしながらCVD法によって製造されたカーボンナノチューブ組成物には、合成時に不純物としてアモルファスカーボンや粒子状のカーボンなど、カーボンナノチューブ以外の炭素不純物も混ざってくるため、カーボンナノチューブ本来の特性を十分に引き出すには、炭素不純物を除去する操作が必要となってくる。
非特許文献1中では、単層ナノチューブを硝酸溶液中で処理すると、官能基化や、グラファイト構造の欠損が生じることが記されている。この様なカーボンナノチューブは、グラファイト構造に欠損があるため、本来カーボンナノチューブが持っている導電性が大きく低下する。
また、特許文献1では多層カーボンナノチューブを硝酸溶液中で処理することによって、多層カーボンナノチューブの開口を行う方法が示されている。しかし、同文献中で示されているカーボンナノチューブは直径7〜25nmの多層カーボンナノチューブであり、この様な多層カーボンナノチューブは一般にグラファイト化度が低い(G/D比が低い)ため硝酸溶液中での処理によって官能基化や欠損を生じ易く、カーボンナノチューブ本来の特性(導電性)が損なわれる。また、特許文献2でも多層カーボンナノチューブを硝酸溶液中で処理することによって、多層カーボンナノチューブの開口、官能基化を積極的に行っていることによって、カーボンナノチューブの特性(導電性)は低下していると推定される。また、非特許文献2に示されるように、硝酸溶液中で多層カーボンナノチューブを加熱し続けると、官能基化が進行し、カーボンナノチューブの純度を示す指標の一つであるラマンスペクトルによるG/D比が低下することが示されている。この様に、多層カーボンナノチューブを硝酸溶液中で処理することによってカーボンナノチューブの特性である導電性を向上させるようなカーボンナノチューブ組成物を製造する方法はこれまで知られていない。
特開2005−154200号公報 特表2005−535550号広報 ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ(Journal of American Chemical Society)126(2004), 6095-6105 カーボン(Carbon)43(2005), 3124-3131
本発明は、上記のような事情に鑑みなされたものであり、多層カーボンナノチューブを硝酸溶液中で処理することによって導電性を向上させる方法を提供することを課題とする。
本発明はさらに、用いるカーボンナノチューブを最適化することにより、高い導電性を有するカーボンナノチューブ組成物を簡便かつ収率よく製造することができる方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、グラファイト化度の高い多層カーボンナノチューブを硝酸溶液を用いて精製することによって、単層カーボンナノチューブ、グラファイト化度の低い多層カーボンナノチューブでは達成できなかった導電性の向上を示すカーボンナノチューブ組成物を製造出来ることを見出した。
すなわち、本発明は波長633nmのラマン分光分析によるGバンドとDバンドの高さ比(G/D比)が5以上である多層カーボンナノチューブ組成物を硝酸溶液中で加熱することによって導電性を向上させることを特徴とするカーボンナノチューブ組成物の製造方法およびカーボンナノチューブ組成物、およびそれを含んでなる透明導電フィルムである。
本発明により得られたカーボンナノチューブ組成物を分散液としてフィルムに塗布することによって、優れた光透過率と表面抵抗を有するフィルムを得る。
カーボンナノチューブは、グラファイトの1枚面を巻いて筒状にした形状を有しており、1層に巻いたものを単層カーボンナノチューブ、多層に巻いたものを多層カーボンナノチューブ、その中で特に2層に巻いたものを2層カーボンナノチューブという。カーボンナノチューブの形態は、高分解能透過型電子顕微鏡で調べることができる。グラファイトの層は、透過型電子顕微鏡でまっすぐにはっきりと見えるほど好ましいが、グラファイト層は乱れている部分があっても構わない。
本発明における多層カーボンナノチューブ組成物とは、カーボンナノチューブ組成物中に含まれる任意のカーボンナノチューブの100本中、50本以上が2層以上のカーボンナノチューブであるものについて多層カーボンナノチューブ組成物という。
また、上記任意のカーボンナノチューブの層数と本数の数え方は、透過型電子顕微鏡で40万倍で観察し、75nm四方の視野の中で視野面積の10%以上がカーボンナノチューブである視野中から任意に抽出した100本のカーボンナノチューブについて層数を評価し、一つの視野中で100本の測定ができない場合は、100本になるまで複数の視野から測定する。このとき、カーボンナノチューブ1本とは視野中で一部カーボンナノチューブが見えていれば1本と計上し、必ずしも両端が見えている必要はない。また視野中で2本と認識されても視野外でつながって1本となっていることもあり得るが、その場合は2本と計上する。
以下、多層カーボンナノチューブ組成物中におけるカーボンナノチューブ中の2〜5層のカーボンナノチューブの割合が、任意のカーボンナノチューブ100本中、50本以上であるものについて2〜5層のカーボンナノチューブ組成物、多層カーボンナノチューブ組成物中におけるカーボンナノチューブ中の2層のカーボンナノチューブの割合が、任意のカーボンナノチューブ100本中、50本以上であるものについて2層のカーボンナノチューブ組成物と表現することがある。
本発明で用いる多層カーボンナノチューブ組成物は、波長633nmのラマン分光分析によるGバンドとDバンドの高さ比(G/D比)が5以上であることが必要であり、硝酸溶液中で加熱することにより導電性を向上させたカーボンナノチューブ組成物を得るには、G/D比が高いほど効果が大きい。
ここで、ラマン分光分析におけるGバンドとDバンドとは、ラマンスペクトルにおいて1590cm-1付近に見られるラマンシフトがグラファイト由来のGバンドと呼ばれ、1350cm-1付近に見られるラマンシフトはアモルファスカーボンやグラファイトの欠陥に由来のDバンドと呼ばれる。このG/D比が高いカーボンナノチューブほど、グラファイト化度が高く、高品質である。
一般にCVD法で合成された多層カーボンナノチューブ組成物は波長633nmのラマン分光分析によるG/D比が3以下であることが多く、このような多層カーボンナノチューブはグラファイト化度が低く、カーボンナノチューブ自体の導電性が高くないため、精製を行っても導電性の向上効果が低い。そのため、本発明で用いる多層カーボンナノチューブ組成物は、波長633nmのラマン分光分析によるG/D比が5以上であることが必要である。
多層カーボンナノチューブ組成物の中でも層数の比較的少ない2〜5層のカーボンナノチューブ組成物の方が、グラファイト化度の高い(波長633nmのラマン分光分析によるG/D比が5以上)カーボンナノチューブ組成物を製造し易く、2層カーボンナノチューブ組成物はグラファイト化度が更に高く、G/D比が20以上である組成物も製造可能であり、本発明で用いる2層カーボンナノチューブ組成物は、波長633nmのラマン分光分析によるG/D比が20以上であることが好ましく、硝酸溶液中で加熱することにより導電性をより向上させたカーボンナノチューブ組成物を得るには、G/D比が30以上であることがより好ましく、G/D比が40以上であることがより好適である。G/D比は高いほど導電性向上の効果が大きいが、G/D比が200以上のカーボンナノチューブ組成物は入手し難いため、G/D比が40〜200のカーボンナノチューブを用いるのが最も好ましい。
また、前記多層カーボンナノチューブ組成物中におけるカーボンナノチューブ中の多層カーボンナノチューブの割合は、任意のカーボンナノチューブ100本中、50本以上が好ましく、より好ましくは60本以上、さらに好ましくは70本以上であることが好適であり、最も好ましくは85本以上である。多層カーボンナノチューブ組成物中の多層カーボンナノチューブの割合が多いほど硝酸溶液中で加熱後に導電性のより向上したカーボンナノチューブ組成物が得られる。さらに、前記多層カーボンナノチューブ組成物が2〜5層のカーボンナノチューブ組成物である場合には、カーボンナノチューブ中の2〜5層のカーボンナノチューブの割合は、任意のカーボンナノチューブ100本中、50本以上が好ましく、より好ましくは60本以上、さらに好ましくは70本以上であることが好適であり、最も好ましくは85本以上である。2〜5層のカーボンナノチューブ組成物中の2〜5層のカーボンナノチューブの割合が多いほど硝酸溶液中で加熱後に導電性のより向上したカーボンナノチューブ組成物が得られる。
さらに、前記多層カーボンナノチューブ組成物が2層のカーボンナノチューブ組成物である場合には、任意のカーボンナノチューブ100本の中の2層カーボンナノチューブの割合は、50本以上が好ましく、より好ましくは60本以上、さらに好ましくは70本以上であり、もっとも好ましくは85本以上である。2層カーボンナノチューブ組成物中の2層カーボンナノチューブの割合が多いほど硝酸溶液中で加熱後に導電性のより向上したカーボンナノチューブ組成物が得られる。
多層カーボンナノチューブ組成物中の多層カーボンナノチューブの割合が多いほど硝酸溶液中で加熱後に導電性のより向上したカーボンナノチューブ組成物が得られ、G/D比が高いほど硝酸溶液中で加熱後に導電性のより向上したカーボンナノチューブ組成物が得られる理由については以下のように考えている。
一般に単層カーボンナノチューブは高グラファイト化度を有するカーボンナノチューブ組成物を製造しやすく、グラファイト化度が高いため、カーボンナノチューブ自体の導電性も非常に高いが、導電構造を有するグラファイトシートの層数が一枚しかないため、硝酸溶液中で加熱することによってグラファイト層に欠陥が生じてしまうと、導電構造が崩されてしまい硝酸溶液中での加熱によってカーボンナノチューブ自体の導電性が低下する傾向にある。
一方、多層カーボンナノチューブを用いた場合は、硝酸溶液中で加熱し、外層のグラファイト層に欠陥を多数生じたとしても、グラファイト化度の高い内層が残っている。その結果、グラファイト化度のより高い内層を導電層として利用し易くなり、導電性が向上する。同時に、硝酸溶液中での加熱による炭素不純物除去効果も併せてカーボンナノチューブ組成物の導電性向上に貢献する。ただし、波長633nmのラマン分光分析によるG/D比が5未満である場合には多層カーボンナノチューブ自体のグラファイト化度が低いことによる導電性の低さから、硝酸溶液中で加熱したとしても、多層カーボンナノチューブ組成物の導電性は炭素不純物除去による導電性向効果が得られるが、カーボンナノチューブ自体の導電性は高くないため、導電性向上効果は小さい。場合によってはカーボンナノチューブのグラファイト化度が低いことによって内層まで欠損を受けることによって導電性が低下する。そのため、結果としては必ずしも導電性が向上するわけではなく、むしろ低下する場合もある。したがって、波長633nmのラマン分光分析によるG/D比が5以上である多層カーボンナノチューブ組成物を使用する必要があり、G/D比は高ければ高いほど、硝酸溶液中で加熱後、グラファイト化度の高い内層が露出されることになるので好ましい。
ここで、ラマン分光分析によるG/D比のGバンドはカーボンナノチューブのグラファイト層由来のものであり、Dバンドは、カーボンナノチューブ以外のアモルファスカーボン等の不定形炭素、またはカーボンナノチューブのグラファイト層の欠損やアモルファス部分等の由来であるが、本発明ではどちらの場合でもラマン分光分析が指標となりえる。なぜなら、Dバンドがカーボンナノチューブ以外のアモルファスカーボン等の不定形炭素由来であった場合、G/D比が低い時、カーボンナノチューブ組成物中のアモルファスカーボン等の炭素不純物が多いため、硝酸溶液中で加熱する際の加熱時間が長い時間必要となり、長時間硝酸処理することによってカーボンナノチューブ自体の欠損が多くなってしまい、内層まで欠損が進み、カーボンナノチューブ自体の導電性が損なわれてしまう。Dバンドがカーボンナノチューブのグラファイト層の欠損やアモルファス部分等の由来の場合、硝酸溶液中での加熱によって外層に欠損が生じて内層が露出しても、内層のグラファイト化度も低いため、導電性はあまり向上しない。または内層も硝酸によって欠損を生じてしまうため、不純物の量に関係なく、カーボンナノチューブ自体が硝酸によって導電性を低下させられる。したがって、G/D比のDバンドの由来に関係せず、G/D比の高いカーボンナノチューブを使用することが好ましい。
またG/D比については、カーボンナノチューブ組成物中のカーボンナノチューブの層数が少ないほど、G/D比の高いカーボンナノチューブ組成物を用いるのが好ましい。なぜなら、層数が少ないほど内側に保護されているカーボンナノチューブの数が少ないため、G/D比が低いと、硝酸処理によって欠損がすぐに内層に達してしまい、最終的に欠損の少ない内層が残らなくなってしまうからである。また、G/D比が高いほど、硝酸処理後にグラファイト化度の高い内層が残るため、導電性の高いカーボンナノチューブ組成物が得られる。例えば、カーボンナノチューブがグラファイト化度の高い2層カーボンナノチューブである場合、内層は外層によって保護されている状態であるため、硝酸溶液中で加熱して外層が官能基化を受ける、欠損を生じる等のことがおこっても、グラファイト化度の高い内層はグラファイト構造に欠損をほとんど生じることが無く導電構造が維持されたままとなる。電気は、導電構造の崩れていない露出された内層を流れることが出来るため、カーボンナノチューブの導電性は向上し、カーボンナノチューブ以外の炭素不純物も除去されるため更に導電性は向上する。そのため、カーボンナノチューブ組成物が2層カーボンナノチューブ組成物であった場合、波長633nmのラマン分光分析によるG/D比は多層カーボンナノチューブよりも高い20以上であることが好ましく、硝酸溶液中で加熱することにより導電性を向上させたカーボンナノチューブ組成物を得るには、G/D比が30以上であることがより好ましく、G/D比が40以上であることがより好適である。
また、本発明の効果を得るためには、G/D比5以上の多層カーボンナノチューブ組成物を用いることが必要であるが、2〜5層のカーボンナノチューブの割合が多いことが好ましく、さらに好ましくは2層カーボンナノチューブの割合が多いことが好適である。なぜなら、カーボンナノチューブの層数が少ない方が、一般にグラファイト化度が高くなる傾向にあるため、前記理由により導電性向上効果も大きくなるからである。
本発明で多層カーボンナノチューブ組成物の導電性向上のために硝酸溶液中で加熱するのが好適である理由は定かではないが、以下のように考えている。
液相中での炭素不純物を除去するための方法、薬液は種々存在するが、酸化力が硝酸よりも強い酸や酸化剤を使用した場合、炭素不純物の除去とともに多層カーボンナノチューブの外層の破壊が進みすぎて内層も欠損が生じてしまうことが多い。また、処理条件を調整して内層が欠損を受けない条件にした場合は外層が断片化した状態で反応を止めることになり、外層の断片化した物質が炭素不純物となり、カーボンナノチューブ組成物としての導電性は低下してしまう場合もある。酸化力が硝酸より強い酸としては濃硝酸と濃硫酸からなる混酸や発煙硫酸などがあげられる。
一方、電子はカーボンナノチューブの綺麗なグラファイト層よりも欠損部分からの方が放出され易いため、意図的に欠損を多くして導電性を高める方法が報告されている。この様に多くの欠損を導入するのみの方法ではカーボンナノチューブの密度が高く、カーボンナノチューブ同士の接点が非常に多い場合には有効であるが、カーボンナノチューブ自体の導電性は低下するため、高い透明性と導電性の両立が難しい。
硝酸は所定の温度で加熱することによって、カーボンナノチューブの外層を適度に傷つけ、外層に比べてグラファイト化度のより高い内層を部分的に露出し、炭素不純物であるアモルファスカーボンや粒子状炭素不純物を分解除去することによって、導電性の向上したカーボンナノチューブ組成物が得られると考えられる。
カーボンナノチューブが欠損を受けすぎて、波長633nmによるラマン分光分析によるG/D比が4よりも低くなると、透明導電性という観点では性能が低下する傾向が観られる。従って硝酸処理後のカーボンナノチューブのG/D比は4以上であることが好ましい。
多層カーボンナノチューブ組成物を硝酸溶液中で加熱する際の温度は90℃以上が好ましく、より好ましくは100℃以上、最も好ましくは硝酸溶液が還流した状態になる温度にするのが好適である。硝酸溶液の還流温度は、一般に硝酸濃度が高いほど還流温度も高くなる。
硝酸溶液を加熱する方法は、硝酸溶液を入れた容器をオイルバス、ウォーターバス、サンドバスに浸して加熱する、容器に電熱線を巻き付けて加熱する、直火で加熱するなど、容器中の溶液部分が加熱されている状態になればどの様な方法でもかまわないが、効率の点では溶液全体が均一に加熱される様な状態が好適である。また、硝酸溶液は攪拌しながら加熱しても攪拌せずに加熱してもかまわないが、効率の点で溶液が攪拌されている状態で加熱をするのが好ましい。攪拌しない場合は反応時間を攪拌する場合よりも長くするのがよい。
多層カーボンナノチューブ組成物を硝酸溶液中で加熱する際の硝酸の濃度は30wt%以上であることが好ましく、より好ましくは45wt%以上、さらに好ましくは55wt%以上であることが好適である。硝酸の濃度が30wt%より低いと炭素不純物が硝酸によって分解されるのに時間が長くなる。
多層カーボンナノチューブ組成物を硝酸溶液中で加熱する際の時間については、通常、硝酸溶液の硝酸濃度と加熱温度によって調整され、硝酸の濃度が低いほど時間も長く設定される。また、加熱する温度が低い場合は時間を長く調整し、加熱する温度が高ければ時間を短くすることができる。また、本発明で規定するG/D比以上のカーボンナノチューブ組成物を硝酸溶液中で加熱するにあたり、多層カーボンナノチューブ組成物中のカーボンナノチューブ以外の炭素不純物が少ない場合には加熱する時間は短く調整し、炭素不純物が多い場合には、加熱する時間は長く調整することが好ましい。
一方、気相中で酸化性または還元性の気体にカーボンナノチューブ組成物をさらす方法では、温度、時間を調整しても、硝酸を用いた時ほど導電性向上に適度な調整が難しい。気相中での反応はカーボンナノチューブ組成物中の層数分布を制御するのに向いている。
本発明中の波長633nmのラマン分光分析によるGバンドとDバンドの高さ比(G/D比)が5以上である2〜5層のカーボンナノチューブ組成物は、例えば単〜5層のカーボンナノチューブを含んでいるカーボンナノチューブ組成物を、酸素存在下で加熱することによって得ることができる。また、G/D比20以上の2層カーボンナノチューブ組成物は、例えば単〜2層のカーボンナノチューブを含んでいるカーボンナノチューブ組成物を、酸素存在下で加熱することによって得ることができる。
加熱温度は、同工程に供する多層カーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ組成物を示差熱分析したときのカーボンナノチューブの燃焼温度ピーク±50℃の温度で行うことが好ましい。また、カーボンナノチューブは通常石英管を反応管として合成される場合が多く、同工程を反応管中でおこなう場合は、1200℃以下であるのが好ましく、より好ましくは1000℃以下でおこなうのが好適である。1200℃を越える温度でおこなう場合は使用する装置の材質を適宜選択することが望ましい。同工程で原料となるカーボンナノチューブ組成物を酸素にさらすことによって、合成時に生成した屈曲や欠損の多い単層カーボンナノチューブの一部または全部が消失するため、この工程を経たカーボンナノチューブ組成物は炭素不純物や単層カーボンナノチューブが減少することにより、カーボンナノチューブ総体中の2層以上のカーボンナノチューブの割合が増加し、通常はG/D比も向上した組成物となる。本発明においては向上した結果5以上となる2〜5層のカーボンナノチューブ組成物、向上した結果20以上となる2層カーボンナノチューブ組成物を用いればよい。
また、酸素にカーボンナノチューブ組成物をさらす工程でカーボンナノチューブが全て消失してしまうことを防ぐには、前記温度で処理を行う場合、酸素に不活性ガスを混合することによって希釈するか、減圧状態で用いる、または、不活性ガスを混合した前記気体を減圧して使用することが好ましく、不活性ガスは2種類以上混合してもかまわない。不活性ガスとしては、ヘリウム、アルゴン、窒素などが挙げられ、なかでも汎用性の点から窒素を用いるのが好ましい。また、酸素を含む気体としては、汎用性の点では空気を用いるのが好適であり、空気に前記不活性ガスを混合する、減圧にして用いる、不活性ガスを混合して減圧にする等の操作をして使用しても良い。
また、酸素を含む気体にカーボンナノチューブ組成物をさらすとき、カーボンナノチューブ組成物は触媒を除去した後のカーボンナノチューブ組成物でも構わないが、触媒が付いた状態でカーボンナノチューブ組成物を前記気体にさらすのが好ましい。
前記温度で酸素を含む気体にカーボンナノチューブ組成物をさらした時、カーボンナノチューブ組成物が全て消失してしまわない酸素濃度であれば、濃度に特に制限はないが、濃度に応じて温度と時間を調整する必要があり、濃度が高いほど、温度が低く、濃度が低いほど温度は高く設定するのが好適である。濃度、温度、時間の調整は、カーボンナノチューブ組成物の減少量が前記気体にさらす前と比べて1重量%から99重量%となる様に調整するのが好ましく、減少量が5重量%から99重量%となる様調整するのがより好ましく、さらに好ましくは、減少量が15重量%から99重量%となる様調整するのが好適であり、最も好ましくは減少量が30重量%から99重量%となるように調整するのが好適である。
酸素存在下で加熱する温度は300〜1000℃が好ましく、更に好ましくは400〜900℃である。カーボンナノチューブの酸素存在下での反応温度は雰囲気ガスに影響されるため、特に好ましい温度は雰囲気により異なる。具体的には、例えば酸素と接触させる場合には400〜900℃でおこなうのが好ましい。
また酸素と不活性ガスなどの混合気体を用いる場合、酸素の濃度が高い場合は比較的低い温度で、酸素の濃度が低い場合は比較的高い温度で酸化処理することが好ましい。また、酸素と不活性ガスとの混合気体を間欠的に接触させて処理を行うこともできるが、この場合、酸素の濃度が高くても、比較的高温(例えば500〜1200℃、好ましくはカーボンナノチューブの合成後に合成温度を維持した温度であることが好ましい。)で処理が可能である。なぜなら、間欠的に酸素を流してカーボンナノチューブの酸化反応が起こったとしても、酸素を消費した時点ですぐに酸化反応が停止してしまうためである。このようにすることで酸化反応を制御することが可能である。
また、本発明規定のG/D比5以上の多層カーボンナノチューブ組成物を得る方法としては、多層カーボンナノチューブを含む組成物を酸素存在下で加熱する他、酸素以外の酸化性または還元性を有する気体にさらす方法も考えられ、酸化性または還元性を有する気体として水素、オゾン、一酸化炭素、二酸化炭素等を用いる場合、前記温度でさらした時、カーボンナノチューブが全て消失してしまわない濃度であれば、濃度に特に制限はないが、安全性の観点から水素を用いる場合、減圧して行うか、爆発限界以下の水素濃度になるよう不活性ガスを混合して用いるか、またはその混合気体を減圧して用いるのが好ましい。一酸化炭素、二酸化炭素を用いる場合には特に制限はないが、オゾンを用いる場合、減圧とするか、10vol%以下のオゾン濃度になるよう不活性ガスを混合するか不活性ガスを混合後、減圧にして使用するのが好ましい。
酸化性または還元性を有する気体にさらす温度は300〜1000℃が好ましく、更に好ましくは400〜900℃である。カーボンナノチューブの気相での反応温度は雰囲気ガスに影響されるため、特に好ましい温度は雰囲気により異なる。
また気相として酸化性または還元性を有する気体と不活性ガスなどの混合気体を用いる場合、酸化性ガスまたは還元性ガスの濃度が高い場合は比較的低い温度で、酸化性ガスまたは還元性ガスの濃度が低い場合は比較的高い温度で酸化処理することが好ましい。また、酸化性ガス、還元性ガス、または不活性ガスとの混合気体を間欠的に接触させて処理を行うこともできるが、この場合は、酸化性ガス、還元性ガスの濃度が高くても、比較的高温(例えば500〜1200℃、好ましくはカーボンナノチューブの合成後に合成温度を維持した温度であることが好ましい。)で処理が可能である。なぜなら、間欠的に酸化性ガス、還元性ガスを流してカーボンナノチューブとの反応が起こったとしても、酸化性ガス、還元性ガス、を消費した時点ですぐに反応が停止してしまうためである。このようにすることで反応を制御することが可能である。
より好ましくは、前記酸化性、還元性を示す気体として空気を用いるのが好適であり、示差熱分析でカーボンナノチューブの燃焼温度ピーク±50℃の温度で空気にさらすのが好適である。カーボンナノチューブ組成物の燃焼ピーク温度は大気下で熱分析することで測定が可能である。大気下で熱分析するとは、例えば約10mgの試料を示唆熱分析装置(例えば島津製作所製 DTG-60)に設置し、空気中10℃/分の昇温速度にて室温から900℃まで昇温する。その時のDTG曲線から試料の燃焼時の発熱ピーク温度を求めることが可能である。これにより酸素存在下、求めた燃焼ピーク温度±50℃の範囲で加熱することにより、製造したカーボンナノチューブ組成物中の不純物や耐久性の低い単層カーボンナノチューブを除去することが可能である。これにより2層以上のカーボンナノチューブの割合を向上させることができる。この時、燃焼ピークよりあまりにも低い温度、−50℃未満で加熱を行っても不純物や単層カーボンナノチューブは焼成されないために、除去されず2層以上のカーボンナノチューブの純度の向上性は低い。また、燃焼温度よりもあまりにも高い温度、50℃超で焼成処理をおこなっても、今度は生成カーボンナノチューブ全てが焼成されて焼失してしまう。よってカーボンナノチューブの燃焼ピーク温度付近で焼成するのが好ましく、更に好ましくは、示差熱分析でカーボンナノチューブの燃焼温度ピーク−50℃以上、燃焼温度ピーク+20℃に当たる温度以下の温度範囲で空気にさらすのが好適である。更に好ましくは燃焼ピーク温度±20℃の範囲である。
最も好ましくは示差熱分析でカーボンナノチューブの燃焼温度ピーク−10℃の±5℃の温度範囲、すなわち示差熱分析でカーボンナノチューブの燃焼温度ピーク−15℃以上燃焼温度ピーク−5℃の温度範囲で空気にさらすのが好適である。ただし、空気を不活性ガスで希釈した場合や、減圧下で用いる場合にはこの限りではなく、空気の濃度に応じてさらす温度と時間を調整する必要がある。また、前記酸化性、または還元性の気体にさらす方法は、前記気体に間欠的にさらしてもかまわない。
酸化性、または還元性の気体にさらす温度が低いときは酸化性、または還元性の気体にさらす処理時間を長く、酸化性、または還元性の気体にさらす温度が高いときは酸化性、または還元性の気体にさらす時間を短くするなどして、反応条件を調整することができる。よって酸化性、または還元性の気体にさらす時間は本発明で用いるG/D比のカーボンナノチューブ組成物が得られる限り特に限定されないが、必要なカーボンナノチューブが全て消失してしまわないよう留意する。通常は5分から24時間、好ましくは10分から12時間、更に好ましくは30分から5時間である。
また、前記工程の加熱温度、時間を調整することにより、2層カーボンナノチューブの割合が、任意のカーボンナノチューブ100本中、50本以上であり、波長633nmのラマン分光分析によるG/D比が20以上であるカーボンナノチューブ組成物を得ることも可能であるが、カーボンナノチューブ組成物中のカーボンナノチューブの層数の割合、直径、長さについては合成の段階でも調整が可能である。
以下で用いるカーボンナノチューブ組成物の製造方法は、本発明で規定したG/D比5以上の多層カーボンナノチューブ組成物(特に2層カーボンナノチューブの場合はG/D比が20以上であることが好ましい)が得られる限り限定はないが、例えば縦型流動床型反応器中、反応器の水平断面方向全面に流動床を形成した粉末状の触媒に、該反応器内に炭素含有化合物を鉛直方向に流通させることにより該炭素含有化合物を500〜1200℃で接触させることによって製造することができる。また、本発明中の触媒とは触媒金属、触媒金属が担体上に担持された総体物または触媒金属と担体の混合物のことであり、他の成分が配合された組成物、あるいは他の成分と複合した複合体中に含まれる場合でも触媒金属が担体上に担持または混合されていれば、触媒と解釈する。
粉末状の触媒としては酸化物担体が好ましく、酸化物担体としては、周期表で2属、12〜16属に示される典型金属のうち、炭素と500℃以上で固溶体を形成しない金属酸化物であれば、適宜使用可能であるが、酸化マグネシウムを用いるのが好適である。また、触媒金属としては、元素周期表に定められた1族〜16族より選ばれる典型金属元素、遷移金属元素を少なくとも1種類以上含む金属元素を挙げることができる。中でも、触媒金属としては、Co、Fe、Niが好ましい。より好ましくはFeを用いるのが好適である。
触媒である鉄を、担体であるマグネシアに担持させることにより、鉄の粒径をコントロールしやすく、また高密度で鉄が存在しても高温下でシンタリングが起こりにくい。そのため、高品質なカーボンナノチューブを効率よく多量に合成することができる。さらに、マグネシアは酸性水溶液に溶けるので、担体、触媒、カーボンナノチューブの混合物を酸性溶液にさらすだけでマグネシアおよび鉄の両者を取り除くこともできるため、精製工程を簡便化することができる。
マグネシアは市販品を使用しても良いし、合成したものを使用しても良い。マグネシアの好ましい製法としては、金属マグネシウムを空気中で加熱する、水酸化マグネシウムを850℃以上に加熱する、炭酸水酸化マグネシウム3MgCO3・Mg(OH)2・3H2Oを950℃以上に加熱する等の方法がある。
マグネシアの中でも軽質マグネシアが好ましい。軽質マグネシアはかさ密度が小さいマグネシアであり、具体的には0.20g/mL以下であることが好ましく、0.05〜0.16g/mLであることが触媒の流動性の点から好ましい。かさ密度とは単位かさ体積あたりの粉体質量のことである。以下にかさ密度の測定方法を示す。粉体のかさ密度は測定時の温度、湿度に影響されることがある。ここで言うかさ密度は、温度20±10℃、湿度60±10%で測定したときの値である。測定は、50mLメスシリンダーを測定容器として用い、メスシリンダーの底を軽く叩きながら、予め定めた容積を占めるように粉末を加える。かさ密度の測定に際しては10mLの粉末を加えるものとするが、測定可能な試料が不足している場合には、可能な限り10mLに近い量でおこなう。その後、メスシリンダーの底を床面1cmの高さから落とすことを20回繰り返した後、目視にて粉末が占める容積値の変化率が±0.2mL(試料が少ない場合には±2%)以内であることを確認し、詰める操作を終了する。もし容積値に目視にて±0.2mL(±2%)を越える変化があれば、メスシリンダーの底を軽く叩きながら粉末を追加し、再度メスシリンダーの底を床面1cmの高さから落とすことを20回繰り返し、目視にて粉末が占める容積値に±0.2mL(±2%)を越える変化が無いことを確認して操作を終了する。上記の方法で詰めた一定量の粉末の重量を求めることを3回繰り返し、その平均重量を粉末が占める容積で割った値(=重量(g)/体積(mL))を粉末のかさ密度とする。担体に担持する鉄は、0価の状態とは限らない。反応中では0価の金属状態になっていると推定はできるが、広く鉄を含む化合物または鉄種でよい。例えば、ギ酸鉄、酢酸鉄、トリフルオロ酢酸鉄、クエン酸アンモニウム鉄、硝酸鉄、硫酸鉄、ハロゲンか物鉄などの有機塩、エチレンジアミン4酢酸錯体やアセチルアセトナート錯体のような錯塩などが用いられる。また、鉄は微粒子であることが好ましい。微粒子の粒径は0.5〜10nmであることが好ましい。鉄が微粒子であると外径の細いカーボンナノチューブが生成しやすい。
マグネシアに鉄を担持させる方法は特に限定されない。例えば、担持させたい鉄の塩を溶解させた非水溶液(例えばエタノール溶液)中または水溶液中に、マグネシアを含浸し、攪拌や超音波照射などにより十分に分散混合した後、乾燥させる(含浸法)。さらに空気、酸素、窒素、水素、不活性ガスおよびそれらの混合ガスから撰ばれたガス中または真空中で高温(300〜1000℃)で加熱することにより、マグネシアに鉄を担持させてもよい。
鉄担持量が多いほどカーボンナノチューブの収量は上がるが、多すぎると鉄の粒子径が大きくなり、生成するカーボンナノチューブの外径が太くなる。鉄担持量が少ないと、担持される鉄の粒子径が小さくなり、外径の細いカーボンナノチューブが得られるが、収率が低くなる傾向がある。最適な鉄担持量は、マグネシアの細孔容量や外表面積、担持方法によって異なってくるが、マグネシアに対して0.1〜20重量%の鉄を担持することが好ましく、特に0.2〜10重量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.3〜5重量%であることが好適である。
上記方法において縦型流動床反応容器とは、鉛直方向(以下「縦方向」と称する場合もある)に設置された反応器を有し、該反応器の一方の端部から他方の端部に向けた方向に炭素含有化合物が流通し、該炭素含有化合物が、カーボンナノチューブ製造用触媒で形成される触媒層を通過する態様で流通し得る機構を備えたものである。反応器は、例えば管形状を有する反応器を好ましく用いることができる。なお、上記において、鉛直方向とは、鉛直方向に対して若干傾斜角度を有する方向をも含む(例えば水平面に対し90°±15°、好ましくは90°±10°)。なお、好ましいのは鉛直方向である。なお、炭素含有化合物の供給部および排出部は、必ずしも反応器の端部である必要はなく、炭素含有化合物が前記方向に流通し、その流通過程で触媒層を通過すればよい。
また、触媒は、縦型流動床反応器中、反応器の水平断面方向全体に存在させた状態にあり、反応時には流動床を形成した状態とする。この様にすることにより、鉄をマグネシアの担持した触媒と炭素含有化合物を有効に接触させることができる。横型反応器の場合、触媒と炭素含有化合物を有効に接触させるため、炭素含有化合物の流れに対して垂直方向で反応器の断面全体に存在させた状態にするには、重力がかかる関係上、触媒を左右から挟み込む必要がある。しかし、カーボンナノチューブ組成物の生成反応の場合、反応するに従って触媒上にカーボンナノチューブが生成して、触媒の体積が増加するので、左右から触媒を挟み込む方法は好ましくない。また、横型で流動床を形成させることは難しい。反応器を縦型にし、反応器内にガスが透過できる台を設置して、その上に触媒を置くことによって、触媒を両側から挟み込むことなく、反応器の断面方向に均一に触媒を存在させることができ、炭素含有化合物を鉛直方向に流通させる際に流動床を形成させることもできる。上記方法において、触媒を縦型反応器の水平断面方向全面に存在させた状態とは、水平断面方向に全体に触媒が広がっていて触媒底部の台が見えない状態を言う。この様な状態の好ましい実施態様としては、例えば、次のような態様がある。
A. 反応器内にガスが透過できる触媒を置く台(セラミックスフィルターなど)を置き、そこに所定の厚みで触媒を充填する。この触媒層の上下が多少凹凸していてもかまわない。
B. 反応器上部から触媒を噴霧などで落とし、触媒粉末がガスを介して反応器水平断面方向に均一に存在している状態。
縦型流動床反応器の一例としては上述Bのような触媒を反応器上部から噴霧によって落とす態様や、一般に沸騰床型と言われる触媒が流動する態様(上述Aに準ずる方法)が挙げられる。また、固定床型としてはAの様な態様が挙げられる。
流動床型は、触媒を連続的に供給し、反応後の触媒とカーボンナノチューブ組成物を含む集合体を連続的に取り出すことにより、連続的な合成が可能であり、カーボンナノチューブ組成物を効率よく得ることができ好ましい。
また、上記方法で用いる触媒金属および触媒担体は、波長633nmのラマン分光分析によるG/D比が5以上である多層カーボンナノチューブ組成物または多層カーボンナノチューブ中の2〜5層のカーボンナノチューブの割合が、任意のカーボンナノチューブ100本中、50本以上であるカーボンナノチューブ組成物が得られるならば特に限定されず、合成後に例えば酸素存在下で加熱する等の、何らかの処理をすることによって上記カーボンナノチューブ組成物が得られるならば特に限定されず、波長633nmのラマン分光分析によるG/D比が20以上であり、多層カーボンナノチューブ中の2層のカーボンナノチューブの割合が、任意のカーボンナノチューブ100本中、50本以上であるカーボンナノチューブ組成物が得られる場合も制限されないが、触媒の担体としてマグネシアを用いるのが好ましい。その理由は、マグネシアはその粒子特性(比重、かさ密度、表面電荷等)から、非常に流動性が良く、特に流動床型反応器でカーボンナノチューブ組成物を合成するのに適している。マグネシアを触媒担体とした場合、流動床型でカーボンナノチューブ組成物を合成すると流動化状態が良好なことから長いカーボンナノチューブが生成しやすい。ここで定義する長いカーボンナノチューブとは、平均の長さが1μm以上のカーボンナノチューブのことである。流動床型反応において流動性が良好なことから原料の炭素含有化合物と触媒が均一に効率よく接触するためにカーボンナノチューブ合成反応が均一に行われ、アモルファスカーボンなどの不純物による触媒被覆が抑制され、触媒活性が長く続くために、この様な長いカーボンナノチューブが得られると考えられる。
縦型反応器とは対照的に、横型反応器は横方向(水平方向)に設置された反応器内に、石英板上に置かれた触媒が設置され、該触媒上を炭素含有化合物が通過して接触、反応する態様の反応装置をさす。この場合、触媒表面ではカーボンナノチューブが生成するが、触媒内部には炭素含有化合物が到達しないためにほとんど反応しない。これに対して、縦型反応容器では触媒全体に原料の炭素含有化合物が接触することが可能となるため、効率的に、多量のカーボンナノチューブ組成物を合成することが可能である。
反応器は耐熱性であることが好ましく、石英製、アルミナ製等の耐熱材質からなることが好ましい。
反応器に設置された触媒層の下部、もしくは上部から炭素含有化合物を通過させて、触媒と接触させ、反応させることによりカーボンナノチューブ組成物を精製する。
触媒と炭素含有化合物を接触させる温度は、600〜1100℃とすることがより好ましく、さらに好ましくは700℃〜1000℃の範囲である。温度が600℃より低いと、カーボンナノチューブ組成物の収率が悪くなる。また温度が1100℃よりも高いと、使用する反応器の材質に制約があると共に、カーボンナノチューブ同士の接合が始まり、カーボンナノチューブの形状のコントロールが困難になる。炭素含有化合物を接触させながら反応器を反応温度にしてもよいし、熱による前処理終了後、反応器を反応温度にしてから、炭素含有化合物の供給を開始しても良い。
カーボンナノチューブ組成物を生成させる反応の前に、触媒に熱による前処理を行ってもよい。熱による前処理の時間は、特に限定しないが、長すぎるとマグネシア上で金属の凝集が起こり、それに伴い外径の太いカーボンナノチューブが生成することがあるので、120分以内であることが好ましい。前処理の温度は、触媒活性が発揮されれば反応温度以下でもかまわないし、反応温度と同じでも、反応温度以上でも構わない。熱による前処理を行うことにより、触媒をより活性な状態にすることもある。
熱による前処理、およびカーボンナノチューブ組成物を生成させる反応は、減圧もしくは大気圧で行うことが好ましい。
触媒と炭素含有化合物の接触を減圧で行う場合は、真空ポンプなどで反応系を減圧にすることができる。また大気圧で前処理や反応を行う場合は、炭素含有混合物と希釈ガスを混合した、混合ガスとして触媒を接触させてもよい。
希釈ガスとしては、特に限定されないが、酸素ガス以外のものが好ましく使用される。酸素は爆発の可能性があるため通常は使用しないが、爆発範囲外であれば使用しても構わない。希釈ガスとしては、窒素、アルゴン、水素、ヘリウム等が好ましく使用される。これらのガスは炭素含有化合物の線速や濃度のコントロールおよびキャリアガスとして効果がある。水素は、触媒金属の活性化に効果があるので好ましい。アルゴンの如き分子量が大きいガスはアニーリング効果が大きく、アニーリングを目的とする場合には好ましい。特に窒素およびアルゴンが好ましい。
使用する炭素含有化合物は特に限定されないが、好ましくは炭化水素または酸素含有炭素化合物を使うとよい。炭化水素は芳香族であっても、非芳香族であってもよい。芳香族の炭化水素では、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、アントラセンまたはこれらの混合物などを使用することができる。また、非芳香族の炭化水素では、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、エチレン、プロピレンもしくはアセチレン、またはこれらの混合物等を使用することができる。酸素含有炭素化合物としては、例えばメタノールもしくはエタノール、プロパノール、ブタノールのごときアルコール類、アセトンのごときケトン類、およびホルムアルデヒドもしくはアセトアルデヒドのごときアルデヒド類、トリオキサン、ジオキサン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルのごときエーテル類、酢酸エチルなどのエステル類、一酸化炭素またはこれらの混合物であってもよい。これらの中でも、特に、メタン、エタン、アセチレン、プロパンおよびプロピレンが最も好ましい炭素含有化合物である。これらは常温、常圧中気体であるため、ガスとして供給量を規定して反応に供しやすい。その他の炭素含有化合物は常圧で反応を行う場合、気化などの工程を追加する必要がある。中でもメタンを用いた場合はカーボンナノチューブ組成物中の2層カーボンナノチューブの割合が多くなる。
本発明のカーボンナノチューブ組成物は分散媒に分散させて分散液とすることができ、得られたカーボンナノチューブ組成物を分散させた分散液とし、その分散液を塗布したフィルムの光透過率が85%以上、表面抵抗値1×10Ω/□未満であるフィルムを製造することが可能である。その時の本発明のカーボンナノチューブ組成物は乾燥した状態でも構わないが、カーボンナノチューブ組成物を硝酸溶液中で加熱した後、乾燥させることなく分散媒と混合してカーボンナノチューブ組成物を分散させることも可能であり、その場合カーボンナノチューブ組成物の分散性が非常に良くなるため好ましい。カーボンナノチューブ組成物が一旦乾燥してしまうと、強固なバンドルを形成してしまい、分散させることが困難になる傾向がある。カーボンナノチューブ組成物が一旦乾燥すると混合したカーボンナノチューブ組成物を例えば超音波ホモジナイザー等を利用してバンドルをほぐそうとしても多大なエネルギーと時間を要するため、分散させている最中にカーボンナノチューブ自体もダメージを受けやすい。乾燥させることなく分散させる場合では、カーボンナノチューブは乾燥時ほど強固なバンドルを形成していないため、容易に分散可能であるため効率が良く、分散に要するエネルギー、時間も少なくてすむため、分散中にカーボンナノチューブ自体が受けるダメージも少ない。したがって、高度な導電性を有する材料形成のための分散液製造には、カーボンナノチューブ組成物を乾燥させることなく分散させる効果が大きい。
この分散液には界面活性剤、各種高分子材料等の添加剤を含有させることができる。
上記界面活性剤やある種の高分子材料は、カーボンナノチューブの分散能や分散安定化能等を向上させるのに役立つ。界面活性剤としては、イオン性界面活性剤のものと非イオン性界面活性剤のものに分けられるが、本発明ではいずれの界面活性剤を用いることも可能である。イオン性界面活性剤としては、例えば以下のような界面活性剤があげられる。かかる界面活性剤は単独でもしくは2種以上を混合して用いることができる。
イオン性界面活性剤は、陽イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤および陰イオン性界面活性剤にわけられる。陽イオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩などがあげられる。両イオン性界面活性剤としては、アルキルベタイン系界面活性剤、アミンオキサイド系界面活性剤がある。陰イオン性界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルフェニルエーテルスルホン酸塩等の芳香族スルホン酸系界面活性剤、モノソープ系アニオン性界面活性剤、エーテルサルフェート系界面活性剤、フォスフェート系界面活性剤、カルボン酸系界面活性剤であり、中でも、分散能、分散安定能、高濃度化に優れることから、芳香環を含むもの、すなわち芳香族系イオン性界面活性剤が好ましく、特にアルキルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルフェニルエーテルスルホン酸塩等の芳香族系イオン性界面活性剤が好ましい。
非イオン性界面活性剤としては、例えば以下のような界面活性剤をあげられる。かかる界面活性剤は単独でもしくは2種以上を混合して用いることができる。
非イオン性界面活性剤の例としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの糖エステル系界面活性剤、ポリオキシエチレン樹脂酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエチルなどの脂肪酸エステル系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリプロピレングリコールなどのエーテル系界面活性剤、ポリオキシアルキレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルジブチルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルベンジルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルビスフェニルエーテル、ポリオキシアルキルクミルフェニルエーテル等の芳香族系非イオン性界面活性剤があげられる。中でも、分散能、分散安定能、高濃度化に優れることから、芳香族系非イオン性界面活性剤が好ましく、中でもポリオキシエチレンフェニルエーテルが好ましい。
界面活性剤以外にも各種高分子材料もカーボンナノチューブの他に含有されることができる剤として用いることができる。例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩等の水溶性ポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(Na−CMC)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アミロース、シクロアミロース、キトサン等の糖類ポリマー等がある。またポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマーおよびそれらの誘導体もカーボンナノチューブの分散能や分散安定化能等を向上させるために使用できる。なかでも、導電性ポリマーおよびそれらの誘導体は、上記目的以外にもカーボンナノチューブの導電特性を効率的に発揮するために用いることもできる。
また導電性ポリマーは水溶性でも非水溶性でも用いることができる。通常、非水溶性の導電ポリマーが多く知られているが、高分子中にカルボン酸、スルホン酸などの親水性基を有するものや、非水溶性導電ポリマーに酸をドープして水溶性に変化した水溶性導電ポリマーも使用することが可能である。
カーボンナノチューブの分散媒は特に限定されず、水系溶媒でも良いし非水系溶媒でも良い。非水系溶媒としては、炭化水素類(トルエン、キシレン等)、塩素含有炭化水素類(メチレンクロリド、クロロホルム、クロロベンゼン等)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ等)、エーテルアルコール(エトキシエタノール、メトキシエトキシエタノール等)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル等)、ケトン類(シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等)、アルコール類(エタノール、イソプロパノール、フェノール等)、低級カルボン酸(酢酸等)、アミン類(トリエチルアミン、トリメタノールアミン等)、窒素含有極性溶媒(N、N−ジメチルホルムアミド、ニトロメタン、N−メチルピロリドン等)、硫黄化合物類(ジメチルスルホキシド等)などを用いることができる。
これらのなかでも分散媒としては、水、アルコール、トルエン、アセトン、エーテルおよびそれらを組み合わせた溶媒を含有する分散媒であることが好ましい。水系溶媒が必要である場合、および後述するようにバインダーを用いる場合であって、そのバインダーが無機ポリマー系バインダーの場合には、水、アルコール類、アミン類などの極性溶媒が使用される。また、バインダーとして常温で液状のものを用いる場合には、それを分散媒として用いることもできる。
上記液における各成分の配合割合は、以下のとおりである。
すなわち、カーボンナノチューブを含有する液は、液中、カーボンナノチューブを0.01重量%以上含有していることが好ましく、0.1重量%以上含有していることがより好ましい。上限としては、通常20重量%以下であることが好ましく、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下の濃度で含有していることである。
界面活性剤およびその他の添加剤の少なくとも1種の含有量としては、特に限定されるものではないが、それぞれ好ましくは、0.1〜50重量%、より好ましくは、0.2〜30重量%である。上記分散剤の少なくとも1種とカーボンナノチューブの混合比は(添加剤/カーボンナノチューブ)としては、特に限定はないが、重量比で好ましくは0.1〜20、より好ましくは0.3〜10である。また本発明のカーボンナノチューブの分散液は、分散性に優れるため、所望のカーボンナノチューブ含量よりも高濃度の分散液を作製し、溶媒で薄めて所望の濃度として使用することも可能である。溶媒としてはいかなる溶媒であってもよいが、使用目的に応じて選択される。導電性がさほど必要で無い用途は、カーボンナノチューブ濃度を薄めて使うこともあるし、最初から薄い状態で作成しても良い。
分散液やそれにバインダーなどを添加した液は、透明基材だけでなく、あらゆる被塗布部材、例えば着色基材および繊維に塗布を施すための透明被覆液としても使える。その際の被塗布部材、例えば、クリーンルームなどの床材や壁材にコーティングすれば帯電防止床壁材として使用できるし、繊維に塗布すれば帯電防止衣服やマット、カーテンなどとして使用できる。
カーボンナノチューブ分散液を調製後、基材上に塗布することで導電性フィルムを形成することができるが、カーボンナノチューブの分散液を塗布する方法は特に限定されない。公知の塗布方法、例えば吹き付け塗装、浸漬コーティング、スピンコーティング、ナイフコーティング、キスコーティング、グラビアコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、パット印刷、他の種類の印刷、またはロールコーティングなどが利用できる。また塗布は、何回行ってもよく、異なる2種類の塗布方法を組み合わせても良い。最も好ましい塗布方法は、ロールコーティングである。
このようにしてカーボンナノチューブの分散液を塗布した導電性フィルムは、液を基材に塗布した後、風乾、加熱、減圧などの方法により不要な分散媒を除去することができる。それによりカーボンナノチューブは、3次元編目構造を形成し基材に固定化される。その後、液中の成分である分散剤を適当な溶媒を用いて除去する。この操作により、電荷の分散が容易になり透明導電性フィルムの導電性が向上する。
分散剤を除去するための溶媒としては分散剤を溶解するものであれば特に制限はなく、水性溶媒でも非水性溶媒でもよい。具体的には水性溶媒であれば、水やアルコール類が挙げられ、非水性溶媒であれば、クロロホルム、アセトニトリルなどがあげられる。
上記のように液を塗布してカーボンナノチューブを含む透明導電性フィルムを形成後、このフィルムを有機または無機透明被膜を形成しうるバインダー材料でオーバーコーティングすることも好ましい。オーバーコーティングすることにより、さらなる電荷の分散や、移動に効果的である。
本発明で得られるカーボンナノチューブ組成物は、例えば以下の方法で得られた透明導電フィルムの導電性を測定することによって、硝酸溶液中の加熱で導電性が向上することを確認可能である。
カーボンナノチューブ組成物20mg、ポリスチレンスルホン酸アンモニウム60mg、水10mLの混合物を超音波ホモジナイザー処理し、続いて10000Gにて遠心処理した後、上清9mLをサンプリングしたものをフィルムに塗布し導電性を評価する。
ポリスチレンスルホン酸アンモニウムはカーボンナノチューブの分散剤として機能する。ポリスチレンスルホン酸アンモニウムの形態は粉末でも水溶液でもかまわない。水溶液を使用する場合は濃度を勘案して、ポリスチレンスルホンン酸アンモニウムが個体重量として60mgになるように加え、水として合計10mLになるように分散液を調製する。ポリスチレンスルホン酸アンモニウムはたとえばアルドリッチ社から購入することができる。その分子量は種々あるが、本測定においては平均分子量20万±2万のものを用いる。分子量は重量平均値であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)のよって、ポリスチレン換算にて測定することができる。超音波ホモジナイザー処理とは市販の超音波ホモジナイザーを用いて出力20W、氷零下で20分間、カーボンナノチューブ組成物20mg、ポリスチレンスルホン酸アンモニウム60mg、水10mLの混合物を超音波ホモジナイザー分散処理することを示す。続いて10000Gにて遠心処理するが、遠心処理は遠心分離機で10000G、15分間遠心分離操作することを示す。なお、上清のサンプリングは遠心操作の後、30分後に行うものとする。本発明のカーボンナノチューブ組成物は上記操作の後、上清9mLをサンプリングした時、上清中のカーボンナノチューブ組成物の含有量は、好ましい形態においては0.3mg/mL〜1.9mg/mLを達成することができる。この時、上清中のカーボンナノチューブ組成物量は上清の残存1mLを用いて測定するものとする。すなわち、上清9mLをサンプリングして除き、残存した1mLを、孔径1μmのメッシュを有するフィルターを用いてろ過し、その後、水洗、乾燥してカーボンナノチューブ組成物の重量を量り20mgから減算した値が、上清9mL中に含まれるカーボンナノチューブ組成物量に相当し、これに基づき、1mLあたりの含有量に換算する。
本発明のカーボンナノチューブ組成物は、カーボンナノチューブの分散液を塗布してフィルムとしたとき、光透過率が85%以上、表面抵抗値が1×10Ω/□未満のものが得られ、好ましい態様においては、上記フィルムの透過率で85〜88%、表面抵抗で1×10以上1×10Ω/□未満も達成可能である。
なお、フィルムの透過率、表面抵抗値は、次の方法で製造したときの値とする。すなわち、カーボンナノチューブ組成物の分散液は次のように調製する。カーボンナノチューブ組成物20mg、ポリスチレンスルホン酸アンモニウム(重量平均分子量20万±2万、GPCで測定、ポリスチレン換算)60mg、水10mLの混合物を超音波ホモジナイザー処理し、続いて10000Gにて遠心処理した後、上清9mLをサンプリングして分散液を調製する。この分散液の濃度を前記方法で計算して求め、カーボンナノチューブ組成物の濃度が0.09wt%になるように蒸留水で希釈し、PETフィルム(東レ(株)社製(ルミラー U46)、光透過率90.6%、15cm×10cm)上にバーコーター(No.8)を用いて塗布し、風乾した後、蒸留水にてリンスし、120℃乾燥機内で1分間乾燥させカーボンナノチューブ組成物をフィルム上に固定化する。光透過率は550nmの光源を用いて測定するが、この時導電性フィルムの光透過率は基材も含めて測定する。上記発明のカーボンナノチューブ組成物を分散液とし、塗布してフィルムとしたときの「表面抵抗値が85%以上である」とは、この時の光透過率が85%以上である。さらに本発明における前記本発明のカーボンナノチューブ組成物を分散液とし、塗布してフィルムとしたときの「表面抵抗値が1×10Ω/□未満である」とは、このときのフィルムの表面抵抗値が1×10Ω/□未満である。導電性フィルムの導電性はフィルムの表面抵抗値を測定して評価する。表面抵抗値はJISK7149準拠の4端子4探針法を用い、例えばロレスタEP MCP-T360((株)ダイアインスツルメンツ社製)にて測定することが可能である。高抵抗測定の際は、ハイレスターUP MCP-HT450((株)ダイアインスツルメンツ社製、10V、10秒)を用いて測定することが可能である。
本発明の基材となるフィルムは特に限定されない、透明性が必要な時には、透明フィルム、例えばPETフィルムを用いる。
本発明の導電性フィルムは、基材と接着させたまま使用することも出来るし、基材から剥離させ自立フィルムとして用いることも出来る。自立フィルムを作製するには、透明導電性フィルム上にさらに有機ポリマー系バインダーを塗布した後、基材を剥離すればよい。また、作製時の基材を熱分解により消失あるいは溶融させ、別の基材に導電性フィルムを転写して用いることもできる。その際は、作製時の基材の熱分解温度<転写基材の熱分解温度であることが好ましい。
本発明の導電性フィルムの厚さは、中程度の厚さから非常に薄い厚さまで種々の範囲をとることができる。例えば本発明のフィルムは約0.5nm〜約1000μmの間の厚さをとりうる。好ましい実用形態ではフィルムの厚さは約0.005μm〜約1000μmとなりうる。別の好ましい実用形態ではフィルムの厚さは約0.05μm〜約500μmである。別の好ましい実用形態ではフィルムの厚さは約1.0μm〜約200μmである。さらに別の好ましい実用形態ではフィルムの厚さは約1.0μm〜約50μmである。
かくして得られる本発明の導電性フィルムは、以下の特徴を有するものである。
(1)表面抵抗が1×10Ω/□未満であり、
(2)550nmの波長の光透過率が以下の条件を満たす。
導電性フィルムの透過率/透明基材の光透過率>0.85
好ましい態様においては、以下の特徴を有するものも製造し得る。
(1)表面抵抗が1×10Ω/□以上、5×10Ω/□未満であり、
(2)550nmの波長の光透過率が以下の条件を満たす。
0.99>導電性フィルムの透過率/透明基材の光透過率>0.90である。
また、カーボンナノチューブ組成物の分散液を製造する際、カーボンナノチューブ組成物を硝酸溶液中で加熱した後、乾燥させることなく分散媒または分散剤またはその両方を混合してカーボンナノチューブ組成物を分散させて良く、混合する順序は特に制限はなく、混合方法についてもカーボンナノチューブ組成物の分散液が得られるならば特に制限はないが、前記分散液の製造方法に準じた方法は、0.3mg/mL以上カーボンナノチューブ組成物が分散した分散液が得られるので好ましい。ここで、硝酸溶液中で加熱した後、乾燥させることなくとは、硝酸溶液中で加熱後、カーボンナノチューブ組成物がカーボン重量で99wt%以下となるように液体を保持した状態が常に保たれていることをいう。例えば、硝酸溶液中での加熱終了後、ろ過、デカンテーション等で硝酸を除去する場合、ろ過、デカンテーション後、水、アルコール、有機溶媒等の液体で洗浄する場合についても、カーボンナノチューブ組成物がカーボン重量で99wt%以下となるように液体を保持した状態が常に保たれているならば、本発明でいう上記「乾燥させることなく」に当てはまると解釈する。その際のカーボン重量の下限は特に制限が無いが、少なくとも分散液を製造する時点(分散剤、分散媒と混合する時)では、製造しようとする分散液の濃度以上に調整しておく必要はある。分散剤または分散媒と混合する際のカーボンナノチューブ組成物がカーボン重量で99wt%以下となるように液体を保持した状態として好ましい態様は、扱い易さの点から、カーボン重量が0.01〜80wt%であり、さらに好ましくは0.1〜65wt%、より好ましくは1.0〜50wt%、最も好ましくは3〜40wt%である。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、下記の実施例は例示のために示すものであって、いかなる意味においても、本発明を限定的に解釈するものとして使用してはならない。
実施例中、カーボンナノチューブの合成と各種物性評価は以下の方法で行った。
<参考例>
[触媒調製例1]
クエン酸アンモニウム鉄(緑色)(和光純薬工業社製)2.459gをメタノール(関東化学社製)500mLに溶解した。この溶液に、軽質マグネシア(岩谷社製、かさ密度は0.125g/mLであった)を100g加え、室温で60分間攪拌し、40℃から60℃で攪拌しながら減圧乾燥してメタノールを除去し、軽質マグネシア粉末に金属塩が担持された触媒を得た。
[触媒調製例2]
クエン酸アンモニウム鉄(緑色)(和光純薬工業社製)3.279gをメタノール(関東化学社製)500mLに溶解した。この溶液に、軽質マグネシア(和光純薬工業社製、かさ密度は0.16g/mLであった)を100g加え、室温で60分間攪拌し、40℃から60℃で攪拌しながら減圧乾燥してメタノールを除去し、軽質マグネシア粉末に金属塩が担持された触媒を得た。
[触媒調製例3]
酢酸鉄(アルドリッチ社製)1.62gと酢酸コバルト・4水和物(関東化学社製)2.17gとをエタノール(関東化学社製)800mlに溶解した。この溶液に、HSZ−390HUA(東ソー社製)を20g加え、超音波洗浄機で60分間処理し、80℃の恒温下でエタノールを除去して乾燥し、HSZ−390HUA粉末に金属塩が担持された触媒を得た。
[触媒調製例4]
トリフルオロ酢酸鉄(日本化学産業株式会社製)0.15gとトリフルオロ酢酸コバルト(日本化学産業株式会社製)1.35gをエタノール(関東化学社製)15mlに溶解した。この溶液に、TS−1(エヌイーケムキャット社製)を10g加え、超音波洗浄機で30分間処理し、60℃及び120℃の恒温下でエタノールを除去して乾燥し、TS−1ゼオライト粉末に金属塩が担持された触媒を得た。
[カーボンナノチューブ組成物製造例1]
図1に示した流動床縦型反応装置でカーボンナノチューブを合成した。図1は前記流動床縦型反応装置の概略図である。
反応器100は内径32mm、長さは1200mmの円筒形石英管である。中央部に石英焼結板101を具備し、石英管下方部には、不活性ガスおよび原料ガス供給ライン104、上部には廃ガスライン105および、触媒投入ライン103を具備する。さらに、反応器を任意温度に保持できるように、反応器の円周を取り囲む加熱器106を具備する。加熱器106には装置内の流動状態が確認できるよう点検口107が設けられている。
触媒12gを取り、密閉型触媒供給器102から触媒投入ライン103を通して、石英焼結板101上に触媒調製例1で示した触媒108をセットした。次いで、原料ガス供給ライン104からアルゴンガスを1000mL/分で供給開始した。反応器内をアルゴンガス雰囲気下とした後、温度を850℃に加熱した(昇温時間30分)。
850℃に到達した後、温度を保持し、原料ガス供給ライン104のアルゴン流量を2000mL/分に上げ、石英焼結板上の固体触媒の流動化を開始させた。加熱炉点検口107から流動化を確認した後、さらにメタンを95mL/分(メタン濃度4.5vol%で反応器に供給開始した。該混合ガスを90分供給した後、アルゴンガスのみの流通に切り替え、合成を終了させた。
加熱を停止させ室温まで放置し、室温になってから反応器から触媒とカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブ組成物を取り出した。
この触媒付きカーボンナノチューブ組成物の示差熱分析による燃焼ピーク温度は456℃であった。
[カーボンナノチューブ組成物製造例2]
図2に示した固定床縦型反応装置でカーボンナノチューブを合成した。図2は前記固定床縦型反応装置の概略図である。
反応器200は内径250mmの円筒形石英管である。中央部は触媒をのせた不織布が設置出来るようになっており、不活性ガスおよび原料ガス供給ライン204、上部には廃ガスライン205を具備する。触媒208の投入が出来るように石英管の上部は開閉が出来るようになっている。さらに、反応器を任意温度に保持できるように、反応器の円周を取り囲む加熱器206を具備する。
加熱器206には装置内の触媒208の状態が確認できるよう点検口207が設けられている。
上記触媒調製例2により得られた触媒10gを図2に示す気相反応装置の投入室にセットする。その後、装置を作動させて、あらかじめ反応部を850℃に加熱した反応室に装填する。反応器内は内径250mmの石英反応管であり、触媒の装填前にあらかじめアルゴンで満たしておく。装填後、5分間、反応室をアルゴンで置換しながら触媒を加熱する。次いで、原料供給ライン204から、からアルゴンガスを50L/分で供給開始した。反応器内をアルゴン雰囲気下とした後、温度を870℃に加熱した(昇温時間30分)。
870℃に到達した後、温度を保持し、原料ガス供給ライン204のアルゴン流量を3L/分にし、さらにメタンを0.14L/分で反応器に供給開始した。該混合ガスを30分供給した後、アルゴンガスのみの流通に切り替え、合成を終了させた。
加熱を停止させ室温まで放置し、室温になってから反応器から触媒とカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブ組成物を取り出した。
この触媒付きカーボンナノチューブ組成物の示差熱分析による燃焼ピーク温度は515℃であった。
[カーボンナノチューブ組成物製造例3]
上記触媒調製例3により得られた触媒10gを図2に示す気相反応装置の投入室にセットする。その後、装置を作動させて、あらかじめ反応部を850℃に加熱した反応室に装填する。反応器内は内径250mmの石英反応管であり、触媒の装填前にあらかじめアルゴンで満たしておく。装填後、5分間、反応室をアルゴンで置換しながら触媒を加熱する。次いで、原料供給ライン204から、1.0L/分の流量でアルゴンを供給し、反応器内を置換する。次に、反応室を減圧にしてエタノールを供給する。アルゴンの供給を停止し、反応室に連結された真空ポンプを作動させて、反応室を減圧にする。この時反応室の排気口近くに設けられた真空計は50Paを示していた。
次に、キャリアーガスとしてアルゴンを10L/分、エタノールを1g/分で原料供給ライン204から20分間導入した。なお、反応室の排気口近くに設けた真空計は700Paであった。
反応終了後、反応器内にアルゴンを導入し、大気圧まで戻した後、触媒および生成物を回収室に回収した。
<焼成>
合成で得たカーボンナノチューブ含有組成物10.0gを、大気雰囲気で400℃(昇温時間40分)に加熱した。400℃で60分保持した後、室温まで冷却した(降温時間60分)。
<分離>
焼成後のカーボンナノチューブ含有組成物10.0gを、トルエン100mlとイオン交換水100mlを入れたビーカー(300ml用)に投入し、60分間超音波照射した後、分液ロート(250ml用)に移し、30分静置した。上層部(トルエン側)と下層部(イオン交換水側)を分液、それぞれ回収し、回収した上層部(トルエン側)は、イオン交換水100mlを加えてビーカー(300ml用)に投入した。このような撹拌、超音波処理、静置、分液、回収した上層部(トルエン側)にイオン交換水を追加する一連の操作を1回として、3回繰り返し、最後に得られた上層部(トルエン側)を濾過、乾燥した。
[カーボンナノチューブ組成物製造例4]
内径32mmの石英管の中央部の石英ウール上に、触媒調製例4で示した固体触媒0.5gをとり、アルゴンガスを600cc/分で供給した。石英管を電気炉中に設置して、中心温度を800℃に加熱した(昇温時間60分)。800℃に到達した後、高純度アセチレンガス(高圧ガス工業製)を6cc/分で30分供給した後、アセチレンガスの供給をやめ、温度を室温まで冷却し、カーボンナノチューブを含有する組成物を取り出した。
[熱分析]
約10mgの試料を示差熱分析装置(島津製作所製 TGA-60)に設置し、空気中、10℃/分の昇温速度にて室温から900℃まで昇温した。そのときの重量変化を測定した。そのときのDTA曲線から発熱による燃焼ピーク温度を読みとった。
[ラマン分光分析によるカーボンナノチューブの性状評価]
共鳴ラマン分光計(ホリバ ジョバンイボン製 INF-300)に粉末試料を設置し、633nmのレーザー波長を用いて測定を行った。測定に際しては3箇所、別の場所にて分析を行い、G/D比はその相加平均で表した。
[導電性の評価]
カーボンナノチューブ組成物の導電性は、濃度が0.09wt%のカーボンナノチューブ組成物分散液を調製し、PETフィルム(東レ(株)社製(ルミラー U46)、光透過率91%、15cm×10cm)上にバーコーター(No.8)を用いて塗布し、表面抵抗値をロレスタEP MCP-T360((株)ダイアインスツルメンツ社製)、ハイレスターUP MCP-HT450((株)ダイアインスツルメンツ社製、10V、10秒)を用いて測定した。
[高分解能透過型電子顕微鏡写真]
カーボンナノチューブ組成物約0.5mgをエタノール約2mLに入れて、約15分間超音波バスを用いて分散処理を行った。分散した試料をグリッド上に滴下して乾燥した。この様に試料の塗布されたグリッドを透過型電子顕微鏡(日本電子製 JEM-2100)に設置し、測定を行った。測定倍率は5万倍から50万倍で行った。加速電圧は120kVである。
<実施例1>
カーボンナノチューブ組成物製造例1で示した触媒付きカーボンナノチューブ組成物23.4gを磁性皿(150φ)に取り、予め446℃まで加熱しておいたマッフル炉(ヤマト科学社製、FP41)にて大気下、446℃で2時間加熱した後、マッフル炉から取り出した。次に、触媒を除去するため、カーボンナノチューブ組成物を6Nの塩酸水溶液に添加し、室温で1時間攪拌した。濾過して得られた回収物を、さらに6Nの塩酸水溶液に添加し、室温で1時間攪拌した。これを濾過し、数回水洗した後、濾過物を120℃のオーブンで一晩乾燥することでマグネシアおよび金属が除去されたカーボンナノチューブ組成物を57.1mg得ることができた。上記工程を繰り返し、以下の工程に供した。
一方、マッフル炉で消失した炭素量を調べるため、マッフル炉で加熱していない触媒付きのカーボンナノチューブ組成物5.2gを6Nの塩酸水溶液に添加し、室温で1時間攪拌した。濾過して得られた回収物を、さらに6Nの塩酸水溶液に添加し、室温で1時間攪拌した。これを濾過し、数回水洗した後、濾過物を120℃のオーブンで一晩乾燥してカーボンナノチューブ組成物が107.2mg得られた。
これを基に換算すると、マッフル炉中での炭素の消失量は88%であった。また、この様にして得られたカーボンナノチューブ組成物を高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、図3に示すように、カーボンナノチューブはきれいなグラファイト層で構成されており、層数が2層のカーボンナノチューブが観測された。また観察されたカーボンナノチューブ総本数(100本)のうち88本を2層カーボンナノチューブが占めていた。また、この時のカーボンナノチューブ組成物の波長633nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は75であった。
次に、マッフル炉で加熱して触媒を取り除いた2層カーボンナノチューブ組成物80mgを濃硝酸(和光純薬工業社製 1級 Assay60〜61%)27mLに添加し、130℃のオイルバスで5時間攪拌しながら加熱した。加熱攪拌終了後、カーボンナノチューブを含む硝酸溶液をろ過し、蒸留水で水洗後、水を含んだウエット状態のままカーボンナノチューブ組成物を保存した。このとき水を含んだウエット状態のカーボンナノチューブ組成物全体の重量は1266.4mgで、一部377.1mgを取り出し120℃で1晩乾燥させたところ、乾燥状態のカーボンナノチューブ17.0mgが得られた。したがって硝酸処理後の水を含んだウエット状態のカーボンナノチューブ組成物全体のカーボンナノチューブ濃度は4.5wt%で、硝酸処理の収率は71%であった。
こうして得られたウェト状態のカーボンナノチューブ組成物443.6mg(カーボンナノチューブ20.0mg分)、ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩水溶液(アルドリッチ製、30wt%、重量平均分子量20万、GPCで測定、ポリスチレン換算)200μLをとり、蒸留水9.376mLを加えて、超音波ホモジナイザー出力20W、20分間、氷冷下で分散処理しカーボンナノチューブ組成物分散液を調製した。調製した液には凝集体は目視では確認できず、カーボンナノチューブ組成物はよく分散していた。得られた液を高速遠心分離機を使用して10000Gで15分遠心し、分散液を得、その上清9mLを得た。このときの残存液1mLを孔径1μmのフィルターを用いてろ過、洗浄して得られたろ過物を120℃にて乾燥機で乾燥した。重量を測ったところ、3.0mgであった。よって17.0mg(85%)のカーボンナノチューブ組成物が上清9mL中に分散していることがわかった。その上清濃度は1.9mg/mLであった。
得られたカーボンナノチューブ組成物分散液1mLに蒸留水を添加してカーボンナノチューブ組成物の濃度を0.09wt%とし、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)社製(ルミラー U46)、15cm×10cm)上にバーコーター(No.8)を用いて塗布して風乾した後、蒸留水にてリンスし、120℃乾燥機内で2分間乾燥させカーボンナノチューブ組成物を固定化した。得られた塗布フィルムの表面抵抗値は1.65×10Ω/□、光透過率は93%(透明導電性フィルム84%/PETフィルム90.6%=0.93)であり、高い導電性および透明性を示した。
同様にして硝酸溶液中で加熱するまえのカーボンナノチューブ組成物の透明導電性を測定したところ、得られた塗布フィルムの表面抵抗値は2.47×10Ω/□、光透過率は95%(透明導電性フィルム86%/PETフィルム90.6%=0.95)であり、硝酸溶液中での加熱によって、導電性が向上していることが分かった。
<実施例2>
カーボンナノチューブ組成物製造例2で合成した触媒付きカーボンナノチューブ組成物を505℃で電気炉で焼成した後、実施例1と同様にして触媒を除去した。この様にして得られたカーボンナノチューブ組成物を高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、図4に示すように、カーボンナノチューブはきれいなグラファイト層で構成されており、層数が2層のカーボンナノチューブが観測された。また観察されたカーボンナノチューブ総本数(100本)のうち90本を2層カーボンナノチューブが占めていた。また、この時のカーボンナノチューブ組成物の波長633nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は54であった。この2層カーボンナノチューブ組成物をつかい、硝酸溶液中での加熱時間を12時間行った以外は実施例1と同様の操作を行った。硝酸処理後のカーボンナノチューブ組成物の波長633nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は35であった。
得られた塗布フィルムの表面抵抗値は2.8×10Ω/□、光透過率は86%(透明導電性フィルム84%/PETフィルム89.8%=0.86)であり、高い導電性および透明性を示した。
同様にして硝酸溶液中で加熱するまえのカーボンナノチューブ組成物の透明導電性を測定したところ、得られた塗布フィルムの表面抵抗値は5.6×10Ω/□、光透過率は85%(透明導電性フィルム85%/PETフィルム89.8%=0.85)であった。
<比較例1>
カーボンナノチューブ組成物製造例3で得られた単層カーボンナノチューブ組成物(波長633nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は23であった。)を硝酸溶液中で3時間加熱した以外は実施例1および実施例2に示したように導電性を評価した。得られた塗布フィルムの表面抵抗値は8.4×10Ω/□、光透過率は97%(透明導電性フィルム88%/PETフィルム90.6%=0.97)であり、高い導電性は示さなかった。
同様にして硝酸溶液中で加熱するまえのカーボンナノチューブ組成物の透明導電性を測定したところ、得られた塗布フィルムの表面抵抗値は5.5×10Ω/□、光透過率は94%(透明導電性フィルム85%/PETフィルム90.6%=0.93)であった。したがって、単層カーボンナノチューブ組成物を用いた場合、硝酸溶液中での加熱前の方が導電性が良く、硝酸溶液中での加熱によって導電性が低下することがわかった。
<比較例2>
カーボンナノチューブ組成物製造例4で得られたカーボンナノチューブ粗性物0.4gを電気炉に入れ大気雰囲気で400℃(昇温時間40分)に加熱した。400℃で60分保持した後、室温まで冷却した。さらに、このカーボンナノチューブ粗性物を濃度2.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液200mL中に投入後、80℃に保持しながら5時間撹拌した。その後、孔径10μmのメンブレンフィルターで吸引濾過し、固液分離した。得られた固形物を蒸留水1Lで洗浄後、濃度5.1mol/Lの硫酸50mL中に投入し、80℃に保持しながら2時間撹拌した。その後、濾紙(東洋濾紙(株)(Toyo Roshi Kaisha)製、フィルターペーパー(Filter Paper) 2号、125mm)を用いて固形物を分離した。濾紙上の固形物を、蒸留水500mLで洗浄後、60℃で乾燥して触媒の除去されたカーボンナノチューブ粗性物を回収率90%で得た。このときの波長633nmのラマン分光分析によるG/D比は3.1であり、透過型電子顕微鏡観察による2〜5層のカーボンナノチューブの割合は、100本中88本であり、そのうち2層カーボンナノチューブは40本であった。この2〜5層のカーボンナノチューブ組成物をもちいて実施例1および実施例2に示したのと同様に導電性を評価した。得られた塗布フィルムの表面抵抗値は5.0×10Ω/□、光透過率は94%(透明導電性フィルム86%/PETフィルム91%=0.95)であった。
同様にして硝酸溶液中で加熱するまえのカーボンナノチューブ組成物の透明導電性を測定したところ、得られた塗布フィルムの表面抵抗値は2.91×10Ω/□、光透過率は95%(透明導電性フィルム86%/PETフィルム90.6%=0.95)であった。したがって、単層カーボンナノチューブ組成物を用いた場合、硝酸溶液中での加熱によって導電性は低下することがわかった。
図1はカーボンナノチューブ組成物製造例1で使用した流動床縦型反応装置の概略図である。 図2はカーボンナノチューブ組成物製造例2で使用した固定床縦型反応装置の概略図である。 図3はカーボンナノチューブ組成物製造例1で製造したカーボンナノチューブ組成物を電気炉(446℃)で焼成し、触媒を除去した後のカーボンナノチューブ組成物の透過型電子顕微鏡写真である。 図4はカーボンナノチューブ組成物製造例2で製造したカーボンナノチューブ組成物を電気炉(505℃)で焼成し、触媒を除去した後のカーボンナノチューブ組成物の透過型電子顕微鏡写真である。
符号の説明
100 反応器
101 石英焼結板
102 密閉型触媒供給器
103 触媒投入ライン
104 原料ガス供給ライン
105 廃ガスライン
106 加熱器
107 点検口
108 触媒
200 反応器
201 不織布
204 原料ガス供給ライン
205 廃ガスライン
206 加熱器
207 点検口
208 触媒

Claims (7)

  1. 波長633nmのラマン分光分析によるGバンドとDバンドの高さ比(G/D比)が5以上である多層カーボンナノチューブ組成物を硝酸溶液中で加熱することによって導電性を向上させることを特徴とするカーボンナノチューブ組成物の製造方法。
  2. 前記多層カーボンナノチューブ中の2〜5層のカーボンナノチューブの割合が、任意のカーボンナノチューブ100本中、50本以上であることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブ組成物の製造方法。
  3. 前記多層カーボンナノチューブ中の、2層カーボンナノチューブの割合が、任意のカーボンナノチューブ100本中、50本以上であり、波長633nmのラマン分光分析によるGバンドとDバンドの高さ比(G/D比)が20以上であることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブ組成物の製造方法。
  4. 前記硝酸溶液中の硝酸濃度が30wt%以上であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ組成物の製造方法。
  5. 前記硝酸溶液中での加熱が90℃以上であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ組成物の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかのカーボンナノチューブ組成物の製造方法により製造してなるカーボンナノチューブ組成物。
  7. 請求項6記載のカーボンナノチューブ組成物を含んでなる透明導電フィルム。
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