JP2009120800A - プロピレン系樹脂組成物およびその成形品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(a)230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが2〜80g/10分であるプロピレン単独重合体60〜99重量部と、(b)190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが1〜60g/10分、密度が0.860〜0.940g/cm3であるポリエチレン1〜40重量部とからなる重合体混合物100重量部に対して、特定の構造式の造核剤(A)が0.01〜0.6重量部、または他の造核剤と併用して配合されていることを特徴とする医療用プロピレン系樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
これら保存容器向けの樹脂では、保存容器としての剛性、耐衝撃性、透明性や蒸気滅菌時の耐熱性、耐失透性、耐添加剤抽出性が求められ、水蒸気や酸素のガスバリヤー性が維持されることや、使用添加剤が保存薬剤、薬液に相互作用を及ぼさないことが必要であり、具体的には、第15改正 日本薬局方 一般試験 45.プラスチック製医薬品容器試験法 1.ポリエチレン製又はポリプロピレン製水性注射剤容器の試験項目をすべて満足することが必須要件である。
したがって、保存容器として主となる性能の最適化を、造核剤や中和剤などを種々組み合わせた添加剤配合に頼らざるを得なかった。
局方試験に合格する必要のある医療用途の例としては、薬液をあらかじめ充填してなるプレフィルドシリンジやキット製剤などが挙げられる。
この薬液をあらかじめ充填してなるキット製剤をポリプロピレンで製造する事を検討し始めたのは、1980年代半ば頃からで(例えば、特許文献2参照。)、近年、プロピレン系重合体と、特定の造核剤とからなる透明な注射筒又は透明な容器に薬剤液を充填してなる製剤(例えば、特許文献3参照。)に関する検討がなされている。
また、プレフィルドシリンジなどの製品は、輸送したり使用する時に、衝撃が加わり、製品が破損してしまう問題が従来から挙げられており、より耐衝撃性の高い材料が求められてきた。
しかしながら、高い透明性と耐衝撃性があり、局方試験に合格し、しかも、薬剤、薬液の保存容器として満足できる耐熱性や剛性、成形性などを有する成形品が得られていないのが現状であった。
[式中、R1は、炭素数2〜30の飽和若しくは不飽和の脂肪族ポリカルボン酸残基、炭素数4〜28の飽和若しくは不飽和の脂環族ポリカルボン酸残基、又は炭素数6〜18の芳香族ポリカルボン酸残基を表わす。R2は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、又は炭素数3〜46のシクロアルキル基若しくはシクロアルケニル基を表わす。aは、2〜6の整数を表す。]
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、ポリエチレンは、メタロセン触媒を用いて重合され、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が3.5未満であることを特徴とするプロピレン系樹脂組成物が提供される。
さらに、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、重合体混合物100重量部に対し、さらに、滑剤が0.001〜0.5重量部配合されていることを特徴とするプロピレン系樹脂組成物が提供される。
また、本発明の第8の発明によれば、第7の発明において、医療用成形品であることを特徴とする射出成形品が提供される。
さらに、本発明の第9の発明によれば、第8の発明において、キット製剤であることを特徴とする成形品が提供される。
またさらに、本発明の第10の発明によれば、第9の発明において、キット製剤がプレフィルドシリンジであることを特徴とする成形品が提供される。
以下、プロピレン系樹脂組成物を構成する成分、樹脂組成物の製造方法、成形品について、詳細に説明する。
本発明のプロピレン系樹脂組成物において、(a)プロピレン単独重合体と(b)ポリエチレンとを混合する場合の配合割合は、(a)プロピレン単独重合体が60〜99重量部、(b)ポリエチレンが40〜1重量部であり、好ましくは、(a)プロピレン単独重合体が80〜95重量部、(b)ポリエチレンが20〜5重量部である。この範囲内であると、耐衝撃性、引張特性が優れる樹脂組成物となる。しかし、成形性、加工性、相溶性、透明性などの特性を考慮すれば、(a)プロピレン単独重合体のメルトフローレート(MFR)を、2〜80g/10分とする必要がある。同様に、(b)ポリエチレンのMFRが1〜60g/10分、密度が0.860〜0.940g/cm3である、特定のMFRと特定の密度を有するものが、密接に関連して、医療用プロピレン系樹脂組成物として適正に機能する。これは、医療用プロピレン系樹脂組成物を構成する二種類の樹脂の相互関係に有利に機能して、その特性を向上させるにおいて有利であるばかりでなく、これに併用する他の添加剤、例えば、造核剤、加工助剤、滑剤、中和剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤のような添加剤との配合性において有利に機能するばかりでなく、各添加剤の、特に特定の結晶造核剤の性能を発現するにおいても十分な特性を備えた組成物である。
1.プロピレン単独重合体(a)
本発明のプロピレン系樹脂組成物に用いるプロピレン単独重合体(a)は、230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が、2〜80g/10分、好ましくは5〜40g/10分、さらに好ましくは10〜30である。MFRがこの範囲にあると、樹脂組成物の剛性と耐衝撃性、成形温度に由来する高生産速度に適した樹脂組成物を与え、MFRが2g/10分未満では、成形が困難になり、一方、80g/10分を超えると、良好な耐衝撃性が得られなくなる。
ここで、230℃におけるMFRは、JIS K7210に準拠して230℃、2.16kg荷重下で測定する値である。
ここで、立体規則性は、13C−NMR法で測定する値である。
プロピレン単独重合体の分子量分布の指標の一つであるMw/は、Mn(重量平均分子量(Mw),数平均分子量(Mn))の好ましい例を示すと、アイソタクチックポリプロピレン、ステレオブロックポリプロピレンなどを含む、GPCで測定をした重量平均分子量(Mw)が5000〜200000の程度の標準仕様の例で見れば、チーグラー触媒のポリプロピレンは、Mw/Mnは,約3〜12、メタロセン触媒のポリプロピレンは、約2、約2.4のような、約2〜6程度のものが多い。分子量分布が狭いということは、溶融張力が小さく、MFRが高くなり、これは比較的安定をした加工ができる。耐熱性が高く、熱変形温度が高いという特徴を有する。さらに、透明性、光沢、強度においても有利である。さらに重要なことは、分子量分布が狭いということは、溶媒抽出量が少ないということ、いわゆるアタックチックプロピレン、或いは低分子量副生物が少ないということであるから、製品のブロッキング性が低いばかりでなく、医療材料として使用した場合に、例えば、医療材料、医療容器、医療器具のような、デイスポーサブル製品、ドラッグデリバリー用において、または人工血管、人工腎臓、人工肺、人工心臓、フイルターのような人工臓器の製品に使用しても、血液への溶出、凝固のような問題がないばかりか、生体に好ましくない、低分子量副生物の排出を抑制できるので好ましい。このような、意味で、本発明の(a)プロピレン単独重合体としては、Mw/Mnは2〜10、好ましくは、2〜8、より好ましくは2〜4程度のものが好ましい。このような範囲のものは、透明性においても優れており、特に造核剤の機能を高めるにおいても有利に作用する。
本発明において、この様なプロピレン単独重合体(a)を使用することで、得られる成形品の剛性、耐衝撃性および耐熱性を向上させることができる。特に、プレフィルドシリンジ向けに、本願医療用プロピレン系樹脂組成物を用いる場合、プロピレン単独重合体(a)は、高圧蒸気滅菌時や高負荷の条件下で危惧される、成形品の変形を効果的に改善するのに有効である。
本発明のプロピレン系樹脂組成物に用いられるポリエチレン(b)は、密度が0.860〜0.940g/cm3のポリエチレンであって、エチレン単独重合体でも構わないが、ポリエチレン(b)の30wt%以下、好ましくは15〜25wt%の他のα−オレフィンとを共重合させた重合体を用いると、耐衝撃性が良好となる。他のα−オレフィンの例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン等を挙げることができる。
具体的には、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−3−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ヘプテン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−1−デセン共重合体等が挙げられる。
また、分子量分布の幅の指標である(重量平均分子量)/(数平均分子量)の値は、7.0未満が良く、好ましくは3.5未満で、更に好ましくは3.0未満であると、剛性と耐衝撃性の物性バランスが良好となる。
装置:ウオーターズ社製GPC 150C型
検出器:MIRAN 1A赤外分光光度計(測定波長、3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S 3本
[カラムの較正は、東ソー製単分散ポリスチレン(A500,A2500,F1,F2,F4,F10,F20,F40,F288の各0.5mg/ml溶液)の測定を行い、溶出体積と分子量の対数値を2次式で近似した。]
測定温度:140℃
注入量:0.2ml
濃度:20mg/10mL
溶媒:オルソジクロロベンゼン
流速:1.0ml/min
また、試料の分子量は、ポリスチレンとポリエチレンの粘度式を用いて、ポリエチレンに換算した。ここでポリスチレンの粘度式の係数は、α=0.723、logK=−3.967であり、ポリエチレンは、α=0.723、logK=−3.407である。
ここで、190℃におけるMFRは、JIS K7210に準拠して190℃、2.16kg荷重下で測定した値である。
具体的には、ポリエチレン(b)のMFR/プロピレン単独重合体(a)のMFRは、0.05〜16が好ましく、0.1〜0.9がさらに好ましく、0.15〜0.7が特に好ましい。
ここで、密度は、JIS K7112に準拠して測定する値である。
本発明のプロピレン系樹脂組成物に用いるポリエチレン(b)は、市販品としては、日本ポリエチレン(株)製のノバテックLLシリーズやハーモレックスシリーズ、カーネルシリーズ、三井化学(株)製のタフマーPシリーズやタフマーAシリーズ、(株)プライムポリマー製のエボリューシリーズ、住友化学(株)製のスミカセンE、EPシリーズ、エクセレンGMHシリーズなどが例示できる。
また、メタロセン触媒を用いて重合されたポリエチレン(b)としては、日本ポリエチレン(株)製のハーモレックスシリーズ、カーネルシリーズ、プライムポリマー製のエボリューシリーズ、住友化学(株)製のエクセレンFXシリーズ等が例示できる。
本発明のプロピレン系樹脂組成物における、プロピレン単独重合体(a)とポリエチレン(b)の配合割合は、プロピレン単独重合体(a)が60〜99重量部、ポリエチレン(b)が40〜1重量部であり、好ましくは、プロピレン単独重合(a)が80〜95重量部、ポリエチレン(b)が20〜5重量部である。この範囲内であると、耐衝撃性が優れる樹脂組成物となる。
本発明の医療用プロピレン系樹脂組成物で用いられる造核剤(A)は、一般式(1)で示される化合物であり、中でも、一般式(6)で示される化合物が好ましく、化学構造式(8)で示される化合物がより好ましい。
この様な造核剤としては、市販のものを用いることができる。具体的には、旭電化工業(株)社製NA−11を挙げることができる。
該有機アルカリ金属塩とは、アルカリ金属カルボン酸塩、アルカリ金属β−ジケトナート及びアルカリ金属β−ケト酢酸エステル塩からなる群より選択される少なくとも一種の有機アルカリ金属塩を示すことができる。
該有機アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
上記アルカリ金属カルボン酸塩を構成するカルボン酸としては、例えば酢酸、プロピオン酸、アクリル酸、オクチル酸、イソオクチル酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、メリシン酸、β−ドデシルメルカプト酢酸、β−ドデシルメルカプトプロピオン酸、β−N−ラウリルアミノプロピオン酸、β−N−メチル−ラウロイルアミノプロピオン酸等の脂肪族モノカルボン酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、クエン酸、ブタントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸、ナフテン酸、シクロペンタンカルボン酸、1−メチルシクロペンタンカルボン酸、2−メチルシクロペンタンカルボン酸、シクロペンテンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、1−メチルシクロヘキサンカルボン酸、4−メチルシクロヘキサンカルボン酸、3,5−ジメチルシクロヘキサンカルボン酸、4−ブチルシクロヘキサンカルボン酸、4−オクチルシクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキセンカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸等の脂環式モノ又はポリカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、キシリル酸、エチル安息香酸、4−t−ブチル安息香酸、サリチル酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族モノ又はポリカルボン酸等が挙げられる。
この様な造核剤としては、市販のものを用いることができる。具体的には、メリケン(株)社製ハイパフォームHPN68Lを挙げることができる。ハイパフォームHPN68Lの造核剤成分の構造を下記に示す。
R1(CONHR2)a …(5)
[式中、R1は、炭素数2〜30の飽和若しくは不飽和の脂肪族ポリカルボン酸残基、炭素数4〜28の飽和若しくは不飽和の脂環族ポリカルボン酸残基、又は炭素数6〜18の芳香族ポリカルボン酸残基を表わす。R2は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、又は炭素数3〜46のシクロアルキル基若しくはシクロアルケニル基を表わす。aは、2〜6の整数を表す。]
1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−n−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−ペンチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−ヘキシルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−ヘプチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−オクチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ[4−(2−エチルヘキシル)シクロヘキシルアミド]、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−ノニルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−デシルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸[(シクロヘキシルアミド)ジ(2−メチルシクロヘキシルアミド)]、1,2,3−プロパントリカルボン酸[ジ(シクロヘキシルアミド)(2−メチルシクロヘキシルアミド)]、
具体的には、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリシクロヘキシルアミド、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−エチルシクロヘキシルアミド)1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、
1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−n−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、
具体的には、シクロヘキシルアミン、2−メチルシクロヘキシルアミン、3−メチルシクロヘキシルアミン、4−メチルシクロヘキシルアミンのメチルシクロヘキシルアミン、2−エチルシクロヘキシルアミン、2−n−プロピルシクロヘキシルアミン、2−iso−プロピルシクロヘキシルアミン、2−n−ブチルシクロヘキシルアミン、2−iso−ブチルシクロヘキシルアミン、2−sec−ブチルシクロヘキシルアミン、2−tert−ブチルシクロヘキシルアミンなどが挙げられる。
5.中和剤
本発明のプロピレン系樹脂組成物においては、中和剤を配合することが望ましい。中和剤の具体例としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの金属脂肪酸塩、ハイドロタルサイト(商品名:協和化学工業(株)の下記一般式(11)で表されるマグネシウムアルミニウム複合水酸化物塩)、ミズカラック(下記一般式(12)で表されるリチウムアルミニウム複合水酸化物塩)などが挙げられる。特に、プレフィルドシリンジ、キット製剤、輸液バッグなど長期接液する部材として用いる場合には、接触する液体に溶出しないハイドロタルサイトやミズカラックが有利である。
[式中、xは、0<x≦0.5であり、mは3以下の数である。]
[式中、Xは、無機または有機のアニオンであり、nはアニオン(X)の価数であり、mは3以下である。]
本発明のプロピレン系樹脂組成物においては、滑剤を配合することが望ましい。滑剤としては、既知の滑剤が挙げられるが、ステアリン酸ブチルやシリコーンオイルが好ましく、特にシリコーンオイルが良い。
具体的なシリコーンオイルとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルヒドロジエンポリシロキサン、α−ωビス(3−ヒドロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、ポリオキシアルキレン(C2〜C4)ジメチルポリシロキサン、ポリオルガノ(C1〜C2のアルキル基および/またはフェニル基)シロキサンとポリアルキレン(C2〜C3)グリコールの縮合物などが挙げられる。この中でもジメチルポリシロキサンとメチルフェニルポリシロキサンが好ましい。該滑剤は単独、又は複数用いても構わない。
ジメチルポリシロキサンなどのシリコーンを添加した場合、成形時に発生する傷を防止するだけでなく、シリンダー内やホットランナー内で発生する焼けを防止することができる。
本発明のプロピレン系樹脂組成物においては、上述した成分に加えて、プロピレン系重合体の安定剤などとして使用されている各種酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を配合することができる。
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン単独重合体(a)、およびポリエチレン(b)、造核剤(造核剤(A)と必要に応じて造核剤(B)〜(E)の少なくとも1種の混合物)および、必要に応じて他の添加剤とを、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、リボンブレンダー等に投入して混合した後、通常の単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、プラベンダー、ロール等で190〜260℃の温度範囲で溶融混練することにより得ることができる。
本発明の成形品は、上記のプロピレン系樹脂組成物を、公知の射出成形機により射出成形することにより得られる。
具体的には、ディスポーザブルシリンジ及びその部品、カテーテル・チューブ、輸液バッグ、血液バッグ、真空採血管、手術用不織布、血液用フィルター、血液回路などのディスポーザブル器具や、人工肺、人工肛門などの人工臓器類の部品、ダイアライザー、プレフィルドシリンジ、キット製剤、薬剤容器、試験管、縫合糸、湿布基材、歯科用材料の部品、整形外科用材料の部品、コンタクトレンズのケース、PTP(PRESS THROUGH PACKAGE)、SP(STRIP PACKAGE)・分包、Pバイアル(プラスチックバイアル)、目薬容器、薬液容器、液体の長期保存容器、キャップなどを挙げることができる。
この中でもキット製剤として特に有用であり、薬剤液を充填してなる注射筒および保存容器などに適しており、キット製剤の中でも特に、プレフィルドシリンジに好適である。プレフィルドシリンジとは、薬液や薬剤があらかじめ充填されているシリンジ形状の製剤であり、1種類の液が充填されたシングルチャンバータイプのものと、2種の薬剤が充填されたダブルチャンバータイプがある。ほとんどのプレフィルドシリンジはシングルチャンバータイプであるが、ダブルチャンバータイプについては、粉末とその溶解液からなる液・粉タイプの製剤と2種類の液からなる液・液タイプの製剤がある。シングルチャンバータイプの内溶液の例としては、ヘパリン溶液などが挙げられる。
なお、本発明の成形品は、オートクレーブ滅菌、放射線滅菌、EOG滅菌、紫外線滅菌など公知の滅菌処理を行っても良い。
(1)MFR:JIS K7120、230℃ 2.16Kg荷重に準拠して測定した。
(2)曲げ弾性率:
JIS K7203の「硬質プラスチックの曲げ試験方法」に準拠して23℃で測定した。
(3)アイゾット衝撃強度(IZOD衝撃):
ノッチ付きの試験片を用い、23℃にて、JIS K7203に準じて測定した(単位:KJ/m2)。
(4)ヘイズ値:
厚さ1mmのシート片を用いて、JIS K7105に準拠して測定した。
(5)荷重たわみ温度(熱変形温度:HDT):
JIS K7207に準拠して荷重0.45MPaにて測定した。この温度が高い程、得られた成形品は、耐熱性に優れる。
(6)結晶化温度(ピーク値):JIS K7121の「プラスチックの転移温度測定方法」に準拠して、示差走査型熱量計を用い測定した。この温度が高い程、射出成形において成形時間が短縮でき生産性をあげることができる。
(7)成形性:各ペレットを射出成形機により、樹脂温度240℃、射出圧力900kg/cm2及び金型温度40℃で射出成形し、成形性評価用の成形品(12cm×12cm×2.5mm板上に、厚み1mmの25mm×20mm×20mmの箱型が3×4並んでいる形状)を作成し、この射出成形によって得られた成形品を目視で観察し、造核剤やその他添加剤、および反応物質などが成形時金型に析出・付着した為に発生する傷の有無を確認し、次の2段階で評価した。
傷有:多数成形しても、細かい傷がほとんど発生しない。
傷無:多数成形すると成形品に細かい傷が発生する。
(8)第15改正 日本薬局方一般試験(日本薬局方試験):
45.プラスチック製薬品容器試験法(プラスチック製水性注射剤容器)の1.ポリエチレン製又はポリプロピレン製水性注射剤容器の項の試験法に従って、透明性、重金属、鉛、カドミウム、強熱残分、泡立ち、PH、過マンガン酸カリウム還元性物質、紫外吸収スペクトル、蒸発残留分を測定した。
但し、試料調製は、0.5ミリ厚で表面積1200cm2に相当する重量のペレットを秤量し、220℃でプレスしてシート片として、長さ約5センチ、幅約0.5センチの大きさに細断し、水で洗った後、室温で乾燥した。これを内容積約300mlの硬質ガラス製容器に入れ、水200mlを正確に加え、適当な栓で密封した後、高圧蒸気滅菌器を用いて121℃で1時間加熱した後、室温になるまで放置し、この内溶液を試験液とし、別に水につき、同様の方法で空試験液を調製した。
(A−1)プロピレン単独重合体(a):MFR(JIS K7210、230℃、2.16kg荷重)14g/10分、立体規則性97%(日本ポリプロ(株)社製ノバテックSA2E)
(A−2)プロピレン単独重合体(a):MFR(JIS K7210、230℃、2.16kg荷重)11g/10分、立体規則性95%(日本ポリプロ(株)社製ノバテックMA3)
(A−3)エチレン−プロピレンランダム共重合体:エチレン含有量2.5wt%、MFR(JIS K7210、230℃、2.16kg荷重)9g/10分(日本ポリプロ(株)社製MG3F)
(B−2)チーグラーナッタ系ポリエチレン(b):密度(JIS K7112)0.920g/cm3、MFR(JIS K7210、190℃、2.16kg荷重)2.1g/10分、(Mw/Mn)3.8。(日本ポリエチレン(株)社製ノバテックUF240)
(B−3)チーグラーナッタ系ポリエチレン:密度(JIS K7112)0.951g/cm3、MFR(JIS K7210、190℃、2.16kg荷重)5.5g/10分、(Mw/Mn)4.6。(日本ポリエチレン(株)社製ノバテックHJ360)
(C−3)有機リン酸金属塩化合物系造核剤 アデカスタブNA21(NA−21;(株)ADEKA社製):造核剤(C)に相当
(C−4)ハイパフォームHPN68L(HPN68L;ミリケン・アンド・カンパニー社製):造核剤(D)に相当
(C−5)1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2−メチルシクロヘキシルアミド):造核剤(E)に相当
(C−6)ソルビトール系造核剤 ゲルオールMD(新日本理化(株)製):造核剤(A)〜(E)のいずれにも相当しない造核剤
(D−2)ヒンダードアミン系酸化防止剤:コハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物
(E)DHT−4A:ハイドロタルサイト(協和化学工業(株)製)
(F)シリコーンオイル:Dowcorning360Medical Fluid(シリコーン)−1000 東レ・ダウコーニング(株)製
プロピレン系重合体、造核剤及び他の添加剤(酸化防止剤、中和剤など)を表1に記載の配合割合(重量部)で準備し、スーパーミキサーでドライブレンドした後、30ミリ径の単軸押出機を用いて溶融混練した。ダイ出口部温度230℃でダイから押し出しペレット化した。得られたペレットを射出成形機により、樹脂温度230℃、射出圧力600kg/cm2及び金型温度40℃で射出成形し、試験片を作成した。得られた試験片を用い、物性を測定した。その結果を表1に示す。
(実施例6)
プロピレン系重合体、造核剤及び他の添加剤(酸化防止剤、中和剤など)を表1に記載の配合割合(重量部)で準備し、スーパーミキサーでドライブレンドした後、30ミリ径の単軸押出機を用いて溶融混練した。ダイ出口部温度230℃でダイから押し出しペレット化した。得られたペレットを射出成形機により、樹脂温度200℃、射出圧力600kg/cm2及び金型温度40℃で射出成形し、試験片を作成した。得られた試験片を用い、物性を測定した。その結果を表1に示す。
また、実施例2は、造核剤(A)の配合量を増したものであり、配合量を増すことにより、さらに透明性が向上し、かつ、日本薬局方試験にも適合する。
さらに、実施例3、4および6は、造核剤(A)に造核剤(B)、造核剤(C)または造核剤(E)を併用したものであり、造核剤(A)のみを用いる場合よりも、剛性、耐熱性のバランスに優れ、日本薬局方試験にも適合する。
実施例5は、造核剤(A)に造核剤(D)を併用したものであり、造核剤(A)のみを用いる場合よりも、耐熱性に優れているうえ、結晶化温度が向上し、射出成形における成形サイクルの向上(生産性の向上)が期待でき、日本薬局方試験にも適合する。
また、実施例7は、チーグラーナッタ系触媒を用いて製造された密度の低いポリエチレン(b)を用いたもので、透明性が若干劣るものの、剛性、耐衝撃性、および耐熱性に優れ、日本薬局方試験にも適合し、優れた成形品が得られる。
さらに、実施例8は、シリコーンが配合されているものであり、この程度の配合量であれば、日本薬局方試験に適合させつつ、離型性を格段に向上させ、傷のない成形品を得ることができる。
また、実施例9は、本発明で用いられるポリエチレン(b)の配合比率を高めたものであり、これにより耐衝撃性が著しく向上していることがわかる。
さらに、実施例10は、立体規則性が若干高いプロピレン単独重合体(a)を用いたもので、立体規則性の向上に伴い、剛性と耐熱性が若干向上する傾向にあることがわかる。
また、比較例3は、透明性、耐衝撃性が必要な成形品に用いられてきた従来の樹脂であるエチレン−プロピレンランダム共重合体に、造核剤(A)を配合したものであり、本発明のプロピレン系樹脂組成物と比較して、透明性に優れるものの、剛性と耐衝撃性が低い傾向にあり、熱変形温度(HDT)が100℃以下であり耐熱性も劣っているため、高圧蒸気滅菌時や高負荷の条件下で、成形品の変形を招く可能性が高い。現在、プレフィルドシリンジは一般的に、高圧蒸気滅菌を施されるが、この際に変形し、良好な製品を得る事ができない。
さらに、比較例4と5は、本発明で用いられる造核剤(A)が配合されていないプロピレン系樹脂組成物である。比較例4は、造核剤(A)の代わりに、造核剤(B)が用いられており、実施例2と比較すると、明らかに透明性に劣っていることがわかる。また、比較例5は、造核剤(A)の代わりに、透明性に優れる造核剤であるゲルオールMDを用いたもので、実施例2には劣るものの、優れた透明性を発現している。しかし、実施例2より造核剤の添加量を少なくしたにも関わらず、溶出性すなわち、日本薬局方試験に適合できなくなる。
また、比較例6は、本発明で用いられるポリエチレン(b)の密度範囲が外れるポリエチレンを用いたもので、著しく透明性に劣っていることがわかる。
さらに、比較例7は、本発明で用いられるプロピレン単独重合体(a)の代わりに、エチレン−プロピレンランダム共重合体を用いたものであるが、実施例3と比較すると、剛性が低い傾向にあり、著しく耐熱性に劣っていることがわかる。
Claims (10)
- (a)230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが2〜80g/10分であるプロピレン単独重合体60〜99重量部と、(b)190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが1〜60g/10分、密度が0.860〜0.940g/cm3であるポリエチレン1〜40重量部とからなる重合体混合物100重量部に対して、(c)下記一般式(1)で示される造核剤(A)が0.01〜0.6重量部配合されていることを特徴とする医療用プロピレン系樹脂組成物。
- 重合体混合物100重量部に対し、さらに、下記一般式(2)で示される造核剤(B)が0.005〜0.3重量部、下記一般式(3)で示される造核剤(C)が0.005〜0.15重量部、下記一般式(4)で示される造核剤(D)が0.005〜0.15重量部および下記一般式(5)で示される造核剤(E)が0.005重量部以上で0.3重量部未満の範囲で成る少なくとも1種の造核剤が配合されていることを特徴とする請求項1に記載の医療用プロピレン系樹脂組成物。
R1(CONHR2)a …(5)
[式中、R1は、炭素数2〜30の飽和若しくは不飽和の脂肪族ポリカルボン酸残基、炭素数4〜28の飽和若しくは不飽和の脂環族ポリカルボン酸残基、又は炭素数6〜18の芳香族ポリカルボン酸残基を表わす。R2は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、又は炭素数3〜46のシクロアルキル基若しくはシクロアルケニル基を表わす。aは、2〜6の整数を表す。] - 造核剤(A)が下記一般式(6)で示される造核剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載の医療用プロピレン系樹脂組成物。
- ポリエチレンは、密度が0.860〜0.915g/cm3であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
- ポリエチレンは、メタロセン触媒を用いて重合され、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が3.5未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
- 重合体混合物100重量部に対し、滑剤が0.001〜0.5重量部の範囲で配合されたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の医療用プロピレン系樹脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物を射出成形してなる成形品。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物を用いた医療用成形品。
- 請求項8に記載の医療用成形品がキット製剤であることを特徴とするキット製剤。
- 請求項9記載のキット製剤がプレフィルドシリンジであることを特徴とするプレフィルドシリンジ。
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