JP2009084712A - 細繊度ポリエステルモノフィラメントの紡糸方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高精密な電子基板印刷やグラフィック印刷に用いる際に、印刷欠点が発生しない、繊径均一性の極めて高い繊度4〜6dtexのポリエステルモノフィラメントを得る細繊度ポリエステルモノフィラメントの直接紡糸延伸方法を提供する。
【解決手段】繊度4〜6dtexのポリエステルモノフィラメントを溶融紡糸するに際し、チムニーエアーの冷却風速Vcが下記(1)式を満足し、同時に、紡糸ダクト内を紡糸口金から引取方向へ吐出糸条に沿って流れる気流の吹き下げ風速を2〜25m/分とすることを特徴とするポリエステルモノフィラメントの紡糸方法。
d×2.5−5≦Vc≦d×2.5+2 ・・・(式1)
ただし、d:モノフィラメントの繊度(dtex)
Vc:糸条冷却風速(m/分)
【選択図】図1
【解決手段】繊度4〜6dtexのポリエステルモノフィラメントを溶融紡糸するに際し、チムニーエアーの冷却風速Vcが下記(1)式を満足し、同時に、紡糸ダクト内を紡糸口金から引取方向へ吐出糸条に沿って流れる気流の吹き下げ風速を2〜25m/分とすることを特徴とするポリエステルモノフィラメントの紡糸方法。
d×2.5−5≦Vc≦d×2.5+2 ・・・(式1)
ただし、d:モノフィラメントの繊度(dtex)
Vc:糸条冷却風速(m/分)
【選択図】図1
Description
本発明は、ポリエステルモノフィラメントの溶融紡糸方法に関するものであり、さらに詳しくは、精密な電子基板印刷やグラフィック印刷に使用する織物密度480本/インチ(2.54cm)以上の高密度スクリーン紗織物に用いる繊度4〜6dtexのポリエステルモノフィラメントの直接紡糸延伸方法に関するものである。
従来、印刷スクリーン用織物としては、従来はシルクなどの天然繊維やステンレスなどの無機繊維からなるメッシュ織物が広く使用されてきたが、近年は、柔軟性や耐久性、コストパフォーマンスに優れる合繊メッシュが好んで使用され、中でもポリエステルモノフィラメントは寸法安定性に優れるなどスクリーン用適正が高く、コンパクトディスクのレーベル印刷やグラフィックデザイン物の印刷、さらには電子基板回路印刷やプラズマディスプレイ構造基板などの電子基板へのペースト印刷や回路印刷に合繊メッシュによるスクリーン印刷が広く使用されている。
さらに、近年、電子機器の高性能化やコンパクト化が著しく進むにつれて、電子機器を構成する電子基板のコンパクト化や基板回路の精密化も当然のことながら求められ、スクリーン紗印刷においては、メッシュ織物の繊径斑などの欠点が直ちに印刷欠点となり、商品価値が失われてしまうことが知られている。
すなわち、前記用途における要求品質を満足するためには、細繊度かつ高強度、高モジュラス化し、スカム発生などがないことは勿論のこと、繊径均一性の優れたスクリーン紗用原糸を提供することが最も重要な課題となる。
従来、スクリーン紗用モノフィラメントの製造方法については、種々の提案がなされている。
例えば、繊度40dtex以下のスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントを溶融紡糸するに際し、温度10〜25℃、風速10〜35m/分の冷却風で糸条を冷却し、紡糸ダクト内を紡糸口金から引取方向へ吐出糸条に沿って流れる気流の吹き下げ風速を10〜25m/分とすることを特徴とするスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントの製造方法が提案されている(特許文献1参照)。480本/インチ(以下、480本/インチを480メッシュと称する)以上の高密度スクリーン紗織物に用いる繊度4〜6dtexの細繊度ポリエステルモノフィラメントは、一般のポリエステルモノフィラメントに対比して、糸条繊径が著しく小さいために、口金からポリマー流が吐出して引取ロールまでの間で一旦冷却固化するまでの過程における繊径均一性が、延伸糸製品での繊径均一性や、高強度を得るための高倍率延伸条件における均一延伸性を大きく左右する。しかしながら、この方法では、繊度12〜40dtexのポリエステルモノフィラメントの繊径均一性を得るには十分な方法であるが、吐出糸条を取り巻く雰囲気温度としては、単に冷却風の温度や風速を大きい範囲でしか制御していないため、冷却風に紡糸ダクトや冷却装置周辺の雰囲気が随伴して構成する紡糸ダクト内下向気流、すなわち紡糸ダクト内の紡糸口金から引取方向へ吐出糸条に沿って流れる気流の温度が制御できず、繊度4〜6dtexの細繊度モノフィラメントの十分な繊径均一性を得ることができない。
また、ポリエステルポリマーを、溶融紡糸口金より紡出した後、冷却し、油剤を付与して引き取り、一旦巻き取ることなく連続して延伸を行いながら、1500m/分以上で巻き取るスピンドローが提案されている(特許文献2参照)。また、紡糸口金下2m以内の位置で冷却風をモノフィラメントに付与し、600〜2000m/分で未延伸糸を巻き取った後に、多段延伸する方法が提案されている(特許文献3参照)。さらに、25℃のチムニーエアーにて冷却固化した後、水系エマルジョン油剤を給油し、引取速度800m/分で未延伸モノフィラメントを得た後に延伸する方法が提案されている(特許文献4参照)。これらの方法は、単に巻き取り速度の比較的低速な直接紡糸延伸方法であったり、紡糸口金からの冷却風の位置や温度、あるいは延伸条件のみに着眼してモノフィラメントの繊径均一性を得ようとしているものであり、未延伸状態での繊径均一性が不足するために、得られたモノフィラメントのウースター斑を測定した際、測定数値としては1.0%以下のものが得られたとしても、ウースター波形中に例えば糸長3m当たりの繊径変動をなくすことはできず、得られたモノフィラメントをスクリーン紗織物にした際には、比較的精密性の求められないTシャツ印刷などの捺染用途には使用できたとしても、高精密性を要求されるCD印刷やグラフィック印刷あるいはプラズマディスプレイ用印刷に用いるには繊径均一性の不十分なスクリーン紗織物となる。
特開2006−169680号公報(請求の範囲)
特開2004−52173号公報(請求の範囲)
特開昭63−262289号公報(問題を解決するための手段、4頁右下段)
特開2000−355830号公報(実施例1)
本発明の目的は、上記問題を解決し、高精密な電子基板印刷やグラフィック印刷に用いる際に、印刷欠点が発生しない、繊維径(繊径)の均一性の極めて高い繊度4〜6dtexのポリエステルモノフィラメントを得る細繊度ポリエステルモノフィラメントの直接紡糸延伸方法を提供することにある。
前記目的を達成するための本発明は、以下の構成を採用する。すなわち、
(1)繊度4〜6dtexのポリエステルモノフィラメントを溶融紡糸するに際し、チムニーエアーの冷却風速Vcが下記(1)式を満足し、同時に、紡糸ダクト内を紡糸口金から引取方向へ吐出糸条に沿って流れる気流の吹き下げ風速を2〜25m/分とすることを特徴とするポリエステルモノフィラメントの紡糸方法。
(1)繊度4〜6dtexのポリエステルモノフィラメントを溶融紡糸するに際し、チムニーエアーの冷却風速Vcが下記(1)式を満足し、同時に、紡糸ダクト内を紡糸口金から引取方向へ吐出糸条に沿って流れる気流の吹き下げ風速を2〜25m/分とすることを特徴とするポリエステルモノフィラメントの紡糸方法。
d×2.5−5≦Vc≦d×2.5+2 ・・・(式1)
ただし、d:モノフィラメントの繊度(dtex)
Vc:糸条冷却風速(m/分)
(2)紡出された糸条を一旦100〜200℃のエアーで冷却した後、10〜100℃のエアーで冷却する多段階除冷冷却方法を用いることを特徴とする請求項1に記載のポリエステルモノフィラメントの紡糸方法。
ただし、d:モノフィラメントの繊度(dtex)
Vc:糸条冷却風速(m/分)
(2)紡出された糸条を一旦100〜200℃のエアーで冷却した後、10〜100℃のエアーで冷却する多段階除冷冷却方法を用いることを特徴とする請求項1に記載のポリエステルモノフィラメントの紡糸方法。
(3)紡糸口金から紡出し、冷却固化した後に油剤を付与したポリエステルモノフィラメント糸条を、表面速度300〜800m/分で引き取った後に、一旦未延伸糸を巻き取ることなく、3個以上のホットロールに順次引き廻して多段延伸することを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステルモノフィラメントの紡糸方法。
本発明の直接紡糸延伸方法を用い、糸条冷却風速および温度や、吹き下げ風速および温度を繊度に応じて厳密に制御することにより、繊径均一性や長手方向の強伸度均一性の非常に優れた480メッシュ以上の高密度スクリーン紗織物に使用する繊度4〜6dtexの細繊度ポリエステルモノフィラメントを得ることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるポリエステルは、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートであるポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す)であり、好ましくはその固有粘度は0.45〜1.20のものが対象となる。本発明のモノフィラメントは、単成分のPETからモノフィラメントを得る場合、あるいは芯鞘型複合糸としてモノフィラメントを得る場合のいずれにも適用できる。単成分のPETからモノフィラメントを得る場合、あるいは芯鞘型複合糸としてモノフィラメントを得る場合の芯成分のPETの固有粘度としては0.68〜1.20であると得られるモノフィラメント強伸度が優れたものとなるので好ましい。また、芯鞘型複合糸としてモノフィラメントを得る場合の鞘成分に用いるPETは、極限限度0.45〜0.70のものであれば、モノフィラメントの耐摩耗性が向上し、スクリーン紗製織時にスカムが発生し難くなるので好ましい。鞘成分は、共重合PETやポリアミドでは、芯成分との剥離が発生しやすく、またスカム抑制効果が不十分であるばかりでなく、強度も発揮し難い。
なお、固有粘度は、オルソクロロフェノール中25℃で測定された値より算出したものである。
スクリーン紗織物にモノフィラメントを用いる場合、モノフィラメントの長手方向の繊径均一性が重要な要素となり、繊径が長手方向に不均一であると、繊径の変化によってオープニング面積が正常部のそれに比べて大小に変化するため、被印刷体へ塗布する材のオープニング通過量がオープニング面積に応じて大小のムラとなり、直ちに印刷欠点となる。また、繊径均一性が悪いと、すなわちモノフィラメントの強力均一性が低下するため、高密度製織時の製織張力に耐えず、糸切れによる織機停台が増加するばかりでなく、高張力下で版枠に紗織物を固定する際や印刷時のスキージング時に、張力ムラが発生し、結果的に印刷欠点となる。
4〜6dtexという極めて細いモノフィラメントの繊径を均一に得るためには、糸条冷却風や紡糸ダクト内を紡糸口金から引取方向へ吐出糸条に沿って流れる気流の吹き下げ風の温度および速度を適正な範囲にコントロールすることが重要であり、これらを順に説明する。
まず、糸条冷却風速は、吐出糸条の繊径によって適正範囲にコントロールすることが重要であり、繊度4〜6dtexの細繊度ポリエステルモノフィラメントについて鋭意検討した結果、繊度(dtex)をd、糸条冷却風速(m/分)をVcとした場合、d×2.5−5≦Vc≦d×2.5−2の範囲とすることが重要である。糸条冷却風は、冷却風供給装置内および吹き出し面にて整流化されて用いるが、d×2.5−5を下回って低い風速では、冷却風が走行糸条に接触するまで整流を維持することが難しく、冷却風速のムラを誘発するため、永続的な繊径均一性が得られない。また、d×2.5+2を超えて高い風速では、繊度6dtex以下の細繊度モノフィラメントの吐出糸条では、断面方向に急激な冷却が進行し、繊維横断面にシース・コア構造に似た冷却ムラが生じてしまうばかりでなく、紡糸張力が偏在してしまうために、延伸ムラをも誘発する。さらに、一つの口金から複数の糸条を得る場合には口金の吐出孔位置によって糸条間に冷却ムラが生じ、結果、糸条間の物性差が生じることとなる。このため、糸条冷却風速(m/分)は、d×2.5−5〜d×2.5−2の範囲であり、より好ましくは、d×2.5−4〜d×2.5−1の範囲である。
本発明における糸条冷却風温度は10〜200℃が好ましい。冷却風温度が10℃を下回るエアーを安定して連続的に供給するには装置が複雑化し、周囲外気温や紡糸機温度との差によって結露を生じ、工程に不具合を与える懸念があるばかりか、糸条が急激に冷却されるため、前述と同様に冷却ムラおよび延伸ムラを生じる。一方、200℃を越えると糸条の冷却効率が低下するため糸条の個化点が安定せず、繊径ムラを生じることとなる。さらには、紡出された糸条を一旦100〜200℃のエアーで冷却した後、10〜100℃のエアーで冷却する、多段階除冷冷却方法が好ましく、この方法であれば均一に糸条を冷却できるばかりでなく、除冷により紡糸張力が極小化され、引取ロールに引き取られた段階での糸条の分子鎖配向および結晶化を抑制できるため、最終的に得られるモノフィラメントの強度および伸度が高くなる。
本発明における吹き下げ風速は2〜25m/分とすることが重要である。溶融紡糸する場合、紡糸口金から吐出した糸条は冷却された後、冷却風供給装置から引取部までの空間を円筒または矩形の筒である紡糸ダクト内を通過して、引き取られる。空調設備で紡糸部雰囲気の静圧が引取部のそれより高く設定して、紡糸ダクト内で口金から引取方向へ吐出糸条に沿って流れる吹き下げ気流を発生させて、吐出糸条の揺れを抑制することが好ましく、該気流が2m/分を下回る風速である場合や気流が逆方向、すなわち引取部から口金方向へ吹き上げる気流を発生させる場合は、吐出糸条の揺れ抑制効果が得られず、モノフィラメントの繊径均一性が低下する。また、風速25m/分を超えた気流では、紡糸ダクト内に糸条が入っていく上端部、あるいは引取部へ糸条が出て来る下端部における気流乱れが発生して糸揺れが大きくなり、繊径均一性が低下する。より好ましい吹き下げ風速は5〜10m/分である。
本発明において、吹き下げ風速を制御する方法は特に限定するものではないが、紡糸部雰囲気と引取部雰囲気の静圧差とともに、紡糸ダクト下端の開口面積を調整することによりコントロールすることができるため、所望の吹き下げ風速となるように適宜調整すればよい。なお、本発明における気流の吹き下げ風速とは、紡糸ダクト出口を除く紡糸ダクト内気流のうち、最も風速の高い点で測定したものであり、通常紡糸ダクトの最上部が最も吹き下げ風速が高い。
本発明のモノフィラメントの製造方法は、一旦未延伸糸を巻き取ることなく延伸する直接紡糸延伸法であり、高い製織性や印刷耐久性および印刷精度を両立した織物密度480本/インチ(2.54cm)以上の高密度スクリーン紗織物に用いる繊度4〜6dtexのポリエステルモノフィラメントを得るためには、前述のとおり、高い繊径均一性ばかりでなく、高い強度が要求される。例えば、繊度6dtexのモノフィラメントを用いて500メッシュのスクリーン紗織物を製織し、精密グラフィック用途に使用する場合は、モノフィラメントには、8.0cN/dtex以上、より好ましくは8.5cN/dtex以上の強度が求めらる。繊径が細くなればなるほど、製織や印刷使用時に原糸1本1本の単位面積当たりに掛かる張力が増大するためである。
一旦未延伸糸を巻き取った後に、延伸機にて延伸するいわゆる2工程法で前述の高強度を達成するための高倍率延伸を行うと、完全に未延伸糸の繊維構造が固定された状態で延伸機で予熱、延伸、熱処理および巻取を行うため、未延伸糸紡糸時に生じた繊維構造内部歪みや配向性バラツキがエージング時に構造固定され、これが延伸時に延伸ムラとなって顕在化し、強伸度特性の個体間差や長手方向均一性が劣ったものとなる。よって、一旦未延伸糸を巻き取ることなく延伸する直接紡糸延伸法を採用することが重要であり、油剤付与した後に、表面温度が室温である引取ロールを設置して、300〜800m/分の表面速度で引き取り、次いで3個以上のホットロールに順次引き廻して延伸する多段延伸の直接紡糸延伸法が好ましい。2個のホットロール間で1段延伸する場合、高強度を得るために高い延伸倍率を一度に付与するため、得られる繊維の強度および伸度が高くなりにくくなり、長手方向にバラつきを生じやすくなる。3個以上のホットロールで多段延伸する場合は、1個目と2個目の間でネック延伸が終了する付近まで一旦延伸し、それ以降で徐々に細化延伸を施す多段延伸となるため、高い強度および伸度を得ることができ、長手方向のバラつきも小さいものとなる。ホットローラーの個数の上限は特に限定するものでなく、3個以上のホットローラーがあれば同じように多段延伸の効果が得られるが、極端に個数を増やすと装置が複雑化することとなるため、通常3、4個程度で十分である。なお、ホットロールについては、1ホットロール−1セパレートロールの構成、あるいは2ホットロール構成(いわゆるデュオタイプ)の何れを用いても良く、デュオタイプでは、2ホットロールで1個とカウントするものである。
以下本発明を実施例により詳細に説明する。なお、実施例中の評価は以下の方法に従った。
(繊度)
糸条を500mかせ取り、かせの重量に20を乗じた値を繊度とした。
(強度、伸度)
オリエンテックス社製テンシロン引張試験機を用い、初期試料長20cm、引張速度2cm/分にて破断強度、伸度を測定し、それぞれ5回測定した値の平均値を強度、伸度とした。
(繊度ムラ)
アンリツ株式会社製レーザ外径測定機KL1002A/E検出部に、得られた糸条を速度500m/分にて通過させ、データ平均化個数16点の出力条件下において120秒間約22000点の糸径データを得た。得られた糸径データr(μm)は下記式2にて長手方向の繊度ムラを評価する数値X(%)に換算した。
(繊度)
糸条を500mかせ取り、かせの重量に20を乗じた値を繊度とした。
(強度、伸度)
オリエンテックス社製テンシロン引張試験機を用い、初期試料長20cm、引張速度2cm/分にて破断強度、伸度を測定し、それぞれ5回測定した値の平均値を強度、伸度とした。
(繊度ムラ)
アンリツ株式会社製レーザ外径測定機KL1002A/E検出部に、得られた糸条を速度500m/分にて通過させ、データ平均化個数16点の出力条件下において120秒間約22000点の糸径データを得た。得られた糸径データr(μm)は下記式2にて長手方向の繊度ムラを評価する数値X(%)に換算した。
なお、繊度ムラXが1.00%以上のものを製品使用に耐えないものと判定し、それ未満をムラがなく良好品であると判定した。
ただし、n:データ点数、Dave:n個のDiの平均値、Di=9.6×(ri)0.5、
ri:i番目のデータr
実施例1
常法によって重合およびチップ化した固有粘度1.00のPETを芯成分、固有粘度0.51で酸化チタンを0.3wt%含有するPETを鞘成分となるよう、それぞれ個別のエクストルーダーによって溶融せしめ、295℃に保温した配管内を通過させた後、公知の芯鞘型複合紡糸口金から芯:鞘の重量比率が8:2となるよう芯鞘型複合糸条を紡出させた。吐出糸条は口金面から下方に100mmの間、雰囲気温度を290℃±10℃となるようにの加熱体(図1の2)により積極保温し、その直下に垂直方向の長さ60mmの上部冷却風吹き出し面(図1の3)から上部冷却温度180℃のエアーを、次いで垂直方向の長さ900mmの下部冷却風吹き出し面(図1の4)より下部冷却温度25℃のエアーを10m/分の風速で糸条に吹き付け、冷却固化せしめた。冷却固化された糸条は糸条冷却装置から、3800mmの紡糸ダクト(図1の5)を通過させ、給油ロール(図1の6)により紡糸油剤を給油したのち、表面速度500m/分の第1ゴデットロール(図1の7)、表面速度505m/分、表面温度90℃の第1ホットロール(図1の8)、表面速度1800m/分、表面温度100℃の第2ホットロール(図1の9)、表面速度2800m/分、表面温度200℃の第3ホットロール(図1の10)、表面速度2803m/分の第2ゴデットロール(図1の11)を介した後、巻き取り張力2.0gとなるように速度が制御された糸条巻取装置(図1の12)にて糸条(図1の13)を巻き取った。製糸プロセスの概略図を図1に示す。
得られたモノフィラメントは繊度4.5dtex、強度8.6cN/dtex、伸度13.5%、繊度ムラは0.65%であり、いずれも良好な物性を有するものであった。
ri:i番目のデータr
実施例1
常法によって重合およびチップ化した固有粘度1.00のPETを芯成分、固有粘度0.51で酸化チタンを0.3wt%含有するPETを鞘成分となるよう、それぞれ個別のエクストルーダーによって溶融せしめ、295℃に保温した配管内を通過させた後、公知の芯鞘型複合紡糸口金から芯:鞘の重量比率が8:2となるよう芯鞘型複合糸条を紡出させた。吐出糸条は口金面から下方に100mmの間、雰囲気温度を290℃±10℃となるようにの加熱体(図1の2)により積極保温し、その直下に垂直方向の長さ60mmの上部冷却風吹き出し面(図1の3)から上部冷却温度180℃のエアーを、次いで垂直方向の長さ900mmの下部冷却風吹き出し面(図1の4)より下部冷却温度25℃のエアーを10m/分の風速で糸条に吹き付け、冷却固化せしめた。冷却固化された糸条は糸条冷却装置から、3800mmの紡糸ダクト(図1の5)を通過させ、給油ロール(図1の6)により紡糸油剤を給油したのち、表面速度500m/分の第1ゴデットロール(図1の7)、表面速度505m/分、表面温度90℃の第1ホットロール(図1の8)、表面速度1800m/分、表面温度100℃の第2ホットロール(図1の9)、表面速度2800m/分、表面温度200℃の第3ホットロール(図1の10)、表面速度2803m/分の第2ゴデットロール(図1の11)を介した後、巻き取り張力2.0gとなるように速度が制御された糸条巻取装置(図1の12)にて糸条(図1の13)を巻き取った。製糸プロセスの概略図を図1に示す。
得られたモノフィラメントは繊度4.5dtex、強度8.6cN/dtex、伸度13.5%、繊度ムラは0.65%であり、いずれも良好な物性を有するものであった。
実施例2〜6
上部冷却温度、下部冷却温度を表1のとおり変更した以外、実施例1と同様の方法でモノフィラメントを得た。実施例2,5,6では糸条冷却効率が低下したためか繊径ムラが若干大きくなり、実施例2,3では糸条冷却効率が向上したためか強伸度が僅かに低下したが、いずれも良好な物性を有するものであった。
上部冷却温度、下部冷却温度を表1のとおり変更した以外、実施例1と同様の方法でモノフィラメントを得た。実施例2,5,6では糸条冷却効率が低下したためか繊径ムラが若干大きくなり、実施例2,3では糸条冷却効率が向上したためか強伸度が僅かに低下したが、いずれも良好な物性を有するものであった。
実施例7、8
冷却風速度を表1のとおり変更した以外、実施例1と同様の方法でモノフィラメントを得た。実施例7では冷却風速度が低めであることにより糸条の冷却均一性が低下したためか、繊径ムラが若干大きくなり、実施例9では逆に冷却風速度が高めであることにより繊径ムラが若干大きくなったが、いずれも良好な物性を有するものであった。
冷却風速度を表1のとおり変更した以外、実施例1と同様の方法でモノフィラメントを得た。実施例7では冷却風速度が低めであることにより糸条の冷却均一性が低下したためか、繊径ムラが若干大きくなり、実施例9では逆に冷却風速度が高めであることにより繊径ムラが若干大きくなったが、いずれも良好な物性を有するものであった。
実施例9、10
紡糸ダクトの下部開孔面積を調整し、吹き下げ風速を変更した以外実施例1と同様の方法でモノフィラメントを得た。実施例9では吹き下げ風速を低めに設定したことにより紡糸ダクト内気流安定性が僅かに悪化したためか、長手方向の繊径チャートが緩やかに微変動しており、繊径ムラは若干大きくなった。一方、実施例10では吹き下げ風速を高めに設定したためか、紡糸ダクト入口付近の糸条が僅かに振動し、繊径ムラは若干大きくなったが、実施例9、10共に良好な物性を有するものであった。
紡糸ダクトの下部開孔面積を調整し、吹き下げ風速を変更した以外実施例1と同様の方法でモノフィラメントを得た。実施例9では吹き下げ風速を低めに設定したことにより紡糸ダクト内気流安定性が僅かに悪化したためか、長手方向の繊径チャートが緩やかに微変動しており、繊径ムラは若干大きくなった。一方、実施例10では吹き下げ風速を高めに設定したためか、紡糸ダクト入口付近の糸条が僅かに振動し、繊径ムラは若干大きくなったが、実施例9、10共に良好な物性を有するものであった。
実施例11、12
第1ゴデットロール7、第2ゴデットロール11、第1ホットロール8、第3ホットロール10の速度を表1のとおり変更した以外、実施例1と同様の方法でモノフィラメントを得た。実施例11では引取速度を低くしたことにより紡糸張力が低下したためか、紡糸糸条が僅かに振動し、繊径ムラが若干大きくなった。一方、実施例12では引取速度を高くしたためか、得られたモノフィラメントの強度および伸度が低めとなったが、実施例11、12ともに良好な物性を有するものであった。
第1ゴデットロール7、第2ゴデットロール11、第1ホットロール8、第3ホットロール10の速度を表1のとおり変更した以外、実施例1と同様の方法でモノフィラメントを得た。実施例11では引取速度を低くしたことにより紡糸張力が低下したためか、紡糸糸条が僅かに振動し、繊径ムラが若干大きくなった。一方、実施例12では引取速度を高くしたためか、得られたモノフィラメントの強度および伸度が低めとなったが、実施例11、12ともに良好な物性を有するものであった。
実施例13
第2ホットロール9を取り外し、第1ホットロール8から直接第3ホットロール10に引き回す糸道に変更した以外、実施例1と同様の方法でモノフィラメントを得た。延伸段数を2段から1段にしたことにより繊維構造の均一性が低下したためか、強伸度測定値が僅かにばらつき、またその値も若干低めの値となったが、良好な物性を有するものであった。
第2ホットロール9を取り外し、第1ホットロール8から直接第3ホットロール10に引き回す糸道に変更した以外、実施例1と同様の方法でモノフィラメントを得た。延伸段数を2段から1段にしたことにより繊維構造の均一性が低下したためか、強伸度測定値が僅かにばらつき、またその値も若干低めの値となったが、良好な物性を有するものであった。
比較例1、2
冷却風速度を表2のとおり変更した以外、実施例1と同様の方法でモノフィラメントを得た。実施例1では冷却風速度を本発明の範囲より低い値としたことにより冷却風が十分整流化された状態で糸条にあたらなかったためと推定される繊度ムラが発生、その値は1.21%であり許容できる品質範囲のものが得られなかった。比較例2では逆に冷却風速度を本願請求の範囲より高い値としたことにより紡糸糸条に大きな揺れ発生し、繊度ムラは1.52%と許容できる品質範囲のものが得られなかった。
冷却風速度を表2のとおり変更した以外、実施例1と同様の方法でモノフィラメントを得た。実施例1では冷却風速度を本発明の範囲より低い値としたことにより冷却風が十分整流化された状態で糸条にあたらなかったためと推定される繊度ムラが発生、その値は1.21%であり許容できる品質範囲のものが得られなかった。比較例2では逆に冷却風速度を本願請求の範囲より高い値としたことにより紡糸糸条に大きな揺れ発生し、繊度ムラは1.52%と許容できる品質範囲のものが得られなかった。
比較例3、4
紡糸ダクトの下部開孔面積を調整し、吹き下げ風速を表2のとおり変更した以外実施例1と同様の方法でモノフィラメントを得た。比較例3ではほとんど吹き下げ風速が観測されず、長時間の観測によれば僅かな吹き上げ方向の気流が観察され、繊度ムラとしては1.83%と許容できる品質範囲を超えたものとなった。一方、比較例4では吹き下げ風速を過大にしたことにより紡糸ダクト入口付近で気流の乱れが観察され、紡糸糸条が著しく振動し、繊度ムラは2.33%と高くなり、許容できる品質範囲のものが得られなかった。
紡糸ダクトの下部開孔面積を調整し、吹き下げ風速を表2のとおり変更した以外実施例1と同様の方法でモノフィラメントを得た。比較例3ではほとんど吹き下げ風速が観測されず、長時間の観測によれば僅かな吹き上げ方向の気流が観察され、繊度ムラとしては1.83%と許容できる品質範囲を超えたものとなった。一方、比較例4では吹き下げ風速を過大にしたことにより紡糸ダクト入口付近で気流の乱れが観察され、紡糸糸条が著しく振動し、繊度ムラは2.33%と高くなり、許容できる品質範囲のものが得られなかった。
以上、実施例1〜13を表1に、比較例1〜4を表2に示す。
1:口金
2:加熱体
3:上部冷却風吹き出し面
4:下部冷却風吹き出し面
5:紡糸ダクト
6:給油ロール
7:第1ゴデットロール
8:第1ホットロール
9:第2ホットロール
10:第3ホットロール
11:第2ゴデットロール
12:糸条巻取装置
13:糸条
2:加熱体
3:上部冷却風吹き出し面
4:下部冷却風吹き出し面
5:紡糸ダクト
6:給油ロール
7:第1ゴデットロール
8:第1ホットロール
9:第2ホットロール
10:第3ホットロール
11:第2ゴデットロール
12:糸条巻取装置
13:糸条
Claims (3)
- 繊度4〜6dtexのポリエステルモノフィラメントを溶融紡糸するに際し、チムニーエアーの冷却風速Vcが下記(1)式を満足し、同時に、紡糸ダクト内を紡糸口金から引取方向へ吐出糸条に沿って流れる気流の吹き下げ風速を2〜25m/分とすることを特徴とするポリエステルモノフィラメントの紡糸方法。
d×2.5−5≦Vc≦d×2.5+2 ・・・(式1)
ただし、d:モノフィラメントの繊度(dtex)
Vc:糸条冷却風速(m/分) - 紡出された糸条を一旦100〜200℃のエアーで冷却した後、10〜100℃のエアーで冷却する多段階除冷冷却方法を用いることを特徴とする請求項1に記載のポリエステルモノフィラメントの紡糸方法。
- 紡糸口金から紡出し、冷却固化した後に油剤を付与したポリエステルモノフィラメント糸条を、表面速度300〜800m/分で引き取った後に、一旦未延伸糸を巻き取ることなく、3個以上のホットロールに順次引き廻して多段延伸することを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステルモノフィラメントの紡糸方法。
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JP2007252405A JP2009084712A (ja) | 2007-09-27 | 2007-09-27 | 細繊度ポリエステルモノフィラメントの紡糸方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2010090108A1 (ja) | 2009-02-03 | 2010-08-12 | 東レ株式会社 | ポリエステルモノフィラメントおよびポリエステルモノフィラメントの製造方法 |
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-
2007
- 2007-09-27 JP JP2007252405A patent/JP2009084712A/ja active Pending
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