JP2012211399A - ポリエステルモノフィラメント - Google Patents

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Abstract

【課題】細繊度かつ寸法安定性に優れ、製織工程でのスカムの発生が少なく、オープニングが均一なスクリーン紗が得られる繊維断面方向および繊維長手方向の物性が均一なポリエステルモノフィラメントを提供する。
【解決手段】繊維長手方向100万メートル中における任意の5点で測定した繊維表面の配向度(Δn)の標準偏差が2.0以下、繊維表面の結晶化度の標準偏差が3.0以下である芯鞘複合型ポリエステルモノフィラメント。
【選択図】なし

Description

本発明は、#400(#:メッシュ数、1インチ=2.54cmあたりの糸条数)以上の高精密印刷向けスクリーン紗用途に好適な芯鞘複合型ポリエステルモノフィラメントに関するものである。
従来、スクリーン紗としては、シルクなどの天然繊維やステンレスなどの無機繊維からなるメッシュ織物が広く使用されてきたが、近年柔軟性や耐久性、コストパフォーマンスに優れた合繊メッシュが好んで使用され、中でもポリエステルモノフィラメントは寸法安定性に優れるなどスクリーン紗用途に好適で広く利用されている。スクリーン印刷は例えばプラズマディスプレイ(以下PDP)を構成する前面電極基盤、背面電極基盤への電極ペースト塗布やコンピュータグラフィックによるデザイン物の高精密印刷や、電子回路印刷などが挙げられる。こうした用途では、広い範囲での高い印刷精度が要求されることから、使用するスクリーン紗は、高張力の紗張りに耐えうる寸法安定性を持ち、均一かつ高いメッシュ数であることが重要である。さらにPDPの大画面化などに伴い、使用するスクリーン紗も数メートル以上の広い範囲にかけて欠点がない、高品位のものであることが重要である。
これらを実現するため、使用するポリエステルモノフィラメントは、細繊度・高強度であることが不可欠であるが、スクリーン紗の製造過程で、フィラメント−フィラメント間、またはフィラメント−金属間で繰り返し擦過を受けることで、フィラメントの一部が削り取られ、粉状またはフィブリル状のスカムが発生する。これはポリエステル分子の配向度が高く、結晶化の進んだ高強度のフィラメントほど起こりやすいことが知られているが、繊維長手方向に見たときに、配向度、結晶化度にムラがあると、その部分を起点に繊維表面が削られることが判った。スカムは製織機を汚染し、作業効率を低下させるだけでなく、スクリーン紗上に異物として残存する、もしくは目開き量の異常の原因となるなど、最終製品の機能を著しく損ねる重大な欠点である。具体的に例を挙げるとPDPにおける電極ペースト塗布などでは、スクリーン紗上のスカムによる目詰りや目開き量(以下オープニングと称することもある)の違いが、電極ペーストの塗布ムラや厚みムラとなり、さらにはPDPテレビに加工した際に画像欠点に直結し、コンピュータグラフィック印刷によるデザイン物の高精密印刷では、重大な印刷欠点となり、これらの商品価値は著しく損なわれる。
一般に、高精密なスクリーン印刷になるほど使用するスクリーン紗のメッシュ数が増加し、細繊度、高強度のモノフィラメントを使用しなければならない。特に#400以上のハイメッシュスクリーン紗では、スカムなどによる欠点がないことに加え、使用するすべての繊維の繊度や強度、更には繊維の配向度、結晶化度が均等にそろっていることが重要である。これは印刷精度の高度化に伴い、紗張り強力も上がるため、スクリーン紗を形成するすべての繊維の物性を一定にすることで、スクリーン紗のオープニングが均一になり、初めて高精密印刷が可能になるためである。
かかる要求に対して従来さまざまな技術が提案されている。
例えば鞘成分ポリエステルを共重合PETとし、使用するポリエステルの固有粘度(以下IV)、および芯と鞘の面積比を定めることで、繊維表面の複屈折率を制御し、スカム発生を抑制できるだけでなく、スクリーン紗の織目安定性や寸法安定性向上を狙った芯鞘型ポリエステルモノフィラメントがある(特許文献1)。しかしこの方法は、鞘成分のガラス転移点(以下Tg)が芯成分対比著しく低いため、鞘成分が溶融し加熱ローラーへの融着を防ぐために低い加熱温度で延伸を行わなくてはならず、モノフィラメントの高強度化を目的とした高温、高倍率の延伸ができないといった問題があった。
また、芯側ポリエステルのIV、破断強度、節糸の数を適正化し、さらに鞘側ポリエステルに特定の無機粒子を添加することにより繊維表面の摩擦抵抗を低下させることで、寸法安定性とスカム抑制効果をもつ芯鞘型モノフィラメントも提案されている(特許文献2)。しかしこの発明の製法は、各ポリエステルを融点以上の温度で溶融、紡糸し、これを一旦低速で巻き取った後、加熱延伸を行うことを特徴とする、いわゆる2工程法によるものである。この方法では、巻き取った直後から未延伸糸の結晶化が進み始め、未延伸糸の結晶化の進行は、巻取り後の経過時間だけでなく、周辺の温湿度により大きく左右されるといった問題があり、ポリエステル分子の配向や結晶化度に斑が発生し、延伸後の繊維長手方向の物性は不均一となる。
一方ポリエステルからなり、強度6.0cN/dtex以上、伸度10%以上であり、鞘成分の複屈折率(Δns)が180×10−3以下の芯鞘型複合モノフィラメントに関する発明では(特許文献3)、別々に溶融し、芯鞘型になるよう複合したポリエステルモノフィラメントの未延伸糸を一旦巻き取り、高倍率で多段延伸した後、延伸糸巻取り前にリラックス付与することで、鞘成分のポリエステルの配向が抑制され、スカム発生を低減させている。この発明は実施例において、延伸後の繊度が5〜9.8dtexの細繊度モノフィラメントにおいても必要な物性を得ているが、繊維表面での長手方向の配向及び結晶化度の均一性に関する検討が不十分で、スカム低減効果は、#330のスクリーン紗の製織によるものであり、#400以上のスクリーン紗を製織した際は、同様の効果は得られなかった。
繊維長手方向の物性が均一なモノフィラメントを得るべく、2工程法の延伸に使用する金属ローラーの表面粗度を規定し、金属ローラー上での糸条の把持力を上げることで延伸効率を上げる発明も提案されている(特許文献4)。しかしこの技術の有効な範囲は、繊度8.0dtex以上のモノフィラメントを用いて、#315程度のローメッシュスクリーン紗の製織に好適な技術であり、#400以上のハイメッシュスクリーン紗では技術的に不十分であった。
特許文献5では、繊度3〜8dtexの芯鞘複合型モノフィラメントにおいて、溶融紡糸したポリエステルを一旦巻き取ることなく多段延伸する、いわゆる直接紡糸延伸法(以下DSD法)により高倍率で延伸することで、強度7.5cN/dtex以上、タフネス29以上の優れたハイメッシュスクリーン紗用モノフィラメントを得ている。しかし、繊維長手方向の均一性、特に繊維表面の配向度、結晶化度の均一性に関する検討が不十分で、スクリーン紗製織時に局所的にスカムが発生する問題があった。
また、繊度3〜13dtexのIVの異なる2種類のポリマからなる芯鞘複合型モノフィラメントであって、特許文献5同様にDSD法を行い加熱延伸した糸を、2個以上の非加熱のゴデットロールを用いてリラックス付与し、張力を制御しながら、特定の巻き取り装置によりパーン形状に巻き取る方法が提案されている(特許文献6)。リラックス付与をすることで、高倍率延伸において起こりがちなパーン内層部での応力集中を抑制し、さらに巻き取り方法を工夫することで、スクリーン紗製造の際に問題となるスナールを抑制し、またリラックス付与により分子の配向が緩和されるため、スカムも抑制されている。しかし繊維表面での長手方向の配向、結晶化度の均一性に関する検討が不十分であり、#400メッシュ以上のハイメッシュスクリーン紗における製織時のスカムについてはさらなる改善が必要であった。
以上の特許文献の通り、モノフィラメントの高強度化、スカム低減化、物性の均一化を目指した発明が数多く提案されているが、複雑な電極ペースト塗布や高精密印刷可能なハイメッシュスクリーン紗を安定して得るための、繊維長手方向の均一性に優れた細繊度高強度モノフィラメントが待ち望まれていた。
特開2009−256822号公報(特許請求の範囲、実施例) 特開2005−240266号公報(特許請求の範囲、実施例) 特開2004−232182号公報(特許請求の範囲、実施例) 特開2008−75188号公報(特許請求の範囲、実施例) 特開2010−077563号公報(特許請求の範囲、実施例) 特開2010−180484号公報(特許請求の範囲、実施例)
本発明の目的は、上記に示す従来の問題を解決し、細繊度かつ寸法安定性に優れ、スカム等欠点の発生が少なく、オープニングが均一なスクリーン紗とし得る、繊維長手方向の物性が均一なポリエステルモノフィラメントを提供することである。
前記本発明の目的は、繊維長手方向100万メートル中における任意の5点で測定した繊維表面の配向度(Δn)の標準偏差が2.0以下、繊維表面の結晶化度の標準偏差が3.0以下であることを特徴とする芯鞘複合型ポリエステルモノフィラメントによって、達成できる。
PDP電極ペースト塗布などの電子基板印刷、またはCD印刷やグラフィック印刷などの高精密印刷に好適なスクリーン紗の製造において、製織時のスカムの発生が少なく、オープニングが均一な紗を安定して得ることができる。
本発明の一実施形態を示す紡糸延伸設備の概略図である。 2工程法における紡糸設備の概略図である。 2工程法における延伸設備の概略図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の芯鞘複合型ポリエステルモノフィラメントは、繊維表面の配向度(以下Δn)を、繊維長手方向100万メートル中における任意の5点で測定したときの標準偏差が2.0以下、同様の頻度で測定した繊維表面の結晶化度の標準偏差が3.0以下であることが必要である。ポリエステルモノフィラメントの物性は主として、使用するポリエステル分子のΔnと正の相関関係にあるため、繊維長手方向におけるΔn、結晶化度のばらつきを低減することで、モノフィラメントの引張破断強度や伸度、収縮応力といった物性のばらつきも抑制することが可能である。繊維表面のΔn、結晶化度は特に重要であり、ハイメッシュスクリーン紗を製織する際、フィラメント−フィラメント間、またはフィラメント−金属間で擦過されるため、繊維表面のΔn、結晶化度に斑があると、その部分を起点に繊維表面が削れる。さらに、繊維表面のΔn、結晶化度が均一であれば、紗張り後のスクリーン紗のオープニングも均一となる。繊維長手方向100万メートル中における任意の5点で測定したときの繊維表面のΔnのより好ましい標準偏差は1.5以下、さらに好ましくは1.0以下である。同様の頻度で測定した繊維表面の結晶化度のより好ましい標準偏差は2.0以下、さらに好ましくは1.5以下である。
本発明のポリエステルモノフィラメントの繊度は3〜13dtexが好ましく、より好ましくは4〜10dtexである。#300以下のオープニングが粗いスクリーン紗では、繊度15〜25dtex程度のモノフィラメントが使用されているが、精密印刷に適した#400以上のハイメッシュスクリーン紗では、1本あたりのメッシュ格子間隔はおよそ63μmであり、印刷に必要な1格子あたりのオープニングを維持するためには、使用するモノフィラメントの繊度は13dtex以下であり、より好ましくは10dtex以下である。しかし製織性、特に経糸飛送性を維持するため、少なくとも3dtex以上の繊度が必要であり、4dtex以上であることが好ましい。
繊維長手方向の繊度ムラであるウースター値(ノーマル法)はスクリーン紗のオープニングの均一性の観点から、2.0%以下が好ましく、より好ましくは1.5%以下、更に好ましくは1.0%以下である。ここでいうウースター値はウースターテクノロジーズ社のウースター測定機で糸長500mを測定した際に得られる値である。
スクリーン紗は、メッシュ数に比例して高い紗張り強力が必要であるため、本発明の目標とする#400以上のスクリーン紗におけるポリエステルモノフィラメントの強度は6.0cN/dtex以上が好ましい。より好ましくは7.0cN/dtex以上、さらに好ましくは7.5cN/dtex以上である。
スクリーン紗製造時の紗張り後の強度やスクリーン印刷時の版離れ性を良好にするためには10%伸長時の強度(以下10%モジュラス)を5.0cN/dtex以上にすることが好ましく、より好ましくは6.0cN/dtex以上である。
本発明のポリエステルモノフィラメントの伸度は11%以上であれば良好な製織性が得られ好ましい。
本発明におけるポリエステルモノフィラメントは、固有粘度(以下IV)の異なるポリエチレンテレフタレート(以下PET)を芯鞘型に複合してなる、芯鞘型複合ポリエステルモノフィラメントとすることが繊維物性、製織性を容易に両立できる点で好ましい。ポリエチレンテレフタレートとは、繰り返し単位の90モル%以上がエチレンテレフタレートである。また芯鞘型とは、繊維断面形状において、一方の樹脂が他方の樹脂によって完全に覆われており、繊維表面の樹脂を鞘成分、鞘成分に覆われた繊維内部の樹脂を芯成分とする。断面形状については必要により、異形断面や芯成分が偏心していてもかまわないが、スクリーン紗用モノフィラメントとして用いる場合には、安定した製糸性、高次加工性のため、芯成分と鞘成分は同心円状に配置し、丸断面であることが好ましい。
芯鞘型複合ポリエステルモノフィラメントにおいては、IVの高いPETを芯成分とすることが好ましい。これにより繊維内部はΔnが高く、結晶化も促進するので、繊維全体にスクリーン紗用モノフィラメントとして必要な高い強度を付与することができる。
芯成分PETのIVは、高強度化という観点から0.7以上が好ましく、更に好ましくは0.8以上である。一方、溶融紡糸における溶融ポリマの流動性という観点から1.4以下が好ましく、更に好ましくは1.3以下である。
芯成分のPETはポリエステルモノフィラメントの強度を主として担うため、通常ポリエステル繊維に添加される酸化チタンに代表される無機粒子の添加物は0.5wt%未満であることが好ましい。
芯成分PETのIVを0.7以上とすると共に、鞘成分にはIVが低いPETをとすることが好ましく、芯成分PETのIVと比べて0.2以上小さいものであることが好ましい。鞘成分そのもののIVは、溶融押出機や紡糸口金内での安定計量性の観点から少なくとも0.3以上であれば良く、0.4以上であればさらに好ましい。一般的なスカム発生のメカニズムは、Δnが高く、結晶化の進んだ繊維表面のポリエステルが、製織時に筬羽との擦過によって毛羽状あるいは粘着質状に削り取られることによるので、IVが低い、すなわちポリエステル分子鎖が短くΔnの低いポリエステルを繊維表面に配した設計とすることで、耐摩耗性を向上させ、製織時のスカム発生をより低減することができる。また溶融紡糸の口金吐出孔内壁面におけるせん断応力を鞘成分が担うため、芯成分が受けるせん断力は小さくなり、芯成分はポリエステル分子の配向度が低く、かつ均一な状態で紡出されるため、延伸後に得られるポリエステルモノフィラメントの強度が向上する。
鞘成分のPETはポリエステルモノフィラメントの耐磨耗性を主として担うため、酸化チタンに代表される無機粒子を0.05〜0.5wt%程度添加させることが好ましい。無機粒子添加量をこの範囲とすることで、耐摩耗性と繊維表面のΔnの均一性を維持することができる。
また、本発明の芯鞘型複合ポリエステルモノフィラメントにおいては、繊維断面方向における繊維表面と中心部の結晶化度の差が10.0%以下であることが好ましい。これにより製織時のスカムを抑制し、かつ、繊維物性の均一性も高めることができる。より好ましくは8.0%以下である。
また本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて芯成分、鞘成分いずれのPETにも、10モル%以下の共重合をしてもかまわない。共重合成分の例として、酸成分にはイソフタル酸、フタル酸、ジブロモテレフタル酸、ナフタリンジカルボン酸の如き二官能性芳香族カルボン酸、セバシン酸、アジピン酸、シュウ酸の如き二官能性脂肪族カルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。グリコール成分にはプロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールAや、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコールが挙げられる。
さらに本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて芯成分、鞘成分いずれのPETにも、添加物として酸化防止剤、制電剤、可塑剤、紫外線吸収剤、着色剤等を適宜添加しても良い。
芯鞘複合比は、重量パーセント比で70:30〜90:10が好ましく、より好ましくは80:20〜90:10である。芯成分の割合を70%以上とすることで、細繊度であっても必要な強度を達成可能であり、また鞘成分の割合を10%以上とすることで、溶融紡糸の口金吐出孔内壁面におけるせん断応力を鞘成分が担うため、芯成分が受けるせん断力は小さくなり、芯成分は分子鎖配向度が低く、かつ均一な状態で紡出されるため、最終的に得られるポリエステルモノフィラメントの強度が向上する。
次いで、本発明の目的を達成するための好ましい製造方法を説明する。
本発明の芯鞘複合型ポリエステルモノフィラメントは、芯成分、鞘成分を別々に溶融し、押し出した芯成分PETと鞘成分PETを、芯鞘型となるよう複合口金などを用いて吐出した後、紡糸された糸条を一旦巻き取ることなくそのまま延伸を行う、図1の様なDSD法を用いることが好ましい。特に本発明のような細繊度モノフィラメントにおいては、選択する条件によっては2工程法を用いても本発明の目的にかなったモノフィラメントを得ることができるが、2工程法を用いると巻き取った未延伸糸の保管環境や延伸までの経時条件の差により繊維長手方向の物性斑が発生しやすいため、DSD法を採用することで容易に改善できる。
ここで、これらの工程のいずれかの部分において、得られるポリエステルモノフィラメントの平滑性、耐磨耗性、制電性を向上させる目的で油剤を付与することが好ましい。給油方式としては給油ガイド方式、オイリングローラー方式、スプレー方式などを挙げることができ、紡出から延伸、巻取りまでの間で複数回数給油しても構わない。
本発明の目的を達成するためには、紡糸工程において以下に示す、(1)〜(4)の点を留意する必要がある。
(1)溶融から紡出までのPETの溶融通過時間、加熱時間を極力短くし、PETの分子量低下を抑制する。
(2)複合パック口金1の直下に加熱体2を設置し、これによりパック下の雰囲気温度が260℃以上となるよう積極的に加熱し、伸張変形による分子配向を抑制する。
(3)紡出後の糸条は、第一ゴデットローラー5を用いて引取速度800m/分以下、より好ましくは300〜600m/分の低速巻き取りとし、分子配向を抑制する。
(4)紡糸ドラフト(=引き取り速度/口金吐出口内の平均線速度)を100以下、より好ましくは70以下の低ドラフトとし、糸条の変形を緩やかにし、分子配向を抑制する。
一般にスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントは、製織時、高次加工時に高い張力がかかるため、一般的な衣料用ポリエステルフィラメントに比べて高強度化する必要がある。細繊度でありながら必要な強度を得るためには、(1)によってPET分子の熱劣化を抑制すること、さらに(2)〜(4)によって、ゴデットローラーからの張力や伸張粘性などにより進行する分子配向を極力抑制した状態を保つことができる。このようにしてポリエステルを冷却、固化した後、延伸工程において高温、高倍率で延伸することで、物性の均一化と、高強度化を達成することができる。
次に、本発明の目的を達成するため、延伸工程、および巻取工程において留意すべき点を以下(5)〜(7)に示す。
(5)3対以上の金属ローラーによる多段延伸とし、トータル延伸倍率を3.0〜7.5倍とする。
(6)加熱延伸を行うローラーのうち少なくとも第一ローラー7および最終ローラー9を、糸条に接する表面粗度が1S未満の鏡面ローラー、もしくは溝付き鏡面ローラーとする。
(7)延伸中、加熱延伸を行う全ローラー7、8、9を、保温もしくは雰囲気温度調節可能な温度調節保温容器6で覆うこととする。
本発明の目的である、繊維断面方向および長手方向での物性の均一なモノフィラメントを得るには、(5)に示す3対以上のローラーを用いた多段延伸とすることで、ポリマを段階的に引き伸ばし、急激な伸張変形に起因する物性の斑を抑制することができる。使用するローラーの数は、操業性やコストの面から鑑みて3〜6対程度が適当である。またローラーの仕様については、まず加熱延伸を行うため、室温から最大でPETの融点260℃近傍程度まで昇温可能な金属製のホットローラーとし、構成については1つのホットローラーと1つのセパレートロールでのセットでも、また2つのホットローラー(ディオタイプ)のセットのいずれでも良い。延伸時のローラー温度は、第一ローラー7についてはPETのTg+20℃程度としてポリマに流動性を与えた後、最終ローラー9にかけてPETのTg+20〜40℃程度の温度を維持した後、最終ローラー9の温度は130〜230℃と高温にすることが好ましい。こうすることにより最終ローラー上で急速かつ均一に結晶化が促進するため、ローラーと糸条の融着がなく、繊維長手方向に配向・結晶化度が均一なモノフィラメントを得ることができる。またトータル延伸倍率は、高倍率で延伸するほど、モノフィラメントの高強度化を実現できるが、少なくとも3.0倍とすることで本発明において必要な強度を達成可能であり、また芯鞘成分PETのポリマ特性から、限界延伸倍率は7.5倍以下であり、これにより繊維長手方向の物性斑や繊維中のボイド、延伸途中の繊維の破断などを抑制し、優れた品質と製糸性を維持できる。また、第一ローラー7と第二ローラー8間の延伸倍率を、トータル延伸倍率の50〜80%とすることで、より繊維長手方向の物性の斑を抑制することが可能であり、好ましい。
さらにローラーは(6)のようにすることが重要である。複数のローラーを用いた多段延伸であっても、最終的に巻取り直前の最終ローラー9が最も速く、第一ローラー7が最も遅いことになるため、少なくともこれら2つのローラーを、糸条の把持性に優れた鏡面ローラー、もしくはローラー表面の軸方向に沿って複数の溝を刻設し、鏡面ローラー対比わずかに平滑性を備えた溝付き鏡面ローラーとすることで、延伸中の糸揺れに起因する物性斑を抑制することが可能となる。その間のローラーについては、全ローラーを鏡面ローラーとするよりは、溝付き鏡面ローラーや梨地ローラーを適宜併用することで、糸条とローラーの融着を抑制できるので好ましい。ここにおける鏡面とは、JIS−B−0601に記載される最大高さ(Rmax)に区分される表面粗度が1S未満のものを指し、一方梨地とは、2S〜4S以下のもののことである。
さらに延伸中は各ローラー周りを(7)のようにすることが重要である。従来提案された技術では、延伸中のローラー温度を規定しても、ローラー周辺の温度は制御されていないために、延伸を行う環境や時期によって温度差があり、延伸中の糸条の温度が低下し、繊維表面の配向度、結晶化度ムラや繊維断面方向の結晶化度ムラの原因となっていた。本発明のモノフィラメントの目的を達成するためには、従来見過ごされてきたローラー周辺の温度についても、ローラー温度と同様に制御することで、延伸中の糸条表面の温度低下を抑制し、繊維長手方向に繊維表面の配向・結晶化度が均一で繊維断面方向に結晶化度が均一なモノフィラメントが得られる。ローラー周辺の雰囲気温度は、以下式の範囲にすることが好ましい。
T2≧T1×0.7
ここでT2はローラー表面から5mm離れた位置における雰囲気温度(℃)であり、T1はローラー表面温度(℃)である。
ローラー周辺温度の制御は、操業性、コスト面から、ローラーを金属製の容器で覆い、作業効率を考慮し必要に応じてローラーを開放できる仕様とすることが好ましい。これにより外気温とローラー間が、高温の空気で保温されるため、これが緩衝となり糸条の温度低下を抑制することができる。より好ましくは、容器の外壁を保温材で覆うことで外気温の影響を抑制できる。さらに好ましくはローラー周辺部、すなわちローラー表面から5mmの位置に測温対を設置し、ローラー周辺の雰囲気温度をコントロールすることで繊維長手方向の物性の均一性が向上する。ローラー周辺の雰囲気温度をコントロールする方法としては、ローラー周辺部にヒーターを設置する方法や、容器内の空気を循環させ、循環ラインの任意の位置にヒーターを設けて加熱エアーを循環させる方法等がある。ローラーの温度や速度、仕様によっては、延伸中に糸揺れの原因となる気流が発生するため、必要に応じて防風板等の設置により、糸揺れを抑制することで、配向・結晶化度のばらつきを軽減し、繊維長手方向の物性均一化を実現できる。容器の具体的な仕様は、糸条の取り回しやローラーの大きさにより適宜変更すればよく、各ローラーを別々の容器で覆っても良いし、全ローラーを1つの大型の容器で覆っても良いが、各ローラーを別々の容器で覆う方法により各ローラーの雰囲気温度を容易にコントロールできるため好ましい。
延伸を終えた本発明の芯鞘複合型ポリエステルモノフィラメントは、用途に応じて既知の糸条巻取装置12を用いて、チーズ状またはパーン状に巻き取ることが好ましい。この際、延伸の最終ローラーから巻取装置の間に更に数個のゴデットローラーを配することが好ましい。最終延伸ローラーとゴデットローラーの間で負の速度差を付与する場合、延伸によって生じたポリエステル分子非晶部位の歪みを緩和することができるため、巻締り抑制効果、耐磨耗性向上効果が得られる。一方、最終延伸ローラーとゴデットローラーの間で正の速度差を付与する場合、得られるポリエステルモノフィラメントの初期弾性率が向上することでハイメッシュスクリーン紗として印刷に使用した際にズレが小さく、印刷精度が向上する。これらは印刷用途毎の要求特性を鑑みた上で適宜決定する必要がある。
以下本発明を実施例により詳細に説明する。なお、実施例中の評価は以下の方法に従った。
(1)固有粘度(IV)
試料0.8gをオルソクロロフェノール10mlに完全溶解させ、25℃で測定した。
(2)ガラス転移点(Tg)
使用ポリマの粉末10mgを採取し、示差走査熱量計(パーキンエルマー社:DSC−4型)を用いて、16℃/分で昇温しつつ、昇温過程で発現するガラス転移に伴うピークを、パーキンエルマー社のデータ処理システムで処理し、ガラス転移温度Tg(℃)を求めた。
(3)繊度
糸条を500mかせ取り、かせの重量に20を乗じた値を繊度とした。
(4)強度、伸度、10%モジュラス
オリエンテックス社製テンシロン引張試験機を用い、初期試料長20cm、引張速度2cm/分にて10%伸長時の強度(10%モジュラス)、破断した際の強度、伸度を測定し、それぞれ連続して5回測定した値の平均値を強度(cN/dtex)、伸度(%)、10%モジュラス(cN/dtex)とした。
(5)ウースター値
ウースターテクノロジーズ社製ウースター測定機を用いて糸速度100m/分で5分間測定した時のウースター値(ノーマル)を求めた。
(6)分子配向度(Δn)および標準偏差
サンプルをエポキシ樹脂に包埋後、ミクロトームを用いて厚さ2μm の切片に加工し、
堀場ジョバンイボン社製 Ramanor T−64000を用いて測定した。光源とし
て、Ar+レーザー(514.5nm、50mW)を用い、100倍の対物レンズによって1μm に集光した。ラマン散乱光はシングルモード、スリット100μm、回折格子1800gr/mmの条件で、CCD検出器により検出した。
測定は、100万メートル以上巻き取ったモノフィラメントの任意の5点において、繊維の表面から中心に向かって1μmの箇所で行い、それぞれの測定結果に対しラマンバンドパラメータを算出し、その標準偏差(σ)を求めた。PETラマンバンドパラメータについては、下記式を用いた。
強度比R = I 1615平行/ I 1615垂直
I 1615平行:繊維方向に平行な偏向配置での1615cm−1ラマンバンドの強度
I 1615垂直:繊維方向に垂直な偏光配置での1615cm−1ラマンバンドの強度
換算複屈折は次の定義による。
Δn(×10−3 )=275×(R−1)/(R+2)
(換算複屈折は1軸延伸の繊維を標準として求めた。)。
(7)結晶化度(χ)および標準偏差
サンプルをエポキシ樹脂に包埋後、ミクロトームを用いて厚さ2μm の切片に加工し、
堀場ジョバンイボン社製 Ramanor T−64000を用いて測定した。光源とし
て、Ar+レーザー(514.5nm、50mW)を用い、100倍の対物レンズによって1μm に集光した。ラマン散乱光はシングルモード、スリット100μm、回折格子1800gr/mmの条件で、CCD検出器により検出した。
繊維表面の測定は、100万メートル以上巻き取ったモノフィラメントの任意の5点において、繊維の表面から中心に向かって1μmの箇所で行い、それぞれの測定結果に対しラマンバンドパラメータを算出し、その標準偏差(σ)を求めた。
また、繊維断面方向の測定は任意の1点において、繊維表面から中心部まで1μm毎の箇所で測定を行い、それぞれの測定結果に対しラマンバンドパラメータを算出し、繊維表面の結晶化度から繊維中心部の結晶化度を引いた値を差とした。
強度比R = I 1615平行/ I 1615垂直
I 1615平行:繊維方向に平行な偏向配置での1615cm−1ラマンバンドの強度
I 1615垂直:繊維方向に垂直な偏光配置での1615cm−1ラマンバンドの強度
換算複屈折は次の定義による。
Δn(×10−3 )=275×(R−1)/(R+2)
換算密度(ρ)は次の定義による。
ρ(g/cm3 )=(305−Δν1730)/209
Δν1730:1730cm−1付近のラマンバンド半値全幅
(換算複屈折率は1軸延伸の繊維を標準として求めた。換算密度は種々のPET試料の半値幅から経験的に求めた。)
結晶化度χは該記したρから次の定義により求めた。
χ(%)=100×(ρ−1.335 )/(1.455−1.335)
(8)スクリーン紗製織評価
経糸、緯糸共に本発明の各実施例および各比較例のポリエステルモノフィラメントを用いて、スルーザー型織機により織機の回転数200回転/分として下記のスクリーン紗(#
400)を製織した。なお、製織工程では90m製織時に筬を目視観察し、スカムの発生有無を確認した。
経密度 :400本/2.54cm
緯密度 :400本/2.54cm
得られたスクリーン紗を速度2m/分で走行させ、目視で熟練した検査技術者が検反し、スクリーン紗の検反規定に沿って紗品位の評価を行った。その後各スクリーン紗より印刷版を10枚作製し、それぞれの印刷版を1000枚印刷した際の寸法安定による印刷パターンの歪みを観察し、次の4段階で総合的に評価した。合格レベルは○以上である。
○○:紗品位の欠点がなく、寸法安定性が極めて良好。
○ :紗品位の欠点がなく、寸法安定性が良好。
× :紗品位の欠点はないが、寸法安定性が不良。もしくは紗品位の欠点はあるが、寸法安定性が良好
××:の紗品位の欠点があり、寸法安定性も不良。
(実施例1)
常法によって重合およびチップ化した固有粘度1.10(Tg80℃)のPETを芯成分、固有粘度0.55(Tg78℃)で酸化チタンを0.3wt%含有するPETを鞘成分とした。紡糸工程および延伸工程はDSD法によるものであり、図1に示す装置を使用した。芯成分、鞘成分をそれぞれ個別のエクストルーダーによって295℃で溶融させた後、溶融PETは290℃に保温した配管内を通過させた後、公知の芯鞘型複合紡糸口金1から芯:鞘の重量比率が80:20となるよう芯鞘型複合糸条を紡出させた。吐出糸条は口金面から下方に100mmの間、雰囲気温度を290℃±10℃となるように加熱体2により積極保温した後、糸条冷却風装置3にて25℃のエアーを10m/分の風速で糸条に吹き付け、冷却固化せしめた。冷却固化された糸条は給油ローラー4により紡糸油剤を給油したのち、表面速度500m/分の第一ゴデットローラー5、表面速度505m/分、表面温度90℃、表面粗度0.8Sの鏡面ローラーを用いた第一ローラー7、表面速度2000m/分、表面温度100℃、表面粗度2.5Sの梨地ローラーを用いた第二ローラー8、表面速度3030m/分、表面温度220℃、表面粗度0.8Sの鏡面ローラーを用いた最終ローラー9、表面速度2878m/分、表面粗度0.8Sの鏡面ローラーを用いた第二ゴデットローラー10および第三ゴデットローラー11を介した後、巻き取り張力0.5g/dtexとなるように速度が制御された糸条巻取装置12にてポリエステルモノフィラメントを巻き取った。巻取り中は、第一ローラー7、第二ローラー8、最終ローラー9それぞれを金属製の温度調節保温容器6で覆い、各容器の外壁を保温材で覆った。ローラー表面から5mm離れた位置の雰囲気温度を測定した結果、第一ローラー5は76℃、第二ローラー8は82℃であった。さらに最終ローラー9についてはローラー表面から5mm離れた位置に測温対を設置し、容器内の空気をブロアーで循環させて、容器外側の循環ライン上に電熱ヒーターを設置し、ローラー表面から5mm離れた位置の測温対部温度が200℃±5℃になるように循環エアーを加熱した。このときの紡糸ドラフトは64、総延伸倍率は6.0倍、1段目倍率比率(1段目延伸倍率/総延伸倍率×100)は66%とした。得られたモノフィラメントの繊度は6.0dtex、強度8.9cN/dtexであった。糸切れなく採取したポリエステルモノフィラメント100万メートルの中から、任意で選んだ5点にて測定サンプルを作製し、繊維表面のΔn、および結晶化度を求め、各々標準偏差を算出したところ、Δnについては標準偏差0.7、結晶化度は標準偏差1.2であった。また、内1点について繊維表面と中心部の結晶化度の差を求めたところ、4.5%であった。別途同一の方法にて採取したポリエステルモノフィラメントを用いて、スクリーン紗の製織評価、印刷評価を行ったところ、製織工程ではスカムの発生はなく、得られたスクリーン紗はオープニング斑がなく、これを用いて作製した印刷版による印刷評価でも、印刷パターンの歪みがなく、良好な印刷性能が得られ、高精密な印刷が可能であることを確認した。
(実施例2)
得られるポリエステルモノフィラメントの繊度を9.8dtexに調整し、さらに最終ローラーの加熱エアー循環装置を取り外し、第一ローラー、第二ローラー同様に外壁を保温材で覆った金属製の温度調節保温容器で覆ったのみとした以外は実施例1と同様の方法にてポリエステルモノフィラメントを得た。最終ローラーについて、ローラー表面から5mm離れた位置の雰囲気温度を測定したところ、172℃であった。結果、糸長手方向の繊維表面のΔnおよび結晶化度の標準偏差は若干悪化し、製織工程で若干のスカムが発生したが、得られたスクリーン紗はオープニング斑はなく、印刷パターンの歪みもなく、十分な印刷性能であった。
(実施例3〜5)
得られるポリエステルモノフィラメントの繊度を表1の通り変更した以外は、実施例1と同様の方法にてポリエステルモノフィラメントを得た。実施例3および実施例4については製織工程でのスカムもなく、印刷性能も十分であった。実施例5では製織工程にて若干のスカムが発生し、印刷評価において若干印刷パターンの歪みが見られたものの十分な印刷性能を持っていた。
(比較例1)
第一ローラーから最終ローラーを覆った温度調節保温容器を取り外した以外は実施例1と同様の方法でポリエステルモノフィラメントを得た。ローラー表面から5mm離れた位置の雰囲気温度を測定した結果、第一ローラーは58℃、第二ローラーは64℃、最終ローラーは144℃であった。結果、繊維表面での繊維長手方向のΔn、結晶化度の均一性は悪化し、繊維断面方向の結晶化度の表面と中心部の差も大きくなり、製織工程でスカムが多発し、得られたスクリーン紗はオープニング斑が大きく、これを用いて作製した印刷版による印刷評価でも、印刷パターンの歪みも大きく、印刷性能は不十分であった。
以上、実施例1〜5、比較例1の結果を表1に示す。
(実施例6〜8、比較例2〜3)
原料となるPETのIVおよび芯鞘比率を表2の通り変更した以外は実施例1と同様の方法にてポリエステルモノフィラメントを得た。実施例6では若干の強度低下が見られたが、製織工程でのスカムの発生はなく、印刷性能も十分であった。実施例7では芯成分のIVが高いことにより10%モジュラスが高くなり、製織にて若干スカムが発生したが、得られたスクリーン紗の欠点までは至らず、十分な印刷性能を持っていた。実施例8では強度、10%モジュラスが低下し、印刷評価においてラインの再現性が若干低下したが十分な印刷性能を持っていた。比較例2では得られたポリエステルモノフィラメントの強度が低下し、繊維表面での繊維長手方向のΔnおよび結晶化度の標準偏差も悪化し、印刷評価においてラインの再現性が著しく低下し、印刷性能は不十分であった。比較例3では製織工程でのスカムが多発し、得られたスクリーン紗の欠点が多発し、印刷性能も不十分であった。
以上、実施例6〜8、比較例2〜3の結果を表2に示す。
(実施例9、比較例4)
原料となるPETに添加する酸化チタンの量を表3の通り変更した以外、実施例1と同様の方法にてポリエステルモノフィラメントを得た。実施例9では若干強伸度が低下し印刷評価においてラインの再現性が若干低下したが十分な印刷性能を持っていた。比較例4は強伸度が低下し、繊維表面での繊維長手方向のΔnおよび結晶化度の標準偏差も悪化し、製織でのスカムが多発し、得られたスクリーン紗の欠点が発生し、印刷性能が不十分であった。
(実施例10〜11、比較例5)
口金下加熱体温度を表4の通り変更した以外は実施例1と同様の方法にてポリエステルモノフィラメントを得た。実施例10は口金より吐出された直後の糸条の伸張変形による分子配向が十分に抑制され、高強度、高モジュラスで、かつ良好な伸度の繊維が得られ、繊維表面での繊維長手方向のΔn、結晶化度の均一性も良好で、製織工程でのスカムの発生もなく、得られたスクリーン紗のオープニング斑もなく、印刷評価では印刷パターンの歪みがなく、良好な印刷性能が得られた。実施例11は若干強度が低下し、繊維断面方向での繊維表面と中心部の結晶化度の差が大きくなり、製織工程でのスカムが若干発生し、印刷評価での印刷パターンでの歪みが若干発生したが、印刷性能は問題ないレベルであった。比較例5は強伸度、10%モジュラスが低下し、繊維表面での繊維長手方向のΔn、結晶化度の均一性も低下し、製織工程でスカムが発生し、得られたスクリーン紗の欠点が発止し、印刷評価では印刷パターンの歪みが発生し、印刷性能は不十分であった。
(比較例6)
比較例6は図2、3に示すような2工程法によりポリエステルモノフィラメントを得た。すなわち、紡糸口金13から吐出、紡出糸状を加熱体14にて積極保温、糸状冷却風装置15にて冷却固化、給油ローラー16にて給油までは実施例1と同様の方法にてポリマーを吐出させ、その後は表4の通り第一ゴデットローラー17にて引取速度800m/分、第一ゴデットローラー17と同速の第二ゴデットローラー18を介して糸条巻取装置19で一旦未延伸糸20を得た。その2時間後、延伸工程にて供給ローラー21で未延伸糸20を供給、第一ローラー22、第二ローラー23、最終ローラー24にて延伸熱セットを行い、第三ゴデットローラー26を介して糸条巻取装置27にて表4の通りの条件でポリエステルモノフィラメントを得た。なお、各ローラーは金属製の温度調節保温容器25で覆った。得られたポリエステルモノフィラメントは強度、10%モジュラスが低く、繊維表面での繊維長手方向のΔn、結晶化度の均一性が悪く、糸断面方向の繊維表面と中心部の結晶化度の差も大きく、製織工程でスカムが多発し、得られたスクリーン紗の欠点も多発し、印刷性能は不十分であった。
(実施例12〜13、比較例7)
各ローラーの速度、ローラー表面粗さ、ローラー温度、紡糸ドラフトを表5の通り変更した以外は実施例1と同様の方法にてポリエステルモノフィラメントを得た。実施例12は各ローラー速度が低く、生産性は悪化したが、良好な強度、伸度、10%モジュラスが得られ、繊維表面での繊維長手方向のΔn、結晶化度が均一であり、繊維断面方向の繊維表面と中心部の結晶化度の差も小さく、製織工程でのスカム発生はなく、得られたスクリーン紗の欠点もなく、印刷評価では印刷パターンの歪みがなく、十分な印刷性能であった。実施例13は引取速度が高く、トータル延伸倍率も低かったため、強度、10%モジュラスが低下し、繊維表面での繊維長手方向のΔn、結晶化度の均一性も若干低下したが、製織工程でのスカムの発生もほとんどなく、印刷性能も十分であった。比較例7では更に引き取り速度を高くし、トータル延伸倍率も低くした結果、紡糸ドラフトは100を超え、低強度、低10%モジュラスとなり、更に繊維長手方向のウースター値も悪化し、繊維表面での繊維長手方向のΔn、結晶化度の均一性も低下し、製織工程ではスカムが多発し、得られたスクリーン紗の欠点も多発し、印刷性能は不十分であった。
(実施例14〜15、比較例8〜11)
各ローラーの速度、ローラー表面粗さ、ローラー温度、最終ローラーから巻き取り間リラックス率、紡糸ドラフトを表6の通り変更した以外は実施例1と同様の方法にてポリエステルモノフィラメントを得た。実施例14ではトータル延伸倍率を3.3まで下げた結果、強度、10%モジュラスは低下し、印刷評価での印刷パターンの歪みは若干発生したが、繊維表面での繊維長手方向のΔn、結晶化度の均一性は良好であったため、製織工程でのスカムの発生はなく、得られたスクリーン紗の欠点もなく、印刷性能は十分であった。実施例15ではトータル延伸倍率を7.3まで上げた結果、得られたポリエステルモノフィラメントは高強度、高モジュラス、低伸度となり、また糸断面方向の繊維表面と中心部の結晶化度の差は大きくなったが、繊維表面での繊維長手方向のΔn、結晶化度の均一性は良好で、製織工程でのスカムは問題ない程度であり、得られたスクリーン紗の欠点も問題ない程度で印刷性能も十分であった。比較例8では1段目延伸倍率をトータル延伸倍率の48%とし、トータル延伸倍率を7.5、最終ローラーから巻き取り間をストレッチサイドにした結果、10%モジュラスが高く、繊維表面での繊維長手方向のΔn、結晶化度の均一性も悪化し、製織工程でスカムが多発し、得られたスクリーン紗の欠点も多発し、印刷性能は不十分であった。比較例9では1段目延伸倍率をトータル延伸倍率の85%とした結果、強度、10%モジュラスが低下し、繊維長手方向のウースター値も悪化し、繊維表面での繊維長手方向のΔn、結晶化度の均一性は低下し、糸断面方向での繊維表面と中心部の結晶化度の差も大きくなり、印刷評価での印刷パターンの歪みが大きく、印刷性能は不十分であった。比較例10では第一ローラーを梨地に変更した結果、強度、10%モジュラスは低下し、繊維長手方向のウースター値、繊維表面で繊維長手方向のΔn、結晶化度の均一性は悪化し、製織工程ではスカムが多発し、得られたスクリーン紗のオープニング斑も発生し、印刷評価での印刷パターンの歪みも大きく、印刷性能は不十分であった。比較例11では最終ローラーを取り外して1段延伸とした結果、強度、10%モジュラスは大幅に低下し、繊維表面での繊維長手方向のΔn、結晶化度の均一性は悪化し、繊維断面方向での繊維表面と中心部の結晶化度の差も大きくなり、印刷評価での印刷パターンの歪みが大きく、印刷性能は不十分であった。
Figure 2012211399
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Figure 2012211399
Figure 2012211399
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1:紡糸口金
2:加熱体
3:糸条冷却風装置
4:給油ローラー
5:第一ゴデットローラー
6:温度調節保温容器
7:第一ローラー
8:第二ローラー
9:最終ローラー
10:第二ゴデットローラー
11:第三ゴデットローラー
12:糸条巻取装置
13:紡糸口金
14:加熱体
15:糸条冷却風装置
16:給油ローラー
17:第一ゴデットローラー
18:第二ゴデットローラー
19:糸条巻取装置
20:未延伸糸
21:供給ローラー
22:第一ローラー
23:第二ローラー
24:最終ローラー
25:温度調節保温容器
26:ゴデットローラー
27:糸条巻取装置

Claims (4)

  1. 繊維長手方向100万メートル中における任意の5点で測定した繊維表面の配向度(Δn)の標準偏差が2.0以下、繊維表面の結晶化度の標準偏差が3.0以下であることを特徴とする芯鞘複合型ポリエステルモノフィラメント。
  2. 繊度3〜13dtex、強度が6.0cN/dtex以上であることを特徴とする請求項1記載の芯鞘複合型ポリエステルモノフィラメント。
  3. 固有粘度の異なる2種類のポリエチレンテレフタレートを芯鞘型に複合することを特徴とする請求項1または2記載の芯鞘複合型ポリエステルモノフィラメント。
  4. 繊維断面方向における繊維表面と中心部の結晶化度の差が10.0%以下である請求項1〜3いずれかに記載の芯鞘複合型ポリエステルモノフィラメント。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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