JP2009007945A - 可変容量圧縮機の容量制御システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】可変容量圧縮機の吐出容量制御システム(A)は制御対象設定手段(402A)を有する。制御対象設定手段(402A)は、外部情報検知手段により検知された外部情報に基づいて2つ以上の制御モードのうちから1つの制御モードを選択し、選択した制御モードに則して制御対象を設定する。制御対象設定手段(402A)は、外部情報検知手段により検知された外部情報に基づいて、制御モードの1つである第1制御モードでは、吸入圧力領域及びクランク室のうち一方の圧力の目標圧力を制御対象として設定し、制御モードの1つである第2制御モードでは、吸入圧力領域及びクランク室の圧力のうち一方の圧力と吐出圧力領域の圧力との差の目標である目標作動圧力差を制御対象として設定する。
【選択図】図3
Description
例えば特許文献1が開示する容量制御弁は、吸入圧力を感知するための感圧部材を内蔵し、この容量制御弁を用いた可変容量圧縮機では、吸入圧力を感知して吐出容量をフィードバック制御する。具体的には、感圧部材は、例えばベローズにより構成され、吸入圧力が低下すると吐出容量を減少すべく伸張し、給気通路の開度を増大させる。
更に、特許文献3が開示する容量制御装置は、吐出室の圧力(吐出圧力)と吸入室の圧力との間の圧力差(差圧)が目標値に近付くように、吐出容量をフィードバック制御する。すなわち、特許文献3の制御装置は、差圧を制御対象として容量制御弁への通電量を変化させ、これに伴い吐出容量が変化する。例えば、この制御装置は、差圧が縮小しようとすれば、吐出容量を増大させて差圧を所定値に近付けるように動作する。
一方、車両用の空調システムにおいては、可変容量圧縮機の駆動は、車両のエンジンにとって大きな負荷となっている。このため、例えば車両の加速時や登坂時等においては、吐出容量を一時的に減少させて圧縮機の駆動負荷を低減することが行われている。すなわち、ある程度の空調能力を確保しながら、エンジンの動力を走行動力に極力振り向けることが行われている。このような場合に熱負荷が大きいと、吸入圧力制御方式では、吸入圧力が制御不能となって圧縮機の作動を停止しなければならなくなり、車室の空調状態の犠牲が大きくなる。
2つの圧力監視点の圧力差が目標値となるように吐出容量をフィードバック制御する場合、圧力差が縮小しようとすれば、圧力差を所定値に近付けるように吐出容量が増大される。このような制御動作から、冷媒の循環路において冷媒循環量が適正量から不足した状態で差圧制御方式の容量制御が行われると、圧力監視点間の圧力差は、冷媒循環量が適正であるときに比べて縮小してしまうため、圧力差を目標値に維持すべく吐出容量が増大されてしまう。そして、圧力差のフィードバック制御では、冷媒量が不足して冷媒循環量不足の状態で可変容量圧縮機を運転し、差圧が目標値に到達しなければ、吐出容量が加速的に増大し、圧縮機は最終的には最大容量で動作し続ける。このような動作は、圧縮機の破損を招く虞がある。
好ましくは、前記制御信号演算手段は、前記吐出圧力領域の圧力と前記目標圧力との差に基づいて前記吐出容量制御信号を演算する(請求項3)。
好ましくは、前記外部情報検知手段は、前記空調システムが非作動状態から作動状態に切り替わることを検知するエアコンスイッチ検知手段を含み、前記制御対象設定手段が前記第2制御モードを実行する条件の1つは、前記エアコンスイッチ検知手段によって、前記空調システムが非作動状態から作動状態に切り替わるのを検知したときという条件である(請求項6)。
好ましくは、前記空調システムは車両に適用され、前記外部情報検知手段は、前記車両のアイドリング状態を検知するアイドリング検知手段を含み、前記制御対象設定手段が前記第2制御モードを実行する条件の1つは、前記アイドリング検知手段によって、前記車両がアイドリング状態にあることを検知したときという条件である(請求項8)。
好ましくは、前記空調システムは車両に適用され、前記外部情報検知手段は、前記車両のエンジンの負荷を検知するエンジン負荷検知手段を含み、前記制御対象設定手段が前記第2制御モードを実行する条件の1つは、前記エンジン負荷検知手段により検知された前記エンジンの負荷が所定値以上になるという条件である(請求項10)。
好ましくは、前記制御対象設定手段は、前記第1制御モードを解除して前記第2制御モードに移行する直前に前記目標圧力を記憶し、前記第2制御モードが解除されて前記第1制御モードに再び移行したときに、記憶されていた前記目標圧力を初期値として新たに目標圧力を設定する(請求項13)。
好ましくは、前記目標作動圧力差に基づいて前記ソレノイドに供給される電流は、予め定められた上限値以下に制限される(請求項15)。
好ましくは、前記空調システムは車両に適用され、前記外部情報検知手段は、記車両の内外の熱負荷を検知する熱負荷検知手段と、前記可変容量圧縮機の回転数に相当する物理量を検知する回転数検知手段とを含み、前記制御対象設定手段が前記第2制御モードを実行する条件の1つは、前記熱負荷検知手段により検知された熱負荷及び前記回転数検知手段により検知された物理量の両方が所定値以上であるという条件である(請求項17)。
前記可変容量圧縮機は、前記空調システムの冷凍サイクルのみならず前記ホットガスヒータサイクルの一部を構成し、
前記外部情報検知手段は、前記冷凍サイクル及びホットガスヒータサイクルのうち何れのサイクルが作動しているかを検知するサイクル検知手段を含み、前記制御対象設定手段は、前記ホットガスヒータサイクルの作動中、前記第2制御モードを実行する(請求項18)。
好ましくは、前記制御対象設定手段は、前記制御モードの1つである第3制御モードを実行したときに、前記吐出圧力領域の圧力の目標である目標吐出圧力を設定し、前記吐出圧力検知手段により検知された前記吐出圧力領域の圧力が前記目標吐出圧力に近付くように前記目標作動圧力差を設定する(請求項21)。
なお、吐出圧力検知手段は、可変容量圧縮機及び空調システムの保護のため従来から必須の構成であり、本発明のために新たに追加するものではない。このため、この容量制御システムを適用することにより空調システムの構成が複雑になることはない。
請求項4の可変容量圧縮機の容量制御システムでは、蒸発器を通過した直後の空気流の温度が目標温度に近付くように吐出容量がフィードバック制御される。このため、この容量制御システムを適用した空調システムにより空調が行われる例えば車室の温度の制御精度が向上する。
請求項6の可変容量圧縮機の容量制御システムでは、空調システムが非作動状態から作動状態に切り替わったときに、可変容量圧縮機のトルクを目標トルクに近付けることが可能となり、エンジン制御の安定性が確保される。
請求項8の可変容量圧縮機の容量制御システムでは、車両がアイドリング状態にあるとき、可変容量圧縮機のトルクを目標トルクに近付けることが可能となり、エンジン制御の安定性が確保される。
請求項10の可変容量圧縮機の容量制御システムでは、エンジンの負荷が所定値以上にあるとき、可変容量圧縮機のトルクを目標トルクに近付けることが可能となり、車両の走行性能が確保される。
請求項12の可変容量圧縮機の容量制御システムでは、第2制御モードの実行条件に、第1制御モードによりソレノイドに供給される電流が、第2制御モードを実行したとするならばソレノイドに供給される電流よりも大きいという限定を付加することで、不必要な第2制御モードの実行が防止され、車室の空調状態が快適に保たれる。
請求項14の可変容量圧縮機の容量制御システムでは、例えば外気温度が高いときに、制御対象設定手段が第1制御モードではなく第2制御モードを実行し、当該第2制御モードにて、蒸発器を通過した直後の空気流の温度が目標温度に近付くように作動圧力差を設定する。これにより、外気温度が高く吸入圧力制御では容量制御が不可能になるような場合でも、差圧制御による容量制御によって、空調システムより空調される車室等の空調状態が快適に保たれる。
請求項16の可変容量圧縮機の容量制御システムでは、車両の内外の熱負荷が所定値以上であるときに、制御対象設定手段が第1制御モードではなく第2制御モードを実行し、当該第2制御モードにて、蒸発器を通過した直後の空気流の温度が目標温度に近付くように作動圧力差を設定する。これにより、熱負荷が高く吸入圧力制御では容量制御が不可能になるような場合でも、差圧制御による容量制御によって、空調システムより空調される車室等の空調状態が快適に保たれる。
請求項19の可変容量圧縮機の容量制御システムでは、空気加熱用熱交換器を通過した直後の空気流の温度が目標温度に近付くように吐出容量がフィードバック制御される。このため、この容量制御システムを適用した空調システムにより空調が行われる例えば車室の温度の制御精度が向上する。
請求項21の可変容量圧縮機の容量制御システムでは、吐出圧力領域の圧力が異常に上昇するのが防止され、可変容量圧縮機及び空調システムの信頼性が確保される。
図1は、容量制御システムAが適用された車両用空調システムの冷凍サイクル10を示し、冷凍サイクル10は、作動流体としての冷媒が循環する循環路12を備える。循環路12には、冷媒の流動方向でみて、圧縮機100、放熱器(凝縮器)14、膨張器(膨張弁)16及び蒸発器18が順次介挿され、圧縮機100が作動すると、循環路12を冷媒が循環する。すなわち、圧縮機100は、冷媒の吸入工程、吸入した冷媒の圧縮工程及び圧縮した冷媒の吐出工程からなる一連のプロセスを行う。
第1実施形態の容量制御システムAが適用される圧縮機100は可変容量圧縮機であり、例えば斜板式のクラッチレス圧縮機である。圧縮機100はシリンダーブロック101を備え、シリンダーブロック101には、複数のシリンダボア101aが形成されている。シリンダーブロック101の一端にはフロントハウジング102が連結され、シリンダーブロック101の他端には、バルブプレート103を介してリアハウジング(シリンダヘッド)104が連結されている。
駆動軸106は、フロントハウジング102の外側に突出したボス部102a内を貫通し、駆動軸106の外端には、動力伝達装置としてのプーリ112に連結されている。プーリ112は、ボール軸受113を介してボス部102aによって回転自在に支持され、外部駆動源としてのエンジン114との間にベルト115が架け回される。
シリンダボア101a内にはピストン130が配置され、ピストン130には、クランク室105内に突出したテール部が一体に形成されている。テール部に形成された凹所130a内には一対のシュー132が配置され、シュー132は斜板107の外周部に対し挟み込むように摺接している。従って、シュー132を介して、ピストン130と斜板107とは互いに連動し、駆動軸106の回転によりピストン130がシリンダボア101a内を往復動する。
リアハウジング104には、容量制御弁(電磁制御弁)300が収容され、容量制御弁300は給気通路160に介挿されている。給気通路160は、吐出室142とクランク室105との間を連通するようにリアハウジング104からバルブプレート103を経てシリンダーブロック101にまで亘っている。
また、吸入室140は、リアハウジング104に形成された感圧通路166を通じて、給気通路160とは独立して容量制御弁300に接続されている。
また、弁ハウジング301の外周面には出口ポート301bが形成され、出口ポート301bは、給気通路160の下流側部分を介してクランク室105と連通する。出口ポート301bも弁室303に開口しており、弁孔301a、弁室303及び出口ポート301bを通じて、吐出室142とクランク室105とは連通可能である。
またソレノイドハウジング310内には、同心上に円筒状の固定コア318が収容され、固定コア318は、弁ハウジング301からエンドキャップ312に向けてソレノイド316の中央まで延びている。固定コア318のエンドキャップ312側はスリーブ320によって囲まれ、スリーブ320は、エンドキャップ312側に閉塞端を有する。
挿通孔318aには、ソレノイドロッド326が摺動可能に挿通され、ソレノイドロッド326の一端に弁体304が一体且つ同軸的に連結されている。ソレノイドロッド326の他端は可動コア収容空間324内に突出し、ソレノイドロッド326の他端部は、可動コア322に形成された貫通孔に嵌合され、ソレノイドロッド326と可動コア322とは一体化されている。また、可動コア322の段差面と固定コア318の端面との間には、開放ばね328が配置され、可動コア322と固定コア318との間には所定の隙間が確保されている。
ソレノイドハウジング310には感圧ポート310aが形成され、感圧ポート310aには、感圧通路166を介して吸入室140が接続されている。固定コア318の外周面には、軸線方向に延びる感圧溝318bが形成され、感圧ポート310aと感圧溝318bとは互いに連通している。従って、感圧ポート310a及び感圧溝318bを通じて、吸入室140と可動コア収容空間324とが連通し、ソレノイドロッド326を介して、弁体304の背面側には、閉弁方向に吸入室140の圧力(以下、吸入圧力Psと呼ぶ)が作用する。
図3は、制御装置400Aを含む容量制御システムAの概略構成を示したブロック図である。
吐出圧力検知手段500は、冷凍サイクル10の吐出圧力領域の何れかの部位にて冷媒の圧力(吐出圧力Pd)を検知する手段である。例えば、吐出圧力検知手段500としての圧力センサ500aは、放熱器14の入口側に装着され、当該部位における冷媒の圧力を吐出圧力Pdとして検知し、制御装置400Aに入力する(図1参照)。
なお、冷凍サイクル10の吐出圧力領域とは、吐出室142から放熱器14の入口までの領域をさす。これに対し、冷凍サイクル10の吸入圧力領域とは、蒸発器18の出口から吸入室140に亘る領域をさす。また、吐出圧力領域には、圧縮工程にあるシリンダボア101aも含まれ、吸入圧力領域には、吸入工程にあるシリンダボア101aも含まれる。
蒸発器出口空気温度検知手段510は、車両用空調システムの空気回路における蒸発器18の出口での空気流の温度Teoを検知して制御装置400Aに入力する手段であり、温度センサ510aによって構成される。温度センサ510aは、空気回路における蒸発器18の出口に設置され、蒸発器18を通過した直後の空気温度Teoを検知する(図1参照)。
目標吐出圧力設定手段502及び蒸発器目標出口空気温度設定手段512は、例えば、空調システム全体の動作を制御するエアコン用ECUの一部により構成することができる。
エアコン(A/C)スイッチセンサ530は、空調システム(冷凍サイクル10)の電源スイッチがオン状態であるかオフ状態であるかを検知して制御装置400Aに入力する。アクセル開度センサ532は車両のアクセル開度を検知して制御装置400Aに入力する。エンジン回転数センサ534は、エンジン114の回転数を検知して制御装置400Aに入力する。
制御装置400Aは、制御対象設定手段402A、制御信号演算手段404及びソレノイド駆動手段406を有する。
制御信号演算手段404は、制御対象設定手段402Aで設定された制御対象に基づいて、所定の演算式により、吐出容量制御信号を演算する。吐出容量制御信号は、ソレノイド駆動手段406により容量制御弁300のソレノイド316に供給される電流(制御電流I)を調整するための信号であり、例えば、ソレノイド316に供給される制御電流Iの電流値そのものに対応する信号である。ただし、ソレノイド駆動手段406における制御電流Iの調整が、所定の駆動周波数(例えば400〜500Hz)のPWM(パルス幅変調)にてデューティ比を変更することにより行われる場合には、吐出容量制御信号は、デューティ比に対応する信号であってもよい。
第1制御モードの制御対象は吸入圧力Psであり、第1制御モードでは、吸入圧力Psの目標値である目標吸入圧力Pssetが設定される。具体的には、第1制御モードでは、蒸発器出口空気温度検知手段510によって実際に検知された蒸発器出口空気温度Teoと、蒸発器目標出口空気温度設定手段512によって設定された蒸発器目標出口空気温度Tsetとの偏差ΔTに基づいて、目標吸入圧力Pssetが設定される。
第3制御モードの制御対象は吐出圧力Pdであり、第3制御モードでは、吐出圧力Pdの目標値である目標吐出圧力Pdset2が設定される。
以下、上述した容量制御システムAの動作(使用方法)を説明する。
図4は制御装置400Aが実行するメインルーチンを示したフローチャートである。メインルーチンは、例えば車両のエンジンキーがオン状態になると起動され、オフ状態になると停止される。
次に、車両用空調システムのエアコンスイッチ(A/C)がオンであるか否かが判定される(S11)。即ち、乗員が、車室の冷房又は除湿を要求しているか否かが判定される。エアコンスイッチがオンの場合(Yesの場合)、吐出圧力検知手段500により検知された吐出圧力Pdが読み込まれる(S12)。
初期条件ではフラグF1が0であるので判定結果はYesとなる。よって次に、フラグNが0であるか否かが判定される(S20)。フラグNの初期値は0であるため、判定結果はYesとなり、フラグNが1に設定されるとともに(S21)、タイマがスタートさせられて経過時間taが計測される(S22)。この後、差圧制御ルーチンS23が実行される。
一方、経過時間taが所定時間ta1を超えてS25の判定結果がNoの場合、即ちタイマがタイムアップした場合、タイマが停止されて経過時間taが0に設定され(S26)、アクセル開度がAccとして読み込まれる(S27)。この後、アクセル開度Accが0であるか否かが判定され(S28)、その判定結果がYesの場合、エンジン回転数がNcとして読み込まれる(S29)。
この差圧制御ルーチンS23の実行後、S11等を経て再びS32の判定が実行され、S32の判定結果がYesの場合には、フラグF2がゼロであるか否かが判定される(S37)。先のS34において、フラグF2は1に設定されているため、S37の判定結果はNoとなり、再びS36の判定が実行される。すなわち、経過時間tbが時間tb1を超えてタイムアップするまで、差圧制御ルーチンS23が実行される。
なお、S33の判定結果がNoの場合には、S34及びS35をスキップしてS36が実行される。
上述したように、第1実施形態の容量制御システムAは、吸入圧力制御ルーチンS40、差圧制御ルーチンS23及び吐出圧力制御ルーチンS43のうち何れか一つを選択的に実行可能である。
一方、S105の判定の結果、演算された制御電流Iが下限値I1以上であれば(Yesの場合)、予め設定された下限値I1より大きい上限値I2と演算された制御電流Iが比較判定される(S108)。S108の判定の結果、制御電流値Iが上限値I2を超えていれば(Noの場合)、上限値I2が制御電流Iとして読み込まれ(S109)、制御電流Iがソレノイド316に出力される(S107)。
S107の後、制御装置400Aは吸入圧力制御ルーチンS40からメインルーチンに戻り、S12で、吐出圧力検知手段500によって再び検知された吐出圧力Pdが読み込まれる。それから、S13及びS14の判定結果がYesであれば、2回目の吸入圧力制御ルーチンS40が実行される。
つまり吸入圧力制御ルーチンS40は、常時吐出圧力Pdを読込み、変動する吐出圧力Pdに応じて制御電流Iを演算・調整するものであり、目標吸入圧力Pssetは所定時間tc1ごとに間欠的に更新される。
具体的には、目標吸入圧力設定ルーチンS103では、まず圧縮機100の吐出容量制御の目標となる蒸発器目標出口空気温度Tsetが設定され読み込まれる(S200)。次に、蒸発器出口空気温度検知手段510により検知された蒸発器出口空気温度Teoが読み込まれ(S201)、蒸発器目標出口空気温度設定手段512で設定された蒸発器目標出口空気温度Tsetと、蒸発器出口空気温度検知手段510で検知された実際の蒸発器出口空気温度Teoとの偏差ΔTが演算される(S202)。そして、演算された偏差ΔTに基づいて、例えばPI制御のための所定の演算式により目標吸入圧力Pssetが演算される(S203)。
Psset=K1・Tamb+K2 (K1,K2は定数)
また、目標吸入圧力設定ルーチンS103を1回実行するごとに、S202で偏差ΔTが演算され、S203の演算式中の偏差ΔTの添字nは、偏差ΔTが今回のS202で演算されたものであることを示す。同様に添字n−1は、偏差ΔTが前回のS202で演算されたものであることを示す。
一方、S204の判定の結果がYesであれば、予め設定されたPs1より大きい上限値Ps2とPssetが比較判定され(S206)、S206の判定結果がNoであれば、上限値Ps2が目標吸入圧力Pssetとして読み込まれる(S207)。
図7は、図4中の差圧制御ルーチンS23を示し、差圧制御ルーチンS23では、制御対象設定手段402Aが、第2制御モードを実行して目標作動圧力差ΔPwsetを設定する。目標作動圧力差ΔPwsetは、作動圧力差ΔPwの目標であり、作動圧力差ΔPwとは、吐出圧力Pdと吸入圧力Psとの差(Pd−Ps)である。
S302で演算された制御電流Iは、予め設定された下限値I3と比較判定される(S303)。S303の判定の結果、演算された制御電流Iが下限値I3よりも小さい場合(Noの場合)、下限値I3が制御電流値Iとして読み込まれ(S304)、制御電流Iがソレノイド316に出力される(S305)。
上述した差圧制御ルーチンS23によれば、目標トルクTrsetに基づいて目標作動圧力差ΔPwsetが設定され、目標作動圧力差ΔPwsetに基づいて制御電流Iが演算される。これにより、差圧制御ルーチンS23では、圧縮機100のトルクTrが目標トルクTrsetに近付くように吐出容量が制御される。
そして、容量制御システムAは、例えば、車両用空調システムの起動時、車両のアイドリング時又は加速時に差圧制御ルーチンS23を選択して実行することができ、目標トルク設定手段520は、それぞれの場合において異なる目標トルクTrsetを設定してもよい。換言すれば、目標トルク設定手段520は、起動モード、アイドリングモード及び加速モードのうち、何れか1つのモードに基づいて目標トルクTrsetを設定することができる。
なお、起動後目標トルクTrs1は、起動初期目標トルクTrs0よりも大きい値に設定されるが、図8の右側のグラフに示したように、外気温度が低いほど起動後目標トルクTrs1を低く設定し、外気温度が高いほど起動後目標トルクTrs1を高く設定してもよい。
車両のアイドリング時に選択されるアイドリングモードの場合、目標トルクTrsetは、アイドリング目標トルクTrs2に設定される。アイドリング目標トルクTrs2も、図9に示したように、外気温度が低いほど低く設定し、外気温度が高いほど高く設定してもよい。
なお、車両がアイドリングしていると判定される場合は、メインルーチンのS28でアクセル開度Accが0であり、S30でエンジン回転数Ncが所定の回転数N1以下であると判定された場合であるが、車両が渋滞時に低速で走行しているようなときも、アイドリング状態にあると判定するようにしてもよい。
車両の加速時に選択される加速モードの場合、目標トルクTrsetを一定の値に設定してもよいが、図10に示したように、アクセル開度Accに応じて可変としてもよい。すなわち、第1加速目標トルクTrs3と第2加速目標トルクTrs4との間の値に設定してもよい。そしてこの場合、アクセル開度Accが所定の開度Accs1を超えている範囲では、アクセル開度Accが大きいほど目標トルクTrsetを低く設定してもよい。
なお、アクセルの開度及びエンジン114の回転数のうち少なくとも一方が所定値以上であるときに加速モードを実行するようにしてもよい。エンジン回転数が所定の回転数を超えたときに加速モードを実行するようにすれば、車両の高速性能が確保される。
時間ta1が経過したとき、車両がアイドリングしていれば、差圧制御ルーチンS23のアイドリングモードが実行される。従って、目標トルクTrsetは、アイドリング目標トルクTrs2に設定され、その後、時間ta1をかけて、起動後目標トルクTrs1に設定される。
この後、アクセル開度Accが所定の開度Accs1以下になっても、時間tb1が経過するまで、加速モードが実行される。なお、加速モードでの目標トルクTrsetが、図10に示すようにアクセル開度Accに対応して変化するように設定されている場合、アクセル開度Accが所定の開度Accs1以下になってから時間tb1が経過するまでの間、目標トルクTrsetは、第2加速目標トルクTrs4に設定される。
そして、車両がアイドリング状態からゆっくり加速して定速走行すると、2回目の吸入圧力制御ルーチンS40が実行される。この2回目の吸入圧力制御ルーチンS40においては、S203の目標吸入圧力Pssetの初期値として、前回の空調制御ルーチンS40で最後に設定され記憶された目標吸入圧力Pssetを用いるのが好ましい。これにより、吸入圧力制御ルーチンS40が中断しても、中断後に再び吸入圧力制御ルーチンS40を実行するときに、短時間で最適な目標吸入圧力Pssetが得られ、車室の快適性が維持されるからである。
図12は、図4中の吐出圧力制御ルーチンS43の詳細を示すフローチャートである。
吐出圧力制御ルーチンS43では、まず、目標吐出圧力設定手段502により設定された目標吐出圧力Pdset2が読込まれる(S400)。なお、目標吐出圧力Pdset2は、吐出圧力上限値Pdset1よりも小である(Pdset2<Pdset1)。
なお、吐出圧力制御ルーチンS43を1回実行するごとに、S401で偏差ΔPが演算され、S402の演算式中の偏差ΔPの添字nは、偏差ΔPが今回のS401で演算されたものであることを示す。同様に添字n−1は、偏差ΔPが前回のS401で演算されたものであることを示し、添字n−2は、偏差ΔPが前々回のS401で演算されたものであることを示す。
S407の判定の結果がNoであれば、上限値I6が制御電流Iとして読み込まれてから(S409)、フラグF1が0に設定された後(S408)、制御電流Iが出力される(S405)。
なお、吐出圧力制御ルーチンS43の解除条件は閾値Isetで決定され、例えばIset=I6とすれば、吐出圧力制御ルーチンS43から吸入圧力制御ルーチンS40に切り替わった直後に再び吐出圧力制御ルーチンS43に移行するケースの発生を最も少なくできる。
具体的には、容量制御システムAでは、通常時には、車室の快適性を重視した空調を行うべく吸入圧力制御を実行することにより吐出容量制御をし、車両の加速時や登坂時等の過渡的な制御が必要なときには、可変容量圧縮機100のトルク制御を重視した差圧制御により吐出容量を制御することができる。一方、吐出圧力制御を実行することにより、吐出圧力領域の圧力である吐出圧力Pdが異常に上昇するのが防止され、可変容量圧縮機100及び空調システムの信頼性が確保される。
なお、吐出圧力検知手段500は、可変容量圧縮機100及び空調システムの保護のため従来から必須の構成であり、本発明のために新たに追加するものではない。このため、この容量制御システムAを適用することにより空調システムの構成が複雑になることはない。
容量制御システムAによれば、吸入圧力制御により、蒸発器18を通過した直後の空気流の温度Teoが蒸発器目標出口空気温度Tsetに近付くように吐出容量がフィードバック制御される。このため、この容量制御システムAを適用した空調システムにより空調が行われる例えば車室の温度の制御精度が向上する。
容量制御システムAによれば、差圧制御により、空調システムが非作動状態から作動状態に切り替わったときに、可変容量圧縮機100のトルクTrを目標トルクTrsetに近付けることが可能となり、エンジン制御の安定性が確保される。
容量制御システムAによれば、車両がアイドリング状態にあるとき、可変容量圧縮機100のトルクTrを目標トルクTrsetに近付けることが可能となり、エンジン制御の安定性が確保される。
容量制御システムAでは、上限値Ps2及び下限値Ps1により目標吸入圧力Pssetの設定範囲を制限することにより、目標吸入圧力Pssetが適正な範囲に設定される。特に、目標吸入圧力Pssetに下限値Ps1を設けることにより、冷媒不足時の吐出容量制御点が決定される。すなわち、冷媒不足時でも、吐出容量が最大になるのが確実に防止され、圧縮機100の破損が防止される。
容量制御システムAは、吸入圧力制御ルーチンS40の実行中、吸入圧力Psを制御対象としている。このため、冷媒不足により吸入圧力Psが低下したときには、吸入圧力Psが目標吸入圧力Pssetを維持するよう、吐出容量が減少させられ、最終的には最小容量に移行する。この結果として、容量制御弁300が従来のベローズ等により構成される感圧部材を有しない簡素な構造であっても、冷媒不足時に吐出容量が最大容量になることが回避され、圧縮機100が保護される。
容量制御システムAでは、吸入圧力Psを制御対象としても、吸入圧力Psの制御範囲が広い。これは以下の理由による。
容量制御弁300において、弁体304に作用する力は、吐出圧力Pdと、吸入圧力Psと、ソレノイド316の電磁力F(I)と、開放ばね328の付勢力fsであり、吐出圧力Pd及び開放ばね328の付勢力fsは開弁方向、それ以外の吸入圧力Ps及びソレノイド316の電磁力F(I)は、開弁方向とは対抗する閉弁方向に作用する。
このように容量制御システムAの吸入圧力Psの制御範囲が広いため、車両用空調システムの運転状況に対応して吸入圧力Psが広い範囲に亘って変化したとしても、吐出容量が確実に制御される。例えば、熱負荷が高い場合であっても、目標吸入圧力Psset及び吐出圧力Pdに基づいて適当な制御電流Iが演算され、吐出容量制御が確実に制御される。
一方、容量制御システムAでは、式(1)、(2)及び図14からわかるように、シール面積Svを小さく設定することにより、差圧制御における作動圧力差ΔPw(=Pd―Ps)の制御範囲も広くすることができる。
図15は、第2実施形態の容量制御システムBの概略を示す。容量制御システムBは、外部情報検知手段として、車両の内外の熱負荷を検知する手段を有し、具体的には、外気温度センサ536を更に有する。
図16は、容量制御システムBが実行するメインルーチンの一部を示す。図13中に示されていない容量制御システムBのメインルーチンの部分は、対応する容量制御システムAのメインルーチンの部分と同一である。
一方、外気温度Toutが上限値T1よりも高く、S50の判定結果がNoの場合、差圧制御ルーチンS51が実行される。第1実施形態の差圧制御ルーチンS23がトルク制御を主な目的とするのに対し、第2実施形態の差圧制御ルーチンS51は、車室の快適性を重視した空調を主な目的としている。
なお、差圧制御ルーチンS51を1回実行するごとに、S502で偏差ΔTが演算され、S503の演算式中の偏差ΔTの添字nは、偏差ΔTが今回のS502で演算されたものであることを示す。同様に添字n−1は、偏差ΔTが前回のS502で演算されたものであることを示す。
一方、S504の判定の結果、演算された制御電流Iが下限値I7以上であれば(Yesの場合)、予め設定された下限値I7より大きい上限値I8と演算された制御電流Iが比較判定される(S507)。S507の判定の結果、制御電流値Iが上限値I8を超えていれば(Noの場合)、上限値I2が制御電流Iとして読み込まれ(S508)、制御電流Iがソレノイド316に出力される(S506)。
ここで、差圧制御ルーチンS51中には、目標作動圧力差ΔPwsetが明示されていないが、S503で制御電流Iに基づいて新しい制御電流Iを設定していることから、差圧制御ルーチンS51は、実質的に、目標作動圧力差ΔPwsetを設定し、作動圧力差ΔPwが目標作動圧力差ΔPwsetに近付くように制御している。このため、差圧制御ルーチンS51は差圧制御方式であり、差圧制御ルーチンS51では、制御対象設定手段402Bは第2制御モードを実行しているといえる。
なお、容量制御システムBは、図18に一部を示したメインルーチンを実行してもよい。
差圧制御ルーチンS51の実行後、次回のS50で外気温度Toutが上限値T1以下と判定された場合(Yesの場合)、外気温度Toutが、上限値T1よりも低い閾値T2以下であるか否かが判定される(S53)。外気温度Toutが閾値T2よりも大きい場合、判定結果がNoとなり、フラグF4が0であるか否かが判定される(S54)。先にフラグF4が1に設定されているため、S54の判定結果はNoとなり、再び差圧制御ルーチンS51が実行される。
つまり、図18に一部を示したメインルーチンでは、吸入圧力制御ルーチンS40から差圧制御ルーチンS51へは、外気温度Toutが上限値T1を超えたときに移行する。一方、差圧制御ルーチンS51から吸入圧力制御ルーチンS40へは、外気温度Toutが閾値T2以下になったときに移行する。
また、容量制御システムBは、エンジン回転数Ncが高いときに、差圧制御ルーチンS23ではなく、差圧制御ルーチンS51を実行しても良い。
図20は、容量制御システムCを適用した車両用空調システムの概略構成を示す。車両用空調システムは冷凍サイクル20を有し、冷凍サイクル20の循環路12には、冷媒が流動する方向でみて、可変容量圧縮機100、第1開閉弁21、放熱器14、レシーバ22、逆止弁23、膨張器16、蒸発器18及びアキュムレータ24が順次介挿されている。なお、膨張器16は、冷媒を膨張させるだけでなく、蒸発器18の出口での冷媒の過熱度によって冷媒の循環量を調節可能である。
従って、ホットガス循環路28には、ホットガスが流動する方向でみて、可変容量圧縮機100、第2開閉弁30、固定絞り31、蒸発器18及びアキュムレータ24が順次介挿されている。
容量制御システムCは、図15に示した容量制御システムBの構成に加えて、サイクル検知手段を更に有し、サイクル検知手段は、冷凍サイクル20及びホットガスヒータサイクル26のうち何れが作動しているかを検知する。サイクル検知手段は、例えばエアコン用ECUに内蔵される。
第3実施形態の可変容量圧縮機の容量制御システムCは、冷凍サイクル20が作動しているときは、容量制御システムA又はBと同様に、図4、図16又は図18に示したメインルーチンに則して可変容量圧縮機100の吐出容量を制御する。
なお当然のことながら、ホットガスヒータサイクル26が作動しているときの蒸発器目標出口空気温度Tsetは、冷凍サイクル20が作動しているときの蒸発器目標出口空気温度Tsetよりも高く設定される。
容量制御システムCでは、空気加熱用熱交換器(蒸発器18)を通過した直後の空気流の温度Teoが蒸発器目標出口空気温度Tsetに近付くように吐出容量がフィードバック制御される。このため、容量制御システムCを適用した空調システムにより空調が行われる車室の温度の制御精度が向上する。
例えば、第1乃至第3実施形態では、メインルーチンにおいてのみ、吸入圧力制御ルーチンS40から差圧制御ルーチンS23への切り替えを判断したが、その他の条件で切り替えてもよい。
また、エンジン114の負荷及び車両の内外の熱負荷の両方が所定値以上であるときに、吸入圧力制御ルーチンS40から差圧制御ルーチンS23へ切り替えてもよい。これにより、不必要な差圧制御ルーチンS23の実行が防止され、車室の空調状態が快適に保たれる。
例えば、車両の内外の熱負荷及び可変容量圧縮機100の回転数に相当する物理量が所定値以上であるときに、差圧制御ルーチンS51を実行するようにしてもよい。これにより、熱負荷が高く吸入圧力制御では容量制御が不可能になるような場合でも、差圧制御による容量制御によって、空調システムより空調される車室の空調状態が快適に保たれる。一方、差圧制御ルーチンS51の実行条件を車両の内外の熱負荷及び可変容量圧縮機100の回転数が所定値以上にあるときに限定することで、不必要な差圧制御ルーチンS51の実行が防止され、車室の空調状態が快適に保たれる。
第1乃至第3実施形態では、外部情報検知手段の構成は特に限定されず、吐出圧力検知手段、蒸発器出口空気温度検知手段510、蒸発器目標出口空気温度設定手段512、目標トルク設定手段520、エアコンスイッチセンサ530、アクセル開度センサ532、エンジン回転数センサ534及び外気温度センサ526の他にも、外気湿度センサ、日射量センサ、蒸発器18用ファンの送風量センサ、内外気切換ドア位置センサ、吹き出し口位置センサ、エアミックスドア位置センサ、車室内温度センサ、車室内湿度センサ、蒸発器入口空気温度センサ、蒸発器入口空気湿度センサ、蒸発器の冷却状態を表す温度センサ若しくは湿度センサ、可変容量圧縮機100の回転数センサ、車速センサ、スロットル開度センサ、ギアシフト位置センサ等を適宜用いることができる。
第2実施形態において、車室の内外の熱負荷は、外気温度Tout、外気湿度、吐出圧力Pd、日射量、エアコンスイッチのON/OFF、蒸発器18用ファンの送風量、内外気切換ドア位置、吹き出し口位置、エアミックスドア位置、車室内温度、車室内湿度、蒸発器入口空気温度、及び、蒸発器入口空気湿度、蒸発器の冷却状態を表す温度若しくは湿度から選択された1つ又は複数の外部情報に基づいて判定してもよい。
また、容量制御弁300の弁体304には、吸入室140での冷媒の圧力である吸入圧力Psが作用していたが、吸入圧力Psに代えて、冷凍サイクル10,20の吸入圧力領域のいずれかの部位での冷媒の圧力(低圧圧力)が作用するようにしてもよい。
なお、冷凍サイクル10,20の高圧領域とは、吐出室142から膨張器16の入口までの領域をさす。また、高圧領域には、圧縮工程にあるシリンダボア101aも含まれる。
また、吐出圧力検知手段500は、高圧圧力を検知した後、高圧圧力に基づいて吐出圧力Pdを演算により間接的に検知してもよい。例えば、第1乃至第3実施形態では、圧力センサ500aの位置と容量制御弁300の位置が異なるため、圧力センサ500aで検知した吐出圧力Pdと弁体304が受圧している吐出圧力Pdとの間に差が生じる。これを補正するために、圧力センサ500aで検知した吐出圧力Pdの読込値に補正係数をかけ、この補正係数をかけた値を用いて制御電流Iを演算してもよい。
この場合には、吐出圧力検知手段500は、熱負荷を検知する熱負荷センサと、圧縮機100の回転数に対応する物理量を検知する回転数センサと、放熱器14及び車両のラジエータのうち少なくとも一方のために動作するファンに供給される電圧を検知するファン電圧センサと、車両の速度を検知する車速センサとを含む。この場合、高圧圧力を間接的に検知することにより、空調システムの構成の自由度が高くなる。
なお、吐出圧力検知手段500は、冷凍サイクル10,20の吐出圧力領域のいずれかの部位における冷媒の圧力を検知するのが好ましく、吐出室142における冷媒の圧力を直接的又は間接的に検知するのがより好ましい。そして、制御対象設定手段402A,Bは、吸入室140における冷媒の圧力の目標値を設定するのが好ましい。この場合、高圧領域における冷媒の圧力のばらつきに関係なく、容量制御弁300の弁体304が実際に受圧する吐出圧力Pdと吸入圧力Psとを正確に反映して、ソレノイド316に供給される制御電流Iが調整され、吸入圧力Psの制御精度が向上する。
また、制御装置400A,Bのメインルーチンに、例えば車両の加速時やエンジン回転数Ncが所定値よりも高いときに、吐出圧力制御ルーチンS43に優先して、吐出容量を最小とする緊急避難的な制御を付加しても良い。
更に、吐出圧力制御ルーチンS43に移行するか否かを判定する吐出圧力上限値Pdset1や吐出圧力制御ルーチンS43での目標吐出圧力Pdset2を熱負荷検知手段や運転状態検知手段等の外部情報検知手段の出力値に応じて可変としても良い。
図6の目標吸入圧力設定ルーチンS103のS203では、蒸発器出口空気温度Teoが蒸発器出口空気温度の目標値Tsetに近付くように、目標吸入圧力Pssetを演算するものであれば、どのような演算式であっても良い。
図12の吐出圧力制御ルーチンS43のS402では、吐出圧力Pdが目標吐出圧力Pdset2に近付くように制御電流Iを演算するものであれば、どのような演算式であっても良い。
第1乃至第3実施形態では、ソレノイド駆動手段406でソレノイド316に流す電流量を検出したが、ソレノイド駆動手段406でソレノイド316に流す電流量を検出しなくてもよい。この場合、制御信号演算手段404で、吐出容量制御信号として直接デューティ比を演算し、ソレノイド駆動手段406は、制御信号演算手段404で演算されたデューティ比にてソレノイド316に通電すればよい。
第1乃至第3実施形態では、容量制御弁300の感圧ポート310aには吸入室140が連通し、可動コア収容空間324の圧力は吸入圧力Psとされていたが、感圧ポート310aにクランク室105を連通させ、可動コア収容空間324の圧力をクランク室105の圧力(クランク圧力Pc)と一致させても良い。
第1乃至第3実施形態では、圧縮機100はクラッチレス圧縮機であったが、電磁クラッチを装着した可変容量圧縮機であってもよい。また、圧縮機100は斜板式の往復動圧縮機であったけれども、揺動板式の往復動圧縮機であってもよく、更には、電動モータで駆動される可変容量圧縮機であってもよい。
また、容量制御弁300の弁体304には、吐出圧力Pdに対し、吸入圧力Ps又はクランク圧力Pcが対抗するように作用するが、吐出圧力Pdと吸入圧力Psとが対抗しているときに、更にクランク圧力Pcが作用してもよく、吐出圧力Pdとクランク圧力Pcとが対抗しているときに、更に吸入圧力Psが作用してもよい。また、容量制御弁300にベローズやダイアフラム等を適用し、ベローズやダイアフラム等に対し、両側から吐出圧力Pdと吸入圧力Ps又はクランク圧力Pcとが作用するようにしてもよい。
最後に、本発明の可変容量圧縮機の容量制御システムは、車両用空調システム以外の室内用空調システムの冷凍サイクルや、冷凍・冷蔵庫等の冷凍装置の冷凍サイクル等、冷凍サイクル全般に適用可能である。
500 吐出圧力検知手段
510 蒸発器出口空気温度検知手段
512 蒸発器目標出口空気温度設定手段
402A 制御対象設定手段
404 制御信号演算手段
406 ソレノイド駆動手段
Claims (21)
- 空調システムの冷凍サイクルを構成すべく冷媒が循環する循環路に放熱器、膨張器及び蒸発器とともに介挿される可変容量型圧縮機であって、吐出室、吸入室、クランク室及びシリンダボアが区画形成されたハウジングと、前記シリンダボアに配設されたピストンと、前記ハウジング内に回転可能に支持された駆動軸と、前記駆動軸の回転を前記ピストンの往復運動に変換する傾角可変の斜板要素を含む変換機構と、前記冷凍サイクルの吸入圧力領域及び前記クランク室のうち少なくとも一方の圧力、前記冷凍サイクルの吐出圧力領域の圧力、及び、ソレノイドの電磁力を受けて弁孔を開閉可能な弁体を有し、前記弁孔を開閉することにより前記クランク室の圧力を変化させる容量制御弁とを備える可変容量圧縮機の容量制御システムにおいて、
1つ以上の外部情報を検知するための外部情報検知手段と、
前記外部情報検知手段により検知された外部情報に基づいて制御対象を設定する制御対象設定手段と、
前記制御対象設定手段で設定された制御対象に基づいて吐出容量制御信号を演算する制御信号演算手段と、
前記制御信号演算手段により演算された吐出容量制御信号に基づいて前記ソレノイドに電流を供給するソレノイド駆動手段とを具備し、
前記制御対象設定手段は、
前記外部情報検知手段により検知された外部情報に基づいて2つ以上の制御モードのうちから1つの制御モードを選択し、選択した制御モードに則して前記制御対象を設定し、
前記制御モードの1つである第1制御モードでは、前記外部情報検知手段により検知された外部情報に基づいて、前記吸入圧力領域及びクランク室のうち一方の圧力の目標圧力を前記制御対象として設定し、
前記制御モードの1つである第2制御モードでは、前記外部情報検知手段により検知された外部情報に基づいて、前記吸入圧力領域及びクランク室の圧力のうち一方の圧力と前記吐出圧力領域の圧力との差の目標である目標作動圧力差を前記制御対象として設定する
ことを特徴とする可変容量圧縮機の容量制御システム。 - 前記外部情報検知手段は、前記吐出圧力領域の圧力を検知する吐出圧力検知手段を含み、
前記制御信号演算手段は、前記制御対象設定手段が前記第1制御モードを実行したときに、前記吐出圧力検知手段により検知された前記吐出圧力領域の圧力及び前記目標圧力に基づいて前記吐出容量制御信号を演算する
ことを特徴とする請求項1に記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。 - 前記制御信号演算手段は、前記吐出圧力領域の圧力と前記目標圧力との差に基づいて前記吐出容量制御信号を演算することを特徴とする請求項2に記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。
- 前記外部情報検知手段は、前記蒸発器を通過した直後の空気流の温度を検知する蒸発器出口空気温度検知手段と、前記蒸発器を通過した直後の空気流の目標温度を設定する蒸発器目標出口空気温度設定手段とを含み、
前記制御対象設定手段は、前記第1制御モードを実行するとき、前記蒸発器出口空気温度検知手段により検知された前記空気流の温度が前記蒸発器目標出口空気温度設定手段により設定された前記目標温度に近付くように前記目標圧力を設定する
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。 - 前記外部情報検知手段は、前記可変容量型圧縮機の目標トルクを設定する目標トルク設定手段を含み、
前記制御対象設定手段は、前記第2制御モードを実行するとき、前記可変容量型圧縮機のトルクが前記目標トルク設定手段により設定された目標トルクに近付くように前記目標作動圧力差を設定することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。 - 前記外部情報検知手段は、前記空調システムが非作動状態から作動状態に切り替わることを検知するエアコンスイッチ検知手段を含み、
前記制御対象設定手段が前記第2制御モードを実行する条件の1つは、前記エアコンスイッチ検知手段によって、前記空調システムが非作動状態から作動状態に切り替わるのを検知したときという条件である
ことを特徴とする請求項5に記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。 - 前記第2制御モードは、前記第2制御モードの実行開始から所定時間維持されることを特徴とする請求項6に記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。
- 前記空調システムは車両に適用され、
前記外部情報検知手段は、前記車両のアイドリング状態を検知するアイドリング検知手段を含み、
前記制御対象設定手段が前記第2制御モードを実行する条件の1つは、前記アイドリング検知手段によって、前記車両がアイドリング状態にあることを検知したときという条件である
ことを特徴とする請求項5に記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。 - 前記制御対象設定手段は、前記第1制御モードを解除して前記第2制御モードに移行する直前に前記目標圧力を記憶し、前記第2制御モードが解除されて前記第1制御モードに再び移行したときに、記憶されていた前記目標圧力を初期値として新たに目標圧力を設定することを特徴とする請求項8に記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。
- 前記空調システムは車両に適用され、
前記外部情報検知手段は、前記車両のエンジンの負荷を検知するエンジン負荷検知手段を含み、
前記制御対象設定手段が前記第2制御モードを実行する条件の1つは、前記エンジン負荷検知手段により検知された前記エンジンの負荷が所定値以上になるという条件である
ことを特徴とする請求項5に記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。 - 前記空調システムは車両に適用され、
前記外部情報検知手段は、前記車両のエンジンの負荷を検知するエンジン負荷検知手段と、前記車両の内外の熱負荷を検知する熱負荷検知手段とを含み、
前記制御対象設定手段が前記第2制御モードを実行する条件の1つは、前記エンジン負荷検知手段により検知された前記エンジンの負荷及び前記熱負荷検知手段により検知された熱負荷の両方が所定値以上になるという条件である
ことを特徴とする請求項5に記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。 - 前記制御対象設定手段が前記第2制御モードを実行する条件は、前記第1制御モードを実行中に前記ソレノイドに供給されている電流量が、前記第2制御モードを実行したとするならば前記ソレノイドに供給される電流量よりも大きいという限定事項を更に含むことを特徴とする請求項10又は11に記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。
- 前記制御対象設定手段は、前記第1制御モードを解除して前記第2制御モードに移行する直前に前記目標圧力を記憶し、前記第2制御モードが解除されて前記第1制御モードに再び移行したときに、記憶されていた前記目標圧力を初期値として新たに目標圧力を設定することを特徴とする請求項10又は11に記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。
- 前記制御対象設定手段は、前記第2制御モードを実行するとき、前記蒸発器出口空気温度検知手段により検知された前記空気流の温度が前記蒸発器目標出口空気温度設定手段により設定された前記目標温度に近付くように前記目標作動圧力差を設定することを特徴とする請求項4に記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。
- 前記目標作動圧力差に基づいて前記ソレノイドに供給される電流は、予め定められた上限値以下に制限されることを特徴とする請求項14に記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。
- 前記空調システムは車両に適用され、
前記外部情報検知手段は、前記車両の内外の熱負荷を検知する熱負荷検知手段を含み、
前記制御対象設定手段が前記第2制御モードを実行する条件の1つは、前記熱負荷検知手段により検知された熱負荷が所定値以上であるという条件である
ことを特徴とする請求項14又は15に記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。 - 前記空調システムは車両に適用され、
前記外部情報検知手段は、記車両の内外の熱負荷を検知する熱負荷検知手段と、前記可変容量圧縮機の回転数に相当する物理量を検知する回転数検知手段とを含み、
前記制御対象設定手段が前記第2制御モードを実行する条件の1つは、前記熱負荷検知手段により検知された熱負荷及び前記回転数検知手段により検知された物理量の両方が所定値以上であるという条件である
ことを特徴とする請求項14又は15に記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。 - 前記空調システムは、前記冷凍サイクルと切り換え可能に設けられたホットガスヒータサイクルを更に備え、
前記可変容量圧縮機は、前記空調システムの冷凍サイクルのみならず前記ホットガスヒータサイクルの一部を構成し、
前記外部情報検知手段は、前記冷凍サイクル及びホットガスヒータサイクルのうち何れのサイクルが作動しているかを検知するサイクル検知手段を含み、
前記制御対象設定手段は、前記ホットガスヒータサイクルの作動中、前記第2制御モードを実行する
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。 - 前記外部情報検知手段は、前記ホットガスヒータサイクルの一部を構成する空気加熱用熱交換器を通過した直後の空気流の温度を検知する熱交換器出口空気温度検知手段と、前記空気加熱用熱交換器を通過した直後の空気流の目標温度を設定する熱交換器目標出口空気温度設定手段とを含み、
前記制御対象設定手段は、前記第2制御モードを実行するとき、前記熱交換器出口空気温度検知手段により検知された前記空気流の温度が前記熱交換器目標出口空気温度設定手段により設定された前記目標温度に近付くように前記目標作動圧力差を設定する
ことを特徴とする請求項18に記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。 - 前記吐出圧力検知手段は、前記冷凍サイクル及びホットガスヒータサイクルに共通に含まれる前記循環路の吐出圧力領域の部分にて前記冷媒の圧力を検知することを特徴とする請求項18又は19に記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。
- 前記制御対象設定手段は、前記制御モードの1つである第3制御モードを実行したときに、前記吐出圧力領域の圧力の目標である目標吐出圧力を設定し、前記吐出圧力検知手段により検知された前記吐出圧力領域の圧力が前記目標吐出圧力に近付くように前記目標作動圧力差を設定することを特徴とする請求項1乃至20の何れかに記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。
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