JP5064918B2 - 可変容量圧縮機の容量制御システム - Google Patents
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Description
吐出容量の制御には吸入圧力制御があり、吸入圧力制御を実行するため、容量制御弁には、吸入室の圧力(吸入圧力)を感知するための感圧部材を内蔵するものがある。このような容量制御弁を用いた可変容量圧縮機では、吸入圧力が、設定吸入圧力に近付くように感圧部材によって機械的にフィードバック制御(吸入圧力制御)される。
容量制御弁の弁体は、ソレノイドの電磁力とともに、感圧部材としてのベローズが伸張しようとして発生する押圧力が作用するよう配置されている。そして、ソレノイドへの通電量が一定の場合、吸入圧力が通電量に対応して定まる設定吸入圧力にて一定になるよう、容量制御弁の開度が変化する。
近年、制御コンピュータの能力は著しく向上しており、演算処理の増大やメモリの消費は以前ほど問題ではない。むしろ、容量制御弁の構造が複雑になるほうが、可変容量圧縮機における容量制御弁の装着スペースの確保や、取付け姿勢に制限が加わり、問題となることが多い。
また、本発明の目的の1つは、可変容量圧縮機の回転数が増減するときに、当該圧縮機の負荷を増減する制御が安定して行われる可変容量圧縮機の容量制御システムを提供することにある。
好ましくは、前記低回転数領域での前記下限圧力を第1下限圧力とし、前記高回転数領域での前記下限圧力を第2下限圧力としたとき、前記可変容量圧縮機の回転数が、所定時間連続して、前記第1下限圧力から前記第2下限圧力に切り替えられるべき回転数以上であるときに、前記下限圧力は第1下限圧力から第2下限圧力に切り替えられる(請求項3)。
好ましくは、前記制御電流調整手段は、前記制御電流若しくはパラメータが上限値以下になるよう調整し、前記吐出圧力検知手段によって検知された前記吐出圧力が上限圧力以上になったとき、前記上限値は小さくなるよう変更され、前記上限圧力は、前記圧縮機回転数検知手段によって検知された前記物理量に基づいて変化し、前記可変容量圧縮機の回転数が高い領域では、前記可変容量圧縮機の回転数が低い領域に比べて小さい(請求項5)。
好ましくは、前記可変容量圧縮機の回転数が低い領域での前記上限圧力を第1上限圧力とし、前記可変容量圧縮機の回転数が高い領域での前記上限圧力を第2上限圧力としたとき、前記第2上限圧力から前記第1上限圧力に切り替えられるべき前記可変容量圧縮機の回転数は、前記第1上限圧力から前記第2上限圧力に切り替えられるべき前記可変容量圧縮機の回転数よりも低い(請求項7)。
好ましくは、前記制御電流若しくはパラメータの前記上限値が小さくなるよう変更された結果として前記上限値が最小値よりも小さくなったとき、前記制御電流調整手段は、吐出容量が最小になるよう前記制御電流若しくはパラメータを調整する(請求項10)。
一方、この容量制御システムでは、感圧部材を有さない容量制御弁を用いても、目標吸入圧力設定手段が目標吸入圧力を設定することにより、吸入圧力が目標吸入圧力に近付くように吐出容量が制御される。
この結果として、この容量制御システムによれば、感圧部材を有さない容量制御弁を用いても、可変容量圧縮機の信頼性が確保される。
また、この容量制御システムでは、上限圧力を可変容量圧縮機の回転数が高い領域で小さくすることにより、可変容量圧縮機が最大吐出容量で作動するのが規制され、可変容量圧縮機の負荷が低減される。
請求項6の可変容量圧縮機の容量制御システムでは、所定の条件が満たされたときに、上限値が最大値を超えない範囲で大きくなるよう変更されることにより、上限値が一旦小さく変更された後でも、制御電流を最大値まで供給可能になる。この結果として、この容量制御システムでは、状況に応じて、制御電流の供給範囲ひいては吸入圧力の制御範囲が適当に確保され、空調システムの冷房能力が確保される。
請求項11の可変容量圧縮機の容量制御システムでは、電流検知手段によって検知された電流が制御電流に近付くようにデューティ比を制御することにより、吸入圧力が高精度にて制御される。
請求項13の可変容量圧縮機の容量制御システムが適用された可変容量圧縮機は、往復動型であり、斜板要素の最小傾角で規定されるピストンのストロークを非常に小さく設定できる。このため、最小吐出容量が非常に小さく、吐出容量の機械的な可変範囲が広い。この結果として、この容量制御システムは、目標吸入圧力を設定することにより吸入圧力の制御範囲を拡大した効果が十分に発揮される。
図1は、容量制御システムAが適用された車両用空調システムの冷凍サイクル10を示し、冷凍サイクル10は、作動流体としての冷媒が循環する循環路12を備える。循環路12には、冷媒の流動方向でみて、圧縮機100、放熱器(凝縮器)14、膨張器(膨張弁)16及び蒸発器18が順次介挿され、圧縮機100が作動すると、圧縮機100の吐出容量に応じて循環路12を冷媒が循環する。すなわち、圧縮機100は、冷媒の吸入工程、吸入した冷媒の圧縮工程及び圧縮した冷媒の吐出工程からなる一連のプロセスを行う。
容量制御システムAが適用される圧縮機100は可変容量圧縮機であり、例えば斜板式のクラッチレス圧縮機である。圧縮機100はシリンダーブロック101を備え、シリンダーブロック101には、複数のシリンダボア101aが形成されている。シリンダーブロック101の一端にはフロントハウジング102が連結され、シリンダーブロック101の他端には、バルブプレート103を介してリアハウジング(シリンダヘッド)104が連結されている。
駆動軸106は、フロントハウジング102の外側に突出したボス部102a内を貫通し、駆動軸106の外端には、動力伝達装置としてのプーリ112に連結されている。プーリ112は、ボール軸受113を介してボス部102aによって回転自在に支持され、外部駆動源としてのエンジン114のプーリとの間にベルト115が架け回される。
シリンダボア101a内にはピストン130が配置され、ピストン130には、クランク室105内に突出したテール部が一体に形成されている。テール部に形成された凹所130a内には一対のシュー132が配置され、シュー132は斜板107の外周部に対し挟み込むように摺接している。従って、シュー132を介して、ピストン130と斜板107とは互いに連動し、駆動軸106の回転によりピストン130がシリンダボア101a内を往復動する。
リアハウジング104には、容量制御弁(電磁制御弁)300が収容され、容量制御弁300は給気通路160に介挿されている。給気通路160は、吐出室142とクランク室105との間を連通するようにリアハウジング104からバルブプレート103を経てシリンダーブロック101にまで亘っている。
また、吸入室140は、リアハウジング104に形成された感圧通路166を通じて、給気通路160とは独立して容量制御弁300に接続されている。
また、弁ハウジング301の外周面には出口ポート301bが形成され、出口ポート301bは、給気通路160の下流側部分を介してクランク室105と連通する。出口ポート301bも弁室303に開口しており、弁孔301a、弁室303及び出口ポート301bを通じて、吐出室142とクランク室105とは連通可能である。
またソレノイドハウジング310内には、同心上に円筒状の固定コア318が収容され、固定コア318は、弁ハウジング301からエンドキャップ312に向けてソレノイド316の中央まで延びている。固定コア318のエンドキャップ312側はスリーブ320によって囲まれ、スリーブ320は、エンドキャップ312側に閉塞端を有する。
挿通孔318aには、ソレノイドロッド326が摺動可能に挿通され、ソレノイドロッド326の一端に弁体304が一体且つ同軸的に連結されている。ソレノイドロッド326の他端は可動コア収容空間324内に突出し、ソレノイドロッド326の他端部は、可動コア322に形成された貫通孔に嵌合され、ソレノイドロッド326と可動コア322とは一体化されている。また、可動コア322の段差面と固定コア318の端面との間には、開放ばね328が配置され、可動コア322と固定コア318との間には所定の隙間が確保されている。
ソレノイドハウジング310には感圧ポート310aが形成され、感圧ポート310aには、感圧通路166を介して吸入室140が接続されている。固定コア318の外周面には、軸線方向に延びる感圧溝318bが形成され、感圧ポート310aと感圧溝318bとは互いに連通している。従って、感圧ポート310a及び感圧溝318bを通じて、吸入室140と可動コア収容空間324とが連通し、ソレノイドロッド326を介して、弁体304の背面側には、閉弁方向に吸入室140の圧力(以下、吸入圧力Psと呼ぶ)が作用する。
容量制御弁300にあっては、好ましくは、弁体304が弁孔301aを閉じた時に吐出室142の圧力(以下、吐出圧力Pdという)が作用する弁体304の受圧面積(シール面積Svと呼ぶ)と、吸入圧力Psが作用する弁体304の面積、即ちソレノイドロッド326の断面積とが同等に形成される。
なお、ソレノイド316への通電量を増加させると、吸入圧力Psを低下させることができる。一方、ソレノイド316への通電量をゼロとすれば、開放ばね328の付勢力fsにより弁体304が離間して弁孔301aが強制開放される。これにより吐出室142からクランク室105に冷媒が導入され、吐出容量は最小に維持される。
容量制御システムAは、2つ以上の外部情報を検知する外部情報検知手段を有し、外部情報検知手段は、蒸発器目標出口空気温度設定手段401及び蒸発器出口空気温度検知手段としての温度センサ402を含む。
また、外部情報検知手段は、圧縮機100の回転数Ncnを検知するための圧縮機回転数検知手段を含む。圧縮機回転数検知手段は、エンジン114の回転数を検知するエンジン回転数センサ403を有し、エンジン回転数センサ403によって検知されたエンジン114の回転数に、所定のプーリー比を乗じることにより、圧縮機100の回転数Ncnを検知することができる。
更に、外部情報検知手段は吐出圧力検知手段を含み、吐出圧力検知手段は、その一部を構成する圧力センサ404を有する。吐出圧力検知手段は、弁体304に作用する吐出圧力Pdを検知するための手段である。圧力センサ404は、放熱器14の入口側に装着され、当該部位における冷媒の圧力(以下、検知圧力Phという)を検知し、制御装置400に入力する(図1参照)。
これに対し、冷凍サイクル10の吸入圧力領域とは、蒸発器18の出口から吸入室140に亘る領域をさす。また、吐出圧力領域には、圧縮工程にあるシリンダボア101aも含まれ、吸入圧力領域には、吸入工程にあるシリンダボア101aも含まれる。
制御装置400は、目標吸入圧力設定手段410、圧力補正手段411、制御電流演算手段412及びソレノイド駆動手段413を有する。
つまり、目標吸入圧力設定手段410にとって、温度センサ402及び蒸発器目標出口空気温度設定手段401は、外部情報としての蒸発器出口空気温度Te及びその目標値である蒸発器目標出口空気温度Tesをそれぞれ提供する外部情報検知手段である。
このように検知圧力Phを補正するのは、吐出室142と放熱器14の入口との間では、同じ吐出圧力領域であっても、特に熱負荷が大きいときには、冷媒の圧力に差が生じるためである。吐出圧力Pdは、検知圧力Phを変数とする関数f(Ph)によって演算することができる。関数f(Ph)は予め求めておくことができる。
制御電流演算手段412は、演算された制御電流Iが可変上限値I2以上であるときには、制御電流Iを可変上限値I2で置き換える。また、制御電流演算手段412は、圧縮機100、空調システム又は車両に何らかの異常が発生した場合に、吐出容量が最小になるように制御電流Iを置き換える。
そして、制御電流演算手段412は、設定された制御電流Iを吐出容量制御信号としてソレノイド駆動手段413に入力する。
ソレノイド駆動手段413は、吐出容量制御信号に基づき、制御電流演算手段412で設定された制御電流Iに等しくなるよう、ソレノイド316に制御電流Iを供給し、容量制御弁300を駆動する。つまり、制御電流演算手段412及びソレノイド駆動手段413は、吐出圧力検知手段によって検知された吐出圧力Pd及び目標吸入圧力設定手段410によって設定された目標吸入圧力Pssに基づいて、容量制御弁300のソレノイド316に供給される制御電流I若しくは当該制御電流Iに関連するパラメータを調整する制御電流調整手段を構成する。
ソレノイド駆動手段413は、スイッチング素子420を有し、スイッチング素子420は、電源450とアースとの間を延びる電源ラインに、容量制御弁300のソレノイド316と直列に介挿されている。スイッチング素子420は、電源ラインを断続可能であり、スイッチング素子420の動作によって、所定の駆動周波数(例えば400〜500Hz)のPWM(パルス幅変調)にてソレノイド316に制御電流Iが供給される。
スイッチング素子420には、制御信号発生手段422から所定の駆動信号が入力され、この信号に対応して、PWMにおけるデューティ比が変更される。
また、電源ラインには、電流センサ423が介挿され、電流センサ423は、ソレノイド316を流れる制御電流Iを検知する。電流センサ423は、制御電流Iに相当する物理量を検知可能であれば電流計に限られず、電圧計であってもよい。
以下、上述した容量制御システムAの動作(使用方法)を説明する。
図6は制御装置400が実行するメインルーチンを示したフローチャートである。メインルーチンは、例えば車両のエンジンキーがオン状態になると起動され、オフ状態になると停止される。
また、S10では、制御電流Iが、圧縮機100の吐出容量が最小容量となるI0に設定される。I0はゼロであってもよい。
次に、車両用空調システムのエアコンスイッチ(A/C)がオンであるか否かが判定される(S11)。即ち、乗員が、車室の冷房又は除湿を要求しているか否かが判定される。エアコンスイッチがオンの場合(Yesの場合)、圧力補正手段411は、圧力センサ404によって検知された検知圧力Phを読み込み(S12)、吐出圧力Pdを演算する(S13)。
S15の判定結果がYesの場合、フラグF1が0であるか否かが判定される(S16)。初期条件ではF1=0であるので、S16の判定結果はYesとなる。従って、吸入圧力制御ルーチンS17が実行された後、S11が再び実行される。
フラグF1が1に設定されている間は、S16の判定結果がNoになり、制御電流上限値増大ルーチンS20を経て、吸入圧力制御ルーチンS17が実行される。なお、フラグF1を0に設定するステップは、制御電流上限値増大ルーチンS20に含まれている。
図7は、図6中の吸入圧力制御ルーチンS17の詳細を示すフローチャートである。
吸入圧力制御ルーチンS17では、まず圧縮機100の吐出容量制御の目標となる蒸発器目標出口空気温度Tesが設定され読み込まれる(S100)。次に、温度センサ402によって検知された蒸発器出口空気温度Teが読み込まれ(S101)、蒸発器目標出口空気温度Tesと、実際の蒸発器出口空気温度Teとの偏差ΔTが演算される(S102)。そして、演算された偏差ΔTに基づいて、例えばPI制御のための所定の演算式により目標吸入圧力Pssが演算される(S103)。
また、吸入圧力制御ルーチンS17を1回実行するごとに、S102で偏差ΔTが演算され、S103の演算式中の偏差ΔTの添字nは、偏差ΔTが今回のS102で演算されたものであることを示す。同様に添字n−1は、偏差ΔTが前回のS102で演算されたものであることを示す。
この後、演算された制御電流Iが、予め設定された下限値I1以上であるか否か比較判定される(S108)。S108の判定結果がNoであれば、下限値I1が制御電流Iとして読み込まれ(S109)、制御電流Iがソレノイド316に出力される(S110)。
従って、S108及びS111の判定の結果、I1≦I≦I2であれば、S107で演算された制御電流Iがそのまま出力される。
上限圧力設定ルーチンS14では、まず、圧縮機回転数Ncnが読み込まれる(S150)。読み込まれる圧縮機回転数Ncnは、エンジン回転数センサ403によって検知されたエンジン114の回転数に所定のプーリ比を乗じることにより演算される。
それから、圧縮機回転数Ncnが、所定の動作回転数NcHよりも低いか否か比較判定される(S151)。
S152の判定結果がYesの場合、つまり、圧縮機回転数Ncnが復帰回転数NcLよりも低い場合、フラグF2が0であるか否かが比較判定される(S153)。S153の判定結果がYesの場合、可変上限圧力P2として第1上限圧力PdHが設定される(S154)。
S152の判定結果がNoの場合、フラグF2が0であるか否か比較判定され(S156)、S156の判定結果がYesの場合、つまりフラグF2が0の場合には、可変上限圧力P2として第1上限圧力PdHが設定される(S154)。
S151の判定結果がNoの場合、つまり、圧縮機回転数Ncnが動作回転数NcH以上の場合、フラグF2が0であるか否か比較判定される(S158)。S158の判定結果がYesの場合、フラグF2が1に設定され(S159)、可変上限圧力P2として第2上限圧力PdLが設定される(S157)。S158の判定結果がNoの場合、可変上限圧力P2として第2上限圧力PdLが設定される(S157)。
一方、圧縮機回転数Ncnが動作回転数NcH以上になった後は、圧縮機回転数Ncnが復帰回転数NcLよりも低くならない限り、可変上限圧力P2が第2上限圧力PdLから第1上限圧力PdHに上昇することはない。
図10は、図7中の下限圧力設定ルーチンS104の詳細を示すフローチャートである。
S171の判定結果がYesの場合、つまり、圧縮機回転数Ncnが動作回転数NcHよりも低い場合、圧縮機回転数Ncnが、復帰回転数NcLよりも低いか否か比較判定される(S172)。
S173の判定結果がNoの場合、フラグF3が0に設定されてから(S175)、可変下限圧力P1として第1下限圧力PsLが設定される(S174)。
S176の判定結果がNoの場合、可変下限圧力P1として第2下限圧力PsHが設定される(S177)。第2下限圧力PsHは、第1下限圧力PsLよりも大きい。
一方、圧縮機回転数Ncnが動作回転数NcH以上になった後は、圧縮機回転数Ncnが復帰回転数NcLよりも低くならない限り、可変下限圧力P1が第2上限圧力PsHから第1下限圧力PsLに低下することはない。
図11は、図6中の制御電流上限値減少ルーチンS19の詳細を示すフローチャートである。
演算された変更値Ia1は、現在の下限値I1よりも大きいか否か比較判定される(S202)。S202の判定結果がYesの場合、つまり演算された変更値Ia1が下限値I1よりも大きい場合、現在の可変上限値I2が、変更値Ia1に書き換えられて更新され(S203)、それから吸入圧力制御ルーチンS17が実行される。
そして、S205の後、メインルーチン、つまり吐出容量制御が停止される(S206)。
制御電流上限値増大ルーチンS20では、まず、現在設定されている制御電流Iが読み込まれる(S250)。それから、読み込まれた制御電流Iに所定値ΔI1を加算することにより、変更値Ia2が演算される(S251)。
つまり、吐出圧力Pdが可変上限圧力P2以上になると、可変上限値I2は、現在設定されている制御電流Iを基準として所定値ΔI1ずつ減少させられ、この一方で、吐出圧力Pdが可変上限圧力P2よりも小さければ、可変上限値I2は、現在設定されている制御電流Iを基準として所定値ΔI1ずつ最大値Imaxまで増大される。
一方、この容量制御システムAでは、感圧部材を有さない容量制御弁300を用いても、目標吸入圧力設定手段410が目標吸入圧力Pssを設定することにより、吸入圧力Psが目標吸入圧力Pssに近付くように吐出容量が制御される。
この結果として、この容量制御システムAによれば、感圧部材を有さない容量制御弁300を用いても、圧縮機100の信頼性が確保される。
この結果として、この容量制御システムAによれば、感圧部材を有さない容量制御弁300を用いても、圧縮機100の信頼性がより一層確保される。
容量制御システムAでは、蒸発器18を通過した直後の空気流の温度Teが蒸発器目標出口空気温度Tesに近付き、空調システムにより空調される車室の温度制御の精度が向上する。
容量制御システムAでは、圧縮機100の回転数Ncnが動作回転数NcH以上になると、すぐに可変下限圧力P1が第1下限圧力PsLから第2下限圧力PsHに切り替えられたが、圧縮機100の回転数Ncnが、所定時間連続して動作回転数NcH以上であるときにのみ、可変下限圧力P1が第1下限圧力PsLから第2下限圧力PsHに切り替わるようにしてもよい。これにより、可変下限圧力P1が頻繁に切り替わることが防止され、圧縮機100の回転数Ncnが動作回転数NcHを挟んで大きく増減しても、可変下限圧力P1の制御が安定する。
容量制御システムAでは、可変下限圧力P1が第1下限圧力PsLと第2下限圧力PsLとの間でステップ関数のように変化したが、図13に示したように、徐々に変化してもよい。同じく、可変上限圧力P2が第1上限圧力PdHと第2上限圧力PdLとの間でステップ関数のように変化したが、図13に示したように、徐々に変化してもよい。
容量制御システムAでは、圧縮機100の負荷が増大しないように、可変下限圧力P1及び可変上限圧力P2を設けて、吐出容量の増大を制限するものであったが、可変下限圧力P1のみを設定してもよい。
より詳しくは、容量制御システムAでは、目標吸入圧力Pssと吐出圧力Pdとに基づいて制御電流Iが演算されるが、容量制御弁300の製造上のばらつきにより、同一の制御電流Iがソレノイド316を流れていたとしても、吸入圧力Psや吐出圧力Pdは容量制御弁300ごとにわずかに異なる。また、検知圧力Phの検知にも測定誤差があり、検知圧力Phから吐出圧力Pdを演算するときにも誤差が生じる。
これにより、目標吸入圧力Pssのばらつきの存在にかかわらず、吸入圧力Psを可変下限圧力P1以上に確実に制限できる。
指標は、吐出圧力Pdを基準として、吐出圧力Pdのばらつきを考慮して設定される。吐出圧力Pdのばらつきは、前述したように、検知圧力Phを検知する際の測定誤差や、検知圧力Phから吐出圧力Pdを演算するときの誤差に基づいて生じる。
容量制御システムAでは、S103、S107、S201、S251の各演算式は実施例に限定されない。例えば、図7のS103では、偏差ΔTが正負の何れであるかに対応して、単純に一定値ΔPssだけPssを増減してもよい。
容量制御システムAでは、ソレノイド駆動手段413が電流センサ423等の制御電流Iを検知するための手段を有していなくてもよい。
容量制御システムAでは、S107において、制御電流Iを演算したけれども、制御電流Iとデューティ比との関係を予め求めておき、デューティ比を演算してもよい。
目標吸入圧力Pssの設定に用いられる外部情報としては、車両の内外の熱負荷に関する情報を用いることができる。この場合、外部情報検知手段は、車両の内外の熱負荷に関する情報を検知する熱負荷検知手段を含む。
容量制御システムAでは、圧縮機回転数Ncnをエンジン114の回転数に基づいて検知したけれども、前述したように、圧縮機回転数Ncnと関連する物理量に基づいて検知してもよい。例えば、車速とギヤ位置とから圧縮機回転数Ncnを検知してもよい。また、スロットル開度(アクセル開度)を含む情報に基づいて圧縮機回転数Ncnを検知してもよい。
容量制御システムAでは、圧力センサ404が吐出圧力領域にて冷媒の圧力を検知したけれども、吐出圧力検知手段は吐出圧力Pdを検知することができればよいため、圧力センサ404を配置する部位は特に限定されず、冷凍サイクル10の高圧領域の何れかの部位に配置すればよい。高圧領域とは、吐出圧力領域に放熱器14から膨張器16の入口までの領域を加えた領域である。この場合、圧力補正手段411が、圧力センサ404によって検知した圧力から吐出圧力Pdを演算すればよい。
容量制御システムAの容量制御弁300では、機械的に吸入圧力Psをフィードバック制御する感圧部材は不要であるが、弁体304に対し、吐出圧力Pd、吸入圧力Ps又は電磁力F(I)を作用させるために、ベローズやダイヤフラムを用いてもよい。
なお、制御圧力とは、往復動圧縮機の場合には、クランク室の圧力(クランク圧力Pc)である。
容量制御システムAでは、容量制御弁300は、吐出室142とクランク室105との間を繋ぐ給気通路160に配置されていたけれども、圧縮機100が斜板式又は揺動板式の場合、給気通路160に容量制御弁300を配置せずに、クランク室105と吸入室140との間を繋ぐ抽気通路162に容量制御弁を配置してもよい。即ち、給気通路160の開度を制御する入口制御に限定されず、抽気通路162の開度を制御する出口制御であってもよい。
容量制御システムAは、車両用空調システム以外の室内用空調システムの冷凍サイクルや、冷凍・冷蔵庫等の冷凍装置の冷凍サイクル等、冷凍サイクル全般に適用可能である。
401 蒸発器目標出口空気温度設定手段
402 温度センサ
403 エンジン回転数センサ(圧縮機回転数検知手段)
404 圧力センサ(吐出圧力検知手段)
410 目標吸入圧力設定手段
411 圧力補正手段(吐出圧力検知手段)
412 制御電流演算手段
413 ソレノイド駆動手段
Claims (13)
- 空調システムの冷凍サイクルを構成すべく冷媒が循環する循環路に放熱器、膨張器及び蒸発器とともに介挿され、制御圧力の変化に基づいて容量が変化する可変容量圧縮機の容量制御システムにおいて、
前記冷凍サイクルの吐出圧力領域の何れかの部位における前記冷媒の圧力を吐出圧力とし、前記冷凍サイクルの吸入圧力領域の何れかの部位における前記冷媒の圧力を吸入圧力としたときに、前記吐出圧力を受けるとともに、前記吐出圧力と対向する方向にて前記吸入圧力及びソレノイドの電磁力を受けて弁孔を開閉可能な弁体を有し、前記弁孔を開閉して前記制御圧力を変化させることにより前記可変容量圧縮機の容量を調整可能な容量制御弁と、
前記吐出圧力を検知するための吐出圧力検知手段及び前記可変容量圧縮機の回転数に相当する物理量を検知するための回転数検知手段を含み、前記吐出圧力及び前記物理量を含めて2つ以上の外部情報を検知するための外部情報検知手段と、
前記外部情報検知手段によって検知された外部情報に基づいて前記吸入圧力の目標である目標吸入圧力を設定する目標吸入圧力設定手段と、
前記吐出圧力検知手段によって検知された吐出圧力及び前記目標吸入圧力設定手段によって設定された目標吸入圧力に基づいて、前記容量制御弁のソレノイドに供給される制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータを調整する制御電流調整手段と
を具備し、
前記目標吸入圧力設定手段は、下限圧力よりも大きな値に前記目標吸入圧力を設定し、
前記下限圧力は、前記圧縮機回転数検知手段によって検知された前記物理量に基づいて変化し、前記可変容量圧縮機の回転数が高い高回転数領域では、前記可変容量圧縮機の回転数が低い低回転数領域に比べて大きい
ことを特徴とする可変容量圧縮機の容量制御システム。 - 前記低回転数領域での前記下限圧力を第1下限圧力とし、前記高回転数領域での前記下限圧力を第2下限圧力としたとき、
前記第2下限圧力から前記第1下限圧力に切り替えられるべき前記可変容量圧縮機の回転数は、前記第1下限圧力から前記第2下限圧力に切り替えられるべき前記可変容量圧縮機の回転数よりも低い
ことを特徴とする請求項1に記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。 - 前記低回転数領域での前記下限圧力を第1下限圧力とし、前記高回転数領域での前記下限圧力を第2下限圧力としたとき、
前記可変容量圧縮機の回転数が、所定時間連続して、前記第1下限圧力から前記第2下限圧力に切り替えられるべき回転数以上であるときに、前記下限圧力は第1下限圧力から第2下限圧力に切り替えられる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。 - 前記可変容量圧縮機の回転数が、所定時間連続して、前記第2下限圧力から前記第1下限圧力に切り替えられるべき回転数以下であるときに、前記下限圧力は前記第2下限圧力から前記第1下限圧力に切り替えられることを特徴とする請求項3に記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。
- 前記制御電流調整手段は、前記制御電流若しくはパラメータが上限値以下になるよう調整し、
前記吐出圧力検知手段によって検知された前記吐出圧力が上限圧力以上になったとき、前記上限値は小さくなるよう変更され、
前記上限圧力は、前記圧縮機回転数検知手段によって検知された前記物理量に基づいて変化し、前記可変容量圧縮機の回転数が高い領域では、前記可変容量圧縮機の回転数が低い領域に比べて小さい
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。 - 前記吐出圧力検知手段によって検知された前記吐出圧力が前記上限圧力よりも小さく且つ前記上限値が最大値よりも小さいときに、前記上限値は、前記最大値を超えない範囲で大きくなるよう変更されることを特徴とする請求項5に記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。
- 前記可変容量圧縮機の回転数が低い領域での前記上限圧力を第1上限圧力とし、前記可変容量圧縮機の回転数が高い領域での前記上限圧力を第2上限圧力としたとき、
前記第2上限圧力から前記第1上限圧力に切り替えられるべき前記可変容量圧縮機の回転数は、前記第1上限圧力から前記第2上限圧力に切り替えられるべき前記可変容量圧縮機の回転数よりも低い
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。 - 前記可変容量圧縮機の回転数が低い領域での前記上限圧力を第1上限圧力とし、前記可変容量圧縮機の回転数が高い領域での前記上限圧力を第2上限圧力としたとき、
前記可変容量圧縮機の回転数が、所定時間連続して、前記第1上限圧力から前記第2上限圧力に切り替えられるべき回転数以上であるときに、前記上限圧力は前記第1上限圧力から前記第2上限圧力に切り替えられることを特徴とする請求項5乃至7の何れかに記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。 - 前記可変容量圧縮機の回転数が、所定時間連続して、前記第2上限圧力から前記第1上限圧力に切り替えられるべき回転数以下であるときに、前記上限圧力は前記第2上限圧力から前記第1上限圧力に切り替えられることを特徴とする請求項8に記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。
- 前記制御電流若しくはパラメータの前記上限値が小さくなるよう変更された結果として前記上限値が最小値よりも小さくなったとき、前記制御電流調整手段は、吐出容量が最小になるよう前記制御電流若しくはパラメータを調整する
ことを特徴とする請求項5乃至9の何れかに記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。 - 前記制御電流調整手段は、
前記吐出圧力検知手段によって検知された吐出圧力及び前記目標吸入圧力によって設定された目標吸入圧力に基づいて前記ソレノイドに供給する制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータを演算する制御電流演算手段と、
前記ソレノイドを流れる制御電流若しくは当該制御電流に関連するパラメータを検知する電流検知手段とを含み、
前記電流検知手段で検知された制御電流若しくはパラメータが前記制御電流演算手段によって演算された前記制御電流若しくはパラメータに近付くように、前記ソレノイドに供給される制御電流のデューティ比を調整する
ことを特徴とする請求項1乃至10の何れかに記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。 - 前記外部情報検知手段は、前記蒸発器を通過した直後の空気流の温度を検知するための蒸発器出口空気温度検知手段と、前記蒸発器を通過した直後の空気流の目標温度を設定する蒸発器目標出口空気温度設定手段とを含み、
前記目標吸入圧力設定手段は、前記蒸発器出口空気温度検知手段によって検知された前記空気流の温度が蒸発器目標出口空気温度設定手段によって設定された前記目標温度に近付くように、前記目標吸入圧力を設定する
ことを特徴とする請求項1乃至11の何れかに記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。 - 前記可変容量圧縮機は、
内部に吐出室、クランク室、吸入室及びシリンダボアが区画形成されたハウジングと、
前記シリンダボアに配設されたピストンと、
前記ハウジング内に回転可能に支持された駆動軸と、
前記駆動軸の回転を前記ピストンの往復運動に変換する傾角可変の斜板要素を含む変換機構と、
前記吐出室と前記クランク室とを連通する給気通路と、
前記吸入室と前記クランク室とを連通する抽気通路とを備え、
前記容量制御弁は、前記給気通路及び前記抽気通路のうち一方に介挿されている
ことを特徴とする請求項1乃至12の何れかに記載の可変容量圧縮機の容量制御システム。
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