JP2008215185A - 燃料噴射制御装置及び燃料噴射制御システム - Google Patents
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Abstract
【課題】移動手段としての自動車等におけるエンジンに適用された場合にあっても、より多くの状況に柔軟に対応してそのエンジンを好適に制御することのできる燃料噴射制御装置及び燃料噴射制御システムを提供する。
【解決手段】対象エンジンに対する燃料の噴射供給を制御する燃料噴射制御装置(エンジン制御用ECU)として、燃料タンク内の燃料残量QTを実測するプログラム(ステップS21)と、その燃料残量QTが欠乏間近(「3リットル」未満)にある場合に、一部のシリンダでの燃焼を休止した状態(噴射供給の休止)で残りのシリンダによる燃焼を通じて対象エンジンを運転する制御である減筒制御を強制的に実行するプログラム(ステップS22,S23)と、を備える構成とする。詳しくは、対象エンジンの運転中、燃料タンク内の燃料残量QTが「3リットル」未満になったことを実行条件として、上記減筒制御を強制的に実行するようにする。
【選択図】図4
【解決手段】対象エンジンに対する燃料の噴射供給を制御する燃料噴射制御装置(エンジン制御用ECU)として、燃料タンク内の燃料残量QTを実測するプログラム(ステップS21)と、その燃料残量QTが欠乏間近(「3リットル」未満)にある場合に、一部のシリンダでの燃焼を休止した状態(噴射供給の休止)で残りのシリンダによる燃焼を通じて対象エンジンを運転する制御である減筒制御を強制的に実行するプログラム(ステップS22,S23)と、を備える構成とする。詳しくは、対象エンジンの運転中、燃料タンク内の燃料残量QTが「3リットル」未満になったことを実行条件として、上記減筒制御を強制的に実行するようにする。
【選択図】図4
Description
本発明は、エンジンに対する燃料噴射供給を制御する燃料噴射制御装置、及び、そうした燃料噴射制御に用いられる制御システムに関する。
周知のように、例えば自動車等の動力源として用いられるエンジン(特に内燃機関)では、燃料供給システムにより供給された燃料を、着火、燃焼して出力トルクを生成している。一般的な燃料供給システムでは、燃料ポンプによって燃料タンクから汲み上げられ圧送されてくる燃料を、所定のインジェクタ(燃料噴射弁)を通じて対象エンジンの所定シリンダ内(厳密にはシリンダ内の燃焼室)へ噴射供給するようになっている。ちなみにシリンダが複数ある場合(いわゆる多気筒エンジンの場合)は所定の順序に従って各シリンダ内へ燃料が噴射供給される。
こうした燃料供給システムでは、燃料タンク内の燃料がなくなる前に(ある程度の燃料が残っている状態で)燃料の補給を行うことが重要になる。詳しくは、エンジンの制御において、上記燃料タンク内の燃料が空になった状態(より厳密いえば完全に燃料がなくなるまでいかずとも燃料タンク内の燃料レベルが下がって燃料を吸い上げるための配管の吸込口が燃料液面から出てしまうほど燃料が少なくなった状態)でさらにエンジンの運転を続けようとすると、通常運転時に燃料を圧送すべく同燃料に対して圧力を加えていた空気が、燃料供給通路(例えば燃料タンクとインジェクタとをつなぐ配管等)へ入り込んでくる(エア混入)。そして、その空気の入り込んだ状態の燃料供給システムに対して燃料を補給(燃料タンクへ補給)すると、その燃料供給システムにおいて密閉空間として形成される上記燃料供給通路が、上記空気の残留した状態で密閉されることになる。通常このような状態になると、エンジンを速やかに始動させることは難しい。すなわち、エンジンを始動させようとしても、しばらくは空気のみがシリンダ内(燃焼室)へ供給されてしまい、残留空気が排出されるまで燃料の供給が行われなくなる。しかも、エンジンを始動させるためには一般に、手動ポンプ等による長時間(例えば数分)の空気抜き作業が必要になる。
このような不都合(上記空気抜き作業に伴う手間増大等)は、燃料タンク内の燃料がなくなる前に燃料の補給を確実に行えば生じない。しかし実際には、作業者(オペレータ)が作業に夢中になって燃料残量が少ないことに気付かなかったり、あるいは気付いたとしても、作業の都合や経験に基づく過信から作業を続行したりして、燃料がなくなるまで燃料を補給せずにそのままエンジンの運転を続けてしまう懸念がある。そこで従来、例えば特許文献1に記載されるように、燃料タンク内の燃料が空になる前に(ある程度残った状態で)エンジンの運転を停止する燃料制御装置などが提案されている。詳しくは、同文献には、油圧ショベル(いわゆるショベルカー)の動力源とするディーゼルエンジンに対して、その燃料制御装置を適用した例が示されている。この装置は、燃料タンク内の燃料残量が不足しているか否か(燃料液面が所定レベル以下か否か)を判断する手段(残量限度レベル位置検出手段)を備えて構成されるものである。そして、同装置においては、その手段により燃料残量が不足している旨判断された場合に、燃料の噴射、ひいては燃料ポンプによる燃料吐出を停止することで、対象エンジンの運転を停止(強制停止)するとともに、ユーザへその旨を警告するようにしている。こうすることで、燃料供給システムに対して空気が侵入する前にエンジンの運転が停止され、作業者は作業を続けたくても続けることができなくなる。すなわちこれにより、上記残留空気による不都合を未然に防止することが可能になる。
特開平11−303701号公報
しかしながら、この装置を上記油圧ショベルではなく、一般に移動手段として用いられている自動車等に対して適用した場合には、次のような不都合も考えられる。すなわち、例えば一般道路の走行中、運転者が気付かぬうちに上記燃料残量の低下が生じた場合には、その燃料残量の低下と共にエンジンが停止状態になり、車両の運転性(ドライバビリティ)が著しく悪化するとともに、車両の停止が余儀なくされることになる。そして、その停止場所の近くに給油施設がなくて且つ、予備の燃料も持ち合わせていない場合などには、上記燃料供給システムに対する燃料の補給(給油)、ひいてはエンジンの再始動が極めて困難となる。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、移動手段としての自動車等におけるエンジンに適用された場合にあっても、より多くの状況に柔軟に対応してそのエンジンを好適に制御することのできる燃料噴射制御装置及び燃料噴射制御システムを提供することを主たる目的とするものである。
以下、上記課題を解決するための手段、及び、その作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明では、所定の燃料タンクから供給された燃料を噴射する燃料噴射弁と、該燃料噴射弁により噴射供給された燃料を複数あるシリンダのうちの一部又は全部のシリンダ内で燃焼させてその燃料燃焼によるエネルギーを機械的な運動へ変換する(例えば回転運動に変換して出力軸を回転させる)エンジンと、を含んで構成されるエンジンシステムに適用され、前記燃料タンク内の燃料残量を実測又は推定する燃料残量取得手段と、前記燃料残量取得手段により取得された燃料残量が欠乏間近の所定範囲内にある場合に、前記複数のシリンダのうちの一部のシリンダでの燃焼を休止した状態(例えば噴射供給や点火の休止)で残りのシリンダによる燃焼を通じて前記エンジンを運転する制御である減筒制御を強制的に実行する減筒制御実行手段と、を備えることを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明では、所定の燃料タンクから供給された燃料を噴射する燃料噴射弁と、該燃料噴射弁により噴射供給された燃料を複数あるシリンダのうちの一部又は全部のシリンダ内で燃焼させてその燃料燃焼によるエネルギーを機械的な運動へ変換するエンジンと、を含んで構成されるエンジンシステムに適用され、前記エンジンの運転中には、前記燃料タンク内の燃料残量が欠乏間近になったことを実行条件として、前記複数のシリンダのうちの一部のシリンダでの燃焼を休止した状態で残りのシリンダによる燃焼を通じて前記エンジンを運転する制御である減筒制御を強制的に実行する減筒制御実行手段を備えることを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明では、所定の燃料タンクから供給された燃料を噴射する燃料噴射弁と、該燃料噴射弁により噴射供給された燃料を複数あるシリンダのうちの一部又は全部のシリンダ内で燃焼させてその燃料燃焼によるエネルギーを機械的な運動へ変換するエンジンと、を含んで構成されるエンジンシステムに適用され、前記エンジンの始動時に前記燃料タンク内の燃料残量が欠乏間近にある場合には、所定の始動制御により同エンジンを始動させてから、前記複数のシリンダのうちの一部のシリンダでの燃焼を休止した状態で残りのシリンダによる燃焼を通じて前記エンジンを運転する制御である減筒制御を強制的に実行する減筒制御実行手段を備えることを特徴とする。
発明者は、上記のような減筒制御を行うことによって、実際の燃料欠乏状態(対象エンジンの通常運転に必要な燃料量に満たない状態)の前に、すなわちある程度の燃料が残っている状態で、燃料欠乏状態に準ずる状態を容易に作ることができる点に着眼し、上記請求項1,4,5に記載の装置を発明した。すなわちこうした装置を、例えば自動車に搭載した場合には、燃料タンク内の燃料残量が燃料欠乏状態の間近になった時に、上記減筒制御が強制的に実行されるようになる。そして、この減筒制御の実行中、車両は燃料欠乏状態(いわゆるガス欠状態)に準ずる状態となり、運転者は、燃料欠乏状態と同様の状態を体感し、あたかも燃料欠乏状態であるかのように錯覚する(騙される)ようになる。このように、実際に燃料欠乏状態を運転者に体感させることで、ランプの点灯等で形式的に報知する場合とは違った意味で、運転者の危機意識は高められ、運転者は、潜在的(心理的)に燃料補給を促されることになる。すなわち上記請求項1,4,5に記載の構成によれば、前述したような、運転者により燃料タンク内の燃料が空になるまで補給無しでエンジンが継続的に運転されてしまう懸念(確率)は、好適に抑制されることになる。しかも、こうした減筒制御であれば、エンジンの出力は弱まるものの、完全には停止しないため、給油施設から離れた場所で燃料残量が少なくなり上記減筒制御が実行されたとしても、最寄の給油施設までゆっくり運転して給油を行うことが可能になる。ただし、請求項4に記載の発明では、減筒制御の実行中に停止されたエンジンを再始動する場合などを想定し、同エンジンの始動時にはその始動を容易とすべく、上記減筒制御に限らない所定の始動制御(始動に適した制御)を行い、そのエンジンを始動(作動)させてから、上記減筒制御を実行するようにしている。
ここで、上記請求項1に記載の装置において、前記燃料残量取得手段としては、例えば請求項2に記載の発明のように、
・前記燃料タンクに設けられた燃料計の出力に基づいて同タンク内の燃料残量を実測するもの。
あるいは請求項3に記載の発明のように、
・前記燃料タンク内の燃料残量を、所定の基準値(例えばエンプティランプ点灯時の燃料残量)から、前記燃料タンク内の燃料残量がその基準値に到達した時以降の燃料消費量(例えば前記燃料噴射弁に対する指令噴射量の積算値として算出)を減算することにより、その減算値に基づき前記燃料タンク内の燃料残量を推定するもの。
等を採用することが有効である。これらの構成によれば、燃料タンク内の燃料残量や燃料消費量を随時監視(モニタ)することで、前記燃料タンク内の燃料残量をより容易且つ的確に検出することが可能になる。
・前記燃料タンクに設けられた燃料計の出力に基づいて同タンク内の燃料残量を実測するもの。
あるいは請求項3に記載の発明のように、
・前記燃料タンク内の燃料残量を、所定の基準値(例えばエンプティランプ点灯時の燃料残量)から、前記燃料タンク内の燃料残量がその基準値に到達した時以降の燃料消費量(例えば前記燃料噴射弁に対する指令噴射量の積算値として算出)を減算することにより、その減算値に基づき前記燃料タンク内の燃料残量を推定するもの。
等を採用することが有効である。これらの構成によれば、燃料タンク内の燃料残量や燃料消費量を随時監視(モニタ)することで、前記燃料タンク内の燃料残量をより容易且つ的確に検出することが可能になる。
なお、前述した運転者による無謀なエンジン運転の続行をより確実に防止する上では、少なくとも運転者によっては前記減筒制御の実行が容易に解除されない構成(例えば緊急時のみにメーカーから解除のためのパスワードが発行される構成など)とすることが望ましい。そして究極的には、請求項6に記載の発明のように、前記減筒制御実行手段による減筒制御の強制実行が、前記燃料タンク内に十分な量の燃料が補給された場合(例えば燃料残量の測定値に対して閾値を設けて直接的に検出、またエンジン運転条件等から推定することも可)にのみ解除されるものである構成とすることで、エンジン運転の続行で燃料を空にしてしまう可能性は極めて低くなる。
ところで、上記請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置での減筒制御において、休止シリンダを特定のシリンダに固定して長期にわたって前記減筒制御を行った場合、度重なる燃焼休止処理により集中的に特定のシリンダが冷却され、詳しくは燃焼により加熱されないことにより他のシリンダと比べて相対的に冷却され、そのシリンダ内の温度が低下するようになる。そして、こうした筒内温度の低下に伴い燃焼効率が落ちることで、そのシリンダについてはエミッションの悪化が懸念されるようになる。これに対し、請求項7に記載の発明では、前記減筒制御実行手段が、前記減筒制御に係る休止シリンダを規則的又は不規則に(ランダムに)変更するものであることを特徴とする。こうした構成であれば、休止シリンダは固定されず適当に変更されることにより、前記減筒制御に係る燃焼休止処理が分散されるようになる。そしてこれにより、特定のシリンダに対する燃焼休止処理の集中についてもこれが好適に抑制されることになり、ひいてはエミッションの改善が図られるようになる。
具体的には、請求項8に記載の発明のように、上記請求項7に記載の装置において、前記エンジンの各シリンダに対する燃料供給を、1燃焼サイクルで休止シリンダを除く全てのシリンダに行う燃料供給手段を備える構成とし、且つ、前記減筒制御実行手段についてはこれを、該燃料供給手段により所定回(固定値又は所定パラメータに応じた可変値)の燃焼サイクルが行われるごとに前記減筒制御に係る休止シリンダの1つ又は組み合わせを変更するものとすることが有効である。上述のシリンダにおける過度の冷却を避ける上では、休止シリンダを同一パターンで連続させないことが重要となる。この点、上記構成のように、単位燃焼サイクルごとに休止シリンダのパターン(1つ又は組み合わせ)を変更するようにすれば、前記減筒制御に係る燃焼休止処理がより分散されるようになる。
そして、さらにその分散の度合を高める場合には、請求項9に記載の発明のように、上記請求項7又は8に記載の装置において、前記減筒制御実行手段が、前記エンジンの各シリンダを均一に前記減筒制御に係る休止シリンダとするものである構成とすることが特に有効である。こうすることで、上述した特定シリンダに対する燃焼休止処理の集中は、より抑制されるようになる。こうした構成は、各シリンダが均一になる所定の規則で休止シリンダを設定することによっても、休止シリンダをランダムに設定することによっても、実現可能である。ただし、より確実に前記エンジンの各シリンダを(偏重させず)均一に休止シリンダとする(いわば休止シリンダの平均化を図る)上では、予め決めた規則(例えばテーブル等にて規定)に従って前記減筒制御を行う構成がより有効である。他方、この減筒制御を、いわゆるランダム制御(周知のランダム関数を用いた制御)によって行うようにすれば、制御プログラムの作成は容易となる。
請求項10に記載の発明では、上記請求項1〜9のいずれか一項に記載の装置において、前記減筒制御実行手段が、前記燃料タンク内の燃料残量に応じて、単位時間(例えば単位燃焼サイクル)あたりの休止シリンダ数を示す減筒率(例えば100燃焼サイクルあたりの休止シリンダ数が1つである場合を「1%」とする)を可変制御するものであることを特徴とする。
こうした構成であれば、例えば所定の数式やマップ(例えば実際の燃料欠乏状態に準ずる特性を書き込んだマップ)等により、前記燃料タンク内の燃料残量に応じて減筒率を可変制御することで、単位時間あたりの燃料消費量等を調整することができるようになる。しかもこの場合、前記燃料タンク内の燃料残量が少なくなるほど減筒率を増大させることで、燃料残量が少なくなるほど燃料消費量が抑えられるようになり、ひいては燃料残量が空になるまで燃料が消費されることについてはこれが好適に抑制されるようになる。
請求項11に記載の発明では、上記請求項10に記載の装置において、前記減筒制御実行手段が、前記燃料噴射弁に対する燃料の供給ができなくなるほど前記燃料タンク内の燃料残量が低下する所定量だけ前(例えば燃料タンクの燃料吸込口の高さに応じて予め閾値を設定することで検出)に、全てのシリンダでの燃焼を休止して前記エンジンを停止させるものであることを特徴とする。こうした構成であれば、燃料の供給ができなくなる前に、すなわち燃料残量が所定量だけ残った状態で、エンジンを停止することができるようになる。したがって、前述したエアの混入を未然に(例えば直前で)防止することが可能になる。
なお、自動車等のエンジンシステムにおいては一般に、給油(燃料補給)のタイミングを運転者へ知らせる等の目的で、いわゆるエンプティランプが既に実用化され広く用いられている。上記請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置において、前記エンジンシステムが、こうしたエンプティランプ等の報知手段、すなわち前記燃料タンク内の燃料残量が燃料欠乏間近である旨を運転者に報知する報知手段(エンプティランプの他、例えば音声により燃料欠乏間近である旨を報知するもの等も可)を備えて構成される場合には、例えば請求項12に記載の発明のように、
・前記減筒制御実行手段が、前記減筒制御の実行に伴って(実行と同時に又はその前後に)前記報知手段を作動させる(例えばエンプティランプを点灯させる)ものである構成。
あるいは請求項13に記載の発明のように、
・前記減筒制御実行手段が、前記報知手段が作動中であることを前記減筒制御の実行条件の1つとするものである構成。
といった構成が有効である。こうした構成であれば、前記減筒制御の実行中、前記報知手段が作動されるようになり、車両はより実際の燃料欠乏状態(ガス欠状態)に近づくようになり、ひいては運転者が前記減筒制御を故障等と勘違いする可能性が減るようになる。
・前記減筒制御実行手段が、前記減筒制御の実行に伴って(実行と同時に又はその前後に)前記報知手段を作動させる(例えばエンプティランプを点灯させる)ものである構成。
あるいは請求項13に記載の発明のように、
・前記減筒制御実行手段が、前記報知手段が作動中であることを前記減筒制御の実行条件の1つとするものである構成。
といった構成が有効である。こうした構成であれば、前記減筒制御の実行中、前記報知手段が作動されるようになり、車両はより実際の燃料欠乏状態(ガス欠状態)に近づくようになり、ひいては運転者が前記減筒制御を故障等と勘違いする可能性が減るようになる。
なお、前記報知手段(例えばエンプティランプ)以外にも通常制御において燃料欠乏状態で作動するアクチュエータがある場合には、前記減筒制御実行中の車両をより実際の燃料欠乏状態(ガス欠状態)に近づけるべく、前記減筒制御の実行に伴ってそのアクチュエータも作動させる構成がより有効である。
請求項14に記載の発明では、上記請求項1〜13のいずれか一項に記載の装置において、前記燃料噴射弁が、弁本体内部を軸方向に変位可能とする第1のピストン及び第2のピストンと、前記軸方向の両側から前記第1及び第2のピストンに挟まれる密閉空間に対して所定の流体が充填されて形成される流体充填室と、前記軸方向に変位可能として燃料噴射口に相当する噴孔の開弁及び閉弁を行うニードルとを有し、前記第1のピストンの一端面側から所定の駆動力を受けた場合に、その駆動力を、前記第1のピストンの他端面側に位置する前記第2のピストンへ前記流体充填室を介して伝達するとともに、その伝達された駆動力に基づき弁本体内部で前記ニードルを前記軸方向に変位させることにより前記噴孔の開弁及び閉弁の少なくとも一方を行うものであることを特徴とする。
近年、自動車用エンジンの燃料噴射制御システムにおいては、こうした構造のインジェクタが実用化されつつある。例えば自動車用ディーゼルエンジンにおいては、排気クリーン化(エミッションの改善)等を図るべく、上記構造のピエゾインジェクタ(ピエゾ(圧電素子)の変位を駆動力とするインジェクタ)が採用されるようになってきている。こうしたピエゾインジェクタでは、上記第1及び第2のピストン、並びにそれらピストン間の流体充填室によって、ピエゾ変位(駆動力)の増大を図ったり、あるいは弁本体とピエゾとの間の材質の差異(詳しくはその熱膨張差)に起因した変位差を吸収したりするようにしている。
上記ピエゾインジェクタによれば、一般的な電磁駆動式のインジェクタ(ソレノイドインジェクタ)に比べて、より高い応答性が得られる等の利点がある。しかしながら、前述したエンジンの過度な継続運転に起因してエア混入が発生した場合には、上記流体充填室に対してそのエアが入り込み、駆動発生源(例えばピエゾ)からニードルへの駆動力(例えばピエゾ変位)の伝達がうまく行われなくなる。すなわち上記構造を有する燃料噴射弁では、前述のエア混入が特に問題となる。特に請求項15に記載の発明のように、上記請求項14に記載の装置において、前記燃料噴射弁が、燃料を蓄圧するコモンレールから燃料の供給を受けるものである場合には、高圧(例えば「1000気圧」以上)の燃料を扱うことで、上記流体充填室からの流体(一般には燃料)漏れ、ひいては同流体充填室に対するエア混入が生じ易くなる。そして、こうしたエアの混入が生じてしまうと、通常、一般のユーザには対処しきれず、燃料噴射弁の交換等が必要になる。この点、請求項14や15に記載の発明では、こうした燃料噴射弁に対して、上記請求項1〜13のいずれか一項に記載の発明を適用している。こうすることで、前述のエア混入の発生を抑制することができるようになる。そしてこれにより、上記構造を有する燃料噴射弁を採用する場合であれ、エア混入の発生する可能性は低くなり、ひいてはその使用に際しての制約が軽減されることになる。
なお、減筒制御に限らず、他の制御によっても、対象車両を燃料欠乏状態に準ずる状態(いわば擬似的なガス欠状態)にすることは可能である。請求項16に記載の燃料噴射制御装置では、所定の燃料タンクから供給された燃料を燃焼させてエネルギーを生成するとともに、そのエネルギーにより車両を走行させる車載エンジンシステムに適用され、前記燃料タンク内の燃料残量が欠乏間近にある時、その欠乏に先立ち、前記燃料タンク内の燃料があたかも欠乏したような擬似的な燃料欠乏状態に対象車両の運転状態を制御する車両擬似制御手段を備えることを特徴とする。
ここで、車両擬似制御手段としては、上述の減筒制御を行うものの他、例えばエンジンと共に、あるいは単独で、ブレーキ装置やパワトレイン等のエンジン以外の車載装置を制御することによって、擬似的な燃料欠乏状態を作るものなども適宜採用可能である。こうした車両擬似制御手段を備える構成であれば、少なくとも運転者に上記擬似的な燃料欠乏状態を体感させることは可能になり、ひいては運転者の危機意識を高めて潜在的(心理的)に燃料補給を促すことができるようになる。そしてこれにより、前述したような、運転者により燃料タンク内の燃料が空になるまで補給無しでエンジンが継続的に運転されてしまう懸念(確率)は、好適に抑制されることになる。
またこの場合、請求項17に記載の発明のように、前記車両擬似制御手段が、前記燃料タンク内の燃料残量(実測値又は推定値)に応じて前記擬似的な燃料欠乏状態としてより類似度合の高い状態へ前記対象車両の運転状態を可変制御するものである構成とすることがより有効である。燃料欠乏状態においては通常、車両の運転状態が燃料タンク内の燃料残量に応じて変化する。このため、運転者に実際の燃料欠乏状態であると信じ込ませる上では、所定のマップ等により、燃料タンク内の燃料残量に応じてより類似度合の高い状態へ対象車両の運転状態を可変制御することが有効である。具体的には、例えば燃料タンク内の燃料残量が少なくなるほどエンジンの出力を弱める構成などが有益である。
また一方、減筒制御の強制実行に限らず、他の制御によって運転者の運転操作に基づく制御を制限することでも、運転しにくさに基づき運転者に燃料補給を促すことが可能になる。請求項18に記載の燃料噴射制御装置では、所定の燃料タンクから供給された燃料を燃焼させてエネルギーを生成するとともに、そのエネルギーにより車両を走行させる車載エンジンシステムに適用され、前記燃料タンク内の燃料残量が欠乏間近にある時、その欠乏に先立ち、運転者の運転操作に基づく対象車両の制御を所定条件が成立するまで(例えば燃料タンク内に十分な量の燃料が補給されるまで)制限する車両制御制限手段を備えることを特徴とする。
ここで、車両制御制限手段としては、上述の減筒制御の強制実行を行うものの他、例えば所定の操作部(アクセルペダル等)の操作に基づく車両制御に対し、一定の制限を加えるものなども適宜採用可能である。こうした車両制御制限手段を備える構成であれば、車両制御制限手段の制限による運転しにくさに基づき運転者に燃料補給を促すことが可能になる。
またこの場合、上記車両制御制限手段としては、エンジンを完全には停止させずにエンジン運転に伴う燃料の消費速度を抑えるような制御を行うものが有効である。具体的には、例えば車両速度(エンジン回転速度でも代替可)やエンジントルク(例えば燃料噴射量や新気量)等に規制(例えば上限)を設けるものなどが有効である。また、所定の操作部(アクセルペダル)の動きを機械的に規制又は抑制する(ペダルを踏み込めなくしたり重くしたりする)ようにしてもよい。
また請求項19に記載の発明のように、上記車両制御制限手段として、前記燃料タンク内の燃料残量(実測値又は推定値)に応じて前記車両制御の制限度合を可変制御するものを用いるようにすれば、前記燃料タンク内の燃料残量が少なくなる(燃料タンクが空に近づく)ほどより強く運転者に燃料補給を促すことができるようになり、ひいてはより確実に、燃料タンクが空になる(燃料がなくなる)前に、燃料補給が行われるようになる。
ところで、業種や用途等によっては、上記燃料噴射制御装置の単位ではなく、より大きな単位で、例えば該燃料噴射制御装置だけでなく他の関連装置(例えばセンサやアクチュエータ等の制御に係る各種装置)も含めた各種の装置により構築される燃料噴射制御システムとして扱われる場合がある。上記請求項1〜19のいずれか一項に記載の燃料噴射制御装置も、用途の1つとして、エンジン制御システムに組み込んで用いられることが想定される。請求項20に記載の発明は、そうした用途に対応するものであり、上記請求項1に記載の装置を燃料噴射制御システムに組み込んだ場合の構成である。すなわち燃料噴射制御システムとして、所定の燃料タンクから供給された燃料を噴射する燃料噴射弁と、該燃料噴射弁により噴射供給された燃料を複数あるシリンダのうちの一部又は全部のシリンダ内で燃焼させてその燃料燃焼によるエネルギーを機械的な運動(例えば回転運動)へ変換するエンジンと、前記燃料タンク内の燃料残量を実測又は推定する燃料残量取得手段と、前記燃料残量取得手段により取得された燃料残量が欠乏間近の所定範囲内にある場合に、前記複数のシリンダのうちの一部のシリンダでの燃焼を休止した状態(噴射供給や点火の休止)で残りのシリンダによる燃焼を通じて前記エンジンを運転する制御である減筒制御を強制的に実行する減筒制御実行手段と、を備えることを特徴とする。他も同様、上記請求項1〜19のいずれか一項に記載の装置は、燃料噴射制御システムに組み込んで用いて特に有益である。
以下、本発明に係る燃料噴射制御装置及び燃料噴射制御システムを具体化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態の燃料噴射制御システムは、例えば燃料燃焼によるエネルギーを回転運動に変換して出力軸を回転させる自動車用エンジンとしてのレシプロ式ディーゼルエンジン(内燃機関)を制御対象にしたコモンレール式燃料噴射制御システム(高圧燃料供給システム)であり、本実施形態の燃料噴射制御装置は、そのシステムに搭載され、ディーゼルエンジンのシリンダ内の燃焼室に直接的に高圧燃料(例えば噴射圧力「1000気圧」以上の軽油)を噴射供給(直噴供給)する際に用いられる、いわばディーゼルエンジン用の燃料噴射制御装置である。
はじめに図1を参照して、本実施形態に係るコモンレール式燃料噴射制御システム(車載エンジンシステム)の概略について説明する。なお、本実施形態のエンジンとしては、4輪自動車用の多気筒エンジン(例えば直列4気筒エンジン)を想定している。また、この図1において、4つのインジェクタ20は、燃料タンク10側から、それぞれシリンダ#1,#2,#3,#4用のインジェクタである。
同図1に示されるように、このシステムは、大きくは、ECU(電子制御ユニット)30が、各種センサからのセンサ出力(検出結果)を取り込み、それら各センサ出力に基づいて燃料供給系を構成する各装置の駆動を制御するように構成されている。ECU30は、吸入調整弁11cに対する電流供給量を調整して燃料ポンプ11の燃料吐出量を所望の値に制御することで、コモンレール16内の燃料圧力(燃圧センサ16aにて測定される時々の燃料圧力)を目標値(目標燃圧)にフィードバック制御(例えばPID制御)している。そして、その燃料圧力に基づいて、対象エンジンの所定シリンダに対する燃料噴射量、ひいては同エンジンの出力(出力軸の回転速度やトルク)を所望の大きさに制御している。
ここで、燃料供給系を構成する諸々の装置は、燃料上流側から、燃料タンク10、燃料ポンプ11、コモンレール16、及びインジェクタ20の順に配設されている。このうち、燃料タンク10と燃料ポンプ11とは、燃料フィルタ12を介して配管10aにより接続されている。
ここで、燃料タンク10は、対象エンジンの燃料(軽油)を溜めておくためのタンク(容器)である。さらに燃料タンク10には、燃料タンク10内の燃料残量を検出するための燃料計10dが設けられている。この燃料計10dは、燃料タンク10の中(燃料液)にアームの付いたフロートを浮かべてアームの位置(燃料残量に相当)を電気抵抗の変化として検出するものである。こうして検出された燃料残量は、運転者に見えるように運転席近傍の計器(メータ)に表示されるようになっている。
燃料ポンプ11は、高圧ポンプ11a及び低圧ポンプ11bを有し、低圧ポンプ11bによって上記燃料タンク10から汲み上げられた燃料を、高圧ポンプ11aにて加圧して吐出するように構成されている。そして、高圧ポンプ11aに送られる燃料圧送量、ひいては燃料ポンプ11の燃料吐出量は、燃料ポンプ11の燃料吸入側に設けられた吸入調整弁(SCV:Suction Control Valve)11cによって調量されるようになっている。すなわち、この燃料ポンプ11では、吸入調整弁11c(例えば非通電時に開弁するノーマリオン型)の駆動電流量(ひいては弁開度)を調整することで、同ポンプ11からの燃料吐出量を所望の値に制御することができるようになっている。
ここで低圧ポンプ11bは、例えばトロコイド式のフィードポンプとして構成されている。これに対し、高圧ポンプ11aは、例えばプランジャポンプからなり、図示しない偏心カム(エキセントリックカム)にて所定のプランジャ(例えば3本のプランジャ)をそれぞれ軸方向に往復動させることにより加圧室に送られた燃料を逐次所定のタイミングで圧送するように構成されている。いずれのポンプも、駆動軸11dによって駆動されるものである。ちなみにこの駆動軸11dは、対象エンジンの出力軸であるクランク軸に連動し、例えばクランク軸の1回転に対して「1/1」又は「1/2」等の比率で回転するようになっている。すなわち、上記低圧ポンプ11b及び高圧ポンプ11aは、エンジンの出力によって駆動されている。
こうした燃料ポンプ11により燃料タンク10から燃料フィルタ12を介して汲み上げられた燃料は、コモンレール16へ加圧供給(圧送)される。そして、コモンレール16は、その燃料ポンプ11から圧送された燃料を高圧状態で蓄えてこれを、シリンダごとに設けられた配管20a(高圧燃料通路)を通じて、各シリンダ#1〜#4のインジェクタ20(燃料噴射弁)へそれぞれ供給する。ここで、コモンレール16には、同コモンレール16内の燃圧(レール圧力)を検出するための燃圧センサ16aが設けられており、これによりインジェクタ20の燃料噴射圧力に相関するレール圧力の検出や管理が可能とされている。また、各インジェクタ20の燃料排出口には、それぞれ配管20bが接続されており、この配管20bは、1本に集約され、減圧弁18(背圧弁)を介して、燃料を燃料タンク10へ戻すための配管10bとつながっている。減圧弁18は、車両の減速時などにおいて、燃料の圧力を下げるためのものである。
このシステムでは、燃料ポンプ11の駆動により圧送される燃料が、各シリンダ#1〜#4に対して設けられた各インジェクタ20(#1)〜(#4)を通じてそれら各シリンダ#1〜#4内へ、それぞれ直接的に噴射供給(直噴供給)されるようになっている。なお、このエンジンは、4ストロークエンジンである。すなわちこのエンジンでは、図示しない吸排気弁のカム軸に設けられた気筒判別センサ(電磁ピックアップ)にてその時の対象シリンダが逐次判別され、上記4つのシリンダ#1〜#4について、それぞれ吸入・圧縮・燃焼・排気の4行程による1燃焼サイクルが「720°CA」周期で逐次実行される。
ここで、図2を参照して、上記インジェクタ20の構造、並びに、同インジェクタ20の動作及び制御態様について詳述する。なお、図2は、同インジェクタ20の内部構造を模式的に示す内部側面図である。
同図2に示されるように、このインジェクタ20は、例えば円筒状の金属からなるボディ21(弁本体)の先端に、別体のノズル(ノズル部21a)が装着されて形成されている。そして、そのノズル部21aの先端には、例えば径「0.15mm」程度の噴孔21b(微小孔)が、弁内外を連通する燃料噴射口として必要な数だけ(例えば6〜8個)穿設されている。また、同ノズル部21aには、噴孔21bへの燃料通路を開閉する円柱状のノズルニードル22が収容されている。このニードル22は、弁後端側に設けられたスプリング22a(コイルばね)により弁先端側へ付勢され、テーパ状のシート面ST1に押し付けられており、この付勢力に従って又は抗して、インジェクタ20内部を軸方向(ボディ21の長手方向)に摺動する。ただし、異常動作を防ぐ等の目的で、同ニードル22の軸方向上方(弁後端側)への変位を所定位置で妨げる(規制する)ようなストッパ(図示略)が設けられている。
こうしたノズル部21aに対して、上記コモンレール(蓄圧配管)16から、配管20a(図1も併せ参照)を通じて高圧燃料が送られてくる。そうして、上記噴孔21bを通じてその燃料が弁先端外側へ噴射される。その燃料噴射に際しては、上記ニードル22の軸方向上方への変位量(リフト量)の大小に応じて、噴孔21bへ供給される燃料量、ひいては該噴孔21bから噴射される単位時間あたりの燃料量(噴射率)が変化する。なお、ニードル22がシート面ST1に着座した状態(リフト量=「0」)では、燃料噴射は停止する。
このように、当該インジェクタ20による燃料噴射量(噴射率)は、基本的には、ニードル22の変位量(リフト量)の大小に基づいて可変制御される。そして、このニードル22を変位させるもの、いわばニードル22の駆動装置(アクチュエータ)は、同ニードル22の弁後端側に設けられている。
詳しくは、同ニードル22の弁後端側には、ボディ21内部の区画空間(ボディ内周面にて区画)として背圧室RM1が設けられている。背圧室RM1は、配管20a(高圧燃料通路)に連通されることで、コモンレール16からの高圧燃料が供給されるようになっている。また、この背圧室RM1は、制御バルブ23を介して上記配管20b(低圧燃料通路)に接続されることで、制御バルブ23の駆動の有無に応じて、同配管20bと連通されたり、あるいは断絶(同バルブ23にて遮断)されたりするようになっている。制御バルブ23は、弁先端側に設けられたスプリング23aにより弁後端側へ付勢されることで、テーパ状に形成された対向面が、シート面ST2に押し付けられている。しかし同制御バルブ23は、駆動時には上記スプリング23aの付勢力とは逆の力(駆動量に応じた力)を受け、弁先端側へ変位する。そしてこれにより、上記テーパ状の対向面がシート面ST2から離間し、背圧室RM1と配管20bとが連通されることになる。
この制御バルブ23の弁後端側には、同制御バルブ23を変位(駆動)させるアクチュエータとして、複数枚の板状圧電素子(例えばPZT等のセラミックス)が積層された圧電積層体からなるピエゾスタック25aが設けられている(詳しくはボディ21に固定されている)。ピエゾスタック25aは、ピエゾの逆圧電効果を利用して、当該インジェクタ20の軸方向に伸縮(変位)するものであり、具体的には、充電されることで伸長し、放電されることで収縮する。このピエゾスタック25aの変位(駆動力)は、油圧式駆動力伝達部を介して制御バルブ23に伝達されるようになっている。
ここで、油圧式駆動力伝達部は、径の異なる2つのピストン(大径及び小径ピストン25b,25c)と、それらピストン間に挟まれた(詳しくはボディ内周面及び上下2つのピストンにより区画された)油密室RM2(燃料の充填された密閉空間)と、スプリング25dとによって構成されている。すなわち、上記ピエゾスタック25aの変位(微小変位)は、ピストン25b,25cの径の差異、ひいてはそれらピストンにおける受圧面積の差異に基づき所定の倍率(例えば2倍)で拡大され、制御バルブ23へ伝達されるようになっている。こうした油圧式駆動力伝達部を設けることで、ピエゾスタック25aの変位(歪み)を小さく抑えることが可能になり、ひいてはその噴射に際しての信頼性が高められることになる。しかも噴射の際、油圧式駆動力伝達部は、セラミックスからなるピエゾスタック25aと金属からなるボディ21との間の熱膨張差に起因した変位差を吸収する役割を果たし、その意味で、さらなる信頼性の向上が図られるようになる。なお、上記ピエゾスタック25aの充放電を制御するための回路、及び、この回路を通じて噴射制御を行うためのプログラム等は、上記ECU30やEDU40(ドライバユニット)に搭載されている。
すなわち上記ECU30及びEDU40は、例えばピエゾスタック25aの通電/非通電を2値的に(パルス信号を通じて)制御することで、その通電時間により上記ニードル22のリフト量を可変とし、コモンレール16から配管20aを通じて逐次供給されてくる高圧燃料を、上記噴孔21bを通じて噴射する。
詳しくは、上記制御バルブ23は、上記配管20a(ひいてはコモンレール16)からの高圧燃料により弁後端側への力を受けるとともに、スプリング25dの伸張力(軸方向に沿った伸張力)によって逆向きの弁先端側への力も受けている。上記ピエゾスタック25aに通電がなされていない状態(放電状態)では、ピエゾスタック25aが収縮し、制御バルブ23は、スプリング25dの伸張力に抗してシート面ST2に着座する。これにより、配管20b(低圧燃料通路)と背圧室RM1とをつなぐ通路は塞がれ、背圧室RM1が高圧に維持されるようになる。そして、その圧力により、ニードル22はスプリング22aに付勢されつつシート面ST1に着座する。非通電時には、こうして配管20a(高圧燃料通路)と噴孔21bとをつなぐ通路が塞がれ、燃料が噴孔21bまで供給されなくなる。これが閉弁状態である。
他方、ピエゾスタック25aへ通電(充電)がなされると、ピエゾスタック25aが伸長し、制御バルブ23は、燃料の圧力に抗してシート面ST2から離座する。これにより、配管20b(低圧燃料通路)と背圧室RM1とが連通され、背圧室RM1内の燃料圧力が低下するようになる。そして、その圧力の低下により、ニードル22はスプリング22aの伸張力に抗してシート面ST1から離座する。通電時には、こうして配管20a(高圧燃料通路)と噴孔21bとが連通され、燃料が噴孔21bを通じて対象エンジンのシリンダ内(燃焼室)に対して噴射供給されるようになる。これが開弁状態である。このインジェクタ20は、非通電時に閉弁状態となる燃料噴射弁、いわゆるノーマリクローズ型の燃料噴射弁である。
以上、本実施形態のコモンレール式燃料噴射システムにおける燃料供給系の各種装置について説明した。以下、図1を再び参照して、同システムの構成について、さらに説明を続ける。
すなわちこのシステムにおいて、図示しない車両には、車両制御のための各種のセンサやアクチュエータがさらに設けられている。例えばエンジンの出力軸であるクランク軸の外周側には、所定クランク角毎に(例えば30°CA周期で)クランク角信号を出力するクランク角センサ30aが、同クランク軸の回転角度位置や回転速度等を検出するために設けられている。また、アクセルペダル(運転操作部)には、同ペダルの状態(変位量)に応じた電気信号を出力するアクセルセンサ30bが、運転者によるアクセルペダルの操作量(アクセル開度)を検出するために設けられている。また同車両の運転席近傍(例えば計器パネル部)には、燃料タンク10内の燃料残量(燃料計10dにて検出)が所定量(例えば「10リットル」)を下回った場合に点灯するエンプティランプ30c(燃料残量警告灯)が、燃料タンク10内の燃料残量が燃料欠乏間近である旨(「ランプ30cの点灯」=「燃料欠乏間近」)を運転者に報知するために設置されている。
こうしたシステムの中で、本実施形態の燃料噴射制御装置として機能するとともに、電子制御ユニットとして主体的にエンジン制御を行う部分がECU30である。そして、このECU30(エンジン制御用ECU)は、周知のマイクロコンピュータ(図示略)を備えて構成され、上記各種センサの検出信号に基づいて対象エンジンの運転状態やユーザの要求を把握し、それに応じて上記インジェクタ20等の各種アクチュエータを操作することにより、その時々の状況に応じた最適な態様で上記エンジンに係る各種の制御を行っている。また、このECU30に搭載されるマイクロコンピュータは、基本的には、各種の演算を行うCPU(基本処理装置)、その演算途中のデータや演算結果等を一時的に記憶するメインメモリとしてのRAM(Random Access Memory)、プログラムメモリとしてのROM(読み出し専用記憶装置)、データ保存用メモリとしてのEEPROM(電気的に書換可能な不揮発性メモリ)やバックアップRAM(車載バッテリ等のバックアップ電源により常時給電されているRAM)、さらにはA/D変換器やクロック発生回路等の信号処理装置、外部との間で信号を入出力するための入出力ポート等といった各種の演算装置、記憶装置、信号処理装置、及び通信装置等によって構成されている。そして、ROMには、当該燃料噴射制御に係るプログラムをはじめとするエンジン制御に係る各種のプログラムや制御マップ等が、またデータ保存用メモリ(例えばEEPROM)には、対象エンジンの設計データをはじめとする各種の制御データ等が、それぞれ予め格納されている。
また、EDU40(ドライバユニット)は、ECU30からの指令信号に基づき上記インジェクタ20に対して高電圧を加えるものである。こうした高電圧を加えることで、上記インジェクタ20が高速で動作するようになる。詳しくは、EDU40は、高電圧発生装置(例えばDC/DCコンバータ)を有し、この高電圧発生装置により、車載バッテリから印加されるバッテリ電圧を高電圧に変換する。そして、ECU30からの指令に基づき所定のインジェクタに対してその高電圧(駆動信号)を印加する。またこの際、当該EDU40の回路動作やインジェクタ20の動作が良好であれば、その旨を示す噴射確認信号がECU30に対して出力される。他方、何らかの不具合があれば、この噴射確認信号が出力されない。ECU30は、この噴射確認信号の有無によって、EDU40やインジェクタ20の不具合を随時監視している。
以上、本実施形態に係る燃料噴射制御システムの構成について詳述した。すなわち、制御対象とするディーゼルエンジンの搭載された車両(例えば4輪乗用車やトラック等)は、こうした制御システムにより制御される。そして、このシステムにおいては、ECU30が、随時入力される各種のセンサ出力(検出信号)に基づいて燃料噴射量(エンジン制御量)を算出するとともに、その燃料噴射量に基づき、上記シリンダ内(燃焼室)での燃料燃焼を通じて生成される図示トルク(生成トルク)、ひいては実際に出力軸(クランク軸)へ出力される軸トルク(出力トルク)を制御するようになっている。すなわち、このECU30は、例えば時々のエンジン運転状態や運転者によるアクセルペダルの操作量等に応じた燃料噴射量を算出し、所望の噴射時期に同期して、その燃料噴射量での燃料噴射を指示する噴射制御信号を上記インジェクタ20へ出力する。そしてこれにより、同インジェクタ20の駆動量(例えば開弁時間)に基づいて、上記エンジンの出力トルクが目標値へ制御されることになる。なお本実施形態の制御システムでも、周知のディーゼルエンジン用システムと同様、定常運転時には、新気量増大やポンピングロス低減等の目的で、同エンジンの吸気通路に設けられた吸気絞り弁(スロットル弁)が略全開状態に保持される。したがって、定常運転時の燃焼制御(特にトルク調整に係る燃焼制御)としては燃料噴射量のコントロールが主となっている。以下、図3を参照して、本実施形態に係る燃料噴射制御の基本的な手順について説明する。なお、この図3の処理において用いられる各種パラメータの値は、例えばECU30に搭載されたRAMやEEPROM、あるいはバックアップRAM等の記憶装置に随時記憶され、必要に応じて随時更新される。そして、これら各図の一連の処理は、基本的には、ECU30でROMに記憶されたプログラムが実行されることにより、エンジンの各シリンダについてそれぞれ1燃焼サイクルにつき1回の頻度で(例えば各シリンダ間で「180°CA」ずらして)逐次実行される。このプログラム(燃料供給手段)により、1燃焼サイクルで休止シリンダを除く全てのシリンダに燃料の供給が行われることになる。
同図3に示すように、この一連の処理においては、まずステップS11で、例えばその時のエンジン回転速度(クランク角センサ30aにて検出)やレール圧力(燃圧センサ16aにて検出)等といったエンジン運転状態を示す各種のパラメータ、及び、運転者によるその時のアクセル操作量(アクセルセンサ30bにて検出)を読み込む。そして、続くステップS12では、上記ステップS11で読み込んだエンジン運転状態及びアクセル操作量等に基づいて(必要に応じて要求エンジン運転状態を別途算出して)噴射パターンを設定する。
なお、上記噴射パターンは、例えば噴射段数(1回の燃焼行程での噴射回数)、噴射タイミング、噴射時間(噴射量に相当)、噴射インターバル(多段噴射の場合の噴射間隔)等のパラメータにより定められるものであり、例えば上記ROMに記憶保持された所定のマップ(数式でも可)等に基づいて取得される。詳しくは、例えば予め想定される各エンジン運転状態について実験等により最適パターン(適合値)を求め、そのマップに書き込んでおく。こうして、上記マップは、それらエンジン運転状態と最適パターンとの関係を示すものとなっている。
続くステップS13では、別途学習処理(例えばインジェクタ20の経年変化に関する学習処理)により更新されている補正係数を、上記EEPROMから読み出し、続くステップS14で、その読み出した補正係数に基づき、先のステップS12で設定された噴射パターンに対応する指令値(指令信号)、すなわち上記インジェクタ20に対する指令値を補正する。そして、続くステップS15では、その補正された指令値(指令信号)に基づいて、上記噴射パターン、すなわち噴射段数、噴射タイミング、噴射時間、噴射インターバル等に係る指令値を決定するとともに、その指令値に基づいてインジェクタ20の駆動を制御する。
本実施形態では、こうした燃料噴射制御を通じて対象エンジンに対して燃料が供給されている。そして、この燃料の供給に伴い、燃料タンク10内の燃料が消費されると、燃料タンク10内の燃料残量が「10リットル」を下回り、エンプティランプ30cが点灯する。ここで、燃料タンク10内の燃料がなくなるまで燃料が消費されてしまうと、燃料ポンプ11に接続される配管10a(図1)から空気(エア)が入り込んで各種の不都合が引き起こされることは前述したとおりである。特に本実施形態では、上記図2に示したような構造のインジェクタ20を採用しているため、こうしたエアの混入が生じると、例えば「1000N」程度の力で密閉されている油密室RM2の高圧燃料が隙間(例えばピストン25b,25c摺動面における「3μm」程度の隙間)から漏れて、代わりに同油密室RM2へ空気(エア)が入り込んでしまう可能性が高い。この点について、本実施形態では、エンジン運転中に燃料タンク10内の燃料残量が欠乏間近になった場合に、上記シリンダ#1〜#4のうちの一部のシリンダでの燃焼を休止した状態(詳しくはインジェクタ20による燃料噴射供給を休止した状態)で残りのシリンダでの燃焼を通じて対象エンジンを運転する制御、いわば減筒制御を強制的に実行するようにしている。この制御により、燃料タンク10(図1)内の燃料残量が欠乏状態(燃料タンク10内の燃料レベルL11が下がって燃料を吸い上げるための配管10aの吸込口が燃料液面から出てしまうほど燃料が少なくなった状態)になるまで燃料が消費されることについては、これが好適に抑制されるようになる。
以下、図4を参照して、上記エンプティランプ30cが点灯したことをトリガにして開始される上記減筒制御に係る処理について説明する。なお、この図4の処理は、燃料が補給されてエンプティランプ30cが消灯するまで、所定クランク角ごとに又は所定時間周期で逐次実行される。また、この図4の処理においても、各種パラメータの値は、例えばECU30に搭載されたRAMやEEPROM、あるいはバックアップRAM等の記憶装置に随時記憶され、必要に応じて随時更新される。
同図4に示されるように、この一連の処理においては、まずステップS21で、燃料計10dにより燃料タンク10内の燃料残量QTを計測(実測)する。次いで、ステップS22で、その計測した燃料残量QTに基づいて、単位時間(例えば1燃焼サイクル)あたりの休止シリンダ数を示す減筒率GENを取得する。そして、さらに続くステップS23で、その取得した減筒率GENに基づいて、減筒運転パターン(休止シリンダの組み合わせ)を決定(可変設定)する。以下、図5及び図6を参照して、この減筒運転パターンの決定(可変設定)に係る処理についてさらに詳しく説明する。なお、図5は、ステップS22で用いられる数式(減筒率GENと燃料残量QTとの関係式GEN=f(QT))の一例を示すグラフ、また図6は、ステップS23で用いられるテーブルの一例(例えばROMやEEPROM等に記憶)を示すものである。ここで、減筒率GENは、100燃焼サイクルあたりの休止シリンダ数が1つである場合の値を「1%」とするものである。ちなみに、ステップS22で用いられる数式を、実際の燃料欠乏状態に準ずる特性を規定する数式として作成する際には、アイドリング時の通常運転状態を基準(減筒率「0%」)にして、実際の燃料欠乏状態(ガス欠状態)で、所定時間(例えば「1分間」)内に休止されるシリンダの割合を逐次その燃料残量での減筒率とする方法が有効である。
図5に示されるように、この数式では、エンプティランプ30cの点灯後も、燃料残量QTが「3リットル」を切る(下回る)までは、上記減筒制御を行わずに通常の運転パターン(減筒率GEN「0%」)で上述の燃料噴射制御(図3)を行うようにしている。そして、ランプ30cの点灯後、エンジン運転により燃料が消費されて燃料タンク10内の燃料残量QTが「3リットル」を下回った時には第1の減筒運転パターン(減筒率GEN「25%」)が、またさらに燃料が消費され、燃料残量QTが「2リットル」を下回った時には第2の減筒運転パターン(減筒率GEN「50%」)が、先の図4のステップS23で減筒運転パターンとして設定されるようになっている。すなわちこの場合は、これら第1又は第2の減筒運転パターンの反映された噴射パターン(図3のステップS12にて設定)に基づいて上述の燃料噴射制御(図3)が行われることになる。また、さらに燃料の消費が進み、燃料残量QTが「1リットル」を下回った時には、減筒率GEN「100%」の運転パターンが設定される。すなわちこの場合は、対象エンジンの全シリンダ#1〜#4について燃料カット(インジェクタ20による燃料噴射供給の休止処理)が行われるようになる。換言すれば、上述の燃料噴射制御(図3)によって燃料噴射が行われなくなり、対象エンジンの運転は停止(強制停止)されることになる。なお、このエンジン停止に係る燃料残量QTの閾値「1リットル」は、インジェクタ20に対する燃料の供給ができなくなるほど燃料タンク10内の燃料残量が低下する直前の値として、予め実験等により求めたものである。詳しくは、この「1リットル」という値は、燃料タンク10内の燃料レベルL11(図1)が下がって燃料を吸い上げるための配管10aの吸込口が燃料液面から出て空気(エア)が吸い込まれてしまう(換言すれば燃料レベルL11が配管10aの吸込口の高さL21よりも低くなる)ほどに燃料が少なくなる直前の燃料レベルL11(燃料残量)として求められたものである。
先の図4のステップS22では、こうした数式に従い、減筒率GENが燃料残量QTの関数(GEN=f(QT))として設定されることになる。そして、続くステップS23では、その減筒率GENに応じた所定の運転パターンが設定されることになる。そしてその際、上記運転パターンの設定に用いられる(参照される)ものが、図6に示すテーブルである。
同図6に示されるように、このテーブルにおける通常の運転パターン(減筒率GEN「0%」)では、各シリンダについて、シリンダ#1,#3,#4,#2の順に、燃料供給(燃料噴射)、ひいては燃料燃焼(燃焼行程)が行われるようになっている。これに対し、第1の減筒運転パターン(減筒率GEN「25%」)では、シリンダ#1に対しては燃料の供給が行われないパターンとなっている。また、第2の減筒運転パターン(減筒率GEN「50%」)では、シリンダ#1に加え、シリンダ#2に対しても燃料の供給が行われないパターンとなっている。また前述したように、減筒率GEN「100%」の運転パターンでは、対象エンジンのいずれのシリンダにも燃料の供給が行われないパターン、すなわち全シリンダ#1〜#4について燃料カット(燃料供給の休止処理)が行われるパターンとなっている。
先の図4のステップS23では、こうしたテーブルに従って、減筒率GENの値(「0%」「25%」「50%」「100%」)に対応する運転パターンが設定される。そして、ここで設定される運転パターンは、図3のステップS12で取得される噴射パターンに反映される。すなわち、このステップS23でいずれかのシリンダを休止シリンダとする減筒運転パターンが設定されれば、図3のステップS15では、そのシリンダに対しては燃料噴射が行われず残りのシリンダに対してのみ燃料噴射供給が行われるようになる。ただし、エンジンの高速運転中などにいきなり上述の減筒運転が開始される(噴射パターンが切り替わる)と、大きなトルクショックが生じてドライバビリティの大幅な悪化が懸念されるようになる。このため、本実施形態では、こうしたトルク変化の大きくなる過渡状態(過渡期)において、適宜に周知の徐変処理(トルク変化を緩やかにする処理)を行うようにする。こうすることで、上記ドライバビリティの悪化を抑制している。
本実施形態では、こうして上述の減筒制御が、燃料残量の低下に伴い、運転者の運転操作とは関係なく、強制的に行われるようになっている。そして、この減筒制御の強制実行は、燃料タンク10内に十分な量(例えば「10リットル」を超える量)の燃料が補給された場合にのみ解除されるようになっている。なお、この減筒制御の実行中にエンジンを停止して、その後、再びエンジンを始動する場合においては、所定の始動制御(始動に適した制御)を行い、同エンジンを始動させてから上記減筒制御を実行することとする。こうすることで、エンジンの始動が容易となる。
以上説明した本実施形態に係る燃料噴射制御装置及び燃料噴射制御システムによれば、以下のような優れた効果が得られるようになる。
(1)対象エンジン(図示略)に対する燃料の噴射供給を制御する燃料噴射制御装置(エンジン制御用ECU30)として、燃料タンク10内の燃料残量QTを実測するプログラム(燃料残量取得手段、図4のステップS21)と、その燃料残量QTが欠乏間近の所定範囲(「3リットル」未満)内にある場合に、複数のシリンダ(シリンダ#1〜#4)のうちの一部のシリンダでの燃焼を休止した状態(噴射供給の休止)で残りのシリンダによる燃焼を通じて対象エンジンを運転する制御である減筒制御を強制的に実行するプログラム(減筒制御実行手段、車両擬似制御手段、車両制御制限手段、図4のステップS23及び図3のステップS12)と、を備える構成とした。詳しくは、対象エンジンの運転中、燃料タンク10内の燃料残量QTが欠乏間近(「3リットル」未満)になったことを実行条件として、上記減筒制御を強制的に実行するようにした。こうした構成により上記減筒制御が実行されることで、燃料タンク10内の燃料残量QTが欠乏間近にある時、その欠乏に先立って、燃料タンク10内の燃料があたかも欠乏したような擬似的な燃料欠乏状態に、対象車両の運転状態が制御されることになる。さらに、運転者の運転操作(アクセルペダル操作)に基づく対象車両の制御が制限されるようにもなる。すなわち、上記減筒制御の実行中、車両は燃料欠乏状態(いわゆるガス欠状態)に準ずる状態となり、運転者は、燃料欠乏状態と同様の状態を体感し、あたかも燃料欠乏状態であるかのように錯覚する(騙される)ようになる。そして、ランプの点灯等で形式的に報知するだけではなく、こうして実際にその状態を運転者に体感させることで、運転者の危機意識はより高められ、運転者は、潜在的(心理的)に燃料補給を促されることになる。また、減筒制御の実行中、アクセルペダル操作に基づく車両制御(詳しくはトルク制御)が制限され、運転しづらくなることによっても、運転者は早期の燃料補給を促される。これにより、前述したような、運転者により燃料タンク10内の燃料が空になるまで補給無しでエンジンが継続的に運転されてしまう懸念(確率)は、好適に抑制(低減)されることになる。
(2)しかも、こうした減筒制御であれば、エンジンの出力は弱まるものの、完全には停止しないため、給油施設から離れた場所で燃料残量が少なくなり上記減筒制御が実行されたとしても、最寄りの給油施設までゆっくり運転して給油を行うことが可能になる。
(3)対象エンジンの始動時に燃料タンク10内の燃料残量が既に欠乏間近(「3リットル」未満)にある場合には、所定の始動制御により同エンジンを始動させてから、上記減筒制御を強制的に実行するようにした。こうすることで、減筒制御のままエンジンの始動に失敗し続けてかえってエンジンの寿命を縮めてしまうような事態は避けられるようになる。
(4)図4のステップS21においては、燃料タンク10に設けられた燃料計10dの出力に基づいて同タンク10内の燃料残量QTを実測するようにした。より詳しくは、このステップS21の処理を所定処理間隔で逐次実行することで、同タンク10内の燃料残量QTを監視(モニタ)するようにした。こうすることで、燃料タンク10内の燃料残量QTをより容易且つ正確に検出することが可能になる。
(5)図4のステップS23で実行された減筒制御が、燃料タンク10内に十分な量(「10リットル」以上)の燃料が補給された場合にのみ解除されるようにした。こうすることで、運転者の手で上記減筒制御が停止されることはなくなり、エンジン運転の続行で燃料を空にしてしまう可能性は極めて低くなる。
(6)図4のステップS22においては、燃料タンク10内の燃料残量QTに応じて、減筒率GENを可変制御するようにした。詳しくは、所定の数式(図5)により、燃料残量QTが少なくなるほど減筒率GENを増大させるようにした。こうすることで、燃料残量QTが少なくなるほど燃料消費量が抑えられるようになり、ひいては燃料残量が空になるまで燃料が消費されることについてはこれが好適に抑制されるようになる。
(7)しかもこのステップS22の処理により、燃料タンク10内の燃料残量QTに応じて、擬似的な燃料欠乏状態としてより類似度合の高い状態へ、対象車両の運転状態を可変制御するようにした。詳しくは、燃料タンク10内の燃料残量QTが少なくなるほど対象エンジンの出力を弱めるようにした。こうすることで、燃料残量QTの変化にも対応して、上記擬似的な燃料欠乏状態をより実際の燃料欠乏状態へ近づけることができる。
(8)同じくこのステップS22の処理により、燃料タンク10内の燃料残量に応じて車両制御の制限度合を可変制御するようにした。こうすることで、燃料タンク10内の燃料残量QTが少なくなる(燃料タンクが空に近づく)ほどより強く運転者に燃料補給を促すことができるようになり、ひいてはより確実に、燃料タンク10が空になる(燃料がなくなる)前に、燃料補給が行われるようになる。
(9)さらに同ステップS22においては、インジェクタ20に対する燃料の供給ができなくなるほど燃料タンク10内の燃料残量QTが低下する前(所定量だけ前、いわば直前)に、全てのシリンダでの燃焼を休止して対象エンジンを停止(強制停止)させるようにした。こうすることで、前述したエアの混入を未然に(直前で)防止することが可能になる。
(10)エンプティランプ30cが作動中(点灯中)であること(燃料残量QTが「10リットル」未満になったこと)を上記減筒制御の実行条件の1つとした。こうすることで、車両はより実際の燃料欠乏状態(ガス欠状態)に近づくようになり、ひいては運転者が上記減筒制御を故障等と勘違いする可能性が減るようになる。
(11)対象エンジンに燃料供給するための燃料噴射弁として、図2に示すような構造のインジェクタ20を採用した。すなわち、ボディ21(弁本体)内部を軸方向に変位可能とする大径ピストン25b(第1のピストン)及び小径ピストン25c(第2のピストン)と、軸方向の両側から大径及び小径ピストン25b,25cに挟まれる密閉空間に対して所定の流体(詳しくは対象エンジンの燃料である軽油)が充填されて形成される油密室RM2(流体充填室)と、軸方向に変位可能として燃料噴射口に相当する噴孔21bの開弁及び閉弁を行うニードル22とを有し、大径ピストン25bの一端面側(弁後端側)から所定の駆動力(ピエゾスタック25aの変位)を受けた場合に、その駆動力を、大径ピストン25bの他端面側(弁先端側)に位置する小径ピストン25cへ油密室RM2を介して伝達するとともに、その伝達された駆動力に基づきボディ21内部でニードル22を軸方向に変位させることにより噴孔21bの開弁を行う燃料噴射弁、より詳しくはこうした構造を有して上記コモンレール16から高圧燃料の供給を受ける、いわゆる高圧燃料用の燃料噴射弁を採用するようにした。上述の減筒制御を行うことで、こうした燃料噴射弁を用いた場合においても、前述したエア混入の発生を抑制することができるようになる。また上記構造のピエゾインジェクタは、自動車用エンジン等においてエミッション改善に大きく寄与する燃料噴射弁であり、環境に優しいクリーンなディーゼル車を実現する上でも、こうした構成とする意義は大きい。
(12)一方、燃料噴射制御システムとしては、所定の燃料タンク10から供給された燃料(軽油)を噴射するインジェクタ20(燃料噴射弁)と、このインジェクタ20により噴射供給された燃料を複数あるシリンダのうちの一部又は全部のシリンダ内で燃焼させてその燃料燃焼によるエネルギーを機械的な運動(回転運動)へ変換するエンジン(図示略)と、上記エンジン制御用ECU30と、を備える構成とした。そして上述のように、ECU30の内部に、燃料タンク10内の燃料残量を実測するプログラム(燃料残量取得手段)と、その取得された燃料残量が欠乏間近の所定範囲内にある場合に上記減筒制御を強制的に実行するプログラム(減筒制御実行手段)と、を備える構成とした。こうした燃料噴射制御システムによれば、信頼性のより高い燃料供給系が実現されるようになる。
(13)自動車(本実施形態では4輪自動車)に対して上記燃料噴射制御システムを適用したことで、故障しにくい自動車が実現されるようになった。一般に自動車は、移動手段として使用頻度が高く、また交通に不便な地域では生活必需品となるため、故障の確率を減らすことは重要である。
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・運転者の危機意識をより高めるべく、燃料残量QTが「10リットル」を下回るとともにエンプティランプ30cを点滅させ、燃料残量QTが減少するに従ってその点滅速度を速めるようにしてもよい。そして、燃料残量QTが所定量(「1リットル」)を下回り、対象エンジンを強制停止する際には、運転者にエンジンが停止される旨を予告すべく、その直前(例えば数秒〜数十秒前、あるいは燃料残量QTが「1リットル」に近づいた時)に警告音を鳴らすようにしてもよい。
・図6に例示した運転パターンでは、休止シリンダを特定のシリンダ(シリンダ#1やシリンダ#2)に固定するようにした。しかし、この運転パターンに限定されることはなく、これに代えて例えば図7に示す運転パターン(例えばROMやEEPROM等にテーブルとして記憶)を用いるようにしてもよい。
同図7に示されるように、この運転パターンでは、休止シリンダのパターンを固定せず、図3の処理により1回の燃焼サイクル(燃料供給)が行われるごとに上記減筒制御に係る休止シリンダのパターン(1つ又は組み合わせ)を変更するようにしている。しかも、対象エンジンの各シリンダを均一に休止シリンダとする(平均化する)ようにしている。この例では、第1の減筒運転パターンではいずれのシリンダも「5燃焼サイクルにつき1回」の割合で休止シリンダとなり、また第2の減筒運転パターンではいずれのシリンダも「3燃焼サイクルにつき1回」の割合で休止シリンダとなる。こうした運転パターンによれば、減筒制御に係る燃焼休止処理が均一に分散されるようになる。このため、燃焼休止処理の集中により引き起こされる特定シリンダでの集中的な筒内温度の低下に起因したエミッションの悪化についてもこれを、未然に防いだり又は抑制したりすることができるようになる。
・休止シリンダの変更を規則的に行うものに限られず、休止シリンダの変更を不規則に行うように構成してもよい。例えば図6に例示した運転パターンについて、第1及び第2の減筒運転パターンの休止シリンダを、各減筒率(「25%」「50%」)に対応してランダム(例えば周知のランダム関数を使用)に設定するようにしてもよい。こうすることによっても、休止シリンダはランダム関数により概ね平均化され、各シリンダを(偏重させず)均一に休止シリンダとすることができる。
・もっとも、減筒制御に用いる運転パターンは、減筒制御の実施可能な範囲で基本的には任意である。そして、少なくとも燃料残量QTが少なくなるほど減筒率GENをより大きくする運転パターンであれば、前記(6)〜(8)の効果と同様の効果もしくはそれに準じた効果を得ることはできる。
・条件別に複数種の減筒運転パターン(減筒制御に用いる運転パターン)を保持し、条件に応じて任意の1つを選択する(使用パターンを切り替える)ようにしてもよい。例えば車両速度やエンジン回転速度等に応じて複数種のパターン(例えば高速用と低速用とに分けて2つのパターン)を保持するようにしてもよい。こうした構成も、減筒制御実行時のドライバビリティの改善に有効である。
・上記実施形態では、エンプティランプ30cが作動中(点灯中)であることを上記減筒制御の実行条件としたが、これに限られず、エンプティランプ30cの点灯前に上記減筒制御を実行するようにしてもよい。そしてこの場合には、上記減筒制御の実行に伴って(実行と同時に又はその前後に)エンプティランプ30cを点灯させることで、前記(10)の効果に準じた効果を得ることはできる。また、エンプティランプ30c以外にも通常制御において燃料欠乏状態(いわゆるガス欠状態)で作動するアクチュエータがある場合には、上記減筒制御実行中の車両をより実際の燃料欠乏状態に近づけるべく、上記減筒制御の実行に伴って(例えば同制御実行の所定時間前又は後に)そのアクチュエータも作動させる構成がより有効である。
・上記実施形態では、図4のステップS21において、燃料計10dの出力に基づいて同タンク10内の燃料残量QTを実測するようにした。しかしこれに限られず、燃料タンク10内の燃料残量QTを、所定の基準値(任意に設定可能、例えばエンプティランプ30c点灯時の燃料残量「10リットル」)から、燃料タンク10内の燃料残量QTがその基準値に到達した時以降の燃料消費量を減算することにより、その減算値に基づき推定するようにしてもよい。なお、基準値到達時以降の燃料消費量は、例えば燃料残量が基準値である「10リットル」になった時から、逐次インジェクタ20に対する指令噴射量(又は噴射量の推定値や実測値)を積算することで、噴射量の積算値として算出することができる。
・上記実施形態では、運転者による無謀なエンジン運転の続行をより確実に防止するため、燃料タンク10内に十分な量の燃料が補給された場合にのみ減筒制御を解除するようにした。しかしここまで厳格に減筒制御の解除を禁止せずとも、少なくとも減筒制御の実行が容易に解除されない構成であれば、前記(5)の効果に準じた効果を得ることはできる。例えば緊急時のみにメーカー(製品に責任を持つ会社や人)から減筒制御を解除するためのパスワードが発行される構成などとしてもよい。
・減筒制御を行わない構成であっても、対象車両を燃料欠乏状態に準ずる状態(いわば擬似的なガス欠状態)にすることは可能であり、この場合も、前記(1)の効果に準じた効果を得ることはできる。例えば減筒制御は行わず、対象エンジンと共に、あるいは単独で、ブレーキ装置やパワトレイン等のエンジン以外の車載装置を制御することによって、擬似的な燃料欠乏状態を作るようにしてもよい。
・減筒制御は行わず、所定の操作部(アクセルペダル等)の操作に基づく車両制御に対して一定の制限を加えるべく、車両速度(エンジン回転速度でも代替可)やエンジントルク(例えば燃料噴射量や新気量)等に規制(例えば上限)を設けるようにしてもよい。こうすることによっても、運転しにくさに基づき運転者に燃料補給を促すことが可能になり、前記(1)の効果に準じた効果を得ることはできる。また、所定の操作部(アクセルペダル)の動きを機械的に規制又は抑制する(ペダルを踏み込めなくしたり重くしたりする)ようにしてもよい。
・燃料タンク10内の燃料残量が燃料欠乏間近である旨を運転者に報知する報知手段としては、エンプティランプ30c(警告灯)に限られない任意の車載装置を採用することができる。例えばカーナビゲーションシステム等を通じて音声により燃料欠乏間近である旨を報知するものを、上記エンプティランプ30cに代えて用いるようにしてもよい。
・制御対象とするエンジンの種類やシステム構成も、用途等に応じて適宜に変更可能である。例えば圧縮着火式のディーゼルエンジンに限られず火花点火式のガソリンエンジン(吸気通路噴射式及び筒内噴射式の両方を含む)等にも本発明は適用可能であり、またレシプロエンジンに限られずロータリーエンジン等にも本発明は適用可能である。さらには上記特許文献1に記載の装置のように、油圧ショベル用のエンジンに本発明を適用するようにしてもよい。また上記実施形態では、図2に示すような構造のインジェクタ20を採用するようにしたが、対象エンジンの燃料噴射弁の構造は用途等に応じて任意のものを選択することができる。すなわち、上述したパルス信号で二値的に制御される油圧駆動式のピエゾインジェクタに代えて、駆動電流の供給量(ピエゾの充電量)に応じて、ニードルのリフト量、ひいては噴射率を連続的且つ直接的に可変とする直動式のピエゾインジェクタを採用するようにしてもよい。また、圧電素子をニードルのアクチュエータとするピエゾインジェクタにも限られず、例えば電磁ソレノイドをアクチュエータとする、より一般的な燃料噴射弁を採用するようにしてもよい。燃料タンク10内の燃料残量を検出するために用いる燃料計の種類も任意であり、上記フロート検出式のものに限られず例えば電気容量の変化に基づき燃料残量を検出するものなども適宜採用可能である。
・上記実施形態及び変形例では、各種のソフトウェア(プログラム)を用いることを想定したが、専用回路等のハードウェアで同様の機能を実現するようにしてもよい。
10…燃料タンク、10d…燃料計、11…燃料ポンプ、16…コモンレール(蓄圧配管)、20…インジェクタ、30…ECU(電子制御ユニット)、30c…エンプティランプ。
Claims (20)
- 所定の燃料タンクから供給された燃料を噴射する燃料噴射弁と、該燃料噴射弁により噴射供給された燃料を複数あるシリンダのうちの一部又は全部のシリンダ内で燃焼させてその燃料燃焼によるエネルギーを機械的な運動へ変換するエンジンと、を含んで構成されるエンジンシステムに適用され、
前記燃料タンク内の燃料残量を実測又は推定する燃料残量取得手段と、
前記燃料残量取得手段により取得された燃料残量が欠乏間近の所定範囲内にある場合に、前記複数のシリンダのうちの一部のシリンダでの燃焼を休止した状態で残りのシリンダによる燃焼を通じて前記エンジンを運転する制御である減筒制御を強制的に実行する減筒制御実行手段と、
を備えることを特徴とする燃料噴射制御装置。 - 前記燃料残量取得手段は、前記燃料タンクに設けられた燃料計の出力に基づいて同タンク内の燃料残量を実測するものである請求項1に記載の燃料噴射制御装置。
- 前記燃料残量取得手段は、所定の基準値から、前記燃料タンク内の燃料残量がその基準値に到達した時以降の燃料消費量を減算することにより、その減算値に基づき前記燃料タンク内の燃料残量を推定するものである請求項1に記載の燃料噴射制御装置。
- 所定の燃料タンクから供給された燃料を噴射する燃料噴射弁と、該燃料噴射弁により噴射供給された燃料を複数あるシリンダのうちの一部又は全部のシリンダ内で燃焼させてその燃料燃焼によるエネルギーを機械的な運動へ変換するエンジンと、を含んで構成されるエンジンシステムに適用され、
前記エンジンの運転中には、前記燃料タンク内の燃料残量が欠乏間近になったことを実行条件として、前記複数のシリンダのうちの一部のシリンダでの燃焼を休止した状態で残りのシリンダによる燃焼を通じて前記エンジンを運転する制御である減筒制御を強制的に実行する減筒制御実行手段を備えることを特徴とする燃料噴射制御装置。 - 所定の燃料タンクから供給された燃料を噴射する燃料噴射弁と、該燃料噴射弁により噴射供給された燃料を複数あるシリンダのうちの一部又は全部のシリンダ内で燃焼させてその燃料燃焼によるエネルギーを機械的な運動へ変換するエンジンと、を含んで構成されるエンジンシステムに適用され、
前記エンジンの始動時に前記燃料タンク内の燃料残量が欠乏間近にある場合には、所定の始動制御により同エンジンを始動させてから、前記複数のシリンダのうちの一部のシリンダでの燃焼を休止した状態で残りのシリンダによる燃焼を通じて前記エンジンを運転する制御である減筒制御を強制的に実行する減筒制御実行手段を備えることを特徴とする燃料噴射制御装置。 - 前記減筒制御実行手段による減筒制御の強制実行は、前記燃料タンク内に十分な量の燃料が補給された場合にのみ解除される請求項1〜5のいずれか一項に記載の燃料噴射制御装置。
- 前記減筒制御実行手段は、前記減筒制御に係る休止シリンダを規則的又は不規則に変更するものである請求項1〜6のいずれか一項に記載の燃料噴射制御装置。
- 前記エンジンの各シリンダに対する燃料供給を、1燃焼サイクルで休止シリンダを除く全てのシリンダに行う燃料供給手段を備え、
前記減筒制御実行手段は、該燃料供給手段により所定回の燃焼サイクルが行われるごとに前記減筒制御に係る休止シリンダの1つ又は組み合わせを変更するものである請求項7に記載の燃料噴射制御装置。 - 前記減筒制御実行手段は、前記エンジンの各シリンダを均一に前記減筒制御に係る休止シリンダとするものである請求項7又は8に記載の燃料噴射制御装置。
- 前記減筒制御実行手段は、前記燃料タンク内の燃料残量に応じて、単位時間あたりの休止シリンダ数を示す減筒率を可変制御するものである請求項1〜9のいずれか一項に記載の燃料噴射制御装置。
- 前記減筒制御実行手段は、前記燃料噴射弁に対する燃料の供給ができなくなるほど前記燃料タンク内の燃料残量が低下する所定量だけ前に、全てのシリンダでの燃焼を休止して前記エンジンを停止させるものである請求項10に記載の燃料噴射制御装置。
- 前記エンジンシステムは、前記燃料タンク内の燃料残量が燃料欠乏間近である旨を運転者に報知する報知手段を備えて構成され、
前記減筒制御実行手段は、前記減筒制御の実行に伴って前記報知手段を作動させるものである請求項1〜11のいずれか一項に記載の燃料噴射制御装置。 - 前記エンジンシステムは、前記燃料タンク内の燃料残量が燃料欠乏間近である旨を運転者に報知する報知手段を備えて構成され、
前記減筒制御実行手段は、前記報知手段が作動中であることを前記減筒制御の実行条件の1つとするものである請求項1〜11のいずれか一項に記載の燃料噴射制御装置。 - 前記燃料噴射弁は、弁本体内部を軸方向に変位可能とする第1のピストン及び第2のピストンと、前記軸方向の両側から前記第1及び第2のピストンに挟まれる密閉空間に対して所定の流体が充填されて形成される流体充填室と、前記軸方向に変位可能として燃料噴射口に相当する噴孔の開弁及び閉弁を行うニードルとを有し、
前記第1のピストンの一端面側から所定の駆動力を受けた場合に、その駆動力を、前記第1のピストンの他端面側に位置する前記第2のピストンへ前記流体充填室を介して伝達するとともに、その伝達された駆動力に基づき弁本体内部で前記ニードルを前記軸方向に変位させることにより前記噴孔の開弁及び閉弁の少なくとも一方を行うものである請求項1〜13のいずれか一項に記載の燃料噴射制御装置。 - 前記燃料噴射弁は、燃料を蓄圧するコモンレールから燃料の供給を受けるものである請求項14に記載の燃料噴射制御装置。
- 所定の燃料タンクから供給された燃料を燃焼させてエネルギーを生成するとともに、そのエネルギーにより車両を走行させる車載エンジンシステムに適用され、
前記燃料タンク内の燃料残量が欠乏間近にある時、その欠乏に先立ち、前記燃料タンク内の燃料があたかも欠乏したような擬似的な燃料欠乏状態に対象車両の運転状態を制御する車両擬似制御手段を備えることを特徴とする燃料噴射制御装置。 - 前記車両擬似制御手段は、前記燃料タンク内の燃料残量に応じて前記擬似的な燃料欠乏状態としてより類似度合の高い状態へ前記対象車両の運転状態を可変制御するものである請求項16に記載の燃料噴射制御装置。
- 所定の燃料タンクから供給された燃料を燃焼させてエネルギーを生成するとともに、そのエネルギーにより車両を走行させる車載エンジンシステムに適用され、
前記燃料タンク内の燃料残量が欠乏間近にある時、その欠乏に先立ち、運転者の運転操作に基づく対象車両の制御を所定条件が成立するまで制限する車両制御制限手段を備えることを特徴とする燃料噴射制御装置。 - 前記車両制御制限手段は、前記燃料タンク内の燃料残量に応じて前記車両制御の制限度合を可変制御するものである請求項18に記載の燃料噴射制御装置。
- 所定の燃料タンクから供給された燃料を噴射する燃料噴射弁と、
該燃料噴射弁により噴射供給された燃料を複数あるシリンダのうちの一部又は全部のシリンダ内で燃焼させてその燃料燃焼によるエネルギーを機械的な運動へ変換するエンジンと、
前記燃料タンク内の燃料残量を実測又は推定する燃料残量取得手段と、
前記燃料残量取得手段により取得された燃料残量が欠乏間近の所定範囲内にある場合に、前記複数のシリンダのうちの一部のシリンダでの燃焼を休止した状態で残りのシリンダによる燃焼を通じて前記エンジンを運転する制御である減筒制御を強制的に実行する減筒制御実行手段と、
を備えることを特徴とする燃料噴射制御システム。
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