JP2008207245A - 鋼材とアルミニウム材との異材接合体 - Google Patents

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Abstract

【課題】GAめっき鋼板を使用したアルミニウム材との異材接合の場合でも、十分な継手強度あるいは接合強度を有する、溶融溶接による異材接合体を提供することを目的とする。
【解決手段】特定板厚の亜鉛めっき層鋼材1とアルミニウム材2とを溶融溶接にて接合部6にアルミニウム溶接金属3を形成させて接合した異材接合体であって、このアルミニウム溶接金属3と鋼材1との接合界面6において、鋼材側にAl3 Fe系化合物およびAl5 Fe2 系化合物との混合層と、アルミニウム溶接金属側にα−AlFeSi層とを各々有する接合界面層4が形成されており、この接合界面層4を薄く、均一化して、高い接合強度を得る。
【選択図】図2

Description

本発明は、自動車、鉄道車両などの輸送分野、機械部品、建築構造物等における鉄系材料とアルミニウム系材料との異種金属部材同士の接合体である異材接合体に関するものである。
溶接は、一般には同種の金属部材同士を接合する。しかし、鉄系材料(以下、単に鋼材と言う)とアルミニウム系材料(純アルミニウムおよびアルミニウム合金を総称したもので、以下、単にアルミニウム合金材と言う)という異種の金属部材の接合(異材接合体) に適用することができれば、鋼材のみの部材の軽量化に著しく寄与することができる。
しかし、鋼材とアルミニウム合金材とを溶接接合する場合、接合部に脆いFe−Al金属間化合物が生成しやすいために、信頼性のある高強度を有する接合部( 接合強度) を得ることは非常に困難であった。したがって、従来では、これら異種接合体(異種金属部材)の接合にはボルトやリベット等による接合がなされているが、接合継手の信頼性、気密性、コスト等の問題がある。
また、一方では、自動車車体などの部材の軽量化のために、鋼材やアルミニウム合金材の高強度化が図られ、鋼材では高張力鋼材(ハイテン)、アルミニウム合金材では合金元素が少なくリサイクル性にも優れた高強度なA6000系アルミニウム合金材が使用される傾向にある。
このため、異材同士の溶接接合においても、これまでの軟鋼と純アルミニウム合金やA5000系アルミニウム合金などの、従来の低強度の異材同士の溶接接合から、高張力鋼材と6000系アルミニウム合金材との高強度の異材同士の溶接接合へと、接合対象が変わってきている。溶融接合によるFe−Al接合においては、高い入熱が投入されるため、通常、数十μmを超える極めて厚く脆いFe−Al反応層が形成される。このため、一般的には、溶融溶接によるFe−Al接合は困難であるとされている。特に、種々の合金が添加された高強度の鋼材の場合には、比較的低強度の軟鋼よりも、融点、電気抵抗が高く、また熱伝導率が小さいために、鋼材側の発熱が特に大きくなりやすい。この結果、このような高強度の鋼材の場合には、脆いFe−Al反応層は、更に厚く形成されやすくなる。したがって、高強度の異材同士の溶接接合では、接合部での脆いFe−Al金属間化合物の生成条件が異なり、信頼性のある高い接合強度を得るためには、従来の低強度の異材同士の溶接接合に対して、新たな接合条件の工夫が必要となる。
鋼材とアルミニウム合金材との異材同士を接合する場合、鋼材はアルミニウム合金材と比較して、融点、電気抵抗が高く、熱伝導率が小さいため、鋼側の発熱が大きくなり、まず低融点のアルミニウムが溶融する。次に鋼材の表面が溶融し、結果として界面にて、Fe−Al系の脆い金属間化合物層が形成するため、高い接合強度が得られない。
このため、従来より、これら異種接合体の溶融溶接法について、多くの検討、提案がなされてきている。例えば、接合部に脆いFe−Al金属間化合物が生成しないように、低温でロウ付けする方法が提案されている(特許文献1、2参照)。
また、より高温において接合を行う、これら異種接合体の溶融溶接では、少なくともシリコンを3〜15wt%添加したアルミニウム合金製のソリッドワイヤを溶接ワイヤとし、アルミニウム合金材と亜鉛メッキなどを表面に施した鋼材とをパルスMIG溶接によって接合する方法が提案されている(特許文献3参照)。この方法では、溶接ワイヤの溶融と共に、シリコンも母材へと移行させ、溶融池界面に浸透して、アークの熱によって高温となり、溶融金属のぬれ性を良くして接着性を向上させている。
更に、異種接合体の溶融溶接に用いるフラックスの組成を改善して、溶接継手強度を高めようとするも提案されている。この例として、現状の溶接ラインを使用でき、かつ簡便に連続接合させる方法として、ノコロック系フラックス(フッ化セシウム、フッ化アルミニウム、フッ化カリウム及び酸化アルミニウム)をアルミニウムで被覆したフラックス入りワイヤを用いて、軟鋼と純アルミニウムや5000系アルミニウム合金材とをアーク溶接する方法も開示されている(特許文献4参照)。
また、フッ化物系混合フラックスを塗布して用い、マグネチック、超音波、高周波、スポットなどの種々の溶接法により溶接する、鋼材とアルミニウム材との異材接合方法も提案されている(特許文献5参照)。これらの方法は、上記フラックスの化学反応によって、鉄鋼表面の清浄作用を促すと共に、アルミニウムから成る溶融金属のぬれ性及び接着性を良好にし、脆弱な厚い金属間化合物層の形成を阻止する。
更に、強固な酸化皮膜が形成されているアルミニウム合金材の表面から、酸化皮膜を還元、溶解除去する効果を有するフッ化物系フラックスをアルミニウム合金材表面に塗布して、軟鋼と6000系アルミニウム合金材とをスポット溶接する方法も提案されている(特許文献6参照)。また、これらフッ化物系フラックスは、アルミニウム合金材同士の溶融溶接接合などにも用いられている(特許文献7、8参照)。
特開平7−148571号公報 特開平10−314933号公報 特開2004−223548号公報 特開2003−211270号公報 特開2003- 48077号公報 特開2004−351507号公報 特開2004−210013号公報 特開2004−210023号公報
特許文献1、2のような低温ロウ付けでは、アルミニウム系ロウ材、あるいは、フラックスとアルミニウム系ロウ材とを使用したロウ付けが行われてきた。しかし、低温ロウ付けでは、被接合材の接合温度範囲の管理が、ロウ材の溶融温度以上で、被接合材の溶融温度以下と厳密であり、自動車のボディなどの大型部材の接合に適用するためには、精密な温度制御を行える大型炉が必要である。また、接合に長時間を要するため、高い生産性が要求される自動車のボディなどの大型部材には適用できない。
特許文献3のようなシリコンを添加したアルミニウム合金製ソリッドワイヤを溶接ワイヤとしてMIG溶接する方法は、入熱条件など高精度な制御のための、高価な制御電源を必要とするだけでなく、継ぎ手形状も大きく限定される問題がある。このため、やはり、継ぎ手形状の自由な設計が要求される自動車のボディなどの大型部材などには適用できない。
更に、特許文献4、5に開示されるようなフッ化物組成のフラックス入りアルミニウム製ワイヤでは、軟鋼と純アルミニウムや5000系アルミニウム合金材との異材接合は可能である。しかし、特許文献4、5に開示されているフッ化物組成のフラックス入りアルミニウム製ワイヤは、高張力鋼材と6000系アルミニウム合金材との高強度な異材同士の溶接接合では、高い接合強度が得られない。これは、特許文献67、8に開示されているフッ化物組成のフラックスでも同様である。
また、特許文献4に開示されるような、ノコロック系フラックスをアルミニウムで被覆したフラックス入りワイヤでは、フッ化物組成のフラックスの作用によって材料表面自体の清浄化はできる。しかし、このフラックスに含まれる、特にフッ化セシウムの吸湿性が極めて高いため、水分が原因となって溶接金属部のブローホールの原因となりやすいほか、溶接部の耐食性を劣化させることが懸念される。
また、フラックスの充填率を適正に制御していないため、溶融フラックスの大量飛散により作業性が悪化することに加え、フラックスによる溶接金属の濡れ性が良くなりすぎて広がってしまいビードの形成不全が生じる、さらにビードがひろがることにより脆い界面反応層が厚く広範囲に生成されて、継手強度の劣化をもたらすなどの弊害があった。
そして、これら異材接合体のフラックスを用いた従来の溶融溶接では、少なくともアルミニウム材との接合面に亜鉛めっきが施された鋼材の接合強度を高めるには、共通して、大きな限界がある。
鋼材表面に亜鉛めっき、特に、溶融亜鉛合金化めっきが施されている高張力鋼板(GAめっき鋼板)などの場合に、異材接合体の接合強度を高めることが著しく難しい。そして、自動車車体用には、この種GAめっき鋼板が周知の通り汎用されている。このGAめっきは、純亜鉛めっき(GIめっき鋼板)よりも、前記溶融溶接によって、異材接合体の接合強度を高めることが著しく難しい。
したがって、この点も、前記した、自動車などの構造部材用途で、鋼材とアルミニウム材との異材接合体の適用が拡がらない、大きな要因となっていた。
このような状況に鑑み、本発明は、例えGAめっき鋼板を使用したアルミニウム材との異材接合の場合でも、十分な継手強度あるいは接合強度を有する、溶融溶接による異材接合体を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための、本発明における鋼材とアルミニウム材との異材接合体の要旨は、板厚t1 が0.5〜5.0mmである亜鉛めっき鋼材と板厚t2 が0.5〜4.0mmであるアルミニウム材とを、溶融溶接にて接合部にアルミニウム溶接金属を形成させて接合した異材接合体であって、このアルミニウム溶接金属と鋼材との接合界面において、鋼材側にAl3 Fe系化合物およびAl5 Fe2 系化合物との混合層と、アルミニウム溶接金属側にα−AlFeSi層とを各々有する接合界面層が形成されており、この接合界面層の板厚方向の平均厚さが0.5〜5μmであることとする。
ここで、前記溶融溶接においてフラックスを用い、このフラックスを、塩化物を含まない、フッ化アルミニウムとフッ化カリウムとの混合フラックス組成としたものであることが好ましい。このフラックスをアルミニウム合金外皮内に充填したフラックスコアードワイヤとして溶融溶接部に供給することが好ましい。
本発明で規定する接合界面層の内のα−AlFeSi相自体は、体心立方晶形のAlとFeとSiとの金属間化合物相として、単結晶形のβ−AlFeSi相とともに公知である。このα−AlFeSi相は、純アルミニウムやアルミニウム合金のFe、Siの不純物や、アルミニウム合金のFe、Siの合金元素などに由来して、鋳造時や熱処理時に、晶出あるいは析出する晶出物あるいは析出物である。
因みに、α−AlFeSi相自体は、これまで、例えば、アルミニウム合金製感光体の切削性や表面仕上がり性を向上させる化合物相として公知である(特開平11−131168号公報など)。また、純アルミニウムのFe、Siの不純物由来として、熱処理条件、熱間加工条件によって、その固溶、析出量が変化して、Al3 Fe系化合物、α−AlFeSi相、単体Siと変化すること、そして、加工硬化、軟化、集合組織などの特性に影響を与えることが公知である(神戸製鋼技報/Vol.56.No.1.Apr.2006)。
本発明では、溶融溶接にて接合部にアルミニウム溶接金属を形成させて接合した異材接合体における、アルミニウム溶接金属と鋼材との接合界面において、鋼材側に必然的に生成するAl3 Fe系化合物およびAl5 Fe2 系化合物との混合層に加えて、アルミニウム溶接金属側にα−AlFeSi層を生成されることを特徴とする。
このα−AlFeSi層は、亜鉛めっき鋼材とアルミニウム材との溶融溶接において必然的に生成するものではない。本発明者らの知見によれば、このα−AlFeSi層は、特定のフラックスを用いた特定の溶融溶接条件によってのみ、アルミニウム溶接金属側に生成する。
α−AlFeSi層の生成が溶融溶接条件によって左右されることは、前記した、アルミニウム中のFe、Siの固溶、析出量(固溶、析出状態)が、アルミニウムの熱処理や熱間加工条件によって、析出化合物が大きく変化する、公知の事実からも裏付けられる。
本発明者らは、アルミニウム溶接金属と鋼材との接合界面において、アルミニウム溶接金属側にα−AlFeSi層を生成させることができれば、このα−AlFeSi層が、接合界面におけるFe−Al系の脆く厚い金属間化合物層の形成を抑制する効果を有することを知見した。そして、このFe−Al系金属間化合物層形成の抑制効果は、アルミニウム溶接金属側のα−AlFeSi層を含めた前記接合界面層(金属間化合物混合層)の板厚方向の平均厚さを0.5〜5μmの範囲の薄層化することを可能とする。この結果、本発明によれば、鋼材とアルミニウム材との異材接合体の接合強度を著しく向上させることができる。
鋼材とアルミニウム材との異材を接合する場合、鋼材はアルミニウム材と比較して、融点、電気抵抗が高く、熱伝導率が小さいため、鋼側の発熱が大きくなり、まず低融点のアルミニウムが溶融する。次に鋼材の表面が溶融し、結果として、接合界面(溶接界面)にて、Al-Fe 系の脆い金属間化合物層が形成する。
鋼材とアルミニウム材との溶融溶接で、鋼材側の接合界面に必然的に形成されるFe−Al系金属間化合物は、主として、Al3 Fe系化合物(金属間化合物Al3 Feの意味)やAl5 Fe2 系化合物(金属間化合物Al5 Fe2 の意味)であることが知られている。これらのFe−Al系金属間化合物は大変脆いため、高い接合強度は得られないと従来よりされている。
これに加えて、GAなどの亜鉛めっき鋼材とアルミニウム材との溶融溶接では、この亜鉛めっきに由来するZn−Fe系化合物(金属間化合物Fe3 Zn7 など)が生成し、上記Fe−Al系金属間化合物層中に不純物として必然的に含まれるようになる。そして、このZn−Fe系化合物層は、やはり脆いために、破壊の起点となりやすく、異材接合体の接合強度を著しく低下させる。
したがって、特に、亜鉛めっき鋼材とアルミニウム材との異材を溶融溶接にて接合する場合、高い接合強度を得るためには、接合界面(溶接界面)での界面反応層の厚さ・構造を制御することが非常に重要となる。
本発明では、これらGAなどの亜鉛めっき鋼材によって、この亜鉛めっきに由来するZn-Fe 系化合物が生成し、例え、上記Fe−Al系金属間化合物層中に不純物として必然的に含まれるような場合でも、アルミニウム溶接金属側のα−AlFeSi層生成によって、このFe−Al系金属間化合物層の形成自体を抑制できる。この結果、本発明は、鋼材側の亜鉛めっきがGAめっきであっても、鋼材とアルミニウム材との異材接合体の接合強度を著しく向上させることができる。
(異材接合体)
本発明の異材接合体について説明する。図1は、溶融接合後の本発明異材接合体の重ね継ぎ手(接合)部分を断面図で示している。図2は、図1における接合部分5の接合界面6の拡大図である。これら図1、2の異材接合体は、後述する図3あるいは図4の溶融溶接施工方法にて製作される。
図1、2において、1が亜鉛めっき(GA)鋼板、2がアルミニウム板、3がアルミニウム溶接金属(アルミニウムビード)、4が接合界面層(界面反応層、あるいは接合界面6)である。また、t1は亜鉛めっき鋼板(鋼材)の板厚、t2はアルミニウム板(アルミニウム材)2の板厚である。
(接合界面)
図2の接合界面6において、アルミニウム溶接金属側のα−AlFeSi層は、後述する特定の溶融溶接条件にて、溶融溶接時の反応初期に、アルミニウム溶接溶接金属側に優先的に生成(形成)させたものである。
一方、図2の鋼材側のAl3 Fe系化合物(Al3 Fe反応層)とAl5 Fe2 系化合物(Al5 Fe2 反応層)との混合層は、溶融溶接の条件にかかわらず(通常の溶融溶接条件であれば)必然的に生成する。
ただ、アルミニウム溶接金属側のα−AlFeSi層を、溶融溶接時の反応初期に、優先的に生成させていることによって、接合界面6における、溶融溶接時の反応初期以降のAl、Feの相互拡散が抑えられる。このため、上記脆いFe−Al5 系反応層(Al3 Fe系化合物:Al3 Fe、Al5 Fe2 )が形成される時間を遅延させる。
このように、アルミニウム溶接金属側のα−AlFeSi層は、溶融溶接時の反応初期以降のAl、Feの相互拡散抑制層として作用し、このα−AlFeSi層を含む界面反応層(接合界面層4)が、薄く、かつ均一に、アルミニウム溶接金属3と亜鉛めっき鋼板1の間に生成される。この結果、異材接合体の高い接合強度が安定して得られる。
なお、このα−AlFeSi層やFe−Al5 系反応層(Al3 Fe系化合物:Al3 Fe、Al5 Fe2 )などの接合界面構造は、接合界面層4の電子線回折像分析やX線回折分析によって同定できる。
(接合界面層)
上記薄くかつ均一とすべき接合界面層(界面反応層)の厚みは、鋼材側のAl3 Fe系化合物およびAl5 Fe2 系化合物との混合層と、アルミニウム溶接金属(アルミニウムビード)側のα−AlFeSi層とを接合界面層として、これらの層の合計の板厚方向の平均厚さが0.5〜5μmであることとする。
接合界面層の厚みが0.5μm未満では、アルミニウム溶接金属3と亜鉛めっき鋼板1との冶金的接合が出来ず、異材接合体の接合強度が低くなる。一方、接合界面層の厚みが5μmを超えると、接合界面6が脆弱となり、やはり異材接合体の接合強度が低くなる。
この接合界面層の厚みは、異材接合体断面の、アルミニウム溶接金属3の登頂より、止端部にいたるまでの間の接合界面において、500倍程度の倍率で、光学顕微鏡もしくはSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて測定する。
異材接合体の接合強度を増大させるためには、図2で言う薄く均一な接合界面層4を、図1で言うアルミニウム溶接金属3と亜鉛めっき鋼板1との接合界面6全体に亙って形成させることが有効である。
(α−AlFeSi層)
本発明で規定する接合界面層の内のα−AlFeSi相は、体心立方晶形のAlとFeとSiとの金属間化合物相として、前記した通り、接合界面層4の電子線回折像分析やX線回折分析によって、化合物組成として、また、結晶形態としても、単結晶形のβ−AlFeSi相などと、明確に区別、特定される。
アルミニウム溶接金属側のα−AlFeSi層を、溶融溶接時の反応初期に、優先的に生成させるためには、溶融溶接の際に、フラックスを使用することが有効である。ただ、アルミニウム溶接金属側のα−AlFeSi層を、溶融溶接時の反応初期に、優先的に生成させるためには、フラックスが、アルミニウム合金材などの被溶接材の表面酸化膜還元除去効果と、溶接初期にα−AlFeSi層の形成を促進する効果とを有することが必要である。
この点、前記した従来のフッ化物系フラックスとしては、フッ化セシウム、フッ化亜鉛などがある。これらのフッ化物系フラックスでもアルミニウム合金材表面を清浄化できる作用を一応有する。しかしながら、これらのフッ化物系フラックスは吸湿性が極めて高い。このため、吸湿された水分が原因となって、溶接金属部のブローホールの原因となりやすいほか、溶接部の耐食性を劣化させることが懸念される。また、致命的には、溶接初期にα−AlFeSi層の形成を促進する効果が少ない。
α−AlFeSi相は、純アルミニウムやアルミニウム合金のFe、Siの不純物や、アルミニウム合金のFe、Siの合金元素などに由来して、上記特定の溶接条件によって、溶融溶接時の反応初期にアルミニウム溶接金属側に析出する。
ただ、このように、アルミニウム溶接金属側にα−AlFeSi層を、溶融溶接時の反応初期に、優先的に生成させるためには、上記特定の溶接条件とともに、更に、アルミニウム材が、不純物か、あるいは合金元素としてのいずれでも良いが、Fe、Siを実質量(α−AlFeSi相を十分生成させるに足る量)含有することが好ましい。
一方、異材接合されるアルミニウム材によっては、選択上、含有するFe、Si量がα−AlFeSi相の生成に不十分である(あるいは不十分だと予測できる)場合もある。このような場合には、溶接の際に、外部からFe、Siをアルミニウム材側接合界面に供給する。即ち、アルミニウム溶接金属(ビード)作成のためのアルミニウムソリッドワイヤや、フラックス入りアルミニウムワイヤなどを用い、これらにFe、Siを含有させて、α−AlFeSi相を十分生成させるに足る量だけ、Fe、Siをアルミニウム材側接合界面に供給する。
(ノコロックフラックス)
これに対して、フッ化物系混合フラックスの中でも、フッ化アルミニウムとフッ化カリウムとの混合フラックス(ノコロックフラックス)は、フッ化アルミニウムとフッ化カリウムとの化学反応によって、鋼材表面の清浄作用を促すとともに、アルミニウム板表面の強固な酸化皮膜を還元・溶解除去する。これによって、溶接初期にα−AlFeSi層の形成を促進する効果も一段と高く、アルミニウムからなる溶融金属と鋼材の濡れ性を著しく良好にするために、接合強度および外観改善効果もある。
更に、本発明で使用する上記ノコロックフラックスは、塩化物を含まない上記フッ化物組成とする。塩化物は、溶接部に残留すると、溶接部乃至異材接合体の腐食促進因子として作用する。このために、塩化物のフラックス中の含有量を規制する。この点で、ノコロックフラックス中には全く塩化物を含まないことが好ましいが、ノコロックフラックスのコストや実用性も考慮すると、腐食を促進しない範囲での塩化物含有は許容する。この目安として、ノコロックフラックス全量に対して、塩化物量は1mol%以下とする。
この他、本発明で使用する上記ノコロックフラックスは、フラックス成分として酸化物を含有する場合を許容する。具体的には、フッ化物の効果を損なわない範囲で、酸化アルミニウム、酸化ナトリウム、酸化リチウム、5酸化リン等を適宜添加してもかまわない。それらの上限はフラックス全量に対して、概ね30mol%程度である。
(ノコロックフラックス使用態様)
図3、4に、ノコロックフラックスを使用した、異材接合の溶融溶接施工方法を各々断面図で示す。図3、4では、溶融亜鉛めっき鋼材1の端部に、アルミニウム材2の端部を上側として重ね合わせて、互いの端部同士の重ね継手を形成している。
そして、溶接トーチやフラックス入りワイヤなどを用い、鋼材1とアルミニウム材2との互いの端部に沿って(図の前後方向に)延在する溶接線10に沿って、溶接トーチなどを移動させ、溶接線10全長を溶融溶接する。この際、溶接トーチの傾き角度などの溶接条件を適宜選択する。
ノコロックフラックスの供給方法としては、(1)フラックス層をアルミニウム板表面に形成させる方法、(2)アルミニウム合金シース内にフラックスを内包したフラックス入りワイヤを溶加材として使用し、フラックスを供給する方法が適宜選択される。
図3は、上記(1)の態様として、亜鉛めっき(GA)鋼板1とアルミニウム板2との接合(継ぎ手)部分の両者の間に、ノコロックフラックス7を予め配置(塗布、積層)した態様を示す。8はアルミニウム溶接金属(アルミニウムビード)3を形成するためのアルミニウムソリッドワイヤである。
(フラックス入りワイヤ)
図4は、上記(2)の態様として、ノコロックフラックスをアルミニウム合金外皮内に充填したフラックスコアードワイヤ(FCW、フラックス入りワイヤ)9にて、亜鉛めっき(GA)鋼板1とアルミニウム板2との接合(継ぎ手)部分に、にて供給する態様を示す。FCW9は、ノコロックフラックスを内部に充填、収容する外皮が、アルミニウム溶接金属(アルミニウムビード)3を形成するためのアルミニウムからなる。
フラックス入りワイヤへのノコロックフラックスの充填量(充填率)は、フラックス入りワイヤの全体質量に対して、0.1質量%以上、24質量%未満と、比較的少なくすることが好ましい。従来市販乃至汎用されているフラックス入りワイヤのように、フラックスの充填率を24%を超えて多くすると、通常の交流MIG溶接や直流逆極性によるMIG溶接条件であっても、溶融したフラックスが多量に飛散する。この他、濡れ性改善効果が強すぎて溶接金属が拡がりすぎ、健全なビードが形成されず、また、溶接作業性も悪く、ビードが健全に形成されないため、溶接部の信頼性も損なわれる。
一方、ノコロックフラックスの充填率の下限は0.1%とする。ノコロックフラックスの充填率が少な過ぎると、アーク溶接で汎用されるビードを形成するためのアルミニウム溶接ワイヤ(JIS 規格:A4043 −WY、A4047 −WY、A5356 −WY、A5183 −WYなど)と同じとなる。このため、ノコロックフラックスの充填率が0.1%未満では、上記濡れ性改善効果などのノコロックフラックスの効果が発揮できず、健全で信頼性の高い溶接継手が得られない。
フラックス入りワイヤを用いれば、アルミニウム材と溶融亜鉛めっき鋼材を含めた鋼材とを接合する際に、適用条件などの制約が少なくて汎用性に優れると共に、形状的制約も少ない。また、線溶接の際に必要な連続接合が可能であり、かつ接合部における脆弱な金属間化合物や、溶接部におけるブローホールの発生や耐食性の劣化も少なく、さらに溶接作業性も良好な接合技術を提供できる。このため、自動車などの構造部材に適用できる異材接合継手(異材溶接継手)を提供することが可能となる。
(外皮アルミニウム合金)
フラックスコアードワイヤの管状の外皮(フープとも言う)には、鋼とアルミニウム合金材との間でのFe−Al金属間化合物層の形成抑制のために、通常用いる鋼帯ではなく、アルミニウム合金帯を用いる。この際、外皮であるアルミニウム合金は、Siを1〜13質量%含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなることが好ましい。これは、主に溶融状態におけるアルミニウム合金の流動性と凝固後の継手強度、外皮としての強度などを確保するためである。Si含有量が少なすぎると流動性および強度が低下する。逆にSi含有量が増大しすぎると、流動性の向上は飽和傾向になる他、溶着金属が脆くなる傾向が増す。このために、含有させる場合のSi量は1〜13質量%の範囲とする。
外皮アルミニウム合金は、このSiに加えて、更にMnを0.1〜0.3質量%含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなることが好ましい。これは、主に溶融状態におけるアルミニウム合金の流動性と凝固後の継手強度、外皮としての強度などをより確保するためである。このようなアルミニウム合金組成を有する外皮として、規格化され、汎用されているアルミニウム合金溶加材を用いることが好ましい。このようなアルミニウム合金組成を有するアルミニウム合金溶加材としては、Siを11.0〜13.0質量%、Mnを0.15質量%以下含有するA4047の使用が好ましい。また、Siを4.5〜6.0質量%、Mnを0.05質量%以下含有するA4043も使用できる。
(溶融溶接法)
本発明の異材接合における溶融溶接の熱源としては、レーザ、MIG、TIG、電子ビーム溶接などを使用することが出来る。言い換えると、使用溶融溶接方法は特に制限されるものではなく、アークやレーザなどの熱源を使用した汎用の溶融溶接法を使用することができる。例えば、交流MIG溶接や直流逆極性によるMIG溶接、TIG法、レーザ法、あるいはそれらのハイブリッド溶接法が適用可能である。実際の溶融溶接の施工に際しては、被溶接材の種類・形状、これらの異材接合体の形状や構造、あるいは要求接合特性に応じて、溶接方法を選定し、溶接条件を最適化する。
本発明では、鋼材とアルミニウム材とを直接接合できるので、適正な溶接電流・電圧条件・接合形状等を採用する限り、特に制約を受けることがなく、これら汎用の溶融溶接法における溶接条件は常法と同じで可であるが、好ましい範囲を下記する。
(溶接電流)
交流MIG溶接や直流逆極性によるMIG溶接を実施する際、大電流となるほど、フラックスが飛散しやすくなり、生成する接合界面の脆い金属間化合物が多くなる。このため、こうしたフラックスの飛散や金属間化合物を抑制する上で、低い電流条件で接合することが推奨される。このような溶接電流としては20A以上、より好ましくは30A以上で、100A以下、より好ましくは80A以下である。
(溶接電圧)
溶接電圧は、溶接電流と同様に、交流MIG溶接や直流逆極性によるMIG溶接とも、低い電圧条件で接合することが推奨される。この点、溶接電圧は、5V以上、より好ましくは7V以上で、20V以下、より好ましくは18V以下である。
(レーザ出力)
波長10.6μmの炭酸ガスレーザと、波長1.06μmのYAGレーザとGA代表的であり、レーザ出力は3kW以上とすることが好ましい。
(溶接速度)
溶接速度は、レーザ法も含め、交流MIG溶接や直流逆極性によるMIG溶接とも、上記溶接電流および溶接電圧、あるいは出力に応じて、母材中のFeおよびAlを過剰溶融させない範囲で適当に決めればよい。交流MIG溶接で、溶接能率なども考慮して好ましいのは15cm/min以上、60cm/min以下である。直流逆極性によるMIG溶接では、脆弱な金属間化合物発生を抑制するために、溶接速度をできるだけ上げて溶接を行い、入熱量を低減する必要から、溶接速度として、好ましいのは30cm/min以上、150cm/min以下である。
(シールドガス)
レーザ法も含め、交流MIG溶接や直流逆極性によるMIG溶接とも、シールドガスは、Arなど汎用されるガスが適宜使用でき、このシールドガス流量も、例えば10〜50L/minの汎用流量が選択でき、特に制限は無い。
(溶接トーチ角度)
溶接トーチ( アークトーチ) 角度は、特に制約は無く、交流MIG溶接や直流逆極性によるMIG溶接とも、溶接や継手の溶接条件などに応じて、角度θは適宜選択される。
(亜鉛めっき鋼材とアルミニウム材との板厚)
ここで、本発明では、互いに接合する亜鉛めっき鋼材とアルミニウム材との板厚の範囲を、実用的かつ溶融溶接できる現実的な範囲に規定する。即ち、亜鉛めっき鋼材の板厚t1 を0.5〜5.0mmの範囲、アルミニウム材の板厚t2 を0.5〜4.0mmの範囲と各々規定する。
(亜鉛めっき鋼材)
接合する亜鉛めっき鋼材の板厚t1 は、上記0.5〜5.0mmの範囲から、アルミニウム材側の板厚t2 に応じて選択することが必要である。
鋼材の板厚t1 が0.5mm未満と薄過ぎる場合、前記した構造部材や構造材料として必要な強度や剛性を確保できず不適正である。また、溶融溶接時の鋼材の熱変形が大きくなって、これが著しい場合には、鋼材の材料が抜け落ち、健全な溶接継ぎ手が得られなくなる。一方、鋼材の板厚t1 が5.0mmを越えて厚過ぎると、異材接合体の利点の一つである軽量化が犠牲になる。また、本発明の接合体を得るのに必要な、適正な厚みの界面反応層の生成に要する入熱量の制御が難しくなる。このため、α−AlFeSi層の生成が不均一となりやすく、鋼材側のAl3 Fe系化合物およびAl5 Fe2 系化合物との混合層による、界面反応層(接合界面層4)が厚くなりすぎて、強度劣化をもたらす。
本発明はGA(合金化溶融亜鉛めっき)に有効ではあるが、対象とする亜鉛めっきは、GAめっき鋼材に限らず、GIや電気めっき鋼材なども含み、両面、あるいは片面の亜鉛めっき鋼材も接合体の対象とする。
本発明においては、使用する鋼材の形状や材料を特に限定するものではなく、構造部材に汎用される、あるいは構造部材用途から選択される、鋼板、鋼形材、鋼管などの適宜の形状、材料が使用可能である。ただ、構造部材用に、高強度な鋼材が要求される場合には、鋼材の引張強度が400MPa以上である高張力鋼材(ハイテン)を用いることが好ましい。
(アルミニウム材)
本発明で用いるアルミニウム材は、その合金の種類や形状を特に限定するものではなく、各構造用部材としての要求特性に応じて、汎用されている板材、形材、鍛造材、鋳造材などが適宜選択される。アルミニウム材の強度についても、上記鋼材の場合と同様に、構造材としては高い方が望ましい。この点、アルミニウム合金の中でも強度が高く、この種構造用部材として汎用されている、AA(あるいはJIS)50000系、6000系などの使用が最適である。
本発明では、使用するこれらアルミニウム材の板厚t2 を0.5〜4.0mmの範囲とする。アルミニウム材の板厚t2 が0.5mm未満と薄過ぎる場合、構造材料としての強度が不足して不適切である。また、溶融溶接時のアルミニウム材の熱変形が大きくなって、これが著しい場合には、アルミニウム材の材料が抜け落ち、健全な溶接継ぎ手が得られなくなる。一方、アルミニウム材の板厚t2 が4.0mmを越えて厚過ぎる場合は、異材接合体の利点の一つである軽量化が犠牲になる。その上、本発明の接合体を得るのに必要な、適正な厚みの界面反応層の生成に要する入熱量の制御が難しくなる。このため、α−AlFeSi層の生成が不均一となりやすく、鋼材側のAl3 Fe系化合物およびAl5 Fe2 系化合物との混合層による、界面反応層(接合界面層4)が厚くなりすぎて、強度劣化をもたらす。
以下、レーザおよび交流MIG溶接を用いて、前記図1のような異材接合体を作製して、接合界面(界面反応)層を分析するとともに、接合強度を評価した。これらの結果を、レーザ溶接を用いた実施例1については表1に、MIG溶接を用いた実施例2については表2に示す。
なお、ノコロックフラックスを用いない以外は、被溶接材など全て同じ溶接条件とした比較例異材接合体(表1、2の比較例9)も、実施例1、2において制作し、接合界面(界面反応)層を分析するとともに、接合強度を評価した。また、板厚が本発明板厚条件を外れた以外は、全て同じ溶接条件とした比較例異材接合体(表1、2の比較例10〜13)も、同様に制作して、接合界面(界面反応)層を分析するとともに、接合強度を評価した。
(被溶接材条件)
実施例1、2とも、表1、2の発明例1〜8および比較例9は、本発明板厚条件を満足させ、かつ同じ板厚条件とした。即ち、前記図1における、アルミニウム材2は板厚t2 が1.0mmのアルミニウム合金板(AA6022)、鋼材1は板厚t1 が1.2mmのGA(溶融亜鉛めっき)鋼板(590N/mm2 )を使用した。これに対して、実施例1、2とも、表1、2の比較例10〜13は、前記図1における鋼材1とアルミニウム材2とのいずれかの側の板厚を、下記の通り、本発明板厚条件を外れたものとした。この比較例10〜13において、前記図1における鋼材1とアルミニウム材2との種類は、各例とも共通して、前記発明例1〜8および比較例9と同じ、GA鋼板(590N/mm2 )およびAA6022アルミニウム合金板とした。
比較例10は、鋼材1の板厚t1 を厚すぎる5.5mm、アルミニウム材2の板厚t2 を範囲内の3.6mmとした。
比較例11は、鋼材1の板厚t1 を薄すぎる0.3mm、アルミニウム材2の板厚t2 を範囲内の1.0mmとした。
比較例12は、鋼材1の板厚t1 を範囲内の0.7mm、アルミニウム材2の板厚t2 を薄すぎる0.2mmとした。
比較例13は、鋼材1の板厚t1 を範囲内の4.8mm、アルミニウム材2の板厚t2 を厚すぎる4.2mmとした。
なお、これらの各例の溶接時の配置は、共通して、前記図1のように、GA鋼板1を下にして、アルミニウム合金板1を上に重ね合わせ、互いのラップ幅は30mmとした。
(ノコロックフラックス条件)
実施例1、2とも、使用したノコロックフラックスの種類は、フッ化アルミニウム(AlF3 )とフッ化カリウム(KF)との混合比率によって下記4種類とした。下記表1、2のフラックスの種類の欄には、この(a)〜(d)の記号で示す。
(a)K3 AlF6 (25mol%AlF3 、75mol%KF)
(b)K3 AlF6 (33mol%AlF3 、67mol%KF)
(c)75mol%AlF3 、25mol%KF
(d)40mol%AlF3 、60mol%KF
(塗布条件)
実施例1、2とも、フラックスの供給方法は、前記図3のフラックス7の塗布か、もしくは前記図4のFCW9使用かの2種類で行った。前記図3のように、アルミニウム板材2表面に上記ノコロックフラックス7を塗布する場合、フラックス粉末をエタノール溶液に懸濁させたものを、刷毛でアルミニウム板材2の被溶接部に薄く塗布した。フラックスの塗布量は各例とも1〜2g/m2 とした。この塗布の場合は、溶加材として、直径1.2mmΦのAA4047WYワイヤを使用した。
(FCW条件)
実施例1、2とも、前記図4のFCW9使用の場合は、線径1.2mmφのフラックス入りワイヤを用い、ワイヤへのノコロックフラックスの充填量(充填率)は、フラックス入りワイヤの全体質量に対して5質量%とした。この際、ワイヤの外皮アルミニウム合金には、上記したA4043アルミニウム合金溶加材を用いた。
(接合界面層)
実施例1、2とも、前記図2に示した接合界面構造(接合界面層)4における、溶融亜鉛めっき鋼板1側の金属間化合物と、アルミニウム溶接金属3側の金属間化合物との同定は接合界面層4の電子線回折像分析によって、任意の10箇所を測定行った。また、接合界面層4の厚みは接合界面(異材接合体)断面の、アルミニウム溶接金属3の登頂より、止端部にいたるまでの間の接合界面において、500倍程度の倍率で光学顕微鏡を用いて任意の10箇所測定して平均化した。
(接合強度)
実施例1、2とも、レーザおよび交流MIG溶接は各々の条件で各例とも3回行った。接合強度測定のため、各3つの異材接合体の接合継手から、接合部を含む30mm幅の試験片を切り出して、引張試験を行い、単位溶接線あたりの破断強度を各々測定し、3つの例を平均化して評価した。破断強度が250N/mm以上であれば◎、200―250N/mmであれば○、100−200N/mm未満であれば△、100N/mm未満であれば×とした。ここで破断強度が200N/mm(○)以上なければ、自動車などの構造材用の異材接合体としては使用できない。
(実施例1)
実施例1はレーザ溶接により異材接合体の製作を行った。レーザ溶接は、デフォーカスさせた連続発振YAGレーザを使用した。溶接条件は、レーザ出力:4.0kW、接合速度:1.2m/min、シールドガス:Arとした。
表1から分かる通り、板厚条件を満足するとともに、ノコロックフラックスを用いて、適切なレーザ溶接にて、接合部にアルミニウム溶接金属を形成させて接合した、亜鉛めっき鋼材とアルミニウム材との発明例異材接合体は、鋼材側のAl3 Fe系化合物およびAl5 Fe2 系化合物との混合層とともに、アルミニウム溶接金属側にα−AlFeSi層とを各々有する接合界面層が形成されており、この接合界面層の板厚方向の平均厚さが0.5〜5μmである。この結果、発明例異材接合体は、自動車などの構造材用として使用できる、高い接合強度を有する。
これに対して、ノコロックフラックスを用いない以外は、全て同じ条件とした比較例9の異材接合体は、鋼材側のAl3 Fe系化合物およびAl5 Fe2 系化合物との混合層のみであり、アルミニウム溶接金属側にα−AlFeSi層が生成していない。また、このAl3 Fe系化合物およびAl5 Fe2 系化合物との混合層のみからなる、接合界面層の板厚方向の平均厚さも5μmを超えて厚い。この結果、比較例9の異材接合体の接合強度は低く、自動車などの構造材用として使用できない。
また、比較例10〜13は、ノコロックフラックスを用いているが、前記した通り、鋼材1側の板厚t1 か、アルミニウム材2側の板厚t2 かの一方が、本発明板厚条件を満足しない。このため、比較例10〜13は、例え、ノコロックフラックスを用いていても、また、本発明板厚条件を外れるのが片方の板厚だけであっても、前記した通り、溶接時の入熱量の制御が難しくなっている。この結果、いずれかの板厚が薄すぎる比較例11、12は、表1に示す通り、溶接時の熱変形が大きく、材料が抜け落ちて、健全な溶接継ぎ手が得られていない。一方、いずれかの板厚が厚すぎる比較例10、13は、表1に示す通り、鋼材側のAl3 Fe系化合物およびAl5 Fe2 系化合物との混合層が、規定する接合界面層の板厚方向の平均厚さの上限5μmを超えて、厚くなりすぎている。また、これら比較例10、13では、α−AlFeSi層が生成しているものの、不均一となっていた。これらの結果から、本発明板厚条件を外れる比較例は、異材接合体自体が作成できないか、例え作成できたとしても、異材接合体の接合強度が低く、自動車などの構造材用として使用できないことが分かる。
Figure 2008207245
(実施例2)
実施例2は交流MIG溶接により異材接合体の製作を行った。溶接条件は、上記で推奨したMIG溶接条件の範囲内で実施した。溶接速度: 交流MIG溶接は35cm/minとし、溶接電流: 75A、溶接電圧: 18V、溶接トーチ角度は90°とし、シールドガスにはArを用いた。
表2から分かる通り、板厚条件を満足するとともに、ノコロックフラックスを用いて、適切なレーザ溶接にて、接合部にアルミニウム溶接金属を形成させて接合した、亜鉛めっき鋼材とアルミニウム材との発明例異材接合体は、鋼材側のAl3 Fe系化合物およびAl5 Fe2 系化合物との混合層とともに、アルミニウム溶接金属側にα−AlFeSi層とを各々有する接合界面層が形成されており、この接合界面層の板厚方向の平均厚さが0.5〜5μmである。この結果、発明例異材接合体は、自動車などの構造材用として使用できる、高い接合強度を有する。
これに対して、ノコロックフラックスを用いない以外は、全て同じ条件とした比較例9の異材接合体は、鋼材側のAl3 Fe系化合物およびAl5 Fe2 系化合物との混合層のみであり、アルミニウム溶接金属側にα−AlFeSi層が生成していない。また、このAl3 Fe系化合物およびAl5 Fe2 系化合物との混合層のみからなる、接合界面層の板厚方向の平均厚さも5μmを超えて厚い。この結果、実施例1と同様に、比較例9の異材接合体の接合強度は低く、自動車などの構造材用として使用できない。
また、比較例10〜13は、ノコロックフラックスを用いているが、前記した通り、鋼材1側の板厚t1 か、アルミニウム材2側の板厚t2 かの一方が、本発明板厚条件を満足しない。このため、比較例10〜13は、例え、ノコロックフラックスを用いていても、また、本発明板厚条件を外れるのが片方の板厚だけであっても、前記した通り、溶接時の入熱量の制御が難しくなっている。この結果、いずれかの板厚が薄すぎる比較例11、12は、表1に示す通り、溶接時の熱変形が大きく、材料が抜け落ちて、健全な溶接継ぎ手が得られていない。一方、いずれかの板厚が厚すぎる比較例10、13は、表1に示す通り、鋼材側のAl3 Fe系化合物およびAl5 Fe2 系化合物との混合層が、規定する接合界面層の板厚方向の平均厚さの上限5μmを超えて、厚くなりすぎている。また、これら比較例10、13では、α−AlFeSi層が生成しているものの、不均一となっていた。これらの結果からも、本発明板厚条件を外れる比較例は、実施例1と同様に、異材接合体自体が作成できないか、例え作成できたとしても、異材接合体の接合強度が低く、自動車などの構造材用として使用できないことが分かる。
Figure 2008207245
本発明によれば、GAめっき鋼板を使用したアルミニウム材との異材接合の場合でも、十分な継手強度あるいは接合強度を有する、溶融溶接による異材接合体を提供できる。また、鋼材側やアルミニウム材側、あるいは溶接側条件を大きく変えることなく、接合強度の高い溶融溶接をなしうる、鋼材とアルミニウム材との異材接合体を提供できる。このような接合体は、自動車、鉄道車両などの輸送分野、機械部品、建築構造物等における各種構造部材として大変有用に適用できる。したがって、本発明は鋼材とアルミニウムとの異材接合体の用途を大きく拡大するものである。
溶融接合後の本発明異材接合体の重ね継ぎ手(接合)部分を示す断面図である。 図1における接合部分5の接合界面6の拡大図である。 図1の本発明異材接合体の溶融溶接施工方法の一例を示す断面図である。 図1の本発明異材接合体の溶融溶接施工方法の一例を示す断面図である。
符号の説明
1:亜鉛めっき(GA)鋼材(鋼板)、2:アルミニウム材(板)、
3:アルミニウム溶接金属(アルミニウムビード)、
4:接合界面層(界面反応層)、5:接合部分、6:接合界面、
7:フラックス、8:アルミニウムソリッドワイヤ、
9:フラックス入りワイヤ、10:溶接線、
t1:亜鉛めっき鋼材(鋼板)の板厚、t2:アルミニウム材(板)の板厚

Claims (3)

  1. 板厚t1 が0.5〜5.0mmである亜鉛めっき鋼材と板厚t2 が0.5〜4.0mmであるアルミニウム材とを、溶融溶接にて接合部にアルミニウム溶接金属を形成させて接合した異材接合体であって、このアルミニウム溶接金属と鋼材との接合界面において、鋼材側にAl3 Fe系化合物およびAl5 Fe2 系化合物との混合層と、アルミニウム溶接金属側にα−AlFeSi層とを各々有する接合界面層が形成されており、この接合界面層の板厚方向の平均厚さが0.5〜5μmであることを特徴とする鋼材とアルミニウム材との異材接合体。
  2. 前記溶融溶接においてフラックスを用い、このフラックスを、塩化物を含まない、フッ化アルミニウムとフッ化カリウムとの混合フラックス組成としたものである、請求項1に記載の鋼材とアルミニウム材との異材接合体。
  3. 前記フラックスをアルミニウム合金外皮内に充填したフラックスコアードワイヤとして溶融溶接部に供給した、請求項2に記載の鋼材とアルミニウム材との異材接合体。
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