JP2008201858A - 樹脂組成物及び該組成物からなる繊維、フィルム - Google Patents

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希宜 星野
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Abstract

【課題】 断熱性、軽量性、透明性、吸水性、吸湿性、着色性、発色性、電気絶縁性、滑り性、耐蝕性、耐擦傷性、耐摩耗性、耐脱落性を示し、かつ粗大突起のない優れた成形体を形成し得る樹脂組成物の提供。
【解決手段】 その樹脂組成物は、金属酸化物の殻からなる中空粒子を含有することを特徴とするものであり、それを成形して繊維又はフィルムの成形体を製造する。
その中空粒子としては透過型電子顕微鏡法による平均一次粒子径が20nm〜1μm、動的光散乱法による平均粒子径が20nm〜3μmが好適である。
さらに、中空粒子殻に水銀圧入法により測定される細孔分布において2〜20nmの細孔が検出されないものが好ましい。
【選択図】 なし

Description

本発明は、金属酸化物の殻からなる中空粒子を含有する樹脂組成物に関し、更には該中空粒子を含有する塗料、また塗料を塗布した塗膜や、繊維やフィルムをはじめとする様々な形状に成形した際に、断熱性、軽量性、透明性、吸水性、吸湿性、着色性、発色性、電気絶縁性、滑り性、耐蝕性、耐擦傷性、耐摩耗性、耐脱落性を示し、かつ粗大突起のない優れた成形体を形成し得る樹脂組成物に関するものである。
樹脂には、天然樹脂と合成樹脂があり、そのうち後者の合成樹脂が工業的に使用されている樹脂の大半を占めている。
この合成樹脂は、温度を上げていくとしだいに軟化する熱可塑性樹脂と、比較的低分子量の樹脂を熱により硬化させる熱硬化性樹脂に大別され、熱可塑性樹脂にはポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂、メタクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド、酢酸ビニル等、多くの種類があり、また熱硬化性樹脂にはアルキド樹脂、アリル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン等がある。
これらの樹脂は、樹脂単独で使用されることもあるが、一般には用途に応じ多種の添加剤や充填剤を選択・混練し、要求される物性や性能を満足できるように調製された樹脂組成物として使用される。また液状とした塗料の他、圧縮成形や押出成形、射出成形等の様々な成形方法により、用途に適した形状に成形することが行われている。
例えば、合成樹脂を成形したものとして最も代表的なものの1つに合成繊維がある。合成繊維として使用される樹脂には、ポリエステル、アクリル、アクリル系、ナイロン、ビニロン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ビニリデン、ポリウレタン、アラミド、ポリアリレート、PBO(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)、エチレンビニルアルコール、アクリレート系、ポリ乳酸等があげられる。
その他にもセルロースやたんぱく質のような天然の有機物に化学薬品を作用させたものを原料とした半合成繊維であるアセテート、トリアセテート、プロミックスや、木材パルプやコットンリンターに含まれているセルロース繊維を薬品で溶解し繊維として再生した再生繊維であるレーヨン、ポリノジック、キュポラ、リヨセルがある。
これらの多くの樹脂の一つであるポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートは、優れた物理的、化学的特性を有しており、繊維、フィルムをはじめとする各種の成形品として広く使用されており、なかでも繊維分野においては各種の衣料用があり、産業用としてはタイヤコード、V−ベルト、コンベアベルトに代表されるゴム補強用繊維として大量に使用されている。
また、フィルム分野においては、包装用、農業用、OHP用、ビデオテープやオーディオテープ等の磁気テープ用等、様々な用途が知られている。
しかしながら、いずれの分野においても、さらなる品質向上が求められており、その用途により、断熱性、軽量性、透明性、吸水性、吸湿性、着色性、発色性、電気絶縁性、滑り性、耐蝕性、耐擦傷性、耐摩耗性、耐脱落性等の上記製品自体の商品価値の向上のみならず、それらを製造する成形工程における滑り性の向上、屑削物や脱落物の防止、作業性の向上等が求められている。
[先行技術文献1]
特開平8−291463号公報 特開平11−350256号公報 特開2003−193309号公報 特開平10−237758号公報 特開平6−184493号公報 特開平7−242833号公報 特開平9−324148号公報 特開2005−206436号公報
このポリエステルは、合成繊維の中ではポリエステル繊維として最も多量に製造されており、中空化あるいは微粒子を添加して、上記したような特性を付与する技術としてはすでに多くの提案がなされており、その一部を示すと以下のとおりである。
特許文献1では、一次粒子の平均粒径が0.1μm以下、BET法で測定した比表面積が150m2/g以下の乾式法シリカ粒子を含有した繊維表面から繊維内部の中空部への貫通孔を有する中空率が25%以上のポリエステル中空繊維が提案されており、該中空繊維は高い吸水性を有すると共に、優れた接触涼感とドライ感のある風合いを有するとしている。
特許文献2には、平均粒子径0.03〜2μmのシリカ等の微粒子を0.5〜10重量%含有している共重合ポリエステルと、平均粒子径0.03〜2μmの微粒子を2〜15重量%含有している融点150℃以上の結晶性熱可塑性ポリマーとからなる1〜25%の中空部が存在する反撥性、軽量性に優れた中空複合繊維が開示されている。
特許文献3には、吸湿性ポリマーやシリカ微粒子のような吸湿性微粒子を含む合成樹脂層を片面に積層した水分子吸着発熱性能を有するポリエステルからなる裏地が開示されている。
特許文献4には、中空度が5〜60%のポリエステル中空繊維において、該繊維の中空部に、シリカゲルを、ポリエステル中空繊維を構成するポリマーの重量を基準として3〜60%付着していることを特徴とする改善された吸放湿特性とドレープ性とを兼備するポリエステル中空繊維が開示されている。
また、塗料分野では、特許文献5に疎水性シリカと親水性シリカを特定の割合で含有する揺変性に優れた不飽和ポリエステル塗料組成物が開示されている。
その他にも特許文献6では水溶性又は水分散性のウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びアクリル樹脂から選ばれる1種又は2種以上の樹脂成分とシリカ成分とを含む、優れた耐食性及び耐溶剤性を有する塗膜を形成する水系塗料組成物が提案されている。
また、特許文献7にシリカを含有し、金属材料の表面を、溶接が容易な程度に薄く被覆し、金属板の加工後も特に優れた耐蝕性及び耐溶剤性を有する塗装皮膜を形成することができる水系塗料組成物が提案されている。
さらに、特許文献8には、平均粒径が8μm以下、平均球形度が0.85以上である球状無機質中空粉体と該中空粉体を含有してなる樹脂組成物に関し、低比重、低誘電特性、耐熱性、断熱性、耐圧性、耐衝撃性、電気的特性、寸法安定性、成形性などの物性改良効果が記載されている。
このようにポリエステルの繊維等に無機の粒子を含有させた技術は知られているものの、無機の中空粒子を分散させた樹脂組成物に関する技術は少なく、特にサブミクロン以下の粒子径を要求される繊維やフィルム等の成形体に関する技術は、本発明者らが知る限りにおいてはない。このような状況は他の樹脂についても同様である。
そのような中において、本発明者らは、新規な中空粒子及びその製造方法の開発に成功し、その産業上の利用性についても鋭意研究を進めており、その過程において、該中空粒子を繊維、フィルム、塗料等に幅広く活用されている樹脂組成物からなる工業製品に含有させることにより、様々な物性を向上させることができる可能性を見出した。
すなわち、本発明はこの知見を利用することにより開発に成功したものである。
したがって、本発明は、金属酸化物の殻からなる中空粒子を利用することにより、断熱性、軽量性、透明性、吸水性、吸湿性、着色性、発色性、絶縁性、耐蝕性、耐擦傷性、滑り性、耐摩耗性、耐脱落性等を向上させた樹脂組成物及び該組成物からなる塗料、成形体、その成形体の代表的なものである繊維、フィルムを提供することを課題とするものである。
本発明は、前記課題を解決する樹脂組成物及びそれを利用する繊維又はフィルムを提供するものであり、その樹脂組成物は金属酸化物の殻からなる中空粒子を含有することを特徴とするものである。
また、繊維又はフィルムは、該樹脂組成物を成形してなるものである。
その中空粒子としては透過型電子顕微鏡法による平均一次粒子径が20nm〜1μm、動的光散乱法による平均粒子径が20nm〜3μmが好適である。中でも透過型電子顕微鏡法による平均一次粒子径が20nm〜0.5μm、さらに望ましくは20nm〜0.1μmが、透明度、断熱性、粒子強度等の機能を考慮すると優れた効果を発揮できる可能性がある。
また、中空粒子の金属酸化物殻に、水銀圧入法により測定される細孔分布において2〜20nmの細孔が検出されないものが、中空状態を維持するという点で好ましい。
このような金属酸化物からなる殻を有する中空粒子は、炭酸塩を核材として、該炭酸塩表面に金属酸化物を製膜し、その後核材の炭酸塩を酸により溶解させることにより調製できる。
中空粒子の殻を形成する金属酸化物としては、原料の入手のし易さや経済性、安全性を考慮すると、酸化ケイ素(シリカ)又は酸化チタンが好適である。
樹脂組成物の樹脂の一例としてポリエステル系樹脂を挙げることができ、この場合中空粒子をポリエステル中に分散するには、例えばテレフタル酸とエチレングリコールとを重合原料とする場合には、テレフタル酸とエチレングリコールとの重合終了前でも、また重合後の混練によっても良いが、より均一に分散するには重合終了までに中空粒子を添加することが望ましい。
本発明では、得られた金属酸化物の殻からなる中空粒子を含有するポリエステル組成物は、塗料や成形体である繊維、フィルムに加工することにより、様々な用途において適用できる。
そして、本発明の特徴は、金属酸化物からなる中空粒子を樹脂組成物に含有させることにより、断熱性、軽量性、透明性、吸水性、吸湿性、着色性、発色性、絶縁性、耐蝕性、耐擦傷性、滑り性、耐摩耗性、耐脱落性を示し、かつ粗大突起のない優れた成形体を形成し得る樹脂組成物を提供できる点にある。
以下に、本発明に関し発明を実施するための最良の形態を含む各種実施の形態について説明するが、本発明は、それらによって限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載によって特定されるものであることはいうまでもない。
本発明に使用する中空粒子は、金属酸化物からなる殻を有し中空形態をなす粒子であり、そこにおける金属とは疑問の余地のない金属、例えばチタン、アルミニウム、アンチモン、錫、マンガン、ジルコニウム等だけでなく、境界線上にある元素であるシリコンをも含む概念である。
すなわち、前記金属酸化物とは、酸化チタン、アルミナ、酸化錫、酸化マンガン、ジルコニア等だけでなくシリカをも含む意味である。
この中空粒子は、一次粒子として球やラグビーボール状のような楕円体等の曲面で囲まれる粒子、立方体、八面体、二十四面体等の平面で囲まれる粒子、あるいは曲面と平面からなる粒子、不定形の粒子等その形には特に限定されない。
また、その大きさについても限定されるものではないが、透明性、断熱性、吸湿性、着色性、発色性等の機能を高めるためには、透過型電子顕微鏡法による平均一次粒子径が20nm〜1μmであり、動的光散乱法による平均粒子径が20nm〜3μmの中空粒子が好適である。
また、繊維やフィルム等の径が細いものや厚さが薄いものについては適宜最適な粒径を選択する必要があり、透過型電子顕微鏡法による平均一次粒子径が20nm〜0.5μm、さらに望ましくは20nm〜0.1μmであり、動的光散乱法による平均粒子径が20nm〜1μmで最大粒子径が5μm以下であることが望ましい。
本発明で使用される中空粒子の製造方法としては、例えば、核材として炭酸塩の微粒子を使用し、その炭酸塩微粒子表面を金属酸化物で被覆して金属酸化物からなる殻を形成させ、金属酸化物殻内の炭酸塩を酸により溶解して製造する方法があげられる。
ここで核材として使用する炭酸塩は特に限定されないが、様々な形態のものが均一粒子径で得られ、かつ製造が比較的容易である炭酸カルシウムが好適に使用できる。
また、その表面の殻を形成する金属酸化物としては種々のものが使用でき適宜選択すれば良いが、シリカや酸化チタンが物質としての安定性、安全性、製造の容易さの点で優れている。
上記した中空粒子の製造方法の特徴は、炭酸塩を核材として使用することにより、その表面に金属酸化物の殻を形成し、その後、酸を使用して核材の炭酸塩を溶解・発泡させる際に、核物質を容易に殻外に排出でき中空化できる点にある。
ここで核材として使用する炭酸塩とは、炭酸と塩基(アルカリ)を中和させてできる塩のことで、アルカリ金属、アルカリ土類金属をはじめ遷移金属等を陽イオンとし、その構造式中に陰イオンとして炭酸基(CO3)を含むものをいい、その炭酸塩には、陰イオンの構造から正塩(CO3)、炭酸水素塩(HCO3)、OH基を含む水酸化物塩があり、本発明においてはそれらのいずれも使用できる。
工業的に良く使用されている炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム(重曹)があるが、本発明で好適に使用できる炭酸塩としては、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウムや塩基性炭酸マグネシウム(工業的には「炭マグ」と呼ばれている)などをあげることができる。
また、天然に産する炭酸塩である石灰石(炭酸カルシウム)、ドロマイト、炭酸基を含む温泉沈殿物等も含まれる。
このように炭酸塩には数多くの種類があげられるが、以下においてはこれらの中でも最も好適である炭酸カルシウムについて詳細に述べる。
炭酸カルシウムには、天然の石灰石を物理的に粉砕した重質炭酸カルシウムと化学的な沈殿反応による合成炭酸カルシウムとがあり、本発明においてはいずれの炭酸カルシウムも使用できるが、合成炭酸カルシウムの方が適している。
その理由は、合成炭酸カルシウムは結晶形態が多様であり、より微細で均一な粒子径のものが得られること、反応条件を調節することによりこれらを制御できること、製造が容易で経済性に優れること、そして酸による溶解性が優れるという特長を有していることから、本発明において最も好適な炭酸塩といえる。
その合成炭酸カルシウムには、カルサイト、アラゴナイト、バテライトの3種の結晶構造の異なる多形の無水結晶質炭酸カルシウムの他に、非晶質炭酸カルシウム、一水和物(CaCO3・H2O)、六水和物(CaCO3・6H2O)、水酸化物塩である塩基性炭酸カルシウムが知られており、本発明においてはいずれの結晶構造のものを使用してもよい。
また、結晶形態の違いにより、連鎖状炭酸カルシウム、コロイド状炭酸カルシウム(膠質炭酸カルシウムとも呼ばれる)、立方体状炭酸カルシウム、紡錘状炭酸カルシウム、柱状炭酸カルシウム、球状炭酸カルシウム、菱面体状炭酸カルシウム、板状炭酸カルシウム等、種々のものが知られており、本発明はこれらの形態で限定されるものではない。
これらの形態の中でも、コロイド状炭酸カルシウムや立方体状炭酸カルシウムと呼ばれるものは、粒子径が20〜200nmの分散性が良好で粒子径が均一な立方体状の形態をなした炭酸カルシウム微粒子が得られる点で重要である。
さらに、合成炭酸カルシウムの製造方法には、水酸化カルシウムスラリー中に炭酸ガスを吹き込むことにより炭酸カルシウムを沈殿させる炭酸ガス化合法、水酸化カルシウムと炭酸ナトリウムとの反応による石灰乳ソーダ法、あるいは塩化カルシウムと炭酸ナトリウムとの反応による塩化カルシウムソーダ法等があり、本発明においてはいずれの方法でも良く、その製造方法で限定されるものではなく、適宜選択できる。
以下においては、現在本邦で広く採用されており、しかも炭酸カルシウムが効率的に製造できる炭酸ガス化合法について述べることにする。
炭酸ガス化合法とは、酸化カルシウム(生石灰)や、水酸化カルシウム(消石灰)に水を加えて得られた水酸化カルシウムスラリーに、上述したように炭酸ガスを導入して合成炭酸カルシウムを生成させる方法であり、炭酸ガス化合法における炭酸化反応とは、水酸化カルシウムスラリー中に炭酸ガスを導入することにより炭酸カルシウムが生成する反応のことをいう。
その酸化カルシウム原料としては、天然資源として豊富に産する石灰石や、貝殻や珊瑚などの生物起源の炭酸カルシウムをはじめ、工業的に製造された高純度炭酸カルシウム、製糖工場で副産物として生成するライムケーキ等の炭酸カルシウム等、これらを焼成することにより本発明における原料の1つとして使用する酸化カルシウムを得ることができれば特に制限なく使用できる。
また、水酸化カルシウムであればそのまま水に懸濁させて使用しても良い。
こうして得られた酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムを水と反応・懸濁させ、適当な濃度の水酸化カルシウムスラリーを調製する。
調製された水酸化カルシウムスラリー(炭酸化開始後は炭酸カルシウムも含有される)中に導入される二酸化炭素としては純ガスを使用してもよいが、生石灰の製造時あるいは他の燃焼工程で発生する排ガス等の二酸化炭素含有ガスを直接または洗浄して使用する方が経済的である。
この際のガス中の二酸化炭素濃度については特に制限はないが、濃度が低いと炭酸化反応の効率が低下するため、5容量%以上であることが望ましい。
調製した水酸化カルシウムスラリーに二酸化炭素を導入し炭酸化反応を行う。
その際反応生成物中に未反応水酸化カルシウムを残留させないためには、炭酸化反応は完全に終了するまで継続させることが必要であり、その炭酸化反応の終了に関してはpHの測定によって容易に知ることができる。
すなわち、炭酸ガス化合法では、炭酸化率が100%未満では未反応の水酸化カルシウムが存在するためスラリーpHは10〜12とアルカリ性を示すが、反応が終了するとpHは中性付近にまで低下する。
以上のようにして、炭酸化反応の終了時点を判断することができる。
この合成炭酸カルシウムの製造工程において、石灰乳濃度や炭酸化反応温度を調節したり、各種の有機・無機の添加剤を使用することにより、様々な形態や粒径の合成炭酸カルシウムの製造が可能である。
続いて、上記した炭酸塩を核材とし、その表面に金属酸化物を製膜する工程について述べる。
この工程は核材として用意した炭酸塩粒子の表面を金属酸化物で被覆する工程であり、該粒子を被覆する金属酸化物としては、シリカ(SiO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化アンチモン(Sb23)、酸化錫(SnO2)、酸化マンガン(MnO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)等があげられ、それらの水酸化物、含水物や塩も含まれる。
なお、ここでいうシリカには上記した酸化ケイ素のみならず珪酸塩も含まれ、非晶質、結晶質、無水物、含水物、水酸化物等もその範囲に含まれる。
また、酸化チタン(チタニア)とは二酸化チタンのみならず、酸素欠損型酸化チタンやチタン酸塩、さらには非晶質、結晶質、無水物、含水物、水酸化物等が含まれる。
シリカを製膜する場合には、シリカ源としては、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム等の珪酸アルカリや各種のシリコンアルコキシドが使用できる。
珪酸アルカリを使用する場合には、炭酸塩微粒子と、珪酸アルカリ水溶液との混合スラリーを撹拌機等で分散させ、鉱酸を用いて撹拌しながら混合液の温度を70℃以上沸点以下に維持して中和反応を行う。
この場合、鉱酸の種類は特に限定されないが、比較的安価に購入でき不要な沈殿粒子ができにくい塩酸や酢酸が好ましい。
鉱酸添加によってスラリーのpHが7〜9になった時点で、珪酸アルカリの中和を終了して、炭酸塩複合粒子をシリカで製膜することができる。
シリカ源としてシリコンアルコキシドを使用する場合であれば、核材である炭酸塩微粒子の含水ケーキを、アルコール中に分散させ、アンモニア水、水、シリコンアルコキシドを添加することにより、シリカでコーティングされた炭酸塩微粒子が調製できる。
本工程で使用するシリコンアルコキシドについては、加水分解によりシリカを析出し得るものであれば特段の制約はなく、例えばトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリプロポキシシラン、テトラプロポキシシラン、トリブトキシシランなどを用いることができる。
酸化チタン(チタニア)の製膜方法については、チタンアルコキシドを加水分解させる方法が良く知られており、該テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン等が使用できる。
その他に硫酸チタニルや塩化チタン(III)、塩化チタン(IV)溶液を使用する方法や、さらに塩化チタン(III)や塩化チタン(IV)溶液からペルオキソチタン溶液を調製し、該ペルオキソチタン溶液を基材粉体共存下で加熱することにより該基材粉体表面上に酸化チタン膜を被覆させる方法が知られている。
本工程での酸化チタンの製膜方法についても特に限定されず、これらの方法から適宜選択することができる。
上記した金属酸化物の殻の形成に金属アルコキシドを利用する場合は、炭酸塩微粒子の含水ケーキをアルコール中に分散させ、アンモニア水、水、金属アルコキシドを、金属アルコキシド/アルコールの体積比を0.002〜0.1、アンモニア水に含有されるNH3を、金属アルコキシド1モルに対して、4〜15モル、水を金属アルコキシド1モルに対して、25〜200モルとなるように添加することが好適である。
その際、溶媒として使用するアルコールについては特段の制約はなく、メタノール、エタノール、プロパノールなどが利用可能である。
次に、核材の炭酸塩を酸により溶解する工程について説明する。
この工程では、金属酸化物で被覆した炭酸塩微粒子を酸で処理し、該微粒子の炭酸塩の部分を溶解させるが、その際には、前の工程で得られた金属酸化物で被覆された該微粒子のスラリーをそのまま使用しても、一旦固液分離しケーキ状にしてから、再び水を加えて分散させたスラリーを用いてもよい。
その炭酸塩の溶解に用いる酸溶液は、無機酸、有機酸のいずれも問題なく使用できるが、炭酸塩と酸との反応副生成物の水に対する溶解度が高くなるように、酸の選択を行うことが好ましい。
その際における酸の使用は、核材の炭酸塩の溶解により生成した中空構造を有する金属酸化物中空微粒子の洗浄を水で行う際に副生成物が効率よく除去できるようにするためであり、その酸は工業的に比較的安価に入手できる酸であることが望ましく、これらの観点から、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、クエン酸等が好適に用いられる。
その酸の添加によりpHが5以下となり気泡が発生しなくなれば、炭酸塩の溶解がほぼ完全に終了したと見なすことができる。
このようにして製造した金属酸化物中空微粒子は脱水・乾燥した後、焼成することにより、殻を形成している金属酸化物を無水化したり細孔の大きさや数を制御することも可能である。
さらに該中空微粒子の表面を、エポキシ基、イソシアネート基、ビニル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基で表面修飾をすることにより、表面官能基に由来する特徴を付与することもできる。
本発明で樹脂組成物に含有させる金属酸化物中空微粒子の製造方法は、核材として使用する炭酸塩微粒子を用意し、該粒子を核材として利用してその表面に金属酸化物の殻を形成し、その後金属酸化物殻内部の炭酸塩を酸により溶解・発泡させるものであり、それにより粒子の中空化が極めて容易になる。
その結果、従来の方法に較べ単純な工程で効率よく製造できる。
このようにして製造された金属酸化物中空微粒子は、樹脂組成物中に含有させることにより、断熱性、軽量性、透明性、吸水性、吸湿性、着色性、発色性、滑り性、防食性、耐擦傷性、耐摩耗性、耐脱落性を向上させた繊維、フィルム等の成形体として有用な樹脂組成物、および該組成物からなる塗料、さらには成形体、その成形体の代表的なものである繊維、フィルムを提供するという優れた特性を発現する。
また、金属酸化物の殻からなる中空微粒子は、その粒径、形状、殻の厚さ、表面細孔を制御することにより、様々な機能を制御することができるという特性をも備えるものである。
さらに該中空微粒子の表面を、エポキシ基、イソシアネート基、ビニル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基で表面修飾をすることにより、より良好な効果を得ることも可能である。
本発明の中空微粒子を含有させることができる樹脂の種類は特に限定されず、熱可塑性樹脂ではポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂、メタクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド、酢酸ビニル等、熱硬化性樹脂にはアルキド樹脂、アリル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン等があげられる。
合成繊維として使用される樹脂としては、ポリエステル、アクリル、アクリル系、ナイロン、ビニロン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ビニリデン、ポリウレタン、アラミド、ポリアリレート、PBO、エチレンビニルアルコール、アクリレート系、ポリ乳酸等があり、アセテート、トリアセテート等の半合成繊維、レーヨン、キュポラ等の再生繊維であっても良い。
樹脂中に含有させる方法も特に限定されず、樹脂の特性により適宜選択すれば良いが、例えば該中空微粒子を含有するマスターバッチ(コンパウンド、あるいはチップと呼ぶこともある)を作製後、最適な配合で樹脂組成物とし、また紡糸、延伸等の工程を経て、繊維、フィルム等の成形体とすれば良い。
本発明の樹脂組成物中に分散・含有される金属酸化物の殻からなる中空微粒子の1つには、本発明者等が先に発明した特許文献9に係わる高分散シリカナノ中空粒子及びそれを製造する方法がある。
この方法によれば、高分散で、緻密なシリカ殻からなり、透過型電子顕微鏡法による平均一次粒子径が20nm〜0.1μmの中空粒子が製造でき、透明度、断熱性、粒子強度等の機能を考慮すると優れた効果を発揮できる可能性があり、しかも中空粒子の金属酸化物殻に、水銀圧入法により測定される細孔分布において2〜20nmの細孔が検出されない中空状粒子を得ることが可能である。
また、本発明者らが先に提案した特許文献10に係わるシリカ中空粒子の製造方法があり、この方法では、製造装置及び周辺装置類がコンパクト化でき、使用済みの有機溶媒を排出することのない環境への負荷を低減できる。そして得られるシリカ殻からなる高分散性の中空粒子は特許文献9と同等のものであるという利点がある。
[先行技術文献2]
特開2005−263550号公報 特開2006−256921号公報
本発明においては、中空粒子に関しては金属酸化物の殻からなるものであれば特に限定されないが、繊維の径が細いものやフィルムの厚さが薄いもの等で、大粒子径の粒子では不都合を生じる成形体の場合には、上記したような高分散性のナノからミクロンサイズの中空粒子が好ましい。
具体的には、求める機能や使用場所、繊維径やフィルム厚によって異なるが、透過型電子顕微鏡法による平均一次粒子径が20nm〜0.5μm、さらに望ましくは20nm〜0.1μmであり、動的光散乱法による平均粒子径が20nm〜1μmで最大粒子径が5μm以下である分散性が良好で粒子径が揃った中空粒子がそれに該当する。
次に、該金属酸化物中空微粒子を含有した樹脂組成物として、ポリエステル組成物を例にとり説明する。
本発明においてポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし、グリコール成分との重縮合反応によって得られるポリエステルである。
その芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸等があげられ、またグリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等があげられる。
ポリエステルとして最も代表的なものは、テレフタル酸とエチレングリコールを主要モノマー成分として重縮合反応させて得られるポリエチレンテレフタレートを主体とするものである。
本発明の樹脂組成物がポリエステルの場合において、金属酸化物中空粒子のポリエステルへの添加時期は、ポリエステル製造工程の任意の段階で添加できるが、ジカルボン酸成分とグリコールからのエステル化ないしはエステル交換反応の初期から該反応が終了してプレポリマーが得られるまでの段階ないしはプレポリマーを重縮合させる初期段階で添加することが好ましい。
また、その添加量は、ポリエステルに対し、0.005〜20.0重量%、好ましくは0.02〜10.0重量%である。添加量が0.005重量%より少ないと含有される中空粒子が少なすぎ、その効果が不充分であり、20.0重量%を越えると中空粒子の占める割合が大きすぎ、樹脂の粘度が高くなりすぎて流動化や成形が困難になる。
本発明において樹脂組成物を塗料組成物として使用する場合においても、従来より知られている公知の方法でポリエステル系をはじめとする各種の樹脂組成物からなる塗料を製造できる。
さらに、樹脂中での分散状態が不充分である場合には、中空粒子の表面をシランカップリング剤やチタネートカップリング剤、リン酸系の界面活性剤等により表面修飾し、その向上をはかることもできる。
本発明の樹脂組成物は、金属酸化物の殻からなる中空粒子を含有するものであり、断熱性、軽量性、透明性、吸水性、吸湿性、着色性、発色性、電気絶縁性、滑り性、耐摩耗性、耐脱落性といった様々な機能を付与できる。
すなわち、金属酸化物の殻からなる中空粒子を使用することによってのみ、本発明の効果を充分に発揮でき、断熱性、軽量性、透明性、吸水性、吸湿性、着色性、発色性、電気絶縁性、耐蝕性、耐擦傷性、滑り性、耐摩耗性、耐脱落性を向上させた繊維、フィルム等の成形体として有用な樹脂組成物、及び該組成物からなる塗料、さらには成形体、その成形体の代表的なものである繊維、フィルムを提供することができる。
特に上記した特許文献9及び10の方法で調製される金属酸化物の殻からなる中空粒子は、平均一次粒子径が微細な20nm〜200nmのナノサイズの中空粒子が製造でき、これらの機能を発現するには最も好適である。
なお、本発明の中空粒子の効果を損なわない範囲であれば、樹脂組成物に不溶の無機又は有機の微粒子、あるいは樹脂組成物の製造時に反応系で析出させた微粒子を含有させても良い。
以下において、本発明の実施例で使用する、金属酸化物中空粒子の複数の調製例をまず説明する。
[コロイド中空粒子Aの調製例]
まず液温15℃に調節した固形分濃度7.5重量%の水酸化カルシウムスラリー2.0Lに、撹拌しながら、炭酸ガスを1.5L/分の速度で2時間導入して、立方体状の形態をしたコロイド状炭酸カルシウムを沈殿させた。その後、液温を80℃にし、24時間静置して熟成を行った。
生成した炭酸カルシウムを透過型電子顕微鏡にて観察したところ、一次粒子径は40〜80nmであった。
このコロイド状炭酸カルシウムのスラリーを遠心脱水機にて含水量65重量%の含水ケーキとした後、この含水ケーキ22gを450gのエタノール中に投入し、1分間超音波照射して、エタノール中にコロイド状炭酸カルシウムを分散させた。
そこに、28%アンモニア水21g、テトラエトシキシラン7.5gを添加(テトラエトシシラン/エタノールの体積比0.01、アンモニア水に含有されるNH3はテトラエトキシシラン1モルに対して9.3モル、水はテトラエトキシシラン1モルに対して30モル)し、12時間撹拌を続け、シリカによりコートされたコロイド状炭酸カルシウムを調製した。
この調製物を透過型電子顕微鏡で観察したことろ、40〜80nmの炭酸カルシウム表面に、厚さ7〜10nmのシリカ殻が確認された。
続いて、シリカによりコートされた炭酸カルシウムのスラリーを吸引ろ過にて脱液、エタノール1200mLによる洗浄、及び水1200mLによる洗浄を行った後、再び水800mL中に分散させた。
そこに、2.5モル/LのHClを200mL添加(液全体の酸濃度0.5モル/L)し、1時間撹拌して炭酸カルシウムを溶解させた。
得られた生成物を透過型電子顕微鏡にて観察したところ、一次粒子径が45〜90nmのシリカ中空粒子が確認された。
また、動的光散乱法(マルバーン社製ゼータサイザー3000HS)では、粒子径は350nmであった。
さらに、水銀圧入法により細孔分布を測定したところ、2〜20nmの細孔は検出されなかった。
[コロイド中空粒子Bの調製例]
上記したコロイド状炭酸カルシウムと同様にして製造したコロイド状炭酸カルシウム30gをイオン交換水500g中に分散させた後、29%アンモニア水87g、テトラエトキシシラン32gを添加し、24時間撹拌した。
その後、イオン交換水により洗浄してから、1M塩酸500mL中に投入し30分間撹拌して、炭酸カルシウムを溶解させた。続いて、イオン交換水により洗浄してから、105℃にて乾燥させて、シリカ中空粒子を得た。
得られた生成物を透過型電子顕微鏡及び走査型電子顕微鏡にて観察したところ、緻密なシリカ殻(殻厚8〜12nm)からなる60〜120nmの中空状粒子であった。さらに、エネルギー分散型X線検出器により化学分析を行ったところ、シリコン及び酸素のみが検出され、高純度のシリカ中空粒子であることが確認された。
また、動的光散乱法による平均粒子径は250nmであり、かつ水銀圧入法による細孔分布測定では2〜20nmの細孔が検出されなかったことから、緻密なシリカ殻からなり、かつ分散性がよいことも確認できた。
[紡錘状中空粒子の調製例]
工業用生石灰120gを、70℃に加温した水道水1.0L中に投入し、30分間撹拌して、生石灰を消化させた後、100メッシュフルイにて消化残渣を取り除いてから、適量の水道水を加え、固形分濃度74g/Lの消石灰スラリー2.0Lを調製した。
この消石灰スラリーの温度を30℃に調節してから、撹拌しながら炭酸ガスを0.35L/分の速度で導入し、炭酸化反応を開始し、スラリーのpHが7に低下した時点で炭酸ガスの導入を終了させた。
得られた炭酸カルシウムを、走査型電子顕微鏡にて観察したところ、長径1.5〜2.0μmの紡錘状炭酸カルシウムであることを確認した。
この紡錘状炭酸カルシウムのスラリーを遠心脱水機にて含水量65重量%の含水ケーキとした後、この含水ケーキ22gを450gのエタノール中に投入し、1分間超音波照射して、エタノール中に炭酸カルシウムを分散させた。
そこに、28%アンモニア水21g、テトラエトシキシラン7.5gを添加(テトラエトシシラン/エタノールの体積比0.01、アンモニア水に含有されるNH3はテトラエトキシシラン1モルに対して9.3モル、水はテトラエトキシシラン1モルに対して30モル)し、12時間撹拌を続け、シリカによりコートされた複合体を調製した。
この調製物を透過型電子顕微鏡で観察したところ、紡錘状炭酸カルシウムの表面に、厚さ18〜22nmのシリカ殻が確認された。
続いて、シリカによりコートされた炭酸カルシウムのスラリーを吸引ろ過にて脱液、エタノール1200mLによる洗浄、及び水1200mLによる洗浄を行った後、再び水800mL中に分散させた。
このスラリーに2.5モル/Lの塩酸を少量づつ添加すると核材の炭酸カルシウムは発泡しながらが溶解した。pHが5まで低下したところで塩酸の添加を終了した。
得られた生成物を透過型電子顕微鏡にて観察したところ、短径が0.2〜0.7μm、長径が1.5〜2.0μmの紡錘状の形状をしたシリカ中空微粒子を確認した。
また、動的光散乱法による平均粒子径は2.7μmであり、かつ水銀圧入法による細孔分布測定では2〜20nmの細孔が検出されなかった。
[球状中空粒子の調製例]
水道水2.0L中にグリシン120gを溶解した水溶液に、工業用消石灰150gを懸濁させ、このスラリーの温度を20℃に調節し、撹拌しながら炭酸ガスを1.5L/分の速度で導入して、炭酸化反応を行い、スラリーのpHが7に達した時点で炭酸ガスの導入を終了させた。
得られた生成物を、走査型電子顕微鏡にて観察したところ、径0.5〜2.0μmの球状炭酸カルシウムであり、粉末X線回折の結果、バテライト型炭酸カルシウムであることが確認された。
SiO2濃度を18重量%に調整した3号ケイ酸ソーダ340gに、第1工程で調製したバテライト200gと水を加えて全量を1.2Lとし、得られた混合スラリーを撹拌しながら85℃まで加熱し、温度を85℃に保ちながら、この混合スラリーに5%硫酸溶液をpH8.0になるまで徐々に添加し、球状炭酸カルシウムの表面をシリカで被覆した。
スラリーの温度が常温になるまで静置し、撹拌しながら1Nの塩酸を徐々に添加し、pHが3.0になった時点で添加を終了し、このスラリーを吸引濾過し、水で洗浄して金属酸化物中空微粒子のスラリーを得た。
得られた生成物を透過型電子顕微鏡にて観察したところ、径が0.5〜2.0μmの球状の形態をしたシリカ中空微粒子であることを確認した。
また、動的光散乱法による平均粒子径は2.1μmであり、かつ水銀圧入法による細孔分布測定では2〜20nmの細孔が検出されなかった。
[ポリエチレンマスターバッチの製造例]
低密度ポリエチレン[LD−PE(MER=25)]を1790g、コロイド中空粒子Aを200g、脂肪酸系分散剤10gを高速回転ブレンド機(ミキサー)にて撹拌混合し、30m/m二軸押出し機で溶融混練後、押出し温度170〜200℃でペレットを作製した。吐出状態は安定しており形状の整った透明性の高いペレットが得られた。
[ポリエステル組成物の製造例]
酸成分としてテレフタル酸、グリコール成分としてエチレングリコールを用い、エチレングリコール中にコロイド中空粒子Bを固形分量で0.3重量%を加えて常法により重縮合し、得られた樹脂を吐出、チップ化し、固有粘度0.62のコロイド中空粒子を含有したポリエチレンテレフタレートチップを得た。
こうして得られたチップを常法により乾燥し、ベント式2軸溶融混練押し出し機に供給した。
その樹脂が溶融状態となったところで、ベント式2軸溶融混練押し出し機のベント孔を10Torrの真空度に保ちつつ、組成物の温度が280℃となるように保持しつつ溶融押し出しを行い、コロイド中空粒子Bを含有したポリエステル樹脂組成物のチップを得た。
このコロイド中空粒子Bを含有したポリエステル樹脂組成物のチップを、吐出量26g/分、紡速1200m/分と設定して75デニール/24フィラメントの繊維繊度を有するように紡出し、該紡出糸を185℃の雰囲気下、3.3倍にて延伸して、コロイド中空粒子Bを含有したポリエステル繊維を得た。
[延伸ポリエステルフィルムの製造例]
実施例1と同様の方法で、球状中空粒子を固形分量で0.2重量%を加えて常法により重縮合し、得られた樹脂を吐出、チップ化し、固有粘度0.60の球状中空粒子を含有したポリエチレンテレフタレートチップを得た。
このポリエステルを常法により乾燥、押し出しをして未延伸シートとし、125℃で縦方向に5.0倍に、引き続いて115℃で横方向に3.8倍に延伸した。
さらに210℃で10秒間の熱処理を行って厚さ15μmの断熱性2軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
[ポリエチレンテレフタレートチップの製造例]
実施例1と同様の方法で、紡錘状中空粒子Aを固形分量で0.5重量%を加えて常法により重縮合し、得られた樹脂を吐出、チップ化し、固有粘度0.68の紡錘状中空粒子を含有したポリエチレンテレフタレートチップを得た。
このチップは断熱性の優れたコンパウンドとして、各種の成形体への使用が可能である。
[水系塗料組成物の製造例]
実施例4で製造したポリエステル樹脂組成物のチップを15部、テトラヒドロフラン85部をフラスコに入れ、45℃にて撹拌し樹脂を溶解した。この中に水135部と所定量のトリエチルアミンを加え100℃まで加熱して、ポリエステルからなる水系塗料組成物を作製した。

Claims (8)

  1. 金属酸化物の殻からなる中空粒子を含有することを特徴とする樹脂組成物。
  2. 中空粒子の透過型電子顕微鏡法による平均一次粒子径が20nm〜1μm、動的光散乱法による平均粒子径が20nm〜3μmである請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 中空粒子の金属酸化物殻に、水銀圧入法により測定される細孔分布において2〜20nmの細孔が検出されないことを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. 中空粒子が炭酸塩表面に金属酸化物を製膜し、その後該炭酸塩を酸により溶解させることにより製造されたものである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  5. 金属酸化物が、酸化ケイ素(シリカ)又は酸化チタンであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  6. 樹脂組成物がポリエステル系樹脂であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  7. テレフタル酸とエチレングリコールとの重合前又は重合終了までに中空粒子を添加し得られた請求項6に記載のポリエステル系樹脂組成物。
  8. 請求項1ないし7に記載の樹脂組成物を成形してなる繊維又はフィルム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011058121A (ja) * 2009-09-10 2011-03-24 Teijin Fibers Ltd ポリ乳酸繊維
JP2013060320A (ja) * 2011-09-13 2013-04-04 Concurrent Corp 球状炭酸カルシウム微粒子の製造方法
JP2018123278A (ja) * 2017-02-03 2018-08-09 株式会社Uacj アルミニウム用熱間圧延油、アルミニウム用熱間圧延クーラント及びアルミニウム圧延板の製造方法

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