JP2008190653A - サスペンション用の流体封入式コンプライアンスブッシュ - Google Patents

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幸男 林
Takashi Kume
廷志 久米
Takashi Shiomi
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Abstract

【課題】フラッタやブレーキ振動等の通常の大きさの振動入力時には、高減衰特性に基づき所期の防振効果が安定して得られつつ、車輪への衝撃荷重の入力に伴いブッシュが撓み始める初期の段階では、低ばね特性が得られることによって、問題となる路面振動が抑えられて、乗り心地が有利に向上され得る、新規な構造のサスペンション用の流体封入式コンプライアンスブッシュを提供する。
【解決手段】第一の流体室78と第二の流体室80を相互に連通する短絡流路84には片方向弁手段56,74が設けられており、車輪への車両前後方向の一方から他方に向かう衝撃荷重の入力時に短絡流路84に生ぜしめられる第一の流体室78から第二の流体室80に向かう流体流動方向に比して第二の流体室80から第一の流体室78に向かう流体流動方向でより大きな流動抵抗が片方向弁手段56,74によって発揮されるようにした。
【選択図】図1

Description

本発明は、車両のサスペンションアームをボデー側に防振連結して、車輪からの車両前後方向の入力荷重が軸直角方向に及ぼされるサスペンション用のコンプライアンスブッシュに係り、特に、内部に封入された非圧縮性流体の流動作用に基づいて防振効果を得るようにした流体封入式コンプライアンスブッシュに関するものである。
一般に、自動車等の車両のサスペンション機構は、車輪を回転可能に支持するキャリアを、車両ボデーに対して、サスペンションアームで連結せしめた構造とされている。かかるサスペンション機構の一つとして、サスペンションアームのボデー側への取付部位に装着されて、車輪からの車両前後方向の入力荷重が軸直角方向に及ぼされるコンプライアンスブッシュを備えたサスペンション機構が知られている。例えば、特許文献1(特開2002−337527号公報)や特許文献2(特開2004−203143号公報)に示されているものが、それである。
このコンプライアンスブッシュは、インナ軸部材とその外周側に離隔配置されたアウタ筒部材が本体ゴム弾性体で相互に弾性連結された構造を呈しており、サスペンションアームの車両ボデー側への取付部位において、車両前後方向から車輪に入力される荷重がブッシュの中心軸と略直交する方向に及ぼされるように装着されて、そのコンプライアンスによって、車輪からボデーに伝わる荷重を低減するようになっている。
ところで、路面状態や車両特性等の走行条件に応じて、車両前後方向から車輪に及ぼされる荷重は各種存在するため、上述のコンプライアンスブッシュには、複数の防振特性が要求される場合が多い。そのなかで、特に要求される防振特性としては、以下の三つがある。
(1)フラッタ、ブレーキ振動等の通常走行時に問題となる振動の低減
(2)路面凹凸によって及ぼされるノイズや振動の低減
(3)突起の乗り越え等に際して及ぼされる衝撃的荷重に対して問題となるハーシュネス等の大きな振動伝達の抑制と操縦安定性の確保
ここにおいて、上記(1)の振動低減には、コンプライアンスブッシュに対して高減衰特性を付与することが有効である。そのために、従来では、高減衰特性のゴムを採用する他、より高度な減衰特性を得るために、液封構造の適用も検討されている。例えば、特許文献3(特開平05−240293号公報)や特許文献4(特開2006−2857号公報)に示されているものがあり、本体ゴム弾性体を除くインナ軸部材とアウタ筒部材の対向面間において、それぞれ非圧縮性流体が封入されて、振動入力時に相対的な圧力変動が生ぜしめられる一対の流体室がインナ軸部材を挟んだ軸直角方向一方向で対向位置せしめられるように形成されていると共に、それら一対の流体室間にオリフィス通路が形成されて、両室がオリフィス通路を通じて相互に連通せしめられている。このような構造によれば、振動入力に伴う一対の流体室間での相対的な圧力変動に基づいて、オリフィス通路を通じての流体流動が生ぜしめられることとなり、かかる流体の共振作用等の流動作用に基づいて高減衰効果を得ることが出来る。
ところが、本発明者が検討したところ、液封構造のコンプライアンスブッシュを採用した場合には、上記(2)の路面凹凸に起因する振動の防振が十分に得られ難いことに加えて、上記(3)のハーシュネス等に対する防振性能も十分に得られ難く、操縦安定性にも悪影響が及ぼされるおそれのあることが明らかとなった。
すなわち、路面凹凸に起因する振動やハーシュネス等の衝撃的荷重に対しては、特に路面凹凸による微振動やハーシュネスによる荷重入力初期の段階において、低ばね特性に基づく衝撃吸収による振動絶縁効果が有効であるが、上述の如き、上記(1)の振動低減を目的とした高減衰化は、低ばね特性の実現に反するものであって、高減衰ゴムの採用や流体封入構造の採用は、上記(2)の路面凹凸振動や上記(3)のハーシュネス等に対する防振特性に反することとなるのである。
それだけでなく、本発明者の検討結果によれば、上記(3)のハーシュネス等に対する防振特性の向上には、単に、低ばね特性を付与するだけでは操縦安定性が低下するおそれがあり、有効でないことが明らかとなったのである。即ち、路面の大きな段差などによって車輪に対して例えば前方から後方に向かう衝撃荷重が入力されると、車輪が、前後方向の外的荷重が及ぼされていないセンターの位置から後方に大きく変位するが、その後には、コンプライアンスブッシュのゴム弾性体が大きく撓むことに起因して、かかるゴム弾性体の弾性に基づいて、サスペンションアームを介して車輪に反作用的な大きな荷重が後方から前方に向かって及ぼされる。その結果、一旦後方に変位した車輪が、その後、センターの位置を超えて前方に変位する、所謂揺れ戻しという現象が起こりやすく、この現象が、走行に悪影響を及ぼすおそれがあるのである。
このように、コンプライアンスブッシュには、上記(1)と上記(2)、(3)との防振特性を両立して達成するためには、高減衰特性と低動ばね特性という相反する特性を実現するだけでなく、ハーシュネスに起因する揺れ戻しを抑えることも重要であり、非常に高度且つ複雑な特性が要求されているのである。ここにおいて、従来の、単に高減衰効果を実現するための流体封入式のコンプライアンスブッシュでは、これらの要求特性を、未だ、十分に実現し得るものではなかったのである。
特開2002−337527号公報 特開2004−203143号公報 特開平05−240293号公報 特開2006−2857号公報
ここにおいて、本発明は上述の如き事情を背景として為されたものであり、その解決課題とするところは、車輪からの通常の振動入力時に、高減衰特性が得られることで所期の防振効果が有利に発揮され得ると共に、車輪への衝撃荷重の入力に伴いブッシュが撓み始める初期の段階で、低ばね特性が得られることによって、問題となる路面振動が抑えられて、乗り心地が有利に向上され得る、新規な構造のサスペンション用の流体封入式コンプライアンスブッシュを提供することにある。
以下、前述の課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
すなわち、本発明の特徴とするところは、軸部材と軸部材の外周側に所定距離を隔てて配された外筒部材が本体ゴム弾性体で相互に弾性連結されており、サスペンション機構におけるサスペンションアームの車両ボデー側への取付部位に装着されて、車輪からの車両前後方向の入力荷重が軸直角方向に及ぼされるサスペンション用の流体封入式コンプライアンスブッシュにおいて、軸部材を挟んだ軸直角方向一方向で対向位置して、振動入力時に相対的な圧力変動が生ぜしめられる第一の流体室と第二の流体室が形成されており、それら第一の流体室と第二の流体室に非圧縮性流体が封入されていると共に、第一の流体室と第二の流体室を相互に連通するオリフィス通路が形成されている一方、第一の流体室と第二の流体室の間に短絡流路が設けられていると共に、短絡流路には片方向弁手段が設けられており、車輪への車両前後方向の一方から他方に向かう衝撃荷重の入力時において該短絡流路に生ぜしめられる第一の流体室から第二の流体室に向かう流体流動方向に比して第二の流体室から第一の流体室に向かう流体流動方向でより大きな流動抵抗が片方向弁手段によって発揮されるようにしたサスペンション用の流体封入式コンプライアンスブッシュにある。
このような本発明に従う構造とされたサスペンション用の流体封入式コンプライアンスブッシュにおいては、車輪への車両前後方向の一方から他方に向かう衝撃荷重の入力時に、短絡流路を通じての第二の流体室から第一の流体室に向かう流体の流動抵抗が、片方向弁手段によって、第一の流体室から第二の流体室に向かう流体の流動抵抗に比して大きくされていることから、短絡流路を通じての第一の流体室から第二の流体室に向かう流体の流動が、比較的容易に許容される。これにより、衝撃的な荷重入力による第一の流体室の高圧状態に起因する高ばね化が抑えられて、ブッシュが撓み始める初期の段階で、衝撃荷重が低ばね特性に基づき低減されて、車輪からボデーに伝わる路面振動が有利に抑えられる。
一方、車輪への車両前後方向の他方から一方に向かう荷重の入力時には、短絡流路に生ぜしめられる第一の流体室から第二の流体室に向かう流体の流動抵抗および第二の流体室から第一の流体室に向かう流体の流動抵抗が、片方向弁手段で大きくされることから、比較的に高い減衰性能が得られる。即ち、前述の車輪への車両前後方向の一方から他方に向かう衝撃荷重がブッシュに入力されることで車輪に反作用的に及ぼされる他方から一方に向かう荷重に起因する変位が、高減衰特性に基づき抑えられることから、車輪が中央位置から他方に変位して再び中央位置に戻った後に該中央位置を超えて一方に変位する、所謂車輪の揺れ戻しが有利に抑制される。
しかも、例えばフラッタやブレーキ振動等の通常の大きさの振動入力時では、第一の流体室から第二の流体室に向かう圧力や第二の流体室から第一の流体室に向かう圧力が、衝撃荷重の入力時のそれらに比して小さい。しかも、第一の流体室と第二の流体室を連通するオリフィス通路は、常時連通状態にあることから、このオリフィス通路を防振すべきフラッタ等の振動にチューニングしておくことにより、振動入力に際してオリフィス通路を流動せしめられる流体の共振作用などの流動作用に基づいて、高減衰特性に基づく有効な防振効果を得ることができるのである。
それ故、本構造の流体封入式コンプライアンスブッシュによれば、前記(1)に記載のフラッタやブレーキ振動などに対しては、オリフィス通路に基づく高減衰特性による防振効果が有効に発揮されると共に、前記(2)に記載の路面凹凸振動や前記(3)に記載のハーシュネスなどに対しては、連通状態とされた短絡流路に基づく低動ばね特性による防振効果(衝撃吸収効果)が有効に発揮され、且つその後の揺れ戻しも、遮断状態とされた短絡流路に基づく高減衰特性によって抑えられることで、良好な操縦安定性も確保され得るのである。
なお、本発明において、短絡流路に生ぜしめられる第一の流体室から第二の流体室に向かう流体の流動抵抗や第二の流体室から第一の流体室に向かう流体の流動抵抗が片方向弁手段によって調節される際に、短絡流路が閉塞状態であるか否かは、特に限定されるものでない。この片方向弁手段は、例えば、後述のように短絡流路を閉塞せしめる弾性弁体と当接弁座を含んで構成されたり、或いは短絡流路を閉塞せずに、短絡流路上乃至は流路の延長線上に設けられる障壁のようなものを含んで構成されても良い。また、短絡流路は、後述するようにオリフィス通路と独立して形成されたり、或いはオリフィス通路によって形成されたり、オリフィス通路を部分的に利用して形成されたりすることも可能である。
また、本発明に係るサスペンション用の流体封入式コンプライアンスブッシュにおいては、片方向弁手段が、短絡流路における第一の流体室への開口縁部に設けられた当接弁座と当接弁座に対して予圧縮をもって当接される弾性弁体とを含んで構成されており、車輪への車両前後方向の一方から他方に向かう衝撃荷重の入力時に弾性弁体が弾性変形して短絡流路を開口せしめて、第一の流体室と第二の流体室が短絡流路を通じて相互に連通せしめられる一方、車輪への車両前後方向の他方から一方に向かう衝撃荷重の入力時や通常の振動入力の状態では弾性弁体が短絡流路の第一の流体室への開口縁部に予圧縮をもって当接されていることで短絡流路が閉塞状態とされている構造が、好適に採用される。このような構造によれば、短絡流路が閉塞状態とされることによって、第一の流体室から第二の流体室に乃至は第二の流体室から第一の流体室に向かう流体の流動抵抗がより確実に発揮されて、目的とする高減衰特性が一層有利に得られる。
また、本発明に係るサスペンション用の流体封入式コンプライアンスブッシュにおいては、短絡流路がオリフィス通路と独立して形成されている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、オリフィス通路や短絡流路の各設計自由度が大きくされて、より望ましい防振効果や異音抑制効果等が期待され得る。
さらに、上述の本発明に係るサスペンション用の流体封入式コンプライアンスブッシュにおいては、第一の流体室と第二の流体室の周方向一方の端部間に跨がってオリフィス通路が形成されている一方、第一の流体室と第二の流体室の周方向他方の端部間に跨がって短絡流路が形成されている構造が、好適に採用される。このような構造によれば、スペースの効率的な利用が図られて、各流路の設計自由度の更なる向上に加えて、コンプライアンスブッシュのコンパクト化が有利に図られ得る。
また、本発明に係るサスペンション用の流体封入式コンプライアンスブッシュにおいては、軸部材の外周側に中間スリーブが所定距離を隔てて配されて、軸部材と中間スリーブが本体ゴム弾性体で相互に連結されていると共に、中間スリーブに外筒部材が外嵌固定されて、中間スリーブに設けられた第一の窓部と第二の窓部を通じて外周面に開口するように形成された第一のポケット部と第二のポケット部が流体密に覆蓋されることにより、第一の流体室と第二の流体室が形成されている一方、中間スリーブの軸方向中間部分には第一の流体室と第二の流体室の間を周方向に延びる支持溝が形成されて、支持溝に対して周方向に延びるオリフィス部材が嵌め込まれると共に、外筒部材がオリフィス部材の外周面に外嵌装着されて、オリフィス部材の外周面に設けられたオリフィス溝が外筒部材で覆蓋されることでオリフィス通路が形成されている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、第一の流体室や第二の流体室、オリフィス通路等を備えてなる流体封入式のコンプライアンスブッシュが、比較的に簡単な構造で実現され得る。
さらに、上述の本発明に係るサスペンション用の流体封入式コンプライアンスブッシュにおいては、オリフィス部材の内周面に短絡溝が形成されており、オリフィス部材が中間スリーブの支持溝に嵌合固定されて短絡溝が支持溝の底部で覆蓋せしめられることで短絡流路が形成されていると共に、短絡流路の一方の端部が開口するオリフィス部材の周方向端縁部に当接弁座が設けられていると共に、中間スリーブにおける支持溝の底部には本体ゴム弾性体と一体形成された弾性弁体が突設されて、オリフィス部材の支持溝への固定に基づき、弾性弁体が弾性変形しつつオリフィス部材における当接弁座に密着状に当接されることによって、弾性弁体が短絡流路の一方の流体室への開口縁部に対して予圧縮をもって当接されている構造が、好適に採用される。このような構造によれば、片方向弁手段を構成する当接弁座がオリフィス部材に設けられていると共に、弾性弁体が本体ゴム弾性体と一体形成されていることによって、片方向弁手段を構成するための特別な部品の増加が抑えられるのであり、しかもオリフィス部材を中間スリーブに組み付けることで、特別な工程を伴うことなく弾性弁体に予圧縮を及ぼして、片方向弁手段による短絡流路の閉塞状態が実現されることから、製造工程の短縮化および低コスト化が有利に図られ得る。
なお、本構造において、弾性弁体が当接弁座に密着状に当接されるとは、弾性弁体と当接弁座の間に流体密性を損なう程度の大きな隙間が形成されることなく、ぴったりとくっつくことをいう。また、かかる当接状態では、車輪への前後方向の一方向から他方向に向かう衝撃荷重の入力時に第一の流体室から第二の流体室に向かう流体流動量が大きくされて弾性弁体が弾性変形することに基づき、弾性弁体が当接弁座から離隔することが可能とされている。
また、本発明に係るサスペンション用の流体封入式コンプライアンスブッシュにおいては、サスペンション機構を構成するサスペンションアームが、車輪側から車体側に向かって車両横方向に延びる横腕部と車両前後方向に延びる縦腕部を有しており、縦腕部の車体側への取付部分において、第一の流体室と第二の流体室が車両横方向で対向位置するようにして装着される構造が、採用されても良い。このような構造によれば、サスペンションアームの変位に伴い車輪からの車両前後方向の入力荷重が第一の流体室と第二の流体室の対向方向に効率良く及ぼされて、第一の流体室と第二の流体室の間の流体の流動作用が片方向弁手段により積極的に許容乃至は制限されることとなり、目的とする低ばね特性と高減衰特性の両立が一層高度に実現される。それ故、例えば自動車のフロントサスペンションのロアアーム等に好適に採用されて、問題となるフラッタやブレーキ振動等の抑制と衝撃荷重入力時の路面凹凸振動の抑制が、両立して高度に達成され得るのである。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について説明する。先ず、図1,2には、本発明の一実施形態としての自動車のサスペンション用の流体封入式コンプライアンスブッシュ10が示されている。流体封入式コンプライアンスブッシュ10は、軸部材としての内筒金具12と外筒部材としての外筒金具14が、互いに径方向に所定距離を隔てて位置せしめられていると共に、それらの間に介装された本体ゴム弾性体16で相互に弾性連結された構造とされている。
より詳細には、内筒金具12は、小径の円筒形状を有しており、例えばアルミニウム合金等で形成された剛性材とされている。内筒金具12の軸方向一方(図2中、左)の端部には、外フランジ状のフランジ状部18が一体形成されている。
また、内筒金具12には、ストッパ部材20が設けられている。ストッパ部材20は、略矩形ブロック形状を呈しており、硬質の合成樹脂材や金属材等を用いて形成されている。ストッパ部材20が、その中央が内筒金具12に挿通されるようにして内筒金具12の軸方向中央部分にインサート成形されて、該中央部分の外周面から径方向に突出するようにして、内筒金具12に固着されている。特に、ストッパ部材20の長手方向の一対の端部が内筒金具12から径方向一方向(図1中、上下)に大きく突出していると共に、かかる突出先端面が周方向に湾曲する湾曲面とされている。
ストッパ部材20を備えた内筒金具12の外周側には、径方向に所定距離を隔てて中間スリーブとしての金属スリーブ22が配設されている。金属スリーブ22は、大径の円筒形状を有しており、内筒金具12を全周に亘って取り囲むように配されている。また、金属スリーブ22の軸方向寸法が内筒金具12の軸方向寸法よりも小さくされており、内筒金具12の軸方向両端部が金属スリーブ22のそれよりも軸方向外方に突出せしめられている。
金属スリーブ22の軸直角方向一方向で対向位置せしめられた軸方向中央部分には、軸直角方向に矩形状に開口する第一窓部24と第二窓部26が貫通, 形成されている。本実施形態では、第一窓部24と第二窓部26の周方向長さが互いに略同じとされていて、それぞれ、金属スリーブ22の全周に対して所定の長さ(例えば、略1/6〜2/5の周方向長さ)で周方向に広がるように形成されている。これら第一窓部24と第二窓部26の対向方向が、ストッパ部材20の内筒金具12から軸直角方向両側に大きく突出する先端部分の突出方向と同じとされている。
金属スリーブ22における第一窓部24と第二窓部26の周方向間には、第一連結板部28と第二連結板部30が設けられている。第一連結板部28や第二連結板部30は、径方向外方に向かって凹状に開口する断面で周方向に所定の長さで延びており、それらの周方向長さが互いに略同じとされている。換言すると、金属スリーブ22では、互いに軸方向に所定距離を隔てて同一軸上に配された大径の円筒形状を有する一対のリング部32,32が、それらの軸方向対向面間に跨って延びる第一連結板部28と第二連結板部30によって一体的に連結された構造を呈しており、リング部32,32の軸方向対向面間の開口が第一及び第二連結板部28,30で仕切られることによって、リング部32,32の軸方向対向面間における第一及び第二連結板部28,30の一対の周方向間に、それぞれ第一窓部24と第二窓部26が形成されているのである。また、第一連結板部28や第二連結板部30の外周面には、金属スリーブ22の径方向外方に凹状に開口する断面形状をもって周方向に延びる、支持溝としての第一支持溝34および第二支持溝36が形成されている。
これら内筒金具12と金属スリーブ22の間には、本体ゴム弾性体16が配設されている。本体ゴム弾性体16は、厚肉の略円筒形状を有しており、外周面が金属スリーブ22の内周面、即ち一対のリング部32,32の内周面や第一及び第二連結板部28,30の内周面に加硫接着されていると共に、その内周面が内筒金具12の外周面およびストッパ部材20の外周面に加硫接着されている。その結果、内筒金具12と金属スリーブ22が本体ゴム弾性体16で弾性連結されて、図3,4にも示されているように、本体ゴム弾性体16が内筒金具12やストッパ部材20、金属スリーブ22を備えた一体加硫成形品38として形成されている。
また、金属スリーブ22における第一及び第二連結板部28,30の外周面等には、本体ゴム弾性体16と一体形成された薄肉のシールゴム層40が被着されている。更に、ストッパ部材20の径方向外方に大きく突出する先端面には、本体ゴム弾性体16と一体形成された緩衝ゴム層42が被着されている。
本体ゴム弾性体16の内筒金具12を挟んだ径方向一方向(図1中、上下)には、径方向外方に略矩形状に開口する第一ポケット部44と第二ポケット部46がそれぞれ形成されており、各ポケット部44,46の開口部分が金属スリーブ22の第一窓部24および第二窓部26を通じて外周面に開口している。また、緩衝ゴム層42を備えたストッパ部材20の各突出先端部分が、各ポケット部44,46の底部から開口部分に至らない寸法で、径方向外方に向かって突設されている。
本体ゴム弾性体16において、ストッパ部材20の内筒金具12から突出する一対の先端部分の該突出方向に直交する径方向一方向で内筒金具12を挟んだ側には、すぐり部48が形成されている。すぐり部48は、本体ゴム弾性体16を軸方向に貫通して周方向に所定の長さで延びている。
また、金属スリーブ22の第一連結板部28と第二連結板部30の外周面、即ち第一支持溝34と第二支持溝36上には、それぞれ一対の支持ゴム層50,50が突設されている。支持ゴム層50は、本体ゴム弾性体16と一体形成されていると共に、各支持溝34,36の幅方向両側の壁部から幅方向内方に向かって突出しており、全体として略矩形ブロック形状を呈している。
特に、第一連結板部28に突設された一対の支持ゴム層50,50において、周方向一方の第二窓部26の側(図1中、上方に示される周方向右回りの側)に偏倚した位置には、矩形状を呈する一対の当接突部52,52が、幅方向内側に突出するようにして一体形成されている。即ち、一対の当接突部52,52は支持ゴム層50よりも幅方向内側に突出せしめられていると共に、幅方向に所定距離を隔てて対向位置せしめられている。また、当接突部52の周方向一方の端部(図4中、上方に示される端部)が、第二窓部26の開口縁部と接する第一連結板部28の周方向一方の端部よりも周方向内側に位置せしめられていると共に、当接突部52の周方向他方の端部(図4中、下方に示される端部)が、第一連結板部28の周方向の略中央部分に位置せしめられている。また、各支持ゴム層50の周方向中央部分には、幅方向内側に向かって矩形凹状に開口する凹所が設けられており、各凹所の周方向一方の端部が各当接突部52の周方向他方の端部と接している。これら一対の凹所と一対の当接突部52,52の周方向他方の端部が協働して、第一支持溝34の底部から径方向外方に向かって矩形凹状に開口する嵌合凹所54が形成されている。
さらに、第一連結板部28における一対の当接突部52,52の対向面間には、弾性弁体としてのゴム弁56が突設されている。ゴム弁56は、第一連結板部28の底部の外周面、即ち第一支持溝34の底面から径方向外方に突出する略矩形ブロック形状を呈していて、本体ゴム弾性体16と一体形成されている。ゴム弁56は、一対の当接突部52,52の対向面間の略中央部分に位置せしめられており、各当接突部52と幅方向に所定の距離を隔てて対向位置せしめられている。また、ゴム弁56の周方向一方(図4中、上方)の端面が、第一連結板部28に突設される基端側から突出方向の先端側に行くに従って周方向他方の側に傾斜する傾斜面とされている。かかるゴム弁56の周方向一方の端部が、第二窓部26の開口縁部と接する第一連結板部28の周方向一方の端部よりも周方向内側に位置せしめられている。
特に本実施形態では、ゴム弁56の周方向他方(図4中、下方)の端部が、各支持ゴム層50に突設された当接突部52の周方向他方の端部よりも周方向他方の側に僅かに延び出していて、嵌合凹所54内に位置せしめられている。
このような内筒金具12と金属スリーブ22を備えた本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品38に対して、第一ポケット部44と第二ポケット部46の周方向間を跨ぐようにしてオリフィス部材58が組み付けられている。本実施形態に係るオリフィス部材58は、第一のオリフィス形成部材60と第二のオリフィス形成部材62が周方向で相互に組み合わされることにより構成されて、全体として周方向に一周弱の長さで延びている。
これら第一のオリフィス形成部材60や第二のオリフィス形成部材62は、図5,6にも示されているように、周方向に半周弱の長さで延びる円弧板形状を呈しており、合成樹脂材や金属材等の硬質材を用いて形成されている。オリフィス形成部材60,62の周方向中間部分の幅寸法が、周方向両側部分の幅寸法に比して大きくされている。また、第一のオリフィス形成部材60と第二のオリフィス形成部材62の各幅方向中央部分の外周面には、略一定の谷状断面で周方向に所定の長さで連続して延びる第一のオリフィス溝64と第二のオリフィス溝66が、それぞれ形成されている。各オリフィス溝64,66の周方向一方の端部(図5,6中、上方に示される周方向右回りの端部)が、各オリフィス形成部材60,62の周方向一方の端面に開口している。
第一のオリフィス形成部材60と第二のオリフィス形成部材62の各周方向他方(図5,6中、下方)の側に偏倚した部位には、軸方向視略矩形状の断面で厚さ方向に貫通する第一連通窓68と第二連通窓70が形成されている。これら第一連通窓68と第二連通窓70に対して第一のオリフィス溝64と第二のオリフィス溝66の各周方向他方の端部が接続されている。特に本実施形態では、第二連通窓70の周方向他方の端縁部が第二のオリフィス形成部材62の周方向他方の端部に開口していることによって、第二連通窓70が切り欠き窓状を呈している。
さらに、第一のオリフィス形成部材60の内周面において、周方向他方の端部と第一連通窓68の周方向他方の端縁部の間を周方向に延びて両端に開口する、短絡溝72が形成されている。また、第一のオリフィス形成部材60では、短絡溝72を備えた部位の幅寸法が、第一連通窓68を備えた部位の幅寸法等に比して大きくされている。
図7,8にも示されているように、第一及び第二のオリフィス形成部材60,62の各周方向中間部分が、径方向外方から本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品38における第一及び第二ポケット部44,46に嵌め込まれて、ストッパ部材20の各突出先端部分と径方向に所定距離を隔てて対向位置せしめられている。
また、第一のオリフィス形成部材60の周方向一方の端部(図1中、周方向左回りの端部)と第二のオリフィス形成部材62の周方向一方の端部(図1中、周方向右回りの端部)が周方向で互いに重ね合わせられていると共に、金属スリーブ22における第二連結板部30の第二支持溝36に嵌め込まれて、該第二支持溝36に突設された一対の支持ゴム層50,50により幅方向に弾性的に挟持せしめられている。また、第一のオリフィス溝64と第二のオリフィス溝66の各周方向一方の端部が相互に接続されている。
さらに、第一のオリフィス形成部材60の周方向他方の端部(図1中、周方向右回りの端部)が、金属スリーブ22における第一連結板部28の第一支持溝34に嵌め込まれて、第一連結板部28に突設された一対の支持ゴム層50,50の各当接突部52の周方向他方(図8中、下方)の端部に当接されていると共に、ゴム弁56を挟んで周方向一方の側に位置せしめられた嵌合凹所54に嵌め込まれて、該嵌合凹所54を構成する一対の支持ゴム層50,50によって幅方向に弾性的に挟持せしめられている。また、第二のオリフィス形成部材62の周方向他方の端部(図1中、周方向左回りの端部)が、第一支持溝34に嵌め込まれて、一対の支持ゴム層50,50における各当接突部52の周方向一方(図8中、上方)の端部に当接されていると共に、ゴム弁56を挟んで周方向他方の側に位置せしめられた一対の支持ゴム層50,50により幅方向に弾性的に挟持せしめられている。これにより、第一及び第二のオリフィス形成部材60,62からなるオリフィス部材58が、本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品38に対して固定的に組み付けられている。
特に本実施形態では、第一のオリフィス形成部材60の周方向他方の端部が金属スリーブ22の嵌合凹所54に嵌め込まれることに伴い、嵌合凹所54内に突出せしめられたゴム弁56の周方向他方の端部が、第一のオリフィス形成部材60の短絡溝72の開口縁部の周りの周方向端部に当接されて、該ゴム弁56が、第一連結板部28において第一窓部24から第二窓部26に向かって押し上げられるようにして弾性変形せしめられる。これにより、ゴム弁56に対して第一窓部24から第二窓部26に向かう方向に予圧縮が及ぼされつつ、ゴム弁56が、その弾性変形作用に基づき第一のオリフィス形成部材60の短絡溝72の開口縁部の周りの周方向端部に密着状に当接されている。このことからも明らかなように、本実施形態では、ゴム弁56に予圧縮が及ぼされつつ、第一のオリフィス形成部材60の短絡溝72の開口縁部の周りの周方向端部が当接されることによって、短絡溝72の一方の開口部分が流体密に覆蓋されていると共に、かかる周方向端部によってゴム弁56を当接する当接弁座74が構成されている。
オリフィス部材58が組み付けられた本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品38には、外筒金具14が組み付けられている。外筒金具14は、大径の略円筒形状を呈しており、例えばアルミニウム合金等で形成された剛性材とされている。外筒金具14の軸方向寸法は、金属スリーブ22の軸方向寸法と略同じとされている。外筒金具14の内周面には、略全体に亘って略一定の厚さ寸法で広がる薄肉のシールゴム層76が被着形成されている。而して、本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品38に対して外筒金具14が外挿されて、外筒金具14に八方絞り等の縮径加工が施されている。
これにより、外筒金具14が、シールゴム層76を介して金属スリーブ22に外嵌固定され、内筒金具12の径方向外方において略同心円状に位置せしめられている。特に、シールゴム層76に一体形成された複数条のシールリップが外筒金具14と金属スリーブ22の各リング部32の間に圧縮変形して介装されていることに基づき、外筒金具14が一対のリング部32,32に流体密に固着されていると共に、第一ポケット部44の開口部分と第二ポケット部46の開口部分が、外筒金具14により流体密に覆蓋されている。
第一ポケット部44と外筒金具14で流体密に画設された空間と第二ポケット部46と外筒金具14で流体密に画設された空間には、それぞれ壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されて、本体ゴム弾性体16の弾性変形に基づいて圧力変動が生ぜしめられる第一の流体室78と第二の流体室80が形成されている。これら第一及び第二の流体室78,80には、非圧縮性流体が封入されている。かかる非圧縮性流体としては、水やアルキレングリコール,ポリアルキレングリコール,シリコーン油等が採用されるが、後述する流体の共振作用等の流動作用に基づく防振効果を有利に得るために、粘度が0.1Pa・s以下の低粘性流体が好適に採用される。要するに、本実施形態に係るコンプライアンスブッシュ10の内部には、非圧縮性流体が充填された第一の流体室78と第二の流体室80が形成されており、それら流体室78,80が内筒金具12を挟んだ径方向一方向で相互に対向位置せしめられるように形成されている。なお、第一及び第二の流体室78,80への非圧縮性流体の封入は、例えば非圧縮性流体中で、オリフィス部材58が組付けられた本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品38の組付け体に外筒金具14が組み付けられることによって、有利に実現される。
また、オリフィス部材58の外周面に外筒金具14が外嵌装着されて、オリフィス部材58の外周面と外筒金具14の内周面がシールゴム層76を挟んで流体密に重ね合わせられていることによって、周方向で互いに接続された第一及び第二のオリフィス溝64,66の開口がシールゴム層76を挟んで外筒金具14により流体密に覆蓋されている。これに基づいて、金属スリーブ22と外筒金具14の間には、周方向に所定の長さ(本実施形態では一周弱の長さ)でトンネル状に延びるオリフィス通路82が形成されている。オリフィス通路82の一方の端部が、第一のオリフィス形成部材60に形成された第一連通窓68を通じて第一の流体室78に接続されていると共に、オリフィス通路82の他方の端部が、第二のオリフィス形成部材62に形成された第二連通窓70を通じて第二の流体室80に接続されている。それによって、第一の流体室78と第二の流体室80がオリフィス通路82を通じて相互に連通せしめられており、振動入力時の両室78,80の相対的な圧力変動に基づいて、オリフィス通路82を通じての流体の流動量が確保されて、該流体の共振作用等の流動作用に基づいて防振効果が発揮されるようになっている。
振動入力時に第一の流体室78と第二の流体室80の間に生ぜしめられる相対的な圧力変動の差に基づきオリフィス通路82を通じて流動せしめられる流体の共振周波数が、例えば10〜20Hz程度のフラッタやブレーキ振動等の防振すべき振動に対して流体の共振作用等に基づく防振効果(高減衰特性)が有利に発揮されるようにチューニングされている。オリフィス通路82のチューニングは、例えば、第一の流体室78や第二の流体室80の各壁ばね剛性(単位容積だけ変化させるのに必要な圧力変化量に対応する特性値)等を考慮しつつ、オリフィス通路82の通路長さと通路断面積を調節することによって行うことが可能であり、一般に、オリフィス通路82を通じて伝達される圧力変動の位相が変化して略共振状態となる周波数を、当該オリフィス通路82のチューニング周波数として把握することが出来る。
また、第一のオリフィス形成部材60が金属スリーブ22と外筒金具14の径方向間に挟圧配置されて、第一のオリフィス形成部材60の周方向他方の端部の内周面が第一連結板部28に被着されたシールゴム層40を介して第一連結板部28の外周面に流体密に重ね合わせられていることによって、第一のオリフィス形成部材60の内周面に形成された短絡溝72が第一連結板部28で流体密に覆蓋されて、短絡流路84が形成されている。短絡流路84の一方の端部が、第一連通窓68を通じて第一の流体室78に接続されている。また、短絡流路84の他方の端部が、ゴム弁56により流体密に閉塞されていると共に、該ゴム弁56を挟んで第二連通窓70を通じて第二の流体室80に接続されている。即ち、本実施形態では、第一の流体室78と第二の流体室80の一方の周方向間にオリフィス通路82が形成されていると共に、第一の流体室78と第二の流体室80の他方の周方向間に短絡流路84が形成されており、オリフィス通路82と短絡流路84が互いに独立して形成されている。なお、短絡流路84とオリフィス通路82の通路断面積が略同じとされていると共に、短絡流路84の通路長さがオリフィス通路82の通路長さに比して十分に短くされていることによって、第一の流体室78と第二の流体室80間の流体の流通抵抗に関して、短絡流路84がオリフィス通路82よりも十分に小さくされている。
そこにおいて、ゴム弁56には第一の流体室78から第二の流体室80に向かう方向に予圧縮力が及ぼされて、第二の流体室80から第一の流体室78に向かう方向に弾性変形作用が及ぼされることで、ゴム弁56が第一のオリフィス形成部材60の当接弁座74に密着状に当接されている。特に、オリフィス通路82のチューニング周波数の通常の大きさの振動入力時における第一の流体室78と第二の流体室80の間の相対的な圧力差がゴム弁56に及ぼされても、ゴム弁56の弾性に基づきゴム弁56が第一のオリフィス形成部材60の当接弁座74に当接されるように、予圧縮力が設定されている。これにより、短絡流路84が閉塞状態となる。また、第二の流体室80から第一の流体室78に向かう流体の圧力がゴム弁56に及ぼされることで、ゴム弁56がより大きな変形作用をもって当接弁座74に当接されることとなり、短絡流路84の閉塞状態が一層確実になる。
一方、問題となるハーシュネス等の衝撃荷重が第二の流体室80から第一の流体室78に向かって入力されて、短絡流路84を通じて第一の流体室78から第二の流体室80に向かう方向に大きな流体流動が生ぜしめられる際には、予圧縮によるゴム弁56の弾性変形力に抗して、ゴム弁56が第一の流体室78から第二の流体室80に向かって弾性変形して、短絡流路84の閉塞状態が解除され、第一の流体室78と第二の流体室80が短絡流路84を通じて相互に連通せしめられるように、予圧縮力が設定されている。
すなわち、コンプライアンスブッシュ10の後述する自動車への装着状態下、車輪への車両前後方向の一方から他方に向かう衝撃荷重の入力時に、ゴム弁56が弾性変形して当接弁座74から離隔する程に第一の流体室78の圧力が大きくなって、ゴム弁56と当接弁座74が離隔した状態では、短絡流路84に生ぜしめられる第二の流体室80から第一の流体室78に向かう流体流動の抵抗が第一の流体室78から第二の流体室80に向かう流体流動の抵抗に比して大きくされる。その結果、短絡流路84を通じての第一の流体室78から第二の流体室80に向かう流体の流動が、これらゴム弁56と当接弁座74の離隔状態により有利に許容されて、第一の流体室78の圧力上昇が抑えられる。
また、車輪への車両前後方向の他方から一方に向かう衝撃荷重の入力時に、第二の流体室80の圧力が大きくなっても、予圧縮が及ぼされたゴム弁56が当接弁座74に対して第二の流体室80から第一の流体室78に向かう方向に弾性変形して当接されていることによって、短絡流路84の閉塞状態が維持されており、それに加えて第二の流体室80の大きな圧力(正圧)がゴム弁56に及ぼされることで、短絡流路84がより確実に閉塞されている。その結果、短絡流路84に生ぜしめられる第一の流体室78から第二の流体室80に向かう流体の流動抵抗と第二の流体室80から第一の流体室78に向かう流体の流動抵抗が、短絡流路84を閉塞せしめるゴム弁56と当接弁座74の当接状態によって、何れも大きくされて、第一及び第二の流体室78,80間における短絡流路84を通じての圧力漏れが抑えられる。
本実施形態に係る片方向弁手段がゴム弁56や当接弁座74を含んで構成されており、特に本構造の片方向弁手段によれば、第一の流体室78と第二の流体室80の間に生ぜしめられる相対的な圧力差がゴム弁56に及ぼされることで、ゴム弁56の当接弁座74への離隔又は当接による短絡流路84の開閉がより確実にされるのである。
上述の如き構造とされた自動車のサスペンション用の流体封入式コンプライアンスブッシュ10においては、例えば図9に示される如き自動車のフロントサスペンションに用いられるサスペンションアームとしてのL型のロアアーム86と車両ボデー88の間に装着されるようになっている。
ロアアーム86は、良く知られているように、平面視略L字状のアームとされており、車両外側(図9中、右側)に位置する外側端部90に図示しないボールジョイントが配設されて、キャリアを介して車輪に取り付けられるようになっている。また、車両内側(図9中、左側)において、車両前後方向(図9中、上下)に離隔して設けられた内側前方端部92と内側後方端部94には、それぞれロアアーム86を車両ボデー88に防振連結する防振ブッシュが取り付けられるようになっている。ロアアーム86において、外側端部90の中心と内側前方端部92の中心を通って車両の略左右方向(図9中、左右)に延びる横軸:l1上に延びる部位が、横腕部96とされていると共に、内側前方端部92の中心と内側後方端部94の中心を通って車両前後方向に延びる縦軸:l2上に延びる部位が、縦腕部98とされている。
ロアアーム86の内側前方端部92に配される防振ブッシュ100は、例えば、特許文献1(特開2002−337527号公報)に示されるロアアームの内側前方端部に配されるゴムブッシュと同様な構造とされており、インナ軸部材とその外周側に配されたアウタ筒部材が本体ゴム弾性体で相互に弾性連結された構造を呈している。防振ブッシュ100は、アウタ筒部材が内側前方端部92において車両前後方向に延びるアームアイに圧入等で固定されると共に、インナ軸部材が車両ボデーに固定されることによって、ブッシュ中心軸が車両前後方向に延びるようにして、ロアアーム86と車両ボデー88の間に配されて、ロアアーム86を車両ボデー88に防振連結するようになっている。
また、ロアアーム86の内側後方端部94と車両ボデー88の間に装着される防振ブッシュには、本実施形態に係る流体封入式コンプライアンスブッシュ10が採用される。即ち、車両前後方向に延びるロッド状の内側後方端部94が、コンプライアンスブッシュ10の内筒金具12のフランジ状部18側から内筒金具12に内挿されて、ボルト等で固定されている。また、コンプライアンスブッシュ10の外筒金具14に取付ブラケット102が固定されて、取付ブラケット102がボルト等を用いて車両ボデー88に固定されている。これにより、流体封入式コンプライアンスブッシュ10が、ブッシュ中心軸が車両前後方向に延びるようにして、ロアアーム86と車両ボデー88の間に配されて、ロアアーム86を車両ボデー88に防振連結するようになっていると共に、車輪からの車両前後方向の入力荷重が、ロアアーム86を介してブッシュ10の軸直角方向に及ぼされるようになっている。
流体封入式コンプライアンスブッシュ10のフロントサスペンション機構への装着下では、ブッシュ10における第一の流体室78と第二の流体室80の対向方向が車両左右方向に延びており、第一の流体室78が、車両前後方向に延びるブッシュ中心軸を挟んで車両内側(図9中、左側)に位置せしめられていると共に、第二の流体室80が、ブッシュ中心軸を挟んで車両外側(図9中、右側)に位置せしめられている。また、ブッシュ10における一対のすぐり部48,48が、車両の上下方向で対向位置せしめられている。
また、流体封入式コンプライアンスブッシュ10と防振ブッシュ100の静的なばね特性に関して、防振ブッシュ100が、流体封入式コンプライアンスブッシュ10に比して硬くされている。
このような流体封入式コンプライアンスブッシュ10を備えたサスペンション機構では、車両前後方向の荷重が車輪に及ぼされると、防振ブッシュ100と流体封入式コンプライアンスブッシュ10のコンプライアンスによって、車輪からロアアーム86を介して車両ボデー88に伝わる荷重が低減されるようになっている。特に、防振ブッシュ100の静ばねが流体封入式コンプライアンスブッシュ10の静ばねよりも硬くされていることにより、車輪からの前後方向の荷重がロアアーム86に入力されると、ロアアーム86の主たる変位が、防振ブッシュ100が固定される内側前方端部92を支点として、車輪側に固定される外側端部90と流体封入式コンプライアンスブッシュ10が固定される内側後方端部94が一体的に変位するようになっている。即ち、車輪への車両前方から後方に向かう荷重の入力により、外側端部90が前方から後方に向かって変位すると共に、内側後方端部94が車両外側から内側に向かって変位する。また、車輪への車両後方から前方に向かう荷重の入力により、外側端部90が後方から前方に向かって変位すると共に、内側後方端部94が車両内側から外側に向かって変位する。この内側後方端部94の車両左右方向への変位に伴い、内筒金具12が外筒金具14に対して車両左右方向に変位せしめられ、車両左右方向で対向位置せしめられた第一の流体室78の第二の流体室80の間に相対的な圧力変動が生ぜしめられる。
かかるサスペンション機構に対してオリフィス通路82のチューニング周波数域のフラッタやブレーキ振動等の振動が入力されると、第一の流体室78と第二の流体室80の間に相対的な圧力変動が有効に生ぜしめられて、オリフィス通路82を通じての流体の共振作用等により、かかる流体流動量が充分に確保される。また、当該振動入力による第一の流体室78と第二の流体室80の間の圧力変動の大きさでは、予圧縮によるゴム弁56と当接弁座74の当接状態が解除されないように設定されているため、短絡流路84の閉塞状態が保持されており、それによって、第一の流体室78と第二の流体室80の間の短絡流路84を通じての圧力漏れに起因してオリフィス通路82を通じての流体流動量が損なわれることもない。これにより、オリフィス通路82の共振作用等の流動作用に基づく高減衰特性によって、優れた防振効果が発揮され得る。
そこにおいて、自動車が段差乗り越えや凹凸の大きな路面等を走行して、車両前後方向の一方となる車両前方から車両前後方向の他方となる後方に向かって衝撃的な荷重が車輪に入力されるに際して、ロアアーム86の内側後方端部94が車両内側から外側に向かって急に乃至は過大に変位せしめられることにより、第一の流体室78に過大な圧力が惹起される。この圧力が短絡流路84を通じてゴム弁56に及ぼされて、予圧縮によるゴム弁56の弾性変形力に抗して、ゴム弁56が第一の流体室78から第二の流体室80に向かって弾性変形する程度にゴム弁56の予圧縮力が設定されているため、当該衝撃荷重の入力時には、短絡流路84の閉塞状態が解除されて、第一の流体室78と第二の流体室80が短絡流路84を通じて相互に連通せしめられることとなる。その結果、第一の流体室78の圧力が第二の流体室80の圧力に比して十分に大きくされていることで、短絡流路84に生ぜしめられる第一の流体室78から第二の流体室80に向かう流体流動方向に比して第二の流体室80から第一の流体室78に向かう流体流動方向でより大きな流動抵抗が発揮されており、短絡流路84を通じての第一の流体室78から第二の流体室80に向かう流体の流動が有利に許容される。これにより、衝撃的な荷重入力による第一の流体室78の高圧状態に起因する高動ばね化が抑えられて、ブッシュ10が撓み始める初期の段階で、衝撃荷重が低ばね特性に基づき低減されて、車輪からボデーに伝わる路面振動が有利に抑えられる。
また、ロアアーム86の車両外側から内側に向かって変位した内側後方端部94の中心が再び縦軸:l2上に位置せしめられるように変位するに際して、ロアアーム86の外側端部90が車両後方から前方に向かって変位することに伴い、車両後方から前方に向かう荷重が車輪に入力される。その際に、第二の流体室80から第一の流体室78に向かう流体の圧力がゴム弁56に及ぼされることで、予圧縮をもって当接弁座74に当接されていたゴム弁56に対して、更に当接弁座74に向かう方向に弾性変形作用が及ぼされることとなり、当接状態が一層確実になる。その結果、第二の流体室80の圧力が第一の流体室78の圧力に比して十分に大きくされた状態下、ゴム弁56と当接弁座74の当接状態が維持されていることによって、短絡流路84に生ぜしめられる第一の流体室78から第二の流体室80に向かう流体の流動抵抗と第二の流体室80から第一の流体室78に向かう流体の流動抵抗が何れも大きくされる。これにより、短絡流路84の閉塞状態が好適に保持されて、第一及び第二の流体室78,80間の短絡流路84を通じての圧力漏れが抑えられることから、比較的に高い減衰性能が得られる。従って、前述の車輪への前方から後方に向かう衝撃荷重が流体封入式コンプライアンスブッシュ10に入力されることで車輪に反作用的に及ぼす後方から前方に向かう荷重が、高減衰特性に基づき低減されて、車輪がキャリアに支持される中央位置から後方に変位して再び中央位置に戻った後に該中央位置を超えて前方に変位する、所謂車輪の揺れ戻しが有利に抑えられる。
それ故、本実施形態に係る流体封入式コンプライアンスブッシュ10がサスペンション機構に採用されることで、車輪への車両前方から後方に向かう衝撃荷重の入力時に、低ばね特性が発揮されることによって、高ばね状態での伝わり易さが問題となる路面振動が低減されて、優れた乗り心地が得られる。しかも、車輪への後方から前方に向かう荷重入力時やフラッタやブレーキ振動等の通常の振動入力時に、高減衰特性が発揮されることで、車輪の揺れ戻しが抑えられて優れた操安性が得られると共に、所期の防振効果が安定して得られるのである。
また、本実施形態では、第一及び第二の流体室78,80内にストッパ部材20や緩衝ゴム層42を含んでなるストッパ機構が突設されていることにより、第一の流体室78と第二の流体室80の対向方向に過大な荷重が入力されて、内筒金具12と外筒金具14がストッパ機構を介して互いに打ち当たることで、内外筒金具12,14の相対的な変位量が緩衝的に制限されるようになっている。それによって、前述の揺れ戻し等を一層有利に抑えることも可能となる。
以上、本発明の一実施形態について詳述してきたが、かかる実施形態における具体的な記載によって、本発明は、何等限定されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様で実施可能であり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
例えば、ゴム弁56や第一及び第二の流体室78,80、オリフィス通路82、短絡流路84における形状や大きさ、構造、数、配置等の形態は、例示の如きものに限定されるものでない。具体的に前記実施形態では、第一の流体室78と第二の流体室80が一組設けられて、これら第一の流体室78と第二の流体室80の間に短絡流路84とゴム弁56が一組設けられていたが、これら第一及び第二の流体室や短絡流路、ゴム弁は、それぞれ複数組設けても良い。
また、前記実施形態では、オリフィス通路82が第一の流体室78と第二の流体室80の一方の周方向間に設けられていると共に、短絡流路84が第一の流体室78と第二の流体室80の他方の周方向間に設けられていることによって、オリフィス通路82と短絡流路84が互いに独立して形成されていたが、例えば第一及び第二の流体室78,80間の一方の端部間にオリフィス通路と短絡流路を設けたり、更にオリフィス通路と短絡流路が互いの一部を利用して形成されることも可能である。
さらに、前記実施形態においては、車輪への車両前方から後方に向かう衝撃荷重の入力時において短絡流路84に生ぜしめられる第一の流体室78から第二の流体室80に向かう流体流動方向に比して反対に第二の流体室80から第一の流体室78に向かう流体流動方向でより大きな流動抵抗が発揮される際に、予圧縮が及ぼされるゴム弁56が当接弁座74に当接して、短絡流路84が閉塞状態とされていたが、片方向弁手段としてゴム弁56および当接弁座74を採用したり、短絡流路84を閉塞状態としたりすることは、必須の構成要件でない。具体的に例えば、第一のオリフィス形成部材の周方向端部に開口する短絡流路の開口縁部に対して周方向に所定距離を隔てて対向せしめられるように障壁を設けると共に、上述の流体流動方向の調整が出来るように、障壁を弾性部材で構成することも可能である。
加えて、前記実施形態では、本発明を自動車のフロントサスペンション機構のロアアームを車両ボデーに対して防振連結するコンプライアンスブッシュに適用したものの具体例について示したが、本発明は、自動車のリアサスペンション機構のトレーリングアームを車両ボデーに対して防振連結するコンプライアンスブッシュの他、自動車以外の各種車両のサスペンション用のコンプライアンスブッシュに対して、何れも、適用可能である。
また、前記実施形態では、車輪への車両前後方向の一方となる前方から車両前後方向の他方となる後方に向かう衝撃荷重の入力時に、短絡流路84の第二の流体室80側の開口部に設けられたゴム弁56が弾性変形して当接弁座74から離隔し、第一の流体室78と第二の流体室80が短絡流路84を通じて連通せしめられることによって、低ばね特性が得られる一方、車輪への車両後方から前方に向かう荷重入力時に、ゴム弁56が当接弁座74に当接されて、短絡流路84が閉塞せしめられていることで、高減衰特性が得られるようになっていた。しかしながら、かかる形態は、図9に示される如きフロントサスペンション機構への適用下での具体的な要求特性の一態様を示したに過ぎず、場合によっては、車輪への車両前後方向の一方となる後方から車両前後方向の他方となる前方に向かう衝撃荷重の入力時に、低ばね特性が要求される一方、車輪への車両前方から後方に向かう荷重入力時に、高減衰特性が要求されることも考えられる。そのような場合に、例えば、当接弁座およびゴム弁を短絡流路の第二の流体室側の開口部に代えて第一の流体室側の開口部に設けて、車輪への車両後方から前方に向かう衝撃荷重の入力時に、ゴム弁を弾性変形させて当接弁座から離隔せしめ、第一の流体室と第二の流体室を短絡流路を通じて連通させて、低ばね特性を得る一方、車輪への車両前方から後方に向かう荷重入力時に、ゴム弁を当接弁座に当接させて、短絡流路の閉塞状態を保持して、高減衰特性を得るようにすることも、本発明に係る流体封入式コンプライアンスブッシュの技術的範囲に含まれる。
上述の如き構造とされた流体封入式コンプライアンスブッシュ10の防振効果について確認するために実験をした。その結果を実施例として図10に示す。本実施例では、問題となる衝撃荷重に相当する、周波数が15Hzで、振幅が±2.0mmの荷重を第一の流体室78と第二の流体室80の対向方向に入力して、かかるコンプライアンスブッシュ10の荷重−撓み特性について測定した。荷重−撓み特性を示すグラフにおいて、荷重−撓み曲線内の面積が減衰特性の大きさに比例する。
また、第一の流体室78から第二の流体室80に向かう方向の荷重入力時には、荷重と撓みが最小の状態から最大の状態に至るように設定されており、その荷重−撓み特性が、図10中の荷重−撓み曲線における左斜め下方の端点から右斜め上方の端点に向かって上方に湾曲する線で示されるようにした。即ち、第一の流体室78から第二の流体室80に向かう方向の荷重入力時における減衰特性の大きさは、荷重−撓み曲線の長手方向の両端点を結ぶ直線と上方に湾曲してそれら両端点を結ぶ曲線内の面積:Aで表される。更に、第二の流体室80から第一の流体室78に向かう方向の荷重入力時には、荷重と撓みが最大の状態から最小の状態に至るように設定されており、その荷重−撓み特性が、図10中の荷重−撓み曲線における右斜め上方の端点から左斜め下方の端点に向かって下方に湾曲する線で示されるようにした。即ち、第二の流体室80から第一の流体室78に向かう方向の荷重入力時における減衰特性の大きさは、荷重−撓み曲線の長手方向の両端点を結ぶ直線と下方に湾曲してそれら両端点を結ぶ曲線内の面積:Bで表される。
また、短絡流路84を設けずに、第一の流体室と第二の流体室がオリフィス通路によってのみ相互に連通されるようにした、図示しない流体封入式コンプライアンスブッシュを用意し、実施例と同じ測定条件のもと、かかる流体封入式コンプライアンスブッシュの荷重−撓み特性を測定した。その結果を、図10中に比較例として一点鎖線により示す。比較例において、第一の流体室から第二の流体室に向かう方向の荷重入力時における減衰特性の大きさが、荷重−撓み曲線の長手方向の両端点を結ぶ直線と上方に湾曲してそれら両端点を結ぶ曲線内の面積:A’で表される一方、第二の流体室から第一の流体室に向かう方向の荷重入力時における減衰特性の大きさが、荷重−撓み曲線の長手方向の両端点を結ぶ直線と下方に湾曲してそれら両端点を結ぶ曲線内の面積:B’で表される。
図10に示される結果からも、比較例に係る流体封入式コンプライアンスブッシュの減衰特性に関してみると、面積:A’と面積:B’の大きさが略同じとされていることから、第一の流体室から第二の流体室に向かう方向の荷重入力時の減衰特性と第二の流体室から第一の流体室に向かう方向の荷重入力時の減衰特性とが、略同じであることが認められる。
これに対して、本実施例に係る流体封入式コンプライアンスブッシュ10の減衰特性では、面積:Aが面積:Bに比して小さくされていることにより、第一の流体室78から第二の流体室80に向かう方向の荷重入力時の減衰特性(ばね特性)が、第二の流体室80から第一の流体室78に向かう方向の荷重入力時の減衰特性に比して小さくされていることが認められる。
従って、本発明に従う構造とされた流体封入式コンプライアンスブッシュ10においては、第一の流体室78から第二の流体室80に向かう方向の荷重入力時に低ばね特性が得られる一方、第二の流体室80から第一の流体室78に向かう方向の荷重入力時に高減衰特性が得られることで、ばね特性乃至は減衰特性の調整が有利に為される。それ故、車輪への車両前後方向の一方から他方に向かう衝撃荷重の入力時にあって、低ばね特性が要求される一方、通常の振動入力時や車輪への車両前後方向の他方から一方に向かう衝撃荷重の入力時には高減衰特性が要求される、相反する特性を備えたサスペンション用のコンプライアンスブッシュに対して好適に採用され得るのである。
本発明の一実施形態としてのサスペンション用の流体封入式コンプライアンスブッシュの横断面図であって、図2のI−I断面に相当する図。 図1のII−II断面図。 同流体封入式コンプライアンスブッシュの一部を構成する内筒金具と金属スリーブを備えた本体ゴム弾性体の一体加硫成形品の斜視図。 同本体ゴム弾性体の一体加硫成形品の一側面図。 同流体封入式コンプライアンスブッシュの一部を構成する第一オリフィス部材の斜視図。 同流体封入式コンプライアンスブッシュの一部を構成する第二オリフィス部材の斜視図。 同本体ゴム弾性体の一体加硫成形品に対して同第一オリフィス部材と同第二オリフィス部材を組付けた状態の斜視図。 同本体ゴム弾性体の一体加硫成形品に対して同第一オリフィス部材と同第二オリフィス部材を組付けた状態の一側面図。 同流体封入式コンプライアンスブッシュを自動車のサスペンション機構に組付けた状態の平面説明図。 同流体封入式コンプライアンスブッシュをサスペンション機構に採用した状態での減衰効果について測定した結果を示す荷重−撓み線図。
符号の説明
10:流体封入式コンプライアンスブッシュ、12:内筒金具、14:外筒金具、16:本体ゴム弾性体、56:ゴム弁、74:当接弁座、78:第一の流体室、80:第二の流体室、82:オリフィス通路、84:短絡流路、86:ロアアーム、88:車両ボデー

Claims (7)

  1. 軸部材と該軸部材の外周側に所定距離を隔てて配された外筒部材が本体ゴム弾性体で相互に弾性連結されており、サスペンション機構におけるサスペンションアームの車両ボデー側への取付部位に装着されて、車輪からの車両前後方向の入力荷重が軸直角方向に及ぼされるサスペンション用の流体封入式コンプライアンスブッシュにおいて、
    前記軸部材を挟んだ軸直角方向一方向で対向位置して、振動入力時に相対的な圧力変動が生ぜしめられる第一の流体室と第二の流体室が形成されており、それら第一の流体室と第二の流体室に非圧縮性流体が封入されていると共に、該第一の流体室と該第二の流体室を相互に連通するオリフィス通路が形成されている一方、該第一の流体室と該第二の流体室の間に短絡流路が設けられていると共に、該短絡流路には片方向弁手段が設けられており、前記車輪への車両前後方向の一方から他方に向かう衝撃荷重の入力時において該短絡流路に生ぜしめられる該第一の流体室から該第二の流体室に向かう流体流動方向に比して該第二の流体室から該第一の流体室に向かう流体流動方向でより大きな流動抵抗が該片方向弁手段によって発揮されるようにしたことを特徴とするサスペンション用の流体封入式コンプライアンスブッシュ。
  2. 前記片方向弁手段が、前記短絡流路における前記第一の流体室への開口縁部に設けられた当接弁座と該当接弁座に対して予圧縮をもって当接される弾性弁体とを含んで構成されており、前記車輪への車両前後方向の一方から他方に向かう衝撃荷重の入力時に該弾性弁体が弾性変形して該短絡流路を開口せしめて、該第一の流体室と該第二の流体室が該短絡流路を通じて相互に連通せしめられる一方、該車輪への車両前後方向の他方から一方に向かう衝撃荷重の入力時や通常の振動入力の状態では該弾性弁体が該短絡流路の該第一の流体室への開口縁部に予圧縮をもって当接されていることで該短絡流路が閉塞状態とされている請求項1に記載のサスペンション用の流体封入式コンプライアンスブッシュ。
  3. 前記短絡流路が前記オリフィス通路と独立して形成されている請求項1又は2に記載のサスペンション用の流体封入式コンプライアンスブッシュ。
  4. 前記第一の流体室と前記第二の流体室の周方向一方の端部間に跨がって前記オリフィス通路が形成されている一方、該第一の流体室と該第二の流体室の周方向他方の端部間に跨がって前記短絡流路が形成されている請求項3に記載のサスペンション用の流体封入式コンプライアンスブッシュ。
  5. 前記軸部材の外周側に中間スリーブが所定距離を隔てて配されて、該軸部材と該中間スリーブが前記本体ゴム弾性体で相互に連結されていると共に、該中間スリーブに前記外筒部材が外嵌固定されて、該中間スリーブに設けられた第一の窓部と第二の窓部を通じて外周面に開口するように形成された第一のポケット部と第二のポケット部が流体密に覆蓋されることにより、前記第一の流体室と前記第二の流体室が形成されている一方、該中間スリーブの軸方向中間部分には該第一の流体室と該第二の流体室の間を周方向に延びる支持溝が形成されて、該支持溝に対して周方向に延びるオリフィス部材が嵌め込まれると共に、該外筒部材が該オリフィス部材の外周面に外嵌装着されて、該オリフィス部材の外周面に設けられたオリフィス溝が該外筒部材で覆蓋されることで前記オリフィス通路が形成されている請求項1乃至4の何れか一項に記載のサスペンション用の流体封入式コンプライアンスブッシュ。
  6. 前記オリフィス部材の内周面に短絡溝が形成されており、該オリフィス部材が前記中間スリーブの前記支持溝に嵌合固定されて該短絡溝が該支持溝の底部で覆蓋せしめられることで前記短絡流路が形成されていると共に、該短絡流路の一方の端部が開口する該オリフィス部材の周方向端縁部に前記当接弁座が設けられていると共に、該中間スリーブにおける該支持溝の底部には前記本体ゴム弾性体と一体形成された前記弾性弁体が突設されて、該オリフィス部材の該支持溝への固定に基づき、該弾性弁体が弾性変形しつつ該オリフィス部材における該当接弁座に密着状に当接されることによって、該弾性弁体が該短絡流路の一方の該流体室への開口縁部に対して予圧縮をもって当接されている請求項5に記載のサスペンション用の流体封入式コンプライアンスブッシュ。
  7. 前記サスペンション機構を構成する前記サスペンションアームが、車輪側から車体側に向かって車両横方向に延びる横腕部と車両前後方向に延びる縦腕部を有しており、該縦腕部の車体側への取付部分において、前記第一の流体室と前記第二の流体室が車両横方向で対向位置するようにして装着される請求項1乃至6の何れか一項に記載のサスペンション用の流体封入式コンプライアンスブッシュ。
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