JP2008069713A - 内燃機関の燃焼制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】燃焼重心位置に基づいて正確に燃焼状態を判別する。
【解決手段】機関10の各気筒に筒内圧センサ11〜14を設け、検出した気筒内圧力とクランク角とに基づいて筒内熱発生量を算出し、燃焼サイクルにおける総熱発生量の所定割合の熱が発生するクランク角である燃焼重心位置θgを求める。また、熱発生量に基づいて実際に気筒内で燃焼が開始されたクランク角である実燃焼開始点θsを算出し、実燃焼開始点θsに対する相対的な燃焼重心位置θgのクランク角θd=θg−θsを求め、このθdが上限値を越えた場合に真に燃焼が悪化したと判断していする。実燃焼開始点θsに対する相対的な燃焼重心位置θgを用いて燃焼状態を判定することにより、着火遅れ正常燃焼などを異常燃焼として誤判定することが防止される。
【選択図】図1
【解決手段】機関10の各気筒に筒内圧センサ11〜14を設け、検出した気筒内圧力とクランク角とに基づいて筒内熱発生量を算出し、燃焼サイクルにおける総熱発生量の所定割合の熱が発生するクランク角である燃焼重心位置θgを求める。また、熱発生量に基づいて実際に気筒内で燃焼が開始されたクランク角である実燃焼開始点θsを算出し、実燃焼開始点θsに対する相対的な燃焼重心位置θgのクランク角θd=θg−θsを求め、このθdが上限値を越えた場合に真に燃焼が悪化したと判断していする。実燃焼開始点θsに対する相対的な燃焼重心位置θgを用いて燃焼状態を判定することにより、着火遅れ正常燃焼などを異常燃焼として誤判定することが防止される。
【選択図】図1
Description
本発明は、内燃機関の燃焼制御装置に関し、詳細には気筒内燃焼圧力に基づいて気筒の燃焼状態を判定する内燃機関の制御装置に関する。
内燃機関の各気筒に気筒内圧力を検出可能な筒内圧センサを設け、機関運転中に検出した気筒内圧力(燃焼圧力)に基づいて各気筒の熱発生量を演算するとともに、この熱発生量に基づいて各気筒の燃焼状態を制御する内燃機関の燃焼制御装置が知られている。
この種の燃焼制御装置としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。
特許文献1の燃焼制御装置は、気筒内燃焼圧力に基づいて、単位クランク角毎の熱発生量(熱発生率)dQを算出する。そして、気筒の1燃焼サイクルにおける熱発生量の総和(総熱発生量)Qtを演算するとともに、上記各クランク角毎の熱発生率から、熱発生量がQtの50パーセントに到達するクランク角(熱発生重心位置)を求めるようにしている。
特許文献1の装置では、上記熱発生重心位置が予め定めた目標位置(クランク角)になるように機関の点火時期を修正することにより、機関の燃焼状態を良好な状態になるように調整する。熱発生重心位置は、気筒内の燃焼パターンを反映しており燃焼状態を最も忠実に表している。このため、熱発生重心位置が予め定めた理想的な燃焼状態に対応する位置になるように点火時期を調整することにより、気筒内の燃焼状態を良好な状態に維持することが可能となる。
ところが、実際には特許文献1のように気筒内燃焼状態を燃焼重心位置のみで判断していると問題が生じる場合がある。
特許文献1に記載されたように、燃焼重心位置は気筒内燃焼状態と密接な関係にある。例えば、理論空燃比より大幅に高い空燃比(リーン空燃比)で運転を行うリーンバーンエンジンなどでは、理論空燃比混合気の燃焼に較べて燃焼速度が遅くなり、筒内圧力の上昇が遅れるため発生トルクが低下する異常燃焼が生じる場合がある。
この場合には、燃焼速度の遅れに伴って燃焼重心位置も遅角するため、燃焼重心位置の遅角がある程度以上になった場合に異常燃焼が生じた(すなわち、燃焼が悪化した)と判断し、点火時期進角や燃料噴射量増量等の対策をとるようにすることができる。
しかし、実際には異常燃焼が生じておらず発生トルクは低下していないにもかかわらず燃焼重心位置に遅角が生じる場合がある。
例えば、一般的には異常燃焼時には着火(燃焼開始)が遅れ、かつ燃焼速度も遅くなり燃焼行程時に弱い燃焼が遅くまで続くため、発生トルクが低下するとともに燃焼重心が遅角するのであるが、着火が遅れても燃焼速度が低下しなければ実際には発生トルクは低下しない。
この場合には、着火が遅れているだけであり、発生トルクも低下しておらず燃焼が悪化しているわけでもない。ところが、この場合でも混合気の着火(燃焼開始)が遅れれば燃焼速度が低下していなくても燃焼パターン全体が正常な場合に較べて遅角方向にずれるために、燃焼重心位置は遅角するようになる。
一般に、リーンバーンエンジンなどでは混合気空燃比がリーンであるため理論空燃比の混合気に較べて混合気の着火は遅れる傾向があるが、通常リーンバーンエンジンでは点火プラグのスパークの点火エネルギーを強くしているため、着火が遅れても一旦混合気に着火すると燃焼速度は充分に速くなり異常燃焼は生じない場合が多い。また、通常混合気の着火は圧縮上死点前に開始されるが、着火が遅れると全体的に圧縮比の高い状態で行われるようになるため、異常燃焼が生じていない場合には燃焼速度が速くなる。
すなわち、上記のような場合には、混合気の着火(燃焼開始)が遅れるために全体として通常よりも燃焼重心位置は遅角するものの、実際には燃焼開始後の燃焼速度は速く発生トルクも低下しない。
このため、特許文献1の装置のように単に燃焼重心位置のみで燃焼状態を判定していると、上記のように着火が遅れただけの正常燃焼と真の異常燃焼との判別ができず、着火遅れ正常燃焼の場合も異常燃焼が生じたと判定され、点火時期の進角や燃料の増量等の燃焼改善操作が行われてしまい、かえって排気性状の悪化等の問題を生じる場合がある。
本発明は上記問題に鑑み、着火遅れ正常燃焼などのように実際に燃焼が悪化していない見かけ上の異常燃焼と実際に燃焼が悪化する真の異常燃焼とを正確に判別することが可能な手段を提供することを目的としている。
請求項1に記載の発明によれば、気筒内燃焼圧力を検出するとともに、検出した燃焼圧力に基づいて気筒内熱発生量を算出する手段を備えた内燃機関の燃焼制御装置において、気筒1燃焼サイクル中における気筒内熱発生量が、当該燃焼サイクルにおける気筒内総熱発生量に対して予め定めた比率に到達するクランク角である燃焼重心位置を算出する手段と、気筒内で実際の燃焼が開始されたクランク角である実燃焼開始点を検出する手段と、前記実燃焼開始点から前記算出した燃焼重心位置までのクランク角度が予め定めた判定値より大きい場合に、前記気筒の燃焼状態が悪化したと判定する判定手段と、を備えた内燃機関の燃焼制御装置が提供される。
請求項2に記載の発明によれば、前記実燃焼開始点は、前記総熱発生量に対する熱発生量の比率が前記燃焼重心位置を算出する際の前記予め定めた値より小さい所定の比率に到達した点として定義される、請求項2に記載の内燃機関の燃焼制御装置が提供される。
すなわち、請求項1と請求項2の発明では、特許文献1の発明のように燃焼重心位置そのもので燃焼悪化を判定するのではなく、実際の燃焼開始点に対する相対的な燃焼重心位置(実燃焼開始点から燃焼重心位置までのクランク角度)に基づいて判断される。
なお、特許文献1の燃焼重心位置は、気筒内の熱発生量が気筒内総熱発生量の50パーセントに到達したときのクランク角位置として定義されているが、本発明の燃焼重心位置は、気筒内熱発生量が、気筒内総熱発生量の所定の割合(厳密に50パーセントの熱発生量の位置である必要はなく、例えば40パーセントから60パーセントの間のいずれかの値)に到達したときのクランク角位置として定義される。
以下、本発明の異常燃焼判定原理について説明する。
図2は燃焼状態に応じた燃焼行程時の筒内圧の変化を示し、図の縦軸は燃焼圧力、横軸はクランク角を示している。
図2は燃焼状態に応じた燃焼行程時の筒内圧の変化を示し、図の縦軸は燃焼圧力、横軸はクランク角を示している。
図2において、カーブIは正常燃焼の圧力変化を、カーブIIIは異常燃焼の圧力変化を、カーブIIは着火遅れ正常燃焼の圧力変化をそれぞれ示している。
図2に示すように、異常燃焼(カーブIII)では、圧力上昇開始(着火)が正常燃焼(カーブI)より遅れ、かつ圧力上昇速度(燃焼速度)も遅いため筒内最高圧力も大幅に正常燃焼に較べて小さくなっており、気筒の出力トルクも大幅に低下する。
一方、着火遅れ正常燃焼(カーブII)の場合には、着火は正常燃焼に較べて遅れるものの、一旦着火が生じると圧力上昇速度(燃焼速度)は正常燃焼の場合と同等であり、筒内最高圧力もほぼ同じになるため、気筒出力トルクも低下しない。
図3は、図2のそれぞれの燃焼状態における熱発生量の変化を示す図である。後述するように、熱発生量は各クランク角における筒内圧力と容積とに基づいて算出される熱発生率(単位クランク角当りの熱発生量)を逐次積算することにより求められる。
図3に示すように、熱発生量についても正常燃焼(カーブI)に較べて異常燃焼(カーブIII)の場合は増加開始(着火)と増加速度(燃焼速度)とが共に遅れるため、最終的に到達する総熱発生量も小さくなる。
これに対して着火遅れ正常燃焼(カーブII)の場合、熱発生量の増加開始(着火)はおくれるものの、一旦着火すると増加速度(燃焼速度)は正常燃焼(カーブI)と同等であり、最終的に到達する総熱発生量も正常燃焼と遜色ない。このため、着火遅れ正常燃焼(カーブII)の場合には、気筒出力トルクも正常燃焼(カーブI)の場合と同様になり出力トルクの低下は生じない。
次に、図3のそれぞれの燃焼状態における燃焼重心位置について説明する。
本発明では、燃焼重心は気筒内の所定期間における総熱発生量の所定割合(図3では50パーセントとした場合を示すが、40から60パーセントの間のいずれかの割合を用いても図3と同様な結果になることが判明している)の熱発生量に到達するクランク角として定義されている。
本発明では、燃焼重心は気筒内の所定期間における総熱発生量の所定割合(図3では50パーセントとした場合を示すが、40から60パーセントの間のいずれかの割合を用いても図3と同様な結果になることが判明している)の熱発生量に到達するクランク角として定義されている。
図3に示すように、異常燃焼(カーブIII)の場合には着火が遅く、更に燃焼速度も遅いため、燃焼重心位置(C)は正常燃焼(カーブI)の燃焼重心位置(A)に較べてかなり遅角する。これに対して、着火遅れ正常燃焼(カーブII)の場合も着火遅れのため燃焼重心位置(B)が正常燃焼時に較べて遅角し、異常燃焼時の燃焼重心位置(C)に近づくようになる。
このため、燃焼重心位置のみで異常燃焼の有無を判定していると、着火遅れ正常燃焼の場合であっても着火遅れが有る程度大きくなった場合には異常燃焼と区別することができなくなり、実際には出力トルクの低下が生じていないにもかかわらず異常燃焼と判定されてしまう場合が生じるのである。
本発明では、着火遅れによる燃焼重心位置の遅角と燃焼速度の低下による燃焼重心位置の遅角との特性の相違に着目し、以下の方法で着火遅れ正常燃焼と異常燃焼とを正確に判別している。
前述したように、着火遅れ正常燃焼は着火時期こそ遅角するものの着火後の燃焼速度は正常燃焼と同等であり、着火後の熱発生パターンもほぼ正常燃焼と同一になる。
このため、着火遅れ正常燃焼における燃焼重心位置の遅角は、そのほとんどが着火自体の遅角によるものである。
従って、着火遅れ正常燃焼の場合には燃焼重心位置を着火遅れによる遅角分だけ補正すれば、燃焼重心位置はほぼ正常燃焼の場合と同じになる。
一方、異常燃焼の場合には着火時期が遅角するのみならず燃焼速度も低下するため燃焼期間も正常燃焼に較べて長くなる。このため、異常燃焼における燃焼重心の遅角は、着火時期の遅角によるものと燃焼期間の長期化によるものとの両方が加わったものになっており、単に着火遅れによる遅角分を補正しただけでは燃焼重心位置はまだ正常燃焼に対して遅角している。
従って、算出した燃焼重心位置を着火遅れによる遅角分(すなわち実燃焼開始時期の遅角分)だけ補正することにより、着火遅れ正常燃焼と異常燃焼とを正確に分離判別することが可能となるのである。
図4は、図3の熱発生量カーブを着火遅れ分だけ、すなわち正常燃焼における燃焼開始時期に対する燃焼開始時期の遅角量(図3にΔCAで示す)だけ進角側に移動させた状態を示している。
図4に示すように、上記の補正により着火遅れ正常燃焼(カーブII)の燃焼パターン(熱発生パターン)は正常燃焼(カーブI)にほぼ一致し、燃焼重心位置(A、B)もほぼ同じになる。
これに対して、異常燃焼(カーブIII)の場合には、着火遅れΔCAを補正しても熱発生パターンは正常燃焼(カーブI)とは一致せず、このため燃焼重心位置(C)はまだ正常燃焼に較べて遅角している(図3、ΔG)。
従って、上記補正後の燃焼重心の遅角量が予め定めた判定値より大きくなった場合に、異常燃焼が生じたと判定することにより、着火遅れ正常燃焼と異常燃焼とを正確に分離判別することが可能となる。
なお、上記の説明では燃焼重心を、正常燃焼における着火時期に対する各燃焼の着火時期の遅れ分だけ補正するように説明しているが、上記補正の代りに、各熱発生パターンにおいて、実燃焼開始点から燃焼重心位置までのクランク角QD(図3)を用いて、QDが所定の判定値以上になった場合に異常燃焼が発生したと判定するようにしても、原理的には同一であり、得られる結果も同一となる。
なお、上記気筒内総熱発生量と燃焼重心位置とを算出するための熱発生量計算を行う区間の始点と終点としては、多少の燃焼変動があった場合でも実際の燃焼期間(燃焼開始から燃焼終了まで)を含むような一定の区間を設定し、この区間内で熱発生量計算を行えば良い。
更に、本発明では実燃焼開始点を決定する必要があるが、実際の運転では実際の燃焼開始点を正確に判定することは困難な場合もある。このため、例えば実際の燃焼開始点の代りに気筒内熱発生量が所定値(例えば気筒内総熱発生量の10〜30パーセント程度の一定比率)に到達した点を実燃焼開始点として使用しても良い。
また、実燃焼開始点としては、燃焼開始後に気筒内の熱発生量の増加率である熱発生率(単位クランク角度当りの熱発生量)が予め定めた値以上になった点を使用することも可能である。
請求項3に記載の発明によれば、更に、前記判定手段により燃焼が悪化していると判定された気筒の燃焼を改善する手段を備えた、請求項1または2のいずれか1項に記載の内燃機関の燃焼制御装置が提供される。
請求項4に記載の発明によれば、前記燃焼を改善する手段は、前記気筒の燃料噴射量の増量、点火時期の進角、燃料噴射時期の進角の少なくとも一つを行うことにより気筒の燃焼を改善する、請求項3に記載の内燃機関の燃焼制御装置が提供される。
請求項5に記載の発明によれば、前記判定手段は、前記気筒が予め定めた空燃比より大きいリーン空燃比で運転されているときにのみ前記判定を行う、請求項1から4のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置が提供される。
すなわち、請求項3から請求項5に記載の発明では、判定手段により燃焼が悪化していると判定される場合には、燃焼を改善する操作を行う。
上記のように、本発明では異常燃焼などの燃焼悪化を正確に判別することが可能となっているため、真に燃焼が悪化している場合にのみ燃焼改善操作が行われ、誤判定による燃焼改善操作が行われて排気性状の悪化や燃費の増大等が生じることが防止される。
また、燃焼改善操作としては、例えば燃料噴射量の増量や点火時期の進角、燃料噴射時期の進角などを行うことが可能である。燃料噴射量増量により、空燃比は低下(リッチ側に移行)するため、着火が促進されるとともに着火後の燃焼速度も増大するようになり燃焼が改善される。また、点火時期の進角によっても着火時期が進角し、燃料噴射時期の進角によっても混合気の気化が良好になり着火時期が進角するとともに燃焼が改善されるようになる。
なお、着火遅れ正常燃焼は混合気の空燃比がリーン空燃比であるほど生じやすくなる。このため、上記による燃焼悪化の判定と燃焼悪化時の燃焼改善操作は、機関が所定空燃比以上のリーン空燃比で運転されている時にのみ行うようにしても良い。
各請求項に記載の発明によれば、従来正確な判定が困難であった着火遅れ正常燃焼のような見かけ上の異常燃焼と真の異常燃焼とを正確に判別することができるため、気筒内の燃焼悪化の有無を正確に判定することが可能となる共通の効果を奏する。
また、請求項5から請求項7に記載の発明によれば、上記共通の効果に加えて、真に燃焼が悪化した場合にのみ燃焼改善操作が行われるため、誤判定による燃焼改善操作の実行により、排気性状や燃費の悪化が生じることが防止可能となる効果を奏する。
以下、添付図面を用いて本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明を自動車用内燃機関に適用した場合の実施形態の概略構成を示している。
図1は、本発明を自動車用内燃機関に適用した場合の実施形態の概略構成を示している。
図1において10は自動車用内燃機関を示す。本実施形態では、機関10は#1〜#4で示す4つの気筒を有する4気筒火花点火機関とされている。
また、それぞれの気筒#1〜#4には、気筒内圧力を検出可能な筒内圧力センサ11〜14が設けられている。
本実施形態では、筒内圧力センサ11〜14は、ピエゾ素子などを用いた公知の形式の圧力センサとされている。本実施形態の筒内圧センサは、シリンダブロックやシリンダヘッドに配置され、気筒内部に接続孔を介して連通するタイプのものや、各気筒の点火プラグ(図示せず)に取付けられるワッシャ形式のもの、などいずれの形式のものも使用可能である。
図1に30で示すのは、機関10の電子制御ユニット(ECU)である。
本実施形態では、ECU30はCPU、RAM、ROM、入出力ポートを備えた公知の形式のディジタルコンピュータとされ、機関10の燃料噴射制御や点火時期制御などの機関の基本制御を行う他、本実施形態では後述するように、筒内圧力センサ11〜14で検出した筒内燃焼圧力に基づいて筒内熱発生量と燃焼重心とを算出するとともに、算出した燃焼重心位置に基づいて気筒内の燃焼状態の悪化の有無を判定する燃焼判定操作と、判定結果に基づいて気筒燃焼状態を改善する燃焼改善操作を行う。
本実施形態では、ECU30はCPU、RAM、ROM、入出力ポートを備えた公知の形式のディジタルコンピュータとされ、機関10の燃料噴射制御や点火時期制御などの機関の基本制御を行う他、本実施形態では後述するように、筒内圧力センサ11〜14で検出した筒内燃焼圧力に基づいて筒内熱発生量と燃焼重心とを算出するとともに、算出した燃焼重心位置に基づいて気筒内の燃焼状態の悪化の有無を判定する燃焼判定操作と、判定結果に基づいて気筒燃焼状態を改善する燃焼改善操作を行う。
これらの制御を実行するため、ECU30の入出力ポートには筒内圧センサ11〜14の出力電圧が図示しないADコンバータを介して入力されている他、機関10のクランク軸近傍に配置されたクランク角センサ31から機関のクランク軸回転角CAを表すパルス信号と、機関10の吸気通路に設けられたエアフローメータ33から機関の吸気流量を表す信号とが、それぞれ入力されている。
また、ECU30の出力ポートは、点火回路41及び燃料噴射回路43に接続され、機関10の点火時期と燃料噴射とを制御している。
ECU30はクランク角センサ31から入力するパルス信号の周波数から機関回転速度N(rpm)を、また特定の気筒(例えば#1気筒)の圧縮行程上死点到達毎に別途発生する基準位置信号入力後のクランク角パルス数から現在のクランク軸回転角(クランク角)を、それぞれ算出する。
また、ECU30は、エアフローメータ33で検出した機関吸気流量と、機関回転数とに基づいて機関燃料噴射量、機関点火時期を設定する。この燃料噴射量演算及び点火時期の演算は公知のいずれの方法も使用することができるため、ここでは詳細な説明は省略する。
次に、本実施形態における燃焼判定操作について説明する。
前述したように、本実施形態では燃焼重心位置に基づいて各気筒の燃焼悪化の有無を判別する。
前述したように、本実施形態では燃焼重心位置に基づいて各気筒の燃焼悪化の有無を判別する。
本実施形態では、燃焼重心位置は燃焼開始後、筒内熱発生量が気筒の1行程サイクルの総熱発生量に対して所定の比率に到達したときのクランク角として算出される。
また、ある期間における筒内熱発生量は、単位クランク角当り(例えばクランク角1度当り)の熱発生量、すなわち熱発生率dQをその期間にわたって積算することにより求められる。
ここで、良く知られているように、熱発生率dQはクランク角θの関数となり、以下の式で表される。
dQ(θ)=(1/(κ−1))・(κ・P(θ)・dV(θ)
+V(θ)・dP(θ))
+V(θ)・dP(θ))
ここで、dQ(θ)はクランク角θにおける熱発生率、κは混合気の比熱比、P(θ)及びdP(θ)はクランク角θにおける筒内圧力とその変化率、V(θ)及びdV(θ)はクランク角θにおける燃焼室容積とその変化率である。
ECU30は上記の熱発生率dQ(θ)の式を離散形で表した計算式
dQ(θ)=(1/(κ−1))・(κ・P(θ)・(V(θ)−V(θi-1))
+V(θ)・(P(θ)−P(θi-1)))
dQ(θ)=(1/(κ−1))・(κ・P(θ)・(V(θ)−V(θi-1))
+V(θ)・(P(θ)−P(θi-1)))
を用いて、単位クランク角毎(例えば1度毎)に各クランク角θにおける熱発生率を算出する。
ここで、V(θi-1)、P(θi-1)は、それぞれθより単位クランク角だけ前のクランク角における燃焼室容積Vと圧力Pとを表している。
ここで、V(θi-1)、P(θi-1)は、それぞれθより単位クランク角だけ前のクランク角における燃焼室容積Vと圧力Pとを表している。
ECU30は、各クランク角θ毎に筒内圧センサ11〜14により筒内圧力P(θ)を検出するとともに、クランク角θから燃焼室容積V(θ)を算出し、これらを用いて上記の式からクランク角θにおける熱発生率dQ(θ)を算出し、ECU30のRAMの所定の記憶領域に格納する。
ECU30は、上記により算出した各クランク角毎の熱発生率dQ(θ)を、燃焼期間(燃焼開始クランク角θsから燃焼終了クランク角θeまで)にわたって積算することにより、気筒内総熱発生量Qを算出する。
ECU30は、今回のクランク角において上記により算出した熱発生率dQ(θ)を、前回の積算値Q(θi-1)(すなわち、今回から単位クランク角前のクランク角で算出した積算値)に加えることにより、今回のクランク角までの熱発生量Q(θ)を算出する。
すなわち、Q(θ)=Q(θi-1)+dQ(θ)
この操作を、燃焼開始クランク角θsから燃焼終了クランク角θeまで繰返すことにより総熱発生量Qが算出される。
この操作を、燃焼開始クランク角θsから燃焼終了クランク角θeまで繰返すことにより総熱発生量Qが算出される。
なお、実際には熱発生率は燃焼が行われていない場合にはゼロになるので、上記積算は実際の燃焼区間が変動した場合でも全部の燃焼区間を含むような一定の区間を一律に設定して、この区間内で各クランク角毎の熱発生率の算出と積算とを行うようにしている。
また、ECU30は各クランク角における上記熱発生量積算値Q(θ)をRAMの所定記憶領域に記憶しておき、上記総熱発生量Qを算出後、以下に述べる燃焼重心位置の算出に使用する。
本実施形態では、燃焼重心位置は、燃焼開始後気筒内の熱発生量が総熱発生量の所定の比率に到達した時のクランク角として定義される。また、上記所定の比率は厳密に50パーセントとする必要はなく、例えば40から60パーセントの間の適宜な値αとすることができる。
ECU30は、上記により総熱発生量Qを算出後、記憶した各クランク角毎の熱発生量積算値Q(θ)を参照して、Q(θi-1)<Q・α<Q(θ)となる2つのクランク角を求める。この2つのクランク角間を補間することにより燃焼重心位置θgが算出される。
次に、実燃焼開始点θsの決定について説明する。
本実施形態では、実燃焼開始点として、気筒内熱発生量が総熱発生量の所定の割合βに到達したときのクランク角を用いる。この割合βは、当然上記燃焼重心算出の際の割合αより小さい値であり、例えば10から30パーセントの間の適宜な値とされる。
本実施形態では、実燃焼開始点として、気筒内熱発生量が総熱発生量の所定の割合βに到達したときのクランク角を用いる。この割合βは、当然上記燃焼重心算出の際の割合αより小さい値であり、例えば10から30パーセントの間の適宜な値とされる。
ECU30は上記により記憶した各クランク角毎の熱発生量積算値Q(θ)を用いて、燃焼重心位置算出と同様な方法を用いてQ(θ)=Q・βとなる実燃焼開始位置θsを算出する。
上記により、燃焼重心位置θgと実燃焼開始位置θsを算出後、本実施形態では燃焼重心位置θgと実燃焼開始点θsとの差θd=θg−θg、すなわち気筒内で実際に燃焼が開始されてから燃焼重心位置に到達するまでのクランク角を算出し、このθdに基づいて気筒内で燃焼悪化が生じているかを判定する。
前述したように、着火遅れ正常燃焼が生じている場合には燃焼重心位置θg自体は正常燃焼の場合より遅角するが、燃焼開始点θsから燃焼重心位置θgまでの期間(クランク角)は正常燃焼の場合と略同じである。これに対して異常燃焼などの燃焼悪化が生じている場合には正常燃焼に較べて燃焼重心位置θgが遅角するだけでなく、燃焼開始点θsから燃焼重心位置θgまでのクランク角も増大する。
このため、上記θdが予め定めた判定値より大きい場合には異常燃焼が生じていると判定することができる。なお、この判定値は機関の種類、型式などによっても変るため実際の機関を用いた実験により決定することが好ましい。
本実施形態では、更に上記により燃焼が悪化したと判定された場合には、燃焼改善操作が行われる。
本実施形態の燃焼改善操作では、例えば燃料噴射量の増量、点火時期の進角、燃料噴射時期の進角等のいずれか一つまたはそれ以上が行われる。
燃料噴射量の増量が行われると、空燃比が低下(リッチ側に移行)するため、着火後の燃焼速度が速くなり、燃焼速度の低下による異常燃焼が生じることが防止される。また、同様に点火時期が進角されると、着火時期が早くなるため、燃料噴射量増量とともに燃焼が改善されるようになる。更に、燃料噴射時期を進角すると噴射された燃料が気化するための時間が長くなるため、燃料の着火、燃焼が良好になり燃焼が改善される。
なお、本実施形態では上記により燃焼が正常と判定された場合でも実燃焼開始から燃焼重心までのクランク角θdが所定の下限値よりも小さい場合には、燃焼状態の調整を行う。θdが小さい場合は燃焼速度が大きいことを意味している。この場合には、もっと燃焼速度が小さくなっても、言換えればもっと空燃比をリーンにしても正常な運転が可能であることを意味している。また、この場合には空燃比を更にリーンにして運転した方が排気性状と燃費向上との上からは好ましい。
そこで、本実施形態では上記クランク角θdが所定の下限値より小さい場合には、燃料噴射量を減量して空燃比を更にリーン側に移行させるようにしている。なお、この下限値についても機関の型式毎に異なるため、実際の機関を用いた実験により決定することが好ましい。
また、このリーン側への移行操作においては、燃料噴射量の減量とともに点火時期、燃料噴射時期を変更するようにしても良い。
図5と図6は、上記燃焼判定操作と、その判定結果に基づく燃焼改善操作を示すフローチャートである。本操作はECU30により一定間隔で実行されるルーチンにより行われる。
図5の操作が開始されると、まずステップ501では、現在リーン空燃比での運転(リーンバーン運転)が行われているか否かが判定される、リーンバーン運転が行われていない場合には、本操作はステップ503以下を実行することなく直ちに終了する。
すなわち、リーンバーン運転が行われていない場合には燃焼判定操作は実行されない。
前述したように、着火遅れ正常燃焼や燃燃焼重心の遅角などの異常燃焼が生じるのはリーンバーン運転の場合に多く、リーンバーン運転が行われていない場合には判定の必要性が低いからである。
前述したように、着火遅れ正常燃焼や燃燃焼重心の遅角などの異常燃焼が生じるのはリーンバーン運転の場合に多く、リーンバーン運転が行われていない場合には判定の必要性が低いからである。
ステップ501で現在リーンバーン運転が行われている場合には、次にステップ503に進み、各気筒で各クランク角毎に筒内圧センサ11〜14で筒内燃焼圧力P(θ)を検出するとともに、ステップ505では検出した筒内燃焼圧力P(θ)と燃焼室容積V(θ)とに基づいて、クランク角毎に熱発生率dQ(θ)を算出する。なお、本実施形態では燃焼室容積V(θ)は予め各クランク毎の値が算出され、クランク角θをパラメータとした数値マップの形でECU30のROMに格納されている。
また、ステップ507では、ステップ505で算出した熱発生率dQ(θ)を積算して、各クランク角における熱発生率積算値Q(θ)が算出され、ECU30のRAMの所定領域に格納される。
ステップ509では、総熱発生量の計算が完了したか否か、すなわち予め定めた熱発生量の計算期間(クランク角)が経過したか否かが判定され、総熱発生量の計算が完了した気筒では、ステップ511で燃焼重心位置θgと実燃焼開始点θsとが前述した方法で算出され、ステップ513では燃焼重心位置θgの実燃焼開始点θsからの相対的遅角量θdが、θd=θg−θsとして算出され、次に図6の操作が実行される。
図6は、ステップ513で算出した相対的遅角量θdに基づく燃焼判定操作と燃焼改善操作を示している。
すなわち、図6ステップ515では上記相対的遅角量θdが予め定めた上限値θmax以上になっているか否かを判定し、θd≧θmaxであった場合には、ステップ517で異常燃焼が生じていると判定する。そして、この場合にはステップ519に進み、燃料噴射量の一定量増量、点火時期、燃料噴射時期の一定量進角等の燃焼改善操作が行われる。
すなわち、図5、図6の操作では、ステップ515でθd≧θmaxが成立する毎に燃焼改善操作が実行され、θdが上限値θmaxより小さくなるように燃焼状態が改善される。
一方、ステップ515でθd>θmaxであった場合には、次にステップ521でθdが下限値θmin以下か否かが判定される。前述したように、θd≦θminであった場合には、更に空燃比をリーン側に移行することが可能であるため、この場合はステップ523で燃料噴射量が一定量減量される。これにより、図5、図6の操作が実行される毎にステップ521でθd≦θminが成立する限り燃料噴射量が一定量ずつ減量され、θdがθminより大きくなるように燃焼状態が制御される。
上述のように、本実施形態によれば着火遅れ正常燃焼と真の異常燃焼とを正確に分離判別し、真に異常燃焼が生じている場合にのみ燃焼改善操作が実行されるため、常に良好な燃焼状態が維持されるようになる。
10 機関本体
11〜14 筒内圧センサ
30 電子制御ユニット(ECU)
31 クランク角センサ
33 エアフローメータ
11〜14 筒内圧センサ
30 電子制御ユニット(ECU)
31 クランク角センサ
33 エアフローメータ
Claims (5)
- 気筒内燃焼圧力を検出するとともに、検出した燃焼圧力に基づいて気筒内熱発生量を算出する手段を備えた内燃機関の燃焼制御装置において、
気筒1燃焼サイクル中における気筒内熱発生量が、当該燃焼サイクルにおける気筒内総熱発生量に対して予め定めた比率に到達するクランク角である燃焼重心位置を算出する手段と、
気筒内で実際の燃焼が開始されたクランク角である実燃焼開始点を検出する手段と、
前記実燃焼開始点から前記算出した燃焼重心位置までのクランク角度が予め定めた判定値より大きい場合に、前記気筒の燃焼状態が悪化したと判定する判定手段と、
を備えた内燃機関の燃焼制御装置。 - 前記実燃焼開始点は、前記総熱発生量に対する熱発生量の比率が前記燃焼重心位置を算出する際の前記予め定めた値より小さい所定の比率に到達した点として定義される、請求項2に記載の内燃機関の燃焼制御装置。
- 更に、前記判定手段により燃焼が悪化していると判定された気筒の燃焼を改善する手段を備えた、請求項1または2のいずれか1項に記載の内燃機関の燃焼制御装置。
- 前記燃焼を改善する手段は、前記気筒の燃料噴射量の増量、点火時期の進角、燃料噴射時期の進角の少なくとも一つを行うことにより気筒の燃焼を改善する、請求項3に記載の内燃機関の燃焼制御装置。
- 前記判定手段は、前記気筒が予め定めた空燃比より大きいリーン空燃比で運転されているときにのみ前記判定を行う、請求項1から4のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。
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