JP2008030227A - 接着性フィルム、一体成形品及びその製造方法 - Google Patents

接着性フィルム、一体成形品及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】オレフィン系樹脂からなる成形体の表面に、オレフィン系以外の樹脂からなるトップコート層などを接着層を介して、射出成形法、押出し成形法等によって一体で成形する場合に、高い接着力と高い凝集力を両立させることができ、しかも両者のバランスを任意に制御できる接着性フィルムを提供すること。
【解決手段】変性ポリオレフィン及びヒドロキシ基及び(又は)カルボキシル基と反応して化学結合を形成可能な硬化剤を含む2液型の前駆体溶液から形成された接着層を有するように接着性フィルムを構成するとともに、高温溶融した熱可塑性オレフィン樹脂に該接着性フィルムの接着層側を合わせた状態で前記オレフィン樹脂を冷却固化して前記成形品及び前記接着性フィルムを一体化するように構成する。
【選択図】なし

Description

本発明は、接着性フィルムに関し、さらに詳しく述べると、樹脂材料、特に溶融オレフィン系材料に対して貼り付けたときに高い接着力及び高温時における高い凝集力を同時に発現可能な、多層構造を備えた接着性フィルムに関する。本発明はまた、かかる接着性フィルムを備えた一体成形品及びその製造方法に関する。本発明の接着性フィルムや一体成形品は、車両の部品、家電製品の部品、建築部品などの各種の物品やその他の物品の製造に使用できるが、とりわけ、自動車の外装部品の製造や、そのような外装部品に貼付されるエンブレム、ステッカー等の装飾フィルムの製造に有利に使用することができる。
例えば自動車の製造において、その外観の向上や軽量化、加工性の改良などを目的として、いろいろな材料から外装部品が製造されている。例えば、最近では、モールやピラーを、ステンレス鋼などの鋼板のプレス成形やロールフォーミング成形によって加工することに代えて、樹脂材料だけを射出成形、ブロー成形、押出し成形などによって製造している。樹脂材料を使用した結果、部品の軽量化を図るとともに鋼板とは異なった外観を得ることができるからである。
樹脂材料としては、当初、ポリ塩化ビニルがその高い成形性、耐候性、耐久性、経済性などから多用されてきたが、最近では、ポリプロピレンを主としたオレフィン系の樹脂材料の利用へと進みつつある。しかしながら、オレフィン系樹脂材料そのものは、自動車の外装部品として使用した場合、それに求められている特性、すなわち、耐候性、耐キズ付き性などの課題を十分に満足させることができない。また、オレフィン系樹脂材料は、表面光沢の自由度が少ないので、外装部品に一般的に求められている一定の光沢度を再現することが難しい。
オレフィン系樹脂における上述のような問題を解決するため、オレフィン系樹脂からなる成形体の表面に、オレフィン系以外の樹脂からなるトップコート層やその他のフィルムを接着層を介して積層することが行われている。この積層工程の1方法として、溶融したオレフィン系樹脂とトップコート層等を射出成形や押出し成形によって一体で成形する方法がある。
上記のような方法において、接着層としては、熱可塑性オレフィン系フィルムを用いるのが一般的である。例えば、特許文献1は、自動車の外装部品に使用することを意図したものではないが、熱可塑性ポリオレフィン樹脂シートと、該シート上に塗布された、水酸基又はカルボキシル基を2mg当量/g以下付加したポリオレフィン系樹脂を主体とする無塩素変性プライマー層と、プライマー層上に塗布された、(a)ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂及び(b)(メタ)アクリレート類−ブタジエン−スチレン樹脂を主成分とするトップコート層とからなることを特徴とする熱可塑性ポリオレフィン系樹脂表皮材を記載している。
また、特許文献2は、プラスチック成型用化粧フィルムを射出成型用金型の内側にセットし、次いで成型用ポリオレフィン樹脂を用いて射出成型を行い、該化粧フィルムと一体となった成型物を得るためのプラスチック成型用化粧フィルムであって、該化粧フィルムとして、外面方向にポリオレフィンフィルム層、イソシアネート硬化型樹脂組成物からなるプライマー層、必要に応じて上塗り層及び必要に応じて離型性フィルム層が順次積層されたものを使用することを特徴とするプラスチック成型用化粧フィルムを記載している。
しかしながら、オレフィン系樹脂からなる成形体とその上のトップコート層とを一体化する際に接着層として熱可塑性オレフィン系フィルムを用いる場合には、新たな問題が発生してくる。例えば、熱可塑性オレフィン系フィルムには高い接着性が備わっているというものの、例えば約140℃もしくはそれを上回る高い温度にさらされた場合には溶融せしめられてしまい、凝集力の低下が発生する結果、成形時のフィルムのはね返り、浮き、シワ、ズレ等の発生が問題となる。また、この種の成形体は、押出し成形によって成形するのが一般的であるので、得られる接着性フィルムの厚さは、通常、約50μmもしくはそれ以上であり、その厚さのために外観に悪影響がでてくる。なお、2軸延伸法を採用した場合には接着層をより薄く成形することができるが、この場合には、熱収縮の問題が発生するので、好ましくない。
高温適用時における凝集力の低下を避けるために高い凝集力を示し得る変性ポリオレフィン(以下の実施例で示すように、硬化剤を配合していないものは商業的に入手可能である)を接着層として使用することもできる。しかし、この方法の場合には、接着層を溶液の形態から形成することができないので(分散液の形態から形成する必要がある)、塗膜化を達成するため、約160〜180℃もしくはそれ以上の温度まで加熱し、溶融させる必要がある。また、かかる変性ポリオレフィンは、乾燥後に溶融塗膜化する温度になるまでの間、粉末状態であるため、加熱オーブン内で飛散してしまい、オーブン汚染の問題を引き起こす。なお、変性ポリオレフィンのなかには溶液の形態で使用できるものもあるが、このような変性ポリオレフィンは、塗膜化しても、100℃以下の低い融点をもった凝集力に乏しい接着層しか提供することができず、成形時のフィルムのはね返り、浮き、シワ、ズレ等の発生を避けることができない。さらには、接着層表面のタック性が高いので、成形時、金型に張り付き易く滑らないので、金型に対するフィルムのインサート(挿入)及び配置を容易に実施できないという問題がある。
接着層として、塩素化ポリオレフィン樹脂を使用することも提案されている。例えば、特許文献3は、表面シートと、その裏面に順次積層された、装飾層、2液硬化型ウレタン樹脂の硬化物、そして裏面シートとからなる成形同時加飾用の加飾シートにおいて、その裏面接着剤層として塩素化ポリオレフィン樹脂などを使用することを記載している。しかしながら、塩素を多量に含有するこの種の接着剤層は、燃焼時に有毒ガスを発生可能であるので、環境保全の面から使用を避けることが望ましい。
特開2000−6334号公報(特許請求の範囲、段落0001) 特開2000−52374号公報(特許請求の範囲) 特開2002−283510号公報(特許請求の範囲、段落0059)
本発明の目的は、オレフィン系樹脂からなる成形体の表面に、オレフィン系以外の樹脂からなるトップコート層などを接着層を介して、射出成形法、押出し成形法等によって一体で成形する場合に、高い接着力と高い凝集力を両立させることができ、しかも両者のバランスを任意に制御できる接着性フィルムを提供することにある。
また、本発明の目的は、溶液の状態から、比較的に低い温度で好ましくは約5μm以下、さらに好ましくは20μm以下の薄膜の形で成膜できる接着性フィルムを提供することにある。
さらに、本発明の目的は、このような接着性フィルムの諸特性を生かすことのできる一体成形品及びその製造方法を提供することにある。
本発明のこれらの目的やその他の目的は、以下の詳細な説明から容易に理解することができるであろう。
本発明は、その1つの面において、変性ポリオレフィン及びヒドロキシ基及び(又は)カルボキシル基と反応して化学結合を形成可能な硬化剤を含む2液型の前駆体溶液から形成された接着層を有する接着性フィルムであって、
オレフィン樹脂からなる成形品の表面に前記接着層を介して接合されるものであり、かつ
高温溶融した熱可塑性オレフィン樹脂に該接着性フィルムの接着層側を合わせた状態で前記オレフィン樹脂を冷却固化して前記成形品及び前記接着性フィルムを一体化するものであることを特徴とする多層構造を備えた接着性フィルムにある。
また、本発明は、そのもう1つの面において、オレフィン樹脂からなる成形品と、該成形品の表面に接着層を介して一体的に接合された接着性フィルムとを有する一体化成形品であって、
前記接着性フィルムは、上記しかつ以下において詳細に説明する本発明による接着性フィルム、すなわち、変性ポリオレフィン及びヒドロキシ基及び(又は)カルボキシル基と反応して化学結合を形成可能な硬化剤を含む2液型の前駆体溶液から形成された接着層を有する接着性フィルムであり、かつ
高温溶融した熱可塑性オレフィン樹脂に前記接着性フィルムの接着層側を合わせた状態で前記オレフィン樹脂を冷却固化して前記成形品及び前記接着性フィルムを一体化したものであることを特徴とする一体成形品にある。
さらに、本発明は、そのもう1つの面において、オレフィン樹脂からなる成形品と、該成形品の表面に接着層を介して一体的に接合された接着性フィルムとを有する一体成形品を製造する方法であって、
上記しかつ以下において詳細に説明する本発明による接着性フィルムを作製することと、
高温溶融した熱可塑性オレフィン樹脂に前記接着性フィルムの接着層側を合わせた状態で前記オレフィン樹脂を冷却固化して前記成形品及び前記接着性フィルムを一体化することと
を特徴とする一体成形品の製造方法にある。
本発明によれば、以下の詳細な説明から理解されるように、オレフィン系樹脂からなる成形体の表面に、オレフィン系以外の樹脂からなるトップコート層などを接着層を介して、射出成形法、ブロー成形法、押出し成形法等によって一体で成形する場合に、従来問題とされてきたいろいろな欠点を同時に解消することができる。
例えば、本発明による接着性フィルムは、接着力に優れるばかりでなく、例えば約140℃もしくはそれを上回る高い温度にさらされた場合においても高い接着力と高い凝集力を両立させることができ、しかも両者のバランスを任意に制御できる。
また、本発明による接着性フィルムは、凝集力の低下を回避でき、成形時の接着性フィルムのはね返り、浮き、シワ、ズレ等が発生することがなく、しかも約50μm以下、好ましくは約30μm以下、通常約5〜25μmの薄膜の形で成膜でき、熱収縮などの欠陥も発生するがない。
さらに、本発明による接着性フィルムは、接着層を溶液の形態から形成することができる(従来のように、分散液の形態を必要としない)とともに、約80℃から100℃未満の比較的に低い温度で塗膜化を達成できるばかりでなく、塗膜化の過程で粉末状態である必要がなく、粉末飛散に原因した加熱オーブンの汚染を防止することができる。
さらにまた、本発明による接着性フィルムは、上述のような低い温度の適用においても接着性フィルムのはね返り、浮き、シワ、ズレ等の発生はなく、しかも接着層表面のタック性が低いので、成形時、接着性フィルムが金型に張り付くことがなく、金型に対するフィルムのインサート及び配置を容易に実施することができる。また、これに関連して、接着層表面のタックを低くして成形プロセスを容易に設計することも可能である。
さらにまた、接着性フィルムの接着層は反応系化合物に由来しているので、その上にさらに任意の層を積層する場合にその上層との接着性に優れ、よって、従来の方法のように接合層(ボンディング層などともいう)を追加しなくても高い層間接着力を得ることができる。特に、トップコート層、カラー層、ベース層などを上層として積層し、多層構造体を形成するのに有用である。
さらに加えて、本発明による接着性フィルム及び一体成形品は、塩素等のハロゲンを含有せず、環境保全に有用である。
本発明による接着性フィルムは、上記したように優れた特性を有していることに加えて、伸びや剥がれがないので、それらの特性を生かしていろいろな物品の製造に有利に使用することができる。本発明の接着性フィルム、特に立体的な形状をもった一体成形品の製造に有利に使用することができる。本発明の実施に好適な一体成形品は、例えば自動車、オートバイ、バス、電車等の車両の部品、家電製品の部品、建築部品などの各種の物品やその他の物品のである。本発明の接着性フィルムは、とりわけ、自動車の外装部品の製造や、そのような外装部品に貼付されるエンブレム、ステッカー等の装飾フィルムの製造に有利に使用することができる。
本発明による接着性フィルム、一体成形品及びそれらの製造方法は、それぞれ、いろいろな形態で有利に実施することができる。以下、本発明の好ましい実施の形態を説明するが、本発明は、下記の実施形態によって限定されるものではない。
本発明による接着性フィルムは、少なくとも接着層を有する接着性フィルムであり、好ましくは、少なくとも2層もしくはそれ以上の多層構造をもった接着性フィルムである。また、本発明の接着性フィルムにおいて、その接着層は、本発明において特に前駆体溶液(以下「プレ溶液」ともいう)と呼ぶ2液型の塗布溶液から、その前駆体溶液を塗布し、硬化させることによって形成することができる。なお、前駆体溶液は、所定の成分が溶解した溶液の状態にある点で、塗膜の形成のために従来使用されてきた分散液(ディスパージョン)とは区別される。
2液型の前駆体溶液は、
(1)ヒドロキシ基及び(又は)カルボキシル基を有する変性ポリオレフィン、及び
(2)ヒドロキシ基及び(又は)カルボキシル基と反応して化学結合を形成可能な硬化剤
を少なくとも含有し、必要に応じて追加の成分を含有していてもよい。
変性ポリオレフィンは、その分子中にヒドロキシ基(−OH)又はカルボキシル基(−COOH)を有するかもしくはヒドロキシ基及びカルボキシル基を有することが好ましい。以下において説明するように、これらの官能基が、併用される硬化剤の官能基と反応し、得られる化学結合によって所期の作用効果が導かれるからである。なお、本発明で使用される変性ポリオレフィンは、本発明の作用効果に悪影響を及ぼさないごく微量の、例えば出発原料などに由来するハロゲンの存在までも否定するわけではないが、塩素等のハロゲンを実質的に含有していない。すなわち、すなわち、本発明で使用する変性ポリオレフィンは、塩素化ポリオレフィンを包含しない。
本発明の実施において用いられる変性ポリオレフィンは、常法に従って調製することができる。変性ポリオレフィンは、例えば、未変性のポリオレフィン系樹脂を有機過酸化物の存在下、変性剤とともに熱処理することによって調製することができる。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、ポリブテン、あるいはこれらの混合物などを挙げることができる。
有機過酸化物としては、例えば、ジベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシ)イソプロピルベンゼン、2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2,5−ジメチル−3−ヘキシン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、あるいはこれらの混合物を挙げることができる。
変性剤としては、例えば、不飽和ヒドロキシ化合物や不飽和カルボン酸あるいはそれらの誘導体を使用することができる。変性剤として好適な不飽和ヒドロキシ化合物としては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、グリセロールモノ−又はジアクリレート、グリセロールモノ−又はジメタクリレート、トリメチロールプロパンモノ−又はジアクリレート、トリメチロールプロパンモノ−又はジメタクリレート、エチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、オルト、メタ及びパラヒドロキシメチルスチレン、あるいはこれらの混合物を挙げることができる。
また、不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、あるいはこれらの混合物を挙げることができる。必要ならば、これらの不飽和カルボン酸の誘導体、例えば、酸無水物、エステル、アミド、イミド、金属塩など、具体的には、例えば、無水マレイン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリルアミド、アクリル酸ナトリウムなどを挙げることができる。
変性ポリオレフィンは、一例を示すと、例えばポリオレフィン系樹脂、有機過酸化物及び変性剤を例えばヘンシェルミキサーなどの混合機で混合し、得られた混合物をさらに例えば2軸押出機、単軸押出機、バンバリーミキサーなどの混練機で加熱混練することにより調製することができる。混練時の温度は、出発原料の種類などによって大きく変動可能であるが、通常、約100〜300℃の範囲である。
また、本発明で使用される変性ポリオレフィンは、次のようなものも包含する。すなわち、ヒドロキシ基を有さない不飽和化合物で未変性のポリオレフィン系樹脂をグラフト変性した後、このグラフト変性された不飽和化合物に化学反応を施すことにより、ヒドロキシ基を導入する方法である。例えば、無水マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物でグラフト変性した後、このグラフト変性された生成物にエタノールアミン等を反応させて、ヒドロキシ基を導入してもよい。
別法によれば、不飽和ジカルボン酸無水物化合物で未変性のポリオレフィン系樹脂をグラフト変性した後、グラフトされた不飽和化合物に化学反応を施すことにより、ヒドロキシル基を導入してもよい。例えば、無水マレイン酸でグラフト変性した後、このグラフト変性された生成物に水、あるいはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコールを反応させて、ヒドロキシル基を導入してもよい。ここで、不飽和ジカルボン酸化合物としては、無水マレイミド酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸無水物などが挙げられる。
本発明の実施において、不飽和ヒドロキシ化合物や不飽和カルボン酸あるいはそれらの誘導体以外の変性剤を使用することもできる。このような変性剤としては、例えばスチレンが挙げられる。スチレンとオレフィンの共重合体としては、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン等を用いることができ、これらの共重合体は、クラレ社製 セプトンシリーズとして入手することができる。
変性ポリオレフィンの調製において、上記した変性剤の配合量は、広い範囲で変動させることができるが、通常、未変性のポリオレフィン系樹脂に対して約0.1〜10重量%の範囲であり、好ましくは約1〜5重量%である。変性剤の配合量が0.1重量%未満では、本発明の作用効果を達成するのに必要な数の変性剤を変性ポリオレフィンに導入することができない。変性剤の配合量が、10重量%を越えると、熱可塑性樹脂組成物あるいは接着性フィルムとした場合にそれらの物性等に悪影響がでてくる。
2液型の前駆体溶液において、変性ポリオレフィンと組み合わせて用いられる硬化剤は、その変性ポリオレフィン中のヒドロキシ基やカルボキシル基と反応して化学結合を形成可能な化合物である。本発明の実施において、硬化剤として好適な化合物は、分子中の−NCO基がヒドロキシ基やカルボキシル基と反応可能なイソシアネート化合物やその他の化合物である。硬化剤として適当なイソシアネート化合物やその他の化合物の一例を示すと、例えば、ポリイソシアネート(HDIアダクト体)、ポリイソシアネート(TDIアダクト体)、ポリイソシアネート(IPDI3量体)、アジリディン、カーボンジイミド、オキサドリン、エポキシ化合物などを挙げることができる。
上記したような硬化剤は、2液型の前駆体溶液の調製においていろいろな配合量で使用することができるが、通常、主剤として使用される変性ポリオレフィンの量を100としたときに、固形分比で、約1〜100の範囲、好ましくは約5〜90の範囲、さらに好ましくは約15〜70の範囲である。硬化剤の配合量が1未満では、得られる接着性フィルムにおいてタック性がでてきて取扱いに差し障りがでてくるおそれがあり、反対に100を上回った場合には、接着性に寄与し得るオレフィン成分の量が相対的に減少することの結果、接着性の低下が引き起こされるおそれがある。
上記した2液型の前駆体溶液は、変性ポリオレフィン及び硬化剤に追加して、任意の添加剤を補助的に有していてもよい。適当な添加剤として、例えば、触媒、レベリング剤、消泡剤などを挙げることができる。適当な触媒として、例えば、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)触媒、ナフテン酸亜鉛、オクテン酸亜鉛、トリエチレンジアミンなどを挙げることができる。これらの触媒の量は、広い範囲で変更することができるが、通常、前駆体溶液100重量%に対して約0.005〜0.5重量%の範囲である。
本発明による接着性フィルムは、上述の変性ポリオレフィン及び硬化剤を含む2液型の前駆体溶液を使用して、いろいろな技法によって製造することができる。例えば、本発明の接着性フィルムは、好ましくは、変性ポリオレフィンの溶液及び硬化剤の溶液を攪拌下に混合した後、得られた溶液を適当な技法、例えばバーコート、ロールコート、スプレーコート等の塗布法を使用して、適当な基材の表面に塗布することによって製造することができる。ここで使用する基材は、最終的に得られる接着性フィルムから剥がして取り除かれるものであってもよく、さもなければ、接着性フィルムの1構成員としてそのまま残して使用されるものであってもよい。すなわち、本発明の接着性フィルムは、接着層に加えて、接着層を形成するための前駆体溶液が塗布されるべき基材をさらに有することが好ましい。
上記した2種類の基材において、接着性フィルムから取り除かれるべきタイプの基材は、その作用からキャリヤフィルムなどとも呼ぶことができる。キャリヤフィルムは、特に限定されるものではなく、プラスチックフィルム、金属箔などを包含する。例えばキャリヤフィルムとしてプラスチックフィルムを使用する場合、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどを使用することができる。また、PETフィルムは、いろいろな厚さで使用することができる。PETフィルムの厚さは、通常、約5〜150μmの範囲である。
一方、接着性フィルムの1構成員としてそのまま使用されるべきタイプの基材は、以下に列挙するものに限定されるわけではないが、例えば、トップコート層、ベース層、カラー層等の外観付与層などを挙げることができる。これらの層は、接着性フィルムにおいて、任意の位置で使用できるが、一般的には上層として使用して、外観、意匠性、強度、取扱い性などの向上に寄与することができる。
別法によれば、剥離性のある工程フィルムを予め用意しておいて、その表面に前駆体溶液を塗布し、塗膜化してもよい。次いで、得られた接着性塗膜(フィルム)の上に上記のような上層を積層することができ、さもなければ、別の接着層を介して上層を積層してもよい。
ここで、トップコート層、ベース層、カラー層等の外観付与層などについて説明する。例えばトップコート層は、耐候性及び機械的強度を高め、さらには外観異常(例えば、不均一な伸び、細かいシワの発生など)を防止するのに有効である。トップコート層は、いろいろなプラスチック材料から有利に形成することができるが、特にポリウレタン樹脂から有利に形成することができる。
ベース層は、接着性フィルムを補助的に支持し、その機械的強度やフレキシビリティなどを高めるために用いられるものであり、例えば、金属箔やプラスチックフィルムなどから形成することができる。
外観付与層は、例えば、カラー層(着色層)、パターンフィルム(柄フィルム)、メタリック層などである。換言すると、外観付与層は、例えば金属調(例えばメタリック、シルバーメタリック等)、自動車外板塗装色(例えばメタリック、白パール、パールマイカ、ソリッド等の塗装色)、模様、ロゴ、絵柄などの形状印刷もしくはデジタルプリントを付与しうる層やコーティング、フィルム等である。金属蒸着層なども外観付与層の範疇に含まれる。
本発明による接着性フィルムは、いろいろな形態で有利に使用することができるが、好ましくは、オレフィン樹脂からなる成形品の表面に接着性フィルムの接着層を介して接合されたものであって、溶融した熱可塑性オレフィン樹脂に接着性フィルムの接着層側を合わせた状態で成形品のオレフィン樹脂を冷却固化して成形品及び接着性フィルムを一体化したものである。すなわち、本発明によれば、溶融した熱可塑性オレフィン樹脂を射出成形、ブロー成形、押出し成形などに供する時に、架橋された変性オレフィンを接着層に有する本発明の接着性フィルムを一体成形することによって、オレフィン樹脂からなる成形体と接着性フィルムとを強固に一体的に接合することができる。また、その際、変性オレフィンは架橋されているので、例えば160〜200℃の如き高温においても溶融しないような高い高温凝集力を一体成形品に付与することができる。よって、得られる一体成形品において、接着層の凝集破壊に原因した外観異常(例えば、長時間の冷却の間に発生するフィルムのズレ)を防止できる。
本発明は、上記したような接着性フィルムの他に、本発明の接着性フィルムを備えた一体化成形品と、その製造方法にある。
本発明による一体化成形品は、オレフィン樹脂からなる成形品と、該成形品の表面に接着層を介して一体的に接合された接着性フィルムとを有する一体化成形品である。この一体化成形品において、接着性フィルムは、上記した本発明のものであり、また、一体化成形品は、高温溶融した熱可塑性オレフィン樹脂に接着性フィルムの接着層側を合わせた状態で成形品のオレフィン樹脂を冷却固化して前記成形品及び前記接着性フィルムを一体化したものである。
また、オレフィン樹脂からなる成形品と、該成形品の表面に接着層を介して一体的に接合された接着性フィルムとを有する一体成形品を製造する方法は、下記の工程:
本発明の接着性フィルムを作製すること、及び
高温溶融した熱可塑性オレフィン樹脂に接着性フィルムの接着層側を合わせた状態で成形品のオレフィン樹脂を冷却固化して成形品及び接着性フィルムを一体化すること
によって実施することができる。
本発明方法の実施において、好ましいことに、高温溶融した熱可塑性オレフィン樹脂に接着性フィルムの接着層側を合わせる場合、その中間に接合層あるいはボンディング層を介在させることは不必要であり、金型の所定の部位に予め配置されているかもしくは成形時に金型の所定の部位に導入される熱可塑性オレフィン樹脂に本発明の接着性フィルムを直接的に適用し、塗膜化することもできる。また、一体化成形には、例えば、射出成形、ブロー成形、押出し成形などの常用の成形方法を有利に使用することができる。
引き続いて、本発明による一体化成形品とその製造方法をさらに詳細に説明する。
本発明による一体化成形品において、基体となる成形品は、いろいろな樹脂から形成することができるが、好ましくは、熱可塑性の樹脂、とりわけオレフィン樹脂から形成することができる。オレフィン樹脂は、成形性や加工性が良好であるばかりでなく、衝撃吸収性などにも優れているからである。オレフィン樹脂の例としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、例えば低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレンプロピレンブロック共重合体、エチレンプロピレンランダム共重合体、ポリブテン、あるいはこれらの混合物などを挙げることができる。また、上述のオレフィン樹脂とエチレンプロピレンジエン三元共重合体(EPDM)等のエラストマーとの機械的ブレンド、部分架橋したオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、その他を挙げることができる。もちろん、必要ならば、オレフィン系樹脂以外の樹脂材料あるいはその他の材料を用いて成形品を形成してもよい。
本発明方法では、高温溶融した熱可塑性オレフィン樹脂に接着性フィルムの接着層側を合わせた状態で成形品前駆体のオレフィン樹脂を冷却固化して成形品及び接着性フィルムからなる一体化成形品を製造する。この場合に使用する成形方法は、特に限定されるものではないが、なかんずく、射出成形法、例えばフィルム一体射出成形法等、ブロー成形法、例えばフィルム一体ブロー成形法等、押出し成形法、例えばフィルム共押出し成形法等を有利に使用することができる。
上記したいずれの成形方法も、常用の技法に基づいて実施できる。例えば射出成形法は、接着性フィルムを射出成形用の金型に、その接着性フィルムの表面(接着層を有しない側)を金型の内壁に当接させた状態で固定した後、成形用のオレフィン樹脂を金型に射出し、冷却し硬化させる。接着性フィルムを表面に備えた一体化脂成形品が得られる。
また、ブロー成形法は、例えば、押出し機により押出されたパリソンを金型で挟み、空気圧で膨張させることによって金型の形状に追従させて成形する。金型の内壁には、接着性フィルムを予め固定しておく。冷却固化すると、接着性フィルムを表面に備えた一体化成形品が得られる。
さらに、押出し成形法は、例えば、目的とする一体化成形品に対応するプロファイルを備えた金型の内壁に接着性フィルムを予め固定した後、一定幅の成形用のオレフィン樹脂を押出し成形し、続けて切断、曲げ加工などを行う。接着性フィルムを表面に備えた一体化成形品が得られる。
引き続いて、本発明をその実施例を参照して説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものでないことは言うまでもない。
〔材料の説明〕
本実施例において、接着性フィルム等の作製のため、下記の材料を使用した。
非塩素系変性ポリオレフィン(ヒドロキシ基含有)ワニス:
商品名「ユニストールP−801」、三井化学社製;以下、「P−801」という。
非塩素系変性ポリオレフィン(カルボキシル基含有)ワニス:
商品名「ユニストールP−401A」、三井化学社製;以下、「P−401A」という。
非塩素系ポリプロピレンの非水ディスパージョン:
商品名「ユニストールR−120K」、三井化学社製;平均粒径:10μm;以下、「R−120K」という。
ポリイソシアネート(HDIアダクト体)硬化剤:
商品名「コロネートHL」、日本ポリウレタン社製;以下、「HL」という。
ポリイソシアネート(TDIアダクト体)硬化剤:
商品名「スミジュールL−75」、住友バイエルウレタン社製;以下、「L−75」という。
アジリジン硬化剤:
商品名「CX100」、アビシア社製;以下、「CX100」という。
ポリイソシアネート(IPDI3量体)硬化剤:
商品名「ベスタナートT1890E」、ダイセルヒュルス社製;以下、「1890E」という。
触媒:
ジブチル錫ジラウレート;以下、「DBTDL」という。
ポリウレタン接着剤:
商品名「ニッポラン3124」、日本ポリウレタン社製;以下、「N3124」という。
比較例1
フィルムサンプルの作製
本例では、比較のため、100重量部のN3124及び5重量部のHLから接着層形成用プレ溶液を調製した。得られたプレ溶液を50μm厚の2軸延伸PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(商品名「T60#50、東レ社製)上にバーコーターで塗布し、80℃の熱風オーブン中で5分間にわたって加熱し、硬化させた。約15μm厚の接着層が得られた。
次いで、予めコロナ放電処理を施した100μm厚のポリオレフィンフィルム(商品名「RXC−3」、東セロ社製;ポリプロポレン成分及びポリエチレン成分を含む)に接着層を積層し、50℃で3日間にわたってエージングした。約165μm厚の3層構造フィルムが得られた。
比較例2
フィルムサンプルの作製
本例では、比較のため、非塩素系変性ポリプロピレンの非水ディスパージョン(R−120K)をそのまま使用した。50μm厚の2軸延伸PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(商品名「T60#50、東レ社製)の片面にシランカップリング剤(商品名「A−1000」、日本コニカ社製)を塗布し、100℃で焼き付けることによって易接着処理を施した。次いで、PETフィルムの離型処理面に非水ディスパージョン(R−120K)をバーコーターで塗布し、80℃の熱風オーブン中で10分間にわたって加熱して乾燥させ、さらに180℃の温度で5分間にわたって加熱して溶融させた。硬化後、約65μm厚の2層構造フィルムが得られた。
実施例1〜21及び比較例3〜5
50μm厚の2軸延伸PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(商品名「T60#50、東レ社製)の片面にシランカップリング剤(商品名「A−1000」、日本コニカ社製)を塗布し、100℃で焼き付けることによって易接着処理を施した。
次いで、下記の第1表に記載の組成をもった接着層形成用プレ溶液を調製した。得られたプレ溶液をPETフィルムの離型処理面にバーコーターで塗布し、80℃の熱風オーブン中で30分間にわたって加熱し、硬化させた。約65μm厚の接着性フィルムが得られた。
Figure 2008030227
Figure 2008030227
Figure 2008030227
上記した第1表のデータから理解できるように、接着層の樹脂(P−801及びP−401)は、どちらともポリプロピレン成分及びエチレン成分を含むために、以下の評価試験例において明らかにするように、基材樹脂(PP、PE及びTPO)に対して良好な接着力を示すことができる。これに反して、両成分を含まないP−901は、基材樹脂に対する接着性に劣っている。
要するに、次のように考察できる。基材樹脂と接着層の樹脂とでポリプロピレン成分及びエチレン成分のいずれかをもつと、良好な接着性を示す傾向がある。基本的な考え方としては、接着性フィルムが接着されるべき基材樹脂とできるだけ近い成分を接着層の組成物中に主成分としてもしくはできるだけ多い量で配合するとともに、そこに架橋剤を配合すると、高温での凝集力を高めることができる。一般的には、ポリプロピレン成分、エチレン成分又はこれらの両成分を含む基材樹脂が広くかつ容易に入手可能であるので、これらの基材樹脂に組み合わせて、接着性フィルムの接着層として、ポリプロピレン成分、エチレン成分又はこれらの両成分を含む組成物を使用することで、より汎用性のある製品を提供することができる。
評価試験例1
塗膜化時の加工性の評価
本例では、実施例1及び2ならびに比較例1〜4において作製したフィルムサンプルについて、下記の手順に従い、「塗膜化時の加工性」を評価した。なお、先の説明から理解されるように、比較例1の接着層はオレフィンフィルム、比較例2の接着層はディスパージョン由来のフィルム、比較例3、実施例1、実施例2及び比較例4はそれぞれ溶液由来のフィルムであり、但し、架橋の度合いは後者ほど増加している。
それぞれのフィルムサンプルについて、接着層を乾燥塗膜として得るのに必要な熱風オーブンの最高温度(接合層の焼付け条件)を記録し、焼付け温度が100℃までのものを「合格」、焼付け温度が100℃を上回るものを「不合格」と判定した。次いで、焼付け工程の終了後、熱風オーブン内を目視で観察し、汚染が認められないものを「合格」、例えば乾燥粉末のような汚染物の付着が認められたものを「不合格」と判定した。下記の第2表に記載の評価結果が得られた。
Figure 2008030227
上記第2表の評価結果から、次のような考察が得られる。フィルムロールからフィルムを連続的に繰り出して接着剤を塗布し、オーブン内で乾燥及び硬化させた後に再びロールに巻き取る方式の常用の製造設備では、接着剤の溶剤乾燥を想定した100℃程度までのものがほとんどで、180℃の如き高温で焼付けできる製造設備は稀である。また、最終的に180℃の温度で焼付けるに至るまでには、発泡やハジキのない塗膜を形成するために溶剤分を徐々に乾燥させることが必要であり、低温から始まる複数温度のオーブンを焼付け温度180℃のオーブンの前段に設けることが必要であり、製造ラインのライン長が大掛かりなものとなる。
実施例1及び2におけるように、焼付け温度80℃のオーブンで乾燥及び硬化ができるものは、製造面でも汎用性が高い。これに対して、比較例2では、180℃付近の高温においてディスパージョンの溶融し、樹脂粒子どうしがくっつきあって塗膜化するまでは細かい粒子の状態であり、オーブン内で乾燥した状態のときに熱風によって飛散せしめられ、オーブンの内部の汚染を引き起こす。また、この汚染物がオーブンに残留したままであると、次にオーブンに搬入された被加熱物の表面に汚染物が付着し、異物に付着した不良品しか得られない。実施例1及び2におけるように溶液由来のフィルムであれば、このような異物付着の問題が発生することはない。
評価試験例2
高温せん断引張保持力の評価
本例では、実施例1及び2ならびに比較例1〜4において作製したフィルムサンプルについて、下記の手順に従い、「高温せん断引張保持力(凝集力)」を評価した。
0.5mm厚のステンレス鋼板(SUS板;品番「SUS430」)の片面にシランカップリング剤(商品名「A−1100」、日本コニカ社製)を塗布し、100℃で焼き付けることによって離型処理を施した。次いで、各例で作製したフィルムをその接着層がSUS板に接触するようにその上方に載置し、180℃の熱風オーブン中で15分間にわたって焼付けを行った。PETフィルム/接着層/SUS板の有効接着面積(三者がすべて接着している面積)が17.5mm×20mmである3層構造のサンプルが得られた。
それぞれのサンプルについて、熱風オーブン付きのテンシロン型引っ張り試験機を用いて異なる雰囲気温度(140℃、160℃、180℃及び200℃)で引張強度の最大値(最大荷重N)を測定した。引張強度の測定に際しては、SUS板とPETフィルムを180°方向に50mm/分の速度で引っ張った。最大荷重が20N以上であるものを「合格(A)」、10N以上〜20N未満であるものを「合格(B)」、そして10N未満であるものを「不合格」と判定した。下記の第3表に記載の評価結果が得られた。
Figure 2008030227
上記第3表の評価結果から理解できるように、比較例1の場合、オレフィンフィルムは140℃である程度のせん断保持力(凝集力)をもつけれども、より高温になると凝集力を示さなくなる。また、オレフィンフィルムは、熱可塑性であるので、軟化を経て溶融に至る。比較例3の場合も、硬化剤を配合していない溶液系の変性ポリオレフィンであるため、比較例1とほぼ同様の挙動を示す。溶液系の変性ポリオレフィンに硬化剤を配合した実施例1及び2の場合には、架橋が行われている結果、凝集力の向上を示している。また、ディスパージョンタイプの変性ポリオレフィンである比較例2の場合には、高い凝集力が確認されたが、これは、分子量が高い故に溶剤に溶けにくいことに起因しているものと考察される。なお、せん断保持力(凝集力)が高いことの必要性は、以下に説明する評価試験例4(射出成形機でのフィルム一体成形性)との相関で分かるであろう。
評価試験例3
接着力の評価
本例では、実施例1及び2ならびに比較例1〜4において作製したフィルムサンプルについて、下記の手順に従い、「接着力」を評価した。
1.0mm厚のアルミニウム板(Al板;品番「A5052P」、コーティングテスター工業社製)を用意した。次いで、各例で作製したフィルムをその接着層が上方を向いた状態でAl板に固定した。次いで、下記の3種類の樹脂板(厚さ3mm):
ポリプロピレン板(PP):商品名「MH4」、日本ポリプロ社製
ポリエチレン板(PE):商品名「ノバテックHD HJ371」、日本ポリエチレン社製
サーモプラスチックオレフィン板(TPO):商品名「サーモラン5800B」、三菱化学社製
をフィルムの接着層を介してAl板の上に載置し、240℃の熱風オーブン中で15分間にわたって焼付けを行った。樹脂が溶融した状態でAl板をオーブンから取出し、25℃まで冷却した。再び硬化した樹脂板からフィルムを引っ張り、樹脂板からフィルムを剥がせるか否かを次の5段階で評価した。
レベル1:剥がせない
レベル2:強く接着しているが、剥がせる(*1)
レベル3:剥がせる
レベル4:容易に剥がせる
レベル5:接着していない(自然に浮いた状態にあり、樹脂板を傾けるとフィルムが落下する)
註)*1…評価試験例4(射出成形機でのフィルム一体成形性)との相関から、レベル2程度の接着力があれば十分であることが分かる。
2+…レベル1に近い接着力
さらに、総合評価のため、3種類の樹脂板のポイントを合計して、ポイント1〜6のものを「合格」、ポイント7〜10のものを「不合格」と判定した。下記の第4表に記載の評価結果が得られた。
Figure 2008030227
上記第4表の評価結果から理解できるように、比較例1及び3ならびに実施例1及び2の場合、すべての樹脂板において良好な接着力が得られた。しかし、比較例2の場合には、ポリプロピレンをベースとするためと考察されるが、PE板において低接着傾向のあることが認められた(但し、総合的には、「接着性あり」と判定された)。比較例4の場合には、低い接着性が認められた。接着性が低下したことの理由としては、オレフィンを含まない架橋剤成分が相対的に少なかったことと、架橋反応が進みすぎて、溶融オレフィン樹脂との相溶性が阻害されたこととが考察される。
評価試験例4
射出成形機でのフィルム一体成形性の評価
本例では、実施例2、比較例1、3及び4において作製したフィルムサンプルについて、射出成形におけるサイクルタイムとの関連において、「射出成形機でのフィルム一体成形性」を下記の手順に従い評価した。なお、射出成形におけるサイクルタイム(成形品を良品として連続して製造できる時間)は、量産性を評価する上での重要なファクタであり、リサイクルタイムが長くなればなるほど、生産性が著しく損なわれることを意味する。
自動車用モール(およそのサイズ:長さ70cm×最大幅5cm×厚さ0.5cm)を作製するために使用されているフィルムインサート射出成形機(横型射出成形機;商品名「FN−5000−50A」、日精樹脂工業社製)を用意し、その金型の内壁に、各例で作製したフィルムをその接着層が露出した状態でセットした。次いで、成形材料として下記の3種類の樹脂:
ポリプロピレン(PP):商品名「MH4」、日本ポリプロ社製
ポリエチレン(PE):商品名「ノバテックHD HJ371」、日本ポリエチレン社製
サーモプラスチックオレフィン(TPO):商品名「サーモラン5800B」、三菱化学社製
を用意し、射出成形機に導入してフィルムインサート一体成形を実施した。成形条件としては、油圧を350t、樹脂温度をおよそ230℃に設定した。フィルムをインサートしない条件下でサイクルタイムが約40秒であるので、約40秒にてフィルムインサート一体成形を実施した。得られた一体成形品について、外観(評価試験例2の性能と相関する)及び接着性(評価試験例3の性能と相関する)を評価したところ、下記の第5表に記載の評価結果が得られた。
Figure 2008030227
上記第5表の評価結果から理解できるように、評価試験例2での数値が低かった比較例1及び2では、PP樹脂及びPE樹脂においてフィルムの浮きやシワといった不具合(射出成形樹脂が、冷却後、成形時に延伸された上層フィルムの元に戻ろうとする応力を抑えきれずに変形したことによる)を起こし、一方、高い数値を示した実施例2及び比較例4では、そのような不具合は発生しなかった。
また、接着性に関しては、評価試験3で「合格」と判定された比較例1及び3、そして実施例4のすべてにおいて高い接着性(剥がせない)を確認することができた。比較例4の場合には、PE樹脂及びTPO樹脂において低い接着性が確認された。

Claims (5)

  1. 変性ポリオレフィン及びヒドロキシ基及び(又は)カルボキシル基と反応して化学結合を形成可能な硬化剤を含む2液型の前駆体溶液から形成された接着層を有する接着性フィルムであって、
    オレフィン樹脂からなる成形品の表面に前記接着層を介して接合されるものであり、かつ
    高温溶融した熱可塑性オレフィン樹脂に該接着性フィルムの接着層側を合わせた状態で前記オレフィン樹脂を冷却固化して前記成形品及び前記接着性フィルムを一体化するものであることを特徴とする多層構造を備えた接着性フィルム。
  2. 前記硬化剤は、イソシアネート化合物からなることを特徴とする請求項1に記載の接着性フィルム。
  3. 前記変性ポリオレフィンは、ヒドロキシ基及び(又は)カルボキシル基を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の接着性フィルム。
  4. オレフィン樹脂からなる成形品と、該成形品の表面に接着層を介して一体的に接合された接着性フィルムとを有する一体化成形品であって、
    前記接着性フィルムは、変性ポリオレフィン及びヒドロキシ基及び(又は)カルボキシル基と反応して化学結合を形成可能な硬化剤を含む2液型の前駆体溶液から形成された接着層を有するものであり、かつ
    高温溶融した熱可塑性オレフィン樹脂に前記接着性フィルムの接着層側を合わせた状態で前記オレフィン樹脂を冷却固化して前記成形品及び前記接着性フィルムを一体化したものであることを特徴とする一体成形品。
  5. オレフィン樹脂からなる成形品と、該成形品の表面に接着層を介して一体的に接合された接着性フィルムとを有する一体成形品を製造する方法であって、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の接着性フィルムを作製することと、
    高温溶融した熱可塑性オレフィン樹脂に前記接着性フィルムの接着層側を合わせた状態で前記オレフィン樹脂を冷却固化して前記成形品及び前記接着性フィルムを一体化することと
    を特徴とする一体成形品の製造方法。
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