JP2007530430A - パターン認識受容体−リガンド:脂質複合体を使用するワクチン - Google Patents

パターン認識受容体−リガンド:脂質複合体を使用するワクチン Download PDF

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Abstract

本発明は、哺乳類において全身性で抗原-非特異的免疫応答及び強力な抗原-特異的免疫応答の両方を誘起するのに有効である、ワクチン及び免疫活性化の方法に関する。この方法は、癌、アレルギー性炎症に関連した疾患、感染症、又は自己-抗原の有害な活性に関連した状態を含む疾患からの、哺乳類の保護に特に有効である。同じくこのような方法において有用な治療的組成物も開示されている。

Description

関連出願
本出願は、2003年7月14日に出願された米国特許出願第10/621,254号の優先権を請求するものであり、その出願の全体が本願明細書に参照として組入れられている。
発明の背景
発明の技術分野
本発明は、両方とも免疫処置プロトコールに有用な、哺乳類における全身の非特異的(すなわち、抗原-非特異的)免疫応答に加え抗原-特異的免疫応答を誘起し、並びに血管新生及び線維形成を誘起する、組成物及び方法を含む。より詳細に述べると、本発明は、リポソーム-Toll-様受容体リガンド複合体を使用し、哺乳類における免疫応答を誘起する組成物及び方法に関する。
技術分野の状態の説明
水の公衆衛生と共に、ワクチン接種による感染症の予防は、最も有効であり、費用効果があり、及び実践的な疾患予防法である。他のモダリティは、抗生物質であっても、死亡率の低下及び人口増加に対しこのような大きい作用は有さない。世界中の人々の健康に対するワクチン接種の影響は、誇張することが困難である。少なくとも世界の一部でのワクチン接種は、以下の9種の主要疾患を抑えている:天然痘、ジフテリヤ、破傷風、黄熱病、百日咳、ポリオ、はしか、ムンプス及び風疹。ワクチンの有効性は、その保護的免疫応答を誘起する能力によって決まり、このことを以下に全般的に説明する。
免疫応答は、外来病原体を認識する能力を有する極めて複雑かつ価値のある恒常性維持機構である。外来病原体に対する最初の反応は「自然免疫」と称され、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、好中球、及び他の白血球の、外来病原体部位への迅速な移動により特徴付けられる。これらの細胞は短期間に、食作用、消化、溶解又は病原体を溶解するサイトカイン分泌のいずれかを行うことができる。自然免疫応答は、抗原-特異性ではなく、一般に「適応免疫応答」が生じるまでの、外来病原体に対する防御の第一線とみなされる。T細胞及びB細胞は両方とも、適応免疫応答に参加する。様々な機構が、適応免疫応答の形成に関与している。全ての可能性のある適応免疫応答形成機構の考察は、本項目の範囲を超えているが;しかし、一部の良く特徴付けられた機構は、抗原のB細胞認識、引き続きの抗原-特異的抗体を分泌するための活性化及び抗原提示細胞への結合によるT細胞活性化を含む。
B細胞認識は、細菌細胞壁、細菌毒、又はウイルス膜に認められる糖タンパク質のような抗原の、B細胞上の免疫グロブリン表面受容体への結合に関する。この受容体結合は、シグナルをB細胞内部に伝達する。これは、当該技術分野において「第一シグナル」と称されるものである。場合によっては、ただひとつのシグナルが、B細胞を活性化するために必要とされる。T細胞の補助に頼らずにB細胞を活性化することができるこれらの抗原は、通常T細胞-非依存性抗原(又は胸腺-非依存性抗原)と称される。別の場合は、「第二シグナル」が必要であり、これは通常ヘルパーT細胞のB細胞への結合により提供される。T細胞の補助が特定抗原に対するB細胞の活性化に必要である場合、この抗原はT細胞依存性抗原(又は胸腺-依存性抗原)と称される。この抗原は、B細胞上の表面受容体への結合に加え、B細胞によりインターナリゼーションされ、その後B細胞内で小さい断片に消化され、抗原性ペプチド-MHCクラスII分子の状況でB細胞表面に提示される。これらのペプチド-MHCクラスII分子は、B細胞に結合するヘルパーT細胞により認識され、これは一部の抗原に必要な「第二シグナル」を提供する。一旦B細胞が活性化されたならば、このB細胞はその抗原に対する抗体を分泌し始め、これは最終的には抗原の失活につながる。別のB細胞活性化方式は、リンパ節及び脾臓の胚中心内での濾胞樹状細胞(FDC)との接触による。濾胞樹状細胞は、リンパ節及び脾臓を通り循環している抗原-抗体(Ag-Ab)複合体を捕獲し、FDCはこれらをB細胞に提示し、活性化する。
別の良く特徴付けられた抗原に対する適応免疫応答の機構は、マクロファージ及び樹状細胞などの抗原提示細胞への結合による、T細胞の活性化である。マクロファージ及び樹状細胞は、強力な抗原提示細胞である。マクロファージは、マクロファージマンノース受容体及びスカベンジャー受容体などの、微生物の構成成分を認識する様々な受容体を有する。これらの受容体は、微生物に結合し、かつマクロファージはそれらを飲み込み、エンドソーム及びリソリーム内で微生物を分解する。一部の微生物は、この経路により直接破壊される。他の微生物は、小さいペプチドに消化され、これはMHCクラスII-ペプチド複合体の状況で、マクロファージ表面上でT細胞に提示される。これらの複合体に結合するT細胞は、活性化され始める。樹状細胞も、強力な抗原提示細胞であり、ペプチド-MHCクラスI分子及びペプチド-MHCクラスII分子を提示し、T細胞を活性化する。
B細胞が新規抗原に結合する場合、このB細胞は、「アイソタイプスイッチ」と称される発達経路(developmental pathway)を経験するように誘導される。この発達の変化の間に、プラズマ細胞は、一般的IgM型抗体産生から、高度に特異的なIgG型抗体産生へスイッチする。この細胞集団内で、一部は「クローン性増殖」と称されるプロセスで繰り返し***を経験する。これらの細胞は成熟し、免疫グロブリンを血中に放出する抗体工場となり始める。これらが完全に成熟した時点で、これらはプラズマ細胞として同定され始め、これはそれらが死滅するまで、一般に成熟に到達後2又は3日間、約2,000個/秒で同じ抗体分子を放出することが可能である細胞である。このクローン群内の別の細胞は、決して抗体は産生しないが、特定の抗原に遭遇した時点でこの抗原を認識しかつ結合する記憶細胞として機能する。
抗原による最初のチャレンジの結果として、ここでは当初のB細胞又は親細胞と同じより多くの細胞が存在し、その各々は当初のB細胞と同じ方法で抗原に応答することができる。結果的にその抗原が2回目に出現した場合、直ぐに正確なB細胞のひとつに遭遇し、かつこれらのB細胞は特異的IgG抗体についてプログラムされているので、免疫応答は直ぐに始まり、より迅速に進展し、より特異的であり、かつより多数の抗体を産生するであろう。この事象は、二次応答又は既往性応答と見なされる。記憶細胞は数ヶ月又は数年生存するので、及び同じく外来物質は時には低レベルの免疫応答を絶えず引き起こすのに十分な微量(minute dose)で再導入されるので、免疫は数年間持続することができる。この方法で、記憶細胞は周期的に補充される。
抗原への初回曝露後の反応は抗体を生じるのが遅いことが多く、産生された抗体量は少なく、すなわち一次応答である。同じ抗原による二次チャレンジ時に、反応、すなわち二次応答は、より迅速かつより大きく、これにより病原性微生物による再感染後の促進された二次応答と等しい免疫状態が実現され、これがワクチンにより誘導されると考えられる目標である。
古典的には、能動ワクチンは、サブユニットワクチン及び全生物ワクチンのふたつの一般的クラスに分けられる。サブユニットワクチンは、全生物の成分から調製され、通常疾患を引き起こし得る生存生物の使用を避けるため、又は全生物ワクチンに存在する毒性成分を避けるために開発される。ヒトにおいてインフルエンザ菌(H. influenza)により引き起こされた髄膜炎に対するワクチンとしてのB型インフルエンザ菌の精製された莢膜多糖物質は、抗原性成分を基にしたワクチンの例である。他方で全生物ワクチンは、ワクチン接種のために生物全体を使用し作成する。生物は、防御免疫を誘起するための必要要件に応じて、不活化又は生存(通常弱毒化)される。例えば百日咳ワクチンは、ホルムアルデヒドによる百日咳菌(Bordetella pertussis)細胞の処理により調製された不活化全細胞ワクチンである。しかし不活化プロセスは通常宿主における特異的抗体の誘導に必要な多くの表面抗原決定基を通常破壊又は変更するので、不活化細胞の使用は、通常免疫原の効力性喪失を伴い実現される。
不活化ワクチンとは著しく異なり、生弱毒ワクチンは、良性であるが、典型的には宿主組織内で複製することができ、恐らくプロセッシングされかつ自然の感染に類似した免疫系に提示される多くの自然の標的免疫原を発現するような生存生物で構成される。この相互作用は、免疫処置された個体が、予め疾患に曝露されているような防御反応を誘起する。これらの弱毒化された微生物は、疾患を引き起こすことはできないが特異的抗体誘導に必要な細胞-表面構成物質の十分な完全性を維持していることが理想的であり、その理由は例えばこれらは、ビルレンス因子を生じるのに失敗し、増殖が非常に遅いか、又は宿主において全く増殖しないからである。加えてこれらの弱毒化された株は、ビルレントな野生型株に復帰する可能性を実質的に有さない。
古典的なワクチン理論は致死的でない又は弱毒化された病原体の予防接種は、次の遭遇時に同じ又は類似の病原体による感染に対する防御を提供することが可能な免疫応答を惹起することを暗示している。このような方法は、所定の数の抗原を持つ、ウイルスにより、及び程度は少ないが細菌により、実現可能である。しかしこれは際限ない数の抗原を発現し得る腫瘍細胞の場合は当てはまらない。加えて古典的ワクチン戦略とは異なり、抗癌ワクチンは、抗原曝露前よりもむしろ曝露後に免疫応答を誘導しなければならない。抗癌ワクチンが成功する場合は、これらは存在する疾患を絶滅することが可能な免疫応答を誘導しなければならず、これには腫瘍抗原の性質及び宿主-腫瘍相互作用に関するより大きい理解を必要とするであろう。遺伝子ワクチンのような現在のワクチンの概念は、細胞性免疫の誘導に向けられている。
遺伝子ワクチンは、それに対し免疫応答が生じる抗原(複数)をコードしているDNA配列を含む。抗原-特異的免疫応答を生じる遺伝子ワクチンに関して、関心のある遺伝子は、哺乳類宿主において発現されなければならない。遺伝子発現は、ワクチン処理された患者において関心のある外来遺伝子を発現し、かつコードされたタンパク質に対する免疫応答を誘導する、ウイルスベクター(例えばアデノウイルス、ポックスウイルス)の使用により実現される。あるいは免疫応答を誘導するために、外来遺伝子をコードしているプラスミドDNAが使用される。これらのいわゆる「裸の」DNAワクチンの投与の主要経路は、筋肉内又は皮下である。恐らくウイルス送達システムは、裸のDNAワクチンよりもより良い炎症及び免疫賦活を誘導するので、一般に、ウイルスベクターシステムは、裸のDNAシステムよりもより良い免疫応答を誘導することが受入れられている。非-特異的免疫応答の誘導に対するウイルスワクチンの性向は、主に完全なカスケードによる及びウイルスベクターの特異的な成分に対する抗原-特異的免疫応答の誘起によるウイルス成分認識の結果として、可能性のある欠点も示すが、しかしこのような免疫応答はワクチンの再投与を防ぐことが多い。
科学的試験及び臨床試験から、免疫系は、癌組織を破壊することが可能であることのかなりの証拠があるが、ほとんどの症例において、免疫系は、腫瘍を認識することに失敗しているか、又は生じた反応は有効であるには余りにも弱いかである。Farzanehら、Immunol. Today、19:294 (1998)参照。早期検出は、多くの症例において腫瘍を治癒することができるが、一旦疾患が遠位臓器に転移し始めると、ほぼ常に死に至る。更に化学療法、放射線療法及び手術の単独又は併用で認められた失望する結果は、多くの研究者の注意を、免疫剤又は生物製剤に移らせている。Ockertら、Immunol. Today、20:63 (1999)参照。従って免疫系の腫瘍退縮を媒介する能力の増大は、腫瘍免疫学の大きい目標である。最近この目標への歩みは、免疫原性腫瘍抗原の同定並びにT細胞-媒介型免疫応答及び腫瘍エスケープの機構のより良い理解により補助されている。Boonら、Immunol. Today、18:267 (1998);Chen、Immunol Today、19:27 (1998)参照。
一部の動物は腫瘍を拒絶するが、他の動物は進行性腫瘍の成長(outgrowth)を示す機構の理解は、細胞及び腫瘍免疫学の基礎となる概念の理解を基に、次第に発展している。多くの腫瘍細胞は標的抗原を発現しているが、これらは一般に免疫応答を刺激することは不可能である。Boonら、(1997);Boonら、J. Exp. Med.、183:725 (1996)参照。細胞傷害性T-リンパ球(CTL)は、腫瘍に対する免疫応答の重要な成分として認められている。Boonら、(1996);Chenら、J. Exp. Med.、179:523 (1994)参照。CTL反応は、腫瘍に対し保護するのに十分であり、かつマウスモデル(Mogiら、Clin. Cancer Res.、4:713 (1998))及びヒト(Gongら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、97:2715 (2000)参照)において、確立された癌であっても排除することができる。強力な抗原-特異的CTL反応の誘導は、多くの現在の癌ワクチン戦略の目標である。
CTL-依存型抗-腫瘍免疫処置戦略の開発は、CTLにより認識された腫瘍抗原の同定及び効果的抗原送達法の開発の両方に依存している。CTLは、自己MHCクラスI分子及び一般に腫瘍細胞内で合成されたタンパク質由来のペプチド抗原からなるリガンドの認識を介し、腫瘍を標的とする。しかしCTL誘導及び増殖の発生に関して、抗原性リガンドは、プロAPCにより通常提供される共-刺激の適切な状況において、CTLに提示されなければならない。外来性抗原のプロAPCの内在性MHCクラスI制限されたプロセッシング経路への送達は、癌ワクチンの設計の重大な挑戦である。現在開発中の抗原送達戦略は、限定されたペプチド、特にin vivoでのプロAPCのクラスI経路のアクセスが可能なタンパク質、腫瘍細胞から単離されたヒートショックタンパク質、又は抗原-負荷したAPCの養子免疫伝達による免疫処置を含む。加えて最近の研究は、ウイルスベクター又はリポソームにより送達された、又は裸のDNAとしての、腫瘍抗原をコードしているDNAワクチンは、強力な抗-腫瘍免疫を誘導することができることを示唆している。
前述のように、ペプチド又はタンパク質の投与に必要な方法は、代謝回転及び分解のために、固有の制限がある。更にCTL前駆体(CTL-P)からのCTL作成は、IL-2の高-親和性IL-2受容体との相互作用が必要であるように見え、このことは抗原-活性化されたCTL-PのエフェクターCTLへの増殖及び分化を生じる。IL-2の不適切性は、Th1細胞及びCTLがアポトーシスによりプログラムされた細胞死を受けることを誘導する。この方法において、免疫応答は迅速に終結し、炎症反応による非特異的な組織損傷の可能性が下がる。
癌のためのCTL法を含む現在のワクチン技術の制限を克服するために、新規かつ改善されたワクチン送達システムの開発が緊急に必要とされている。新規かつ改善されたワクチンの恐らく理想的な成分は、より強力なワクチンアジュバントであろう。これらのワクチンにおいて使用されるアジュバントは、防御免疫を誘起するために感染を密かに模倣し及び/又は局在化された組織損傷を誘導する。しかしワクチンアジュバント及びいかにしてこれらは機能するかに関する現在の知識は、依然不完全である。Toll-様受容体(TLR)は、先天性及び適応免疫系とT細胞及び抗体の反応の発生の間の連関において重要な役割を果たすと考えられている。しかし特異的なTLRによる活性化が、発生する適応免疫応答の種類に影響を及ぼす方法は、依然正確には不明である。例えば異なるTLRの活性化は、異なる種類のT細胞又はB細胞の反応実際につながるのかもしれない。
Toll-様受容体を含むパターン認識受容体は、マクロファージ、樹状細胞、及びNK細胞を含む自然免疫系の細胞により発現された受容体の新たに発見されたファミリーである。これらの受容体は、それらのリガンドの表面上の特異的な構造パターンを認識するので、パターン受容体と称される。TLRの主な役割は、病原性微生物又はそれらの産物の認識、及びリガンド結合後の細胞へのシグナル伝達である。TLRを介したシグナル伝達は、細胞活性化を引き起こし、かつインターフェロン、TNF、IL-12、並びにIL-1及びIL-6などのサイトカインの産生を含む、抗菌防御の引き金を引く。従ってこれらの受容体は、感染物質に対する体の主な最初の防御として役立つ。この受容体ファミリーには現在、12種の同定されたメンバーが存在し、これはパターン認識受容体としても知られている。これらの受容体は、下記を含むある共通の特徴を共有している:(1)主に自然免疫系の抗原提示細胞に対し制限された発現;(2)リガンドのこれらの受容体への結合による、感染性病原体(ウイルス、細菌、真菌など)に対する免疫応答活性化の惹起;及び、(3)ショウジョウバエToll受容体に対する構造類似性。従ってTLR-リガンドの結合によるTLRシグナル伝達の惹起を介した細胞防御の活性化は、免疫刺激を誘導する有効な手段として役立つであろう。
しかし免疫処置のためのTLR-リガンド単独の使用は、最適ではない。例えば抗原に対するワクチン接種のための、TLR-リガンドと抗原の単純な混合は、免疫応答を誘起するにはかなり不十分な手段であることがある。更に精製されたTLR-リガンドの投与は、血流中で迅速な分解を生じることがあり、特に比較的大型の動物及びヒトにおいては非常に高価となることがある。
安全であり、反復投与することができ、かつ感染症、アレルギー及び癌などの、免疫応答の誘起により治療され易い疾患の予防及び/又は治療に有効であるような、全身の非特異的な免疫応答に加え、抗原-特異的免疫応答を誘起することができるより良いワクチンを提供する緊急の必要性が依然存在する。
発明の概要
本発明のひとつの態様は、ワクチンに関する。このワクチンは、以下の成分を含有する:(a)パターン認識分子(受容体)により認識される少なくとも1種のリガンド;及び、(b)送達ビヒクル。このリガンドは、送達ビヒクルへ又はその中で複合される。
好ましくは、このリガンドは、哺乳類において細胞性又は体液性免疫応答を誘起する自然免疫系のパターン認識受容体分子により認識されかつ結合されるであろう。このリガンドは、Toll-様受容体による認識について選択される。Toll-様受容体は、TLR-1、TLR-2、TLR-3、TLR-4、TLR-5、TLR-6、TLR-7、TLR-8、TLR-9、TLR-10、TLR-11、及びTLR-12又はそれらの組合せを含むが、これらに限定されるものではない。TLR-リガンドの例は、グラム陽性菌(TLR-2)、細菌エンドトキシン(TLR-4)、フラジェリンタンパク質(TLR-5)、細菌DNA(TLR-9)、2本鎖RNA及びポリI:C(TLR-3)、並びに酵母細胞壁抗原(TLR-2)を含むが、これらに限定されるものではない。リポソーム-TLR-リガンド複合体(LTLC)を調製するために使用されるTLR-リガンドは、TLRに結合する無傷の生物(例えばグラム陽性菌又は酵母生物)、TLR-リガンドを構成するタンパク質又は糖質の部分的に精製された混合物、TLR-リガンドを構成する精製されたタンパク質又は糖質又は脂質、もしくは未変性のリガンドと同じ様式でTLRに結合及び活性化することが可能であるペプチド又は他の小型分子からなる。これらのリガンドは、より具体的には真菌、ウイルス、リケッチア、寄生体、節足動物又は細菌生物のいずれかの部分に由来した糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質、糖質、脂質、及び/又はタンパク質もしくはペプチド配列であることができる。ひとつの態様において、ワクチンは、複数のリガンドを含む。
本発明のひとつの態様は、ワクチンに関する。このワクチンは、下記成分を含む:(a)哺乳類のワクチン処置のための少なくとも1種の免疫原;(b)パターン認識分子(受容体)により認識される少なくとも1種のリガンド;及び、(c)送達ビヒクル。この免疫原及びリガンドは、送達ビヒクルへ又はその中で複合される。
この送達ビヒクルは、多重ラメラ小胞、カチオン性リポソーム、カチオン性脂質と複合されたコレステロールを含むが、これらに限定されるものではない、いずれか適当なリポソームであることができ、並びに特に、DOTMA(N-[1-(2,3-ジオレオキシルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド)及びコレステロール;DOTAP(1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン)及びコレステロール;DOTIM(1-(2-(オレオイルオキシ)エチル)-2-オレイル-3-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリニウム)及びコレステロール;並びに、DDAB(ジメチルジオクタデシルアンモニウム);PEI(ポリエチレンイミン)、ポリアミン、キトサン、ポリグルタミン酸、硫酸プロタミン、ミクロスフェア、及びコレステロールであるが、これらに限定されるものではない。ひとつの局面において、TLR-リガンドは、帯電したリポソームと混合され、主に電荷-電荷相互作用のために自発的に集成される複合体を形成するであろう。ほとんどの場合、この複合体の送達ビヒクル対リガンドのモル比は、1よりも大きく、典型的には8:1〜16:1の範囲である。
ひとつの局面において、このワクチンは、医薬として許容できる賦形剤を含有する。好ましくはこの賦形剤は、5〜10%ショ糖を含むが、これらに限定されるものではない。
更に別の本発明の態様は、哺乳類において全身性の、免疫原-非特異的免疫応答を誘起する方法に関する。この方法は、哺乳類に、(a)パターン認識分子(受容体)により認識される少なくとも1種のリガンド;及び、(b)送達ビヒクルを含有するワクチンを投与する工程を含む。このリガンドは、送達ビヒクルへ又はその中で複合される。投与工程は、静脈内、腹腔内、皮下、皮内、結節内、筋肉内、経皮的、吸入、鼻腔内、経直腸、経膣、子宮内、外用、経口、眼内、関節内、頭蓋内、及び髄腔内を含むが、これらに限定されるものではないいずれかの経路によることができる。ひとつの態様において、投与工程は、静脈内投与及び結節内投与の組合せである。別の局面において、投与工程は、腹腔内投与及び結節内投与の組合せによる。更に別の局面において、投与工程は、皮内投与及び結節内投与の組合せによる。
ひとつの局面において、本発明の組成物は、約1μg/哺乳類個体〜約1mg/哺乳類個体の投与量で投与される。別の局面において、本発明の組成物は、約1μg/哺乳類個体から約100μg/哺乳類個体の投与量で投与される。更に別の局面において、本発明の組成物は、約1μg/哺乳類個体〜約10μg/哺乳類個体の投与量で投与される。好ましくは、ワクチンの哺乳類への投与は、疾患又は状態に対する免疫処置、及び疾患又は状態に対するエフェクター細胞性免疫の刺激からなる群より選択された結果を生じる。
発明の詳細な説明
本発明は一般に、哺乳類において、特に免疫応答の誘起により治療され易い疾患を有する哺乳類において、免疫応答を誘起するための新規免疫処置戦略及び治療的組成物に関する。特に本発明の方法を使用し治療され易い疾患は、自己免疫疾患、癌、アレルギー性炎症及び感染症を含む。ひとつの態様において、本発明の方法及び組成物は、原発性肺癌、肺転移性疾患、アレルギー性喘息及びウイルス疾患を予防及び治療するために特に有用である。別の態様において、本発明の方法及び組成物は、創傷治癒に有用である血管新生及び線維形成を変調するため、並びに心臓血管系疾患及び骨疾患を治療するために有用である。本発明の方法及び組成物は、自己免疫疾患の素因がある対象において免疫応答を変調するために更に有用である。加えて本発明の方法による免疫応答の誘起は、免疫学的診断及び研究の道具及びアッセイの開発及び実行において有用であることができる。
より詳細に述べると、本発明の遺伝子免疫法は、送達ビヒクルに複合されたパターン認識分子に結合された少なくとも1種のリガンド(パターン認識受容体リガンド(PRRL))を含有する治療的組成物の静脈内又は腹腔内投与(すなわち全身投与)により、哺乳類において免疫応答を誘起することを含む。免疫応答の誘起又は変調は、免疫応答を増強することか、又は免疫応答をダウンレギュレーション(抑制)することを含む。
Toll-様受容体(TLR)を含むパターン認識受容体は、マクロファージ、樹状細胞及びNK細胞を含む自然免疫系の細胞により発現された、新たに発見された受容体ファミリーである。公知のTLR-リガンドの例は、グラム陽性菌(TLR-2)、細菌エンドトキシン(TLR-4)、フラジェリンタンパク質(TLR-5)、細菌DNA(TLR-9)、2本鎖RNA及びポリI:C(TLR-3)、及び酵母(TLR-2)である。エンドサイトーシス性のパターン認識受容体、スカベンジャー受容体又はマンノース-結合受容体に結合する他のリガンドも使用することができる。従って本発明は、あらゆるパターン認識受容体リガンドを使用することができるが、例として本発明は、TLR-リガンドに関して説明される。
リポソーム-TLR-リガンド複合体(LTLC)を調製するために使用されるTLR-リガンドは、TLRに結合する無傷の生物(例えばグラム陽性菌又は酵母生物)、TLR-リガンドを構成するタンパク質又は糖質の部分的に精製された混合物、TLR-リガンドを構成する精製されたタンパク質又は糖質又は脂質、もしくは未変性のリガンドと同じ様式でTLRに結合及び活性化することが可能であるペプチド又は他の小型分子からなる。PRRLは、帯電したリポソームと混合され、主に電荷-電荷相互作用のために自発的に集成される複合体を形成するであろう。ほとんどの場合、この複合体のリポリーム対PRRLのモル比は、1よりも大きく、典型的には8:1〜16:1の範囲である。
本発明の治療的組成物は、送達ビヒクルも含む。本発明の送達ビヒクルは、細胞の形質膜に融合することが可能である脂質組成物を含み、これによりリポソームが、パターン認識受容体リガンド(PRRP)及び/又は核酸を細胞へ送達することが可能になる。リポソームは同じく、免疫原をその表面に組込むか又は免疫原を内部に組込むかのいずれかが可能である。本発明での使用に適した送達ビヒクルは、いずれかのリポソームである。実際本発明は、リポソームとPRRLの組合せの免疫刺激作用は、特定の種類のリポソームに限定されないことを明らかにしている。一部の本発明の好ましいリポソームは、例えば、当業者に公知の遺伝子送達法において通常使用されるリポソームを含む。一部の好ましい送達ビヒクルは、多重ラメラ小胞(MLV)脂質及び押出脂質を含むが、本発明はこれらのリポソームに限定されない。
MLV調製法は、当該技術分野において周知であり、かつ例えば米国特許出願第09/104,759号(同上)に開示されている。本発明に従い「押出脂質」は、MLV脂質と同様に調製されるが、実質的に先細サイズのフィルターを通して押出される脂質であり、これはその全体が本願明細書に参照として組入れられている、Templetonらの論文(Nature Biotech.、15:647-652 (1997))に説明されている。小型の単層小胞(SUV)脂質も、本発明の組成物及び方法において使用することができ、かつ免疫応答の誘起のための核酸との組合せが有効であることが示されている(例えば米国特許出願09/104,759号参照(同上))。他の好ましいリポソーム送達ビヒクルは、ポリカチオン性脂質組成物を有するリポソーム(すなわち、カチオン性リポソーム)を含む。例えばカチオン性リポソーム組成物は、コレステロールと複合されたカチオン性リポソームを含むが、これらに限定されるものではなく、並びに限定ではなく、DOTMA(N-[1-(2,3-ジオレオキシルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド)及びコレステロール、DOTAP(1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン)及びコレステロール、DOTIM(1-(2-(オレオイルオキシ)エチル)-2-オレイル-3-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリニウム)及びコレステロール;PEI(ポリエチレンイミン)及びコレステロール、並びにDDAB(ジメチルジオクタデシルアンモニウム)及びコレステロールを含む。
本発明のリポソームは、あらゆるサイズであることができ、これは約10〜1000ナノメーター(nm)、又はその間のいずれかのサイズを含む。本発明のリポソーム成分は最も好ましくは、コレステロールのような中性脂質と混合された帯電した脂質の混合物で構成される帯電したリポソームからなる。リポソームの正味の電荷は、リポソームとリガンドの間の電荷-電荷相互作用を最大化するために、TLR-リガンドの電荷に従い変動するであろう。例えば細菌DNAをTLR-リガンドとして用い複合体を調製するためには、このDNAは正味負電荷を有するので、カチオン性リポソームが使用される。未帯電のTLR-リガンドについては、抗原提示細胞へのそれらの標的化のために、カチオン性リポソームが好ましいであろう。このリポソームは、ほとんどの場合において、望ましい送達経路に適したサイズの、修飾された多重ラメラリポソームとして配合される。明確化のために、用語リポソームは、本発明の送達ビヒクル成分(copnent)を説明する場合に、本章の残りの部分を通じて使用される。しかしリポソーム成分は、先に説明された送達ビヒクルのいずれかと置換しても良いことは理解されるべきである。
本発明のリポソーム送達ビヒクルは、哺乳類の特定部位を標的化するように修飾することができ、これによりその部位で本発明の核酸分子を標的化し及び使用する。適当な修飾は、送達ビヒクルの脂質部分の化学式の操作を含む。送達ビヒクルの脂質部分の化学式の操作は、送達ビヒクルの細胞外又は細胞内標的化を誘起することができる。例えばリポソームの脂質二層の電荷を変更するために、リポソームの脂質式に化学物質を追加することができ、その結果このリポソームは、特定の帯電特性を有する特定の細胞に融合する。ひとつの態様において、外因性標的化分子のリポソームへの付加(すなわち抗体)による標的化のような他の標的化機構は、本発明のリポソームの必要な成分でなくとも良く、その理由は送達経路が静脈内又は腹腔内である場合は、追加の標的化機構の助けを必要とせずに、免疫学的に活動している臓器での効果的免疫活性化は既に、この組成物により提供されているからである。しかし一部の態様において、標的化分子が結合することができる特定の細胞又は組織を標的化するために、リポソームは、リポソームに組込まれた抗体可溶性受容体又はリガンドなどの標的化物質を用いることにより、特定の標的細胞又は組織へ方向付けることができる。標的化リポソームは、例えば、Hoら、Biochemistry、25:5500-6 (1986);Hoら、J Biol Chem、262:13979-84 (1987);Hoら、J Biol Chem、262:13973-8 (1987);及び、Huangらの米国特許第4,957,735号に説明されており、これらは各々その全体が本願明細書に参照として組入れられている。ひとつの態様において、血漿タンパク質又は他の要因によるリポソームのオプソニン作用が原因の細網内皮細胞のシステム細胞による注射されたリポソームの効果的取込みの回避が望ましい場合、親水性脂質、例えばガングリオシド(Allenら、FEBS Lett、223:42-6 (1987))又はポリエチレングリコール(PEG)-由来の脂質(Klibanovら、FEBS Lett、268:235-7 (1990))を、通常のリポソームの二層に組込み、いわゆる立体的に安定した又は「ステルス」リポソームを形成することができる(Woodleら、Biochim Biophys Acta、1113:171-99 (1992))。様々なこのようなリポソームが、例えばUngerらの米国特許第5,705,187号、Choiらの米国特許第5,820,873号、Tiroshらの米国特許5,817,856号;Tagawaらの米国特許第5,686,101号;Huangらの米国特許5,043,164号、及びWoodleらの米国特許第5,013,556号に開示されており、これらはその全体が本願明細書に参照として組入れられている。
先に考察したように、本発明のワクチン又は治療的組成物は、細胞、組織へ、及び/又は哺乳類へ全身的な組成物の送達に有効な様式で、哺乳類へ投与され、これにより免疫原-特異的免疫応答の誘起が、組成物の投与の結果として実現される。本発明者らは、特異的な標的化が存在しないいくつかの異なる投与様式が、望ましい免疫応答を誘起するのに有効であることを認めたので、本発明の治療的組成物の特定の細胞又は組織への特異的な標的化が可能であるが、これは必ずしもではないことは注目される。適当な投与プロトコールは、in vivo又はex vivo投与プロトコールを含む。本発明に従い、本発明のワクチン又は治療的組成物の患者への適当な投与方法は、組成物の患者への送達に適しているin vivo投与のいずれかの経路を含む。好ましい投与経路は、当業者には明らかであり、これは予防又は治療される状態の種類、使用される免疫原、及び/又は標的細胞集団に応じて決まる。In vivo投与の好ましい方法は、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、結節内投与、冠動脈内投与、動脈内投与(例えば頸動脈へ)、皮下投与、経皮的送達、気管内投与、皮下投与、関節内投与、心室内投与、吸入(例えばエアゾール)、頭蓋内、髄腔内、眼内、鼻腔内、経口、経気管支、経直腸、外用、経膣、子宮内、肺投与、カテーテルの注入浸透、及び組織への直接注射を含むが、これらに限定されるものではない。特に粘膜組織において免疫応答を誘起するいずれかの送達経路が好ましい。このような経路は、経気管支、皮内、筋肉内、鼻腔内、他の吸入、経直腸、皮下、外用、経皮、経膣及び子宮内経路を含む。一部の特に好ましい投与経路は、静脈内、腹腔内、皮下皮内、結節内、筋肉内、経皮、吸入、鼻腔内、経直腸、経膣、子宮内、外用、経口、眼内、関節内、頭蓋内、及び髄腔内を含む。先に考察したように、送達経路の組合せを使用することができ、かつ場合によっては、ワクチン又は組成物の治療作用を増強することができる。従って、本発明者らは、投与経路の2種又はそれよりも多い組合せを、同時に、一方の後他方を短期間内で、又は免疫処置スケジュールに比べ異なる時間間隔で(例えば、初回投与対ブースター)で投与することを企図している。ひとつの態様において、好ましい投与経路は、静脈内、腹腔内又は皮内投与の1種又は複数の、結節内投与との組合せである。別の態様において、標的細胞が腫瘍内又は近傍に存在する場合、好ましい投与経路は、腫瘍又は腫瘍周辺組織への直接注射による。
Ex vivo投与は、組成物が細胞へ接触及び/又は侵入するような条件下での本発明の組成物の患者から採取した細胞集団への投与、並びにリポフェクションされた細胞の患者への戻しなどの、患者の外部で調節工程の一部を行うことを意味する。Ex vivo法は、標的細胞を患者から容易に取り出しかつ患者へ戻すことができる場合に特に適している。
本発明の治療的組成物又はワクチンは、先に説明されたPRRL-リポソーム複合体を、その抗原に対する免疫応答を増強する目的(すなわちワクチン)で、抗原と共に用いて調製することができる。従ってこの態様において、PRRL:リポソーム複合体は、ワクチンアジュバントとして役立つであろう。本発明の目的のために、それに対して免疫処置されるべき抗原は、無傷の微生物又は細胞、部分的に破壊された微生物又は細胞、微生物又は細胞から調製された溶解物、精製されたタンパク質、糖質もしくは脂質、又は微生物もしくは細胞由来のそれらの複合体混合物、又は微生物もしくは細胞由来のペプチド抗原からなる。この説明における用語「細胞」は、腫瘍ワクチンの調製を目的として、自家又は同種異系のいずれかの腫瘍細胞を第一に意味する。「微生物」は、ウイルス、細菌、真菌、原生動物、又は寄生体のいずれかの病原体を意味する。
免疫処置のためのPRRL単独の使用は最適ではない。例えば抗原に対するワクチン接種のために、TLR-リガンドと抗原の単純な混合は、免疫応答の誘起の比較的効果のない手段である。図1-4を参照のこと。更に精製されたTLR-リガンドの投与は、血流中で迅速な分解を生じることがあり、かつ特に大型の動物及びヒトについては非常に高価なものとなる。本発明の組成物は、特に免疫活性化(局所及び全身の両方)のため及びT細胞反応を誘起するために、TLR-リガンドの効果を増強するのに非常に有効な方法のひとつとしてリポソームなどであるが、これに限定されない送達ビヒクルを使用する。TLR-リガンドと組合せて投与されるリポソームは、ふたつの目的で役立つ。ひとつは、リポソームとTLR-リガンドの組合せは、リポソームとの相乗的な免疫刺激の相互作用により、TLR-リガンドの固有の免疫刺激特性を大きく増強するために役立つ。第二にワクチンに関して、このリポソームは、TLR-リガンド及び抗原を、密に近接させる物理的手段として役立つことができる。これは次に、TLR-リガンドにより活性化される同じ抗原提示細胞が、T細胞及びB細胞に対する抗原も提示することを確実にする。
免疫活性化のためのリポソーム-TLR-リガンド複合体(LTLC)の投与。ひとつのTLR-リガンド(細菌DNA)と共に製剤されたLTLCを用いる先の研究を基に、他のTLR-リガンドと共に調製されたLTLCは、高度の免疫刺激性であることが予想される。特にリポソームとTLRの組合せは、いずれかの成分単独よりもはるかに強く刺激するであろう。しかし異なるTLRを刺激するための異なるTLR-リガンドの使用は、定量的及び定性的の両方で異なる免疫応答を誘導する可能性もある。従って異なるLTLC製剤の使用は、誘起される免疫応答の種類を選択的に操作するために使用することができる。LTLCは、全身性又は局所的のいずれの免疫刺激が望ましいかにより、様々な経路により投与することができる。例えば最大の全身の免疫活性化は、LTLCの静脈内又は腹腔内投与により実現されるのに対し、LTLCの吸入を用い、肺内の局所的免疫活性化を誘導することができる。好ましい投与経路は、吸入、静脈内、経口及び腹腔内である。
LTLCによる免疫活性化を用い、自然免疫の強力な活性化により改善することができる様々な疾患を治療することができる。LTLCのひとつの治療的適用は、肺、皮膚、肝臓、腹腔、及び骨髄を含む、様々な部位の癌の治療である。第二の適用は、肺もしくは気道、又は他の部位のウイルス、真菌、及び細菌の感染症を含む、感染症の治療又は予防である。別の適用は、喘息及びアレルギー性鼻炎を含むアレルギー性疾患の予防又は治療である。別の適用は、ワクチン及び/又は免疫療法的処置に役立つ又はこれを促進するために、造血系分化又は造血系リモデリングを作成することである。
LTLC及び抗原を使用するワクチン接種。LTLCの免疫刺激特性は、更にそれらをワクチンにおける抗原に対するブースター免疫応答のためのアジュバントとして非常に効果的にする。このLTLCのアジュバント特性は、ワクチン抗原に対するT細胞反応及び抗体反応の両方を増大する。LTLCを用いワクチンを調製するために、それに対し免疫処置される抗原を、予め作成されたLTLCに添加するか、又は最初にリポソームに組込み、その後TLR-リガンドと混合することができる。
LTLC+抗原から調製されたワクチンは、通常の経路(IM、SC、ID)を含む様々な経路で投与することができる。更にこのワクチンは、粘膜表面に塗布し、局所的免疫応答を誘導することができる。例えば吸入されたLTLCワクチンを用い、抗原に対する肺の免疫応答を誘起することができる。LTLCを用いて調製されたワクチンは、ワクチンのLTLC成分に対する有害な免疫を誘導することなく、反復投与することもできる。LTLCワクチンにおいて使用された抗原(複数)は、タンパク質、ペプチド、糖質、リポタンパク質、又は前述のいずれかもしくは全ての複合混合物からなることができる。これらの抗原は、細胞溶解液、病原性生物溶解液、又はそれらの細胞もしくは生物の精製もしくは合成された成分に由来する。加えてワクチンは、正常細胞タンパク質に対する治療的な交差反応性免疫応答を誘起するために、正常な細胞又は細胞タンパク質を用い、調製することもできる。後者の適用例は、アルツハイマー病の治療的モジュレーションに関するβ-アミロイドタンパク質に対する免疫処置を含む。ワクチンは、脳、腎臓又は関節などであるが、これらに限定されない、体の特定部位のタンパク質の異常な生成により引き起こされた疾患に対して使用されることもある。
リポソームなどであるが、これに限定されない送達ビヒクルの使用は、特に免疫活性化(局所的及び全身性の両方)のため及びT細胞反応の誘起のためにTLR-リガンドの効果を増強する有効な方法のひとつである。TLR-リガンドと組合せて投与されたリポソームは、二つの目的に役立つ。第一に、リポソームとTLR-リガンドの組合せは、リポソームとの相乗的免疫刺激相互作用により、TLR-リガンドの固有の免疫刺激特性を大きく増強するために利用することができる。第二にワクチンに関して、リポソームは、TLR-リガンド及び抗原を、密に近接させる物理的手段として利用することができる。これは次に、TLR-リガンドにより活性化される同じ抗原提示細胞が、T細胞及びB細胞に対する抗原も提示することを確実にする。
本発明者らは、PRRLとリポソームの組合せは、静脈内又は腹腔内注射により投与された場合、in vivoにおいて高度に免疫刺激性であるという驚くべき発見を成している。この免疫応答の効力は、リガンド又はリポソームのいずれかの単独の投与により誘導される反応よりもはるかに大きく(実施例1-4参照)、この複合体の静脈内又は腹腔内投与により左右される。従って本発明のPRRL-脂質複合体は、静脈内又は腹腔内に投与された場合に、強力な全身性の抗原-非特異的免疫応答を誘導し、これは複数の異なる免疫エフェクター細胞のin vivoにおける活性化を生じる。加えて本発明者らは、このような本方法により投与されたLTLCにより作成された免疫応答は、強力な抗-腫瘍、抗-アレルギー及び抗-ウイルス特性を有することを発見した。このような本発明の治療的組成物により誘導された免疫活性化は、LPS(エンドトキシン)又はポリI/C(抗ウイルス免疫応答の古典的インデューサー)のいずれかにより誘導されたものよりも、量的により強力である。更に誘導された免疫刺激の種類(例えば、誘導されたサイトカインのパターンにより特徴付けられる)も、LPS又はポリI/Cにより誘導されたものとは性質が異なる。最後にこの作用は、ウイルス送達システムを使用し経験するカスケードの問題点と関連しているようには見えない。
しかし現時点で、本発明者らは、これらのLTLCアジュバントの効能の基礎となる免疫学的機構についてほとんど知らない。帯電したリポソームのエンドサイトーシスは、恐らく抗原及びTLR-リガンドの両方の抗原-提示細胞のエンドソーム区画への導入に役立ち、そこで抗原プロセッシング及びTLR活性化の両方が発生するであろう。非常に強力なT細胞反応を誘起するこの独自のアジュバントシステムの特徴は、抗原提示に対する様々なTLRの活性化作用及び適応免疫の誘導を研究するための道具としての使用について研究されるであろう。様々なLTLCが最初にそれらの自然免疫に対する作用について評価され、次にペスト菌(Yersinia pestis)に対する適応免疫及び防御免疫の誘起についてモデル抗原及びエルシニアタンパク質により評価された。これらの研究は、ワクチンアジュバント及び全般的なTLR活性化の役割に関する本発明者らの基本的理解を増大し、更にエルシニアのような噴霧化された病原体に対するより効果的な粘膜ワクチンの開発を助けるであろう。
投与経路が静脈内である場合、免疫の原発部位(すなわち、免疫応答の誘起)は、非常に多数のエフェクター細胞(例えば、T細胞、B細胞、NK細胞)及び抗原提示細胞(例えば、マクロファージ、樹状細胞)の両方を含む免疫学的に非常に活発な器官である肺である。同様に投与経路が腹腔内である場合、免疫の原発部位は、脾臓及び肝臓であり、両方とも免疫学的に活発な器官である。
本方法で投与されたTLR-リガンド:リポソーム複合体の予想外の免疫刺激特性のために、本発明の遺伝子免疫法は、従来のアジュバントを避けることができるのでヒト治療において特に有用である。従来のアジュバントの一部は毒性があり(例えば、フロイントのアジュバント及び他の細菌細胞壁成分)及び他のものは比較的効果が低い(例えば、アルミニウム-ベースの塩及びカルシウム-ベースの塩)ので、このことは特に本発明の利点である。更に現在米国において臨床使用が承認された唯一のアジュバントは、アルミニウム塩の水酸化アルミニウム及びリン酸アルミニウムであるが、いずれも細胞-媒介型免疫を刺激しない。加えて下記実施例において示されるように、アジュバント作用を持つことが宣伝されている従来の裸のDNA送達は、抗原-非特異的免疫応答を刺激する点で本組成物よりもはるかに効果が低い。最後にウイルスベクター-ベースの遺伝子ワクチン投与の多くのプロトコールとは異なり、本方法は、補体カスケードのような、免疫応答の非-特異的アーム(arm)に関連した結果を伴うことなく、本願明細書に説明された治療的組成物を反復して送達するために使用することができる。
本発明の更なる態様において、本発明者らは、前述の方法の抗原-非特異的免疫刺激作用の利点を利用し、更に哺乳類の組織において発現された(すなわち、転写制御配列に機能的に連結している)免疫原及び/又はサイトカインをコードしている核酸配列が、更にLTLCと複合されているような、より強力な遺伝子免疫戦略を開発している。本発明者らは、LTLCにより誘起された強力な抗原-非特異的免疫応答と一緒にした、免疫原の発現により誘起された抗原-特異的免疫応答の組合せが、先に説明された遺伝子ワクチンよりも著しく大きいin vivo効能を有するワクチンを生じる(実施例5,6b-c, 9参照)ことも発見した。この作用は、サイトカインが組織において発現されるように、サイトカインをコードしている核酸分子を同時-投与することにより、更に増強することができる。
更に癌患者における本組成物の静脈内投与に関して、肺は、転移性腫瘍が播種する主たる部位である。本発明の方法は、癌を有する哺乳類において特に成功しているが、その理由は、これは原発性腫瘍を軽減又は除去し、かつ巨大な転移性腫瘍を含む既に存在する転移性腫瘍を制御するのに十分に強力な免疫応答を誘導するからである。従って本発明の遺伝子免疫法及び組成物は、先に説明された遺伝子免疫法とは異なり、全身性の抗原-非特異的免疫応答(従来のアジュバントに類似)、及び核酸が腫瘍抗原をコードしている場合には、in vivoにおいて確立された腫瘍を著しく減少又は除去するのに有効である哺乳類における強力な抗原-特異的な肺内の(静脈内投与;実施例9参照)免疫応答の両方を誘起する。
本発明のひとつの態様は、哺乳類において哺乳類免疫応答の全身性の抗原-非特異的免疫応答を誘起する方法である。この方法では、(a)送達ビヒクル;及び、(b)送達ビヒクルへ又はその中に複合されたパターン認識受容体リガンド(PRRL)を含有する、治療的組成物が、静脈内又は腹腔内投与により哺乳類へ投与される。本発明の方法によるこのような組成物の投与は、組成物が投与された哺乳類において全身性の抗原-非特異的免疫応答の誘起を生じる。前述のように、この免疫応答は加えて、強力な全身性の、抗-腫瘍特性、抗-アレルギー性炎症(すなわち防御)特性、及び抗-ウイルス特性を有する。
本発明の方法に有用な治療的組成物は、TLR-リガンドを構成するタンパク質又は糖質の部分的に精製された混合物の、TLR-リガンドを構成する精製されたタンパク質又は糖質又は脂質の、もしくは未変性のリガンドと同じ様式でTLRに結合及びこれを活性化することが可能であるペプチド又は他の小型分子の、グラム陽性菌又は酵母生物などであるがこれらに限定されないTLR-リガンドを含む、PRRLを含有する組成物を含む。これらのTLR-リガンドは、帯電したリポソームと混合され、複合体を形成し、これは主に電荷-電荷相互作用のために自発的に集成するであろう。
別の本発明の態様において、免疫応答を誘起する本方法は、(a)PRRL;(b)送達ビヒクル;及び、(c)免疫原をコードしている核酸配列を含む組換え核酸分子を含有する治療的組成物の哺乳類への静脈内又は腹腔内投与を含むように、改変することができる。本発明の用語「免疫原」及び「抗原」は互換的に使用することができるが、用語「抗原」は、体液性及び/又は細胞性免疫応答(すなわち、抗原性)を誘起するタンパク質を説明するために、本願明細書においては主に使用され、並びに用語「免疫原」は、in vivoにおける体液性及び/又は細胞性免疫応答を誘起するタンパク質を説明するために、本願明細書においては主に使用され、そのような免疫原の哺乳類への投与は、哺乳類の組織内で遭遇するものと同じ又は類似したタンパク質に対する免疫原-特異的な(抗原-特異的な)免疫応答を開始する。本発明の免疫原又は抗原は、体液性及び/又は細胞性免疫応答を誘起する、天然又は合成に由来したタンパク質のいずれかの部分であることができる。従って抗原又は免疫原のサイズは、約5〜12個のアミノ酸と小さいか、多量体及び融合タンパク質を含む、完全長タンパク質と大きいことができる。本発明の説明に使用される用語「免疫原」及び「抗原」は、スーパー抗原を含まない。スーパー抗原は、本願明細書において、当該技術分野が認識した用語として定義される。より詳細に述べると、スーパー抗原は、MHC:スーパー抗原複合体を形成するために、MHC分子の細胞外部分(すなわち、ペプチド結合溝ではない)に結合するタンパク質ファミリーの分子である。T細胞の活性は、TCRがMHC:スーパー抗原複合体に結合する場合に、修飾され得る。ある状況下で、MHC:スーパー抗原複合体は、マイトジェンの役割(すなわち、T細胞の増殖を刺激する能力)又は抑制性の役割(すなわち、T細胞サブセットの欠失)を有することができる。
好ましい態様において、免疫原は、腫瘍抗原、アレルゲン又は感染症病原体の抗原(すなわち、病原体抗原)の群から選択される。この態様において、核酸配列は、転写制御配列に機能的に連結されており、その結果この免疫原は、哺乳類の組織において発現され、これにより前述の非-特異的免疫応答に加え、免疫原-特異的免疫応答が哺乳類において誘起される。
更なる本発明の方法の態様において、哺乳類へ投与される治療的組成物は、サイトカインをコードしている単離された核酸分子(ここでは「サイトカイン-コードしている核酸分子」とも称される)を含み、この核酸分子は、1個又は複数の転写制御配列に機能的に連結されている。このような治療的組成物の哺乳類への投与の結果、このサイトカインをコードしている核酸分子は、静脈内投与された場合には、哺乳類の肺組織において発現され、腹腔内投与された場合には、哺乳類の脾臓及び肝臓組織において発現される。用語「ある"a"又は"an"」の実体は、1個又は複数の実体を意味し;例えば、ある(a)サイトカインは、1個又は複数のサイトカインを意味することは注意されなければならない。従って用語「ある"a"(又は"an")」、「1又は複数」及び「少なくとも1」は、本願明細書において互換的に使用することができる。サイトカインをコードしている核酸配列は、免疫原をコードしている核酸配列と同じ組換え核酸分子、又は異なる組換え核酸分子であることができる。
本発明の方法に有用な組成物は、以下に詳細に論ずるように、(a)送達ビヒクル;(b)TLR-リガンドを含有する。加えてこの組成物は、核酸分子を含み、このような分子は、(1)転写制御配列に機能的に連結されていない単離された核酸配列;(2)単離された非-コード核酸配列;(3)転写制御配列に機能的に連結されている免疫原をコードしている単離された組換え核酸分子であり、ここでこの複合体のリポソーム対TLRモル比は、1よりも大きく、典型的には約8:1〜約15:1の範囲であり、核酸:リポソーム複合体は、約1:1〜約1:64の比を有するもの;並びに/又は、(4)サイトカインをコードしている単離された組換え核酸分子を含む。このような組成物の様々な成分は、以下に詳細に説明されている。
哺乳類における免疫応答の誘起は、多種多様な医学的障害、特に癌、アレルギー性炎症及び/又は感染症の有効な治療であることができる。本願明細書において使用される用語「誘起する」は、用語「活性化する」、「刺激する」、「産生する」又は「アップレギュレーションする」と互換的に使用することができる。本発明に従う、哺乳類において「免疫応答を誘起する」とは、免疫応答の活性を特異的に制御又は影響することを意味し、かつ免疫応答の活性化、免疫応答のアップレギュレーション、免疫応答の増強及び/又は免疫応答の変更(例えば、免疫応答型の誘起により、次に哺乳類における先の免疫応答型を、有害又は無効のものから、有益又は防御的なものへ変更すること。)を含むことができる。例えば、Th2-型反応を受けている哺乳類におけるTh1-型反応の誘起、又はその逆は、免疫応答の全般的作用を有害なものから有益なものへ変更することができる。哺乳類において全般的免疫応答を変更する免疫応答の誘起は、アレルギー性炎症、マイコバクテリウム感染症、又は寄生体感染症において特に効果的であることができる。本発明に従い、Th2-型免疫応答(あるいはTh2免疫応答と称される)を特徴とする疾患は、Th1-型Tリンパ球(又はTh1リンパ球)の活性化と比べ、当該技術分野においてTh2-型Tリンパ球(又はTh2リンパ球)として知られているヘルパーTリンパ球サブセットの支配的な活性化に関連している疾患として特徴付けることができる。本発明に従うTh2-型Tリンパ球は、それらの、集合的にTh2-型サイトカインとして知られている1種又は複数のサイトカインの産生により特徴付けることができる。本願明細書において使用されるTh2-型サイトカインは、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-5(IL-5)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-9(IL-9)、インターロイキン-10(IL-10)、インターロイキン-13(IL-13)及びインターロイキン-15(IL-15)を含む。対照的に、Th1-型リンパ球は、IL-2及びIFNを含むサイトカインを産生する。あるいは、Th2-型免疫応答はしばしば、IgG1(そのほぼヒトの同等物はIgG4)及びIgEを含む抗体アイソタイプの支配的な産生により特徴付けられるのに対し、Th1-型免疫応答はしばしば、IgG2a又はIgG3抗体アイソタイプ(そのほぼヒト同等物は、IgG1、IgG2又はIgG3)の産生により特徴付けられる。
好ましくは本発明の方法は、腫瘍、アレルゲン又は感染症病原体に対する免疫応答を誘起する。特に哺乳類における免疫応答の誘起は、細胞-媒介型免疫(すなわち、ヘルパーT細胞(Th)活性、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)活性、NK細胞活性)及び/又は体液性免疫(すなわち、B細胞性免疫グロブリン活性)を調節することを意味し、Th1-型及び/もしくはTh2-型細胞性活性並びに/又は体液性活性を含む。好ましい態様において、本発明の方法は、腫瘍、アレルゲン又は感染症病原体に対するエフェクター細胞性免疫を増加又は誘起する。本願明細書で使用されるエフェクター細胞性免疫は、組成物が投与された哺乳類においてエフェクター細胞の数及び/又は活性が増加することを意味する。特にT細胞活性は、腫瘍細胞又は病原体の領域においてT細胞の数及び/又は活性を増加することを意味する。同様にNK細胞活性は、NK細胞の数及び/又は活性を増加することを意味する。本発明の方法において、エフェクター細胞性免疫は、全身性に並びに治療的組成物が主に標的化された哺乳類の領域内は(すなわち本組成物は、体内の他の部位でも有効であるが、静脈内投与については肺内、及び腹腔内投与については脾臓又は肝臓)の両方において誘起される。本発明に従うエフェクター細胞は、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、Bリンパ球、マクロファージ、単球及び/又はナチュラルキラー細胞を含む。例えば本発明の方法は、腫瘍細胞、アレルゲン又は病原体由来の抗原が提示された場合に、標的細胞の死滅又はサイトカインの放出が可能である哺乳類において、エフェクター細胞の数を増加するために行うことができる。
本発明に従う抗原-非特異的免疫応答(すなわち、非-特異的免疫応答)の誘起は、マクロファージ及び好中球などの非-特異的な免疫細胞の刺激に加え、サイトカイン産生、特にIFN産生の誘導、並びにNK細胞、Bリンパ球及び/又はTリンパ球などのエフェクター細胞の抗原-非特異的な活性化を含む。より詳細には、本発明の方法及び組成物により誘起される全身性で抗原-非特異的免疫応答は、哺乳類においてナチュラルキラー(NK)細胞の機能及び数の増加を生じ、ここでNK機能の増加は、送達されたTLR-リガンド量及びTLR-リガンド:リポソーム比は等しいとして、本発明の組成物で免疫処置されていない哺乳類における、又は非-全身性(すなわち非-静脈内、非-腹腔内)の投与経路により本発明の組成物で免疫処置された哺乳類における、NK細胞機能と比べた場合の、NK細胞機能レベルの何らかの検出可能な増加と定義される。NK機能(すなわち活性)は、適当な標的細胞に対する細胞傷害性アッセイにより測定することができる。NK細胞の細胞傷害性アッセイの例は、実施例1(図1)に示されている。NK細胞活性化は、脾臓、リンパ節、肺及び肝臓を含む様々な器官の細胞上のNK1.1/CD69のアップレギュレーションを、フローサイトメトリー分析により決定することにより測定することができる(実施例4、図4参照)。加えて、本発明の方法及び組成物で誘起された全身性の抗原-非特異的免疫応答は、脾臓及び肺を含む様々な器官で、哺乳類のNK細胞によりIFN-γの産生の増加を生じることができ、ここでIFN産生の増加は、送達されたTLR-リガンド量及びTLR-リガンド:リポソーム比は等しいとして、本発明の組成物が投与されない哺乳類における、又は非-全身性投与経路で本発明の組成物が投与された哺乳類における、NK細胞によるIFN-γの産生と比べた場合の、IFN-γ産生レベルの検出可能な増加と定義される。IFN-γ産生は、IFN-γELISA(当該技術分野において公知;実施例1、図1)により測定することができる。好ましくは、本発明の方法により投与された本発明の組成物は、血液、脾臓又は肺由来の単核細胞5x106個当り少なくとも約100pg/mlのIFN-γを誘起し、より好ましくは少なくとも約500pg/mlのIFN-γ、及びより好ましくは少なくとも約1000pg/mlのIFN-γ、更により好ましくは少なくとも約5000pg/mlのIFN-γ、及びなおより好ましくは少なくとも約10,000pg/mlのIFN-γを誘起する。
従って本発明の方法は、哺乳類が、癌、アレルギー性炎症及び/もしくは感染症を含む、免疫応答が誘起され易い疾患から保護されるか、並びに/又はこの疾患の発生を防止するように、哺乳類において免疫応答を誘起することが好ましい。本願明細書において使用される語句「疾患からの保護」は、疾患の症状の軽減;疾患発生の減少、及び/又は疾患重症度の低下を意味する。哺乳類の保護は、本発明の治療的組成物の、哺乳類に投与された場合に、疾患の発生を防止し及び/又は疾患症状、徴候もしくは原因を治癒もしくは緩和する能力を意味する。従って、哺乳類の疾患からの保護は、疾患発生の防止(予防的治療)及び疾患を有する哺乳類の治療(治療的治療)の両方を含む。特に哺乳類の疾患からの保護は、有益な又は防御的免疫応答を誘導することによる、哺乳類における免疫応答の誘起により実現され、これは場合によっては更に過剰な又は有害な免疫応答を抑制(例えば、低下、阻害又は阻止)することがある。用語「疾患」は、哺乳類の正常な健康状態からの逸脱を意味し、これは疾患症状が存在する場合の状態に加え、逸脱(例えば、感染症、遺伝子変異、又は遺伝子欠損など)が生じているが症状は依然顕在化していない状態も含む。
より詳細には、本願明細書に説明された治療的組成物は、本発明の方法により哺乳類に投与された場合に、好ましくは疾患の緩和、疾患の除去、腫瘍又は疾患に関連した病巣の減少、腫瘍又は疾患に関連した病巣の除去、原発性疾患の発生から生じる続発疾患(例えば、原発性癌から生じる転移性癌)の予防、疾患の予防、並びに疾患に対するエフェクター細胞性免疫の刺激を含むことができる結果を生じる。
本方法において使用される治療的組成物の成分のひとつは、核酸配列であり、これはコード及び/又は非コード核酸配列、並びにオリゴヌクレオチド(以下に説明した)及びより大きい核酸配列の両方を含むことができる。語句「核酸分子」は主に、物理的核酸分子を意味し、語句「核酸配列」は主に、核酸分子上のヌクレオチドの配列を意味し、これらふたつの語句は、互換的に使用することができる。本願明細書において使用される「コードしている」核酸配列は、少なくともペプチド又はタンパク質の一部(例えばオープンリーディングフレームの一部)をコードしている核酸配列を意味し、より詳細には、ペプチド又はタンパク質は発現することができるように、転写制御配列に機能的に連結されているペプチド又はタンパク質をコードしている核酸配列を意味する。「非コード」核酸配列は、ペプチド又はタンパク質のいずれの部分もコードしていない核酸配列を意味する。本発明に従い「非コード」核酸は、プロモーター領域のような転写単位の調節領域を含むことができる。用語「空のベクター」は、用語「非コード」と互換的に使用することができ、特に遺伝子挿入物を含まないプラスミドベクターのような、ペプチド又はタンパク質コード部分が存在しない核酸配列を意味する。語句「機能的に連結されている」は、分子が宿主細胞へのトランスフェクション(すなわち、形質転換、形質導入又はトランスフェクション)時に発現が可能であるような様式での、核酸分子の転写制御配列への連結を意味する。従って「転写制御配列へ機能的に連結されていない」核酸配列は、コード及び非-コードの両核酸配列を含む核酸配列を意味し、これは分子の宿主細胞へのトランスフェクション時に発現が可能であるような様式は、転写制御配列に連結されていない。この語句は、核酸分子中の転写制御配列の存在を除外しないことは注目される。
本発明の一部の態様において、本発明の治療的組成物に含まれた核酸配列は、組換え核酸分子に組込まれており、かつ免疫原及び/又はサイトカインをコードしている。以下に詳細に考察したように、好ましい免疫原は、腫瘍抗原、アレルゲン又は感染症病原体由来の抗原(すなわち病原体抗原)を含む。語句「組換え分子」は主に、転写制御配列に機能的に連結されている核酸分子又は核酸配列を意味するが、これは語句哺乳類に投与される「核酸分子」と互換的に使用することができる。
本発明に従い、単離された又は生物学的に純粋な核酸分子又は核酸配列は、その天然の環境から取り除かれている核酸分子又は配列である。従って「単離された」及び「生物学的に純粋」とは、核酸分子が純粋である程度を必ずしも反映していない。本組成物において有用な単離された核酸分子は、DNA、RNA、又はDNAもしくはRNAのいずれかの誘導体を含むことができる。典型的には、オリゴヌクレオチドは、約1〜約500個のヌクレオチドの核酸配列を有し、より典型的には長さが少なくとも約5個のヌクレオチド、又は最大約500個のヌクレオチドまでの全整数値(例えば6、7、8、9、10など)で増加する長さである。好ましい態様において、本発明で使用するためのオリゴヌクレオチドは、哺乳類において免疫原性であるシトシン-グアニン(CpG)モチーフを含むオリゴヌクレオチドである。別の態様において、オリゴヌクレオチド(例えばCpG)は、脱メチル化される。DNAのCpGモチーフのメチル化は、遺伝子発現の制御及びいくつかの他のエピジェネティックな作用に関連している。これは、CpGを含む細菌又はウイルスDNAの免疫-刺激特性を抑制する。更に当該技術分野において、特定の配列状況においてメチル化されないCpG-モチーフを含む細菌DNA及び合成オリゴデオキシヌクレオチドは、脊椎動物の免疫細胞を活性化することができることもわかっている。
本発明のPRRL:核酸:脂質複合体による免疫活性化は、真核生物に加え原核生物の核酸により誘導することができ、このことは核酸の給源とは無関係に、固有に免疫活性化するPRRL:核酸:脂質複合体の何らかの特性が存在することを示している。本発明者らは、核酸の給源は、核酸-脂質複合体により免疫応答を誘起する能力に対し有意な作用を有さないことを発見したので、従って核酸分子は、哺乳類、細菌、昆虫、又はウイルスの給源を含む、あらゆる給源に由来することができる。本発明のひとつの態様において、本発明の治療的組成物において使用される核酸分子は、細菌の核酸分子ではない。
単離された免疫原-コードしている(例えば、腫瘍抗原-、アレルゲン-、又は病原体抗原-)又はサイトカイン-コードしている核酸分子は、その天然の給源から、B細胞及び/又はT細胞エピトープを有する腫瘍抗原タンパク質、B細胞及び/又はT細胞エピトープを有するアレルゲン、B細胞及び/又はT細胞エピトープを有する病原体抗原、又は相補的サイトカイン受容体に結合することが可能なサイトカインタンパク質をコードすることが可能な全(すなわち完全な)遺伝子又はそれらの一部のいずれかとして、得ることができる。核酸分子は、組換えDNA技術(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、クローニング)又は化学合成を用い作出することもできる。核酸分子は、天然の核酸分子、並びに天然のアレル変種、及びそのような修飾は本発明の方法に有用な免疫原又はサイトカインをコードする核酸分子の能力に実質的に影響を及ぼさないような方法で、ヌクレオチドが挿入、欠失、置換及び/又は倒置されている修飾された核酸分子を含むが、これらに限定されるものではない、それらのホモログを含む。
核酸分子ホモログは、当業者に公知の多くの方法を用いて作製することができ(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning : A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Labs Press, 1989参照)、これはその全体が本願明細書に参照として組入れられている。例えば核酸分子は、古典的突然変異誘発技術及び組換えDNA技術、例えば位置指定突然変異誘発、変異を誘導するための核酸分子の化学処置、核酸断片の制限酵素切断、核酸断片のライゲーション、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅及び/又は核酸配列の選択領域の突然変異誘発、オリゴヌクレオチド混合物の合成、及び核酸分子の混合物の「構築(build)」のための混合物のライゲーション並びにそれらの組合せを含むが、これらに限定されるものではない様々な技術を用いて修飾することができる。核酸分子ホモログは、核酸によりコードされたタンパク質の機能(例えば適宜、腫瘍抗原、アレルゲンもしくは病原体抗原の免疫原性、又はサイトカイン活性)のスクリーニングにより、修飾された核酸の混合物から選択することができる。腫瘍抗原、アレルゲンもしくは病原体抗原の免疫原性のような免疫原性、又はサイトカイン活性をスクリーニングする技術は、当業者に公知であり、様々なin vitro及びin vivoアッセイを含む。
先に説明したように、本発明の免疫原又はサイトカインタンパク質は、完全長免疫原又はサイトカインコード領域を有する核酸分子によりコードされたタンパク質;少なくとも1種のT細胞エピトープ及び/又は少なくとも1種のB細胞エピトープを含む部分的免疫原領域を有する核酸分子によりコードされたタンパク質;相補的サイトカイン受容体に結合することが可能であるサイトカインコード領域を有する核酸分子によりコードされたタンパク質;融合タンパク質;並びに、異なる免疫原及び/又はサイトカインの組合せを含むキメラタンパク質を含むが、これらに限定されるものではない。
本発明のひとつの態様は、腫瘍抗原、アレルゲンもしくは病原体抗原を含む、完全長免疫原の少なくとも一部、又はそのような免疫原のホモログをコードしている単離された核酸分子を含む。本願明細書において使用される「免疫原の少なくとも一部」は、T細胞及び/又はB細胞エピトープを含む免疫原タンパク質の一部を意味する。ひとつの態様において、免疫原-コードしている核酸分子は、そのような免疫原のコード領域全体を含む。本願明細書において使用される、免疫原のホモログは、ホモログをコードしている核酸配列が、天然の免疫原に対する免疫応答を誘起することが可能であるタンパク質をコードしているような、天然の免疫原アミノ酸配列(すなわち天然の、内因性又は野生型の免疫原)と十分に類似しているアミノ酸配列を有するタンパク質である。
本発明の腫瘍抗原-コードしている核酸分子は、T細胞により認識されるエピトープを有する腫瘍抗原、B細胞により認識されるエピトープを有する腫瘍抗原、腫瘍細胞により専ら発現される腫瘍抗原、並びに腫瘍細胞及び非-腫瘍細胞により発現される腫瘍抗原を含むことができる抗原をコードしている。好ましくは、本方法に有用な腫瘍抗原は、少なくとも1種のT細胞及び/又はB細胞エピトープを有する。従って哺乳類の組織における腫瘍抗原の発現は、哺乳類の組織中の腫瘍に対する腫瘍抗原-特異的免疫応答を誘起する。前述のように本発明者らは、本発明の核酸:脂質複合体の投与は、強力な全身性の抗原-非特異的な抗-腫瘍反応をin vivoにおいて誘起し、及びこの作用は、核酸分子により発現された腫瘍抗原に対する抗原-特異的免疫応答を増強することを認めている。
好ましい態様において、本発明の核酸分子は、メラノーマ、扁平上皮癌、乳癌、頭部及び頸部の癌、甲状腺癌、軟部組織の肉腫、骨肉腫、精巣癌、前立腺癌、卵巣癌、膀胱癌、皮膚癌、脳腫瘍、血管腫、血管肉腫、マスト細胞腫瘍、原発性肝癌、肺癌、膵臓癌、胃腸癌、直腸細胞癌、造血系新生物及びそれらの転移性癌の群より選択される癌由来の腫瘍抗原をコードしている。
本発明に従い、本発明の病原体抗原-コードしている核酸分子は、T細胞により認識されるエピトープを有する病原体抗原、B細胞により認識されるエピトープを有する病原体抗原、病原体により専ら発現される病原体抗原、並びに病原体及び他の細胞により発現される病原体抗原を含むことができる、感染症病原体由来の抗原をコードしている。好ましくは本方法に有用な病原体抗原は、少なくとも1種のT細胞及び/又はB細胞エピトープを有し、かつ病原体(すなわち、感染した哺乳類の内在性組織によらない)により専ら発現される。従って哺乳類の組織における病原体抗原の発現は、哺乳類の組織内に加え全身性の病原体に対する抗原-特異的免疫応答を誘起する。
本発明の病原体免疫原は、細菌、ウイルス、寄生体、プリオン、リケッチア又は真菌により発現される免疫原を含むが、これらに限定されるものではない。本発明の方法で使用するための好ましい病原体免疫原は、哺乳類において慢性又は急性の感染症を引き起こす免疫原を含む。例えば本方法で使用するいくつかの好ましい病原体免疫原は、免疫不全ウイルス(HIV)、ヒト結核菌、ヘルペスウイルス、乳頭腫ウイルス、リーシュマニア、トキソプラスマ、クリプトコックス、ブラストミセス、ヒストプラスマ、及びカンジダを含むが、これらに限定されるものではない、慢性感染症を引き起こす病原体由来の免疫原である。同じくブドウ球菌、シュードモナス菌、連鎖球菌、腸球菌、及びサルモネラ菌のような、慢性感染症を引き起こし得る抗生物質耐性菌も含まれる。加えて急性疾患に対する免疫処置に関して、それが由来する免疫原として好ましい病原体は、炭疽菌、フランシセラ、エルシニア、パスツレラ、天然痘、並びに他のグラム陰性菌及びグラム陽性菌病原体を含むが、これらに限定されるものではない。
別の本発明の態様において、本発明の方法又は組成物において使用する病原体抗原は、ウイルス由来の免疫原を含む。前述のように本発明者らは、本発明の組成物及び方法は、ウイルス感染症に対する治療及び防御において特に有用であることがわかった。特に核酸は、その核酸が免疫原をコード又は発現するかどうかにかかわらず、本発明の方法により投与される場合に、in vivoで強力な全身性の抗原-非特異的な抗-ウイルス反応を誘起するPRRL:脂質複合体に更に複合されてよい。核酸配列が、ウイルス抗原が哺乳類組織において発現されるように転写制御配列に機能的に連結されているウイルス抗原をコードしている場合、本組成物は更に、前述の全身性の免疫応答に加え、強力なウイルス抗原-特異的免疫応答を誘起する。好ましい態様において、免疫原は、ヒト免疫不全ウイルス及び猫科免疫不全ウイルスから選択されたウイルスに由来してよい。
別の本発明の態様は、完全長アレルゲンの少なくとも一部又はアレルゲンタンパク質のホモログをコードしているアレルゲン-コードしている核酸分子を含み、並びにT細胞により認識されるエピトープを有するアレルゲン、B細胞により認識されるエピトープを有するアレルゲン、及びアレルギー性炎症に関連した疾患の感作物質であるアレルゲンを含む。アレルゲンは、吸入、皮下又は経口摂取され得る。本発明の治療的組成物において使用するのに好ましいアレルゲンは、花粉、薬物、食品、毒液、昆虫***物、カビ、動物体液、動物の毛及び動物の鱗屑を含む。
別の本発明の態様は、完全長サイトカインの少なくとも一部又はサイトカインタンパク質のホモログをコードしている、サイトカイン-コードしている核酸分子を含む。本願明細書において使用される「サイトカインの少なくとも一部」は、サイトカイン活性を有しかつサイトカイン受容体へ結合することが可能であるサイトカインタンパク質の一部を意味する。好ましくは、サイトカイン-コードしている核酸分子は、サイトカインの全コード領域を含む。本願明細書において使用されるサイトカインのホモログは、サイトカイン活性(すなわち、天然の又は野生型サイトカインに関連した活性)を有するように、天然のサイトカインアミノ酸配列と十分な類似性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質である。本発明に従いサイトカインは、他の細胞の生物学的機能に影響を及ぼすことが可能であるタンパク質を含む。サイトカインにより影響を受ける生物学的機能は、細胞の増殖又は停止(arrest)、細胞分化又は細胞死を含むが、これらに限定されるものではない。好ましくは、本発明のサイトカインは、細胞表面の特異的な受容体に結合することが可能であり、これにより細胞の生物学的機能に影響を及ぼす。
本発明のサイトカイン-コードしている核酸分子は、リンパ球、筋細胞、造血系前駆細胞、マスト細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、単球、上皮細胞、内皮細胞、樹状細胞、間葉細胞、ランゲルハンス細胞、あらゆる細胞起源の肉芽腫及び腫瘍細胞において見られる細胞、並びにより好ましくは間葉細胞、上皮細胞、内皮細胞、筋細胞、マクロファージ、単球、T細胞及び樹状細胞を含むが、これらに限定されるものではない細胞の生物学的機能に影響を及ぼすことが可能なサイトカインをコードしている。
本発明の好ましいサイトカイン核酸分子は、造血系増殖因子、インターロイキン、インターフェロン、免疫グロブリンスーパーファミリー分子、腫瘍壊死因子ファミリー分子及び/又はケモカイン(すなわち、細胞、特に食細胞の移動及び活性化を調節するタンパク質)をコードしている。より好ましい本発明のサイトカイン核酸分子は、インターロイキンをコードしている。更により好ましい本発明の方法において有用なサイトカイン核酸分子は、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-7(IL-7)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-15(IL-15)、インターロイキン-18(IL-18)、及び/又はインターフェロン-γ(IFN-γ)をコードしている。本発明の方法において最も好ましい有用なサイトカイン核酸分子は、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-18(IL-18)及び/又はインターフェロン-γ(IFN-γ)をコードしている。
当業者には明らかであるように、本発明は、全種類の哺乳類に由来したサイトカインに適用されることが意図されている。好ましいサイトカインが由来する哺乳類は、マウス、ヒト及び家庭用ペット(例えば、イヌ、ネコ)である。より好ましいサイトカインが由来する哺乳類は、イヌ及びヒトを含む。更により好ましいサイトカインが由来する哺乳類はヒトである。
本発明に従い、本発明のサイトカイン-コードしている核酸分子は、治療される哺乳類と同じ種の哺乳類に由来することが好ましい。例えば、犬科(すなわちイヌ)核酸分子に由来したサイトカイン-コードしている核酸分子は、犬科の疾患の治療に使用されることが好ましい。本発明は、組換え分子を形成するために、1個又は複数の転写制御配列に機能的に連結されている本発明の核酸分子を含む。前述のように語句「機能的に連結されている」は、分子は、宿主細胞へトランスフェクション(すなわち、形質転換、形質導入又はトランスフェクション)された場合に、発現が可能であるような様式での、核酸分子の転写制御配列への連結を意味する。好ましくは、本発明の組成物において使用される核酸分子は、レシピエント哺乳類における分子の一過性発現が可能である転写制御配列へ機能的に連結されている。延長された免疫活性化の有害作用(例えば、ショック、過度の炎症、免疫耐性)を避けるために、核酸分子によりコードされた免疫原又はサイトカインは、免疫処理された哺乳類において、約72時間〜約1ヶ月間、好ましくは約1週間〜約1ヶ月間、より好ましくは約2週間〜約1ヶ月間発現されることが、本発明の好ましい態様である。1ヶ月よりも長い期間の発現は、延長された免疫活性化に関連した望ましくない作用が発生する場合には、望ましくない。しかしそのような作用が特定の組成物について発生しないか又は回避もしくは制御することができる場合は、延長された発現が受入れられる。ひとつの態様において、一過性発現は、例えば、適当な転写制御配列の選択により実現することができる。一過性の遺伝子発現に適した転写制御配列は、以下で考察される。
転写制御配列は、転写の開始、伸長及び終結を制御する配列である。特に重要な転写制御配列は、プロモーター、エンハンサー、オペレーター及びリプレッサー配列などの、転写開始を制御するものである。適当な転写制御配列は、少なくとも1種の本発明の方法に有用な組換え細胞において機能することができるいずれかの転写制御配列を含む。様々なこのような転写制御配列が、当業者に公知である。好ましい転写制御配列は、哺乳類、細菌、昆虫の細胞、好ましくは哺乳類細胞で機能するものを含む。より好ましい転写制御配列は、シミアンウイルス40(SV-40)、β-アクチン、レトロウイルス末端反復配列(LTR)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、tac、lac、trp、trc、oxy-pro、omp/lpp、rrnB、バクテリオファージラムダ(λ)(例えば、λpL及びλpR並びにそのようなプロモーターを含む融合体)、バクテリオファージT7、T7lac、バクテリオファージT3、バクテリオファージSP6、バクテリオファージSP01、メタロチオネイン、α-接合因子、Pichiaアルコールオキシダーゼ、αウイルスサブゲノムプロモーター(例えば、シンドビスウイルスサブゲノムプロモーター)、バキュロウイルス、タバコが(Heliothis zea)昆虫ウイルス、ワクシニアウイルス、並びに他のポックスウイルス、ヘルペスウイルス、及びアデノウイルスの転写制御配列、更には真核生物細胞において遺伝子発現を制御することが可能な他の配列を含むが、これらに限定されるものではない。追加の適当な転写制御配列は、組織-特異的なプロモーター及びエンハンサー(例えば、T細胞-特異的なエンハンサー及びプロモーター)を含む。本発明の転写制御配列は、腫瘍抗原、アレルゲン、病原体抗原又はサイトカインを含む免疫原をコードしている遺伝子に本来関連している天然の転写制御配列を含むこともできる。
特に好ましい本発明において使用するための転写制御配列は、発現されるべき核酸分子の一過性発現を可能にするプロモーターを含み、これにより、免疫応答を誘起するのに十分な時間の後に終結されるべき核酸分子によりコードされたタンパク質の発現が可能である。免疫系の延長された活性化に関連した有害作用は、核酸分子の一過性発現を可能にするプロモーター及び他の転写制御因子の選択により避けることができる。これは更に、本発明の方法と先に説明された遺伝子療法/遺伝子交換プロトコールの間の別の相違点でもある。本発明における使用のために免疫原及び/又はサイトカインをコードしている核酸分子と共に使用される適当なプロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター及び他のレトロウイルスでないウイルス-ベースプロモーター、例えばRSVプロモーター、アデノウイルスプロモーター及びシミアンウイルスプロモーターを含む。LTR、組織-特異的なプロモーター、自己-複製ウイルス由来のプロモーター及びパピローマウイルスプロモーターは、導入遺伝子の延長された発現を提供するので、これらは遺伝子療法/遺伝子交換プロトコールにおいて極めて望ましいが、本発明における使用にとって好ましい転写制御配列ではない。
DNA又はRNAのいずれかであることができる本発明の組換え分子は、翻訳調節配列、複製起点、及び組換え細胞と適合性のある他の調節配列などの、追加の調節配列を含むこともできる。ひとつの態様において、本発明の組換え分子は、発現された免疫原又はサイトカインタンパク質が、そのタンパク質を生成した細胞から分泌されることを可能にするために、分泌シグナル(すなわち、シグナルセグメント核酸配列)も含む。適当なシグナルセグメントは、(1)免疫原シグナルセグメント(例えば、腫瘍抗原、アレルゲン又は病原体抗原シグナルセグメント);(2)サイトカインシグナルセグメント;又は、(3)本発明に従い免疫原及び/又はサイトカインタンパク質の分泌を指示することが可能な異種シグナルセグメントを含む。
本発明の好ましい組換え分子は、免疫原をコードしている核酸配列を含む組換え分子、サイトカインをコードしている核酸配列を含む組換え分子、又はキメラ組換え分子を形成するために免疫原をコードしている核酸配列及びサイトカインをコードしている核酸配列の両方を含む組換え分子(すなわち、免疫原をコードしている核酸配列及びサイトカインをコードしている核酸配列が同じ組換え分子内にある)を含む。このような組換えキメラ分子内に含まれた核酸分子は、1種又は複数の転写制御配列に機能的に連結されており、ここでキメラ組換え分子に含まれた各核酸分子は、同じ又は異なる転写制御配列を用い、発現することができる。
本発明の1種又は複数の組換え分子を使用し、本発明の方法に有用なコードされた産物(すなわち、免疫原タンパク質又はサイトカインタンパク質)を作成することができる。ひとつの態様において、コードされた産物は、そのタンパク質を作成するのに有効な条件下で、本願明細書に説明されたような、核酸分子の発現により作成される。コードされたタンパク質を作成する好ましい方法は、組換え細胞を形成するための、宿主細胞の1種又は複数の組換え分子によるトランスフェクションである。トランスフェクションされるのに適当な宿主細胞は、トランスフェクションすることができる哺乳類細胞を含む。宿主細胞は、トランスフェクションされない細胞又は既に少なくとも1種の核酸分子で形質転換された細胞のいずれかであることができる。本発明の宿主細胞は、本発明に従い免疫原(例えば腫瘍、アレルゲン又は病原体)及び/又はサイトカインの作成が可能であるいずれかの細胞であることができる。好ましい宿主細胞は、哺乳類の肺細胞、リンパ球、筋細胞、造血系前駆細胞、マスト細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、単球、上皮細胞、内皮細胞、樹状細胞、間葉細胞、ランゲルハンス細胞、あらゆる細胞起源の肉芽腫及び腫瘍細胞において見られる細胞を含む。更により好ましい本発明の宿主細胞は、哺乳類の間葉細胞、上皮細胞、内皮細胞、マクロファージ、単球、肺細胞、筋細胞、T細胞及び樹状細胞を含む。
本発明の方法に従い、宿主細胞は好ましくは、リポソーム送達ビヒクルに複合された核酸分子の哺乳類への静脈内又は腹腔内投与の結果として、in vivoで(すなわち、哺乳類において)トランスフェクションされる。本発明の宿主細胞への核酸分子のトランスフェクションは、リポソーム送達ビヒクルと共に投与される核酸分子が、in vivoにおいて細胞へ挿入され得るいずれかの方法により実現することができ、これはリポフェクションを含む。
組換えDNA技術の使用は、例えば、導入遺伝子(すなわち組換え核酸分子)の発現期間、宿主細胞内の核酸分子のコピー数、それらの核酸分子が転写される効率、得られた転写産物が翻訳される効率、及び翻訳後修飾の効率を操作することにより、トランスフェクションされた核酸分子の発現を改善し得ることを当業者は理解するであろう。本発明の核酸分子の発現を増加するのに有用な組換え技術は、核酸分子の多-コピー数プラスミドへの機能的連結、核酸分子の1種又は複数の宿主細胞染色体への組込み、プラスミドへのベクター安定配列の追加、組換え分子の発現期間の延長、転写制御シグナル(例えば、プロモーター、オペレーター、エンハンサー)の置換又は修飾、翻訳制御シグナル(例えば、リボソーム結合部位、シャイン-ダルガルノ配列)の置換又は修飾、本発明の核酸分子の修飾による宿主細胞のコドン使用頻度への対応、及び転写産物を不安定化する配列の欠失を含むが、これらに限定されるものではない。本発明の発現された組換えタンパク質の活性は、このようなタンパク質をコードしている核酸分子の断片化、修飾、又は誘導体化により、改善することができる。加えて転写制御配列を含む核酸分子、特にプラスミド部分は、CpGモチーフの核酸への追加などにより、この核酸をより免疫刺激性にするように修飾することができる。
本発明の方法のひとつの態様において、哺乳類が癌を有する場合、哺乳類へ静脈内投与される治療的組成物は、複数の組換え核酸分子を含み、ここで各組換え核酸分子は、cDNA配列を含み、各cDNA配列は、腫瘍抗原又はそれらの断片(すなわち、先に定義したように腫瘍抗原の少なくとも一部、好ましくはT又はB細胞エピトープを含む部分)をコードしている。cDNA配列は、自家腫瘍試料から単離される総RNAから増幅される。複数のcDNA配列の各々は、転写制御配列に機能的に連結されている。このような治療的組成物の癌を有する哺乳類への投与は、哺乳類の組織内(静脈内投与により肺組織並びに腹腔内投与により脾臓及び肝臓)で、腫瘍抗原をコードしているcDNA配列の発現を生じる。更なる態様において、このような治療的組成物は、サイトカインをコードしている核酸配列を有する組換え核酸分子を含有し、ここでこの核酸配列は、転写制御配列に機能的に連結されている。このような治療的組成物の哺乳類への投与は、前述の哺乳類の組織内での、サイトカインをコードしている核酸配列の発現を生じる。本発明のこの態様に従い、自家腫瘍試料が、治療的組成物が投与される哺乳類から得られる。従って治療的組成物中のcDNA配列は、それに対し免疫応答が誘起されるべき癌に存在する腫瘍抗原をコードしているであろう。この態様において、所定の腫瘍試料中のどの抗原が、最も免疫原性(すなわち最良の免疫原)であるかを知ることが必要であり、その理由は、腫瘍試料により発現された実質的に全ての抗原が哺乳類へ投与されるからである。加えて、複数の腫瘍抗原/免疫原に対する免疫応答の誘起は、恐らく癌に対する免疫応答の治療的効能を増強する恩恵を有するであろう。
本発明の方法のこの態様において、説明された複数の組換え核酸分子は、核酸分子のライブラリー、より詳細にはcDNAライブラリーと称することもできる。cDNAライブラリーを作成する方法は、当該技術分野において周知である。このような方法は、例えばSambrookらの前掲の著書に説明されている。より詳細には、この態様において、治療的組成物は、自家腫瘍試料により発現される遺伝子を代表している、腫瘍抗原、又はそれらの画分をコードしている複数の組換えcDNA分子を含む。このような複数の組換え核酸分子は、例えば、総RNAの自家腫瘍試料からの単離、このRNAの複数のcDNA分子への転換(すなわち増幅)、その後の多数の組換え分子を形成するためのcDNA分子の組換えベクターへのクローニングによるcDNAライブラリーの調製により作成することができる。本願明細書において使用される総RNAは、当該技術分野において公知の常法を用い細胞試料から単離可能なRNAの全てを意味し、典型的にはmRNA、hnRNA、tRNA及びrRNAを含む。総RNAの腫瘍試料などの細胞試料からの単離法は、当該技術分野において公知である(例えばSambrookら、前掲参照)。更なる態様において、総RNAからのcDNAの増幅の前に、RNAは、ポリ-A RNA(すなわち、3'末端にポリ-A尾部を含むRNA、mRNAの反映、細胞により発現されるタンパク質をコードしている転写一次産物RNA)を単離するために選択することができる。更に別の態様において、このようなcDNAライブラリーは、哺乳類の非-腫瘍細胞(すなわち正常細胞)に存在する抗原をコードしている核酸分子を除くために、哺乳類の正常な細胞試料由来の cDNAライブラリーに対し、「差し引き」することができ、これにより腫瘍特異的な抗原に対する腫瘍-特異的免疫応答を豊富にし、かつ免疫応答の劣化を防ぐ。核酸ライブラリーの差し引き法は、当該技術分野において公知である(Sambrookら、前掲参照)。
癌を有する哺乳類において免疫応答を誘起する方法の更に別の本発明の態様において、哺乳類へ静脈内又は腹腔内投与される治療的組成物は、多数の組換え核酸分子を含有し、ここで各組換え核酸分子はcDNA配列を含み、各cDNA配列は、腫瘍抗原又はそれらの断片(すなわち、先に説明された腫瘍抗原の少なくとも一部)をコードしている。この態様において、cDNA配列は、同じ組織学的腫瘍型の多数の同種異系腫瘍試料から単離されている総RNAから増幅される。複数のcDNA配列の各々は、転写制御配列に機能的に連結されている。このような治療的組成物の癌を有する哺乳類への投与は、哺乳類組織における腫瘍抗原をコードしているcDNA配列の発現を生じる(先に説明したように、投与経路に応じて)。更なる態様において、このような治療的組成物は、サイトカインをコードしている核酸配列を有する組換え核酸分子を含有し、ここで核酸配列は、転写制御配列へ機能的に連結されている。このような治療的組成物の哺乳類への投与は、哺乳類組織におけるサイトカインをコードしている核酸配列の発現を生じる。
本発明のこの態様において、腫瘍抗原をコードしているcDNA配列を含む多数の組換え核酸分子(すなわちcDNAライブラリー)は、同じ組織学的腫瘍型の多数の同種異系腫瘍試料から単離された総RNAから調製される。本発明に従い、多数の同種異系腫瘍試料は、少なくとも主要組織適合性複合体(MHC)内で、及び典型的には他の遺伝子座で、遺伝的に異なる同じ種の2種又はそれよりも多い哺乳類から単離された同じ組織学的腫瘍型の腫瘍試料である。従って腫瘍抗原をコードしている複数の組換え分子は、RNAが単離されたいずれかの個体に存在する実質的に全ての腫瘍抗原の代表である。本発明の方法のこの態様は、同じ組織学的腫瘍型の腫瘍に由来した腫瘍抗原の発現における、個々の患者間の自然な変動を補償する遺伝子ワクチンを提供する。従ってこの治療的組成物の投与は、様々な腫瘍抗原に対する免疫応答を誘起するために有効であり、その結果同じ治療的組成物を多種多様な個体に投与することができる。このような本方法により送達された治療的組成物は、治療として特に有用であるが、防御的(すなわち予防的)療法としても有用である。このようなcDNAライブラリーを多数の同種異系腫瘍試料から調製する方法は、自家腫瘍試料について先に説明したものと同じである。
哺乳類において免疫応答を誘起する方法の更に別の本発明の態様において、哺乳類へ静脈内又は腹腔内投与される治療的組成物は、複数の組換え核酸分子を含有し、ここで各組換え核酸分子はcDNA配列を含み、各cDNA配列は、感染症病原体又はそれらの断片(すなわち、先に定義したような、病原体抗原の少なくとも一部)由来の免疫原をコードしている。この態様において、cDNA配列は、感染症病原体から単離されている総RNAから増幅される。複数のcDNA配列の各々は、転写制御配列に機能的に連結されている。このような治療的組成物の感染症を有する又は多分罹っている哺乳類への投与は、哺乳類組織(先に説明したように、投与経路に応じて)において病原体抗原をコードしているcDNA配列の発現を生じる。更なる態様において、このような治療的組成物は、サイトカインをコードしている核酸配列を有する組換え核酸分子を含み、ここで核酸配列は転写制御配列へ機能的に連結されている。このような治療的組成物の哺乳類への投与は、哺乳類組織におけるサイトカインをコードしている核酸配列の発現を生じる。
本発明のこの態様において、病原体抗原をコードしている複数の組換え分子は、そこからRNAが単離された感染症病原体に存在する実質的に全ての抗原の代表である。この態様においては、病原体により発現された実質的に全ての抗原が、哺乳類へ投与されるからであるので、所定の病原体中のどの抗原が最も免疫原性であるか(すなわち最良の免疫原)はわかっている必要がない。加えて、複数の病原体抗原/免疫原に対する免疫応答を誘起することは、感染症に対する免疫応答の治療的効能を増強する点で恐らく有益であろう。このようなcDNAライブラリーを感染症病原体から調製する方法は、腫瘍試料について先に説明したものと同じである。
哺乳類において免疫応答を誘起する方法の更に別の本発明の態様において、哺乳類へ静脈内又は腹腔内投与される治療的組成物は、複数の組換え核酸分子を含有し、各組換え核酸分子は、少なくとも1種のアレルゲンから単離された総RNAから増幅されたcDNA配列を含む。この態様において、cDNA配列は、少なくとも1種、好ましくは複数のアレルゲンから単離された、総RNA、又はそれらの断片から増幅される。複数のcDNA配列の各々は、転写制御配列へ機能的に連結されている。このような治療的組成物のアレルギー性炎症に関連した疾患を有する又は多分罹っている哺乳類への投与は、哺乳類組織(先に説明したように、投与経路に応じて)においてアレルゲンをコードしているcDNA配列の発現を生じる。更なる態様において、このような治療的組成物は、サイトカインをコードしている核酸配列を有する組換え核酸分子を含有し、ここでこの核酸配列は、転写制御配列に機能的に連結されている。このような治療的組成物の哺乳類への投与は、哺乳類組織においてサイトカインをコードしているcDNA配列の発現を生じる。この本発明の態様において、アレルゲンをコードしている複数の組換え分子は、そこからRNAが単離されたアレルゲンに存在する実質的に全てのエピトープの代表である。加えて1種よりも多いアレルゲンを、同時に投与することができる。
別の本発明の態様は、癌を有する哺乳類において腫瘍抗原-特異的免疫応答及び全身性の非-特異的免疫応答を誘起する方法に関し、これは哺乳類へ、以下を含有する治療的組成物を静脈内又は腹腔内投与する工程を含む:(a)リポソーム送達ビヒクル;(b)少なくとも1種のPRRL;及び、(c)腫瘍試料から単離された総RNA、ここでRNAは、腫瘍抗原又はそれらの断片をコードしている。このような治療的組成物の哺乳類への投与は、哺乳類組織での腫瘍抗原又はそれらの断片をコードしているRNAの発現を生じる。好ましい態様において、RNAは、前述のように、治療的組成物の哺乳類への投与前に、ポリ-A RNAが豊富にされる。更なる態様において、治療的組成物は、サイトカインをコードしている核酸配列を有する組換え核酸分子を含有し、ここで核酸配列は、転写制御配列に機能的に連結されている。このような治療的組成物の哺乳類への投与は、指示された哺乳類組織においてサイトカインをコードしている核酸配列の発現を生じる。
この本発明の態様において、総RNA又はより好ましくはポリ-A豊富なRNAは、先に説明されたように、腫瘍試料から単離され(Sambrookら、前掲参照)、リポソーム送達ビヒクルと複合され、かつ癌を有する哺乳類へ静脈内又は腹腔内投与される。その後腫瘍試料の実質的に全ての腫瘍抗原をコードしているRNAが、哺乳類組織において発現される。RNAは通常血清中でRNAseにより迅速に分解されるが、本発明者らは、カチオン性脂質に複合されたRNAは、そこで遺伝子発現が生じる組織に到達するまで、このようなRNAseから保護されると考える。本発明の方法のこの具体的態様に従い哺乳類へ直接RNAを投与することの利点は、腫瘍組織又は宿主免疫細胞の実質的なin vitro操作を必要とせずに、免疫応答が複数の腫瘍抗原に対して直接in vivoにおいて誘起され得ることである。
本発明の別の態様は、感染症を有する哺乳類において、病原体抗原-特異的免疫応答及び全身性の非-特異的免疫応答を誘起する方法に関し、これは以下を含有する治療的組成物を、哺乳類へ静脈内又は腹腔内投与する工程を含む:(a)リポソーム送達ビヒクル;(b)少なくとも1種のPRRL;及び、(c)感染症病原体から単離された総RNA、ここでRNAは、病原体抗原又はそれらの断片をコードしている。このような治療的組成物の哺乳類への投与は、哺乳類組織において病原体抗原又はそれらの断片をコードしているRNAの発現を生じる。好ましい態様において、RNAは、前述のように、治療的組成物の哺乳類への投与前に、ポリ-A RNAが豊富にされる。更なる態様において、治療的組成物は、サイトカインをコードしている核酸配列を有する組換え核酸分子を含有し、ここで核酸配列は、転写制御配列に機能的に連結されている。このような治療的組成物の哺乳類への投与は、哺乳類組織においてサイトカインをコードしている核酸配列の発現を生じる。
本発明の別の態様は、アレルギー性炎症に関連した疾患を有する哺乳類において、アレルゲン-特異的免疫応答及び全身性の非-特異的免疫応答を誘起する方法に関し、これは以下を含有する治療的組成物を、哺乳類へ静脈内又は腹腔内投与する工程を含む:(a)リポソーム送達ビヒクル;(b)少なくとも1種のPRRL;及び、(c)アレルゲンから単離された総RNA、ここでRNAは、少なくとも1種のアレルゲンタンパク質又はそれらの断片をコードしている。このような治療的組成物の哺乳類への投与は、哺乳類組織において少なくとも1種のアレルゲン又はそれらの断片をコードしているRNAの発現を生じる。好ましい態様において、RNAは、前述のように、治療的組成物の哺乳類への投与前に、ポリ-A RNAが豊富にされる。更なる態様において、治療的組成物は、サイトカインをコードしている核酸配列を有する組換え核酸分子を含有し、ここで核酸配列は、転写制御配列に機能的に連結されている。このような治療的組成物の哺乳類への投与は、哺乳類組織においてサイトカインをコードしている核酸配列の発現を生じる。
本発明の治療的組成物は、リポソーム送達ビヒクルを含む。本発明に従い、リポソーム送達ビヒクルは、投与が静脈内である場合は哺乳類の肺組織へ、並びに投与が腹腔内である場合は哺乳類の脾臓及び肝臓組織へ、本発明の治療的組成物の優先的な送達が可能になる脂質組成物を含む。語句「優先的送達する」は、リポソームは、核酸分子を哺乳類の肺又は脾臓及び肝臓組織以外の位置へ送達することができるが、これらの組織は、送達の主要部位であることを意味する。
本発明のリポソーム送達ビヒクルは、哺乳類の特定部位を標的化するように修飾することができ、これによりその位置で本発明のPRRL及び/又は核酸分子を標的化及び使用することができる。適当な修飾は、送達ビヒクルの脂質部分の化学式の操作を含む。送達ビヒクルの脂質部分の化学式の操作は、送達ビヒクルの細胞外又は細胞内標的化を誘起することができる。例えば、リポソームの脂質二層の電荷を変更する化学物質を、リポソームの脂質式に加え、その結果このリポソームを、特定の電荷特性を有する特定の細胞に融合することができる。リポソームへの外来性標的化分子(すなわち抗体)の追加による標的化のような、他の標的化機構は、本発明のリポソーム送達ビヒクルの必要な成分ではなく(しかし任意の成分であってよい)、その理由は免疫学的活性器官での有効な免疫活性化は、追加の標的化機構の助けを借りずに、組成物及び本組成物の送達経路により既に提供されているからである。加えて効能に関して、本発明は、所定の核酸分子によりコードされたタンパク質が、標的細胞(例えば、腫瘍細胞、病原体など)内で発現されることを必要としない。本発明の組成物及び方法は、タンパク質が非-標的細胞により発現される場合を含む、タンパク質が標的部位の近傍で(すなわち隣接して)発現される場合に、効果的である。
リポソーム送達ビヒクルは、本発明のPRRL又はPRRL及び核酸分子が哺乳類の好ましい部位に送達されるのに十分な時間、哺乳類において安定であり続けることが可能であることが好ましい。本発明のリポソーム送達ビヒクルは、それが投与された哺乳類において、好ましくは少なくとも約30分間、より好ましくは少なくとも約1時間、更により好ましくは少なくとも約24時間安定である。
本発明のリポソーム送達ビヒクルは、PRRL及び望ましいならば核酸分子の細胞への送達のために、標的化された細胞の形質膜と融合することが可能である脂質組成物を含有する。好ましくは、本発明のPRRL:リポソーム複合体が静脈内投与される場合、本発明のPRRL:リポソーム複合体のトランスフェクション効率は、少なくとも約1ピコグラム(pg)発現されたタンパク質/ミリグラム(mg)総組織タンパク質/マイクログラム(μg)送達された核酸である。より好ましくは、本発明のPRRL:リポソーム複合体のトランスフェクション効率は、少なくとも約10pg発現されたタンパク質/mg総組織タンパク質/μg送達された核酸であり;更により好ましくは、少なくとも約50pg発現されたタンパク質/mg総組織タンパク質/μg送達された核酸であり;並びに、最も好ましくは、少なくとも約100pg発現されたタンパク質/mg総組織タンパク質/μg送達された核酸である。本発明のPRRL:脂質複合体の送達経路が腹腔内である場合、この複合体のトランスフェクション効率は、1fg発現されたタンパク質/mg総組織タンパク質/μg送達された核酸と低く、これを上回る量がより好ましい。
本発明の好ましいリポソーム送達ビヒクルは直径が、約100〜500ナノメーター(nm)であり、より好ましくは約150〜450nm、及びより好ましくは約200〜400nmである。
本発明での使用に適したリポソームは、いずれかのリポソームを含む。本発明の好ましいリポソームは、例えば、当業者に公知の遺伝子送達法において、通常使用されるそのようなリポソームを含む。好ましいリポソーム送達ビヒクルは、多重ラメラ小胞(MLV)脂質及び押出脂質を含有する。MLVの調製法は、当該技術分野において周知であり、かつ例えば「実施例」の項に記されている。本発明の「押出脂質」は、Templetonらの論文(Nature Biotech., 15:647-652 (1997))に説明されたような、MLV脂質に類似して調製されたが、引き続き先細サイズのフィルターを通って押出された脂質であり、この論文は全体が本願明細書に参照として組入れられている。小さい単層小胞(SUV)脂質を、本発明の組成物及び方法において使用することができるが、本発明者らは、多重ラメラ小胞脂質が、in vivoにおいて核酸と複合された場合に、SUVよりも著しくより免疫刺激性であることを認めた。より好ましいリポソーム送達ビヒクルは、ポリカチオン性脂質組成物(すなわち、カチオン性リポソーム)有するリポソーム及び/又はポリエチレングリコールに複合したコレステロール骨格を有するリポソームを含む。好ましいカチオン性リポソーム組成物は、DOTMA及びコレステロール、DOTAP及びコレステロール、DOTIM及びコレステロール、並びにDDAB及びコレステロールを含むが、これらに限定されるものではない。本発明の方法の送達ビヒクルとして使用するために最も好ましいリポソーム組成物は、DOTAP及びコレステロールを含む。
リポソームの本発明のPRRLへの複合は、当該技術分野における常法を用いて実現することができる(例えば、米国特許出願第09/104,759号の方法を参照のこと)。実施例16参照。
本発明に従い、カチオン性脂質:PRRL複合体は、本願明細書においてTLACとも称される。DNAが空のベクターであるカチオン性脂質:DNA複合体は、EV/CLDCと称される。本発明に従い免疫原と更に複合されたCLDCは、脂質-抗原-DNA複合体(LADC)又はワクチン(Vacc)又は治療的組成物と称される。
リポソームに添加される本発明のPRRLの適当な濃度は、全身性免疫応答が誘起されるように、十分量のPRRLを哺乳類へ送達するのに有効な濃度を含む。一方本発明に添加される場合の核酸分子の適当な濃度は、全身性免疫応答が誘起されるように、十分量の核酸分子の哺乳類へ送達するのに有効な濃度を含む。核酸分子が免疫原又はサイトカインをコードしている場合、リポソームへ添加する核酸分子の適当な濃度は、望ましい様式でエフェクター細胞性免疫を調節するために細胞が十分な免疫原及び/又はサイトカインタンパク質を生成するように、十分量の核酸分子を細胞へ送達するのに有効な濃度を含む。好ましくは、約0.1μg〜約10μgの本発明の核酸分子が約8nmolリポソームと組合せられ、より好ましくは約0.5μg〜約5μgの核酸分子が約8nmolのリポソームと組合せられ、更により好ましくは約1.0μgの核酸分子が約8nmolのリポソームと組合せられる。ひとつの態様において、本発明の組成物における核酸対脂質の質量比(μg核酸:nmol脂質)は、好ましくは少なくとも約1:1核酸:脂質(すなわち、1μg核酸:1nmol脂質)、より好ましくは少なくとも約1:5、より好ましくは少なくとも約1:10、更により好ましくは少なくとも約1:20である。ここで表された比は、組成物中のカチオン性脂質の量を基にしているが、組成物中の脂質総量は基にしていない。別の態様において、本発明の組成物における核酸の脂質に対する質量比は、好ましくは約1:1〜約1:64核酸:脂質;より好ましくは約1:5〜約1:50核酸:脂質;更により好ましくは約1:10〜約1:40核酸:脂質;更により好ましくは約1:15〜約1:30核酸:脂質である。別の特に好ましい核酸:脂質の比は、約1:8〜1:16であり、1:8〜1:32はより好ましい。典型的には、核酸投与の非-全身性経路(すなわち、筋肉内、気管支内、皮内)は、比約1:1〜約1:3で使用され、本発明の投与の全身性経路は、脂質と比べはるかに少ない核酸を使用し、かつ非-全身性経路と同等又はそれよりもより良い結果を実現することができる。更に遺伝子療法/遺伝子置換のためにデザインされた組成物は、例え静脈内投与される場合であっても、本発明の全身性免疫活性化組成物及び方法と比べ、典型的にはより多くの核酸(例えば、6:1〜1:10、1:10が使用されるDNAが最も少ない)を使用する。
本発明に従い、有効な投与プロトコール(すなわち、治療的組成物を有効な様式で投与する)は、好ましくは哺乳類が疾患から保護されるように、疾患を有する哺乳類において免疫応答の誘起を生じる適当な投与量パラメータ及び投与様式を含む。有効な投与量パラメータは、特定の疾患に関して、当該技術分野において標準の方法を用いて決定する事ができる。このような方法は、例えば、生存率、副作用(すなわち毒性)及び疾患の進行又は回帰の決定を含む。特に癌が治療される場合、本発明の治療的組成物の投与量パラメータの有効性は、反応率を評価することにより決定することができる。このような反応率は、部分的な又は完全な寛解のいずれかを伴い反応した患者集団中の、この治療された患者の割合を意味する。寛解は、例えば腫瘍サイズの測定又は組織試料中の癌細胞の存在の顕微鏡検査により、決定することができる。
本発明に従う適当な単回投与量のサイズは、適当な期間にわたり1回又は複数回投与される場合に、疾患を有する哺乳類において免疫応答を誘起することが可能である投与量である。投与量は、治療される疾患に応じて変動することができる。癌の治療において、適当な単回投与量は、治療される癌が、原発性腫瘍又は癌の転移型であるかどうかにより、左右される。当業者は、静脈内又は腹腔内投与技術による使用に適した本発明の治療的組成物の投与量を、哺乳類の大きさを基に全身性投与のための適当な単回投与量サイズを決定するために使用することができる。
好ましい態様において、本発明のPRRL:リポソーム又はPRRL:核酸:リポソーム複合体の適当な単回投与量は、複合体が投与される哺乳類の体重1kgにつき約0.1μg〜約100μgである。別の態様において、適当な単回投与量は、約1μg〜約10μg/kg体重である。別の態様において、PRRL:脂質複合体の適当な単回投与量は、哺乳類に対し少なくとも約0.1μgのPRRLであり、より好ましくは少なくとも約1μgのPRRLであり、更により好ましくは少なくとも約10μgのPRRLであり、更により好ましくは少なくとも約50μgのPRRLであり、更により好ましくは哺乳類に対し少なくとも約100μgのPRRLである。
本発明のPRRL:核酸:リポソーム複合体は、哺乳類で発現される核酸分子を含む場合、本発明のPRRL:核酸:リポソーム複合体の適当な単回投与量は、少なくとも約1pg発現されたタンパク質/mg総組織タンパク質/μg送達された核酸を生じることが好ましい。より好ましくは、本発明の核酸:リポソーム複合体の適当な単回投与量は、少なくとも約10pg発現されたタンパク質/mg総組織タンパク質/μg送達された核酸を;更により好ましくは、少なくとも約50pg発現されたタンパク質/mg総組織タンパク質/μg送達された核酸を;最も好ましくは少なくとも約100pg発現されたタンパク質/mg総組織タンパク質/μg送達された核酸を生じる投与量である。本発明のPRRL:脂質複合体の送達経路が腹腔内である場合は、本発明のPRRL:リポソーム複合体の適当な単回投与量は、1fg発現されたタンパク質/mg総組織タンパク質/μg送達されたPRRLと低いものを生じる投与量であり、前述の量がより好ましい。
哺乳類において全身性の抗原-非特異的免疫応答を誘起するための本発明の治療的組成物の適当な単回投与量は、本発明の治療的組成物が投与されない哺乳類(すなわち対照哺乳類)と比べ、静脈内又は腹腔内投与された場合に、細胞性及び/又は体液性免疫応答を哺乳類においてin vivoで誘起するための、リポソーム送達ビヒクルへ複合された核酸分子の十分な量である。好ましい本発明の核酸:脂質複合体に含まれる核酸分子の用量は、先に考察されている。
治療的組成物の腫瘍に対する免疫応答を誘起するのに適当な単回投与量は、単独で又はサイトカイン-コードしている組換え分子と併用し、癌を有する哺乳類組織の細胞への組換え分子のリポフェクション後の、腫瘍を縮退、及び好ましくは除去するために十分量の腫瘍抗原-コードしている組換え分子である。
本発明に従い、リポソームと組合せて病原体-コードしている組換え分子を含有する、感染症に対する及び/又はそのような疾患に関連した病巣に対する免疫応答を誘起するのに有用な治療的組成物の単回投与量は、単独で又はリポソームを伴うサイトカイン-コードしている組換え分子と併用し、腫瘍の治療に使用されるそれらの投与量(先に詳細に説明された)と実質的に類似している。同様に、リポソームと組合せてアレルゲン-コードしている組換え分子を含有する、アレルゲンに対する免疫応答を誘起するのに有用な治療的組成物の単回投与量は、単独で又はリポソームを伴うサイトカイン-コードしている組換え分子と併用し、腫瘍の治療に使用されるそれらの投与量と実質的に類似している。
当業者には、哺乳類へ投与される投与の回数は、疾患の程度及び個々の治療される患者の反応によって左右されることは明らかであろう。例えば、巨大な腫瘍は、比較的小さい腫瘍よりもより多い投与量が必要であることがある。しかし場合によっては、巨大な腫瘍を有する患者が、本治療的組成物に、より小さい腫瘍を有する患者よりもより好ましく反応するならば、この巨大な腫瘍を有する患者は、より小さい腫瘍を有する患者よりもより少ない投与量が必要なことがある。従って、適当な回数の投与量は、所定の疾患を治療するために必要な回数のいずれかであることは本発明の範囲内である。
本発明の方法は更に、PRRL:脂質複合体の投与とブースター投与の間の時間が、遺伝子療法/遺伝子交換の典型的投与プロトコールよりも著しく長いので、先に説明された遺伝子療法/遺伝子交換プロトコールとは異なることが注目される。例えば本発明に従う疾患の治療に必要なように、本発明の組成物及び方法を使用する免疫応答の誘起は、典型的には、治療的組成物の初回投与、それに続く初回投与後3〜4週間のブースター免疫処置、任意に初回ブースター後3〜4週間毎の引き続きのブースター免疫処置を含む。対照的に、遺伝子療法/遺伝子交換プロトコールは、望ましい遺伝子機能を生じるか又は交換するための十分な遺伝子発現を得るために、典型的にはより頻繁な核酸の投与と必要としている(例えば、毎週の投与)。
転移性癌に対する免疫応答を誘起するための、リポソーム送達ビヒクルと複合されたPRRL、腫瘍抗原-コードしている組換え分子を含有する治療的組成物の、単独で又はサイトカイン-コードしている組換え分子と併用した、好ましい投与量の回数は、約2〜約10回投与/患者、より好ましくは約3〜約8回投与/患者、更により好ましくは約3〜約7回投与/患者である。好ましくはこのような投与は、先に説明されたように、寛解の徴候が出現するまで、3〜4週間毎に1回投与され、その後疾患が消失するまで、月1回投与される。
本発明に従い、感染症及び/又はこのような疾患に関連した病巣に対する免疫応答を誘起するための、単独で又はサイトカイン-コードしている組換え分子と併用した、リポソーム送達ビヒクルと複合された病原体抗原-コードしている組換え分子を含有する治療的組成物の投与回数は、腫瘍の治療に使用されるそれらの投与回数(先に詳細に説明された)と実質的に類似している。
治療的組成物は、哺乳類における全身性の抗原-非特異的免疫応答を誘起する様式において、及び組成物中の核酸分子が免疫原をコードしている場合には、疾患について治療される哺乳類において、免疫原性タンパク質(腫瘍、病原体抗原又はアレルゲンの場合)又は免疫調節タンパク質(サイトカインの場合)へと、投与された本発明の組換え分子を発現することができるような様式で、哺乳類に投与される。本発明の方法に従い、治療的組成物は、静脈内又は腹腔内注射により投与され、静脈内が好ましい。静脈内注射は、当該技術分野において標準の方法を用い行うことができる。本発明の方法に従う、PRRL:核酸:脂質複合体の投与は、哺乳類のいずれかの部位で行うことができ、ここで特にリポソーム送達ビヒクルがカチオン性リポソームを含む場合、全身投与(すなわち静脈内又は腹腔内投与)が可能である。哺乳類のいずれかの部位への投与は、静脈内又は腹腔内投与のいずれかが使用される場合は、特に静脈内投与が使用される場合は、強力な免疫応答を誘起するであろう。投与に適した部位は、免疫活性化のための標的部位が、投与部位に近接している毛細血管床を有する第一の器官に制限されないような部位を含む(すなわち組成物は、標的免疫処置部位とは離れている投与部位に投与することができる)。別の表現をすると、例えば哺乳類の腎腫瘍を治療するために使用される本発明の組成物の静脈内投与は、哺乳類のいずれかの部位に静脈内投与することができ、かつ例え腎臓が投与部位に近接している毛細血管床を有する第一の器官でなくとも、依然強力な抗-腫瘍免疫応答を誘起し、並びに腫瘍の退縮又は除去に有効である。特異的な抗-腫瘍作用が望ましく(すなわち、腫瘍の退縮又は除去)及び投与経路が静脈内である場合、再度投与部位は、投与部位に対する腫瘍の位置とは無関係に、組成物が静脈内に投与されるいずれかの部位であることができる。抗-腫瘍効能(しかし免疫活性化/免疫処置ではない)に関する腹腔内投与について、腫瘍が腹腔内である場合、又は腫瘍が小さい腫瘍である場合、この投与様式の使用が好ましい。免疫処置及び免疫活性化について、前述のように、「実施例」の項で明らかにされるように、腹腔内投与が、特に非-全身性経路と比べ、適した投与様式である。
本発明の方法において、治療的組成物は、霊長類、齧歯類、家畜及び家庭用ペットを含むが、これらに限定されるものではない哺乳類脊椎動物綱のいずれかのメンバーに投与することができる。家畜は、消費される又は有用な製品を作成する(例えば、羊毛を産生するヒツジ)哺乳類を含む。保護するのに好ましい哺乳類は、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ヒツジ、畜牛、ウマ、及びブタを含み、ヒト及びイヌが特に好ましく、ヒトが最も好ましい。本発明の治療的組成物は、哺乳類の同系交配した種において疾患に対する免疫応答を誘起するために有効であり、この組成物は、特に哺乳類の異系交配した種において免疫応答を誘起するために有用である。
前述のように、本方法により投与される本発明の治療的組成物は、様々な疾患、特に癌、アレルギー性炎症及び感染症を有する哺乳類において免疫応答を誘起するために有用である。本発明の治療的組成物は、静脈内又は腹腔内送達される場合に、この組成物は癌細胞が免疫異物除去を避ける(すなわち、これにより癌細胞が、疾患に反応して哺乳類において実現した免疫応答を避ける)機構を克服する点で、癌を有する哺乳類の免疫応答を誘起するために有利である。癌細胞は、例えばごくわずかな免疫原性、細胞表面抗原の変調及び免疫抑制の誘導により、免疫異物除去を避けることができる。単独で又はサイトカイン-コードしている組換え分子と併用して(個別に又は一緒に)、癌を有する哺乳類に免疫応答を誘起するための使用に適当な治療的組成物は、本発明のPRRL:脂質複合体、あるいはPRRL:核酸:脂質複合体を含有し、ここで核酸は、転写制御配列に機能的に連結されていないか、又はより好ましくは、転写制御配列に機能的に連結されている腫瘍抗原-コードしている組換え分子をコードしているかのいずれかである。本発明の治療的組成物は、哺乳類において全身性の非-特異的免疫応答を誘起し、かつ標的化された肺又は脾臓及び肝臓の細胞に侵入する時点で、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラー細胞、ヘルパーT細胞及びマクロファージを活性化する腫瘍抗原(及び、特定の態様において、サイトカインタンパク質)の産生につながる。このような細胞の活性化は、そうでなければかなり損なわれる癌細胞に対する免疫応答を克服し、このような細胞の破壊につながる。
腫瘍抗原をコードしている核酸分子を含むことができる本発明の治療的組成物は、腫瘍及び転移型癌の両方を含む癌を有する哺乳類における免疫応答の誘起に有用である。この治療的組成物による治療は、転移性癌に関する従来の治療の欠点を克服する。例えば本発明の組成物は、外科的方法を用いて治療することができない散在性転移性癌細胞を標的化することができる。加えてこのような組成物の投与は、高体温療法、光線力学療法、超音波療法、集束超音波療法、化学療法及び放射線療法、又は手術などの多くの癌療法において引き起こされる有害な副作用を生じず、並びに反復投与することができる。更に本発明の方法により投与される組成物は、典型的には腫瘍の小胞を標的化し、その結果腫瘍に対する効能を提供するために腫瘍細胞それ自身内の腫瘍抗原又はサイトカインの発現は、不要である。実際本発明の一般的利点は、組成物それ自身の送達が、強力な免疫応答を誘起し、少なくとも標的部位の近傍での(標的部位で又はそれに隣接した)核酸分子の発現は、標的に対する効果的な免疫活性化及び効能を提供することである。
あるいは先に考察された療法の1種又は組合せなどの癌療法を、本発明の治療的組成物と併用してもよい。本発明の治療的組成物の注射と腫瘍の放射線療法などの癌療法との組合せの理論は、ワクチンへ組込むための腫瘍抗原の給源を供給することである。腫瘍の照射は、腫瘍細胞アポトーシスの引き金を引き、腫瘍組織への自在な腫瘍抗原の局所的な放出を生じるであろう。TLRCがアポトーシスを受けている腫瘍へ注射される場合、死滅しつつある細胞から放出された腫瘍抗原は、自発的にTLRCへ組込まれ(電荷-電荷相互作用により)、その場(in situ)で自家腫瘍ワクチンの作出を生じる。TLRCアジュバントに組込まれた腫瘍抗原は次に、局所的自然免疫の活性化、プロ抗原提示細胞(APC)の動員、それに続く最も近傍のドレナージ中(draining)リンパ節での抗原取込み及び提示を誘導する。TLRCの注射は、放射線療法の送達に続く。このシナリオにおいて、腫瘍抗原がドレナージしているリンパ節に到達するまで、免疫エフェクター細胞は活性化されず、その結果腫瘍に再照射された時点で破壊が広がるであろう。従ってこの腫瘍は、放射線療法及び腫瘍内TLRC送達の複数サイクルを受け取ることができる。これは、免疫系へのブースターワクチンとして役立ち、更に抗腫瘍免疫の誘導を増強する。加えて患者は、放射線照射のスケジュールを中断することなく、依然それらの腫瘍に関して現在の標準治療を受け続けることができる。この癌療法は、本発明の組成物の導入の前、同時、又は後に投与することができる。
腫瘍細胞アポトーシスを誘導する別の方法は、TLRCアジュバントの局所的腫瘍内注射と組合せることもできる。例えば、プロ-アポトーシス性薬物(例えば、カンプトテシン)の注射、腫瘍のUV曝露と一緒の増感剤の注射、腫瘍電気穿孔、又は局所的高体温を用い、TLRCアジュバントへの組込みのための腫瘍抗原の解放(liberation)により、全て、腫瘍細胞アポトーシス又は壊死を誘起することができる。
本発明は、腫瘍治療のために、針による注射及び放射線療法の両方を行うことができるようデザインされている。提唱された治療スケジュールは、標準の放射線療法プロトコールに似て(around)デザインされており、典型的には、5日/週のスケジュールでの、3〜4週間にわたる、腫瘍への局所的放射線照射の複数画分の投与が関連している。提唱された組合せスケジュールは、放射線療法の開始日(1日目)、並びに再度5日目、12日目、19日目及び恐らくは更に26日目の、TLRCの腫瘍内注射が関連しているであろう。その後腫瘍部位へのTLRC注射は、その後3〜4ヶ月間にわたり、又は手術による腫瘍摘出もしくは腫瘍退化のいずれかまで、2回/月ベースで継続される。投与されるべきTLRC/LNACの投与量は、腫瘍サイズを基にし、及びLNACの使用は、典型的には1回の注射につき250〜1000ug核酸(非コードプラスミドDNA又はCpGオリゴヌクレオチドのいずれか)である。
このような方法で治療することができる典型的腫瘍は、切除不可能な頭部及び頸部の腫瘍(例えば、扁平上皮癌)、再発性メラノーマ、乳癌、皮膚又は上皮組織の悪性腫瘍を含む。
別の態様において、TLRCの腫瘍内注射を腫瘍アポトーシス又は壊死のインデューサーと組合せることにより抗腫瘍免疫を誘導する方法が企図されている。この治療法は、TLRCアジュバントのための抗原の供給源を提供するために、腫瘍細胞のアポトーシス又は壊死を誘起する物質の投与(局所的又は全身性のいずれかの注射により)に関連しているであろう。次にTLRCアジュバントは、アポトーシス性/壊死性物質の投与後に腫瘍組織へ投与されるであろう。これは、アポトーシス性物質とTLRCの交互の連続サイクルで繰り返されるであろう。このような物質の例は、光線力学療法及びTLRC、アポトーシスインデューサー(FasL、TRAIL、カンプトテンシン)又は腫瘍壊死もしくは溶解のインデューサー、TNF-α又は蒸留水などの同時投与を含む。このような方法で治療される典型的腫瘍は、先に列記したものを含む。加えて、PDTと共に、肝臓又は腎臓などのよりアクセスし難い部位の腫瘍は、TLRCを腫瘍組織へ注射するための超音波-誘導型注射を用い治療されるであろう。
腫瘍抗原をコードしている核酸分子を含む本発明の治療的組成物は好ましくは、メラノーマ、扁平上皮癌、乳癌、頭部及び頸部の癌、甲状腺癌、軟組織肉腫、骨肉腫、精巣癌、前立腺癌、卵巣癌、膀胱癌、皮膚癌、脳腫瘍、血管腫、血管肉腫、マスト細胞腫瘍、原発性肝細胞癌、肝臓癌、肺癌、膵臓癌、胃腸癌、腎細胞癌、造血系新生物、間葉組織の癌、及びそれらの転移性癌を含むが、これらに限定されるものではない癌を有する哺乳類において免疫応答を誘起するために使用される。特に好ましい本発明の治療的組成物で治療する癌は、原発性肺癌及び転移性肺癌を含む。本発明の治療的組成物は、悪性腫瘍及び良性腫瘍を含むそのような癌を形成し得る腫瘍を治療するために、哺乳類において免疫応答を誘起するのに有用である。好ましくは、癌を有する哺乳類の肺組織における腫瘍抗原の発現(すなわち、静脈内送達による)は、癌の緩和、癌に関連した腫瘍の退縮、癌に関連した腫瘍の除去、転移性癌の予防、癌の予防及び癌に対するエフェクター細胞性免疫の刺激からなる群より選択された結果を生じる。
感染症病原体由来の免疫原をコードしている核酸分子を含有する本発明の治療的組成物は、免疫応答に反応する感染症を有する哺乳類における免疫応答の誘起にとって利点である。免疫応答に反応する感染症は、本願明細書において先に説明されたような、病原体に対する免疫応答の誘起が、予防的又は治療的作用を生じることができる病原体により引き起こされた疾患である。このような方法は、病原体の繁殖から生じる原発性病巣(例えば、肉芽腫)の、長期の標的化された療法を提供する。本願明細書において使用される用語「病巣」は、病原体による哺乳類の感染症により形成された病巣を意味する。感染症を有する哺乳類における免疫応答の誘起に使用する治療的組成物は、リポソーム送達ビヒクルと共に、病原体抗原-コードしている組換え分子を、単独で又は本発明のサイトカイン-コードしている組換え分子と組合せて含有する。癌の治療に関する先に説明された機構と同様、サイトカインを伴う又は伴わない、感染症の病原体由来の免疫原による感染症を有する哺乳類における免疫応答の誘起は、病原体により形成された病巣に対する免疫応答の相対的欠如を克服する、増大したT細胞、ナチュラルキラー細胞、及びマクロファージ細胞活性を生じる。好ましくは、感染症を有する哺乳類の組織における免疫原の発現は、疾患の緩和、疾患に関連して確立された病巣の退化、疾患症状の緩和、疾患に対する免疫及び疾患に対するエフェクター細胞性免疫の刺激を含む結果を生じる。
本発明の治療的組成物は、細菌(宿主細胞内に常在する細胞内細菌を含む)、ウイルス、寄生体(体内寄生体を含む)、真菌(病原性真菌を含む)及び内部寄生性生物体を含むが、これらに限定されるものではない病原体により引き起こされた感染症を有する哺乳類における免疫応答の誘起に特に有用である。本発明の治療的組成物で治療するのに好ましい感染症は、慢性感染症を含み、より好ましくは結核のような肺感染症を含む。本発明の治療的組成物で治療するのに特に好ましい感染症は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、結核菌、ヘルペスウイルス、パピロマウイルス及びカンジダを含む。
ひとつの態様において、本発明の治療的組成物で治療される感染症は、ウイルス疾患であり、好ましくは、ヒト免疫不全ウイルス、及びネコ免疫不全ウイルスを含むウイルスにより引き起こされたウイルス疾患である。
アレルゲンである免疫原をコードしている核酸分子を含有することができる本発明の治療的組成物は、アレルギー性炎症に関連した疾患を有する哺乳類における免疫応答の誘起に利点がある。アレルギー性炎症に関連した疾患は、アレルゲンなどの感作物質に対するある型の免疫応答(例えば、Th2-型免疫応答)の誘起が、その存在が組織損傷及び時には死亡につながり得るような哺乳類の炎症に関与した細胞を動員する炎症メディエーターの放出を生じ得るような疾患である。アレルギー性炎症に関連した疾患を有する哺乳類における免疫応答を誘起するために使用する治療的組成物は、PRRL:リポソーム送達ビヒクルと組合わされた、アレルゲン-コードしている組換え分子を、単独で又はサイトカイン-コードしている組換え分子と組合せて含有する。
本発明の方法及び組成物を用いて治療することが好ましいアレルギー性炎症に関連した疾患は、アレルギー性気道疾患、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎及び食品アレルギーがない。
本発明の治療的組成物は、創傷治癒、骨形成、骨移植、並びに/又は血管新生及び線維形成の開始に特に有用である。血管新生及び線維形成は、人体の成長及び修復プロセスの機能の重要な要素である。不充分な血管新生能は、末梢血管疾患(PVD)などの心臓血管系疾患の重症度を増し得る。PVDにおいて、腕及び足へ血液を運搬する動脈は、狭くなりかつ詰まり始め、血流を遅くするか又は停止する。この疾患は、最も頻繁には足に影響する。多くの患者は、足又は腕の痛み又はしびれなどのPVD症状を、通常の加齢の一部と考え、これらと共に生きていく。血管新生の刺激は、PVDの根本原因を緩和するひとつの方法として研究されている。
血管新生は、創傷治癒においても役割を果たす。創傷に対する反応は、損傷を受けた組織の完全性の回復のための、非常に根元的だが、本質的な先天性宿主免疫応答である。高等脊椎動物における損傷は、線維性瘢痕につながる、迅速な修復プロセスに関連している。外傷、感染症、又は異物に由来した創傷の治癒は、炎症及び治癒を強調(accentuate)するサイトカインにより大部分媒介される。最初の傷害(insult)は、凝血塊及び急性局所的炎症反応の引き金を引き、それに間葉細胞の動員及び増殖が続く。創傷周辺の局所的部位の過剰なTh1反応に起因した炎症の制御不能は、治癒しない創傷につながり得る。制御されないマトリックス蓄積は、線維症性の後遺症及び瘢痕につながる。創傷治癒への炎症とマトリックス増殖の間の釣り合いは、局所的部位でのサイトカインの適切な混合により調節される。
骨肉腫は、青年及び若年成年に影響を及ぼす最も一般的な原発性骨腫瘍のひとつである。従来の療法は、生存の延長のために、切除術とそれに続く化学療法を必要としている。大規模な皮質同種移植を伴う患肢救済手術が、切除術の代わりに通常使用される。多くの研究が、患肢救済手術により生存は有害な影響を受けず、かつ多くの患者にとって、生活の質(QOL)の改善が認知されることを示している。手術手技の成功にもかかわらず、重大な術後合併症が生じることが多い。これらの合併症は、骨髄炎、移植片の非-融着(non-union)及び骨折である。骨髄炎は、同種移植患肢救済手術に関連した最も一般的な合併症である。骨髄炎の治癒は稀であり、通常修復手術の繰り返し、慢性疼痛、四肢の不自由(poor use)及び場合によっては切断を生じる。
前述の3例の共通テーマは、血管新生性及び線維症性反応の変調である。創傷治癒及び骨移植に随伴した合併症により、治癒時間及び移植手術の成功を増加する化合物が必要とされている。
好ましくは、本発明の治療的組成物を、哺乳類へ投与し、これにより哺乳類における血管新生を誘起することができる。この方法は、皮下及び筋肉内投与から選択された投与経路により、哺乳類へ治療的組成物を投与する工程を含む。この治療的組成物は、(a)リポソーム送達ビヒクル;及び、(b)パターン認識受容体リガンドを含む。
パターン認識受容体リガンドは、グラム陽性菌の抽出物、ミコバクテリウム抽出物、酵母抽出物、リポ多糖(LPS)、ペプチドグリカン、リポペプチド、リポタイコ酸、フラジェリン、細菌性DNA、2本鎖RNA、ザイモサン、及びイミダゾキノリン化合物などであるが、これらに限定されない、少なくとも1種のToll-様受容体リガンドを含むことができる。この場合、該リポソーム送達ビヒクルは、多重ラメラ小胞脂質、カチオン性脂質、押出脂質、カチオン性脂質及び中性脂肪の組合せ、並びにカチオン性脂質及びステロールの組合せなどであるが、これらに限定されるものではない脂質を含む。
本発明の治療的組成物は、ゼラチン及びコラーゲンなどであるが、これらに限定されない不活性マトリックスと組合せることにより、延長された期間にわたり放出することができる。ベタイン、トリメチルアミンn-オキシド、及びL-カルニチンの単独又は組合せなどであるが、これらに限定されないDNAアイソ安定化剤(isostabilizing agent)を、送達ビヒクルへ添加することもできる。更にこの脂質送達ビヒクルは、ポリ(L-リシン)、スペルミジン、又はスペルミンの単独又は組合せなどであるが、これらに限定されないDNA凝縮剤を含有してもよい。
この治療的組成物は、Toll受容体リガンドの脂質に対する比約1:1〜約1:64を有し、かつ治療される哺乳類は、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ヒツジ、畜牛、ウマ及びブタであることができる。
別の態様において、本発明の治療的組成物は、徐放性ポリマーにより投与することができる。Toll-様受容体リガンド分子及び抗原(ペプチド、タンパク質、糖質、糖脂質、リポタンパク質のいずれかもしくは他の抗原又はそれらの組合せを含む)に複合されかつミクロスフェアとして製剤されたカチオン性リポソームを含有するポリ(L-ラクチド)(PLA)ミクロスフェアを製造することができる。リポソーム-Toll様受容体リガンド-抗原複合体(LATLC)を封入しかつ生物学的液体中で遅いが安定したin vitro放出を提供することが可能である他のポリマー(例えば、ポリ(L-ラクチド-コ-グリコリド)も、許容できるであろう。
リポソーム-Toll様受容体リガンド-抗原複合体(LATLC)は、有機溶媒中PLAと共に配合され、その後押出され、圧縮され、LATLCを封入したPLAミクロスフェアを形成する。最も望ましい製剤は、直径1〜10μmのPLAミクロスフェアからなるであろう。この直径は、樹状細胞及びマクロファージなどの抗原提示細胞により容易に塞がれる(taken up)サイズであるので、最も望ましい。これらのポリマーは、組織中で1〜6ヶ月間にわたりLATLCの持続放出を生じるようにデザインされるであろう。捕獲されたLATLCを伴うミクロスフェアは、SC、IM、皮内を含む様々な経路、並びに経口的、鼻腔内、吸入、経直腸、及び経皮的を含む様々な粘膜経路により、投与することができる。
別の本発明の態様において、治療的に有効な濃度又は用量の本願明細書に説明されたような本発明の治療的組成物は、生分解性又は非生分解性のいずれかである、医薬として又は薬学的に許容できる担体、賦形剤又は希釈剤と一緒にすることができる。本願明細書において使用される医薬として許容できる賦形剤は、本発明の方法において有用な治療的組成物の適当なin vivo部位への送達に適した物質を意味する。好ましい医薬として許容できる賦形剤は、本発明のパターン認識受容体リガンド及び/又は核酸分子を、PRRL及び/又は核酸分子が細胞へ到着した時点で、PRRL及び/又は核酸分子が細胞へ侵入し、かつ核酸分子が発現されるべきタンパク質をコードしている場合には細胞により発現されることが可能であるような形で維持することが可能である。本発明の適当な賦形剤は、PRRL及び/又は核酸分子を細胞へ輸送するが、特異的に標的化しないような、賦形剤又は配合物を含む(本願明細書において非-標的化担体とも称される)。標準の賦形剤は、ゼラチン、カゼイン、レシチン、アカシアゴム、コレステロール、トラガカントガム、ステアリン酸、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、グリセリルモノステアレート、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンひまし油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンステアレート、コロイド状二酸化ケイ素、リン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、非晶質セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、糖及びデンプンを含む。担体の具体例は、水、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、デキストロース液、血清-含有溶液、ハンクス液、他の生理的平衡のとれた水溶液、油、エステル、ポリ(エチレン-酢酸ビニル)、乳酸及びグリコール酸のコポリマー、ポリ(乳酸)、ゼラチン、コラーゲンマトリックス、多糖、ポリ(D,L-ラクチド)、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(カプロラクトン)、セルロース、アルブミン、デンプン、カゼイン、デキストラン、ポリエステル、エタノール、メタクリレート、ポリウレタン、ポリエチレン、ビニルポリマー、グリコール、それらの混合物などを含むが、これらに限定されるものではない。水性担体は、例えば、化学安定性及び等張性を増強することにより、レシピエントの生理的状態に近づけるのに適当な助剤を含むことができる。特に好ましい賦形剤は、非-イオン性希釈剤を含み、好ましい非-イオン性緩衝液は水中5%デキストロース(DW5)である。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(2000)、Gennaro, AR編集、Eaton, Pa.: Mack Publishing Co.を参照のこと。
適当な助剤は、例えば、リン酸緩衝液、Tris緩衝液、及び炭酸水素緩衝液を作成するために使用することができる、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、及び他の物質を含む。助剤は、チメロサール、m-又はo-クレゾール、ホルマリン及びベンジルアルコール(benzol alcohol)などの保存剤を含む。本発明の治療的組成物は、従来の方法及び/又は凍結乾燥により滅菌することができる。
本発明は、本発明の方法を実行するためのキットを提供する。従って様々なキットが提供される。これらのキットは、下記のいずれか1種又は複数のために使用してもよい(従って下記の用途のいずれか1種又は複数に関する使用説明書を含むことができる):ウイルス、真菌又は細菌性の感染などの、病原生物に対する個体の治療的又は予防的処置のための使用;個体における一部の癌型の治療;一部の癌型の播種又は転移の防止;一部の癌型の1種又は複数の症状の防止;癌に関連した1種又は複数の症状の重症度の低下;個体における癌の発達の遅延;又は、一部の癌型に対する個体のワクチン処置。
本発明のキットは、本発明の治療的組成物、及び本願明細書に説明された適当な賦形剤、並びに意図された治療のための本発明の治療的組成物の用量・用法に関する、通常印刷された使用説明書であるが、電子記憶媒体(例えば、磁気ディスク又は光ディスク)を含む使用説明書も許容できる使用説明書のセットを含む、1個又は複数の容器を備える。キットに含まれるこれらの使用説明書は、意図された治療に関する用量、投与スケジュール、及び投与経路の情報を含む。本発明の治療的組成物の容器は、単位剤形、バルク包装(例えば、反復-投与用包装)又はサブユニット剤型を含む。
本発明の治療的組成物は、いずれか便利な、適当な包装中に包装することができる。
当業者により理解されるように、本発明の治療的組成物は、当該技術分野において公知の他の治療と組合せるか又は併用することができる。
別の態様は、本発明の組成物の医療器具への組込みを企図しており、その後この装置は体内の望ましい標的位置にその後に配置され、そこで本発明の組成物が医療器具から溶離する。従って例として、本発明は血管ステントに関連して説明される。しかし下記の態様は、本発明の組成物を組込んでいるあらゆる医療器具に関連し、いずれか特定の型の医療器具に限定されないことは理解されなければならない。
本発明の装置は、治療的有効量の本発明の組成物を、罹患した又は損傷した体の組織又は器官のような標的化された部位に提供する。正確に望ましい治療作用は、治療される状態、投与される製剤、及び当業者に理解されるような様々な他の要因に応じて、変動するであろう。請求された本発明の実践に必要な本発明の組成物の量は、使用されるPRRLの性質によっても変動する。
ひとつの態様において、本発明の組成物により被覆される医療器具は、医療手技を実施又は促進するためのステント又はカテーテルである。従って本発明は、ステント部品及び付属物の適当な又は望ましいセットと一緒に使用することができ、これは多数のステントデザインのいずれかを包含している。これらのステントデザインは、例えば、複数のチューブ又は複数の押出管腔に加え、ガイドワイヤ、探子、超音波、光ファイバー、電気生理的、血圧又は化学的試料採取の部品などの様々な付属物を含む複合装置を作り上げる、基本的に固形又は管状の柔軟なステント部材又はバルーンカテーテルステントを含む。別の表現をすると、本発明は、いずれか適当なステント又はカテーテルデザインと組合せて使用することができ、特定の型のカテーテルに限定されない。
本願明細書において使用される「医療器具」は、医学的状態の予防又は治療のために、哺乳類に一時的又は永久に導入される器具を意味する。これらの器具は、器官、組織又は管腔内に留置するために、皮下、経皮的又は手術により導入されるいずれかを含む。医療器具は、ステント、合成グラフト、人工心臓弁、人工心臓及び人工臓器を血管循環に連結するための固定具、静脈弁、腹部大動脈動脈瘤(AAA)グラフト、下行大静脈フィルター、永久薬物注入用カテーテルを含むカテーテル、塞栓コイル、血管の塞栓形成において使用される塞栓性材料(例えば、PVAフォーム)、メッシュ修復材料、Dracon血管粒子、整形外科用金属プレート、ロッド及びスクリュー、並びに血管構造物を含むことができる。
本発明の目的のためには「溶出」は、抽出に関連した放出又はコーティングの体液との直接接触による放出のプロセスのいずれかを意味する。
ひとつの態様において、医療器具(medical)は、本発明の組成物の望ましい体の位置への送達のための孔を有するようにデザインすることができ、これは米国特許第5,972,027号に開示された方法により調製することができ、この特許は本願明細書に参照として組入れられている。簡単に述べると、この方法は、粉末化した金属又はポリマー材料を提供すること、粉末に高圧を施し、成形体を形成すること、成形体を焼結し、最終の多孔質の金属又はポリマーを形成すること、多孔質金属からステントを形成すること、及び任意に、その細孔へ少なくとも本発明の組成物(及び任意に1種又は複数の追加の薬物)を負荷することを含む。例えばステントは、ステントが1種又は複数の望ましい薬物の浴中に配置され、かつ高圧が施されるような高圧負荷、あるいは真空に曝されることを含む、いずれかの当該技術分野において公知のプロセスにより、本発明の組成物及び任意に1種又は複数の追加の薬物を含浸することができる。この薬物(複数)は、揮発性又は不揮発性の溶液中で保持することができる。揮発性溶液の場合、薬物(複数)の負荷後、揮発性担体溶液は、揮発することができる。真空の場合、金属ステントの細孔中の空気は排気され、薬物-含有溶液により置換えれらる。あるいは薬物による多孔質ステント負荷よりもむしろ、ステントは、代わりに体の望ましい部位に移植され、次に薬物が送達チューブを通して中空のステントに注入され、その後ステント中の細孔からしい位置へと外に出る。
別の態様において、ステントは、米国特許第6,273,913 B1号に開示されたような、本発明の組成物を負荷することができる貯蔵庫又はチャネルを備えるようにデザインすることができ、この特許は本願明細書に参照として組入れられている。薬物の貯蔵庫から動脈壁への拡散を制御する生体適合性材料のコーティング又は薄膜は、貯蔵庫全体に塗布することができる。このシステムのひとつの利点は、薬物の負荷及び放出を可能にする追加の必要要件を伴わずに、優れた生体適合性及び接着特性を実現するために、コーティング特性を最適化することができることである。貯蔵庫のサイズ、形状、位置及び数を用い、薬物の量、従って送達される投与量を制御することができる。
ステントは、デザインに適した物理的特性を有する、事実上生体適合性材料で製造することができ、かつ生分解性又は非生分解性であることができる。この材料は、その上に塗布されたポリマー層の柔軟性又は弾性に応じて、弾性又は非弾性のいずれかであることができる。従って本発明の医療器具は、一般に通常の金属、形状記憶合金、様々なプラスチック及びポリマー、カーボン又はカーボンファイバー、酢酸セルロース、硝酸セルロース、シリコーンなどを含む、様々な材料で調製することができる。
例えば、本発明のステントなどであるが、これらに限定されるものではない医療器具は、その上にマトリックスが塗布されているポリマー又は金属の構造要素で構成することができるか、もしくは、ステントは、ポリマーと混合されたマトリックスの複合材料であることができる。
膨張可能なステントを加工するのに適した生体適合性金属は、等級の高いステンレス鋼、NiTiを含むチタン合金(ニッケル-チタンベースの合金で、Nitinolと称される)、Elgiloy(登録商標)及びPhynox(登録商標)などのコバルト-クロム-ニッケル合金を含むコバルト合金、ニオブ-チタン(NbTi)ベースの合金、タンタル、金、及び白金-イリジウムを含む。
適当な非金属性生体適合性材料は、ポリアミド、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなど)、吸収不可能なポリエステル(すなわち、ポリエチレンテレフタレート)、及び生体吸収性脂肪族ポリエステル(例えば、乳酸、グリコール酸、ラクチド、グリコリド、パラ-ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、ε-カプロラクトンなどのホモポリマー及びコポリマー、並びにそれらの配合物)を含むが、これらに限定されるものではない。
マトリックス
ひとつの態様において、ステント又はグラフトなどの医療器具は、マトリックスで被覆される。本発明のステント又はグラフトの被覆に使用されるマトリックスは、様々な材料から調製することができる。マトリックスの主な必要要件は、ステント又は合成グラフトの露出した表面上の非破裂を維持するのに十分に弾性及び柔軟性であることである。
(A)天然の材料
マトリックスは、フィブリン、フィブリノーゲン、ヘパリン、コラーゲン、エラスチン、及び吸収可能な生体適合性多糖類、例えばキトサン、デンプン、脂肪酸(及びそれらのエステル)、グルコソ-グリカン(glucoso-glycan)、ヒアルロン酸、炭素、ラミニン、及びセルロースのような、人体内で酵素分解されるか、又は人体内で加水分解的に不安定である、薄膜-形成する高分子生体分子のような、天然の物質から選択することができる
(B)合成材料
ひとつの態様において、ステント又は合成グラフトのコーティングに使用されるマトリックスは、本発明の組成物を保持することが可能であるいずれかの生体適合性高分子材料から選択することができる。選択されたポリマーは、ステントが移植された場合に、生体適合性でありかつ血管壁に対し刺激を最小化するポリマーでなければならない。このポリマーは、望ましい放出速度又は望ましいポリマー安定性の程度に応じて、生体安定性又は生体吸収性のいずれかのポリマーであることができる。
ポリマーマトリックスを調製するための適合な材料は、ポリカルボン酸、セルロースポリマー、シリコーン接着剤、フィブリン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸ポリマー、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、グルコサミノグリカン、多糖、ポリエステル、ポリ(アミノ酸)ポリウレタン、セグメント化されたポリウレタン-尿素/ヘパリン、ケイ素、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリ-L-乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレートバリレート、ポリアクリルアミド、ポリエーテル、ポリアルキレンオキサレート、ポリアミド、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオキサエステル、ポリアミドエステル、アミド基を含むポリオキサエステル、ポリホスファゼン、ハロゲン化ビニルポリマー、ポリハロゲン化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、芳香族ポリビニル(例えば、ポリスチレン)、エチレン-メチルメタクリレートコポリマー、アクリロニトリル-スチレンコポリマー、ABS樹脂及びエチレン-酢酸ビニルコポリマー;ポリアミド、例えばNylon 66及びポリカプロラクタム;アルキル樹脂;ポリカーボネート;ポリオキシメチレン;ポリイミド;ポリエーテル;エポキシ樹脂、ポリウレタン;レーヨン;レーヨン-トリアセテート、セルロース、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース;セロファン;硝酸セルロース;プロピオン酸セルロース;セルロースエーテル(すなわち、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシアルキルセルロース)及びそれらのコポリマーの混合物を含むが、これらに限定されるものではない。
コーティングに使用されるポリマーは、ワックス状又は粘稠でないのに十分に高い分子量を有するフィルム-形成ポリマーが好ましい。これらのポリマーは好ましくは、ステントに接着し、血行力学上の応力により移動させられ得るようにはステント上に沈着後は容易に変形しない。これらポリマー分子量は、好ましくは、ポリマーがステントの操作又は配置の間に剥がれずかつステントの膨張時に亀裂がはいらないための剛性を提供するのに十分な程に高い。
ひとつの態様において、マトリックスコーティングは、米国特許第6,569,195 B2号に開示されているような、第一の高い放出速度を有する第一のコ-ポリマー及び第一の放出速度と比べ第二のより低い放出速度を有する第二のコ-ポリマーの配合を含むことができ、この特許は本願明細書に参照として組入れられている。第一及び第二のコポリマーは、崩壊性又は生分解性であることが好ましい。ひとつの態様において、第一のコポリマーは、第二のコポリマーよりもより親水性である。例えば、第一のコポリマーは、ポリ乳酸/ポリエチレンオキシド(PLA-PEO)コポリマーを含むことができ、第二のコポリマーは、ポリ乳酸/ポリカプロラクトン(PLA-PCL)コポリマーを含むことができる。PLA-PEO及びPLA-PCLコポリマーの形成は、当業者には周知である。経時的に送達される本発明の組成物の相対量及び投与速度は、より早い放出ポリマーの相対量を、より遅い放出ポリマーに対し制御することにより、制御することができる。より高い初期放出速度について、より早い放出ポリマーの割合は、より遅い放出ポリマーに対して増加することができる。用量のほとんどが、長時間かけて放出されることが望ましい場合、ほとんどのポリマーは、より遅い放出ポリマーであることができる。
あるいは、表面コーティングを医薬物質の放出を遅延するために塗布することができるか、又は様々な医薬活性物質の送達のためのマトリックスとして使用することができる。例えば、迅速及び緩徐に加水分解するコポリマーのコーティングの積層を用い、薬物の放出を成し遂げるか、又は様々な層内に配置された異なる物質の放出を制御することができる。溶媒中の溶解度が異なるポリマーを使用し、異なる薬物の送達又は薬物の放出プロファイルの制御に使用することができる異なるポリマー層を作製することができる。例えばε-カプロラクトン-コ-ラクチドエラストマーは、酢酸エチルに可溶性であり、及びε-カプロラクトン-コ-グリコリドエラストマーは、酢酸エチルに不溶性である。薬物を含有するε-カプロラクトン-コ-グリコリドエラストマーの第一層は、溶媒として酢酸エチルを使用するコーティング液を用い、ε-カプロラクトン-コ-グリコリドエラストマーの上にコーティングすることができる。当業者には容易に理解されるように、多層法を用い、望ましい薬物送達を提供することができる。
ひとつの態様において、コーティングは、本発明の組成物及び任意に1種又は複数の追加の治療的物質の、コーティング混合物中のコーティングポリマーとの混合により配合される。本発明の組成物及び治療的物質は、液体、微粉固形物、又はいずれ型の適当な物理的形で存在することができる。任意に、この混合物は、1種又は複数の添加剤、例えば希釈剤、担体、賦形剤、安定剤などの無毒の佐剤を含有してもよい。他の適当な添加剤は、ポリマー及び本発明の組成物及び医薬活性物質又は化合物と配合される。例えば先に説明された生体適合性フィルム形成ポリマーの列記から選択された親水性ポリマーを、生体適合性疎水性コーティングに添加し、放出プロファイルを修飾することができる(又は疎水性ポリマーを、親水性コーティングに添加し、放出プロファイルを修飾することができる)。一例は、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース及びそれらの組合せからなる群より選択される親水性ポリマーの、脂肪族ポリエステルコーティングへの添加による、放出プロファイルの修飾であろう。適当な相対量は、本発明の組成物及び治療的物質の in vitro及び/又はin vivo放出プロファイルをモニタリングすることにより決定することができる。
生分解性マトリックス
ひとつの態様において、マトリックスは、乳酸、グリコール酸の脂肪族及びヒドロキシポリマー、混合されたポリマー及び配合物、ポリヒドロキシ酪酸及びポリヒドロキシ-バレリアン酸及び対応する配合物、又はポリジオキサノン、改質デンプン、ゼラチン、改質セルロース、カプロラクタインポリマー、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸又はそれらの誘導体のような、合成又は天然の生分解性ポリマーであり、これらは、医療器具の構造又は機能を変更しない。このような生分解性ポリマーは、血液又は他の体液と接触している間に、制御された様式で崩壊し(担体材料の特性及びそれらの層(複数)の厚さに応じて)、結果的にその中に組込まれた本発明の組成物を緩徐に放出するであろう。生分解性コーティングの考察は、米国特許第5,788,979号に開示されており、これは特に本願明細書に参照として組入れられている。
マトリックスの医療器具への塗布
本発明のひとつの態様に従い、本発明の組成物は、ステントの少なくとも外側表面上のコーティングの一体部分として塗布される。この溶液は、ステントに塗布され、溶媒は蒸発させられ、これによりステント表面上にポリマー及び治療的物質のコーティングが残る。典型的にはこの溶液は、例えば含浸、噴霧、又はプラズマ沈着もしくは蒸着などの、いずれか適当な手段によりステントに塗布することができる。ステントのような医療器具を被覆するために、ステントは、中等度の粘度のマトリックスの液体で、浸漬又は噴霧される。各層が塗布された後、ステントは乾燥され、その後次層が塗布される。ひとつの態様において、薄い塗料-様のマトリックスコーティングは、全体の厚さが100μmを超えない。含浸による塗布又は噴霧による塗布を選択するかどうかは、主に溶液の粘度及び表面張力によって決まるが、エアブラシから得ることができるような微細霧中での噴霧は、最も均一なコーティングを提供し、かつステントに塗布されるコーティング材の量の最良の制御を提供することもわかっている。噴霧又は含浸のいずれかにより塗布されたコーティングにおいて、改善されたコーティング均一性及びステントに塗布される治療的物質の量の全体の改善された制御を提供するためには、一般に複数の塗布工程が望ましい。ステント上に含まれるべき本発明の組成物の量は、被膜間を乾燥しながら溶液の薄い被膜を複数塗布することにより容易に制御することができる。全体のコーティングは、カテーテルによる血管内送達のためにステントのプロファイルが著しく増加しないように十分に薄い。コーティングの接着及び本発明の組成物が送達される速度は、適当な生体吸収性又は生体安定性のポリマーの選択及び本発明の組成物の溶液中のポリマーに対する比により制御することができる。
本態様に従い被覆されたステントを提供するために、溶媒、溶媒に溶解したポリマー、溶媒に分散した本発明の組成物、及び任意に架橋剤を含有する溶液が最初に調製される。溶媒、及び本発明の組成物と互いに相溶性であるポリマーの選択は重要である。溶媒は、ポリマーを溶液へ、溶液中で望ましい濃度で配置することが可能であることは必須である。選択された溶媒及びポリマーは、本発明の組成物の治療的特性を化学的に変更しないことも必須である。しかし本発明の組成物のみが、溶媒と共に真の溶液であるか又は溶媒中に細粒が分散されたかのいずれかであるように、溶媒全体に分散することが必要である。コーティング塗布の好ましい条件は、ポリマー及び本発明の組成物が共通の溶媒を有する場合である。このことは、真の溶液である未乾燥コーティングを提供する。溶媒中のポリマー溶液中に、本発明の組成物を固形分散体として含むコーティングは、望ましさは劣るが依然使用可能である。分散条件下で、溝形成された(slotted)又は穴を空けられた(perforated)ステントを使用する場合は最初の粉末のサイズ並びにその凝塊及び凝集体の両方の、分散された医薬粉末の粒子サイズが、不均一なコーティング表面を生じるか又はステントの溝又は穴を塞ぐことのないように十分に小さいことを確実にすることは注意しなければならない。分散体がステントへ塗布され、かつコーティング表面の平滑さを改善することが望ましいかもしくは薬物の全ての粒子がポリマー内に完全に封入されたことを確実にする場合、又は分散体又は溶液のいずれかから沈着された薬物の放出速度を遅延することが望ましい場合、薬物の徐放を提供するために使用される同じポリマー又は他のポリマーの透明な(ポリマーのみ)トップコートは、コーティングからの薬物の拡散を更に制限するものを塗布することができる。
本組成物は、ステントの外面及び内面を被覆し、これは固化される時に、本発明の製剤のポリマー/組成物の中にこれらの表面を封入する。従って乾燥されたステントは、その表面に本発明の組成物のコーティングを含む。好ましくは、溶液又は懸濁液がステント内部に完全に充満しないか又はオリフィスを塞がないように、含浸法を適応させる。このような発生を防ぐ方法は、当業者に公知であり、これは、組成物の調製に使用される溶媒の表面張力を適合させること、含浸後管腔を清掃すること、及びステントの全表面と内部部材の間に通路が存在するような方法で、管腔よりも小さい直径を有する内部部材を配置することを含む。ステントの遠位端を浸漬する代わりに、本発明の組成物を含有する組成物の気化した形で、外側及び内側表面を噴霧コーティングする。
ひとつの態様において、ステント又は合成グラフトの表面に密に接着するように、マトリックスが選択される。これは、例えば、連続する薄層内のマトリックスの塗布により実現することができる。マトリックスの各層は、抗体を組込んでもよい。あるいは本発明の組成物は、血管管腔と直接接触する層にのみ塗布されてもよい。様々な種類のマトリックスが、連続層に連続して塗布される。
ステントを適切に被覆するために、ポリマーの粘度、沈着レベル、医薬品の溶解度、ステントの湿潤及び溶媒の蒸発速度のバランスが適切であるように、溶媒が選択される。好ましい態様において、本発明の組成物及びポリマーが、両方とも溶媒中に可溶性であるように溶媒が選択される。場合によっては、コーティングポリマーは溶媒に可溶性であり、及び医薬品は溶媒中のポリマー溶液中に分散するように、溶媒が選択されなければならない。その場合、選択された溶媒は、それらが塗布されたステントのスロットを塞ぐような粒子集合への凝集又は凝塊を引き起こすことなく、本発明の組成物の小さい粒子を懸濁することが可能でなければならない。加工時のコーティングからの溶媒の完全な乾燥が目標であるが、無毒、非-発癌性及び環境に優しいことも溶媒にとって大きい利点である。混合された溶媒システムを使用し、粘度及び蒸発速度を制御することができる。全ての場合において、溶媒は、本発明の組成物と反応しないかもしくはこれを失活してはならず、又はコーティングポリマーと反応してはならない。好ましい溶媒は、アセトン、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、トルエン、キシレン、塩化メチレン、クロロホルム、1,1,2-トリクロロエタン(TCE)、様々なフロン、ジオキサン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、水、及び緩衝生理食塩水を含むが、これらに限定されるものではない。
ひとつの態様において、ステントは、プレ-ポリマー、架橋剤及び本発明の組成物の混合物で被覆され、その後プレ-ポリマーと架橋剤が協力し、本発明の組成物を含有する硬化したポリマーマトリックスを生成する硬化工程が施される。硬化プロセスは、溶媒の蒸発、並びにポリマーの硬化及び架橋が関連している。あるシリコーン材料は、比較的低温(すなわち室温〜50℃)で硬化することができ、これは室温加硫(RTV)プロセスとして知られている。当然、時間及び温度は、具体的シリコーン、架橋剤及び生物学的活性種により変動し得る。
一般に、カテーテル上に配置されるコーティングの量は、ポリマーにより変動し、コーティング後のカテーテル総質量の約0.1〜40%の範囲である。ポリマーコーティングは、塗布されるべきポリマー量に応じて、1回又は複数回のコーティング工程で塗布してもよい。
マトリックスへの本発明の組成物の添加
本発明の組成物は、共有的又は非共有的のいずれかで、マトリックスへ混入することができ、ここでコーティング層は、本発明の組成物のコーティング層からの制御された放出を提供する。本発明の組成物は、本発明の組成物のマトリックスコーティング液との混合により、マトリックスの各層へ混入されてもよい。あるいは、本発明の組成物は、医療器具に塗布されるマトリックスの最後の層の上に共有的又は非共有的に被覆されてよい。本発明の組成物の器具からの望ましい放出速度プロファイルは、以下に考察するように、コーティング厚、本発明の組成物の径方向の分布(層から層まで)、混合法、本発明の組成物の量、様々なマトリックスポリマー材料の異なる層での組合せ、及び高分子材料の架橋密度を変動することにより追跡することができる。
ひとつの態様において、本発明の組成物は、マトリックスを含有する溶液に添加される。例えば、本発明の組成物は、ポリマーを含有する溶液と共に、本発明の組成物の適当な濃度で、インキュベーションすることができる。本発明の組成物の濃度は変動すること、及び当業者は、過度の実験を行うことなく最適濃度を決定することができることは理解されるであろう。その後本発明の組成物/ポリマー混合物は、本願明細書に説明された方法のいずれかにより器具に塗布される。
溶液中の本発明の組成物のポリマーに対する比は、本発明の組成物をステント上に固定するポリマーの効能及びコーティングが本発明の組成物を血管組織へ放出する速度により左右されるであろう。本発明の組成物のステント上への維持の効率が比較的悪い場合は、より多くのポリマーが必要であり、易可溶性の本発明の組成物の溶離を制限する溶離マトリックスを提供するためには、より多くのポリマーが必要である。従って本発明の組成物のポリマーへの広範な比が適当であり、かつ約10:1〜約1:100の範囲であることができる。
本発明の組成物の被覆されたステント上の沈着
別の態様において、ステントのような本発明の医療器具は、ステントのコーティング層の少なくとも一部に沈着された、本発明の組成物の少なくとも1個の層を含む。望ましいならば、多孔質層を、本発明の組成物層の上に沈着することができ、ここで多孔質層は、ポリマーを含み、かつそれのために本発明の組成物の制御された放出を提供し、更に本発明の組成物の崩壊を避ける。この態様に従うステントのコーティング法は、米国特許6,299,604号に開示されており、これは特に本願明細書に参照として組入れられている。
更に別の態様において、本発明の組成物は、マトリックスへ共有結合される。ひとつの態様において、本発明の組成物は、ヘテロ-又はホモ-二官能性リンカー分子の使用を通じ、マトリックスへ共有結合することができる。本発明と関連したリンカー分子の使用は、典型的にはステントへの接着後のマトリックスへのリンカー分子の共有結合と関連している。マトリックスへの共有結合後、リンカー分子は、1種又は複数の型の本発明の組成物へ共有結合するために使用することができる、多くの官能性活性基を伴うマトリックスを提供する。リンカー分子は、マトリックスへ、直接(すなわち、カルボキシル基を通じて)、又はエステル化、アミド化、及びアシル化などの、周知のカップリング化学により結合することができる。例えば、リンカー分子は、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアリルアミン(PALLA)又はポリエチレングリコール(PEG)などの、ポリアミン機能性ポリマーであることができる。様々なPEG誘導体、例えばmPEG-スクシンイミジルプロピオネート又はmPEG-N-ヒドロキシスクシンイミドは、共有結合のプロトコールと共に、Shearwater Corporation, (Birmingham, Ala.)から市販されている(同じくWeinerら、J. Biochem. Biophys. Methods, 45:211-219(2000)を参照し、この論文は本願明細書に参照として組入れられている)。特定のカップリング剤の選択は、本発明の組成物において使用される送達ビヒクルの種類に応じて決まること、及びそのような選択は過度の実験を行わずに行うことができることが理解されるであろう。
ステントの本発明の組成物によるコーティング
更に別の態様において、本発明の組成物の薄層は、ステントの外側表面に共有的又は非共有的に結合される。この態様において、ステント表面は、当該技術分野において公知の方法に従い、本発明の組成物を分子で受け取るように調製される。望ましいならば、多孔質層は、本発明の組成物層の上に沈着することができ、ここで多孔質層はポリマーを含み、及びそれにより本発明の組成物の制御された放出を提供し、更に本発明の組成物の崩壊を避ける。
複合された医療器具
本発明の医療器具の別の態様において、本発明の組成物は、本発明の組成物を医療器具の形成前に溶融された医療器具ポリマーへ直接混合及び配合することにより、医療器具の本体全体に提供される。例えば本発明の組成物は、シリコーンゴム又はウレタンなどの材料へ配合することができる。その後配合された材料は、押出、トランスファー成形又はキャスティングなどの通常の方法により処理され特定の形状を形成する。このプロセスから得られる医療器具は、医療器具本体の全体に分散された本発明の組成物を有する利点がある。従って本発明の組成物は、医療器具が体の組織、器官又は液体に接触する時には、医療器具の外側表面に存在し、かつ免疫応答を変調するように作用する。
本発明は更に、以下の限定的でない実施例により例証される。全ての科学用語及び技術用語は、当業者に理解される意味を有する。下記の具体的な実施例は、本発明の組成物を調製することができる方法を例証するが、これは本発明を分野又は範囲において限定するように構築されるものではない。これらの方法は、本発明により包含されるが特に開示されない組成物を生成するために、変種に適合させることができる。更に若干異なる様式で同じ組成物を生成するための方法の変動は、当業者には明らかであろう。
本願明細書の実施例は、本発明を実行する様々な局面を例証する意味であり、いかなる意味においても本発明を制限することは意図していない。
実施例1
パターン認識受容体リガンド(PRRL)によるの活性化の後に自然免疫の活性化及びIFN-γ放出を顕著に増強するリポソーム
カチオン性リポソームのPRRLにより誘起された免疫活性化を増強する能力を、脾細胞アッセイを用いin vitroにおいて評価した。脾細胞は、正常なICRマウスから調製し、かつ24-ウェルプレートの個々のウェルに、濃度5X106/mlで添加した。プラスミドDNA("DNA")、CpGオリゴヌクレオチド("CpG")、イミダゾキノリン(R-848;InVivogen)、及び精製されたE coliエンドトキシン("LPS")を含有する一連の異なるPRRLを、カチオン性リポソームと混合し、複合体を形成した。カチオン性リポソームは、等モル量のDOTIM(オクタデセノイルオキシ-エチル-2-ヘプタデセニル-3-ヒドロキシエチル)及びコレステロールを用い、水中の5%デキストロース溶液中で再水和し、調製した。特異的なPRRL-リポソーム複合体を形成するために、カチオン性リポソーム30μmを、水中の5%デキストロース30μlに添加し、その後各PRLLを3μg添加し、ピペッティングにより混合した。免疫-刺激活性を比較するために、リポソーム-PRRL複合体2.5μlを脾細胞の各ウェルに添加し、最終PRRL濃度500ng/mlを実現した。別のウェルに、PRRL単独(50ng/ml)又はリポソーム単独のいずれかを添加した。細胞培養物を、18時間インキュベーションし、その後上清を収集し、それらのIFN-γ濃度について、市販のEISAアッセイ(R & D Systems)を用い、アッセイした。その後IFN-γ濃度をプロットし、図1に示した。これらの結果は、リポソーム-PRRL複合体は、PRRL単独よりも、はるかに強力な免疫応答及びIFN-γ放出のアクチベーターであることを示している。更に、これらの結果は、リポソーム(及びおそらく他の送達システムも)は、多様なPRRLの免疫-刺激特性を実質的に変更することが可能であることの一般的原理を例示している。
実施例2
リポソームはパターン認識受容体リガンド(PRRL)による活性化後IL-10の放出を変更する
リポソームが、自然免疫系の重要な免疫抑制サイトカインの放出を増強する能力を、先に実施例1に説明した脾細胞アッセイを用い評価した。リポソームを伴う又は伴わないPRRLを、最終濃度500ng/mlで18時間添加した。その後IL-10の上清への放出を、ELISAアッセイを用いて評価した。驚くべきことに、図2に示したデータは、リポソームのPRRLとの組合せは、IL-10の放出を増強するか(例えば、PRRLとしてDNA又はR-848)、又はIL-10放出を阻害する(他えば、PRRLとしてCpG又はLPS)かのいずれかにより、PRRLの免疫学的特性を有意に変更することを例示している。例えば、リポソーム性-LPSは、リポソーム性-CpGのように、LPS単独と比べ、IL-10を強力に阻害したのに対し、リポソーム性-R848は事実上IL-10放出を増加した。従ってリポソーム-TLR-リガンド複合体の形成は、TLR-リガンド特異的な様式で、リガンドそれ自身により誘起されたサイトカインの放出を変更する。サイトカイン放出の変更は、刺激作用及び阻害作用の両方を含む。In vivoにおいて、このサイトカイン放出の変更は、恐らくT細胞及びB細胞反応の生成について重要な結果を有するであろう。これらのデータは、PRRLの免疫学的特性は、リポソーム又は他の担体分子の添加により、実質的に修飾することができることの追加の証明を提供する。
実施例3
リポソームはパターン認識受容体リガンド(PRRL)による活性化後TNF-αの放出を増強する
自然免疫系の第二の重要な刺激性サイトカインの放出を増強するリポソームの能力を、先に実施例1に説明した脾細胞アッセイにより評価した。リポソームを伴う又は伴わないPRRLを、最終濃度500ng/mlで18時間添加した。その後TNF-αの上清への放出を、ELISAアッセイを用いて評価した。図3に示したデータは、リポソーム-複合されたPRRLは、PRRL単独よりもより強力な免疫賦活物質であり、更にリポソームによるPRRL特性修飾の原理の裏付けを提供する。
実施例4
リポソームはin vitroにおけるパターン認識受容体リガンド(PRRL)への曝露後樹状細胞活性化の調節を変更する
脾細胞は、PRRLと共に、リポソームを伴う又は伴わずに、最終PRRL濃度500ng/mlで、18時間インキュベーションした。その後脾細胞を収穫し、細胞表現型マーカー(例えば、マクロファージ及び樹状細胞マーカー)の表面発現に加え、初期活性化マーカーCD69の発現について免疫染色した。その後これらの細胞を、フローサイトメトリーにより分析し、樹状細胞上のCC69の発現を決定した。CD69の細胞表面発現は、平均蛍光強度(MFI)として表した。これらの実験において、リポソーム-複合されたPRRL(プラスミドDNA及びCpGオリゴヌクレオチドの場合)、CD69発現のアップレギュレーションにより示されるように、細胞活性化を増強したことがわかり、これは図4を参照のこと。従ってリポソームは、CD69発現の追加のアップレギュレーションにより示されるように、PRRLの細胞活性化特性を修飾するために利用することもできる。
実施例5
脂質-DNA複合体に複合されたペプチド抗原又はタンパク質抗原
抗原-特異的な反応を直接評価するために、脂質-DNA複合体に複合されたペプチド抗原又はタンパク質抗原のいずれかを用いて実験を行った。これらの実験ではMHC-ペプチド四量体を用い、CTL数及び分布を定量した。C57BI6マウスにおけるova及びドミナントなCTLエピトープ(SIINFEKL;ova8)による免疫処置に対するCTL反応の追跡のために、Kb-ova8四量体を使用した。Kb-ova8四量体は、Ross Kedl, National Jewish Medical and Research Center(デンバー、CO)から提供された。これらの実験において、免疫効率を評価するために、比較的低投与量のペプチド又はタンパク質(典型的には1〜5mg/1回の免疫処置/1匹のマウス)を用いた。驚くべきことに、非-コードプラスミドDNA及びova8ペプチドと共に製剤されたリポソーム-抗原-核酸複合体(LANAC)は、CTL反応の誘起において極めて有効であることが発見された(図5、下右パネル)。LANAC免疫効率を分析するために、マウスを、自家骨髄由来の樹状細胞(DC)+ova8ペプチドでも免疫処置し、CTL反応を同じく四量体により評価した。これらの試験は、樹状細胞ワクチン接種と比べ、ペプチド抗原に対する免疫処置に関する、LANACワクチンの強力な効力を明らかにした。
CD8+ T細胞はMHCクラスI四量体(H-2 Kb)に反応し、及びモデル抗原(オボアルブミン)を用い、ペプチド抗原による免疫処置に対する、CD8+ T細胞反応を定量した(図5、上左パネル)。C57BI6マウス(3〜4匹/群)を、LPSによりin vitroで活性化された1X106個自家骨髄由来の樹状細胞(DC)で、1週間間をあけて、各々2回免疫処置し、その後1mMのKb-結合ova8ペプチド(SIINFEKL)でパルスした。マウスは、DCにより、SC経路(図5、上右パネル)又はIP経路(図5、下左パネル)のいずれかで免疫処置した。別のマウス群(図5、下右パネル)は、LANAC中のova8ペプチド5mgで、IP注射し免疫処置した。2回目の免疫処置の5日後、脾細胞を収集し、Kb-ova8四量体(PE-標識した)で直ちに染色し、in vitro再刺激せず、その後CD8-APC、CD44-FITC、及びMHCクラスII-PE/Cy5抗体で染色した。総CD8+(MHCクラスII+細胞を除いた後)をゲートに通し(gated)、かつ四量体及びCD44染色について分析した;CD44 hi T細胞は、記憶CTL染色を示した。四量体+細胞の数は、分析した総CD8+細胞の割合として表した。LANAC中のova8ペプチドによる免疫処置は、ova8-パルスしたDCによる免疫処置よりも、はるかに強力なCTL反応を誘導した(図3、下右パネル)(総脾臓CD8 T細胞の10%は、Ag特異的であったのに対し、DCワクチン接種後は1-2%であった)。T細胞反応を誘導するのに、LANACによる免疫処置のIP経路は、SC又はIM経路と比べ、最も有効な経路であった(ここではデータは示さず)。
実施例6
LANAC及び「クロスプライミング」
LANACは、タンパク質抗原に対するCTL反応を効率的に「クロス-プライミング」するために使用することができるかどうかを試験する実験を行った。これらの実験について、無傷のovaタンパク質(これは小さいMWのペプチドを除去するために、慎重に濾過した)に、ペプチドの代わりにLANACを添加し、及びマウスを、実施例5に説明したように免疫処置した。2回目の免疫処置後5日目に、脾臓のCTL反応を、Kb-ova8四量体を用いて評価した。予想外のことに、LANACは、タンパク質抗原に対するCTL反応のクロスプライミングにおいて極めて有効であった(図6、中央パネル)。LANACにより誘起されたタンパク質抗原に対するCTL反応は、等量(質量に対し)のペプチド抗原に対する反応よりも、一貫して1.5倍強かった。タンパク質抗原に対するCTL反応を誘起する能力は、MHCの背景又は標的抗原ペプチド特異性を考慮することなく、ヒトを無傷のタンパク質抗原で事実上免疫処置することを可能にするので、これらの結果は非常に重要であった。更にこのシステムの反応は、非-複製システムにより誘起されるのに対し、先に明らかにされた最良のCTL反応は、ウイルス(ワクシニア、アデノウイルス)又は組換え細菌(サルモネラ、又はリステリア)のような複製ベクターにより誘起された。MHCクラスII四量体を用い、LANACシステムは、強力なCD4 T細胞反応を誘起することが可能であることを明らかにした。MCC抗原で免疫処置されたマウスは、強力なCD4反応を生じ(図6、右パネル)、これはDC免疫処置により誘起されたもの(データはここでは示さず)を超えていた。従ってLANAC製剤されたワクチンは、タンパク質抗原に対し、強力かつバランスのとれたT細胞反応を誘起することが可能であった。
実施例7
他の従来型ワクチンと比較したCTL反応の誘起におけるLANACワクチンの効能
ペプチド(図7A)又はタンパク質(図7B)による免疫処置後のAg-特異的なCTL反応の大きさを、Kb-ova8四量体を用いて評価した。ペプチドに対する免疫応答は、完全フロイントのアジュバント中の50mgペプチド又はペプチド(1mm)-パルスしたDCにより誘起された。タンパク質ワクチン接種に関して、マウスは、OvaをコードしているワクシニアウイルスのIV注射により、ovaをコードしているプラスミドDNAベクター100mgの両側性のIM注射により免疫処置するか、又はovaタンパク質でパルスしたDCにより免疫処置した。マウスは、1匹のマウス当り5mgのペプチド又はタンパク質を含有するLANACにより免疫処置し、その後脾細胞四量体反応を、実施例6に説明されたように分析した。これらのデータは、LANACワクチンは、CTL反応を誘起する他の従来型のワクチンよりも、一貫して優れていることを示した。
CTL反応を誘起するLANACワクチンの効能を、ペプチド送達システム(ペプチド-パルスしたDC、完全フロイントのアジュバント中のペプチド)及びタンパク質ワクチン(ova-DNAワクチン、ova-ワクシニア、ova-パルスしたDC)を含む、他の従来型のワクチンと比べた。C57BI6マウス(4動物/群)を免疫処置し、かつ脾臓のCTL反応を評価した。各場合において、特にタンパク質ワクチンの場合、LANAC製剤されたワクチンは明らかに優れていた(図7A)。
実施例8
リポソームはCTL反応の誘起のためのワクチンアジュバントとして役立つPRRLの能力を増強する
リポソームの様々なPRRLへの添加が、PRRLのワクチンアジュバントとして作用する能力を増強するかどうかを決定するために、マウスで実験を行った。評価したPRRLは、プラスミドDNA、CpGオリゴヌクレオチド、ポリI:C(合成偽ds-RNA)、ザイモサン(酵母細胞壁由来)、並びにR-848及びLPSを含んだ。MHC-ペプチド四量体試薬を用い、オボアルブミン-特異的なCD8+ T細胞(CTL)反応をin vivoで測定し、モデル抗原オボアルブミンに対する免疫応答を、C57BI6マウスにおいて評価した。マウスは、様々なリポソーム-PRRL複合体ワクチンと共に5μgオボアルブミンで2回、1週間空けて投与し、免疫処置し、その後脾臓及び肺の細胞を、MHC-ペプチド四量体及びフローサイトメトリーにより分析した。様々なワクチンを調製するために、リポソームを最初に、水中の5%デキストロース1mlに添加し、引き続き各特異的なPRRL 100μgを添加し、続けてオボアルブミンタンパク質を添加した。マウスは、リポソーム-PRRL複合体200μlでIP経路により免疫処置した。その後脾細胞を収集し、最初にMHC-ペプチド四量体で、引き続きCD8及びCD44で免疫染色した。その後細胞を、フローサイトメトリーにより分析し、3匹マウス/1処置群の群サイズを基に、抗原-特異的なCTLの平均百分率を算出した。対照マウスは、ワクチン処置しなかった。図8に示したこれらの実験の結果は、PRRL DNA、CpGオリゴ、ポリI:C、ザイモサン及びR-848を伴うリポソーム複合体は全て、in vivoにおけるCTL反応の誘起のための有効なワクチンアジュバントとして機能することができることを示している。対照的に、リポソーム-LPSは、有効なワクチンアジュバントではなかった。オボアルブミンを伴い単独で投与されたDNA又はCpGオリゴ、又はリポソームのみ+オボアルブミンは、CTL反応の誘起に有効ではないこともわかっている(データは示さず)。従ってリポソームなどの担体分子のPRRLへの添加は、特にCTL反応の誘起について、ワクチンアジュバントとしてのそれらの有効性を顕著に増強することができる。
実施例9
リポソーム-PRRL複合体は肺におけるCTL反応の誘起のための有効なワクチンアジュバントとしても作用する
先に実施例8に説明されたように実験を行い、リポソーム-PRRL複合体は、同じく肺組織において強力なCTL反応を誘起するかどうかを決定した。このようなT細胞反応は、インフルエンザのような吸入された病原体に対する免疫反応に関して、特に望ましい。肺細胞は、オボアルブミンによる2回目の免疫処置の後に収集し、オボアルブミン-特異的なCTL反応の定量についてMHC-ペプチド四量体により分析した。脾臓反応と比べ肺においてザイモサンがより有効でありかつR-848は無効であることを除き、図8に示されたような免疫処置されたマウスの脾臓におけるものと同様のパターンが、肺におけるリポソーム-PRRLワクチンアジュバントによる免疫処置に対するCTL反応でも見られた(図9参照)。従ってこれらのデータは、リポソーム-PRRLワクチンアジュバントは、脾臓のようなリンパ系組織における反応に加え、肺のような末梢組織におけるT細胞反応の誘起にも有効であることを示している。
実施例10
3-パートのリポソーム-抗原-核酸複合体は有効な免疫処置に必要かどうかの決定
3-パートのリポソーム-抗原-核酸複合体が、有効な免疫処置に必要かどうかを決定するために、マウスを、リポソーム及びDNAの様々な組合せと組合せたovaタンパク質5μgでIPにより免疫処置した。Ovaタンパク質は、等量のプラスミドDNA単独(図10、第一パネル)、リポソーム単独(図10、第二パネル)、又はリポソーム+DNA(図10、第三パネル)に添加した(「ova/LADC」;注意「LADC」は「LANAC」と同じ配合を意味する)。脾細胞を収集し、Kb-ova8四量体で染色し、CTL反応を定量した。脂質-DNA複合体により誘起された反応と比べ、DNA又はリポソーム免疫処置単独に対する非常に弱いCTL反応が観察され、このことは、リポソーム、TLR-リガンド、及び抗原の 3-パートの組合せは、有効な免疫処置に必要であるという事実を示している。
実施例11
リポソーム-核酸複合体による免疫処置により誘起されたT細胞の機能可能性
同じくリポソーム-核酸複合体による免疫処置により誘起されたT細胞の機能可能性を評価するために、実験を行った。各群4匹のマウス由来の脾細胞を、LANAC中のova8ペプチド(図11Aに示す)又はペプチド-パルスしたDC(図11Bに示す)のいずれかにより免疫処置し、in vitroにおいてova8ペプチドにより再刺激し、IFN-γの生成をELISAにより評価した。高レベルのIFN-γ放出が、LANAC中のova8ペプチド又はDCワクチンで免疫処置されたマウスのT細胞により生じたのに対し、LANACにより製剤されたovaタンパク質のみ(及び、ovaでパルスされたDCではなく)は、CTLからのIFNγ放出を誘起した。他の抗原(センダイウイルス、死滅RSV、RSV M2ペプチド、メラノーマtrp-2抗原、及びKLHタンパク質を含む)によるLANAC免疫処置も、in vitroにおいて抗原に曝された培養T細胞による高レベルのIFN-γの生成を誘起した(データはここに示さず)。加えてLANAC免疫処置したマウス(ova8又はtrp2ペプチド)由来のT細胞も、in vitro再刺激の5日後に、高レベルの特異的なCTL活性を示した(データはここに示さず)。これらのデータは、LANAC免疫処置は実際、様々な異なる抗原に対する機能的Th1及びTc1 T細胞サイトカイン反応を誘起することを明らかにしている。
実施例12
リポソーム-核酸ワクチン接種の体液性免疫を誘起する能力
リポソーム-核酸ワクチン接種が、体液性免疫を誘起する能力を、BALB/cマウスにおいて、同じくova-LANACシステムを用い評価した。BALB/cマウス(4匹/群)は、LANAC又は完全フロイントのアジュバント(CFA)のいずれか中の10μgのova(タンパク質)により、SC経路で2回、2週間間を空けて免疫処置し、図12Aに認められように、ELISAによる抗-ova力価の決定のために連続して血清試料を収集した(図12B)。LANAC によるSC免疫処置は、CFAにより誘起されたものとほぼ同等の抗体反応を誘起した。IP経路により免疫処置されたマウスは、はるかに高い力価を明らかにし、平均力価は1:130万であった。同様の力価が、動物をKLH(データはここに示さず)を含む他の抗原で免疫処置した後にも認められた。従ってリポソーム-核酸複合体は同じく、体液性免疫の効率的誘導において非常に効果的である。これらのデータは更に、四量体染色により評価されたCTL反応は同じく、強力なCD4 T細胞及び体液性免疫応答の両方を強力に予測するという事実を例示している。
実施例13
LANACによるワクチン接種に対するT細胞記憶反応の評価
LANACのワクチン接種に対するT細胞記憶反応を評価するために、一連の実験を行った。CD8+ T細胞は、マウスの肺組織の酵素消化により得、ova-LANACによる2回のIP免疫処置後に、kb-ova8四量体を用いて分析した。四量体陽性細胞は、対照及びワクチン処置したマウスにおいて3匹マウス/群で、免疫処置後5日目(図13、上側2パネル)及び免疫処置30日目(図13、下側2パネル)に定量した。平均百分率tet+細胞を、総肺CD8 T細胞の%としてプロットした。免疫処置の2週間では大規模なCTL反応は存在しなかったが、これらのT細胞は実際に短命でありかつ迅速に消失することについては議論がある。
リンパ系器官及び末梢組織を含む、CTL記憶細胞を、四量体を用いて試験した。例えば、マウスにおけるウイルス感染症は、最初はリンパ系器官におけるAg-特異的なT細胞の大きい増殖につながり、引き続きこれらの長命の記憶CTLの肺を含む非-リンパ系組織への分散へつながることはわかっている。正確に同じ現象が、ova-LANACによる免疫処置後に生じたことがわかった。2回目のIP免疫処置後5日目の肺組織において、抗原-特異的なCTLの大規模な増殖が認められ、これは、LCMV感染症後に認められたものと大きさが同等であった(図13)。驚くべきことに、これらのマウスの肺において、3個のCD8+ T細胞毎に2個が、ova-特異的であった。多数のova-特異的なCTLが、肝臓においても認められた(データはここに示さず)。恐らく同様に重要なことで、末梢組織内のこれらのCTLも長命であることがわかった。マウスが2回目の免疫処置後30日間実験される場合、総肺CD8+ T細胞のほぼ30%が、依然ova-特異的であり;多数が、依然60日間存在した(示さず)。加えて30日目のマウス由来の脾細胞がovaペプチドによりin vitroで再刺激される場合、これらは依然高レベルのIFN-γを生じた(データはここで示さず)。従ってLANACによる免疫処置は、長期間肺及び他の組織に残存する極めて多数の記憶CTLの生成につながる。肺における多数の長命な記憶T細胞の存在は、エルシニアなどの病原体の吸入に対する即時応答を開始する(mounting)理想的な状況である。
実施例14
経粘膜-投与されたLANACの局所的及び全身性免疫の誘起能の評価
LANACを用いる非経口免疫処置は非常に効果的であるので、経粘膜-投与されたLANACの局所的及び全身性免疫を誘起する能力を評価した。マウスは、ova-LANACの5mg/マウスで2回、経口的(図14、中央パネル)又は鼻腔内経路(図14、最も右パネル)で免疫処置し、その後Ag-特異的なCTL反応を、四量体により定量した。肺細胞は、フローサイトメトリー前の酵素消化により収集し、分析ゲートを、生存脾臓リンパ球を用い設定した。
鼻腔内免疫処置は、四量体により検出されたように(図14、右パネル)、肺において適度に強力なCTL反応を誘起した。しかし最も驚くべきことは、5mgのovaタンパク質の経口投与は、血液、脾臓、肝臓、及び肺を含む全身性CTL反応の誘起において非常に有効であるという事実であった(図14、中央パネル)。実際、経口免疫処置は、CTL反応の誘起におけるSC又はIM免疫処置として有効であった。同等に重要なことに、経口免疫処置により誘起されたCTLは、ex vivo再刺激後の高レベルのIFN-γの生成(データはここで示さず)により証明されるように、長命(少なくとも60日間)かつ機能的であることである。従ってリポソーム-TLR-リガンド複合体をアジュバントとして使用するタンパク質ワクチンによる免疫処置の経口経路は、迅速な経粘膜ワクチン接種手段である手段となる手段を提供することができる。
実施例15
LANACのリンパ系器官への分布効率の評価及び比較
BODIPY-標識したリポソームを用い、LANACのリンパ系器官への分布効率を評価及び比較するために、実験を行った。標識した複合体が、SC又はIP経路のいずれかによるLANACの免疫処置後6時間又は24時間のいずれかで、リンパ節において同定されるかどうかを確定した。側腹両側性のSC免疫処置後、鼠径部リンパ節を摘出したのに対し、腸間膜リンパ節は、IP免疫処置後に摘出した。リンパ節細胞は、CD11 b、CD11 C、及びMHCクラスIIに対する抗体で染色し、フローサイトメトリーで分析した。分析ゲートは、細胞-会合したLANACのみが分析されるように、生存細胞において設定した。複合体は、両免疫処置部位からリンパ節内に存在するが、ドレナージしたリンパ節への分布は、IP免疫処置の後はるかにより効率的であることがわかった(図15)。この複合体は、主にCD11b h1、CD11c lo、及びクラスII中間細胞内に含まれる。IP免疫処置後に腹水中にこれと同じ細胞集団に会合した標識された複合体が観察された。従って、リンパ節へのLANAC取込みは、IP注射後はるかに効率が良く、次にこれは、SC又はIV後(データはここに示さず)よりも、IP注射後のはるかに強力な誘起されたT細胞反応と相関しているように見える。図15に示した標識されたLANACを含みかつ腸間膜リンパ節へ移動する細胞は、マクロファージと最も一致する表現型を有する。しかし現在いくつかの刊行物が、腹腔内の樹状細胞の存在を報告している。これらの細胞は、静止状態下で一般に、マクロファージ-様形態を有するが、炎症刺激による古典的樹状細胞への分化、又は様々なサイトカインの混合物、特にGM-CSF +/-TNF-αを誘導することができる。従ってこれは、両方が真のマクロファージに加え、注射後の腹膜エンドサイトーシスLANACにおけるマクロファージ-様樹状細胞前駆体である場合に良くあてはまる。一旦これらのプレ-DCがこの複合体に取込まれたならば、これらはTLR経由で活性化シグナルを受け取り、より古典的DCへと成熟し、その後局部的リンパ節へと移動し、そこで抗原提示が起こる。皮膚において、ランゲルハンス細胞のような古典的DCが、LANAC取込み及び抗原提示にとってより重要である場合がある。
実施例16
カチオン性脂質DNA複合体(CLDC)の調製
下記実験において使用されるカチオン性リポソーム(特に指示しない限り)は、先に説明されたように、1:1のモル比で混合されたDOTAP(1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン)及びコレステロールからなり、これらを丸底チューブ中で乾燥し、その後50℃で6時間加熱することにより、5%デキストロース溶液(D5W)中で再水和される(Solodinら、Biochemistry、34:13537-13544 (1995)、これはその全体が本願明細書に参照として組入れられている)。他の脂質(例えば、DOTMA)は、指示されたようにいくつかの実験のために、同様に調製した。この手法は、本発明者らが小型の単層小胞(SUV)と比べ最適なトランスフェクション効率を生じることを発見した、多重ラメラ小胞(MLV)からなるリポソームの形成を生じる。MLV及び関連した「押出脂質」の作製も、Liuら、Nature Biotech.、15:167-173 (1997);及び、Templetonら、Nature Biotech.、15:647-652 (1997)の論文に説明されており、これらは両方とも全体が本願明細書に参照として組入れられている。プラスミドDNA(pCR3.1, Invitrogen)を、先に説明されたように、変更されたアルカリ溶解及びポリエチレングリコール沈殿(Liuら、1997、前掲)を用い、E. coliから精製した。注射用のDNAを、蒸留水に再懸濁した。真核生物DNA(サケ***及びウシ胸腺)は、Sigma Chemical Companyから購入した。ここで報告された多くの実験に関して、プラスミドDNAは、遺伝子挿入断片を含まず(特に記さない限り)、従って「非コード」又は「空ベクター」DNAと称される。
この実験において使用されるカチオン性脂質TLR-リガンドは、TLR-リガンドを5%デキストロース溶液(D5W)中の脂質溶液へ室温で穏やかに添加し、その後穏やかに数回上下にピペッティングし、適切な混合を確実にすることにより調製した。TLR-リガンド:脂質比は、1:8(1.0μg DNA対8nmol脂質)であった。これらの複合体を、調製後30〜60分以内に使用した。一部の実験において使用した小型単層小胞(SUV)を調製するために(示されたように)、先に説明されたようにMLVリポソームを用いて形成されたCLDCに、先に説明されたように5分間の音波処理を施した(Liuら、1997、前掲)。
前述の説明は、本発明の原理の単なる例証と考えられる。更に当業者にとって、多くの修飾及び変更を行うことは容易であるので、本発明を、先に説明されたように示された厳密な構造及びプロセスに制限することは望ましくない。従って全ての適当な修飾物及び同等物は、先の「特許請求の範囲」により定義された本発明の範囲内であることが主張されている。用語「含有する(comprise)」、「含有している(comprising)」、「含む(include)」、「含んでいる(including)」及び「含む(includes)」は、本願明細書 及び「特許請求の範囲」において使用される場合、言及された特徴、整数、成分又は工程の存在を特定することを意図しているが、1種又は複数の他の特徴、整数、成分又は工程、又はそれらの群の存在又は追加を排除するものではない。
排他的な特性又は特典が請求される本発明の態様は、先の「特許請求の範囲」により規定される。
図1は、リポソームは、パターン認識受容体リガンド(PRRL)による活性化後に、自然免疫の活性化及びINF-γ放出を顕著に増強することを図示している。 図2では、リポソームは、パターン認識受容体リガンド(PRRL)による活性化後に、IL-10の放出を変更す。 図3は、リポソームは、パターン認識受容体リガンド(PRRL)による活性化後に、TNF-αの放出を増強することを図示している。 図4は、リポソームは、in vitroにおけるパターン認識受容体リガンド(PRRL)への曝露後、樹状細胞活性化の調節を変更することを図示している。 図5は、脂質-DNA複合体に複合されたペプチド抗原又はタンパク質抗原を図示している。 図6は、LANAC及び「クロスプライミング」を示している。 図7A及び7Bは、他の従来型のワクチンと比べた、CTL反応誘起におけるLANACワクチンの効能を図示している。 図8は、リポソームは、PRRLのCTL反応の誘起のためのワクチンアジュバントとして利用する能力を増強することを図示している。 図9は、リポソーム-PRRL複合体は、肺においてCTL反応を誘起するための効果的ワクチンアジュバントとしても作用することを図示している。 図10は、効果的免疫処置に3-部分のリポソーム-抗原-核酸複合体が必要かどうかの決定を示している。 図11A及び11Bは、リポソーム-核酸複合体による免疫処置により誘起されたT細胞の機能的能力を図示している。 図12は、体液性免疫を誘起するリポソーム-核酸ワクチン接種の能力を図示している。 図13は、LANACによるワクチン接種に対するT細胞記憶反応の評価を図示している。 図14は、粘膜-投与されたLANACの局所及び全身の免疫を誘起する能力の評価を図示している。 図15は、リンパ器官へのLANAC分布効率の評価及び比較を示している。

Claims (150)

  1. パターン認識受容体分子の少なくとも1種のリガンド及び対象への送達ビヒクルを含有する組成物を投与することを含む、方法。
  2. パターン認識受容体のリガンドが、シグナル伝達パターン認識受容体のリガンドを含む、請求項1記載の方法。
  3. 前記シグナル伝達パターン認識受容体は、Toll-様受容体TLR-1、TLR-2、TLR-3、TLR-4、TLR-5、TLR-6、TLR-7、TLR-8、TLR-9、TLR-10、TLR-11及びTLR-12及びマンナン-結合レクチン、並びにマクロファージマンノース受容体及びスカベンジャー受容体からなる群より選択される少なくとも1種の受容体を含む、請求項2記載の方法。
  4. 前記リガンドが、TLR-2、TLR-3及び/又はTLR-9のリガンドを含む、請求項3記載の方法。
  5. パターン認識受容体のリガンドが、エンドサイトーシス性のパターン認識受容体又はスカベンジャー受容体又はマンノース-結合受容体のリガンドを含む、請求項1記載の方法。
  6. 前記対象において免疫応答を変調することを更に含む、請求項1記載の方法。
  7. 免疫応答を変調することが、免疫応答を増強することを含む、請求項6記載の方法。
  8. 免疫応答を変調することが、免疫応答をダウンレギュレーションすることを含む、請求項6記載の方法。
  9. 免疫応答を変調することが、癌の素因のある対象において免疫応答を増強することを含む、請求項6記載の方法。
  10. 癌が、肺癌、皮膚癌、肝臓癌、骨髄癌、白血病、卵巣癌、乳癌、前立腺癌、結腸癌、リンパ腫、脳腫瘍、腎細胞癌、及び間葉組織の癌からなる群より選択される1種又は複数を含む、請求項9記載の方法。
  11. 免疫応答を変調することが、感染症の素因のある対象において免疫応答を増強することを含む、請求項6記載の方法。
  12. 前記感染症が、ウイルス病原体、真菌病原体、細菌病原体、リケッチア病原体、寄生体病原体及びプリオン病原体からなる群より選択される1種又は複数の生物により引き起こされる、請求項11記載の方法。
  13. 免疫応答を変調することが、アレルギー疾患の素因のある対象において免疫応答を増強又は抑制することを含む、請求項6記載の方法。
  14. 前記アレルギー疾患が、内在性非自己抗原に対する異常な免疫応答により引き起こされる、請求項13記載の方法。
  15. 前記非自己抗原が、吸入アレルゲン、皮膚アレルゲン及び経口アレルゲンからなる群の少なくとも1種を含む、請求項14記載の方法。
  16. 免疫応答を変調することが、自己免疫疾患の素因のある対象において免疫応答を変調することを含む、請求項6記載の方法。
  17. 前記自己免疫疾患が、自己抗原に対する異常な免疫応答により引き起こされる、請求項16記載の方法。
  18. 自己抗原に対する異常な免疫応答が、神経系由来の抗原、関節由来の抗原、血液要素由来の抗原、腎臓由来の抗原、及び眼由来の抗原からなる群の少なくとも1種の抗原により引き起こされる、請求項17記載の方法。
  19. 免疫応答を変調することが、体内のタンパク質の異常な生成に起因した疾患の素因のある対象において免疫応答を変調することを含む、請求項6記載の方法。
  20. 前記自己免疫疾患が、異常なタンパク質生成により引き起こされる、請求項16記載の方法。
  21. 異常なタンパク質の生成が、脳の異常なタンパク質、腎臓の異常なタンパク質、及び関節の異常なタンパク質からなる群より選択されるタンパク質を含む、請求項20記載の方法。
  22. 脳の異常なタンパク質が、アルツハイマー病症例におけるような脳又は血液の異常なタンパク質を含む、請求項21記載の方法。
  23. 前記投与が、静脈内、腹腔内、吸入、皮下、皮内、結節内、筋肉内、鼻腔内、経口、経直腸、経膣、嚢胞内、眼内、及び外用からなる群より選択される少なくとも1種の経路による投与を含む、請求項1記載の方法。
  24. 特異的細胞型に対する免疫応答を誘導することが可能である物質を投与することを含む方法であり、
    ここで該物質は、その細胞型に対する免疫応答を誘導し、かつその細胞型の正常な又は異常な機能を阻害することが可能である、方法。
  25. 前記特異的細胞型は、血管新生を阻害する目的の内皮細胞を含む、請求項24記載の方法。
  26. 少なくとも1種のパターン認識受容体リガンド並びに血管新生及び/又は線維形成及び/又は骨形成を刺激することが可能である送達ビヒクルを投与することを含む、方法。
  27. パターン認識受容体リガンドが、送達ビヒクルに複合されている、請求項26記載の方法。
  28. パターン認識受容体が、TLR-リガンド、及び他のパターン認識受容体からなる群より選択される、請求項26記載の方法。
  29. 創傷、骨欠損又は骨折を伴う対象を治療することを更に含む、請求項26記載の方法。
  30. 創傷は、皮膚又は軟組織の創傷又は欠損を含む、請求項29記載の方法。
  31. 受容体のパターン認識分子ファミリーのリガンド;及び、
    送達ビヒクルを含有する組成物であり、ここで該組成物が対象に免疫応答を誘導することが可能である、組成物。
  32. 免疫応答の誘導が、自然免疫応答を誘導することを含む、請求項31記載の組成物。
  33. 自然免疫応答が、マクロファージ、好中球、NK細胞、及び/又は樹状細胞による自然免疫応答を含む、請求項32記載の組成物。
  34. 送達ビヒクルが、リポソームを含む、請求項31記載の組成物。
  35. リポソーム対リガンドの比が、mmolリポソーム対mgリガンドで約1:1〜約100:1である、請求項34記載の組成物。
  36. 前記リポソーム対リガンドの比が、mmolリポソーム対mgリガンド約16:1又は約8:1である、請求項34記載の組成物。
  37. 前記リポソームが、正帯電したリポソーム;負帯電したリポソーム;及び、中性リポソームからなる群より選択される少なくとも1種のリポソームを含む、請求項34記載の組成物。
  38. 前記送達ビヒクルが、リポソームのいずれかの組合せを含む、請求項31記載の組成物。
  39. 前記正帯電したリポソームが、受容体のパターン認識分子ファミリーのリガンドに複合されている、請求項37記載の組成物。
  40. 前記リポソームが、帯電した脂質及び中性脂質であるDOTIM(1-(2-(オレオイルオキシ)エチル)-2-オレイル-3-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリニウム)及びコレステロールのモル比1:1の混合物からなる、請求項34記載の組成物。
  41. 送達ビヒクルが、非-リポソーム性である、請求項31記載の組成物。
  42. 非-リポソーム性送達ビヒクルが、ポリペプチド、ポリアミン、キトサン、PEI、ポリグルタミン酸、硫酸プロタミン及びミクロスフェアからなる群より選択される少なくとも1種のビヒクルを含む、請求項30記載の組成物。
  43. 前記リガンドが、TLR-リガンドを含む、請求項34記載の組成物。
  44. TLR-リガンドが、細菌のいずれかの部分を含む、請求項43記載の組成物。
  45. 細菌のいずれかの部分が、TLRに会合している細菌のいずれかの部分を更に含む、請求項44記載の組成物。
  46. 前記TLR-リガンドは、TLR-1、TLR-2、TLR-3、TLR-4、TLR-5、TLR-6、TLR-7、TLR-8、TLR-9、TLR-10、TLR-11及びTLR-12からなるものの少なくとも1種に会合している細菌のいずれかの部分を含む、請求項45記載の組成物。
  47. TLR-リガンドが、真菌生物のいずれかの部分を含む、請求項43記載の組成物。
  48. 前記TLR-リガンドが、TLRに会合している真菌生物のいずれかの部分を含む、請求項47記載の組成物。
  49. 前記真菌生物のいずれかの部分が、TLR-1、TLR-2、TLR-3、TLR-4、TLR-5、TLR-6、TLR-7、TLR-8、TLR-9、TLR-10、TLR-11及びTLR-12からなる群から選択された少なくとも1種の受容体に会合している酵母のいずれかの部分を更に含む、請求項37記載の組成物。
  50. TLR-リガンドが、多細胞生物のいずれかの部分を含む、請求項43記載の組成物。
  51. TLR-リガンドが、単細胞生物のいずれかの部分を含む、請求項43記載の組成物。
  52. 前記リガンドが、細菌病原体のいずれかの部分に由来する糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質、糖質、脂質、核酸及び/又はタンパク質もしくはペプチド配列からなるものの少なくとも1種を含む、請求項31記載の組成物。
  53. TLR-1、TLR-2、TLR-3、TLR-4、TLR-5、TLR-6、TLR-7、TLR-8、TLR-9、TLR-10、TLR-11及びTLR-12からなる群より選択される少なくとも1種の受容体に結合する細菌病原体のいずれかの部分を更に含む、請求項52記載の組成物。
  54. 前記リガンドが、TLR-1、TLR-2、TLR-3、TLR-4、TLR-5、TLR-6、TLR-7、TLR-8、TLR-9、TLR-10、TLR-11及びTLR-12からなる群より選択される1種又は複数と会合する、該真菌生物のいずれかの部分に由来する糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質、糖質、脂質、核酸及び/又はタンパク質もしくはペプチド配列からなる群より選択される少なくとも1種のリガンドを含む、請求項31記載の組成物。
  55. 前記リガンドが、真菌生物のいずれかの部分に由来する糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質、糖質、脂質、核酸及び/又はタンパク質もしくはペプチド配列を含む、請求項31記載の組成物。
  56. 前記リガンドが、ウイルス生物のいずれかの部分に由来する糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質、糖質、脂質、核酸及び/又はタンパク質もしくはペプチド配列を含む、請求項31記載の組成物。
  57. 前記リガンドが、リケッチア生物のいずれかの部分に由来する糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質、糖質、脂質、核酸及び/又はタンパク質もしくはペプチド配列を含む、請求項31記載の組成物。
  58. 前記リガンドが、寄生体生物のいずれかの部分に由来する糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質、糖質、脂質、核酸及び/又はタンパク質もしくはペプチド配列を含む、請求項31記載の組成物。
  59. 前記リガンドが、節足動物の生物のいずれかの部分に由来する糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質、糖質、脂質、核酸及び/又はタンパク質もしくはペプチド配列を含む、請求項31記載の組成物。
  60. 前記リガンドが、TLR-リガンドをコードしている核酸を含む、請求項31記載の組成物。
  61. 前記核酸が、細菌DNA、真核生物DNA、dsDNA、ssDNA、合成オリゴヌクレオチド、RNA、及び合成RNAからなる群より選択される少なくとも1種の分子を含む、請求項60記載の組成物。
  62. 前記オリゴヌクレオチドが、ポリI:C又は関連したポリI:Cオリゴヌクレオチドの少なくとも1種を含む、請求項61記載の組成物。
  63. 前記リガンドが、免疫応答を誘起するのに十分な比の2種又はそれよりも多い異なるTLR-リガンドの混合物である、請求項31記載の組成物。
  64. 前記リガンドが、パターン認識受容体と会合及び/又はこれを刺激する分子からなる、請求項31記載の組成物。
  65. 前記リガンドが、パターン認識受容体に結合し及びこれを刺激する合成により作成されたリガンドを含む、請求項31記載の組成物。
  66. ステロイド骨格を伴ういずれかの分子を更に含む、請求項31記載の組成物。
  67. DNA凝縮剤を更に含む、請求項60記載の組成物。
  68. DNA凝縮剤が、ポリエチレンイミン(PEI)である、請求項67記載の組成物。
  69. 少なくとも1種の抗原;及び、
    送達ビヒクルを含むアジュバント組成物;及び、パターン認識受容体分子の少なくとも1種のリガンドを含む、組成物。
  70. 前記抗原及び該パターン認識分子受容体のリガンドが、該送達ビヒクルに複合されている、請求項69記載の組成物。
  71. パターン認識分子受容体のリガンドが、TLR受容体リガンドを含む、請求項69記載の組成物。
  72. 前記抗原が、無傷の微生物を含む、請求項69記載の組成物。
  73. 前記微生物が、ウイルス生物、細菌性生物、真菌生物、原生動物、寄生体病原体生物、リケッチア生物、及び節足動物からなる群より選択される少なくとも1種の生物を含む、請求項72記載の組成物。
  74. 前記抗原が、タンパク質、ペプチド、糖質、リポタンパク質;糖ペプチド、糖タンパク質、糖脂質及び脂質からなる群より選択される少なくとも1種の分子を含む、請求項69記載の組成物。
  75. 前記抗原が細胞である、請求項69記載の組成物。
  76. 前記細胞が、自家又は同種異系の腫瘍細胞の1種又は複数からなる、請求項75記載の組成物。
  77. 前記送達ビヒクルが、リポソームを含む、請求項69記載の組成物。
  78. 前記送達ビヒクルが、多重ラメラ小胞脂質、突出したリポソーム及び単層リポソームからなる群より選択される脂質を含む、請求項69記載の組成物。
  79. 前記リポソームが、正帯電したリポソーム、修飾された多重ラメラリポソーム、カチオン性リポソーム、中性リポソーム及び負帯電したリポソームからなる群の少なくとも1種を含む、請求項77記載の組成物。
  80. 前記送達ビヒクルが、DOTMA及びコレステロール;DOTAP及びコレステロール;DOTIM及びコレステロール;DDAB及びコレステロールからなる群より選択される脂質の少なくとも1対を含む、請求項69載の組成物。
  81. 前記送達ビヒクルが、非-リポソーム性送達ビヒクルを含む、請求項69記載の組成物。
  82. 送達ビヒクルは、ポリペプチド、ポリアミン、キトサン、PEI、ポリグルタミン酸、硫酸プロタミン及びトリクロサンからなる群より選択される少なくとも1種のビヒクルを含む、請求項81記載の組成物。
  83. 対象へ、抗原組成物を;並びに、送達ビヒクル;及び、TLR-リガンドを含むアジュバント組成物を対象へ、投与することを含む、ワクチン接種の方法。
  84. 前記送達ビヒクルに複合された該抗原及び該TLR-リガンドを更に含む、請求項83記載の方法。
  85. 前記組成物を、静脈内、腹腔内、吸入、皮下、皮内、結節内、筋肉内、鼻腔内、経口的、経直腸的、膣内、嚢胞内、眼内、及び外用からなる群より選択される経路により投与することを更に含む、請求項83記載の方法。
  86. 癌の素因のある対象において免疫応答を増強することを更に含む、請求項83記載の方法。
  87. 癌が、肺癌、皮膚癌、肝臓癌、骨髄癌、卵巣癌、乳癌、前立腺癌、結腸癌、リンパ腫、脳腫瘍、腎細胞癌、及び間葉組織の癌からなる群より選択される少なくとも1種の癌を含む、請求項86記載の方法。
  88. 感染症の素因のある対象における免疫応答を増強することを更に含む、請求項83記載の方法。
  89. 前記感染症が、ウイルス病原体、真菌病原体、細菌病原体、リケッチア病原体、寄生体病原体、節足動物病原体及びプリオン病原体からなる群より選択される1種又は複数の生物により引き起こされる、請求項88記載の方法。
  90. 少なくとも1種の抗原、送達ビヒクル;及び、パターン認識受容体分子の少なくとも1種のリガンドを含有するアジュバント組成物を含む、組成物。
  91. 前記送達ビヒクルへ組込まれ、その後パターン認識分子受容体のリガンドと混合された該抗原を更に含む、請求項90記載の組成物。
  92. 前記パターン認識分子受容体のリガンドが、TLR-リガンドを含む、請求項91記載の組成物。
  93. 送達ビヒクルが、リポソームを含む、請求項90記載の組成物。
  94. リポソームのTLR-リガンドに対する比が、nmolリポソーム/ng TLR-リガンドで約1:1〜約100:1である、請求項93記載の組成物。
  95. 前記リポソームが、正帯電したリポソーム、負帯電したリポソーム;カチオン性リポソーム;及び、修飾された多重ラメラリポソームからなる群より選択される少なくとも1種の分子からなる、請求項93記載の組成物。
  96. 前記カチオン性リポソームが、細菌DNAに複合された該カチオン性リポソームを更に含む、請求項95記載の組成物。
  97. 前記送達ビヒクルが、帯電した脂質及び中性脂質の混合物からなる、請求項90記載の組成物。
  98. 前記TLR-リガンドが、TLRに会合した細菌のいずれかの部分を含む、請求項90記載の組成物。
  99. 前記TLR-リガンドが、細菌の細胞壁成分を含む、請求項90記載の組成物。
  100. 前記TLR-リガンドが、TLR-1、TLR-2、TLR-3、TLR-4、TLR-5、TLR-6、TLR-7、TLR-8、TLR-9、TLR-10、TLR-11及びTLR-12からなる群より選択される少なくとも1種の受容体に結合する、請求項90記載の組成物。
  101. 前記TLR-リガンドが、TLR2、TLR5、又はTLR9に結合する、請求項90記載の組成物。
  102. 前記TLR-リガンドが、フラジェリンタンパク質を含む、請求項90記載の組成物。
  103. 前記フラジェリンタンパク質が、TLR5に結合し及びこれを活性化することが可能なフラジェリンの最小部分を含む、請求項102記載の組成物。
  104. 前記TLR-リガンドが、核酸を含む、請求項90記載の組成物。
  105. 前記核酸が、細菌DNA、真核生物DNA、合成オリゴヌクレオチド、及びRNAからなる群より選択される少なくとも1種の分子を含む、請求項104記載の組成物。
  106. 前記RNAが、2本鎖RNA、1本鎖RNA及び合成RNAからなる群より選択される少なくとも1種の分子を含む、請求項105記載の組成物。
  107. 前記TLR-リガンドが、TLR3に結合することが可能であるポリI:C及びポリI:C関連したオリゴヌクレオチドの少なくとも1種を含む、請求項90記載の組成物。
  108. 前記TLR-リガンドが、真菌又は酵母生物のいずれかの部分を含む、請求項90記載の組成物。
  109. 真菌又は酵母生物の一部が、生物の細胞壁のいずれかの部分を含む、請求項108記載の組成物。
  110. 前記TLR-リガンドが、2種又はそれよりも多い異なるTLR-リガンドの混合物を免疫応答を誘起するのに十分な比で含む、請求項90記載の組成物。
  111. 前記TLR-リガンドが、TLRと会合及び/又はこれを刺激するいずれかのリガンドからなる、請求項90記載の組成物。
  112. パターン認識受容体の少なくとも1種のリガンド及び送達ビヒクルを;少なくとも1種の癌療法と組合せて、投与することを含み、ここで該方法が、癌の素因のある対象において反応を誘起する、癌の対象を治療する方法。
  113. 前記癌療法が、高体温療法、放射線療法、化学療法、光線力学療法(PDT)、手術、超音波療法、及び集束超音波療法からなる少なくとも1種の療法を含む、請求項112記載の方法。
  114. 療法の投与の順番は、異なる反応を生じる、請求項112記載の方法。
  115. 放射線療法が最初に導入される、請求項114記載の方法。
  116. 放射線療法が最後に導入される、請求項114記載の方法。
  117. 放射線療法が同時に導入される、請求項114記載の方法。
  118. パターン認識受容体リガンドが、核酸分子を含む、請求項112記載の方法。
  119. パターン認識受容体リガンドが、細菌DNAを含む、請求項112記載の方法。
  120. 送達ビヒクルが、リポソームを含む、請求項112記載の方法。
  121. 送達ビヒクルが、非-リポソーム性送達ビヒクルを含む、請求項112記載の方法。
  122. パターン認識分子受容体の少なくとも1種のリガンド;及び、送達ビヒクルを含有する組成物による、医療器具のコーティングを含む、方法。
  123. 医療器具が、埋込式器具を含む、請求項122記載の方法。
  124. 埋込式器具が、カテーテル、ステント、メッシュ修復材、ダクロン人工血管、整形外科用金属プレート、ロッド及びスクリューからなる器具の少なくとも1種からなる、請求項123記載の方法。
  125. 送達装置が、徐放性粒子及び送達ビヒクルを含む、請求項122記載の方法。
  126. 送達ビヒクルがリポソームを含む、請求項125記載の方法。
  127. リポソームが、不活性マトリックス又は徐放性生体材料と組合わされたリポソームを更に含む、請求項126記載の方法。
  128. 不活性マトリックスが、コラーゲン、ゼラチン、PLA(限定)ミクロスフェア、血清血餅、及び有機ゲルからなる群より選択される少なくとも1種の材料である、請求項127記載の方法。
  129. パターン認識分子受容体の少なくとも1種のリガンド;送達装置を含有する組成物;及び、放射線療法を対象へ投与することを含む、方法。
  130. パターン認識分子受容体のリガンドが、シグナル伝達パターン認識受容体のリガンドを含む、請求項129記載の方法。
  131. パターン認識分子受容体のリガンドが、パターン認識受容体のリガンドを含む、請求項129記載の方法。
  132. 前記対象における免疫応答を増強することを更に含む、請求項129記載の方法。
  133. 免疫応答を増強することが、癌の素因のある対象における免疫応答を増強することを含む、請求項132記載の方法。
  134. 癌が、肺癌、皮膚癌、肝臓癌、骨髄癌、脳腫瘍、腎細胞癌、卵巣癌、乳癌、前立腺癌、間葉組織の癌、リンパ腫、及び結腸癌からなる群より選択される少なくとも1種の癌を含む、請求項133記載の方法。
  135. 療法を投与する順番が、異なる反応を生じる、請求項129記載の組成物。
  136. 放射線療法が最初に導入される、請求項135記載の方法。
  137. 放射線療法が最後に導入される、請求項135記載の方法。
  138. 放射線療法が同時に導入される、請求項135記載の方法。
  139. リガンドが、パターン認識受容体の結合が可能である合成化合物を含む、請求項129記載の方法。
  140. 合成化合物が、イミダゾキノリン(immadazoquinoline)を含む、請求項139記載の方法。
  141. 送達容器;送達装置;パターン認識受容体の少なくとも1種のリガンド;及び、プラス又はマイナスの抗原を含むキットであり;ここで該リガンドは、対象における免疫応答を誘起することが可能である、キット。
  142. 1種又は複数の化学療法剤を更に含む、請求項141記載のキット。
  143. パターン認識分子受容体の少なくとも1種のリガンド;及び、送達ビヒクルを含む組成物を、対象へ投与することを含み、ここで該組成物は骨の治癒を増強する、方法。
  144. 組成物が、骨移植の前に投与される、請求項143記載の方法。
  145. リガンドが、持続放出性の材料により封入されている、請求項143記載の方法。
  146. パターン認識分子受容体の少なくとも1種のリガンド;及び、送達ビヒクルを含む組成物を、対象へ投与することを含み、ここで該組成物は損傷を軽減することが可能である、方法。
  147. 損傷が、酸化ストレス損傷及び/又はアポトーシス媒介型損傷の少なくとも1種を含む、請求項146記載の方法。
  148. 損傷が、粘膜炎、漿膜炎、実質損傷、再灌流損傷、又は放射線療法及び/もしくは化学療法に関連した損傷を含む、請求項147記載の方法。
  149. 組成物が、自然免疫応答を更に開始する、請求項146記載の方法。
  150. 組成物が、高齢者の対象に投与される、請求項146記載の方法。
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