JP2007321176A - コイルばね用チタン合金棒線およびその製造方法 - Google Patents

コイルばね用チタン合金棒線およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】素材となる棒線の直径偏差、コイルばねへの成形性、時効熱処理後の断面硬さ分布の均一性の3つを、同時により安定して高めることのできる、コイルばね用チタン合金棒線およびその製造方法を提供する。
【解決手段】コイルばねの素材となるチタン合金棒線に付与する冷間伸線の伸線率を3〜20%と低く抑えることによって棒線の直径偏差を改善するともに、棒線の変形抵抗を低く抑えることができる。且つβ型チタン合金のβ変態点を780℃以上とすることによって、時効熱処理時のα相の析出を速くして、伸線率が小さく短時間の時効熱処理でも断面内の硬さ分布のばらつきを小さく抑えることができる。さらに、冷間伸線前の棒線を微細な金属組織である未再結晶組織或いは結晶粒径10μm以下の再結晶組織にすることによって、時効熱処理後の断面内硬さ分布のばらつきを極めて小さくすることができる。
【選択図】図4

Description

本発明は、二輪および四輪自動車のサスペンションスプリングやエンジンバルブスプリングなどに代表されるコイルばねを製造する際に用いられるチタン合金棒線およびその製造方法に関する。
所定の荷重Pとばね定数Rを実現するコイルばねについて、コイルばねの質量Wは材料の物性値に基づいて(1)式で表される。(1)式より、荷重Pおよびばね定数Rの設計条件が一定の場合には、Wは、材料のせん断強度τ、横弾性係数G、密度ρで決まり、τが大きく、Gとρが小さいほど軽量になる。
W=(2G・ρ・P2)/(τ2・R) ・・・(1)式
ここで、W:コイルばねの質量、G:横弾性係数、ρ:材料の密度、P:荷重、τ:材料のせん断強度、R:ばね定数である。
鋼に比べて比強度(密度に対する強度)が高く弾性率が小さいチタン合金は、コイルばねを軽量化するのに適した材料として知られており、その中でも時効熱処理によるα相の析出強化能が高いβ型チタン合金は1400MPa以上の強度が得られることから二輪および四輪自動車のコイルばねとして多くの適応例がある。一般的に、β型チタン合金は、β変態点前後の高温域から冷却しβ相を残存させた状態から、α+β二相域である400〜600℃の低温で7,8〜20時間の時効熱処理を施すことによってβ相内に微細なα相が析出する。いわゆる析出強化が非常に有効に活用できる材料である。
一方で、コイルばねの特性を決めるばね常数Rは(2)式で表される。
R=(G・d4)/(8n・D3) ・・・(2)式
ここで、R:ばね定数、G:材料の横弾性係数、d:素材棒線の直径、n:コイルばねの巻き数、D:コイルばねの外径である。
(2)式より、ばね定数Rは、素材となる棒線の直径dとコイルばねの外径Dの影響を大きく受けることがわかる。このことから、dに影響する素材棒線の直径偏差が小さいほど、言い換えれば真円度が高いほど、成形後のDが安定しているほど、安定したばね常数が得られる。より直径偏差が小さい棒線を得るためには、熱間加工後或いは熱間加工後に溶体化加熱処理を施した後の棒線をシェービングや冷間伸線する方法が有効である。
シェービングは刃先の付いた円形の孔型ダイスに棒線を通材して所定量を切削する方法であり、当然ながら切り屑が歩留まりロスになる。また、β型チタン合金は高強度且つ低ヤング率であるため切削刃先への反力が大きくチタンが焼き付き、刃先が欠損しやすい。コイル状の素材などを連続的にシェービングする上で、刃先の欠損が起きた場合には安定した直径偏差を得ることが困難になる。従って、棒線の直径偏差を改善する手段として、シェービングよりも冷間伸線が多く用いられる。
β型チタン合金棒線を用いたコイルばねは、一般的に、棒線の冷間伸線、コイリング(コイルばね形状に成形)、時効熱処理、ショットピーニングの順に製造されることが知られている(特許文献1参照)。この場合、冷間伸線が付与されているため素材棒線の真円度も比較的高まっている。ここで、時効熱処理前の冷間伸線の断面減少率は、特許文献1ではTi−3Al−8V−6Cr−4Mo−4Zr(以降、BetaC)で70%以上とすること、特許文献2ではα+β二相域で熱延或いは溶体化処理後に30〜95%とすること、特許文献3ではTi−V−Mo−Zr−Al−Fe−Cr系で30%とする例が示されている。また、非特許文献1ではBetaCとTi−13V−11Cr−3Alで33〜50%とする例が、非特許文献2ではBetaCとTi−13V−11Cr−3Alで40,80,90%とする例が、非特許文献3ではTi−13V−11Cr−3Alで80%とする例が示されている。このように、高強度を得るために冷間伸線の断面減少率は30〜95%と、少なくとも30%である。以降、冷間伸線の断面減少率を「伸線率」と表記する。
特開平05−195175号公報 特開平04−074856号公報 特開2005−154850号公報 R.R.Boyerら、「Beta Titanium Alloys in The 1980’s」、1983年、AIME発行、295〜305頁 M.Murakamiら、「SAE Technical Paper Series, No.890470」、1989年 籔下毅士ら、「ばね論文集」,第40号、1996年、1〜5頁
コイルばね用β型チタン合金棒線を冷間伸線により製造するに際し、伸線率が高まると、低ヤング率に加えて棒線の変形抵抗が高まるため潤滑が維持できなくなり伸線ダイスにチタンが焼き付き、その結果、棒線表面に欠陥を生じる場合がある。さらに、二輪および四輪自動車のサスペンションスプリングは棒線の直径が10〜20mmを超えるほど太いため、伸線ダイスへの負荷が大きく、より焼き付きが生じやすい条件となる。また、棒線からコイリングする際にも、伸線率が高まると上述同様に低ヤング率、高変形抵抗が影響して、コイリングの成形治具に焼き付きやすく成形性が低下するといった課題がある。
即ち、伸線率の高い冷間伸線では、β型チタン合金棒線が伸線のダイスに焼き付き、ダイスに欠損が生じた場合には安定した直径偏差を得ることが困難になるとともに、高い伸線率を付与したβ型チタン合金棒線は変形抵抗が高く成形性が低下しているためにコイリング成形治具へも焼き付きやすいといった課題がある。
これに対して、伸線率を小さくすることによって、β型チタン合金棒線の変形抵抗の上昇が抑えられて、伸線ダイスやコイリング成形治具への焼き付きが抑制できる。結果として、安定して良好な直径偏差が得られることになる。しかしながら、伸線率が小さい場合には、棒線断面内に付与された歪み量が、棒線断面の中心部と表層部で差が大きく、表層に多いために、コイリング後に実施される時効熱処理の時間を、10,20時間を超えるほど、十分に長くとらないと、コイルばね製品の段階で棒線断面内の硬さ分布に大きなばらつきを生じる場合がある。つまり、断面内で表層と内部で強度差がある状態で製品となる可能性がある。短時間の時効熱処理で生じるこの硬さのばらつきは、冷間伸線で付与された歪み、つまり格子欠陥が、時効熱処理にはα相の析出サイトとなるため、歪み量が大きい場所ではα相の析出サイトが多く早期にα相が析出して十分に硬化するが、これに対して歪み量が小さい場所ではα相の析出が遅く硬化量も小さいままの状態になるためである。
そこで、本発明は、1)素材となる棒線の直径偏差、2)コイルばねへの成形性、3)時効熱処理後の断面硬さ分布の均一性の3つを、同時により安定して高めるコイルばね用チタン合金棒線の製造方法を提供することを目的とするものである。また、コイルばね製造に適したチタン合金棒線を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するために本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1) β変態点が780℃以上のβ型チタン合金からなり、0.2%耐力が1300MPa未満、表面から1mm深さと中心の断面ビッカース硬さの差が20以上、棒線の直径偏差が±0.08mm以下であることを特徴とする、コイルばね用チタン合金棒線。
(2) 前記β型チタン合金が、Feを2〜8mass%含み且つVが0.1mass%以下であることを特徴とする、上記(1)に記載のコイルばね用チタン合金棒線。
(3) β変態点が780℃以上のβ型チタン合金を熱間加工した、或いは熱間加工後にさらに溶体化熱処理した棒線を用い、断面減少率で3〜20%の冷間伸線を実施することを特徴とする、コイルばね用チタン合金棒線の製造方法。
(4) 冷間伸線前の金属組織が未再結晶組織或いは結晶粒径10μm以下の再結晶組織であることを特徴とする、上記(3)に記載のコイルばね用チタン合金棒線の製造方法。
(5) 前記β型チタン合金が、Feを2〜8mass%含み且つVが0.1mass%以下であることを特徴とする、上記(3)または(4)に記載のコイルばね用チタン合金棒線の製造方法。
(6) 冷間伸線にて孔型ダイスを用いることを特徴とする、上記(3)ないし(5)のいずれか1項に記載のコイルばね用チタン合金棒線の製造方法。
本発明において、棒線同一断面の最大直径と最小直径とを測定し、最大直径−狙い直径を「+差」、狙い直径−最小直径を「−差」としたとき、+差と−差の双方を棒線の直径偏差と呼ぶ。
本発明によって、コイルばね用チタン合金棒線の1)直径偏差、2)コイルばねへの成形性、3)時効熱処理後の断面硬さ分布の均一性の3つを、同時により安定して高める製造方法およびコイルばね用チタン合金棒線を提供できる。本発明では伸線率を、従来技術の30%以上に対して、比較的小さくできることから、製造コスト面でも効果がある。
本発明者らは、コイルばね用チタン合金棒線の1)直径偏差、2)コイルばねへの成形性、3)時効熱処理後の断面硬さ分布の均一性の3つを、同時により安定して高める方法について、鋭意研究を重ねた結果、以下のことを見出した。コイルばねの素材となるチタン合金棒線に付与する冷間伸線の伸線率を3〜20%、好ましくは3〜10%と低く抑えることによって棒線の変形抵抗も低く抑えることができて、伸線ダイスとの焼き付きが防止されるために安定した直径偏差が得られるとともに、コイルばねへの成形性も十分に確保できる。加えて、β変態点が780℃以上、好ましくは790℃以上のβ型チタン合金を適用することによって、時効熱処理時のα相の析出が比較的速くなるため、α相の析出に対して伸線で付与された歪み分布の影響が小さくなり、短時間の時効熱処理でも断面内の硬さ分布のばらつきを小さく抑えることができる。さらに、冷間伸線前の棒線を微細な金属組織である未再結晶組織或いは結晶粒径10μm以下の再結晶組織にすることによって、時効熱処理後の断面内硬さ分布のばらつきを極めて小さくすることができる。
以下に本発明の各要素の設定根拠について説明する。
第一に、冷間伸線の断面減少率(伸線率)について説明する。
熱間圧延、さらにはデスケ酸洗した棒線の偏径差は0.2〜0.5mm程度あることから、棒線の直径がおおよそ10〜20mmに対して伸線率は少なくとも3%は必要となる。図5に、棒線の実績直径の狙い直径に対する偏差と伸線率の関係を示す。伸線率3%以上において偏差が±0.08mm以下となっていることがわかる。したがって、伸線率の下限は3%とした。
伸線率の上限は、冷間伸線後の変形抵抗の指標となる0.2%耐力の増加率によって制限した。図1に伸線率と冷間伸線ままの0.2%耐力およびその増加率の関係を示す。図1より0.2%耐力の増加率は伸線率と同等にほぼ比例して増加することがわかる。一方で、棒線の0.2%耐力が1300MPaを超えると表面の潤滑が維持できなくなり冷間伸線時に伸線ダイスとの焼き付きが顕著に発生する傾向にある。また、1300MPaを超えた高強度になると、コイリングの際にも成形治具との焼き付き発生頻度やスプリングバック量が大きくなる傾向にあり、ばね成形性におけるこれらの課題が顕在化する場合がある。図1では伸線率がゼロ、つまり初期の状態の0.2%耐力が1069MPaと1000MPaを超えた比較的高強度な材料の場合を示したものであることから、本発明の請求項1では高強度な材料でも冷間伸線後に0.2%耐力が1300MPaを超えないようにするために、伸線率の上限を0.2%耐力が約20%増加する20%とした。好ましくは0.2%耐力が約10%増加する10%である。なお、図1では、伸線率が10%の場合、0.2%耐力は1200MPa未満となっている。
また、冷間伸線前に既に冷間加工が加わったままの棒線は、加工硬化によって0.2%耐力が増加していることから、0.2%耐力を低く抑えるために、本発明では冷間伸線前の棒線を熱間加工した状態或いは熱間加工後に溶体化熱処理した状態とする。なお、冷間伸線前に熱間加工や熱処理のスケールを除去する脱スケール工程や冷間伸線のための潤滑処理を適宜加えても良い。
第2にβ型チタン合金のβ変態点について説明する。
図2の(1),(2),(3)に各々、β型チタン合金であるBetaC、Ti−15V−3Cr−3Sn−3Al(以降、Ti−15−3)、Ti−1.5Al−6.8Mo−4.5Fe(以降、LCB)の時効熱処理時間による断面ビッカース硬さの変化(時効硬化曲線)を示す。ここで、各素材とも時効熱処理前に棒線は直径14mmから13.5mmに伸線率7%で冷間伸線したものを用いた。時効熱処理によって到達する硬さがビッカース硬さで410〜430程度になるように、時効熱処理温度はBetaC,Ti−15−3,LCBで各々490,510,530℃で実施した。断面内の表層と内部の硬さの差を評価するために、T断面にて表層から1mm深さと中央の2箇所のビッカース硬さを測定した。図2にて、表層1mm深さと中央の硬化挙動を比較すると、(1)のBetaCと(2)のTi−15−3は表層の方が内部よりも歪みが多く付与されているため時効硬化が速く起きており、3〜8時間の短時間側では表層1mmと中央の硬さの差が比較的大きい。BetaCでは48時間、Ti−15−3では14時間の時効熱処理で表層と中央の差がほぼ解消される。一方、(3)のLCBは表層1mmと中央の時効硬化挙動の差が非常に小さく、比較的短い3時間の時効熱処理で硬さの差がほぼ解消される。生産性や大気熱処理の場合にはスケール発生の観点から、時効熱処理は短時間ほど好ましい。
これらのβ型チタン合金はβ変態点が大きく異なっており、BetaC,Ti−15−3,LCBで各々730,760,805℃である。β変態点が異なるβ型チタン合金にて同程度のα相を析出させるためには、β変態点が低いものほど時効温度を低くする必要がある。時効熱処理温度が低いほど拡散速度は小さくα相の析出が遅くなり、その結果、硬化も遅く最高硬さに達する時効熱時間が長くなってしまう。その反対にβ変態点が高いほど時効熱処理温度を高くすることができ、時効硬化が速く起きることになる。
冷間伸線によって付与された歪み、つまり格子欠陥は、α相の析出サイトとして作用するため、歪み量が多いほどα相の析出サイトが多くなり、その結果、α相が速く析出し硬化も速くなる。伸線率が小さい場合には、表層と中央で歪み分布が生じ、歪み量が多い表層ほど時効硬化が速くなる。β変態点が低く時効硬化が遅いBetaCやTi−15−3では、短時間側で、冷間伸線による歪み量の影響が顕著に現れ、図2の(1),(2)のような断面内に硬さの差が生じると考えられる。これに対して、β変態点が高いLCBは歪みが無くとも元々時効硬化が速いため、歪み量の影響が小さく、図2の(3)のように短時間の時効熱処理でも断面内の硬さの差がほとんどないと考えられる。
このように、伸線率が小さい場合に短時間の時効熱処理でも断面内の硬さのばらつきを抑えるためには、β変態点を高めることが有効である。そこで、図2の結果を用いて、β型チタン合金のβ変態点と断面内の硬さのばらつきΔHV(ΔHVは、表層1mmと中央のビッカース硬さの差)の関係を整理した。その結果を図3に示す。図3では時効熱処理時間が短い側を比較するために、3時間と8時間の2条件を示す。図3より、3時間の時効の場合にはβ変態点が790℃以上で、8時間の時効の場合にはβ変態点が780℃以上で、ΔHVは十分に10以下になる。また、図3より、β変態点が780℃のとき時効時間が3時間の場合でもΔHVは約15と比較的小さい。ここで、ΔHVが10〜15は各々、ビッカース硬さ410〜430に対して3〜5%未満に相当し、小さいことがわかる。
さらに、伸線率のみを7%から3%に変更し、上記と同様の処理を行った。その結果、伸線率7%の場合と同様、ΔHVが10以下になる条件は、時効時間が8時間の場合にβ変態点が780℃以上、時効時間が3時間の場合にはβ変態点が790℃以上であった。
以上のことから、本発明の請求項1では、用いるβ型チタン合金のβ変態点を780℃以上とした。また、時効時間がより短い側でもΔHVが小さくなることから、好ましくはβ変態点が790℃以上である。
以上総合して、コイルばね製造に適したチタン合金棒線について説明する。
本発明のコイルばね用チタン合金棒線は、図4に示すように、伸線率が3〜20%では冷間伸線ままの状態なのでΔHVが20以上である。なお、ΔHVの上限は実質的に70〜80程度となる。図4から分かるように、伸線率が小さい場合や大きすぎる場合には、かえってΔHVは小さくなり20未満となる。
図5は、横軸が伸線率であり、縦軸は狙いの直径に対する実績直径の偏差である。縦軸の偏差については、棒線同一断面の最大直径と最小直径とを測定し、最大直径−狙い直径を「+差」、狙い直径−最小直径を「−差」とした。図5に示すように、伸線率3%以上の冷間伸線を実施することによって、狙いの直径に対する実績直径の偏差は、+差、−差ともに少なくとも±0.08mm以下となり、容易に±0.05mm以下のものが得られる。ここでは、孔型ダイスを用いた冷間伸線の結果である。ばね常数は(2)式より、直径10〜20mmの棒線を前提にした場合、偏差±0.08mmで±1.6〜3.2%以下、偏差±0.05mmで±1〜2%以下の範囲に収まることになる。当然ながら、偏差±0.05mmの方が好ましい。なお、伸線率が20%を超えると0.2%耐力が1300MPa超え、伸線時の焼き付きが発生する。そのような場合には、伸線の途中で再潤滑を行うことにより冷間伸線を完遂した。ただし、棒線の実生産においては、冷間伸線で再潤滑を行うと、その分の製造費が嵩むという問題が発生する。さらに上述したように0.2%耐力が1300MPa超えた状態ではコイリング時に成形治具と焼き付くといった問題が発生する。
このように、冷間伸線を実施された本発明の請求項1の棒線は、ΔHVが20以上で、直径偏差が±0.08mm以下好ましくは±0.05mm以下となる。
したがって、本発明の請求項1に係る発明では、安定したばね定数と均一な材質を有するコイルばねを製造することができるコイルばね用チタン合金として、β変態点が780℃以上のβ型チタン合金からなり、0.2%耐力が1300MPa未満、表面から1mm深さと中心の断面ビッカース硬さの差(ΔHV)が20以上、棒線の直径偏差が±0.08mm以下とした。好ましくは、上述のように、各々、β型チタン合金のβ変態点が790℃以上、0.2%耐力が1200MPa未満、棒線の直径偏差が±0.05mm以下である。なお、冷間伸線ままの0.2%耐力の下限は、小さくとも900MPa程度である。
第3に、β型チタン合金の好ましい成分系について説明する。
より廉価な合金化元素を使用した方がコストパフォーマンスの観点から好ましいことから、β化安定化元素として、比較的高価なVは添加せず、比較的廉価なFeを添加した方が好ましい。また、同様にβ化安定化元素であるMoやCrをFeが含有されているフェロモリブデン(Fe−Mo)やフェロクロム(Fe−Cr)で添加する方法もあり、その場合にもFeが添加される。Feは、β相を安定化させるために少なくとも2mass%以上必要であり、一方、溶解凝固時に偏析しやすいことから最大でも8mass%以下が好ましい。以上より、本発明の請求項2では、Vを添加しないことからVは不可避的に含まれる量として0.1mass%以下とし、Feを2〜8mass%含むβ型チタン合金とした。なお、Feの添加は、鉄単体でも、フェロモリブデンやフェロクロム或いは鋼のスクラップや酸化鉄などFeを含有した原料で添加した場合も含む。
次に本発明のコイルばね用チタン合金棒線の製造方法について説明する。
本発明の請求項3に係る製造方法では、β変態点が780℃以上のβ型チタン合金を用い、断面減少率で3〜20%の冷間伸線を実施するが、その理由は前述のとおりである。また前述のとおり、冷間伸線前に既に冷間加工が加わったままの棒線は、加工硬化によって0.2%耐力が増加していることから、0.2%耐力を低く抑えるために、冷間伸線前の棒線を熱間加工した状態或いは熱間加工後に溶体化熱処理した状態とする。なお、冷間伸線前に熱間加工や熱処理のスケールを除去する脱スケール工程や冷間伸線のための潤滑処理を適宜加えても良い。
本発明の請求項3に係る製造方法によって製造されたチタン合金棒線を適用することによって、コイルばねへの成形性が確保され、安定したばね定数と均一な材質を有するコイルばねを製造することができる。
本発明の請求項4では請求項3の発明において、時効熱処理でα相の析出をより均一に進行させるため、微細な組織が好ましいことから、冷間伸線前の金属組織を未再結晶組織或いは結晶粒径10μm以下の再結晶組織とした。なお、本発明では未再結晶組織でも、冷間加工ままの状態ではなく、上述したように熱間加工ままかその後に溶体化処理を実施していることから、回復現象が起きており、ある程度歪みが除去されて軟質化している。
本発明の請求項5ではFeを2〜8mass%含み且つVが0.1mass%以下であることとした。その理由は前述のとおりである。
冷間伸線に用いるダイス、いわゆる伸線ダイスには、一般的にローラーダイスと孔型ダイスがある。冷間伸線後の直径偏差をより改善するためには、円形の孔内を通材させる孔型ダイスの方が好ましい。したがって、本発明の請求項6に係る発明では、冷間伸線にて孔型ダイスを用いることとした。
本発明を、以下の実施例を用いて更に詳細に説明する。表1〜5において、本発明範囲から外れる数値にアンダーラインを付している。
表1に、供試材である記号A,B,C,Dの成分組成とβ変態点を示す。記号A,B,C,Dのβ変態点は、各々730,760,787,805℃である。Vを添加していない記号Cと記号DのV濃度はいずれも0.02mass%である。なお、供試材はいずれも、表記した元素の他に不可避的にFe,O,C,N,Hなどを含んでいる。記号Cと記号Dは、本発明の請求項3および請求項6のVが0.1mass%以下でFeが2〜8mass%添加されている成分系に該当する。
Figure 2007321176
表1の各組成からなるビレットを熱間で圧延した棒を作製し、素材として用いた。熱間圧延ままの棒或いは溶体化処理を施した棒を、脱スケールし表面潤滑処理を実施し冷間伸線に供した。冷間伸線後の棒線が、本発明のコイルばね用チタン合金棒線に相当する。なお、冷間伸線は全て孔型ダイスを使用した。冷間伸線時に焼き付きが発生した場合には、発生した時点で再潤滑を施した。その結果、焼き付きが発生する水準においても冷間伸線を完遂することができた。さらに冷間伸線後に時効熱処理を実施した。コイリング後に行う熱処理を想定したものである。
表2と表3に、使用したβ合金の種類、冷間伸線前の状態、冷間伸線率と時効熱処理の条件、冷間伸線後の0.2%耐力、時効熱処理後のT断面における各部位のビッカース硬さとそのΔHVを示す。表2には記号A,B、表3には記号C,Dのβ型チタン合金の例を示す。なお、ビッカース硬さは荷重1kgfで測定した。
Figure 2007321176
Figure 2007321176
表2より、β変態点が730℃,760℃と本発明よりも低い記号A,Bのβ型チタン合金を用いた場合には、伸線率が7および13.8%と小さく時効熱処理の時間が3時間と短いNo.A1,A2,A5,A6,B1,B2は、時効熱処理後のΔHVが19〜54と10を超えている。これに対して伸線率が43.8%と大きくなるとΔHVは減少するが、それでもNo.A3,A7のようにΔHVは10を超え、あるいはB3のように10程度であり、改善効果はあるものの当然ながら伸線費用が嵩むことになる。また、No.A7は冷間伸線後の0.2%耐力が1300MPaを超えており、冷間伸線やコイルばね成形時にダイスや治具と焼き付く可能性が高まることになる。伸線率が7%と小さいが時効熱処理の時間を48時間や14時間と長くすれば、No.A4とB4のようにΔHVが5以下と小さくなる。しかし、時効熱処理の時間が10時間を超えており、生産性が低く且つ大気熱処理の場合にはスケール発生など酸化進行などの懸念が生じる。このように、β変態点が780℃未満の730℃,760℃と低い場合には、伸線率が7%や13.8%と20%より小さいと、8時間以下の短時間の時効熱処理では10以下のΔHVには達していない。
表3より、β変態点が787℃,805℃と高く本発明の780℃以上に該当する記号C,Dのβ型チタン合金を用いた場合には、本発明の伸線率上限である20%を超えているNo.C11,D11,D12ではΔHVが1以下と非常に小さいが、冷間伸線後の0.2%耐力が1300MPaを超えており、冷間伸線やコイルばね成形時にダイスや治具と焼き付く可能性が高まってしまう。これに対して、伸線率が20%以下であるNo.C1〜C10,D1〜D10では冷間伸線後の0.2%耐力が1280MPa以下に抑えられており、ΔHVも10以下と小さい。さらに、伸線率が10%以下と小さいNo.C1,C2,C3,C5,C6,C8,C9,D1,D2,D4,D5,D7,D8は、冷間伸線後の0.2%耐力が1053〜1152MPaと1200MPa未満に抑えられている。なお、表3の時効熱処理の時間はいずれも短時間で、No.C1は8時間、その他は全て3時間である。
同等な伸線率と時効熱処理条件で記号Cと記号Dを比較すると,β変態点が790℃以上と高い方である記号Dの方が、ΔHVが安定して小さくなっていることがわかる。例えば、No.C2〜C4とNo.D1〜D3を比較すると、β変態点が805℃と高いNo.D1〜D3の方はΔHVが5以下と小さい。
さらに、冷間伸線前の金属組織の影響を比較すると、結晶粒径が10μm以下と微細な組織であるか或いは未再結晶組織であるNo.C5〜C10,D1〜D10の方が、同等な伸線率と時効熱処理条件で比較するとNo.C1〜C4,D1〜D3よりも、ΔHVが安定して小さくなっている。
表4、5に、使用したβ合金の種類、冷間伸線前の状態、冷間伸線率、冷間伸線時の再潤滑の有無、冷間伸線後の直径偏差、冷間伸線後の0.2%耐力、冷間伸線ままのT断面における各部位のビッカース硬さとそのΔHVを示す。表4のNo.A0,B0,C0,D0は冷間伸線なしの状態に該当する。それ以外は冷間伸線したもので、表2,表3に示したNo.と共通するものである。なお、ビッカース硬さは荷重1kgfで測定した。記号Cと記号Dは、表1に示したように、本発明の請求項7のVが0.1mass%以下でFeが2〜8mass%添加されている成分系に該当する。冷間伸線を行った水準については、実施例・比較例いずれも、冷間伸線後の棒の直径偏差は良好であった。
Figure 2007321176
Figure 2007321176
表4、5より、本発明の請求項1,請求項2、請求項3にて、製造された実施例(表4の備考参照)は、β変態点が780℃以上のβ型チタン合金からなり、0.2%耐力が1300MPa未満、表面から1mm深さと中心の断面ビッカース硬さの差(ΔHV)が20以上であり、冷間伸線時に焼き付きが発生しなかったために再潤滑が不要であり、直径偏差が±0.08mm以下のチタン合金棒線となっている。したがって、これらを用いることによって、安定したばね定数と均一な材質を有するコイルばねを製造することができる。
よりコイルばねを製造に適したものとして、結晶粒径が10μm以下と微細な組織であるか或いは未再結晶組織である表4のNo.C5〜C10とD4〜D10が該当する。好ましくは、β変態点が790℃以上である表4のNo.D1〜D10、0.2%耐力が1200MPa未満である表4のNo.C1,C3〜C6,C8,C9,D1,D2,D4,D5,D7,D8、棒線の直径偏差が±0.05mm以下である表4のNo.C3〜C10,D2〜D6,D8〜D10である。
一方、冷間伸線なしのNo.A0,B0,C0,D0は、当然ながらΔHVは小さく、0.2%耐力も低いが、直径偏差が±0.1mm以上と大きい。
また、伸線率が高く20%を超えたNo.C11,D11,D12は、0.2%耐力が1300MPaを超えている。
β型チタン合金における伸線率と冷間伸線ままの0.2%耐力およびその増加率の関係を示す図である。 β変態点が異なる3種類のβ型チタン合金における冷間伸線後の時効熱処理時間による断面ビッカース硬さの変化を示す図である。 β変態点が異なる3種類のβ型チタン合金における冷間伸線後の時効熱処理時間による断面ビッカース硬さの変化を示す図である。 β型チタン合金のβ変態点と時効熱処理後の断面内の硬さのばらつきΔHV(表層1mmと中央のビッカース硬さの差)の関係を示す図である。 伸線率と冷間伸線ままの断面ビッカース硬さおよびΔHVの関係を示す図である。 伸線率と狙い直径に対する偏差の関係を示す図である。

Claims (6)

  1. β変態点が780℃以上のβ型チタン合金からなり、0.2%耐力が1300MPa未満、表面から1mm深さと中心の断面ビッカース硬さの差が20以上、棒線の直径偏差が±0.08mm以下であることを特徴とする、コイルばね用チタン合金棒線。
  2. 前記β型チタン合金が、Feを2〜8mass%含み且つVが0.1mass%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のコイルばね用チタン合金棒線。
  3. β変態点が780℃以上のβ型チタン合金を熱間加工した、或いは熱間加工後にさらに溶体化熱処理した棒線を用い、断面減少率で3〜20%の冷間伸線を実施することを特徴とする、コイルばね用チタン合金棒線の製造方法。
  4. 冷間伸線前の金属組織が未再結晶組織或いは結晶粒径10μm以下の再結晶組織であることを特徴とする、請求項3に記載のコイルばね用チタン合金棒線の製造方法。
  5. 前記β型チタン合金が、Feを2〜8mass%含み且つVが0.1mass%以下であることを特徴とする、請求項3または4に記載のコイルばね用チタン合金棒線の製造方法。
  6. 冷間伸線にて孔型ダイスを用いることを特徴とする、請求項3ないし5のいずれか1項に記載のコイルばね用チタン合金棒線の製造方法。
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