JP2003041339A - 等速ジョイントアウター用鋼材 - Google Patents

等速ジョイントアウター用鋼材

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JP2003041339A JP2001234049A JP2001234049A JP2003041339A JP 2003041339 A JP2003041339 A JP 2003041339A JP 2001234049 A JP2001234049 A JP 2001234049A JP 2001234049 A JP2001234049 A JP 2001234049A JP 2003041339 A JP2003041339 A JP 2003041339A
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裕 寺内
Naohiro Ogura
尚宏 小倉
Yutaka Sato
佐藤  裕
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 冷間鍛造性に優れた自動車の等速ジョイント
アウター用鋼材を提案する。 【解決手段】 C: 0.4〜0.6 %、Si:0.05%以下、M
n:0.10〜0.4 %、Cr:0.10%以下、Ti、B、Alを含有
し、あるいはさらにMoを含有し、不純物としてのSを
0.004%以下に制限し、さらにO、N、Pを適正値以下
に制限した組成の鋼素材に、熱間圧延工程と、軟化焼鈍
処理工程とを順次施して、好ましくはセメンタイト球状
化率を30%以上とする。これにより、多段の冷間鍛造を
中間焼鈍を実施することなく、複雑な形状の部品を冷間
鍛造により成形可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車の構造部材
用鋼材に係り、とくに構造部材で重要な等速ジョイント
アウター用として好適な、冷間鍛造性に優れた鋼材に関
する。
【0002】
【従来の技術】冷間鍛造は、材料を加熱することなく加
工を行うため、設備が簡易である、仕上げ寸法精度が優
れている、材料歩留りが高い、金型(工具)寿命が長
い、さらには成形後の切削加工量が少ない等の利点があ
り、等速ジョイントアウターをはじめとする自動車部品
の製造に適用されている。
【0003】しかしながら、冷間鍛造の温度域では、使
用する鋼材の変形抵抗は高く、変形能は低い。冷間鍛造
を工業的に実施するためには、使用する材料(鋼材)の
硬さを抑え低変形抵抗を実現することが肝要となるが、
低変形抵抗実現のために、焼入れ性向上元素の含有量を
低減すると高周波焼入れ性が低下するという問題があっ
た。自動車部品等の製造では、冷間鍛造で所定の寸法形
状に加工したのち高周波焼入れのような処理で表面硬化
させることが多く、焼入れ性の低下は問題となる。その
ため、冷間鍛造性と高周波焼入れ性がともに優れた鋼材
が要望されていた。
【0004】このような要望に対し、例えば、特開平2-
129341号公報には、C:0.40〜0.60%、Si:0.05%以
下、Mn:0.20〜0.65%、Al:0.01〜0.05%、Cr:0.30%
以下として、さらにTi、Bを含有し、不純物としての
S、O、Nを所定量以下に低減した冷間鍛造性、高周波
焼入れ性に優れた機械構造用炭素鋼が提案されている。
また、特開平2-145745号公報には、C:0.25〜0.65%、
Si:0.15%以下、Mn:0.60%以下、B:0.0005〜0.0050
%、Ti:0.005 〜0.05%とし、さらにMo、V、を含有
し、かつSを0.015 %以下に低減した冷間鍛造用鋼が提
案されている。
【0005】また、特開平9-268344号公報には、C:0.
45〜0.60%、Si:0.01〜0.15%、Mn:0.10〜1.00%、C
r:0.3 %以下、Al:0.015 〜0.050 %、として、さら
にTi、Bを含有し、平均粒径5μm 以下の炭化物を平均
粒子間隔で20μm 以下に分散させた冷間鍛造性に優れた
高周波焼入用鋼が提案されている。また、特開平10-960
47号公報には、C:0.25〜0.65%、Si:0.15%以下、M
n:0.60%以下、B:0.0005〜0.0050%、Ti:0.005 〜
0.05%とし、さらにMo、V、、Crを含有し、あるいはさ
らにNb、Ta、Zrを含み、かつSを0.015 %以下に低減し
た冷間鍛造用鋼が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平
2-129341号公報、特開平2-145745号公報、特開平9-2683
44号公報、特開平10-96047号公報等に記載された鋼材を
使用しても、図1に代表的な例を示す、自動車の等速ジ
ョイントアウターのような加工度が高く、複雑な形状の
部品においては、鋼材の割れ発生や、成形荷重の上昇を
防ぐ目的で、冷間鍛造を複数工程にし、しかも各鍛造工
程間で中間焼鈍を施し鋼材の変形能を回復したのち、冷
間鍛造成形を行っていた。
【0007】とくに、自動車の等速ジョイントアウター
の製造において、各段の冷間鍛造工程間で中間焼鈍を実
施することは、熱処理そのものに要する費用とともに、
プロセスの複雑化に伴い中間在庫を発生させることによ
る費用増加をもたらし、等速ジョイントアウターの製造
コストを上昇させるという問題があった。このようなこ
とから、加工度が高く、複雑な形状の製品を中間焼鈍な
しで製造できる等速ジョイントアウター用鋼材が熱望さ
れていた。
【0008】本発明は、上記した従来技術の問題を有利
に解決し、安価で、冷間鍛造性に優れた自動車の等速ジ
ョイントアウター用鋼材を提案することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、まず自動
車用等速ジョイントアウターの冷間鍛造工程における中
間焼鈍の省略を可能にする要因について、種々研究し
た。まず、本発明者らは、中間焼鈍を実施することな
く、複雑な形状の部品を冷間鍛造により成形可能とする
ためには、鋼材の変形能向上が必須であるという考えの
もとに、冷間鍛造時の割れ発生について種々の実験・検
討を行った。
【0010】その結果、冷間鍛造時の割れは、主とし
て、鋼材のフェライト母相とMnS との界面の剥離により
生じた微細クラックを起点に生じていることを見いだし
た。また、本発明者らは、S含有量を 0.004mass%以下
と格段に低減することにより、鋼中のMnS 量が著しく減
少し、またそのサイズが微細化し、フェライト母相とMn
S との界面の剥離により生じる微細クラックの発生を抑
制することができることを見いだした。さらに、MnS サ
イズの微細化に伴って、鋼材変形能の異方性が大幅に軽
減されることも見いだした。
【0011】また、本発明者らは、冷間鍛造時の割れの
起点となる微細クラックは、棒状炭化物(セメンタイ
ト)の断裂により生じる場合もあることを見いだした。
このことから、本発明者らは、炭化物(セメンタイト)
の球状化率を所定値(30%)以上とすることも、冷間鍛
造時の割れ発生防止に有効であることを知見した。本発
明者らは、これらの手法を用いることにより、従来不可
能とされていた、高加工度でかつ複雑な形状の自動車用
等速ジョイントアウターを冷間鍛造により、中間焼鈍を
必要とすることなく成形できることを見いだした。
【0012】本発明は、上記した知見に基づき、さらに
検討を加え完成されたものである。すなわち、本発明
は、質量%で、C:0.4 〜0.6 %、Si:0.05%以下、M
n:0.10〜0.4 %、Cr:0.10%以下、Ti:0.005 〜0.05
%、B:0.0003〜0.0030%、Al:0.01〜0.05%、を含有
し、不純物としてのS、O、N、Pを、S:0.004 %以
下、O:0.0020%以下、N:0.007 %以下、P:0.010
%以下に制限し、残部Feおよび不可避的不純物からなる
組成を有することを特徴とする冷間鍛造性に優れた、自
動車の等速ジョイントアウター用鋼材であり、また、本
発明では、前記組成に加えて、さらに質量%で、Mo:0.
05〜0.2 %を含有することが好ましく、また、本発明で
は、次(1)式 (セメンタイト球状化率)=(アスペクト比が2未満のセメンタイト粒子数) /(全セメンタイト粒子数)………(1) で定義するセメンタイト球状化率Aが30%以上の組織を
有することが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】まず、本発明鋼材の組成限定理由
を詳細に説明する。以下、質量%は単に%と記す。 C:0.4 〜0.6 % Cは、高周波焼入れ時の表面硬さおよび有効硬化深さを
確保するうえで有効な元素であり、積極的に活用する。
しかし、Cが0.4 %未満では機械部品として必要な強度
を確保することが困難となり、一方、 0.6%を超えて含
有すると変形能の低下および変形抵抗の上昇を招き、冷
間鍛造性が劣化する。このため、Cは 0.4〜0.6 %の範
囲に限定した。
【0014】Si:0.05%以下Siは、球状化焼鈍時にフェ
ライト基地中に固溶し冷間鍛造後の変形抵抗を上昇させ
るため、極力低減することが好ましいが、0.05%までは
許容できる。 Mn:0.10〜0.4 % Mnは、焼入れ性を確保する上で有効な元素であるが、同
時に冷間鍛造時の変形抵抗を上昇させる元素でもあり、
本発明では0.10〜0.4 %とする。Mnが0.10%未満では、
高周波焼入れ性が不足し、一方、0.4 %を超えて含有す
ると、変形抵抗が上昇し、冷間鍛造性が劣化する。
【0015】Cr:0.10%以下 Crは、焼鈍時に炭化物に固溶し、炭化物を難溶解性とす
るため高周波焼入れ性を劣化させ、冷間鍛造時の変形抵
抗を上昇させる元素であり、本発明ではできるだけ低減
するのが好ましいが、0.10%までは許容できる。 Ti:0.005 〜0.05% Tiは、CおよびNと親和力が強く、炭化物、窒化物ある
いは炭窒化物等の析出物を形成してフェライト中の固溶
CおよびNを低減する作用を有している。これにより、
歪時効が抑制され、冷間鍛造時の変形抵抗が低下する。
また、Tiは、Bの焼入れ性向上効果を有効に発揮させる
ためにも有用な元素であるが、0.005 %未満では、これ
らの効果は十分に認められない。一方、0.05%を超える
含有は、粗大な窒化物を形成し、冷間鍛造時の変形能を
低下させるとともに転動疲労寿命を著しく低下させる。
このため、Tiは0.005 〜0.05%との範囲に限定した。
【0016】B:0.0003〜0.0030% Bは、焼入れ性を向上させる有効な元素であるが、0.00
03%未満ではその効果が小さく、一方、0.0030%を超え
て含有してもその効果は飽和し含有量に見合う効果が期
待できないため経済的に不利となる。このため、Bは0.
0003〜0.0030%の範囲に限定した。
【0017】Al:0.005 〜0.05% Alは、脱酸剤として作用し、また、Nと結合してAlN を
形成することによりBの焼入れ性向上効果を有効に発揮
させる作用を有する元素であるが、0.005 %未満ではそ
の効果が不十分である。一方、0.05%を超えて含有して
もその効果が飽和し含有量に見合う効果が期待できない
ため経済的に不利となる。このため、Alは 0.005〜0.05
%の範囲に限定した。
【0018】本発明においては、焼入れ性の向上を目的
として、必要に応じ上記した成分に加えて、Moを含有す
ることができる。 Mo:0.05〜0.2 % Moは、焼入れ性を向上させる元素であるが、0.05%未満
では効果が少なく、一方、0.20%を超えて含有すると、
加工硬化が大きくなり、冷間鍛造時の変形抵抗を増大さ
せる。このため、Moは0.05〜0.2 %に限定するのが好ま
しい。
【0019】また、本発明では、不純物としてのS、
O、N、Pを所定値以下に低減する。 S: 0.004%以下 Sは、鋼中でMnS を形成し、被削性を向上させる元素で
あるが、MnS は冷間鍛造時の割れ発生の起点となり、冷
間鍛造性を劣化させる。本発明における等速ジョイント
アウターのような、成形素材に極めて高い変形能を有す
ることが要求される場合には、Sを極力低減することが
必要となる。Sを 0.004%以下に低減することにより、
鋼中のMnS 量が著しく低減し、また、存在するMnS のサ
イズも小さくなる。このため、 0.004%以下までのS含
有量低減により、冷間鍛造時の変形能が異方性を含め著
しく向上し、従来、中間焼鈍なしでは冷間鍛造が困難と
された複雑な形状の等速ジョイントアウターを中間焼鈍
なしの冷間鍛造で成形することが可能となる。
【0020】O:0.0020%以下 Oは、鋼中のAl、Mn、Si等と酸化物系非金属介在物を形
成し、冷間鍛造性および転動疲労特性をともに劣化させ
る。このため、Oは極力低減する必要があり、本発明で
は、0.0020%以下に限定した。 N: 0.007%以下 Nは、フェライト中に固溶して歪時効を生じ、変形抵抗
を増大させるとともに、Bと結合しBNを形成して、有効
B量を低減しBの焼入れ性向上効果を低減する。このこ
とから、Nは極力低減することが必要となるが、0.007
%までは許容できる。
【0021】P: 0.010%以下 Pは、被削性の向上に対しては有効に作用するが、一方
でフェライト相を脆化させ冷間鍛造性を劣化させる。ま
た、Pは、焼入焼戻し時に粒界に偏析し粒界強度を低下
させ、疲労亀裂の伝播に対する抵抗を低下させて疲労強
度を低下させる。このことから、Pは極力低減する必要
があるが、 0.010%までは許容される。
【0022】上記した成分以外の残部はFeおよび不可避
的不純物である。本発明鋼材は、上記した組成に加え、
必要に応じ、次(1)式 セメンタイト球状化率A=(アスペクト比が2未満のセメンタイト粒子数/ (全セメンタイト粒子数) ………(1) で定義されるセメンタイト球状化率Aが30%以上の組織
とすることが好ましい。。セメンタイトの球状化率を30
%以上とすることにより、30%未満のものより、冷間鍛
造時の変形能が向上し、さらに変形抵抗が大幅に低下す
る。
【0023】つぎに、本発明鋼材の好適な製造方法につ
いて、説明する。まず、上記した組成の溶鋼を、転炉等
通常公知の溶製方法により溶製し、ついで、連続鋳造法
等の通常公知の鋳造方法で所定の寸法形状の鋼素材とす
るのが好ましい。ついで、これら鋼素材に、熱間圧延工
程と、軟化焼鈍処理工程とを順次施し、所定の寸法形状
の鋼材とする。熱間圧延工程では、所定の寸法形状の鋼
材とすることができればよく、熱延条件はとくに限定さ
れない。なお、熱延後の組織微細化の観点から、鋼素材
の加熱温度は1100℃以下とするのが好ましい。
【0024】また、軟化焼鈍処理工程は、熱間圧延工程
で、所定の寸法形状に圧延された鋼材に、好ましくは 7
00〜 760℃×3〜20hに加熱保持し、硬さの低下、およ
び炭化物の球状化を行うのが好ましい。この軟化焼鈍処
理工程により、次(1)式 セメンタイト球状化率A=(アスペクト比が2未満のセメンタイト粒子数/ (全セメンタイト粒子数) ………(1) で定義されるセメンタイト球状化率Aが30%以上の組織
とするのが好ましい。セメンタイトの球状化率を30%以
上とすることにより、30%未満のものより、冷間鍛造時
の変形能が向上し、さらに変形抵抗が大幅に低下する。
【0025】つぎに、本発明の鋼材を成形素材として、
自動車用等速ジョイントアウターを製造する好ましい工
程について説明する。本発明の鋼材を成形素材とし、通
常、該成形素材を、冷間鍛造工程、切削加工工程によ
り、所定寸法の部品とする。本発明に鋼材を使用すれ
ば、中間焼鈍工程を経ずに部品を製造することができ
る。
【0026】冷間鍛造は、通常の冷間鍛造機で行ってよ
く、所定形状の金型を用いて、変形抵抗に応じ複数回の
鍛造加工を施すのが好ましい。なお、本発明の鋼材を使
用する場合には、冷間鍛造工程では中間焼鈍は行わな
い。また、冷間鍛造工程では、各鍛造加工間の時間を12
0s以下とするのが好ましい。冷間鍛造工程ののち、所定
寸法の部品となるように、切削加工工程を施される。
【0027】ついで、これら所定寸法の部品に、その全
体あるいは一部をAc3 変態点以上に加熱したのち焼入れ
し、ついで焼戻しする熱処理工程を施して製品とする。
熱処理工程における焼入れ、焼戻し条件は、焼入れ温度
をAc3 変態点以上とする以外は、目的とする性能に応
じ、温度、時間を適宜選択することができることはいう
までもない。
【0028】
【実施例】表1に示す組成の鋼素材を用い、該鋼素材を
850〜1100℃に加熱し圧延する熱間圧延工程により、断
面:52mmφのサイズの直棒とした。ついで、これら直棒
に700〜 760℃×3〜7hの軟化焼鈍処理工程を施し、
鋼材とした。なお、鋼素材のうち、No. A、No. Bおよ
びNo. Cは、組成が本発明の範囲内にあるもの、No.
D、No. Eは、S量が本発明外となる比較例、No. Fは
JIS規格のS48Cに相当するものである。
【0029】まず、これら鋼材について、(1)MnS分布状
態調査、(2) セメンタイト球状化率調査、(3) 冷間鍛造
性試験、(4) 実体等速ジョイントアウター形状への冷間
鍛造試験、(5) 高周波焼入れ性試験を実施した。それぞ
れの試験方法を以下に示す。 (1)MnS 分布状態調査 鋼材中のMnS の分布を、ASTM E45法に基づいて調査し
た。測定面積は0.5mm2×320 視野(総視野面積160mm2
とし、その中の最悪視野の評価(ASTM−A法評価)およ
びThin 0.5点の視野の数(ASTM−D0.5T視野数)を測定
した。
【0030】(2)セメンタイト球状化率調査 鋼材(直棒)の1/4d部から試験片を採取し、研磨した後
ピクラール液にて腐食して、走査型電子顕微鏡を用い
て、断面5箇所、各箇所につき5000倍の倍率で10視野に
ついて撮像した。この像を基に、画像解析装置を用いて
各セメンタイト粒子のアスペクト比を測定し、各成形素
材におけるセメンタイト球状化率Aを次(1) セメンタイト球状化率A=(アスペクト比が2未満のセメンタイト粒子数/ (全セメンタイト粒子数) ………(1) を用いて算出した。
【0031】(3)冷間鍛造性試験 軟化焼鈍処理済の各鋼材に総減面率60%の引抜き加工を
加え20mmφとした材料から、15mmφ×22.5mmHの円柱型
試験片を機械加工により採取した。この際に、試験片の
採取方向を、引抜き加工方向に対して平行方向および垂
直方向の2通りとした。
【0032】これらの試験片を用いて、種々の圧縮率に
て、各々10個の試験片を用いて、冷間圧縮試験を実施し
た。なお、試験時の荷重から材料の変形抵抗を算出し
た。試験後、各試験片側面の割れ発生の有無を確認し、
各圧縮率における割れ発生率(割れ発生試験片個数/10
個)を算出した。試験結果から、割れ発生率が50%とな
る圧縮率を限界圧縮率として求めた。さらに2種類の試
験片採取方向における限界圧縮率の比を限界比として求
めた。
【0033】(4)実体等速ジョイントアウター形状へ
の冷間鍛造試験 軟化焼鈍済の各鋼材に、3段の冷間鍛造からなる冷間鍛
造工程を施し、図1に模式的に示す形状のサイズ: 100
mmφ×150mmlの実体等速ジョイントアウター形状に成形
した。各段の冷間鍛造では、前段の冷間鍛造ままの材料
を次段の材料として用い、中間焼鈍を実施しなかった。
なお、各鍛造段階における割れの発生をn=50個の試験
片を用いて測定した。割れ発生率(%)は(割れの発生
した試験片個数)/50×100 で算出した。
【0034】(5)高周波焼入れ性試験 高周波焼入れ性試験は、鋼材から30mmφ×100mmlの試験
片を採取し、これら試験片に、周波数15kHz 、出力114k
W 、試験片移動速度10mm/sの移動焼入れ条件で高周波焼
入れした後、 150℃×1hの焼戻しを行った。熱処理後
の試験片について表面硬さ(HRC )およびHv:400 以上
となる硬化深さ(有効硬化深さ)を測定した。
【0035】これらの結果を表2に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】本発明例では、いずれもMnS が微細化し、
またMnS の量も顕著に低減している。これにくらべ、S
含有量が本発明範囲から外れる鋼材No.6〜No.8 では、
MnSの微細化、量の低減は実現されていない。また、本
発明例は、いずれも引抜き方向と平行方向で69%以上の
高い限界圧縮率を示している。また、引抜き方向と平行
方向の限界圧縮率と引抜き方向と垂直方向の限界圧縮率
の比である限界比は、0.86以上の高い値を示している。
これらの効果は、S量の低減に伴うMnS 量の減少および
微細化によるものと考えられる。これに対し、本発明の
範囲を外れる比較例(鋼材No.6〜No.8)では、引抜き方
向と平行方向の限界圧縮率が52〜65%、また限界比は0.
58以下と低く、冷間鍛造性が低いうえ異方性もある。
【0039】本発明例では、中間焼鈍を行わない冷間鍛
造によっても、複雑形状の実体等速ジョイントアウター
へ成形することができる。本発明例では、最終の3段目
の冷間鍛造まで割れを発生するものはなかった。これに
対し、本発明の範囲を外れる比較例では、多くが最終の
3段目の冷間鍛造までに割れを発生していた。セメンタ
イト球状化率が好適範囲となる本発明例(鋼材No.2、N
o.5)では、最終の3段目の冷間鍛造で割れ発生は認め
られなかった。
【0040】また、本発明例は、いずれも十分高い高周
波焼入れ性を有していることがわかる。高周波焼入れ焼
もどし後の有効硬化深さは、ほぼ同一C量の比較例と同
等以上の値を示した。Mo含有鋼素材を用いた鋼材No.1で
はMoを含有しない鋼材No.3よりも高い高周波焼入れ性を
示している。
【0041】
【発明の効果】以上の結果から、本発明によれば、加工
度が高く複雑な形状の等速ジョイントアウターを、中間
焼鈍を施すことなく冷間鍛造により成形することが可能
となり、熱間鍛造等の他の成形方法と比較して優れた寸
法精度の等速ジョイントアウターを低コストで得ること
ができ、産業上格段の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】等速ジョイントアウターの形状の一例を模式的
に示す説明図である。
【符号の説明】
1 ジョイントアウター 2 インナー 3 玉鋼
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 星野 俊幸 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 (72)発明者 天野 虔一 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 (72)発明者 嵯峨 正芳 栃木県真岡市松山町19番地 本田技研工業 株式会社栃木製作所内 (72)発明者 寺内 裕 栃木県真岡市松山町19番地 本田技研工業 株式会社栃木製作所内 (72)発明者 小倉 尚宏 栃木県真岡市松山町19番地 本田技研工業 株式会社栃木製作所内 (72)発明者 佐藤 裕 栃木県真岡市松山町19番地 本田技研工業 株式会社栃木製作所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、 C:0.4 〜0.6 %、 Si:0.05%以下、 Mn:0.10〜0.4 %、 Cr:0.10%以下、 Ti:0.005 〜0.05%、 B:0.0003〜0.0030%、 Al:0.005 〜0.05% を含有し、不純物としてのS、O、N、Pを S:0.004 %以下、 O:0.0020%以下、 N:0.007 %以下、 P:0.010 %以下 に制限し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を
    有することを特徴とする冷間鍛造性に優れた自動車の等
    速ジョイントアウター用鋼材。
  2. 【請求項2】 前記組成に加えて、さらに質量%で、M
    o:0.05〜0.2 %を含有することを特徴とする請求項1
    に記載の等速ジョイントアウター用鋼材。
  3. 【請求項3】 下記(1)式で定義するセメンタイト球
    状化率Aが30%以上である組織を有することを特徴とす
    る請求項1または2に記載の等速ジョイントアウター用
    鋼材。 記 (セメンタイト球状化率)=(アスペクト比が2未満のセメンタイト粒子数) /(全セメンタイト粒子数)………(1)
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