JP2007282537A - アクリルアミドが減少し、かつクロロゲン酸類が増加した焙煎したコーヒー豆の製造方法及びその焙煎したコーヒー豆からなる飲食物 - Google Patents
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Abstract
コーヒー豆以外を使用・添加することなく、焙煎したコーヒー豆中のアクリルアミドの減少した含量及びクロロゲン酸類の増加した含量を有する焙煎したコーヒー豆を提供すること。
【解決手段】
本発明は、1つの様態では、コーヒー豆を過熱水蒸気で焙煎することを特徴とする、アクリルアミドの含量を減少させクロロゲン酸類含量を増加させる焙煎コーヒー豆の製造方法を提供する。別の様態では、アクリルアミドの減少した含量を有しかつクロロゲン酸類の増加した含量を有する焙煎したコーヒー豆、更に別の態様では、アクリルアミドの減少しかつクロロゲン酸類の増加した焙煎したコーヒー豆を使用することを特徴とする、健康訴求コーヒーの用途に供する飲食品。
【選択図】図2
Description
一方、クロロゲン酸類は、コーヒー生豆に5〜10%程度ふくまれるが、焙煎と共に著しく減少し、浅煎りに焙煎したコーヒー豆は、深煎りの豆より顕著に多くのクロロゲン酸類が含まれることが知られている。また、同じ焙煎度合いであっても焙煎時間が長いと分解反応により減少する。焙煎コーヒー豆中のクロロゲン酸類を増加させる手段として、より焙煎を浅煎りにし短時間の焙煎を行うことは、不快な酸味や生豆臭の増加といった風味上必ずしも好ましくない作用をもたらす。
1.コーヒー豆を、過熱水蒸気を用いた加圧下で焙煎することを特徴とする、通常焙煎コーヒー豆よりもアクリルアミドの含量が少なく、かつクロロゲン酸の含量の多い焙煎コーヒー豆を製造する方法。
2.過熱水蒸気で焙煎する際の圧力が1.0barG〜20barGであることを特徴とする、上記1に記載の製造方法。
3.前記焙煎コーヒー豆中のアクリルアミドの含量が通常焙煎コーヒー豆を基準として10%〜100%減少しており、かつクロロゲン酸の含量が10%〜100%増加していることを特徴とする、上記1又は2のいずれか一項に記載の製造方法。
4.焙煎色5Lu以下で、焙煎コーヒー豆中のアクリルアミド含量が0〜180μg/kgかつクロロゲン酸類含量が7〜29g/kgである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法で製造した焙煎コーヒー豆。
5.焙煎色5〜10Luで、アクリルアミド含量が0〜220μg/kgかつクロロゲン酸類含量が13〜43g/kgである、上記1〜3のいずれか一項に記載の方法で製造した焙煎コーヒー豆。
6.焙煎色10〜25Luで、焙煎コーヒー豆中のアクリルアミド含量が0〜280μg/kgかつクロロゲン酸類含量が18〜60g/kgである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法で製造した焙煎コーヒー豆。上記1〜3のいずれか一項に記載した製造方法により製造した焙煎コーヒー豆。
7.上記1〜6に記載の焙煎コーヒー豆を含む飲食物。
本発明に使用するコーヒー生豆の種類は、特に制限されるものではなく、アラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種等のものが挙げられる。複数の種類をブレンドした豆を用いてもよい。
本発明において「通常焙煎コーヒー豆」とは、従来製法である熱風又は直火加熱方式により、本発明の製造方法と同じ焙煎時間焙煎を行うことにより得た、同じ焙煎色の焙煎コーヒー豆のことを指すものとする。
本発明において、過熱水蒸気で焙煎する際の圧力とは、焙煎すべきコーヒー豆を入れた焙煎室の圧力のことであり、1.0barG〜20barGとすることが好ましい。
本発明におけるコーヒー豆の焙煎色については、後に詳細に述べる。
コーヒー豆は密閉された圧力容器の中に取り付けられた回転する焙煎室に投入され流動する。過熱水蒸気は焙煎室内に挿入されたノズルにより流動するコーヒー豆に吹き付けられコーヒー豆を加圧下で焙煎する。コーヒー豆の流動化の方法は、特に制限されるものではないが、均一に焙煎反応が行われるように過熱水蒸気の供給・循環によりコーヒー豆を流動化させても良い。
(分析方法)
1.食品中のアクリルアミドを測定する方法
[アクリルアミド測定方法]
前出、非特許文献3記載の実験方法に準じて行った。詳細を以下に記す。
1)内標準物質の合成
RaneyR Copper(Aldrich社製)5gにアクリロニトリル−d3(99.5%,C/D/NIsotope Inc.)水溶液(1g/30ml)を加え、窒素雰囲気下、80℃で3時間攪拌した。反応液を吸引ろ過し、凍結乾燥し、アクリルアミド−d3を無色固体として得た。この一部を昇華精製した純度99%以上の純品を内標準物質として用いた。
2)抽出操作
フードプロセッサーで粉砕した試験試料約50gを容量500mlの共栓三角フラスコに精密に量り採り、アクリルアミド−d3水溶液500μlを添加し、5分間振り混ぜた。水300〜400mlを加え、ポリトロン・ホモジナイザー(PT2100Model DA2120/2;KINEMATICアクリルアミドG)で内容物が均一になるまで1〜3分間破砕した後、粉砕物の一部を容量50mlの遠心管に取り、48000×gで20分間遠心分離した。
3)GC−MSによる測定
分析用試料溶液3mlを氷浴中で冷却し、臭素化試薬(臭化カリウム 15.2g、臭化水素水0.8ml、臭素水5ml、水60ml)を臭素の色が残るまで加え、氷浴上1時間放置した。1.0mol/Lチオ硫酸ナトリウム水溶液を添加し、過剰の臭素を還元、消失させ、酢酸エチル4.0mlで抽出した。抽出液を硫酸ナトリウム(無水)で脱水し、遠心エバポレーターを用いて30℃で大部分の溶媒を減圧留去した。完全に乾固する前にGC−MS分析用ミクロ試料管へ移し替え、さらに遠心エバポレーターで約5分間減圧遠心して乾固させた。この試料管を4℃に保管し、分析直前に25μlの酢酸エチルで溶解した。
2.(アクリルアミドの減少%)
アクリルアミドの%減少=[(対照焙煎コーヒー豆中のアクリルアミド含量−過熱水蒸気焙煎コーヒー豆中のアクリルアミド含量)/対照焙煎コーヒー豆中のアクリルアミド含量]×100
3.クロロゲン酸類分析法
焙煎コーヒー豆中のクロロゲン酸類含量を、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)を用いた以下の分析方法で測定した。
1)焙煎豆からクロロゲン酸類の抽出操作
a)メスシリンダーで70%(v/v)メタノール水溶液を必要量調製(100ml以上/検体)する。
b)ドラフト内に冷却管をスタンドなどでウオーターバス上に固定し、水道水を冷却部に流す。
c)三角フラスコに300〜500μm粒度に粉砕した分析試料約1gを精密天秤で測りとり、三角フラスコに全量移す。
d)70%メタノール溶液を約30ml測りとり三角フラスコに移し沸騰石を4〜5粒加える。
e)三角フラスコを凝縮器に取り付け、フラスコの液面が水面より下にくるようウオーターバス内におく。このとき、凝縮器とフラスコを固定クリップで固定する。
f)メタノール溶液が沸騰を始めてから15分間抽出を行い、時間がきたら三角フラスコをウオーターバス内から引き上げ、凝縮液が落下し終わるまで数分静置する。
g)三角フラスコを凝縮器から取り外し液中の微粉試料を底に沈殿させるため数分間静置させる。
h)三角フラスコ内の溶液をピペッターなどで、100mlメスフラスコに移す。この際、特に最初のバッチでは分析試料粒子を移さない様に注意する。
i)e〜hの操作を合計三回繰り返す。但し、メタノール溶液を新しく加えた後に沸騰石を一粒加える。
j)最後の抽出操作後、三角フラスコ内の液はパスツールピペットを用いて出来る限り100mlメスフラスコに移しとる。この際、分析試料の微粉が多少移ってもかまわない。
k)70%メタノール溶液を少量(20〜30ml)用いて、三角フラスコ内の分析試料を二度にわけてリンスし、リンスした液をパスツールピペットで採取し室温下で100mlにメスアップする。
2)HPLC法
ODS−2逆相カラムを用い、溶離液A(0.05M酢酸 3vol%アセトニトリル水溶液)と溶離液B(0.05M酢酸 100vol%アセトニトリル溶液)にてグラジエントをかけて溶出した。標準品とリテンションタイムを比較し同定した。ここで得られたエリア%に対して、クロロゲン酸類について5位のカフェオイルキナ酸を標準物質として、粉砕焙煎コーヒー豆1g当りのクロロゲン酸類量(mg)で表示する。
4.クロロゲン酸類の増加%
クロロゲン酸類の増加%=[(対照焙煎コーヒー豆中のクロロゲン酸類含量−過熱水蒸気焙煎コーヒー豆中のクロロゲン酸類含量)/対照焙煎コーヒー豆中のクロロゲン酸類含量]×100
本発明の方法により焙煎したコーヒー豆をそのままの形態で各種飲料又は食品に添加することができる。また本発明の方法により焙煎したコーヒー豆を一般的な粉砕機、ロールミルなどを用いて粉砕して、焙煎粉砕コーヒー(粗挽き、中粗挽き、中挽き、中細挽き、細挽きなどの種々の形状のものを含む)を得ることができ、焙煎粉砕コーヒーの形で各種飲料または食品に添加することも可能である。焙煎粉砕コーヒーを水、アルコール類などの抽出液を用いて抽出することにより、アクリルアミドの含有量の少ない、かつクロロゲン酸類の含有量の多い、所望の含量の液体コーヒーを得ることができる。次いで得られた液体コーヒーをそのままの状態で、液体コーヒーを濃縮した液体コーヒー濃縮物の状態で、あるいは液体コーヒーを噴霧乾燥、凍結乾燥等の手段により乾燥させて得た粉末コーヒーの状態で、各種飲料や食品に添加することができる。このように本発明の方法により得られるコーヒー豆及びその抽出液を、飲料や食品の風味付け等のために用いることができる。
対照焙煎コーヒー豆は、当該技術分野において既知のような従来の熱風加熱・直火加熱方式で調製される。対照焙煎コーヒー豆及び過熱水蒸気焙煎コーヒー豆の両方は、ほぼ同じ焙煎時間で、ほぼ同じ焙煎度に焙煎した。
実施例1:インドネシアEK−1豆(ロバスタ種)を用い、図2に示す焙煎装置で一段圧力焙煎を行った。コーヒー豆投入弁(1)を開きインドネシアEK−1豆1Kgを投入ホッパー(2)から焙煎室(3)に投入した後、圧力6.0barG、温度270℃の過熱水蒸気で6.5分間焙煎を行い0.85Kgの焙煎豆を得た。このときの焙煎色は9.0Luであった。
実施例2:実施例1と同様にして、圧力6.0barG、温度270℃の過熱水蒸気で5.5分間焙煎を行い0.85Kgの焙煎豆を得た。このときの焙煎色は12.0Luであった。
実施例3:実施例1と同様にして、圧力6.0barG、温度270℃の過熱水蒸気で4.5分間焙煎を行い0.86Kgの焙煎豆を得た。このときの焙煎色は18.0Luであった。
実施例4:コロンビアエクセルソ豆(アラビカ種)を用い図2に示す焙煎装置で二段圧力焙煎を行った。コーヒー豆投入弁を開きコロンビアエクセルソ豆1Kgを投入ホッパー(2)から焙煎室(3)に投入した後、圧力8.0barG、温度280℃の過熱水蒸気で2.0分間予備焙煎した後、過熱水蒸気供給弁(4)で過熱水蒸気の供給を止め、圧力放出弁(5)により焙煎室内の圧力を抜き取ったあと、過熱水蒸気供給弁(4)を再び開き、圧力1.0barG、温度250℃の過熱水蒸気で5.0分間最終焙煎を行い0.84Kgの焙煎豆を得た。このときの焙煎度は4.5Luであった。
実施例5:実施例4と同様にして、圧力8.0barG、温度280℃の過熱水蒸気で2.0分間予備焙煎した後、過熱水蒸気供給弁(4)で過熱水蒸気の供給を止め、圧力放出弁(5)により焙煎室内の圧力を抜き取ったあと、過熱水蒸気供給弁(4)を再び開き、圧力1.0barG、温度250℃の過熱水蒸気で4.0分間最終焙煎を行い0.85Kgの焙煎豆を得た。このときの焙煎度は9.5Luであった。
実施例6:実施例4と同様にして、圧力8.0barG、温度280℃の過熱水蒸気で2.0分間予備焙煎した後、過熱水蒸気供給弁(4)で過熱水蒸気の供給を止め、圧力放出弁(5)により焙煎室内の圧力を抜き取ったあと、過熱水蒸気供給弁(4)を再び開き、圧力1.0barG、温度250℃の過熱水蒸気で3.0分間最終焙煎を行い0.85Kgの焙煎豆を得た。このときの焙煎度は12.0Luであった。
比較例1:
インドネシアEK−1豆(ロバスタ種)を用い、フジロイヤル製のコーヒーロースター(TYPE R−101)を使用し焙煎を行った。
インドネシアEK−1豆1Kgを投入しプロパンの燃焼ガスで6.5分間焙煎を行い焙煎色9.0Luの0.85Kgの焙煎豆を得た。
比較例2:比較例1と同様にして、5.5分間焙煎を行い焙煎色12.0Luの0.85Kgの焙煎豆を得た。
比較例3:比較例1と同様にして、4.5分間焙煎を行い焙煎色18.0Luの0.86Kgの焙煎豆を得た。
比較例4:コロンビアエクセルソ豆(アラビカ種)を用い、フジロイヤル製のコーヒーロースター(TYPE R−101)を使用し焙煎を行った。
コロンビアエクセルソ豆1Kgを投入しプロパンの燃焼ガスで7.0分間焙煎を行い焙煎色4.5Luの0.83Kgの焙煎豆を得た。
比較例5:比較例4と同様にして6.0分間焙煎を行い焙煎色9.5Luの0.85Kgの焙煎豆を得た。
比較例6:比較例4と同様にして5.0分間焙煎を行い焙煎色12.0Luの0.86Kgの焙煎豆を得た。
<比較例;常圧過熱水蒸気焙煎>
比較例7:インドネシアEK−1豆(ロバスタ種)を用い、図2に示す焙煎装置で過熱水蒸気焙煎を行った。
コーヒー豆投入弁(1)を開きインドネシアEK−1豆1Kgを投入ホッパー(2)から焙煎室(3)に投入した後、圧力放出弁(5)を開けまま過熱水蒸気供給弁(4)から温度270℃の過熱水蒸気を供給し5.5分間焙煎した後、過熱水蒸気の供給を止めた。これにより焙煎色9.0Luの0.85Kgの焙煎豆を得た。
比較例8:コロンビアエクセルソ豆(アラビカ種)を用い図2に示す焙煎装置で過熱水蒸気焙煎を行った。コーヒー豆投入弁(1)を開きコロンビアエクセルソ豆1Kgを投入ホッパー(2)から焙煎室(3)に投入した後、圧力放出弁(5)を開けたまま過熱水蒸気供給弁(4)から温度270℃の過熱水蒸気を供給し6.0分間焙煎した後、過熱水蒸気の供給を止めた。これにより焙煎色9.5Luの0.84Kgの焙煎豆を得た。
Claims (7)
- コーヒー豆を、過熱水蒸気を用いた加圧下で焙煎することを特徴とする、通常焙煎コーヒー豆よりもアクリルアミドの含量が少なく、かつクロロゲン酸類の含量の多い焙煎コーヒー豆を製造する方法。
- 過熱水蒸気で焙煎する際の圧力が1.0barG〜20barGであることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
- 前記焙煎コーヒー豆中のアクリルアミドの含量が通常焙煎コーヒー豆を基準として10%〜100%減少しており、かつクロロゲン酸類の含量が10%〜100%増加していることを特徴とする、請求項1又は2のいずれか一項に記載の製造方法。
- 焙煎色5Lu以下で、焙煎コーヒー豆中のアクリルアミド含量が0〜180μg/kgかつクロロゲン酸類含量が7〜29g/kgである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法で製造した焙煎コーヒー豆。
- 焙煎色5〜10Luで、アクリルアミド含量が0〜220μg/kgかつクロロゲン酸類含量が13〜43g/kgである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法で製造した焙煎コーヒー豆。
- 焙煎色10〜25Luで、焙煎コーヒー豆中のアクリルアミド含量が0〜280μg/kgかつクロロゲン酸類含量が18〜60g/kgである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法で製造した焙煎コーヒー豆。
- 請求項1〜6に記載の焙煎コーヒー豆を含む飲食物。
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