本発明の請求項1に記載の真空断熱箱体の発明は、少なくともガスバリア性材料からなる外箱及び内箱と、前記外箱と前記内箱とにより構成される空間に減圧密封される芯材とからなる真空断熱構造を有する真空断熱箱体であって、前記芯材の減圧前後の体積変化率が50%以内であり、かつ、少なくともオープンメタルサイトを有する吸着性集積型金属錯体を含み少なくとも窒素を吸着可能な気体吸着材を前記空間と通気可能な部位に配設したことを特徴とするものである。
ここで、芯材の体積変化率とは、例えばラミネートフィルムの袋等のガスバリア性が高い袋に芯材を封入し、減圧することにより大気圧縮され減少した芯材体積が、減圧する前の芯材体積に対して減少した芯材体積の変化率のことである。このとき、例えば真空断熱箱体より取り出した芯材の体積を測定し、その後プラスチックラミネートフィルム中に同じ芯材を挿入、減圧、密封した真空断熱箱体の体積を測定し、その体積変化率が50%以内であるというような測定方法を用いてもよい。
体積変化率が50%以内であることにより、大気圧縮によって箱体が圧縮されても、芯材の体積変化が小さいため、箱体の変形が抑制でき、さらに、変形およびクラックの抑制による信頼性向上を図ることができる。特に、箱体を構成する材料が薄く、強度が弱いものであれば、その効果は高く、また、箱体材料を薄くできるので、有効容積比率(容積効率)も向上する。
また、体積変化率は小さいほど、外箱および内箱の厚さを薄くすることが可能であり、加えて、伸び性や強度が劣る材料でも使用することができるため、省スペース、材料削減の効果が得られる。また、より長期の信頼性を維持するためには、体積変化率は望ましくは20%以内がよい。
また、表面変形をほぼ完全に防ぎ、外観をより美しくするためには、体積変化率は5%以内にすることがより好ましい。
一方、体積変化率が50%より大きいと、万一箱体が大きく変形した場合、外観が著しく損なわれるとともに、外箱、内箱にクラック、へこみ、ゆがみ等が生じ、外気が流入することで、断熱効果は失われるおそれがある。クラック等の劣化は減圧時に生じるものだけではなく、長期間応力が加わることで、変形、クラックを生じる現象も含む。
前記芯材は材料系を特に限定するものではなく、有機あるいは無機繊維、粉末、粉末を固形化したもの、発泡樹脂など、特に限定するものではない。
例えば繊維を用いた芯材では、グラスウール、グラスファイバー、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、シリカ繊維、ロックウール、炭化ケイ素繊維等の無機繊維、あるいは木綿等の天然繊維、ポリエステル、ナイロン等の合成繊維等の有機繊維など、公知の材料を使用することができる。
体積変化率を50%以内にするには、繊維を圧縮もしくは加熱圧縮、水やバインダーを用いての圧縮もしくは加熱圧縮、ニードリング、スパンレース、抄造等の方法により可能となる。
一方、粉末を用いた芯材ではシリカ、パーライト、カーボンブラック等の無機粉末、あるいは合成樹脂粉末等の有機粉末、あるいはそれらの混合物などを、粉末そのままで充填、あるいは通気性のある袋に充填して用いる、あるいは繊維バインダーあるいは無機や有機の液状バインダーにて固形化する等の方法により達成できる。
また、発泡樹脂ではウレタンフォーム、フェノールフォーム、スチレンフォーム等を使用することができる。
また、常圧もしくは減圧下で少なくとも窒素を吸着可能な気体吸着材とは、常圧もしくは減圧にて好ましくは3cm3/g以上、さらに好ましくは5cm3/g以上の窒素を吸着することが望ましく、さらには酸素、水分、二酸化炭素等も吸着することが望ましい。
また、気体吸着材とは物理吸着、化学吸着、また、吸着、吸収、収着、吸蔵等、特に指定するものではない。
また、気体吸着材は粉末あるいは成形体として使用することができるが、特に指定するものではない。また、成形した気体吸着材とは、圧縮成型、錠剤化、ペレット化等の形態で使用することも可能であり、あるいは別容器に粉体を入れその容器中の粉末を圧縮したもの等が考えられ、さらに複数の吸着材を組み合わせて利用することも可能であり、1種の気体吸着材を別の気体吸着材で覆っていてもよい。
また、気体吸着材の使用方法として、例えば、真空断熱箱体と気体吸着材とを収容した容器を通気可能にした状態で真空断熱箱体中を真空排気し、その後、真空断熱箱体を密閉化することにより真空断熱空間を作り出し、その後気体吸着材にて真空断熱箱体中の真空度を維持する方法がある。また、真空断熱箱体と気体吸着材とを収容した容器を通気可能にした状態で工業的に到達容易な程度、数分間の真空排気をし、その後、真空断熱箱体を密閉化し、まだ残存する箱体中の気体を気体吸着材で吸着することにより、二段減圧のような使用方法を実践することも可能である。
また、あるいは気体吸着材は別容器に密閉しておき真空断熱箱体内を所定圧に真空排気後、気体吸着材を何らかの方法で真空断熱箱体内と通じることを可能とすることにより、気体吸着材を高活性に保ったまま二段減圧のような働きをさせることも可能であるが、使用方法については特に指定するものではない。
この二段減圧の使用方法では、真空ポンプなどに接続することなく、気体吸着材の作用で高真空が実現できるため、生産効率が向上する。
また、気体吸着材の配設場所については、1カ所、またさらに生産効率を向上させるために複数箇所に配設してもかまわない。
また、リサイクル時等には、気体吸着材を取り外すことも可能である。
また、本発明は、窒素を吸着可能な気体吸着材が、少なくともオープンメタルサイトを有する吸着性集積型金属錯体を含む気体吸着材であることを特徴とするものである。
オープンメタルサイトの一つの態様は、金属イオンが配位不飽和であり、その配位状態に少なくとも1つの空きサイトを有する場合である。この場合、被吸着分子が、空きサイトへ相互作用可能である。
吸着性集積型金属錯体の1つの製法は、金属イオン化合物と、少なくとも2つの架橋配位子化合物L1およびL2を自己集積させる工程を経るものである。
本構成において、金属イオン化合物は、集積型金属錯体構造の形成およびオープンメタルサイトの形成に必要なものであり、架橋配位子化合物L1は集積型金属錯体構造の形成に、L2はオープンメタルサイトへの配位化合物として必要なものである。
合成は、金属イオン化合物と、少なくとも2つの架橋配位子化合物L1およびL2とを適当な溶媒中混合し、これらを自己集積させて行うものである。必要であれば、さらに配位子を加えてもよい。
また、金属イオン化合物とは、金属イオンと無機イオンからなる塩、および、金属イオンと無機イオンと低分子量配位子とからなる塩であれば利用することが可能であり、例えば、CuBrやCu(NO3)2、[Cu(CH3CN)4]PF6、[Cu(CH3CN)4]BF4などである。
架橋配位子化合物L1は、二座以上の多座配位子であって、末端に金属イオンとの結合部位となる、酸素原子または窒素原子を有することを特徴とするものである。
L1は、集積型金属錯体構造を形成する作用をするため、少なくとも二座以上の多座配位子である必要があり、また、末端に金属イオンとの結合部位となる、酸素原子または窒素原子を有することにより、多孔性で、かつ安定した集積型金属錯体構造を形成することが可能となる。
L2は、次の2種が適用可能である。
まずは、オープンメタルサイトである金属イオンへ配位し、後に、減圧下、200℃以下で脱離する何らかの化合物であって、金属イオンに対して結合力の弱い物質、すなわち塩基性の弱い、配位子や、集積型金属錯体合成時の溶媒などもL2として作用することができるものである。例えば、アセトニトリル、メタノールやエタノールなどの低分子量のアルコール、一酸化炭素、エチレンなどである。
もう一方は、L1との組み合わせにより、配位した金属イオンを自ずとオープンメタルサイトとして形成する作用を有するものである。L1との組み合わせによるが、例えば、下記L1に対しては、
本発明の吸着性集積型金属錯体の他の1つの製法は、金属イオン化合物と、オープンメタルサイトを有する架橋配位子化合物とを自己集積させてなる工程を経るものである。
本構成においては、金属イオン化合物は、集積型金属錯体構造の形成のみに必要であり、オープンメタルサイト形成には使用されない。オープンメタルサイトの金属イオンは、予め架橋配位子化合物に組み込まれた状態で準備されており、金属イオン化合物と、オープンメタルサイトを有する架橋配位子化合物とを自己集積させることにより、吸着性集積型金属錯体を合成するものである。
合成は、金属イオン化合物と、オープンメタルサイトを有する架橋配位子化合物とを適当な溶媒中を用いて接触させ、これらを自己集積させるものである。
また、オープンメタルサイトを有する架橋配位子化合物とは、主に配位不飽和な金属錯体のことである。
例えば、飽和配位サイトが4個で、空きサイトが1つのオープンメタルサイトを有する架橋配位子化合物は、
のようなものである。E,F,Gは隣接する原子などと環構造を構成しており、Jは環構造へ結合している配位可能な官能基である。
飽和配位サイトが5個で、空きサイトが1つのオープンメタルサイトを有する架橋配位子化合物は、
となり、A、B、C、Dも隣接する原子などと環構造を構成している。
ここで、Mは金属イオンであれば利用でき、第一遷移金属および第二遷移金属のイオンが望ましい。特に銅イオンが適しており、銅一価イオンがより好ましい。また、A〜Gは、酸素、窒素、リン、硫黄など、金属イオンに配位可能な元素であれば、適用可能である。またJは、金属イオンに配位可能なサイトを有する官能基であり、
などである。ここでαは、水素やアルカリ金属元素など、任意に選択できる。
オープンメタルサイトを有する架橋配位子化合物の一例として次の物質があげられる。
上記製法により、吸着性集積型金属錯体において、オープンメタルサイトを確実に、容易に発生させることが可能である。
本発明はさらに、吸着性集積型金属錯体におけるオープンメタルサイトが、配位状態にねじれ、ゆがみがあり、被吸着分子が相互作用可能な空間裕度を持つ配位飽和な金属イオンで構成されている吸着性集積型金属錯体を提供するものである。
該吸着性集積型金属錯体の合成方法の一例を示すと、吸着活性を有する金属イオン化合物と、配位子とを適切な溶媒中で混合攪拌、あるいは適切な溶媒に溶解し、接触させる方法がある。
ここで、配位子は1種類であっても、2種類以上であっても良い。
また、出発原料となる金属イオン化合物と配位子との組み合わせ、および配位子が複数の場合であれば、配位子同士の組み合わせにより、オープンメタルサイトの配位状態にねじれ、ゆがみを生じさせることが重要である。
この吸着性金属錯体が有するオープンメタルサイトは、配位飽和な金属イオンの配位状態にねじれ、ゆがみが生じており、被吸着分子が、金属イオンへ相互作用可能な空間裕度がある状態であっても、配位不飽和な金属イオンであり、配位状態に少なくとも1つの空きサイトを有する状態であっても良い。
また、被吸着分子は、液体であっても、気体であっても良いが、本発明においては気体分子の吸着を目的としている。
また、吸着性集積型金属錯体は、多孔構造であっても、非多孔構造であってもよい。
また、本発明における気体吸着材には、少なくとも、オープンメタルサイトを有する吸着性集積型金属錯体が含まれていれば良く、さらに物理的や化学的に、水分および酸素などを吸着する物質を含むことに、なんら規制を加えるものではない。
その気体吸着成分の構成比は、使用環境や内部発生ガスの種類により選択できるものである。
また、本構成における、気体吸着材の作製方法の一例について述べる。吸着活性を有する吸着性集積型金属錯体は、窒素や水、酸素に触れることなく、高真空下あるいはArなどの不活性ガス雰囲気下で化学的水分吸着性物質と混合あるいは化学的水分吸着性物質により周囲を覆うなどして、ペレット化、あるいは取り扱い容易な形状に成形する。さらに不活性ガスを充填した気体不透過性容器にてこれを封止し、真空断熱箱体への適用時まで保管することが望ましい。
以上のような構成により、既存気体吸着材よりも、一層大容量の気体種を、より強固に吸着、固定化でき、真空断熱箱体中の工業的排気プロセスで除去しきれない窒素および経時的に侵入する窒素を吸着除去できるため、信頼性に優れた、高性能な真空断熱箱体を提供できるものである。
請求項2に記載の真空断熱箱体の発明は、請求項1に記載の発明における芯材が三次元形状であることを特徴とするものである。
例えば、粉体材料を空間に注入するような場合、複雑な形状を有する空間であれば、未充填部や充填密度にムラが生じ、性能や体積変化率にムラが生じ、断熱性能や体積変化率にバラツキが生じる恐れがある。しかし、芯材が予め三次元形状をしていることにより、未充填部や充填密度のムラをなくし、さらに寸法精度よく芯材を充填することができるため、均一な断熱性能および体積変化率を有することができる。
また、繊維材の様に、箱体成形後、充填が困難な芯材においても、三次元形状とすることで、芯材を外箱と内箱で挟むことが可能となり、工法の簡便化を図ることができる。
請求項3に記載の真空断熱箱体の発明は、請求項2に記載の発明における三次元形状をした芯材が少なくとも2つに分割されていることを特徴とするものである。
三次元形状芯材を2つ以上に分割することで、複雑な形状を有し、一度の成形では困難な形状なものであっても、簡便に作製することができる。
また、繊維材のように熱伝導率に異方性があることが明らかとなっている材料においては、断熱性能が向上する方向に、芯材方向を揃えることが重要である。
請求項4に記載の真空断熱箱体の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発明におけるガスバリア性材料が、樹脂材と金属箔を複層化したものであることを特徴とするものである。
樹脂材のみでは温度が高くなるほどガスバリア性が低下するものが多く、一方、金属材料のみでは外箱、内箱からの熱の回りこみによるヒートリークが大きく断熱性能が低下するという問題があったが、金属箔と樹脂材の複合化により、幅広い温度領域でガスバリア性を向上させるとともに、箔を用いることで、ヒートリークも減少できるものである。
また、金属箔との複層化は、樹脂へ高ガスバリア性を付与する他の手段である樹脂表面への金属蒸着法やメッキ法よりも、ガスバリア性が高く、設備、工程の負荷も小さい。
また、ガスバリア性は金属箔と複層化している面積が大きいほど良好になる。
また、金属箔は温度や湿度への依存性が小さく、環境変化に強いより良好なガスバリア性を有することができる。
また、本発明における金属箔とは金属単体である必要はなく、金属の薄層を含む高ガスバリア性の材料であれば利用できる。例えば、密着性や取り扱い性を向上させるために、ラミネートフィルムの様な樹脂材と金属箔との複層フィルムを用いてもかまわない。また、樹脂材に金属を蒸着させた蒸着フィルムであっても、同様の効果が得られるため、問題はない。
また、複層フィルムとして、金属箔、金属蒸着膜の表面にピンホール等の防止のための表面保護層を設けてもかまわない。表面保護層としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルムの延伸加工品などが利用でき、さらに外側にナイロンフィルムなどを設けると可撓性が向上する。
また、金属は厚くなりすぎると、金属箔を通じて、熱リークするため、1mm以下が望ましい。また、薄すぎると成型時に破れる恐れがあり、また、ピンホールも形成しやすいため1μm以上が望ましい。
また、金属箔はアルミニウム、ステンレス、鉄、銅等材質は問わないが、加工性、コストの面からアルミニウム箔が最も望ましい。
また、金属箔は全面被覆することが好ましいが、例えば金属箔にしわが寄り、破損しやすいコーナー部分などは被覆しないようにし、必要な部分だけ複層化することで、成形性や外観を向上させる。そのため、ガスバリア性の高い樹脂材料と複層化することで、金属箔が被覆できない部分のガスバリア性を補強し、真空断熱箱体の断熱性を長期間維持できる。
また、金属箔は通常、成型の型側に設置し、インサート成型やインモールド成型を行うが、体積変化率の小さい三次元形状芯材を用いれば、芯材側に金属箔を設置することが可能となり、樹脂材料の成型自由度が著しく向上する。さらに、芯材の体積変化率が50%以内であるため、大気圧縮による箱体および芯材の変形が抑制されるとともに、金属箔の破損する部分が著しく少なく、ガスバリア性を確保することができる。
また、樹脂材に金属材料を蒸着したフィルムであれば、金属箔と異なり結晶化度が少ないため、伸びやすく、より良好な複層材料を形成することができる。
また、樹脂材料にシリカ、アルミナ等の無機酸化物の蒸着膜を形成しガスバリア性を高めてもかまわない。
また、樹脂材としてエチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンフルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミドからなる群から少なくとも一つを用いることが好ましいが、特に指定するものではない。
上記ガスバリア性材料は特にガスバリア性が高いため、より信頼性の高い真空断熱箱体を形成することができる。さらに、金属箔との複層化部分を減らすことが可能となり、例えば金属箔を複層化しにくい複雑な形状の真空断熱箱体であっても、同等のガスバリア性を保持することが可能となり、自由性形成を向上させることができる。
また、樹脂材の厚さを薄くしても同等のガスバリア性を有することが可能であり、省スペース化を図ることができる。
請求項5に記載の真空断熱箱体の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発明におけるオープンメタルサイトが、4個の配位サイトを有し、少なくとも1つの空き配位サイトを有し、3個以下のサイトが配位状態にある金属イオンで構成されていることを特徴とするものである。
飽和配位サイトが4個を越えるオープンメタルサイトでは、立体障害による吸着阻害作用が生じやすいため、4個の配位サイトを有するものが適当である。
請求項6に記載の真空断熱箱体の発明は、請求項5に記載の発明における金属イオンが、銅イオンを含むことを特徴とするものである。
銅イオンは、気体吸着活性が高く、特に吸着困難であるとされている窒素や、一酸化炭素、水素、酸素に対して高い吸着性を示すことが確認できた。特に、銅一価イオンが好ましい。
また、メタン、エタンなど低分子量の気体種の吸着までが室温領域で可能となることが確認できた。
よって、本構成により、気体の吸着容量が増大すると共に、より強固に気体を吸着する化学吸着容量を増大させることが可能となる。その結果、既存気体吸着材よりも、一層大容量の気体種を、より強固に吸着、固定化でき、真空断熱箱体中の工業的排気プロセスで除去しきれない窒素および経時的に侵入する窒素を吸着除去できるため、信頼性に優れた、高性能な真空断熱箱体を提供できるものである。
請求項7に記載の真空断熱箱体の発明は、請求項5または請求項6に記載の発明における空き配位サイトが、加熱により生じることを特徴とするものである。
加熱により空き配位サイトとなるサイトは、加熱により脱離する何らかの化合物、例えば合成時の溶媒などを予め配位させ作製するものであって、本構成により、気体吸着活性をブロッキングできるものであり、例えば、加熱前は、大気中での取り扱いが可能であり、任意の加工、成型が容易である。
この際の加熱温度は、吸着性集積型金属錯体の熱分析(TG)などにより求めることができる。脱離する化合物の含有率と、加熱による重量減少率との合致する温度を加熱温度とする。
加熱により脱離する化合物としては、金属イオンに対して結合力の弱い物質、すなわち塩基性の弱い、配位子や、集積型金属錯体合成時の溶媒などが利用できる。
また、加熱の際は、常圧であっても減圧であっても良いが、加熱により脱離する化合物の種類により、減圧が好ましい場合もある。また、雰囲気ガスは、特に指定するものではないが、不活性雰囲気下が望ましい。
加熱により脱離する化合物としては、例えば、アセトニトリル、メタノールやエタノールなどの低分子量のアルコール、一酸化炭素、エチレンなどである。
請求項8に記載の真空断熱箱体の発明は、請求項7に記載の発明における加熱温度が、200℃以下であることを特徴とするものである。
加熱温度は、取り扱い性などを考慮すると、200℃以下が望ましい。200℃以下の加熱により脱離する化合物としては、例えば、アセトニトリル、メタノールやエタノールなどの低分子量のアルコール、一酸化炭素、エチレンなどである。
また、アセトンなど沸点の低い化合物が配位していた場合には、200℃より低い温度で脱離が生じ、気体吸着活性を示すものである。従来の合金材料での活性化温度と比較すると、加熱温度が低く、エネルギー的にも有利である。
請求項9に記載の真空断熱箱体の発明は、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の発明における吸着性集積型金属錯体が、少なくとも出発原料の分解物および合成物の分解物の一部を含むことを特徴とするものである。
ここでの分解物とは、主に空き配位サイトを作製するための加熱により生じた熱分解物を指すが、合成時に生じる重合途中生成物や、未反応の出発原料など含み、吸着性集積型金属錯体の不完全な重合体全般を含むものである。
本構成によって、吸着性集積型金属錯体の出発原料および加熱などの履歴が確認できる。
以上の構成により、既存気体吸着材よりも、一層大容量の気体種を、より強固に吸着、固定化でき、真空断熱箱体中の工業的排気プロセスで除去しきれない窒素および経時的に侵入する窒素を吸着除去できるため、信頼性に優れた、高性能な真空断熱箱体を提供できるものである。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における真空断熱箱体の外観図であり、図2は実施の形態1における真空断熱箱体の分解図である。図3は実施の形態1における真空断熱箱体の縦断面図である。
内部にお湯や水を溜められる貯湯容器構造をした真空断熱箱体1は、上部に内部へ水等を貯蔵するための注入口2を有し、外側はガスバリア性材料からなる外箱3で、断熱空間を減圧にするための排気口4がある。
図2の分解図では、注入口2を有するガスバリア性材料からなる内箱5と三次元形状をし、分割された芯材6と、さらに外側を分割した外箱3と外箱3に断熱空間を排気する排気口4から構成されている。
ガスバリア性材料は、空気透過速度が100[cm3・10μm/m2・day・atm]以下であり、好ましくは0.5[cm3・10μm/m2・day・atm]以下であることが望ましい。
空気透過速度が100[cm3・10μm/m2・day・atm]より大きくなると、外部からの空気浸入量が増大し、長期信頼性が劣る。また、吸着材による空気吸着で対応しても、吸着材の必要量が増大し、吸着材の固体熱伝導率が増加し、断熱性能が低下する。
また、成型方法も限定するものではないが、ブロー成形、射出成型、真空成型、圧空成型が最も成型しやすく、いずれの成型方法でも構わない。また、これらの成型方法を組み合わせても構わない。
そして、外箱3は一体で成型する場合は半分に切断し、分割して成型する場合はそのままで使用する。内箱5と外箱3の間の空間と同じ三次元形状に固形化し、さらに分割した芯材6と内箱5とを内部に挿入し、外箱3と内箱5の注入口2の首部分をそれぞれ溶着させる。その後、半分に切断した外箱3を切断部分で溶着し、密閉した後、排気口4から減圧し、真空断熱箱体を作製する。
芯材6は内箱5に挿入するためには2つ以上に分割した方が挿入しやすい。また、複雑な形状になるほど、分割して挿入する方が箱体形成を行いやすい。芯材と芯材の接合部は、密着していれば、断熱性能や箱体の強度に大きく影響は及ぼさない。
外箱3の溶着は端面同士を溶着しても構わないが、事前にフランジ部分を形成しておけば、容易に溶着ができる。
また、溶着方法は特に限定するものではないが、振動溶着、超音波溶着、レーザー溶着、IRAM、DSI、溶接、ホットメルト、電磁誘導、熱風溶着、インパルス溶着、熱風溶着、近赤溶着、拡散結合等が用いられる。また、これらの複合としても構わない。
図3の縦断面図では、真空断熱箱体1は外箱3と内箱5とからなり、外箱3と内箱5の間には断熱空間7が存在する。断熱空間の内部は芯材6で満たされており、気体吸着材8と水分吸着材9を有している。
断熱空間7は排気口4から排気され、減圧空間となり、その後、排気口4を封止することで密封する。
気体吸着材は、箱体を構成する材料から浸入してくる気体や内部に残留していた吸着ガス等を吸着し、長期信頼性を確保することができる。
また、気体吸着材は酸素、窒素、水、二酸化炭素、水素等を吸着可能な吸着材を単独または複合化して使用できる。
芯材6は、減圧前の体積が減圧下の大気圧縮により減少した体積の割合を示す体積変化率が50%以内であるため、真空断熱箱体1は、断熱空間7を減圧しても、芯材の体積減少以上には変形しないため、内箱および外箱材料へ負荷が小さくなり、大気圧縮による割れやひび、変形が起こりにくく、また、箱体強度及び信頼性がともに高い真空断熱箱体を構成できる。特に、内箱および外箱材料が大気圧縮よりも剛性が低い場合や、材料厚が薄い場合、その効果は大きい。また、長期的に応力が掛かることによる疲労破壊や、外環境による内箱および外箱材料の劣化、剛性の低下により、割れやひびが生じることがあるが、芯材の体積変化率が50%以内であれば、芯材の体積減少以上には変形しないため、これらの減少を抑制する効果を有し、やはり信頼性向上が得られる。
また、体積変化率は小さいほどその効果は高く、寸法精度や外観の美観は向上するため、望ましくは10%以下がよく、より正確な寸法精度をだすためには3%以下が望ましい。
体積変化率が50%より大きいと、外観や寸法精度も大きく低下する。また、内箱および外箱材料へ大気圧縮の負荷や変形率が大きくなり、内箱および外箱材料が短期もしくは長期的に割れやひびがおこりやすくなる。また、内箱および外箱材料を厚くして強度を増し、対応することは可能だが、容積効率が減少し、また、コストも高くなる。さらに、内箱および外箱材料の断面積が大きくなることで、内箱および外箱材料から回り込む熱量が増加し、断熱性能も低下する。
(実施例1)
内箱は厚さ1mmのポリプロピレンと厚さ100μmのエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)からなる多層材料で、ポリプロピレンが内側となり、成形はブロー成形で行う。また、ポリプロピレンとEVOHは接合材(10μm)で接合されている。
外箱は厚さ1mmの高密度ポリエチレンと厚さ100μmのEVOHとからなる多層材料で、高密度ポリエチレンが外側になり、内箱同様、ブロー成形によって作製し、高密度ポリエチレンとEVOHは接合材(10μm)で接合されている。
ブロー成形によって成形した外箱を半分に切断し、内箱と外箱の間の空間と同じ三次元形状に固形化した芯材を挿入する。芯材は平均繊維径5μmのガラス繊維を500℃で加圧成型し、250kg/m3の密度に調整して作製し、2分割して挿入する。そして、内箱を内部に挿入し、さらに気体吸着材と水分吸着材を挿入する。
気体吸着材は、オープンメタルサイトを有する吸着性集積型金属錯体を用い、水分吸着材は酸化カルシウムを用いた。
実施例1のオープンメタルサイトを有する吸着性集積型金属錯体は、次のように調整した。金属イオン化合物としてCu(NO3)2を、架橋配位子化合物L1として
を用い、溶媒には水を用いた。これらを混合後、170℃で保持、室温まで冷却後に得られた結晶を構造解析した結果、多孔構造の集積型金属錯体であることがわかった。
110℃、5時間の熱処理後、構造解析を実施した結果、この集積型金属錯体における、オープンメタルサイトは配位不飽和な銅一価イオンであることがわかった。実施例1においては、銅一価イオンの配位飽和は4配位であり、そのうち3配位が結合に使用されており、1配位が空き配位サイトとなっていることが確認できた。
この気体吸着材の窒素吸着量評価として、Ar雰囲気中でコックつきの試験管に気体吸着材を封入、その後試験管内をAr雰囲気から取り出し、コック部分から真空排気、窒素充填した。その窒素圧力の減少から気体吸着材の窒素吸着量を読み取ると、3.3cc/gであった。
外箱と内箱は注入口の首部分で溶着させ、半分に切断した外箱を切断部分で溶着し、密閉した後、排気口から減圧し、真空断熱箱体を作製する。
挿入した芯材と同条件で作製した芯材、もしくは真空断熱箱体に用いた芯材を取り出し体積を測定し、その後、ラミネートフィルムに入れ、減圧後の体積を測定した結果、体積変化率は3.3%であった。作製した真空断熱箱体は、目だった外観の変化もなく、比較例1に比べ良好であった。また、熱伝導率は0.0040W/mKであり、比較例1に比べ、高断熱性能を有する。
また、熱伝導率0.0040W/mKに達するのに、真空ポンプだけでは15分必要であったが、気体吸着材により、真空ポンプで3分真空排気しその後放置しておくだけで前記熱伝導率に達することができた。
また、真空断熱箱体を40℃で3ヶ月放置したが、やはり比較例1に比べ、外観、性能の変化は見られなかった。
(実施例2)
内箱は厚さ0.3mmのABS樹脂と厚さ100μmのエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)からなる多層材料で、ABSが内側となり、成形はブロー成形で行う。また、ABS樹脂とEVOHは接合材(10μm)で接合されている。
外箱は厚さ1mmの高密度ポリエチレンと厚さ100μmのEVOHとからなる多層材料で、高密度ポリエチレンが外側になり、二重射出成形によって作製し、高密度ポリエチレンにはEVOHとの接合材が混入されている。
射出成形によって成型する際、半分にして成型し、内箱と外箱の間の空間と同じ三次元形状に固形化した芯材を挿入する。また、接合しやすいようにフランジ部を設ける。芯材は、平均一次粒子径が80μmの乾式シリカと乾式シリカに対して、10wt%のカーボンブラックと、10wt%の平均繊維径5μmのガラス繊維とを混合し、空間形状に加圧成型し、密度が260kg/m3に固形化した。
また、挿入できるようにあらかじめ半分ずつ成型し、挿入する。そして、内箱を内部に挿入し、さらに気体吸着材と水分吸着材を挿入する。
気体吸着材は、オープンメタルサイトを有する吸着性集積型金属錯体を用い、水分吸着材は酸化カルシウムを用いた。
実施例2のオープンメタルサイトを有する吸着性集積型金属錯体は、次のように調整した。
金属イオン化合物としてFeCl2・4H2O、架橋配位子化合物L1として、
ナフタレン−2,6−ジカルボキシレート:
水に溶解したナフタレン−2,6−ジカルボキシレートと4,4−ビピリジンのエタノール溶液を配位子溶液とし、FeCl2・4H2O水溶液を金属イオン水溶液とする。金属イオン水溶液を入れた石英管に、静かに配位子溶液を注ぎ入れる(金属イオン水溶液と配位子溶液との間には、エタノール:水=1:2とした緩衝溶液が存在する)。
これら二層間に析出した茶色結晶を構造解析した結果、多孔構造の集積型金属錯体であることがわかった。
140℃、5時間の熱処理後、構造解析を実施した結果、この集積型金属錯体における、オープンメタルサイトは配位不飽和な鉄二価イオンであることがわかった。鉄二価イオンの配位飽和は6配位であり、そのうち5配位が結合に使用されており、1配位が空き配位サイトとなっていることが確認できた。
この気体吸着材の窒素吸着量評価として、Ar雰囲気中でコックつきの試験管に気体吸着材を封入、その後試験管内をAr雰囲気から取り出し、コック部分から真空排気、窒素充填した。その窒素圧力の減少から気体吸着材の窒素吸着量を読み取ると、2.8cc/gであった。
低圧領域での窒素吸着は実施例1に劣っていた。この要因はオープンメタルサイトが、鉄二価であったためと考える。
外箱と内箱は注入口の首部分で溶着させ、半分に切断した外箱を切断部分で溶着し、密閉した後、排気口から減圧し、真空断熱箱体を作製する。
挿入した芯材と同条件で作製した芯材の体積を測定し、その後、ラミネートフィルムに入れ、減圧後の体積を測定した結果、体積変化率は8.5%であった。作製した真空断熱箱体は、目だった外観の変化もなく、比較例1に比べ良好であった。また、熱伝導率は0.0050W/mKであり、比較例1に比べ高断熱性能を有する。
また、熱伝導率0.0050W/mKに達するのに、真空ポンプだけでは15分必要であったが、気体吸着材により、真空ポンプで3分真空排気しその後放置しておくだけで前記熱伝導率に達することができた。
また、40℃で3ヶ月放置したが、やはり比較例1に比べ外観、性能の変化は見られなかった。
(実施例3)
内箱は厚さ0.3mmのABS樹脂と厚さ100μmのエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)からなる多層材料で、ABS樹脂が内側となり、成形はブロー成形で行う。また、ABS樹脂とEVOHは接合材(10μm)で接合されている。
外箱は厚さ1mmの高密度ポリエチレンと厚さ100μmのEVOHとからなる多層材料で、高密度ポリエチレンが外側になり、二重射出成形によって作製し、高密度ポリエチレンにはEVOHとの接合材が混入されている。
射出成形によって成型する際、半分にして成型し、内箱を挿入する。また、接合しやすいようにフランジ部を設ける。そして、内箱を内部に挿入し、さらに気体吸着材と水分吸着材を挿入する。
気体吸着材は、オープンメタルサイトを有する吸着性集積型金属錯体を用い、水分吸着材は酸化カルシウムを用いた。
実施例3のオープンメタルサイトを有する吸着性集積型金属錯体は、次のように調整した。
金属イオン化合物として[Cu(CH3CN)4]BF4、架橋配位子化合物L1として4,4−ビピリジン、L2としてアセトニトリルを用いた。なお、アセトニトリルは溶媒としても作用する。
アセトニトリルに溶解した[Cu(CH3CN)4]BF4へ、同じくアセトニトリルへ溶解した4,4−ビピリジンを加え、攪拌する。沈殿により生じた黄色の粉末を構造解析した。
この集積型金属錯体において、脱離する化合物はアセトニトリルであり、期待される脱離に対応する加熱温度は110℃と判断し、減圧下、110℃にて加熱を行った。
加熱後の構造解析の結果、多孔構造の集積型金属錯体が形成されていることが確認できた。また、オープンメタルサイトは、配位不飽和な銅一価イオンであることがわかった。銅一価イオンの配位飽和は4配位であり、そのうち3配位が結合に使用されており、1配位が空き配位サイトとなっていることが確認できた。
この気体吸着材の窒素吸着量評価として、Ar雰囲気中でコックつきの試験管に気体吸着材を封入、その後試験管内をAr雰囲気から取り出し、コック部分から真空排気、窒素充填した。その窒素圧力の減少から気体吸着材の窒素吸着量を読み取ると、3.6cc/gであった。
外箱と内箱は注入口の首部分で溶着させ、半分に切断した外箱を切断部分で溶着し、密閉する。その後、排気口から粉末状芯材を封入する。芯材は、平均一次粒子径が80μmの乾式シリカと乾式シリカに対して、10wt%のカーボンブラックとを混合したものを用いた。空間容積と封入量から、密度は90kg/m3となった。その後、排気口から減圧し、真空断熱箱体を作製する。
気体吸着材はAr雰囲気で袋に密閉しておき、外箱と内箱との間の空間を減圧後、気体吸着材を封入した袋が開口し、前記空間と通気可能となるように配設した。
挿入した芯材を、ラミネートフィルムに入れ、減圧後の体積を測定し、また、封入密度から減圧前の体積を求め、計算した結果、体積変化率は24.5%であった。これは、気相率が高い粉末を細口から封入したため、芯材が十分に封入し切れなかったためと考えられる。作製した真空断熱箱体は、比較例1に比べ良好であった。また、熱伝導率は0.0055W/mKであり、比較例1に比べ高断熱性能を有する。
また、熱伝導率0.0055W/mKに達するのに、真空ポンプだけでは15分必要であったが、気体吸着材により、真空ポンプで3分真空排気しその後放置しておくだけで前記熱伝導率に達することができた。
また、40℃で3ヶ月放置したが、外観、性能の変化は見られず、比較例1に比べ良好であった。
(実施例4)
内箱は厚さ0.3mmのABS樹脂と厚さ100μmのエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)からなる多層材料で、ABS樹脂が内側となり、成形はブロー成形で行う。また、ABS樹脂とEVOHは接合材(10μm)で接合されている。
外箱は厚さ1mmの高密度ポリエチレンと厚さ100μmのEVOHとからなる多層材料で、高密度ポリエチレンが外側になり、二重射出成形によって作製し、高密度ポリエチレンにはEVOHとの接合材が混入されている。
射出成形によって成型する際、半分にして成型し、内箱を挿入する。また、接合しやすいようにフランジ部を設ける。そして、内箱を内部に挿入し、さらに気体吸着材と水分吸着材を挿入する。
気体吸着材は、オープンメタルサイトを有する吸着性集積型金属錯体を用い、水分吸着材は酸化カルシウムを用いた。
実施例4のオープンメタルサイトを有する吸着性集積型金属錯体は、次のように調整した。
開始物質として、[Cu(CH3CN)4]PF6を用い、減圧下、180℃にて、4時間の加熱を行い、銅イオンへ配位している4つのCH3CN基のうち1つを除去することにより、オープンメタルサイトを有する非多孔構造の吸着性金属錯体を合成した。
構造解析の結果、この金属錯体における、オープンメタルサイトは、配位不飽和な銅一価イオンであることがわかった。銅一価イオンの配位飽和は4配位であり、そのうち3配位が結合に使用されており、1配位が空き配位サイトとなっていることが確認できた。
この気体吸着材の窒素吸着量評価として、Ar雰囲気中でコックつきの試験管に気体吸着材を封入、その後試験管内をAr雰囲気から取り出し、コック部分から真空排気、窒素充填した。その窒素圧力の減少から気体吸着材の窒素吸着量を読み取ると、5.3cc/gであった。
外箱と内箱は注入口の首部分で溶着させ、半分に切断した外箱を切断部分で溶着し、密閉する。その後、排気口から粉末状芯材を封入する。芯材は、平均一次粒子径が80μmの乾式シリカと乾式シリカに対して、10wt%のカーボンブラックとを混合したものを用いた。空間容積と封入量から、密度は90kg/m3となった。その後、排気口から減圧し、真空断熱箱体を作製する。
気体吸着材はAr雰囲気で袋に密閉しておき、外箱と内箱との間の空間を減圧後、気体吸着材を封入した袋が開口し、前記空間と通気可能となるように配設した。
挿入した芯材を、ラミネートフィルムに入れ、減圧後の体積を測定し、また、封入密度から減圧前の体積を求め、計算した結果、体積変化率は24.5%であった。これは、気相率が高い粉末を細口から封入したため、芯材が十分に封入し切れなかったためと考えられる。作製した真空断熱箱体は、比較例1に比べ良好であった。また、熱伝導率は0.0055W/mKであり、比較例1に比べ高断熱性能を有する。
また、熱伝導率0.0055W/mKに達するのに、真空ポンプだけでは15分必要であったが、気体吸着材により、真空ポンプで3分真空排気しその後放置しておくだけで前記熱伝導率に達することができた。
また、40℃で3ヶ月放置したが、外観、性能の変化は見られず、比較例1に比べ良好であった。
(実施の形態2)
図4は本発明の実施の形態2における真空断熱箱体の縦断面図である。
図4の縦断面図では、真空断熱箱体10は外箱11と内箱12とからなり、外箱11と内箱12の間には断熱空間7が存在する。また外箱11の内側と内箱12の外側に金属箔13がインサート成型されている。断熱空間7の内部は芯材14で満たされており、気体吸着材8を有している。断熱空間7は排気口4から排気され、減圧空間となり、その後、排気口4を封止することで密閉空間とする。
(実施例5)
内箱は厚さ0.5mmのポリプロピレン2枚で厚さ100μmのエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)を挟んだ構造からなる多層材料で、成形はブロー成形で行う。また、ポリプロピレンとEVOHは接合材(10μm)で接合されている。そしてナイロン(10μm)とアルミニウム箔(20μm)とポリプロピレン(7μm)の複層材からなる金属箔を、ブロー成形時に金型内面の平面部に設置しておき、成型と同時に内箱に一体化するインサート成型を行う。金属箔のナイロンとアルミニウム、アルミニウムとポリプロピレンはそれぞれ接合材(5μm)で接合されている。また、金属箔はポリプロピレン側を内箱と接合させる。
外箱は厚さ1mmの高密度ポリエチレンと厚さ100μmのエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)からなる多層材料で、二重射出成型で分割して作製する。ポリエチレンには接合材を配合し、EVOHとの密着性を上げる。金属箔はナイロン(10μm)とアルミニウム箔(20μm)とポリエチレン(7μm)の複層材を用い、射出成型時に金型平面部に設置し、インサート成型する。金属箔のナイロンとアルミニウム、アルミニウムとポリエチレンはそれぞれ接合材(5μm)で接合されている。また、金属箔はポリエチレン側を外箱と接合させる。外箱はあらかじめ、中に内箱、芯材を挿入し、接合できるように、二つに分割して成型し、さらに接合部にフランジを設ける。
また、金属箔による被覆率は全表面積の80%であった。
そして、内箱と外箱の間の空間と同じ三次元形状に固形化した芯材を挿入する。芯材は平均繊維径7μmのガラス繊維に、バインダーとして水ガラス水溶液を塗布し、乾燥、500℃で加圧成型し、270kg/m3の密度に調整して作製し、2分割して挿入する。水ガラスはガラス繊維に対して重量比3wt%である。そして、内箱を内部に挿入し、さらに水分吸着材を内包した気体吸着材を挿入する。
気体吸着材は、実施例3と同様のオープンメタルサイトを有する吸着性集積型金属錯体を用いた。外箱と内箱は注入口の首部分で溶着させ、外箱をフランジで溶着し、密閉した後、排気口から減圧し、真空断熱箱体を作製する。
挿入した芯材と同条件で作製した芯材の体積を測定し、その後、ラミネートフィルムに入れ、減圧後の体積を測定した結果、体積変化率は2.7%であった。作製した真空断熱箱体は、目だった外観の変化もなく、比較例1に比べ良好であった。また、熱伝導率は0.0035W/mKであり、比較例1に比べ高断熱性能を有する。
また、熱伝導率0.0035W/mKに達するのに、真空ポンプだけでは15分必要であったが、気体吸着材により、真空ポンプで3分真空排気しその後放置しておくだけで前記熱伝導率に達することができた。
また、40℃で3ヶ月放置したが、外観、性能の変化は見られなかった。さらに、90℃で3ヶ月放置したが、真空断熱箱体は性能変化もなく良好であった。
(実施の形態3)
図5は本発明の実施の形態3における真空断熱箱体の縦断面図である。
図5の縦断面図では、真空断熱箱体15は外箱16と内箱17とからなり、外箱16と内箱17の間には断熱空間7が存在する。また外箱16の内側と内箱17の外側に金属蒸着膜18を有した樹脂シートが挿入されている。断熱空間7の内部は芯材19で満たされており、気体吸着材8と水分吸着9を有している。断熱空間7は排気口4から排気され、減圧空間となり、その後、排気口4を封止することで密閉空間とする。
(実施例6)
内箱は厚さ1.0mmのポリプロピレンと厚さ1μmのアルミニウム蒸着膜を有する厚さ100μmのエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)からなる多層材料で、成形はブロー成形で行う。また、ポリプロピレンとEVOHは接合材(10μm)で接合されている。
外箱は厚さ1mmの高密度ポリエチレンと厚さ1μmのアルミニウム蒸着膜を有する厚さ100μmのエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)からなる多層材料で、二重射出成型で半分に分割して作製する。ポリエチレンには接合材を配合し、EVOHとの密着性を上げる。そして、射出成型時に金型平面部にアルミニウム蒸着を有するEVOHを設置し、インサート成型する。EVOHはEVOH側を高密度ポリエチレンと接合させる。外箱はあらかじめ、中に内箱、芯材を挿入し、接合できるように、二つに分割して成型し、さらに接合部にフランジを設ける。
また、アルミニウム蒸着膜による被覆率は全表面積の80%であった。
そして、内箱と外箱の間の空間と同じ三次元形状に固形化した芯材を挿入する。芯材は平均繊維径5μmのガラス繊維を500℃で加圧成型し、250kg/m3の密度に調整して作製し、2分割して挿入する。そして、内箱を内部に挿入し、さらに気体吸着材と水分吸着材を挿入する。
気体吸着材は、実施例3と同様のオープンメタルサイトを有する吸着性集積型金属錯体を圧縮成型し、その周囲を水分吸着材である酸化カルシウムで被覆し圧縮成形したものを用いた。
外箱と内箱は注入口の首部分で溶着させ、外箱をフランジで溶着し、密閉した後、排気口から減圧し、真空断熱箱体を作製する。
挿入した芯材と同条件で作製した芯材の体積を測定し、その後、ラミネートフィルムに入れ、減圧後の体積を測定した結果、体積変化率は3.4%であった。作製した真空断熱箱体は、目だった外観の変化もなく、比較例1に比べ良好であった。また、熱伝導率は0.0039W/mKであり、高断熱性能を有する。
また、熱伝導率0.0039W/mKに達するのに、真空ポンプだけでは15分必要であったが、気体吸着材により、真空ポンプで3分真空排気しその後放置しておくだけで前記熱伝導率に達することができた。
また、40℃で3ヶ月放置したが、外観、性能の変化は見られなかった。さらに、90℃で3ヶ月放置したが、真空断熱箱体は性能変化もなく良好であった。
(実施の形態4)
図6は、本発明の実施の形態4における真空断熱箱体を適用した自動車の蓄熱式暖気装置を示す。
図6において蓄熱式暖気装置20は、冷却水回路21を通じて、エンジン22で温められた冷却水がラジエーター23で冷却され、再びエンジン22に戻る循環経路である。また、エンジン始動時の冷却水が温まってない場合は、サーモスタット24が全閉されており、冷却水は放熱作用のあるラジエーター23を介さず、バイパス流路25を通り循環し冷却水の昇温を早める。
また、自動車連続走行中、冷却水回路21の温まっている冷却水を、流量制御弁26を切り替え入口パイプ27から蓄熱タンクと称する真空断熱容器29に流入させ保温しておく。その後エンジン始動時に流動制御弁26を切り替え出口パイプ28から、冷却水回路に流出させ、冷却水に混合し冷却水の昇温を早める。従ってエンジン始動時の車の燃費を向上させることができる。
蓄熱タンクとして実施例4記載の真空断熱箱体を用いた。これにより、エンジン始動時の車の燃費を向上させることができる。
また、従来の魔法瓶では、金属性の内側容器と外側容器との間に真空の断熱空間を設けた構造で、強度の面から形状に制約があり、円筒形状等の単純な形状が一般的である。しかし、本発明の真空断熱容器であれば、成型自由度が高く、複雑な形状の蓄熱タンクを形成できるとともに、ヒートリークが小さく、断熱性能に優れ、長期信頼性を有し、保温効率が向上する。
また、蓄熱式暖気装置に用いられる真空断熱箱体の内箱の内面が耐水性樹脂であることが望ましい。前記内箱の内面が耐水性樹脂で覆うことによって、タンク内に冷却水を保温しても、水分が浸透することを抑制できるとともに、耐久性も向上させることができる。
また、耐水性樹脂は耐水性があれば、限定するものではないが、ポリプロピレン、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂であれば、特に耐水性に優れるとともに、汎用樹脂であるため、安価でもある。
(実施の形態5)
図7は本発明の実施の形態5における真空断熱箱体を適用した冷蔵庫の縦断面図である。
冷蔵庫30は真空断熱箱体構造を有しており冷蔵庫内を構成する内箱31と外壁構成する外箱32とからなり、内箱31と外箱32の間には断熱層33が存在する。また外箱32はPCM鋼板で構成され、内箱31はアルミニウム箔をインサート成形したABS樹脂とからなり、断熱層側にアルミニウム箔がある。断熱層33の内部は芯材34が充填され、気体吸着材35と水分吸着材36を有している。また、符号37で示すものは排気口で、符号38で示すものは機械室で、符号39で示すものは圧縮機である。冷媒はイソブタンを使用している。
(実施例7)
芯材は平均繊維径5μmのガラス繊維を用い、バインダーとしてケイ酸ナトリウム3wt%溶液を塗布し、断熱層の形状に450℃加圧成型しながら溶媒を乾燥させ、固形化したものからなる。
内箱は厚さ3mmのABS樹脂と厚さ20μmのエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)にアルミニウム箔(10μm)をインサート成形した多層材料で、ABS樹脂が庫内側となり、成形は真空圧空成形で行う。
外箱は厚さ1mmのPCM鋼板で、プレス成型にて成型する。外箱と内箱とで芯材を挟みこむ形で挿入し、外箱と内箱を接触部分で接合する。
断熱層は、冷蔵庫外の真空ポンプで排気口から減圧し、真空度が700Pa程度になったところで排気口部分を封止し、放置しておくと気体吸着材により真空度が10a程度まで低減する。
また、芯材の体積変化率は1%と小さいため、へこみ、ゆがみもなく高い信頼性を有した真空断熱箱体冷蔵庫を形成する。
次に本発明の比較例を示す。
(比較例1)
内箱は厚さ1mmのポリプロピレンと厚さ100μmのエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)からなる多層材料で、ポリプロピレンが内側となり、成形はブロー成形で行う。また、ポリプロピレンとEVOHは接合材(10μm)で接合されている。
外箱は厚さ1mmの高密度ポリエチレンと厚さ100μmのEVOHとからなる多層材料で、高密度ポリエチレンが外側になり、内箱同様、ブロー成形によって作製し、高密度ポリエチレンとEVOHは接合材(10μm)で接合されている。
ブロー成形によって成形した外箱を半分に切断し、内箱と外箱の間に芯材を挿入する。芯材は平均繊維径5μmのガラス繊維を挿入する。外箱と内箱は注入口の首部分で溶着させ、半分に切断した外箱を切断部分で溶着し、密閉した後、排気口から減圧し、真空断熱箱体を作製する。
挿入した芯材と同条件で作製した芯材の体積を測定し、その後、ラミネートフィルムに入れ、減圧後の体積を測定した結果、体積変化率は56%であった。作製した真空断熱箱体は、大きく変形し、また、熱伝導率は0.0125W/mKであった。
また、40℃で1ヶ月放置した時点で、クラックが生じた。
(比較例2)
内箱、外箱、芯材については実施例1と同様で、気体吸着材を用いずに真空断熱箱体を作製した。熱伝導率は0.0030W/mKに達するのに真空排気時間は30分必要であった。また、40℃6ヶ月経過後の断熱性能に悪化がみられた。