JP2007185751A - 難削材の切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】工具基体の表面に、下部層が3〜20μmの平均層厚のTi化合物層、上部層が6〜20μmの平均層厚の改質α型Al2O3層からなる硬質被覆層を蒸着形成してなる被覆サーメット工具の前記下部層と上部層の間に、補強層として、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定して、傾斜角度数分布グラフを作成した場合、75〜90度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記75〜90度の範囲内に存在する度数の合計が度数全体の50%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示し、かつ0.1〜1.9μmの平均層厚を有するα型Al2O3層を介在してなる。
【選択図】なし
Description
(a)下部層が、Tiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層、および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層が、化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有し、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、図2に概略説明図で示される通り、上記工具基体表面と平行な研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、図4に例示される通り、0〜15度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜15度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の50%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示し、かつ6〜20μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層(以下、改質α型Al2O3層という)、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる被覆サーメット工具が知られており、この被覆サーメット工具は、上記改質α型Al2O3層がα型Al2O3自身のもつすぐれた高温硬さおよび耐熱性に加えて、すぐれた高温強度を具備することから、例えば各種の一般鋼や普通鋳鉄などの切削加工などに用いた場合に、すぐれた耐チッピング性を発揮し、長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮することが知られている。
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:1〜5%、CO2:0.1〜2%、HCl:0.3〜3%、H2S:0.5〜1%、Ar:20〜35%、H2:残り、
反応雰囲気温度:1000〜1100℃、
反応雰囲気圧力:6〜10kPa、
の条件で蒸着形成されることも知られている。
さらに、同じく硬質被覆層を構成するTi化合物層や改質α型Al2O3層が粒状結晶組織を有し、さらに、前記Ti化合物層を構成するTiCN層を、層自身の強度向上を目的として、通常の化学蒸着装置にて、反応ガスとして有機炭窒化物を含む混合ガスを使用し、700〜950℃の中温温度域で化学蒸着することにより形成して縦長成長結晶組織をもつようにすることも知られている。
上記の従来被覆サーメット工具の硬質被覆層を構成するTi化合物層(下部層)と改質α型Al2O3層(上部層)の間に、通常の化学蒸着装置を用い、
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:1〜5%、CO2:3〜7%、HCl:0.3〜3%、H2S:0.02〜0.4%、H2:残り、
反応雰囲気温度:750〜900℃、
反応雰囲気圧力:20〜30kPa、
の条件で酸化アルミニウム(以下、Al2O3で示す)層を0.1〜1.9μmの平均層厚で形成すると、この結果形成されたAl2O3層は、同じくα型の結晶構造を有し、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、図1(a),(b)に示される通り、同じく上記工具基体表面と平行な研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、45〜90度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフで現した場合、図3に例示される通り、傾斜角区分の特定位置にシャープな最高ピークが現れ、試験結果によれば、化学蒸着装置における反応雰囲気圧力を、上記の通り20〜30kPaの範囲内で変化させると、上記シャープな最高ピークの現れる位置が傾斜角区分の75〜90度の範囲内で変化すると共に、前記75〜90度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の50%以上の割合を占めるようになり、この結果の傾斜角度数分布グラフにおいて75〜90度の範囲内に傾斜角区分の最高ピークが現れるAl2O3層(以下、補強α型Al2O3層という)は、上記の改質α型Al2O3層(上部層)とTi化合物層(下部層)の間にあって、前記改質α型Al2O3層を十分に補強し、切削抵抗の高い上記の難削材の切削加工においても前記改質α型Al2O3層にチッピングが発生するのを抑制し、この結果被覆サーメット工具がすぐれた耐摩耗性を長期に亘って発揮するようになる。
という研究結果を得たのである。
(a)下部層が、TiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層、およびTiCNO層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層が、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、上記工具基体表面と平行な研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、0〜15度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜15度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の50%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示し、かつ6〜20μmの平均層厚を有する改質α型Al2O3層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる被覆サーメット工具において、
上記の下部層であるTi化合物層と上部層である改質α型Al2O3層の間に、補強層として、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、上記工具基体表面と平行な研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、45〜90度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、
75〜90度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記75〜90度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の50%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示し、かつ0.1〜1.9μmの平均層厚を有する補強α型Al2O3層、
を介在させてなる、難削材の切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する被覆サーメット工具に特徴を有するものである。
(a)Ti化合物層(下部層)
Ti化合物層は、基本的には改質α型Al2O3層の下部層として存在し、自身の具備するすぐれた高温強度によって硬質被覆層が高温強度を具備するようにするほか、工具基体と補強α型Al2O3層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する密着性向上に寄与する作用を有するが、その合計平均層厚が3μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その合計平均層厚が20μmを越えると、熱塑性変形を起し易くなり、これが偏摩耗の原因となることから、その合計平均層厚を3〜20μmと定めた。
改質α型Al2O3層の傾斜角度数分布グラフにおける測定傾斜角の最高ピーク位置は、化学蒸着装置における反応雰囲気圧力を変化させることによって変化するが、試験結果によれば、上記蒸着条件のうちの反応雰囲気圧力を6〜10kPaとすると、最高ピークが、0〜15度の範囲内の傾斜角区分に現れると共に、前記0〜15度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の50%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示すようになるものであり、したがって、前記反応雰囲気圧力が前記範囲から低い方に外れても、また高い方に外れても、前記0〜15度の範囲内に測定傾斜角の最高ピークが現れなくなり、このような場合には所望のすぐれた高温強度を具備することができないものである。
また、改質α型Al2O3層は、α型Al2O3自身のもつすぐれた高温硬さおよび耐熱性に加えて、高温強度も具備するようになるが、その平均層厚が6μm未満では、切削工具に十分な使用寿命を確保することができず、また、その平均層厚が20μmを越えると、難削材の切削加工ではチッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を6〜20μmと定めた。
上記の通り、補強α型Al2O3層の傾斜角度数分布グラフにおける測定傾斜角の最高ピーク位置は、化学蒸着装置における反応雰囲気圧力を変化させることによって変化するが、試験結果によれば、上記蒸着条件のうちの反応雰囲気圧力を、20〜30kPaとすると、最高ピークが75〜90度の範囲内の傾斜角区分に現れると共に、前記75〜90度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の50%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示すようになるものであり、したがって、前記反応雰囲気圧力が前記範囲から低い方に外れても、また高い方に外れても、75〜90度の範囲内に測定傾斜角の最高ピークが現れなくなり、このような場合には所望のすぐれた補強作用を発揮することができないものである。
また、その平均層厚が0.1μm未満では、上記改質α型Al2O3層に対する補強作用が不十分であり、一方、その平均層厚が1.9μmを越えると、これが難削材の切削加工ではチッピング発生の原因となることから、その平均層厚を0.1〜1.9μmと定めた。
(a)まず、表3(表3中のl−TiCNは特開平6−8010号公報に記載される縦長成長結晶組織をもつTiCN層の形成条件を示すものであり、これ以外は通常の粒状結晶組織の形成条件を示すものである)に示される条件にて、表4,5に示される目標層厚のTi化合物層を硬質被覆層の下部層として蒸着形成し、
(b)ついで、反応ガス組成:容量%で、AlCl3:2.2%、CO2:5%、HCl:2%、H2S:0.15%、H2:残り、
反応雰囲気温度:850℃、
反応雰囲気圧力:20〜30kPaの範囲内の所定の圧力、
の条件で表4,5に示される目標層厚で、補強α型Al2O3層を蒸着形成し、
(c)さらに、反応ガス組成:容量%で、AlCl3:2.2%、CO2:1.5%、HCl:2%、H2S:0.75%、Ar:26.5%、H2:残り、
反応雰囲気温度:1070℃、
反応雰囲気圧力:6〜10kPaの範囲内の所定の圧力、
の条件で同じく表4,5に示される目標層厚で、同じく上部層として改質α型Al2O3層を蒸着形成することにより本発明被覆サーメット工具1〜13をそれぞれ製造した。
すなわち、上記傾斜角度数分布グラフは、上記の本発明被覆サーメット工具1〜13と従来被覆サーメット工具1〜13の改質α型Al2O3層、および本発明被覆サーメット工具1〜13の補強α型Al2O3層について、それぞれ工具基体表面と平行な面をそれぞれ研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、それぞれの前記研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に照射して、電子後方散乱回折像装置を用い、30×50μmの領域を0.1μm/stepの間隔で、前記研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、この測定結果に基づいて、前記測定傾斜角のうち、前記改質α型Al2O3層については0〜45度、前記補強α型Al2O3層については45〜90度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計することにより作成した。
また表4〜7には、上記の各種の改質α型Al2O3層および補強α型Al2O3層の傾斜角度数分布グラフにおいて、それぞれ0〜15度および75〜90度の範囲内の傾斜角区分に存在する全傾斜角度数の傾斜角度数分布グラフ全体に占める割合を示した。
なお、図3は、本発明被覆サーメット工具2の補強α型Al2O3層の傾斜角度数分布グラフ、図4は同改質α型Al2O3層の傾斜角度数分布グラフである。
被削材:JIS・SUS316の丸棒、
切削速度:290m/min.、
切り込み:1.5mm、
送り:0.3mm/rev.、
切削時間:7分、
の条件(切削条件Aという)でのステンレス鋼の乾式連続切削試験、
被削材:JIS・SS300の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:350m/min.、
切り込み:2mm、
送り:0.35mm/rev.、
切削時間:6分、
の条件(切削条件Bという)での軟鋼の乾式断続切削試験、さらに、
被削材:JIS・SMn433Hの長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:270m/min.、
切り込み:1.5mm、
送り:0.25mm/rev.、
切削時間:5分、
の条件(切削条件Cという)での高マンガン鋼の乾式断続切削試験を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表8に示した。
Claims (1)
- 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)下部層が、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層が、化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有し、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、上記工具基体表面と平行な研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、0〜15度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜15度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の50%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示し、かつ6〜20μmの平均層厚を有する改質α型酸化アルミニウム層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる表面被覆サーメット製切削工具において、
上記の下部層であるTi化合物層と上部層である改質α型酸化アルミニウム層の間に、補強層として、同じく化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有し、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、上記工具基体表面と平行な研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、45〜90度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、
75〜90度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記75〜90度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の50%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示し、かつ0.1〜1.9μmの平均層厚を有する補強α型酸化アルミニウム層、
を介在させたことを特徴とする難削材の切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具。
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