JP2006043802A - 硬質被覆層が高速切削ですぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具 - Google Patents
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Abstract
【課題】 硬質被覆層が高速切削ですぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具を提供する。
【解決手段】WC基超硬合金またはTiCN基サーメットで構成された工具基体の表面に、(a)下部層が1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、(b)上部層が、1〜15μmの平均層厚を有し、かつ化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有し、上記工具基体表面と平行な表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、特定の傾斜角度数分布グラフを示すAl2O3層、以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる。
【選択図】図1
【解決手段】WC基超硬合金またはTiCN基サーメットで構成された工具基体の表面に、(a)下部層が1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、(b)上部層が、1〜15μmの平均層厚を有し、かつ化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有し、上記工具基体表面と平行な表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、特定の傾斜角度数分布グラフを示すAl2O3層、以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる。
【選択図】図1
Description
この発明は、特に各種の鋼や鋳鉄などの高速切削で、硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具(以下、被覆サーメット工具という)に関するものである。
従来、一般に、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットで構成された基体(以下、これらを総称して工具基体という)の表面に、
(a)下部層が、Tiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層、および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの全体平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層が、1〜15μmの平均層厚を有し、かつ化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有する酸化アルミニウム層(以下、蒸着α型Al2O3層で示す)、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる被覆サーメット工具が知られており、この被覆サーメット工具が、例えば各種の鋼や鋳鉄などの連続切削や断続切削に用いられることは良く知られている。
(a)下部層が、Tiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層、および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの全体平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層が、1〜15μmの平均層厚を有し、かつ化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有する酸化アルミニウム層(以下、蒸着α型Al2O3層で示す)、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる被覆サーメット工具が知られており、この被覆サーメット工具が、例えば各種の鋼や鋳鉄などの連続切削や断続切削に用いられることは良く知られている。
また、一般に、上記の被覆サーメット工具の硬質被覆層を構成するTi化合物層や蒸着α型Al2 O3 層が粒状結晶組織を有し、さらに、前記Ti化合物層を構成するTiCN層を、層自身の強度向上を目的として、通常の化学蒸着装置にて、反応ガスとして有機炭窒化物を含む混合ガスを使用し、700〜950℃の中温温度域で化学蒸着することにより形成して縦長成長結晶組織をもつようにすることも知られている。
特開平6−31503号公報
特開平6−8010号公報
近年の切削装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工は一段と高速化の傾向にあるが、上記の従来被覆サーメット工具においては、これを鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削や断続切削に用いた場合には問題はないが、特にこれを高速切削加工に用いた場合、硬質被覆層を構成する蒸着α型Al2O3層の摩耗が急速に進行するようになることから、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、上記の蒸着α型Al2O3層が硬質被覆層の上部層を構成する被覆サーメット工具に着目し、特に前記蒸着α型Al2O3層の耐摩耗性向上を図るべく研究を行った結果、
(a)上記の従来被覆サーメット工具の硬質被覆層としての蒸着α型Al2O3層は、一般に、通常の化学蒸着装置にて、
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:1〜5%、CO2:1〜10%、HCl:0.3〜3%、H2S:0.02〜0.4%、H2:残り、
反応雰囲気温度:950〜1100℃、
反応雰囲気圧力:3〜13kPa、
の条件(以下、通常条件という)で形成されるが、これの形成を、同じく通常の化学蒸着装置を用い、
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:1〜5%、CO2:1〜10%、HCl:0.3〜3%、H2S:0.02〜0.4%、H2:残り、
反応雰囲気温度:750〜900℃、
反応雰囲気圧力:20〜50kPa、
の相対的に低温高圧条件で形成すると、この結果形成された蒸着α型Al2O3層は、被覆サーメット工具の硬質被覆層の上部層として、各種の鋼や鋳鉄などの高速切削で、一段とすぐれた耐摩耗性を発揮すること。
(a)上記の従来被覆サーメット工具の硬質被覆層としての蒸着α型Al2O3層は、一般に、通常の化学蒸着装置にて、
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:1〜5%、CO2:1〜10%、HCl:0.3〜3%、H2S:0.02〜0.4%、H2:残り、
反応雰囲気温度:950〜1100℃、
反応雰囲気圧力:3〜13kPa、
の条件(以下、通常条件という)で形成されるが、これの形成を、同じく通常の化学蒸着装置を用い、
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:1〜5%、CO2:1〜10%、HCl:0.3〜3%、H2S:0.02〜0.4%、H2:残り、
反応雰囲気温度:750〜900℃、
反応雰囲気圧力:20〜50kPa、
の相対的に低温高圧条件で形成すると、この結果形成された蒸着α型Al2O3層は、被覆サーメット工具の硬質被覆層の上部層として、各種の鋼や鋳鉄などの高速切削で、一段とすぐれた耐摩耗性を発揮すること。
(b)上記(a)の低温高圧条件形成の蒸着α型Al2O3層と通常条件形成の蒸着α型Al2O3層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、図1(a),(b)に概略説明図で示される通り、上記工具基体表面と平行な表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、45〜90度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフを作成した場合、前記通常条件形成のα型Al2O3層は、図3に例示される通り、(0001)面の測定傾斜角の分布が45〜90度の範囲内で不偏的な傾斜角度数分布グラフを示すのに対して、前記低温高圧条件形成のα型Al2O3層は、、図2に例示される通り、傾斜角区分の特定位置にシャープな最高ピークが現れ、このシャープな最高ピークは、化学蒸着装置における反応雰囲気圧力を変化させることによりグラフ横軸の傾斜角区分に現れる位置が変わること。
(c)試験結果によれば、上記反応雰囲気圧力を上記の通り20〜50kPaの範囲内で変化させると、上記シャープな最高ピークが傾斜角区分の70〜81度の範囲内に現れると共に、前記70〜81度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45〜65%の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示すようになり、この結果の傾斜角度数分布グラフで70〜81度の範囲内に傾斜角区分の最高ピークが現れる蒸着α型Al2O3層を硬質被覆層の上部層として、下部層のTi化合物層と共存した状態で蒸着形成してなる被覆サーメット工具は、上記の従来被覆サーメット工具に比して、特に高速切削で一段とすぐれた耐摩耗性を発揮するようになること。
以上(a)〜(c)に示される研究結果を得たのである。
以上(a)〜(c)に示される研究結果を得たのである。
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、WC基超硬合金またはTiCN基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)下部層が、TiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層、およびTiCNO層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの全体平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層が、1〜15μmの平均層厚を有し、かつ、化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有すると共に、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、上記工具基体表面と平行な表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、45〜90度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、70〜81度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記70〜81度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45〜65%の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示す蒸着α型Al2O3層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる、硬質被覆層が高速切削ですぐれた耐摩耗性を発揮する被覆サーメット工具に特徴を有するものである。
(a)下部層が、TiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層、およびTiCNO層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの全体平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層が、1〜15μmの平均層厚を有し、かつ、化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有すると共に、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、上記工具基体表面と平行な表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、45〜90度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、70〜81度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記70〜81度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45〜65%の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示す蒸着α型Al2O3層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる、硬質被覆層が高速切削ですぐれた耐摩耗性を発揮する被覆サーメット工具に特徴を有するものである。
以下に、この発明の被覆サーメット工具の硬質被覆層の構成層に関し、上記の通りに数値限定した理由を説明する。
(a)下部層のTi化合物層
Ti化合物層は、基本的には蒸着α型Al2O3層の下部層として存在し、自身の具備するすぐれた高温強度によって硬質被覆層が高温強度を具備するようにするほか、工具基体と蒸着α型Al2O3層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する密着性向上に寄与する作用を有するが、その平均層厚が3μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その平均層厚が20μmを越えると、特に高熱発生を伴なう高速切削では熱塑性変形を起し易くなり、これが偏摩耗の原因となることから、その平均層厚を3〜20μmと定めた。
(a)下部層のTi化合物層
Ti化合物層は、基本的には蒸着α型Al2O3層の下部層として存在し、自身の具備するすぐれた高温強度によって硬質被覆層が高温強度を具備するようにするほか、工具基体と蒸着α型Al2O3層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する密着性向上に寄与する作用を有するが、その平均層厚が3μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その平均層厚が20μmを越えると、特に高熱発生を伴なう高速切削では熱塑性変形を起し易くなり、これが偏摩耗の原因となることから、その平均層厚を3〜20μmと定めた。
(b)上部層の蒸着α型Al2O3層
上記の通り、蒸着α型Al2O3層の傾斜角度数分布グラフにおける測定傾斜角の最高ピーク位置は、化学蒸着装置における反応雰囲気圧力を変化させることによって変化するが、この場合試験結果によれば、前記反応雰囲気圧力を20〜50kPa範囲内で変化させると、最高ピークが70〜81度の範囲内の傾斜角区分に現れると共に、前記70〜81度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45〜65%の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示すようになるものであり、したがって、前記反応雰囲気圧力が20kPa未満でも、50kPaを越えても、測定傾斜角の最高ピーク位置は70〜81度の範囲から外れてしまい、このような場合には所望のすぐれた耐摩耗性を発揮することができないものである。
また、その平均層厚が1μm未満では、所望のすぐれた耐摩耗性を十分に発揮させることができず、一方その平均層厚が15μmを越えて厚くなりすぎると、切刃部にチッピング(微少欠け)が発生し易くなることから、その平均層厚を1〜15μmと定めた。
上記の通り、蒸着α型Al2O3層の傾斜角度数分布グラフにおける測定傾斜角の最高ピーク位置は、化学蒸着装置における反応雰囲気圧力を変化させることによって変化するが、この場合試験結果によれば、前記反応雰囲気圧力を20〜50kPa範囲内で変化させると、最高ピークが70〜81度の範囲内の傾斜角区分に現れると共に、前記70〜81度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45〜65%の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示すようになるものであり、したがって、前記反応雰囲気圧力が20kPa未満でも、50kPaを越えても、測定傾斜角の最高ピーク位置は70〜81度の範囲から外れてしまい、このような場合には所望のすぐれた耐摩耗性を発揮することができないものである。
また、その平均層厚が1μm未満では、所望のすぐれた耐摩耗性を十分に発揮させることができず、一方その平均層厚が15μmを越えて厚くなりすぎると、切刃部にチッピング(微少欠け)が発生し易くなることから、その平均層厚を1〜15μmと定めた。
なお、切削工具の使用前後の識別を目的として、黄金色の色調を有するTiN層を、必要に応じて硬質被覆層の最表面層として蒸着形成してもよいが、この場合の平均層厚は0.1〜1μmでよく、これは0.1μm未満では、十分な識別効果が得られず、一方前記TiN層による前記識別効果は1μmまでの平均層厚で十分であるという理由からである。
この発明被覆サーメット工具は、高い発熱を伴なう各種の鋼や鋳鉄などの高速切削でも、硬質被覆層の上部層を構成する蒸着α型Al2O3層が、α型Al2O3自身のもつすぐれた高温硬さと耐熱性に加えて、さらに一段と向上したすぐれた耐摩耗性を発揮することから、使用寿命の一層の延命化を可能とするものである。
つぎに、この発明の被覆サーメット工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr3 C2 粉末、TiN粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、切刃部にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO・CNMG120408に規定するスローアウエイチップ形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A〜Fをそれぞれ製造した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比でTiC/TiN=50/50)粉末、Mo2 C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1.3kPaの窒素雰囲気中、温度:1540℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO規格・CNMG120412のチップ形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体a〜fを形成した。
ついで、これらの工具基体A〜Fおよび工具基体a〜fのそれぞれを、通常の化学蒸着装置に装入し、まず、表3(表3中のl−TiCNは特開平6−8010号公報に記載される縦長成長結晶組織をもつTiCN層の形成条件を示すものであり、これ以外は通常の粒状結晶組織の形成条件を示すものである)に示される条件にて、表4に示される目標層厚のTi化合物層を硬質被覆層の下部層として蒸着形成し、ついで、
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:2.2%、CO2:5%、HCl:2%、H2S:0.15%、H2:残り、
反応雰囲気温度:850℃、
反応雰囲気圧力:20〜50kPaの範囲内の所定の圧力、
の低温高圧条件で表4に示される目標層厚の蒸着α型Al2O3層を硬質被覆層の上部層として蒸着形成することにより本発明被覆サーメット工具1〜13をそれぞれ製造した。
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:2.2%、CO2:5%、HCl:2%、H2S:0.15%、H2:残り、
反応雰囲気温度:850℃、
反応雰囲気圧力:20〜50kPaの範囲内の所定の圧力、
の低温高圧条件で表4に示される目標層厚の蒸着α型Al2O3層を硬質被覆層の上部層として蒸着形成することにより本発明被覆サーメット工具1〜13をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、硬質被覆層の上部層である蒸着α型Al2O3層の形成を、
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:2.2%、CO2:5%、HCl:2%、H2S:0.15%、H2:残り、
反応雰囲気温度:1000℃、
反応雰囲気圧力:3〜13kPaの範囲内の所定の圧力、
の通常条件、すなわち同じ組成の反応ガスを用いるが、化学蒸着装置の反応雰囲気温度を相対的に高く、一方同反応雰囲気圧力は相対的に低くした条件で形成する以外は同一の条件で、表5に示される通りの従来被覆サーメット工具1〜13をそれぞれ製造した。
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:2.2%、CO2:5%、HCl:2%、H2S:0.15%、H2:残り、
反応雰囲気温度:1000℃、
反応雰囲気圧力:3〜13kPaの範囲内の所定の圧力、
の通常条件、すなわち同じ組成の反応ガスを用いるが、化学蒸着装置の反応雰囲気温度を相対的に高く、一方同反応雰囲気圧力は相対的に低くした条件で形成する以外は同一の条件で、表5に示される通りの従来被覆サーメット工具1〜13をそれぞれ製造した。
ついで、上記の本発明被覆サーメット工具と従来被覆サーメット工具の硬質被覆層を構成する蒸着α型Al2O3層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用いて、傾斜角度数分布グラフをそれぞれ作成した。
すなわち、上記傾斜角度数分布グラフは、上記の蒸着α型Al2O3層に、工具基体表面と平行な表面研磨面を形成した状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記表面研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、前記表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に照射して、電子後方散乱回折像装置を用い、30×50μmの領域を0.1μm/stepの間隔で、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、この測定結果に基づいて、前記測定傾斜角のうち、45〜90度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計することにより作成した。
すなわち、上記傾斜角度数分布グラフは、上記の蒸着α型Al2O3層に、工具基体表面と平行な表面研磨面を形成した状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記表面研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、前記表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に照射して、電子後方散乱回折像装置を用い、30×50μmの領域を0.1μm/stepの間隔で、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、この測定結果に基づいて、前記測定傾斜角のうち、45〜90度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計することにより作成した。
この結果得られた各種の蒸着α型Al2O3層の傾斜角度数分布グラフにおいて、表4,5にそれぞれ示される通り、本発明被覆サーメット工具の蒸着α型Al2O3層は、いずれも(0001)面の測定傾斜角の分布が70〜81度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが現れる傾斜角度数分布グラフを示すのに対して、従来被覆サーメット工具の蒸着α型Al2O3層は、いずれも(0001)面の測定傾斜角の分布が45〜90度の範囲内で不偏的で、最高ピークが存在しない傾斜角度数分布グラフを示すものであった。
また表4,5には、上記の各種の蒸着α型Al2O3層の傾斜角度数分布グラフにおいて、70〜81度の範囲内の傾斜角区分に存在する全傾斜角度数の傾斜角度数分布グラフ全体に占める割合を示した。
なお、図2は、本発明被覆サーメット工具1の蒸着α型Al2O3層の傾斜角度数分布グラフ、図3は、従来被覆サーメット工具1の蒸着α型Al2O3層の傾斜角度数分布グラフをそれぞれ示すものである。
また表4,5には、上記の各種の蒸着α型Al2O3層の傾斜角度数分布グラフにおいて、70〜81度の範囲内の傾斜角区分に存在する全傾斜角度数の傾斜角度数分布グラフ全体に占める割合を示した。
なお、図2は、本発明被覆サーメット工具1の蒸着α型Al2O3層の傾斜角度数分布グラフ、図3は、従来被覆サーメット工具1の蒸着α型Al2O3層の傾斜角度数分布グラフをそれぞれ示すものである。
また、この結果得られた本発明被覆サーメット工具1〜13および従来被覆サーメット工具1〜13の硬質被覆層の構成層の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて測定(縦断面測定)したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。
つぎに、上記の本発明被覆サーメット工具1〜13および従来被覆サーメット工具1〜13各種の被覆サーメット工具について、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、
被削材:JIS・SCM440の丸棒、
切削速度:400m/min.、
切り込み:1.0mm、
送り:0.3mm/rev.、
切削時間:5分、
の条件(切削条件Aという)での合金鋼の乾式高速連続切削試験(通常の切削速度は250m/min.)、
被削材:JIS・S35Cの長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:350m/min.、
切り込み:1.5mm、
送り:0.2mm/rev.、
切削時間:5分、
の条件(切削条件Bという)での炭素鋼の乾式高速断続切削試験(通常の切削速度は200m/min.)、さらに、
被削材:JIS・FC250の丸棒、
切削速度:450m/min.、
切り込み:1.0mm、
送り:0.25mm/rev.、
切削時間:5分、
の条件(切削条件Cという)での鋳鉄の乾式高速連続切削試験(通常の切削速度は300m/min.)を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表6に示した。
被削材:JIS・SCM440の丸棒、
切削速度:400m/min.、
切り込み:1.0mm、
送り:0.3mm/rev.、
切削時間:5分、
の条件(切削条件Aという)での合金鋼の乾式高速連続切削試験(通常の切削速度は250m/min.)、
被削材:JIS・S35Cの長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:350m/min.、
切り込み:1.5mm、
送り:0.2mm/rev.、
切削時間:5分、
の条件(切削条件Bという)での炭素鋼の乾式高速断続切削試験(通常の切削速度は200m/min.)、さらに、
被削材:JIS・FC250の丸棒、
切削速度:450m/min.、
切り込み:1.0mm、
送り:0.25mm/rev.、
切削時間:5分、
の条件(切削条件Cという)での鋳鉄の乾式高速連続切削試験(通常の切削速度は300m/min.)を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表6に示した。
表4〜6に示される結果から、本発明被覆サーメット工具1〜13は、いずれも硬質被覆層の上部層である蒸着α型Al2O3層の(0001)面が傾斜角度数分布グラフで70〜81度の範囲内の傾斜角区分で最高ピークを示し、高い発熱を伴なう鋼や鋳鉄の高速切削で、すぐれた耐摩耗性を示すのに対して、硬質被覆層の上部層が、(0001)面の測定傾斜角の分布が45〜90度の範囲内で不偏的で、最高ピークが存在しない傾斜角度数分布グラフを示す蒸着α型Al2O3層で構成された従来被覆サーメット工具1〜13においては、いずれも高速切削では前記蒸着α型Al2O3層の摩耗進行が相対的に速く、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆サーメット工具は、各種鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削や断続切削は勿論のこと、特に高速切削でもすぐれた耐摩耗性を示し、長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮するものであるから、切削装置の高性能化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
Claims (1)
- 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)下部層が、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの全体平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層が、1〜15μmの平均層厚を有し、かつ化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有すると共に、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、上記工具基体表面と平行な表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、45〜90度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、70〜81度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記70〜81度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45〜65%の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示す酸化アルミニウム層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる、硬質被覆層が高速切削ですぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具。
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JP2007296624A (ja) * | 2006-04-04 | 2007-11-15 | Mitsubishi Materials Corp | 硬質被覆層が高速切削ですぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具 |
JP2008006550A (ja) * | 2006-06-29 | 2008-01-17 | Mitsubishi Materials Corp | 硬質被覆層が高速切削ですぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具 |
RU2564645C1 (ru) * | 2014-05-30 | 2015-10-10 | Валерий Константинович Ковальков | Способ упрочнения поверхности режущего инструмента из твердых сплавов на основе карбида вольфрама с кобальтовой связкой |
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2004
- 2004-08-03 JP JP2004226550A patent/JP2006043802A/ja not_active Withdrawn
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