JP2007160464A - 硬質被覆層が高速断続切削ですぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具 - Google Patents

硬質被覆層が高速断続切削ですぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具 Download PDF

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Abstract

【課題】硬質被覆層が高速断続切削ですぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具を提供する。
【解決手段】工具基体の表面に、下部層がTi化合物層、上部層がα型Al23層の硬質被覆層を蒸着形成してなる被覆サーメット工具の前記α型Al23層を、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定して、傾斜角度数分布グラフを作成した場合、30〜45度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記30〜45度の範囲内に存在する度数の合計が度数全体の50%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示す上位層と、75〜90度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記75〜90度の範囲内に存在する度数の合計が度数全体の50%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示す下位層層で構成する。
【選択図】図3

Description

この発明は、特に硬質被覆層の構成層である酸化アルミニウム層(以下、Al23層で示す)を厚膜化した状態で、各種の鋼や鋳鉄などの切削加工を、高速で、かつ機械的衝撃を伴なう断続切削条件で行った場合にも、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を示し、したがってチッピング(微少欠け)などの発生なく、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具(以下、被覆サーメット工具という)に関するものである。
従来、一般に、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットで構成された基体(以下、これらを総称して工具基体という)の表面に、
(a)下部層が、Tiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層、および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層が、通常、1〜12μmの平均層厚、厚膜化した状態も含めると20μm以下の平均層厚を有し、かつ化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有する酸化アルミニウム層(以下、蒸着α型Al23層で示す)、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる被覆サーメット工具が知られており、この被覆サーメット工具が、例えば各種の鋼や鋳鉄などの連続切削や断続切削に用いられることは良く知られている。
また、一般に、上記の被覆サーメット工具の硬質被覆層を構成するTi化合物層や蒸着α型Al23層が粒状結晶組織を有し、さらに、前記Ti化合物層を構成するTiCN層を、層自身の強度向上を目的として、通常の化学蒸着装置にて、反応ガスとして有機炭窒化物を含む混合ガスを使用し、700〜950℃の中温温度域で化学蒸着することにより形成して縦長成長結晶組織をもつようにすることも知られている。
特開平6−31503号公報 特開平6−8010号公報
近年の切削装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、蒸着α型Al23層は最大層厚で20μmの厚膜化を必要とされ、さらに切削加工は一段と高速化する傾向にあるが、上記の従来被覆サーメット工具においては、これを鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削や断続切削に用いた場合には問題はないが、特にこれを高速断続切削条件で用いた場合には、特に硬質被覆層を構成する蒸着α型Al23層の高温硬さおよび高温強度が不十分であるために、摩耗が急速に進行し、かつチッピングも発生し易くなり、さらに前記蒸着α型Al23層の厚膜化によってチッピングは一段と発生し易くなることから、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、上記の蒸着α型Al23層が硬質被覆層の上部層を構成する被覆サーメット工具に着目し、特に前記蒸着α型Al23層の耐チッピング性向上を図るべく研究を行った結果、
(a)上記の従来被覆サーメット工具の硬質被覆層としての蒸着α型Al23層は、一般に、通常の化学蒸着装置にて、
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:1〜5%、CO2:3〜7%、HCl:0.3〜3%、H2S:0.02〜0.4%、H2:残り、
反応雰囲気温度:950〜1100℃、
反応雰囲気圧力:6〜13kPa、
の条件(以下、通常条件という)で形成されるが、この通常条件形成の蒸着α型Al23層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、図1(a),(b)および図2(a),(b)に概略説明図で示される通り、工具基体表面と平行な研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、それぞれ0〜45度および45〜90度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフを作成すると、図5(測定傾斜角:0〜45度)および図6(測定傾斜角:45〜90度)に例示される通り、(0001)面の測定傾斜角の分布が0〜45度および45〜90度のいずれの範囲内でも不偏的な傾斜角度数分布グラフを示すこと。
(b)一方、蒸着α型Al23層を、同じく通常の化学蒸着装置を用い、
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:1〜5%、CO2:3〜7%、HCl:0.3〜3%、H2S:0.02〜0.4%、H2:残り、
反応雰囲気温度:750〜900℃、
反応雰囲気圧力:20〜30kPa、
の相対的に低温高圧条件(反応ガス組成は上記の通常条件と同じ)で形成すると、この結果形成された蒸着α型Al23層は、同じく電界放出型走査電子顕微鏡を用い、図2(a),(b)に示される通り、同じく上記工具基体表面と平行な研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、45〜90度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフで現した場合、図4に例示される通り、傾斜角区分の特定位置にシャープな最高ピークが現れ、試験結果によれば、化学蒸着装置における反応雰囲気温度および圧力を、上記の通り750〜900℃および20〜30kPaの範囲内で変化させると、上記シャープな最高ピークの現れる位置が傾斜角区分の75〜90度の範囲内で変化すると共に、前記75〜90度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の50%以上の割合を占めるようになり、この結果の傾斜角度数分布グラフにおいて75〜90度の範囲内に傾斜角区分の最高ピークが現れる蒸着α型Al23層は、上記の通常条件形成の蒸着α型Al23層に比して、相対的に高い高温硬さを有すること。
(c)さらに、蒸着α型Al23層を、同じく通常の化学蒸着装置を用い、
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:3〜10%、CO2:0.5〜3%、HCl:0.3〜3%、SF:0.01〜0.2%、C:0.01〜0.3%、H2:残り、
反応雰囲気温度:950〜1050℃、
反応雰囲気圧力:20〜30kPa、
の条件、すなわち反応ガス組成を調整して上記の通常条件の反応ガス組成とは異なった反応ガス組成とすると共に、同じく上記の通常条件の反応雰囲気の圧力に比して、相対的に高圧の条件で形成すると、この結果形成された蒸着α型Al23層は、同じく電界放出型走査電子顕微鏡を用い、図1(a),(b)に示される通り、工具基体表面と平行な研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフで現した場合、図3に例示される通り、傾斜角区分の特定位置にシャープな最高ピークが現れ、試験結果によれば、上記の蒸着α型Al23層の形成条件、すなわち上記の反応ガス組成および反応雰囲気条件のうちの少なくともいずれかの条件を、上記の範囲内で変化させると、上記シャープな最高ピークの現れる位置が傾斜角区分の30〜45度の範囲内で変化すると共に、前記30〜45度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の50%以上の割合を占めるようになり、この結果の傾斜角度数分布グラフにおいて30〜45度の範囲内に傾斜角区分の最高ピークが現れる蒸着α型Al23層は、上記の通常条件形成の蒸着α型Al23層に比して、相対的にすぐれた高温強度を有すること。
(d)したがって、下部層がTi化合物層からなる硬質被覆層の上部層である蒸着α型Al23層を、それぞれ2〜18μmの平均層厚(ただし、合計平均層厚は20μm以下)を有する下位層と上位層からなる上下2層構造とし、上記工具基体表面と平行な研磨面の測定で、前記上位層を、30〜45度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記30〜45度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の50%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示し、前記下位層を、75〜90度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記75〜90度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の50%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示す蒸着α型Al23層で構成してなる被覆サーメット工具は、前記蒸着α型Al23層が相対的すぐれた高温硬さと高温強度を具備することから、特に最大層厚で20μmに厚膜化した状態で、高速断続切削条件で切削加工を行っても、上記の硬質被覆層の上部層が、(0001)面の測定傾斜角の分布が0〜45度および45〜90度の範囲内で不偏的な傾斜角度数分布グラフを示す蒸着α型Al23層で構成された従来被覆サーメット工具に比して、硬質被覆層にチッピングの発生なく、一段とすぐれた耐摩耗性を長期に亘って発揮するようになること。
以上(a)〜(d)に示される研究結果を得たのである。
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、工具基体の表面に、
(a)下部層が、TiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層、およびTiCNO層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層が、20μm以下の平均層厚を有する蒸着α型Al23層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる被覆サーメット工具において、
上記蒸着α型Al23層を、それぞれ2〜18μmの平均層厚(ただし、合計平均層厚は20μm以下)を有する下位層と上位層からなる上下2層構造とし、さらに電界放出型走査電子顕微鏡を用い、上記工具基体表面と平行な研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、前記上位層については0〜45度、上記下位層については45〜90度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフで現した場合、
(A)上記蒸着α型Al23層の上位層は、30〜45度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記30〜45度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の50%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示し、
(B)上記蒸着α型Al23層の下位層は、75〜90度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記75〜90度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の50%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示してなる、
硬質被覆層が高速断続切削ですぐれた耐チッピング性を発揮する被覆サーメット工具に特徴を有するものである。
以下に、この発明の被覆サーメット工具の硬質被覆層の構成層に関し、上記の通りに数値限定した理由を説明する。
(a)Ti化合物層(下部層)
Ti化合物層は、基本的には蒸着α型Al23層の下部層として存在し、自身の具備するすぐれた高温強度によって硬質被覆層が高温強度を具備するようにするほか、工具基体と蒸着α型Al23層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する密着性向上に寄与する作用を有するが、その合計平均層厚が3μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その合計平均層厚が20μmを越えると、特に高熱発生を伴なう高速切削では熱塑性変形を起し易くなり、これが偏摩耗の原因となることから、その合計平均層厚を3〜20μmと定めた。
(b)蒸着α型Al23層(上部層)
上記の通り、蒸着α型Al23層の上位層および下位層の傾斜角度数分布グラフにおける測定傾斜角の最高ピーク位置および度数分布割合は、いずれもこれの形成条件を変化させることによって変化するが、試験結果によれば、最高ピーク位置が、前記上位層では30〜45度、前記下位層では75〜90度の範囲内の傾斜角区分に現れると共に、前記30〜45度および75〜90度の範囲内に存在する度数の合計が、いずれの場合も傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の50%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示す場合に、前記上位層および下位層は、それぞれ所望のすぐれた高温強度および高温硬さを具備するようになるものであり、したがって、最高ピーク位置および度数分布割合が前記の条件を満足しない場合には、所望の高温強度および高温硬さを具備しないものとなる。
また、蒸着α型Al23層は、上位層のすぐれた高温強度と下位層のすぐれた高温硬さによってすぐれた高温強度と高温硬さを具備するようになるが、前記上位層および下位層の平均層厚がそれぞれ2μm未満になると、前記2層のそれぞれのもつすぐれた高温強度および高温硬さを確保することができず、また、前記上位層および下位層の平均層厚がそれぞれ18μmを越えると、一方の平均層厚を最低平均層厚である2μmにしても合計平均層厚は20μmを越えてしまい、このように前記上位層および下位層の平均層厚がそれぞれ18μmを越えても、また、前記上位層および下位層の合計平均層厚が20μmを越えても、チッピングが発生し易くなることから、前記上位層および下位層の平均層厚をそれぞれ2〜18μm、合計平均層厚を20μm以下と定めた。
なお、切削工具の使用前後の識別を目的として、黄金色の色調を有するTiN層を、必要に応じて硬質被覆層の最表面層として蒸着形成してもよいが、この場合の平均層厚は0.1〜1μmでよく、これは0.1μm未満では、十分な識別効果が得られず、一方前記TiN層による前記識別効果は1μmまでの平均層厚で十分であるという理由からである。
この発明の被覆サーメット工具は、硬質被覆層の上部層を構成する蒸着α型Al23層の層厚を厚膜化した状態で、各種の鋼や鋳鉄などの切削加工を高速で、かつ機械的衝撃を伴なう断続切削条件で行っても、前記蒸着α型Al23層が、すぐれた高温強度と高温硬さを有することから、硬質被覆層にチッピングの発生なく、すぐれた耐摩耗性を発揮し、使用寿命の一層の延命化を可能とするものである。
つぎに、この発明の被覆サーメット工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr32粉末、TiN粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、切刃部にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO・CNMG120408に規定するスローアウエイチップ形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A〜Fをそれぞれ製造した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比で、TiC/TiN=50/50)粉末、Mo2 C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1.3kPaの窒素雰囲気中、温度:1540℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にチャンファー幅:0.mm、チャンファー角度:20度のホーニング加工を施すことによりISO規格・CNMG120408のチップ形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体a〜fを形成した。
ついで、これらの工具基体A〜Fおよび工具基体a〜fのそれぞれを、通常の化学蒸着装置に装入し、
(a)まず、表3(表3中のl−TiCNは特開平6−8010号公報に記載される縦長成長結晶組織をもつTiCN層の形成条件を示すものであり、これ以外は通常の粒状結晶組織の形成条件を示すものである)に示される条件にて、表4,5に示される目標層厚のTi化合物層を硬質被覆層の下部層として蒸着形成し、
(b)ついで、反応ガス組成:容量%で、AlCl3:2.2%、CO2:5%、HCl:2%、H2S:0.15%、H2:残り、
反応雰囲気温度:850℃、
反応雰囲気圧力:20〜30kPaの範囲内の所定の圧力、
の条件で表4,5に示される目標層厚で、上部層である蒸着α型Al23層の下位層を蒸着形成し、
(c)さらに、反応ガス組成:容量%で、AlCl3:3.5%、CO2:1.5%、HCl:2%、SF:0.1%、C:0.05%、H2:残り、
反応雰囲気温度:1000℃、
反応雰囲気圧力:20〜30kPaの範囲内の所定の圧力、
の条件で同じく表4,5に示される目標層厚で、同じく上部層である蒸着α型Al23層の上位層を蒸着形成することにより本発明被覆サーメット工具1〜13をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、硬質被覆層の上部層である蒸着α型Al23層の形成を、
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:2.2%、CO2:5%、HCl:2%、H2S:0.15%、H2:残り、
反応雰囲気温度:1020℃、
反応雰囲気圧力:6〜13kPaの範囲内の所定の圧力、
の通常条件で、表6,7に示される通りの目標層厚で形成する以外は、上記の本発明被覆サーメット工具1〜13と同一の条件で従来被覆サーメット工具1〜13をそれぞれ製造した。
ついで、上記の本発明被覆サーメット工具1〜13と従来被覆サーメット工具1〜13の硬質被覆層の上部層を構成する蒸着α型Al23層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用いて、傾斜角度数分布グラフをそれぞれ作成した。
すなわち、上記傾斜角度数分布グラフは、上記の本発明被覆サーメット工具1〜13の蒸着α型Al23層の上位層および下位層について、それぞれ工具基体表面と平行な面をそれぞれ研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、それぞれの前記研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に照射して、電子後方散乱回折像装置を用い、30×50μmの領域を0.1μm/stepの間隔で、前記研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、この測定結果に基づいて、前記測定傾斜角のうち、前記上位層については0〜45度、前記下位層については45〜90度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計することにより作成した。
また、従来被覆サーメット工具1〜13の蒸着α型Al23層についても、工具基体表面と平行な面の任意研磨面を同一の条件で観察し、同一な条件で傾斜角度数分布グラフを作成した。
この結果得られた各種の蒸着α型Al23層の傾斜角度数分布グラフにおいて、表4〜7にそれぞれ示される通り、本発明被覆サーメット工具1〜13の蒸着α型Al23層の上位層および下位層は、(0001)面の測定傾斜角の分布が、それぞれ上位層では30〜45度、下位層では75〜90度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが現れる傾斜角度数分布グラフを示すのに対して、従来被覆サーメット工具1〜13の蒸着α型Al23層は、(0001)面の測定傾斜角の分布が0〜45度および45〜90度の範囲内で不偏的で、最高ピークが存在しない傾斜角度数分布グラフを示すものであった。
また表4〜7には、上記の各種の蒸着α型Al23層の傾斜角度数分布グラフにおいて、それぞれ30〜45度および75〜90度の範囲内の傾斜角区分に存在する全傾斜角度数の傾斜角度数分布グラフ全体に占める割合を示した。
なお、図3は、本発明被覆サーメット工具2の蒸着α型Al23層の上位層の傾斜角度数分布グラフ、図4は同下位層の傾斜角度数分布グラフ、図5,6は従来被覆サーメット工具2の蒸着α型Al23層のそれぞれ0〜45度および45〜90度の傾斜角区分を示す傾斜角度数分布グラフである。
また、この結果得られた本発明被覆サーメット工具1〜13および従来被覆サーメット工具1〜13の硬質被覆層の構成層の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて測定(縦断面測定)したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。
つぎに、上記の本発明被覆サーメット工具1〜13および従来被覆サーメット工具1〜13各種の被覆サーメット工具について、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、
被削材:JIS・S35Cの長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:400m/min.、
切り込み:1.5mm、
送り:0.2mm/rev.、
切削時間:5分、
の条件(切削条件Aという)での炭素鋼の湿式断続高速切削試験(通常の切削速度は250m/min.)、
被削材:JIS・SNCM439の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:360m/min.、
切り込み:1mm、
送り:0.25mm/rev.、
切削時間:5分、
の条件(切削条件Bという)での合金鋼の湿式断続高速切削試験(通常の切削速度は180m/min.)、さらに、
被削材:JIS・FC300の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:400m/min.、
切り込み:2.5mm、
送り:0.2mm/rev.、
切削時間:5分、
の条件(切削条件Cという)での鋳鉄の湿式断続高速切削試験(通常の切削速度は300m/min.)を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表8に示した。
Figure 2007160464
Figure 2007160464
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表4〜8に示される結果から、本発明被覆サーメット工具1〜13は、いずれも硬質被覆層の上部層である蒸着α型Al23層の上下2層構造の上位層および下位層のそれぞれが、(0001)面の傾斜角度数分布グラフで前記上位層では3〜4度、同下位層では75〜90度の範囲内の傾斜角区分で最高ピークを示し、すぐれた高温強度と高温硬さを具備するようになることから、前記蒸着α型Al23層の層厚を厚膜化した状態で、鋼や鋳鉄の切削加工を、高速で、かつ機械的衝撃を伴なう断続切削条件で行なっても、チッピングの発生なく、すぐれた耐摩耗性を示すのに対して、硬質被覆層の上部層全体が、(0001)面の測定傾斜角の分布が0〜45度および45〜90度の範囲内で不偏的で、最高ピークが存在しない傾斜角度数分布グラフを示す蒸着α型Al23層で構成された従来被覆サーメット工具1〜13においては、いずれも前記蒸着α型Al23層の高温強度および高温硬さ不足が原因で、高速断続切削条件では硬質被覆層にチッピングが発生し、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆サーメット工具は、各種鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削や断続切削は勿論のこと、特に高速断続切削でもチッピングの発生なく、すぐれた耐摩耗性を示し、長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮するものであるから、切削装置の高性能化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
硬質被覆層を構成する蒸着α型Al23層の上位層における結晶粒の(0001)面を測定する場合の傾斜角の測定範囲を示す概略説明図である。 硬質被覆層を構成する蒸着α型Al23層の下位層における結晶粒の(0001)面を測定する場合の傾斜角の測定範囲を示す概略説明図である。 本発明被覆サーメット工具2の硬質被覆層を構成する蒸着α型Al23層の上位層の(0001)面の傾斜角度数分布グラフである。 本発明被覆サーメット工具2の硬質被覆層を構成する蒸着α型Al23層の下位層の(0001)面の傾斜角度数分布グラフである。 従来被覆サーメット工具2の硬質被覆層を構成する蒸着α型Al23層の0〜45度の傾斜角区分を示す傾斜角度数分布グラフである。 従来被覆サーメット工具2の硬質被覆層を構成する蒸着α型Al23層の45〜90度の傾斜角区分を示す傾斜角度数分布グラフである。

Claims (1)

  1. 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
    (a)下部層が、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
    (b)上部層が、化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有し、かつ20μm以下の平均層厚を有する酸化アルミニウム層、
    以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる表面被覆サーメット製切削工具において、
    上記酸化アルミニウム層を、それぞれ2〜18μmの平均層厚(ただし、合計平均層厚は20μm以下)を有する下位層と上位層からなる上下2層構造とし、さらに電界放出型走査電子顕微鏡を用い、上記工具基体表面と平行な研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、前記上位層については0〜45度、上記下位層については45〜90度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフで現した場合、
    (A)上記酸化アルミニウム層の上位層は、30〜45度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記30〜45度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の50%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示し、
    (B)上記酸化アルミニウム層の下位層は、75〜90度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記75〜90度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の50%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示すこと、
    を特徴とする硬質被覆層が高速断続切削ですぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具。
JP2005359829A 2005-12-14 2005-12-14 硬質被覆層が高速断続切削ですぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具 Withdrawn JP2007160464A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN102441686A (zh) * 2010-09-30 2012-05-09 三菱综合材料株式会社 硬质包覆层发挥优异的耐崩刀性的表面包覆切削工具
JP2014121749A (ja) * 2012-12-20 2014-07-03 Mitsubishi Materials Corp 高速断続切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具

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