JP2007078744A - 保護膜形成用材料およびこれを用いたホトレジストパターン形成方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、レジスト膜の保護膜を形成するのに好適なレジスト保護膜形成用材料およびこれを用いたホトレジストパターン形成方法に関するものである。本発明は、特に、液浸露光(Liquid Immersion Lithography)プロセスに、中でも、リソグラフィー露光光がレジスト膜に到達する経路の少なくとも前記レジスト膜上に空気より屈折率が高くかつ前記レジスト膜よりも屈折率が低い所定厚さの液体(以下、「液浸露光用液体」と記す)を介在させた状態で前記レジスト膜を露光することによってレジストパターンの解像度を向上させる構成の液浸露光プロセスに用いて好適なレジスト保護膜形成用材料、および前記保護膜形成用材料を用いたホトレジストパターン形成方法に関するものである。
半導体デバイス、液晶デバイス等の各種電子デバイスにおける微細構造の製造には、リソグラフィー法が多用されているが、デバイス構造の微細化に伴って、リソグラフィー工程におけるレジストパターンの微細化が要求されている。
現在では、リソグラフィー法により、例えば、最先端の領域では、線幅が90nm程度の微細なレジストパターンを形成することが可能となっているが、今後はさらに微細なパターン形成が要求される。
このような90nmより微細なパターン形成を達成させるためには、露光装置とそれに対応するレジストの開発が第1のポイントとなる。露光装置においては、F2エキシマレーザー、EUV(極端紫外光)、電子線、X線、軟X線等の光源波長の短波長化やレンズの開口数(NA)の増大等が開発ポイントとしては一般的である。
しかしながら、光源波長の短波長化は高額な新たな露光装置が必要となるし、また、高NA化では、解像度と焦点深度幅がトレードオフの関係にあるため、解像度を上げても焦点深度幅が低下するという問題がある。
最近、このような問題を解決可能とするリソグラフィー技術として、液浸露光(リキッドイマージョンリソグラフィー)法という方法が報告されている(例えば、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。この方法は、露光時に、レンズと基板上のレジスト膜との間の少なくとも前記レジスト膜上に所定厚さの純水またはフッ素系不活性液体等の液浸露光用液体を介在させるというものである。この方法では、従来は空気や窒素等の不活性ガスであった露光光路空間を屈折率(n)のより大きい液体、例えば純水等で置換することにより、同じ露光波長の光源を用いてもより短波長の光源を用いた場合や高NAレンズを用いた場合と同様に、高解像性が達成されると同時に焦点深度幅の低下もない。
このような液浸露光を用いれば、現存の装置に実装されているレンズを用いて、低コストで、より高解像性に優れ、かつ焦点深度にも優れるレジストパターンの形成を実現できるため、大変注目されている。
しかしながら、このような液浸露光プロセスを用いたプロセスでは、レジスト膜の上層に、純水またはフッ素系不活性液体等の液浸露光用液体を介在させることから、当然ながら、前記液浸露光用液体による液浸露光中のレジスト膜への変質、およびレジスト膜からの溶出成分による前記液浸露光用液体自体の変質に伴う屈折率変動等が懸念される。
このような液浸露光プロセスであっても、従来のリソグラフィー法において用いられてきた材料系をそのまま転用可能な場合はあるが、レンズとレジスト膜との間に前記液浸露光用液体を介在させるという露光環境の違いから、前記従来のリソグラフィー法とは異なった材料系を使用することが提案されている。
このような中で、上述の、液浸露光中の液浸露光用液体によるレジスト膜への変質、および液浸露光用液体自体の変質に伴う屈折率変動を同時に防止することを目的とした手段として、フッ素含有樹脂を用いた保護膜形成用材料が提案されている(例えば、特許文献1参照)。ところが、このような保護膜形成用材料を用いた場合には、前記目的は達成し得るものの、特殊な洗浄用溶剤や塗布装置が必要であることや、保護膜を除去する工程が増えるなどの歩留まり上の問題が発生する。
さらに、最近ではアルカリに可溶なポリマーを、レジスト上層の保護膜として使用するプロセスが注目されているが(例えば、特許文献2参照)、この種の保護膜形成用材料に対しては、前記液浸露光中の液浸露光用液体によるレジスト膜への変質、および液浸露光用液体自体の変質に伴う屈折率変動を極力抑制し得る特性が必要とされている。また、液浸露光工程では、露光装置先端部分のレンズが、パターン露光を正確に実施するために、保護膜で覆われたレジストの上面をスキャンする。すなわち、レジストを覆っている保護膜に液浸露光用液体を介して接している露光装置のレンズが、保護膜の平面方向に走査移動する。そのため、保護膜の表面特性として、レンズとともに変位する液浸露光用液体を表面から離脱させない特性(スキャン追従性)を有することが必要である。このスキャン追従性が不十分であると、高解像な液浸露光が実現されないことになる。
Journal of Vacuum Science & Technology B(ジャーナルオブバキュームサイエンステクノロジー)(J.Vac.Sci.Technol.B)((発行国)アメリカ)、1999年、第17巻、6号、3306−3309頁
Journal of Vacuum Science & Technology B(ジャーナルオブバキュームサイエンステクノロジー)(J.Vac.Sci.Technol.B)((発行国)アメリカ)、2001年、第19巻、6号、2353−2356頁
Proceedings of SPIE Vol.4691(プロシーディングスオブエスピーアイイ((発行国)アメリカ)2002年、第4691巻、459−465頁
国際公開第2004/074937号パンフレット
特開2005−157259号公報
本発明は、前記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、具体的には、従来のレジスト膜の表面に特定の保護膜を形成することによって、液浸露光中のレジスト膜の変質および液浸露光用液体自体の変質を同時に防止し、液浸露光を用いた高解像性レジストパターンの形成を可能とすることを課題とするものである。
前記課題を解決するために、本発明に係るレジスト保護膜形成用材料は、基板上のホトレジスト膜上に積層される保護膜を形成するための保護膜形成材料であって、下記一般式(I)
で表される構成単位を有するアルカリ可溶性ポリマーを含有してなることを特徴とする。
さらに、本発明にかかるレジストパターン形成方法は、液浸露光プロセスを用いたホトレジストパターン形成方法であって、基板上にホトレジスト膜を設けるホトレジスト形成工程と、前記ホトレジスト膜上に上述のホトレジスト保護膜形成用材料を用いて保護膜を形成する保護膜形成工程と、前記基板の少なくとも前記保護膜上に液浸露光用液体を配置し、次いで、前記液浸露光用液体および前記保護膜を介して、前記ホトレジスト膜を選択的に露光する露光工程と、前記ホトレジスト膜に対して、必要に応じて加熱処理を行った後、アルカリ現像液を用いて前記保護膜と前記ホトレジスト膜とを現像処理し、それによって、前記保護膜を除去すると同時にホトレジストパターンを得る現像工程と、を有することを特徴とする。
本発明にかかる保護膜形成用材料は、レジスト膜の上に直接形成することができ、パターン露光を阻害することはない。そして、本発明の保護膜形成用材料は、水に不溶であるので、「液浸露光の光学的要求を満たし、取り扱いの容易で、かつ環境汚染性がないことから液浸露光用液体として最有力視されている水(純水あるいは脱イオン水)」を実際に液浸露光用液体として使用することを可能にする。換言すれば、扱い容易で、屈折率等の光学的特性も良好で、環境汚染性のない水を液浸露光用液体として用いても、様々な組成のレジスト膜を液浸露光プロセスに供している間、十分に保護し、良好な特性のレジストパターンを得ることを可能にする。また、前記液浸露光用液体として、157nmの露光波長を用いた場合は、露光光の吸収という面からフッ素系媒体が有力視されており、このようなフッ素系溶剤を用いた場合であっても、前記した水と同様に、レジスト膜を液浸露光プロセスに供している間、十分に保護し、良好な特性のレジストパターンを得ることを可能とする。さらに、本発明の保護膜形成用材料から形成される保護膜は、良好なスキャン追従性を発揮するので、微小水滴が残存しディフェクト発生リスクを極力抑制しながら、液浸露光を高精度に行うことが可能になる。
さらに、本発明にかかる保護膜形成材料は、アルカリ(現像液)に可溶であるので、露光が完了し、現像処理を行う段階になっても、形成した保護膜を現像処理前にレジスト膜から除去する必要がない。すなわち、本発明の保護膜形成材料を用いて得られた保護膜は、アルカリ(現像液)に可溶であるので、露光後の現像工程前に保護膜除去工程を設ける必要がなく、レジスト膜のアルカリ現像液による現像処理を、保護膜を残したまま行なうことができ、それによって、保護膜の除去とレジスト膜の現像とが同時に実現できる。したがって、本発明の保護膜形成用材料を用いて行うパターン形成方法は、パターン特性の良好なレジスト膜の形成を、環境汚染性が極めて低く、かつ工程数を低減して効率的に行うことができる。
特に、本発明の保護膜形成材料に用いられるアルカリ可溶性ポリマーは、種々のアルコールに可溶であるため、塗膜性の良好な保護膜形成材料を提供できる。また、本発明の保護膜形成材料に用いて形成される保護膜は、水に不溶で現像液に可溶であり、かつスキャン追従性が良好であり、微小水滴の残存によるディフェクト発生リスクを極力抑制することができ、液浸露光プロセスに用いても、レジストパターンの形状変化をほとんど起こさない。
前記構成の本発明において、液浸露光用液体としては、実質的に純水もしくは脱イオン水からなる水あるいはフッ素系不活性液体を用いることにより液浸露光が可能である。先に説明したように、コスト性、後処理の容易性、環境汚染性の低さなどから考慮して、水がより好適な液浸露光用液体であるが、157nmの露光光を使用する場合には、より露光光の吸収が少ないフッ素系溶剤を用いることが好適である。さらに、本発明のレジスト保護膜形成用材料より形成した保護膜は、緻密であり、液浸露光用液体によるレジスト膜の浸襲を抑制することができ、しかも、スキャン追従性が良好でディフェクトリスクを極力抑制することができる。
本発明において使用可能なレジスト膜は、従来慣用のレジスト組成物を用いて得られたあらゆるレジスト膜が使用可能であり、特に限定して用いる必要はない。この点が本発明の最大の特徴でもある。
また、本発明の保護膜として必須の特性は、前述のように、水に対して実質的な相溶性を持たず、かつアルカリに可溶であることであり、さらには露光光に対して透明で、レジスト膜との間でミキシングを生じず、レジスト膜への密着性がよく、かつ現像液に対する溶解性が良く、成膜した場合にスキャン追従性が良好なことであり、そのような特性を具備する保護膜を形成可能な保護膜材料としては、前記一般式(I)で表される構成単位を有するアルカリ可溶性ポリマーを後述する溶剤に溶解してなる組成物を用いる。
前記一般式(I)において、望ましくは、R2は炭素数1から3のアルキレン鎖であり、R3は水素原子の一部又は全部がフッ素原子に置換された炭素数3から7のフッ素化アルキレン鎖である。
前記一般式(I)で表される構成単位として、具体的には、下記一般式(II)
前記アルカリ可溶性ポリマーは、さらに水酸基、フッ素原子、フルオロアルキル基、およびフッ素化ヒドロキシアルキル基の中から選ばれる少なくとも1種の置換基により置換された環状炭化水素を有する構成単位を含有してもよい。
前記環状炭化水素を有する構成単位としては、下記一般式(IV)
前記一般式(IV)で表される構成単位としては、具体的には、下記化学式(V)
また、前記環状炭化水素を有する構成単位として、さらに、下記一般式(VI)
で表される構成単位を用いることができる。
前記一般式(VI)で表される構成単位としては、具体的には、下記化学式(VII)
前記一般式(I)で表される構成単位の組成モル比が70〜99%であり、前記環状炭化水素を有する構成単位の組成モル比が30〜1%であることが好ましい。
前記一般式(I)で表される構成単位は単独の重合体として用いてもよく、また前記一般式(IV)および(VI)でそれぞれ表される2種の構成単位から選ばれる少なくとも1種の構成単位との共重合体、あるいは前記一般式(IV)および(VI)でそれぞれ表される2種の構成単位から選ばれる少なくとも1種の構成単位からなる重合体との混合ポリマーであっても良い。かかる構成によって、アルカリ可溶性を向上させ、スキャン追従性の向上を図ることができる。
このようなポリマーは、公知の重合法によって、合成できる。また、これら重合体成分の樹脂のGPCによるポリスチレン換算質量平均分子量は、特に限定するものではないが5000〜80000、さらに好ましくは8000〜50000とされる。
前記アルカリ可溶性ポリマーを溶解する溶剤としては、レジスト膜と相溶性を有さず、前記フッ素ポリマーを溶解し得る溶剤であれば、いずれも使用可能である。このような溶剤としては、炭素数1〜10のアルコール系溶剤、炭素数1〜10の部分あるいは全部分フッ素化アルコール溶剤、炭素原子数が4〜15の部分あるいは全部分フッ素化アルキルエーテル溶剤、および炭素原子数が4〜15の部分あるいは全部分フッ素化アルキルエステル溶剤を用いることができる。本発明で用いられる溶剤は、前記溶剤群から選ばれる少なくとも1種の溶剤を含有する。
前記アルコール系溶剤としては、炭素数1〜10のアルコール系溶剤であり、具体的には、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、および2−オクタノール等のアルコール系溶剤が好ましい。
前記アルカリ可溶性ポリマーを溶解する溶剤として、前述のように、さらにフッ素化アルコール溶剤も使用可能である。このようなフッ素化アルコール溶剤も、レジスト膜と相溶性を有さず、前記アルカリ可溶性ポリマーを溶解することができる。前記フッ素化アルコール溶剤としては、該フッ素化アルコール分子中に含まれる水素原子の数よりもフッ素原子の数が多いものが好ましい。
前記フッ素化アルコールの炭素数は、前述のように、1以上10以下であることが好ましい。かかるフッ素原子含有アルコールとしては、具体的には、C4F9CH2CH2OHおよび/またはC3F7CH2OHを好ましくは用いることができる。
炭素原子数が4〜15の部分あるいは全部分フッ素化アルキルエーテル溶剤は、ROR'(R、R'はそれぞれアルキル基を示し、両アルキル基の合計炭素原子数が4〜15であり、その水素原子の一部もしくは全部がフッ素原子により置換されている)である。
このようなフルオロアルキルエーテルの好適例として、下記式(VIII)に示す化合物が例示される。
このようなフルオロアルキルエーテルの好適例として、下記式(VIII)に示す化合物が例示される。
また、前記炭素原子数が4〜15の部分あるいは全部分フッ素化アルキルエステル溶剤は、RCOOR'(R、R'はそれぞれアルキル基を示し、両アルキル基の合計炭素原子数が4〜15であり、その水素原子の一部若しくは全部がフッ素原子により置換されている)である。
このようなフルオロアルキルエステルの好適例として、下記式(IX)、(X)に示す化合物等が例示される。
このようなフルオロアルキルエステルの好適例として、下記式(IX)、(X)に示す化合物等が例示される。
本発明の保護膜形成用材料には、さらに酸性物質を配合してもよく、この酸性物質としては、炭化フッ素化合物を用いることが好ましい。本発明の保護膜形成用材料には、炭化フッ素化合物を添加することによりレジストパターンの形状改善の効果が得られる。
このような炭化フッ素化合物を以下に示すが、これら炭化フッ素化合物は、重要新規利用規則(SNUR)の対象となっておらず、使用可能である。
かかる炭化フッ素化合物としては、下記一般式(201)
(CnF2n+1SO2)2NH・・・・・(201)
(式中、nは1〜5の整数である。)で示される炭化フッ素化合物と、
下記一般式(202)
CmF2m+1COOH・・・・・・(202)
(式中、mは10〜15の整数である。)で示される炭化フッ素化合物と、
下記一般式(203)
(CnF2n+1SO2)2NH・・・・・(201)
(式中、nは1〜5の整数である。)で示される炭化フッ素化合物と、
下記一般式(202)
CmF2m+1COOH・・・・・・(202)
(式中、mは10〜15の整数である。)で示される炭化フッ素化合物と、
下記一般式(203)
前記一般式(201)で示される炭化フッ素化合物としては、具体的には、下記化学式(205)
(C4F9SO2)2NH・・・・・(205)
で表される化合物、または下記化学式(206)
(C3F7SO2)2NH・・・・・(206)
で表される炭化フッ素化合物が好適である。
(C4F9SO2)2NH・・・・・(205)
で表される化合物、または下記化学式(206)
(C3F7SO2)2NH・・・・・(206)
で表される炭化フッ素化合物が好適である。
また、前記一般式(202)で示される炭化フッ素化合物としては、具体的には、下記化学式(207)
C10F21COOH・・・・・(207)
で表される炭化フッ素化合物が好適である。
C10F21COOH・・・・・(207)
で表される炭化フッ素化合物が好適である。
また、前記一般式(203)で示される炭化フッ素化合物としては、具体的には、下記化学式(208)
前記一般式(204)で示される炭化フッ素化合物としては、具体的には、下記化学式(209)
本発明のレジスト保護膜形成用材料は、さらに、ヒドロキシアルキル基および/またはアルコキシアルキル基で置換されたアミノ基および/またはイミノ基を有する含窒素化合物からなる架橋剤を配合してもよい。
前記含窒素化合物としては、メラミン誘導体、グアナミン誘導体、グリコールウリル誘導体、スクシニルアミド誘導体、および尿素誘導体の中から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
具体的には、これらの含窒素化合物は、例えば、前記メラミン系化合物、尿素系化合物、グアナミン系化合物、アセトグアナミン系化合物、ベンゾグアナミン系化合物、グリコールウリル系化合物、スクシニルアミド系化合物、エチレン尿素系化合物等を、沸騰水中にてホルマリンと反応させてメチロール化することにより、あるいはこれらにさらに低級アルコール、具体的にはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等を反応させてアルコキシル化することにより、得ることができる。
このような架橋剤としては、さらに好ましくは、テトラブトキシメチル化グリコールウリルが用いられる。
さらに、前記架橋剤としては、少なくとも1種の水酸基および/またはアルキルオキシ基で置換された炭化水素化合物とモノヒドロキシモノカルボン酸化合物との縮合反応物も好適に用いることができる。
前記モノヒドロキシモノカルボン酸としては、水酸基とカルボキシル基が、同一の炭素原子、または隣接する二つの炭素原子のそれぞれに結合しているものが好ましい。
次に、本発明の保護膜を用いた液浸露光法によるレジストパターン形成方法について説明する。
まず、シリコンウェーハ等の基板上に、慣用のレジスト組成物をスピンナーなどで塗布した後、プレベーク(PAB処理)を行う。なお、基板とレジスト組成物の塗布層との間には、有機系または無機系の反射防止膜を設けた2層積層体とすることもできる。
ここまでの工程は、周知の手法を用いて行うことができる。操作条件等は、使用するレジスト組成物の組成や特性に応じて適宜設定することが好ましい。
次に、上記のようにして硬化されたレジスト膜(単層、複数層)の表面に、例えば、前記化学式(I)と(IV)の構成単位を有するアルカリ可溶性ポリマーをイソブチルアルコールに溶解せしめた保護膜形成材料組成物を均一に塗布した後、硬化させることによってレジスト保護膜を形成する。
このようにして保護膜により覆われたレジスト膜が形成された基板上に、液浸露光用液体(空気の屈折率よりも大きくかつレジスト膜の屈折率よりも小さい屈折率を有する液体:本発明に特化するケースでは純水、脱イオン水、あるいはフッ素系溶剤)を配置する。
この状態の基板のレジスト膜に対して、所望のマスクパターンを介して選択的に露光を行う。したがって、このとき露光光は液浸露光用液体と保護膜とを通過してレジスト膜に到達することになる。
このとき、レジスト膜は保護膜によって、純水などの液浸露光用液体から完全に遮断されており、液浸露光用液体の侵襲を受けて膨潤等の変質を被ることや、逆に液浸露光用液体(純水、脱イオン水、もしくはフッ素系溶剤など)中に成分を溶出させて液浸露光用液体の屈折率等の光学的特性を変質させることを効果的に抑制する。
この場合の露光に用いる波長は、特に限定されず、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー、EUV(極紫外線)、VUV(真空紫外線)、電子線、X線、軟X線などの放射線を用いて行うことができる。それは、主に、レジスト膜の特性によって決定される。
上記のように、本発明のレジストパターン形成方法においては、露光時に、レジスト膜上に、保護膜を介して、空気の屈折率よりも大きくかつ使用されるレジスト膜の屈折率よりも小さい屈折率を有する液浸露光用液体を介在させる。このような液浸露光用液体としては、例えば、水(純水、脱イオン水)、またはフッ素系不活性液体等が挙げられる。該フッ素系不活性液体の具体例としては、C3HCl2F5、C4F9OCH3、C4F9OC2H5、C5H3F7等のフッ素系化合物を主成分とする液体が挙げられる。これらのうち、コスト、安全性、環境問題および汎用性の観点からは、水(純水もしくは脱イオン水)を用いることが好ましいが、157nmの波長の露光光を用いた場合は、露光光の吸収が少ないという観点から、フッ素系溶剤を用いることが好ましい。
また、使用する液浸露光用液体の屈折率としては、「空気の屈折率よりも大きくかつ使用されるレジスト組成物の屈折率よりも小さい」範囲内であれば、特に制限されない。
前記液浸状態での露光工程が完了したら、基板から液浸露光用液体を除去する。
次いで、該レジスト膜に対してPEB(露光後加熱)を行い、続いて、アルカリ性水溶液からなるアルカリ現像液を用いて現像処理する。この現像処理に使用される現像液はアルカリ性であるので、保護膜はレジスト膜の可溶部分と同時に溶解除去される。なお、現像処理に続いてポストベークを行っても良い。続いて、純水等を用いてリンスを行う。この水リンスは、例えば、基板を回転させながら基板表面に水を滴下または噴霧して、基板上の現像液および該現像液によって溶解した保護膜成分とレジスト組成物を洗い流す。そして、乾燥を行うことにより、レジスト膜がマスクパターンに応じた形状にパターニングされた、レジストパターンが得られる。このように本発明では、現像処理により保護膜の除去とレジスト膜の現像とが同時に実現される。なお、本発明のレジスト保護膜形成用材料により形成された保護膜は、撥水性が高められているので、前記露光完了後の液浸露光用液体の離れが良く、そのため、液浸露光用液体の付着量が少なく、いわゆる液浸露光用液体漏れが少なくなる。この撥水性の向上と同時に、本発明の保護膜形成用材料により形成された保護膜はスキャン追従性が向上されている。この点が本発明の保護膜形成用材料の大きな特徴の一つである。
このようにしてレジストパターンを形成することにより、微細な線幅のレジストパターン、特にピッチが小さいライン・アンド・スペース・パターンを良好な解像度により製造することができる。なお、ここで、ライン・アンド・スペース・パターンにおけるピッチとは、パターンの線幅方向における、レジストパターン幅とスペース幅の合計の距離をいう。
以下、本発明の実施例を説明するが、これら実施例は本発明を好適に説明するための例示に過ぎず、なんら本発明を限定するものではない。
(実施例1)
本実施例では、本発明にかかる保護膜形成用材料が、基本特性評価として、(1)アルコール系溶剤に可溶であるか、(2)アルカリ系溶剤に溶かした保護膜形成用材料溶液が基板上に均一にコートできるか、(3)得られた保護膜が純水に耐性があるか、(4)得られた保護膜は現像液に対し溶解性があるかの4種の評価を行った。
本実施例では、本発明にかかる保護膜形成用材料が、基本特性評価として、(1)アルコール系溶剤に可溶であるか、(2)アルカリ系溶剤に溶かした保護膜形成用材料溶液が基板上に均一にコートできるか、(3)得られた保護膜が純水に耐性があるか、(4)得られた保護膜は現像液に対し溶解性があるかの4種の評価を行った。
前記評価(1)については、以下の2種の保護膜形成用材料をイソブタノールに入れて、可溶であるか否かを観察した。
保護膜形成用材料としては、下記化学式(XI)と、(XII)とでそれぞれ表される2種の共重合体を用いた。式中、m、nは各モノマー単位の繰り返し単位数を示すもので、化学式(XI)の試料1としては、m:n=94.7:5.3(モル%)の共重合体を用い、化学式(XII)の試料2としては、m:n=90.9:9.1(モル%)の共重合体を用いた。
前記評価(2)については、前記各保護膜形成用材料の2.8質量%イソブタノール溶液を基板上に1200rpmでスピンコートし、得られた塗膜を90℃で60秒間加熱して硬化させ、硬化膜(保護膜)の表面状態を目視により観察した。
前記評価(3)については、前記硬化膜(保護膜)に純水を120秒間注ぎ、その前後での膜べり(膜厚変化)を比較した。
前記評価(4)については、前記硬化膜(保護膜)をアルカリ現像液(2.38%濃度のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液)にて洗浄し、その時の溶解速度(膜厚換算:nm/秒)を算出した。このアルカリ現像液による溶解速度は、レジスト溶解分析器(Resist Dissolution Analyzer:RDA:リソテック・ジャパン社製)で測定した。
前記評価結果を下記表1に示した。表1から、本発明にかかる保護膜材料の基本特性として、(1)アルコール系溶剤に可溶であり、(2)アルカリ系溶剤に溶かした保護膜形成用材料溶液が基板上に均一にコートでき、(3)得られた保護膜は純水に耐性があり、(4)得られた保護膜は現像液に対して十分なる溶解性があることが確認できる。
より詳しくは、前記化学式(XI)および(XII)で表される共重合体は、4.0質量%の濃度のイソブタノールに容易に溶解される。また、試料1および2のそれぞれの4.0質量%樹脂溶液は、スピンコートにより斑のない均一な膜厚に塗布することができる。また、この均一な塗膜から得られた硬化膜(保護膜)も均一であり、試料1および2の各硬化膜の膜厚は151.0nmおよび136.0nmであった。これら硬化膜(保護膜)に純水を120秒間注いだ後のそれぞれの膜厚は、試料1では151.3nmであり、試料2では136.0nmであり、膜べりはないと判断される状態である。さらに、前記各保護膜のアルカリ現像液による溶解速度は、試料1では60nm/secであり、試料2では200nm/secであり、現像には十分な現像液溶解性を有している。
(実施例2)
有機系反射防止膜組成物「ARC−29A」(商品名、BrewerScience社製)を、スピナーを用いてシリコンウェーハ上に塗布し、ホットプレート上で225℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚77nmの有機系反射防止膜を形成した。そして、この反射防止膜上に、ポジ型レジストである「TArF−P6111ME(東京応化工業社製)」をスピナーを用いて塗布し、ホットプレート上で130℃、90秒間プレベークして、乾燥させることにより、前記反射防止膜上に膜厚225nmのレジスト膜を形成した。
有機系反射防止膜組成物「ARC−29A」(商品名、BrewerScience社製)を、スピナーを用いてシリコンウェーハ上に塗布し、ホットプレート上で225℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚77nmの有機系反射防止膜を形成した。そして、この反射防止膜上に、ポジ型レジストである「TArF−P6111ME(東京応化工業社製)」をスピナーを用いて塗布し、ホットプレート上で130℃、90秒間プレベークして、乾燥させることにより、前記反射防止膜上に膜厚225nmのレジスト膜を形成した。
該レジスト膜上に、前記化学式(XI)および(XII)にそれぞれ示した共重合体(試料1および試料2)をイソブタノールに溶解させ、樹脂濃度を4.0質量%とした保護膜材料を回転塗布し、90℃にて60秒間加熱し、膜厚70.0nmの2種類の保護膜(保護膜AおよびB)を形成した。
次に、マスクパターンを介して、露光装置NSR−S302A(ニコン社製、NA(開口数)=0.60、σ=2/3輪体)により、ArFエキシマレーザー(波長193nm)を用いて、パターン光を照射(露光処理)した。露光処理後基板を回転させながら、保護膜上に23℃にて純水を2分間滴下し続け、擬似液浸環境下においた。
前記純水の滴下工程の後、130℃、90秒間の条件でPEB処理した後、各保護膜を残したまま、23℃にてアルカリ現像液で60秒間現像した。アルカリ現像液としては、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(TMAH)を用いた。この現像工程により各保護膜が完全に除去され、レジスト膜の現像も良好に実現できた。
このようにして得た130nmのライン・アンド・スペースが1:1となるレジストパターンを走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、このパターンプロファイルはいずれも良好なものであり、ゆらぎ等は全く観察されなかった。
(実施例3)
前記実施例2と同様に、有機系反射防止膜組成物「ARC−29A」(商品名、BrewerScience社製)を、スピナーを用いてシリコンウェーハ上に塗布し、ホットプレート上で225℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚77nmの有機系反射防止膜を形成した。そして、この反射防止膜上に、ポジ型レジストである「TArF−P6111ME(東京応化工業社製)」をスピナーを用いて塗布し、ホットプレート上で130℃、90秒間プレベークして、乾燥させることにより、前記反射防止膜上に膜厚150nmのレジスト膜を形成した。
前記実施例2と同様に、有機系反射防止膜組成物「ARC−29A」(商品名、BrewerScience社製)を、スピナーを用いてシリコンウェーハ上に塗布し、ホットプレート上で225℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚77nmの有機系反射防止膜を形成した。そして、この反射防止膜上に、ポジ型レジストである「TArF−P6111ME(東京応化工業社製)」をスピナーを用いて塗布し、ホットプレート上で130℃、90秒間プレベークして、乾燥させることにより、前記反射防止膜上に膜厚150nmのレジスト膜を形成した。
該レジスト膜上に、前記化学式(XI)および(XII)にそれぞれ示した共重合体(試料1および試料2)をそれぞれイソブタノールに溶解させ、樹脂濃度を4.0質量%とした2種類の保護膜形成用材料をそれぞれ回転塗布し、90℃にて60秒間加熱し、膜厚140nmの2種類の保護膜(保護膜AおよびB)を形成した。
次に、液浸露光を液浸露光用実験機LEIES 193−1(ニコン社製)によりを用いて二光束干渉実験を行った。その後、115℃、90秒間の条件でPEB処理し、続いて2.38質量%TMAH水溶液を用いて、23℃にて60秒間現像処理した。この現像工程により各保護膜が完全に除去され、ホトレジスト膜の現像も良好であった。
このようにして得た65nmのライン・アンド・スペース・パターンが1:1となるレジストパターンを走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、いずれも良好な形状のライン・アンド・スペース・パターンが形成できた。
(比較例1)
上記実施例2と同様のポジ型フォトレジストを用いて、保護膜を形成しなかった以外は全く同様の手段で、130nmのライン・アンド・スペースが1:1となるレジストパターンを形成したものの、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、パターンのゆらぎ、膨潤等が発生しパターンは観察できなかった。
上記実施例2と同様のポジ型フォトレジストを用いて、保護膜を形成しなかった以外は全く同様の手段で、130nmのライン・アンド・スペースが1:1となるレジストパターンを形成したものの、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、パターンのゆらぎ、膨潤等が発生しパターンは観察できなかった。
(実施例4)
前記実施例1における試料1および試料2を用いて基板上に150nm厚の硬化膜(保護膜)を形成した。形成された各保護膜の上に液浸露光用液体として純水を滴下し、この液滴に露光装置の接眼レンズを密着させた。この露光装置としては、液浸露光用実験機LEIES 193−1(ニコン社製)を用いた。この状態で接眼レンズを保護膜に対して水平方向にスキャンした。スキャンスピードを徐々に上げていき、保護膜から液滴が外れた時のスキャンスピードをスキャン耐性値として記録した。
前記実施例1における試料1および試料2を用いて基板上に150nm厚の硬化膜(保護膜)を形成した。形成された各保護膜の上に液浸露光用液体として純水を滴下し、この液滴に露光装置の接眼レンズを密着させた。この露光装置としては、液浸露光用実験機LEIES 193−1(ニコン社製)を用いた。この状態で接眼レンズを保護膜に対して水平方向にスキャンした。スキャンスピードを徐々に上げていき、保護膜から液滴が外れた時のスキャンスピードをスキャン耐性値として記録した。
測定の結果、試料1の保護膜では330mm/秒であり、試料2の保護膜では、350mm/秒であった。したがって、試料1の保護膜も、試料2の保護膜も、生産効率的に充分なスキャン追従性を有することが確認できた。
以上説明したように、本発明によれば、慣用のどのようなレジスト組成物を用いてレジスト膜を構成しても、液浸露光工程においていかなる液浸露光用液体を用いても、特に水やフッ素系媒体を用いた場合であっても、感度が高く、レジストパターンプロファイル形状に優れ、かつ焦点深度幅や露光余裕度、引き置き経時安定性が良好である、精度の高いレジストパターンを得ることができる。また、膜質が緻密であり、水を始めとした各種液浸露光用液体を用いた液浸露光中のレジスト膜の変質および液浸露光用液体の変質を同時に防止し、かつ処理工程数の増加をきたすことなく、レジスト膜の引き置き耐性を向上させることができる。また、本発明の保護膜形成用材料によれば、スキャン追従性が良好な保護膜を形成できる。従って、本発明のレジスト保護膜形成用材料を用いれば、液浸露光プロセスによるレジストパターンの形成を効率的に行うことができる。
Claims (14)
- 前記一般式(I)中、R2は炭素数1から3のアルキレン鎖であり、R3は水素原子の一部又は全部がフッ素原子に置換された炭素数3から7のフッ素化アルキレン鎖であることを特徴とする請求項1に記載の保護膜形成用材料。
- 前記アルカリ可溶性ポリマーが、さらに水酸基、フッ素原子、フルオロアルキル基、およびフッ素化ヒドロキシアルキル基の中から選ばれる少なくとも1種の置換基により置換された環状炭化水素を有する構成単位を含有してなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の保護膜形成用材料。
- 前記一般式(I)で表される構成単位のモル比が70〜99%であり、前記環状炭化水素を有する構成単位のモル比が30〜1%であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の保護膜形成用材料。
- さらに、炭素数1〜10のアルコール溶剤、炭素数1〜10の部分あるいは全部分フッ素化アルコール溶剤、炭素原子数が4〜15の部分あるいは全部分フッ素化アルキルエーテル溶剤、および炭素原子数が4〜15の部分あるいは全部分フッ素化アルキルエステル溶剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の溶剤を含有することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の保護膜形成用材料。
- さらに、酸性物質を含むことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の保護膜形成用材料。
- 前記酸性物質が炭化フッ素化合物であることを特徴とする請求項11に記載の保護膜形成用材料。
- さらに、架橋剤を含むことを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の保護膜形成用材料。
- 液浸露光プロセスを用いたホトレジストパターン形成方法であって、基板上にホトレジスト膜を設け、該ホトレジスト膜上に請求項1から13のいずれか1項に記載の保護膜形成用材料を用いて保護膜を形成した後、該基板の少なくとも前記保護膜上に液浸露光用液体を配置し、次いで、前記液浸露光用液体および前記保護膜を介して、前記ホトレジスト膜を選択的に露光し、必要に応じて加熱処理を行った後、アルカリ現像液を用いて前記保護膜と前記ホトレジスト膜とを現像処理することにより、前記保護膜を除去すると同時にホトレジストパターンを得ることを特徴とするホトレジストパターンの形成方法。
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