JP2007055510A - 二輪車用空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 トレッド28の展開幅の60%の領域をトレッド中央部、トレッド中央部のタイヤ幅方向外側をトレッド側部としたときに、トレッド側部に、傾斜溝50を複数形成し、長さが幅の3倍以上とされ、高さhと幅tとの比率t/hが0.6〜2.0となる細長陸部56を区画する。これにより、旋回時に接地する部分の排水性とブロック剛性とを高次元で両立でき、従来よりもウエット路面旋回時に高いグリップ力が得られる。
【選択図】 図2
Description
即ち、タイヤトレッド部に配置した溝は、トレッドと路面によって搾り出された水の逃げ道となり、これらの水を効率的に排水する役目を持つ。
それゆえ、水を効率的に排水できる溝配置と、トレッドの剛性を低下させないような溝配置、そしてデザイン的な良さなどをうまくバランスさせながらタイヤのパターンは決定されている。
雨天のコーナリング時において、ウエット旋回性能が低いタイヤではスピードが出せずにラップタイムを縮めることが出来ない。また、市販車においても、一般道路のウエット旋回性能が低いタイヤはスリップの虞がある。
自動二輪車のタイヤのショルダー側については、前述したように、横力と駆動力に対して、グリップの良いタイヤが必要である。
発明者は、ブロックサンプルを数種類準備し、ブロックの変形を見る実験を行った。図7(A)に示すように、ブロックサンプル100の大きさは、高さ8mm、奥行きの辺30mm、長さ30mmである。このブロックサンプル100は自動二輪車用タイヤに用いられる平均的なトレッドゴムで出来ている。このブロックサンプル100には溝102で区画された陸部104が形成されており、陸部104の高さh、溝幅tの比率t/hが異なる数種類のブロックサンプル100A〜Gを準備した(図7、及び図8参照。)。
このような研究結果から、細長陸部は、t/hを0.6〜2.0とした時に摩擦係数が高い値を示すことが明らかとなり、これが本発明の数値限定の根拠となっている。
細長陸部を区画する溝は、タイヤ周方向に対して角度を有するものであり、いわゆる周方向溝ではない。これは、細長陸部がトレッド側部に設けられ、トレッド側部は車体を傾斜させたときに接地する特徴のためである。車体が傾斜した場合(即ち、二輪車がブレーキを掛けながら旋回を始める挙動、一定の傾斜で旋回を続ける挙動、旋回から加速して車体を直立させていく挙動を含む)を考えると、トレッド側部が接地しており、トレッド側部には横力が主体的に加わるが、横力の他に前後方向の力も加わる場合がある。前輪は旋回に加えて制動を主に担当するため、ブレーキを掛けた場合は横力と制動力の両方が加わる。このとき、トレッド側部に加わる力は斜め方向となり、この方向に沿う形で溝が傾斜されているとグリップを高く保てる。一方、後輪は車体を傾けた状態からアクセルを開けて加速する場合に、横力と駆動力とが同時に加わる。トレッドに加わる力は斜め方向となるため、トレッド側部に配置する細長陸部は傾斜角度を設定した方が好ましい。そのため、請求項2では周方向に対して角度を持たせることを規定した。なお、傾斜角度は90度でも構わないが、この場合は溝がタイヤ幅方向となり、横力に対して非常に強いトレッドとなる。なお、溝と溝との間隔については等間隔としても良いが、陸部が路面を打撃することによって生じる音が等間隔の場合は一定の間隔で生じるため、特定の周波数の騒音レベルが悪化するため、通常は間隔をずらすような工夫(いわゆるピッチバリエーション)がなされる。
次に、請求項3に記載の二輪車用空気入りタイヤの作用を説明する。
細長陸部がタイヤ幅方向に連続して延在していても、その延在長さがトレッド全幅の10%未満では、パターンの中に占める割合はわずかであり、パターンの他の成分によってウエット旋回性能が影響を受けてしまい、本発明の規定による細長陸部の効果が薄れてしまう。なお、細長陸部は、パターンの幅方向全域に渡って延びていても良い。
二輪車においては、前輪には制動と横力が主体的に掛かり、後輪には駆動力と横力が主体的に掛かる。横力が掛かることは前後輪とも同じであるが、前後方向の力は前輪が制動力であり、後輪が駆動力である。
請求項4の作用で説明したように、後輪には駆動力と横力が主体的に掛かる。後輪では、傾斜溝をタイヤ赤道面側がショルダー側よりもタイヤ回転方向に位置するように傾斜させることが、横力と駆動力が同時に掛かったときに、その合力の向きが傾斜溝の傾きに沿う形になり、陸部の変形を抑える上で好ましい。
二輪車は、深いコーナリングを行う場合は、旋回中に大きく車体が傾き、タイヤのトレッド端部付近を用いている。このときは、前後方向の力よりも横方向の力の方が大きくタイヤに作用するので、トレッド端付近の細長陸部は、横方向の力に沿った方向に延びていること、即ち、ショルダー側では、細長陸部の幅方向中心線の角度を50〜90度の範囲内に設定することが好ましい。
なお、細長陸部の幅方向中心線の角度は、タイヤ赤道面の右側と左側とでは対称に設定する方が、右旋回と左旋回とでタイヤの性能が変わらないため好ましい。
(カーカス)
図1に示すように、本実施形態の二輪車用空気入りタイヤ10は、タイヤ赤道面CLに対して交差する方向に延びるコードが埋設された第1のカーカスプライ12及び第2のカーカスプライ14から構成されたカーカス16を備えている。なお、本実施形態の二輪車用空気入りタイヤ10は後輪用であり、タイヤサイズは190/50ZR17である。
第1のカーカスプライ12は、被覆ゴム中に複数本のラジアル方向に延びるコード(ナイロン)を平行に並べて埋設したものであり、本実施形態では、タイヤ赤道面でのタイヤ赤道面に対するコードの角度が80度に設定されている。第2のカーカスプライ14も、被覆ゴム中に複数本のラジアル方向に延びるコード(ナイロン)を平行に並べて埋設したものであり、本実施形態では、タイヤ赤道面でのタイヤ赤道面に対するコードの角度が80度に設定されている。なお、第1のカーカスプライ12のコードと第2のカーカスプライ14のコードとは互いに交差しており、タイヤ赤道面CLに対して互いに反対方向に傾斜している。また、本実施形態では、コードの角度が80度に設定されているが、90度等の他の角度であっても良い。
このカーカス16のタイヤ半径方向外側に主交錯層26が配置されている。
本実施形態の主交錯層26は、第1のベルトプライ26A及び第2のベルトプライ26Bから構成されている。
第1のベルトプライ26Aは、被覆ゴム中に複数本のコード(本実施形態では、芳香族ポリアミド繊維を撚った直径0.7mmのコード。)を平行に並べて打ち込み間隔50本/50mmで埋設したものであり、タイヤ赤道面でのタイヤ赤道面に対するコードの角度が33度に設定されている。第2のベルトプライ26Bも、被覆ゴム中に複数本のコード(本実施形態では、芳香族ポリアミド繊維を撚った直径0.7mmのコード。)を平行に並べて打ち込み間隔50本/50mmで埋設したものであり、タイヤ赤道面でのタイヤ赤道面に対するコードの角度が33度に設定されている。
なお、本実施形態では、主交錯層26を2枚のベルトプライで構成したが、3枚以上のベルトプライで構成しても良い。また、本実施形態では、カーカス16のクラウン部を補強するために主交錯層26を用いているが、近年の高性能用の二輪車用空気入りタイヤの構造に良く見られるスパイラルベルト層を用いても良い。
図2に示すように、トレッド28には、タイヤ赤道面CLの両側に、それぞれ周方向に延びる、溝幅が5mmの周方向主溝40が2本形成されている。さらに、トレッド28には、タイヤ幅方向外側の周方向主溝40からタイヤ幅方向外側に離間した位置からトレッド端28Eに向けて傾斜溝50が形成されている。
本実施形態のトレッド28の展開幅は、240mmである。傾斜溝50は、溝幅が4mmであり、トレッド端28Eからタイヤ赤道面側へ65mmの範囲内に形成されている。傾斜溝50のタイヤ周方向に対する角度は、タイヤ赤道面CLに対して50度である。
トレッド側部において、溝で区切られる細長陸部56の幅は、本実施形態では10mmに設定されている。細長陸部56の幅、及び傾斜溝50の溝幅は、トレッド端28Eからタイヤ赤道面側へ32.5mmの位置で測定したものである。
また、パターンのネガティブ率は、トレッド側部において28.6%である。
次に、本実施形態の二輪車用空気入りタイヤ10の作用を説明する。
本実施形態の二輪車用空気入りタイヤ10は、二輪車の後輪に用いることにより、能力が発揮されるものである。本実施形態の二輪車用空気入りタイヤ10では、傾斜溝50を、タイヤ赤道面側がトレッド端側よりもタイヤ回転方向側(矢印A方向側)となるように傾斜させているので、横力と駆動力が同時に掛かったときに、その合力の向きが傾斜溝の傾きに沿う形になり(即ち、合力の向きが細長陸部56の長手方向に沿った方向に近づく)、細長陸部56の変形が効果的に抑えられる。
なお、細長陸部56の延在長さがトレッド全幅の10%未満では、パターンの中に占める細長陸部56の割合はわずかとなり、パターンの他の成分によってウエット旋回性能が影響を受けてしまい、ウエット路面旋回時のグリップ力が十分に得られなくなる。
なお、上記実施例では、傾斜溝50の傾斜角度が一定であったが、傾斜角度は部位によって異なっていても良い。例えば、二輪車が深いコーナリングを行う場合は、旋回中に大きく車体が傾き、タイヤのトレッド端部付近を用いているが、前後方向の力よりも横方向の力の方が大きくタイヤに作用するので、トレッド端付近の細長陸部56が横方向の力に沿った方向に延びていること、即ち、細長陸部56の幅方向中心線のタイヤ周方向に対する角度を50〜90度の範囲内に設定することが好ましい。
前輪に用いる二輪車用空気入りタイヤには、例えば、第1の実施形態、実施例1〜4のパターンを逆にしたパターンを用いる。前輪に用いる場合、傾斜溝50をショルダー側がタイヤ赤道面側よりもタイヤ回転方向に位置するように傾斜させる。これにより、横力と制動が同時に掛かったときに、その合力の向きが傾斜溝50の傾きに沿う形になり、細長陸部56の変形を効果的に抑えることが出来る。
本発明の性能改善効果を確かめるために、実車を用いたウエット路面での操縦性能比較試験をした結果を以下に説明する。リア用の供試タイヤを用意し、リアのみのタイヤを交換して実車試験を行った。フロントのタイヤは常に従来のもので固定した。
(実施例1のタイヤ)
図2のパターンを有する、前述した実施形態のタイヤである。
図3のパターンを有する。ショルダー側の細長陸部56の幅と傾斜溝50の幅以外は全て実施例1と同じ構成。ネガティブ率も同じに合わせている。細長陸部56の幅tは7.0mm、傾斜溝50の幅は2.8mmである。なお、t/hの平均値は1.17である。より具体的には、トレッド端28Eからタイヤ赤道面側へ65mmの位置で測定した細長陸部56のt/hが1.29、トレッド端28Eからタイヤ赤道面側へ32.5mmの位置で測定した細長陸部56のt/hが1.17、トレッド端28Eの位置で測定した細長陸部56のt/hが1.05となっている。
図4のパターンを有する。ショルダー側の細長陸部56の幅と傾斜溝50の幅以外は全て実施例1と同じ構成。ネガティブ率も同じに合わせている。細長陸部56の幅tは5.0mm、傾斜溝50の幅は2.0mmである。なお、t/hの平均値は0.83である。より具体的には、トレッド端28Eからタイヤ赤道面側へ65mmの位置で測定した細長陸部56のt/hが0.91、トレッド端28Eからタイヤ赤道面側へ32.5mmの位置で測定した細長陸部56のt/hが0.83、トレッド端28Eの位置で測定した細長陸部56のt/hが0.75となっている。
図5のパターンを有する。センター部は実施例1と同じ。トレッド端28Aからセンター近くまで延びる長い傾斜溝50Aと、同じくトレッド端28Aから延びる短い傾斜溝50Bとが交互に形成されている。各傾斜溝の角度は、センター側でタイヤ周方向に対して15度とし、トレッド端側でタイヤ周方向に対して70度としている。ネガティブ率は実施例1と同じに合わせている。また、トレッド端からタイヤ赤道面側へ32.5mmの位置において、各傾斜溝は、溝幅が4mmで、タイヤ周方向に対する角度が40度であり、実施例1と同じである。また、細長陸部56についても、トレッド端28Eからタイヤ赤道面側へ32.5mmの位置の幅が10mmであり、実施例1と同じである。なお、t/hの平均値は1.67である。より具体的には、トレッド端28Eからタイヤ赤道面側へ65mmの位置で測定した細長陸部56のt/hが1.84、トレッド端28Eからタイヤ赤道面側へ32.5mmの位置で測定した細長陸部56のt/hが1.67、トレッド端28Eの位置で測定した細長陸部56のt/hが1.50となっている。
図6のパターンを有する。実施例1と同様のパターンであるが、ショルダー側の細長陸部56の幅は16mm、傾斜溝50の幅は6.4mmである。t/hの平均値は2.67である。より具体的には、トレッド端28Eからタイヤ赤道面側へ65mmの位置で測定した細長陸部56のt/hが2.94、トレッド端28Eからタイヤ赤道面側へ32.5mmの位置で測定した細長陸部56のt/hが2.67、トレッド端28Eの位置で測定した細長陸部56のt/hが2.40となっている。
実施例1と同様のパターンであるが、ショルダー側の細長陸部の幅は3mm、傾斜溝の幅は1.2mmである。t/hの平均値は0.5である。より具体的には、トレッド端28Eからタイヤ赤道面側へ65mmの位置で測定した細長陸部56のt/hが0.45、トレッド端28Eからタイヤ赤道面側へ32.5mmの位置で測定した細長陸部56のt/hが0.50、トレッド端28Eの位置で測定した細長陸部56のt/hが0.55となっている。
実施例1のパターンを逆にしたパターン。
(実施例1)
t/h:1.67
ラップタイム:52秒4
ウエット走行評点:7点
ライダーのコメント:大きく倒すコーナーで非常に安定している。大きく倒した状態からアクセルを開けて加速するときに、しっかりとしたグリップ感を感じられた。
t/h:1.17
ラップタイム:51秒9
ウエット走行評点:8点
ライダーのコメント:基本的には実施例4のパターンと同じ感じがするが、大きく倒した状態からアクセルを開けて加速するときのグリップが実施例1よりも良いように感じた。
t/h:0.83
ラップタイム:51秒4
ウエット走行評点:9点
ライダーのコメント:基本的には実施例1と同じ感じがするが、実施例1よりも全体的にグリップが高い。特に、大きく倒した状態からアクセルを開けて加速するときのグリップが非常に良い。
t/h:1.67
ラップタイム:51秒8
ウエット走行評点:9点
ライダーのコメント:非常にグリップが高い。また、大きく倒した状態からアクセルを開けて加速するときの動作が滑らかに感じる。つまり、常にグリップが安定して発生している安心感がある。
t/h:2.67
ラップタイム:54秒7
ウエット走行評点:4点
ライダーのコメント:グリップが少ない。大きく倒した状態からアクセルを開けて加速するときにタイヤが空転しやすい。車両が不安定になりやすい。
t/h:0.5
ラップタイム:55秒5
ウエット走行評点:2点
ライダーのコメント:タイヤがぐにょぐにょしていて恐くて車体を倒せない。コーナーで確実にタイムをロスする。倒そうとしてもグリップがないため、倒すことができない。
t/h:1.67
ラップタイム:53秒6
ウエット走行評点:6点
ライダーのコメント:大きく倒した状態からアクセルを開けて加速するときに、すべる様な挙動がある。ブレーキング時は少し安定するような気がするが、加速時のタイヤのスライドが大きい。
実施例1〜4の本発明のタイヤは、全て比較例よりも明らかにウエット操縦安定性能が高かった。従来の平均的なパターンは、比較例1のように、t/hが2.5よりも大きいものが殆どであるため、本発明のタイヤが旨く機能したことが確認できた。
28 トレッド
50 傾斜溝
56 陸部
Claims (6)
- トレッドに複数の溝で区画された複数の陸部を有し、複数の前記陸部の内に、長さが幅の3倍以上とされた細長陸部を含む二輪車用空気入りタイヤであって、
タイヤ赤道面を中心として、トレッドの展開幅の60%の領域をトレッド中央部、前記トレッド中央部のタイヤ幅方向外側をトレッド側部としたときに、前記細長陸部の少なくとも一部が前記トレッド側部に配置され、
前記細長陸部の高さをh、前記細長陸部の幅をtとしたときに、前記細長陸部の70%以上の領域においてt/hが0.6〜2.0を満足する、ことを特徴とする二輪車用空気入りタイヤ。 - 前記細長陸部は、タイヤ周方向に間隔をおいて配置されたタイヤ周方向に対して角度を有する溝の間に形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の二輪車用空気入りタイヤ。
- 前記細長陸部は、トレッド全幅の10%以上に渡って連続して延在している、ことを特徴とする請求項2に記載の二輪車用空気入りタイヤ。
- 前記細長陸部は、ショルダー側がタイヤ赤道面側よりもタイヤ回転方向に位置するように傾斜している、ことを特徴とする請求項3に記載の二輪車用空気入りタイヤ。
- 前記細長陸部は、タイヤ赤道面側がショルダー側よりもタイヤ回転方向に位置するように傾斜している、ことを特徴とする請求項3に記載の二輪車用空気入りタイヤ。
- 前記細長陸部の幅方向中心線のタイヤ周方向に対する角度は、タイヤ赤道面側からショルダー側へ向けて大きく設定され、タイヤ赤道面側で10〜30度の範囲内、ショルダー側で50〜90度の範囲内に設定されている、ことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の二輪車用空気入りタイヤ。
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