図1は、本発明の一実施例に係る車両の姿勢制御装置を表す概略構成図、図2は、本実施例の車両の姿勢制御装置におけるセミアクティブサスペンション装置を表す概略断面図、図3は、セミアクティブサスペンション装置におけるピストン部を表す概略断面図、図4は、本実施例のセミアクティブサスペンション装置におけるピストン速度に対する減衰力を表すグラフ、図5は、本実施例の車両の姿勢制御装置における姿勢制御を表すフローチャート、図6は、セミアクティブサスペンション装置における低減衰力時のオイルの流れを表す概略図、図7は、セミアクティブサスペンション装置における中減衰力時のオイルの流れを表す概略図、図8は、セミアクティブサスペンション装置における高減衰力時のオイルの流れを表す概略図、図9は、セミアクティブサスペンション装置における超高減衰力時のオイルの流れを表す概略図である。
本実施例の車両の姿勢制御装置は、車輪ごとに発生する減衰力を調整可能な減衰力調整手段としてのセミアクティブサスペンション装置と、車両のロール剛性を調整可能なロール剛性調整手段としてのアクティブスタビライザ装置を有している。
即ち、本実施例の車両の姿勢制御装置において、図1に示すように、車体11には、従動輪となる左右の前輪12L,12Rと、駆動輪となる左右の後輪13L,13Rを有しており、ステアリングホイール14を操作することで図示しないパワーステアリング装置等を介して操舵輪である前輪12L,12Rを操舵することができる。
この左右の前輪12L,12Rとの間にはアクティブスタビライザ装置15が設けられると共に、左右の後輪13L,13Rとの間にはアクティブスタビライザ装置16が設けられている。前輪12L,12R側のアクティブスタビライザ装置15は、車両の横方向に沿って延在する一対のトーションバー部17L,17Rと、この各トーションバー部17L,17Rに連続する一対のアーム部18L,18Rを有している。この各トーションバー部17L,17Rは、車体11にその軸線回りに回動自在に支持される一方、各アーム部18L,18Rは、先端部が車両前方に屈曲して図示しないサスペンションに連結されている。
そして、アクティブスタビライザ装置15における一対のトーションバー部17L,17Rの間にアクチュエータ19が設けられている。このアクチュエータ19は、必要に応じてトーションバー部17L,17Rを互いに逆方向に回転駆動することで、左右の前輪12L,12Rが互いに逆相にてバウンド及びリバウンドする際に、発生する捩り応力により前輪12L,12Rのバウンド及びリバウンドを抑制することができる。また、このアクチュエータ19によるトーションバー部17L,17Rの回転駆動力を調整することで、発生する捩り応力により前輪12L,12Rのバウンド及びリバウンドを抑制する力を調整し、前輪12L,12Rが位置する部位での車体11に付与するアンチロールモーメントを増減し、前輪側の車体11のロール剛性を可変制御することができる。
一方、後輪13L,13R側のアクティブスタビライザ装置16は、車両の横方向に沿って延在する一対のトーションバー部20L,20Rと、この各トーションバー部20L,20Rに連続する一対のアーム部21L,21Rを有している。この各トーションバー部20L,20Rは、車体11にその軸線回りに回動自在に支持される一方、各アーム部21L,21Rは、先端部が車両前方に屈曲して図示しないサスペンションに連結されている。
そして、アクティブスタビライザ装置16における一対のトーションバー部20L,20Rの間にアクチュエータ22が設けられている。このアクチュエータ22は、必要に応じてトーションバー部20L,20Rを互いに逆方向に回転駆動することで、左右の後輪13L,13Rが互いに逆相にてバウンド及びリバウンドする際に、発生する捩り応力により後輪13L,13Rのバウンド及びリバウンドを抑制することができる。また、このアクチュエータ22によるトーションバー部20L,20Rの回転駆動力を調整することで、発生する捩り応力により後輪13L,13Rのバウンド及びリバウンドを抑制する力を調整し、後輪13L,13Rが位置する部位での車体11に付与するアンチロールモーメントを増減し、後輪側の車体11のロール剛性を可変制御することができる。
従って、アクティブスタビライザ装置15,16では、車両に作用するロールモーメントに対して、アクチュエータ19,22がトーションバー部17L,17R,20L,20Rを回転駆動し、このロールモーメントを打ち消すアンチロールモーメントを発生させることで、ロールモーメントを低減することができる。
また、前輪12L,12Rには、セミアクティブサスペンション装置23L,23Rが設けられる一方、後輪13L,13Rには、セミアクティブサスペンション装置24L,24Rが設けられている。ここで、各セミアクティブサスペンション装置23L,23R,24L,24Rについて説明するが、基本的な構成は全て同様であるため、前輪12Lのセミアクティブサスペンション装置23Lについてのみ説明する。
セミアクティブサスペンション装置23Lにおいて、図2に示すように、シリンダ41とこのシリンダ41内に軸方向に移動自在に支持されたピストンロッド42によりダンパ装置が構成されている。シリンダ41は円筒形状をなし、下端部が前輪12Lの図示しないロアアームにブッシュ44を介して連結されている。ピストンロッド42は、シリンダ41から上方へ進退自在に延出されており、その上端部が図示しないクッション部材を介して固定ねじ45により車体11側のインシュレータ46に連結されている。
シリンダ41内にて、ピストンロッド42の下部にはピストン47が固定されており、このピストン47は、シリンダ41の内周面に対して液密的に接触した状態で軸方向に摺動可能に支持されることで、シリンダ41の内部を上室R1と下室R2とに区画している。各室R1,R2には作動液(オイル)が満たされると共に、ピストン47には上下室R1,R2をオリフィスを用いて連通させる後述するソフト用バルブ48及びハード用バルブ49(図3参照)が設けられている。従って、シリンダ41に対してピストンロッド42が上下動するとき、シリンダ41内をピストン47が移動するのに伴って、各室R1,R2のオイルがソフト用バルブ48及びハード用バルブ49を通して移動することで、減衰力を発生することができる。
また、シリンダ41内にて、ピストン47の下方にはフリーピストン63がシリンダ41の内周面に対して液密的に接触した状態で軸方向に摺動可能に支持されることで、ガス室R3を区画している。このガス室R3には不活性ガスが充填されており、シリンダ41内をピストンロッド42が進退することで発生する体積変化を吸収することができる。
上部ケース50及び下部ケース51と、この上下のケース50,51を気密的に連結する可撓性を有する連結ケース52によりエアばね装置が構成されており、各ケース50,51,52によりシリンダ41及びピストンロッド42の外側に空気室R4を形成している。この空気室R4には、チェック弁53を介して電気的に制御される切換弁54を介して図示しない吸気及び排気装置が接続されており、この切換弁54を切換制御することで、空気室R4内の空気量を調整することができる。
即ち、上部ケース50は円筒形状をなし、上端部がハウジング55の下端部と接合されている。下部ケース51は上部ケース50より小径の円筒形状をなし、下端部に円筒形状の支持リング56が接合されており、この支持リング56はシリンダ41の外周面に気密的に接合されている。連結ケース52は、弾性に富むゴムを主体としたダイヤフラムにより円筒形状に形成されており、一端部が上部ケース50の下端部に気密的に接合される一方、他端部は下部ケース51の上部部に気密的に接合されている。
ハウジング55の内側には、箱型形状をなすアッパサポート57が固定され、内部に弾性部材58が装着される一方、アッパサポート57を貫通するピストンロッド42にはブッシュ59が固結され、弾性部材58内に嵌合している。従って、ピストンロッド42の微小な上下動をこの弾性部材58により減衰して吸収することができる。また、アッパサポート57の下部にはブラケット60を介してバウンドクッション61が固定される一方、このバウンドクッション61に対向するシリンダ41の上端部にはストッパ62が固定されている。バウンドクッション61は、ピストンロッド42に対してシリンダ41が所定のストロークを超えて移動したときに、ストッパ62が当接することで車体11側のバウンドを弾性的に規制するものである。
従って、路面の凹凸により車輪に振動が入ってロアアームが車体11に対して上下動すると、シリンダ41が下部ケース51を介して連結ケース52を撓ませながらピストンロッド42に沿って上下動する。このとき、空気室R4内の容積が増減することで空気圧が増減し、エアばね装置がロアアームの昇降(振動)に対してばね作用を付与すると共に、ピストン47のオリフィスによりダンパ装置がロアアームの昇降(振動)に対して減衰力を付与することができる。
ここで、発生する減衰力を可変とするための上述したピストン47のソフト用バルブ48及びハード用バルブ49について詳細に説明する。図3に示すように、ピストンロッド42の下部には、上支持部材71、ガイド部材72、介在部材73、ピストン47、下支持部材74が順に嵌合し、固定部材75により一体に固定されている。この場合、ピストン47はシリンダ41の内周面に液密的に嵌合して摺動可能であるが、ガイド部材72はシリンダ41の内周面と所定の隙間を有している。そして、ガイド部材72にソフト用バルブ48が設けられる一方、ピストン47にハード用バルブ49が設けられている。
即ち、ガイド部材72には、ピストンロッド42の軸方向に沿って複数の第1連通孔76が形成され、その各端部は板ばねからなるディスクバルブ77,78により開放可能に閉止されている。また、このガイド部材72には、ピストンロッド42の径方向に沿って複数の第2連通孔79が形成され、外端部はシリンダ41内に開放されている。一方、ピストンロッド42には、第2連通孔79に対応して第1連通ポート80が形成されると共に、第1連通孔76に対応して第2、第3連通ポート81,82が形成されている。更に、ピストンロッド42内には、ロータリバルブ83が回動自在に支持されており、このロータリバルブ83は中空形状をなし、ピストンロッド42の第1、第2、第3連通ポート80,81,82に対応してシャッタポート84,85,86が形成されている。そして、ピストンロッド42内には操作ロッド87が配設され、下端部がロータリバルブ83に連結される一方、上端部にロータリアクチュエータ88(図2参照)が装着されている。
従って、ロータリアクチュエータ88により操作ロッド87を介してロータリバルブ83を所定の位置に回動し、ガイド部材72の第1、第2連通孔76,79と、ピストンロッド42の第1、第2、第3連通ポート80,81,82と、ロータリバルブ83のシャッタポート84,85,86とを連通することで、シリンダ41の上室R1と下室R2とを連通し、オイルを流通することができる。
一方、ピストン47には、複数の第1連通孔89及び第2、第3連通孔90,91が形成されると共に、複数の第4連通孔92が形成されており、第2、第3連通孔90,91の下端部が板ばねからなるディスクバルブ93により開放可能に閉止されると共に、第4連通孔92の上端部が板ばねからなるディスクバルブ94により開放可能に閉止されている。この場合、第1連通孔89の一端部はシリンダ41の上室R1に開口し、第2、第3連通孔90,91の一端部はシリンダ41の下室R2に開口可能となっている。一方、ピストンロッド42には、第1、第2、第3連通孔89,90,91の各他端部に対応して第1、第2、第3連通ポート95,96,97が形成されている。更に、ロータリバルブ83には、第1、第2連通ポート95,96を連通させるか、または、第1、第3連通ポート95,97を連通させるシャッタポート98が形成されている。
従って、ロータリアクチュエータ88により操作ロッド87を介してロータリバルブ83を所定の位置に回動し、ピストン47の第1、第2、第3、第4連通孔89,90,91,92と、ピストンロッド42の第1、第2、第3連通ポート95,96,97と、ロータリバルブ83のシャッタポート98とを連通することで、シリンダ41の上室R1と下室R2とを連通し、オイルを流通することができる。
このように構成されたアクティブスタビライザ装置15,16及びセミアクティブサスペンション装置は、車両の走行状態に応じて自動制御されるようになっている。図1に示すように、車両には、発生する横加速度Gyを検出する横加速度センサ25が設けられている。また、車両には、その走行速度(車速)Vを検出する車速センサ26が設けられると共に、操舵角θを検出する操舵角センサ27が設けられている。更に、アクティブスタビライザ装置15,16には、トーションバー部17L,17R,20L,20Rを回転駆動するアクチュエータ19,22の回転角度φf,φrを検出する回転角度センサ28,29が設けられている。また、前輪12L,12R及び後輪13L,13Rには、その回転速度(車輪速)Sfl,Sfr,Srl,Srrを検出する車輪速センサ30L,30R,31L,31Rが設けられている。
電子制御ユニット(ECU)32は、アクティブスタビライザ装置15,16を制御する第1制御装置33と、セミアクティブサスペンション装置23L,23R,24L,24Rを制御する第2制御装置34を有している。そして、上述した各種のセンサ出力は第1制御装置33または第2制御装置34に入力され、且つ、各制御装置33,34間でデータの交換が可能となっている。
従って、第1制御装置33は、横加速度センサ25が検出した横加速度Gyに基づいて車両に作用するロールモーメントを推定し、このロールモーメントが基準値以上であるときには、ロールモーメントを打ち消すアンチロールモーメントを発生させるための各アクティブスタビライザ装置15,16におけるトーションバー部17L,17R,20L,20Rの目標回転角度φft,φrtを演算する。そして、第1制御装置33は、求めた目標回転角度φft,φrtによりアクチュエータ19,22を制御する一方、回転角度センサ28,29が検出した回転角度φf,φrに基づいてフィードバック制御する。
また、第2制御装置34は、車輪速センサ30L,30R,31L,31Rが検出した車輪速Sfl,Sfr,Srl,Srr、操舵角センサ27が検出した操舵角θ、また、図示しないブレーキスイッチ信号、エンジン回転数などに基づいてセミアクティブサスペンション装置23L,23R,24L,24Rにおける減衰係数の目標制御段Ctfl,Ctfr,Ctrl,Ctrrを演算する。そして、第2制御装置34は、求めた制御段Ctfl,Ctfr,Ctrl,Ctrrによりセミアクティブサスペンション装置23L,23R,24L,24Rを制御する一方、図示しないセンサが検出した実際の制御段Cfl,Cfr,Crl,Crrに基づいてフィードバック制御する。
即ち、セミアクティブサスペンション装置23L,23R,24L,24Rは、図4に示すように、減衰力(減衰係数)をソフトとハードとの間で複数段に変更制御可能となっている。つまり、車両の走行状態に応じてソフトとハードとの間で最適な減衰力となるように自動的に制御している。この場合、シリンダ41内のピストン47のピストン速度の上昇に伴って減衰力が増加するようになっている。
以下に、セミアクティブサスペンション装置23L,23R,24L,24Rの低減衰力時(ソフト)と中減衰力時(ソフトとハードの中間)と高減衰力時(ハード)における制御及びオイルの流れについて、図6乃至図8を用いて簡単に説明する。なお、この図6乃至図8にて、伸長時、つまり、各図にてピストンロッド42に対してシリンダ41が下降したときのオイルの流れを実線で示して説明するが、圧縮時、つまり、各図にてピストンロッド42に対してシリンダ41が上昇したときのオイルの流れは点線で示し、詳細な説明は省略する。
セミアクティブサスペンション装置23L,23R,24L,24Rの低減衰力時には、図6に示すように、ロータリアクチュエータ88により操作ロッド87を介してロータリバルブ83を所定の位置に回動し、ガイド部材72の第2連通孔79とピストンロッド42の第1連通ポート80とロータリバルブ83のシャッタポート84を連通する。そのため、伸長時、シリンダ41の上室R1の容積が減少し、上室R1内のオイルが第2連通孔79、第1連通ポート80、シャッタポート84を通ってロータリバルブ83内に入り、下室R2へ流通することとなり、低減衰力を発生することができる。
セミアクティブサスペンション装置23L,23R,24L,24Rの中減衰力時には、図7に示すように、ロータリアクチュエータ88により操作ロッド87を介してロータリバルブ83を所定の位置に回動し、ガイド部材72の第2連通孔79とピストンロッド42の第1連通ポート80とロータリバルブ83のシャッタポート84の連通開度を小さくする。そのため、伸長時、シリンダ41の上室R1の容積が減少し、上室R1内のオイルが第2連通孔79、第1連通ポート80、シャッタポート84を通ってロータリバルブ83内に入りにくくなる。そして、ディスクバルブ77,78によりガイド部材72の第1連通孔76が開放され、上室R1内のオイルが第1連通孔76、第2、第3連通ポート81,82、シャッタポート85,86を通って下室R2へ流通することとなり、中減衰力を発生することができる。なお、ロータリバルブ83により第2連通孔79と第1連通ポート80とシャッタポート84が完全な連通状態であっても、ピストン速度が上昇すると、上室R1内のオイル圧力が急激に高くなるため、ディスクバルブ77,78により第1連通孔76が開放され、上室R1内のオイルが第1連通孔76、第2、第3連通ポート81,82、シャッタポート85,86を通って下室R2へ流通し、中減衰力を発生することができる。
セミアクティブサスペンション装置23L,23R,24L,24Rの高減衰力時には、図8に示すように、ロータリアクチュエータ88により操作ロッド87を介してロータリバルブ83を所定の位置に回動し、ガイド部材72の第2連通孔79とピストンロッド42の第1連通ポート80とロータリバルブ83のシャッタポート84を閉止すると共に、ロータリバルブ83により第1連通孔76と第2、第3連通ポート81,82とシャッタポート85,86を閉止する。また、ロータリバルブ83によりピストン47の第1連通孔89とピストンロッド42の第1連通ポート95とロータリバルブ83のシャッタポート98と第2連通ポート96と第2連通孔90とを連通する。そのため、伸長時、シリンダ41の上室R1の容積が減少し、オイルの圧力が高くなると、ディスクバルブ93によりピストン47の第2連通孔90の下流端が開放され、上室R1内のオイルが第1連通孔89、第1連通ポート95、シャッタポート98、第2連通ポート96、第2連通孔90を通って下室R2へ流通することとなり、高減衰力を発生することができる。
また、本実施例のセミアクティブサスペンション装置23L,23R,24L,24Rにあっては、伸長時に高減衰力時よりも更に高い減衰力を発生させることができるようになっている。これは、アクティブスタビライザ装置15,16の故障などにより十分なロール剛性を確保することができなくなったとき、セミアクティブサスペンション装置23L,23R,24L,24Rによりより高い減衰力を発生させることで、ロールモーメントの増加を抑制し、車高の上昇を抑制して車両の操縦安定性を確保するようにしている。
即ち、セミアクティブサスペンション装置23L,23R,24L,24Rは、図4に示すように、減衰力(減衰係数)をハードより高い超ハードに変更制御可能となっており、ピストン速度が低い場合であっても、高い減衰力が発生するようになっている。具体的には、図3に示すように、ピストン47には、第2連通孔90に対して第3連通孔91が形成されると共に、第2連通ポート96に対して第3連通ポート97が形成され、ロータリバルブ83のシャッタポート98により第1連通ポート95と第2連通ポート96、または、第1連通ポート95と第3連通ポート97を選択的に連通可能となっている。
この場合、第2連通孔90及び第3連通孔91は端部が下室R2に開口可能であるが、第2連通孔90に対して第3連通孔91の方がピストン47の中心側に開口するようになっている。つまり、第2連通孔90及び第3連通孔91の端部を閉止するディスクバルブ93はリング形状をなし、内周側がピストン47に支持され、外周側がピストン47から離間して第2連通孔90及び第3連通孔91の端部を開放可能となっている。そのため、伸長時に、上室R1のオイル圧力が第1連通孔89、第1連通ポート95、シャッタポート98、第2連通ポート96から第2連通孔90または第3連通ポート97から第3連通孔91を通ってディスクバルブ93に作用するとき、第3連通孔91は第2連通孔90よりもディスクバルブ93の内周側にあるため、より大きなオイル圧力が発生しないとディスクバルブ93を開放して下室R2へオイルを流通させることができないようになっている。つまり、第2連通孔90に比べて第3連通孔91の流路抵抗の方が大きくなるように設定されている。
従って、セミアクティブサスペンション装置23L,23R,24L,24Rの超高減衰力時には、図9に示すように、ロータリアクチュエータ88により操作ロッド87を介してロータリバルブ83を所定の位置に回動し、ガイド部材72の第2連通孔79とピストンロッド42の第1連通ポート80とロータリバルブ83のシャッタポート84を閉止すると共に、ロータリバルブ83により第1連通孔76と第2、第3連通ポート81,82とシャッタポート85,86を閉止する。また、ロータリバルブ83によりピストン47の第1連通孔89とピストンロッド42の第1連通ポート95とロータリバルブ83のシャッタポート98と第3連通ポート97と第3連通孔91とを連通する。そのため、伸長時、シリンダ41の上室R1の容積が減少し、オイルの圧力が超高にならないと、ディスクバルブ93によりピストン47の第3連通孔91の下流端を開放することができず、上室R1内のオイルが第1連通孔89、第1連通ポート95、シャッタポート98、第3連通ポート97、第3連通孔91を通って下室R2へ流通しにくくなり、超高減衰力を発生することができる。
そして、ECU32は、アクティブスタビライザ装置15,16の故障などにより車両のロール剛性が低下したときに、セミアクティブサスペンション装置23L,23R,24L,24Rを上述した超ハード(超高減衰力の発生状態)のモードとすることで、伸長時に、より高い減衰力を発生させ、ロールモーメントの増加を抑制し、車高の上昇を抑制することができる。
この場合、ロール剛性低下検出手段としての第1制御装置33は、車両の走行状態に応じて推定された推定横加速度と実際の横加速度との差、または、車両の走行状態に応じて設定された目標ロール角と実際のロール角との差に基づいて、車両のロール剛性が低下したかどうかを判定するようにしている。
以下、本実施例の車両の姿勢制御装置における姿勢制御について、図5のフローチャートに基づいて説明する。図5に示すように、ステップS11にて、各種センサ値の読み込みを行い、ステップS12では、第1制御装置33が、車両の走行状態に応じて推定された推定横加速度Geと横加速度センサ25が検出した実際の横加速度Gyとの偏差の絶対値が予め設定された所定値a以下かどうかを判定する。この場合、車速センサ26が検出した車速Vと操舵角センサ27が検出した操舵角θに基づいて下記数式を用いて推定横加速度Geを算出する。なお、Hはホイールベース、Nは、ステアリングギア比、Khはスタビリティファクタである。
Ge=V2・(θ/N)/{(1+KhV2)H}
そして、このステップS12にて、推定横加速度Geと実際の横加速度Gyとの偏差の絶対値が所定値a以下であると判定されたら、車両のロール剛性は低下していない、つまり、アクティブスタビライザ装置15,16が正常に機能しているものと判定し、ステップS13に移行する。ステップS13では、第1制御装置33が、車両の走行状態に応じて設定された前輪12L,12Rにおける目標回転角度(目標ロール角)φftと回転角度センサ28が検出した回転角度(実際のロール角)φfとの偏差の絶対値が予め設定された所定値b以下かどうかを判定する。そして、このステップS13にて、目標回転角度φftと実際の回転角度φfとの偏差の絶対値が所定値b以下であると判定されたら、車両の前輪側のロール剛性は低下していない、つまり、アクティブスタビライザ装置15が正常に機能しているものと判定し、ステップS14に移行する。
ステップS14では、第1制御装置33が、車両の走行状態に応じて設定された後輪13L,13Rにおける目標回転角度(目標ロール角)φrtと回転角度センサ29が検出した回転角度(実際のロール角)φrとの偏差の絶対値が予め設定された所定値c以下かどうかを判定する。そして、このステップS14にて、目標回転角度φrtと実際の回転角度φrとの偏差の絶対値が所定値c以下であると判定されたら、車両の後輪側のロール剛性は低下していない、つまり、アクティブスタビライザ装置16が正常に機能しているものと判定し、現在の制御状態を維持する。
一方、上述したステップS12にて、推定横加速度Geと実際の横加速度Gyとの偏差の絶対値が所定値aより大きいと判定されたら、車両のロール剛性が低下している、つまり、アクティブスタビライザ装置15,16が正常に機能していないと判定し、ステップS15に移行する。また、ステップS13にて、目標回転角度φftと実際の回転角度φfとの偏差の絶対値が所定値bより大きいと判定されたら、車両の前輪側のロール剛性が低下している、つまり、アクティブスタビライザ装置15が正常に機能していないと判定し、ステップS15に移行する。また、ステップS14にて、目標回転角度φrtと実際の回転角度φrとの偏差の絶対値が所定値cより大きいと判定されたら、車両の後輪側のロール剛性が低下している、つまり、アクティブスタビライザ装置16が正常に機能していないと判定し、ステップS15に移行する。
ステップS12、S13、S14にて、車両のロール剛性が低下している、つまり、アクティブスタビライザ装置15,16が何らかの原因により故障して正常に機能していないと判定されたら、ステップS15にて、セミアクティブサスペンション装置23L,23R,24L,24Rを超ハード(超高減衰力の発生状態)のモードに切換える。すると、伸長時により高い減衰力が発生することとなり、ロールモーメントの増加を抑制し、車高の上昇を抑制することができる。
即ち、走行中の車両が左旋回するとき、車両には右方向の横加速度が作用して右方向へのロールモーメント、つまり、右側の車輪がバンプして左側の車輪がリバウンドする現象が発生する。このとき、アクティブスタビライザ装置15,16が正常に機能していれば、発生したロールモーメントに対してアンチロールモーメントを増加することで、ロールモーメントを低減して車両の傾きを補正して安定した姿勢に制御する。ところが、アクティブスタビライザ装置15,16が正常に機能していない状況では、ロールモーメントを低減することができず、車両が傾いてしまう。そこで、本実施例では、車両に右方向へのロールモーメント、つまり、右側の車輪がバンプして左側の車輪がリバウンドする現象が発生したとき、セミアクティブサスペンション装置23L,23R,24L,24Rを超ハードに切換える。すると、各セミアクティブサスペンション装置23L,23R,24L,24Rにて、伸長時により高い減衰力が発生するため、左側の車輪のリバウンドを抑制することでロールモーメントの増加を抑制し、車両の大きな傾きを補正して車高の上昇を抑制し、安定した姿勢に制御することができる。
このように本実施例の車両の姿勢制御装置にあっては、車輪ごとに発生する減衰力を調整可能な減衰力調整手段としてのセミアクティブサスペンション装置23L,23R,24L,24Rと、車両のロール剛性を調整可能なロール剛性調整手段としてのアクティブスタビライザ装置15,16を設け、アクティブスタビライザ装置15,16の故障などにより車両のロール剛性が低下したときには、セミアクティブサスペンション装置23L,23R,24L,24Rによる伸長側の減衰力を増大させるようにしている。
従って、車両のロール剛性が低下したときに、セミアクティブサスペンション装置23L,23R,24L,24Rの減衰力を増大させることで、車両に作用するロールモーメントに対する減衰力が増大してロールモーメントの増加が抑制されることとなり、車両の傾きを補正して車高の上昇を抑制することができ、その結果、車両の操縦安定性を向上して乗心地を良好とすることができる。
また、本実施例の車両の姿勢制御装置では、車両の走行状態に応じて設定された目標回転角度φft,φrtと回転角度センサ28,29が検出した実際の回転角度φf,φrとの偏差に応じてロール剛性の低下を判定するようにしており、簡単な構成で確実にロール剛性の低下、つまり、アクティブスタビライザ装置15,16の故障を検出することができる。
また、本実施例の車両の姿勢制御装置では、セミアクティブサスペンション装置23L,23R,24L,24Rを、車輪側に連結されたシリンダ41内にピストン47を移動自在に設け、下端部がピストン47に連結されたピストンロッド42の上端部を車体側に連結し、ピストン47によりシリンダ41内を上室R1と下室R2に区画し、ピストン47に圧力に応じて上室R1と下室R2との間でオイルを流通可能なソフト用バルブ48及びハード用バルブ49を設け、車両の走行状態に応じてロータリバルブ83を操作してソフト用バルブ83及びハード用バルブ49を開閉可能とし、ロール剛性が低下したときに、ロータリバルブ48によりソフト用バルブ48を閉止する一方、ハード用バルブ49の流路抵抗を増大させるようにしている。従って、既存の装置を変更するだけで、簡単に超高減衰力を発生する超高ハードモードを構成することができる。
そして、このハード用バルブ49にて、ピストン47に、上室R1に連通する第1連通孔89と、下室R2に連通する第2連通孔90と第3連通孔91とを設け、第2連通孔90に対して第3連通孔91の流路抵抗を大きく設定し、ロータリバルブ83により第1連通孔89と第2連通孔90、第1連通孔89と第3連通孔91とを選択的に切換えて連通可能としている。従って、必要時に、ロータリバルブ83により第1連通孔89と第3連通孔91を連通することで、上室R1のオイルが下室R2へ流通しにくくなり、容易に、且つ、迅速に超高減衰力を発生することができる。
なお、上述した実施例では、アクティブスタビライザ装置15,16の故障により車両のロール剛性が低下していると判定されたとき、セミアクティブサスペンション装置23L,23R,24L,24Rを超ハードに切換え、伸長時に高い減衰力が発生するようにしたが、合わせて圧縮時に高い減衰力が発生するように構成してもよい。即ち、車両に右方向へのロールモーメント、つまり、右側の車輪がバンプして左側の車輪がリバウンドする現象が発生したとき、セミアクティブサスペンション装置23L,23R,24L,24Rにて、伸長時及び圧縮時により高い減衰力を発生させることで、左側の車輪のリバウンドを抑制することができると共に、右側の車輪のバンプを抑制することができ、ロールモーメントの増加を更に抑制し、車両をより安定した姿勢に制御することができる。
また、上述した実施例では、車両の走行状態に応じて推定された推定横加速度Geと横加速度センサ25が検出した実際の横加速度Gyとの偏差の絶対値に応じてロール剛性の低下を判定すると共に、車両の走行状態に応じて設定された目標回転角度φft,φrtと回転角度センサ28,29が検出した回転角度φf,φrとの偏差の絶対値に応じてロール剛性の低下を判定するようにしたが、判定はいずれか一方だけであっても良く、また、車両のロール角や傾斜角などを直接検出して判定するようにしてもよい。
また、上述した実施例では、ロール剛性調整手段としてのアクティブスタビライザ装置を、一対のトーションバー部と一対のアーム部とアクチュエータにより構成したが、この構成に限定されるものではなく、車両のロール剛性を調整可能な構造であれば、いずれのものであってもよい。更に、減衰力調整手段としてセミアクティブサスペンション装置を、ダンパ装置とエアばね装置からなるものとしたが、この構成に限定されるものではなく、車輪ごとに発生する減衰力を調整可能な構造であれば、いずれのものであってもよい。