JP2007002837A - エンスト防止装置及び内燃機関の制御装置 - Google Patents

エンスト防止装置及び内燃機関の制御装置 Download PDF

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Takashi Matsumoto
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文悟 川口
Akira Kenjo
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Abstract

【課題】過給器及び該過給器の過給圧を上昇させるためのモータを備える内燃機関において効果的にエンストを防止する。また、内燃機関の総合的な性能を向上させる。
【解決手段】ECU100は燃料噴射処理と並行してエンスト防止処理を行う。エンスト防止処理において、ECU100は、エンジン200の機関回転数Neが閾値回転数A未満となった場合に、MAT206のモータを作動させ、過給圧の上昇をアシストする。モータのアシストによって実過給圧Prが上昇するのに伴い、スモークなどの被除去物質の発生限界として規定される噴射量の上限値Qfが上昇し、噴射可能な燃料量も増加する。従って、低回転領域において、低速トルクを確保し得る燃料の噴射が可能となってエンストの発生が防止される。また、ECU100は、MAT206を過渡的な期間以外の期間にも作動させ、過給圧を可能な限り上昇させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えばモータなどの駆動手段によって過給器をアシストする機能を備えた内燃機関においてエンスト(Engine Stole)を防止するためのエンスト防止装置及び係る内燃機関の総合的な性能を向上させ得る内燃機関の制御装置の技術分野に関する。
この種の内燃機関において、実空燃比を目標空燃比に制御するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された内燃機関制御装置(以下、「従来の技術」と称する)によれば、実空燃比が目標空燃比となるように電動機の制御量を決定することによって、実空燃比を目標空燃比に制御することが可能であるとされている。
尚、アクセルペダルの踏み込み量に応じて内燃機関の必要とするブースト圧を求めると共に、このブースト圧に対応して適切な燃料供給量を計算し、吸気の過給動作や燃料流量を補正することによって所要する出力を得る技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2003−322038号公報 特許第2782711号公報
内燃機関の機関回転数が低下し過ぎるとエンストが発生することがある。この場合、機関回転数の低下に伴って燃料の噴射量を増量すれば、エンストは回避し得る。ところが、燃料の噴射量には吸入空気量に応じて定まる上限があるため、場合によっては、エンストを回避するのに足る燃料を噴射することができなくなる可能性がある。一方で、上限を超えて燃料を噴射した場合には、吸入空気量とのミスマッチが生じて、スモークの発生や空燃比のリッチ化が進行してしまう。即ち、従来の技術には、効果的にエンストを防止することが困難であるという技術的問題点がある。
他方、このような噴射量の上限に起因する問題は、機関回転数が特に低い領域になくても発生し得る。例えば、吸気量不足によるスモークの増加や逆に要求出力が出力されないと言った実践上解決し難い問題が発生し得る。即ち、従来の技術には、動力性能の向上或いはエミッションの低減と言った内燃機関に要求される事項が十分に満たされないという技術的な問題点がある。
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、効果的にエンストを防止し得るエンスト防止装置を提供することを課題とする。また、内燃機関の総合的な性能を向上させ得る内燃機関の制御装置を提供することを課題とする。
上述した課題を解決するため、本発明に係るエンスト防止装置は、過給器及び該過給器の過給圧を上昇させるための駆動手段を備える内燃機関においてエンストを防止するためのエンスト防止装置であって、燃料の噴射量を、(i)前記過給圧が上昇するのに伴って増加するように設定される上限値以下の範囲で前記内燃機関の機関回転数が低下するのに応じて上昇するように又は(ii)前記内燃機関の空燃比が所定範囲に収まるように決定する噴射量決定手段と、前記燃料が前記決定された噴射量噴射されるように所定の噴射手段を制御する噴射制御手段と、前記内燃機関の機関回転数が所定値未満である場合に前記過給圧が上昇するように前記駆動手段を制御する駆動制御手段とを具備することを特徴とする。
本発明における「内燃機関」とは、燃料の燃焼を動力に変換する機関を包括する概念であり、例えば、ガソリン又は軽油などを燃料とする車両用のエンジンなどを指す。
本発明に係る内燃機関には、過給器及び駆動手段が備わる。ここで、本発明に係る「過給器」とは、内燃機関の排気ガスを利用して動作する機関であって、自然吸入空気量(即ち、大気圧によって規定される吸気量)以上に空気を吸入させることが可能な機構を包括する概念であり、例えば、排気ガスを利用してタービン及びコンプレッサを動作させる、所謂ターボチャージャーなどを指す。尚、内燃機関には、係る過給器の過給性能を向上させるための各種機構が更に備わっていてもよい。例えば、このような機構として、過給された吸入空気を冷却することによって吸入効率を向上させるインタークーラが備わっていてもよい。
本発明に係る駆動手段とは、過給器の過給圧を上昇させる(過給器をアシストする)ことが可能な手段を包括する概念であり、例えば、モータなどの電動機であってもよい。駆動手段がモータなどの電動機である場合には、例えば、バッテリなどの電力供給手段から供給される電力を動力に変換して、過給器におけるタービンなどの過給部材の回転を補助してもよい。また、駆動手段がモータなどの電動機である場合、過給器及びモータが一体となって、所謂MAT(Motor Assist Turbo)と称される機構が構成されてもよい。
尚、駆動手段の態様は、過給器の過給圧を上昇させることが可能な限りにおいて何ら限定されない。例えば、電動機としての機能の他に、例えば、過給圧が余剰である場合に係る余剰な過給圧を利用してバッテリなどの電源を充電するジェネレータ(発電機)としての機能を有していてもよい。或いは、このようなモータなどの電動機とは異なる形態を有していてもよい。
本発明に係るエンスト防止装置によれば、その動作時には、噴射量決定手段によって燃料の噴射量が決定される。
ここで、噴射量決定のプロセスは、内燃機関の種類に応じて二通りに区分される。即ち、燃料の噴射量は、(i)過給圧が上昇するのに伴って増加するように設定される上限値以下の範囲で内燃機関の機関回転数が低下するのに応じて上昇するように決定されるか又は(ii)内燃機関の空燃比が所定範囲に収まるように決定される。
ここで、(i)の場合とは、主としてディーゼルエンジンなどの圧縮自着火式内燃機関に対応しており、機関回転数の減少に応じて噴射量を増量し燃焼を安定させる、所謂ガバナ制御が実行される。但し、噴射量を単に増量すると、スモーク(黒鉛)など触媒装置で除去されるべき被除去物質が生成されかねないため、この種の制御においては上限値(噴射量制限ガードとも称される)が設定される。過給圧が上昇した場合には、必然的に吸入空気量も増えるから、係る上限値(噴射量制限ガード)は相応に上昇する。尚、上限値は、被除去物質の発生限界又はそれに類する限界量として、例えば、予め然るべき記憶手段などに過給圧及び機関回転数などに対応付けられる形で記憶されていてもよいし、その場合にはその都度何らかのアルゴリズムに基づいて対応する値が導き出されてもよい。
一方で、(ii)の場合とは、A/F(空燃比)フィードバック制御に基づいて噴射量制御が実行される、例えばガソリンエンジンなどの内燃機関に対応しており、噴射量は、空燃比が所定範囲に収まるように、吸入空気量によって一意に規定される。尚、所定の範囲とは、例えば、理論空燃比(14.7付近)或いはその近傍の固定値であってもよいし、燃焼が好適に実行されるように予め或いは適宜定められる適当な範囲であってもよい趣旨である。この場合、過給圧の上昇に伴って吸入空気量が増加することによって、空燃比を維持するための噴射量も必然的に増加するから、結果的には上限値が上昇したのと同様の事態が生じる。即ち、(i)及び(ii)いずれの場合であっても、概念的には、過給圧が上昇することによって、噴射できる燃料の上限が高くなる。
噴射制御手段は、このような各種態様の下に決定された噴射量の燃料が噴射されるように所定の噴射手段を制御する。
ここで、「所定の噴射手段」とは、例えば、インジェクタなどの圧電噴射手段であり、この場合、噴射手段の制御態様とは、例えば、圧電素子に印加する電圧のデューティ比を制御するようなものであってもよい。また、ディーゼルエンジンなど、燃焼室内が比較的高温且つ高圧である場合には、コモンレールと称されるような、燃料を高圧に保持する機構が備わっていてもよい。
ここで特に、内燃機関の機関回転数が低下した場合、内燃機関にエンストが発生する可能性が高くなる。これを回避するには、燃料の噴射量を増加させて、低速トルクを確保する必要がある。
既に述べたように、噴射量決定手段における(i)の態様では、機関回転数の低下に伴って噴射量を増量させることが可能である。ところが、機関回転数が低下している低回転領域では、元々過給器の過給圧が低いから、前述した上限値は相対的に低い値となっている。従って、機関回転数の低下に伴って燃料の噴射量を増量しようとしても、噴射量が上限値によって制限され、エンストを回避し得る程度まで増量できない場合が生じ得る。従って、エンストを防止することが難しい。このような噴射量制限ガードを無視して噴射量を強制的に増量した場合には、スモークなどの被除去物質が増加して環境性能が悪化する。
一方、噴射量制御手段の他方の態様では、元々空燃比フィードバックに基づいた噴射量制御であるが故に、機関回転数が低下したからと言って噴射量を増量することは制御的に難しい。空燃比を無視して噴射量を増量しても、空燃比が理論空燃比から大きく乖離して、被除去物質の増加を招きかねない或いはそれ自体が原因でエンストを起こしかねない。
そこで、本発明に係るエンスト防止装置は、駆動制御手段を備えることによって係る問題を解決している。即ち、駆動制御手段は、機関回転数が所定値未満である場合に、過給圧が上昇するように駆動手段を制御する。ここで、「上昇するように」とは、現時点の過給圧よりも上昇する限りにおいて、過給圧を厳密な数値として規定しない趣旨である。このような駆動制御は、例えば、駆動手段をデューティ制御している場合には、デューティ比を制御することによって実現されてもよい。尚、内燃機関のエンストに繋がるような過渡期には、通常、駆動手段は最大アシスト量(最大出力)で過給器をアシストする。但し、駆動手段の出力はその時点における内燃機関の状況に応じて適宜決定されてよい。
過給圧が上昇すると、噴射量決定手段における(i)の態様では、過給圧に応じてダイレクトに噴射量制限ガードが上昇して、燃料の噴射量を増量することが可能となる。噴射量決定手段における(ii)の態様では、過給圧の上昇に伴って吸入空気量が増え、空燃比フィードバックに従って噴射量が必然的に上昇する。いずれにしても、燃料の噴射量が増量されるため、低速トルクが向上し、エンストの可能性が低減される。即ち、エンストを防止することが可能となるのである。
尚、機関回転数の閾値として設定される「所定値」とは、エンスト発生以前の回転領域である限りにおいて何ら限定されないが、好適には、内燃機関の正常範囲の動作を妨げないように、予め実験的に、経験的に、或いはシミュレーションなどに基づいて限定された回転数領域に設定されていてもよい。
本発明に係るエンスト防止装置の一の態様では、前記駆動手段はモータである。
駆動手段がモータである場合には、過給器の過給圧を比較的簡便に上昇させることが可能であるため好適である。
本発明に係るエンスト防止装置の一の態様では、前記所定値は、前記内燃機関のアイドル回転数未満の値に設定される。
ここで、「アイドル回転数」とは、内燃機関の始動時や車両の停止時などにおける無負荷に近い定常状態での回転数を包括する概念である。尚、アイドル回転数は、ある程度の帯域として規定されていてもよい。例えば、アイドル回転数とは概ね500〜600rpm程度の値に設定されていてもよい。この場合、駆動手段によるアシストを開始する回転数は、このようなアイドル回転数に対し一定割合を減じた、或いは所定値を減じた値に設定されていてもよい。
エンスト防止のためのアシストを開始する回転数を必要以上に高く設定すると、係るアイドル回転が不安定となって、返って燃焼が不安定になり易い。また、駆動手段がバッテリなどの電力供給手段を利用したものである場合には、限られた電力を有効に使用する必要がある。この態様によれば、アイドル回転数未満の値まで機関回転数が低下した場合に駆動手段によるアシストが開始されるため、効率的且つ効果的である。
本発明に係るエンスト防止装置の他の態様では、前記内燃機関の燃焼状態が安定しているか否かを判別する判別手段を更に具備し、前記駆動制御手段は、前記燃焼状態が安定していないと判別された場合に前記過給圧が上昇するように前記駆動手段を更に制御する。
内燃機関を取り巻く環境が変化した場合、例えば外気温や吸気温などが変化した場合、内燃機関の燃焼状態は不安定となり易い。このような不安定な燃焼状態においては、エンストが起こる可能性が高くなる。
この態様によれば、判別手段によって燃焼状態が安定しているか否かが判別されると共に、燃焼状態が安定していないと判別された場合に駆動手段によるアシストが開始される。この場合、機関回転数は必ずしも低下の傾向とは限らないから、噴射量の増量制御が実行されるか否かは確定しないが、過給圧が上昇することによって、吸入空気量が増加し、またシリンダ内部の圧縮端温度が上昇するため、エンストに繋がる可能性は減じられる。即ち、エンストを防止することが可能となる。
尚、判別手段の態様は、燃焼状態が安定しているか否かを判別することが可能である限りにおいて、何ら限定されない。また、係る判別の判断基準が、予め実験的に、経験的に、或いはシミュレーションなどに基づいて決定されていてもよい。
尚、この態様では、前記判別手段は、前記機関回転数の変化速度に基づいて前記燃焼状態が安定しているか否かを判別してもよい。
機関回転数の変化速度とは、単位時間当たりの変化量であり、機関回転数の検出タイミングが予め判明しているならば、機関回転数の変化量と対応する値である。また、この変化速度は、正負いずれも方向を含む概念である。例えば、燃焼が不安定である場合には、急激な回転数変化が生じることがある。急激な回転数変化は即ち変化速度が大きいことと等価であり、このように変化速度に基づいて燃焼状態が安定しているか否かを好適に判別可能となる。尚、判別に際しての閾値となる変化速度は、内燃機関の燃焼が不安定である或いは安定であることを判別することが可能である限りにおいて何ら限定されず、予め実験的に、経験的に、或いはシミュレーションなどに基づいて設定されていてもよい。
本発明に係るエンスト防止装置の他の態様では、前記内燃機関は、(i)前記過給器へ供給される排気ガスの流路径を変化させることによって前記過給圧を変化させる過給圧可変手段及び(ii)前記過給器へ供給される排気ガスを除く排気ガスの少なくとも一部を吸気系に循環する排気ガス循環手段を更に具備し、前記エンスト防止装置は、前記機関回転数が所定値未満である場合に(i)前記過給圧が維持されるように又は(ii)前記過給圧が低下するように前記過給圧可変手段を制御する過給圧制御手段を更に具備する。
ここで、排気ガス循環手段とは、排気ガスを分岐してその一部を吸気系、例えば、吸気マニホールドに戻し、燃焼に再利用することによって、排気温度を上昇させ、NOx排出量の低下及びノッキングの発生防止を可能とする機構を包括する概念であり、例えば、EGR(Exhaust Gas Recirculation::排気ガス再循環)システムであってもよい。
過給圧可変手段とは、過給器へ供給される排気ガスの流路径を変化させることによって過給圧を変化させることが可能な手段を包括する概念であり、例えば、VN(Variable Nozzle:可変ノズル)機構と称されるシステムであってもよい。ノズル経が絞られれば、過給器の過給圧が相対的に上昇し、ノズル経が開放されれば過給圧は相対的に低下する。
ところが、可変ノズルの開度(流路径)を絞ることによって過給圧を上昇させようとした場合、排気マニホールド内の背圧が上昇し、内燃機関の排気能力が低下して燃費が低下する。また、この背圧の上昇に伴って、排気ガス循環手段によって吸気系に戻されるガスが相対的に増えることになり、シリンダ内から相対的に新気(大気)が減るため、スモークが増加或いはエンストが発生し易くなる。排気ガス循環手段に、バルブなどの流量制限手段が付設され、吸気系に循環される排気ガスの量が制御可能となっていたとしても、過渡期では制御信号の遅延によって、スモークなどを発生させるのに十分な排気ガスがシリンダ内に取り込まれてしまう。
そこで、本発明に係るエンスト防止装置は、過給圧制御手段を備えることによってこの問題点を解決している。即ち、過給圧制御手段は、機関回転数が所定値未満である場合に、過給圧が維持されるように又は過給圧が低下するように過給圧可変手段を制御する。
ここで、過給圧が維持される場合には、前述した如く駆動手段によるアシストが実行され、過給圧が上昇する。一方、過給圧可変手段によって過給圧を低下させた場合であっても、駆動手段のアシスト量が係る低下分を補うことが出来れば、何ら問題は生じない。更には、過給圧が低下するよう過給圧可変手段が制御されることによって、排気マニホールド内の背圧が低下して、内燃機関の排気性能が向上するので好適である。即ち、効果的にエンストが防止される。
上述した課題を解決するために、本発明に係る内燃機関の制御装置は、過給器及び該過給器の過給圧を上昇させることが可能な駆動手段を備える内燃機関を制御する内燃機関の制御装置であって、燃料の噴射量を、(i)前記過給圧が上昇するのに伴って増加するように設定される上限値以下の範囲で前記内燃機関の機関回転数が低下するのに応じて上昇するように又は(ii)前記内燃機関の空燃比が所定範囲に収まるように決定する噴射量決定手段と、前記燃料が前記決定された噴射量噴射されるように所定の噴射手段を制御する噴射制御手段と、前記内燃機関の動作期間の少なくとも一部において前記駆動手段を作動させる駆動制御手段とを具備することを特徴とする。
本発明に係る内燃機関の制御装置によれば、その動作時には、駆動制御手段が、内燃機関の動作期間の少なくとも一部において駆動手段を作動させる。
ここで、「作動させる」とは、即ち、単に作動の可否を表すのみならず駆動手段を駆動するための制御量を内燃機関の各種状態又は運転条件に応じて詳細に設定することを含む概念である。
駆動手段が作動すると、過給器の過給圧は上昇する。既に述べたように、本発明に係る内燃機関において過給圧が上昇すれば、例えばその分多くの燃料を噴射することが可能となるため、内燃機関の動力性能を向上させることが可能となる。空燃比制御が実行される場合には、過給圧の上昇に伴って必然的に燃料噴射量も上昇するが、例えばディーゼルエンジン等の圧縮自着火式内燃機関の場合、過給圧が上昇すれば、スモークの発生限界(例えば、スモークの発生量が予め定められたレベルを超える領域を規定する限界点)として規定される噴射量の上限値が上昇することになる。
上限値が上昇した場合、無論スモークの発生限界までは噴射量を増加することができるから、空燃比制御の場合と同様に出力(トルク)の増加効果が期待されるが、上限値は必ずしも噴射量を規定するものではないから、噴射量は通常通り噴射されてもよい。このような場合には、出力は要求値に維持されるが、過給圧の上昇に伴って吸気量が増加した分、混合気における燃料の比率は相対的に減少するからスモーク等のエミッションは減少する。このように、本発明に係る内燃機関の制御装置によれば、少なくともエミッションの低減又は出力の増加が期待される。即ち、内燃機関の総合的な性能を向上させることが可能となるのである。
尚、「内燃機関の動作期間の少なくとも一部」とは、過渡期間(加速要求期間)等駆動手段による効果が顕著に要求される期間に限定されず、内燃機関の動作期間であればいつでもよい趣旨である。上述したように、駆動手段による効果は、内燃機関の動作期間であれば変わらず享受されるものであり、極端な場合には、内燃機関の動作期間の全域において駆動手段が作動してもよい。このような駆動手段の作動期間は、予め実験的に、経験的に或いはシミュレーション等に基づいて、内燃機関の総合的な性能を向上させつつ、駆動手段をも効率的に作動させ得るように決定されていてもよい。
本発明に係る内燃機関の制御装置の一の態様では、前記駆動手段はモータである。
駆動手段がモータである場合には、過給器の過給圧を比較的簡便に上昇させることが可能であるため好適である。尚、この場合、モータを内燃機関の動作条件(例えば、機関回転数)に依存することなく作動させることが可能であるから、制御上の自由度は飛躍的に向上し得る。
尚、この態様では、前記駆動制御手段は、前記モータに電力を供給する供給源の状態に応じて前記モータを作動させてもよい。
この場合、モータに電力を供給する、例えばバッテリ等の蓄電可能な供給源の状態、例えば、容量、電圧、電流、充電状態又は残容量等に応じてモータの動作が制御されるため、供給源を効率的且つ効果的に使用することが可能となる。例えば、動力源に比較的余力がある場合には頻繁に或いは内燃機関の動作期間の全域について駆動手段を作動させてもよい。また、動力源の状態と駆動手段の作動可否及び作動量(制御量)等との関係は、予め実験的に、経験的に或いはシミュレーション等に基づいて、動力源が効率的に使用されるように決定されていてもよい。
本発明に係る内燃機関の制御装置の他の態様では、前記駆動手段は、パルス過給弁を含む。
この態様によれば、駆動手段がパルス過給弁を含むため、比較的簡便に本発明に係る効果が享受される。また、モータ等と共にパルス過給弁を使用することも可能であり、この場合には、過給機を一層効果的にアシストすることが可能となる。
本発明に係る内燃機関の制御装置の他の態様では、前記内燃機関の運転条件に基づいて前記駆動手段の制御量を決定する制御量決定手段を更に具備し、前記駆動制御手段は、前記制御量に従って前記駆動手段を作動させ、前記噴射量決定手段は、前記制御量に従って前記駆動手段が作動した後、前記上限値に応じて前記噴射量を決定する。
この態様によれば、制御量決定手段によって駆動手段の制御量が決定される。ここで、「駆動手段の制御量」とは、無論駆動手段の態様に応じて適宜の形態を採り得る値であり、例えば、駆動手段がモータである場合には、モータを駆動するための電力、電圧又は電流等であってもよい。或いは駆動手段がパルス過給弁である場合には、パルス過給弁の開閉間隔を規定する周波数又は開度等であってもよい。
係る制御量は、内燃機関の運転条件に基づいて決定される。このような内燃機関の運転条件とは、駆動手段の制御量と対応付けられる限りにおいて何ら限定されず、例えば内燃機関の機関回転数、負荷、アクセル開度又はアクセル開度の変化特性(例えば、変化速度等)等であってもよい。或いは後述する旋回流制御手段の制御量等であってもよい。これら内燃機関の運転条件に対する駆動手段の制御量の変化特性は、二値的な変化、即ち、駆動手段の作動可否であってもよいし、連続的な変化であってもよいし、予め設定される閾値を境にした連続的な変化であってもよく、例えば係る閾値等は、予め実験的に、経験的に或いはシミュレーション等に基づいて過給圧のアシストを開始すべき条件として適当であると定められた値であってもよい。駆動制御手段は、このようにして決定された制御量に従って駆動手段を作動させる。
一方、噴射量決定手段は、このようにして駆動手段によるアシストが行われた後、噴射量の上限値に応じて噴射量を決定する。噴射量の上限値は、過給圧が上昇すれば必然的に上昇するから、本態様に係るアシストが行われた場合には、例えば、車速やアクセル開度等から決定される要求出力(要求トルク)よりも駆動手段による駆動力のアシストが優先され得、即ち、言わば過給圧の積極的なアシストが実行され、何ら係る制御を実施しない場合と比較して出力トルクをより上昇させることが可能となる。即ち、駆動手段の効果によって、エミッションを維持したまま内燃機関の動力性能を向上させることが可能となる。また、内燃機関の動力性能向上とは異なる観点から見た場合、上限値を上昇させるとは、言い換えれば吸入空気量を増加させることに他ならないから、一定の出力(一定の噴射量)で比較するならば、必然的にエミッションを低減させることも可能となる。
尚、駆動手段の制御量を規定する内燃機関の運転条件とは、このような駆動手段による積極的なアシストを行わない場合の目標過給圧が設定される場合には、係る目標過給圧であってもよい。この場合、駆動手段の制御量とは、係る目標過給圧を所定割合又は所定量増加させるための値として規定されていてもよい。また、これら駆動手段の制御量は、駆動手段の動力供給源(例えば、前述したバッテリ等)の状態を考慮して決定されてもよいし、更には、内燃機関を搭載する車両の各種状態、例えばトランスミッション等によって制約を受けてもよい。
本発明に係る内燃機関の制御装置の他の態様では、前記噴射量の目標値を設定する目標値設定手段を更に具備し、前記駆動制御手段は、前記目標値と前記上限値との比較に基づいて前記駆動手段を作動させる。
この態様によれば、目標値設定手段によって噴射量の目標値が設定される。例えば、目標値は、予め内燃機関の機関回転数及びアクセル開度に対応付けられたマップ等に基づいて決定される。一方、噴射量には過給圧及び機関回転数等に基づいた上限値が設定されるが、係る上限値は、本来内燃機関に要求される出力(トルク)とは無関係に所定の排出物(例えば、スモーク等)の要件に基づいて設定される。従って、例えば、過給が遅延し易い加速要求時等の過渡期間(即ち、より噴射量が必要となり易い期間)においては特に、目標値が上限値を上回り易い。この場合、最終的に決定される噴射量は必然的に上限値によって制限され、結局必要な動力性能が得られない場合がある。
この態様によれば、駆動制御手段が、目標値と上限値との比較に基づいて駆動手段を作動させるため、内燃機関の動力性能を向上させつつ、駆動手段を効率的且つ効果的に使用することが可能となる。尚、このような比較に基づいた駆動手段の制御はどのようなものであってもよく、例えば、上限値が目標値に収束するように駆動手段をフィードバック制御してもよいし、目標値が上限値を超えた場合には、或いは超えることが推測又は推定された場合には、その時点で許容される最大出力(実質的な最大出力)でアシストを行ってもよい。
尚、噴射量の目標値が決定されれば、係る目標値に対応する目標過給圧は一義的に決定され得る。一方、内燃機関における実過給圧は、例えば過給圧センサ等の過給圧検出手段によって検出可能であり、係る実過給圧が目標過給圧よりも低い期間は、即ち、目標噴射量が上限値を超えている期間とみなし得る。従って、実践上有益な態様の一つとして、目標噴射量が上限値を超えているか否かの判別、或いは目標噴射量が上限値を超えるか否かの推定又は推測を過給圧に基づいて実行してもよい。また、内燃機関の動作条件、例えば、要求出力やアクセル開度等に基づいて噴射量が上限値を超えるか否かが判別、推定又は推測され得る場合には、そのような判別、推定又は推測がなされてもよい。
尚、この態様では、前記駆動制御手段は、前記目標値が前記上限値よりも大きい場合に前記駆動手段を作動させてもよい。
この態様によれば、噴射量が上限値よりも多い(即ち、上限値を超える)場合に駆動手段が作動するため、駆動手段を効率的に使用しつつ内燃機関の総合的な性能を向上させることが可能となる。
本発明に係る内燃機関の制御装置の他の態様では、前記内燃機関の運転条件に基づいて前記上限値によって規定される前記内燃機関における所定種類の排出物の発生状態を特定する特定手段を更に具備し、前記駆動制御手段は、前記発生状態に応じて前記駆動手段を作動させる。
ここで、所定種類の排出物とは、前述したスモーク等のPM(Particulate Matter:粒子状物質)を含む概念である。また、「発生状態」とは、発生量であってもよいし、予め設定される基準量を境にした二値的な状態であってもよいし、多いか少ないかといった定性的な概念であってもよい。このような発生状態を特定する一形態としては、前述したような上限値との比較を介した間接的な特定も含まれるが、本態様では更に、内燃機関の各種運転条件に基づいて言わば直接的に排出物の発生状態が特定される。
従って、これら特定された発生状態と駆動手段の制御量とを相互に対応付けておくことによって、より正確に、エミッションの低減或いはエミッションを維持した動力性能の向上を図ることが可能となる。
尚、内燃機関の運転条件とは、前述したように、機関回転数、アクセル開度、アクセル開度変化特性或いは旋回流制御手段の制御量等を含む概念である。
本発明に係る内燃機関の制御装置の他の態様では、前記内燃機関は、気筒毎に(i)燃焼室に連通する複数の吸気流路及び(ii)該複数の吸気流路の少なくとも一方に設けられ、所定の制御量に応じて該少なくとも一方を介して前記燃焼室に供給される吸気量を増減させることにより、前記燃焼室内に形成される吸気旋回流の強度の小大を制御することが可能な旋回流制御手段を更に具備し、前記駆動制御手段は、前記旋回流制御手段の制御量に基づいて前記駆動手段を作動させる。
この態様では、気筒毎に複数の吸気流路が備わり、その少なくとも一方に旋回流制御手段が備わる。ここで、「吸気流路」とは、エアクリーナ及びスロットルバルブ等を介して吸入される吸気の流路であり、好適には吸気管、特に内燃機関に備わる各気筒へ分岐する吸気マニホールド等を指す。
旋回流制御手段とは、燃焼室において発生する吸気旋回流(以降、適宜「スワール」と称する)の強度の小大を、制御量の増減に応じて変化させることが可能に構成された手段である。このような旋回流制御手段とは、例えば、スワールコントロールバルブ(以下、適宜「SCV」と称する)であり、例えば、バタフライ弁のような開閉弁として構成される。この場合、制御量とは、例えばSCVの開度等に相当する。即ち、SCVの開度を増加せしめれば燃焼室に流入する吸気量は増加し、SCV開度を減少せしめれば燃焼室に流入する吸気量は減少する。また、SCV開度が増加するに伴い、燃焼室内のスワールの強度は低下し、SCV開度の減少に伴いスワールの強度は上昇する。尚、スワールの強度はどのように規定されてもよいが、典型的には機関一回転当りのスワールの回転数を表すスワール比が好適に用いられる。
噴射手段から噴射される燃料は、この旋回流によって吸気との混合が促進され、通常、内燃機関の燃焼状態は向上するが、その一方で、スワールの強度を上昇させるために吸気量を減少させると、吸気の絶対量が低下するため、エミッションが増加し易い。
この態様によれば、駆動制御手段が、旋回流制御手段の制御量に基づいて駆動手段を作動させる。従って、旋回流制御手段の作用によって燃焼状態を向上させつつ、過給圧をより上昇させることによってスモーク等の発生限界を規定する上限値を引き上げ、エミッションの悪化を抑制することが可能となる。即ち、内燃機関の総合的な性能を向上させることが可能となる。
尚、駆動手段の作動可否及びその制御量は、予め実験的に、経験的に或いはシミュレーション等に基づいて、旋回流制御手段及び駆動手段を夫々効率的に動作させ得るように決定されていてもよい。
尚、この態様では、前記駆動制御手段は、前記吸気量が減少するのに応じて前記過給圧が上昇するように前記駆動手段を作動させてもよい。
この場合、何らこのような制御がなされない場合と比較して、スモーク等のエミッションを確実に低減し得るため効果的である。実践的な制御態様として、旋回流制御手段を作動させ得る(即ち、吸気流路の少なくとも一方を幾らかなりとも閉じ得る)のは、上述した如く吸気の絶対量低下に律束され、低回転且つ低トルク(低負荷)の領域に限定され易い。従って、このように吸気量が減少するのに応じて過給圧が上昇するように駆動手段が制御される場合には、効率的且つ効果的に旋回流制御手段によるミキシング効果を享受することが可能となる。
本発明に係る内燃機関の制御装置の他の態様では、前記内燃機関は、前記過給器へ排気を導く排気流路における流路径を変化させることにより前記過給圧を変化させる過給圧可変手段を更に具備し、前記駆動制御手段は、前記流路径に基づいて前記駆動手段を作動させる。
この態様によれば、内燃機関は過給圧可変手段を備えており、駆動手段の効果と相まって更に過給圧を上昇させることが可能となる。ここで、「流路径」とは、ノズル等、係る流路として機能し得る部品又は部材の径であってもよい。
駆動手段の制御量と流路径とは、どのような対応関係を有していてもよく、予め実験的に、経験的に或いはシミュレーション等に基づいて、過給圧可変手段及び駆動手段双方を効率的に動作させ得るように設定されていてもよい。
尚、この態様では、前記駆動制御手段は、前記流路径が、予め前記内燃機関を暖機させるために設定される領域に属する場合に前記駆動手段を作動させてもよい。
過給圧可変手段においては通常、流路径が絞られるに連れて過給圧が上昇するが、ある流路径を超えると過給圧が逆に減少する。このような流路径は、全閉或いはそれに近い程度まで絞られた状態の流路径であり、所謂「排気絞り」領域と呼ばれる領域に属する流路径である。
従って、過給圧を上昇させる観点からは、通常このような排気絞り領域まで流路径が絞られることはないが、このような目的とは別に、内燃機関の暖機を目的として係る排気絞り領域が使用されることがある。即ち、流路径を極端に絞ることによって、排気を排気系(好適には、エキゾーストマニホールド(以下、適宜「エキマニ」と称する)付近)に滞留させ、冷却水温度を排気の熱によって速やかに上昇せしめることが可能である。
この態様によれば、排気絞り制御時における、過給圧の低下を駆動手段によって効果的に補うことが可能であり、暖機が速やかに行われることによって内燃機関の総合的な性能が向上する。また駆動手段を効率的に使用することも可能となる。
過給圧可変手段を備える本発明に係る内燃機関の制御装置の他の態様では、前記駆動制御手段は、前記流路径が減少するのに応じて前記過給圧が上昇するように前記駆動手段を作動させる。
このように流路径が減少するに連れて、係る流路径の減少による効果とは別に駆動手段による過給圧の上昇制御が実行される場合、駆動制御手段の制御上の負荷が比較的軽く済むため効果的である。
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
<第1実施形態>
<実施形態の構成>
始めに、図1を参照して、本発明の第1実施形態に係るエンジンシステムの構成について説明する。ここに、図1は、エンジンシステム10の模式図である。
図1において、エンジンシステム10は、ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)100及びエンジン200を備える。
ECU100は、図示せぬCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)などを備え、エンジン200の動作を制御すると共に、本発明に係る「エンスト防止装置」の一例として機能するように構成されている。
エンジン200は、軽油を燃料とするディーゼルエンジンであり、本発明に係る「内燃機関」の一例である。以下に、エンジン200の要部構成について説明する。
シリンダブロック201内部には、4本のシリンダ202が並列して配置されている。各シリンダ内部には、インテークマニホールド203及び図示せぬ吸気バルブを介して空気が供給されている。エンジン200は、各シリンダ内部でピストン(不図示)が吸入空気を圧縮し、インジェクタ211から噴射される燃料が自発火して生じる爆発力をコネクションロッド及びクランクシャフト(いずれも不図示)を介して回転運動に変換することが可能に構成されている。
インテークマニホールド203には、エアクリーナ204によって濾過された大気が供給される。また、インテークマニホールド203上には、吸入空気量を計測するためのエアフローメータ205が設置されており、吸入空気の質量流量が直接計測されている。また、インテークマニホールド203には、吸入空気を絞り込むためのスロットルバルブ208が設けられている。
各シリンダ202から図示せぬ排気バルブを介して排気された排気ガスは、エキゾーストマニホールド212を介して触媒装置219に導かれ、排出される。触媒装置219は、PM(Particulate Matter)及びNOxを同時に浄化することが可能なディーゼルエンジン用四元触媒システムである。
一方、排気ガスの一部は、エキゾーストマニホールド212を流れる過程で、MAT206を通過する。MAT206は、モータアシスト機能付きのターボチャージャー装置であり、モータ(即ち、本発明に係る「駆動手段」の一例)によってターボ(即ち、本発明に係る「過給器」の一例)の過給圧を上昇させることが可能に構成されている。尚、MAT206におけるモータは、不図示のバッテリによって電源電圧を供給されており、バッテリの電力残量に応じてアシスト量が決定される。
排気ガスの一部はMAT206のタービンを回転駆動する。このタービンの回転駆動に伴って、タービンと同軸に配されたコンプレッサも回転駆動され、インテークマニホールド203内部に、大気圧以上の過給圧で空気を取り込むことが可能となっている。その際、MAT206による過給圧が過剰とならないように、圧縮して供給される空気の一部は、適宜吸気バイパス弁220を介してMAT206にバイパスされている。また、インテークマニホールド203には、コンプレッサによって圧縮されることによって高温となった吸入空気を冷却し、吸入効率を向上させるためのインタークーラ207が設置されている。尚、MAT206の実過給圧Prは、過給圧センサ209によって検出されている。過給圧センサ209の近傍には、吸入された空気の温度を検出する吸気温センサ210も設置されている。
更に、MAT206のタービン側には、MAT206に排気ガスを供給する可変ノズル221が備わる。可変ノズル221は、ECU100からの制御に従ってそのノズル開度が可変となるように構成されており、ノズル開度に応じてMAT206の過給圧が変化する構成となっている。この際、ノズル径が絞られると過給圧は上昇し、ノズル径が開放されると過給圧は低下する。可変ノズル221は、本発明に係る「過給圧可変手段」の一例として機能する。
排気ガスの一部は、MAT206を通過する以外に、EGR(Exhaust Gas Recirculation:排気ガス再循環装置)パイプ215及びEGRバルブ217を介してインテークマニホールド203に再供給される。また、EGRパイプ215には、EGRクーラ216が設置され、排気ガスは冷却された状態でインテークマニホールド203に供給される構成となっている。EGRパイプ215、EGRバルブ217及びEGRクーラ216によってEGR装置(即ち、本発明に係る「排気ガス循環手段」の一例)が構成され、エンジン200のNOx排出量低減及びノック防止が実現されている。
尚、運転者によるアクセルペダル222の操作量は、アクセルポジションセンサ223によって検出されており、その検出値ACCPはECU100に入力されている。ECU100は、アクセルポジションセンサ223からの入力に応じて不図示のスロットルバルブモータを駆動し、前述のスロットルバルブ208の開閉動作を制御している。
シリンダ202内部への燃料噴射は前述した通りインジェクタ211によって行われる。インジェクタ211は、圧電式の噴射装置であり、ECU100によってその噴射動作が制御されている。インジェクタ211への燃料供給は、コモンレール213によって行われている。コモンレール213にはサプライポンプ214から燃料が供給されており、コモンレール213は、燃料を高圧状態で保持し、インジェクタ211から高温且つ高圧のシリンダ内へ安定した燃料供給を可能としている。また、シリンダブロック201には、エンジン200の冷却水温を検出する水温センサ218が設置されている。
尚、図1において、ECU100と、エンジン200に備わるセンサ又はバルブなどの被制御機器との電気的な接続は、図面の煩雑化を防ぐ目的から適宜省略されている。
<実施形態の動作>
<燃料噴射処理>
エンジンシステム10では、ECU100が燃料噴射処理を実行することによって、エンジン200における燃料の噴射が制御されている。ここで、図2を参照して、燃料噴射処理の詳細について説明する。ここに、図2は、燃料噴射処理のフローチャートである。
図2において、始めに、ECU100は、エンジン200の機関回転数Ne、アクセルポジションセンサ223の出力値であるアクセル開度ACCP及び過給圧センサ209によって検出される実過給圧Prを取得する(ステップA10)。
各センサからの出力値を取得すると、ECU100は、燃料噴射量の上限値Qf(以下、適宜「上限値Qf」と称する)を設定する(ステップA11)。ここで、図3を参照して、上限値Qfについて説明する。ここに、図3は、上限値Qfの模式図である。
図3において、縦軸及び横軸は、夫々上限値Qf及び実過給圧Prを表す。図3に示される通り、上限値Qfは、MAT206の実過給圧Prが増加するのに応じて増加する値である。また、上限値Qfは、実過給圧Prの他に機関回転数Neに応じて変化する値であり、図3においては、一の機関回転数Neに対応する上限値Qfが示されている。
ECU100は、ROMなどの記憶手段に、予め機関回転数Ne及び実過給圧Prと上限値Qfとを対応付けたマップを保持しており、ステップA10において取得された機関回転数Ne及び実過給圧Prに対応する値を係るマップから読み出して、上限値Qfとして設定する。上限値Qfは、シリンダ202内の燃焼に際してスモークの発生限界点(超えた場合にスモークが発生する点)として設定された値であり、吸入空気量が過給圧の上昇に伴って増加するため、結果的に実過給圧Prが上昇するのに応じて増加する値となっている。
図2に戻り、上限値Qfの設定が終了すると、ECU100は、噴射量Qrを設定する(ステップA12)。ここで、図4を参照して、噴射量Qrの詳細について説明する。ここに、図4は、噴射量Qrの模式図である。
図4において、縦軸及び横軸は、夫々噴射量Qr及び機関回転数Neを表す。図4に示される通り、噴射量Qrは、機関回転数Neが低下するのに伴って増加する、所謂ガバナ制御が実行されるように設定される。一方で、噴射量Qrは、アクセル開度ACCPに対しては、アクセル開度ACCPが増加するのに伴って増加するように規定されている。図4には、アクセル開度が0%(即ち、アイドル状態)、a(a>0)%及びb(b>a)%の場合について噴射量Qrが示されている。
ECU100は、予めROMなどの記憶手段に係るアクセル開度ACCP及び機関回転数Neと噴射量Qrとを対応付けたマップを保持しており、ステップA10において取得された機関回転数Ne及びアクセル開度ACCPに対応する値を係るマップから読み出して、噴射量Qrとして設定する。
再び図2に戻り、噴射量Qrが設定されると、ECU100は、設定された噴射量Qrが前述した上限値Qf以下であるか否かを判別する(ステップA13)。前述したように、スモークの発生を回避する目的から、噴射量には噴射量制限ガードとなる上限値Qfが設定されており、この値以上に燃料を噴射することはできない構成となっている。設定された噴射量Qrが上限値Qf以下である場合(ステップA13:YES)、ECU100は、設定された噴射量Qrの燃料が噴射されるようにインジェクタ211を制御する(ステップA14)。一方で、設定された噴射量Qrが上限値Qfより大きい場合(ステップA13:NO)には、上限値Qfの燃料が噴射されるようにインジェクタ211が制御される(ステップA15)。噴射量Qr又は上限値Qfの燃料が噴射されると、ECU100は処理を再びステップA10に戻し、一連の処理が繰り返される。
<エンスト防止処理の詳細>
上記した燃料噴射処理は、エンジン200の始動後、一定又は不定のタイミング毎にECU100によって絶えず繰り返される処理であるが、その過程で、エンジン200の機関回転数Neが過剰に低くなると、エンストが発生する可能性が高くなる。この場合、燃料の噴射量を増量して、低速トルクを確保する必要がある。本実施形態では、ガバナ制御によって、機関回転数Neが低下するのに伴って噴射量Qrは増加するのであるが、前述した通り、噴射量には上限値Qfが規定されているため、場合によっては噴射量Qrが、エンストを回避するのに十分な量まで増量されない場合がある。
ここで、図5を参照して具体的にこの様子を説明する。ここに、図5は、噴射量Qrと上限値Qfとの関係を表す模式図である。
図5において、予め設定された閾値回転数Aよりも低い機関回転数Ne1において、上限値αは、噴射制御処理において設定される噴射量Qr1よりも小さな値となっている。ここで、閾値回転数Aは、上述した如くエンストが発生する可能性が高いものとして規定される回転数であり、本実施形態ではエンジン200のアイドル回転数未満の値、例えば500rpm程度の値に設定されている。尚、閾値回転数Aの値は、エンジンの種類、特性及び要求性能などに応じて予め実験的に、経験的に、或いはシミュレーションなどに基づいてエンストを回避し得る最適な値に設定されていてもよい。
この場合、前述した燃料噴射処理によって、実際の燃料噴射量はこの上限値αに制限される。このように噴射量を増量したい回転数領域において上限値Qfによる制限ガードがかかると、低速トルクが不十分となって、エンストの発生が防止し難い。
そこで、ECU100は、燃料噴射処理と並行して以下に説明するエンスト防止処理を実行することにより、エンストの発生を効果的に回避している。ここで、図6を参照してエンスト防止処理の詳細について説明する。ここに、図6は、エンスト防止処理のフローチャートである。
図6において、ECU100は、エンジン200の機関回転数Neが予め設定される閾値回転数A未満であるか否かを判別する(ステップB10)。ECU100は、機関回転数Neが閾値回転数A以上である場合にはステップB10を繰り返すと共に、機関回転数Neが閾値回転数A未満となった場合(ステップB10:YES)、MAT206のモータを作動させ、過給圧の上昇をアシストする(ステップB11)。更に、可変ノズル221の開度を維持する(ステップB12)。
モータアシストが実行されることによって、エンジン200における実過給圧Prの値は上昇する。尚、可変ノズル221の開度が維持されることによって、可変ノズル221による実過給圧Prの上昇は生じないが、モータアシストによって十分に実過給圧Prが上昇するように、モータのアシスト量が設定される。一方で、可変ノズル221の開度が維持されることによって、エキゾーストマニホールド212の背圧が上昇することが防止され、結果的にEGRガスの増加に起因する失火が防止されるため好適である。
ここで、図7を参照して、MAT206におけるモータアシストの効果について説明する。ここに、図7は、噴射量Qrと上限値Qfとの関係を表す他の模式図である。尚、同図において図5と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を省略する。
図7において、機関回転数Ne1(Ne1<A)における噴射量の上限値Qfは、モータアシストの実行以前はαであるのに対し、モータアシストの実行以後は、実過給圧Prが上昇するのに伴ってβ(β>Qr1>α)に上昇する。従って、機関回転数Ne1における設定噴射量Qr1は上限値βよりも小さな値となり、最終的な燃料の噴射量は設定値通り噴射量Qr1に制御される。即ち、モータアシストが実行されることによって、噴射量制限ガードが上昇し、モータアシスト実行以前よりも多くの燃料を噴射することが可能となる。このため、低速トルクが向上し、エンジン200におけるエンストの発生が回避されるのである。
図6に戻り、モータアシストを実行し、更に可変ノズル221の開度を維持した後、ECU100は、再び機関回転数Neが閾値回転数A未満であるか否かを判別する(ステップB13)。機関回転数Neが閾値回転数A未満である期間中(ステップB13:YES)は、ECU100は、ステップB11及びステップB12を繰り返し実行して、過給圧上昇のアシストを続行する。一方、係るアシストによって燃料の噴射量が増え、低速トルクが確保された結果機関回転数Neが安定して、機関回転数Neが閾値回転数A以上となった場合(ステップB13:NO)、ECU100は、モータアシストを停止する(ステップB14)と共に処理を再びステップB10に戻し、これまで説明した如くエンスト防止処理を繰り返し実行する。
このように、本実施形態に係るエンスト防止処理によれば、エンストが発生し易い状況でモータアシストによって実過給圧Prを上昇させ、エンストを防止することが可能となる。即ち、効果的にエンストを防止することが可能となるのである。
<第2実施形態>
第1実施形態では、閾値回転数A未満の領域で燃料の噴射量を増量してエンストを回避しているが、モータアシストの実行タイミングはこれに限定されない。ここで、図8を参照して、このような本発明の第2実施形態について説明する。ここに、図8は、本発明の第2実施形態に係るエンスト防止処理のフローチャートである。尚、同図において、図6と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を省略することとする。
図8において、ECU100は、先ず機関回転数Neの変化分ΔNe(以下、適宜「変化分ΔNe」と称する)が、予め設定される閾値B未満であるか否かを判別する(ステップC10)。
ECU100は、一定のタイミング毎に機関回転数Neを取得しており、取得した機関回転数Neの値を複数個RAMなどにバッファリングして保持している。ステップC10においては、このバッファリングされた機関回転数Neから変化分ΔNeが取得される。尚、機関回転数Neを取得するタイミングが一定であることに鑑みれば、変化分ΔNeとは、機関回転数Neの変化速度と対応する値となる。
ステップC10における閾値Bとは、エンストに繋がると推測される急激な機関回転数Neの変化を検出するための、即ちエンジン200の燃焼状態の安定性を判別するための値であり、予め実験的に、経験的に、或いはシミュレーションなどに基づいて適切な値に設定されている。尚、変化分ΔNeは、正負いずれの値も採り得るから、閾値Bもまた、正負の概念を有する値として設定される。尚、本実施形態では、閾値Bは、負の符号をもった適当な値に設定されている。即ち、機関回転数が比較的急激に減少した場合に、エンジン200がエンストに繋がる不安定な燃焼状態であると判別される。
変化分ΔNeが閾値B以上である場合(ステップC10:NO)には、ECU100は、ステップC10を繰り返すと共に、変化分ΔNeが閾値B未満となった場合(ステップC10:YES)、ECU100は、第1実施形態に係るエンスト防止処理と同様にMAT206のモータを制御してモータアシストを実行し、実過給圧Prを上昇させることによって、噴射量の上限値Qfを上昇させ、エンストを防止する。
また、MAT206を作動させ、可変ノズル211の開度が維持されると、ECU100は、再び、変化分ΔNeが閾値B未満であるか否かを判別する(ステップC11)。変化分ΔNeが閾値B未満である間(ステップC11:YES)は、ステップB11及びステップB12が繰り返され、可変ノズル221の開度が維持されたままMAT206のモータによる過給圧のアシストが続行される。係る過給圧のアシストによって機関回転数Neの低下が緩やかになったり或いは機関回転数Neが上昇の傾向を示したりした場合には、変化分ΔNeの値が閾値B以上となって(ステップC11:NO)、ECU100はモータアシストを停止させる(ステップB14)。
このように、第2実施形態に係るエンスト防止処理によれば、閾値Bの値を適切に設定することによって、第1実施形態と比較して機関回転数Neが高い領域でエンストの発生を予見し、早期にエンジン200のエンストを防止することが可能となっている。即ち、効果的にエンストを防止することが可能である。
<変形例>
上述した各種実施形態において、エンジン200はディーゼルエンジンであり、燃料の噴射量は、機関回転数Neの低下に伴って増量されているが、本発明に係るエンスト防止装置は、ガソリンエンジンにも適用することが可能である。
ガソリンエンジンの場合、燃料の噴射量は、空燃比フィードバックに基づいて決定される。即ち、空燃比を所定値に収束させるための制御が実行される。従って、最終的な噴射量は、吸入空気量と目標空燃比の値とに基づいて必然的に規定される。しかしながら、上述した実施形態の如く、モータアシストを実行することによる実過給圧Prの上昇に伴って吸入空気量が増加するため、燃料の噴射量も必然的に増加し、上述した各種実施形態と同様に、閾値回転数A未満の領域において燃料の噴射量が増加して低速トルクが向上し、エンストの発生が防止される。即ち、効果的にエンストの発生が防止される。
<第3実施形態>
次に、図9を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。ここに、図9は、本発明の第3実施形態に係るエンジンシステムにおける実過給圧とスモーク量及びトルクの関係を表す模式図である。尚、本実施形態に係るエンジンシステムの構成は、既に述べた各種実施形態と同等であり、その図示は省略することとする。
尚、本実施形態において、ECU100は、エンジン200の動作期間の全域においてMAT206を作動させることにより、エンジン200の総合的な性能を向上させる、本発明に係る「内燃機関の制御装置」の一例として機能するように構成されている。
図9において、上段は、エンジン200の噴射量が噴射量Qra(即ち、トルクTra)である場合の実過給圧Prに対するスモーク量SMの特性を表しており、下段は、エンジン200のスモーク量をスモーク量SMaとした場合の実過給圧Prに対するトルクTrの特性を表している。尚、上段及び下段共に、横軸にエンジン200の実過給圧Prが表される。
最初に、上段のスモーク量SMの特性について説明する。本実施形態において、MAT206を作動させることによって到達した実過給圧Prが図示Pr2であるとする。この場合のスモーク量SMは、図示SM2となる。一方、図9には更に、本実施形態の比較例として、MAT206を有さないエンジンシステムが同一の運転条件で到達し得る実過給圧Pr1(Pr1<Pr2)が表される。比較例に係るエンジンシステムは、例えば、可変ノズル221のみが備わる構成であり、必然的に、MAT206が存在しない分実過給圧Prは低くなる。従って、同一の噴射量Qraで較べると、相対的に吸気が不足し、スモーク量SMは上記SM2より多いSM1(SM1>SM2)となる。
次に、下段のトルクTrの特性について説明する。上段の図と同様に、MAT206が備わる本実施形態に係るエンジンシステムにおいて、実過給圧Pr2が実現されたとする。この場合、発生するスモーク量をSMaとすると、エンジンが発生し得るトルクTrは、図示Tr2となる。一方、比較例に係る実過給圧Pr1は、本実施形態に係る実過給圧Pr2よりも低い。従って、上述した噴射量制限ガードが低下し、同一のスモーク発生量SMaで較べると、必然的に燃料の噴射量Qrが本実施形態に係るエンジンシステムと比較して抑制される。その結果、比較例に係るエンジンによって出力可能なトルクはトルクTr1(Tr1<Tr2)となる。
このように、本実施形態によれば、MAT206を過渡的な期間以外の期間にも積極的に利用することによって、エンジンの過給圧を可能な限り上昇させ、スモーク量を低減することができる。或いは噴射量制限ガードを上昇させることによってスモーク量を維持したままトルクを上昇させることができる。即ち、エンジンの総合的な性能を向上させることが可能となるのである。
尚、トルクを優先するのか(即ち、決定された噴射量を供給するのか)或いは、MAT206によるアシストを優先させるのか(即ち、上昇した噴射量制限ガードに基づいて噴射量を決定するのか)については、ECU100が、その都度予め設定された判断基準に従って個別具体的に判断すればよく、いずれが選択されたとしても、エンジンの総合的な性能を向上させることが可能である。このような判断基準は、予め実験的に、経験的に或いはシミュレーション等に基づいて、MAT206及びエンジン200を夫々効率的に動作させ得るように決定されていてもよい。
<第4実施形態>
第3実施形態では、MAT206をエンジン200の運転期間中に積極的に利用することにより、エンジン200の総合的な性能を向上させているが、MAT206を駆動するバッテリ等の特性に鑑みれば、MAT206をより効率的に使用する方が望ましい場合がある。そのような事情に対応するため、第4実施形態では以下に説明するアシスト制御処理が実行される。以下、図10を参照して係るアシスト制御処理の詳細について説明する。ここに、図10は、本発明の第4実施形態に係るアシスト制御処理のフローチャートである。尚、同図において、図2と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。また、第3実施形態と同様に、第4実施形態に係るシステム構成は、上記第1及び第2実施形態と同等であり、その説明はここでは省略することとする。
図10において、ECU100は、機関回転数Ne、アクセル開度ACCP及び実過給圧Prを取得する(ステップA12)と、噴射量Qrを設定する(ステップA13)。ここで、ステップA13に係る処理によって設定される噴射量Qrは、必要とされるトルクを出力するための目標噴射量であり、前述したように、上限値Qf以上である場合には上限値Qfに律束され得る値である。
ECU100は、噴射量Qrが設定されると、係る噴射量Qfに対応する目標過給圧Paを予めROMに格納されるマップから取得する(ステップD10)。ここで、目標過給圧Paとは、上限値Qfが、機関回転数Neが定まれば実過給圧Prによって一義的に決定される値であることに鑑みれば、即ち噴射量Qrが少なくとも上限値Qf以上となるために必要となる過給圧であり、本実施形態では、噴射量Qrが上限値Qfと一致するために必要となる過給圧に設定される。即ち、目標過給圧Paが得られていない状態とは、上限値Qfが設定された噴射量Qr未満である状態と等しい。
ECU100は、実過給圧Prが、目標過給圧Pa以上であるか否かを判別する(ステップD11)。実過給圧Prが目標過給圧Pa以上である場合(ステップD11:YES)、ECU100は、MAT206を作動させず(ステップD12)、また実過給圧Prが目標過給圧Pa未満である場合には(ステップD11:NO)、MAT206を作動させる(ステップD13)。ステップD12又はステップD13に係る処理が実行されると、処理はステップA10に戻され、アシスト制御処理が継続される。
ここで、図11を参照して、MAT206の制御量について説明する。ここに、図11は、MAT206の制御量の模式図である。
図11において、横軸は、目標過給圧Paと実過給圧Prとの差分ΔPであり、縦軸は、MAT206の制御電力である。MAT206は、バッテリ電圧を一定に保った状態で電流が可変に制御されることによって電力を可変制御されており、最大出力がWmaxとなっている。本実施形態において、制御電力は、過給圧差分ΔPに対してリニアに制御されており、過給圧差分ΔPが大きくになるのに応じて制御電力も大きくなるように設定される。尚、過給圧差分ΔPが図示ΔP1になると、MAT206の制御電力は、最大出力Wmaxに律束される。図10ステップD13に係る処理では、図11に示す関係に従ってMAT206の制御電力が決定され、MAT206が作動する。
このように、本実施形態に係るアシスト制御処理によれば、実過給圧Prが目標過給圧Pa未満である場合、言い換えれば機関回転数Ne及びアクセル開度ACCPから定まる噴射量Qrが、機関回転数Ne及び実過給圧Prによって定まる上限値Qf(即ち、噴射量制限ガードに相当)より多い場合に限ってMAT206が作動する。このため、噴射量Qrが上限値Qf以下の場合、即ち、要求される出力に対応する燃料を噴射することが可能な場合には、敢えてMAT206による過給圧上昇制御は実行されずに、MAT206による電力消費を抑えることが可能となっている。即ち、効率的且つ効果的にエンジン200の性能向上を図ることが可能となっている。
尚、ステップD11に係る処理においてMAT206が作動する場合、MAT206の制御量は、図11に例示する態様に限定されることなく、適宜ECU100によって決定されてよい。この場合、例えば、噴射量Qrと上限値Qfとの差分に応じてMAT206の出力が制御されてもよいし、或いは、予め設定されるアルゴリズム或いは算出式に基づいて、上限値Qfを超えた分の燃料によって発生するスモーク量を推定することが、或いはその時点における機関回転数Ne、アクセル開度ACCP又はアクセル開度ACCPの変化速度等に基づいて、噴射量Qrに対応するスモーク量を直接的に決定、推定又は推測することが可能である場合には、そのようなスモーク量に基づいて、例えばスモーク量を所定量以下に抑制し得るようにMAT206の出力が制御されてもよい。このような制御量の導出基準は、予め実験的に、経験的に或いはシミュレーション等に基づいてMAT206及びエンジン200を夫々協調して効率的に作動し得るように決定されていてもよい。
<第5実施形態>
第4実施形態では、過給圧差分ΔPに基づいてMAT206の作動可否及びその制御量が決定され、言わば、要求トルクが遅滞なく出力可能であるようにMAT206が制御されているが、MAT206の制御形態はこれに限定されない。ここで、図12を参照して、このような本発明の第5実施形態に係るアシスト制御処理について説明する。ここに、図12は、本発明の第5実施形態に係るアシスト制御処理のフローチャートである。尚、同図において、図11と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
図12において、ステップA10に係る処理において機関回転数Ne、アクセル開度ACCP及び実過給圧Prを取得すると、ECU100は、現時点における運転条件がアシスト条件を満たすか否かを判別する(ステップE10)。
ここで、アシスト条件とは、第4実施形態のように、要求されるトルクを出力するための噴射量を噴射し得ない運転条件であるか否かとは異なり、予めMAT206によるアシストを実行すべきものとして定められる、或いは予め定められた判断基準又はアルゴリズム等によってアシストを実行すべきものと判定される条件を指す。このようなアシスト条件は、予め実験的に、経験的に或いはシミュレーション等に基づいて与えられていてもよい。例えば、アシスト条件が満たされる場合とは、アクセル開度ACCPの変化速度等に基づいて判別される、比較的急激な加速が要求される期間であってもよいし、高回転又は高負荷の運転期間であってもよい。また、エンジンの運転条件以外からこのようなアシスト条件が規定されてもよく、この場合、例えば、バッテリに十分に余力がある期間等であってもよい。
アシスト条件ではない場合には(ステップE10:NO)、ECU100はMAT206を作動させず(ステップD12)、アシスト条件である場合(ステップE10:YES)には、ECU100は、アシスト制御量を決定し(ステップE11)、MAT206を作動させる(ステップD13)。ここで、アシスト制御量は、どのように決定されてもよく、例えば、機関回転数Ne、アクセル開度ACCP等の値に対応付けられる形で制御量が与えられていてもよいし、バッテリ等の状態に基づいて、その時点で出力し得る最大出力が出力されるようにECU100が制御量を決定してもよい。
このようにしてMAT206が作動した結果、実過給圧Prは上昇するため、係る上昇した実過給圧Prに基づいて決定される噴射量上限値Qfに噴射量Qrを設定することによって、要求トルク以上の出力を得ることが可能となる。また、要求トルクを出力する場合にはスモーク等の発生量を抑制することが可能となる。即ち、本実施形態によれば、要求トルクに比較してアシスト制御を優先することにより、エンジンの総合的な性能を顕著に向上させることが可能となるのである。尚、アシスト制御量は、ここに例示した如くその時点におけるバッテリ等の状態に基づいて決定されずともよく、例えば、第4実施形態に示したような目標過給圧Prが取得される場合には、実過給圧Prが、係る目標過給圧Paを所定量又は所定割合増加させた値となるような値に設定されてもよい。
<第6実施形態>
エンジンシステムの構成は、上記各実施形態に係るエンジンシステム10に限定されない。ここで、図13を参照して、本発明の第6実施形態に係るエンジンシステム20の構成について説明する。ここに。図13は、エンジンシステム20の模式図である。尚、同図において、図1と重複する箇所については、図示を省略するか、又は相互に同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図11において、エンジンシステム20は、エンジン200の代わりにエンジン300を備える点において、エンジンシステム10と相違している。
エンジン300は、各シリンダ202において、吸気ポート(不図示)を二つ備え、各吸気ポートに対し、吸気マニホールド203から相互に独立した枝管301及び302が延在する構成を有している。
枝管302には、吸気マニホールド203から燃焼室へ供給される吸気の量を可変に制御するためのSCV303が設けられている。SCV303は全開から全閉までの開度状態を採り得、その開度は、ECU100によって電気的に制御される構成となっている。
SCV303の開度(SCV開度)に応じて、燃焼室には吸気のスワールが形成される。即ち、SCV303は、本発明に係る「旋回流制御手段」の一例として機能するように構成されている。
ここで、図14を参照して、SCV開度とスモークの発生量について説明する。ここに、図14は、SCV開度とスモーク量との関係を表す模式図である。
図14において、横軸はSCV開度であり、図示右方向にSCV開度が大きくなることを表している。また、縦軸はスモーク量を表している。ここで、各枝管301及び302の空間的な配置態様は、SCV開度の増加に応じてスワール比が低下(即ち、スワールの強度が低下)し、またSCV開度の減少に応じてスワール比が上昇(即ち、スワールの強度が上昇)するように決定されている。スワールの強度は、高い程燃料と吸気との混合が促進されるため、基本的にエンジン300の燃焼状態は良好となりエミッションが低減される。
図14において、SCV開度の増加に応じてスモーク量は増加する傾向を示す。従って、スモーク量を低減し、エミッションを改善する見地からは、可能な限りSCV303を閉じるのが望ましい。ところが、燃焼室に導かれる吸気の量は、スワールの強度と相反して、SCV開度が減少する程(即ち、スワールの強度が上昇する程)減少する。ここで、図15を参照して、SCV開度と実過給圧との関係を説明する。ここに、図15は、SCV開度と実過給圧との関係を表す模式図である。尚、同図において図14と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
図15において、縦軸及び横軸に夫々実過給圧及びSCV開度が示される。図15に示すように、実過給圧Prは、SCV開度が増加する程上昇し、SCV開度が減少する程減少する。従って、燃焼室内に供給される吸気量は、SCV開度が減少するのに応じて減少するのである。これに伴い、SCV開度が比較的小さい領域では燃料の噴射量上限値が相対的に低下し、エンジン300の運転条件によっては要求出力が得られない場合がある。即ち、SCV303を比較的閉じた状態で(即ち、エミッションを低減し得る状態で)使用することが可能な運転条件は、エンジン300の運転条件の極一部に限定される。
そこで、本実施形態において、ECU100は、MAT206を効果的に作動させ、係る問題を好適に解決している。ここで、図16を参照して、SCV開度とMAT制御量との関係について説明する。ここに、図16は、SCV開度とMAT制御量との関係を表す模式図である。尚、同図において、図15と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
図16において、縦軸及び横軸には夫々MAT制御量(例えば、前述した制御電力)及びSCV開度が示される。本実施形態において、ECU100は、SCV開度が減少する程(即ち、吸入空気量が減少する程)制御量を増加させ、過給圧がよりアシストされるようにMAT206を制御している。このような制御が行われるのに伴って、SCV303を閉じた状態で使用することが可能なエンジン200の運転領域が拡大し、SCV303によるスモーク低減効果を、より広い範囲で享受することが可能となるのである。
ここで、図17を参照して、SCV開度、MAT出力及び実過給圧Pr各々の関係について説明する。ここに、図17は、エンジン300の動作期間におけるある時間領域について、SCV開度、MAT出力及び実過給圧Pr各々の関係を例示した特性図である。
図17において、上段、中段及び下段各々について横軸は共通であり、エンジン300における任意の経過時間が表される。縦軸は、上段、中段及び下段各々について、SCV開度、MAT出力及び実過給圧Prを表している。尚、図示破線部分は、本実施形態の比較例に係る、MAT206を有さないエンジンシステムにおける特性を表している。
始めに、上段のSCV開度の特性から説明する。尚、縦軸は、上に向う程SCV開度が減少することを表しており、通常の感覚とは逆となっているが、SCV開度は既に述べたように減少する程スワールの強度(即ち、スワール比)を上昇させるため、このような表現となっている。即ち、上段における縦軸は、上に向う程増加するスワール比と読み替えてもよい。今、時刻T1から時刻T2までの期間と、時刻T3から時刻T4までの期間において、SCV開度が閉じ側に制御されたとする。
この場合、下段に示す実過給圧Prの特性のうち、比較例に係る破線部分を参照すれば、SCV開度が減少制御されるのに伴って実過給圧PrはSCV開度の特性と対称的な特性を示す。即ち、時刻T1からT2までの期間と、時刻T3からT4までの期間において、実過給圧Prは減少し、燃焼室に供給される吸気の量が減少する。従って、比較例に係るエンジンシステムの場合、スモークが限界量を超えるか或いは要求されたトルクを出力することができないと言った、エンジン性能の低下が生じる。
一方、本実施形態に係るエンジンシステム20では、中段に示す如く、SCV開度が閉じ側に制御される期間において、それに対応するようにMAT206の出力が制御される。従って、下段に示す如く、実過給圧Prは、一定値Pr3を保ったまま推移する。即ち、このような期間についてもスモーク発生量を維持又は低減しつつ要求トルクを出力することが可能となる。
ここで、更に図18を参照して、本実施形態の効果について説明する。ここに、図18は、エンジン300の過渡的な動作期間におけるエンジン300における各要素の特性を表す模式図である。
図18において、横軸は全てにおいて共通であり、エンジン300の動作期間における任意の経過時間を表している。縦軸は、図中上段から順次、アクセル開度ACCP、実過給圧Pr、スモーク量SM、SCV開度、MAT出力及び噴射量Qrとなっている。
今、図示時刻T5において、アクセルペダル222が踏み込まれ、アクセル開度が急激に上昇したとする(図示最上段参照)。それに伴い、噴射量Qrは、アクセル開度に追従するように上昇する(図示最下段参照)。
一方、このような運転条件において実過給圧Pr及びスモーク量SMは、SCV開度及びMAT出力に応じて夫々異なる特性を示す。尚、図18では、SCV開度としてSCVオン(全閉)又はオフ(全開)が選択され、MAT出力として、MATオン(作動)又はオフ(非作動)が夫々選択されるものとする。従って、実過給圧Pr及びスモーク量SMの特性は、SCV303及びMAT206が共にオンである特性(図示Prf1参照)、SCV303及びMAT206が共にオフである特性(図示Prf2参照)並びにSCV303のみがオンである特性(図示Prf3参照)が示される。
実過給圧Prの特性(図示上から二段目)において、Prf3は、SCV303がオン状態に制御されることに伴い、燃焼室への吸気の流入が阻害されるため、立ち上がりが比較的大きく遅れる。それに伴い、スモーク量SMの特性(図示上から三段目)において、Prf3は、時刻T5を境に大きく増量側に変化する。即ち、このような過渡期間において、SCV303を閉じた場合には、エミッションが悪化する。それに対し、Prf2は、Prf3と比較すれば実過給圧Prの立ち上がりが早く、スモークの発生量は小さいものとなる。
一方で、本実施形態の如く、SCV開度に対応してMAT206を作動させる場合、Prf1として表されるように、実過給圧Prは上記二例と較べて急峻に立ち上がる。それに伴い、スモーク発生量は抑制され、明らかにその値が小さいものとなる。
このように、本実施形態によれば、SCV303の開度が減少するのに応じてMAT206の出力が増加するようにMAT206が制御されるため、これまで吸気量が不足することによるエミッションの悪化に律束され、スワールを強めることが出来なかった運転領域であっても、スワールによるミキシング効果を享受することが可能となるのである。
ここで、図19を参照して、本実施形態に係る制御を実施することが可能となるエンジン300の運転領域について説明する。ここに、図19は、SCV303の動作領域をエンジン300の負荷領域に表したマップである。
図19において、本実施形態の比較例に係るマップが示される(図19(a))。図19(a)において、SCV303をオン状態に制御できる領域は、領域A、即ち、低回転且つ低トルク領域に限定される。領域Aを除く領域である領域Bについては、吸気量不足によるスモークの発生に律束され、SCV303はオフ状態に、即ち、全開状態に制御される。一方、図19(b)に示される本実施形態に係るマップでは、上述したMAT206の作用によって、領域Aに加え、図示領域CでもSCV303をオン状態に制御することが可能である。従って、エンジン300を動作させるに際して、スワールによる燃料と吸気とのミキシング効果を十分に享受することが可能となり、エンジン300の総合的な性能を向上させることが可能となるのである。
尚、SCV303の開度とMAT206の出力とをどのように対応付けるかについては、何ら限定されず、例えば、エンジン300の運転条件等に応じて個別具体的に決定されてもよい。即ち、SCV303を閉じれば幾らかなりとも上記ミキシング効果は得られ、またMAT206を作動させることにより幾らかなりとも過給圧上昇の効果は得られるから、これらをどのように組み合わせ対応付けたとしても、何らこのような制御がなされない場合と比較して本実施形態は明らかに有利に構成される。
但し、予めSCV開度によって実現されるスワール強度(スワール比)と吸気の不足量或いはスモークの発生量等との対応関係が与えられている又は推定可能である場合には、そのような対応関係に基づいて適切にMAT206を作動させてもよい。更には、SCV開度に加えてエンジン300の動作条件、例えば、機関回転数や要求トルク或いは負荷等に基づいて、MAT206の出力が決定されてもよい。
<第7実施形態>
エンジンシステムに可変ノズルが備わる構成においては、MATによって顕著な効果を享受することができる。ここで、図20を参照して、本発明の第7実施形態に係るエンジンシステムの動作について説明する。ここに、図20は、可変ノズルの開度に対するスモーク量SM、実過給圧Pr及び排気圧(以下、適宜「エキマニ圧」と称する)Pexの特性を表す模式図である。尚、第7実施形態において、エンジンシステムの構成は、上述した第1実施形態と同等であり、ここではその図示を省略すると共に同一の符号を使用して説明を行うこととする。
図20において、横軸は共通であり、可変ノズル221の開度(以下、適宜「VN開度」と称する)が表される。縦軸は、上段、中段及び下段の順に夫々スモーク量SM、実過給圧Pr及びエキマニ圧Pexを表している。
可変ノズル221には、全閉開度付近に、排気絞り領域と呼ばれる開度領域が設定されている。この排気絞り領域では、過絞り状態となるため、可変ノズル221によって実現される過給圧上昇効果は望めず、かえって実過給圧Prは減少する(図示中段破線参照)。これに伴い、スモーク発生量SMはこの排気絞り領域で急激に上昇する(図示破線参照)。従って、通常、VN開度は、係る排気絞り領域に属する開度には制御されない。
一方、VN開度が排気絞り領域の開度である場合、排気は排気マニホールド内に滞留するため、エンジン200の暖機は促進される。従って、エンジン200が暖機を必要とする始動時や冷間時等には、VN開度が排気絞り領域の開度に設定され、排気絞り制御(暖機制御)が実行される場合がある。エンジン200の動作領域が低回転且つ低負荷領域であるならば(典型的にはエンジン200を搭載する車両が停止しているならば)、このような排気絞り制御による極端なエミッションの悪化は生じないが、排気絞り制御中に車両の加速要求が生じた場合等には、エミッションの悪化が無視し得ない問題となる。
このような問題に対処するため、本実施形態では、VN開度が排気絞り領域に属する開度である場合に、ECU100がMAT206を作動させる。その結果、実過給圧Prは図示実線で示すように、VN開度が排気絞り領域に属している場合であっても低下しない。それに伴って、スモーク量SMが排気絞り領域で増加する事態も防止される(図示実線参照)。尚、エキマニ圧Pexは、MAT206の作用に鑑みれば、その動作によって何ら変化することなく維持される。即ち、本実施形態によれば、MAT206を作動させることによって、可変ノズル221を、あらゆる開度領域で使用することが可能となり、エンジン200の総合的な性能が向上するのである。
このような本実施形態の効果を更に説明するために、図21を参照して、エンジン200の過渡的な動作期間におけるMAT206の制御について説明する。ここに、図21は、エンジン200の過渡的動作期間における任意の経過時間に対するアクセル開度ACCP、実過給圧Pr、スモーク量SM及びMAT出力各々の特性図である。
図21において、上記した排気絞り制御の実行期間中、時刻T6においてアクセル開度ACCPが急激に上昇したとする(上段参照)。この場合、比較例として、MAT206を動作させない場合を図示Prf5として例示すると、実過給圧Prは、上述したようにVN開度が排気絞り領域に属するため、その上昇は極めて緩慢となり、スモーク量SMも即ち大量となる。一方、下段に示すように、アクセル開度ACCPの増加に連動するようにMAT206を作動させると(図示Prf4参照)、実過給圧Prは、Prf5に較べて明らかに俊敏に上昇する。それに伴い、スモーク量SMも明らかに低下する。このように、本実施形態によれば、VN開度を排気絞り領域に設定したとしても、スモーク量SMが抑制される、即ち、エンジン200の総合的な性能が向上するのである。
尚、図21において、アクセル開度ACCPがゼロである時刻T6以前の期間では、MAT206は作動していないが、無論、排気絞り制御中は常にMAT206が作動するように、ECU100がMAT206を制御してもよい。また、MAT206の出力は、アクセル開度ACCPや機関回転数Ne等エンジン200の各種動作条件に応じて制御されてもよい。例えば、排気絞り制御の実行中にスモーク量SMが無視し得ない程度に増加すると推定されるならば、係る推定されるスモーク量に応じてMAT206の出力が決定されてもよい。
尚、上述した本発明に係る実施形態において、本発明に係る駆動手段の一例としてMAT206が例示されているが、駆動手段としては、インテークマニホールドに設けられたパルス過給弁であってもよい。この場合、MAT206における上述した制御電力に代えて、パルス過給弁の開閉周期や開度等を制御量としてもよい。この場合、パルス過給弁によって吸気を脈動させ、動的に燃焼室に吸入することにより、上述した各種実施形態に係るMAT206と同様に本発明に係る効果が享受される。尚、駆動手段としては、エンジンの回転から独立して過給のアシスト量を制御可能であれば、これら以外のものであっても利用可能であり、本発明に係る効果を同様に得ることが可能である。
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うエンスト防止装置及び内燃機関の制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
本発明の第1実施形態に係るエンジンシステムの模式図である。 図1のエンジンシステムにおいてECUが実行する燃料噴射処理のフローチャートである。 図2の燃料噴射処理において設定される噴射量の上限値の模式図である。 図2の燃料噴射処理において設定される噴射量の模式図である。 噴射量の上限値と噴射量との関係を表す模式図である。 図1のエンジンシステムにおいてECUが実行するエンスト防止処理のフローチャートである。 噴射量の上限値と噴射量との関係を表す他の模式図である。 本発明の第2実施形態に係るエンスト防止処理のフローチャートである。 本発明の第3実施形態に係るエンジンシステムにおける実過給圧とスモーク量及びトルクの関係を表す模式図である。 本発明の第4実施形態に係るアシスト制御処理のフローチャートである。 MATの制御量の模式図である。 本発明の第5実施形態に係るアシスト制御処理のフローチャートである。 本発明の第6実施形態に係るエンジンシステムの模式図である。 SCV開度とスモーク量との関係を表す模式図である。 SCV開度と実過給圧との関係を表す模式図である。 SCV開度とMAT制御量との関係を表す模式図である。 図13のエンジンシステムに備わるエンジンの動作期間における時間領域についてSCV開度、MAT出力及び実過給圧各々の関係を例示した特性図である。 図13のエンジンシステムに備わるエンジンの過渡的な動作期間における各要素の特性を表す模式図である。 図13のエンジンシステムに備わるSCVの動作領域を表すマップである。 本発明の第7実施形態に係り、可変ノズルの開度に対応するスモーク量、実過給圧及びエキマニ圧の特性を表す模式図である。 本発明の第7実施形態に係り、エンジンの過渡的な動作期間における任意の経過時間に対するアクセル開度、実過給圧、スモーク量及びMAT出力各々の特性図である。
符号の説明
10…エンジンシステム、100…ECU、200…エンジン、206…MAT、209…過給圧センサ、211…インジェクタ、221…可変ノズル、20…エンジンシステム、300…エンジン、303…SCV。

Claims (19)

  1. 過給器及び該過給器の過給圧を上昇させるための駆動手段を備える内燃機関においてエンストを防止するためのエンスト防止装置であって、
    燃料の噴射量を、(i)前記過給圧が上昇するのに伴って増加するように設定される上限値以下の範囲で前記内燃機関の機関回転数が低下するのに応じて上昇するように又は(ii)前記内燃機関の空燃比が所定範囲に収まるように決定する噴射量決定手段と、
    前記燃料が前記決定された噴射量噴射されるように所定の噴射手段を制御する噴射制御手段と、
    前記内燃機関の機関回転数が所定値未満である場合に前記過給圧が上昇するように前記駆動手段を制御する駆動制御手段と
    を具備することを特徴とするエンスト防止装置。
  2. 前記駆動手段はモータである
    ことを特徴とする請求項1に記載のエンスト防止装置。
  3. 前記所定値は、前記内燃機関のアイドル回転数未満の値に設定される
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のエンスト防止装置。
  4. 前記内燃機関の燃焼状態が安定しているか否かを判別する判別手段を更に具備し、
    前記駆動制御手段は、前記燃焼状態が安定していないと判別された場合に前記過給圧が上昇するように前記駆動手段を更に制御する
    ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のエンスト防止装置。
  5. 前記判別手段は、前記機関回転数の変化速度に基づいて前記燃焼状態が安定しているか否かを判別する
    ことを特徴とする請求項4に記載のエンスト防止装置。
  6. 前記内燃機関は、(i)前記過給器へ供給される排気ガスの流路径を変化させることによって前記過給圧を変化させる過給圧可変手段及び(ii)前記過給器へ供給される排気ガスを除く排気ガスの少なくとも一部を吸気系に循環する排気ガス循環手段を更に具備し、
    前記エンスト防止装置は、前記機関回転数が所定値未満である場合に(i)前記過給圧が維持されるように又は(ii)前記過給圧が低下するように前記過給圧可変手段を制御する過給圧制御手段を更に具備する
    ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のエンスト防止装置。
  7. 過給器及び該過給器の過給圧を上昇させることが可能な駆動手段を備える内燃機関を制御する内燃機関の制御装置であって、
    燃料の噴射量を、(i)前記過給圧が上昇するのに伴って増加するように設定される上限値以下の範囲で前記内燃機関の機関回転数が低下するのに応じて上昇するように又は(ii)前記内燃機関の空燃比が所定範囲に収まるように決定する噴射量決定手段と、
    前記燃料が前記決定された噴射量噴射されるように所定の噴射手段を制御する噴射制御手段と、
    前記内燃機関の動作期間の少なくとも一部において前記駆動手段を作動させる駆動制御手段と
    を具備することを特徴とする内燃機関の制御装置。
  8. 前記駆動手段はモータである
    ことを特徴とする請求項7に記載の内燃機関の制御装置。
  9. 前記駆動制御手段は、前記モータに電力を供給する供給源の状態に応じて前記モータを作動させる
    ことを特徴とする請求項7又は8に記載の内燃機関の制御装置。
  10. 前記駆動手段は、パルス過給弁を含む
    ことを特徴とする請求項7から9のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。
  11. 前記内燃機関の運転条件に基づいて前記駆動手段の制御量を決定する制御量決定手段を更に具備し、
    前記駆動制御手段は、前記制御量に従って前記駆動手段を作動させ、
    前記噴射量決定手段は、前記制御量に従って前記駆動手段が作動した後、前記上限値に応じて前記噴射量を決定する
    ことを特徴とする請求項7から10のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。
  12. 前記噴射量の目標値を設定する目標値設定手段を更に具備し、
    前記駆動制御手段は、前記目標値と前記上限値との比較に基づいて前記駆動手段を作動させる
    ことを特徴とする請求項7から11のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。
  13. 前記駆動制御手段は、前記目標値が前記上限値よりも大きい場合に前記駆動手段を作動させる
    ことを特徴とする請求項12に記載の内燃機関の制御装置。
  14. 前記内燃機関の運転条件に基づいて前記上限値によって規定される前記内燃機関における所定種類の排出物の発生状態を特定する特定手段を更に具備し、
    前記駆動制御手段は、前記発生状態に応じて前記駆動手段を作動させる
    ことを特徴とする請求項7から13のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。
  15. 前記内燃機関は、気筒毎に(i)燃焼室に連通する複数の吸気流路及び(ii)該複数の吸気流路の少なくとも一方に設けられ、所定の制御量に応じて該少なくとも一方を介して前記燃焼室に供給される吸気量を増減させることにより、前記燃焼室内に形成される吸気旋回流の強度の小大を制御することが可能な旋回流制御手段を更に具備し、
    前記駆動制御手段は、前記旋回流制御手段の制御量に基づいて前記駆動手段を作動させる
    ことを特徴とする請求項7から14のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。
  16. 前記駆動制御手段は、前記吸気量が減少するのに応じて前記過給圧が上昇するように前記駆動手段を作動させる
    ことを特徴とする請求項15に記載の内燃機関の制御装置。
  17. 前記内燃機関は、前記過給器へ排気を導く排気流路における流路径を変化させることにより前記過給圧を変化させる過給圧可変手段を更に具備し、
    前記駆動制御手段は、前記流路径に基づいて前記駆動手段を作動させる
    ことを特徴とする請求項7から16のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。
  18. 前記駆動制御手段は、前記流路径が、予め前記内燃機関を暖機させるために設定される領域に属する場合に前記駆動手段を作動させる
    ことを特徴とする請求項17に記載の内燃機関の制御装置。
  19. 前記駆動制御手段は、前記流路径が減少するのに応じて前記過給圧が上昇するように前記駆動手段を作動させる
    ことを特徴とする請求項17又は18に記載の内燃機関の制御装置。
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