以下、実施形態に係るディーゼルエンジンを図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。図1,2は、実施形態に係るエンジン(エンジン本体)1の概略構成を示す。このエンジン1は、車両に搭載されると共に、軽油を主成分とした燃料が供給されるディーゼルエンジンであって、複数の気筒11a(1つのみ図示)が設けられたシリンダブロック11と、このシリンダブロック11上に配設されたシリンダヘッド12と、シリンダブロック11の下側に配設され、潤滑油が貯溜されたオイルパン13とを有している。このエンジン1の各気筒11a内には、ピストン14が往復動可能にそれぞれ嵌挿されていて、このピストン14の頂面にはリエントラント形燃焼室14aを区画するキャビティが形成されている。このピストン14は、コンロッド14bを介してクランクシャフト15と連結されている。
そうして、このエンジン1は、その幾何学的圧縮比を12以上15以下(例えば14)とした、比較的低圧縮比となるように構成されており、これによって排気エミッション性能の向上及び熱効率の向上を図るようにしている。
上記シリンダヘッド12には、各気筒11a毎に吸気ポート16及び排気ポート17が形成されているとともに、これら吸気ポート16及び排気ポート17の燃焼室14a側の開口を開閉する吸気弁21及び排気弁22がそれぞれ配設されている。
これら吸排気弁21,22をそれぞれ駆動する動弁系において、排気弁側には、当該排気弁22の作動モードを通常モードと特殊モードとに切り替える油圧作動式の可変機構(図2参照。以下、VVM(Variable Valve Motion)と称する)が設けられている。このVVM71は、その構成の詳細な図示は省略するが、カム山を1つ有する第1カムとカム山を2つ有する第2カムとの、カムプロファイルの異なる2種類のカム、及び、その第1及び第2カムのいずれか一方のカムの作動状態を選択的に排気弁に伝達するロストモーション機構を含んで構成されており、第1カムの作動状態を排気弁22に伝達しているときには、排気弁22は、排気行程中において一度だけ開弁される通常モードで作動するのに対し、第2カムの作動状態を排気弁22に伝達しているときには、排気弁22が、排気行程中において開弁すると共に、吸気行程中においても開弁するような、いわゆる排気の二度開きを行う特殊モードで作動する。
VVM71の通常モードと特殊モードとの切り替えは、エンジン駆動の油圧ポンプ(図示省略)から供給される油圧によって行われ、特殊モードは、内部EGRに係る制御の際に利用され得る。尚、こうした通常モードと特殊モードとの切り替えを可能にする上で、排気弁22を電磁アクチュエータによって駆動する電磁駆動式の動弁系を採用してもよい。また、内部EGRの実行としては、排気の二度開きに限定されるものではなく、例えば吸気弁21を2回開く、吸気の二度開きによって内部EGR制御を行ってもよいし、排気行程乃至吸気行程において吸気弁21及び排気弁22の双方を閉じるネガティブオーバーラップ期間を設けて既燃ガスを残留させる内部EGR制御を行ってもよい。尚、VVM71による内部EGR制御は、主に燃料の着火性が低いエンジン1の冷間時に行われる。
上記シリンダヘッド12には、燃料を噴射するインジェクタ18と、エンジン1の冷間時に各気筒11a内の吸入空気を暖めて燃料の着火性を高めるためのグロープラグ19とが設けられている。上記インジェクタ18は、その燃料噴射口が燃焼室14aの天井面から該燃焼室14aに臨むように配設されていて、基本的には圧縮行程上死点付近で、燃焼室14aに燃料を直接噴射供給するようになっている。
上記エンジン1の一側面には、各気筒11aの吸気ポート16に連通するように吸気通路30が接続されている。一方、上記エンジン1の他側面には、各気筒11aの燃焼室14aからの既燃ガス(排気ガス)を排出する排気通路40が接続されている。これら吸気通路30及び排気通路40には、詳しくは後述するが、吸入空気の過給を行う大型ターボ過給機61と小型ターボ過給機62とが配設されている。
吸気通路30の上流端部には、吸入空気を濾過するエアクリーナ31が配設されている。一方、吸気通路30における下流端近傍には、サージタンク33が配設されている。このサージタンク33よりも下流側の吸気通路30は、各気筒11a毎に分岐する独立通路とされ、これら各独立通路の下流端が各気筒11aの吸気ポート16にそれぞれ接続されている。
吸気通路30におけるエアクリーナ31とサージタンク33との間には、大型及び小型ターボ過給機61,62のコンプレッサ61a,62aと、該コンプレッサ61a,62aにより圧縮された空気を冷却するインタークーラ35と、上記各気筒11aの燃焼室14aへの吸入空気量を調節するスロットル弁36とが配設されている。このスロットル弁36は、基本的には全開状態とされるが、エンジン1の停止時には、ショックが生じないように全閉状態とされる。
上記排気通路40の上流側の部分は、各気筒11a毎に分岐して排気ポート17の外側端に接続された独立通路と該各独立通路が集合する集合部とを有する排気マニホールドによって構成されている。
この排気通路40における排気マニホールドよりも下流側には、上流側から順に、小型ターボ過給機62のタービン62b、大型ターボ過給機61のタービン61bと、排気ガス中の有害成分を浄化する排気浄化装置41と、サイレンサ42とが配設されている。
この排気浄化装置41は、酸化触媒41aと、ディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、フィルタという)41bとを有しており、上流側から、この順に並んでいる。酸化触媒41a及びフィルタ41bは1つのケース内に収容されている。上記酸化触媒41aは、白金又は白金にパラジウムを加えたもの等を担持した酸化触媒を有していて、排気ガス中のCO及びHCが酸化されてCO2及びH2Oが生成する反応を促すものである。また、上記フィルタ41bは、エンジン1の排気ガス中に含まれる煤等の微粒子を捕集するものである。尚、フィルタ41bに酸化触媒をコーティングしてもよい。
上記吸気通路30における上記サージタンク33とスロットル弁36との間の部分(つまり小型ターボ過給機62の小型コンプレッサ62aよりも下流側部分)と、上記排気通路40における上記排気マニホールドと小型ターボ過給機62の小型タービン62bとの間の部分(つまり小型ターボ過給機62の小型タービン62bよりも上流側部分)とは、排気ガスの一部を吸気通路30に還流するための排気ガス還流通路51によって接続されている(高圧EGR手段)。この排気ガス還流通路51には、排気ガスの吸気通路30への還流量を調整するための排気ガス還流弁51aと、排気ガスをエンジン冷却水によって冷却するためのEGRクーラ52とが配設されている。この排気ガス還流弁51aがEGR弁を構成する。
大型ターボ過給機61は、吸気通路30に配設された大型コンプレッサ61aと、排気通路40に配設された大型タービン61bとを有している。大型コンプレッサ61aは、吸気通路30におけるエアクリーナ31とインタークーラ35との間に配設されている。一方、大型タービン61bは、排気通路40における排気マニホールドと酸化触媒41aとの間に配設されている。
小型ターボ過給機62は、吸気通路30に配設された小型コンプレッサ62aと、排気通路40に配設された小型タービン62bとを有している。小型コンプレッサ62aは、吸気通路30における大型コンプレッサ61aの下流側に配設されている。一方、小型タービン62bは、排気通路40における大型タービン61bの上流側に配設されている。
すなわち、吸気通路30においては、上流側から順に大型コンプレッサ61aと小型コンプレッサ62aとが直列に配設され、排気通路40においては、上流側から順に小型タービン62bと大型タービン61bとが直列に配設されている。これら大型及び小型タービン61b,62bが排気ガス流により回転し、これら大型及び小型タービン61b,62bの回転により、該大型及び小型タービン61b,62bとそれぞれ連結された上記大型及び小型コンプレッサ61a,62aがそれぞれ作動する。
小型ターボ過給機62は、相対的に小型のものであり、大型ターボ過給機61は、相対的に大型のものである。すなわち、大型ターボ過給機61の大型タービン61bの方が小型ターボ過給機62の小型タービン62bよりもイナーシャが大きい。
吸気通路30には、小型コンプレッサ62aをバイパスする小型吸気バイパス通路63が接続されている。この小型吸気バイパス通路63には、該小型吸気バイパス通路63へ流れる空気量を調整するための小型吸気バイパス弁63aが配設されている。この小型吸気バイパス弁63aは、無通電時には全閉状態(ノーマルクローズ)となるように構成されている。
一方、排気通路40には、小型タービン62bをバイパスする小型排気バイパス通路64と、大型タービン61bをバイパスする大型排気バイパス通路65とが接続されている。小型排気バイパス通路64には、該小型排気バイパス通路64へ流れる排気量を調整するためのレギュレートバルブ64aが配設され、大型排気バイパス通路65には、該大型排気バイパス通路65へ流れる排気量を調整するためのウエストゲートバルブ65aが配設されている。レギュレートバルブ64a及びウエストゲートバルブ65aは共に、無通電時には全開状態(ノーマルオープン)となるように構成されている。
これら大型ターボ過給機61と小型ターボ過給機62は、それらが配設された吸気通路30及び排気通路40の部分も含めて、一体的にユニット化されて、過給機ユニット60を構成している。この過給機ユニット60がエンジン1に取り付けられている。
このように構成されたディーゼルエンジン1は、パワートレイン・コントロール・モジュール(以下、PCMという)10によって制御される。PCM10は、CPU、メモリ、カウンタタイマ群、インターフェース及びこれらのユニットを接続するパスを有するマイクロプロセッサで構成されている。このPCM10がEGR弁制御部及び燃焼制御部を構成する。PCM10には、図2に示すように、エンジン冷却水の温度を検出する水温センサSW1、サージタンク33に取り付けられて、燃焼室14aに供給される空気の圧力を検出する過給圧センサSW2、吸入空気の温度を検出する吸気温度センサSW3、クランクシャフト15の回転角を検出するクランク角センサSW4、車両のアクセルペダル(図示省略)の操作量に対応したアクセル開度を検出するアクセル開度センサSW5、吸気中の二酸化炭素濃度を検出する吸気CO2センサSW6、及び、排気中の二酸化炭素濃度を検出する排気CO2センサSW7の検出信号が入力され、これらの検出信号に基づいて種々の演算を行うことによってエンジン1や車両の状態を判定し、これに応じてインジェクタ18、グロープラグ19,動弁系のVVM71、各種の弁36、51a、53a、63a、64a、65aのアクチュエータへ制御信号を出力する。
(エンジンの燃焼制御の概要)
上記PCM10によるエンジン1の基本的な制御は、主にアクセル開度に基づいて要求負荷(即ち、目標トルク)を決定し、これに対応する燃料の噴射量や噴射時期等をインジェクタ18の作動制御によって実現するものである。要求負荷は、アクセル開度が大きくなるほど、またエンジン回転数が高くなるほど、大きくなるように設定され、要求負荷とエンジン回転数とに基づいて燃料の噴射量が設定される。噴射量は、要求負荷が高くなるほど、また、エンジン回転数が高くなるほど大きくなるように設定される。また、スロットル弁36や排気ガス還流弁51aの開度の制御(外部EGR制御)や、VVM71の制御(内部EGR制御)によって、気筒11a内への排気の還流割合(EGR率)を制御する。
図3は、エンジン1の半暖機及び温間時の、エンジンの状態に応じた燃焼モードを示すマップである。図3に示すように、エンジン1は、半暖機及び温間時には、エンジン回転数とエンジン負荷(燃料の実総噴射量)とに応じて、複数の運転領域が設定され、各運転領域毎に燃焼モードが設定されている。運転領域Aは、定常状態においてEGRが実行されると共に、燃焼モードが予混合燃焼モードと拡散燃焼モードとで切り替えられる運転領域である。運転領域Aは、相対的に低回転でかつ低負荷の運転領域である。詳しくは、運転領域Aは、エンジンの回転数を低回転側と高回転側との2つに分けた場合の低回転側であって、エンジンの負荷を低負荷側と高負荷側との2つに分けた場合の低負荷側の領域である。
以下、各運転領域の燃料噴射形態について、図4〜6を参照しながら説明する。尚、図4〜図6に示す燃料噴射量や熱発生率は、これらの図を相互に比較したときに、必ずしも、相対的な燃料噴射量の大小や熱発生率の大小を示してはいない。
図4は、運転領域a1における燃料噴射形態(上図)及びそれに伴う気筒11a内の熱発生率の履歴の一例(下図)を示している。運転領域a1は、運転領域A内の領域であって、アイドル領域を含む、相対的に低負荷の運転領域である。詳しくは、運転領域a1は、運転領域Aを、エンジンの負荷の低負荷と中負荷と高負荷との3つに分けた場合の低負荷の領域である。この運転領域a1では、PCM10は、拡散燃焼モードとなり、エンジン1に拡散燃焼を生じさせる。拡散燃焼とは、燃料と空気とが拡散及び混合しながら燃焼が進行していく燃焼であって、換言すれば、燃料噴射と燃焼とが時間的に一部重なる燃焼である。この拡散燃焼は、予混合燃焼に比べて、着火遅れが短いため、燃焼の開始タイミングを制御し易い。また、拡散燃焼は、予混合燃焼に比べて、燃焼が緩慢であるため、燃焼圧が低く燃焼騒音が小さくなる。
運転領域a1における燃料噴射形態は、圧縮上死点前の圧縮行程中において、比較的噴射量の多い燃料噴射(プレ噴射)を、所定の時間間隔を空けて2回実行すると共に、圧縮上死点付近において、比較的パルス幅の短い主噴射を実行し、さらにその後に、1回の燃料噴射(アフタ噴射)を実行する。従って、この運転領域a1では、合計4回の燃料噴射を実行する。プレ噴射は、十分な熱発生率を有するプレ燃焼を、その熱発生率のピークが圧縮上死点前の所定の時期に発生するように、生起させる。換言すれば、主燃焼の開始前にプレ燃焼を生起させ、それにより主噴射を開始する時点での気筒11a内の温度及び圧力を高めておく。このことは主噴射により噴射された燃料の着火遅れ時間を短くする。主噴射は、図例で示すように圧縮上死点前の所定のタイミング、又は、圧縮上死点で噴射を開始するが、着火遅れ時間が短いことで、その主噴射に伴う主燃焼は圧縮上死点付近において開始するようになる。このことは、熱効率の向上、ひいては燃費の向上に有利になり得る。また、上記の燃焼は、その後の主燃焼の熱発生率の上昇を緩慢にさせる。このことは燃焼騒音を低減させて、NVH(Noise Vibration Harshness)性能を高める上で有利になり得る。つまり、プレ噴射及びそれに伴うプレ燃焼は、主燃焼の制御性を高めて主燃焼を所望のタイミングで発生させ、それにより、燃費の向上及びNVH性能の向上に有利になり得る。アフタ噴射は、主燃焼の最中、言い換えると主燃焼によって熱発生している最中に実行される燃料噴射であり、アフタ噴射によって噴射された燃料噴霧の少なくとも一部は、圧縮上死点後で下降しているピストン14のキャビティ内に至る。好ましくは、アフタ噴射によって噴射された燃料噴霧の大部分がキャビティ内に至る。このアフタ噴射は、主燃焼を促進して後燃え期間を短縮させる。すなわち、アフタ噴射の実行は、主燃焼の立ち上がりに対しては何の影響を与えることなく、その燃焼期間を短くすることを可能にする。このことは、トルク向上に有利になり、ひいては燃費の向上に寄与し得る。
図5は、運転領域a2における燃料噴射形態(上図)及びそれに伴う気筒11a内の熱発生率の履歴の一例(下図)を示している。運転領域a2は、運転領域A内の領域であって、相対的に中負荷の運転領域である。詳しくは、運転領域a2は、運転領域Aを、エンジンの負荷の低負荷と中負荷と高負荷との3つに分けた場合の中負荷の領域である。この運転領域a2では、PCM10は、予混合燃焼モードとなり、エンジン1に予混合燃焼を生じさせる。予混合燃焼とは、燃料と空気とを混合させた後に着火させる燃焼であって、換言すれば、燃料噴射後に燃焼が開始する燃焼である。この予混合燃焼は、燃料と空気とがある程度混合された上での燃焼であるため、気筒11a内の酸素を有効に使うことができ、筒内酸素濃度が低い場合でもスモークの発生を抑制することができる。
運転領域a2における燃料噴射形態は、圧縮行程中(圧縮上死点前)において、所定の時間間隔を空けて3回の燃料噴射を実行すると共に、相対的に早いタイミングで噴射する燃料噴射量を相対的に多く、相対的に遅いタイミングで噴射する燃料噴射量を相対的に少なくしている。これは、可及的に多くの燃料を早期に噴射することで、燃料の予混合性を高めるためである。また、3回の燃料噴射は、その各回の噴射によって噴射された燃料の全てが、キャビティ内に至るタイミングで実行される。こうして噴射した燃料は、空気と十分に混合された状態で圧縮上死点付近において自着火により燃焼する。このような予混合燃焼モードは、燃費及び排気エミッションの点で有利になる。すなわち、予混合燃焼(図中の実線)は、破線で示す拡散燃焼に比べて燃焼期間が短いため、所望の時期にまとまったトルクを発生することができ、燃費を向上させることができる。
図6は、運転領域a3における燃料噴射形態(上図)及びそれに伴う気筒11a内の熱発生率の履歴の一例(下図)を示している。運転領域a3は、運転領域A内の領域であって、相対的に高負荷の運転領域である。詳しくは、運転領域a3は、運転領域Aを、エンジンの負荷の低負荷と中負荷と高負荷との3つに分けた場合の高負荷の領域である。この運転領域a3では、PCM10は、拡散燃焼モードとなり、エンジン1に拡散燃焼を生じさせる。運転領域a3における燃料噴射形態は、圧縮上死点前の圧縮行程中において、比較的噴射量の多い燃料噴射(プレ噴射)を1回実行すると共に、圧縮上死点付近において、比較的パルス幅の短い主噴射を実行し、さらにその後に、1回の燃料噴射(アフタ噴射)を実行する。従って、この運転領域a3では、合計3回の燃料噴射を実行する。運転領域a3の拡散燃焼モードにおいても、プレ噴射及びそれに伴うプレ燃焼によって、主燃焼の制御性を高めて主燃焼を所望のタイミングで発生させ、それにより、燃費の向上及びNVH性能の向上させることができる。すなわち、拡散燃焼(図中の実線)は、破線で示す予混合燃焼に比べて熱発生率の上昇が緩慢になるため、熱発生率の最大値を抑制することができ、燃焼騒音を抑制することができる。運転領域a3では、低負荷側の運転領域a1に比べて、燃料噴射量が多いため、この燃焼騒音の抑制が特に有効となる。
運転領域Bでは、PCM10は、予混合燃焼モードとなることはなく、常に拡散燃焼モードとなり、エンジン1に拡散燃焼を生じさせる。運転領域Bにおける燃料噴射形態は、エンジン1の負荷及び回転数に応じて、プレ噴射の有無、回数及びタイミング、主噴射の回数及びタイミング、並びにアフタ噴射の有無、回数及びタイミングが様々に設定される。
また、PCM10は、各運転領域で所望の燃焼を実行させるために、エンジン1の運転状態に応じて排気ガス還流弁51aを制御することによって気筒11a内の酸素濃度を調整している。図7は、エンジン負荷及び回転数に対する筒内酸素濃度の変化特性図の一例を示している。図7に示すように、PCM10は、エンジン1の要求負荷の増大に伴って、筒内酸素濃度が一旦減少して極小となった後、増加するように、排気ガス還流弁51aの開度を制御する。
詳しくは、上記低負荷側拡散領域a1では、PCM10は、エンジン1の要求負荷が増大するにつれて、排気ガス還流弁51aを、筒内酸素濃度が減少するように、即ち、開度が大きくなるように制御する。PCM10は、筒内酸素濃度が所定値となるまでは、拡散燃焼モードとなる。この所定値は、予混合燃焼が可能な筒内酸素濃度である。
そして、筒内酸素濃度が所定値以上となると、PCM10は、予混合燃焼モードとなる。換言すれば、エンジン1の運転状態が予混合領域a2となるときには、PCM10は、筒内酸素濃度が所定値以上となるように、排気ガス還流弁51aを制御する。尚、図中のハッチング部分が予混合領域a2を示している。予混合領域では、PCM1は、エンジン1の要求負荷が増大するにつれて、排気ガス還流弁51aを、筒内酸素濃度が一旦減少した後上昇に転じるように、即ち、低負荷側では開度が大きくなるものの、やがて極大となり、高負荷側では開度が小さくなるように制御する。
予混合領域a2よりも高負荷側の領域である高負荷側拡散領域a3では、PCM10は、エンジン1の要求負荷が増大するにつれて、排気ガス還流弁51aを、筒内酸素濃度が上昇するように、即ち、開度が小さくなるように制御する。つまり、エンジン1の負荷が大きくなるにつれて、気筒11a内からEGRガスが減少していく。
このように、予混合領域a2では、低負荷側及び高負荷側拡散領域a1,a3よりも筒内酸素濃度が低くなるように調整される。つまり、予混合燃焼を行うためには、気筒11a内に燃料を噴射した後、着火するまでの間に燃料と空気とを十分に混合する必要があるため、ある程度の着火遅れが必要である。そこで、予混合領域a2では、排気ガス還流弁51aの開度を大きくして筒内酸素濃度を低くしている。このように、予混合領域a2では、筒内酸素濃度を抑えることによって着火遅れを確保して、予混合燃焼を実現可能な環境を作り出している。
一方、エンジン1の要求負荷が低い領域では、気筒11a内に供給される燃料が少ないため、燃焼が不安定となる傾向にある。そのため、EGRガスを気筒11a内に大量に導入することは好ましくなく、筒内酸素濃度を可及的に高めて、燃焼が安定する環境を作る必要がある。そこで、低負荷側拡散領域a1では、排気ガス還流弁51aの開度を小さくすることによって、筒内酸素濃度を高めている。そして、筒内酸素濃度が高い場合には、着火遅れを十分に確保できないため、気筒11a内に燃焼を噴射すると、燃料と空気とが混合される前に燃焼が開始してしまい、予混合燃焼を行うことが難しい。そこで、この領域a1における燃焼形態を拡散燃焼としている。そもそも、拡散燃焼は、予混合燃焼に比べて、燃焼の開始タイミングの制御が容易であるため、このような燃焼が不安定な環境においては拡散燃焼の方が燃焼の安定化の観点からは好ましい。
また、エンジン1の要求負荷が高い領域では、燃料供給量(即ち、燃料噴射量)が多くなる。燃料供給量が多くなると、その供給量に応えるべく、筒内酸素濃度を高める必要がある。そこで、高負荷側拡散領域a3では、排気ガス還流弁51aの開度を小さくすることによって、筒内酸素濃度を高めている。そして、筒内酸素濃度が高くなると、着火遅れを十分に確保できなくなり、予混合燃焼を行うことが難しくなる。そのため、この領域a3における燃焼形態を拡散燃焼としている。また、高負荷側拡散領域a3では、燃料供給量が多いため、燃焼騒音が大きくなる。それに対して、高負荷側拡散領域a3では、燃焼形態を拡散燃焼とすることによって、燃焼騒音を小さくして、NVH性能を向上させている。つまり、拡散燃焼は、予混合燃焼に比べて、燃焼圧が低いため、燃焼騒音が小さい点で有利である。
一方、エンジン1の回転数が相対的に高回転であるときには、PCM10は、エンジン1の要求負荷の増大に伴って、筒内酸素濃度が一旦減少して極小となった後、上昇するように、排気ガス還流弁51aの開度を制御するものの、筒内酸素濃度が極小となっても予混合燃焼を実現可能な値までは減少しない。つまり、エンジン1の回転数が高回転の場合は、ピストン14の動きが速いため、噴射された燃料の全てをキャビティ内に到達させることが可能な噴射期間は短くなる。そのため、予混合燃焼に適したタイミングで燃焼噴射を実行することが難しい。そこで、エンジン1の回転数が相対的に高回転の領域では、エンジン1の燃焼を拡散燃焼とし、それに合わせて、筒内酸素濃度を低下させ過ぎないようにし、その極小値を拡散燃焼を実行し得る範囲に収めている。こうして、エンジン1の高回転領域では拡散燃焼とすることによって燃焼を安定させることができる。それに加えて、拡散燃焼を実行し得る範囲内で筒内酸素濃度を低下させることによって、エミッション性能を向上させることができる。
つまり、PCM10は、上記の燃料噴射形態の切替に加えて、排気ガス還流弁51aを制御することによって、予混合燃焼モードと拡散燃焼モードとを切り替えている。詳しくは、PCM10は、排気ガス還流弁51aを上述のように制御すると共に、各センサのの出力から筒内酸素濃度を算出して、算出された筒内酸素濃度が予混合燃焼に対応する範囲(図7のハッチング領域)内であれば予混合燃焼モードとなり、算出された筒内酸素濃度が拡散燃焼に対応する範囲内であれば拡散燃焼モードとなる。筒内酸素濃度の算出は、例えば、エアフローセンサ(図示省略)、過給圧センサSW2、排気流量センサ(図示省略)及び排気酸素濃度センサ(図示省略)等の出力に基づいて算出される。ただし、筒内酸素濃度の算出方法は、これに限られるものではない。
尚、エンジン1が半暖機(例えば、エンジン水温が40℃)となる前、即ち、冷間時には、排気浄化装置41を活性化させるべく、内部EGRにより筒内温度を高めたり、グロープラグ19がON状態となっており、予混合燃焼を行うことができない。そのため、エンジン1が半暖機となる前は、予混合燃焼モードと拡散燃焼モードの切替は実行されず、拡散燃焼を基本とした冷間時特有の燃焼制御が行われる。
このように、エンジン1においては、筒内酸素濃度が要求負荷に応じて調整される。ここで、要求負荷が増大していく場合には、筒内酸素濃度は、図7に示す、エンジン負荷及び回転数に対する筒内酸素濃度の変化特性図を低負荷側から高負荷側へ辿るように調整される。そして、この要求負荷の増大が急なときには、筒内酸素濃度も迅速に調整される必要がある。特に、筒内酸素濃度を上昇させるときは、要求負荷の増大に応じて燃料供給量を増加させるときであり、筒内酸素濃度を早急に上昇させることができないと、要求負荷に対応した燃料供給量を供給することができず、結果として、要求負荷の迅速な増大に応えることができない。
そこで、PCM1は、エンジン1が筒内酸素濃度の極小値に対応する負荷よりも低負荷側から当該極小値に対応する負荷を超えて加速されるときには、要求負荷の増加率が大きくなるほど筒内酸素濃度が高くなるように前記排気ガス還流弁51aの制御量を調整する。以下に、排気ガス還流弁51aの制御量の調整について詳しく説明する。図8は、排気ガス還流弁51aの制御量を、要求負荷の増加率に応じて調整する際のフローチャートを示し、図9は、要求負荷の増加率に応じて調整される、要求負荷に対する筒内酸素濃度の変化特性の一例を示し、図10は、要求負荷の増加率に応じた、エンジン負荷、回転数及び筒内酸素濃度の変化特性図の一例を示している。
PCM1は、まず、ステップS1において、目標トルク(即ち、要求負荷)とエンジン回転数から筒内酸素濃度目標値Aを算出する。
次に、ステップS2において、目標トルクの増加率から筒内酸素濃度の調整量Δを算出する。具体的には、アクセルペダルの踏み込み量の増加率から目標トルクの増加率を算出する。PCM1は、目標トルクの増加率に対する調整量Δのマップ、テーブル又は関数を有しており、算出された目標トルクの増加率から調整量Δを求める。ここで、調整量Δは、目標トルクの増加率が大きくなるほど、大きくなるように設定されている。
続いて、ステップS3において、筒内酸素濃度目標値Aが現在の筒内酸素濃度指令値B以上か否かを判定する。すなわち、筒内酸素濃度を減少させるか否かを判定する。筒内酸素濃度指令値Bは、排気ガス還流弁51aに指令値を出力する際に基準となる値である。実際の筒内酸素濃度がこの筒内濃度指令値Bとなるように、排気ガス還流弁51aの開度が制御される。
そして、筒内酸素濃度目標値Aが筒内酸素濃度指令値Bよりも小さい(No)ときには、ステップS5へ進む。筒内酸素濃度目標値Aが筒内酸素濃度指令値Bよりも小さいときは、筒内酸素濃度を減少させるときであって、排気ガス還流弁51aの開度を大きくするときである。ステップS5では、筒内酸素濃度目標値Aに調整量Δを足して、その値を筒内酸素濃度指令値Bとする。そして、PCM1は、排気ガス還流弁51aをこの筒内酸素濃度指令値Bに応じた開度となるように制御する。つまり、筒内酸素濃度を減少させるときには、筒内酸素濃度目標値Aをそのまま筒内酸素濃度指令値Bとするのではなく、筒内酸素濃度目標値Aに調整量Δを足して筒内酸素濃度指令値Bとする。その結果、筒内酸素濃度を減少させるときには、筒内酸素濃度指令値Bが目標値Aよりも高めに調整(補正)される。
その後、ステップS6へ進み、筒内酸素濃度指令値Bが筒内酸素濃度目標値A以下となるか否かを判定する。筒内酸素濃度指令値Bが筒内酸素濃度目標値A以下(Yes)のときには、ステップS7へ進み、筒内酸素濃度指令値Bを筒内酸素濃度目標値Aとする。すなわち、筒内酸素濃度目標値Aを、調整量Δを足すことなく、筒内酸素濃度指令値Bとする。一方、筒内酸素濃度指令値Bが筒内酸素濃度目標値Aよりも大きい(No)ときには、ENDへ進む。
一方、ステップS3において、筒内酸素濃度目標値Aが現在の筒内酸素濃度指令値B以上(Yes)のときには、ステップS4へ進む。筒内酸素濃度目標値Aが現在の筒内酸素濃度指令値B以上のときは、筒内酸素濃度を上昇させるときであって、排気ガス還流弁51aの開度を小さくするときである。ステップS4では、筒内酸素濃度目標値Aを筒内酸素濃度指令値Bとする。すなわち、筒内酸素濃度目標値Aを、調整量Δを足すことなく、そのまま筒内酸素濃度指令値Bとする。その結果、筒内酸素濃度を上昇させるときには、筒内酸素濃度指令値Bが目標値Aの通りに設定される。
このように制御される結果、筒内酸素濃度は、図9に示すように変化する。つまり、図中の一点鎖線で示す、要求負荷の増加率が大きい場合(即ち、急加速時)には、筒内酸素濃度が減少する際に、筒内酸素濃度が目標値よりも高めに調整される。そのため、筒内酸素濃度の極小値は、図中の実線で示す目標値に比べて、大きくなる。尚、図9の例では、調整量Δは、要求負荷が大きくなるほど大きくなっている。すなわち、筒内酸素濃度は、極小値の近傍ほど、大きく高濃度側へ調整されている。
やがて、筒内酸素濃度が上昇に転じるが、筒内酸素濃度が上昇し始める時点では、そのときの筒内酸素濃度(即ち、極小値)は目標値よりも高めになっている。そのため、筒内酸素濃度を目標値の通りに調整すべく排気ガス還流弁51aが制御されても、実際の筒内酸素濃度は、始めのうちは目標値よりも高めの値になっており、しだいに目標値に収束していく。つまり、急加速時には、筒内酸素濃度を上昇させる際に、実際の筒内酸素濃度が要求負荷に応じた本来の値(目標値)よりも前もって高めに調整される。このように、筒内酸素濃度を早めに上昇させることによって、要求負荷の増大に応じて燃料供給量を増加させようとするときには筒内酸素濃度が既に燃料供給量に応じた値となっているため、増量させた燃料をすぐに供給することができる。その結果、迅速な加速を実現することができる。
かかる構成では、要求負荷の増加率が大きいほど、筒内酸素濃度の極小値が大きくなるが、要求負荷の増加率が所定値以上となると、筒内酸素濃度の極小値が、予混合燃焼に対応する濃度(図7のハッチング領域)の上限値(例えば、15重量%)よりも高くなる。このような場合には、エンジン1の燃焼は、拡散燃焼のまま出力トルクを増大させていく。すなわち、要求負荷の増加率が当該所定値未満のときには、要求負荷の増大に伴って、エンジン1の燃焼は、拡散燃焼、予混合燃焼、拡散燃焼の順で切り替わるが、要求負荷の増加率が当該所定値以上のときには、予混合燃焼モードにならないため、要求負荷が増大しても、拡散燃焼のままである。筒内酸素濃度の極小値が、予混合燃焼に対応する濃度よりも高いということは、筒内酸素濃度が予混合燃焼を実行できる程度に低下しないということである。このような場合には、予混合燃焼を行うことなく、拡散燃焼を実行することによって、燃焼を安定させることができる。
例えば、図10に示すように、実線の座標軸上の運転領域a1から加速する場合には、要求負荷の増加率が所定値未満である緩加速時には、要求負荷が増大するにつれて、筒内酸素濃度が低下し、運転領域a1から運転領域a2に突入する(実線の座標軸と一点鎖線の座標軸の間の領域参照)。運転領域a1では、拡散燃焼であるが、運転領域a2では、予混合燃焼となる。要求負荷が増大すると、筒内酸素濃度が上昇に転じ、筒内酸素濃度を上昇させながら、出力トルクを増大させていく(一点鎖線の座標軸と破線の座標軸の間の領域参照)。要求負荷のさらなる増大に伴って、筒内酸素濃度はさらに上昇し、エンジン1の運転状態は運転領域a3に突入し、燃焼は拡散燃焼となる(破線の座標軸と実線の座標軸の間の領域参照)。そこから、要求負荷がさらに増大し、筒内酸素濃度を上昇させつつ出力トルクを増大させていく(実線の座標軸と点線の座標軸の間に領域参照)。
一方、要求負荷の増加率が所定値以上である急加速時の一例である、全開加速時(図9の二点鎖線に対応)には、実線の座標軸上の運転領域a1から筒内酸素濃度を可及的に上昇させた上で、要求負荷の増大に応じて出力トルクを増大させていく。この場合、実線の座標軸よりも、破線や一点鎖線の座標軸側の領域には突入することなく、点線の座標軸側の領域へ突入していく。つまり、運転領域a2に突入することがないので、拡散燃焼のまま、出力トルクを増大させていく。
したがって、本実施形態によれば、筒内酸素濃度を要求負荷の増大に伴って、一旦低下させた後に上昇させるように排気ガス還流弁51aを制御するエンジン1において、要求負荷が増加するときには、その増加率が大きいほど、排気ガス還流弁51aの制御量を、筒内酸素濃度が高くなる方向へ調整することによって、筒内酸素濃度の急加速時の加速遅れを抑制することができる。その結果、加速性能を向上させることができる。
この際に、排気ガス還流弁51aの開度の極大値を小さくするように調整することによって、筒内酸素濃度の最低値を高めることができ、筒内酸素濃度が低下し過ぎることを防止することができる。その結果、筒内酸素濃度の上昇に早急に対応することができる。
尚、上記の構成では、要求負荷の増加率が大きいときには、筒内酸素濃度を低下させる際の筒内酸素濃度目標値Aを調整量Δで補正しているが、筒内酸素濃度を低下させる際の筒内酸素濃度を目標値よりも高めに調整する方法はこれに限られるものではない。例えば、要求負荷の増加率が大きいときには、筒内酸素濃度を低下させる際の筒内酸素濃度目標値Aはそのままで、排気ガス還流弁51aの弁開動作速度を遅くするようにしてもよい。詳しくは、制御周期ごとに出力信号を排気ガス還流弁51aに出力して、排気ガス還流弁51aの開度を制御する構成においては、1回の出力で調整できる開度の最大調整量を小さくすることによって、排気ガス還流弁51aの弁開動作速度を遅くすることができる。すなわち、最大調整量を小さくすると、排気ガス還流弁51aの開度を所望の開度まで開かせるのに要する時間が長くなる。一方、筒内酸素濃度を上昇させる際の排気ガス還流弁51aの弁閉動作速度は遅くしない。詳しくは、最大調整量を元に戻す。
その結果、要求負荷が増大していくときであって且つ筒内酸素濃度を減少させるときには、排気ガス還流弁51aの開度が、要求負荷の増大に伴って減少していく筒内酸素濃度目標値Aに応じた値に追従できないため、実際の筒内酸素濃度は該目標値Aに達しない。やがて、筒内酸素濃度を上昇させることになるが、実際の筒内酸素濃度は目標値Aに達することなく上昇に転じることになるため、結果として、筒内酸素濃度の極小値が高濃度側へ(即ち、排気ガス還流弁51aの開度の極大値が小さくなる方向へ)調整されることになる。また、筒内酸素濃度が上昇する際の排気ガス還流弁51aの動作速度は元に戻っているため、排気ガス還流弁51aの開度は、要求負荷の増大に伴って上昇していく筒内酸素濃度目標値Aに応じた値に可及的に追従する。かかる構成の場合、要求負荷の増加率が大きいほど、実際の筒内酸素濃度と目標値Aとの乖離が大きくなるため、結果として、要求負荷の増加率が大きいほど、筒内酸素濃度の極小値が高濃度側へ(即ち、排気ガス還流弁51aの開度の極大値が小さくなる方向へ)大きく調整されることになる。尚、最大調整量を、要求負荷の増加率が大きいほど、小さくしてもよい。
また、このように、排気ガス還流弁51aの弁開動作速度を調整することによって、要求負荷の増大時には、上述のような制御を実現することができる一方、定常状態においては、排気ガス還流弁51aの開度を目標値に到達させることができる。すなわち、排気ガス還流弁51aの開度を調整するのは、要求負荷が増大するように変化しているときだけでよいため、定常状態においては、当初の目標値に達することが好ましい。しかし、上記の構成のように目標値を調整してしまうと、定常状態においても、開度は変更後の目標値までしか達しない。それに対して、排気ガス還流弁51aの弁開動作速度を調整する場合には、時間を要するものの、いずれは開度が目標値に達する。つまり、定常状態においては、開度を目標値に到達させることができる。
また、要求負荷の増加率が所定値以上のときには、予混合燃焼モードとなることなく、拡散燃焼モードのまま燃焼を実行することによって、燃焼を安定させることができる。
また、排気ガス還流弁51aの制御に対する筒内酸素濃度の応答性が悪いため、筒内酸素濃度は図9の破線で示すようにオーバーシュートする傾向がある。しかし、前述の如く、要求負荷の増加率が大きいほど、排気ガス還流弁51aの制御量を筒内酸素濃度が高くなる方向へ調整することによって、上述のオーバーシュートも抑制することができる。
《その他の実施形態》
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
尚、拡散燃焼モードにおけるプレ噴射、主噴射及びポスト噴射の回数は上記の回数に限定されるものではなく適宜設定すればよい。また、予混合燃焼モードにおける燃料噴射の回数は上記の回数に限定されるものではなく適宜設定すればよい。また、各燃料噴射における供給量も上記の態様に限定されるものではなく適宜設定すればよい。さらに、各燃料噴射のタイミングも上記の態様に限定されるものではなく適宜設定すればよい。
また、エンジン1が半暖機及び温間時に予混合燃焼モードと拡散燃焼モードとの切替制御を行うようにしているが、これに限られるものではない。すなわち、排気浄化装置41、特に、酸化触媒41aの活性化が完了し且つグロープラグ19がOFF状態であれば、予混合燃焼を行うことができる。つまり、酸化触媒41aの活性化が完了し且つグロープラグ19がOFF状態のときに、予混合燃焼モードと拡散燃焼モードとの切替制御を行うようにしてもよい。
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。