JP2006327369A - 車両の制動制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 車両の制動力を保持して停止状態を維持する場合に、液圧式ブレーキ装置に過大な負荷がかかることを防止しつつ、停止状態を確実に維持する。
【解決手段】 ブレーキ液圧を保持して制動力を保持する第1の制動力保持手段(ステップS101,S102)と、パーキングブレーキにより制動力を保持する第2の制動力保持手段(ステップS109)とを備えた車両の制動制御装置において、車両の位置している路面状態を検出する路面状態検出手段(ステップS103,104)と、第1の制動力保持手段により制動力が保持された状態で、路面状態検出手段により検出された路面状態が、予め定められた所定の条件を満たす状態である場合に、第2の制動力保持手段による制動力の保持を禁止する制動力切替禁止手段(ステップS104,105)とを備えている。
【選択図】 図1
【解決手段】 ブレーキ液圧を保持して制動力を保持する第1の制動力保持手段(ステップS101,S102)と、パーキングブレーキにより制動力を保持する第2の制動力保持手段(ステップS109)とを備えた車両の制動制御装置において、車両の位置している路面状態を検出する路面状態検出手段(ステップS103,104)と、第1の制動力保持手段により制動力が保持された状態で、路面状態検出手段により検出された路面状態が、予め定められた所定の条件を満たす状態である場合に、第2の制動力保持手段による制動力の保持を禁止する制動力切替禁止手段(ステップS104,105)とを備えている。
【選択図】 図1
Description
この発明は、車輪に付与する制動力を制御する車両の制動制御装置に関するものである。
通常、車両には、制動力を制御する装置として、マスタシリンダからのブレーキ液圧により、ホイールシリンダを動作させて車輪に制動力を付与する液圧式ブレーキ装置と、ワイヤやロッドなどによる機械的な操作機構により、例えばブレーキシューを動作させて車輪に制動力を付与する機械式ブレーキ装置、すなわちいわゆるパーキングブレーキ(駐車ブレーキ)とが装備されている。これらのブレーキ装置によって得られる車両の制動力を、車両の駆動力あるいは動力源の出力トルクと関連させて制御することにより、例えば登坂路での発進時に、車両の後退を防止してスムーズに発進させることが行われている。その一例として、ブレーキペダルの踏み込み開放後もブレーキ液圧を保持するとともに、車両自体の発進駆動力の上昇に応じて、保持したブレーキ液圧の解除を行う車両用ブレーキ装置に関する発明が、特許文献1に記載されている。
この特許文献1に記載されている車両用ブレーキ装置は、複数系統に分けられたブレーキ液圧通路に、ブレーキ液圧の保持・解除を行うブレーキ液圧保持手段が設けられ、そのブレーキ液圧保持手段により保持されたブレーキ液圧の解除が、ブレーキ液圧通路の各系統ごとにそれぞれ時間差を設けて行われるように構成されている。そのため、保持されたブレーキ液圧の解除が一気に行われることがなく、その結果ブレーキ力の解除を滑らかに行うことができる、とされている。
また、特許文献2には、坂路の勾配を検出または推定することなく制動力を制御し、スムーズな発進動作を可能にすることを目的として、油圧ブレーキ装置もしくは電動パーキングブレーキにより制動力が保持された後、その状態でドライバによりアクセル操作が行われると、制動力が徐々に減少されて、車両をアクセル開度および停止路面の勾配に応じた速度で移動を開始させるように構成された自動ブレーキ装置に関する発明が記載されている。
特開2001−354126号公報
特開2004−75055号公報
上記の特許文献1に記載されている車両用ブレーキ装置は、液圧式ブレーキ装置のブレーキ液圧通路にブレーキ液圧保持手段が設けられていて、ホイールシリンダに供給されるブレーキ液圧の保持・解除を行うようになっている。すなわち、電磁弁を主として構成されるブレーキ液圧保持手段(ブレーキアクチュエータ)が、液圧式ブレーキ装置のマスタシリンダとホイールシリンダとを結ぶブレーキ液圧通路の途中に設けられ、電磁弁を遮断位置に制御することによりホイールシリンダに供給されたブレーキ液圧を保持して車両の制動力を保持し、電磁弁を連通位置に制御することによりホイールシリンダに供給されたブレーキ液圧を解放して車両の制動力を解除するように構成されている。
この特許文献1に記載されている車両用ブレーキ装置では、液圧式ブレーキ装置のホイールシリンダに供給されるブレーキ液圧を保持することによって車両の制動力が保持され、運転者がブレーキペダルの踏み込みを解放した後も、車両の制動力を保持して車両の停止状態を維持することができる。しかしながら、ブレーキ液圧が保持されて制動力が保持された状態で、例えば車両の変速機のシフトポジションとして、N(ニュートラル)ポジションや自動変速機におけるP(パーキング)レンジなどが選択された場合は、運転者の発進操作が行われるまで制動力が保持された状態が継続される可能性があり、このとき、運転者がパーキングブレーキを操作することなく、制動力が保持された状態、すなわちブレーキ液圧が保持された状態が長時間継続されると、ブレーキ液圧を保持するために作動させられるブレーキアクチュエータに大きな負荷がかかる場合があった。
そこで、上記のように液圧式ブレーキ装置による制動力の保持状態が長時間継続される可能性がある場合に、例えば特許文献2に記載されているような電動パーキングブレーキを作動させて車両の制動力を保持し、液圧式ブレーキ装置による制動力の保持状態を解除することにより、液圧式ブレーキ装置に過大な負荷がかかることを回避することができる。
しかしながら、パーキングブレーキは、主に車両が停止した際にその停止状態を維持するための制動装置であるため、パーキングブレーキによる制動力は、車両の制動力全般を制御する液圧式ブレーキ装置による制動力と比較して小さくなっている。すなわち、液圧式の操作機構により四輪全てに制動力が付与される液圧式ブレーキ装置による制動に対して、パーキングブレーキでは、通常、液圧式の操作機構による制動力よりも相対的に小さな制動力が付与される構成となってている(例えば、パーキングブレーキの機械的な操作機構が、液圧式の操作機構による制動力よりも相対的に小さな制動力が付与される構成となっている場合や、後輪のみもしくは四輪のうちのいずれか二輪のみにパーキングブレーキの機械的な操作機構により、液圧式の操作機構による制動力よりも相対的に小さな制動力が付与される構成となっている場合)。
そのため、例えば傾斜角の大きな坂路の途中や、雪道や凍結路などの路面摩擦係数が低いいわゆる低μ路で車両が停止し、液圧式ブレーキ装置により車両の制動力が保持された場合に、液圧式ブレーキ装置に過大な負荷がかかることを回避するため、液圧式ブレーキ装置による制動力の保持状態からパーキングブレーキによる制動力の保持状態に切り替えると、両者のブレーキ装置の間での制動力の大きさの相違により、坂路途中や低μ路での車両の停止状態を維持できなくなる場合があった。このように、上記に示すような従来の技術においては、未だ改良の余地があった。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、液圧式ブレーキ装置およびパーキングブレーキにより制動力を保持し車両の停止状態を維持する場合に、ブレーキ液圧が保持された状態が長時間継続されることで液圧式ブレーキ装置に過大な負荷がかかってしまうことを防止しつつ、車両の停止状態を確実に維持することのできる制動制御装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、運転者のブレーキ操作とは別にホイールシリンダ内のブレーキ液圧を保持して車輪に付与する制動力を保持する第1の制動力保持手段と、パーキングブレーキを運転者の操作と独立して制御することにより車輪に付与する制動力を保持する第2の制動力保持手段とを備えた車両の制動制御装置において、前記車両の位置している路面状態を検出する路面状態検出手段と、前記第1の制動力保持手段により前記制動力が保持された状態で、前記路面状態検出手段により検出された前記路面状態が、予め定められた所定の条件を満たす状態である場合に、前記第2の制動力保持手段による前記制動力の保持を禁止する制動力切替禁止手段とを備えていることを特徴とする制御装置である。
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記路面状態検出手段は、前記車両が位置している路面の傾斜角を検出する手段を含み、前記制動力切替禁止手段は、前記第1の制動力保持手段により前記制動力が保持された状態で、前記路面状態検出手段により検出された前記路面の傾斜角が、予め定められた所定角度よりも大きい場合に、前記第2の制動力保持手段による前記制動力の保持を禁止する手段を含むことを特徴とする制御装置である。
さらに、請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記路面状態検出手段は、前記車両が位置している路面の摩擦係数を推定する手段を含み、前記制動力切替手段は、前記第1の制動力保持手段により前記制動力が保持された状態で、前記路面状態検出手段により推定された前記路面の摩擦係数が、予め定められた所定値よりも小さい場合に、前記第2の制動力保持手段による前記制動力の保持を禁止する手段を含むことを特徴とする制御装置である。
またさらに、請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記車両は、アンチロックブレーキ装置およびトラクションコントロール装置のいずれか一方もしくは両方を備え、前記路面状態検出手段は、前記アンチロックブレーキ装置もしくは前記トラクションコントロール装置のいずれか一方もしくは両方の作動状態に基づいて、前記車両が位置している路面の摩擦係数を推定する手段を含むことを特徴とする制御装置である。
そして、請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明において、前記制動力切替禁止手段は、前記第2の制動力保持手段による前記制動力の保持を禁止する場合に、運転者に警告する手段を更に含むことを特徴とする制御装置である。
請求項1の発明によれば、車輪に制動力が付与されて車両が停止し、第1の制動力保持手段により、ホイールシリンダ内のブレーキ液圧が保持されることで車両の制動力が保持されると、車両が停止した位置における路面状態が検出される。そして、その検出された路面状態が、第2の制動力保持手段による制動力では車両の停止状態を維持することが困難であるとして予め定められた所定の条件を満たす状態であった場合に、第2の制動力保持手段による車両の制動力の保持が禁止される。すなわち第1の制動力保持手段から第2の制動力保持手段に切り替えて車両の制動力を保持することが禁止される。そのため、例えば急勾配の坂路や低μ路などの、第2の制動力保持手段による制動力では車両の停止状態を維持することが困難な場合であっても、第2の制動力保持手段よる車両の制動力の保持が禁止され、第1の制動力保持手段により引き続き車両の制動力が保持されるため、車両の停止状態を確実に維持することができる。一方、前記路面状態が前記所定の条件を満たす状態ではなかった場合、すなわち第2の制動力保持手段による制動力でも車両の停止状態を維持できる場合は、第1の制動力保持手段から第2の制動力保持手段に切り替えて車両の制動力を保持することができ、第1の制動力保持手段において、ホイールシリンダ内のブレーキ液圧が保持された状態が長時間継続されることを回避し、ブレーキ液圧を保持する装置に過大な負荷がかかることを防止することができる。
また、請求項2の発明によれば、車輪に制動力が付与されて車両が停止し、第1の制動力保持手段により車両の制動力が保持されると、車両が停止した位置における路面の傾斜角が検出される。そして、その検出された路面の傾斜角が、第2の制動力保持手段による制動力では車両の停止状態を維持することが困難であるとして予め定められた所定の角度よりも大きい場合に、第2の制動力保持手段による車両の制動力の保持が禁止される。すなわち第1の制動力保持手段から第2の制動力保持手段に切り替えて車両の制動力を保持することが禁止される。そのため、車両の停止位置が、第2の制動力保持手段による制動力では車両の停止状態を維持することが困難な急勾配の坂路の途中であっても、第2の制動力保持手段よる車両の制動力の保持が禁止され、第1の制動力保持手段により引き続き車両の制動力が保持されるため、車両の停止状態を確実に維持することができる。
さらに、請求項3の発明によれば、車輪に制動力が付与されて車両が停止し、第1の制動力保持手段により車両の制動力が保持されると、車両が停止した位置における路面の摩擦係数が推定されて検出される。そして、その推定された路面摩擦係数が、第2の制動力保持手段による制動力では車両の停止状態を維持することが困難であるとして予め定められた所定値よりも小さい場合に、第2の制動力保持手段による車両の制動力の保持が禁止される。すなわち第1の制動力保持手段から第2の制動力保持手段に切り替えて車両の制動力を保持することが禁止される。そのため、車両の停止位置が、第2の制動力保持手段による制動力では車両の停止状態を維持することが困難な低μ路であっても、第2の制動力保持手段よる車両の制動力の保持が禁止され、第1の制動力保持手段により引き続き車両の制動力が保持されるため、車両の停止状態を確実に維持することができる。
またさらに、請求項4の発明によれば、車両に搭載されたアンチロックブレーキ装置もしくはトラクションコントロール装置の作動状態に基づいて、車両が停止した位置における路面の摩擦係数を推定して検出することができる。
そして、請求項5の発明によれば、上記の請求項1ないし4の発明において、第2の制動力保持手段による車両の制動力の保持が禁止された場合に、例えば警報を発信したり警告を表示したりすることによって、運転者に第2の制動力保持手段による車両の制動力の保持が困難であることを警告して認識させることができる。
つぎに、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。まず、この発明を適用した車両の駆動系を図2に示す。図2は、この発明を適用した車両Veが、例えばFR(フロントエンジン・リヤドライブ)方式の二輪駆動車両Veである例を示している。図2に示す車両Veにおいて、動力源1の出力側には、動力源1の回転出力を変速する変速機2が配置され、その変速機2の出力側には、変速機2から伝達される駆動力を駆動輪3,4に伝える駆動軸5が設けられている。
動力源1には、例えば、内燃機関または電動機の少なくとも一方を用いることができ、電動機としては、例えば電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを有するモータ・ジェネレータを用いることが可能である。この実施例では、動力源1として、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンあるいは天然ガスエンジンなどのエンジン1が用いられている場合について説明する。
変速機2としては、手動変速機、あるいは自動変速機、あるいは無段変速機などの各種の変速機を用いることが可能である。また、駆動軸5は、リヤデファレンシャル6を介して左右の後輪駆動軸7,8に連結されていて、各後輪駆動軸7,8には、左右後輪となる車輪(駆動輪)3,4が連結されている。なお、左右前輪となる車輪9,10は、自らは駆動力を発生しない非駆動輪9,10として設けられている。このような各機構により形成される動力伝達系統を介して、エンジン1の出力トルクが駆動輪3,4に伝達される構成となっている。
左右前輪9,10には、ブレーキユニット11fが、左右後輪3,4には、ブレーキユニット11rがそれぞれ設けられている。また、ブレーキユニット11f,11rの一部を構成するホイールシリンダ12と、マスタシリンダ13とを接続する作動液(ブレーキ液)の液圧系統には、運転者のブレーキ操作、例えばブレーキペダル14の踏み込み操作により、あるいは運転者のブレーキ操作とは別に、ホイールシリンダ12内の液圧を増減し、各車輪3,4,9,10に付与する制動力を制御するブレーキアクチュエータ15が設けられている。すなわち、これらのブレーキユニット11f,11rとブレーキ液圧系を介して接続されているブレーキアクチュエータ15とにより、車両Veにおける液圧式ブレーキ装置が構成されている。
また、ブレーキユニット11rには、例えばパーキングブレーキシュー(ブレーキユニットがドラムブレーキにより構成される場合は、そのドラムブレーキのブレーキシュー)などにより構成されるパーキングブレーキユニット11pが設けられていている。そして、例えばワイヤやロッドなどの機械的操作機構を介してパーキングブレーキユニット11pを動作させ、左右後輪3,4に付与する制動力を制御するパーキングブレーキアクチュエータ16が設けられている。すなわち、これらのパーキングブレーキユニット11pと機械的操作機構を介して接続されているパーキングブレーキアクチュエータ16とにより、車両Veにおける機械式ブレーキ装置、すなわちパーキングブレーキが構成されている。
図3に、液圧式ブレーキ装置のブレーキアクチュエータ15の構成を概略的に示す。なお、ブレーキアクチュエータ15は、各車輪3,4,9,10の各ブレーキユニット11f,11r毎に、独立して液圧を制御することが可能なように構成されていて、図3には、各車輪3,4,9,10のうちの一つの車輪に関するブレーキアクチュエータ15の構成を代表的に示している。したがって他の車輪についても同様の構成となっている。
ブレーキアクチュエータ15を構成する液圧系統には、モータ20によって回転駆動される液圧ポンプ21が設けられている。この液圧ポンプ21は、制動力を制御する際の液圧源として機能し、液圧ポンプ21の吐出口21aは、管路22を介して、遮断弁23と保持弁24との間の管路25に接続されている。なお、液圧ポンプ21の吐出口21a側には、液圧ポンプ21の吐出方向とは逆方向の作動液の流れを阻止する逆止弁26が設けられている。
一方、液圧ポンプ21の吸入口21bは、管路27を介してリザーバ28に接続されていて、管路27には、液圧ポンプ21の吸入方向とは逆方向の作動液の流れを阻止する逆止弁29,30が設けられている。この逆止弁29,30の間の管路27は、管路31を介してリザーバタンク32に接続されていて、リザーバタンク32内の作動液が、管路27を介して液圧ポンプ21に吸い込まれるように構成されている。また、管路31の途中には、この管路31を開閉させる、ノーマルクローズ形(通電時に開弁する形式)の吸込弁33が設けられている。
前述のマスタシリンダ13とホイールシリンダ12とを接続する管路25には、ノーマルオープン形(通電時に閉弁する形式)の遮断弁23が設けられており、作動液の液圧制御が実行される際に閉弁されてマスタシリンダ13とホイールシリンダ12との間の管路25を遮断するように構成されている。また、遮断弁23よりもホイールシリンダ12側の管路25には、ノーマルオープン形の保持弁24が設けられており、この保持弁24が閉弁されることにより、保持弁24からホイールシリンダ12側の液圧系を閉塞状態にするように、すなわち保持弁24からホイールシリンダ12側の液圧系の液圧を保持するように構成されている。
したがって、保持弁24を閉弁状態に制御することにより、保持弁24からホイールシリンダ12側の液圧系の液圧、すなわちブレーキ液圧を保持することができ、その結果、各車輪3,4,9,10に付与された制動力をそれぞれ保持することができる。
そして、保持弁24とホイールシリンダ12との間の管路25は、管路34によってリザーバ28に接続されている。この管路34には、ノーマルクローズ形の減圧弁35が設けられている。この減圧弁35は、例えばリニアソレノイドバルブもしくはデューティソレノイドバルブなどの電磁弁によって構成され、減圧弁35をデューティ比駆動させることにより、管路34の連通状態をデューティ比に応じて変化させることができる。
したがって、減圧弁35の開閉状態を制御することにより、管路34の連通状態を変化させ、保持弁24からホイールシリンダ12側の液圧系の液圧(ブレーキ液圧)を変化させることができる。例えば上記のように、ブレーキ液圧を保持していた状態、すなわち各車輪3,4,9,10に付与された制動力をそれぞれ保持していた状態から、減圧弁35を開弁状態に制御して管路34を連通状態にし、ブレーキ液圧を減圧させることによって、各車輪3,4,9,10に付与された制動力の保持状態を解除することができる。
このように、液圧ポンプ21および各種の弁装置等によって構成されるブレーキアクチュエータ15は、電子制御装置100によりその動作が制御される。すなわち、電子制御装置100により、ブレーキアクチュエータ15の動作を制御し、ブレーキユニット11f,11rのホイールシリンダ12内のブレーキ液圧が増減制御される。したがって、電子制御装置100から出力される信号に基づいて、各車輪3,4,9,10に設けられたブレーキユニット11f,11rをそれぞれ制御することにより、各車輪3,4,9,10に付与される制動力をそれぞれ制御することができる。特にホイールシリンダ12内のブレーキ液圧を保持状態に制御することにより、車両Veの制動力を保持することができる。
図4に、パーキングブレーキのパーキングブレーキアクチュエータ16の構成を概略的に示す。この発明におけるパーキングブレーキは、電子制御装置100によって電動モータの回転を制御することによってパーキングブレーキアクチュエータ16の動作が制御されるように構成されていて、いわゆる電動パーキングブレーキとなっている。
パーキングブレーキアクチュエータ16の構成を説明すると、図4において、電動モータ40の回転軸40aに減速機41を介してウォームギヤ42が連結されている。ウォームギヤ42には、扇形のウォームホイール43が噛合されており、そのウォームホイール43には、ウォームホイール43の扇型部分に巻き掛けられるワイヤ44の一方の端部が固定されている。したがって、電動モータ40の回転を正転・逆転に切り替えて制御することにより、ワイヤ44の巻き込み(図4において矢印Aで示す方向)または巻き戻し(図4において矢印Bで示す方向)ができるようになっている。
ワイヤ44の他方の端部は、支持部材45の中央部45aに互いに回転可能に支持されていて、支持部材45の両端部45b,45cには、一方の端部がパーキングブレーキユニット11pにそれぞれ接続されたワイヤ46,47の他方の端部がそれぞれ固定されている。したがって、電動モータ40の回転を制御することによってワイヤ44が巻き込み・巻き戻しされることにより、ワイヤ46,47を前後動(図4において矢印C,Dで示す方向の移動)させ、パーキングブレーキユニット11pの動作を制御すること、すなわち、パーキングブレーキユニット11pを作動させて左右後輪3,4に制動力を付与させた状態と、パーキングブレーキユニット11pの作動を解除して左右後輪3,4に付与した制動力を解除する状態とに制御することができるようになっている。
具体的には、電動モータ40を正転方向(ここではパーキングブレーキユニット11pを作動させる方向)に回転させ、減速機41を介してウォームギヤ42を回転させると、それに伴ってウォームホイール43がワイヤ44を巻き込む方向に回転する。すると、ワイヤ44が図4の矢印Cの方向へ牽引され、支持部材45も同じく図4の矢印Cの方向へ移動される。そして支持部材45の移動に伴ってワイヤ46,47も同じく図4の矢印Cの方向へ牽引される。このとき、ワイヤ44が支持部材45の中央部45aに互いに回転可能に支持されていることによって、ワイヤ46およびワイヤ47に生じる張力はそれぞれ等しくなり、左右後輪3,4のそれぞれ設けられたパーキングブレーキユニット11pにはそれぞれ等しい大きさの力が作用し、その結果左右後輪3,4にはそれぞれ等しい制動力が付与される。
電動モータ40の正転方向の回転が停止されると、ウォームギヤ42とウォームホイール43との間の摩擦力などにより各ワイヤ44,46,47の移動が制限され、その際の車両Veの制動力が保持される。また、車両Veの制動力が保持された状態で電動モータ40を逆転方向に回転させると、ウォームホイール43がワイヤ44を巻き戻す方向に回転し、ワイヤ44が図4の矢印Dの方向へ緩められてパーキングブレーキユニット11pの作動が解除され、その結果車両Veの制動力が解除される。
そして、電動モータ40は、前述の電子制御装置100によってその回転が制御される。すなわち、電動モータ40、およびウォームギヤ42、ウォームホイール43、ワイヤ44,46,47などの機械的操作機構により構成されるパーキングブレーキアクチュエータ16は、電子制御装置100によりその動作が制御され、パーキングブレーキユニット11pが制動・解除状態に制御される。したがって、電子制御装置100から出力される信号に基づいて、左右後輪3,4に設けられたパーキングブレーキユニット11pをそれぞれ制御することにより、左右後輪3,4に付与される制動力を保持・解除状態にそれぞれ制御し、車両Veの制動力を保持あるいは解除することができる。
なお、この実施例では、パーキングブレーキアクチュエータ16は、左右後輪3,4の各パーキングブレーキユニット11pに、ワイヤ46,47により連結されて、左右後輪3,4に付与する制動力を制御するように構成された例を示しているが、これに限らず、例えば左右前輪9,10に付与する制動力を制御するように、あるいは左右後輪3,4のいずれかの車輪と左右前輪9,10のいずれかの車輪とに付与する制動力を制御するように、あるいは各車輪3,4,9,10に付与する制動力を制御するように構成することも可能である。
図5に、電子制御装置100の構成を概略的に示す。電子制御装置100には、各車輪3,4,9,10の回転速度をそれぞれ検出する車輪速センサ101、シフトレバーのシフトポジションを検知するシフトポジションセンサ102、ブレーキペダル14の踏み込み量(踏み込み角度)あるいは踏み込み圧力を検出するブレーキペダルセンサ103、アクセルペダル(図示せず)の踏み込み量(踏み込み角度)あるいは踏み込み圧力あるいは踏み込み時間などを検出するアクセルペダルセンサ104、マスタシリンダ13内のブレーキ液圧を検出するブレーキ液圧センサ105、パーキングブレーキアクチュエータ16の電動モータ40を作動(正転・逆転)・停止させるパーキングブレーキスイッチ106、パーキングブレーキユニット11pあるいはパーキングブレーキアクチュエータ16の作動状態を検出するパーキングブレーキ作動センサ107、駆動輪3,4の駆動トルクをそれぞれ検出する駆動トルクセンサ108、車両Veの前後方向の加速度を検出する前後加速度センサ109、走行路面の傾斜角を検出する傾斜角センサ110などの各種センサ・スイッチ等が設けられており、それらの各センサ・スイッチ等の出力信号が電子制御装置100に入力されるように構成されている。
電子制御装置100には、各種のデータが記憶されており、電子制御装置100に入力される信号、電子制御装置100に記憶されているデータ、あるいは電子制御装置100におけるタイマのカウント値や演算結果などに基づいて、電子制御装置100から、ブレーキアクチュエータ15およびパーキングブレーキアクチュエータ16を制御する信号が出力されるように構成されている。
そして、車両Veには、アンチロックブレーキ(ABS)装置111およびトラクションコントロール(TRC)装置112が搭載されていて、電子制御装置100および上記の各種センサ類と連動するように構成されている。ABS装置111とは、例えば雪道や凍結路などの低μ路で急激に運転者によるブレーキ操作が行われた場合であっても、各車輪3,4,9,10のロックを防止するための装置であり、従来一般に知られている装置を使用することができる。すなわち、このABS装置111は、制動時に各車輪3,4,9,10のホイールシリンダ12に送るブレーキ液圧を、各車輪3,4,9,10がロックしないように電子制御装置100からの出力信号に基づいて制御するよう構成されている。具体的には、各車輪3,4,9,10に取付けた車輪速センサ101からの信号および前後加速度センサ109から入力される前後加速度信号などに基づいて、各車輪3,4,9,10のブレーキ液圧を、電子制御装置100で演算するよう構成されている。
一方、TRC装置112とは、例えば雪道や凍結路などの低μ路で急激に運転者によるアクセル操作が行われた場合であっても、各車輪3,4,9,10のスリップを防止するために駆動力を抑制する装置であり、従来一般に知られている装置を使用することができる。すなわち、このTRC装置112は、低μ路でアクセルペダル14が急激に踏み込まれて加速される際に駆動輪3,4のスリップが発生した場合、非駆動輪9,10の車輪速度と駆動輪3,4の車輪速度との回転速度差から駆動輪3,4のスリップ状態を判断し、そのスリップ状態に応じて車両Veの駆動力を抑制するように構成されている。具体的には、駆動輪3,4で検出されたスリップの状態に応じて、例えば、エンジン1の点火プラグ(図示せず)を制御して点火時期を遅延させること、エンジン1のフューエルインジェクタ(図示せず)を制御して燃料噴射量を低減させること、エンジン1のスロットルアクチュエータ(図示せず)を制御してスロットルバルブ(図示せず)の開度を調節することなどによってエンジン1の出力が抑制され、車両Veの駆動トルクが抑制されるように構成されている。
ここで、前述の各車輪3,4,9,10に設けられたホイールシリンダ12、ブレーキユニット11f,11r、マスタシリンダ13、ブレーキアクチュエータ15、それらを接続する液圧系などによって構成される液圧式ブレーキ装置、およびブレーキアクチュエータ15へ制御信号を出力して各車輪3,4,9,10に付与する制動力の保持・解除状態を制御する電子制御装置100が、この発明における第1の制動力保持手段として機能する。また、左右後輪3,4に設けられたパーキングブレーキユニット11p、パーキングブレーキアクチュエータ16、それらを接続する各ワイヤ44,46,47などによって構成されるパーキングブレーキ、およびパーキングブレーキアクチュエータ16へ制御信号を出力して左右後輪3,4に付与する制動力の保持・解除状態を制御する電子制御装置100が、この発明における第2の制動力保持手段として機能する。
前述したように、この発明は、液圧式ブレーキ装置およびパーキングブレーキにより制動力が保持され、車両Veの停止状態が維持される場合に、ブレーキ液圧が保持された状態が長時間継続されることで液圧式ブレーキ装置のブレーキアクチュエータ15に過大な負荷がかかってしまうことを防止するとともに、車両Veの停止位置における路面状態が、パーキングブレーキによる制動力では車両Veの停止状態を維持することが困難な場合であっても、車両Veの停止状態を確実に維持することを目的としていて、そのために、この発明の制御装置は以下の制御を実行するように構成されている。
図1は、その制御例を説明するためのフローチャートであって、このフローチャートで示されるルーチンは、所定の短時間毎に繰り返し実行される。図1において、先ず、運転者の意志によるブレーキ操作が行われ、車両Veの液圧式ブレーキ装置が作動させられることで発生する制動力によって、車両Veが停止した状態であるか否かが判断される(ステップS101)。
具体的には、運転者の意志によるブレーキ操作、例えば運転者によるブレーキペダル14の踏み込み操作が行われ、その際にブレーキペダルセンサ103によって検出されるブレーキペダル14の踏み込み量(踏み込み角度)、あるいはブレーキペダル14の踏み込み量(踏み込み角度)に応じて圧力を発生させるマスタシリンダ13のマスタシリンダ圧などに基づいて、液圧式ブレーキ装置のブレーキアクチュエータ15が動作され、各車輪3,4,9,10に制動力が付与される。そして、その制動力により車両Veが停止した状態であるか否かが判断される。なお、この場合の車両Veの停止状態の判断は、例えば各車輪3,4,9,10の回転速度をそれぞれ検出する車輪速センサ101の検出結果が全て所定車速(例えばほぼ0km/h)以下であることにより判断することができる。
車両Veが停止状態でないこと、例えば各車輪速センサ101の検出結果の少なくともいずれか一つが所定車速以下でないことにより、このステップS101で否定的に判断された場合は、以降の制御は実行されずに、このルーチンを一旦終了する。
一方、車両Veが停止状態にあることにより、ステップS101で肯定的に判断された場合には、ステップS102へ進み、液圧式ブレーキ装置により車両Veの制動力が保持される。具体的には、車両Veの停止状態を維持するために必要な制動力が求められ、その制動力が液圧式ブレーキ装置により各車輪3,4,9,10に付与された状態で保持される。すなわち、前述したように、ブレーキアクチュエータ15の保持弁24が閉弁状態となるように制御されることにより、ブレーキ液圧が保持され、各車輪3,4,9,10に付与された制動力がそれぞれ保持される。
液圧式ブレーキ装置による車両Veの制動力、すなわち各車輪3,4,9,10に付与された制動力が保持されると、路面傾斜角Aが算出され、そのデータが保存される(ステップS103)。この路面傾斜角Aの算出処理については、例えば車両Veに搭載された傾斜角センサ110の検出結果により求めることができる。あるいは、前後加速度センサ109によって得られる路面傾斜角に応じた車両Veの前後方向の加速度の検出結果を基に推定することもできる。また、車輪速センサ101によって得られる各車輪3,4,9,10の回転速度の変化状態から推定することも可能である。またあるいは、ナビゲーションシステム(図示せず)から得られる地理情報などを基に推定することも可能である。
続いて、上記のステップS103で求められた路面傾斜角Aが基準値αよりも大きいか、もしくは車両Veの停止時(例えば停止させるための制動時)に車両VeのABS装置111が作動したか、もしくは車両Veの停止時(例えば停止直前の所定時間の間)に車両VeのTRC装置112が作動したか、あるいは、路面傾斜角Aが基準値α以下であり、かつ車両Veの停止時にABS装置111が作動しておらず、かつ車両Veの停止時にTRC装置112が作動していないかが判断される(ステップS104)。
ここで基準値αは、パーキングブレーキにより左右後輪に付与された制動力が保持された状態で、車両Veの停止状態を維持することのできる限界の路面傾斜角として予め定められた閾値である。したがって路面傾斜角Aが基準値αよりも大きい場合に、車両Veは、液圧式ブレーキ装置よりも制動力が弱くなるパーキングブレーキによる制動力では停止状態を維持できないと判断される。
また、車両Veが制動されて停止する際に、車両Veに搭載されているABS装置111が作動した場合、もしくは車両Veが制動されて停止する直前の所定時間の間に、車両Veに搭載されているTRC装置112が作動した場合は、前述のように、車両Veの位置している路面が、例えば雪道や凍結路などの制動された各車輪3,4,9,10がロックし易い、あるいは駆動輪3,4がスリップし易い、いわゆる低μ路である可能性が高く、その場合、車両Veは、液圧式ブレーキ装置よりも制動力が弱くなるパーキングブレーキによる制動力では停止状態を維持できなくなる可能性がある。したがって車両Veの停止時にABS装置111が作動したか、もしくはTRC装置112が作動した場合は、その場合のABS装置111もしくはTRC装置112の作動状態、あるいはそれら両方の作動状態に基づいて、車両Veの位置している路面の摩擦係数Bが、パーキングブレーキによる制動力では車両Veの停止状態を維持することのできる限界の摩擦係数として予め定めた閾値である基準値βよりも小さいと推定され、車両Veはパーキングブレーキによる制動力では停止状態を維持できないと判断される。
したがって、路面傾斜角Aが基準値αよりも大きいこと、もしくは、車両Veの停止時に車両VeのABS装置111が作動したことあるいは車両Veの停止時に車両VeのTRC装置112が作動したこと、すなわち路面摩擦係数Bが基準値βよりも小さいと推定されたことによって、このステップS104で肯定的に判断された場合は、ステップS105へ進み、パーキングブレーキの作動が禁止されることを運転者に認識させるための警報が発信され、あるいは警告が表示され、あるいは警報の発信と警告の表示との両方が行われる。
ついで、変速機2のシフトポジションとして、変速機2で動力伝達を行うことの不可能な非駆動ポジションが選択されたか否かが判断される(ステップS106)。変速機2の非駆動ポジションとは、例えば、手動変速機におけるギヤ位置がニュートラルの状態、あるいは自動変速機におけるPレンジまたはNレンジのことである。変速機2のシフトポジションとして、非駆動ポジションが選択されないことによって、このステップS106で否定的に判断された場合は、以降の制御は実行されずに、このルーチンを一旦終了する。
これに対して、変速機2のシフトポジションとして、非駆動ポジションが選択されたことによって、ステップS106で肯定的に判断された場合には、ステップS107へ進み、パーキングブレーキが自動制御されること、すなわち運転者の操作と独立して制御されて作動させられることが禁止され、そのことを運転者に認識させるための警報が発信され、あるいは警告が表示され、あるいは警報の発信と警告の表示との両方が行われる。
変速機2のシフトポジションが上記のような非駆動ポジションに設定されると、液圧式ブレーキ装置により制動力が保持された状態が長時間継続される可能性が高くなり、液圧式ブレーキ装置による制動力の保持状態が長時間継続されると、液圧式ブレーキ装置のブレーキアクチュエータ15に過大な負荷がかかる可能性がある。したがって上記のステップS106で、変速機2のシフトポジションとして非駆動ポジションが選択されたか否かを判断し、非駆動ポジションが選択された場合に、ステップS107で警報の発信あるいは警告の表示が行われることにより、運転者のパーキングブレーキの作動が禁止されていることを認識させるとともに、液圧式ブレーキ装置による制動力の保持状態を解除し、ブレーキアクチュエータ15に過大な負荷がかかるる事態を回避するための運転者による操作が実行されることを促すことができる。
なお、前述のステップS105においても、このステップS107と同様の内容で警報発信・警告表示制御が行われるが、ステップS105での警報・警告は、通常の状態では非駆動ポジションが選択された際にパーキングブレーキが自動制御されて作動されるはずのものが、この状態では非駆動ポジションが選択されてもパーキングブレーキは自動的に作動されなくなること、すなわち車両Veの制動力が液圧式ブレーキ装置による保持状態からパーキングブレーキによる保持状態に切り替えられなくなることを予告するためのものである。これに対して、ステップS107での警報・警告は、すでに、車両Veの制動力が液圧式ブレーキ装置による保持状態からパーキングブレーキによる保持状態に切り替えられないことを警告するためのものである。そのため、ステップS105での警報発信・警告表示制御は省略することもできる。あるいは、ステップS107での警報・警告を、ステップS105での警報・警告と比較して乗員が認知し易いもの(例えば警報音が大きい、警報音の発信される間隔が短い、警告が点滅する、等)とすることも可能である。
一方、前述のステップS104で、路面傾斜角Aが基準値α以下であり、かつ車両Veの停止時にABS装置111およびTRC装置112が作動していないこと、すなわち路面摩擦係数Bが基準値β以上であると推定されたことにより否定的に判断された場合には、ステップS108へ進み、ステップS106と同様に、変速機2のシフトポジションとして非駆動ポジションが選択されたか否かが判断される。変速機2のシフトポジションとして、非駆動ポジションが選択されないことによって、このステップS108で否定的に判断された場合は、以降の制御は実行されずに、このルーチンを一旦終了する。
これに対して、変速機2のシフトポジションとして、非駆動ポジションが選択されたことによって、ステップS108で肯定的に判断された場合には、ステップS109へ進み、パーキングブレーキが自動制御されて、左右後輪3,4に制動力が付与され、その状態が保持される。具体的には、パーキングブレーキが自動制御され、すなわちパーキングブレーキアクチュエータ16の電動モータ40が正転方向に回転制御され、パーキングブレーキユニット11pが作動させられて左右後輪3,4に制動力が付与される。そして左右後輪3,4に制動力が付与された状態で電動モータ40の回転が停止されて、その時のパーキングブレーキユニット11pの作動状態、すなわち左右後輪3,4に制動力が付与された状態が保持される。
そして、パーキングブレーキにより車両Veの制動力が保持されると、その後、液圧式ブレーキ装置による制動力の保持状態が解除される(ステップS110)。具体的には、ブレーキ液圧が減圧されて各車輪3,4,9,10に付与されていた制動力の保持状態が解除される。すなわち、ブレーキアクチュエータ15の保持弁24を閉弁状態に制御することによりブレーキ液圧が保持されていた状態から、減圧弁35が開弁状態に制御されて管路34が連通状態にされることによって、ブレーキ液圧が減圧されて、各車輪3,4,9,10に付与されていた制動力の保持状態が解除される。したがって車両Veの制動力が、液圧式ブレーキ装置による保持状態からパーキングブレーキによる保持状態に切り替えられる。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
以上のように、この発明の制御装置による制御が実行されることによって各車輪3,4,9,10に制動力が付与されて車両Veが停止し、液圧式ブレーキ装置により、ホイールシリンダ12内のブレーキ液圧が保持されることで車両Veの制動力が保持されると、車両Veが停止した位置における路面状態が検出される。そして、その検出された路面状態が、パーキングブレーキによる制動力では車両Veの停止状態を維持することが困難であるとして予め定められた所定の条件を満たす状態であった場合に、パーキングブレーキによる車両Veの制動力の保持が禁止される。すなわち液圧式ブレーキ装置からパーキングブレーキに切り替えて車両Veの制動力を保持することが禁止される。
具体的には、車両Veが停止した位置における路面傾斜角Aが検出され、車両Veに搭載されたABS装置111もしくはTRC装置112の作動状態に基づいて路面摩擦係数Bが推定される。そして検出された路面傾斜角Aが、パーキングブレーキによる制動力では車両Veの停止状態を維持することが困難であるとして予め定められた所定の角度(基準傾斜角)αよりも大きい場合、もしくは、推定された路面摩擦係数Bが、パーキングブレーキによる制動力では車両Veの停止状態を維持することが困難であるとして予め定められた所定の摩擦係数(基準値)βよりも小さい場合に、パーキングブレーキによる車両Veの制動力の保持が禁止される。すなわち液圧式ブレーキ装置からパーキングブレーキに切り替えて車両Veの制動力を保持することが禁止される。
そのため、例えば急勾配の坂路や低μ路などの、液圧式ブレーキ装置と比較して相対的に制動力が弱いパーキングブレーキによる制動力では、車両の停止状態を維持することが困難な場合であっても、パーキングブレーキよる車両Veの制動力の保持が禁止され、液圧式ブレーキ装置により引き続き車両Veの制動力が保持されるため、車両Veの停止状態を確実に維持することができる。
一方、前記路面状態が前記所定の条件を満たす状態ではなかった場合、すなわちパーキングブレーキによる制動力でも車両Veの停止状態を維持できると判断された場合、具体的には、路面傾斜角Aが基準傾斜角α以下であり、かつ路面摩擦係数Bが基準値β以上である場合には、液圧式ブレーキ装置からパーキングブレーキに切り替えて車両Veの制動力を保持することができ、液圧式ブレーキ装置において、ホイールシリンダ12内のブレーキ液圧が保持された状態が長時間継続されることを回避し、ブレーキアクチュエータ15に過大な負荷がかかることを防止することができる。
また、上記のようにしてパーキングブレーキによる車両Veの制動力の保持が禁止された場合に、例えば警報が発信され、あるいは警告が表示されたりすることによって、運転者にパーキングブレーキによる車両Veの制動力の保持が困難であることを警告して認識させることができる。
ここで、上述した具体例とこの発明との関係を簡単に説明すると、上述したステップS101,S102の機能的手段が、この発明の第1の制動力保持手段に相当し、ステップS109の機能的手段が、この発明の第2の制動力保持手段に相当する。また、ステップS103,S104の機能的手段が、この発明の路面状態検出手段に相当し、ステップS104,S105の機能的手段が、この発明の制動力切替禁止手段に相当する。そして、ステップS105,S107の機能的手段が、この発明の請求項5における制動力切替禁止手段に相当する。
なお、この発明は、上記の具体例に限定されないのであって、具体例では、この発明を適用した車両がFR方式の二輪駆動車両である例を示しているが、FR方式以外の車両であってもよく、さらに四輪駆動車両であってもよい。
また、図5では、路面傾斜角を検出するためのセンサとして傾斜角センサが設けられている例を示しているが、傾斜角センサを設けずに、前後加速度センサあるいは車輪速センサなどの検出値を基に路面傾斜角を推定することも可能である。
1…動力源(エンジン)、 2…変速機、 3,4,9,10…車輪、 11f,11r…ブレーキユニット、 11p…パーキングブレーキユニット、 12…ホイールシリンダ、 13…マスタシリンダ、 14…ブレーキペダル、 15…ブレーキアクチュエータ、 16…パーキングブレーキアクチュエータ、 100…電子制御装置、 101…車輪速センサ、 102…シフトポジションセンサ、 103…ブレーキペダルセンサ、 104…アクセルペダルセンサ、 Ve…車両。
Claims (5)
- 運転者のブレーキ操作と独立してホイールシリンダ内のブレーキ液圧を保持することにより車輪に付与する制動力を保持する第1の制動力保持手段と、パーキングブレーキを運転者の操作と独立して制御することにより車輪に付与する制動力を保持する第2の制動力保持手段とを備えた車両の制動制御装置において、
前記車両の位置している路面状態を検出する路面状態検出手段と、
前記第1の制動力保持手段により前記制動力が保持された状態で、前記路面状態検出手段により検出された前記路面状態が、予め定められた所定の条件を満たす状態である場合に、前記第2の制動力保持手段による前記制動力の保持を禁止する制動力切替禁止手段とを備えていることを特徴とする車両の制動制御装置。 - 前記路面状態検出手段は、前記車両が位置している路面の傾斜角を検出する手段を含み、
前記制動力切替禁止手段は、前記第1の制動力保持手段により前記制動力が保持された状態で、前記路面状態検出手段により検出された前記路面の傾斜角が、予め定められた所定角度よりも大きい場合に、前記第2の制動力保持手段による前記制動力の保持を禁止する手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の車両の制動制御装置。 - 前記路面状態検出手段は、前記車両が位置している路面の摩擦係数を推定する手段を含み、
前記制動力切替手段は、前記第1の制動力保持手段により前記制動力が保持された状態で、前記路面状態検出手段により推定された前記路面の摩擦係数が、予め定められた所定値よりも小さい場合に、前記第2の制動力保持手段による前記制動力の保持を禁止する手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の車両の制動制御装置。 - 前記車両は、アンチロックブレーキ装置およびトラクションコントロール装置のいずれか一方もしくは両方を備え、
前記路面状態検出手段は、前記アンチロックブレーキ装置もしくは前記トラクションコントロール装置のいずれか一方もしくは両方の作動状態に基づいて、前記車両が位置している路面の摩擦係数を推定する手段を含むことを特徴とする請求項3に記載の車両の制動制御装置。 - 前記制動力切替禁止手段は、前記第2の制動力保持手段による前記制動力の保持を禁止する場合に、運転者に警告する手段を更に含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の車両の制動制御装置。
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