JP2006273664A - シリコン鋳造用鋳型及びシリコン鋳造装置並びに多結晶シリコンインゴットの鋳造方法 - Google Patents

シリコン鋳造用鋳型及びシリコン鋳造装置並びに多結晶シリコンインゴットの鋳造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高品質シリコンインゴットを低コストで製造するための多結晶シリコンインゴットの鋳造用鋳型を提供する。
【解決手段】内面に離型材皮膜を具備し、内部でシリコン原料を融解、又はシリコン融液を保持あるいは凝固させた後、冷却するシリコン鋳造用鋳型であって、鋳型の鋳型部材が二酸化珪素を主成分とする粉体を焼成した焼結体で形成され、鋳型部材の900℃における熱伝導率が1.0(W/(m・K))以上である。
【選択図】図1

Description

本発明は、太陽電池用シリコン基板などに用いられる多結晶シリコンインゴットを製造するのに適したシリコン鋳造用鋳型及びシリコン鋳造装置並びに多結晶シリコンインゴットの鋳造方法
に関するものである。
アメリカのPV NEWS紙によれば2003年の全世界の太陽電池生産量は744MWであり、過去10年間で12倍に増加した。この生産量の急激な伸びを牽引するのは90%近くを占める結晶シリコン型太陽電池、中でも全世界の太陽電池生産量に占める割合が60%を超え、今日最も多く製造されているキャスト(鋳込み)法で製造された多結晶シリコンインゴットを使用する多結晶シリコン太陽電池である。
近年、環境問題への関心の高まりとともに太陽電池市場が急速に拡大する中、より低コストで高い変換効率の太陽電池が求められているが、多結晶シリコン太陽電池の変換効率や生産コストは使用する多結晶シリコンインゴットに大きく依存することから、多結晶シリコンインゴットの更なる高品質化と低コスト化が重要な課題となっている。
キャスト(鋳込み)法による多結晶シリコンインゴットの鋳造方法は、加熱機構と冷却機構を備えた不活性雰囲気下の鋳造装置内において、シリコン原料とドーパントを加熱融解した融液を鋳型内に注ぎ、鋳型上部を加熱してシリコン表面を融液状態に保ちながら鋳型底面部から抜熱してシリコン融液を底部から頭部へ一方向凝固させたり、あるいはシリコン原料とドーパントを鋳型内で加熱融解してから融液を鋳型底面部より抜熱して一方向凝固させたりした後、鋳型内の高温のシリコンインゴットを徐冷し冷却する手法が一般的である。
ここで鋳型内でシリコン融液を凝固させる際、内部にシリコン融液が入った鋳型の上部を加熱して常にシリコン融液の表面温度をシリコンの融点以上に保ちながら、鋳型底部を冷却してシリコン結晶を鋳型底部から上部に向かって一方向成長させる方法で製造される理由は、シリコンの固体の密度が2.33g/cmなのに対して液体の密度が2.54g/cmであるため、シリコンが凝固する際には1割弱もの体積膨張が生じるため、万一シリコン融液が表面から凝固し内部に融液が取り残された場合、最後に凝固する内部の融液が凝固膨張して周囲の結晶組織が割れてしまう為である。
鋳造した多結晶シリコンインゴットから、結晶欠陥や異物、不純物の多いインゴット側面部や底面部、及び上面部を通常数mm以上切断除去した後、マルチワイヤーソーなどでインゴットをスライスして太陽電池用多結晶シリコン基板が得られる。
キャスト(鋳込み)法による多結晶シリコンインゴットの鋳造工程で用いられるシリコン鋳造用鋳型としては、一般的に黒鉛や二酸化珪素からなる鋳型部材の内面に離型材皮膜を形成したものが用いられる。この離型材皮膜は、窒化珪素、炭化珪素、二酸化珪素等の粉末を適当なバインダーと水やアルコールなどの溶媒とからなる溶液中に混合して離型材スラリーとし、これを鋳型内面にコーティングすることが一般に知られている(例えば、非特許文献1参照)。
二酸化珪素からなる鋳型は耐熱性や形状安定性に優れ、不純物含有量を少なくコントロールでき、シリコンを融解あるいは凝固させる1450℃程度の高温でも安定した物性を有することからシリコン鋳造用鋳型として適している。しかしながら回転モールド法や石英チューブを加工するなどして製造される従来の高純度石英ガラス製の鋳型は、再利用が困難なために、非常に高価であるにも関わらず使い捨てとなり鋳型コストが高いという問題があった。また、石英ガラス製の鋳型を繰り返し使用すると変形部分を起点にして鋳型が割れ、シリコン融液が漏れて高価なシリコン原料が無駄になるばかりでなく、高価なシリコン鋳造用装置を破損してしまう危険があり、やはり複数回の再利用が困難であるという問題があった。
こうした問題点を回避するため、鋳型部材として高純度の黒鉛を用いて板状の鋳型側面部材と鋳型底面部材を作製し、それらを組立てて鋳型を作製する方法も試みられている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。しかしながら、こうした鋳型は素材の高純度黒鉛が高価であるため、コストメリットを得るためには鋳型部材を数回から数十回以上も再利用する必要があった。このためシリコン融液と非常に反応し易い黒鉛製の鋳型部材を再利用するためには鋳型内面に形成する離型材皮膜を厚くせねばならず、高価な離型材皮膜の使用量が増えるために、結局シリコンインゴットの製造コストが高くなるという問題があった。
また、高品質のシリコン結晶を成長させるためにはシリコン融液の凝固速度の制御が非常に重要であり、生産性向上の観点から成長するシリコン結晶内の転位や欠陥を増大させない範囲で素早く凝固させることが求められる。しかし離型材皮膜が厚いと鋳型内部の融液と外部との熱伝導が阻害されるため鋳型内のシリコン融液の抜熱制御が難しいという問題があった。さらに離型材皮膜が厚いと離型材皮膜が剥離してシリコン融液内へ混入して異物となり、歩留を低下させるという問題があった。さらに、組立て式の黒鉛部材は、繰り返し使用することによってネジ止め部分や各鋳型側面部材と鋳型底面部材とが接する部分が消耗し、緩みが生じて、シリコンの融解やシリコン融液の凝固時にシリコン融液が漏れる危険があるという問題もあった。
特開昭62−108515号公報 特開平9−263489号公報 特開平11−116228号公報 15th Photovoltaic Specialist Conf.(1981),P576-P580,"A NEW DIRECTIONAL SOLIDIFICATION TECHNIQUE FOR POLYCRYSTALINE SOLAR GRADE SILICON"
こうした問題点を回避するため、安価な溶融シリカ粉体を、鋳込み成形や加圧プレス成形などによって鋳型形状に成形して焼成した溶融シリカ焼結体の鋳型や、蝋型の周りに溶融シリカ粉体やスラリーを付着させ乾燥させたのち、蝋型を溶かして取り除き、残った溶融シリカ部分を焼成する、いわゆるセラミックシェル型の一般的な製法を用いて作製した鋳型なども試みられている(例えば、特許文献3参照)。
ここで、一般的に工業用シリカ材としては、水晶砂や珪砂を原料とする不透明な溶融シリカと、水晶などの石英結晶を原料とする透明な溶融石英とがあり、本用途には物性上どちらも使用可能であるが溶融石英は溶融シリカに比べ高価であった。また、溶融シリカは、珪砂を溶融して得られる二酸化珪素の粗原料を粉砕し、それを成形することで必要な形状を比較的容易に得ることが可能で、さらに焼結することで必要な強度を付与することが可能である。つまり、溶融シリカ粉体を用いた鋳型は、成形性に優れ、所望の形状の鋳型を安価に製造することが可能となるため鋳型を使い捨てにできることから、高価な溶融石英ガラス製の鋳型を繰り返し使用する場合に生じる鋳型の変形や、ヒートサイクルをかけることによる鋳型の失透やそれによる鋳型の割れなどの危険を回避できるだけでなく、鋳型が使い捨てであることから鋳型を保護する必要がなく、離型機能を有する範囲で鋳型内面に形成する離型材皮膜の厚みを薄くすることができるため離型材皮膜のコストを低減できる。
しかしながら、低コストで製造される溶融シリカの焼結体は、鋳型内のシリコン融液の抜熱制御が難しく高品質のインゴットの製造が困難だったり、鋳型からの抜熱量が低下するため鋳型内のシリコン融液の凝固時間が延びて生産性が低くなるためにシリコンインゴットの製造コストが高くなったり、シリコン融液の凝固時間が長く高温の状態でシリコン融液が長時間鋳型内に保持されるために鋳型部材や離型材皮膜からシリコン融液中への不純物の溶出が多くなり、高品質のインゴットの製造が困難だったりする問題があった。
本発明は、このような溶融シリカの焼結体を用いたときの問題点に鑑みてなされたものであり、高品質シリコンインゴットを低コストで製造するためのシリコン鋳造用鋳型及びシリコン鋳造装置並びに多結晶シリコンインゴットの鋳造方法を提供することを目的とする。
発明者は、従来の溶融シリカの焼結体について以下の点に着目した。即ち、従来の溶融シリカの焼結体は、気孔率を低減し密度の高い鋳型を高温の環境で使用すると変形が激しく、また鋳造中に鋳型が割れ、高温のシリコン融液が漏れる恐れがあったため、通常10%から20%程度の気孔率を持ち、その嵩密度がおよそ1.7(g/cm)〜1.9(g/cm)前後の焼結体が使用されてきた。その用途上、高温での機械的強度や熱衝撃耐性の向上、さらには金属を融解する際の熱効率向上のために焼結体の熱伝導率を低減させるための取り組みが盛んに行われてきたが、逆に熱伝導性を向上させる取り組みはこれまで行われてこなかったのである。
そこで、発明者は、上記目的を達成すべく研究を重ねた結果、従来技術に比べ高品質のシリコンインゴットを低コストで製造する本発明の多結晶シリコンインゴットの鋳造用鋳型の構成を得るに至った。
即ち、本発明のシリコン鋳造用鋳型は、内面側に離型材皮膜を備えるとともに、内部でシリコン原料を融解、又はシリコン融液を保持あるいは凝固させた後、冷却するシリコン鋳造用鋳型であって、前記鋳型を構成する鋳型部材は、二酸化珪素を主成分とする粉体を焼成した焼結体で形成されているとともに、900℃における熱伝導率が1.0(W/(m・K))以上である。
本発明のシリコン鋳造用鋳型は、上記構成において、前記二酸化珪素を主成分とする粉体は、溶融シリカ(fused silica)である。
本発明のシリコン鋳造用鋳型は、上記構成において、前記鋳型部材は、900℃における熱伝導率が1.1(W/(m・K))以上である物質を構成材として含有する。
本発明のシリコン鋳造用鋳型は、上記構成において、前記構成材が、黒鉛、炭化珪素、窒化珪素、溶融石英、透明石英ガラスから選択された一つ以上の物質である。
本発明のシリコン鋳造用鋳型は、上記構成において、前記鋳型部材は、鋳型の側面を構成する鋳型側面部材と、鋳型の底面を構成する鋳型底面部材とを含み、前記構成材の含有率は、前記鋳型側面部材に比べて前記鋳型底面部材の方が大きい。
本発明のシリコン鋳造用鋳型は、上記構成において、前記鋳型部材の嵩密度が2.0(g/cm)以上である。
本発明のシリコン鋳造用鋳型は、上記構成において、前記鋳型部材は、鋳型の側面を構成する鋳型側面部材と、鋳型の底面を構成する鋳型底面部材とを含み、前記鋳型部材の嵩密度は、前記鋳型側面部材に比べて前記鋳型底面部材の方が大きい。
本発明のシリコン鋳造装置は、上記構成のいずれかに記載のシリコン鋳造用鋳型において、前記鋳型部材は、鋳型の側面を構成する鋳型側面部材と鋳型の底面を構成する鋳型底面部材とを含むものであり、さらに前記シリコン鋳造用鋳型の外側から前記鋳型側面部材及び前記鋳型底面部材と当接して支えるように設けられた鋳型保持板と、を備えている。
本発明のシリコン鋳造装置は、上記構成において、前記鋳型保持板は、黒鉛材料から成る。
本発明のシリコン鋳造装置は、上記構成において、前記鋳型底面部材に当接する鋳型保持板は、グラファイトであり、前記鋳型側面部材に当接する鋳型保持板は、炭素繊維強化炭素材料である。
本発明のシリコン鋳造装置は、上記構成において、前記鋳型部材の厚みは、4mm以上12mm以下である。
本発明の多結晶シリコンインゴットの鋳造方法は、上記構成のいずれかに記載のシリコン鋳造装置を用いて形成する。
本発明にかかるシリコン鋳造用鋳型は、内面側に離型材皮膜を備えるとともに、内部でシリコン原料を融解、又はシリコン融液を保持あるいは凝固させた後、冷却するシリコン鋳造用鋳型であって、前記鋳型を構成する鋳型部材は、二酸化珪素を主成分とする粉体を焼成した焼結体で形成されているとともに、900℃における熱伝導率が1.0(W/(m・K))以上としたことから、従来技術による熱伝導率が0.85(W/(m・K))程度の鋳型に比べ熱伝導性が良くなり、鋳型底部からの抜熱によって鋳型内でのシリコン結晶の凝固速度を高い精度でコントロールできるようになり高品質のシリコンインゴットを作製することができる。また、鋳型の熱伝導性が良くなった結果、従来より短時間でシリコン融液を凝固させることが可能となったので、製造時間が短縮しインゴットの製造コストを低減できる。また、製造時間を短縮することによりシリコン融液と離型材皮膜の接触時間を短くすることが可能となった結果、離型材皮膜そのものの厚みを薄くすることが可能となり、離型材皮膜形成にかかるコストを削減できるようになり、また離型材皮膜が鋳型から剥離してシリコン中に混入し、異物となってシリコンの品質を低下させたり歩留を低下させるという問題を回避できる。さらには、シリコン融液や凝固後のシリコンインゴットを高温の状態から素早く冷却できるようになった結果、シリコン融液やブロックが接している鋳型材や離型材中の不純物がシリコン融液中へ溶出したりインゴット中へ拡散するなどして増加するコンタミ(汚染)を低減することができるようになり、高品質のシリコンインゴットを製造できる。
また、鋳型部材を構成する二酸化珪素を主成分とする粉体は、溶融シリカ(フューズドシリカ;fused silica)としたことにより、シリコンを鋳造する高温において鋳型の軟化変形を低減できる。
また、鋳型部材に900℃における熱伝導率が1.1(W/(m・K))以上である物質を構成材として含有するようにしたので、従来の鋳型より鋳型部材の熱伝導性を良くすることが可能となり、前述の本発明の効果を良好に得ることができる。この構成材として、黒鉛、炭化珪素、窒化珪素、溶融石英、透明石英ガラス、のいずれか一つ以上から選択されるものとしたことから、太陽電池特性を低下させる要因となるような、例えば金属元素などの不純物が鋳型部材からシリコンインゴットへ混入する要因となることがなく、かつ鋳型部材そのものの熱伝導率を大きくすることが可能となるため、不純物濃度が低い高品質のシリコンインゴットを製造できる。さらに、鋳型部材は、鋳型の側面を構成する鋳型側面部材と、鋳型の底面を構成する鋳型底面部材とを含み、前記構成材の含有率は、前記鋳型側面部材に比べて前記鋳型底面部材の方が大きくしたので、鋳型底面部の熱伝導率を向上させることができ、同時に長時間高温に曝される鋳型側面、とくに側面上部の鋳型部材への添加成分の添加量を低減することにより、鋳型の強度を高く保つことができる。この理由は、鋳型の主成分である溶融シリカの熱膨張係数がおよそ0.5×10−6/℃と小さいのに対し、上記のような高純度で高温でも安定な物性を有しながら高い熱伝導率を有する添加成分の熱膨張係数は溶融シリカの数倍〜十倍程度大きいため、とりわけ高温に曝される鋳型側面の上部では、鋳型素材の強度低下の懸念があるためである。
また、鋳型部材の嵩密度を2.0(g/cm)以上としたことから、鋳型部材の嵩密度が1.9(g/cm)程度であった従来の鋳型に比べ、鋳型部材である溶融シリカの焼結体が内包する気孔を大幅に低減でき、従来のシリカ製鋳型に比べても熱伝導率が大幅に向上させることができる。このため前述の本発明の効果を良好に得ることができる。さらに、鋳型部材は、鋳型の側面を構成する鋳型側面部材と、鋳型の底面を構成する鋳型底面部材とを含み、鋳型部材の嵩密度が、鋳型側面部材に比べて鋳型底面部材の方を大きくしたことから、鋳型底面部の熱伝導率を向上させることができ、同時に長時間高温に曝される鋳型側面、とくに側面上部の鋳型部材への嵩密度を低減することにより、鋳型の強度を高く保つことができる。
また、本発明の鋳造装置は、上記構成のいずれかに記載のシリコン鋳造用鋳型において、前記鋳型部材は、鋳型の側面を構成する鋳型側面部材と鋳型の底面を構成する鋳型底面部材とを含むものであり、さらに前記シリコン鋳造用鋳型の外側から前記鋳型側面部材及び前記鋳型底面部材と当接して支えるように設けられた鋳型保持板と、を備えることによって、鋳造時の高温のために生じる鋳型部材そのものの軟化変形やそれに起因する鋳型部材の割れ、それに伴う鋳型内のシリコン融液漏れを防止することが可能となる。その結果、従来より密度の大きな鋳型や肉厚の薄い鋳型を使用することが可能となり、鋳造中に鋳型が破損してシリコン融液が漏れ出すトラブルによって高価なシリコン原料が無駄となったり高価なシリコン鋳造装置が破損したりすることを低減させ、高い生産性で高品質のシリコンインゴットを安いコストで製造することが可能となる。さらに、本発明の鋳型保持板を使用することにより鋳型側面の反りが大幅に低減され、鋳型内で鋳造したシリコンインゴットの側面の平滑性が向上し、インゴットの加工時において加工装置内にインゴットをセットした際にインゴットが不安定になることを減少させ、加工精度が向上して加工時の歩留が向上した結果、多結晶シリコンインゴットの製造コストを大幅に低減できる。
なお、鋳型保持板は、黒鉛材料からなることによって、鋳型保持板が鋳型からの抜熱を阻害することのない高い熱伝導率を有しながら鋳型の軟化変形を保持する機械的強度を有し、さらに高純度化によって太陽電池特性を低下させる要因となるような、例えば金属元素などの不純物を非常に微量にすることができるためさらに良い。ここで、鋳型外の底面部と当接して鋳型底部を保持する鋳型保持板は、グラファイトを用いれば、高熱伝導性の材料であることから望ましい。また、鋳型外の側面部と当接して鋳型側面部を保持する鋳型保持板は、炭素繊維強化炭素材料を用いれば、高い機械強度を有し、かつ熱膨張係数が小さく、高温でも安定して鋳型を保持できるので望ましい。
また、鋳型部材の厚みを4mm以上12mm以下としたことによって、従来の鋳型よりも厚みが薄く鋳型の熱伝導性が良いために、鋳型底部からの抜熱によって鋳型内でのシリコン結晶の凝固速度を高い精度でコントロールできるようになり、高品質のシリコンインゴットを作製することができる。
本発明の多結晶シリコンインゴットの鋳造方法によれば、以上のような本発明のシリコン鋳造装置を用いて形成するので、鋳型内でのシリコン結晶の凝固速度を高い精度でコントロールできるとともに、不純物が低減された高品質の多結晶シリコンインゴットを作製することができる。また、製造時間も短いので、シリコンインゴットの製造コストも低減する。
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。なお、図に示した例は本発明の一例示に過ぎず、これに限るものではない。
図1は、本発明にかかるシリコン鋳造用鋳型の縦断面図である。本発明のシリコン鋳造用鋳型1は、内部でシリコン原料を融解、又はシリコン融液を保持あるいは凝固させた後、冷却する用途に用いられる。このようなシリコン鋳造用鋳型を構成する鋳型部材は、鋳型側面部材1a及び鋳型底面部材1bを備えている。これらは二酸化珪素を主成分とする粉体を焼成した焼結体で形成される。このような焼結体は、溶融シリカ(fused silica)の二酸化珪素粉体を、例えば鋳込み成形やプレス成形によって鋳型形状に成形した成形体や、板状に鋳型側面部材1aと鋳型底面部材1bとを作製した成形体を1200〜1500℃の温度で焼結して得ることができる。板状の焼結体の場合は、その後、さらに相互に溶接するなどして一体型の箱型に形成する。
また、シリコン鋳造用鋳型1の鋳型部材は、シリコン融液と接する鋳型の内面側に、例えば、窒化珪素、二酸化珪素、炭化珪素等からなる離型材皮膜2が設けられる。このような離型材皮膜2は、鋳型1の内部に保持されたシリコン融液が凝固した際に、鋳型1の内壁と融着することを抑制できる。
本発明に係る鋳型部材を構成する焼結体は、900℃における熱伝導率が1.0(W/(m・K))以上であることを特徴としている。熱伝導率の測定は、レーザーフラッシュ法(JIS R1611-1997)で評価することができる。
従来技術における二酸化珪素の焼結体の鋳型の熱伝導率は一般的に0.85(W/(m・K))程度であった。これは二酸化珪素本来の熱伝導率よりもはるかに小さい値であるが、その理由は焼結体が内包する気孔が鋳型部材中で断熱材のような働きをして部材全体の熱伝導を阻害するためである。
本発明の鋳型は、従来技術による熱伝導率が0.85(W/(m・K))程度の鋳型に比べ熱伝導性が良くなり、鋳型底部からの抜熱によって鋳型内でのシリコン結晶の凝固速度を高い精度でコントロールできるようになり高品質のシリコンインゴットを作製することができる。また、鋳型の熱伝導性が良くなった結果、従来より短時間でシリコン融液を凝固させることが可能となったことで製造時間が短縮しインゴットの製造コストを低減できる。また、製造時間を短縮することによりシリコン融液と離型材皮膜の接触時間を短くすることが可能となる結果、離型材皮膜そのものの厚みを薄くすることが可能となり、離型材皮膜形成にかかるコストを削減でき、また離型材皮膜が鋳型から剥離してシリコン中に混入し、異物となってシリコンの品質や歩留を低下させるという問題を回避できる。さらにはシリコン融液や凝固後のシリコンインゴットを高温の状態から素早く冷却できるようになる結果、シリコン融液やブロックが接している鋳型材や離型材中の不純物がシリコン融液中へ溶出したりインゴット中へ拡散したりして増加するコンタミ(不純物)を低減することができるようになり、高品質のシリコンインゴットを製造できる。
本発明に係る鋳型部材である鋳型側面部材1a及び鋳型底面部材1bは、主成分である二酸化珪素粉末として溶融シリカを用いるとよい。溶融シリカを使用することによって、シリコンを鋳造する高温において鋳型の軟化変形を低減できる。また、従来の石英ガラス製鋳型は、内面に離型材皮膜を形成した状態でシリコンを鋳造すると石英ガラスが結晶化することで生じる失透現象が顕著に生じてしまう。この失透した組織と石英ガラスとは熱膨張係数が異なるため鋳造時の温度変化によって失透部分が膨張し、剥離した失透部分が鋳造中のシリコン融液内に落下して異物となったり、剥離後の肉厚が薄くなった部分を起点にして鋳型が割れて内部のシリコン融液が漏れたりするという問題があるが、鋳型部材の主成分である二酸化珪素を溶融シリカとすることによりその問題を回避できるようになる。
溶融シリカ(fused silica)の粉末は、主に珪砂を原料として溶融した石英ガラスを粉砕した非結晶の粉末であり、X線回折で同定したときに、結晶相に由来する鋭い回折ピークが存在しない。この粉末は、焼結性を高めるため、平均粒径は1〜2μmとするのが望ましい。これ以下であると成形時に割れが生じやすく、これ以上だと焼結性が悪くなる恐れがある。
この粉末に、成形に必要なバインダー(例えば、ポリアクリル系エマルジョン等)と分散剤、溶媒(水)を加え、必要とする鋳型の形状に、泥しょう鋳込み成形を行う。あるいは、バインダーを添加してプレス成形を用いて成形しても良い。なお、焼結体の熱伝導率を所望の範囲とするため、後述する構成材を所定量添加しても良い。
その後、成形体を電気炉によって大気中で1250℃近傍で3〜4時間焼成を行えば焼結体を得ることができる。
本発明にかかるシリコン鋳造用鋳型では、鋳型部材の900℃における熱伝導率を1.0(W/(m・K))以上とするための方法として、鋳型部材の構成材として900℃における熱伝導率が1.1(W/(m・K))以上の物質を含有させるのが好ましい。900℃における熱伝導率が1.1(W/(m・K))以上の物質を含有させることにより、二酸化珪素の焼結体で形成された鋳型部材の熱伝導率を向上することができ、鋳型部材の900℃における熱伝導率を1.0(W/(m・K))以上とすることができる。
さらに、900℃における熱伝導率が1.1(W/(m・K))以上である、鋳型部材に含有させる構成材としては、黒鉛、炭化珪素、窒化珪素、溶融石英、透明石英ガラス、のいずれか一つ以上から選択されるようにすることが望ましい。その理由は上記のような添加成分は特に高純度で高温でも安定な物性を有しながら高い熱伝導率を有しているため、鋳型部材として高温での多結晶シリコンの鋳造に使用しても、シリコン融液やシリコンインゴットに鋳型部材中の不純物が溶出したり拡散したりするようなことが少なく、高純度で高品質のシリコンインゴットを製造できるからである。
添加量としては、用いる物質によって異なるが二酸化珪素の焼結体で形成される鋳型部材の900℃における熱伝導率が1.0(W/(m・K))以上となるように上記物質を添加すればよく、例えば、0.005%以上5%以下含有していればよく、より好ましくは0.05%以上2%以下であればよい。0.005%より小さいと鋳型部材の熱伝導率を向上させる効果が弱く、5%より大きいとシリコン融液やシリコンインゴットに鋳型部材中の不純物が溶出したり拡散したり、あるいは鋳型の強度が低下する可能性がある。これらの構成材は、上述の溶融シリカ焼結体の原料粉末に所定量を混合することによって、焼結体に含有させることができる。
また、鋳型部材の成分の一部として含有している物質の主成分に対する含有率は、鋳型側面部材1aに比べて鋳型底面部材1bの方を大きくするとなお良い。その理由は、鋳型底面部の熱伝導率を向上させることができ、同時に長時間高温に曝される鋳型側面、とくに側面上部の鋳型部材への添加成分の添加量を低減することにより、鋳型側面上部の強度を保つことができるからである。つまり、鋳型の主成分である溶融シリカの熱膨張係数がおよそ0.5×10−6/℃と小さいのに対し、上記のような高純度で高温でも安定な物性を有しながら高い熱伝導率を有する添加成分の熱膨張係数は、例えば、黒鉛や炭化珪素では4〜5×10−6/℃であり、溶融シリカの数倍〜十倍程度大きいため、とりわけ高温に曝される鋳型側面の上部では、添加成分を大量に添加すると鋳型部材の強度低下が懸念されるため、その影響を回避するためである。しかし、主成分に対する添加成分の割合が数%以下の微量であれば、鋳型としての機能に問題は無い。
また、鋳型部材の900℃における熱伝導率が1.0(W/(m・K))以上とするための方法として、鋳型部材である鋳型側面部材1a及び鋳型底面部材1bの嵩密度を2.0(g/cm)以上とするのが良い。各鋳型部材の嵩密度の測定方法は、JIS C2141-1992に規定される方法によればよい。
従来の鋳型では溶融シリカの焼結体は通常10%から20%程度の気孔率を持ち、その嵩密度がおよそ1.7(g/cm)〜1.9(g/cm)前後の焼結体が使用されてきた。これは、気孔率を低減し密度の高い鋳型を高温の環境で使用すると変形が激しく、また鋳造中に鋳型が割れて高温のシリコン融液が漏れる恐れがあったためである。従来よりこうした溶融シリカの焼結体で形成される金属融解用るつぼやシリコン鋳造用鋳型は、その用途上、高温での機械的強度や熱衝撃耐性の向上、さらには金属を融解する際の熱効率向上のために焼結体の熱伝導率を低減させるための取り組みが盛んに行われてきた。このため鋳型の熱伝導性の向上にはこれまで対策が施されていなかった。しかし、こうした嵩密度の小さな溶融シリカ焼結体からなる鋳型部材の熱伝導率は小さいため鋳型内外での熱伝導が悪く、鋳型内のシリコン融液の抜熱制御が難しく高品質のインゴットの製造が困難だったり、鋳型からの抜熱量が低下するため鋳型内のシリコン融液の凝固時間が延びて生産性が低くなるためにシリコンインゴットの製造コストが高くなったり、シリコン融液の凝固時間が長く高温の状態でシリコン融液が長時間鋳型内に保持されるために鋳型部材や離型材皮膜からシリコン融液中への不純物の溶出が多くなり、高品質のインゴットの製造が困難だったりする問題があった。本発明にかかるシリコン鋳造用鋳型では、鋳型部材である溶融シリカの焼結体が内包する気孔を大幅に低減して鋳型部材の嵩密度を2.0(g/cm)以上とすることで、従来のシリカ製鋳型に比べ熱伝導率が大幅に向上させることができる。
溶融シリカ焼結体の嵩密度を変えるためには、例えば、成形体の成形方法をプレス成形とすれば成形体の密度が低くなるので、できあがる焼結体の嵩密度は小さくなる傾向にあり、泥しょう鋳込み成形とすれば粉末同士の流動性が良いため、成形体の密度が高くなり、できあがる焼結体の嵩密度は大きくなる傾向にある。さらに、焼成温度を上げるか焼成時間を長くすると焼結体の嵩密度は上昇し、逆に焼成温度を下げるか焼成時間を短くすると焼結体の嵩密度は減少する。
また、鋳型部材の嵩密度は、鋳型側面部材1aに比べて鋳型底面部材1bの方を大きくするとなお良い。その理由は、鋳型底面部の熱伝導率を向上させることができ、同時に長時間高温に曝される鋳型側面、とくに側面上部の鋳型部材への嵩密度を低くすることにより、鋳型側面上部の強度を保つことができるからである。
図2は、本発明の鋳造装置の一実施形態を示す縦断面図である。図2に示すように、本発明の構成に係る鋳型は、鋳型外から、鋳型の鋳型側面部材1aに当接して支える鋳型保持板3aと鋳型底面部材1bに当接して支える鋳型保持板3bを設けて本発明の鋳造装置を構成することが望ましい(以下、鋳型保持板3a、3bを鋳型保持板3と略す)。なぜならば、本発明の鋳型は、鋳造時に二酸化珪素からなる、嵩密度が大きい、又は厚さが薄い鋳型部材は軟化しやすい。しかしながら、鋳型側面部及び底面部を鋳型外側より鋳型保持板3で支持することによって、容易にシリコン融液を保持するのに十分な形状の安定性を持たせることができる。特に、上述した嵩密度の大きな鋳型部材では、鋳造中特に高温に曝される鋳型側面上部などを中心に、鋳型部材の軟化、変形、割れなどの懸念があるので、このような鋳型保持板3を適用すると効果が高い。
鋳型保持板3によって鋳型1を保持する場合、鋳型部材である鋳型側面部材1a及び鋳型底面部材1bは、厚みを4mm以上12mm以下の範囲とするのが良い。従来の鋳型は、シリコンを鋳造する際の高温において鋳型形状を保つために10mm〜15mm以上の肉厚としているが、鋳型を外部から保持する鋳型保持板3を設けることにより、薄い肉厚の鋳型を用いることが可能となる。従来の鋳型よりも厚みが薄く鋳型の熱伝導性が良いために、鋳型底部からの抜熱によって鋳型内でのシリコン結晶の凝固速度を高い精度でコントロールできるようになり、高品質のシリコンインゴットを作製することができる。ただし、4mmより薄くなると熱伝導がより良好になり本来ならば好ましいが、鋳型そのものの製造時の歩留が大きく低下するため鋳型本体のコストが高くなり、結果的にシリコンインゴットの製造コストが高くなるため好ましくない。また、12mmより厚くなると鋳型の熱伝導性が悪くなり、シリコン結晶の凝固速度を高い精度でコントロールできなり、この構成とするメリットが薄れるので好ましくない。
この鋳型保持板3は、鋳造時に軟化しやすい二酸化珪素を主成分とする鋳型部材を支えるので、鋳造時の温度でも変形しにくい耐熱性の部材を用いることが望ましい。具体的には、グラファイトや炭素繊維強化炭素材料などの黒鉛材料とすることが望ましい。これらの鋳型保持板3が鋳型1からの抜熱を阻害すること無く高い熱伝導率を有しながら鋳型の軟化変形を保持する機械的強度を有し、さらに高純度化によって太陽電池特性を低下させる要因となるような、例えば金属元素などの不純物、を非常に微量にすることができる。さらに、鋳型外底面部と当接して鋳型底部を保持する鋳型保持板3bはグラファイトなどの高熱伝導性の材料を使用し、一方鋳型外側面部と当接して鋳型側面部を保持する鋳型保持板3aは炭素繊維強化炭素材料などの高い機械強度を有し、かつ熱膨張係数が小さく高温でも安定して鋳型を保持できる材料を使用するのがより好ましい。このような鋳型保持部材の厚みは、鋳型1の変形が抑えられる程度であればよく、厚みの下限値としては2mm以上、好ましくは3mm以上とするのが良い。また、厚みの上限値としては15mm以下、好ましくは10mm以下とするのが良い。厚みが2mmより小さければ、変形を抑えることができない可能性があり、厚みが15mmより大きければ鋳型保持板3のコストが高くなり、シリコンインゴットの製造コストが増加する可能性がある。
また、必要に応じこれらの鋳型保持板にはそれらを箱型に組み立てるための加工を施したり、ボルトなどの別の部品を取り付けたりしても良い。
図3に本発明の鋳造装置の実施態様の一例を示す。底面部の鋳型保持板3bには、載置した鋳型1の周囲を囲繞して支えるように設置した側面部の鋳型保持板3aを固定するためのくさび5を受けるくさび受け部6が取り付けられている。また、くさび受け部6と側面部の鋳型保持板3aとの間にくさび5が嵌め込まれている。このような構成とすることによって、鋳型保持板3と鋳型1とを相互に安定して固定することが可能となる。また、鋳型1は、シリコン融液を一方向凝固させるために、鋳型側面部材1aの上部ほど高温に曝され、軟化変形が生じ易いことから、側面部の鋳型保持板3aを外側から取り囲むように保持板固定治具4を周設し、この保持板固定治具4と側面部の鋳型保持板3aとの間にくさび5を嵌め込むことで、側面部の鋳型保持板3aと鋳型側面部材1aを安定して固定することができる。
このようにして一体に固定した鋳型1及び鋳型保持板3は、鋳造中に鋳造炉内の冷却機構7上に載置される。このとき、鋳型1及び鋳型保持板3を安定して冷却機構7上に載置できるように、底面部の鋳型保持板3bの下部に、冷却機構7と対応した形状を有する冷却機構受け部8を付与すると良い。
このように、本発明の鋳造装置によれば、上述した構成を有する鋳型保持板3によって、従来に比べ密度の大きな鋳型や肉厚の薄い鋳型をより安全に使用することが可能となる。その結果、鋳造中に鋳型が破損してシリコン融液が漏れ出すトラブルによって高価なシリコン原料が無駄となったり高価なシリコン鋳造装置が破損したりすることが無く、高い生産性で高品質のシリコンインゴットを安いコストで製造することが可能となる。さらに、本発明に係る鋳型保持板3を使用することにより鋳型側面の反りが大幅に低減されるので、鋳型内で鋳造したシリコンインゴットの側面の平滑性が向上し、インゴットの加工時に加工装置内にインゴットをセットした際にインゴットが不安定になることが無く、加工精度が向上して加工時の歩留が向上し、多結晶シリコンインゴットの製造コストを大幅に低減できる。
図4は、本発明の多結晶シリコンインゴットの鋳造方法を実施するための、鋳造炉の一例を示す。上述したような構成に係る本発明の鋳造装置を、図4に示す鋳造炉内にて、5〜500Torrに減圧したアルゴン(Ar)雰囲気中に置き、鋳型1をシリコン融液と同程度か若干低い温度で加熱してシリコン融液を注湯する。また、鋳型1内にシリコン原料を入れて直接加熱融解してもよい。その後、鋳型1の底部から徐々に降温させてシリコン融液を鋳型底部から徐々に一方向凝固させる。最後に、鋳型1から多結晶シリコンインゴットを取り出す。本発明の多結晶シリコンインゴットの鋳造方法は、本発明の鋳造装置を用いていることから、鋳型内でのシリコン結晶の凝固速度を高い精度でコントロールできるとともに、不純物が低減された高品質の多結晶シリコンインゴットを作製することができる。また、製造時間も短いので、シリコンインゴットの製造コストも低減する。
なお、得られた多結晶シリコンインゴットは、所定の形状に切断し、マルチワイヤーソーなどを用いてスライスして多結晶シリコン基板を得る。この多結晶シリコン基板は、上述したような高品質の多結晶シリコンインゴットを切断して得られているので、良好な特性のデバイス(例えば、太陽電池素子)を得ることができる。
なお、本発明の実施形態は上述の例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることはもちろんである。
図4に記載の装置を用い、内寸が、間口300mm四方、深さ210mmの鋳型1を用意し、その内面に窒化珪素を主成分として含有する離型材皮膜2を形成してシリコン鋳造用鋳型を作製した。得られた鋳型を100Torrに減圧したアルゴン(Ar)雰囲気中で、鋳型内に加熱融解したシリコン融液40kgを注湯し、鋳型上面を加熱機構9により加熱し、鋳型底面を冷却機構7により徐々に降温させてシリコン融液を一方向凝固させ、高さ約190mmのシリコンインゴットを得た。
使用した溶融シリカの焼結体からなる鋳型1について、あらかじめ構成材として炭化珪素粉末を所定量混合することによって、その鋳型部材の900℃のときにおける熱伝導率を変化させたものを用意した。熱伝導率の測定は、JIS R1611-1997で規定されるレーザーフラッシュ法に準拠して評価した。このときの鋳型部材の厚みを10mmとした。
それぞれの鋳型により得られたシリコンインゴットについて、融液の注湯から凝固完了までの凝固時間、インゴットの品質の指標となる少数キャリア寿命、を調査した。各項目において、◎は非常によい、○はよい、△は許容範囲ぎりぎり、×は不可を表す。
Figure 2006273664
表1の結果より、本発明の範囲外である熱伝導率が0.8、0.9(W/(m・K))の鋳型部材を用いて作製した従来例No.3、4においては、凝固時間が長く、少数キャリア寿命も満足のいく結果が得られなかった。しかしながら、本発明の範囲である熱伝導率が1.0、1.1(W/(m・K))の鋳型部材を用いて作製したNo.1、2においては、凝固時間が従来例に比べ短く、少数キャリア寿命も満足のいく結果が得られた。
実施例1と同様の装置を用いて、使用した溶融シリカの焼結体からなる鋳型1について、その鋳型部材の厚みを変化させたものを用意した。また、このときの鋳型部材の900℃のときにおける熱伝導率は、溶融シリカ焼結体を得る際の焼成時間により制御し、全て1.0(W/(m・K))とした。
それぞれの鋳型により得られたシリコンインゴットについて、融液の注湯から凝固完了までの凝固時間、インゴットの品質の指標となる少数キャリア寿命、鋳造中の鋳型の変形の有無を調査した。各項目において、◎は非常によい、○はよい、△は許容範囲ぎりぎり、×は不可を表す。
Figure 2006273664
表2の結果より、全て本発明の範囲内の試料であり、許容範囲以上の結果が得られることがわかった。
なお、鋳型部材の厚みが3mmであるNo.5においては、凝固速度が速く、少数キャリア寿命も満足のいく結果が得られたが、鋳型の変形が激しく、取り出したシリコンインゴットの端部を広範囲に切断する必要があり、使用できる範囲が狭くなるため、あまり好ましくない結果となった。また、鋳型部材の厚みが4mmから12mmであるNo.6、7、8においては、凝固速度、少数キャリア寿命、鋳型の変形すべてにおいて、許容範囲にあり満足のいく結果となった。また、鋳型部材の厚みが13mmであるNo.9においては、凝固速度、少数キャリア寿命が許容範囲ではあるが、No.6、7、8に比べ悪く、あまり好ましくない結果となった。
本発明のシリコン鋳造用鋳型の実施形態の一例を示す縦断面図である。 本発明のシリコン鋳造装置の一実施形態を示す縦断面図である。 本発明のシリコン鋳造装置の他の実施形態を示す縦断面図である。 本発明の多結晶シリコンインゴットの鋳造方法を実施するための、鋳造炉の一例を示す縦断面図である。
符号の説明
1:シリコン鋳造用鋳型
1a:鋳型側面部材
1b:鋳型底面部材
2:離型材皮膜
3、3a、3b:鋳型保持板
4:保持板固定治具
5:くさび
6:くさび受け部
7:冷却機構
8:冷却機構受け部
9:加熱機構

Claims (12)

  1. 内面側に離型材皮膜を備えるとともに、内部でシリコン原料を融解、又はシリコン融液を保持あるいは凝固させた後、冷却するシリコン鋳造用鋳型であって、
    前記鋳型を構成する鋳型部材は、二酸化珪素を主成分とする粉体を焼成した焼結体で形成されているとともに、900℃における熱伝導率が1.0(W/(m・K))以上であるシリコン鋳造用鋳型。
  2. 前記二酸化珪素を主成分とする粉体は、溶融シリカ(fused silica)である請求項1に記載のシリコン鋳造用鋳型。
  3. 前記鋳型部材は、900℃における熱伝導率が1.1(W/(m・K))以上である物質を構成材として含有する請求項1又は請求項2に記載のシリコン鋳造用鋳型。
  4. 前記構成材が、黒鉛、炭化珪素、窒化珪素、溶融石英、透明石英ガラスから選択された一つ以上の物質である請求項3に記載のシリコン鋳造用鋳型。
  5. 前記鋳型部材は、鋳型の側面を構成する鋳型側面部材と、鋳型の底面を構成する鋳型底面部材とを含み、
    前記構成材の含有率は、前記鋳型側面部材に比べて前記鋳型底面部材の方が大きい請求項3又は請求項4に記載のシリコン鋳造用鋳型。
  6. 前記鋳型部材の嵩密度が2.0(g/cm)以上である請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のシリコン鋳造用鋳型。
  7. 前記鋳型部材は、鋳型の側面を構成する鋳型側面部材と、鋳型の底面を構成する鋳型底面部材とを含み、
    前記鋳型部材の嵩密度は、前記鋳型側面部材に比べて前記鋳型底面部材の方が大きい請求項6に記載のシリコン鋳造用鋳型。
  8. 前記鋳型部材は、鋳型の側面を構成する鋳型側面部材と、鋳型の底面を構成する鋳型底面部材とを含む、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のシリコン鋳造用鋳型と、
    前記シリコン鋳造用鋳型の外側から、前記鋳型側面部材及び前記鋳型底面部材と当接して支えるように設けられた鋳型保持板と、を備えたシリコン鋳造装置。
  9. 前記鋳型保持板は、黒鉛材料から成る請求項8に記載のシリコン鋳造装置。
  10. 前記鋳型底面部材に当接する鋳型保持板は、グラファイトであり、
    前記鋳型側面部材に当接する鋳型保持板は、炭素繊維強化炭素材料である請求項9に記載のシリコン鋳造装置。
  11. 前記鋳型部材の厚みは、4mm以上12mm以下である請求項8乃至請求項10のいずれか一項に記載のシリコン鋳造装置。
  12. 請求項8乃至請求項11のいずれか一項に記載のシリコン鋳造装置を用いて形成する多結晶シリコンインゴットの鋳造方法。
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