本発明は、半導体基板等の被処理基板にプラズマ処理を施すプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法、ならびにコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に関する。
例えば半導体デバイスの製造プロセスにおいては、被処理基板である半導体ウエハに形成された所定の層に所定のパターンを形成するために、レジストをマスクとしてプラズマによりエッチングするプラズマエッチング処理が多用されている。
このようなプラズマエッチングを行うためのプラズマエッチング装置としては、種々のものが用いられているが、その中でも容量結合型平行平板プラズマエッチング装置が主流である。
容量結合型平行平板プラズマエッチング装置は、チャンバ内に一対の平行平板電極(上部および下部電極)を配置し、処理ガスをチャンバ内に導入するとともに、電極の一方に高周波を印加して電極間に高周波電界を形成し、この高周波電界により処理ガスのプラズマを形成して半導体ウエハの所定の層に対してプラズマエッチングを施す。
具体的には、上部電極にプラズマ形成用の高周波を印加してプラズマを形成し、下部電極にイオン引き込み用の高周波を印加することにより、適切なプラズマ状態を形成するプラズマエッチング装置が知られており、これにより、高選択比で再現性の高いエッチング処理が可能である(例えば特許文献1)。
ところで、近年の微細加工の要求に対応して、マスクとして用いられるフォトレジストの膜厚が薄くなり、使用されるフォトレジストもKrFフォトレジスト(すなわち、KrFガスを発光源としたレーザー光で露光するフォトレジスト)から、約0.13μm以下のパターン開口を形成することができるArFフォトレジスト(すなわち、ArFガスを発光源とした、より短波長のレーザー光で露光するフォトレジスト)に移行されつつある。
しかしながら、ArFフォトレジストは耐プラズマ性が低いため、KrFレジストではほとんど発生しなかったエッチング途中での表面の荒れが生じてしまうという問題がある。このため、開口部の内壁面に縦筋(ストライエーション)が入ったり、開口部が広がる(CDの広がり)等の問題が生じ、フォトレジストの膜厚が薄いことと相俟って、良好なエッチング選択比でエッチングホールを形成することができないという不都合が生じている。
一方、この種のエッチング装置では、上部電極に供給したプラズマ生成用の高周波電力のパワーが小さい場合には、エッチング終了後に上部電極に堆積物(デポ)が付着し、プロセス特性の変化やパーティクルの懸念がある。また、パワーが大きい場合には、電極の削れが生じ、パワーが小さい場合とはプロセス特性が変化する。高周波電源からのパワーはプロセスによって適正な範囲が決まるため、どのようなパワーでもプロセスが変動しないことが望まれる。さらに、エッチングの際にはチャンバ壁にデポが生じ、連続エッチングプロセスの場合等に、前の処理の影響が残存して次の処理に悪影響を与えるメモリー効果が生じるため、チャンバ壁への堆積物の付着の解消も求められる。
さらに、このような平行平板型容量結合型のエッチング装置では、チャンバ内の圧力が高くかつ使用するエッチングガスが負性ガス(例えば、CxFy、O2)の場合に、チャンバ中心部のプラズマ密度が低くなるが、このような場合にプラズマ密度をコントロールすることは困難である。
一方、半導体デバイスにおいて、配線の微細化や高速化の要請が高まるに伴い、配線寄生容量の低減を図る目的で低誘電率の層間絶縁膜の利用が進められている。このような低誘電率膜(Low−k膜)の中でも、特にSiOC系膜が注目を集めている。
SiOC系膜などの有機系のLow−k膜にプラズマエッチングを行なう場合、重要となるのが窒化珪素などの下地膜やマスク層との選択比を十分に確保することである。通常は、下地膜との選択性が比較的高い処理ガスとしてフルオロカーボンガス系の混合ガスが用いられるが、それだけで十分な選択比を得ることは難しい。そこで、SiOC系膜のエッチングにおいて、Cu配線のバリア層である窒化珪素膜を下地エッチストップ層としてSiOC系層間絶縁膜をプラズマエッチングする際に、下地膜との選択比を向上させるため、処理ガスとしてC4F8/Ar/N2をArの流量比が80%以上となるように用い、窒化珪素膜との選択比を向上させるエッチング方法が提案されている(例えば、特許文献2)。
また、上記特許文献2と同様に、窒化珪素膜を下地エッチストップ層としてSiOC系層間絶縁膜をプラズマエッチングする際に、処理ガスとしてCHF3/Ar/N2を用いる第1ステップのエッチングと、処理ガスとしてC4F8/Ar/N2を用いる第2ステップのエッチングとを行ない、マスクと窒化珪素膜との双方に対する選択比を向上させるエッチング方法も提案されている(例えば、特許文献3)。
しかしながら、上述したようにCu配線のバリア層として用いられている窒化珪素はバリア性は良いものの比誘電率が7.0と高いため、SiOC系膜などのLow−k膜の低誘電率特性を十分に活用するためには、さらに比誘電率が低いバリア層が求められており、その一つとして比誘電率が3.5の炭化珪素(SiC)がある。
このような低誘電率バリア層であるであるSiCを下地エッチストップ層として使用して上層の被エッチング層であるLow−k膜をエッチングする際においても、十分なエッチング選択比を確保することが必要である。しかし、前記特許文献2および特許文献3に記載されたフルオロカーボン系の処理ガスを用いるプラズマエッチングでは、Low−k膜とSiC層とのエッチング選択比を十分に確保することができない。
特開2000−173993号公報
特開2002−270586号公報
特開2004−87875号公報
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、レジスト層等の有機マスク層の耐プラズマ性を高く維持して高選択比でエッチングすることができ、または電極への堆積物の付着を有効に解消することができ、または高速なエッチングができ、または被処理基板に対して均一なエッチングを行うことができるプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法を提供することを目的とする。
また、エッチストップ層としての下地SiC層に対して高いエッチング選択比でLow−k膜のエッチングを行なうことができるプラズマ処理方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点では、被処理基板が収容され、真空排気可能な処理容器と、処理容器内に対向して配置される第1電極および第2電極と、前記第1電極または第2電極にプラズマ形成用の高周波電力を供給する高周波電力供給ユニットと、前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給ユニットとを具備し、前記第1電極および第2電極との間に処理ガスのプラズマを生成して被処理基板の所定の層をプラズマ処理するプラズマ処理装置であって、前記第1電極または第2電極に直流電圧または交流電圧を印加する電源をさらに具備し、印加電極の表面に対する所定のスパッタ効果が得られる程度にその表面の自己バイアス電圧Vdcの絶対値が大きくなるように、または、印加電極におけるプラズマシースの厚さを拡大させ、前記印加電極の対向電極側に縮小されたプラズマが形成されるように、または、印加電極近傍で生成した電子を前記被処理基板上に照射させるように、または、プラズマポテンシャルが所望の値に制御されるように、または、プラズマ密度を上昇させるように、または、プラズマ密度の分布が所望のエッチングの均一性を得られる程度に均一になるように、前記電源からの印加電圧、印加電流および印加電力のいずれかを制御することを特徴とするプラズマ処理装置を提供する。
この場合に、前記直流電圧または交流電圧は、パルス状または変調されたものであることが好ましい。また、前記電源からの印加電圧、印加電流および印加電力のいずれかを制御する制御装置をさらに具備する構成とすることができる。また、生成されたプラズマの状態を検出する検出器をさらに具備し、この検出器の情報に基づいて前記制御装置が前記電源からの印加電圧、印加電流および印加電力のいずれかを制御してもよい。
本発明の第2の観点では、被処理基板が収容され、真空排気可能な処理容器と、処理容器内に対向して配置される第1電極および第2電極と、前記第1電極または第2電極にプラズマ形成用の高周波電力を供給する高周波電力供給ユニットと、前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給ユニットとを具備し、前記第1電極および第2電極との間に処理ガスのプラズマを生成して被処理基板の所定の層をプラズマ処理するプラズマ処理装置であって、前記第1電極または第2電極に直流電圧または交流電圧を印加する電源をさらに具備し、前記電源の一方の極が前記第1電極または第2電極に接続され、他方の極が前記処理容器内の所定の部材に接続され、前記電源からの印加電圧、印加電流および印加電力のいずれかを制御することを特徴とするプラズマ処理装置を提供する。
この場合において、前記所定の部材は、処理容器内に存在する絶縁部材に埋設された導体、または処理容器の壁部を構成する部材、または前記第2電極上の被処理基板周縁に載置された補正リングであることが好ましい。また、他の直流電源をさらに有し、前記他の直流電源の一方の極が前記第1電極および第2電極のうち前記直流電源が接続されていない電極に接続され、他方の極が前記所定の部材または前記所定の部材から絶縁された他の所定の部材に接続されているように構成することができる。また、前記他の直流電源が接続される前記他の所定の部材は、処理容器内に存在する絶縁部材に埋設された導体、または処理容器の壁部を構成する部材、または前記第2電極上の被処理基板周縁に載置された補正リングであることが好ましい。
本発明の第3の観点では、被処理基板が収容され、真空排気可能な処理容器と、処理容器内に対向して配置される第1電極および第2電極と、前記第1電極または第2電極にプラズマ形成用の高周波電力を供給する高周波電力供給ユニットと、前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給ユニットとを具備し、前記第1電極および第2電極との間に処理ガスのプラズマを生成して被処理基板の所定の層をプラズマ処理するプラズマ処理装置であって、前記処理容器内の所定の部材に直流電圧または交流電圧を印加する電源をさらに具備することを特徴とするプラズマ処理装置を提供する。
この場合において、前記直流電圧または交流電圧は、パルス状または変調されたものであってもよい。また、前記所定の部材は、処理容器内に存在する絶縁部材に埋設された導体、または処理容器の壁部を構成する部材であることが好ましい。また、前記電源の極を前記所定の部材に接続し、他方の極を前記処理容器内の前記所定の部材から絶縁された他の所定の部材に接続するように構成してもよい。また、前記所定の部材および前記他の所定の部材は、処理容器内に存在する絶縁部材に埋設された導体、または処理容器の壁部を構成する部材であることが好ましい。
本発明の第3の観点において、他の電源をさらに有し、前記他の電源は、前記処理容器内の前記所定の部材から絶縁された他の所定の部材に接続して直流電圧または交流電圧を印加することが好ましい。この場合において、前記他の所定の部材に印加される直流電圧または交流電圧は、パルス状または変調されたものであってもよい。
本発明の第3の観点において、前記電源が接続される前記所定の部材は前記第1電極近傍に配置され、前記他の直流電源が接続される前記他の所定の部材は前記第2電極近傍に配置されることが好ましい。この場合において、前記所定の部材および前記他の所定部材は、処理容器内に存在する絶縁部材に埋設された導体、または処理容器の壁部を構成する部材であることが好ましい。
本発明の第3の観点において、前記第1電極は上部電極であり、前記第2電極は被処理体を載置する下部電極であり、前記第2電極上方の被処理基板の外周部の被処理基板に隣接した位置に設置された冷却可能な冷却リングと、その外側または上側に設置された補正リングとを有し、前記補正リングが直流電圧または交流電圧が印加される前記所定の部材として機能するように構成してもよい。この場合において、前記冷却リングは、前記冷却リングと前記第2電極との間に放熱性が良好な部材を配置するか、または前記冷却リングと前記第2電極との間に熱伝達ガスを流すことにより冷却されることが好ましい。また、前記冷却リングの温度を計測する温度計測機構と、前記冷却リングを冷却する冷却部と、冷却部による前記内側リングの冷却を制御する冷却制御部とをさらに具備することが好ましい。また、前記第2電極には高周波電力が供給され、前記補正リングへの給電は、前記第2電極を介して行われ、前記冷却リングと前記第2電極の間には誘電体部材が設けられているように構成してもよい。
本発明の第3の観点において、前記第1電極は上部電極であり、前記第2電極は被処理体を載置する下部電極であり、前記第2電極上方の被処理基板の外周部の被処理基板に隣接した位置に設置された第1補正リングと、その外側または上側に設置された第2補正リングとを有し、前記第1補正リングおよび第2補正リングが直流電圧または交流電圧が印加される前記所定の部材として機能するように構成してもよい。この場合において、前記第1補正リングと前記第2補正リングに印加する電圧は、それぞれ独立に変化させることが可能である。また、前記第1補正リングと前記第2補正リングには、それぞれ異なる電源から電圧が印加されるように構成してもよい。また、前記第1補正リングと前記第2補正リングには、それぞれ単一の電源の一方の極および他方の極が接続されるように構成してもよい。また、前記第1補正リングは冷却されてもよい。
本発明の第4の観点では、被処理基板が収容され、真空排気可能な処理容器と、処理容器内に対向して配置される第1電極および被処理基板を支持する第2電極と、前記第2電極にプラズマ形成用の第1の高周波電力を印加する第1の高周波電力印加ユニットと、前記第1電極に直流電圧を印加する直流電源と、前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給ユニットとを具備することを特徴とするプラズマ処理装置を提供する。
本発明の第5の観点では、被処理基板が収容され、真空排気可能な処理容器と、処理容器内に対向して配置される第1電極および被処理基板を支持する第2電極と、前記第1電極にプラズマ形成用の高周波電力を印加する第1の高周波電力印加ユニットと、前記第2電極に第2の高周波電力を印加する第2の高周波電力印加ユニットと、前記第2電極に第3の高周波電力を印加する第3の高周波電力印加ユニットと、前記第1電極に直流電圧を印加する直流電源と、前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給ユニットとを具備することを特徴とするプラズマ処理装置を提供する。
本発明の第6の観点では、被処理基板が収容され、真空排気可能な処理容器と、処理容器内に対向して配置される第1電極および第2電極と、前記第1電極または第2電極にプラズマ形成用の高周波電力を供給する高周波電力供給ユニットと、前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給ユニットとを具備し、前記第1電極および第2電極との間に処理ガスのプラズマを生成して被処理基板の所定の層をプラズマ処理するプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法であって、プラズマを形成する際に、前記第1電極または第2電極に直流電圧または交流電圧を印加し、その際に、印加電極の表面に対する所定のスパッタ効果が得られる程度にその表面の自己バイアス電圧Vdcの絶対値が大きくなるように、または、印加電極におけるプラズマシースの厚さを拡大させ、前記印加電極の対向電極側に縮小されたプラズマが形成されるように、または、印加電極近傍で生成した電子を前記被処理基板上に照射させるように、または、プラズマポテンシャルが所望の値に制御されるように、または、プラズマ密度を上昇させるように、または、プラズマ密度の分布が所望のエッチングの均一性を得られる程度に均一になるように、その印加電圧、印加電流および印加電力のいずれかを制御することを特徴とするプラズマ処理方法を提供する。
本発明の第7の観点では、被処理基板が収容され、真空排気可能な処理容器と、処理容器内に対向して配置される第1電極および第2電極と、前記第1電極または第2電極にプラズマ形成用の高周波電力を供給する高周波電力供給ユニットと、前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給ユニットとを具備し、前記第1電極および第2電極との間に処理ガスのプラズマを生成して被処理基板の所定の層をプラズマ処理するプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法であって、プラズマを形成する際に、前記処理容器内の所定の部材に直流電圧または交流電圧を印加することを特徴とするプラズマ処理方法を提供する。
本発明の第8の観点では、処理容器内に、第1電極および被処理基板を支持する第2電極を対向して配置し、前記第2電極にプラズマ形成用の高周波電力を印加しながら、前記処理容器内に処理ガスを供給し、該処理ガスのプラズマを生成させて、前記第2電極に支持された被処理基板にプラズマ処理を施すプラズマ処理方法であって、前記第1電極に直流電圧を印加する工程と、前記第1電極に直流電圧を印加しながら、前記被処理基板にプラズマ処理を施す工程とを有することを特徴とするプラズマ処理方法を提供する。
本発明の第9の観点では、処理容器内に、第1電極および被処理基板を支持する第2電極を対向して配置し、前記第1電極にプラズマ形成用の高周波電力を印加し、前記第2電極に第2の高周波電力と第3の高周波電力を印加しながら、前記処理容器内に処理ガスを供給し、該処理ガスのプラズマを生成させて、前記第2電極に支持された被処理基板にプラズマ処理を施すプラズマ処理方法であって、前記第1電極に直流電圧を印加する工程と、前記第1電極に直流電圧を印加しながら、前記被処理基板にプラズマ処理を施す工程とを有することを特徴とするプラズマ処理方法を提供する。
本発明の第10の観点では、コンピュータ上で動作する制御プログラムが記憶されたコンピュータ記憶媒体であって、前記制御プログラムは、実行時に、上記第6の観点のプラズマ処理方法が行われるように、プラズマ処理装置を制御することを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供する。
本発明の第11の観点では、コンピュータ上で動作する制御プログラムが記憶されたコンピュータ記憶媒体であって、前記制御プログラムは、実行時に、上記第7の観点のプラズマ処理方法が行われるように、プラズマ処理装置を制御することを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供する。
本発明の第12の観点では、コンピュータ上で動作する制御プログラムが記憶されたコンピュータ記憶媒体であって、前記制御プログラムは、実行時に、上記第8の観点のプラズマ処理方法が行われるように、プラズマ処理装置を制御することを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供する。
本発明の第13の観点では、コンピュータ上で動作する制御プログラムが記憶されたコンピュータ記憶媒体であって、前記制御プログラムは、実行時に、上記第9の観点のプラズマ処理方法が行われるように、プラズマ処理装置を制御することを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供する。
本発明の第1、第2、第4〜第6、第8〜第10、第12、第13の観点によれば、(1)第1電極の自己バイアス電圧の絶対値を大きくして第1電極表面へのスパッタ効果、(2)第1の電極におけるプラズマシースを拡大させ、形成されるプラズマが縮小化される効果、(3)第1電極近傍に生じた電子を被処理基板上に照射させる効果、(4)プラズマポテンシャルを制御する効果、(5)電子(プラズマ)密度を上昇させる効果、(6)中心部のプラズマ密度を上昇させる効果の少なくとも一つを奏することができる。
上記(1)の効果により、第1電極の表面にプロセスガスに起因するポリマーとフォトレジストからのポリマーが付着した場合でも、ポリマーをスパッタして電極表面を清浄化することができる。それとともに、基板上に最適なポリマーを供給してフォトレジスト膜の荒れを解消することができる。また、電極自体がスパッタされることにより電極材料を基板上に供給してフォトレジスト膜等の有機マスクを強化することができる。
また、上記(2)の効果により、被処理基板上の実効レジデンスタイムが減少し、かつプラズマが被処理基板上に集中して拡散が抑えられ排気空間が減少するので、フロロカーボン系の処理ガスの解離が抑えられ、フォトレジスト膜等の有機マスクがエッチングされ難くなる。
さらに、上記(3)の効果により、被処理基板上のマスク組成が改質され、フォトレジスト膜の荒れを解消することができる。また、高速の電子が被処理基板に照射されることから、シェーディング効果が抑制され、被処理基板の微細加工性が向上する。
さらにまた、上記(4)の効果により、プラズマポテンシャルを適切に制御して、電極や、チャンバ壁(デポシールド等)、処理容器内の絶縁材等の処理容器内部材へのエッチング副生物の付着を抑制することができる。
さらにまた、上記(5)の効果により、被処理基板に対するエッチングレート(エッチング速度)を上昇させることができる。さらにまた、上記(6)の効果により、処理容器内の圧力が高くかつ使用するエッチングガスが負性ガスであっても、処理容器内の中心部のプラズマ密度が周辺に比べて低くなることを抑制でき(負イオンの生成を抑制でき)、プラズマ密度が均一化するようにプラズマ密度をコントロールすることができる。
これにより、レジスト層等の有機マスク層の耐プラズマ性を高く維持して高選択比でエッチングすることができる。または、電極への堆積物の付着を有効に解消することができる。または高速なエッチングができ、または被処理基板に対して均一なエッチングを行うことができる。
本発明の第3、第7、第11の観点によれば、プラズマポテンシャルを制御する効果を奏することができる。これにより、プラズマポテンシャルを適切に制御して、電極や、チャンバ壁(デポシールド等)、処理容器内の絶縁材等の処理容器内部材へのエッチング副生物の付着を抑制することができる。
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について具体的に説明する。
実施形態1
まず、本発明の実施形態1について説明する。
図1は、本発明の実施形態1に係るプラズマエッチング装置を示す概略断面図である。
このプラズマエッチング装置は、容量結合型平行平板プラズマエッチング装置として構成されており、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウムからなる略円筒状のチャンバ(処理容器)10を有している。このチャンバ10は保安接地されている。
チャンバ10の底部には、セラミックス等からなる絶縁板12を介して円柱状のサセプタ支持台14が配置され、このサセプタ支持台14の上に例えばアルミニウムからなるサセプタ16が設けられている。サセプタ16は下部電極を構成し、その上に被処理基板である半導体ウエハWが載置される。
サセプタ16の上面には、半導体ウエハWを静電力で吸着保持する静電チャック18が設けられている。この静電チャック18は、導電膜からなる電極20を一対の絶縁層または絶縁シートで挟んだ構造を有するものであり、電極20には直流電源22が電気的に接続されている。そして、直流電源22からの直流電圧により生じたクーロン力等の静電力により半導体ウエハWが静電チャック18に吸着保持される。
静電チャック18(半導体ウエハW)の周囲でサセプタ16の上面には、エッチングの均一性を向上させるための、例えばシリコンからなる導電性のフォーカスリング(補正リング)24が配置されている。サセプタ16およびサセプタ支持台14の側面には、例えば石英からなる円筒状の内壁部材26が設けられている。
サセプタ支持台14の内部には、例えば円周上に冷媒室28が設けられている。この冷媒室には、外部に設けられた図示しないチラーユニットより配管30a,30bを介して所定温度の冷媒、例えば冷却水が循環供給され、冷媒の温度によってサセプタ上の半導体ウエハWの処理温度を制御することができる。
さらに、図示しない伝熱ガス供給機構からの伝熱ガス、例えばHeガスがガス供給ライン32を介して静電チャック18の上面と半導体ウエハWの裏面との間に供給される。
下部電極であるサセプタ16の上方には、サセプタ16と対向するように平行に上部電極34が設けられている。そして、上部および下部電極34,16間の空間がプラズマ生成空間となる。上部電極34は、下部電極であるサセプタ16上の半導体ウエハWと対向してプラズマ生成空間と接する面、つまり対向面を形成する。
この上部電極34は、絶縁性遮蔽部材42を介して、チャンバ10の上部に支持されており、サセプタ16との対向面を構成しかつ多数の吐出孔37を有する電極板36と、この電極板36を着脱自在に支持し、導電性材料、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウムからなる水冷構造の電極支持体38とによって構成されている。電極板36は、ジュール熱の少ない低抵抗の導電体または半導体が好ましく、また、後述するようにレジストを強化する観点からはシリコン含有物質が好ましい。このような観点から、電極板36はシリコンやSiCで構成されるのが好ましい。電極支持体38の内部には、ガス拡散室40が設けられ、このガス拡散室40からはガス吐出孔37に連通する多数のガス通流孔41が下方に延びている。
電極支持体38にはガス拡散室40へ処理ガスを導くガス導入口62が形成されており、このガス導入口62にはガス供給管64が接続され、ガス供給管64には処理ガス供給源66が接続されている。ガス供給管64には、上流側から順にマスフローコントローラ(MFC)68および開閉バルブ70が設けられている(MFCの代わりにFCNでもよい)。そして、処理ガス供給源66から、エッチングのための処理ガスとして、例えばC4F8ガスのようなフロロカーボンガス(CxFy)がガス供給管64からガス拡散室40に至り、ガス通流孔41およびガス吐出孔37を介してシャワー状にプラズマ生成空間に吐出される。すなわち、上部電極34は処理ガスを供給するためのシャワーヘッドとして機能する。
上部電極34には、整合器46および給電棒44を介して、第1の高周波電源48が電気的に接続されている。第1の高周波電源48は、13.56MHz以上の周波数、例えば60MHzの高周波電力を出力する。整合器46は、第1の高周波電源48の内部(または出力)インピーダンスに負荷インピーダンスを整合させるもので、チャンバ10内にプラズマが生成されている時に第1の高周波電源48の出力インピーダンスと負荷インピーダンスが見かけ上一致するように機能する。整合器46の出力端子は給電棒44の上端に接続されている。
一方、上記上部電極34には、第1の高周波電源48の他、可変直流電源50が電気的に接続されている。可変直流電源50はバイポーラ電源であってもよい。具体的には、この可変直流電源50は、上記整合器46および給電棒44を介して上部電極34に接続されており、オン・オフスイッチ52により給電のオン・オフが可能となっている。可変直流電源50の極性および電流・電圧ならびにオン・オフスイッチ52のオン・オフはコントローラ51により制御されるようになっている。
整合器46は、図2に示すように、第1の高周波電源48の給電ライン49から分岐して設けられた第1の可変コンデンサ54と、給電ライン49のその分岐点の下流側に設けられた第2の可変コンデンサ56を有しており、これらにより上記機能を発揮する。また、整合器46には、直流電圧電流(以下、単に直流電圧という)が上部電極34に有効に供給可能なように、第1の高周波電源48からの高周波(例えば60MHz)および後述する第2の高周波電源からの高周波(例えば2MHz)をトラップするフィルタ58が設けられている。すなわち、可変直流電源50からの直流電流がフィルタ58を介して給電ライン49に接続される。このフィルタ58はコイル59とコンデンサ60とで構成されており、これらにより第1の高周波電源48からの高周波および後述する第2の高周波電源からの高周波がトラップされる。
チャンバ10の側壁から上部電極34の高さ位置よりも上方に延びるように円筒状の接地導体10aが設けられており、この円筒状接地導体10aの天壁部分は筒状の絶縁部材44aにより上部給電棒44から電気的に絶縁されている。
下部電極であるサセプタ16には、整合器88を介して第2の高周波電源90が電気的に接続されている。この第2の高周波電源90から下部電極サセプタ16に高周波電力が供給されることにより、半導体ウエハW側にイオンが引き込まれる。第2の高周波電源90は、300kHz〜13.56MHzの範囲内の周波数、例えば2MHzの高周波電力を出力する。整合器88は第2の高周波電源90の内部(または出力)インピーダンスに負荷インピーダンスを整合させるためのもので、チャンバ10内にプラズマが生成されている時に第2の高周波電源90の内部インピーダンスと負荷インピーダンスが見かけ上一致するように機能する。
上部電極34には、第1の高周波電源48からの高周波(60MHz)は通さずに第2の高周波電源90からの高周波(2MHz)をグランドへ通すためのローパスフィルタ(LPF)92が電気的に接続されている。このローパスフィルタ(LPF)92は、好適にはLRフィルタまたはLCフィルタで構成されるが、1本の導線だけでも第1の高周波電源48からの高周波(60MHz)に対しては十分大きなリアクタンスを与えることができるので、それで済ますこともできる。一方、下部電極であるサセプタ16には、第1の高周波電源48からの高周波(60MHz)をグランドに通すためのハイパスフィルタ(HPF)94が電気的に接続されている。
チャンバ10の底部には排気口80が設けられ、この排気口80に排気管82を介して排気装置84が接続されている。排気装置84は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、チャンバ10内を所望の真空度まで減圧可能となっている。また、チャンバ10の側壁には半導体ウエハWの搬入出口85が設けられており、この搬入出口85はゲートバルブ86により開閉可能となっている。また、チャンバ10の内壁に沿ってチャンバ10にエッチング副生物(デポ)が付着することを防止するためのデポシールド11が着脱自在に設けられている。すなわち、デポシールド11がチャンバ壁を構成している。また、デポシールド11は、内壁部材26の外周にも設けられている。チャンバ10の底部のチャンバ壁側のデポシールド11と内壁部材26側のデポシールド11との間には排気プレート83が設けられている。デポシールド11および排気プレート83としては、アルミニウム材にY2O3等のセラミックスを被覆したものを好適に用いることができる。
デポシールド11のチャンバ内壁を構成する部分のウエハWとほぼ同じ高さ部分には、グランドにDC的に接続された導電性部材(GNDブロック)91が設けられており、これにより後述するような異常放電防止効果を発揮する。
プラズマ処理装置の各構成部は、制御部(全体制御装置)95に接続されて制御される構成となっている。また、制御部95には、工程管理者がプラズマ処理装置を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、プラズマ処理装置の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース96が接続されている。
さらに、制御部95には、プラズマ処理装置で実行される各種処理を制御部95の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じてプラズマ処理装置の各構成部に処理を実行させるためのプログラムすなわちレシピが格納された記憶部97が接続されている。レシピはハードディスクや半導体メモリーに記憶されていてもよいし、CDROM、DVD等の可搬性のコンピュータにより読み取り可能な記憶媒体に収容された状態で記憶部97の所定位置にセットするようになっていてもよい。
そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース96からの指示等にて任意のレシピを記憶部97から呼び出して制御部95に実行させることで、制御部95の制御下で、プラズマ処理装置での所望の処理が行われる。なお、本発明の実施の形態で述べるプラズマ処理装置(プラズマエッチング装置)は、この制御部95を含むものとする。
このように構成されるプラズマ処理装置においてエッチング処理を行う際には、まず、ゲートバルブ86を開状態とし、搬入出口85を介してエッチング対象である半導体ウエハWをチャンバ10内に搬入し、サセプタ16上に載置する。そして、処理ガス供給源66からエッチングのための処理ガスを所定の流量でガス拡散室40へ供給し、ガス通流孔41およびガス吐出孔37を介してチャンバ10内へ供給しつつ、排気装置84によりチャンバ10内を排気し、その中の圧力を例えば0.1〜150Paの範囲内の設定値とする。ここで、処理ガスとしては、従来用いられている種々のものを採用することができ、例えばC4F8ガスのようなフロロカーボンガス(CxFy)に代表されるハロゲン元素を含有するガスを好適に用いることができる。さらに、ArガスやO2ガス等の他のガスが含まれていてもよい。
このようにチャンバ10内にエッチングガスを導入した状態で、第1の高周波電源48からプラズマ生成用の高周波電力を所定のパワーで上部電極34に印加するとともに、第2の高周波電源90よりイオン引き込み用の高周波を所定のパワーで下部電極であるサセプタ16に印加する。そして、可変直流電源50から所定の直流電圧を上部電極34に印加する。さらに、静電チャック18のための直流電源22から直流電圧を静電チャック18の電極20に印加して、半導体ウエハWをサセプタ16に固定する。
上部電極34の電極板36に形成されたガス吐出孔37から吐出された処理ガスは、高周波電力により生じた上部電極34と下部電極であるサセプタ16間のグロー放電中でプラズマ化し、このプラズマで生成されるラジカルやイオンによって半導体ウエハWの被処理面がエッチングされる。また、このように上部電極34にプラズマ形成用の第1の高周波電力を供給し、下部電極であるサセプタ16にイオン引き込み用の第2の高周波電力を供給するので、プラズマの制御マージンを広くすることができる。
本実施形態では、このようにしてプラズマが形成される際に、上部電極34に高い周波数領域(例えば、10MHz以上)の高周波電力を供給しているので、プラズマを好ましい状態で高密度化することができ、より低圧の条件下でも高密度プラズマを形成することができる。
また、このようにプラズマが形成される際に、上部電極34に可変直流電源50から所定の極性および大きさの直流電圧が印加される。このとき、印加電極である上部電極34の表面つまり電極板36の表面に対する所定の(適度な)スパッタ効果が得られる程度にその表面の自己バイアス電圧Vdcが深くなるように、つまり上部電極34表面でのVdcの絶対値が大きくなるように、可変直流電源50からの印加電圧をコントローラ51により制御することが好ましい。第1の高周波電源48から印加される高周波のパワーが低い場合に、上部電極34にポリマーが付着するが、可変直流電源50から適切な直流電圧を印加することにより、上部電極34に付着したポリマーをスパッタして上部電極34の表面を清浄化することができる。それとともに、半導体ウエハW上に最適な量のポリマーを供給してフォトレジスト膜の表面荒れを解消することができる。また、可変直流電源50からの電圧を調整して上部電極34自体をスパッタして電極材料自体を半導体ウエハW表面に供給するようにすることにより、フォトレジスト膜表面でカーバイドを形成してフォトレジスト膜が強化され、かつスパッタされた電極材料がフロロカーボン系の処理ガス中のFと反応して排気されることによりプラズマ中のF比率が減少してフォトレジスト膜がエッチングされ難くなる。電極板36がシリコンやSiC等のシリコン含有物質の場合には、電極板36表面でスパッタされたシリコンがポリマーと反応してフォトレジスト膜表面にSiCが形成され、フォトレジスト膜が極めて強固なものとなり、しかも、SiはFと反応しやすいため、上記効果が特に大きい。したがって、電極板36の材料としてはシリコン含有物質が好ましい。なお、この場合に、可変直流電源50からの印加電圧を制御する代わりに、印加電流または印加電力を制御するようにしてもよい。
このように上部電極34に直流電圧を印加して自己バイアス電圧Vdcが深くなった場合には、図3に示すように、上部電極34側に形成されるプラズマシースの厚さが大きくなる。そして、プラズマシースが厚くなると、その分だけプラズマが縮小化される。例えば、上部電極34に直流電圧を印加しない場合には上部電極側のVdcが例えば−300Vであり、図4の(a)に示すようにプラズマは薄いシース厚d0を有する状態である。しかし、上部電極34に−900Vの直流電圧を印加すると上部電極側のVdcが例えば−900Vとなり、プラズマシースの厚さは、Vdcの絶対値の3/4に比例するから、図4の(b)に示すように、より厚いプラズマシースd1が形成され、その分プラズマが縮小化する。このように厚いプラズマシースを形成して、プラズマを適切に縮小化することにより、半導体ウエハW上の実効レジデンスタイムが増加し、かつプラズマがウエハW上に集中して拡散が抑えられ解離空間が減少する。これらにより、フロロカーボン系の処理ガスの解離が抑えられ、フォトレジスト膜がエッチングされ難くなる。したがって、可変直流電源50からの印加電圧は、上部電極34におけるプラズマシースの厚さが所望の縮小化されたプラズマが形成される程度に厚くなるようにコントローラ51により制御することが好ましい。この場合にも、可変直流電源50からの印加電圧を制御する代わりに、印加電流または印加電力を制御するようにしてもよい。
また、プラズマが形成される際には、上部電極34近傍に電子が生成される。上部電極34に可変直流電源50から直流電圧を印加すると、印加した直流電圧値とプラズマ電位との電位差により、電子は処理空間の鉛直方向へ加速される。可変直流電源50の極性、電圧値、電流値を所望のものにすることにより、電子は半導体ウエハWに照射される。照射された電子は、マスクとしてのフォトレジスト膜の組成を改質させ、フォトレジスト膜は強化される。したがって、可変直流電源50の印加電圧値および印加電流値により上部電極34近傍で生成する電子の量と、このような電子のウエハWへの加速電圧を制御することで、フォトレジスト膜に対する所定の強化を図ることができる。
特に、半導体ウエハW上のフォトレジスト膜がArFエキシマレーザー(波長193nm)用のフォトレジスト膜(以下、ArFレジスト膜と記す)である場合、ArFレジスト膜のポリマー構造は、以下の化学式(1)、(2)に示すような反応を経て、電子が照射されて化学式(3)の右辺のような構造となる。すなわち、電子が照射されると化学式(3)のd部に示すように、ArFレジスト膜の組成の改質が起こる(レジストの架橋反応)。このd部は、エッチング耐性(プラズマ耐性)を非常に強くする働きを有するので、ArFレジスト膜のエッチング耐性は飛躍的に増大する。このため、ArFレジスト膜の表面荒れを抑制することができ、ArFレジスト膜に対するエッチング対象層のエッチング選択比を高めることができる。
したがって、可変直流電源50からの印加電圧値・電流値は、電子の照射によってフォトレジスト膜(特にArFレジスト膜)のエッチング耐性が強くなるように、コントローラ51により制御することが好ましい。
また、上述したように、上部電極34に直流電圧を印加すると、プラズマが形成される際に上部電極34近傍に生成された電子が処理空間の鉛直方向へ加速されるが、可変直流電源50の極性、電圧値、電流値を所望のものにすることにより、電子を半導体ウエハWのホール内に到達させることができ、シェーディング効果を抑制してボーイングのない良好な加工形状を得ることができ、加工形状の均一性を良好にすることができる。
加速電圧を制御された電子がウエハWに入射する電子量として、直流電圧による電子電流量IDC を用いた場合に、プラズマからウエハに入射するイオン電流量Iionとすると、IDC>(1/2)Iionを満たすことが好ましい。Iion=Zρvione(ただし、Z:荷数、ρ:流速密度、vion:イオン速度、e:電子の電荷量1.6×10−19C)であり、ρは電子密度Neに比例するからIionはNeに比例する。
このように、上部電極34に印加する直流電圧を制御して、上記上部電極34のスパッタ機能またはプラズマの縮小化機能、さらには上記上部電極34で生成される多量の電子の半導体ウエハWへの供給機能が発揮されることにより、フォトレジスト膜の強化や最適ポリマーの供給、処理ガスの解離抑制等が図られ、フォトレジストの表面荒れ等を抑制することができ、フォトレジスト膜に対するエッチング対象層のエッチング選択比を高めることができる。それとともに、フォトレジストの開口部におけるCDの広がりを抑制することができ、より高精度のパターン形成を実現することができる。特に、これらスパッタ機能およびプラズマの縮小化機能および電子の供給機能の3つが適切に発揮されるように直流電圧を制御することにより、このような効果をより高めることができる。
なお、上記各機能のうちいずれが優勢に生じるかは処理条件等により異なり、これら機能の一つ以上が発揮され、上記効果を有効に奏するように、可変直流電源50から印加される電圧をコントローラ51により制御することが好ましい。
このような機能を利用してフォトレジスト膜に対するエッチング対象膜であるSiO2膜の選択比を改善した結果について説明する。ここでは、上部電極34の電極板36としてシリコンを用い、第1の高周波電源48から上部電極34へ周波数60MHzで100〜3000Wの高周波電力を供給し、第2の高周波電源90から下部電極であるサセプタ16へ周波数2MHzで4500Wの高周波電力を供給して、エッチングガスとしてC4F6/Ar/O2を用い、可変直流電源50からの印加電圧を変化させた場合におけるフォトレジスト膜およびSiO2膜のエッチングレートの変化およびフォトレジスト膜に対するSiO2膜の選択比の変化を把握した。その結果を図5に示す。この図に示すように、上部電極34に負の直流電圧を印加し、その絶対値が上昇するに従ってフォトレジスト膜に対するSiO2膜の選択比が上昇し、−600Vを超えてその絶対値が大きくなるとその選択比が著しく上昇することがわかる。すなわち、上部電極34に−600Vよりも絶対値の高い負の直流電圧を印加すれば、フォトレジスト膜に対するSiO2膜の選択比が大幅に改善することが確認された。
また、上部電極34に印加する直流電圧を調整することにより、プラズマポテンシャルを制御することができる。これにより、上部電極34やチャンバ壁を構成するデポシールド11、内壁部材26、絶縁性遮蔽部材42へのエッチング副生物の付着を抑制する機能を有する。
エッチング副生物が上部電極34やチャンバ壁を構成するデポシールド11等に付着すると、プロセス特性の変化やパーティクルの懸念がある。特に、多層膜を連続してエッチングする場合、例えば図6に示すようなSi系有機膜(SiOC)101、SiN膜102、SiO2膜103、フォトレジスト104を半導体ウエハW上に順次積層した多層膜を連続してエッチングする場合には、各膜によってエッチング条件が異なるため、前の処理の影響が残存して次の処理に悪影響を与えるメモリー効果が生じてしまう。
このようなエッチング副生物の付着はプラズマポテンシャルと上部電極34やチャンバ壁等との間のポテンシャル差によって影響するため、プラズマポテンシャルを制御することができれば、このようなエッチング生成物の付着を抑制することができる。
図7は上部電極34に直流電圧を印加した際のプラズマポテンシャル波形の変化を示す図であり、図8は上部電極に供給する直流電圧の値とプラズマポテンシャルの最大値との関係を示す図である。これらの図に示すように、上部電極34に負の直流電圧を印加するとその絶対値が大きくなるほどプラズマポテンシャルの最大値が低くなる。すなわち、上部電極34に印加する直流電圧によってプラズマポテンシャルを制御することができることがわかる。これは、上部電極34に、上部電極34に印加する高周波電力のセルフバイアス(Vdc)より絶対値の高い直流電圧を印加することにより、Vdcの絶対値が大きくなり、プラズマポテンシャルが低下するからである。より詳細に説明すると、プラズマポテンシャルの値は、上部電極によるプラズマポテンシャルの押し上げによって決まっていた。しかし、絶対値の高い負の電圧を上部電極に印加すると、上部電極の電圧振幅が全て負の電位で行われるようになるので、プラズマポテンシャルは壁の電位で決まるようになる。このため、プラズマポテンシャルが低下するのである。
このように、可変直流電源50から上部電極34に印加する電圧を制御することにより、プラズマポテンシャルを低下させることができ、上部電極34やチャンバ壁を構成するデポシールド11、さらにはチャンバ10内の絶縁材(部材26,42)へのエッチング副生物の付着を抑制することができる。プラズマポテンシャルVpとしては、80V≦Vp≦200Vの範囲が好ましい。
また、上部電極34に印加する直流電圧を制御することにより、このようなプラズマポテンシャル制御機能と、上述の上部電極34のスパッタ機能およびプラズマの扁平化機能および電子の供給機能を有効に発揮させることも可能である。
さらに、上部電極34に直流電圧を印加することによる他の効果として、印加した直流電圧によってプラズマが形成されることにより、プラズマ密度を高めてエッチングレートを上昇させることが挙げられる。
これは、上部電極に負の直流電圧を印加すると、電子が上部電極に入り難くなり電子の消滅が抑制されることと、イオンが上部電極に加速されて入ると電子が電極から出ることができ、その電子がプラズマ電位と印加電圧値の差で高速に加速され中性ガスを電離(プラズマ化)することで、電子密度(プラズマ密度)が増加するからである。
さらにまた、プラズマが形成された場合に、上部電極34に可変直流電源50から直流電圧を印加すると、プラズマ拡散のために、比較的中心部のプラズマ密度を上昇させることができる。チャンバ10内の圧力が高くかつ使用するエッチングガスが負性ガスの場合には、チャンバ10内の中心部のプラズマ密度が低くなる傾向にあるが、このように上部電極34に直流電圧を印加して中心部のプラズマ密度を上昇させるようにすることができ、均一なエッチングが行えるように、プラズマ密度をコントロールすることができる。ただし、エッチング特性はプラズマ密度のみで規定されないから、プラズマ密度が均一になるほどエッチングが均一になるとは限らない。
このことを実験によって説明する。
図1の装置において、半導体ウエハをチャンバ内に装入してサセプタ上に載置し、BARC(有機反射防止膜)およびエッチング対象膜のエッチングを行った。BARCのエッチングの際には、第1の高周波電力を2500W、第2の高周波電力を2000Wとし、処理ガスとしてCH2F2、CHF3、Ar、O2を用いた。また、エッチング対象膜のエッチングの際には、第1の高周波電力を1500W、第2の高周波電力を4500Wとし、処理ガスとしてCH4F6、CF4、Ar、O2を用い、ホールのエッチングを行った。その際に、上部電極に印加する直流電圧を−800V、−1000V、−1200Vと変化させた。その際の電子密度(プラズマ密度)の径方向の分布を図9に示す。この図に示すように、−800Vから−1200Vへと直流電圧の絶対値が増加するほどセンターの電子密度が上昇し、プラズマ密度が均一になる傾向が見られる。この際の、センターとエッジにおけるエッチング形状を模式的に図10に示す。この図から、直流電圧が−800Vから−1000Vとなることによりエッチングの均一性が増加することがわかる。一方、−1000Vから−1200Vになることにより、電子密度の均一性は増加するが、センターにおいてエッチング性が高くなりすぎ、かえってエッチング均一性は低下する。このことから−1000Vがエッチングの均一性が最もよいことが確認された。いずれにしても、直流電圧を調整することにより、均一なエッチングを行うことができることがわかる。
以上のように、上部電極34に印加する直流電圧を制御することにより、上述の上部電極34のスパッタ機能、プラズマの縮小化機能、電子の供給機能、プラズマポテンシャル制御機能、電子密度(プラズマ密度)上昇機能、およびプラズマ密度コントロール機能のうち少なくとも一つを有効に発揮させることが可能である。
可変直流電源50としては、−2000〜+1000Vの範囲の電圧を印加可能なものを適用することができる。そして、以上のような諸機能を有効に発揮させるためには、可変直流電源50からの直流電圧は、絶対値で500V以上が好ましい。
また、印加する直流電圧は、上部電極34に印加される第1の高周波電力によって上部電極の表面に発生する自己バイアス電圧より絶対値が大きい負の電圧であることが好ましい。
このことを確認した実験について説明する。
図11は、第1の高周波電源48からプラズマ生成用の高周波電力(60MHz)のパワーを変えて上部電極34に印加した場合に、上部電極34の表面に発生する自己バイアス電圧Vdcと、上部電極34に印加する直流電圧との関係を示すグラフである。ここでは、チャンバ内圧力=2.7Pa、上部電極34に650W、1100Wまたは2200Wの高周波電力、下部電極としてのサセプタ16に2100Wの高周波電力を印加し、処理ガス流量 C4F6/Ar/O2=25/700/26mL/min、上下部電極間距離=25mm、バックプレッシャー(センター部/エッジ部)=1333/4666Pa、上部電極34の温度=60℃、チャンバ10側壁の温度=50℃、サセプタ16の温度=0℃の条件でプラズマを生成させ、上部電極34表面の自己バイアス電圧Vdcを測定した。
図11のグラフから、印加した直流電圧は、上部電極34の自己バイアス電圧Vdcより大きな場合にその効果が現れるとともに、上部電極34に供給する高周波電力が大きくなるほど、発生する負の自己バイアス電圧Vdcも大きくなることがわかる。したがって、直流電圧を印加する場合には、高周波電力による自己バイアス電圧Vdcよりも絶対値が大きい負の電圧を印加する必要がある。このことから、上部電極34へ印加する直流電圧の絶対値は、上部電極に発生する自己バイアス電圧Vdcに比べ、少しでも大きく設定することが好ましいことが確認された。
また、図12に示すように、例えばプラズマ検出窓10aからプラズマの状態を検出する検出器55を設け、その検出信号に基づいてコントローラ51が可変直流電源50を制御するようにすることにより、上述した機能を有効に発揮するような直流電圧を自動的に上部電極34に印加することが可能である。また、シース厚を検出する検出器あるいは電子密度を検出する検出器を設け、その検出信号に基づいてコントローラ51が可変直流電源50を制御するようにしてもよい。
ここで、本実施形態のプラズマエッチング装置において、ウエハW上に形成された絶縁膜(例えばLow−k膜)をエッチングする際に、処理ガスとして使用するのが特に好ましいガスの組み合わせを下記に例示する。
ビアエッチングの条件におけるオーバーエッチング時に、使用するのが好ましい処理ガスの組み合わせとして、C5F8、Ar、N2が挙げられる。これにより、絶縁膜の下地膜(SiC、SiN等)に対する選択比を大きくとることができる。
また、トレンチエッチングの条件では、使用するのが好ましい処理ガスの組み合わせとして、CF4または(C4F8、CF4、Ar、N2、O2)が挙げられる。これにより、絶縁膜のマスクに対する選択比を大きくとることができる。
また、HARCエッチングの条件では、使用するのが好ましい処理ガスの組み合わせとして、(C4F6、CF4、Ar、O2)または(C4F6、C3F8、Ar、O2)または(C4F6、CH2F2、Ar、O2)が挙げられる。これにより、絶縁膜のエッチング速度を大きくすることができる。
なお上記に限られず、(CxHyFzのガス/N2,O2等の添加ガス/希釈ガスの組み合わせ)を使用することが可能である。
ところで、上部電極34に直流電圧を印加すると、上部電極34に電子がたまり、チャンバ10の内壁との間等に異常放電が生じるおそれがある。このような異常放電を抑制するため、本実施形態ではDC的に接地されたパーツであるGNDブロック(導電性部材)91をチャンバ壁側のデポシールド11に設けている。このGNDブロック91はプラズマ面に露出しており、デポシールド11の内部の導電部に電気的に接続されており、可変直流電源50から上部電極34に印加された直流電圧電流は、処理空間を経てGNDブロック91に到達し、デポシールド11を介して接地される。GNDブロック91は導電体であり、Si,SiC等のシリコン含有物質であることが望ましい。Cも好適に用いることができる。このGNDブロック91により、上記上部電極34にたまる電子を逃がすことができ、異常放電を防止することができる。GNDブロック91の突出長さは10mm以上であることが好ましい。
また、異常放電を防止するために、上部電極34に直流電圧を印加する場合に、適宜の手段により直流電圧に重畳して図13に示すような極短い逆極性のパルスを周期的に与えて電子を中和する方法も有効である。
上記GNDブロック91は、プラズマ形成領域に設けられていれば、その位置は図1の位置に限らず、例えば、図14に示すように、サセプタ16の周囲に設ける等、サセプタ16側に設けてもよく、また図15に示すように、上部電極34の外側にリング状に設ける等、上部電極34近傍に設けてもよい。ただし、プラズマを形成した際に、デポシールド11等に被覆されているY2O3やポリマーが飛翔し、それがGNDブロック91に付着すると、DC的に接地されなくなって、異常放電防止効果を発揮し難くなるため、これらが付着し難いことが重要となる。そのためには、GNDブロック91がY2O3等で被覆された部材から離れた位置であることが好ましく、隣接パーツとしてはSiや石英(SiO2)等のSi含有物質であることが好ましい。例えば、図16の(a)に示すように、GNDブロック91の周囲にSi含有部材93を設けることが好ましい。この場合に、Si含有部材93のGNDブロック91の下の部分の長さLはGNDブロック91の突出長さM以上であることが好ましい。また、Y2O3やポリマーの付着による機能低下を抑制するために、図16の(b)に示すように、GNDブロック91として飛翔物が付着し難い凹所91aを設けることが有効である。また、GNDブロック91の表面積を大きくして、Y2O3やポリマーに覆われ難くすることも有効である。さらに、付着物を抑制するためには温度が高いことが有効であるが、上部電極34にはプラズマ形成用の高周波電力が供給され、その近傍の温度が上昇するため、温度を上昇させて付着物を付着させない観点から上記図15のように上部電極34の近傍に設けることも好ましい。この場合、特に、上記図15のように、上部電極34の外側にリング状に設けることがより好ましい。
デポシールド11等に被覆されているY2O3やポリマーの飛翔にともなうGNDブロック91への付着物の影響をより効果的に排除するためには、図17に示すように、GNDブロック91に負の直流電圧を印加可能にするのが効果的である。すなわち、GNDブロック91に負の直流電圧を印加することにより、そこに付着した付着物がスパッタまたはエッチングされ、GNDブロック91の表面をクリーニングすることができる。図17の構成においては、GNDブロック91に可変直流電源50から電圧印加が可能なように、GNDブロック91の接続を、可変直流電源50側と接地ラインとで切り替える切替機構53が設けられ、さらにGNDブロック91に負の直流電圧が印加された際に発生する直流電子電流を流入させる、接地された導電性補助部材91bが設けられている。切替機構53は、可変直流電源50の接続を整合器46側とGNDブロック91側との間で切り替える第1スイッチ53aと、GNDブロック91の接地ラインへの接続をオン・オフする第2スイッチ53bとを有している。なお、図17の例では、GNDブロック91が上部電極34の外側にリング状に設けられ、導電性補助部材91bがサセプタ16の外周に設けられており、この配置が好ましいが、必ずしもこのような配置でなくてもよい。
図17の構成の装置において、プラズマ処理時には、通常、図18の(a)に示すように、切替機構53の第1スイッチ53aが上部電極34側に接続され、可変直流電源50が上部電極34側に接続された状態となり、かつ第2スイッチ53bがオンにされ、GNDブロック91が接地ライン側に接続される。この状態においては、第1の高周波電源48および可変直流電源50から上部電極34に給電されてプラズマが形成され、直流電子電流は、プラズマを介して上部電極34から接地されているGNDブロック91および導電性補助部材91bに流入する(正イオン電流の流れの向きは逆となる)。このとき、GNDブロック91の表面は、上述したようなY2O3やポリマー等の付着物で被覆されることがある。
このため、このような付着物をクリーニングする。このようなクリーニング時には、図18の(b)に示すように、切替機構53の第1スイッチ53aをGNDブロック91側に切り替え、第2スイッチ53bをオフにする。この状態においては、第1の高周波電源48から上部電極34に給電されてクリーニングプラズマが形成され、可変直流電源50から負の直流電圧がGNDブロック91に印加される。これにより、直流電子電流はGNDブロック91から導電性補助部材91bに流入する。逆に正イオンはGNDブロック91に流入する。このため、直流電圧を調整してGNDブロック91への正イオンの入射エネルギーを制御することにより、GNDブロック91表面をイオンスパッタすることができ、これによりGNDブロック91表面の付着物を除去することができる。
また、プラズマ処理時の一部の期間において、図20に示すように、第2スイッチ53bをオフにし、GNDブロック91をフローティング状態としてもよい。このとき、直流電子電流は、プラズマを介して上部電極34から導電性補助部材91aに流入する(正イオン電流の流れの向きは逆となる)。このときGNDブロック91にはセルフバイアス電圧がかかり、その分のエネルギーをもって正イオンが入射され、プラズマ処理時にGNDブロック91をクリーニングすることができる。
なお、上記クリーニング時においては、印加する直流電圧は小さくてよく、その際の直流電子電流は小さい。このため、図17の構成において、リーク電流によりGNDブロック91に電荷がたまらないようにできる場合には、必ずしも導電性補助部材91bは必要ない。
上記図17の例では、クリーニング時に、可変直流電源50の接続を上部電極34側からGND電極91側に切り替え、直流電圧を印加した際の直流電子電流がGNDブロック91から導電性補助部材91bへ流れるようにしたが、可変直流電源50の正極を上部電極34に接続し、負極をGNDブロック91に接続し、直流電圧を印加した際の直流電子電流がGNDブロック91から上部電極34へ流れるようにしてもよい。この場合は、導電性補助部材は不要である。このような構成を図20に示す。図20の構成においては、プラズマ処理時には、可変直流電源50の負極が上部電極34に接続され、かつGNDブロック91が接地ラインに接続され、クリーニング時には、可変直流電源50の正極が上部電極34に接続され、負極がGNDブロック91に接続されるように、接続を切り替える接続切替機構57が設けられている。この接続切替機構57は、上部電極34に対する可変直流電源50の接続を正極と負極との間で切り替える第1スイッチ57aと、GNDブロック91に対する可変直流電源50の接続を正極と負極との間で切り替える第2スイッチ57bと、可変直流電源50の正極または負極を接地するための第3スイッチ57cとを有している。第1スイッチ57aと第2スイッチ57bとは、第1スイッチ57aが可変直流電源50の正極に接続されている際には第2スイッチ57bが直流電源の負極に接続され、第1スイッチ57aが可変直流電源50の負極に接続されている際には第2スイッチ57bがオフになるように連動する連動スイッチを構成している。
図20の構成の装置において、プラズマエッチング時には、図21の(a)に示すように、接続切替機構57の第1スイッチ57aが可変直流電源50の負極側に接続され、可変直流電源50の負極が上部電極34側に接続された状態となり、かつ第2スイッチ57bが可変直流電源50の正極側に接続され、第3スイッチ57cが可変直流電源50の正極側に接続され(可変直流電源50の正極を接地)、GNDブロック91が接地ライン側に接続される。この状態においては、第1の高周波電源48および可変直流電源50から上部電極34に給電されてプラズマが形成され、直流電子電流は、プラズマを介して上部電極34から接地されているGNDブロック91に流入する(正イオン電流の流れの向きは逆となる)。このとき、GNDブロック91の表面は、上述したようなY2O3やポリマー等の付着物で被覆されることがある。
一方、クリーニング時には、図21の(b)に示すように、接続切替機構57の第1スイッチ57aを可変直流電源50の正極側に切り替え、第2スイッチ57bを可変直流電源50の負極側に切り替え、さらに第3スイッチ57cを未接続状態とする。この状態においては、第1の高周波電源48から上部電極34に給電されてクリーニングプラズマが形成され、GNDブロック91には可変直流電源50の負極から、上部電極34には可変直流電源50の正極から、直流電圧が印加され、これらの間の電位差により直流電子電流はGNDブロック91から上部電極34に流入し、逆に正イオンはGNDブロック91に流入する。このため、直流電圧を調整してGNDブロック91への正イオンの入射エネルギーを制御することにより、GNDブロック91表面をイオンスパッタすることができ、これによりGNDブロック91表面の付着物を除去することができる。なお、この場合に可変直流電源50は見かけ上フローティング状態であるが、一般的に電源にはフレーム接地ラインが設けられているので安全である。
また、上記例では第3スイッチ57cを未接続状態としたが、可変直流電源50の正極側に接続のまま(可変直流電源50の正極を接地)としてもよい。この状態においては、第1の高周波電源48から上部電極34に給電されてクリーニングプラズマが形成され、GNDブロック91には可変直流電源50の負極から直流電圧が印加され、直流電子電流はプラズマを介してGNDブロック91から上部電極34に流入し、逆に正イオンはGNDブロック91に流入する。この場合においても、直流電圧を調整してGNDブロック91への正イオンの入射エネルギーを制御することにより、GNDブロック91表面をイオンスパッタすることができ、これによりGNDブロック91表面の付着物を除去することができる。
なお、図17および図20の例では、クリーニングの際にGNDブロック91に直流電圧を印加したが、交流電圧を印加してもよい。また、図17の例において、上部電極に直流電圧を印加するための可変直流電源50を用いてGNDブロック91に電圧を印加したが、別の電源から電圧を印加するようにしてもよい。また、図17および図20の例では、プラズマエッチング時にGNDブロック91を接地させ、クリーニング時にGNDブロック91に負の直流電圧を印加する形態を説明したが、これに限られない。例えば、プラズマエッチング時にGNDブロック91に負の直流電圧を印加してもよい。また、上記のクリーニング時をアッシング時に置き換えてもよい。さらに、可変直流電源50としてバイポーラ電源を用いた場合には、上記接続切替機構57のような複雑なスイッチング動作は不要である。
図17の例における切替機構53、図20の例における接続切替機構57の切り替え動作は、制御部95からの指令に基づいて行われる。
プラズマを形成した際において、Y2O3やポリマーがGNDブロック91へ付着することによってDC的に接地されなくなることを簡易に防止する観点からは、GNDブロック91の一部を他の部材で覆い、これらに相対移動を生じさせることにより、GNDブロック91の新たな面が露出するようにすることが有効である。具体的には、図22に示すように、GNDブロック91を比較的大面積として、GNDブロック91のプラズマが当たる表面の一部を矢印方向に移動可能なマスク材211で覆い、この保護板211を移動することにより、GNDブロック91表面のプラズマに曝される部分を変えることを可能とすることを挙げることができる。この場合に駆動機構をチャンバ10内に設けるとパーティクル発生を引き起こす懸念があるが、百時間に一度程度と少ない頻度でよいので大きな問題は生じない。また、図23に示すように、例えば円柱状のGNDブロック91′を回転可能に設け、GNDブロック91′の外周面の一部のみが露出可能なようにマスク材212で覆うようにし、GNDブロック91′を回転させることにより、プラズマに曝されている部分を変えるようにすることも有効である。この場合には、駆動機構はチャンバ10外に設けることができる。マスク材211,212としては、耐プラズマ性の高いもの、例えばY2O3等のセラミックスを溶射したアルミ板を用いることができる。
また、同様にGNDブロック91が付着物によってDC的に接地されなくなることを簡易に防止するための他の手法としては、GNDブロック91の一部を他の部材で覆い、この他の部材としてプラズマにより徐々にエッチングされるものを用いて、GNDブロック91が常に導電性を失っていない面が露出するようにすることが有効である。例えば、図24の(a)に示すように、段付きの保護膜213でGNDブロック91表面の一部を覆い、初期露出面91cに接地機能を持たせる。この状態でプラズマ処理を例えば200時間行うと、図24の(b)に示すように、GNDブロック91の初期露出面91cが導電性を失うが、その際に段付きの保護膜213の薄い部分がエッチングされてGNDブロック91の新露出面91dが現れるようにする。これにより新露出面91dが接地機能を発揮するようになる。このような保護膜213は、GNDブロック91へ壁面材料が付着するのを防止する効果と、GNDブロック91へのイオンの流入を減少させて汚染を防止する効果を有する。
実際の適用においては、図25に示すように、薄い層214を多数積層して各層を少しずつずらした保護膜213aを用いることが好ましい。この場合に、1つの層214がプラズマによるエッチングによって消失する時間をTeとし、GNDブロック91の露出した表面が汚染されて導電性を消失するまでの時間をTpとすると、かならずTe<Tpを満たすように層214の厚さを設定することにより、GNDブロック91において常に導電性を保った表面を確保することができる。層214の数としては、メンテナンスの周期よりもGNDブロック91の寿命のほうが長くなるように選ぶことが好ましい。また、メンテナンス性の向上のために、図示するように他とは異なる色を付けた層214aを1層設けておき、例えばこの層214aが一定面積以上となった時点で交換するようして交換時期を把握することができる。
保護膜213、213aとしては、プラズマにより適度にエッチングされるものが好ましく、例えば、フォトレジスト膜を好適に用いることができる。
GNDブロック91が付着物によってDC的に接地されなくなることを簡易に防止するためのさらに他の方法としては、GNDブロック91を複数設け、その中で接地機能を奏するものを順次切り替えていくことを挙げることができる。例えば、図26に示すように、3つのGNDブロック91を設け、これらの一つのみを接地させるように切り替えスイッチ215を設ける。また、共通の接地ライン216には、電流センサー217を設けておき、そこに流れる直流電流をモニターする。接地されているGNDブロック91の電流を電流センサー217でモニターし、その電流値が所定値より低くなった時点で、接地機能を奏しないとして別のGNDブロック91に切り替える。なお、GNDブロック91の数は3〜10個程度の範囲で適当な数を選択すればよい。
以上の例においては、接地されていないGNDブロックは電気的にフローティング状態となっているが、使っていないGNDブロックを保護する観点から、切り替えスイッチ215を設ける代わりに、保護するためのポテンシャルを印加できるようにしてもよい。その例を図27に示す。図27では各GNDブロック91に個別に接続された接地ライン218にそれぞれ可変直流電源219を設ける。これにより、接地機能を発揮させるべきGNDブロック91の電圧が0Vになるようにそれに対応する可変直流電源219の電圧を制御し、他のGNDブロック91については、電流が流れない電圧、例えば100Vになるように対応する可変直流電源219の電圧を制御する。そして、接地機能を発揮させるべきGNDブロック91に接続されている接地ライン218に設けられた電流センサー217の電流値が所定値より低くなった時点で、接地機能を奏しなくなったと判断して、別のGNDブロック91に対応する可変直流電源219の電圧値をそのGNDブロックが接地機能を奏する値に制御する。
なお、このように直流電源219からの印加電圧を−1kV程度の負の値とすることにより、それに接続されたGNDブロック91をプラズマに直流電圧を与えるための電極として機能させることができる。ただし、この値があまり大きくてもプラズマへ悪影響を与えてしまう。また、GNDブロック91に印加する電圧を制御することにより、GNDブロック91に対するクリーニング効果を奏することができる。
次に、本実施形態のように、上部電極34の高周波電力と直流電圧を重畳させた場合のプラズマについてより詳しく説明する。
図28は、横軸に電子温度をとり、縦軸にその強度をとって、プラズマの電子温度分布を示す図である。高密度プラズマを得ようとする場合、上述のように13.56MHz以上というイオンが追従しない比較的高い高周波電力を用いることが有効であるが、高周波電力を印加した場合のプラズマ(RFプラズマ)の電子温度分布は、図28の曲線A(caseA)に示すように、電子温度が低い励起領域に強度のピークがあり、より高いプラズマ密度を得ようとしてパワーを上げると電子温度が中間レベルである解離領域の強度が高くなるため、エッチングのための処理ガスであるC4F8ガスのようなフロロカーボンガス(CxFy)の解離が進んでしまい、エッチング特性が低下してしまう。
これに対して、図28の曲線B(caseB)は、直流電圧を印加することにより生成されるプラズマ(DCプラズマ)の場合であり、曲線A(caseA)と同等のプラズマ密度であるが、この場合には、電子温度が高いイオン化領域に強度のピークが存在し、励起領域や解離領域はほとんど存在しない。このため、13.56MHz以上の高周波電力に直流電圧を重畳させることにより、高周波電力のパワーを上げずに高プラズマ密度を得ることができ、しかもこのようにして形成されたプラズマは、電子温度が励起領域およびイオン化領域で強度ピークを持つ2極化したものとなり、同じプラズマ密度でも処理ガスの解離が少ない理想的なプラズマを形成することが可能となる。
このことを図29を参照してさらに具体的に説明する。図29は、プラズマの電子温度分布を高周波電力のみの場合と、直流電圧を重畳させた場合とで比較して示す図である。図29の曲線Cは、上部電極34に周波数60MHzの高周波電力を供給し、下部電極であるサセプタ16にイオン引き込み用の周波数2MHzの高周波電力を供給した場合であって、上部電極34への高周波パワーを2400W、下部電極であるサセプタ16への高周波パワーを1000Wにした場合であり、曲線Dは、同様に上部電極34およびサセプタ16にそれぞれ60MHzおよび2MHzを印加するとともに、上部電極34に直流電圧を印加した場合であって、曲線Cの場合とプラズマ密度が同じになるように、高周波パワーおよび直流電圧の値を設定したものであり、上部電極34への高周波パワーを300Wに低下させ、直流電圧を−900Vにした場合である。図29に示すように、直流電圧を重畳させることにより、同じプラズマ密度において、電子温度が解離領域のものがほとんど存在しない2極化した高密度プラズマを形成することができる。この場合、上部電極34に供給される高周波電力の周波数およびパワー、ならびに直流電圧の値を変化させることにより、電子温度分布を制御することが可能であり、より適切なプラズマ状態を得ることが可能となる。
上述したように、上部電極34に印加する高周波電力の周波数が小さいほど高エネルギープラズマとなり、Vdcも高くなって、処理ガスの解離がより促進され、直流電圧を印加することによる制御マージンが狭いものとなるが、上部電極34に印加する高周波電力の周波数が40MHz以上、例えば60MHzの場合には、プラズマのエネルギーが低いため、直流電圧を印加することによる制御マージンが広いものとなる。したがって、上部電極34に印加する高周波電力の周波数は40MHz以上が好ましい。
次に、下部電極であるサセプタ16に供給されるイオン引き込み用のバイアス高周波電力について説明する。サセプタ16に供給される第2の高周波電源90からの高周波電力はイオン引き込みのためのバイアス高周波電力であるが、その周波数(RF印加周波数)がおよそ10MHz未満であるか10MHz以上であるかで、その作用が異なる。つまり、RF印加周波数の周波数が10MHz未満、例えば2MHzの場合には、一般的にイオンがそのRF印加周波数に追従できるため、図30の(a)に示すように、ウエハに入射するイオンエネルギーは、高周波電力電圧波形に応じて変化するウエハポテンシャルに対応するものとなる。一方、バイアス高周波の周波数が10MHz以上、例えば13.56MHzの場合には、一般的にイオンがそのRF印加周波数に追従できないため、図30の(b)に示すように、ウエハに入射するイオンエネルギーはウエハポテンシャルによらずVdcに依存する。図30(a)のイオンが追従する周波数(例えば2MHz)の場合には、イオンの最大エネルギーはVppに対応するものとなり、また、プラズマポテンシャルとウエハポテンシャルの差が小さい部分ではイオンエネルギーが小さくなるから、図31のイオンエネルギー分布図の曲線Eに示すように、ウエハ上のイオンエネルギーが2極分化したブロードなものとなる。一方、図30(b)のイオンが追従しない周波数(例えば13.56MHz)の場合には、ウエハポテンシャルに関係なくイオンエネルギーはVdcに対応するものとなり、図31に示すように、ウエハ上のイオンエネルギーはVdcに対応する部分付近で最大値を示し、Vdcよりも高いエネルギーのイオンはほとんど存在しない。
このようなことから、10MHz未満のイオンが追従できる周波数は、大きなイオンエネルギーにより生産性を高めたい場合に適しており、10MHz以上のイオンが追従できない周波数は、マスクの表面あれがクリティカルな場合等、イオンエネルギーが低いことが要求される場合に適している。したがって、バイアス用の高周波電力の周波数は、用途に応じて適宜選択することが好ましい。
なお、以上は、上記上部電極34のスパッタ機能、プラズマの縮小化機能、および電子の供給機能等を発揮させるために、直流電圧を印加した例を示したが、交流電圧であっても同様の効果を得ることができる。ただし、その周波数は、プラズマ生成のための高周波電力の周波数よりも小さいものとする。また、直流電圧および交流電圧いずれの場合でも、電圧をパルス状にしてもよいし、AM変調やFM変調等の変調されたものであってもよい。
ところで、低誘電率バリア層であるであるSiCを下地エッチストップ層として使用して上層の被エッチング層であるLow−k膜をエッチングする場合があるが、従来は、その際において十分なエッチング選択比を確保することが困難であった。これに対して、本実施形態のプラズマ処理装置を用いて、上部電極34に第1の高周波電力に直流電圧を重畳して印加しながらエッチングを行なって、上記機能を有効に発揮することにより、エッチングストップ層としての下地膜に対して高いエッチング選択比で絶縁膜としてのSiOC膜などのLow−k膜をエッチングすることができる。
図32は、このようなエッチングを行う際における典型的なエッチング対象としてのウエハWの断面構造を示している。このウエハWは、図32(a)に示すように、下地膜としてのSiC層301、絶縁膜であるSiOC系膜302、SiO2膜303、反射防止膜としてのBARC304が下からその順で積層され、さらにその上層に所定の形状にパターニングされたエッチングマスクとしてのArFレジスト305が形成されている。SiOC系膜302は、構成成分にSi、O、CおよびHを含むLow−k膜であり、例えばSiLK(商品名;ダウ・ケミカル社製)、SOD−SiOCHのMSQ(メチルシルセスキシロキサン)、CVD−SiOCHのCORAL[商品名;ノーベラス・システムズ(Novellus Systems)社製]やBlack Diamond[商品名;アプライド・マテリアルズ(Applied Materials)社製]などが挙げられる。また、SiOC系膜302に変えて、他のLow−k膜、例えば、PAE系膜、HSQ膜、PCB系膜、CF系膜などの有機Low−k膜や、SiOF系膜などの無機Low−k膜を対象とすることができる。
また、下地膜としてのSiC層301としては、例えば、BLOk[商品名;アプライド・マテリアルズ社製]等を挙げることができる。
このウエハWに対し、図32(b)に示すように、フルオロカーボン(CF系)ガスのプラズマによりエッチングを行なうことによって、ArFレジスト305のマスクパターンに対応した凹部(溝またはホール)311を形成する。このプラズマ処理において、上部電極34に直流電圧を重畳することによって、下地であるSiC層301と被エッチング層であるSiOC系膜302との選択比を十分に確保することができる。この場合、可変直流電源50から上部電極34に印加する直流電圧は、0〜−1500Vとすることが好ましく、エッチング条件としては、例えばチャンバ内圧力=1.3〜26.7Pa、高周波電力(上部電極/下部電極)=0〜3000W/100〜5000W、処理ガスとして、C4F8とN2とArの混合ガスを用い、その流量比をC4F8/N2/Ar=4〜20/100〜500/500〜1500mL/minとすることが好ましい。
次に、図32と同様の積層構造のサンプルを調製し、実際に図1の装置によりエッチングを行った。ビア(ホール)パターンが形成されたArFレジスト305をマスクとして、下地膜のSiC層301が露出するまでSiOC系膜302に対するエッチングを実施しビアを形成した。エッチングは、以下に示すエッチング条件1、2で実施し、上部電極34に−900Vの直流電圧を印加した場合(実施例1、2)と、直流電圧を印加しない場合(比較例1、2)についてエッチング特性の比較を行なった。その結果を表1に示した。
<エッチング条件1>
チャンバ内圧力=6.7Pa;
高周波電力(上部電極/下部電極)=400W/1500W;
処理ガス流量 C4F8/Ar/N2=6/1000/180mL/min;
上下部電極間距離=35mm;
処理時間=25〜35秒
バックプレッシャー(ヘリウムガス:センター部/エッジ部)=2000/5332Pa;
上部電極34の温度=60℃;
チャンバ10側壁の温度=60℃;
サセプタ16の温度=0℃
<エッチング条件2>
高周波電力(上部電極/下部電極)を800W/2500Wに変更した以外はエッチング条件1と同様とした。
表1より、エッチング条件1およびエッチング条件2のいずれにおいても、上部電極に−900Vの直流電圧を印加した実施例1、2は、同条件で直流電圧を印加しない比較例1、2に比べて対SiC選択比、対レジスト選択比ともに大幅に向上した。
また、ビア頂部のCD(Critical Dimension)の拡大を抑制しながら、エッチングレートを大きく改善できることも確認された。エッチングレートの向上とCDの制御(CD拡大の抑制)とは、従来のエッチング技術では両立させることが困難であったが、直流電圧を印加することにより、両者を両立させ得ることが示された。
また、この表1における条件1と条件2との比較から、上部電極34に直流電圧を重畳することによる対SiC選択比の向上効果は、高周波電力(上部電極/下部電極)が小さい方がより顕著に得られることが判明した。
次に、上記エッチング条件1またはエッチング条件2を基準にして、その中のある条件を変化させた場合のエッチング特性を比較した。
表2は、エッチング条件1を基準に、上部電極34への高周波電力を変化させた場合のエッチング特性である。この表2から、上部電極34へ供給する高周波電力を大きくするとエッチングレートは向上するが、対SiC選択比は小さくなる傾向が示された。一方、この条件では、上部電極34へ供給する高周波電力の変化がCDに与える影響は少なく、また、対レジスト選択比は高周波パワー400Wが突出して優れていた。以上の結果から、上部電極34への高周波パワーとしては、概ね200〜800Wの範囲が好ましいことが示された。
表3は、エッチング条件2を基準に、下部電極としてのサセプタ16への高周波電力を変化させた場合のエッチング特性である。この表3から、下部電極(サセプタ16)へ供給する高周波電力を大きくすることによりエッチングレートは大幅に向上するが、対SiC選択比の改善効果は少なくなる傾向が示された。一方、この条件では、下部電極へ供給する高周波電力の変化がCDに与える影響は少なく、また、対レジスト選択比は高周波パワーが大きくなるに従い向上することが示された。これらのことから、下部電極への高周波パワーとしては、概ね1500〜3800Wの範囲が好ましいことが示された。
表4は、エッチング条件2を基準にして、処理圧力を変化させた場合のエッチング特性である。この表4から、高周波電力(上部電極/下部電極)が800/2500Wと比較的大きなエッチング条件2では、処理圧力を必要以上に高めに設定するとエッチングレートが低下し、エッチストップが生じることが判明した。よって、処理圧力としては、4Pa以上、20Pa未満が好ましいことが示された。
また、表4の結果と前記表2および表3の結果を考慮すると、直流電圧を重畳した場合のエッチングレートや対SiC選択比の制御は、高周波電力を変化させて制御することが好ましいと考えられる。
表5は、エッチング条件2を基準にして、Ar流量を変化させた場合のエッチング特性である。この表5から、高周波電力(上部電極/下部電極)が800/2500Wと比較的大きなエッチング条件2では、Ar流量比の変化による影響は明確なものではないが、一定量のArを添加した方が対SiC選択比が向上することが示され、少なくとも1000mL/min以下のArの添加が好ましいことが示された。
次に、図32と同様の積層構造のサンプルを調製し、ライン&スペースの溝パターンが形成されたArFレジスト305をマスクとして、下地SiC層301が露出するまでSiOC系膜302に対するエッチングを実施し、溝を形成した。エッチングは、メインエッチングとオーバーエッチングの2ステップエッチングとし、以下に示すエッチング条件で上部電極34に−900Vの直流電圧を印加した場合(実施例3)と、直流電圧を印加しない場合(比較例3)について実施し、エッチング特性を比較した。その結果を表6に示した。
<メインエッチング条件>
チャンバ内圧力=26.7Pa;
高周波電力(上部電極/下部電極)=300W/1000W;
処理ガス流量 CF4/N2/Ar/CHF3=180/100/180/50mL/min;
上下部電極間距離=35mm;
処理時間=10秒
バックプレッシャー(センター部/エッジ部)=2000/5332Pa;
上部電極34の温度=60℃;
チャンバ10側壁の温度=60℃;
サセプタ16の温度=20℃
<オーバーエッチング条件>
チャンバ内圧力=4.0Pa;
高周波電力(上部電極/下部電極)=1000W/1000W;
処理ガス流量 C4F8/N2/Ar=6/260/1000mL/min;
オーバーエッチ量:30%
上下部電極間距離=35mm
※他の条件は、上記メインエッチング条件と同様とした。
表6から、上部電極34に−900Vの直流電圧を印加した実施例3では、対SiC選択比は15であり、電圧を印加しない比較例3における対SiC選択比11.7に比べて大きく向上していることがわかる。
また、上記エッチング条件の下では、上部電極34に−900Vの直流電圧を印加することにより、対SiC選択比だけでなく、表6に示すように、対レジスト選択比も改善された。さらに、溝の幅に相当するCDを大きくせずに制御しながら、SiOC系膜302のエッチングレートを大幅に向上させることが可能であった。そして、エッチング後の溝を構成するラインの粗さ(ラインエッチングラフネス;LER)についても、大幅に低減することができた。
なお、以上は下地をSiC層301として、その上のSiOC系膜302に対してエッチングを行なう例を挙げて説明したが、これに限らず他のエッチング対象でも同様の効果を得ることができる。例えば、図33(a)に示すように、シリコン基板306に、シリコン窒化膜(SiN)307、TEOS(テトラエチルオルソシリケート)を原料としてCVD法により成膜されたSiO2膜308、反射防止膜(BARC)309が形成され、パターニングされたArF等のレジストマスク310を有する断面構造において、同図(b)に示すように、シリコン窒化膜307を下地としてSiO2膜308をエッチングする場合にも、上述のように上部電極34に直流電圧を印加することにより、同様な効果を得ることができる。
また、上記例では、SiOC系膜302のエッチング(メインエッチング、あるいはメインエッチングとオーバーエッチング)を対象としたが、ここでは、直流電圧の印加による下地との選択比向上効果を利用しているので、通常条件でのメインエッチングにより凹部が下地付近に到達した段階でオーバーエッチングを行なう2ステップ処理におけるオーバーエッチングにのみ直流電圧を印加するようにすることもできる。
実施形態2
次に、本発明の実施形態2について説明する。
図34は、本発明の実施形態2に係るプラズマエッチング装置を示す概略断面図である。なお、図34において、図1と同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、実施形態1における上部電極34の代わりに、以下の構造を有する上部電極34′が設けられている。上部電極34′は、サセプタ16と所定の間隔をおいて対向配置されているリング状またはドーナツ状の外側上部電極34aと、この外側上部電極34aの半径方向内側に絶縁された状態で配置されている円板状の内側上部電極34bとで構成される。これらは、プラズマ生成に関して外側上部電極34aが主で、内側上部電極34bが補助の関係を有している。
図35に当該プラズマ処理装置の要部を拡大して示すように、外側上部電極34aと内側上部電極34bとの間には、例えば0.25〜2.0mmの環状ギャップ(隙間)が形成され、このギャップに例えば石英からなる誘電体72が設けられる。このギャップにはさらにセラミックス部材73が設けられている。セラミックス部材73は省略することもできる。この誘電体72を挟んで両電極34aと34bとの間にコンデンサが形成される。このコンデンサのキャパシタンスC72は、ギャップのサイズと誘電体72の誘電率に応じて所望の値に選定または調整される。外側上部電極34aとチャンバ10の側壁との間には、例えばアルミナ(Al2O3)からなるリング形状の絶縁性遮蔽部材42が気密に取り付けられている。
外側上部電極34aは、電極板36aと、この電極板36aを着脱可能に支持する導電材料、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウムからなる電極支持体38aとを有する。電極板36aは、ジュール熱の少ない低抵抗の導電体または半導体、例えばシリコンやSiCで構成されるのが好ましい。外側上部電極34aには、実施形態1と同様の整合器46、上部給電棒74、コネクタ98および給電筒100を介して、実施形態1と同様の第1の高周波電源48が電気的に接続されている。整合器46の出力端子は上部給電棒74の上端に接続されている。
給電筒100は、円筒状または円錐状あるいはそれらに近い形状の導電板たとえばアルミニウム板または銅板からなり、下端が周回方向で連続的に外側上部電極34aに接続され、上端がコネクタ98によって上部給電棒74の下端部に電気的に接続されている。給電筒100の外側では、チャンバ10の側壁が上部電極34′の高さ位置よりも上方に延びて円筒状の接地導体10aを構成している。この円筒状接地導体10aの上端部は筒状の絶縁部材74aにより上部給電棒74から電気的に絶縁されている。かかる構成においては、コネクタ98からみた負荷回路において、給電筒100および外側上部電極34aと円筒状接地導体10aとで、給電筒100および外側上部電極34aを導波路とする同軸線路が形成される。
図34に示すように、内側上部電極34bは、多数のガスのガス吐出孔37bを有する電極板36bと、この電極板36bを着脱可能に支持する導電材料、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウムからなる電極支持体38bとを有する。電極支持体38bの内部には、例えばOリングからなる環状隔壁部材43で分割された中心ガス拡散室40aと周辺ガス拡散室40bとが設けられている。中心ガス拡散室40aと周辺ガス拡散室40bからはガス吐出孔37bに連通する多数のガス通流孔41bが下方に延びている。そして、中心ガス拡散室40aとその下面に設けられている多数のガス通流孔41bおよびそれらに連通する多数のガス吐出孔37bとで中心シャワーヘッドが構成され、周辺ガス拡散室40bとその下面に設けられている多数のガス通流孔41bおよびそれらに連通する多数のガス吐出孔37bとで周辺シャワーヘッドが構成されている。
2つのガス拡散室40a,40bには、共通の処理ガス供給源66から処理ガスが所望の流量比で供給されるようになっている。すなわち、処理ガス供給源66からのガス供給管64が途中で2つの分岐管64a,64bに分岐し、電極支持体38bに形成されたガス導入口62a,62bに接続され、ガス導入口62a,62bからの処理ガスがガス導入室40a、40bに至る。それぞれの分岐管64a,64bに流量制御弁71a,71bが設けられており、処理ガス供給源66からガス拡散室40a、40bまでの流路のコンダクタンスは等しいので、流量制御弁71a,71bにより中心ガス導入室40aと周辺ガス導入室40bとに供給する処理ガスの流量比を任意に調整することができる。ガス供給管64には実施形態1と同様マスフローコントローラ(MFC)68および開閉バルブ70が設けられている。このように、中心ガス拡散室40aと周辺ガス拡散室40bとに導入する処理ガスの流量比を調整することで、中心シャワーヘッドから吐出されるガスの流量FCと周辺シャワーヘッドから吐出されるガスの流量FEとの比率(FC/FE)を任意に調整することができるようになっている。なお、中心シャワーヘッドおよび周辺シャワーヘッドよりそれぞれ吐出させる処理ガスの単位面積当たりの流量を異ならせることも可能である。さらに中心シャワーヘッドおよび周辺シャワーヘッドよりそれぞれ吐出させる処理ガスのガス種またはガス混合比を独立または別個に選定することも可能である。
内側上部電極34bの電極支持体38bには、整合器46、上部給電棒74、コネクタ98および下部給電棒76を介して実施形態1と同様の第1の高周波電源90が電気的に接続されている。下部給電棒76の途中には、キャパシタンスを可変調整することができる可変コンデンサ78が設けられている。この可変コンデンサ78は、後述するように、外側電界強度と内側電界強度とのバランスを調整する機能を有する。
一方、上記上部電極34′には、実施形態1と同様、可変直流電源50が接続されている。具体的には、可変直流電源50がフィルタ58を介して外側上部電極34aおよび内側上部電極34bに接続されている。可変直流電源50の極性、電圧、電流ならびにオン・オフスイッチ52のオン・オフは実施形態1と同様、コントローラ51により制御されるようになっている。なお、実施形態1ではフィルタ78は整合器46に内蔵されていたが本実施形態では整合器46とは別個に設けられている。
このように構成されるプラズマエッチング装置においてエッチング処理を行う際には、実施形態1と同様に、まず、エッチング対象である半導体ウエハWをチャンバ10内に搬入し、サセプタ16上に載置する。そして、エッチングのための処理ガスを処理ガス供給源66から所定の流量および流量比で中心ガス拡散室40aおよび周辺ガス拡散室40bに供給して、ガス吐出孔37bを介してチャンバ10内に吐出させるとともに、実施形態1と同様、排気装置84によりチャンバ10内を排気して設定圧力に維持する。
このようにチャンバ10内にエッチングガスを導入した状態で、第1の高周波電源48からプラズマ生成用の高周波電力(60MHz)を所定のパワーで上部電極34に印加するとともに、第2の高周波電源90よりイオン引き込み用の高周波(2MHz)を所定のパワーで下部電極であるサセプタ16に印加する。そして、可変直流電源50から所定の電圧を外側上部電極34aおよび内側上部電極34bに印加する。さらに、直流電源22から直流電圧を静電チャック18の電極20に印加して、半導体ウエハWをサセプタ16に固定する。
内側上部電極34bのガス吐出孔37bから吐出されたエッチングガスは、高周波電力により生じた上部電極34と下部電極であるサセプタ16間のグロー放電中でプラズマ化し、このプラズマで生成されるラジカルやイオンによって半導体ウエハWの被処理面がエッチングされる。
このプラズマ処理装置では、上部電極34′に高い周波数領域(イオンが動けない5〜10MHz以上)の高周波電力を供給しているので、実施形態1と同様、プラズマを好ましい解離状態で高密度化することができ、より低圧の条件下でも高密度プラズマを形成することができる。
また、上部電極34′において、半導体ウエハWと直に対向する内側上部電極34bをシャワーヘッド兼用型とし、中心シャワーヘッドと周辺シャワーヘッドとでガス吐出流量の比率を任意に調整することができるので、ガス分子またはラジカルの密度の空間分布を径方向で制御し、ラジカルベースによるエッチング特性の空間的な分布特性を任意に制御することもできる。
一方、上部電極34′においては、後述するように、プラズマ生成のための高周波電極として、外側上部電極34aを主、内側上部電極34bを副とし、これら電極34a,34bよりこれらの直下の電子に与える電界強度の比率を調整可能にしているので、プラズマ密度の空間分布を径方向で制御することができ、反応性イオンエッチングの空間的な特性を任意かつ精細に制御することができる。
ここで、外側上部電極34aと内側上部電極34bとの間で電界強度または投入電力の比率を可変にすることによって行われるプラズマ密度空間分布の制御は、中心シャワーヘッドと周辺シャワーヘッドとの間で処理ガスの流量やガス密度またはガス混合比の比率を可変することによって行われるラジカル密度空間分布の制御に実質的に影響を及ぼさない。つまり、中心シャワーヘッドと周辺シャワーヘッドから噴出される処理ガスの解離は内側上部電極34b直下のエリア内で行われるため、内側上部電極34bと外側上部電極34aとの間で電界強度のバランスを変えても、中心シャワーヘッドと周辺シャワーヘッドとは内側上部電極34b内にあり同一エリア内であるから、これらの間のラジカル生成量ないし密度のバランスにはさほど影響しない。したがって、プラズマ密度の空間分布とラジカル密度の空間分布とを実質的に独立に制御することができる。
また、本実施形態のプラズマ処理装置は、外側上部電極34aが主であり、その直下でプラズマの大部分ないし過半を生成して内側上部電極34bの直下に拡散させる。このため、シャワーヘッドを兼ねる内側上部電極34bにおいては、プラズマのイオンから受けるアタックが少ないため、交換部品である電極板36bのガス吐出口37bのスパッタ進行を効果的に抑制し、電極板36bの寿命を大幅に延ばすことができる。一方、プラズマの大部分ないし過半を生成する外側上部電極34aは、電界の集中するガス吐出口を有してはいないため、イオンのアタックは少なく、寿命が短くなるようなことはない。
次に、図35および図36を参照して、外側上部電極34aと内側上部電極34bとの間電界強度または投入電力を可変とすることによって行われるプラズマ密度空間分布の制御についてさらに詳細に説明する。図35は、上述したように、本実施形態のプラズマ処理装置の要部、特にプラズマ生成手段を構成する要部の構成を示しており、図36はプラズマ生成手段の要部の等価回路を示す。なお、図35ではシャワーヘッド部の構造を省略し、図36では各部の抵抗を省略している。
上述したように、コネクタ98からみた負荷回路において、外側上部電極34aおよび給電筒100と円筒状接地導体10aとで、外側上部電極34aおよび給電筒100を導波路Joとする同軸線路が形成される。ここで給電筒100の半径(外径)をao、円筒状接地導体10aの半径をbとすると、この同軸線路の特性インピーダンスまたはインダクタンスLoは以下の(1)式で近似することができる。
Lo=K・ln(b/ao) ‥‥‥(1)
ただし、Kは導波路の移動度および誘電率で決まる定数である。
一方、コネクタ98からみた負荷回路において、下部給電棒76と円筒状接地導体10aとの間でも下部給電棒76を導波路Jiとする同軸線路が形成される。内側上部電極34bも下部給電棒76の延長上にあるが、直径が極端に違うため、下部給電棒76のインピーダンスが支配的になる。ここで、下部給電棒76の半径(外径)をaiとすると、この同軸線路の特性インピーダンスまたはインダクタンスLiは以下の(2)式で近似することができる。
Li=K・ln(b/ai) ‥‥‥(2)
上記(1)、(2)式から理解されるように、内側上部電極34bに高周波を伝える内側導波路Jiは従来の一般的な高周波システムと同様のインダクタンスLiを与えるのに対して、外側上部電極34aに高周波を伝える外側導波路Joは径が大きい分だけ著しく小さなインダクタンスLoを与えることができる。これにより、整合器46からみてコネクタ98より先の負荷回路では、低インピーダンスの外側導波路Joで高周波が伝播しやすく(電圧降下が小さく)、外側上部電極34aに相対的に大きい高周波電力Poを供給して、外側上部電極36の下面(プラズマ接触面)で強い電界強度Eoを得ることができる。一方、高インピーダンスの内側導波路Jiでは高周波が伝播しにくく(電圧降下が大きく)、内側上部電極34bに外側上部電極34aに供給される高周波電力Poよりも小さい高周波電力Piが供給され、内側上部電極34bの下面(プラズマ接触面)で得られる電界強度Eiを外側上部電極34a側の電界強度Eoよりも小さくすることができる。
このように、上部電極34′では、外側上部電極34aの直下で相対的に強い電界Eoで電子を加速させると同時に、内側上部電極34bの直下では相対的に弱い電界Eiで電子を加速させることとなり、これによって外側上部電極34aの直下でプラズマPの大部分ないし過半が生成され、内側上部電極34bの直下では補助的にプラズマPの一部が生成される。そして、外側上部電極34aの直下で生成された高密度のプラズマが径方向の内側と外側に拡散することにより、上部電極34′とサセプタ16との間のプラズマ処理空間においてプラズマ密度が径方向で均される。
外側上部電極34aおよび給電筒100と円筒状接地導体10aとで形成される同軸線路における最大伝送電力Pmaxは、給電筒100の半径aoと円筒状接地導体10aの半径bとに依存し、以下の(3)式で与えられる。
Pmax/Eomax 2=ao2[ln(b/ao)]2/2Zo ‥‥(3)
ただし、Zoは整合器46側からみた当該同軸線路の入力インピーダンスであり、EomaxはRF伝送系の最大電界強度である。
上記(3)式において、最大伝送電力Pmaxはb/ao≒1.65で極大値となる。このことから、外側導波路Joの電力伝送効率を向上させるには、給電筒50の径サイズに対する円筒状接地導体10aの径サイズの比(b/ao)が約1.65となるように構成するのが最も好ましく、少なくとも1.2〜2.0の範囲内に入るように構成するのが好ましい。さらには1.5〜1.7の範囲である。
プラズマ密度の空間分布を任意かつ精細に制御するためには、外側上部電極34a直下の外側電界強度Eo(または外側上部電極34a側への投入電力Po)と内側上部電極34b直下の内側電界強度Ei(または内側上部電極34b側への投入電力Pi)との比率つまりバランスを調整することが好ましく、その手段として下部給電棒76の途中に可変コンデンサ78が挿入されている。この可変コンデンサ78のキャパシタンスC78と全体の投入電力に対する内側上部電極34bへの投入電力Piの比率との関係は図37に示すようになっている。この図から明らかなように、可変コンデンサ78のキャパシタンスC78を変えることにより、内側導波路Jiのインピーダンスまたはリアクタンスを増減させ、外側導波路Joの電圧降下と内側導波路Jiの電圧降下との相対比率を変えることができ、ひいては外側電界強度Eo(外側投入電力Po)と内側電界強度Ei(内側投入電力Pi)との比率を調整することができる。
なお、プラズマの電位降下を与えるイオンシースのインピーダンスは一般に容量性である。図36の等価回路では、外側上部電極34a直下におけるシースインピーダンスのキャパシタンスをCPo、内側上部電極34b直下におけるシースインピーダンスのキャパシタンスをCPiと擬制している。また、外側上部電極34aと内側上部電極34bとの間に形成されるコンデンサのキャパシタンスC72は、可変コンデンサ78のキャパシタンスC78と組み合わさって上記のような外側電界強度Eo(外側投入電力Po)と内側電界強度Ei(内側投入電力Pi)とのバランスを左右するものであり、可変コンデンサ78による電界強度(投入電力)バランス調整機能を最適化することができるような値に選定または調整されることが好ましい。
一方、実施形態1と同様の可変直流電圧50からの直流電圧は、フィルタ58を経た後、外側上部電極34aおよび内側上部電極34bにも印加される。これにより、以上のようなプラズマ密度空間分布制御が行われると同時に、実施形態1と同様の、Vdcが深くなることによるスパッタ機能、プラズマシース厚が厚くなることによるプラズマ縮小化機能、ウエハWへの電子の供給機能、プラズマポテンシャル調整機能、プラズマ密度上昇機能等が発揮され、実施形態1と同様の効果を得ることができる。
そして、このように、外側上部電極34aと内側上部電極34bとに分割した上部電極34′を用いる効果と、上部電極34′に所定の直流電圧を印加する効果とが合わさることにより、より好ましいプラズマ制御を実現することができる。
図34の例では、直流電圧を外側上部電極34aおよび内側上部電極34bの両方に印加するようになっているが、いずれか一方に印加するようにしてもよい。
また、図34の例では、一つの可変直流電源50から外側上部電極34aおよび内側上部電極34bに直流電圧を印加したが、図38に示すように、2つの可変直流電源50a,50bを設けて、これらからそれぞれスイッチ52a,52bおよびフィルタ58a,58bを介して外側上部電極34aおよび内側上部電極34bに直流電圧を印加するようにしてもよい。この場合には、外側上部電極34aと内側上部電極34bとで印加する直流電圧を個別的に制御することができるので、一層良好なプラズマ制御を行うことができる。
さらに、図39に示すように、外側上部電極34aと内側上部電極34bとの間に可変直流電源50′を介在させ、その一方の極を外側上部電極34aに接続し、他方の極を内側上部電極34bに接続することにより、上述のような効果の他、内側上部電極34bと外側上部電極34aとで生成されるプラズマ密度比をさらに詳細に設定することができ、ウエハ面内のエッチング特性の制御を向上させることができるといった効果が付加される。なお、符号52′はオン・オフスイッチであり、58a′,58b′はフィルタである。
ここで、実施形態2のプラズマエッチング装置において、ウエハW上に形成された絶縁膜(例えばLow−k膜)をエッチングする際に、処理ガスとして使用するのが特に好ましいガスの組み合わせを下記に例示する。
ビアエッチングの条件におけるオーバーエッチング時に、使用するのが好ましい処理ガスの組み合わせとして、C5F8、Ar、N2が挙げられる。これにより、絶縁膜の下地膜(SiC、SiN等)に対する選択比を大きくとることができる。
また、トレンチエッチングの条件では、使用するのが好ましい処理ガスの組み合わせとして、CF4または(C4F8、CF4、Ar、N2、O2)が挙げられる。これにより、絶縁膜のマスクに対する選択比を大きくとることができる。
また、HARCエッチングの条件では、使用するのが好ましい処理ガスの組み合わせとして、(C4F6、CF4、Ar、O2)または(C4F6、C3F8、Ar、O2)または(C4F6、CH2F2、Ar、O2)が挙げられる。これにより、絶縁膜のエッチング速度を大きくすることができる。
なお上記に限られず、(CxHyFzのガス/N2,O2等の添加ガス/希釈ガスの組み合わせ)を使用することが可能である。
また、上記実施形態1および実施形態2において、上記第1の高周波電力および第2の高周波電力の採り得る周波数を例示すると、第1の高周波電力としては、13.56MHz、27MHz、40MHz、60MHz、80MHz、100MHz、160MHzを挙げることができ、第2の高周波電力としては、380kHz、800kHz、1MHz、2MHz、3.2MHz、13.56MHzを挙げることができ、プロセスに応じて適宜の組み合わせで用いることができる。
また、以上では、プラズマエッチング装置を例に説明したが、他のプラズマを用いて半導体基板を処理する装置にも適用可能である。例えばプラズマ成膜装置が挙げられる。
実施形態3
次に、本発明の実施形態3について説明する。
なお、実施形態3において、第1、第2の実施形態と共通するものには同じ符号を付すことにする。
図40は、本発明の実施形態3に係るプラズマエッチング装置を示す概略断面図である。この図に示すように、この装置は、下部電極であるサセプタ16に第1の高周波電源89からプラズマ生成用の例えば40MHzの高周波(RF)電力を印加するとともに、第2の高周波電源90からイオン引き込み用の例えば2MHzの高周波(RF)電力を印加する下部RF2周波印加タイプのプラズマエッチング装置であって、図示のように上部電極34に可変直流電源50を接続して所定の直流(DC)電圧が印加されるプラズマエッチング装置である。このプラズマエッチング装置について、図41を使ってさらに詳述する。
このプラズマエッチング装置は、容量結合型平行平板プラズマエッチング装置として構成されており、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウムからなる略円筒状のチャンバ(処理容器)10を有している。このチャンバ10は保安接地されている。
チャンバ10の底部には、セラミックス等からなる絶縁板12を介して円柱状のサセプタ支持台14が配置され、このサセプタ支持台14の上に例えばアルミニウムからなるサセプタ16が設けられている。サセプタ16は下部電極を構成し、その上に被処理基板である半導体ウエハWが載置される。
サセプタ16の上面には、半導体ウエハWを静電力で吸着保持する静電チャック18が設けられている。この静電チャック18は、導電膜からなる電極20を一対の絶縁層または絶縁シートで挟んだ構造を有するものであり、電極20には直流電源22が電気的に接続されている。そして、直流電源22からの直流電圧により生じたクーロン力等の静電力により半導体ウエハWが静電チャック18に吸着保持される。
静電チャック18(半導体ウエハW)の周囲でサセプタ16の上面には、エッチングの均一性を向上させるための、例えばシリコンからなる導電性のフォーカスリング(補正リング)24が配置されている。サセプタ16およびサセプタ支持台14の側面には、例えば石英からなる円筒状の内壁部材26が設けられている。
サセプタ支持台14の内部には、例えば円周上に冷媒室28が設けられている。この冷媒室には、外部に設けられた図示しないチラーユニットより配管30a,30bを介して所定温度の冷媒、例えば冷却水が循環供給され、冷媒の温度によってサセプタ上の半導体ウエハWの処理温度を制御することができる。
さらに、図示しない伝熱ガス供給機構からの伝熱ガス、例えばHeガスがガス供給ライン32を介して静電チャック18の上面と半導体ウエハWの裏面との間に供給される。
下部電極であるサセプタ16の上方には、サセプタ16と対向するように平行に上部電極34が設けられている。そして、上部および下部電極34,16間の空間がプラズマ生成空間となる。上部電極34は、下部電極であるサセプタ16上の半導体ウエハWと対向してプラズマ生成空間と接する面、つまり対向面を形成する。
この上部電極34は、絶縁性遮蔽部材42を介して、チャンバ10の上部に支持されており、サセプタ16との対向面を構成しかつ多数の吐出孔37を有する電極板36と、この電極板36を着脱自在に支持し、導電性材料、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウムからなる水冷構造の電極支持体38とによって構成されている。電極板36は、ジュール熱の少ない低抵抗の導電体または半導体が好ましく、また、後述するようにレジストを強化する観点からはシリコン含有物質が好ましい。このような観点から、電極板36はシリコンやSiCで構成されるのが好ましい。電極支持体38の内部には、ガス拡散室40が設けられ、このガス拡散室40からはガス吐出孔37に連通する多数のガス通流孔41が下方に延びている。
電極支持体38にはガス拡散室40へ処理ガスを導くガス導入口62が形成されており、このガス導入口62にはガス供給管64が接続され、ガス供給管64には処理ガス供給源66が接続されている。ガス供給管64には、上流側から順にマスフローコントローラ(MFC)68および開閉バルブ70が設けられている。そして、処理ガス供給源66から、エッチングのための処理ガスとして、例えばC4F8ガスのようなフロロカーボンガス(CxFy)がガス供給管64からガス拡散室40に至り、ガス通流孔41およびガス吐出孔37を介してシャワー状にプラズマ生成空間に吐出される。すなわち、上部電極34は処理ガスを供給するためのシャワーヘッドとして機能する。
上記上部電極34には、ローパスフィルタ(LPF)46aを介して可変直流電源50が電気的に接続されている。可変直流電源50はバイポーラ電源であってもよい。この可変直流電源50は、オン・オフスイッチ52により給電のオン・オフが可能となっている。可変直流電源50の極性および電流・電圧ならびにオン・オフスイッチ52のオン・オフはコントローラ(制御装置)51により制御されるようになっている。
ローパスフィルタ(LPF)46aは、後述する第1および第2の高周波電源からの高周波をトラップするためのものであり、好適にはLRフィルタまたはLCフィルタで構成される。
チャンバ10の側壁から上部電極34の高さ位置よりも上方に延びるように円筒状の接地導体10aが設けられている。この円筒状接地導体10aは、その上部に天壁を有している。
下部電極であるサセプタ16には、整合器87を介して第1の高周波電源89が電気的に接続され、また、整合器88を介して第2の高周波電源90が接続されている。第1の高周波電源89は、27MHz以上の周波数、例えば40MHzの高周波電力を出力する。第2の高周波電源90は、13.56MHz以下の周波数、例えば2MHzの高周波電力を出力する。
整合器87,88は、それぞれ第1および第2の高周波電源89,90の内部(または出力)インピーダンスに負荷インピーダンスを整合させるためのもので、チャンバ10内にプラズマが生成されている時に第1および第2の高周波電源89,90の内部インピーダンスと負荷インピーダンスが見かけ上一致するように機能する。
チャンバ10の底部には排気口80が設けられ、この排気口80に排気管82を介して排気装置84が接続されている。排気装置84は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、チャンバ10内を所望の真空度まで減圧可能となっている。また、チャンバ10の側壁には半導体ウエハWの搬入出口85が設けられており、この搬入出口85はゲートバルブ86により開閉可能となっている。また、チャンバ10の内壁に沿ってチャンバ10にエッチング副生物(デポ)が付着することを防止するためのデポシールド11が着脱自在に設けられている。すなわち、デポシールド11がチャンバ壁を構成している。また、デポシールド11は、内壁部材26の外周にも設けられている。チャンバ10の底部のチャンバ壁側のデポシールド11と内壁部材26側のデポシールド11との間には排気プレート83が設けられている。デポシールド11および排気プレート83としては、アルミニウム材にY2O3等のセラミックスを被覆したものを好適に用いることができる。
デポシールド11のチャンバ内壁を構成する部分のウエハWとほぼ同じ高さ部分には、グランドにDC的に接続された導電性部材(GNDブロック)91が設けられており、これにより後述するような異常放電防止効果を発揮する。
プラズマエッチング装置の各構成部は、実施形態1と同様、制御部(全体制御装置)95に接続されて制御される構成となっている。また、制御部95には、工程管理者がプラズマエッチング装置を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、プラズマ処理装置の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース96が接続されている。
さらに、制御部95には、プラズマエッチング装置で実行される各種処理を制御部95の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じてプラズマエッチング装置の各構成部に処理を実行させるためのプログラムすなわちレシピが格納された記憶部97が接続されている。レシピはハードディスクや半導体メモリーに記憶されていてもよいし、CDROM、DVD等の可搬性のコンピュータにより読み取り可能な記憶媒体に収容された状態で記憶部97の所定位置にセットするようになっていてもよい。
そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース96からの指示等にて任意のレシピを記憶部97から呼び出して制御部95に実行させることで、制御部95の制御下で、プラズマエッチング装置での所望の処理が行われる。なお、本発明の実施の形態で述べるプラズマ処理装置(プラズマエッチング装置)は、この制御部95を含むものとする。
このように構成されるプラズマエッチング装置においてエッチング処理を行う際には、まず、ゲートバルブ86を開状態とし、搬入出口85を介してエッチング対象である半導体ウエハWをチャンバ10内に搬入し、サセプタ16上に載置する。そして、処理ガス供給源66からエッチングのための処理ガスを所定の流量でガス拡散室40へ供給し、ガス通流孔41およびガス吐出孔37を介してチャンバ10内へ供給しつつ、排気装置84によりチャンバ10内を排気し、その中の圧力を例えば0.1〜150Paの範囲内の設定値とする。ここで、処理ガスとしては、従来用いられている種々のものを採用することができ、例えばC4F8ガスのようなフロロカーボンガス(CxFy)に代表されるハロゲン元素を含有するガスを好適に用いることができる。さらに、ArガスやO2ガス等の他のガスが含まれていてもよい。
このようにチャンバ10内にエッチングガスを導入した状態で、下部電極であるサセプタ16に、第1の高周波電源88からプラズマ生成用の高周波電力を所定のパワーで印加するとともに、第2の高周波電源90よりイオン引き込み用の高周波電力を所定のパワーで印加する。そして、可変直流電源50から所定の直流電圧を上部電極34に印加する。さらに、静電チャック18のための直流電源22から直流電圧を静電チャック18の電極20に印加して、半導体ウエハWをサセプタ16に固定する。
上部電極34の電極板36に形成されたガス吐出孔37から吐出された処理ガスは、高周波電力により生じた上部電極34と下部電極であるサセプタ16間のグロー放電中でプラズマ化し、このプラズマで生成されるラジカルやイオンによって半導体ウエハWの被処理面がエッチングされる。
このプラズマエッチング装置では、下部電極であるサセプタ16に第1の高
周波電源89から高い周波数領域(例えば、10MHz以上)の高周波電力を供給しているので、プラズマを好ましい状態で高密度化することができ、より低圧の条件下でも高密度プラズマを形成することができる。
本実施形態では、このようにしてプラズマが形成される際に、上部電極34に可変直流電源50から所定の極性および大きさの直流電圧が印加される。このとき、印加電極である上部電極34の表面つまり電極板36の表面に対する所定の(適度な)スパッタ効果が得られる程度にその表面の自己バイアス電圧Vdcが深くなるように、つまり上部電極34表面でのVdcの絶対値が大きくなるように、可変直流電源50からの印加電圧をコントローラ51により制御することが好ましい。第1の高周波電源89から高周波を印加してプラズマを生成した場合に、上部電極34にポリマーが付着することがあるが、可変直流電源50から適切な直流電圧を印加することにより、上部電極34に付着したポリマーをスパッタして上部電極34の表面を清浄化することができる。それとともに、半導体ウエハW上に最適な量のポリマーを供給してフォトレジスト膜の表面荒れを解消することができる。また、可変直流電源50からの電圧を調整して上部電極34自体をスパッタして電極材料自体を半導体ウエハW表面に供給するようにすることにより、フォトレジスト膜表面でカーバイドを形成してフォトレジスト膜が強化され、かつスパッタされた電極材料がフロロカーボン系の処理ガス中のFと反応して排気されることによりプラズマ中のF比率が減少してフォトレジスト膜がエッチングされ難くなる。電極板36がシリコンやSiC等のシリコン含有物質の場合には、電極板36表面でスパッタされたシリコンがポリマーと反応してフォトレジスト膜表面にSiCが形成され、フォトレジスト膜が極めて強固なものとなり、しかも、SiはFと反応しやすいため、上記効果が特に大きい。したがって、電極板36の材料としてはシリコン含有物質が好ましい。なお、この場合に、可変直流電源50からの印加電圧を制御する代わりに、印加電流または印加電力を制御するようにしてもよい。
このように上部電極34に直流電圧を印加して自己バイアス電圧Vdcが深くなった場合には、図42に示すように、上部電極34側に形成されるプラズマシースの厚さが大きくなる。そして、プラズマシースが厚くなると、その分だけプラズマが縮小化される。例えば、上部電極34に直流電圧を印加しない場合には上部電極側のVdcが例えば−100Vであり、図42の(a)に示すようにプラズマは薄いシース厚d0を有する状態である。しかし、上部電極34に−900Vの直流電圧を印加すると上部電極側のVdcが−900Vとなり、プラズマシースの厚さは、Vdcの絶対値の3/4に比例するから、図42の(b)に示すように、より厚いプラズマシースd1が形成され、その分プラズマが縮小化する。このように厚いプラズマシースを形成して、プラズマを適切に縮小化することにより、半導体ウエハW上の実効レジデンスタイムが減少し、かつプラズマがウエハW上に集中して拡散が抑えられ解離空間が減少する。これらにより、フロロカーボン系の処理ガスの解離が抑えられ、フォトレジスト膜がエッチングされ難くなる。したがって、可変直流電源50からの印加電圧は、上部電極34におけるプラズマシースの厚さが所望の縮小化されたプラズマが形成される程度に厚くなるようにコントローラ51により制御することが好ましい。この場合にも、可変直流電源50からの印加電圧を制御する代わりに、印加電流または印加電力を制御するようにしてもよい。
また、プラズマが形成される際には、上部電極34近傍に電子が生成される。上部電極34に可変直流電源50から直流電圧を印加すると、印加した直流電圧値とプラズマ電位との電位差により、電子は処理空間の鉛直方向へ加速される。可変直流電源50の極性、電圧値、電流値を所望のものにすることにより、電子は半導体ウエハWに照射される。照射された電子は、マスクとしてのフォトレジスト膜の組成を改質させ、フォトレジスト膜は強化される。したがって、可変直流電源50の印加電圧値および印加電流値により上部電極34近傍で生成する電子の量と、このような電子のウエハWへの加速電圧を制御することで、フォトレジスト膜に対する所定の強化を図ることができる。
特に、半導体ウエハW上のフォトレジスト膜がArFエキシマレーザー(波長193nm)用のフォトレジスト膜(以下、ArFレジスト膜と記す)である場合、ArFレジスト膜のポリマー構造は、実施形態1で説明した化学式(1)、(2)に示すような反応を経て、電子が照射されて化学式(3)の右辺のような構造となる。すなわち、電子が照射されると化学式(3)のd部に示すように、ArFレジスト膜の組成の改質が起こる(レジストの架橋反応)。このd部は、エッチング耐性(プラズマ耐性)を非常に強くする働きを有するので、ArFレジスト膜のエッチング耐性は飛躍的に増大する。このため、ArFレジスト膜の表面荒れを抑制することができ、ArFレジスト膜に対するエッチング対象層のエッチング選択比を高めることができる。
したがって、可変直流電源50からの印加電圧値・電流値は、電子の照射によってフォトレジスト膜(特にArFレジスト膜)のエッチング耐性が強くなるように、コントローラ51により制御することが好ましい。また、上述したように、上部電極34に直流電圧を印加すると、プラズマが形成される際に上部電極34近傍に生成された電子が処理空間の鉛直方向へ加速されるが、可変直流電源50の極性、電圧値、電流値を所望のものにすることにより、電子を半導体ウエハWのホール内に到達させることができ、シェーディング効果を抑制してボーイングのない良好な加工形状を得ることができ、加工形状の均一性を良好にすることができる。
加速電圧を制御された電子がウエハWに入射する電子量として、直流電圧による電子電流量IDC を用いた場合に、プラズマからウエハに入射するイオン電流量Iionとすると、IDC>(1/2)Iionを満たすことが好ましい。Iion=Zρvione(ただし、Z:荷数、ρ:流速密度、vion:イオン速度、e:電子の電荷量1.6×10−19C)であり、ρは電子密度Neに比例するからIionはNeに比例する。
このように、上部電極34に印加する直流電圧を制御して、上記上部電極34のスパッタ機能またはプラズマの縮小化機能、さらには上記上部電極34で生成される多量の電子の半導体ウエハWへの供給機能が発揮されることにより、フォトレジスト膜の強化や最適ポリマーの供給、処理ガスの解離抑制等が図られ、フォトレジストの表面荒れ等を抑制することができ、フォトレジスト膜に対するエッチング対象層のエッチング選択比を高めることができる。それとともに、フォトレジストの開口部におけるCDの広がりを抑制することができ、より高精度のパターン形成を実現することができる。特に、これらスパッタ機能およびプラズマの縮小化機能および電子の供給機能の3つが適切に発揮されるように直流電圧を制御することにより、このような効果をより高めることができる。
なお、上記各機能のうちいずれが優勢に生じるかは処理条件等により異なり、これら機能の一つ以上が発揮され、上記効果を有効に奏するように、可変直流電源50から印加される電圧をコントローラ51により制御することが好ましい。
また、上部電極34に印加する直流電圧を調整することにより、プラズマポテンシャルを制御することができる。これにより、上部電極34やチャンバ壁を構成するデポシールド11、内壁部材26、絶縁性遮蔽部材42へのエッチング副生物の付着を抑制する機能を有する。
エッチング副生物が上部電極34やチャンバ壁を構成するデポシールド11等に付着すると、プロセス特性の変化やパーティクルの懸念がある。特に、多層膜を連続してエッチングする場合、Si系有機膜(SiOC)、SiN膜、SiO2膜、フォトレジストを半導体ウエハW上に順次積層した多層膜を連続してエッチングする場合には、各膜によってエッチング条件が異なるため、前の処理の影響が残存して次の処理に悪影響を与えるメモリー効果が生じてしまう。
このようなエッチング副生物の付着はプラズマポテンシャルと上部電極34やチャンバ壁等との間のポテンシャル差によって影響するため、プラズマポテンシャルを制御することができれば、このようなエッチング生成物の付着を抑制することができる。
以上、可変直流電源50から上部電極34に印加する電圧を制御することにより、プラズマポテンシャルを低下させることができ、上部電極34やチャンバ壁を構成するデポシールド11、さらにはチャンバ10内の絶縁材(部材26,42)へのエッチング副生物の付着を抑制することができる。プラズマポテンシャルVpの値としては、80V≦Vp≦200Vの範囲が好ましい。
さらに、上部電極34に直流電圧を印加することによる他の効果として、印加した直流電圧によってプラズマが形成されることにより、プラズマ密度を高めてエッチングレートを上昇させることが挙げられる。
これは、上部電極に負の直流電圧を印加すると、電子が上部電極に入り難くなり電子の消滅が抑制されることと、イオンが上部電極に加速されて入ると電子が電極から出ることができ、その電子がプラズマ電位と印加電圧値の差で高速に加速され中性ガスを電離(プラズマ化)することで、電子密度(プラズマ密度)が増加するからである。
このことを実験結果に基づいて説明する。
図43は、下部電極であるサセプタ16に印加する第1の高周波電力の周波数を40MHz、第2の高周波電力の周波数を3.2MHzとし、圧力:4PaとしたHARCエッチングの条件で、上部電極に印加する負の直流電圧の絶対値を0V、300V、600V、900Vと変化させた際における、各高周波電力の出力と電子密度分布との関係を示す図である。また、図44は、同様の周波数の2つの高周波電力を印加し、圧力を6.7PaのViaエッチングの条件で、同様に上部電極に印加する直流電圧の絶対値を0V、300V、600V、900Vと変化させた際における、各高周波電力の出力と電子密度分布との関係を示す図である。これらの図に示すように、印加する直流電圧の絶対値が大きくなるに従って、電子密度(プラズマ密度)が上昇しているのがわかる。図45は、上記HARCエッチングで、第1の高周波電力を3000W、第2の高周波電力を4000Wにした場合のウエハ径方向の電子密度分布を示す図である。この図に示すように、印加する直流電圧の絶対値が大きくなるほど電子密度が高くなることがわかる。
さらにまた、プラズマが形成された場合に、上部電極34に可変直流電源50から直流電圧を印加することにより、トレンチエッチング時に特に中心部のプラズマ密度を上昇させることができる。トレンチエッチング時の条件のような、チャンバ10内の圧力が高くかつ使用するエッチングガスが負性ガスの場合には、チャンバ10内の中心部のプラズマ密度が低くなる傾向にあるが、このように上部電極34に直流電圧を印加して中心部のプラズマ密度を上昇させることにより、プラズマ密度が均一化するようにプラズマ密度をコントロールすることができる。
このことを実験結果によって説明する。
図41の装置において、半導体ウエハをチャンバ内に装入してサセプタ上に載置し、処理ガスとしてCF4ガス、CHF3ガス、Arガス、N2ガスをチャンバ内に導入し、チャンバ内の圧力を26.6Paとし、第1の高周波電力を40MHzで300W、第2の高周波電力を3.2MHzで1000Wとして下部電極であるサセプタに印加するというトレンチエッチングの条件で、上部電極への直流電圧を印加しない場合と−600W印加した場合とでウエハ径方向の電子密度(プラズマ密度)分布を測定した。その結果を図46に示す。この図に示すように、直流電圧を印加しない場合には、ウエハ中心部の電子密度が他の部分よりも低いのに対し、直流電圧を印加することにより、ウエハ中心部の電子密度を上昇させて電子密度が均一化されていることが確認された。また、直流電圧を印加することにより、電子密度が全体的に上昇した。
以上のように、上部電極34に印加する直流電圧を制御することにより、上述の上部電極34のスパッタ機能、プラズマの縮小化機能、電子の供給機能、プラズマポテンシャル制御機能、電子密度(プラズマ密度)上昇機能、およびプラズマ密度コントロール機能の少なくとも一つを有効に発揮させることが可能である。
以上、上部電極34に直流(DC)電圧を印加した場合の作用効果について説明した。
本実施形態では、上部電極に直流電圧を印加するプラズマエッチング装置として、下部電極にプラズマ形成用の第1の高周波(RF)電力およびイオン引き込み用の第2の高周波(RF)電力を印加する下部RF二周波印加型のプラズマエッチング装置を用いて説明したが、下部RF二周波印加型のプラズマエッチング装置の、他の容量結合型プラズマエッチング装置に対する優位点としては、以下が上げられる。
まず、本実施形態のように下部電極にプラズマ形成用の高周波電力を印加することで、ウエハにより近いところでプラズマを形成することができるので、またプラズマが広い領域に拡散せず処理ガスの解離を抑えることができるので、処理容器内の圧力が高くプラズマ密度が低いような条件であっても、ウエハに対するエッチングレートを上昇させることができる。また、プラズマ形成用の高周波電力の周波数が高い場合でも、比較的大きなイオンエネルギーを確保することができるので高効率である。これに対して、上部電極にプラズマ形成用の高周波電力を印加するタイプの装置では、上部電極近傍にプラズマが生成されるので、処理容器内の圧力が高くプラズマ密度が低いような条件では、ウエハに対するエッチングレートを上昇させることが困難である。
また、本実施形態のように下部電極にプラズマ形成用の高周波電力とイオン引き込み用の高周波電力を別々に印加することで、プラズマエッチングに必要なプラズマ形成の機能とイオン引き込みの機能とを独立に制御することが可能となる。これに対して、下部電極に一周波の高周波電力を印加するタイプの装置では、プラズマ形成の機能とイオン引き込みの機能とを独立に制御することが不可能であり、高い微細加工性が要求されるエッチングの条件を満たすのが困難である。
以上のように、ウエハに近いところでプラズマを形成することが可能でプラズマが広い領域に拡散せず、かつプラズマ形成の機能とイオン引き込みの機能とを独立に制御することが可能な、下部RF二周波印加型のプラズマエッチング装置に、上部電極へ直流電圧を印加することによって、さらに上部電極のスパッタ機能、プラズマの縮小化機能、ウエハへの電子の供給機能、プラズマポテンシャルの制御機能、プラズマ密度の上昇機能、プラズマ密度コントロール機能の少なくとも一つを併せ持つことが可能になるので、近年のエッチング微細加工に適合したより高いパフォーマンスを有するプラズマエッチング装置を提供することができる。
なお、上部電極34への直流電圧印加は選択的であってよい。上部電極34への直流電圧印加が必要なエッチング条件においては、可変直流電源50及び図41に示したリレースイッチ52をオンにし、上部電極34への直流電圧印加が特に必要のないエッチング条件においては、可変直流電源50およびリレースイッチ52をオフにすればよい。
また、上部電極34へ直流電圧を印加する際、上部電極34が接地されていると直流電圧印加の機能がなくなるので、上部電極34はDC的にフローティングである必要がある。模式図として図47に示す。図47において電気的にキャパシター501、502、503を形成している箇所は、実際には誘電体が入ることになり、上部電極34は誘電体を介して処理容器10および接地導体10aに対してDC的なフローティングとなっている。なお、高周波電源89、90から下部電極16に印加された高周波電力は、処理空間を介して上部電極34に到達し、キャパシター501、502、503を介して、接地された処理容器10及び接地導体10aに到達する。
そして、可変直流電源50およびリレースイッチ52をオフにして、上部電極34へ直流電圧を印加しない場合は、上部電極34を接地状態またはDC的にフローティング状態のいずれに可変可能としてもよい。図48の例では、上部電極34へ直流電圧を印加しない場合は、接地導体10aと上部電極34をスイッチ(可変装置)504により短絡させて上部電極34を接地状態としているが、スイッチ(可変装置)504をオフにして上部電極34をDC的にフローティング状態としてもよい。
また、図49のように、電気的にキャパシター501を形成している箇所を、電気的にキャパシタンスが可変できるように構成しても良い。これにより、上部電極のポテンシャルを可変することができる。また、図50に示すように、例えばプラズマ検出窓10aからプラズマの状態を検出する検出器55を設け、その検出信号に基づいてコントローラ51が可変直流電源50を制御するようにすることにより、上述した機能を有効に発揮するような直流電圧を自動的に上部電極34に印加することが可能である。
また、シース厚を検出する検出器あるいは電子密度を検出する検出器を設け、その検出信号に基づいてコントローラ51が可変直流電源50を制御するようにしてもよい。
ここで、下部RF二周波印加型で上部電極に直流電圧を印加するプラズマエッチング装置において、ウエハW上に形成された絶縁膜(例えばLow−k膜)をエッチングする際に、処理ガスとして使用するのが特に好ましいガスの組み合わせを下記に例示する。
ビアエッチングの条件におけるオーバーエッチング時に、使用するのが好ましい処理ガスの組み合わせとして、(C5F8、Ar、N2)または(C4F8、Ar、N2)または(C4F8、Ar、N2、O2)または(C4F8、Ar、N2、CO)が挙げられる。これにより、絶縁膜の下地膜(SiC、SiN等)に対する選択比を大きくとることができる。
また、トレンチエッチングの条件では、使用するのが好ましい処理ガスの組み合わせとして、CF4または(CF4、Ar)または(N2、H2)が挙げられる。これにより、絶縁膜のマスクに対する選択比を大きくとることができる。
また、絶縁膜上の有機反射防止膜をエッチングする条件では、使用するのが好ましい処理ガスの組み合わせとして、CF4または(CF4、C3F8)または(CF4、C4F8)または(CF4、C4F6)が挙げられる。
また、HARCエッチングの条件では、使用するのが好ましい処理ガスの組み合わせとして、(C4F6、CF4、Ar、O2)または(C4F6、C3F8、Ar、O2)または(C4F6、C4F8、Ar、O2)または(C4F6、C2F6、Ar、O2)または(C4F8、Ar、O2)が挙げられる。これにより、絶縁膜のエッチング速度を大きくすることができる。
なお上記に限られず、(CxHyFzのガス/N2,O2等の添加ガス/希釈ガスの組み合わせ)を使用することが可能である。
ところで、上部電極34に直流電圧を印加すると、上部電極34に電子がたまり、チャンバ10の内壁との間等に異常放電が生じるおそれがある。このような異常放電を抑制するため、本実施形態ではDC的に接地されたパーツであるGNDブロック(導電性部材)91をチャンバ壁側のデポシールド11に設けている。このGNDブロック91はプラズマ面に露出しており、デポシールド11の内部の導電部に電気的に接続されており、可変直流電源50から上部電極34に印加された直流電圧電流は、処理空間を経てGNDブロック91に到達し、デポシールド11を介して接地される。GNDブロック91は導電体であり、Si、SiC等のシリコン含有物質であることが望ましい。Cも好適に用いることができる。このGNDブロック91により、上記上部電極34にたまる電子を逃がすことができ、異常放電を防止することができる。GNDブロック91の突出長さは10mm以上であることが好ましい。
また、異常放電を防止するために、上部電極34に直流電圧を印加する場合
に、適宜の手段により直流電圧に重畳して実施形態1における図13に示すような極短い逆極性のパルスを周期的に与えて電子を中和する方法も有効である。
上記GNDブロック91は、プラズマ形成領域に設けられていれば、その位置は図1の位置に限らず、例えば、図51に示すように、サセプタ16の周囲に設ける等、サセプタ16側に設けてもよく、また図52に示すように、上部電極34の外側にリング状に設ける等、上部電極34近傍に設けてもよい。ただし、プラズマを形成した際に、デポシールド11等に被覆されているY2O3やポリマーが飛翔し、それがGNDブロック91に付着すると、DC的に接地されなくなって、異常放電防止効果を発揮し難くなるため、これらが付着し難いことが重要となる。そのためには、GNDブロック91がY2O3等で被覆された部材から離れた位置であることが好ましく、隣接パーツとしてはSiや石英(SiO2)等のSi含有物質であることが好ましい。例えば、実施形態1の図16の(a)に示すように、GNDブロック91の周囲にSi含有部材93を設けることが好ましい。この場合に、Si含有部材93のGNDブロック91の下の部分の長さLはGNDブロック91の突出長さM以上であることが好ましい。また、Y2O3やポリマーの付着による機能低下を抑制するために、図16の(b)に示すように、GNDブロック91として飛翔物が付着し難い凹所91aを設けることが有効である。また、GNDブロック91の表面積を大きくして、Y2O3やポリマーに覆われ難くすることも有効である。さらに、付着物を抑制するためには温度が高いことが有効であるが、上部電極34にはプラズマ形成用の高周波電力が供給され、その近傍の温度が上昇するため、温度を上昇させて付着物を付着させない観点から上記図52のように上部電極34の近傍に設けることも好ましい。この場合、特に、上記図52のように、上部電極34の外側にリング状に設けることがより好ましい。
デポシールド11等に被覆されているY2O3やポリマーの飛翔にともなうGNDブロック91への付着物の影響をより効果的に排除するためには、図53に示すように、GNDブロック91に負の直流電圧を印加可能にするのが効果的である。すなわち、GNDブロック91に負の直流電圧を印加することにより、そこに付着した付着物がスパッタまたはエッチングされ、GNDブロック91の表面をクリーニングすることができる。図53の構成においては、GNDブロック91に可変直流電源50から電圧印加が可能なように、GNDブロック91の接続を、可変直流電源50側と接地ラインとで切り替える切替機構53が設けられ、さらにGNDブロック91に負の直流電圧が印加された際に発生する直流電子電流を流入させる、接地された導電性補助部材91bが設けられている。切替機構53は、可変直流電源50の接続を整合器46側とGNDブロック91側との間で切り替える第1スイッチ53aと、GNDブロック91の接地ラインへの接続をオン・オフする第2スイッチ53bとを有している。なお、図53の例では、GNDブロック91が上部電極34の外側にリング状に設けられ、導電性補助部材91bがサセプタ16の外周に設けられており、この配置が好ましいが、必ずしもこのような配置でなくてもよい。
図53の構成の装置において、プラズマエッチング時には、通常、図54の(a)に示すように、切替機構53の第1スイッチ53aが上部電極34側に接続され、可変直流電源50が上部電極34側に接続された状態となり、かつ第2スイッチ53bがオンにされ、GNDブロック91が接地ライン側に接続される。この状態においては、第1の高周波電源48および可変直流電源50から上部電極34に給電されてプラズマが形成され、直流電子電流は、プラズマを介して上部電極34から接地されているGNDブロック91および導電性補助部材91bに流入する(正イオン電流の流れの向きは逆となる)。このとき、GNDブロック91の表面は、上述したようなY2O3やポリマー等の付着物で被覆されることがある。
このため、このような付着物をクリーニングする。このようなクリーニング時には、図54の(b)に示すように、切替機構53の第1スイッチ53aをGNDブロック91側に切り替え、第2スイッチ53bをオフにする。この状態においては、第1の高周波電源48から上部電極34に給電されてクリーニングプラズマが形成され、可変直流電源50から負の直流電圧がGNDブロック91に印加される。これにより、直流電子電流はGNDブロック91から導電性補助部材91bに流入する。逆に正イオンはGNDブロック91に流入する。このため、直流電圧を調整してGNDブロック91への正イオンの入射エネルギーを制御することにより、GNDブロック91表面をイオンスパッタすることができ、これによりGNDブロック91表面の付着物を除去することができる。
また、プラズマエッチング時の一部の期間において、図55に示すように、第2スイッチ53bをオフにし、GNDブロック91をフローティング状態としてもよい。このとき、直流電子電流は、プラズマを介して上部電極34から導電性補助部材91bに流入する(正イオン電流の流れの向きは逆となる)。このときGNDブロック91にはセルフバイアス電圧がかかり、その分のエネルギーをもって正イオンが入射され、プラズマエッチング時にGNDブロック91をクリーニングすることができる。
なお、上記クリーニング時においては、印加する直流電圧は小さくてよく、その際の直流電子電流は小さい。このため、図53の構成において、リーク電流によりGNDブロック91に電荷がたまらないようにできる場合には、必ずしも導電性補助部材91bは必要ない。
上記図53の例では、クリーニング時に、可変直流電源50の接続を上部電極34側からGND電極91側に切り替え、直流電圧を印加した際の直流電子電流がGNDブロック91から導電性補助部材91aへ流れるようにしたが、可変直流電源50の正極を上部電極34に接続し、負極をGNDブロック91に接続し、直流電圧を印加した際の直流電子電流がGNDブロック91から上部電極34へ流れるようにしてもよい。この場合は、導電性補助部材は不要である。このような構成を図56に示す。図56の構成においては、プラズマエッチング時には、可変直流電源50の負極が上部電極34に接続され、かつGNDブロック91が接地ラインに接続され、クリーニング時には、可変直流電源50の正極が上部電極34に接続され、負極がGNDブロック91に接続されるように、接続を切り替える接続切替機構57が設けられている。この接続切替機構57は、上部電極34に対する可変直流電源50の接続を正極と負極との間で切り替える第1スイッチ57aと、GNDブロック91に対する可変直流電源50の接続を正極と負極との間で切り替える第2スイッチ57bと、可変直流電源50の正極または負極を接地するための第3スイッチ57cとを有している。第1スイッチ57aと第2スイッチ57bとは、第1スイッチ57aが可変直流電源50の正極に接続されている際には第2スイッチ57bが直流電源の負極に接続され、第1スイッチ57aが可変直流電源50の負極に接続されている際には第2スイッチ57bがオフになるように連動する連動スイッチを構成している。
図56の構成の装置において、プラズマエッチング時には、図57の(a)に示すように、接続切替機構57の第1スイッチ57aが可変直流電源50の負極側に接続され、可変直流電源50の負極が上部電極34側に接続された状態となり、かつ第2スイッチ57bが可変直流電源50の正極側に接続され、第3スイッチ57cが可変直流電源50の正極側に接続され(可変直流電源50の正極を接地)、GNDブロック91が接地ライン側に接続される。この状態においては、第1の高周波電源48および可変直流電源50から上部電極34に給電されてプラズマが形成され、直流電子電流は、プラズマを介して上部電極34から接地されているGNDブロック91に流入する(正イオン電流の流れの向きは逆となる)。このとき、GNDブロック91の表面は、上述したようなY2O3やポリマー等の付着物で被覆されることがある。
一方、クリーニング時には、図57の(b)に示すように、接続切替機構57の第1スイッチ57aを可変直流電源50の正極側に切り替え、第2スイッチ57bを可変直流電源50の負極側に切り替え、さらに第3スイッチ57cを未接続状態とする。この状態においては、第1の高周波電源48から上部電極34に給電されてクリーニングプラズマが形成され、GNDブロック91には可変直流電源50の負極から、上部電極34には可変直流電源50の正極から、直流電圧が印加され、これらの間の電位差により直流電子電流はGNDブロック91から上部電極34に流入し、逆に正イオンはGNDブロック91に流入する。このため、直流電圧を調整してGNDブロック91への正イオンの入射エネルギーを制御することにより、GNDブロック91表面をイオンスパッタすることができ、これによりGNDブロック91表面の付着物を除去することができる。なお、この場合に可変直流電源50は見かけ上フローティング状態であるが、一般的に電源にはフレーム接地ラインが設けられているので安全である。
また、上記例では第3スイッチ57cを未接続状態としたが、可変直流電源50の正極側に接続のまま(可変直流電源50の正極を接地)としてもよい。この状態においては、第1の高周波電源48から上部電極34に給電されてクリーニングプラズマが形成され、GNDブロック91には可変直流電源50の負極から直流電圧が印加され、直流電子電流はプラズマを介してGNDブロック91から上部電極34に流入し、逆に正イオンはGNDブロック91に流入する。この場合においても、直流電圧を調整してGNDブロック91への正イオンの入射エネルギーを制御することにより、GNDブロック91表面をイオンスパッタすることができ、これによりGNDブロック91表面の付着物を除去することができる。
なお、図53よび図56の例では、クリーニングの際にGNDブロック91に直流電圧を印加したが、交流電圧を印加してもよい。また、図53の例において、上部電極に直流電圧を印加するための可変直流電源50を用いてGNDブロック91に電圧を印加したが、別の電源から電圧を印加するようにしてもよい。また、図53および図56の例では、プラズマエッチング時にGNDブロック91を接地させ、クリーニング時にGNDブロック91に負の直流電圧を印加する形態を説明したが、これに限られない。例えば、プラズマエッチング時にGNDブロック91に負の直流電圧を印加してもよい。また、上記のクリーニング時をアッシング時に置き換えてもよい。さらに、可変直流電源50としてバイポーラ電源を用いた場合には、上記接続切替機構57のような複雑なスイッチング動作は不要である。
図53の例における切替機構53、図56の例における接続切替機構57の切り替え動作は、制御部95からの指令に基づいて行われる。
プラズマを形成した際において、Y2O3やポリマーがGNDブロック91へ付着することによってDC的に接地されなくなることを簡易に防止する観点からは、GNDブロック91の一部を他の部材で覆い、これらに相対移動を生じさせることにより、GNDブロック91の新たな面が露出するようにすることが有効である。具体的には、実施形態1で説明した図22に示すように、GNDブロック91を比較的大面積として、GNDブロック91のプラズマが当たる表面の一部を矢印方向に移動可能なマスク材211で覆い、この保護板211を移動することにより、GNDブロック91表面のプラズマに曝される部分を変えることを可能とすることを挙げることができる。この場合に駆動機構をチャンバ10内に設けるとパーティクル発生を引き起こす懸念があるが、百時間に一度程度と少ない頻度でよいので大きな問題は生じない。また、実施形態1で説明した図23に示すように、例えば円柱状のGNDブロック191を回転可能に設け、GNDブロック191の外周面の一部のみが露出可能なようにマスク材212で覆うようにし、GNDブロック191を回転させることにより、プラズマに曝されている部分を変えるようにすることも有効である。この場合には、駆動機構はチャンバ10外に設けることができる。マスク材211,212としては、耐プラズマ性の高いもの、例えばY2O3等のセラミックスを溶射したアルミ板を用いることができる。
また、同様にGNDブロック91が付着物によってDC的に接地されなくなることを簡易に防止するための他の手法としては、GNDブロック91の一部を他の部材で覆い、この他の部材としてプラズマにより徐々にエッチングされるものを用いて、GNDブロック91が常に導電性を失っていない面が露出するようにすることが有効である。例えば、実施形態1で説明した図24の(a)に示すように、段付きの保護膜213でGNDブロック91表面の一部を覆い、初期露出面91cに接地機能を持たせる。この状態でプラズマ処理を例えば200時間行うと、実施形態1で説明した図24の(b)に示すように、GNDブロック91の初期露出面91cが導電性を失うが、その際に段付きの保護膜213の薄い部分がエッチングされてGNDブロック91の新露出面91dが現れるようにする。これにより新露出面91dが接地機能を発揮するようになる。このような保護膜213は、GNDブロック91へ壁面材料が付着するのを防止する効果と、GNDブロック91へのイオンの流入を減少させて汚染を防止する効果を有する。
実際の適用においては、実施形態1で説明した図25に示すように、薄い層214を多数積層して各層を少しずつずらした保護膜213aを用いることが好ましい。この場合に、1つの層214がプラズマによるエッチングによって消失する時間をTeとし、GNDブロック91の露出した表面が汚染されて導電性を消失するまでの時間をTpとすると、かならずTe<Tpを満たすように層214の厚さを設定することにより、GNDブロック91において常に導電性を保った表面を確保することができる。層214の数としては、メンテナンスの周期よりもGNDブロック91の寿命のほうが長くなるように選ぶことが好ましい。また、メンテナンス性の向上のために、図示するように他とは異なる色を付けた層214aを1層設けておき、例えばこの層214aが一定面積以上となった時点で交換するようして交換時期を把握することができる。
保護膜213、213aとしては、プラズマにより適度にエッチングされるものが好ましく、例えば、フォトレジスト膜を好適に用いることができる。
GNDブロック91が付着物によってDC的に接地されなくなることを簡易に防止するためのさらに他の方法としては、GNDブロック91を複数設け、その中で接地機能を奏するものを順次切り替えていくことを挙げることができる。例えば、実施形態1で説明した図26に示すように、3つのGNDブロック91を設け、これらの一つのみを接地させるように切り替えスイッチ215を設ける。また、共通の接地ライン216には、電流センサー217を設けておき、そこに流れる直流電流をモニターする。接地されているGNDブロック91の電流を電流センサー217でモニターし、その電流値が所定値より低くなった時点で、接地機能を奏しないとして別のGNDブロック91に切り替える。なお、GNDブロック91の数は3〜10個程度の範囲で適当な数を選択すればよい。
以上の例においては、接地されていないGNDブロックは電気的にフローティング状態となっているが、使っていないGNDブロックを保護する観点から、切り替えスイッチ215を設ける代わりに、保護するためのポテンシャルを印加できるようにしてもよい。その例を実施形態1で説明した図27に示す。図27では各GNDブロック91に個別に接続された接地ライン218にそれぞれ可変直流電源219を設ける。これにより、接地機能を発揮させるべきGNDブロック91の電圧が0Vになるようにそれに対応する可変直流電源219の電圧を制御し、他のGNDブロック91については、電流が流れない電圧、例えば100Vになるように対応する可変直流電源219の電圧を制御する。そして、接地機能を発揮させるべきGNDブロック91に接続されている接地ライン218に設けられた電流センサー217の電流値が所定値より低くなった時点で、接地機能を奏しなくなったと判断して、別のGNDブロック91に対応する可変直流電源219の電圧値をそのGNDブロックが接地機能を奏する値に制御する。
なお、このように直流電源219からの印加電圧を−1kV程度の負の値とすることにより、それに接続されたGNDブロック219をプラズマに直流電圧を与えるための電極として機能させることができる。ただし、この値があまり大きくてもプラズマへ悪影響を与えてしまう。また、GNDブロック91に印加する電圧を制御することにより、GNDブロック91に対するクリーニング効果を奏することができる。
なお、上記第1の高周波電力および第2の高周波電力の採り得る周波数を例示すると、第1の高周波電力としては、13.56MHz、27MHz、40MHz、60MHz、80MHz、100MHz、160MHzを挙げることができ、第2の高周波電力としては、380kHz、800kHz、1MHz、2MHz、3.2MHz、13.56MHzを挙げることができ、プロセスに応じて適宜の組み合わせで用いることができる。
また、以上では、プラズマエッチング装置を例に説明したが、他のプラズマを用いて半導体基板を処理する装置にも適用可能である。例えばプラズマ成膜装置が挙げられる。
実施形態4
次に、本発明の実施形態4について説明する。
図58は、本発明の実施形態4に係るプラズマ処理装置の要部を簡略化して示す概略断面図である。なお、図58において、図1と同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、上部電極34とチャンバ10の壁(接地電位)とに可変直流電源110を接続し、サセプタ16とチャンバ10の壁とに可変直流電源114を接続している。すなわち、可変直流電源110の一方の極を上部電極34に接続し、他方の極をチャンバ10の壁に接続しており、可変直流電源114の一方の極をサセプタ16に接続し、他方の極をチャンバ10の壁に接続している。これら可変直流電源110,114は、それぞれオン・オフスイッチ112,116でオン・オフ可能となっている。
なお、これら可変直流電源110,114、オン・オフスイッチ112,116は図示しないコントローラで制御される。また、整合器88には整合器46のフィルタ58と同様のフィルタが内蔵されており、可変直流電源114はこのフィルタを介してサセプタ16に接続されている。
このように構成されるプラズマ処理装置においては、実施形態1と同様にしてプラズマを形成した際に、可変直流電源110から上部電極34および可変直流電源114からサセプタ16にそれぞれ所定の直流電圧が印加される。この場合に、直流電圧が上部電極34に印加されていることから、実施形態1における直流電圧印加の効果を得ることができるとともに、さらにサセプタ16に直流電圧を印加することで、プラズマポテンシャルとウエハとの電位差が拡大し、イオンエネルギーが増大するため、高エッチングレートが得られる。また、ウエハ外部のフォーカスリング24をサセプタ16にDC的に導通させ、サセプタ16にDC印加する量を最適化することで、ウエハエッジのエッチングレートの落ち込みを修正し、ウエハ面内で均一性の良いエッチングを行うことが可能となり、ウエハ1枚からとれるチップの数を増加させることができる。
なお、本実施形態において、可変直流電源110,114の極性は逆であってもよいし、直流電圧の代わりに交流電圧を印加してもよい。また、電圧はパルス状でも、AM変調やFM変調等、変調されたものであってもよい。
実施形態5
次に、本発明の実施形態5について説明する。
図59は、本発明の実施形態5に係るプラズマ処理装置の要部を簡略化して示す概略断面図である。図59においても、図1と同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、上部電極34と下部電極であるサセプタ16とに、それぞれ整合器46および88内のフィルタを介して可変直流電源118を接続している。すなわち、可変直流電源118の一方の極を上部電極34に接続し、他方の極を下部電極であるサセプタ16に接続している。この可変直流電源118は、オン・オフスイッチ120によりオン・オフ可能となっている。なお、可変直流電源118およびオン・オフスイッチ120は図示しないコントローラで制御される。
このように構成されるプラズマ処理装置においては、実施形態1と同様にしてプラズマを形成した際に、直流電源118から上部電極34およびサセプタ16に所定の直流電圧が印加される。この場合に、直流電圧が上部電極34に印加されていることから、実施形態1における直流電圧印加の効果を得ることができるとともに、さらに上部電極34からウエハWまで直線的に電界が入るために、電極上の電子を効率良くウエハに加速することができる。また、どちらの電極もチャンバ壁に対してはDC的に浮いているために、電極間に電位差を与えても直接プラズマポテンシャルに影響を与えない。よって、チャンバ壁などで異常放電を発生することはなくなる。また、チャンバ壁にGNDブロックを設ける必要がなくなる。
なお、本実施形態において、可変直流電源118の極性は逆であってもよいし、直流電圧の代わりに交流電圧を印加してもよい。また、電圧はパルス状でも、AM変調やFM変調等、変調されたものであってもよい。
実施形態6
次に、本発明の実施形態6について説明する。
図60は、本発明の実施形態6に係るプラズマ処理装置の要部を簡略化して示す概略断面図である。図60においても、図1と同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、絶縁性遮蔽部材42の中に導体42aを埋め込み、上部電極34と導体42aとに可変直流電源122を接続している。また、絶縁体である内壁部材26の中に導体26aを埋め込み、サセプタ16と導体26aとに可変直流電源126を接続している。すなわち、可変直流電源122の一方の極を上部電極34に接続し、他方の極を導体42aに接続しており、可変直流電源126の一方の極をサセプタ16に接続し、他方の極を導体26aに接続している。これら可変直流電源122,126は、それぞれオン・オフスイッチ124,128でオン・オフ可能となっている。
なお、これら可変直流電源122,126、オン・オフスイッチ124,128は図示しないコントローラで制御される。また、実施形態3と同様、直流電源126は整合器88に内蔵されているフィルタを介してサセプタ16に接続されている。
このように構成されるプラズマ処理装置においては、実施形態1と同様にしてプラズマを形成した際に、直流電源122から上部電極34および導体42aに所定の直流電圧が印加され、直流電源126からサセプタ16および導体26aに所定の直流電圧が印加される。この場合に、直流電圧が上部電極34に印加されていることから、実施形態1における直流電圧印加の効果を得ることができるとともに、さらに印加電圧を最適化することで、絶縁性遮蔽部材42および内壁部材26にしみ出した電位とプラズマ電位との差により、イオンの加速が生じて、絶縁性遮蔽部材42および絶縁体である内壁部材26への堆積物(デポ)の付着を抑制することができる。
なお、本実施形態において、可変直流電源122、126の極性は逆であってもよいし、直流電圧の代わりに交流電圧を印加してもよい。また、電圧はパルス状でも、AM変調やFM変調等、変調されたものであってもよい。
実施形態7
次に、本発明の実施形態7について説明する。
図61は、本発明の実施形態7に係るプラズマ処理装置の要部を簡略化して示す概略断面図である。図61において、図1および図60と同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
本実施形態では実施形態6と同様、絶縁性遮蔽部材42の中に導体42aを埋め込み、内壁部材26の中に導体26aを埋め込んでいる。そして、導体42aとチャンバ10の壁(接地電位)とに可変直流電源130を接続し、導体26aとチャンバ10の壁(接地電位)とに可変直流電源134を接続している。すなわち、可変直流電源130の一方の極を導体42aに接続し、他方の極をチャンバ10の壁に接続しており、可変直流電源134の一方の極を導体26aに接続し、他方の極をチャンバ10の壁に接続している。これら可変直流電源130,134は、それぞれオン・オフスイッチ132,136でオン・オフ可能となっている。なお、これら可変直流電源130,134、オン・オフスイッチ132,136は図示しないコントローラで制御される。
このように構成されるプラズマ処理装置においては、実施形態1と同様にしてプラズマを形成した際に、可変直流電源130から導体42aに所定の直流電圧が印加され、可変直流電源134から導体26aに所定の直流電圧が印加される。この際に、印加電圧を最適化することで、絶縁性遮蔽部材42および内壁部材26の表面にしみ出す電位を変えることができる。これにより、プラズマポテンシャルとの電位差によるイオンの加速電圧が生じて、絶縁性遮蔽部材42および内壁部材26に入射するイオンエネルギーにより、絶縁性遮蔽部材42および絶縁体である内壁部材26への堆積物(デポ)の付着を抑制することができる。
なお、本実施形態において、可変直流電源132、134の極性は逆であってもよいし、直流電圧の代わりに交流電圧を印加してもよい。また、電圧はパルス状でも、AM変調やFM変調等、変調されたものであってもよい。
実施形態8
次に、本発明の実施形態8について説明する。
図62は、本発明の実施形態8に係るプラズマ処理装置の要部を簡略化して示す概略断面図である。図62において、図1および図60と同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
本実施形態では実施形態7と同様、絶縁性遮蔽部材42の中に導体42aを埋め込み、内壁部材26の中に導体26aを埋め込んでいる。そして、導体42aと導体26aとに可変直流電源138を接続している。すなわち、可変直流電源138の一方の極を導体42aに接続し、他方の極を導体26aに接続している。この可変直流電源138は、オン・オフスイッチ140でオン・オフ可能となっている。なお、可変直流電源138、オン・オフスイッチ140は図示しないコントローラで制御される。
このように構成されるプラズマ処理装置においては、実施形態1と同様にしてプラズマを形成した際に、可変直流電源138から導体42aおよび導体26aに所定の直流電圧が印加される。この際に、印加電圧を最適化することで絶縁性遮蔽部材42および内壁部材26の表面の電位を変え、プラズマポテンシャルとの電位差により加速されたイオンにより、絶縁性遮蔽部材42および絶縁体である内壁部材26への堆積物(デポ)の付着を抑制することができる。さらに、絶縁性遮蔽部材42および内壁部材26に対してそれぞれ逆極に印加していることで、電子、イオンを電極方向に加速することができるので、プラズマを閉じこめることができる。
なお、本実施形態において、可変直流電源138の極性は逆であってもよいし、直流電圧の代わりに交流電圧を印加してもよい。また、電圧はパルス状でも、AM変調やFM変調等、変調されたものであってもよい。
実施形態9
次に、本発明の実施形態9について説明する。
図63は、本発明の実施形態9に係るプラズマ処理装置の要部を簡略化して示す概略断面図である。図63においても、図1と同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、フローティング壁であるデポシールド11を互いに絶縁されたデポシールド11aとデポシールド11bとを有する構造とし、上部電極34とデポシールド11aとに可変直流電源142を接続し、下部電極であるサセプタ16とデポシールド11bとに可変直流電源146を接続している。すなわち、可変直流電源142の一方の極を上部電極34に接続し、他方の極をデポシールド11aに接続しており、可変直流電源146の一方の極をサセプタ16に接続し、他方の極をデポシールド11bに接続している。これら可変直流電源142,146は、それぞれオン・オフスイッチ144,148でオン・オフ可能となっている。
なお、これら可変直流電源142,146、オン・オフスイッチ144,148は図示しないコントローラで制御される。また、実施形態3と同様、直流電源148は整合器88に内蔵されているフィルタを介してサセプタ16に接続されている。
このように構成されるプラズマ処理装置においては、実施形態1と同様にしてプラズマを形成した際に、可変直流電源142から上部電極34およびデポシールド11aに所定の直流電圧が印加され、可変直流電源146からサセプタ16およびデポシールド11bに所定の直流電圧が印加される。この場合に、直流電圧が上部電極34に印加されていることから、実施形態1における直流電圧印加の効果を得ることができる。また、デポシールド11と上部電極34および下部電極であるサセプタ16は、グランドから浮いているのでデポシールド11と上部電極34、およびデポシールド11とサセプタ16はそれぞれの電位差は、印加電圧値で自然に決まる。したがって、グランドをプラズマに露出しなくてもアーク防止効果が得られる他、両者の電位差によりイオンが加速され、デポシールド11への堆積物(デポ)の付着を抑制することができる。さらに、電位方向や電圧の最適化により排気空間にポテンシャル差をつくることにより、プラズマ閉じこめ作用を得ることができる。
なお、本実施形態において、可変直流電源142、146の極性は逆であってもよいし、直流電圧の代わりに交流電圧を印加してもよい。また、電圧はパルス状でも、AM変調やFM変調等、変調されたものであってもよい。
実施形態10
次に、本発明の実施形態10について説明する。
図64は、本発明の実施形態10に係るプラズマ処理装置の要部を簡略化して示す概略断面図である。図64においては、図1および図63と同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、実施形態9と同様、フローティング壁であるデポシールド11を互いに絶縁されたデポシールド11aとデポシールド11bとを有する構造とし、デポシールド11aとチャンバ10の壁とに可変直流電源150を接続し、デポシールド11bとチャンバ10の壁とに可変直流電源154を接続している。すなわち、可変直流電源150の一方の極をデポシールド11aに接続し、他方の極をチャンバ10の壁に接続しており、可変直流電源154の一方の極をデポシールド11bに接続し、他方の極をチャンバ10の壁に接続している。これら可変直流電源150,154は、それぞれオン・オフスイッチ152,156でオン・オフ可能となっている。なお、これら可変直流電源150,154、オン・オフスイッチ152,156は図示しないコントローラで制御される。
このように構成されるプラズマ処理装置においては、実施形態1と同様にしてプラズマを形成した際に、可変直流電源150からフローティング壁であるデポシールド11aおよび接地壁であるチャンバ10の壁に所定の直流電圧が印加され、可変直流電源154からフローティング壁であるデポシールド11bおよび接地壁であるチャンバ10の壁定の直流電圧が印加される。この場合に、デポシールドの電位を最適に与えて、イオンの加速電圧を得ることにより、デポシールド11への堆積物(デポ)の付着を抑制することができる。さらに、外側のデポシールド11aと内側のデポシールド11bの電圧を最適化することで電子がより広がるのを防ぐことにより、プラズマ閉じこめ作用を得ることができる。図64はプラズマが下に広がらなくするために横方向の電界を与える例である。
なお、本実施形態において、可変直流電源150、154の極性は逆であってもよいし、直流電圧の代わりに交流電圧を印加してもよい。また、電圧はパルス状でも、AM変調やFM変調等、変調されたものであってもよい。
実施形態11
次に、本発明の実施形態11について説明する。
図65は、本発明の実施形態11に係るプラズマ処理装置の要部を簡略化して示す概略断面図である。図65において、図1および図63と同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
本実施形態では実施形態9と同様、フローティング壁であるデポシールド11を互いに絶縁されたデポシールド11aとデポシールド11bとを有する構造とし、デポシールド11aとデポシールド11bとに可変直流電源158を接続している。すなわち、可変直流電源158の一方の極をデポシールド11aに接続し、他方の極をデポシールド11bに接続している。この可変直流電源158は、オン・オフスイッチ160でオン・オフ可能となっている。なお、可変直流電源158、オン・オフスイッチ160は図示しないコントローラで制御される。
このように構成されるプラズマ処理装置においては、実施形態1と同様にしてプラズマを形成した際に、可変直流電源158からデポシールド11aおよびデポシールド11bに所定の直流電圧が印加される。この際に、2箇所以上のデポシールドに電位差を与えることで、イオンを加速させることにより、絶縁性遮蔽部材42および絶縁体である内壁部材26への堆積物(デポ)の付着を抑制することができる。さらに、排気方向に垂直に電界がかかることで、イオンや電子をデポシールドにぶつけて消滅させること、すなわち、プラズマ閉じこめ作用を得ることができる。
なお、本実施形態において、可変直流電源158の極性は逆であってもよいし、直流電圧の代わりに交流電圧を印加してもよい。また、電圧はパルス状でも、AM変調やFM変調等、変調されたものであってもよい。
実施形態12
次に、本発明の実施形態12について説明する。
図66は、本発明の実施形態12に係るプラズマ処理装置の要部を簡略化して示す概略断面図である。図66においては、図1と同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、上部電極34と導電性のフォーカスリング(補正リング)24とに可変直流電源162を接続している。すなわち、可変直流電源162の一方の極を上部電極34に接続し、他方の極を下部電極であるサセプタ16の上方に載置されたフォーカスリング24に接続している。この可変直流電源162は、オン・オフスイッチ164によりオン・オフ可能となっている。なお、可変直流電源162およびオン・オフスイッチ164は図示しないコントローラで制御される。また、導電性のフォーカスリング24は、電気的に接地されている。
このように構成されるプラズマ処理装置においては、実施形態1と同様にしてプラズマを形成した際に、可変直流電源162から上部電極34およびフォーカスリング24に所定の直流電圧が印加される。この場合に、直流電圧が上部電極34に印加されていることから、実施形態1における直流電圧印加の効果を得ることができるとともに、所定の電圧を印加することでウエハ面内で均一性の良いエッチングを行うことが可能となる。
なお、本実施形態において、可変直流電源162の極性は逆であってもよいし、直流電圧の代わりに交流電圧を印加してもよい。また、電圧はパルス状でも、AM変調やFM変調等、変調されたものであってもよい。
実施形態13
次に、本発明の実施形態13について説明する。
図67は、本発明の実施形態13に係るプラズマ処理装置の要部を簡略化して示す概略断面図である。図67においては、図1と同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、補正リングであるフォーカスリング24と静電チャック18との間のウエハWに隣接した位置に冷却可能な冷却リング166を設け、かつフォーカスリング24とチャンバ10の壁とに可変直流電源167を接続している。すなわち、可変直流電源167の一方の極をフォーカスリング24に接続し、他方の極をチャンバ10の壁に接続している。電源167からフォーカスリング24に至る給電線には、ローパスフィルタ(LPF)169が介在されている。また、可変直流電源167と並列にスイッチ168が設けられている。冷却リング166は、冷却機構170により冷却可能となっている。冷却リング166およびフォーカスリング24の温度は、温度計測システム171により計測される。温度制御部172は、温度計測システム171からの信号を入力し、冷却機構170および可変直流電源167およびスイッチ168に制御信号を出力することにより、冷却リング166およびフォーカスリング24の温度を制御可能となっている。冷却機構としては、例えば、冷却リング166とサセプタとの間にHeガス等の熱伝達ガスを供給するものを挙げることができる。この場合には、熱伝達ガスの供給圧力を変化させることにより、サセプタ16内を循環する冷媒の冷熱の伝達度合を変化させて冷却リング温度制御が可能となる。
このように構成されるプラズマ処理装置においては、実施形態1と同様にしてプラズマを形成した際に、冷却リング166によりウエハWのエッジ部を冷却することによりウエハWのエッジ部にデポが付着することを防止することができるとともに、フォーカスリング24に直流電圧を印加することにより、温度低下によるエッチング特性の悪化を防止することができる。
以下、詳細に説明する。
プラズマ処理装置においては、通常、図68に示すようにウエハWの外周に隣接してフォーカスリング24が設けられているが、プラズマ処理中にはフォーカスリング24の温度が上昇し、そのためウエハWのエッジ部および裏面にデポ173が付着する。デポの付着を防止するためにフォーカスリング24を冷却するとこのようなデポの付着は減少するが、ウエハWのエッジ部におけるエッチング特性(特にレジストのエッチングレート等)が悪化し、デポ付着とエッチング特性とがトレードオフの関係になってしまう。
これに対して、本実施形態では、冷却リング166をウエハWのエッジ部よりも低温に冷却することにより、ウエハWのエッジ部にデポが付着する代わりに冷却リング166にデポを付着させるので、ウエハWのエッジ部および裏面へのデポの付着を防止することができる。一方、フォーカスリング24に直流電圧を印加して温度を上昇させることにより、冷却リング166がウエハエッジ近傍空間の温度を低下させることを防止することができ、エッチング特性を低下させない。
本実施形態において、温度制御は必ずしも必要はなく、冷却リング166の温度がウエハWのエッジ部の温度よりも低くなればよい。また、フォーカスリング24のみを計測して制御するようにしてもよい。したがって、図69に示すように、冷却リング166とサセプタ16との間に良熱伝導体、例えばシリコンラバー174を介在させて冷却部材166をより冷却しやすくするだけでもよい。可能ならば、図70に示すように、高周波電力が伝達しにくく熱だけ伝達しやすい誘電体、例えばAlNからなる部材174aをシリコンラバー174等で上下から挟み込むように構成することが好ましい。これにより冷却リング166の高周波電力による加熱を極力防止することができ、冷却の程度をより高くすることが可能となる。
また、図71に示すように、フォーカスリング24とサセプタ16とを絶縁部材175で絶縁しておけば、高周波電力の影響を受けずにフォーカスリング24に直流電圧を印加することができる。この場合には、ローパスフィルタ(LPF)169は不要である。
さらに、図72に示すように、サセプタ16を通してフォーカスリング24に直流電圧を印加することもできる。この場合には、フォーカスリング24とサセプタ16とをコンタクトピン176などで電気的に接続しておき、直流電圧を高周波電源90の給電線を介してサセプタ16に印加する。サセプタ16を介して供給される高周波電力による温度上昇が無視できない場合には、図示のように冷却リング166とサセプタ16との間に誘電体部材17を介在させることにより、冷却リング166への高周波電力を遮断して温度上昇を抑えることができる。
さらにまた、図73に示すように、冷却リング166の上にフォーカスリング24を配置するようにしてもよい。
なお、本実施形態において、フォーカスリング24に印加する直流電圧の極性は逆であってもよいし、直流電圧の代わりに交流電圧を印加してもよい。また、電圧はパルス状でも、AM変調やFM変調等、変調されたものであってもよい。さらに、エッチング特性の劣化が問題にならない場合には、フォーカスリング24への電圧印加を行わずに冷却リング166を設けるだけでも効果がある。
実施形態14
次に、本発明の実施形態14について説明する。
図74は、本発明の実施形態14に係るプラズマ処理装置の要部を簡略化して示す概略断面図である。図74においては、図1と同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、補正リングであるフォーカスリングを静電チャック18に隣接した内側の第1フォーカスリング24aと、その外側の第2フォーカスリング24bとに分離した構成とし、第1フォーカスリング24aと第2フォーカスリング24bとに可変直流電源178を接続している。すなわち、可変直流電源178の一方の極を第1フォーカスリング24aに接続し、他方の極を第2フォーカスリング24bに接続している。電源178からの給電線には、ローパスフィルタ(LPF)180が介在されている。また、可変直流電源178と並列にスイッチ182が設けられている。
このように構成されるプラズマ処理装置においては、実施形態1と同様にしてプラズマを形成した際に、内側の第1フォーカスリング24aと外側の第2フォーカスリング24bに可変直流電源178から直流電圧を印加する。この際に、内側の第1フォーカスリング24aと外側の第2フォーカスリング24bに印加する電圧(電圧の方向)を異ならせることができ、その値も変化させることができるので、ウエハWの外周のプラズマを制御することができ、ウエハWのエッジ部においてプロセス特性の悪化を低減することができる。例えば、ウエハWのエッジにおけるエッチングレートの低下や、ウエハWのエッジにおけるエッチング形状の曲がり等を低減することができる。
本実施形態のプラズマ処理装置において、実施形態13と同様の冷却機構を設けて第1フォーカスリング24aを冷却することにより、第1フォーカスリング24aを冷却リングとして機能させれば、ウエハWのエッジ部や裏面へのデポの付着を防止することも可能である。また、第1および第2フォーカスリング24a,24bの温度を実施形態13と同様に計測して、これらの温度が所定値になるように実施形態13と同様、温度制御部により可変直流電源の電圧や極性を制御するようにしてもよい。冷却機構を設ける場合には、第1フォーカスリング24aの冷却を制御するようにしてもよい。
また、図75に示すように、第1フォーカスリング24aと第2フォーカスリング24bとをウエハWのエッジ近傍において上下に配置するようにしてもよい。これによっても同様の効果を得ることができる。
なお、本実施形態において、第1および第2フォーカスリング24a,24bに印加する直流電圧の極性は逆であってもよいし、直流電圧の代わりに交流電圧を印加してもよい。また、電圧はパルス状でも、AM変調やFM変調等、変調されたものであってもよい。
実施形態15
次に、本発明の実施形態15について説明する。
図76は、本発明の実施形態15に係るプラズマ処理装置の要部を簡略化して示す概略断面図である。図76においては、図1および図74と同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、実施形態14と同様に、補正リングであるフォーカスリングを静電チャック18に隣接した内側の第1フォーカスリング24aと、その外側の第2フォーカスリング24bとに分離した構成とし、第1フォーカスリング24aと第2フォーカスリング24bとに、それぞれ別個の第1可変直流電源184および第2可変直流電源186を接続している。すなわち、第1可変直流電源184の一方の極を第1フォーカスリング24aに接続し、第2可変直流電源186の一方の極を第2フォーカスリング24bに接続し、第1および第2可変直流電184,186の他方の極をいずれもチャンバ10の壁に接続している。第1および第2可変直流電184,186からの給電線には、それぞれ第1ローパスフィルタ(LPF)188および第2ローパスフィルタ(LPF)190が介在されている。第1可変直流電源184および第2可変直流電源186とそれぞれ並列にスイッチ185,187が設けられている。
このように構成されるプラズマ処理装置においては、実施形態1と同様にしてプラズマを形成した際に、内側の第1フォーカスリング24aと外側の第2フォーカスリング24bにそれぞれ第1可変直流電源184および第2可変直流電源186から独立に直流電圧を印加する。この際に、両者に印加する電圧(電圧の方向)を異ならせることができ、それらの値を独立して自由に変化させることができるので、実施形態14の場合よりもウエハWの外周のプラズマを高精度で制御することができ、ウエハWのエッジ部において、上述したウエハWのエッジにおけるエッチングレートの低下や、ウエハWのエッジにおけるエッチング形状の曲がり等のプロセス特性の悪化を、より効果的に低減することができる。
本実施形態のプラズマ処理装置においても、実施形態13と同様の冷却機構を設けて第1フォーカスリング24aを冷却することにより、第1フォーカスリング24aを冷却リングとして機能させれば、ウエハWのエッジ部や裏面へのデポの付着を防止することも可能である。また、第1および第2フォーカスリング24a,24bの温度を実施形態13と同様に計測して、これらの温度が所定値になるように実施形態123同様、温度制御部により可変直流電源の電圧や極性を制御するようにしてもよい。冷却機構を設ける場合には、第1フォーカスリング24aの冷却を制御するようにしてもよい。
また、図77に示すように、第1可変電源184および第2可変電源186の前記他方の極をローパスフィルタ(LPF)192を介して上部電極34に接続してもよい。さらに、図78に示すように、第1フォーカスリング24aと第2フォーカスリング24bとをウエハWのエッジ近傍において上下に配置するようにしてもよく、これによっても同様の効果を得ることができる。
なお、本実施形態において、第1および第2フォーカスリング24a,24bに印加する直流電圧の極性は逆であってもよいし、直流電圧の代わりに交流電圧を印加してもよい。また、電圧はパルス状でも、AM変調やFM変調等、変調されたものであってもよい。
実施形態16
次に、本発明の実施形態16について説明する。
図79は、本発明の実施形態16に係るプラズマエッチング装置を簡略化して示す概略断面図である。この装置は、下部電極であるサセプタ16に第1の高周波電源200からプラズマ生成用の例えば13.56MHzの高周波(RF)電力を印加する下部RF1周波印加タイプのプラズマエッチング装置であって、図示のように上部電極234´に可変直流電源204を接続して所定の直流(DC)電圧が印加されるプラズマエッチング装置である。図79は詳細を省略した図であるが、本実施形態のプラズマエッチング装置は、下部に高周波電力を1周波のみ印加する点以外は、実施形態3の下部RF2周波印加タイプのプラズマエッチング装置と同じである。
本実施形態のプラズマエッチング装置であっても、上部電極234′に可変直流電源204からの直流電圧を印加することで、実施形態3のプラズマエッチング装置と同様の効果を得ることができる。すなわち、(1)第1電極の自己バイアス電圧の絶対値を大きくして第1電極表面へのスパッタ効果、(2)第1電極におけるプラズマシースを拡大させ、形成されるプラズマが縮小化される効果、(3)第1電極近傍に生じた電子を被処理基板上に照射させる効果、(4)プラズマポテンシャルを制御する効果、(5)電子(プラズマ)密度を上昇させる効果、(6)中心部のプラズマ密度を上昇させる効果の少なくとも一つを奏することができる。
また、上記実施形態1〜3で説明した、上部電極への直流電圧の印加に関係する装置構成及び手法を、本実施形態のプラズマエッチング装置に適用することができる。例えば、上記実施形態3の導電性部材や、上記実施形態3の図47〜図49で説明したスイッチ、処理ガスの組み合わせなどを本実施形態のプラズマエッチング装置に適用することは、当然に可能である。
また、上記実施形態4〜15で説明した、上部電極や上部電極以外の部材への直流電圧の印加に関係する装置構成及び手法を、本実施形態のプラズマエッチング装置に適用することができる。
実施形態17
次に、本発明の実施形態17について説明する。
図80は、本発明の実施形態17に係るプラズマエッチング装置を簡略化して示す概略断面図である。この装置は、下部電極であるサセプタ16に第1の高周波電源89から整合器87を介して第1の高周波(RF)電力を印加するとともに第2の高周波電源90から整合器88を介して第2の高周波(RF)電力を印加し、さらに第3の高周波電源224から第3の高周波電力を整合器225を介して上部電極34に印加する上部RF1周波下部RF2周波タイプのプラズマエッチング装置であって、図示のように上部電極34に可変直流電源50を接続して所定の直流(DC)電圧が印加されるプラズマエッチング装置である。なお、このプラズマエッチング装置は、プラズマ形成用の高周波電力を出力する高周波電源が第3の高周波電源であることが好ましく、イオン引き込み用の高周波電力を出力する高周波電源が第1の高周波電源および第2の高周波電源であることが好ましい。
本実施形態のプラズマエッチング装置であっても、上部電極34に可変直流電源50からの直流電圧を印加することで、実施形態3のプラズマエッチング装置と同様の効果を得ることができる。すなわち、(1)第1電極の自己バイアス電圧の絶対値を大きくして第1電極表面へのスパッタ効果、(2)第1電極におけるプラズマシースを拡大させ、形成されるプラズマが縮小化される効果、(3)第1電極近傍に生じた電子を被処理基板上に照射させる効果、(4)プラズマポテンシャルを制御する効果、(5)電子(プラズマ)密度を上昇させる効果、(6)中心部のプラズマ密度を上昇させる効果の少なくとも一つを奏することができる。
また、上記実施形態1〜3で説明した、上部電極への直流電圧の印加に関係する装置構成及び手法を、本実施形態のプラズマエッチング装置に適用することができる。例えば、上記実施形態1の導電性部材や、処理ガスの組み合わせなどを本実施形態のプラズマエッチング装置に適用することは、当然に可能である。
また、上記実施形態4〜15で説明した、上部電極や上部電極以外の部材への直流電圧の印加に関係する装置構成及び手法を、本実施形態のプラズマエッチング装置に適用することができる。
なお、図示したように切替スイッチ226により、上部電極34を第3の高周波電源224および可変直流電源50に接続するか、または接地するか切替可能とすることもできる。なお、参照符号227はローパスフィルタであり、228はハイパスフィルタである。
以上、本発明の実施形態を説明してきたが、上記実施形態の内容に限定されることなく、種々の装置構成や手法の、組み合わせ、変形が可能である。例えば、上記実施形態4〜15で説明した、上部電極や上部電極以外の部材への直流電圧の印加に関係する装置構成及び手法を、実施形態2、3のプラズマエッチング装置に適用することもできる。また、図81に示すように、下部電極であるサセプタ16に第1の高周波電源48′からプラズマ生成用の例えば60MHzの高周波電力を印加するとともに、第2の高周波電源90′からイオン引き込み用の例えば2MHzの高周波電力を印加し、さらに直流電源198を下部電極であるサセプタ16に印加するようにしてもよい。さらに、図82に示すように、図79の上部電極に接続された可変直流電源204の代わりに下部電極に接続された可変直流電源202を設けてもよい。上記実施形態1〜15で説明した直流電圧の印加手法は、上記図81、図82のタイプの装置であっても適用可能である。
また、以上では、プラズマエッチング装置を例に説明したが、他のプラズマを用いて半導体基板を処理する装置にも適用可能である。例えばプラズマ成膜装置が挙げられる。
本発明の実施形態1に係るプラズマ処理装置を示す概略断面図。
図1のプラズマ処理装置において第1の高周波電源に接続された整合器の構造を示す図。
図1のプラズマ処理装置において、上部電極に直流電圧を印加した際のVdcおよびプラズマシース厚の変化を示す図。
図1のプラズマ処理装置において、上部電極に直流電圧を印加した場合と印加しない場合とのプラズマ状態を比較して示す図。
図1のプラズマ処理装置において、プラズマを検出する検出器を設けた状態を示す断面図。
図1のプラズマ処理装置により上部電極に印加する直流電圧を変化させてSiO2膜をエッチングした際におけるフォトレジスト膜のエッチレート、SiO2膜のエッチレート、およびフォトレジスト膜に対するSiO2膜の選択比を示すグラフ。
連続エッチングプロセスが適用される多層膜の一例を示す図。
図1のプラズマ処理装置において、上部電極に直流電圧を印加した際のプラズマポテンシャル波形の変化を示す図。
図1のプラズマエッチング装置において、印加する直流電圧を変化させた場合の電子密度およびその分布の変化を示す図。
図9のエッチングにおいて、各直流電圧におけるセンターとエッジのエッチング状態を模式的に示す図。
上部電極表面における自己バイアス電圧と、印加する直流電圧との関係を示す図。
図1のプラズマエッチング装置において、プラズマを検出する検出器を設けた状態を示す断面図。
図1のプラズマエッチング装置において、上部電極へ直流電圧を印加する際に異常放電を抑制するための波形を示す図。
GNDブロックの他の配置例を示す概略図。
GNDブロックのさらに他の配置例を示す概略図。
GNDブロックの付着物防止例を説明するための図。
GNDブロックの付着物を除去可能な装置構成の一例を示す概略図。
図17の装置におけるプラズマエッチング時における状態とクリーニング時における状態を説明するための概略図。
図17の装置におけるプラズマエッチン時における他の状態を示す概略図。
GNDブロックの付着物を除去可能な装置構成の他の例を示す概略図。
図20の装置におけるプラズマエッチング時における状態とクリーニング時における状態を説明するための概略図。
DC的に接地されなくなることを防止する機能を備えたGNDブロックの一例を示す模式図。
DC的に接地されなくなることを防止する機能を備えたGNDブロックの他の例を示す模式図。
DC的に接地されなくなることを防止する機能を備えたGNDブロックのさらに他の例を示す模式図。
DC的に接地されなくなることを防止する機能を備えたGNDブロックのさらに他の例を示す模式図。
DC的に接地されなくなることを防止する機能を備えたGNDブロックのさらに他の例を示す模式図。
DC的に接地されなくなることを防止する機能を備えたGNDブロックのさらに他の例を示す模式図。
RFプラズマおよびDCプラズマにおける電子温度分布を示す図。
高周波電力のみでプラズマを形成した場合と直流電圧も印加した場合における電子温度分布を示す図。
バイアス高周波電力の周波数が2MHzの場合と13.56MHzの場合におけるイオンの追従性を説明するための図。
バイアス高周波電力の周波数が2MHzの場合と13.56MHzの場合におけるイオンエネルギー分布を示す図。
図1のプラズマエッチング装置によりエッチングを行う際におけるエッチング対象となり得るウエハの断面構造の一例を示す模式図。
図1のプラズマエッチング装置によりエッチングを行う際におけるエッチング対象となり得るウエハの断面構造の他の例を示す模式図。
本発明の実施形態2に係るプラズマエッチング装置を示す概略断面図。
図34のプラズマエッチング装置の要部の構成を示す概略断面図。
図34のプラズマエッチング装置におけるプラズマ生成手段の要部の等価回路を示す回路図。
図34のプラズマエッチング装置における可変コンデンサのキャパシタンスの値と、電界強度比率との関係を示す図。
図34のプラズマエッチング装置の上部電極への直流電圧印加の変形例を示す図。
図34のプラズマエッチング装置の上部電極への直流電圧印加の他の変形例を示す図。
本発明の実施形態3に係るプラズマエッチング装置を示す概略断面図。
本発明の実施形態3に係るプラズマエッチング装置を示す概略断面図。
図41のプラズマエッチング装置において、上部電極に直流電圧を印加した際のVdcおよびプラズマシース厚の変化を示す図。
図41のプラズマエッチング装置において、HARCエッチングの条件を用い、印加する直流電圧を変化させた場合の電子密度の変化を示す図。
図41のプラズマエッチング装置において、Viaエッチングの条件を用い、印加する直流電圧を変化させた場合の電子密度の変化を示す図。
上記HARCエッチングで、第1の高周波電力を3000W、第2の高周波電力を4000Wにした場合のウエハ径方向の電子密度分布を示す図。
トレンチエッチングの条件を用い、直流電圧を印加した場合と印加しない場合とでウエハ径方向の電子密度分布を測定した結果を示す図。
図41のプラズマエッチング装置における、上部電極の電気的状態を表す図。
図41のプラズマエッチング装置における、上部電極の電気的状態を表す図。
図41のプラズマエッチング装置における、上部電極の電気的状態を表す図。
図41のプラズマエッチング装置において、プラズマを検出する検出器を設けた状態を示す断面図。
GNDブロックの他の配置例を示す概略図。
GNDブロックのさらに他の配置例を示す概略図。
GNDブロックの付着物を除去可能な装置構成の一例を示す概略図。
図53の装置におけるプラズマエッチング時における状態とクリーニング時における状態を説明するための概略図。
図53の装置におけるプラズマエッチン時における他の状態を示す概略図。
GNDブロックの付着物を除去可能な装置構成の他の例を示す概略図。
図56の装置におけるプラズマエッチング時における状態とクリーニング時における状態を説明するための概略図。
本発明の実施形態4に係るプラズマエッチング装置の要部を簡略化して示す概略断面図。
本発明の実施形態5に係るプラズマエッチング装置の要部を簡略化して示す概略断面図。
本発明の実施形態6に係るプラズマエッチング装置の要部を簡略化して示す概略断面図。
本発明の実施形態7に係るプラズマエッチング装置の要部を簡略化して示す概略断面図。
本発明の実施形態8に係るプラズマエッチング装置の要部を簡略化して示す概略断面図。
本発明の実施形態9に係るプラズマエッチング装置の要部を簡略化して示す概略断面図。
本発明の実施形態10に係るプラズマエッチング装置の要部を簡略化して示す概略断面図。
本発明の実施形態11に係るプラズマエッチング装置の要部を簡略化して示す概略断面図。
本発明の実施形態12に係るプラズマエッチング装置の要部を簡略化して示す概略断面図。
本発明の実施形態13に係るプラズマエッチング装置の要部を簡略化して示す概略断面図。
本発明の実施形態13に係るプラズマエッチング装置と対比すべき従来のプラズマエッチング装置の要部を簡略化して示す概略断面図。
本発明の実施形態13に係るプラズマエッチング装置の変形例の要部を簡略化して示す概略断面図。
本発明の実施形態13に係るプラズマエッチング装置の他の変形例の要部を簡略化して示す概略断面図。
本発明の実施形態13に係るプラズマエッチング装置の他の変形例の要部を簡略化して示す概略断面図。
本発明の実施形態13に係るプラズマエッチング装置のさらに他の変形例の要部を示す概略断面図。
本発明の実施形態13に係るプラズマエッチング装置のさらにまた他の変形例の要部を示す概略断面図。
本発明の実施形態14に係るプラズマエッチング装置の要部を簡略化して示す概略断面図。
本発明の実施形態14に係るプラズマエッチング装置の変形例の要部を簡略化して示す概略断面図。
本発明の実施形態15に係るプラズマエッチング装置の要部を簡略化して示す概略断面図。
本発明の実施形態15に係るプラズマエッチング装置の変形例の要部を簡略化して示す概略断面図。
本発明の実施形態15に係るプラズマエッチング装置の他の変形例の要部を簡略化して示す概略断面図。
本発明の実施形態16に係るプラズマエッチング装置の例を示す断面図。
本発明の実施形態17に係るプラズマエッチング装置の例を示す断面図。
本発明の適用が可能な他のタイプのプラズマエッチング装置の例を示す断面図。
本発明の適用が可能なさらに他のタイプのプラズマエッチング装置の例を示す概略図。
符号の説明
10…チャンバ(処理容器)
16…サセプタ(下部電極)
34,34′…上部電極
44…給電棒
46,88…整合器
48…第1の高周波電源
50…可変直流電源
51…コントローラ
52…オン・オフスイッチ
66…処理ガス供給源
84…排気装置
90…第2の高周波電源
91…GNDブロック
W…半導体ウエハ(被処理基板)