以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における基材フィルムの材質は、透明体であれば限定されない。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートあるいはポリエチレン−2,6−ナフタレート等のポリエステル樹脂から構成された二軸配向ポリエステルフィルムが、機械的特性、光学特性、耐熱性および経済性の点より好適である。なお、前記のポリエステルは、ホモポリマーでもよいし、2種以上のポリエステルをブレンドして使用したものでもかまわない。さらに、共重合ポリエステルであっても構わない。共重合ポリエステルの場合、共重合成分としては、ジカルボン酸成分またはグリコール成分の少なくとも一方に2種以上の成分を用いる。ジカルボン酸成分としては、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸及びピロメリット酸等の多官能カルボン酸等が用いられる。また、グリコール成分としては、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪酸グリコール;p−キシレングリコール等の芳香族グリコール;1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール;数平均分子量が150〜20000のポリエチレングリコール等が用いられる。共重合成分の質量比率は20質量%未満である。20質量%以上ではフィルム強度、透明性、耐熱性が劣る傾向がある。また、セルローストリアセテート(TAC)よりなるフィルムも透明性等の光学特性が優れているため好適である。
本発明においては、近赤外線吸収色素の1つがビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸を対アニオンとする芳香族ジインモニウム系化合物であることが重要である。例えば、下記の一般式(I)で示される化合物を挙げることができる。
前記の一般式(I)で示される芳香族ジインモニウム系化合物において、R1〜R8は、水素原子、アルキル基、アリ−ル基、アルケニル基、アラルキル基、アルキニル基を表わし、それぞれ同じであっても、異なっていても良い。R9〜R12は、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルキル基、アルコキシ基を表わし、それぞれ同じであっても、異なっていても良い。R1〜R12で置換基を結合できるものは置換基を有しても良い。X-はアニオンを示し、Xはビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸である。
本発明では、近赤外線領域全体において、良好な近赤外線の遮断性を付与する目的で、上記のジインモニウム系化合物以外の構造の近赤外線吸収色素を併用するのが好ましい実施態様である。ジインモニウム系化合物以外の近赤外線吸収色素としては、ポリメチン系、金属錯体系、スクアリリウム系、シアニン系、フタロシアニン系、インドアニリン系、ナフタロシアニン系、アゾ系、アントラキノン系、ナフトキノン系、ピリリウム系、チオピリリウム系、クロコニウム系、テトラデヒドロコリン系、トリフェニルメタン系、アミニウム系等が挙げられる。
本発明では、これらの色素の1種または2種以上を併用するのが好ましい。前記の特定のジインモニウム系化合物に併用することができる近赤外線吸収色素としては、シアニン系化合物が好ましい。さらに、前記シアニン系化合物のアニオンが金属錯体であることがより好ましい実施態様である。
前記のシアニン系化合物は近赤外線吸収能を有するものであれば限定されないが、例えば下記の一般式(II)〜(IV)で示されるカチオンを有するシアニン系化合物が好適である。
なお、上記一般式(II)〜(IV)において、環A及び環A′は、ベンゼン環、ナフタレン環又はピリジン環を示し、R13及びR13′は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基を示し、R14、R15及びR16は、ハロゲン原子、炭素数6〜30のアリール基、炭素数1〜8のアルキル基を示し、CおよびC′は、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、プロパン−2,2−ジイル、ブタン−2,2−ジイル、炭素数3〜6のシクロアルカン−1,1−ジイル、−NH−又は−NB1−を示し、B、B′及びB1は、炭素数1〜30の有機基を表し、r及びr′は0〜2の整数を示す。
上記一般式(II)〜(IV)で示されるシアニン系化合物において、R13及びR13′で示されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。また、炭素数6〜30のアリール基としては、フェニル、ナフチル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、4−ビニルフェニル、3−イソプロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−ブチルフェニル、4−イソブチルフェニル、4−第三ブチルフェニル、4−ヘキシルフェニル、4−シクロヘキシルフェニル、4−オクチルフェニル、4−(2−エチルヘキシル)フェニル、4−ステアリルフェニル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、2,4−ジ第三ブチルフェニル、2,5−ジ第三ブチルフェニル、2,6−ジ−第三ブチルフェニル、2,4−ジ第三ペンチルフェニル、2,5−ジ第三アミルフェニル、2,5−ジ第三オクチルフェニル、2,4−ジクミルフェニル、シクロヘキシルフェニル、ビフェニル、2,4,5−トリメチルフェニルが挙げられる。
上記一般式(II)〜(IV)のR13及びR13′において、炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシルが挙げられる。また、R13及びR13′で示される炭素数1〜8のアルコキシ基としては、メチルオキシ、エチルオキシ、イソプロピルオキシ、プロピルオキシ、ブチルオキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシが挙げられる。R14、R15及びR16で示されるハロゲン原子、炭素数6〜30のアリール基、炭素数1〜8のアルキル基としては、上記R13で例示したものが挙げられる。
上記一般式(II)〜(IV)のC及びC′における炭素数3〜6のシクロアルカン−1,1−ジイルとしては、シクロプロパン−1,1−ジイル、シクロブタン−1,1−ジイル、2,4−ジメチルシクロブタン−1,1−ジイル、3−ジメチルシクロブタン−1,1−ジイル、シクロペンタン−1,1−ジイル、シクロヘキサン−1,1−ジイルが挙げられる。
上記一般式(II)〜(IV)のカチオンにおいて、B、B′及びB1で示される炭素数1〜30の有機基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ペプタデシル、オクタデシル等のアルキル基、ビニル、1−メチルエテニル、2−メチルエテニル、プロペニル、ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、デセニル、ぺンタデセニル、1−フェニルプロペン−3−イル等のアルケニル基、フェニル、ナフチル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、4−ビニルフェニル、3−イソプロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−ブチルフェニル、4−イソブチルフェニル、4−第三ブチルフェニル、4−ヘキシルフェニル、4−シクロヘキシルフェニル、4−オクチルフェニル、4−(2−エチルヘキシル)フェニル、4−ステアリルフェニル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、2,4−ジ第三ブチルフェニル、シクロヘキシルフェニル等のアルキルアリール基、ベンジル、フェネチル、2−フェニルプロパン−2−イル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、スチリル、シンナミル等のアリールアルキル基等が挙げられる。
また、これらがエーテル結合、チオエーテル結合で中断されたものでもよい。例えば、2−メトキシエチル、3−メトキシプロピル、4−メトキシブチル、2−ブトキシエチル、メトキシエトキシエチル、メトキシエトキシエトキシエチル、3−メトキシブチル、2−フェノキシエチル、3−フェノキシプロピル、2−メチルチオエチル、2−フェニルチオエチルが挙げられる。さらに、これらの基は、アルコキシ基、アルケニル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。
上記一般式(II)〜(IV)において、R14がハロゲン原子であると、光学フィルターの近赤外線吸収効果に優れているため好ましい。また、C及びC′がプロパン−2,2−ジイル、ブタン−2,2−ジイル、炭素数3〜6のシクロアルカン−1,1−ジイルから選ばれる基である場合、光安定性が大きいため好ましい。
また、前記のシアニン化合物の対アニオンは、励起状態にある活性分子を脱励起させる(クエンチングさせる)機能を有する。このようなアニオンとしては、金属錯体が好ましい。その構造は限定されないが、例えば、ベンゼンジチオール金属錯体化合物が好ましい。ベンゼンジチオール金属錯体化合物のアニオンとしては、例えば、下記の一般式(V)で示されるアニオンが挙げられる。
上記の一般式(V)で示されるアニオンにおいて、Mは、ニッケル原子または銅原子を示し、R17及びR17′は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、−SO2−Z基を示し、Zは、炭素数1〜8のアルキル基、ハロゲン原子で置換してもよい炭素数6〜30のアリール基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、ピペリジノ基、モルフォリノ基を示し、q及びq′は、1〜4の整数を示す。
上記の一般式(V)で示されるアニオンにおいて、R17及びR17′で示されるハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜30アリール基としては、前記の一般式(II)〜(IV)においてR13で例示したもの挙げられる。また、Zで示される炭素数1〜8のアルキル基も同様である。上記ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数6〜30のアリール基は、前記の一般式(II)〜(IV)においてR13で例示したもの、又はこれらのベンゼン環が1〜4個のハロゲン原子で置換されたものが挙げられる。さらに、ジアルキルアミノ基又はジアリールアミノ基に含有されるアルキル基、アリール基としては、前記の一般式(II)〜(IV)においてR13で例示したものが挙げられる。
本発明に係る上記のカチオンとアニオンとからなるシアニン系化合物は、上記カチオンとアニオンとの塩であり、従来周知の方法に準じて製造することができる。例えば、前記構造のカチオンと、塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオン、フッ素アニオン等のハロゲンアニオン;過塩素酸アニオン、塩素酸アニオン、チオシアン酸アニオン、六フッ化リンアニオン、六フッ化アンチモンアニオン、四フッ化ホウ素アニオン等の無機系アニオン、ベンゼンスルホン酸アニオン、トルエンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン等の有機スルホン酸アニオン;オクチルリン酸アニオン、ドデシルリン酸アニオン、オクタデシルリン酸アニオン、フェニルリン酸アニオン、ノニルフェニルリン酸アニオン、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスホン酸アニオン等の有機リン酸系アニオンとの塩化合物と、前記アニオンとテトラエチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン等のテトラアルキルアンモニウムカチオンとの塩化合物塩交換により容易に得ることができる。
近赤外線吸収色素は、目的とする近赤外線の吸収と、可視域での透過率を達成するように調整して基材上に設けることが重要であり、好ましくは、0.01g/m2以上1.0g/m2以下となるように近赤外線吸収層中に近赤外線吸収色素を存在させる。近赤外線吸収色素の量が少ない場合には、近赤外線領域での吸収能が不充分となることがある。一方、多い場合には可視光域での透明性が不足してディスプレイの輝度が低下しやすくなる。
近赤外線吸収色素は、樹脂中に分散あるいは溶解した状態で前記の基材フィルムに積層する方法が推奨される。この樹脂としては、近赤外線吸収色素を均一に溶解あるいは分散できるものであれば特に限定されないが、ポリエステル系、アクリル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリカーボネート系、ポリスチレン系化合物などの合成樹脂、ゼラチン、セルロース誘導体などの天然高分子などを好適に用いることができる。さらには、O−PET(カネボウ製)、ZEONEX(登録商標;日本ゼオン製)、ARTON(JSR製)、オプトレッツ(日立化成製)、バイロン(登録商標;東洋紡績製)なども使用することができる。このうち、柔軟性と基材との密着性に優れるポリエステル系樹脂およびアクリル系樹脂が好ましい。特に、好ましくは、柔軟性と基材との密着性に優れるポリエステル系樹脂である。樹脂が硬い場合には、後加工の工程で塗膜に微小なひび割れが発生する問題がある。さらに、樹脂のガラス転移温度が、利用する機器の使用保証温度以上であることが好ましい。
ガラス転移温度が機器使用温度以下であると、樹脂中に分散された色素同士の相互作用や、樹脂が外気中の水分等を吸収による加水分解により、色素やバインダ−樹脂の劣化が大きくなる。また、本発明において、樹脂のガラス転移温度は、機器使用温度以上であれば特に限定されないが、特に好ましくは85℃以上160℃以下である。ガラス転移温度が85℃未満の場合、色素と樹脂との相互作用、色素間の相互作用等が起こり、色素の変性が発生するおそれがある。また、ガラス転移温度が160℃を超える場合、前記の樹脂を溶剤に溶解し、透明基材上に塗布した時に十分な乾燥をしようとすれば高温にしなければならず、基材の熱シワによる平面性不良、さらには、色素の劣化が発生しやすくなる。低温で乾燥した場合、乾燥時間が長く生産性が悪くなり、生産性が不良となる。また、十分な乾燥ができない可能性もあり、溶剤が塗膜中に残留し、前述のように樹脂の見かけのガラス転移温度が低下し、やはり、色素の変性を引き起こしやすくなる。
樹脂中の近赤外線吸収色素の量は、1質量%以上10質量%以下が好ましい。樹脂中の近赤外線吸収色素の量が少ない場合には、目的とする近赤外線吸収能を達成するために、近赤外線吸収層の塗工量を増やすことが必要となる。一方、十分な乾燥をしようとすれば高温及び/又は長時間にすることが必要になる。そのため、色素の劣化、基材の平面性不良の問題が発生しやすくなる。逆に、樹脂中の近赤外線吸収色素の量が多い場合には、色素間の相互作用が強くなり、残留溶媒を少なくしたとしても経時での色素の変性が起こりやすくなる。
本発明においては、近赤外線吸収層にHLBが2以上12以下の界面活性剤を含有させることが好ましい実施態様である。本発明においては、上記の近赤外線吸収能を発現する近赤外線吸収層は、樹脂と近赤外線吸収色素を主に含有する塗液を基材上に塗布乾燥して積層する方法が好ましいが、この塗液中に、HLBが2以上12以下の界面活性剤を含有させることがより好ましい実施態様である。界面活性剤を添加することにより近赤外線吸収色素のバインダー樹脂への分散性が向上し、前記の近赤外線吸収層の塗工外観、特に、微小な泡によるヌケ、異物等の付着より凹み、乾燥工程でのハジキが改善され、近赤外線吸収層の外観が良好となる。さらには、界面活性剤が、塗液の塗布乾燥時に、塗膜表面にブリードすることにより、滑り性が付与され、近赤外線吸収層あるいは/及び反対面に表面凹凸を形成しなくともハンドリング性が良好となり、ロール状に巻取ることが容易になる。
上記界面活性剤は、カチオン系、アニオン系、ノニオン系の公知のものを好適に使用できるが、近赤外線吸収色素の劣化等の問題から極性基を有していないノニオン系が好ましく、さらには、界面活性能に優れるシリコーン系又はフッ素系界面活性剤が好ましい。
シリコーン系界面活性剤としては、ジメチルシリコーン、アミノシラン、アクリルシラン、ビニルベンジルシラン、ビニルベンジルアミノシラン、グリシドシラン、メルカプトシラン、ジメチルシラン、ポリジメチルシロキサン、ポリアルコキシシロキサン、ハイドロジエン変性シロキサン、ビニル変性シロキサン、ヒドロキシ変性シロキサン、アミノ変性シロキサン、カルボキシル変性シロキサン、ハロゲン化変性シロキサン、エポキシ変性シロキサン、メタクリロキシ変性シロキサン、メルカプト変性シロキサン、フッ素変性シロキサン、アルキル基変性シロキサン、フェニル変性シロキサン、アルキレンオキシド変性シロキサンなどが挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、4フッ化エチレン、パーフルオロアルキルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルスルホン酸アミド、パーフルオロアルキルスルホン酸ナトリウム、パーフルオロアルキルカリウム塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルアミノスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルアルキル化合物、パーフルオロアルキルアルキルベタイン、パーフルオロアルキルハロゲン化物などが挙げられる。
界面活性剤は、上記近赤外線吸収層中に0.01質量%以上2.00質量%以下含まれていることが好ましい。界面活性剤の含有量が少ない場合には、塗工外観や滑り性が不十分となる場合がある。一方、界面活性剤の含有量が多い場合には近赤外線吸収層が水分を吸着しやすくなり、色素の劣化が促進される。
本発明においては、界面活性剤のHLBは2以上12以下であることが好ましい。HLBが低い場合には界面活性能の不足によりレベリング性が不足する。逆に、HLBが高い場合には、滑り性が不足するだけでなく、近赤外線吸収層が水分を吸着しやすくなり、経時安定性が不良となる。なお、HLBとは、界面活性剤の分子中に含まれる親水基と親油基のバランスを指標化した特性値であり、この値が小さいほど親油性が、逆に大きいほど親水性が高いことを意味する。
本発明においては、上記の近赤外線吸収層は、塗液を前記の基材フィルム上に塗布、乾燥することにより積層されるが、前記の塗液は、塗工性を考慮して、有機溶媒により希釈することが重要である。この有機溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、トリデシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2−メチルシクロヘキシルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等のグリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチレンエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、エチレングリコールモノブチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルアセテート等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸イソプロピレン、酢酸n−ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソホロン、ジアセトンアルコール等のケトン類を例示することができ、これら単独あるいは2種以上を混合して使用することができる。好ましくは、色素の溶解に優れるケトン系を塗液中の溶媒中に30質量%以上80質量%以下含有させ、それ以外は、レベリング性、乾燥性を考慮して選定することが好ましい。また、溶媒の沸点は、60℃以上180℃以下が好ましい。沸点が低い場合には、塗工中に塗液の固形分濃度が変化し、塗工厚みが安定化しにくい問題がある。逆に、沸点が高い場合には、塗膜中に残存する溶媒量が増え、経時安定性が不良となる。
近赤外線吸収色素および樹脂を溶媒中に溶解あるいは分散する方法としては、加温下での攪拌、分散及び粉砕等の方法が挙げられる。加温することにより色素及び樹脂の溶解性を向上させることができ、未溶解物等による塗工外観への不良が妨げられる。また、樹脂及び色素を分散及び粉砕して、0.3μm以下の微粒子状態で塗液中に分散すれば、透明性に優れる層を形成することが可能となる。分散機及び粉砕機としては、公知のものを用いることができ、具体的には、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、ホモミキサー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー、バタフライミキサー、プラネタリーミキサー、ヘンシェルミキサー等が挙げられる。
塗液中にコンタミや1μm以上の未溶解物が存在した場合、塗布後の外観が不良になるため、塗布する前に、フィルタ等で除去することが重要である。フィルタとしては各種公知のものが好適に使用できるが、1μmの大きさのものを99%以上除去することのできるフィルタを用いることが好ましい。1μm以上のコンタミや未溶解物を含む塗液を塗布して乾燥した場合には、その周囲に凹み等が発生し、100〜1000μmサイズの欠点になる場合がある。
塗液中に含まれる樹脂及び色素等の固形分濃度は、10質量%以上30質量%が好ましい。固形分濃度が低い場合には、塗布後の乾燥に時間が掛かり生産性が劣るばかりか、塗膜中に残存する溶剤量が増加し、経時安定性が不良となる。逆に、固形分濃度が高い場合には、塗布液の粘度が高くなりレベリング性が不足して塗工外観が不良となる。塗液の粘度は、10cps以上300cps以下が塗工外観の面で好ましく、この範囲になるように、固形分濃度、溶媒量等を調整することが好ましい。
本発明で、上記の近赤外線吸収層を基材フィルム上に塗布する方法としては、グラビアコート方式、キスコート方式、ディップ方式、スプレイコート方式、カーテンコート方式、エアナイフコート方式、ブレードコート方式、リバースロールコート方式、バーコート方式、リップコート方式など通常用いられている方法が適用できる。これらのなかで、均一に塗布することのできるグラビアコート方式、特にリバースグラビア方式が好ましい。また、グラビアの直径は、80mm以下であることが好ましい。直径が大きい場合には流れ方向にうねスジが発生する問題がある。
乾燥後の近赤外線吸収層の付着量は特に限定されないが、好ましい下限は1g/m2、特に好ましくは3g/m2である。一方、好ましい上限は50g/m2、特に好ましくは30g/m2以下である。乾燥後の付着量が少ない場合には、近赤外線の吸収力が不足する問題があり、樹脂中の近赤外線吸収色素の存在量を増やすことにより近赤外線の吸収能を所望レベルまで高めたとしても、色素間の相互作用が強くなり、色素の劣化等が起こりやすくなり経時安定性が不良となる。逆に、乾燥後の付着量が多い場合には、近赤外線の吸収能は十分であるが、可視光領域での透明性が低下し、ディスプレイの輝度が低下する。樹脂中の近赤外線吸収色素の存在量を低減することにより光学特性は調節できるが、乾燥が不十分になりやすく、塗膜中の残留溶媒により経時安定性が不良となり、乾燥を十分にした場合には基材の平面性が不良となる。
上記の塗布液を基材フィルム上に塗布し、乾燥する方法としては、公知の熱風乾燥、赤外線ヒーター等が挙げられるが、乾燥速度が早い熱風乾燥が好ましい。塗布後の初期の恒率乾燥の段階では、20℃以上80℃以下で、2m/秒以上30m/秒の熱風を用いて乾燥することが好ましい。初期乾燥を強く行いすぎる(熱風温度が高い、熱風の風量が大きい)場合には、泡由来の微小なコートヌケ、微小なハジキ、クラック等の塗膜の微小な欠点が発生しやすくなる。逆に、初期乾燥を弱くしすぎる(熱風温度が低い、熱風の風量が小さい)場合には、外観は良好になるが乾燥時間が掛かりコスト面で問題がある。
減率乾燥の工程では、初期乾燥よりも高温とし、塗膜中の溶剤を減少させることが重要であり、好ましい温度は、120℃以上180℃以下である。温度が低い場合には、塗膜中の溶剤が減少しにくい問題がある。特に、樹脂のガラス転移温度より熱風温度が低い場合に、塗膜中に溶剤が減少しにくくなる。逆に、高温の場合には、熱シワにより基材の平面性が不良となるだけでなく、近赤外線色素が熱により劣化する問題がある。また、通過時間としては、5秒以上180秒以下であることが好ましい。時間が短い場合には塗膜中の残留する溶剤が多くなり経時安定性が不良となり、逆に時間が長い場合には、生産性が不良となるだけでなく、基材に熱シワが発生して平面性が不良となる。
乾燥の最終では、熱風温度を樹脂のガラス転移温度以下にし、フラットの状態で基材フィルムの実温を樹脂のガラス転移温度以下にすることが好ましい。高温のままでは乾燥炉を出た場合には、塗工面がロール表面に接触した際に滑りが不良となり、キズ等が発生するだけでなく、カール等が発生する場合がある。
上記の近赤外線吸収層は、高温、高湿度下に放置されても、近赤外線の透過率、可視光の透過率が変化しないことが好ましい。高温、高湿度下の経時安定性が不良の場合には、ディスプレイの映像の色調が変化するばかりか、近赤外線リモコンを用いた電子機器の誤動作を防止する本発明の効果がなくなる場合がある。上記の本発明の近赤外線吸収層は前記の経時安定性が従来公知の方法に比べて改善されているが、上述の塗液中の溶剤の種類、塗布膜厚、乾燥条件等に由来する近赤外線吸収層中の残留溶媒量や、樹脂中の色素の含有量の調整状態によっても影響を受けるので、これらの点についても配慮することも好ましい実施態様である。なお、近赤外線吸収層の残留溶媒の量は、少なければ少ないほど良いが、3質量%以下にすることが好ましい。3質量%以下になれば、実質的に経時安定性に差がなくなる。しかしながら、さらに残留溶媒量を低下させるために、乾燥を過酷な条件で行うと、フィルムの平面性が不良になる等の弊害が発生するので、適切に調整する。
上記の近赤外線吸収層の塗工外観としては、直径300μm以上、より好ましくは100μmのサイズの欠点が存在しないようにすることが望ましい。300μm以上の欠点は、プラズマディスプレイの前面に設置すると輝点のようになって、欠点が顕著化される。また、塗工層の薄いスジ、ムラ等もディスプレイ前面では顕著化されて問題となる。前記の塗工外観は、前記の要件を満たすことで達成できる。
本発明においては、可視光領域に吸収を有する色素の一種を含有させて、色調補正をすることが好ましい実施態様である。例えば、プラズマディスプレイは、600nm付近を中心とするいわゆるネオンオレンジ光を発光するため、赤色にオレンジ色が混ざって、鮮やかな赤色が得られない欠点がある。前記の課題は、550〜620nmの波長域に極大吸収を有する色補正色素を上記の近赤外線吸収層および/または基材フィルムに配合することで解決できる。この色補正色素は、550〜620nm、さらには、570〜600nmに、シャープな吸収を有することが好ましい。波長550〜620nmにおける極大吸収波長での透過率は、50%以下が好ましく、特に好ましくは30%以下である。波長550〜620nmにおける極大吸収波長での透過率が50%を超える場合、プラズマディスプレイから放出されるネオン光を十分に吸収しなくなり、色純度が低下する傾向がある。また、この領域の吸収が広い場合には、R、G、B光のバランスが崩れ、コントラストが低下する傾向がある。
波長550〜620nmにおいて、極大吸収を有する色補正色素としては、例えば、シアニン系、スクアリウム系、アゾメチン系、キサンテン系、オキソノール系、アゾ系、フタロシアニン系、キノン系、アズレニウム系、ピリリウム系、クロコニウム系、ジチオール金属錯体系、ピロメテン系、テトラアザポルフィリン系化合物等の色素が挙げられる。これらのなかで、スクアリリウム系化合物がネオン光にシャープな吸収があり好ましい。色補正色素を配合する層は限定されないが、前記の近赤外線吸収色素と共に近赤外線吸収層に配合するのが好ましい実施態様である。
近赤外線吸収フィルムの色調としては、Lab表色系で表現すると、a値は−10.0〜+10.0、b値は−10.0〜+10.0であることが好ましい。この範囲であれば、プラズマディスプレイの前面に設置した場合でもナチュラル色となり好ましい。
本発明の近赤外線吸収フィルムには、光あるいは熱に対する安定化を図る目的で各種安定化剤を使用することができ、安定化剤としては、例えば、ハイドロキノン誘導体、ハイドロキノンジエーテル誘導体、フェノール誘導体、スピロインダン又はメチレンジオキシベンゼンの誘導体、クロマン、スピロクロマン又はクマランの誘導体、ハイドロキノンモノエーテル又はパラアミノフェノールの誘導体、ビスフェノール誘導体、ニトロソ化合物)、ジインモニウム化合物、酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
本発明においては、基材フィルムに紫外線吸収剤を配合するのが好ましい実施態様である。本実施態様により、近赤外線吸収層の外光に対する耐候性が改善される。この紫外線吸収剤は紫外線吸収能を有する化合物で、かつ基材フィルムの製造工程での熱に耐えられるものであれば限定されない。添加される紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤が挙げられるが、透明性の観点から有機系紫外線吸収剤が好ましい。有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、環状イミノエステル系等、及びその組み合わせが挙げられるが特に限定されない。しかし、耐久性の観点からはベンゾトアゾール系、環状イミノエステル系が特に好ましい。2種以上の紫外線吸収剤を併用した場合には、別々の波長の紫外線を同時に吸収させることができるので、一層紫外線吸収効果を改善することができる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−[2´−ヒドロキシ−5´−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2´−ヒドロキシ−5´−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2´−ヒドロキシ−5´−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2´−ヒドロキシ−5´−(メタクリロイルオキシヘキシル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2´−ヒドロキシ−3´−tert−ブチル−5´−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2´−ヒドロキシ−5´−tert−ブチル−3´−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2´−ヒドロキシ−5´ −(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2´−ヒドロキシ−5´−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2´−ヒドロキシ−5´−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2´−ヒドロキシ−5´−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2´−ヒドロキシ−5´−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−ニトロ−2H−ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,2´,4,4´−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2´−ジヒドロキシ−4,4´−ジメトキシベンゾフェノン、2,2´−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−アセトキシエトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2´−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2´−ジヒドロキシ−4,4´−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2,2´−ジヒドロキシ−4,4´−ジメトキシ−5,5´−ジスルホベンゾフェノン・2ナトリウム塩などが挙げられる。
環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては、2,2´−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2−メチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−ブチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−フェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(1−又は2−ナフチル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(4−ビフェニル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−m−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−ベンゾイルフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−メトキシフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−o−メトキシフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−シクロヘキシル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−(又はm−)フタルイミドフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2,2´−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンズオキサジノン−4−オン)2,2´−ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2´−エチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2´−テトラメチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2´−デカメチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2´−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2´−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2´−(4,4´−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2´−(2,6−又は1,5−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2´−(2−メチル−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2´−(2−ニトロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2´−(2−クロロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2´−(1,4−シクロヘキシレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、1,3,5−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ベンゼン、1,3,5−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ナフタレン、および2,4,6−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ナフタレン、2,8−ジメチル−4H,6H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d´)ビス−(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、2,7−ジメチル−4H,9H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d´)ビス−(1,3)−オキサジン−4,9−ジオン、2,8−ジフェニル−4H,8H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d´)ビス−(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、2,7−ジフェニル−4H,9H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d´)ビス−(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、6,6´−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6´−ビス(2−エチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6´−ビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6´−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6´−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6´−エチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6´−エチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6´−ブチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6´−ブチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6´−オキシビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6´−オキシビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6´−スルホニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6´−スルホニルビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6´−カルボニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6´−カルボニルビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7´−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7´−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7´−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7´−エチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7´−オキシビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7´−スルホニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7´−カルボニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7´−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7´−ビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7´−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7´−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などが挙げられる。
特に、分解開始温度が290℃以上の紫外線吸収剤を用いることが、製膜時の工程汚染を少なくする上で好ましい。
上記の紫外線吸収剤を配合する目的は、後述する本発明の近赤外線吸収フィルムの主機能である近赤外線吸収能を発現させるための近赤外線吸収色素が、耐候性に劣り、外光中に含まれる紫外線による近赤外線吸収色素の性能低下が起こるという現象を抑えることにある。従って、380nm以下の波長における透過率が10%以下であることが好ましい実施態様である。390nm以下の波長における透過率が10%以下であることがより好ましく、400nm以下の波長における透過率が10%以下であることが特に好ましい。前記の特性を満足する前記紫外線吸収剤の添加量は、ポリエステル等の樹脂に対し、0.1〜4質量%が好ましく、さらには0.3〜2質量%が好ましい。この量が0.1質量%未満では紫外線吸収効果が小さく、4質量%を越えるとフィルムが黄変したり、ポリエステルフィルムの製膜性が低下したりするので好ましくない。
本発明においては、表層へのブリードの問題がない高分子タイプの紫外線吸収剤を添加することも好ましい実施態様として推奨される。前記の高分子タイプの紫外線吸収剤とは、紫外線吸収剤として有用な骨格を側鎖に有するポリマーである。ポリエステル樹脂との相溶性から主にポリエステル系、アクリル系ポリマー紫外線吸収剤が好ましい。例えば、ポリエステル樹脂が、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、ジオール成分としてエチレングリコールおよび/または1、4−ブタンジオールを主成分とするポリエステルであって、共重合成分として一般式(VI)で示されるナフタレンテトラカルボン酸ジイミドと一般式(VII)で示されるナフタレンジカルボン酸を含有した紫外線吸収化合物(三菱化学製、Novapex U−110)、2−(2−ヒドロキシルフェニル)ベンゾトリアゾール骨格を側鎖に有するアクリル系ポリマー(BASF製、UVA−1635)などが目的とするUVカット性能および透明性などの特性が優れ好ましい。
(上記一般式(VI)において、R
18、R
19はアルキレン基等、Dはヒドロキシ基等を示す。)
前記高分子タイプの紫外線吸収剤の添加量は、ポリエステルに対し、0.1〜20質量%が好ましく、さらには0.5〜15質量%が好ましい。この量が0.1質量%未満では紫外線劣化防止効果が小さく、20質量%を超えるとフィルムが黄変したり、ポリエステルフィルムの製膜性が低下しやすくなる。
上記紫外線吸収剤の配合方法は限定されないが、例えば、ポリエステル樹脂の場合は、重合時、または溶融押出時が好ましい。その際、紫外線吸収剤はマスターペレットにして添加することが好ましい実施態様である。例えば、好ましい配合方法として以下の方法が例示される。
基材フィルムがポリエステルフィルムの場合について説明する。まず、ポリエステル樹脂と紫外線吸収剤とをブレンドしマスターペレットを調製する。前記のマスターペレットは、易滑性付与を目的とした粒子を実質的に含有していないペレットである。前記のマスターペレットとポリエステル樹脂とを混合した原料ペレットを十分に真空乾燥した後、押出機に供給し、シート状に溶融押出し、キャスティングロール上で冷却固化せしめて未延伸ポリエステルシートを製膜する。この際、押出機の溶融部、混練り部、メルトライン、ギアポンプ、フィルターまでの樹脂温度は280〜290℃、その後のメルトライン、フラットダイまでの樹脂温度は270〜280℃とすることが紫外線吸収剤のダイス出口での昇華、引取ロールの汚染を防止するために好ましい。
また、溶融樹脂が約280℃に保たれた任意の場所で、樹脂中に含まれる異物を除去するために高精度濾過を行う。溶融樹脂の高精度濾過に用いられる濾材は、特に限定はされないが、ステンレス焼結体の濾材の場合、Si、Ti、Sb、Ge、Cuを主成分とする凝集物及び高融点有機物の除去性能に優れ好適である。さらに、濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)は、20μm以下、特に15μm以下が好ましい。濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)が20μmを超えると、20μm以上の大きさの異物が十分除去できない。濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)が20μm以下の濾材を用いて溶融樹脂の高精度濾過を行うことにより、生産性が低下する場合があるが、粗大粒子による突起の少ないフィルムを得るための重要な工程である。
原料ポリマー中に存在する異物、及び紫外線吸収剤が昇華しロールを汚染し、それらがフィルムに付着したものが存在すると製膜時の延伸工程でこの異物の周囲でポリエステル分子の配向が乱れ、光学的歪みが発生する。この光学的歪みのため、実際の異物の大きさよりもかなり大きな欠点として認識されるため、著しく品位を損なう。例えば、大きさ20μmの異物でも、光学的には50μm以上の大きさとして認識され、さらには100μm以上の大きさの光学欠点として認識される場合もある。高透明なフィルムを得るためには、基材フィルム中に易滑性を付与するための粒子を含有させないか、透明性を阻害しない程度に少量しか含有させないことが望ましいが、粒子含有量が少なくフィルムの透明性が高くなるほど、微小な異物による光学欠点はより鮮明となる傾向にある。また、フィルムが厚手になるほど、フィルム単位面積当たりの異物の含有量が薄手のフィルムより多くなる傾向にあり、一層この問題は大きくなる。
得られた未延伸フィルムを80〜120℃に加熱したロールで長手方向(縦方向:積層フィルム製造時の走行方向)に2.5〜5.0倍延伸し、一軸配向フィルムを得る。引き続いて、フィルムの端部をクリップで把持して120〜150℃に加熱された熱風ゾーンに導き、幅方向に2.5〜5.0倍に延伸し200〜250℃にて熱処理し、この熱処理工程中で必要に応じて幅方向に3%の弛緩処理し、2軸配向ポリエステルフィルムを得る。
本発明においては、請求項5に記載のごとく基材フィルムが少なくとも3層以上の積層構造からなり、上記紫外線吸収剤が基材フィルムの積層構造の中間層(表層以外の層を指す)に含有されてなることがより好ましい実施態様である。すなわち、両表層には紫外線吸収剤を含有させない態様である。この実施態様により、製膜時の押出工程での紫外線吸収剤の昇華が抑制され、前記の昇華物によるダイスの吐出出口や押出原反を冷却する冷却ロールの汚染や、前記の汚染により引き起こされるフィルムの欠点発生が抑制される。また、フィルム内部よりの紫外線吸収剤のブリードが抑制されるので、前記のブリードアウトした紫外線吸収剤による製膜工程のロールやテンターの汚染が軽減され、前記の汚染に起因するフィルム欠点の発生が抑制される。また、前記の紫外線吸収剤のブリードアウトにより引き起こされる接着阻害の発生が抑制される。
前記の方法で実施する場合の層厚み比率は限定なく任意であるが、両表層の厚みがそれぞれ全厚みの3〜15%であることが好ましい。5〜10%がより好ましい。最外層(片側)の比率が3%より低い場合、近赤外線吸収層に含まれる有機系紫外線吸収剤の昇華、およびブリードアウトを十分に防止することができない。また、15%より高い場合は、上記防止効果が飽和し、かつ近赤外線吸収層の紫外線吸収効果が不足する場合があり好ましくない。
本発明における基材フィルム(二軸配向積層ポリエステルフィルム)の各層を構成するポリエステル樹脂は、同種、異種のどちらでも構わないが、生産管理の容易さや屑樹脂の回収等の点より、同種で、かつ全ての層ともにポリエチレンテレフタレート樹脂を用いるのが好ましい実施態様である。
本発明者等は、前記の基材フィルムの多層化の効果として発現される紫外線吸収剤のフィルムの厚み方向の偏在度合いを表面IR分析法を用いて評価する方法を確立した。評価方法の詳細は実施例の評価方法において記述をするが、多層化による効果は本評価法により得られる数値で管理するのが好ましい。紫外線吸収剤のフィルムの厚み方向の偏在度合いは、基材フィルムの表層と中間層の厚み比の影響を大きく受けるが、同じ厚み構成比でも、例えば、製膜のフィルター後の溶融樹脂移送管やフラットダイスの樹脂温度等によっても変化する。前記の数値で示される紫外線吸収剤の偏在度としては、0.20以下が好ましい。0.10以下がより好ましく、0.05以下が特に好ましい。
上記方法で得られた2軸配向ポリエステルフィルムは表面に存在する深さ1μm以上、長さ3mm以上のキズが100個/m2以下であることが好ましい。上記キズの個数は30個/m2以下がより好ましく、10個/m2以下であることがさらに好ましい。上記キズの個数をこのような範囲とすれば、光学欠点による問題が生じない。
前記のフィルムのキズの発生を防止するためには、(a)フィルム表面そのものやロール表面、特にフィルムと接触するロール表面にキズの原因となる「欠点」を発生させないこと、(b)接触するロールの表面上でフィルムが縦方向および横方向にずれないようにすることが重要である。上記の「欠点」とは、ロール表面に形成されるキズ、堆積物、付着物、異物などの、フィルムと接触することによりフィルムに微細なキズを発生させるすべての要因を指す。よって、これらの欠点を無くすことで、フィルム表面へのキズの発生を低減できる。上記欠点の発生を防止するためには、例えば、下記に挙げる方法を採用することができる。
上記フィルム製造時に用いるロールの表面粗度をRaで0.1μm以下とする方法や、堆積物、付着物、異物などのキズ発生要因のロール表面への堆積を防止するため、縦延伸工程の予熱入口と冷却ロールにロールクリーナーを設置する方法が挙げられる。
また、上記フィルム製造工程におけるクリーン度をクラス1000以下(1立方フィート当たりの体積中に0.5μm以上の粒子が1000個以下)とする方法があり、特にロール周りはクラス100以下、キャスト工程で反ロール面を冷却するための送風冷却装置についてもクラス100以下のクリーンエアを使用することが好ましい。
さらに、上記フィルム製造前に、研磨材を用いてロール上の欠陥を削り取る作業などによりロールの掃除を行う方法も挙げられる。また、静電気の発生によってフィルムがゴミなどを吸着し、欠点となることを避けるため、フィルムの帯電量が全工程で±1500V以下になるよう除電装置を設ける方法も挙げられる。基材フィルムのキャストから後述するテンターまでの工程はキズが主に発生し易い工程であり、この区間をコンパクトにレイアウトし、通過時間を5分以下にすることも欠点の発生抑制に寄与し得る。
ロールについては、ロール表面に水膜を形成したり、エアフローティングタイプのロールとすることで、フィルムにロール表面の欠点が直接接触しない構造にすることができる。また、フィルムから析出するオリゴマー量を1000ppm以下とすることで、ロール表面への欠点の付着を減少させ、ロール表面の欠点を低減することができる。
さらに、延伸後の巻き取り工程において、フィルムの幅方向の端部側の表面を突起付きのローラで押圧して、その部分に凹凸部を形成すると共に、前記の凹凸部が形成されたフィルムを巻取り機構でロール状に巻き取るよう構成し、さらに前記の突起付きのローラにおける突起を先窄まり状に形成し、前記の突起の頂部に丸みをつけ、その頂面の曲率半径を0.4mm以下に設定することで、フィルムの巻取り装置において、フィルムと欠点が接触しないようにすることもできる。
また、ロール表面上で、フィルムがずれないようにすることもキズ発生防止方法として有効である。例えば下記に挙げる方法が採用可能である。例えば、ロールを小径化すること、サクションロールの使用、静電密着、パートニップの密着装置を使用するなどしてフィルムのロールへの密着力を増大させることにより、長いキズの発生を抑えることができる。特にロールを小径化することは、フィルムのずれ量の細分化にもなり、長いキズの発生防止に寄与し得る。また、キズの多くはロール幅方向の端部に向かうほど、長さおよび頻度が増加し、ロール幅方向の端部においてはキズのない部分を得ることが困難であるため、キズの少ないロール幅方向の中央付近をトリミングすることで、キズの少ないフィルムを得ることが可能となる。
また、縦方向キズまたは横方向キズの発生要因としては、夫々フィルムの縦方向または横方向での、膨張、収縮などの変形も挙げられる。これらのフィルムの変形は、主としてフィルムの温度変化によって生じる。よって、例えば、ロール表面でのフィルムの温度変化を抑制することで、こうした温度によるフィルム変形量を小さくでき、縦方向キズや横方向キズの発生を防止できる。具体的には、ロール1本当たりでのフィルムの温度変化を40℃以下、好ましくは30℃以下、さらに好ましくは20℃以下、さらに一層好ましくは10℃以下、特に好ましくは5℃以下とすることが推奨される。前記のロール表面でのフィルムの温度変化を抑制する方法としては、例えば、ロール間での空中冷却、水槽を通過させる水中冷却などが挙げられる。さらに、ロール本数を多くすることにより、1本当たりのロール表面でのフィルムの温度変化を低減できる。好ましくは、縦延伸工程でのロール数を10本以上とするのがよい。
また、複数のロールの相対的な速度の関係を、フィルムの温度や張力による変形量に対して最も近い速度プロファイルに設定することでフィルムの縦方向のズレを低減することができる。さらに、後述する接着性改質樹脂層形成用の塗布液の塗布工程において、乾燥条件を、ドライヤー区間の初期で乾燥を完了し、出口にかけて冷却することにより、ドライヤー出口でのフィルム温度を40℃以下として、温度変化によるフィルムのずれを低減することもできる。
また、フィルム走行時の張力が低すぎると把持力が下がってずれが発生し、高すぎても応力変形が大きくなってずれが発生するため、最適な張力範囲である4.9〜29.4MPaになるように駆動ロール速度と張力調整手段によって調節することが好ましい。また、製造時の使用温度におけるフィルムとロール間の摩擦係数を0.2以上とすることでロール表面でのフィルムのずれを抑制することができる。
さらに、フリーロールについては特殊ベアリングを採用し、19.6N以下の回転抵抗とすることが好ましい。駆動ロールについては回転斑を0.01%以下に制御するのが好ましい。
上記の基材フィルムの厚みは限定なく任意に設定できるが、0.038〜0.188mmが好ましい範囲である。0.038mm未満では、近赤外線吸収フィルムの取り扱い性が悪化するので好ましくない。逆に、0.188mmを超えた場合は、近赤外線吸収フィルムの取り扱い性やプラズマディスプレイ等の被貼着体に貼着する時の作業性が悪化するので好ましくない。また、市場の薄膜化要求にも対応できない。
本発明においては、上記基材フィルムの近赤外線吸収層の反対面に、反射防止機能を有する表面層を積層することが好ましい実施態様である。反射防止機能とは、表面反射を防ぎ、光線透過率を上げると同時に「ギラツキ」を防止する機能を指す。前記の反射防止機能を付与する方法は限定させず任意に選択できるが、例えば、基材の表面に屈折率の異なる層を積層し、前記の層の界面における反射光の干渉を利用して低減する方法が好適である。
前記の方法の反射防止膜を形成する方法として、大きくは下記の2方法が挙げられる。その一つの方法は、基材の表面に、蒸着法やスパッタリング法により反射防止膜を形成する方法であり、他の一つの方法は、基材の表面に、反射防止用塗布液を塗布し乾燥させることにより反射防止膜を形成する方法である。一般論としては、反射防止特性では前者が、経済性では後者が優れていると言われているが、本発明においては、どちらの方法を用いても構わない。また、前記の反射防止膜の材質も限定なく、無機質、有機質あるいは無機/有機のハイブリッドのいずれであっても構わない。
本発明においては、上記の反射防止膜を形成する時に、傷付き防止性を付与するハード加工、帯電防止性を付与する帯電防止加工、および指紋、皮脂、汗、化粧品等の汚れの付着を防止し、付着しても容易に拭き取れる機能を付与する防汚加工等、近赤外線吸収フィルターとして好適な機能を付与する機能層を複合することが好ましい実施態様である。特に、ハード加工は市場要求が強く、反射防止機能を有する表面の鉛筆硬度が1H以上であることが好ましい実施態様である。前記のハード加工の方法も限定されず任意であるが、多官能性モノマーを主成分とした重合体よりなることが好ましい実施態様である。
上記の反射防止機能を有した表面層を形成することにより、本発明の近赤外線吸収フィルムを実際に使用する時に外光の反射が抑制され、例えばプラズマディスプレイパネル等の表示装置の光学フィルターとして用いた場合に、画像の表面の視認性が向上する機能が付与されている。一方、前記の反射防止機能を付与すると、前記の機能層との界面での光の干渉作用により発現する虹彩状色彩(干渉縞)の影響がより顕著になり、その対策が求められている。前記の虹彩状色彩を抑制する方法として、界面の屈折率差を小さくするために両界面の中間屈折率の中間層を設ける方法が有効であることが知られている。本発明においては、前記の中間層として、水性ポリエステル樹脂と、水溶性のチタンキレート化合物、水溶性のチタンアシレート化合物、水溶性のジルコニウムキレート化合物、または水溶性のジルコニウムアシレート化合物の少なくとも1種とを主たる構成成分とした易接着層(以下、干渉縞抑制易接着層と称する)を積層することにより、上記虹彩状色彩の発生を抑制し、かつ反射防止層と基材フィルムとの接着性が向上することができるので好ましい実施態様として推奨される。
前記の干渉縞抑制易接着層を構成する水性ポリエステル樹脂とは、水または水溶性の有機溶剤、例えばアルコール、アルキルセロソルブ、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤を50質量%未満含む水溶液に対して、溶解性または分散性を示すポリエステル樹脂を示す。ポリエステル樹脂に水性を付与するためには、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、エーテル基等の親水性基を導入することが重要であるが、塗膜物性及び密着性の点からスルホン酸基の導入が好ましい。特に、導入するスルホン酸基(例えば、5−スルホイソフタル酸等のスルホン酸基含有多価カルボン酸を用いる)の量は、ポリエステルの全酸成分100モル%中の内、1〜10モル%含有がより好ましい。スルホン酸基が1モル%より少ないとポリエステル自体の水性の発現性に乏しく、水溶性のチタンまたはジルコニウムのキレート化合物またはアシレート化合物との相溶性も低下するため、均一かつ透明な塗膜が得られにくくなる。また、スルホン酸基が10モル%より多いと、密着時の耐湿性が低下しやすくなる。さらに、前記の水性ポリエステルのガラス転移温度は40℃以上が好ましい。
そのため、水性ポリエステルのジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族系を主成分とすることが好ましい。また、グリコール成分として、エチレングリコール、プロパングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等の比較的炭素数の少ないグリコール、またはビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等の芳香族系が好ましい。また、ポリエステル原料としてビフェニル等の剛直な成分、または臭素、イオウ等の屈折率の高い原子を有するジカルボン酸成分またはジオール成分をフィルムの物性が低下しない範囲で使用しても特に問題はない。ポリエステルのガラス転移温度が40℃未満であると、密着時の耐湿性が低下傾向になり、かつポリエステルとしての屈折率も低下するために塗膜の屈折率も低下し、結果として、蛍光灯下での虹彩状色彩の抑制性が低下しやすくなる。
上記干渉縞抑制易接着層を構成するもう一方の主成分は、水溶性のチタンまたはジルコニウムのキレート化合物またはアシレート化合物である。本発明の水溶性とは、水または水溶性の有機溶剤を50質量%未満含む水溶液に対する溶解性を意味する。水溶性のチタンキレート化合物としては、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、イソプロポキシ(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、ジイソプロポキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、ジ−n−ブトキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、ヒドロキシビス(ラクタト)チタン、ヒドロキシビス(ラクタト)チタンのアンモニウム塩、チタンベロキソクエン酸アンモニウム塩等が挙げられる。また、水溶性のチタンアシレート化合物としては、オキソチタンビス(モノアンモニウムオキサレート)等、また水溶性のジルコニウム化合物としては、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムアセテート等が挙げられる。
本発明においては、上記の干渉縞抑制易接着層を構成する上記両成分の配合比は、水性ポリエステル樹脂に対する水溶性のチタンキレート化合物、水溶性のチタンアシレート化合物、水溶性のジルコニウムキレート化合物、または水溶性のジルコニウムアシレート化合物の少なくとも1種の混合比(質量比)として、90/10〜5/95であることが好ましい実施態様である。85/15〜10/90がより好ましく、80/20〜15/85が特に好ましい。水性ポリエステル樹脂が10より少ないと、基材フィルムとの密着性が低下し、かつ前記の接着層の形成を基材フィルムの製膜工程の延伸前あるいは一軸延伸後に行う、いわゆるインラインコーティング法で実施した場合に、塗膜としての延伸性が低下し、延伸時に均一な膜にならないため、光学用として重要な透明性が低下する。また、機能性付与層との接着性も問題となる。また、水性ポリエステル樹脂が95より多いと、水溶性のチタンまたはジルコニウムのキレート化合物またはアシレート化合物による架橋が乏しくなるとともに屈折率も低下する。その結果、易接着層の耐湿性が低下し、かつ虹彩状色彩の抑制効果も低下しやすくなる。
本発明の干渉縞抑制易接着層には、前記の水性ポリエステル樹脂の効果に影響を与えない範囲で、アルキッド樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂およびポリビニルアルコール等のビニル樹脂等を併用してもかまわない。また、架橋剤の併用も上記効果に悪影響を与えない範囲では特に限定されない。使用できる架橋剤としては、尿素、メラミン、ベンゾグアナミンなどとホルムアルデヒドとの付加物、これらの付加物と炭素原子数が1〜6のアルコールからなるアルキルエーテル化合物などのアミノ樹脂、多官能性エポキシ化合物、多官能性イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、多官能性アジリジン化合物、オキサゾリン化合物、などが挙げられる。
本発明においては、上記のごとく基材フィルムの両面に機能性を有した層が積層される。したがって、前記の基材フィルムの両面は易接着層(上記干渉縞抑制異接着層との区別のため、汎用易接着層という)を設けたものであることが好ましい実施態様である。上記の干渉縞抑制易接着層を形成するのも一方法であるが限定はされない。この汎用易接着層を構成する樹脂としては、例えば共重合ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸グラフトポリエステル樹脂、アクリルグラフトポリエステル樹脂などが挙げられ、少なくとも1つ以上を使用することが好ましい。なかでも、共重合ポリエステル系樹脂及びポリウレタン系樹脂からなる樹脂、スチレン−マレイン酸グラフトポリエステル樹脂が、優れた接着性を有しているため、特に好ましい。
上記汎用易接着層形成に用いる塗布液調整について、以下に共重合ポリエステル系樹脂及びポリウレタン系樹脂からなる塗布液の一例について説明する。
本発明の汎用易接着層に用いる共重合ポリエステル系樹脂とは、分岐したグリコール成分を構成成分とすることが好ましい。前記の分岐したグリコール成分とは、例えば、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−イソプロピル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、2、2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、2、2−ジ−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、及び2、2−ジ−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。上記の分岐したグリコール成分は全グリコール成分の中に、好ましくは10モル%以上の割合で、さらに好ましくは20モル%以上の割合で含有される。上記化合物以外のグリコール成分としてはエチレングリコールが最も好ましい。少量であれば、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオールまたは1,4シクロヘキサンジメタノールなどを用いても良い。
上記の共重合ポリエステル系樹脂の構成成分であるジカルボン酸成分としては、テレフタル酸およびイソフタル酸が最も好ましい。少量であれば、他のジカルボン酸、例えば、ジフェニルカルボン酸、2,6−ナルタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸を加えて共重合させてもよい。上記ジカルボン酸成分の他に、水分散性を付与させるため、5−スルホイソフタル酸を1〜10モル%の範囲で使用するのが好ましく、例えばスルホテレフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、4−スルホナフタレンイソフタル酸−2,7−ジカルボン酸および5−(4−スルフォフェノキシ)イソフタル酸及びその塩類等を挙げることができる。
上記汎用易接着層に用いるポリウレタン樹脂とは、例えば、ブロック型イソシアネート基を含有する樹脂であって、末端イソシアネート基を親水性基で封鎖(以下ブロックと言う)した、熱反応型の水溶性ウレタンなどが挙げられる。上記イソシアネート基のブロック化剤としては、重亜硫酸塩類及びスルホン酸基を含有したフェノール類、アルコール類、ラクタム類オキシム類及び活性メチレン化合物類等が挙げられる。ブロック化されたイソシアネート基はウレタンプレポリマーを親水化あるいは水溶化する。フィルム製造時の乾燥あるいは熱セット過程で、上記樹脂に熱エネルギーが与えられると、ブロック化剤がイソシアネート基からはずれるため、上記樹脂は自己架橋した編み目に混合した水分散性共重合ポリエステル樹脂を固定化するとともに上記樹脂の末端基等とも反応する。塗布液調製中の樹脂は親水性であるため耐水性が悪いが、塗布、乾燥、熱セットして熱反応が完了すると、ウレタン樹脂の親水基すなわちブロック化剤がはずれるため、耐水性が良好な塗膜が得られる。上記ブロック化剤の内、熱処理温度、熱処理時間が適当で、工業的に広く用いられるものとしては重亜硫酸塩類が最も好ましい。
上記樹脂において使用される、ウレタンプレポリマーの化学組成としては(1)分子内に2個以上の活性水素原子を有する、有機ポリイソシアネート、あるいは分子内にとも2とも2個の活性水素原子を有する分子量が200〜20,000の化合物、(2)分子内に2個以上のイソシアネート基を有する、有機ポリイソシアネート、あるいは、(3)分子内に少なくとも2個活性水素原子を有する鎖伸長剤を反応せしめて得られる、末端イソシアネート基を有する化合物である。
上記(1)の化合物として一般に知られているのは、末端又は分子中に2個以上のヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基あるいはメルカプト基を含むものであり、特に好ましい化合物としては、ポリエーテルポリオールおよびポリエーテルエステルポリオール等が挙げられる。ポリエーテルポリオールとしては、例えばエチレンオキシド及び、プロピレンオキシド等アルキレンオキシド類、あるいはスチレンオキシドおよびエピクロルヒドリン等を重合した化合物、あるいはそれらのランダム重合、ブロック重合あるいは多価アルコールへの付加重合を行って得られた化合物がある。
ポリエステルポリオール及びポリエーテルエステルポリオールとしては、主として直鎖状あるいは分岐状の化合物が挙げられる。コハク酸、アジピン酸、フタル酸及び無水マレイン酸等の多価の飽和あるいは不飽和カルボン酸、あるいは前記のカルボン酸無水物等と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール及びトリメチロールプロパン等の多価の飽和及び不飽和のアルコール類、比較的低分子量のポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール等のポリアルキレンエーテルグリコール類、あるいはそれらアルコール類の混合物とを縮合することにより得ることができる。さらにポリエステルポリオールとしてはラクトン及びヒドロキシ酸から得られるポリエステル類、またポリエーテルエステルポリオールとしては、あらかじめ製造されたポリエステル類にエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド等を付加せしめたポリエーテルエステル類も使用することができる。
上記(2)の有機ポリイソシアネートとしては、トルイレンジイソシアネートの異性体類、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、キシリレンジイソシアネート等の芳香族脂肪族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート及び4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、および2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、あるいはこれらの化合物を単一あるいは複数でトリメチロールプロパン等とあらかじめ付加させたポリイソシアネート類が挙げられる。
上記(3)の少なくとも2個の活性水素を有する鎖伸長剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、及び1,6−ヘキサンジオール等のグリコール類、グリセリン、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトール等の多価アルコール類、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、およびピペラジン等のジアミン類、モノエタノールアミンおよびジエタノールアミン等のアミノアルコール類、チオジエチレングルコール等のチオジグリコール類、あるいは水が挙げられる。
上記(3)のウレタンポリマーを合成するには通常、上記鎖伸長剤を用いた一段式あるいは多段式イソシアネート重付加方法により、150℃以下、好ましくは70〜120℃の温度において、5分ないし数時間反応させる。活性水素原子に対するイソシアネート基の比は、1以上であれば自由に選べるが、得られるウレタンプレポリマー中に遊離のイソシアネート基が残存することが重要な点である。さらに遊離のイソシアネート基の含有量は10質量%以下であればよいが、ブロック化された後のウレタンポリマー水溶液の安定性を考慮すると、7質量%以下であるのが好ましい。
得られた上記ウレタンプレポリマーは、好ましくは重亜硫酸塩を用いてブロック化を行う。重亜硫酸塩水溶液と混合し、約5分〜1時間、よく攪拌しながら反応を進行させる。反応温度は60℃以下とするのが好ましい。その後、水で希釈して適当な濃度にして、熱反応型水溶性ウレタン組成物とする。前記の組成物は使用する際、適当な濃度および粘度に調製するが、通常80〜200℃前後に加熱すると、ブロック剤の重亜硫酸塩が解離し、活性なイソシアネート基が再生するために、プレポリマーの分子内あるいは分子間で起こる重付加反応によってポリウレタン重合体が生成する、あるいは他の官能基への付加を起こす性質を有するようになる。
上記のブロック型イソシアネート基を含有する樹脂(B)の1例としては、第一工業製薬(株)製の商品名エラストロンが代表的に例示される。エラストロンは、重亜硫酸ソーダによってイソシアネート基をブロックしたものであり、分子末端に強力な親水性を有する、カルバモイルスルホネート基が存在するため、水溶性となっている。
本発明で使用される、上記の分岐したグリコール成分を含有する共重合ポリエステル樹脂(A)および上記のブロック型イソシアネート基を含有する樹脂(B)を混合して塗布液を調製する場合、樹脂(A)と樹脂(B)の質量比は(A):(B)=90:10〜10:90が好ましく、さらに好ましくは(A):(B)=80:20〜20:80の範囲である。固形分質量に対する上記樹脂(A)の割合が10質量%未満では、基材フィルムへの塗布性が不適で、表面層と前記のフィルムとの間の接着性が不十分となる。10質量%未満の場合には、UV硬化タイプのハードコートにおいては実用性のある接着性が得られない。
本発明で使用される水性塗布液には、熱架橋反応を促進させるため、触媒を添加しても良く、例えば無機物質、塩類、有機物質、アルカリ性物質、酸性物質および含金属有機化合物等、種々の化学物質が用いられる。また水溶液のpHを調節するために、アルカリ性物質あるいは酸性物質を添加してもよい。
上記水性塗布液を基材フィルム表面に塗布する際には、前記のフィルムへの濡れ性を上げ、塗布液を均一に塗布するために、公知のアニオン性活性剤およびノニオン性の界面活性剤を必要量添加して用いることができる。塗布液に用いる溶剤は、水の他にエタノール、イソプロピルアルコールおよびベンジルアルコール等のアルコール類を、全塗布液に占める割合が50質量%未満となるまで混合してもよい。さらに、10質量%未満であれば、アルコール類以外の有機溶剤を溶解可能な範囲で混合してもよい。ただし、塗布液中、アルコール類とその他の有機溶剤との合計は、50質量%未満とする。有機溶剤の添加量が50質量%未満であれば、塗布乾燥時に乾燥性が向上するとともに、水のみの場合と比較して塗布膜の外観向上の効果がある。50質量%を越えると、溶剤の蒸発速度が速く塗工中に塗布液の濃度変化が起こり、粘度が上昇して塗工性が低下するために、塗布膜の外観不良を起こす恐れがあり、さらには火災などの危険性も考えられる。塗布液の溶液粘度は1.0PaS(パスカルセック)以下が好ましい。1.0PaS(パスカルセック)以上ではスジ状の塗布厚み斑が発生しやすい。
本発明では、透明性の点から、易滑性付与を目的とした粒子を、基材フィルム中に含有させずに、汎用易接着層に含有させた構成とすることが好ましい。すなわち、上記水性塗布液に、粒子を添加しフィルム表面に適度な突起を形成するのが好ましい。かかる粒子の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子を挙げることができる。これらの粒子の中でも、シリカ粒子がポリエステル樹脂と屈折率が比較的近く高い透明性が得やすいため最も好適である。
上記水性塗布液に添加する粒子の平均粒径は、通常0.01〜1.0μm、好ましくは0.01〜0.5μm以下、さらに好ましくは0.01〜0.1μm以下である。平均粒径が1.0μmを超えるとフィルム表面が粗面化し、フィルムの透明性が低下する傾向がある。また、上記塗液中に含まれる粒子含有量は、通常、塗布、乾燥後で塗布膜の粒子含有量が60質量%以下、好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下になるよう添加する。塗布膜の粒子含有量が60質量%を超えるとフィルムの易接着性が損なわれることがある。
フィルム中に、上記粒子を2種類以上配合してもよく、同種の粒子で粒径の異なるものを配合してもよい。いずれにしても、粒子全体の平均粒径、および合計の含有量が上記の範囲を満足することが好ましい。上記塗布液を塗布する際には塗布液中の粒子の粗大凝集物を除去するために塗布直前に塗布液が精密濾過されるように濾材を配置することが重要である。本発明で用いられる塗布液を精密濾過するための濾材は、濾過粒子サイズが25μm以下(初期濾過効率95%)の濾材を用いることが好ましい。25μm以上では粗大凝集物が十分除去することが困難であり、除去できなかった多くの粗大凝集物は塗布、乾燥後、一軸延伸、あるいは二軸延伸した際に易接着層に粒子の粗大凝集物が広がって100μm以上の凝集物として認識される場合がある。このような塗布層中の凝集物は、光学欠点の発生原因となる。塗布液を精密濾過するための濾材のタイプは上記性能を有していれば特に限定されないが例えばフィラメント型、フェルト型、メッシュ型が挙げられる。塗布液を精密濾過するための濾材の材質は上記性能を有しており、且つ塗布液に悪影響を及ばさなければ特に限定はされないが例えばステンレス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン等が挙げられる。
上記水性塗布液の組成物には、その効果を消失しない限りにおいて帯電防止剤、顔料、有機フィラーおよび潤滑剤等の種々の添加剤を混合してもよい。さらに、塗布液が水性であるため、その寄与効果を消失しない限りにおいて、性能向上のために、他の水溶性樹脂、水分散性樹脂およびエマルジョン等を塗布液に添加してもよい。
上記汎用易接着層を塗布するには、公知の任意の方法で行うことができる。例えばリバースロール・コート法、グラビア・コート法、キス・コート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法およびカーテン・コート法などが挙げられ、これらの方法を単独であるいは組み合わせて行うことができる。
上記塗布液を塗布する工程は、通常の塗布工程、すなわち二軸延伸し熱固定した基材フィルムに塗布する工程でもよいが、前記のフィルムの製造工程中に塗布するのが好ましい。さらに好ましくは結晶配向が完了する前の基材フィルムに塗布する。水溶液中の固形分濃度は通常30質量%以下であり、好ましくは10質量%以下である。前記の水性塗布液は、走行しているフィルム1m2あたり0.01〜5g、好ましくは0.2〜4gが塗布されるように塗工する。前記の水性塗布液を塗布したフィルムは、延伸および熱固定のためにテンターに導かれ、そこで加熱されて、熱架橋反応により安定な被膜を形成した積層ポリエステルフィルムとなる。近赤外線吸収層やハードコート層との密着性を十分に得るためには、最終塗布量がフィルム1m2あたり0.01g/m2以上であって、100℃で1分間以上の熱処理を行うことが重要である。塗布液を塗布する際のクリーン度は、埃の付着を少なくする点から、クラス1000以下が好ましい。
本発明においては、請求項9に記載のごとく、前記の近赤外線吸収フィルムの近赤外線吸収層の表面に、透明粘着剤よりなる粘着層を積層することにより近赤外線吸収フィルターが形成される。前記の粘着層を積層することにより、本発明の近赤外線吸収フィルムを各種装置、部材への固定や機能性シート等との複合化が可能となる。例えば、近赤外線吸収フィルターとしての上記の光学特性を有する積層体を、プラズマディスプレイパネルの表面に直に貼着したり、電磁波吸収機能を有する透光性シートに貼着したりして、固定することができる。前記の透明粘着剤は限定なく公知のものが用いられるが、ブチルアクリレート等のアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、SEBS、SBS等の熱可塑性エラストマー樹脂をベースとしたTPE系粘着剤等が挙げられる。
本発明においては、前述のごとく前記の粘着層は近赤外線吸収層表面に形成することが重要である。前記の構成により粘着層を介して、例えばプラズマディスプレイ等に貼着した場合に紫外線吸収層が近赤外線吸収層に対して外光側に設定できるので、特許文献12において開示されている紫外線吸収機能を有する層が近赤外線吸収機能を有する層の反外光側に位置しており、実際の使用時に問題となる外光中の紫外線による近赤外線吸収色素の劣化を抑制する効果は発現されないという課題が改善でき、外光による近赤外線吸収色素の耐候性を向上させるという市場要求を満たすものである。
本発明の近赤外線吸収フィルターは、上記粘着層を含めた積層体の総厚みは限定なく、市場要求に従い任意に設定できるが、0.05〜0.2mmが好ましい範囲である。0.05mm未満では、近赤外線吸収フィルターの取り扱い性が悪化するので好ましくない。逆に、0.2mmを超えた場合は、前記の積層体の取り扱い性やプラズマディスプレイ等に貼着する時の作業性が悪化するので好ましくない。また、市場の薄膜化要求にも対応できない。すなわち、近赤外線吸収フィルターの取り扱い性や、プラズマディスプレイ等に貼着する時の作業性の点から、近赤外線吸収フィルターの薄膜化が市場より要望されていたが、従来技術では、2枚以上の機能性フィルムやシートを貼り合わせることにより製造されていたので、総厚みは0.2mmを超えていたものがほとんどであった。本発明では、上記の構成をとることにより高機能性を維持したまま、近赤外線吸収フィルターの薄膜化に対する市場要求に対応することができる。また、従来技術で必要であった、貼り合わせ工程が省略できるので経済的にも優位である。
本発明における基材フィルムへの各機能を有した層の積層は、粘着層の積層を最後に実施することを除けば、その塗工順序は任意である。また、前記の塗工は各機能層ごとに逐次に行っても良いし、多層コーターを用いて同時に実施しても構わない。
本発明においては、例えば、前記の構成の近赤外線吸収フィルターを、粘着層を介してプラズマディスプレイに直接貼着することが好ましい実施態様である。前記の方法により高機能で薄膜化された近赤外線吸収フィルターをプラズマディスプレイに貼着しその機能を発現させることができる。
また、本発明においては、前記の構成の近赤外線吸収フィルターを、粘着層を介して電磁波吸収機能を有した透光性シートに積層することが、別の好ましい実施態様である。前記の実施態様により近赤外線吸収フィルムに電磁波吸収機能を付与し、例えば、プラズマディスプレイ等に組み込むことができる。本発明における電磁波吸収機能を有した透光性シートは、透光性と電磁波吸収機能を合わせて有しておれば限定はされないが、以下のようなものが挙げられる。
(1)金属繊維や金属被覆有機繊維よりなる導電性メッシュ
(2)透明フィルムあるいはシートに金属膜を積層した後に、フォトリソグラフィー等の手法で格子状やパンチングメタル状などの形状にエッジング加工したエッジング法導電メッシュ複合シート
(3)透明フィルムあるいはシートに導電塗料をパターン印刷した導電印刷メッシュ複合シート
(4)透明フィルムあるいはシートに銀薄膜やITO薄膜等の透明導電層を積層した透明導電体
本発明においては、上記粘着層を形成することなく、基材フィルムのそれぞれ片面に反射防止層と近赤外線吸収層を積層した構成として近赤外線吸収フィルムとして使用することも可能である。前記の方法で使用する場合のプラズマディスプレイパネル等の被貼着体への近赤外線吸収フィルムの固定方法に限定はないが、接着剤や粘着剤を用いて行うのが好ましい実施態様である。この場合、近赤外線吸収層を被貼着体側として固定して使用することが重要である。前記の固定法により、各機能層の機能を発現することができる。
以下、実施例をもとに本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
1.光線透過率
分光光度計(日立製作所製、U−3500型)を用い、近赤外線吸収層側から光が透過するようにして、波長200〜1100nmにおける透過率を連続的に測定し、透過率のデータは10nm毎に取り込んだ。なお、透過率の測定の際に、空気層を標準として測定した。紫外線透過率は380nmにおける透過率を、可視光領域の透過率は、450〜700nmにおける透過率の平均値を、ネオン光領域の透過率は、570〜600nmの透過率の平均値を、近赤外線領域の透過率は、900〜1100nmの透過率の平均値を求めた。
2.色調
色差計(日本電色工業製、ZE−2000)を用い、近赤外線吸収層側に光を照射するようにして、Lab表色系のa値、b値を、標準光としてD65光源、10度視野角で測定した。
3.経時安定性
フィルムを、温度60℃、湿度95%RH雰囲気中で500時間放置した後、上記記載の分光特性及び色調を測定した。波長800〜1100nmにおける近赤外線領域の透過率の経時処理前後の変化量を下記式(1)より求め、以下の判断基準でランク付けを行った。
◎:透過率の変化が5%未満
○:透過率の変化が5%以上10%未満
△:透過率の変化が10%以上20%未満
×:透過率の変化が20%以上
変化量(%)=(|処理前の透過率−処理後の透過率|/処理前の透過率)×100
・・・(1)
また、色調の経時処理前後での下記式(2)の変化量より求め、以下の判断基準でランク付けを行った。
◎:透過率の変化が1未満
○:透過率の変化が1以上2未満
△:透過率の変化が2以上4未満
×:透過率の変化が4以上
変化量 = ((処理前a値−処理後a値)2+(処理前b値−処理後b値)2)1/2
・・・(2)
4.耐候性
試験試料を以下の条件で、促進耐候性試験を行い評価した。紫外線オートフェードメーター(スガ試験機製、FAL−AU−H−BR)による照射試験を、ブラックパネル温度63℃で192時間行い、前記の試験前後の試験試料の近赤外線領域の極大吸収波長での透過率を測定した。試験前の透過率をTと試験後の透過率をT1とした。前記の測定値から、下記式(3)で近赤外線吸収能残存率R(%)を求めた。前記の評価は、粘着層を介して、厚さ2mmのSUS板に試料を貼着し、表面層側より紫外線を照射する方法で行った。
R(%)=(T/T1)×100 ・・・(3)
5.反射防止層の表面層の反射率
分光光度計(日立製作所製、U−3500型)を用い、JIS−R−3106に準じて、表面層側の5°正反射を測定し、波長380〜700nmでの最小の反射率を求めた。表面層を積層しない比較例のサンプルについては基材フィルムの表面の測定を行った。
6.反射防止層の表面硬度
反射防止機能を有する表面層の表面について、鉛筆引掻き硬度で評価した。サンプルを温度25℃、相対湿度60%RHの条件下で2時間調湿した後評価した。鉛筆引掻き硬度はJIS−S−6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS−K−5400に準じて実施した。評価結果の鉛筆硬度は9.8Nの荷重にて傷が全く認められない鉛筆の硬度である。表面層を積層しない比較例のサンプルについては基材フィルムの表面の測定を行った。
7.近赤外線吸収色素を含有する近赤外線吸収層の塗膜外観
近赤外線吸収層を積層した積層フィルムを白色フィルム上に置き、3波長の蛍光灯下で観察して評価を行った。
(7−1)微小欠点
微小欠点は、100m2あたりの300μm以上の大きさの欠点の個数を計測し、以下の判断基準でランク付けを行った。
◎:微小欠点が1個未満
○:微小欠点が1個以上5個未満
△:微小欠点が5個以上10個未満
×:微小欠点が10個以上
(7−2)塗工不良
塗工ムラ、スジ等の塗工不良を以下の判断基準でランク付けを行った。
◎:近赤外線吸収フィルムを動かしながら観察すると若干外観不良が見られない
○:近赤外線吸収フィルムを動かしながら観察すると若干外観不良が判る
△:近赤外線吸収フィルムを動かしながら観察すると外観不良が判る
×:静止状態でも外観不良が判る
8.基材フィルムに対する反射防止層および近赤外線吸収層の接着性
JIS−K5400の8.5.1記載に準じた試験方法で接着性を求めた。すなわち、それぞれ、両表面より基材フィルムに達する100個の升目状の切り傷を隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて付け、セロハン粘着テープ(ニチバン製、405番;24mm幅)を升目状の切り傷面に貼り付け、気泡や密着不良な部分が残らないようにプラスティック片でこすって完全に付着させた後、垂直に引き剥がして目視により、下記式(4)から接着性を求めた。なお、1つの升目で部分的に剥がれているものは、剥がれた升目とした。
接着性(%)=(1−剥がれた升目の数/評価した升目の数)×100 ・・・(4)
9.干渉縞
近赤外線吸収フィルターを10×15cmのサイズにカットし測定試料とした。前記の測定用試料を黒色光沢紙に粘着層を介して貼着した。この貼着体のハード近赤外線吸収フィルター面を上面にして、ナショナル パルック 3波長形昼白色(F.L 15EX−N 15W)を光源として斜め上方より反射光を目視で観察した。目視で観察した結果を、下記の基準でランク分けをする。なお、観察は前記の評価に精通した5名で行ない、最も多いランクを評価ランクとする。仮に、2つのランクで同数となった場合には、3つに分かれたランクの中心を採用した。例えば、◎と○が各2名で△が1名の場合は○を、◎が1名で○と△が各2名の場合には○を、◎と△が各2名で○が1名の場合には○を、それぞれ採用する。
◎:あらゆる角度からの観察でも虹彩状色彩が見られない
○:ある角度によっては僅かに虹彩状色彩が見られる
△:僅かに虹彩状色彩が観察される
×:はっきりとした虹彩状色彩が観察される
10.基材フィルムの表面傷評価
250mm×250mmのフィルム片16枚について評価した。この評価は製膜開始から24時間後のものについて評価した。投光器として20W×2灯の蛍光灯をXYテーブル下方400mmに配置し、XYテーブル上に設けたスリット幅10mmのマスク上に測定対象の試験片を載置する。投光器と受光器を結ぶ線と、試験片表面の鉛直方向とのなす角度を12°となるよう光を入射すると、入射位置の試験片に傷が存在する場合に、その部分が光り輝く。その部分の光量をXYテーブル上方500mmに配置したCCDイメージセンサカメラで電気信号に変換し、その電気信号を増幅し、微分してスレッシュホールド(しきい値)レベルとコンパレータで比較して、光学欠点の検出信号を出力する。
また、CCDイメージセンサカメラを用いて、傷の画像を入力し、入力された画像のビデオ信号を所定の手順により解析して、光学欠点の大きさを計測し、50μm以上の欠点の位置を表示する。前記の方法による光学欠点の検出は、試験片の両面について行う。上記方法において検出される光学欠点部分から、傷による欠点を選出する。上記方法で傷と判定された部分が中央付近にくるように試料を適当な大きさに裁断し、形状観察用試験片を採取した。前記の試験片について、3次元形状測定装置(マイクロマップ製、TYPE550)を用いて、試験片の欠点を検出した表面に対して垂直方向から観察し、傷の大きさを測定する。
なお、試験片、すなわちフィルムの表面に対して垂直方向から観察した時に、50μm以内に近接する傷の凹凸は同一の傷とした。これらの傷の最外部を覆う最小面積の長方形の長さおよび幅を、傷の長さおよび幅とする。これらの傷の深さ(傷の最も高いところと最も低いところの高さの差)および長さを計測する。この結果より、深さ1μm以上且つ長さ3mm以上の傷の個数(個/m2)を求め、以下の基準で判定した。
◎:30個/m2以下
○:31〜50個/m2
△:51〜100個/m2
×:101個/m2以上
11.基材フィルム表面の異物評価
上記傷評価において記載した方法で検出した光学欠点の中より、異物起因の欠点を選別し、前記の部分の試験片をサンプリングした。前記の試験片の欠点が検出された面にAl蒸着を行い、非接触式三次元粗さ計(マイクロマップ製、TYPE550)でフィルム面に対して垂直方向から観察した。最大径が20μm以上の異物の個数(個/m2)を求め、以下の基準で判定した。
◎:2個/m2以下
○:3〜5個/m2
△:6〜10個/m2
×:11個/m2以上
12.基材フィルム中の厚み方向の紫外線吸収剤の偏在性評価
FT−IRにより基材ポリエステルフィルム(B)の表層のポリエステルの特性吸収に対する紫外線吸収剤の特性吸収の吸光度比(X)とフィルム中央部の同様にして求めた吸光度比(Y)を下記方法で測定し、X/Yで表示した。値が小さいほど紫外線吸収剤の偏在度が高くなる。
X: ブランク試料(UV吸収剤を含有しないポリエチレンテレフタレートフィルム)の表層のIRスペクトル(I)と本発明の試料の表層IRスペクトル(II)を測定
する。(I)と(II)の差スペクトルをとり、1700〜1800cm-1での吸光度(
紫外線吸収剤の特徴的な吸収)と(II)のIRスペクトルから得られた1505cm-1での吸収(ポリエチレンテレフタレートの吸収)との吸光度比(1700〜1800cm-1/1505cm-1)をとりXを求めた。
Y: 本発明の試料を厚み方向に全厚みの50%を削りとり、むき出しになった面(フィルム中央部)について、上記と同様の測定を行い、Yを求めた。
IRスペクトルは下記方法で測定した。
FT−IR装置: Digilab製 FTS-7000e
1回反射ATR装置: Thermo Spectra-Tech製 Thunderdome
IRE: Ge
入射角 : 45°
分解能 : 8cm-1
積算回数: 128回
実施例1
1.基材フィルムの製造
(1)紫外線吸収剤含有マスターバッチの調製
乾燥させた、環状イミノエステル系紫外線吸収剤(サイテック社製、CYASORB UV−3638;2,2´−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン))10質量部、粒子を含有しないポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂(東洋紡績製、ME−553)90質量部を混合し、混練押出機を用い、マスターバッチを作製した。この時の押出温度は285℃であり、押出時間は7分であった。
(2)汎用易接着層形成用の塗布液の調製
汎用易接着層形成用の塗布液を以下の方法に従って調製した。ジメチルテレフタレート(95質量部)、ジメチルイソフタレート(95質量部)、エチレングリコール(35質量部)、ネオペンチルグリコール(145質量部)、酢酸亜鉛(0.1質量部)および三酸化アンチモン(0.1質量部)を反応容器に仕込み、180℃で3時間かけてエステル交換反応を行った。次に、5−ナトリウムスルホイソフタル酸(6.0質量部)を添加し、240℃で1時間かけてエステル化反応を行った後、重縮合反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂の30質量%水分散液を6.7質量部、重亜硫酸ソーダでブロックしたイソシアネート基を含有する自己架橋型ポリウレタン樹脂の20質量%水溶液(第一工業製薬製、エラストロンH−3)を40質量部、エラストロン用触媒(第一工業製薬製、Cat64)を0.5質量部、水を47.8質量部およびイソプロピルアルコールを5質量部、それぞれ混合し、さらにアニオン性界面活性剤を塗布液に対し1質量%、コロイダルシリカ粒子(日産化学工業製、スノーテックスOL)を塗布液の固形分に対し5質量%添加し塗布液とした。
(3)基材フィルムの製膜
固有粘度が0.62dl/gのPET樹脂の粒子を含有しないペレット(東洋紡績製、ME−553)90質量部と、前記の紫外線吸収剤含有マスターバッチ10質量部とを135℃で6時間減圧乾燥(133.32Pa:1Torr)した後、押出機に供給した。押出機の溶融部、混練部、メルトライン、ギアポンプ、フィルターまでの樹脂温度は280℃、その後のメルトライン及びダイスでは樹脂温度を275℃とした。また、前記のフィルターは、ステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度:10μm以上の粒子を95%カット)を用いた。
ダイスのスリット部よりシート状に溶融押出しした樹脂を、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラム(ロール径400φ、Ra0.1μm以下)に巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この時の吐出量は48kg/hrであり、得られた未延伸シートは幅300mm、厚さ1400μmであった。次に、上記キャストフィルムを、加熱されたロール群および赤外線ヒーターを用いて100℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向(走行方向)に3.5倍延伸して一軸配向フィルムを得た。前記のフィルム製造時に用いる全ロールに関し、ロールの表面粗度をRaで0.1μm以下となるように管理し、縦延伸工程の予熱入口と冷却ロールにロールクリーナーを設置した。縦延伸工程のロール径は150mmであり、サクションロール、静電密着、パートニップの密着装置を採用してフィルムをロールへ密着させた。
その後、汎用易接着層形成用の塗布液を濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)25μmのフェルト型ポリプロピレン製濾材で精密濾過し、リバースロール法で両面に塗布、乾燥した。塗布後、引き続いて、フィルムの端部をクリップで把持して130℃に加熱された熱風ゾーンに導き、乾燥後、幅方向に4.0倍に延伸した。さらに、230℃にて5秒間熱処理し、この熱処理工程中で幅方向に3%の弛緩処理を行い、基材フィルムを得た。前記のフィルムの厚さ100μmであり、この時の汎用易接着層の塗布量は0.01g/m2であった。得られたフィルムの波長380nmの透過率を表1に示す。得られた基材フィルムは優れた紫外線吸収性を有していた。また、長時間生産しても表面傷や表面異物等の表面欠点の発生(評価法として記載した方法で評価)が抑制されており、高品質な積層フィルムが安定して生産できた。
2.反射防止層(表面層)の形成
前記の基材フィルムに紫外線硬化型ハードコート塗料(大日精化製、セイカビームEXF−01B)をリバースコーティング法にて乾燥後の膜厚が5μmになるように塗工した。次いで、溶剤を乾燥後、高圧水銀灯により紫外線を800mJ/cm2で照射しハードコート層を形成した。次に、γ−アミノプロピルトリメトキシシランの部分加水分解縮合物5質量部、メタノール30質量部、エタノール30質量部、イソプロパノール35質量部からなる塗布液を乾燥後膜厚0.02μmになるように塗工し、140℃で20秒間乾燥して高屈折率層を形成した。次いで、テトラエトキシシラン24質量部、エタノール50質量部、水20質量部、塩酸4質量部を混合し、加水分解を行った。この低屈折率層を乾燥後の膜厚が0.09μmになるように塗工し、140℃で1分間乾燥して低屈折率層を形成した。さらに、前記低屈折率層の上に、C3F7−(OC3F6)34−O−(CF2)2−C2H4−O−CH2Si(OCH3)3からなるパーフルオロポリエーテル基含有シランカップリング剤を、パーフルオロへキサンで0.5質量%に希釈した塗布液を塗布した。次いで、120℃で1分間乾燥して、膜厚8nmの防汚層を最表面層として形成した。
得られた積層フィルムの表面層の特性値を表1に示す。本実施例で得られた積層フィルムは表面反射率が低く、かつ表面硬度も良好であった。また、防汚性にも優れていた。なお、前記の防汚性は、油性ペンの拭き取り性と指紋の拭き取り性で評価した。油性ペンの拭き取り性は、最表面層表面に油性ペンで線を引きその線を、また、指紋の拭き取り性は、最表面層表面に付着させた指紋をセルロース製の不織布(旭化成製、ベンコットンM−3)で拭き取り、その取れやすさを目視判定した。どちらも完全に拭き取ることができた。
3.近赤外線吸収層の形成
下記組成の塗布液(固形分濃度が17質量%、粘度が40cps)を上記の基材フィルムに表面層を積層した積層フィルムの基材フィルム面上に、乾燥後の塗布量が8.5g/m2になるように、直径60cmの斜線グラビアを用いてリバースで塗工した。次いで、40℃で5m/秒の熱風で20秒間、150℃で20m/秒の熱風で20秒間、さらに、90℃で20m/秒の熱風で10秒間通過させて乾燥し、近赤外線吸収フィルムを作成した。
[近赤外線吸収層形成用の塗布液]
有機溶剤、樹脂、色素、界面活性剤を下記の質量比で混合し、加温下で色素および樹脂を溶解し、公称ろ過精度1μmのフィルムで未溶解物を除去して塗布液を作成した。
・シクロペンタノン 41.35質量%
・トルエン 41.35質量%
・フルオレン骨格を有する共重合ポリエステル系樹脂 16.40質量%
(カネボウ製、ポリエステル樹脂O−PET)
・ジインモニウム塩化合物 0.61質量%
(日本カーリット製、CIR−1085;アニオンがビス(トリフルオロメタンス
ルホニル)イミド酸イオンタイプ)
・シアニン系化合物 0.05質量%
(旭電化工業製、TZ−114;アニオンが金属錯体タイプ)
・フタロシアニン系化合物 0.16質量%
(日本触媒製、IR−14)
・スクアリリウム塩系化合物 0.05質量%
(協和発酵工業製、SD−184)
・シリコーン系界面活性剤 0.03質量%
(ダウコーニング製、ペインタッド57;HLB=6.7)
得られた近赤外線吸収フィルムの物性を表1に示す。近赤外領域の吸収、ネオン光領域の吸収が強く、可視光領域での透過率が高いフィルムが得られた。また、経時安定性や耐候性に優れ、さらに塗工外観も良好であった。
比較例1
実施例1において、下記(1)〜(4)の変更をすること以外は実施例1と同様にして、本比較例1の近赤外線吸収フィルムを得た。本比較例1で得られた近赤外線吸収フィルムの特性を表1に示す。
(1)近赤外線吸収層の組成を下記のごとく変更する。
・シクロペンタノン 41.37質量%
・トルエン 41.36質量%
・フルオレン骨格を有する共重合ポリエステル系樹脂 16.40質量%
(カネボウ製、O−PET)
・ジインモニウム塩化合物 0.58質量%
(日本カーリット製、CIR−1081;アニオンがヘキサフルオロアンチモン酸イオンタイプ)
・シアニン系化合物 0.05質量%
(旭電化工業製、TZ−114;アニオンが金属錯体タイプ)
・フタロシアニン系化合物 0.16質量%
(日本触媒製、IR−14)
・スクアリリウム塩系化合物 0.05質量%
(協和発酵工業製、SD−184)
・シリコーン系界面活性剤 0.03質量%
(ダウコーニング製、ペインタッド57;HLB=6.7)
(2)基材フィルムへの紫外線吸収剤の配合を取り止める。
(3)基材フィルムへの汎用易接着層の積層を両面とも取り止める。
(4)近赤外線吸収層形成用塗布液への界面活性剤の配合を取り止める。
本比較例1で得られた近赤外線吸収フィルムは耐久性が劣っている。また、紫外線透過度が高いため、近赤外線吸収色素の光による劣化が大きく耐候性が劣る。また、汎用易接着層が形成されないため、反射防止層や近赤外線吸収層の基材フィルムに対する接着性が劣る。さらに、近赤外線吸収層形成用塗布液への界面活性剤の配合を取り止めたため、近赤外線吸収色素やネオン光カット用の色調調整用色素のバインダー樹脂への分散性が劣るために、近赤外線吸収層の塗膜外観に劣っていた。
実施例2
1.基材フィルムの製造
(1)紫外線吸収剤含有マスターバッチの調製
乾燥させた、環状イミノエステル系紫外線吸収剤(サイテック社製、CYASORB UV−3638;2,2´−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン))10質量部、粒子を含有しないポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂(東洋紡績製、ME−553)90質量部を混合し、混練押出機を用い、マスターバッチを作製した。この時の押出温度は285℃であり、押出時間は7分であった。
(2)干渉縞抑制易接着層形成用塗布液の調製
ジメチルテレフタレート(95質量部)、ジメチルイソフタレート95質量部、エチレングリコール(97質量部)、ネオペンチルグリコール(70質量部)、酢酸亜鉛(0.1質量部)および三酸化アンチモン(0.1質量部)を反応容器に仕込み、180℃で3時間かけてエステル交換反応を行った。次に、5−ナトリウムスルホイソフタル酸(12.1質量部)を添加し、240℃で1時間かけてエステル化反応を行った後、重縮合反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル水分散液(B−1)40質量部、ヒドロキシビス(ラクタト)チタンの44質量%溶液(松本製薬製、TC310)18質量部、水150質量部およびイソプロピルアルコール100質量部をそれぞれ混合し、さらにアニオン系界面活性剤をそれぞれ塗布液に対し1質量%、コロイダルシリカ微粒子(日本触媒化成製、カタロイドSI80P;平均粒径80nm)水分散液を樹脂固形分に対しシリカとして2質量%添加し塗布液とした。
(3)汎用易接着層形成用塗布液の調製
汎用易接着層形成用の塗布液を以下の方法に従って調製した。ジメチルテレフタレート95質量部、ジメチルイソフタレート95質量部、エチレングリコール35質量部、ネオペンチルグリコール145質量部、酢酸亜鉛0.1質量部および三酸化アンチモン0.1質量部を反応容器に仕込み、180℃で3時間かけてエステル交換反応を行った。次に5−ナトリウムスルホイソフタル酸6.0質量部を添加し、240℃で1時間かけてエステル化反応を行った後、重縮合反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂の30質量%水分散液を6.7質量部、重亜硫酸ソーダでブロックしたイソシアネート基を含有する自己架橋型ポリウレタン樹脂の20質量%水溶液(第一工業製薬製、エラストロンH−3)を40質量部、エラストロン用触媒(Cat64)を0.5質量部、水を47.8質量部およびイソプロピルアルコールを5質量部、それぞれ混合し、さらにアニオン性界面活性剤を1質量%、コロイダルシリカ粒子(日産化学工業製、スノーテックスOL)を5質量%添加し塗布液とした。
(4)基材フィルムの製膜
中間層用原料として固有粘度が0.62dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂の粒子を含有しないペレット(東洋紡績製、ME−553)90質量部と、前記マスターバッチ10質量部とを135℃で6時間減圧乾燥(133.32Pa:1Torr)した後、押出機2(中間層B層用)に供給した。粒子を含有しないポリエチレンテレフタレートのペレット(東洋紡績製、ME−553)を135℃で6時間減圧乾燥(133.32Pa:1Torr)した後、押出機1(外層A層用及び外層C層用)にそれぞれ供給し、押出機熔融部、混練り部、メルトライン、ギアポンプ、フィルターまでの樹脂温度は280℃、その後のメルトラインでは275℃とし、3層合流ブロックにて、積層し、口金よりシート状にして押出た。これらのポリマーは、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)を用いて濾過した。また、フラットダイは樹脂温度が275℃になるようにした。
溶融押出しした樹脂を、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラム(ロール径400φ、Ra0.1μm以下)に巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この時の吐出量は48kg/hrであり、得られた未延伸シートは幅300mm、厚さ1400μmであった。また、両表層の厚さの比率が全厚みに対してそれぞれ10%となるように各押出機の吐出量を調整した。次に、上記キャストフィルムを加熱されたロール群および赤外線ヒーターを用いて100℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向(走行方向)に3.5倍延伸して一軸配向フィルムを得た。前記のフィルム製造時に用いる全ロールに関し、ロールの表面粗度をRaで0.1μm以下に管理し、縦延伸工程の予熱入口と冷却ロールにロールクリーナーを設置した。縦延伸工程のロール径は150mmであり、サクションロール、静電密着、パートニップの密着装置を採用してフィルムをロールへ密着させた。
その後、前記した干渉縞抑制易接着層形成用および汎用易接着層の塗布液をそれぞれ濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)25μmのフェルト型ポリプロピレン製濾材で精密濾過し、リバースロール法でそれぞれ片面づつに塗布、乾燥した。塗布後引き続いて、フィルムの端部をクリップで把持して130℃に加熱された熱風ゾーンに導き、乾燥後幅方向に4.0倍に延伸し230℃にて5秒間熱処理し、この熱処理工程中で幅方向に3%の弛緩処理し、基材フィルムを得た。
前記のフィルムの厚さは100μmであり、この時の各易接着層の塗布量は0.01g/m2であった。得られたフィルムの波長380nmにおける透過率を表1に示す。得られた基材フィルムは優れた紫外線吸収性を有していた。また、長時間生産しても表面傷や表面異物等の表面欠点の発生が抑制されており、前記方法で評価した基材フィルム表面の表面傷および表面の異物評価の結果は共に◎であり、高品質な積層フィルムが安定して生産できた。また、基材フィルム中の厚み方向の紫外線吸収剤の偏在度は0であった。
2.反射防止層(表面層)の形成
前記の基材フィルムの干渉縞抑制易接着層に実施例1と同様の方法で反射防止層を形成した。実施例1と同様の特性が付与できた。さらに、干渉縞抑制易接着層が積層されているので、前記評価法で干渉縞の評価を行ったところ、その結果は、◎であった。
3.近赤外線吸収層の形成
バインダー樹脂をガラス転移点が110℃のポリエステル樹脂に変更する以外は、実施例1と同様の方法で本実施例2の近赤外線吸収フィルムを得た。本実施例2で得られた近赤外線吸収フィルムの特性を表1に示す。本実施例2で得られた近赤外線吸収フィルムは、実施例1で得られた近赤外線吸収フィルムと同様に高品質であった。
比較例2
実施例2において、下記(1)〜(4)のように変更すること以外は実施例2と同様にして、本比較例2の近赤外線吸収フィルムを得た。本比較例2で得られた近赤外線吸収フィルムの特性を表1に示す。
(1)近赤外線吸収層の組成を下記のごとく変更する。
・シクロペンタノン 41.37質量%
・トルエン 41.36質量%
・フルオレン骨格を有する共重合ポリエステル系樹脂 16.40質量%
(カネボウ製、O−PET)
・ジインモニウム塩化合物 0.58質量%
(日本カーリット製、CIR−1083;アニオンがヘキサフルオロホスフェートイオンタイプ)
・シアニン系化合物 0.05質量%
(旭電化工業製、TZ−114;アニオンが金属錯体タイプ)
・フタロシアニン系化合物 0.16質量%
(日本触媒製、IR−14)
・スクアリリウム塩系化合物 0.05質量%
(協和発酵工業製、SD−184)
・シリコーン系界面活性剤 0.03質量%
(ダウコーニング製、ペインタッド57;HLB=6.7)
(2)基材フィルムへの紫外線吸収剤の配合を取り止める。
(3)基材フィルムへの干渉縞抑制易接着層および汎用易接着層の積層を両面とも取り止める。
(4)近赤外線吸収層形成用塗布液への界面活性剤の配合を取り止める。
本比較例2で得られた近赤外線吸収フィルムは耐久性が劣っている。また、紫外線透過度が高いため、近赤外線吸収色素の光による劣化が大きく耐候性が劣る。また、各易接着層が形成されないため、反射防止層や近赤外線吸収層の基材フィルムに対する接着性が劣る。さらに、近赤外線吸収層形成用塗布液への界面活性剤の配合を取り止めたため、近赤外線吸収色素やネオン光カット用の色調調整用色素のバインダー樹脂への分散性が悪く、近赤外線吸収層の塗膜外観に劣っていた。さらに、反射防止層と基材フィルムとの界面に干渉縞抑制易接着層が積層されていないので、干渉縞の評価結果は×であった。
実施例3、4および比較例3、4
プラズマディスプレイパネル(富士通製、PDS4211J−H)の前面パネルを外し、実施例1、2および比較例1、2で得られた近赤外線吸収フィルムの近赤外線吸収層に、n−ブチルアクリレート(78.4質量%)、2−エチルヘキシルアクリレート(19.6質量%)およびアクリル酸(2質量%)の組成よりなるアクリル酸エステル共重合体である透明性粘着剤をコンマコーター法で乾燥後の膜厚で0.025mmとなるように積層し、さらにその表面にシリコーン処理した厚み0.038mmのポリエチレンテレフタレートよりなるセパレータフィルムを積層し、近赤外線吸収フィルターとセパレータフィルムとの複合体を得た。前記の複合体よりセパレータフィルムを剥がし、粘着層を介してプラズマディスプレイパネルに貼着し、機能の評価を実施した。なお、近赤外線吸収フィルムは、厚みが薄く、かつ粘着層が複合されているので、プラズマディスプレイパネル表面をイソプロピルアルコールで湿らせた状態で、前記のフィルムの貼着を行うと、気泡の混入を抑えて綺麗に貼着することができた。
実施例1および2で得られた近赤外線吸収フィルムによるフィルター(実施例3および4)は、近赤外線吸収効果が付与されているので、周辺に設置される赤外線リモートコントロール装置に対する妨害を防止できた。また、耐候性や経時安定性が優れているので、長期間使用をしても前記の機能が安定していた。さらに、以下の効果が確認できた。
(1)表面に反射防止性が付与されているので、外光反射が抑えられ室内照明に用いた蛍光灯の写り込みが減少した。
(2)表面硬度が高いので傷が付き難い。
(3)防汚性が付与されているので、手で触れて指紋がついても拭き取りで簡単に消すことができる。
(4)ネオンカットの色調改善がされているので色再現性が向上した。具体的には、オレンジ色の入った赤が純赤に、緑がかった青が鮮やかな青に、黄ばんだ感じの白が純白になる。
比較例1の近赤外線吸収フィルムによるフィルター(比較例3)および比較例2の近赤外線吸収フィルムによるフィルター(比較例4)は、経時安定性や耐候性が劣るので、長期使用により、周辺に設置される赤外線リモートコントロール装置に対する妨害が増加した。また、近赤外線吸収層の塗膜外観が劣るため、前記の欠点により画像の質が低下した。さらに、各層の界面の接着性に劣るため、長期使用により界面の部分剥離が発生し、画質の像が低下した。
実施例5
実施例3で作製した近赤外線吸収フィルターを、粘着層を介して、線径0.03mmの繊維を1インチ当たり135本の密度で縦横に編んだメッシュを無電解メッキ法でニッケルおよび銅をメッキした導電メッシュに貼着した。プラズマディスプレイパネル(富士通製、PDS4211J−H)の前面パネルを外し、上記複合体を接着剤で貼着し、機能の評価を実施した。実施例3で確認した効果に加え、電磁波遮断効果が発現された。
実施例6
実施例3で作製した近赤外線吸収フィルターを、光学用の粘着剤で近赤外線吸収層側をプラズマディスプレイパネル側としてプラズマディスプレイパネルに貼着して評価をし、実施例3と同様の結果を得た。