JP2006147799A - ボンド磁石 - Google Patents
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Abstract
【課題】ボンド磁石において、高い磁性特性と高い機械的強度とを両立する。
【解決手段】ボンド磁石は、希土類系合金磁性粉末として、従来用いられていた鱗片形状のものに代えて平均粒径が20μm〜200μmの範囲にある球状のものを使用することで、全体重量に対して80wt%と云う高い割合で配合し、高磁気特性化を図っている。同時に、球状磁性粉末にカップリング処理をすることで、得られるボンド磁石の機械的強度の向上を図っている。
【選択図】なし
【解決手段】ボンド磁石は、希土類系合金磁性粉末として、従来用いられていた鱗片形状のものに代えて平均粒径が20μm〜200μmの範囲にある球状のものを使用することで、全体重量に対して80wt%と云う高い割合で配合し、高磁気特性化を図っている。同時に、球状磁性粉末にカップリング処理をすることで、得られるボンド磁石の機械的強度の向上を図っている。
【選択図】なし
Description
この発明は、Nd−Fe−Bに代表される希土類系合金磁性粉末と樹脂バインダーとを混合して固化させたボンド磁石に関するものである。
各種の磁性粉末と樹脂バインダーとを混合して成形固化させた所謂ボンド磁石が、例えばコンピュータにおけるハードディスク用スピンドルモータの回転子、リニアモータの固定子、あるいは各種機器に使用される制御用の回転センサ等、産業上または民生用の分野で広く使用されている。近年、各種機器の小型化に伴って、前記ボンド磁石についても、益々小型化、高特性化の要求が高まっており、前記磁性粉末としては、高い磁気特性が得られるNd−Fe−B系に代表される希土類系合金磁性粉末が用いられている。この希土類系合金磁性粉末は、急冷凝固法によって製造された磁性材料を、所定形状まで粉砕することで製造され、得られた粉末は鱗片状となっている。そして前記ボンド磁石として、高い磁気特性を得るためには、この鱗片状磁性粉末の配合量を多くすればよいが、以下の点が問題となる。
すなわち、一般にボンド磁石は射出成形または押出し成形等により形成されるため、ボンド磁石の原料となるコンパウンドを溶融した溶融原料の流動性が成形性に大きく影響する。しかるに、磁気特性を高特化するために磁性粉末の配合量を多くする、言い替えると樹脂バインダーの配合量を少なくすると、磁性粉末に対する樹脂バインダーの割合が少なくなり、溶融原料の流動性が低下してしまう。従って、樹脂バインダーの割合を低減するには限度があり、磁性粉末および樹脂バインダーの割合を変えるだけでは、市場の要求を十分に満たすレベルの磁気特性を有するボンド磁石が得られないのが現状である。なお、コンパウンドとは、磁性粉末と樹脂バインダーとを混合・混練したものを、そのままあるいはペレット化し、成形用原料として使用されるものである。
また、鱗片状磁性粉末を使用したボンド磁石は、この磁性粉末の鱗片形状が有する形状的な特性(形状配向性)のため、流動性に悪影響を与えると共に、溶融原料の流れが乱れる内壁やウェルドライン近傍では、この磁性粉末の長手方向がバラバラに存在するから、着磁した際にこれらの部分では他の部分と磁気特性が微少に変動してしまう可能性が指摘される。特に、ボンド磁石が小型または薄肉化するにつれて、ウェルドライン近傍等の特定部位に生じる形状配向性は無視できなくなる。また成形品には、一般的に外表面に樹脂のみからなる5μm〜10μmの薄いスキン層が形成されて、このスキン層の存在により磁性粉末が外表面に露出しないことで防錆を図っている。しかし鱗片状磁性粉末は、形状配向性または流動性の悪化等に起因してスキン層を突き破って外表面に露出することがあり、ボンド磁石表面の平滑性や防錆性能を損うと共に、突き出た磁性粉末が脱落してしまう虞れがある。
そこで、ガスアトマイズ法で得られる球状の磁性粉末(球状磁性粉末)を、磁性粉末の一部として使用した磁石組成物が提案されている(特許文献1参照)。球状磁性粉末では、それ自体の形状特性に起因して流動性が高くなり、鱗片状磁性粉末と比較して配合量を多くできる利点がある。また特許文献2には、押出し成形による柔軟性を有するボンド磁石において、磁性粉末として球状のNd−Fe−B系合金粉末を使用したものが開示されている。
特開2004−228274号公報
特開2003−19738号公報
ところで、磁性粉末として球状のものを使用することで溶融原料の流動性が向上して、磁性粉末を高い割合で配合させることができるが、得られた成形品の強度が低下してしまう問題が指摘される。すなわち球状磁性粉末は球形故の形状的な要因により、鱗片状磁性粉末と比較して樹脂バインダーと磁性粉末とがなじみにくく、力が加わった際にこれらの境界部分で剥離してしまうためであると考えられる。このように、単に球状磁性粉末を使用したボンド磁石では、磁性粉末の充填率を上げることによる高い磁気特性化を図り得るが、得られる成形品の高いレベルでの機械的強度を両立させることが困難であった。また、得られた成形品の機械的強度が低いと、成形の過程で生じる不要部分、例えば射出成形におけるスピナやランナ等が離型する際に分離してしまう難点や、着磁工程等の後工程における取り扱い性に難があり、生産性が悪化する不都合もある。
本願の発明者は、前記課題の解決策を求めて種々模索したところ、希土類系合金磁性粉末と樹脂バインダーとを基本的な材料とするボンド磁石において、希土類系合金磁性粉末として、従来用いられていた鱗片形状のものに代えて所要条件の球状のものを使用することで、磁性粉末の配合率を高くして高磁気特性化できることや防錆性能の向上等の球状が呈する優れた形状的な特性を享受し得ると同時に、磁性粉末に対し所定の処理を各種条件下で実施することで、高い機械的強度を有するものが得られることを知見した。すなわちこの発明は、従来の技術に係るボンド磁石に内在する前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、前記知見に基づいて高い磁性特性と高い機械的強度とを両立し得るボンド磁石を提供することを目的とする。
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明に係るボンド磁石は、
磁性粉末と樹脂バインダーとを混合して成形固化させたボンド磁石であって、
平均粒径が20μm〜200μmの範囲にある球状の希土類系合金磁性粉末を、全体重量に対して80wt%以上含み、該磁性粉末がカップリング処理されていることを特徴とする。
磁性粉末と樹脂バインダーとを混合して成形固化させたボンド磁石であって、
平均粒径が20μm〜200μmの範囲にある球状の希土類系合金磁性粉末を、全体重量に対して80wt%以上含み、該磁性粉末がカップリング処理されていることを特徴とする。
本発明に係る請求項1のボンド磁石によれば、希土類系合金磁性粉末として、所要条件の球状のものを使用することで、磁性粉末の配合率や防錆性能の向上等の球状が呈する優れた形状的な特性を享受し得ると同時に、磁性粉末に対しカップリング処理を実施することで機械的強度を向上し得る。すなわち、得られたボンド磁石について、磁気特性を向上し得ると共に、高いレベルでの機械的強度を確保して、小型化または薄肉化に対応し得るボンド磁石を、容易に製造することができる。請求項2のボンド磁石によれば、機械的強度が30MPa以上であるから、磁石製造過程での取り扱い性を向上し得ると共に、製品として磁性粉末の脱離等の不具合を回避し得る。請求項3のボンド磁石によれば、磁性粉末と樹脂バインダーとの混合に際して有機潤滑剤を添加することで、混練トルクの上昇を抑制し得ると共に、混練時間を短縮し、生産性を向上させることができる。
本発明に係るボンド磁石につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。なお、実施例では射出成形を用いてボンド磁石を成形した場合について説明するが、押出し成形または圧縮成形においても成形することができる。
実施例に係るボンド磁石は、R(希土類元素)−Fe(鉄)−B(ホウ素)で表わされる組成を有する球状の希土類系合金磁性粉末(以下、球状磁性粉末と云う)と、樹脂バインダーと、カップリング剤等の各種添加剤とを混合・混練した後、例えば射出成形によりリング形状に形成したものである。このボンド磁石(着磁前の成形品)は、その機械的強度が30MPa以上となるよう設定され、この機械的強度としては実施例ではボンド磁石がリング状に形成されるので、半径方向へ力を加えた時の破壊荷重である圧環強度で評価される。すなわち、ボンド磁石の圧環強度を30MPa以上に設定することで、着磁工程や機器に組み込む工程等の後工程において取り扱い性が向上するから、生産効率を向上させることができる。また、高いレベルの機械的強度に設定することで、ボンド磁石を小型化または薄肉化しても、後工程における取り扱い性の低下や破損等の不具合を回避し得る。なお、ボンド磁石の圧環強度が30MPaより小さいと、後工程での取り扱いに際して破損する虞れがある。また機器の装着時においても、装着した機器によってはボンド磁石にクラックや欠けの発生や磁性粉末の脱落等の問題が生じる虞れがあり、実使用上問題となる。
前記球状磁性粉末の組成は、Rは1種以上の希土類元素で、特に限定はされないが、ネオジウム(Nd)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ジスプロシウム(Dy)、イットリウム(Y)および/またはプラセオジム(Pr)などであり、Feは単独または一部をコバルト(Co)に置換したものであり、ホウ素(B)の他にチタン(Ti)やジルコニウム(Zr)等の元素を微少量含んでいる。前述したように磁性粉末の形状は、ガスアトマイズ法により得られる球状であって、その平均粒径が20μm〜200μmの範囲に設定される。すなわち、球状磁性粉末の平均粒径が200μmより大きくなると、球状の形状的な特性が発揮されず、かえって混練時の混合性が悪化したり、コンパウンドの流動性に悪影響を及ぼし、成形に際して成形金型のキャビティ内に円滑に射出されないこととなる。これに対し、球状磁性粉末の平均粒径が20μmより小さくなると、得られたボンド磁石において磁性粉末の表面積が過大となって、特に高温使用時に磁気特性の低下を招いてしまう弊害がある。また球状磁性粉末は、前述した平均粒径の範囲内において理論上の真球との誤差である真球度が平均として15μm以下であることが望ましい。この球状磁性粉末の真球度が15μm以下であると、球状である形状的な特性をより生かして混合性および流動性の向上に貢献し得るが、15μmより大きくなると混合性等の悪化を招くことがあると共に、混合・混練工程または成形工程において、条件によっては球状磁性粉末同士が相互に干渉して破砕してしまうことがある。
前記球状磁性粉末は、従来例で説明した鱗片状磁性粉末と比較して種々の利点を有し、その形状的な特性に起因して、特に前述した条件下において樹脂バインダーとの高い混合性やコンパウンドを溶融した溶融原料が高い流動性を発現し得る利点が挙げられる。この球状磁性粉末が樹脂バインダーと良好な混合性を示すことで、混合・混練工程で混練機の混練トルク(混合に要する力)を低下し得ると共に、混練時間の短縮を図り得る。すなわち、混練時における混合物への負荷を軽減し、過剰な発熱による球状磁性粉末の劣化と樹脂バインダーの分解とを防止できるから、後工程である成形工程または成形品においても球状磁性粉末の形状的な特性が好適に発現すると共に、この球状磁性粉末自体の破砕による球状の形状特性の喪失や平均粒径または真球度の低下に起因する機械的強度や磁気特性の低下を防止し得る。また、磁性粉末として球状のものを採用することで、コンパウンドを加熱溶融させた溶融原料についても流動性が向上するから、射出成形における射出成形機から金型に注入する際の射出圧力を低減し、成形工程における球状磁性粉末の酸化劣化や、この球状磁性粉末の破砕による球状の形状特性の喪失や平均粒径または真球度の低下に起因する機械的強度や磁気特性の低下を防止し得る。
このように、混合・混練工程および成形工程において、球状磁性粉末と樹脂バインダーとが好適に混ぜ合わされ、球状磁性粉末の結合媒体として働く樹脂バインダーに対し球状磁性粉末が均一に分散するから、球状磁気粉末の配合量を全体重量に対して80重量%以上の高い割合で配合することができ、目標とする高い磁気特性(例えばBHmaxで24kJ/m3以上)を達成することができる。なお、球状磁性粉末自体の磁気特性は、鱗片状のものと比較して若干低い欠点を有するが、鱗片状磁気粉末より多く配合できるから、得られたボンド磁石は、この欠点が補われて全体としては高い磁気特性のものが得られる。
前述したように、磁性粉末として球状のものを使用することで、高温雰囲気下での使用に際して、不可逆減磁を抑制することができる。すなわち、球状磁性粉末は混合性に優れ、混合・混練工程において混練トルクを低下し得ると共に、混練時間を短縮できるから、磁性粉末同士の摩擦による過剰な発熱を抑制して、球状磁性粉末の酸化劣化を回避し得る。従って、得られたボンド磁石では、球状磁性粉末の本来有する特性を発現し得るので、不可逆減磁を低減し得る。
実施例の樹脂バインダーとしては、射出成形に好適に使用し得る熱可塑性樹脂から選択され、例えばナイロン12,ナイロン6等のポリアミド樹脂(PA)、ポリフェニルサルファイド(PPS)、エチレンーエチルアクリレート共重合樹脂(EEA)、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリ塩化ビニル(PVC)、後塩素化ポリ塩化ビニル(CPVC)、液晶ポリマー(LCP)等を採用し得る。また、使用用途によっては、ガソリン、オイル、水等に冒されないPPS、PEEK、PES、PA等が好適に使用される。更に、ボンド磁石が車両のエンジンルームに設置されるモータの回転子等の高温雰囲気下で使用される場合、ガソリンやオイル等への耐性に加えて、耐熱性も要求されることがある。この場合、得られた成形品が、150℃以上の熱変形開始温度HDTを示すPPS、PEEK、PES、PA、LCP等が好適に使用される。なお、樹脂バインダーとしては、単一の樹脂を使用するだけでなく、複数の樹脂を組合わせて使用してもよい。更に、比較的耐熱性に優れたPPS、PEEK、PES、PA、LCP等を使用することで、高温雰囲気下での使用の際して、得られたボンド磁石の不可逆減磁を抑制することができる。
前記球状磁性粉末には、樹脂バインダーと混合する前に、この磁性粉末と樹脂バインダーとの結合性を向上させるためカップリング処理が施される。すなわち、球状磁性粉末にカップリング処理をすることで、磁性粉末の表面に存在するカップリング剤が樹脂バインダーとの結合の橋渡しをして、成形品における磁性粉末と樹脂バインダーとの密着状態の強化を図っている。すなわち、前述した磁性粉末自体の形状的な特性による磁性粉末自体への負荷低減による機械的強度への影響抑制効果と相まって、得られた成形品において機械的強度を向上することができ、前述した30MPa以上と云う必要とされる圧環強度を達成し得る。
カップリング処理に使用されるカップリング剤としては、シラン系、チタネート系、ジルコニア系またはアルミニウム系の何れかを採用し得るが、シラン系が最適であって、次いでチタネート系が好適である。このシラン系のカップリング剤としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、1,3,5−N−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等が採用され、この中でもγ−アミノプロピルトリエトキシランまたは1,3,5−N−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが好適である。また、チタネート系のカップリング剤としては、テトライソプロピルチタネート、テトライソブチルオルソチタネート、イソプロピルトリ(n−アミノエチル−アミノエチル)チタネート等が採用され、この中でもテトライソプロピルチタネートが好適である。更に、アルミニウム系のカップリング剤としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等が採用され、ジルコニウム系のカップリング剤としては、ジルコニウムトリブトキシステアレート等が採用される。
カップリング剤は、粉体表面に1分子層をコーティングするように添加すればよく、
全体重量に対して、0.05wt%〜1.0wt%の範囲で添加される。すなわち、カップリング剤の添加量が0.05wt%より少ない場合は、球状磁性粉末に対する表面処理効果が乏しくなり、得られたボンド磁石について所要の圧環強度が得られない。一方、カップリング剤の添加量が1.0wt%より多い場合は、カップリング剤により磁気特性が阻害される弊害が生じる。
全体重量に対して、0.05wt%〜1.0wt%の範囲で添加される。すなわち、カップリング剤の添加量が0.05wt%より少ない場合は、球状磁性粉末に対する表面処理効果が乏しくなり、得られたボンド磁石について所要の圧環強度が得られない。一方、カップリング剤の添加量が1.0wt%より多い場合は、カップリング剤により磁気特性が阻害される弊害が生じる。
球状磁性粉末と樹脂バインダーとの混合・混練工程において、両者の円滑な混ぜ合わせを補助するため、有機潤滑剤を添加してもよい。この有機潤滑剤としては、ステアリン酸鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリルアミド、オレイルアミド、エチレンビスステアリルアマイド、流動パラフィン、低分子量ポリエチレン等が使用される。なお有機潤滑剤は、必須の添加剤でないが、添加する際には全体重量に対して1.0wt%以下の範囲で添加され、この1.0wt%より多いと、球状磁性粉末または樹脂バインダーの配合量が減ってしまい、求める磁気特性または機械的強度が得られないことがある。
実施例に係るボンド磁石を好適に形成するための製造方法の一例について説明する。先ず、予め篩い等で所定範囲に平均粒径を揃えられた球状磁性粉末と、カップリング剤とを混合機で混ぜ合わせ、球状磁性粉末の表面にカップリング処理を施す。次に、ボンド磁石の使用用途等を鑑みて選択された樹脂バインダーを混入して、例えば2軸混練機で混練し、ペレット化する。このとき、必要な場合は有機潤滑剤を加える。しかる後、ペレット状にしたコンパウンドを成形して成形品にする成形工程に移行する。このペレット状のコンパウンドを射出成形機に供給して加熱して溶融させた後に、金型内に画成されたキャビティへ連通するゲートを介して所定圧力でキャビティに充填する。そして、金型を冷却することで、充填した溶融原料が固化して成形品が得られる。最後に、金型から取出した成形品からスプル等の不要部分を除去した後、着磁することでボンド磁石が完成する。
成形工程において、例えば一つのゲートからリング状のキャビティを有する金型に溶融原料を注入すると、溶融原料はキャビティに沿って時計廻りおよび反時計廻りで夫々流動してゲートから一番遠い部位近傍でぶつかり、ここにウェルドラインを形成する。このとき溶融原料は、内壁または互いにぶつかるウェルドライン近傍において複雑に流動するものの、球状磁性粉末を含有した溶融原料は流動性が良好であって、かつ球状磁性粉末自体が形状配向性を有していないのでウェルドライン近傍等の特定部位に偏ることがなく、成形品内に均一に分散させることができる。すなわち、得られたボンド磁石は、特定部位で磁気特性が変動することはなく、全体として均一な磁気特性を示す。しかも、溶融原料の流動性を高くすることで、薄肉または小型のキャビティにおいても、溶融原料を均一に行き渡らせることができるから、得られる成形品の小型化または薄肉化を図ることができ、しかも小型化または薄肉化した際に大いに影響を受ける特定部位における磁気特性の変動はない。この際、ボンド磁石の機械的強度は確保されているため、小型化または薄肉化しても破損する虞れはない。
実施例のボンド磁石では、溶融原料の流動性が高いから、成形品において全面に均一にスキン層が形成されるので、磁性粉末がボンド磁石の外表面に露出することはなく、磁性粉末の脱落を回避し得ると共に、表面の高い平滑性と良好な防錆性能とを有する。しかも球状磁性粉末自体の防錆性能が鱗片状磁性粉末と比較して優れているので、全体としてより良好な防錆性能を示す。
球状磁性粉末は、成形により生じた不要部分の再使用効率であるリターン特性に優れている。特に射出成形法では、金型内に画成されたキャビティへの成形原料の注入は、スプル、ランナあるいはゲートと云った通路を介して行なわれ、この通路にも成形材料が充填されて成形固化するので、得られた成形品には不要部分が形成される。従って、この不要部分は成形品から分離されて破砕されて、コンパウンドに混ぜて射出成形機に投入されて成形原料の一部として再使用される。前記リターン特性とは、スプル等が再使用できる度合を表わし、鱗片状磁性粉末ではスプル等を破砕すると磁性粉末自体が砕ける虞れがあり、平均粒径が低下してしまい、機械的強度や磁気特性の低下を招いてしまう難点がある。しかし、球状磁性粉末を使用したボンド磁石では、スプル等を破砕しても磁性粉末自体が砕け難いので、不要部分を再使用しても機械的強度や磁気特性への影響を抑制し得る。
(実験例)
実施例で説明した所定条件の球形磁性粉末に対しカップリング処理をしたボンド磁石(実施例)と、実施例と同じ球状磁性粉末にカップリング処理を施さず、実施例と異なる樹脂バインダーを使用したボンド磁石(比較例1)と、実施例で説明した所定条件から外れる球形磁性粉末を使用したボンド磁石(比較例2)とを、後述する条件で射出成形により夫々成形し、各サンプルについて圧環強度および長期高温不可逆減磁率を測定した。その結果を表1に示す。
実施例で説明した所定条件の球形磁性粉末に対しカップリング処理をしたボンド磁石(実施例)と、実施例と同じ球状磁性粉末にカップリング処理を施さず、実施例と異なる樹脂バインダーを使用したボンド磁石(比較例1)と、実施例で説明した所定条件から外れる球形磁性粉末を使用したボンド磁石(比較例2)とを、後述する条件で射出成形により夫々成形し、各サンプルについて圧環強度および長期高温不可逆減磁率を測定した。その結果を表1に示す。
(サンプル)
・実施例は、Nd−Fe−B系合金磁性粉末(マグネクエンチ社製、商品名:MQP−S−11−9、平均粒径45μm)配合量:94wt%に対し、シラン系カップリング剤(日本ユニカー株式会社製、商品名:A−1100)配合量:0.1wt%でカップリング処理した後、ポリアミド樹脂(配合量5.9wt%)と混練機において混合・混練し、ペレット状に造粒した。そして、射出成形機で、外径10mm×内径8.6mm×高さ18mmの薄肉長尺リング状に成形した。
・比較例1は、実施例と同一の球状磁性粉末(配合量:94wt%)と、ポリアミド樹脂およびPPSを混合した樹脂バインダー(6wt%)とを混練機において混合・混練し、ペレット状に造粒した。そして、射出成形機で、外径10mm×内径8.6mm×高さ18mmの薄肉長尺リング状に成形した。
・比較例2は、実施例と同種のNd−Fe−B系合金磁性粉末(マグネクエンチ社製、商品名:MQP−S−11−9)配合量:94wt%を平均粒径15μmに調製し、比較例1と同じ樹脂バインダー(配合量:6wt%)とを混練機において混合・混練し、ペレット状に造粒した。そして、射出成形機で、外径10mm×内径8.6mm×高さ18mmの薄肉長尺リング状に成形した。
・実施例は、Nd−Fe−B系合金磁性粉末(マグネクエンチ社製、商品名:MQP−S−11−9、平均粒径45μm)配合量:94wt%に対し、シラン系カップリング剤(日本ユニカー株式会社製、商品名:A−1100)配合量:0.1wt%でカップリング処理した後、ポリアミド樹脂(配合量5.9wt%)と混練機において混合・混練し、ペレット状に造粒した。そして、射出成形機で、外径10mm×内径8.6mm×高さ18mmの薄肉長尺リング状に成形した。
・比較例1は、実施例と同一の球状磁性粉末(配合量:94wt%)と、ポリアミド樹脂およびPPSを混合した樹脂バインダー(6wt%)とを混練機において混合・混練し、ペレット状に造粒した。そして、射出成形機で、外径10mm×内径8.6mm×高さ18mmの薄肉長尺リング状に成形した。
・比較例2は、実施例と同種のNd−Fe−B系合金磁性粉末(マグネクエンチ社製、商品名:MQP−S−11−9)配合量:94wt%を平均粒径15μmに調製し、比較例1と同じ樹脂バインダー(配合量:6wt%)とを混練機において混合・混練し、ペレット状に造粒した。そして、射出成形機で、外径10mm×内径8.6mm×高さ18mmの薄肉長尺リング状に成形した。
(試験条件)
・圧環強度は、サンプルに半径方向から力を加えて該サンプルが破壊した荷重(圧環荷重)に対してサンプル寸法等を勘案した値であって、圧環荷重×(外径−肉厚)/(高さ×(肉厚)2)で求められる。なお肉厚は、(外径−内径)/2の値である。
・長期高温不可逆減磁率は、サンプルを180℃の雰囲気下で1000時間放置し、放置前と放置後の磁束をフラックスメーターで計測した。そして、放置前に対する減衰率を算出した。
・圧環強度は、サンプルに半径方向から力を加えて該サンプルが破壊した荷重(圧環荷重)に対してサンプル寸法等を勘案した値であって、圧環荷重×(外径−肉厚)/(高さ×(肉厚)2)で求められる。なお肉厚は、(外径−内径)/2の値である。
・長期高温不可逆減磁率は、サンプルを180℃の雰囲気下で1000時間放置し、放置前と放置後の磁束をフラックスメーターで計測した。そして、放置前に対する減衰率を算出した。
表1の結果より、希土類系合金磁性粉末として、実施例で説明した平均粒径の球状のものを使用し、この球状磁性粉末に対しカップリング処理を実施した実施例は、カップリング処理を実施しない比較例1および比較例2と比較して、機械的強度が向上すると共に、高温雰囲気下での不可逆減磁を抑制し得ることが判った。
Claims (3)
- 磁性粉末と樹脂バインダーとを混合して成形固化させたボンド磁石であって、
平均粒径が20μm〜200μmの範囲にある球状の希土類系合金磁性粉末を、全体重量に対して80wt%以上含み、該磁性粉末がカップリング処理されている
ことを特徴とするボンド磁石。 - 機械的強度が、30MPa以上である請求項1記載のボンド磁石。
- 前記磁性粉末と樹脂バインダーとを混合する過程で、有機潤滑剤が添加されている請求項1または2記載のボンド磁石。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004334970A JP2006147799A (ja) | 2004-11-18 | 2004-11-18 | ボンド磁石 |
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