JP2006124753A - Cu2O膜、その成膜方法及び太陽電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】酸化数が精密に制御されたNドープCu2O膜を高速にて成膜する方法及びこの成膜方法によって得られたCu2O膜を光吸収層として用いた太陽電池を提供する。
【解決手段】カバー26内部に透明基板1を導入し、アルゴン中に酸素及び窒素を含有させた混合ガスをカバー26内に導入する。ターゲット電極20A,20Bに一定の周期で交互にパルスパケット状の電圧を印加して、グロー放電を形成させる。これにより、ターゲット21a,21bから粒子がスパッタされ、基板1上にCu2O膜よりなるp層3が形成する。コリメータ30a,30bを介して得られたプラズマの発光スペクトルが電気信号となりPEM31a,31bに取り込まれる。このPEM31a,31bを用いてプラズマ中の銅の発光強度が常に一定になるように酸素ガスの導入流量を制御する。
【選択図】図2
【解決手段】カバー26内部に透明基板1を導入し、アルゴン中に酸素及び窒素を含有させた混合ガスをカバー26内に導入する。ターゲット電極20A,20Bに一定の周期で交互にパルスパケット状の電圧を印加して、グロー放電を形成させる。これにより、ターゲット21a,21bから粒子がスパッタされ、基板1上にCu2O膜よりなるp層3が形成する。コリメータ30a,30bを介して得られたプラズマの発光スペクトルが電気信号となりPEM31a,31bに取り込まれる。このPEM31a,31bを用いてプラズマ中の銅の発光強度が常に一定になるように酸素ガスの導入流量を制御する。
【選択図】図2
Description
本発明は、Cu2O膜及びその成膜方法に係り、特にNドープCu2O膜及びその成膜方法に関する。また、本発明は、このCu2O膜を光吸収層として用いた太陽電池に関する。
I. 従来、太陽電池に用いられている材料としては、シリコン(単結晶Si、多結晶Si及びアモルファスSi)、GaAs、CuInSe及びCdTeを挙げることができる。このうち、シリコン系太陽電池やGaAs系太陽電池は変換効率が高いものの、材料が高価である。一方、CuInSe系やCdTe系の太陽電池は、材料は比較的安価であるもののセレンやカドミウムといった材料が有毒であることから、大量生産されて広範に普及した場合に環境上問題が生じる。
II. 二酸化チタンを利用した色素増感型太陽電池が、安価でクリーンな太陽電池として注目され、種々の提案がなされている(例えば特開2003−123853号)。二酸化チタンはバンドギャップが3.2eV程度であるために可視光には殆ど応答を示さず、紫外光に対してのみ応答を示す材料である。そこで色素増感型太陽電池では、可視光を吸収する有機色素を二酸化チタン表面に吸着させることによって可視光応答性を向上させ、最高で約10%という高い変換効率を実現している。但し、色素増感型太陽電池の有する根本的な問題点として、色素の吸着量によって変換効率が大きく変化してしまうこと、電解質溶液を用いる必要があることからパッケージングが困難であること、等が挙げられる。
III. CuAlO2/ZnOという組合せからなる紫外光対応の透明な太陽電池が提案されている。これはp型透明半導体のCuAlO2とn型透明半導体のZnOを積層したpn接合によって太陽電池特性を発現させている。
IV. Cu2Oは、エネルギーギャップが2.2eVであり、可視光を吸収することができるが、太陽電池の吸収層として用いるには、エネルギーギャップをそれよりも小さくすることが望ましい。
特開2003−123853号公報
II. 二酸化チタンを利用した色素増感型太陽電池が、安価でクリーンな太陽電池として注目され、種々の提案がなされている(例えば特開2003−123853号)。二酸化チタンはバンドギャップが3.2eV程度であるために可視光には殆ど応答を示さず、紫外光に対してのみ応答を示す材料である。そこで色素増感型太陽電池では、可視光を吸収する有機色素を二酸化チタン表面に吸着させることによって可視光応答性を向上させ、最高で約10%という高い変換効率を実現している。但し、色素増感型太陽電池の有する根本的な問題点として、色素の吸着量によって変換効率が大きく変化してしまうこと、電解質溶液を用いる必要があることからパッケージングが困難であること、等が挙げられる。
III. CuAlO2/ZnOという組合せからなる紫外光対応の透明な太陽電池が提案されている。これはp型透明半導体のCuAlO2とn型透明半導体のZnOを積層したpn接合によって太陽電池特性を発現させている。
IV. Cu2Oは、エネルギーギャップが2.2eVであり、可視光を吸収することができるが、太陽電池の吸収層として用いるには、エネルギーギャップをそれよりも小さくすることが望ましい。
従来Cu2O膜の成膜方法としては、Cu金属膜を酸素含有雰囲気中で熱処理する、金属Cuターゲットを用いて酸素を含むガス雰囲気中で反応性スパッタ法を行う、などの方法が用いられてきた。しかし、これらの方法では銅の酸化をコントロールするのが非常に難しい。なぜなら、銅と酸素の化合物はCu2Oだけではなく、銅と酸素の反応が過度に進むと、太陽電池吸収層として求められるCu2O相ではなく、Cu4O3やCuOといった他の相が容易に形成されてしまうからである。
また、太陽電池セルの吸収層としてCu2Oを用いる場合には数μm以上の膜厚が形成されることが望まれ最低でも数百nmが必要であるが、通常のスパッタ法による成膜では、数μmの膜厚を安定して形成するのに時間がかかり生産性に乏しい。
本発明は、上記問題点を解消し、エネルギーギャップが小さいCu2O膜及びその成膜方法を提供することを目的とする。また、本発明は、このCu2O膜を光吸収層として用いた太陽電池を提供することを目的とする。
請求項1のCu2O膜の成膜方法は、反応性スパッタ法によってCu2O膜を成膜する方法において、酸素ガス及び窒素ガスを含む雰囲気にて銅又は酸化銅よりなるターゲットを用いてスパッタすることにより、NドープCu2O膜を成膜することを特徴とするものである。
請求項2のCu2O膜の成膜方法は、請求項1において、複数の前記ターゲットを用い、各ターゲットに交互に間欠的な電圧を印加してスパッタを行い、スパッタ時における放電の発光波長と発光強度をモニタリングして雰囲気中の酸素濃度を制御することにより成膜される膜中の酸素含有量を制御することを特徴とするものである。
請求項3のCu2O膜の成膜方法は、請求項1又は2において、前記ターゲットと同数のモニタが設けられ、各ターゲットにおける放電の発光波長と発光強度を対応するモニタを用いてモニタリングすることを特徴とするものである。
請求項4のCu2O膜の成膜方法は、請求項1ないし3のいずれか1項において、複数のパルス電圧よりなるパルスパケットを前記複数のターゲットに交互に間欠的に印加することを特徴とするものである。
請求項5のCu2O膜の成膜方法は、請求項1ないし4のいずれか1項において、前記反応性スパッタ法がバイポーラ型デュアルマグネトロンスパッタリング法又はユニポーラ型デュアルマグネトロンスパッタリング法であることを特徴とするものである。
請求項6のCu2O膜の成膜方法は、請求項1ないし5のいずれか1項において、スパッタ時における放電の発光波長及び発光強度をモニタリングすることによって、ターゲットが部分的に酸化されている遷移領域となるように酸素ガスの供給量を制御することを特徴とするものである。
請求項7のCu2O膜の成膜方法は、請求項1ないし6のいずれか1項において、スパッタ時における放電の発光波長と発光強度をモニタリングすることに加えて、さらに成膜時の圧力、パルス電圧のパルス幅、パルス電圧のパルス周波数及び電圧を印加するターゲットを変更するスイッチング周波数の少なくとも一つを変化させることにより、酸素の膜中の含有量を制御することを特徴とするものである。
請求項8のCu2O膜の成膜方法は、請求項1ないし7のいずれか1項において、スパッタ時に基板を加熱することによりCu2O膜の結晶性と結晶系を制御することを特徴とするものである。
請求項9のCu2O膜の成膜方法は、請求項1において、1個のターゲットを用い、間欠的に電圧を印加してスパッタを行うことを特徴とするものである。
請求項10のCu2O膜の成膜方法は、請求項1ないし9のいずれか1項において、ターゲットに間欠的に正の電圧を印加することにより、ターゲットのチャージングを防止することを特徴とするものである。
請求項11のCu2O膜の成膜方法は、請求項1ないし10のいずれか1項において、Cu2O膜中のNとOとの原子比N/Oが3以下となるようにスパッタすることを特徴とするものである。
請求項12のNドープCu2O膜は、Cu2O膜中のNとOとの原子比N/Oが3以下であることを特徴とするものである。
請求項13の太陽電池は、光吸収層を有するpn型、pin型、もしくはショットキー型太陽電池において、該光吸収層が請求項1ないし11のいずれか1項のCu2O膜の成膜方法によって成膜されたCu2O膜よりなることを特徴とするものである。
請求項14のpn型、pin型、もしくはショットキー型太陽電池は、NをNとOとの原子比N/Oが3以下となるようにドープしたNドープCu2O膜よりなる光吸収層を有するものである。
請求項1のCu2O膜の成膜方法にあっては、酸素ガス及び窒素ガスを含む雰囲気にて銅又は酸化銅よりなるターゲットを用いてスパッタしており、これにより、NドープCu2O膜が成膜される。
請求項2のCu2O膜の成膜方法にあっては、複数のターゲットに交互に間欠的な電圧を印加するため、大電流をターゲットに流し、安定した高速成膜を行うことができる。この方法を用いることによって異常放電を大幅に抑制できることから、安定した長時間の放電が可能となりダメージの少ない高品質の膜が作製可能となる。
また、スパッタ時における放電の発光波長と発光強度をモニタリングして雰囲気中の酸素濃度を制御するため、酸化数が制御されたCu2O膜を安定して供給することが可能となる。
請求項3のCu2O膜の成膜方法にあっては、各ターゲットにおける放電の発光波長及び発光強度を対応するモニタによってモニタリングするため、各ターゲットの放電状況を個別に認識することができる。
請求項4のCu2O膜の成膜方法にあっては、各ターゲットにパルスパケットを印加するため、各ターゲットに単一のパルスを印加するときと比べて一層大電流を流すことができ、安定した高速成膜が可能となる。
このCu2O膜の成膜方法は、バイポーラ型デュアルマグネトロンスパッタリング法又はユニポーラ型デュアルマグネトロンスパッタリング法であることが好ましい(請求項5)。
請求項6のようにターゲットが部分的に酸化されている遷移領域となるように酸素ガスの供給量を制御することによって、より正確に所望の組成及び結晶構造を有するCu2O膜を得ることができる。
請求項7の通り、スパッタ時における放電の発光波長と発光強度をモニタリングすることに加えて、さらに成膜時の圧力、パルス電圧のパルス幅、パルス電圧のパルス周波数、電圧を印加するターゲットを変更するスイッチング周波数の少なくとも一つを変化させることによって酸素のCu2O膜中の含有量を制御することより、一層正確に所望の組成及び結晶構造を有するCu2O膜を得ることができる。
請求項8のようにスパッタ時に基板を加熱することにより、Cu2O膜の酸化数及び結晶性を制御することができる。
本発明方法によれば、Cu2O膜中のN量をNとOとの原子比N/Oが3以下程度と高濃度とすることができる(請求項11)。ただし、本発明方法によれば、それよりもN量の少ないCu2O膜を成膜することも可能である。
このように、N濃度の高いNドープCu2O膜(請求項12)は、N濃度が低いものに比べてエネルギーギャップを小さくすることができる。
本発明(請求項13,14)の太陽電池にあっては、光吸収層が上記NドープCu2O膜であるため、光吸収特性に優れ、開放電圧が高いものとなる。
NドープCu2O膜を光吸収層とした太陽電池としては、例えばn型半導体としてZnOを用いた場合では、NドープCu2O/ZnOのpn接合や、NドープCu2O/ノンドープCu2O/ZnOのpin接合、また、ITO/Cu2Oのショットキー接合タイプなどが例示される。n型の半導体としてはZnOが例示されるが、これに限定されない。
本発明では、上記の通り、Cu2O膜にNをドープする。
Cu2OにNをドープすることによってCu2O結晶にホールが導入される。Nはイオン化してN3−となり効率的にCu2Oにホールが導入され、キャリア量の大幅な増加と、それに伴うフェルミ準位の変化を得ることができる。通常Cu2O薄膜は、Cuターゲットを用いてアルゴン・酸素の混合ガス中で反応性スパッタ法により作製することができるが、反応ガス中に窒素を導入することにより、容易にNドープCu2Oを作製することができる。また、キャリア量の制御は反応性ガス中の窒素流量や流量比をコントロールすることによって容易に制御することができる。また、Nをドープすることによってエネルギーギャップの狭小化が可能となる。2.2eVのエネルギーギャップがNのドープによって約1割小さくなる。
本発明では、スパッタをデュアルカソードマグネトロンスパッタ法により行うのが好ましい。このデュアルカソードマグネトロンスパッタ法によってNドープCu2O膜を成膜するには、酸素ガス、窒素ガス及びアルゴンガスを含む雰囲気中でスパッタを行う。隣り合った少なくとも2つ以上のカソードに一定の周期で交互にパルス状の電圧を印加することによって大電流をターゲットに流し、安定した高速成膜が可能である。この方法を用いることによって異常放電を大幅に抑制できることから、安定した長時間の放電が可能となりダメージの少ない高品質のCu2O膜が作製可能となる。
このスパッタを行う場合、雰囲気中の酸素濃度をPEMコントロール法により制御するのが好ましい。即ち、従来の流量計を用いたガス導入量制御で酸化銅を作製した場合、銅の酸化数を安定して制御することは難しい。その理由として例えば、ターゲットの消耗が進むにつれて成膜レートが変化し、成膜時の酸素流量を初めとするCu2Oのスパッタ条件が変化するからである。そこで、成膜時の銅の発光波長と発光量をモニタリングし、プラズマ中の銅の密度からチャンパー内に導入する酸素量を制御するPlasma Emission Monitor Control(PEMコントロール)を採用するのが好ましい。この手法を用いることにより酸化数が制御されたNドープCu2O膜を安定して成膜することが可能となる。
このCu2O膜は、Cu2Oの結晶性が良く、移動度が高い結晶質の膜であることが望ましい。そこで、本発明の成膜方法では、成膜時のパルス電圧のパルス幅や成膜時の圧力を変化させることによって得られるCu2Oの結晶性を高める。また、成膜時の基板加熱を併用することにより、作製される膜の結晶性をより一層向上させることができる。
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は実施の形態に係る太陽電池の模式的な断面図である。太陽電池10は、透明基板1と、この透明基板1上に設けられた透明導電膜2と、この透明導電膜2上にスパッタリングによって形成されたp層3及びn層4と、このn層4上に設けられた金属電極5とからなる。
透明基板1としては、例えばケイ酸アルカリ系ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等のガラスを使用することができる。また、アクリル等の種々のプラスチック基板等を使用することもできる。またPETなどの高分子フィルム基材も用いることができる。基板の厚さは0.1〜10mmが一般的であり、0.3〜5mmが好ましい。ガラス板は、化学的に、或いは熱的に強化させたものが好ましい。
透明導電膜2としては、導電性金属酸化物薄膜や金属等の導電性材料からなる基板が用いられる。導電性金属酸化物の好ましい例としては、In2O3:Sn(ITO)、SnO2:Sb、SnO2:F、ZnO:Al、ZnO:F、CdSnO4を挙げることができる。
p層3は、後述する本発明方法によって成膜されたCu2O膜である。
n層4は金属の酸化物又は金属の酸化窒化物であり、好ましくはTi、Zn及びSnの少なくとも一つを含む金属の酸化物又はTi、Zn及びSnの少なくとも一つを含む金属の酸化窒化物であり、例えばTiO2,ZnO,SnO2などである。
金属電極5としては、白金、Al、Cu、Ti、Ni等が使用できる。
図2はデュアルカソード方式マグネトロンスパッタリング法を説明するための概略図であり、図3は図2のターゲット電極に印加する電圧の一例を説明する図である。支持体20a上にターゲット21aを設けてなるターゲット電極20Aと、その下方に配置された磁石22aとから構成されるスパッタリング部、及び支持体20b上にターゲット21bを設けてなるターゲット電極20Bと、その下方に配置された磁石22bとから構成されるスパッタリング部が隣接して設置され、これらのスパッタリング部に、スイッチングユニット24を介して、交流電源25が接続されている。ターゲット21a,21bは金属銅よりなっている。
これらターゲット電極20A,20Bはカバー26によって覆われている。カバー26は排気口28を介してポンプ(図示略)に接続されており、ガス導入口27を介してガス供給源(図示略)に接続されている。
カバー26内にコリメータ30a,30bが設けられており、これらコリメータ30a,30bは各々カバー26の外側に設けられたプラズマエミッションモニター(以下PEMと称することがある。)31a,31bに接続されている。
PEMは、プラズマの発光をコリメータで集光し、光倍増幅管(PM)で光電変換した電気信号を監視する装置である。PEMはある一定の感度に設定されてプラズマの発光強度をモニタするようになっている。
カバー26内部に、透明導電膜2(図2では省略)が表面に形成された透明基板1を導入し、ポンプによってカバー26内を真空にした後、アルゴン中に酸素及び窒素を含有させた混合ガスをカバー26内に導入する。そして、図3の通り、ターゲット電極20A,20Bに一定の周期で交互にパルスパケット状の電圧を印加して、グロー放電を形成させる。これにより、ターゲット21a,21bから粒子がスパッタされ、この粒子がターゲット21a,21bの上方の基板1上に付着する。この際、ターゲット21a,21b又はスパッタされた粒子は酸素ガスによって酸化されると共に、窒素がドープされる。これにより、NドープCu2O膜よりなるp層3が形成する。
コリメータ30a,30bは放電中のプラズマの方向に向けられており、このコリメータ30a,30bを介して得られたプラズマの発光スペクトルが、図示しないフィルタ及び光倍増幅管を介して電気信号となりPEM31a,31bに取り込まれる。このPEM31a,31bを用いてプラズマ中の銅の発光強度が常に一定になるように酸素ガスの導入流量を制御する。フィルタとしては銅の発光スペクトルの波長204〜328nm用のものを用いることができる。
この方法では、ターゲット電極20A,20Bに交互にパルス状の電力を印加することから、大電流をターゲット電極20A,20Bに流し、安定した高速成膜を低温にて長期に行うことができる。また、異常放電を大幅に抑制でき、ダメージの少ない高品質の膜が作製可能となる。特に、本実施の形態ではパルスパケット状の電圧を印加することから、一層大電流をターゲット電極20A,20Bに流すことができる。このため、低温で、高速に膜が形成されるため、透明導電膜2として特に耐熱性に優れた材料を使用する必要がなく、所望の材料を使用することができる。また、透明基板1についても、通常ガラスが用いられるが、このガラスのような耐熱性を持っていない他の材料(例、プラスチック)を使用することもできる。
酸素の導入量が過剰になると、ターゲット21a,21bの表面が完全に酸化され、成膜速度が非常に遅くなる。このような酸素の導入量が過剰な領域を「反応性スパッタ領域」と称する。一方、酸素の導入量が少な過ぎると、ターゲット表面が酸化されずに成膜が行われ、その結果、成膜中の酸素量が不足する。このような領域を「金属的スパッタ領域」と称する。本実施の形態では、PEMコントロールを行っているため、プラズマ中の金属の密度に基づいて適切な量の酸素を導入することができる。これにより、上記2領域の中間領域である「遷移領域」でのスパッタが可能となる。その結果、適切な量の酸素を含有した膜を高速で成膜することができる。また、このように高速成膜を行うため、窒素が効率よく膜中に取り込まれる。
また、本実施の形態では、成膜時の銅の発光波長と発光強度をモニタリングし、プラズマ中の銅の密度からチャンバー内に導入する酸素量を制御するPlasma Emission Monitor Control(PEMコントロール)手法を用いることにより、酸化数が制御されたCu2O膜を安定して成膜することが可能となる。
本実施の形態において、カソードに印加するパルス電圧のパルス形状やパルス幅、さらには電圧を印加するターゲットを変更するスイッチング周波数を変化させることによって酸化数及び結晶性を制御することができる。即ち、太陽電池吸収層としてCu2Oを用いる場合、Cu2Oの酸化数が精密に制御され、結晶性が良い結晶であることが望ましい。成膜時のパルス電圧のパルス幅や成膜時の圧力を変化させることによって、得られるCu2Oの酸化数及び結晶性をコントロールすることが可能となる。
特に、本実施の形態では、ターゲット電極20A,20Bと同数のPEM31a,31bが設けられ、各ターゲット電極20A,20Bにおける放電の発光波長及び発光強度を対応するPEM31a,31bによってモニタリングするため、各ターゲット電極20A,20Bの放電状況を個別に認識することができる。従って、各ターゲット電極20A,20Bごとにパルスパケット状の電圧のパルス幅、パルス周波数、スイッチング周波数等を変化させることにより、得られるCu2O膜の酸化数及び結晶性を一層精密に制御することができる。
Nドープ量は、雰囲気中の濃度を制御することにより調節することができる。雰囲気中の酸素濃度と窒素濃度との体積比O/Nは10/1〜1/2程度が好適である。
本実施の形態において、成膜時の基板加熱を併用することにより、作製される膜の酸化数及び結晶性をより一層向上させることができる。
本実施の形態においては、各ターゲット電極に交互にパルス状の負の電圧が印加されるが、これに加え、間欠的に正の電圧を印加するようにしてもよい。この場合、負の電圧によってターゲットに蓄積された荷電が正の電圧により解消されるため、スパッタリング中にターゲットの縁部に酸化物等の絶縁膜が形成することが抑えられる。
本実施の形態では、1個の基板1を2個のターゲット電極20A,20Bによって成膜する構成となっているが、1個の基板1を1個のターゲット電極によって成膜する構成になっていてもよい。
上記実施の形態では、2つのスパッタリング部に共通のスイッチングユニット24を設置したバイポーラ型デュアルマグネトロンスパッタリング法を用いたが、各スパッタリング部に個別にスイッチングユニットを設置したユニポーラ型デュアルマグネトロンスパッタリング法を用いてもよい。
また、本実施の形態ではターゲット電極は2個であるが、3個以上であってもよい。
本実施の形態では、pn接合型太陽電池について説明したが、pin型太陽電池やショットキー型太陽電池の光吸収層に本発明方法によって得られたCu2O膜を用いてもよい。
以下、実施例及び比較例について説明する。
通常の反応性スパッタでCu2OへのNドープを試みた。まず、ターゲットとしてのCuを用い、基板にはスライドガラスを用いた。到達真空度は9×10−4Pa以下である。アルゴンと酸素の流量をそれぞれ90sccm、10sccmに固定し、そこにさらに窒素ガスを0〜10sccmまで段階的に加えて成膜した。成膜のパワーは200Wである。基板加熱は行っていない。
得られた薄膜の厚さはVeeco社製Dektak6Mで測定したところ、全て約5000Åであった。また、得られた膜をXRD結晶構造解析したところ全ての膜でCu2Oの単相であることを確認した。キャリア濃度は通常のVan der Pauw法ホール測定から求めた。
エネルギーギャップは、まず、Hitachi社製Spectrophotometer U−4000で透過スペクトルと反射スペクトルを測定し、両者のスペクトルから屈折率・消衰係数・吸収係数αを求めた。続いて、得られたαから、Evs.(αE)2プロットを行うことによって光学的な吸収端を求め、それをエネルギーギャップとした。結果を図4に示す。
図4の通り、窒素流量を増加させることにより、キャリア濃度が大幅に変化していることがわかる。窒素流量を10sccmとすることにより、窒素を導入しない場合に比べて1000倍のキャリア濃度を得ることができた。また、エネルギーギャップも窒素の導入に従って小さくなっていることが認められる。このことから、Nを導入することによってCu2Oへの効果的なホールドープを行うことができ、同時にエネルギーギャップの狭小化が可能であることが分かった。
また、窒素をドープしないCu2OとドープしたCu2O試料の両者にZnOを積層させてpn接合を作製し、両者の光起電力を測定したところ、AM1.5の条件下で、0.05Vから0.20Vへの開放電圧上昇を確認することができた。
1 透明基板
2 透明導電膜
3 p層
4 n層
5 金属電極
10 太陽電池
20a,20b 支持体
20A,20B ターゲット電極
21a,21b ターゲット
22a,22b 磁石
24 スイッチングユニット
25 交流電源
26 カバー
27 ガス導入口
28 排気口
30a,30b コリメータ
31a,31b PEM
2 透明導電膜
3 p層
4 n層
5 金属電極
10 太陽電池
20a,20b 支持体
20A,20B ターゲット電極
21a,21b ターゲット
22a,22b 磁石
24 スイッチングユニット
25 交流電源
26 カバー
27 ガス導入口
28 排気口
30a,30b コリメータ
31a,31b PEM
Claims (14)
- 反応性スパッタ法によってCu2O膜を成膜する方法において、
酸素ガス及び窒素ガスを含む雰囲気にて銅又は酸化銅よりなるターゲットを用いてスパッタすることにより、NドープCu2O膜を成膜することを特徴とするCu2O膜の成膜方法。 - 請求項1において、複数の前記ターゲットを用い、各ターゲットに交互に間欠的な電圧を印加してスパッタを行い、
スパッタ時における放電の発光波長と発光強度をモニタリングして雰囲気中の酸素濃度を制御することにより成膜される膜中の酸素含有量を制御することを特徴とするCu2O膜の成膜方法。 - 請求項1又は2において、前記ターゲットと同数のモニタが設けられ、各ターゲットにおける放電の発光波長と発光強度を対応するモニタを用いてモニタリングすることを特徴とするCu2O膜の成膜方法。
- 請求項1ないし3のいずれか1項において、複数のパルス電圧よりなるパルスパケットを前記複数のターゲットに交互に間欠的に印加することを特徴とするCu2O膜の成膜方法。
- 請求項1ないし4のいずれか1項において、前記反応性スパッタ法がバイポーラ型デュアルマグネトロンスパッタリング法又はユニポーラ型デュアルマグネトロンスパッタリング法であることを特徴とするCu2O膜の成膜方法。
- 請求項1ないし5のいずれか1項において、スパッタ時における放電の発光波長及び発光強度をモニタリングすることによって、ターゲットが部分的に酸化されている遷移領域となるように酸素ガスの供給量を制御することを特徴とするCu2O膜の成膜方法。
- 請求項1ないし6のいずれか1項において、スパッタ時における放電の発光波長と発光強度をモニタリングすることに加えて、さらに成膜時の圧力、パルス電圧のパルス幅、パルス電圧のパルス周波数及び電圧を印加するターゲットを変更するスイッチング周波数の少なくとも一つを変化させることにより、酸素の膜中の含有量を制御することを特徴とするCu2O膜の成膜方法。
- 請求項1ないし7のいずれか1項において、スパッタ時に基板を加熱することによりCu2O膜の結晶性と結晶系を制御することを特徴とするCu2O膜の成膜方法。
- 請求項1において、1個のターゲットを用い、間欠的に電圧を印加してスパッタを行うことを特徴とするCu2O膜の成膜方法。
- 請求項1ないし9のいずれか1項において、ターゲットに間欠的に正の電圧を印加することにより、ターゲットのチャージングを防止することを特徴とするCu2O膜の成膜方法。
- 請求項1ないし10のいずれか1項において、Cu2O膜中のNとOとの原子比N/Oが3以下となるようにスパッタすることを特徴とするCu2O膜の成膜方法。
- Cu2O膜中のNとOとの原子比N/Oが3以下であることを特徴とするNドープCu2O膜。
- 光吸収層を有するpn型、pin型、もしくはショットキー型太陽電池において、該光吸収層が請求項1ないし11のいずれか1項のCu2O膜の成膜方法によって成膜されたCu2O膜よりなることを特徴とする太陽電池。
- NをNとOとの原子比N/Oが3以下となるようにドープしたNドープCu2O膜よりなる光吸収層を有するpn型、pin型、もしくはショットキー型太陽電池。
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