JP2006027948A - 単層カーボンナノチューブの製法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 炭素含有ガスを触媒金属が担持された支持体2上に流し、気相成長法により支持体2上に単層カーボンナノチューブ6を成長させ、得られた単層カーボンナノチューブ6を回収した後、この支持体2をそのまま再使用して、この支持体2上に単層カーボンナノチューブ6を成長させる。
【選択図】 図3
Description
気相成長法にあっては、基本的に触媒金属と炭素源である炭素化合物を共存させ、温度1000〜1300℃、圧力0.666kPa(5Torr)〜常圧の条件でSWNTを合成するものである。ここでの炭素源としては、アセチレン、エチレン、エタノールなどが、触媒金属としては、Ni、Co、Feなどが用いられる。
一方、炭素源として一酸化炭素(以下、「CO」と略記する。)を用いて、気相成長法によりSWNTを合成するHiPco(High Pressure CO)法が提案されている(例えば、非特許文献1ないし3参照。)。このHiPco法は、COと触媒金属となる気体状のフェロセンとを反応器内に送り込み、温度1000℃、圧力10000kPa(100atm)程度の反応条件でSWNTを合成するものである。このHiPco法により、SWNTの大量合成が可能になった。また、SWNTの炭素源として、安価なCOを用いることが可能になった。
また、SWNTの合成の際、用いた触媒金属の40wt%以上がSWNT中に取り込まれるという現象があった。従って、SWNTの合成に寄与する触媒金属の量が実質的に少なく、その結果、収率が低いとともに、構造欠陥が多いという問題があった。また、反応条件が高温、高圧で過酷であるという問題があった。
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また、SWNT中に触媒金属粒子が含まれず、構造欠陥が少なく、高純度で精製処理が不要なSWNTを合成する製法を提供することにある。
さらに、炭素源として安価なCOを用いるとともに、反応条件が低温、低圧である製法を提供することにある。
請求項1にかかる発明は、炭素含有ガスを触媒金属が担持された支持体上に流し、気相成長法により支持体上にSWNTを成長させ、得られたSWNTを回収した後、この支持体をそのまま再使用して、この支持体上にSWNTを成長させることを特徴とするSWNTの製法である。
また、本発明のSWNTの製法によれば、構造欠陥が少なく、直径分布の狭いSWNTを得ることができるとともに、合成したSWNT中に触媒が含まれず、高純度で精製処理が不要なSWNTを得ることができる。
さらに、本発明のSWNTの製法によれば、低温、低圧の条件でSWNTを合成することができるため、製造装置の運転コストを低くすることができる。また、SWNTの炭素源としてCOを用いることができるため、原料コストを低くすることができる。
このSWNT合成用触媒としては、特に限定されるものではなく、従来から気相成長法によってSWNTを合成することのできる触媒、例えば、石英ガラス板、耐熱ガラス板などの板状体や多孔質シリカ、ゼオライトなどからなる粒状物などの支持体表面に、コバルト、ニッケル、鉄などの8族、9族、10族遷移金属からなる触媒金属を担持したものであれば、いかなるものでも使用できる。その中でも、以下に説明するSWNT合成用触媒を用いることが、反応条件が温和で、生成効率がよく、構造欠陥が少なく、高純度のSWNTが得られる点で好ましい。
支持体2には、石英ガラス、耐熱ガラスなどのガラス、シリカ、アルミナなどのセラミックスなどが材料として用いられる。主触媒金属3は、コバルト、ニッケル、鉄などの8族、9族、10族遷移金属の微細粒子からなるもので、主にSWNTの生成に寄与する触媒機能を有するものである。助触媒金属4はモリブデン、クロム、タングステンなどの6族遷移金属、またはその酸化物の微細粒子からなるもので、主に主触媒金属3の凝集、焼結を防ぐための機能を有するものである。
先ず、第1および第2の例の担持型触媒1の製法について説明する。
この製法は、基本的には、主触媒金属3となる前駆体と、助触媒金属4となる前駆体とを含む溶液もしくは分散液に支持体2を浸漬し、ついでこの支持体2を所定の速度で引き上げ、さらに、400〜500℃で加熱するものである。
上記前駆体としては、例えば、主触媒金属3となるコバルト、ニッケル、鉄、助触媒金属4となるモリブデン、クロム、タングステンなどの可溶性塩やこれら金属の酸化物などを適宜組合せ、これらをアルコール、水などの溶媒または分散媒に溶解または分散し、溶液または分散液として使用に供される。
この例では、ゾル−ゲル法によって、主触媒金属3が分散した多孔質のシリカ膜5を支持体2上に形成する。具体的には、水とアルコールとの混合溶媒に酢酸コバルト、硝酸コバルトなどの主触媒金属3の可溶性塩およびアルコキシシランを添加、混合してゾルを形成する。ついで、このゾルに支持体2を所定時間浸漬し、引き上げ、これを400〜500℃で加熱して、支持体2上に主触媒金属3が分散した多孔質のシリカ膜5を形成する。この際、シリカ膜5における主触媒金属3を疎に分散した状態とするために、主触媒金属3の濃度を、触媒金属を含むシリカ膜に対して1.00〜5.00wt%となるように調整する。
以上の製法により、第3の例の担持型触媒1を製造することができる。
なお、ゾル中には、主触媒金属3に加えて、助触媒金属4を添加、混合してもよい。
図2は、この製法に用いられる製造設備の一例を示すブロック図である。この製造設備は、ガス供給部11と、反応部12と、ガス冷却部13とから概略構成されている。
ガス供給部11は、炭素源となる炭素含有ガスとH2を反応部12に供給するものであり、図示しない各ガス供給源からの炭素含有ガスまたはH2が開閉弁111,112、流量計113,114および流量制御弁115,116を介して、管117に送られ、ガス加熱器14で、25〜300℃に加熱され反応部12に送られるようになっている。なお、炭素含有ガスとしては、アセチレン、エチレン、エタノール、COなどが用いられる。その中でも、価格の観点から最も安価であるCOが好ましい。
反応部12は、石英ガラスなどからなる反応管121と、この反応管121を包囲して加熱するヒータ122とから構成されており、反応管121のヒータ122から突出した両端部は、冷却水によって冷却されるようになっている。また、反応管121の一端部には、ガス加熱器14からの管123が接続され、ガス加熱器14で加熱された反応用ガスが導入されるようになっている。
ガス冷却部13は、排ガスを冷却するガス冷却器131と、このガス冷却器131から排出される水を貯めるドレインタンク132とから構成され、排ガスを常温付近まで冷却して、系外に排出するものである。
先ず、石英ボートなどに上述した担持型触媒1を載置して、反応管121の内部に装填する。ついで、H2を反応管121内に流しながら、ヒータ122を動作させて、反応管121内部の温度を室温から、700〜800℃に昇温し、この温度に保持しつつ、H2を流して、支持体2に担持されている主触媒金属3および助触媒金属4を還元する。ついで、炭素含有ガスおよびH2をガス加熱器14で25〜300℃に加熱して、反応管121内に供給し、気相成長反応(CVD反応)により、SWNTを成長させる。この反応時の温度は700〜800℃、圧力は50〜150kPa(0.5〜1.5atm)、時間は10〜240分とされる。また、炭素含有ガスおよびH2の流量に関しては、空間速度で表すと、炭素含有ガスが5〜10min−1、H2が1〜5min−1とされる。なお、空間速度とは、原料ガスの体積流量を反応管121の有効体積で割った値である。
反応後、炭素含有ガスとH2の供給を停止し、反応管121内にアルゴンガスなどの不活性ガスを流して、室温まで冷却する。反応中に生成した排ガスは、ガス冷却器131で室温まで冷却されて、系外に排出され、冷却において生じた水はドレインタンク132に貯められる。
以上の製法により、担持型触媒1にSWNTが合成され、成長する。
図3(a)は、図1(a)に示した第1の例の担持型触媒1を用いて、SWNT6を成長させたときのもので、主触媒金属3が疎に分散されて担持されたものを用いた場合である。このように、主触媒金属3が疎に分散されて担持された触媒支持体1を用いることによって、これに成長するSWNT6は、支持体2の表面に平行に配向し、表面上を這うように成長する。
図3(b)は、図1(b)に示した第2の例の担持型触媒1を用いて、SWNT6を成長させたときのもので、主触媒金属3が密に分散されて担持されたものを用いた場合である。このように、主触媒金属3が密に分散されて担持された触媒支持体1を用いることによって、これに成長するSWNT6は、支持体2の表面に垂直に配向し、草木が延びる様に成長する。
図3(c)は、図1(c)に示した第3の例の担持型触媒1を用いて、SWNT6を成長させたときのもので、主触媒金属3が疎に分散されて担持されたものを用いた場合であり、図4に示したように、SWNT6が支持体2の表面に平行に配向し、表面上を這うように成長する。
このSWNTの回収方法としては、特に限定されるものではなく、担持型触媒1が板状であった場合には、担持型触媒1から粘着層を有する膜に転写する方法、スクレーパによる自動掻き取り方法、溶媒中で超音波除去・ろ過・乾燥を行う方法、真空引きによる吸引方法、基板にピエゾ素子を貼り付けて超音波を入射する加振・回収方法、ホーンにより垂直配向したSWNTに音波を当てて共鳴させる加振・回収方法などがある。また、担持型触媒1が粒状であった場合には、これを篩にかけて互いに擦れ合わせて掻き落とす方法などがある。
以下、上記回収方法の一例として、転写法について説明する。
転写支持体8の材料としては、膜状に成形できるものであればよく、例えば、金属、ガラス、プラスチックなどが用いられる。また、転写支持体8の形状は特に限定されない。図4では、転写支持体8の形状が板状に図示されているが、本発明はこれに限られることなく、多孔質状、湾曲状であってもよい。
粘着層9の材料としては、粘着性を有するものであればよく、例えば、ウレタン系、エポキシ系、シリコーン系、エステル系、アクリル系などの粘着剤などが用いられる。この粘着層9は、転写支持体8のSWNT6と接触する表面に設けられている。
先ず、石英ボートなどに使用済の担持型触媒1を載置して、反応管121の内部に装填する。ついで、反応管121内を開放系にし、空気雰囲気下においてヒータ122を動作させて、反応管121内部の温度を室温から600〜750℃に昇温し、5〜10分間保持する。この前処理により、前回のSWNT6の合成の際に、担持型触媒1および反応管121の内部に生じて残留したSWNT6の小片またはアモルファス炭素などの不純物を焼散する。従って、SWNT6の合成に適した状態が再生することになる。
以後の工程は、上述したSWNT6の製法と同様であるので、その説明を省略する。
実施例1では、第1の例の担持型触媒1の製造、およびこの担持型触媒1を用いたSWNT6の製造を行った。
ついで、支持体2として石英ガラス板を用い、この石英ガラス板を上記分散液に数分間浸漬した。その後、支持体2を4cm/分の速度で引き上げ、続いて、石英ボートに載置して電気炉に投入し、400℃、5分間加熱した。加熱後、石英ボートを取り出し、常温まで冷却した。以上の製法により、第1の例の担持型触媒1を得た。
先ず、石英ボートに第2の例の担持型触媒1を載置して、反応管121の内部に装填した。ついで、H2を反応管121内に流しながら、ヒータ122を動作させて、反応管121内部の温度を室温から、750℃に昇温し、この温度に保持しつつ、H2を流して、支持体2に担持されている主触媒金属3および助触媒金属4を還元した。ついで、COおよびH2の温度をガス加熱器14で300℃に加熱し、反応管121内に供給し、気相成長反応により、SWNT5を成長させた。この反応時の温度は750℃、圧力は常圧、時間は30分であった。また、CO、H2の流量はそれぞれ0.2NLMであった。
反応後、CO、H2の供給を停止し、反応管121内にアルゴンガスを流して、室温まで冷却した。反応中に生成した排ガスは、ガス冷却器131で室温まで冷却されて、系外に排出され、冷却において生じた水はドレインタンク132に貯められた。
以上の製法により、第1の例の担持型触媒1にSWNT6を合成し、成長させた。
さらに、ラマン散乱スペクトルによる観察の結果、得られたSWNT6の直径は1〜1.3nm程度の細いもので、直径分布が非常に狭く、高純度であって、触媒金属を含んでいないことが判明した。また、ラマン散乱スペクトルと走査型電子顕微鏡写真とを比較することにより、複数本からなるバンドルを形成していることが明らかとなった。
実施例2では、実施例1において担持型触媒1に成長したSWNT6の回収、前処理、および担持型触媒1を再使用したSWNT6の製造を行った。
転写体7として、転写支持体8がプラスチックであり、粘着層9がアクリル系粘着剤であるものを用意し、この転写体7を担持型触媒1に、粘着層9と担持型触媒1のSWNT6が成長している面とが相対峙するように接触させた。その後、転写体7を担持型触媒1から引き離してSWNT6を回収した。
回収後の担持型触媒1の走査型電子顕微鏡写真を、図6に示す。この写真から、転写法を用いることにより、担持型触媒1にはSWNT6がほとんど存在していないことが明らかとなった。
SWNT6の回収後、石英ボートなどに使用済の担持型触媒1を載置して、反応管121の内部に装填した。ついで、反応管121内を開放系にし、空気雰囲気下においてヒータ122を動作させて、反応管121内部の温度を室温から700℃に昇温し、10分間保持した。その後、この担持型触媒1を用いて、SWNT6の合成を再度行った。SWNT6の製法は実施例1のものと同じであるので、その説明を省略する。
得られたSWNT6の走査型顕微鏡の写真を、図7に示す。この写真から、一度使用した担持型触媒1を再使用しても、SWNT6を合成し、成長させることができることが明らかとなった。
実施例3では、本発明のSWNTの製法における回数制限を調査した。
具体的には、実施例2の工程を繰り返し、SWNT6の製造を計50回行うことを試みた。SWNT6の回収、担持型触媒1と反応管121の再生、およびこの担持型触媒1を再度使用したSWNT6の製造の方法は、実施例2と同様であるので、その説明を省略する。
結果、SWNT6が同一の担持型触媒1から50回製造されることが確認された。
Claims (4)
- 炭素含有ガスを触媒金属が担持された支持体上に流し、気相成長法により支持体上に単層カーボンナノチューブを成長させ、得られた単層カーボンナノチューブを回収した後、この支持体をそのまま再使用して、この支持体上に単層カーボンナノチューブを成長させることを特徴とする単層カーボンナノチューブの製法。
- 触媒金属が担持された支持体の再度の使用回数が2〜50回であることを特徴とする請求項1記載の単層カーボンナノチューブの製法。
- 単層カーボンナノチューブの回収が、転写法により行われることを特徴とする請求項1記載の単層カーボンナノチューブの製法。
- 炭素含有ガスが一酸化炭素であることを特徴とする請求項1記載の単層カーボンナノチューブの製法。
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