しかし、版胴を複数有する場合であって、たとえばその最大印刷画像面積がA3である印刷装置の場合には、各版胴の径が約180〜200mmにもなるため、用紙を版胴から剥離する際に用紙のコシの強さを利用した剥離が難しくなり、いわゆる巻き上がりやジャム等の不具合が生じ易いという問題、各版胴を回転駆動するための動力を大きくしなければならないという問題があった。
その他にも、大きな版胴を用紙の搬送方向に並べると、印刷装置が大型化し、重量が大きくなるとともに価格が高くなってしまうという問題、版胴間距離が大きくなり版胴間で用紙が自由状態となるため小サイズの用紙への印刷ができない、または印刷ができても各版胴による印刷位置のずれが生じるといった問題があった。
また、孔版印刷装置においては、複数の版胴を有する場合、版胴が大型であると、版胴に巻き付けるマスタの無駄が生じ易いという問題もある。
すなわち、孔版印刷装置では、その最大印刷画像面積はA3サイズまたはB4サイズが主流であるが、一般のユーザーが使用する用紙の大きさは、その80%がA4サイズであり、A3サイズはせいぜい10%程度である。もちろん小中学校のように、更紙使用が多いといった特殊な事情のもとでは、B4サイズの印刷が30〜60%を占める場合もあるが、そのような場合でも、B4サイズ以外の印刷を行うとき、そのサイズは主にA4である。
また、孔版印刷機においては、使用するマスタのサイズは、実際に印刷を行う用紙や画像のサイズにかかわらず、版胴の大きさによって決定されるため、最大印刷画像面積よりも小さなサイズの印刷を行うときには、マスタの無駄が生じることとなる。
したがって、頻度の比較的少ない大サイズの印刷を行うことをも考慮して、最大印刷画像面積がA3サイズ、B5サイズの孔版印刷機を購入すると、それよりも小さなサイズの印刷を行うことが多い実情のもとでは、原紙が無駄に消費される場合が多いこととなる。
たとえば、A3サイズの印刷が時々あるからといって、最大印刷画像面積がA3サイズの孔版印刷機を購入しても、通常行うA4サイズの印刷では、毎回A3サイズで版胴に巻き付けられるマスタの実質的な使用率はおよそ50%以下となり、マスタの無駄使いとなってしまう。
よって、版胴を複数備える孔版印刷装置では、マスタの無駄が非常に生じ易く、またランニングコストが大きくなってしまうという問題があった。
これらの問題から、版胴の大きさは小さいことが望ましく、特に、複数の版胴を備えた印刷装置にあっては版胴の小型化が重要であることがわかる。ただし、版胴を小型化しても、A3サイズ等の大サイズの印刷性能は維持することが要求される。
本発明は、複数の版胴を有する、孔版印刷装置等の印刷装置及びこのような印刷装置を用いた印刷方法であって、特に、小型の版胴を用いながらも大サイズの印刷を可能とした印刷装置及び印刷方法の提供を目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、複数の版胴を有し、用紙の搬送方向において、各版胴の印刷範囲よりも、サイズの大きな用紙に対して印刷を行うときに、用紙に対する前記各版胴による印刷位置が、用紙の搬送方向において用紙上の異なる範囲を占めるずらし印刷を行うことが可能である印刷装置にある。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の印刷装置において、用紙の搬送方向において隣り合う前記版胴相互間の、用紙の搬送方向における用紙に対する印刷位置を、前記各版胴の用紙の搬送方向における印刷範囲分だけずらして印刷することによって、前記ずらし印刷を行うことを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の印刷装置において、用紙に対する前記各版胴による印刷位置が用紙の搬送方向において用紙上の異なる範囲を占めるずらし印刷モードであるときに、前記ずらし印刷を行うことを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項3記載の印刷装置において、前記ずらし印刷モードを指定するずらし印刷モード入力手段を有することを特徴とする。
請求項5記載の発明は、請求項3または4記載の印刷装置において、用紙に対する前記各版胴による印刷位置が用紙の搬送方向において用紙上の同一範囲を占める重ね印刷モードにて印刷を行うことが可能であることを特徴とする。
請求項6記載の発明は、請求項5記載の印刷装置において、前記重ね印刷モードを指定する重ね印刷モード入力手段を有することを特徴とする。
請求項7記載の発明は、請求項5または6記載の印刷装置において、前記ずらし印刷モードであるか前記重ね印刷モードであるかに応じて、用紙に対する前記各版胴による印刷位置を用紙の搬送方向において調整する印刷位置調整手段を有することを特徴とする。
請求項8記載の発明は、請求項7記載の印刷装置において、前記印刷位置調整手段が、前記各版胴相互間の位相を調整することにより、用紙に対する前記各版胴による印刷位置を用紙の搬送方向において調整することを特徴とする。
請求項9記載の発明は、請求項7または8記載の印刷装置において、前記印刷位置調整手段が、前記各版胴を互いに独立して回転駆動する版胴駆動手段と、前記版胴駆動手段による前記各版胴の回転駆動を制御する制御手段とを有することを特徴とする。
請求項10記載の発明は、請求項9記載の印刷装置において、前記各版胴のそれぞれに対して配設され、用紙を前記各版胴に対して押圧する複数の印圧部材と、前記制御手段によって独立に制御され前記各印圧部材を前記各版胴に対して接離させる印圧駆動手段とを有することを特徴とする。
請求項11記載の発明は、請求項7ないし10の何れか1つに記載の印刷装置において、前記ずらし印刷モードであるときに、前記印刷位置調整手段が、用紙の搬送方向において隣り合う前記版胴相互間の、用紙の搬送方向における用紙に対する印刷位置を、前記各版胴の用紙の搬送方向における印刷範囲分だけずらすことを特徴とする。
請求項12記載の発明は、請求項11記載の印刷装置において、前記各版胴の印刷範囲がA4サイズであり、印刷すべきサイズがA3サイズであるとき、前記ずらし印刷モード時に、前記印刷位置調整手段が、用紙の搬送方向において隣り合う版胴相互間の、用紙の搬送方向における用紙に対する印刷位置を、A4サイズ分だけずらすことを特徴とする。
請求項13記載の発明は、請求項1ないし12の何れか1つに記載の印刷装置において、前記各版胴にマスタを巻き付けて印刷を行うことを特徴とする。
請求項14記載の発明は、請求項13記載の印刷装置において、前記各版胴に巻き付けられるマスタを製版する製版手段を有し、用紙の搬送方向において前記各版胴の印刷可能範囲よりもサイズの大きな印刷を行うとき、前記ずらし印刷を行うために、前記製版手段が、前記各版胴による印刷位置に応じて、当該版胴により印刷すべき画像に対応した製版を行うことを特徴とする。
請求項15記載の発明は、請求項1ないし14の何れか1つに記載の印刷装置において、前記各版胴による印刷の色を互いに異ならせることが可能であり、前記各版胴による印刷の色を検知する色検知手段と、前記ずらし印刷を行うときに、前記色検知手段が、複数の色を検知すると、警告を出力するずらし印刷警告出力手段とを有することを特徴とする。
請求項16記載の発明は、請求項2ないし15の何れか1つに記載の印刷装置において、前記各版胴による印刷の色を互いに異ならせることが可能であり、前記各版胴による印刷の色を検知する色検知手段と、前記重ね印刷モードであるときに、前記色検知手段が、同じ色を検知すると、警告を出力する重ね印刷警告出力手段とを有することを特徴とする。
請求項17記載の発明は、請求項1ないし16の何れか1つに記載の印刷装置において、用紙の搬送方向において、各版胴の印刷範囲よりも、サイズの大きな用紙を給紙する給紙手段を有することを特徴とする。
請求項18記載の発明は、請求項1ないし17の何れか1つに記載の印刷装置において、用紙の搬送方向において、各版胴の印刷範囲よりも、サイズの大きな原稿を読み取る原稿読み取り手段を有することを特徴とする。
請求項19記載の発明は、請求項18記載の印刷装置において、前記原稿読み取り手段によって読み取られた原稿のサイズが、用紙の搬送方向において、前記各版胴の印刷範囲よりも大きいときには、前記ずらし印刷を行うことを特徴とする。
請求項20記載の発明は、請求項1ないし19の何れか1つに記載の印刷装置を用いて印刷を行う印刷方法にある。
本発明は、複数の版胴を有し、用紙の搬送方向において、各版胴の印刷範囲よりも、サイズの大きな用紙に対して印刷を行うときに、用紙に対する前記各版胴による印刷位置が、用紙の搬送方向において用紙上の異なる範囲を占めるずらし印刷を行うことが可能であるので、小型の版胴を用いながらも大サイズの印刷を可能とし、用紙を版胴から剥離する際に用紙のコシの強さを利用した剥離が容易となり、いわゆる巻き上がりやジャム等の不具合が生じ難く、また各版胴を回転駆動するための動力が低減されるためランニングコストが抑制され、さらに、版胴間距離が小さく小サイズの用紙への印刷を印刷位置のずれを防止して良好に行うことができる、小型、低重量、低価格の印刷装置を提供することができる。
用紙の搬送方向において隣り合う版胴相互間の、用紙の搬送方向における用紙に対する印刷位置を、各版胴の用紙の搬送方向における印刷範囲分だけずらして印刷することによって、ずらし印刷を行うこととすれば、小型の版胴を用いながらも各版胴による印刷位置を最適にずらして大サイズの印刷を各版胴により継目なく行うことで原稿画像を良好に再現できる印刷を可能とし、用紙を版胴から剥離する際に用紙のコシの強さを利用した剥離が容易となり、いわゆる巻き上がりやジャム等の不具合が生じ難く、また各版胴を回転駆動するための動力が低減されるためランニングコストが抑制され、さらに、版胴間距離が小さく小サイズの用紙への印刷を印刷位置のずれを防止して良好に行うことができる、小型、低重量、低価格かつ高画質の印刷装置を提供することができる。
用紙に対する各版胴による印刷位置が用紙の搬送方向において用紙上の異なる範囲を占めるずらし印刷モードであるときに、ずらし印刷を行うこととすれば、ずらし印刷モードにおいて、小型の版胴を用いながらも大サイズの印刷を行うことができ、用紙を版胴から剥離する際に用紙のコシの強さを利用した剥離が容易となり、いわゆる巻き上がりやジャム等の不具合が生じ難く、また各版胴を回転駆動するための動力が低減されるためランニングコストが抑制され、さらに、版胴間距離が小さく小サイズの用紙への印刷を印刷位置のずれを防止して良好に行うことができる、小型、低重量、低価格の印刷装置を提供することができる。
ずらし印刷モードを指定するずらし印刷モード入力手段を有することとすれば、操作者が希望するときにずらし印刷モードを設定することができ、このずらし印刷モードにおいて、小型の版胴を用いながらも大サイズの印刷を行うことができ、用紙を版胴から剥離する際に用紙のコシの強さを利用した剥離が容易となり、いわゆる巻き上がりやジャム等の不具合が生じ難く、また各版胴を回転駆動するための動力が低減されるためランニングコストが抑制され、さらに、版胴間距離が小さく小サイズの用紙への印刷を印刷位置のずれを防止して良好に行うことができる、小型、低重量、低価格の印刷装置を提供することができる。
用紙に対する各版胴による印刷位置が用紙の搬送方向において用紙上の同一範囲を占める重ね印刷モードにて印刷を行うことが可能であることとすれば、重ね印刷を行うことができ、多色印刷が可能となっているとともに、ずらし印刷モードにおいて、小型の版胴を用いながらも大サイズの印刷を行うことができ、用紙を版胴から剥離する際に用紙のコシの強さを利用した剥離が容易となり、いわゆる巻き上がりやジャム等の不具合が生じ難く、また各版胴を回転駆動するための動力が低減されるためランニングコストが抑制され、さらに、版胴間距離が小さく小サイズの用紙への印刷を印刷位置のずれを防止して良好に行うことができ、目的に応じた自由度の高い印刷を行うことができる、小型、低重量、低価格の印刷装置を提供することができる。
重ね印刷モードを指定する重ね印刷モード入力手段を有することとすれば、操作者が希望するときに、重ね印刷モードを設定して、重ね印刷を行うことができ、多色印刷が可能となっているとともに、ずらし印刷モードにおいて、小型の版胴を用いながらも大サイズの印刷を行うことができ、用紙を版胴から剥離する際に用紙のコシの強さを利用した剥離が容易となり、いわゆる巻き上がりやジャム等の不具合が生じ難く、また各版胴を回転駆動するための動力が低減されるためランニングコストが抑制され、さらに、版胴間距離が小さく小サイズの用紙への印刷を印刷位置のずれを防止して良好に行うことができ、目的に応じた自由度の高い印刷を行うことができる、小型、低重量、低価格の印刷装置を提供することができる。
ずらし印刷モードであるか重ね印刷モードであるかに応じて、用紙に対する各版胴による印刷位置を用紙の搬送方向において調整する印刷位置調整手段を有することとすれば、重ね印刷を行うことができ、多色印刷が可能となっているとともに、ずらし印刷モードにおいて、小型の版胴を用いながらも大サイズの印刷を行うことができ、用紙を版胴から剥離する際に用紙のコシの強さを利用した剥離が容易となり、いわゆる巻き上がりやジャム等の不具合が生じ難く、また各版胴を回転駆動するための動力が低減されるためランニングコストが抑制され、さらに、版胴間距離が小さく小サイズの用紙への印刷を印刷位置のずれを防止して良好に行うことができ、目的に応じた自由度の高い印刷を、印刷位置調整手段を用いて各版胴による印刷位置を調整することで良好に行うことができる、小型、低重量、低価格の印刷装置を提供することができる。
印刷位置調整手段が、各版胴相互間の位相を調整することにより、用紙に対する各版胴による印刷位置を用紙の搬送方向において調整することとすれば、重ね印刷を行うことができ、多色印刷が可能となっているとともに、ずらし印刷モードにおいて、小型の版胴を用いながらも大サイズの印刷を行うことができ、用紙を版胴から剥離する際に用紙のコシの強さを利用した剥離が容易となり、いわゆる巻き上がりやジャム等の不具合が生じ難く、また各版胴を回転駆動するための動力が低減されるためランニングコストが抑制され、さらに、版胴間距離が小さく小サイズの用紙への印刷を印刷位置のずれを防止して良好に行うことができ、目的に応じた自由度の高い印刷を、印刷位置調整手段を用いて各版胴による印刷位置を調整することで良好に行うことができる、小型、低重量、低価格の印刷装置を提供することができる。
印刷位置調整手段が、各版胴を互いに独立して回転駆動する版胴駆動手段と、版胴駆動手段による各版胴の回転駆動を制御する制御手段とを有することとすれば、重ね印刷を行うことができ、多色印刷が可能となっているとともに、ずらし印刷モードにおいて、小型の版胴を用いながらも大サイズの印刷を行うことができ、用紙を版胴から剥離する際に用紙のコシの強さを利用した剥離が容易となり、いわゆる巻き上がりやジャム等の不具合が生じ難く、また各版胴を回転駆動するための動力が低減されるためランニングコストが抑制され、さらに、版胴間距離が小さく小サイズの用紙への印刷を印刷位置のずれを防止して良好に行うことができ、さらには、かかる版胴駆動手段と制御手段とを有する印刷位置調整手段を用いて各版胴による印刷位置を高自由度且つ高精度で調整することが可能であるから、目的に応じた自由度の高い印刷を高精度で良好に行うことができる、高画質、小型、低重量、低価格の印刷装置を提供することができる。
各版胴のそれぞれに対して配設され、用紙を各版胴に対して押圧する複数の印圧部材と、制御手段によって独立に制御され各印圧部材を各版胴に対して接離させる印圧駆動手段とを有することとすれば、重ね印刷を行うことができ、多色印刷が可能となっているとともに、ずらし印刷モードにおいて、小型の版胴を用いながらも大サイズの印刷を行うことができ、用紙を版胴から剥離する際に用紙のコシの強さを利用した剥離が容易となり、いわゆる巻き上がりやジャム等の不具合が生じ難く、また各版胴を回転駆動するための動力が低減されるためランニングコストが抑制され、さらに、版胴間距離が小さく小サイズの用紙への印刷を印刷位置のずれを防止して良好に行うことができ、さらには、かかる版胴駆動手段と制御手段とを有する印刷位置調整手段及び印圧駆動手段を用いて各版胴による印刷位置および各版胴に対する用紙の押圧タイミングを高自由度且つ高精度で調整することが可能であるから、目的に応じた自由度の高い印刷を高精度で良好に行うことができる、高画質、小型、低重量、低価格の印刷装置を提供することができる。
ずらし印刷モードであるときに、印刷位置調整手段が、用紙の搬送方向において隣り合う版胴相互間の、用紙の搬送方向における用紙に対する印刷位置を、各版胴の用紙の搬送方向における印刷範囲分だけずらすこととすれば、重ね印刷を行うことができ、多色印刷が可能となっているとともに、ずらし印刷モードにおいて、小型の版胴を用いながらも各版胴による印刷位置を最適にずらして大サイズの印刷を各版胴により継目なく行うことで原稿画像を良好に再現できる印刷を行うことができ、用紙を版胴から剥離する際に用紙のコシの強さを利用した剥離が容易となり、いわゆる巻き上がりやジャム等の不具合が生じ難く、また各版胴を回転駆動するための動力が低減されるためランニングコストが抑制され、さらに、版胴間距離が小さく小サイズの用紙への印刷を印刷位置のずれを防止して良好に行うことができ、目的に応じた自由度の高い印刷を、印刷位置調整手段を用いて各版胴による印刷位置を最適に分割することで良好に行うことができる、小型、低重量、低価格かつ高画質の印刷装置を提供することができる。
各版胴の印刷範囲がA4サイズであり、印刷すべきサイズがA3サイズであるとき、ずらし印刷モード時に、印刷位置調整手段が、用紙の搬送方向において隣り合う版胴相互間の、用紙の搬送方向における用紙に対する印刷位置を、A4サイズ分だけずらすこととすれば、重ね印刷を行うことができ、多色印刷が可能となっているとともに、ずらし印刷モードにおいて、小型の版胴を用いながらも各版胴による印刷位置を最適のA4サイズ分だけずらしてA3サイズの印刷を各版胴により継目なく行うことで原稿画像を良好に再現できる印刷を行うことができ、用紙を版胴から剥離する際に用紙のコシの強さを利用した剥離が容易となり、いわゆる巻き上がりやジャム等の不具合が生じ難く、また各版胴を回転駆動するための動力が低減されるとともに、印刷装置が孔版印刷装置である場合には特に、一般に頻度の最も高いA4サイズの印刷を、マスタを無駄にすることなく行うことが可能であり、マスタの無駄が抑制されるため、ランニングコストが抑制され、さらに、版胴間距離が小さく小サイズの用紙への印刷を印刷位置のずれを防止して良好に行うことができ、目的に応じた自由度の高い印刷を、印刷位置調整手段を用いて各版胴による印刷位置を最適のA4サイズに分割することで良好に行うことができる、小型、低重量、低価格かつ高画質の、ユーザにとって使い勝手に優れた印刷装置を提供することができる。
各版胴にマスタを巻き付けて印刷を行うこととすれば、小型の版胴を用いながらも大サイズの印刷を可能とし、用紙を版胴から剥離する際に用紙のコシの強さを利用した剥離が容易となり、いわゆる巻き上がりやジャム等の不具合が生じ難く、また各版胴を回転駆動するための動力が低減されるとともにマスタの無駄が抑制されるためランニングコストが抑制され、さらに、版胴間距離が小さく小サイズの用紙への印刷を印刷位置のずれを防止して良好に行うことができる、小型、低重量、低価格の孔版印刷装置である印刷装置を提供することができる。
各版胴に巻き付けられるマスタを製版する製版手段を有し、用紙の搬送方向において各版胴の印刷可能範囲よりもサイズの大きな印刷を行うとき、ずらし印刷を行うために、製版手段が、各版胴による印刷位置に応じて、当該版胴により印刷すべき画像に対応した製版を行うこととすれば、小型の版胴を用いながらも各版胴に巻き付けられるマスタの製版を分割して最適に行うことで大サイズの印刷を可能とし、用紙を版胴から剥離する際に用紙のコシの強さを利用した剥離が容易となり、いわゆる巻き上がりやジャム等の不具合が生じ難く、また各版胴を回転駆動するための動力が低減されるとともにマスタの無駄が抑制されるためランニングコストが抑制され、さらに、版胴間距離が小さく小サイズの用紙への印刷を印刷位置のずれを防止して良好に行うことができる、小型、低重量、低価格の孔版印刷装置である印刷装置を提供することができる。
各版胴による印刷の色を互いに異ならせることが可能であり、各版胴による印刷の色を検知する色検知手段と、ずらし印刷を行うときに、色検知手段が、複数の色を検知すると、警告を出力するずらし印刷警告出力手段とを有することとすれば、カラー印刷が可能であるとともに、一般に単色で行われることが多いずらし印刷をカラー印刷で行うことに注意を促すことでずらし印刷時に意図しないカラー印刷を行うことを防止でき、また、小型の版胴を用いながらも大サイズの印刷を可能とし、用紙を版胴から剥離する際に用紙のコシの強さを利用した剥離が容易となり、いわゆる巻き上がりやジャム等の不具合が生じ難く、また各版胴を回転駆動するための動力が低減されるためランニングコストが抑制され、さらに、版胴間距離が小さく小サイズの用紙への印刷を印刷位置のずれを防止して良好に行うことができる、小型、低重量、低価格の、ユーザーにとって信頼性の高い印刷装置を提供することができる。
各版胴による印刷の色を互いに異ならせることが可能であり、各版胴による印刷の色を検知する色検知手段と、重ね印刷モードであるときに、色検知手段が、同じ色を検知すると、警告を出力する重ね印刷警告出力手段とを有することとすれば、カラー印刷が可能であるとともに、一般に複数色で行われることが多い重ね印刷を単色印刷で行うことに注意を促すことで重ね印刷時に意図しない単色印刷を行うことを防止でき、また、小型の版胴を用いながらも大サイズの印刷を可能とし、用紙を版胴から剥離する際に用紙のコシの強さを利用した剥離が容易となり、いわゆる巻き上がりやジャム等の不具合が生じ難く、また各版胴を回転駆動するための動力が低減されるためランニングコストが抑制され、さらに、版胴間距離が小さく小サイズの用紙への印刷を印刷位置のずれを防止して良好に行うことができる、小型、低重量、低価格の、ユーザーにとって信頼性の高い印刷装置を提供することができる。
用紙の搬送方向において、版胴の印刷範囲よりも、サイズの大きな用紙を給紙する給紙手段を有することとすれば、小型の版胴を用いながらも、大きなサイズの用紙を給紙手段を用いて給紙することで大サイズの印刷を可能とし、用紙を版胴から剥離する際に用紙のコシの強さを利用した剥離が容易となり、いわゆる巻き上がりやジャム等の不具合が生じ難く、また各版胴を回転駆動するための動力が低減されるためランニングコストが抑制され、さらに、版胴間距離が小さく小サイズの用紙への印刷を印刷位置のずれを防止して良好に行うことができる、小型、低重量、低価格の印刷装置を提供することができる。
用紙の搬送方向において、版胴の印刷範囲よりも、サイズの大きな原稿を読み取る原稿読み取り手段を有することとすれば、サイズの大きな原稿を原稿読み取り手段によって読み取り、これに基づいて印刷を行うことで、小型の版胴を用いながらも大サイズの印刷を可能とし、用紙を版胴から剥離する際に用紙のコシの強さを利用した剥離が容易となり、いわゆる巻き上がりやジャム等の不具合が生じ難く、また各版胴を回転駆動するための動力が低減されるためランニングコストが抑制され、さらに、版胴間距離が小さく小サイズの用紙への印刷を印刷位置のずれを防止して良好に行うことができる、小型、低重量、低価格の印刷装置を提供することができる。
原稿読み取り手段によって読み取られた原稿のサイズが、用紙の搬送方向において、各版胴の印刷範囲よりも大きいときには、ずらし印刷を行うこととすれば、サイズの大きな原稿を原稿読み取り手段によって読み取り、読み取った原稿のサイズが各版胴の印刷範囲より大きいときにはずらし印刷を行うことで、小型の版胴を用いながらも大サイズの印刷を確実に行い、画像が用紙の端部において途切れた印刷を行うことを防止して原稿を再現した印刷を行うことができ、また、用紙を版胴から剥離する際に用紙のコシの強さを利用した剥離が容易となり、いわゆる巻き上がりやジャム等の不具合が生じ難く、また各版胴を回転駆動するための動力が低減されるためランニングコストが抑制され、さらに、版胴間距離が小さく小サイズの用紙への印刷を印刷位置のずれを防止して良好に行うことができる、小型、低重量、低価格のユーザーにとって信頼性の高い印刷装置を提供することができる。
本発明は、請求項1ないし18の何れか1つに記載の印刷装置を用いて印刷を行う印刷方法にあるので、上述の各効果を奏する印刷装置を用いて印刷を行い、小型の版胴を用いながらも大サイズの印刷を可能とし、用紙を版胴から剥離する際に用紙のコシの強さを利用した剥離が容易となり、いわゆる巻き上がりやジャム等の不具合が生じ難く、また各版胴を回転駆動するための動力が低減されるとともに、印刷装置が孔版印刷装置である場合には特に、マスタの無駄が抑制されるためランニングコストが抑制され、さらに、版胴間距離が小さく小サイズの用紙への印刷を印刷位置のずれを防止して良好に行うことができる印刷方法を提供することができる。
図1に、本発明を適用した、白黒画像またはカラー画像を形成可能な、印刷装置としての多色孔版印刷装置である感熱デジタル製版一体型の孔版印刷装置の概略を示す。孔版印刷装置100は、それぞれ互いに異なる色、または同じ色のインキにて印刷を行うことが可能な複数の版胴、具体的には、第1の版胴としての第1の印刷ドラム1A及び第2の版胴としての第2の印刷ドラム1B(以下それぞれ、「印刷ドラム1A」、「印刷ドラム1B」と記す。)を有している。印刷ドラム1Aは矢印Zで示す用紙35の搬送方向(以下、「用紙搬送方向Z」と記す。)の上流側に、印刷ドラム1Bは印刷ドラム1Aよりも用紙搬送方向Zの下流側すなわち図1における左方に配置され、互いに並設されている。
なお、以下、本形態において、印刷ドラム1Aに対応する構成部材には数字符号の末尾に符号Aを付し、印刷ドラム1Bに対応する構成部材には数字符号の末尾に符号Bを付す。また、同一の機能及び構成を有する構成部材には、同一の数字符号を付し重複説明は極力省略する。
孔版印刷装置100は、装置本体内の印刷ドラム1Aと印刷ドラム1Bとの周りにそれぞれ、印圧部材としての押圧手段であるプレスローラ2A、2Bと、印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bから印刷済みの用紙35を分離するための、第1剥離爪としての分離爪7A、第2剥離爪としての分離爪7Bと、印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bそれぞれの回転の位相を検知する、図2に示す第1ドラム基準ポイントセンサ47A、第2ドラム基準ポイントセンサ47Bとを有している。
孔版印刷装置100はまた、印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bの上方に配設された、印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bに共通の製版手段としての製版給版装置3と、使用済みマスタを印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bから剥離廃棄する、印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bに共通の排版手段としての排版装置5と、プレスローラ2A、2Bを印刷ドラム1A、1Bのそれぞれの外周面から離間した位置に保持する係止手段としての、図2に示す保持手段59A,59Bと、印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bを保持する、図3に示すフレーム68A、68Bとを有している。
孔版印刷装置100はまた、用紙35を積載するとともに印刷ドラム1A,1Bに向けて供給する給紙手段としての給紙装置4と、印刷ドラム1Aと印刷ドラム1Bとの間に配設され、用紙35を印刷ドラム1Aから印刷ドラム1Bに向けて搬送する搬送手段としての搬送ベルト装置である搬送装置21と、印刷済みの用紙35を積載する排紙トレイ45と、印刷ドラム1Bと排紙トレイ45との間に配設され、用紙35を印刷ドラム1Bから排紙トレイ45とに向けて搬送する搬送手段としての搬送ベルト装置である搬送装置22と、装置本体上部に配設された、原稿を読み取るためのスキャナ部としての原稿読み取り手段である原稿読取装置51とを有している。
孔版印刷装置100はまた、印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bのそれぞれによる印刷の色を検知するための、図3に示す第1ドラム色検知センサ48A、第2ドラム色検知センサ48Bと、装置本体上部の正面側すなわち図1における紙面手前側に配設された、図4に示す操作パネル52と、装置全体の制御を行う、図5に示す制御手段としての本体制御装置14と、原稿読取装置51からの信号を処理して画像処理を行う、図5に示す画像処理装置38とを有している。
印刷ドラム1Aと印刷ドラム1Bとは、図示しない開口部及び非開口部を有する多孔性支持円筒体1a、1bと、多孔性支持円筒体1a、1bの外周を覆う図示しない複数層のメッシュスクリーンとを有する、周知の多孔性円筒状をなす構造である。メッシュスクリーンは樹脂または金属網体等によって構成されており、A4サイズ相当のサイズのマスタ31を巻き付けられるようになっている。
印刷ドラム1Aと印刷ドラム1Bとはまた、その外周面の、非開口部に対応する部分に、マスタ31の先端部を貼り付けて係止する薄い粘着剤によって構成されたマスタ先端クランプ部材としての原紙先端粘着部41a、41bを有している。図1において、印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bのそれぞれに巻き付けられたマスタ31を区別すべく、印刷ドラム1Aに巻き付けられたマスタには符号31Aを、印刷ドラム1Bに巻き付けられたマスタには符号31Bを付している。このことは図2以下においても同様とする。ただし、区別する必要がないときには、単に符号31をもって説明する。
印刷ドラム1Aと印刷ドラム1Bとは、図3に示すフレーム68A、68Bの端面をなすドラムフランジ20A、20Bを介して、図1に示すように第1インキパイプとしてのドラム軸25A、第2インキパイプとしてのドラム軸25Bに回転自在に支持されている。印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bは、図2に示す版胴駆動手段としての電動モータたるステッピングモータによって構成される、第1ドラム駆動モータであるモータ81A、第2ドラム駆動モータであるモータ81Bにより、図1に示す矢印方向に回転駆動されるようになっている。よって、印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bは、モータ81A、モータ81Bによって、互いに独立して回転駆動される。
図示を省略するが、印刷ドラム1A,1Bの内部にはそれぞれ、インキ溜りを構成するインキローラと、インキローラに僅かに隙間を設けて配設されたドクタローラとがそれぞれ配置されている。インキ溜りはそれぞれ、インキローラとドクタローラとによって形成される楔状空間に形成される。
各インキローラは、図示しない駆動伝達手段を介して、本体モータ81A、81Bにより、印刷ドラム1A、1Bと同期して印刷ドラム1A、1Bと同じ方向に回転駆動され、回転することでインキ溜りのインキを混練して伸ばし、インキ溜りのインキが、インキローラの外表面を経て、ドラム内周面に供給されるようになっている。ドラム内周面に供給されたインキは、多孔性支持円筒体1a、1b、複数層のメッシュスクリーンを介してドラム外周面に滲み出る。
ドラム軸25A,25Bはそれぞれ、インキ供給パイプの機能を有している。ドラム軸25A、25Bには、その軸方向にそれぞれ図示しない供給穴としての複数の孔が形成されている。ドラム軸25A、25Bはそれぞれ、その一端が、図示しないインキポンプを介して、印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bの外部に設けられた図示しないインキパックに接続されている。
インキ溜りのインキ量が図示しないインキセンサによって低減したことが検知されたときに、インキパック内のインキがインキポンプにより吸引され、ドラム軸25A,25Bに形成された複数の孔から、インキ溜りに供給される。
プレスローラ2A,2Bは、芯金と、円筒形状に成形され芯金の周囲に装着された弾性体としてのニトリルゴムまたはクロロプレンゴムとを有している。
製版給版装置3は、マスタ31をロール状に巻成したマスタロール32と、熱によりマスタ31の穿孔を行う穿孔部材としてのサーマルヘッド33と、サーマルヘッド33に対向して配設されたプラテンローラ34と、穿孔が行われたマスタ31を切断する切断手段35と、穿孔が行われたマスタ31を搬送するとともに印刷ドラム1Aまたは印刷ドラム1Bへと案内するマスタ搬送ローラ対36と、製版給版装置3の動作全般を制御する、図5に示す製版給版装置駆動制御手段37とを有している。
プラテンローラ34はその軸方向長さがマスタ31の幅とほぼ同じ長さに形成されており、装置本体の図示しない側板間に回転自在に支持されている。プラテンローラ34は製版給版装置駆動制御手段37によって制御される図示しないステッピングモーターから駆動力を伝達され、図1において時計回り方向に回転駆動される。
サーマルヘッド33はその幅がプラテンローラ34の軸方向長さよりも大きく形成されており、その上面には複数の発熱素子が配設されている。サーマルヘッド33はその発熱素子面をプラテンローラ34に圧接させるように図示しない付勢手段によって付勢されており、各発熱素子は製版給版装置駆動制御手段37を介して図示しないサーマルヘッドドライバーによってその作動を個々に制御される。
切断手段35は、図示しない装置本体に固定されその幅がマスタ31の幅よりも長く形成された下刃35Aと、下刃35A上をマスタ31の幅方向に移動しつつ回転自在に設けられた上刃35Bとを有する周知の構成であって、マスタ31の先端が原紙先端粘着部41aまたは原紙先端粘着部41bに貼り付けられ、印刷ドラム1Aまたは印刷ドラム1Bの回転により、印刷ドラム1Aまたは印刷ドラム1Bに所定の長さのマスタ31が巻き付けられたときに製版給版装置駆動制御手段37によって制御されて作動し、マスタ31を切断する。
マスタ搬送ローラ対36は、図示しない側板間に回転自在に支持された、製版給版装置駆動制御手段37を介して図示しないマスタ搬送駆動手段により回転駆動される駆動ローラ36Aと、駆動ローラ36Aに圧接された従動ローラ36Bとを有しており、駆動ローラ36Aと従動ローラ36Bとによってマスタ31を挟持して搬送するものである。
マスタ31は、熱可塑性樹脂フイルムと、多孔質支持体とを貼り合わせたラミネート構造の孔版マスタである。熱可塑性樹脂フィルムとしては、大体1〜3μmm程度の厚みのものが用いられる。多孔性支持体としては、和紙繊維、合成繊維、あるいは和紙と合成繊維とを混抄したものが用いられる。
排版装置5は、印刷ドラム1Aまたは印刷ドラム1Bからマスタ31を剥離して搬送する排版ローラ対53と、排版ローラ対53によって印刷ドラム1Aまたは印刷ドラム1Bから剥離されたマスタ31を収納する排版収納箱54と、排版ローラ対53によって印刷ドラム1Aまたは印刷ドラム1Bから剥離されたマスタ31を排版収納箱54に押し込む圧縮板55と、排版装置5の動作全般を制御する、図5に示す排版装置駆動制御手段56とを有している。
排版ローラ対53は、印刷ドラム1Aまたは印刷ドラム1Bに対して近接・離間可能なように排版装置駆動制御手段56を介して図示しない駆動手段によって変位されるとともに、排版装置駆動制御手段56を介して図示しない駆動手段によって回転駆動される。圧縮板55は、排版装置駆動制御手段56を介して軸57を中心に回動されることにより、印刷ドラム1Aまたは印刷ドラム1Bから剥離されたマスタ31を排版収納箱54内に収納させるとともに排版収納箱54内で圧縮し、多数枚のマスタ31が排版収納箱内に収納されるようにする。
製版給版装置3および排版装置5は、装置本体内の印刷ドラム1A,1Bの上方において用紙搬送方向Zに平行に配設されたガイドレール58によって一体で用紙搬送方向Zに移動可能に支持されており、その印刷ドラム1Aまたは印刷ドラム1Bに対する給版動作、排版動作に応じて、本体制御装置14による制御より、図示しない駆動手段によって、ガイドレール58に沿って、用紙搬送方向Zに移動される。
製版給版装置3および排版装置5は、印刷ドラム1Aに対する給版動作、排版動作を行うときには、図1に示す第1のポイントを占め、印刷ドラム1Bに対する給版動作、排版動作を行うときには、第1のポイントから図1において左方すなわち用紙搬送方向Zの下流側の位置である第2のポイントを占める。
分離爪7A、7Bは、図1において印刷ドラム1A、1Bの左方に配設されており、用紙35を印刷ドラム1A、1Bの外周面からそれぞれ分離・剥離するためのものである。分離爪7A、7Bは、印刷ドラム1A、1Bの回転方向における印刷部18A、18Bの下流側からその外周面にそれぞれ接近するよう配置されている。分離爪7A、7Bは、用紙35の幅方向に複数のものが櫛状に形成されて配置されている。
給紙装置4は、装置本体の右方、言い換えると印刷ドラム1Aの右方に配設されている。給紙装置4は、用紙35が積載される昇降可能な給紙台としての給紙トレイ10と、給紙トレイ10に積載された用紙35の最上位のものから送り出す給紙ローラとしての給紙コロである呼び出しコロ11と、呼び出しコロ11によって送り出された用紙35を1枚だけ分離してさらに送る分離ローラとしての分離コロ12と、分離コロ12によって送られた1枚の用紙35を、印刷部18Aに向けて所定のタイミングで送り出すレジストローラ対17とを有している。
給紙装置4はまた、給紙トレイ10に配設され、給紙トレイ10に積載された用紙35のサイズを検出するための用紙サイズ検知センサとしての複数のセンサ15と、給紙装置4の動作全般を制御する、図5に示す給紙装置駆動制御手段39とを有している。
給紙トレイ10は伸縮可能となっており、給紙トレイ10には、A3サイズまでの用紙35を載置できるようになっている。給紙トレイ10にA3サイズの用紙35を載置するときには、給紙トレイ10を伸ばす。なお、A4サイズの用紙35の用紙搬送方向Zにおける図8(a)に示す長さQは210mm、A3サイズの用紙35の用紙搬送方向Zにおける図9に示す長さRは長さQの倍の420mmである。
センサ15による検知信号は、図5に示す本体制御装置14に送られるようになっている。
呼び出しコロ11、分離コロ12は、版付け時、印刷時、試し刷り時に、給紙装置駆動制御手段39によって適宜後述の駆動部の駆動を制御されることで回転動作し、マスタ31の巻着後に行われる版付け時には用紙35を1枚給紙し、印刷時や試し刷り時には設定された枚数分の印刷が終了するまで用紙35を給紙するように構成されている。
レジストローラ対17は、駆動ローラ17aとこれに圧接する従動ローラ17bとを有しており、駆動ローラ17aが給紙装置駆動制御手段39を介して図示しないステッピングモータによって回転駆動される。駆動ローラ17aと従動ローラ17bとは、図示しない側板に回転自在に支持されている。レジストローラ対17は、用紙35の送り出しタイミングをステッピングモータの駆動タイミングを変更することで調整可能である。レジストローラ対17から用紙35が送り出されたことは、図示しない用紙挿入センサにより検知されるようになっている。
搬送装置21は、印刷ドラム1Aと印刷ドラム1Bとの間の用紙搬送経路を構成している。搬送装置21は、図示しない筐体側板に回転自在に支持された搬送ローラ右としての駆動ローラ23及び搬送ローラ左としての従動ローラ24と、駆動ローラ23及び従動ローラ24に巻き掛けられ張設された多数の開孔を有する搬送ベルト26と、搬送ベルト26の内側に配置された図示しない吸着ファンとを備えている。
搬送ベルト26は、駆動ローラ23により、図1において反時計回り方向に、印刷ドラム1Aの外周面の回転速度より速い速度で回転駆動される。搬送ベルト26の搬送面には吸着ファンの回転により発生する吸引力が作用している。吸引ファンは、本体制御装置14が電流や電圧や通電波形などを変えることでその回転数が制御されるようになっている。
搬送装置21はこのような構成であるので、印刷部18Aを通過し、分離爪7Aによって印刷ドラム1Aの外周面から分離・剥離された用紙35を搬送ベルト26上に吸着して、用紙搬送方向Zの下流側、すなわち、印刷部18Bへ向かって搬送する。用紙35の搬送速度を印刷ドラム1Aの外周面の回転速度よりも大きくしているのは、搬送ベルト26に吸着され印刷ドラム1Aの外周面から剥がされる用紙35に僅かに張力を作用させて、剥離するときに用紙35が撓むことに起因して生じる、印刷ドラム1Aと用紙35との間での位置ズレ等を防止し、レジストの悪化、画像位置ずれ、印刷位置のバラツキ等の不具合を防止するためである。
搬送装置22は、印刷ドラム1Bと排紙トレイ45との間の用紙搬送経路を構成している。搬送装置22は、図示しない筐体側板に回転自在に支持された搬送ローラ右としての駆動ローラ27及び搬送ローラ左としての従動ローラ28と、駆動ローラ27及び従動ローラ28に巻き掛けられ張設された多数の開孔を有する搬送ベルト29と、搬送ベルト29の内側に配置された図示しない吸着ファンとを備えている。
搬送ベルト29は、駆動ローラ27により、図1において反時計回り方向に、印刷ドラム1Bの外周面の回転速度より速い速度で回転駆動される。搬送ベルト29の搬送面には吸着ファンの回転により発生する吸引力が作用している。吸引ファンは、本体制御装置14が電流や電圧や通電波形などを変えることでその回転数が制御されるようになっている。
搬送装置22はこのような構成であるので、印刷部18Bを通過し、分離爪7Bによって印刷ドラム1Bの外周面から分離・剥離された用紙35を搬送ベルト29上に吸着して、用紙搬送方向Zの下流側、すなわち、排紙トレイ45へ向かって搬送する。用紙35の搬送速度を印刷ドラム1Bの外周面の回転速度よりも大きくしているのは、搬送ベルト29に吸着され印刷ドラム1Bの外周面から剥がされる用紙35に僅かに張力を作用させて、剥離するときに用紙35が撓むことに起因して生じる、印刷ドラム1Bと用紙35との間での位置ズレ等を防止し、レジストの悪化、画像位置ずれ、印刷位置のバラツキ等の不具合を防止するためである。
排紙トレイ45は、用紙搬送方向Zにおける印刷部18Bの下流側に配設されている。排紙トレイ45は、多数枚の印刷済みの用紙35を積載できるようになっている。印刷部18Bと排紙トレイ45との間には、印刷済みの用紙35の通過を検出する図示しない排紙チェックセンサが配設されており、印刷済みの用紙35が排紙トレイ45に排出されたことを検知するようになっている。
原稿読取装置51はCCD等の光電変換素子からなる画像センサ、アナログ/デジタル変換基板等を有し、読み取った画像を画像センサにより光電変換し、この光電変換された電気信号を図示しないアナログ/デジタル変換基板に送信することによりデジタル画像信号に変換する周知の構成であって、図示しないコンタクトガラスと、コンタクトガラスに対して開閉可能な圧板42と、複数枚の原稿を載置するとともに自動的に順次送るためのADF部43と、原稿読取装置51の動作全般を制御する、図5に示すスキャナ装置駆動制御手段46とを有しており、コンタクトガラスにはA3サイズまでの原稿を載置できるようになっており、A3サイズまでの原稿を読み取ることができるようになっている。原稿読取装置51により生成されたデジタル画像信号は、画像処理装置38に送られる。
図2に示すように、印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bはそれぞれ、ドラム軸25A、25Bと同心の歯車49A、49Bをその一端側に有している。歯車49A、49Bは、モータ81A、モータ81Bによって回転駆動される小歯車50A、50Bに噛み合っている。印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bはそれぞれ、モータ81A、モータ81Bによって同速で回転駆動される。モータ81A、モータ81Bはステッピングモータであるから、印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bはそれぞれ、そのパルス数に応じて正確に回転駆動される。
印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bはそれぞれ、その外周面に、第1ドラム基準ポイントセンサ47A、第2ドラム基準ポイントセンサ47Bによって検知される、基準ポイント60A、60Bを有している。したがって、本体制御装置14は、印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bを、それらの位相を第1ドラム基準ポイントセンサ47A、第2ドラム基準ポイントセンサ47Bによって検知しつつ、モータ81A、モータ81Bによって回転駆動することで、印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bの回転を、その速度及び位相を正確に把握し、制御する。具体的には、印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bはそれぞれ、正確に同速で回転駆動されるよう制御され、また、互いの位相が、後述する態様となるように、回転タイミングが最適に制御されて回転駆動される。
保持手段59A、59Bはそれぞれ、略L字状をなしその一端においてプレスローラ2A、2Bを印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bの外周面に接離可能に支持する第1プレスローラアームとしての印圧アームであるアーム部材40A、第2プレスローラアームとしての印圧アームであるアーム部材40Bと、アーム部材40A、40Bを回動自在に支持する軸44A、44Bとを有している。
また保持手段59A、59Bはそれぞれ、アーム部材40A、40Bの他端に回動自在に取り付けられたカムフォロア61A、61Bと、軸44A、44Bとカムフォロア61A、61Bとの間でアーム部材40A、40Bに係合しアーム部材40A、40Bを軸44A、44Bを中心に時計回りに付勢する付勢手段としての印圧ばね62A、62Bとを有している。
また保持手段59A、59Bはそれぞれ、印圧ばね62A、62Bの付勢力によりカムフォロア61A、61Bが当接する圧解除カムとしてのカム63A、63Bと、カム63A、63Bの回転軸64A、64Bと、回転軸64A、64Bを中心として回転する歯車65A、65Bと、歯車65A、65Bに噛み合う歯車66A、66Bと、歯車66A、66Bを回転駆動する印圧駆動手段としての電動モータたるステッピングモータである第1印圧駆動モータ67A、第2印圧駆動モータ67Bと、歯車65A、65Bの回転の位相を検知するための図示しない基準ポイント及びこの基準ポイントを検出するための基準ポイントセンサとを有している。
アーム部材40A、40Bは、その屈曲部が軸44A、44Bでそれぞれ揺動自在に支持されている。軸44A、44Bは、図示しない筐体としての本体フレームに回転自在に支持されている。プレスローラ2A、2Bは、アーム部材40A、40Bの一端に固設された軸85A、85Bによってそれぞれ回転自在に支持されている。
保持手段59A、59Bがかかる構成となっていることにより、プレスローラ2A、2Bは、印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bの外周面から離れた離間位置と、印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bの外周面に圧接する押圧位置との間で移動可能となっている。すなわち、プレスローラ2A、2Bは、印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bに接離可能とされている。図2においてプレスローラ2Aは押圧位置を占めており、プレスローラ2Bは離間位置を占めている。
本体制御装置14は、歯車65A、65Bを、その位相を基準ポイントセンサ47によって検知しつつ、モータ81A、モータ81Bによって回転駆動することで、歯車65A、65Bおよびカム63A、63Bの回転を、その速度及び位相を正確に把握し、制御する。
具体的には、歯車65A、65Bと、カム63A、63Bとはそれぞれ、正確に同速で回転駆動されるよう制御され、また、歯車65A、カム63Aの位相が印刷ドラム1Aの位相と一致し、歯車65B、カム63Bの位相が印刷ドラム1Bの位相と一致するように制御され、これにより、プレスローラ2A、2Bが、印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bに適切なタイミングで接離するように制御される。
すなわち、用紙35が、プレスローラ2A、2Bと印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bの外周面との対向領域である印刷部18A、18Bに進入するときに、プレスローラ2A、2Bが押圧位置を占め、原紙先端粘着部41a、41bが印刷部18A、18Bを通過する際に、プレスローラ2A、2Bが印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bの外周面から離間位置を占めるように、制御される。
したがって、プレスローラ2A、2Bは、給送されてきた用紙35を、印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bの外周面に、その開口部の前縁部分より連続的に押し付けてインキ画像を用紙35上に転写し、印刷を行う機能を有している。
図2において、符号Gは、印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bの外径寸法を示している。外径寸法Gは、本形態では約115mmである。外径寸法Gは、印刷ドラム1A、印刷ドラム1BにA4サイズ相当のサイズのマスタ31が巻き付けられるようになっていること、およびマスタ31のクランプを薄い粘着剤によって構成された原紙先端粘着部41a,41bによって行うことから、約90〜130mmの範囲で設定できるものであって、非常にコンパクトなものとなっている。
よって、用紙35を印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bから剥離する際に、分離爪7A、7Bによる剥離のみならず、用紙35自体ののコシの強さを利用した剥離も行われ、いわゆる巻き上がりやジャム等の不具合が生じ難くなり、また印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bを回転駆動するためのモータ81A、81Bの動力が低減されており、消費電力の低減も果たしている。
また、印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bが小径化され小型となっていることから、印刷部18Aと印刷部18Bとの間の距離であるニップ間隔に相当する、印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bの配設ピッチHも、約150〜200mm程度に小さくでき、本形態では180mmと小さくなっており、孔版印刷装置100全体での小型化も達成されている。
よって、重量、価格の低減、小サイズの用紙35への良好な印刷が達成されている。
図3において矢印Iで示すように、印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bは、装置本体に対して着脱自在となっている。印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bの着脱は、印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bや装置本体内のメンテナンス、ジャム処理のほか、他の色による印刷を行うために印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bを交換する目的でも行われる。矢印Iで示す方向は、図1における紙面に垂直な方向であり、印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bの交換は、装置本体の正面側に位置する図示しないパネルを開放した状態で、フレーム68A、68Bおよび図3においては不図示のドラム軸25A、25B、その他インキローラ、ドクタローラを含むインキ供給部等と一体で、ユニットとして一体で行うようになっている。
フレーム68A、68Bの端面をなすドラムフランジ20A、20Bには、第1ドラム色検知センサ48A、第2ドラム色検知センサ48Bによって検知される突起69A、69Bが、第1ドラム色検知センサ48A、第2ドラム色検知センサ48Bに向けて突設されている。第1ドラム色検知センサ48Aは、センサ48A1〜48A3を有しており、第2ドラム色検知センサ48Bは、センサ48B1〜48B3を有している。
突起69A、69Bは、印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bによって印刷する色すなわち印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bにおいて使用するインキの色に対して、図3における紙面左右方向の配設位置が、1対1で決まっている。センサ48A1、48B1は黒色に対応しており、センサ48A2、48B2は赤色に対応しており、センサ48A3、48B3は青色に対応している。
突起69Aはセンサ48A1によって検知され、突起69Bはセンサ48B2によって検知される。すなわち突起69Aの配設位置は黒色のインキを使用し黒色の印刷を行うことを示しており、よって本形態において印刷ドラム1Aは黒色による印刷を行う。突起69Bの配設位置は赤色のインキを使用し赤色の印刷を行うことを示しており、よって本形態において印刷ドラム1Bは赤色による印刷を行う。この判断は、本体制御装置14によって行われる。なおフレーム68A、68Bを互いに入れ替えたときには、突起69Aは48B1によって検知され、突起69Bは48A2によって検知される。
図4に示す操作パネル52は、ユーザー等の操作者が孔版印刷装置100に関する所定の設定や動作を入力し指定する入力手段としての機能を有しているとともに、操作者に所定の表示を行う表示手段としての機能を有している。
具体的には、操作パネル52には、入力手段として、原稿の画像読み取りから製版、給版、版付けに至るまでの一連の動作を開始させるための製版スタートキー70と、テンキー71と、テンキー71で入力された設定枚数に対する印刷動作を開始させるための印刷スタートキー72と、開始された動作を停止させる等するためのストップキー73と、ずらし印刷モードで印刷を行うべきことを指定するずらし印刷モード入力手段としてのずらし印刷モード選択キー74と、重ね印刷モードで印刷を行うべきことを指定する重ね印刷モード入力手段としての重ね印刷モード選択キー75とが配設されている。
その他操作パネル52には、図示を省略するが、入力手段として、試し刷り開始させるための試し刷りキーと、1つの印刷ドラムを用いたシングル印刷モードを設定するシングルモードキーと、2つの印刷ドラムを用いたタンデム印刷モードを設定するタンデムモードキーと、印刷ドラム1A、1Bの何れかを任意に選択するときに用いる第1ドラム選択キー及び第2ドラム選択キー、画像位置調整動作を開始させるための画像位置調整キー、変倍で印刷を行うか、等倍で印刷を行うかの倍率設定キー等が配設されている。
また、操作パネル52には、表示手段として、印刷枚数や印刷残枚数をセグメント表示する表示部76と、選択された印刷ドラムの情報等を表示するための液晶表示装置77と、ずらし印刷モードで印刷を行うべきことが指定されていることを表示するLEDランプ78と、重ね印刷モードで印刷を行うべきことが指定されていることを表示するLEDランプ79とが配置されている。
ここで、ずらし印刷モードとは、図6(a)、(b)に示す、印刷ドラム1A、1Bの印刷範囲95A、95Bよりもサイズの大きな用紙35に対して印刷を行うときに、図6(d)に示すように、用紙35に対する印刷ドラム1A、1Bによる印刷位置が、用紙搬送方向Zにおいて用紙35上の異なる位置を占めるずらし印刷を行うモードである。
また、重ね印刷モードとは、図6(c)に示すように、用紙35に対する印刷ドラム1A、1Bによる印刷位置が、用紙搬送方向Zにおいて用紙35上の同一範囲を占める重ね印刷を行うモードである。
なお、孔版印刷装置100においては、印刷ドラム1Aおよび印刷ドラム1Bを用い、印刷ドラム1Aと印刷ドラム1Bとで且つ互いに色の異なるインキを用い、等倍で、タンデムモードによって重ね印刷を行い、2色印刷を行うことが標準的に選択されるようになっている。よって、通常は、LEDランプ79が点灯するようになっている。シングルモードが選択されたときにはLEDランプ78、79は何れも点灯しない。
図3に示すように、孔版印刷装置100の制御系は、本体制御装置14を中心として構成されており、本体制御装置14には、種々のセンサ、操作パネル52から種々の情報が入力され、また本体制御装置14からは、種々のモータ、制御手段、画像処理装置38に種々の情報が出力されるようになっている。
また、原稿読取装置51は、本体制御装置14によって制御されるスキャナ装置駆動制御手段46によって制御され、原稿の読み取り動作を行い、読み取った原稿画像データを画像処理装置38に出力する。画像処理装置38によって画像処理された原稿画像データは製版給版装置駆動制御手段37に送られ、製版給版装置3では、画像処理装置38から送られたデータに基づいてサーマルヘッド33等を駆動してマスタ31の製版を行い、印刷ドラム1Aまたは印刷ドラム1Bに給版を行う。
図示を省略するが、本体制御装置14は、CPU、ROM、RAM等を備え、それらが図示しない信号バスによって接続された周知のマイクロコンピュータから主に構成されている。CPUには、図示しないインターフェースを介して、上述の種々のセンサ等が電気的にそれぞれ接続されている。本体制御装置14による制御は、ROMに記録された各種データに基づき、また操作パネル52の入力等に基づき、RAMを適宜使用する等しながらCPUによって行われる。
ここで、すでに述べたように、印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bには、A4相当のサイズのマスタ31が巻き付けられるようになっている。図6(a)、(b)に示すように、印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bのそれぞれに巻き付けられた製版済みのマスタ31A、31Bを展開すると、それぞれの用紙搬送方向Zにおける長さEは約250〜300mm、幅Fは約320mmであって、A4サイズの画像のエリアを充分にカバーできる大きさとなっている。
またマスタ31A、31Bの、それぞれの印刷範囲95A、95B言い換えると製版画像エリアの、用紙搬送方向Zにおける長さCは約200mmであり、原紙先端粘着部41a、41bによって係止されるマスタ先端言い換えると係止エリアの長さDは約20mmである。
図6(c)に示した用紙35はA4サイズ紙、図6(d)に示した用紙35はA3サイズ紙であり、図6(a)、(b)に示した印刷範囲95A、95BはそれぞれA4サイズの印刷を行う大きさを有している。
図6(c)に示す、重ね印刷によって得られる画像は、通常、印刷範囲95A、95Bそれぞれを異なる色のインキを用いて印刷するカラー印刷画像である。すなわち、重ね印刷は、通常、印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bに異なる色のインキを用いて行う。
この場合、印刷範囲95AにたとえばA4サイズ相当の原稿画像の特定の色に対応した部分の製版を、印刷範囲95Bに同じ原稿画像の特定の他の色に対応した部分の製版を行い、用紙搬送方向Zにおいて隣り合っている印刷ドラム1A、1B相互間の、用紙搬送方向Zにおける用紙35に対する印刷位置を、印刷ドラム1A、1Bの用紙搬送方向Zにおいて一致するようにして行うことにより、かかる印刷画像が得られる。
一方、図6(d)に示す、ずらし印刷によって得られる画像は、通常、印刷範囲95A、95Bに同じ色のインキを用いて印刷する単色印刷画像である。これは、ずらし印刷を行う目的が、通常、連続する大サイズの原稿画像を、印刷範囲95A、95Bに分割して行うためである。よって、重ね印刷は、通常、印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bに同じ色のインキを用いて行う。
また、ずらし印刷の目的が上述のものである場合には、印刷画像が、連続する大サイズの原稿画像を再現したものとなるように、図6(d)に示すように、印刷範囲95A、95Bが用紙搬送方向Zにおいて連続するように、すなわち隣り合わせで継目なく並ぶように行われる。
この場合、印刷範囲95AにたとえばA3サイズ相当の原稿画像の前半分に対応したA4サイズ相当の製版を、印刷範囲95Bに同じ原稿画像の後半分に対応したA4サイズ相当の製版を行い、用紙搬送方向Zにおいて隣り合っている印刷ドラム1A、1B相互間の、用紙搬送方向Zにおける用紙35に対する印刷位置を、印刷ドラム1A、1Bの用紙搬送方向Zにおける印刷範囲分すなわち長さC分だけずらして行うことにより、かかる印刷画像が得られる。
マスタ31はA4サイズ相当範囲内の製版を行うことが可能であるため、A4サイズ範囲内の、たとえばB5サイズ相当の製版を行うことも可能である。図7に示すように、B4サイズの用紙搬送方向Zにおける長さKは364mmであり、印刷範囲95A、95Bの用紙搬送方向Zにおける長さC:約200mmより大きいため、印刷範囲95A、95Bそれぞれの製版でB4サイズの印刷を行うことはできない。したがって、B4サイズの印刷を行う場合には、ずらし印刷を行うこととなる。なお、B4サイズの幅Lは257mmである。
このずらし印刷を行う目的は、連続する大サイズすなわちマスタ31に製版可能なサイズであるA4サイズよりも大きなB4サイズの原稿画像を、印刷範囲95A、95Bに分割して行うためであるから、印刷画像が図7(a)に示す連続するB4サイズの原稿画像96を再現したものとなるように、このずらし印刷は、図7(d)に示すように、印刷範囲95A、95Bに含まれる実際に製版した印刷範囲97A、97Bが用紙搬送方向Zにおいて隣り合わせで並ぶように行われる。
この場合、印刷範囲97AにB4サイズ相当の原稿画像の前半分に対応したB5サイズ相当の製版を、印刷範囲97Bに同じ原稿画像の後半分に対応したB5サイズ相当の製版を行い、用紙搬送方向Zにおいて隣り合っている印刷ドラム1A、1B相互間の、用紙搬送方向Zにおける用紙35に対する印刷位置を、印刷ドラム1A、1Bの用紙搬送方向Zにおける印刷範囲分すなわち長さKの半分の長さM:182mm分だけずらして行うことにより、かかる印刷画像が得られる。
B5サイズの印刷を重ね印刷で行う場合は、A4サイズの印刷を重ね印刷で行う上述の場合と同様にして行うことができる。
なお、上述した〔特許文献5〕に記載の技術は、各印刷ドラムによる印刷範囲が重なるように印刷を行うものであり、また原稿画像の大きさと各印刷ドラムによる印刷範囲の大きさとが同じであって、同文献にはこれらの大きさが異なる場合については開示されておらずまたこれらの大きさが異なる場合にこれらを関連付ける記載がない。したがって、同文献に記載の技術は本形態における重ね印刷に相当し、ずらし印刷とは全く異なるものである。
このように、孔版印刷装置100においては、ずらし印刷モードであるか、重ね印刷モードであるかによって、印刷ドラム1A、1Bによる用紙35に対する用紙搬送方向Zにおける印刷位置を変更する必要がある。印刷位置の変更は、ずらし印刷モードであるか、重ね印刷モードであるかに加え、原稿画像のサイズによっても行う必要があり、また、原稿画像のサイズを等倍で印刷するか、変倍で印刷するかによっても変更する必要がある。なお原稿画像のサイズを等倍で印刷するか、変倍で印刷するかは、ずらし印刷、重ね印刷の何れで印刷を行うかにも影響を与える。
印刷ドラム1A、1Bによる用紙35に対する用紙搬送方向Zにおける印刷位置を調整するため、孔版印刷装置100は、印刷位置調整手段を有している。この印刷位置調整手段は、印刷ドラム1Aと印刷ドラム1Bとを互いに独立して回転駆動するモータ81A、モータ81Bと、モータ81A、モータ81Bによる印刷ドラム1Aと印刷ドラム1Bとの回転駆動を制御する本体制御装置14とを有しており、印刷ドラム1Aと印刷ドラム1Bとの相互間の位相を調整することにより、用紙35に対する印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bによる印刷位置を用紙搬送方向Zにおいて調整するようになっている。
以上のような構成の孔版印刷装置100の、タンデムモードのうち、重ね印刷モード、ずらし印刷モードにおける共通の動作について説明する。
操作者が原稿を原稿読取装置51にセットして操作パネル52において所定の設定を行い、製版スタートキー70を押下すると、本体制御装置14により、センサ15からの検出信号に応じて用紙35の大きさがチェックされ、排版を行うべく印刷ドラム1A、1Bの回転をモータ81A、81Bによって行う。
本体制御装置14は、印刷ドラム1A、1Bの回転を行いながら、排版装置駆動制御手段56を介して制御される排版装置5により印刷ドラム1A、1Bの排版を順次行い、これが完了すると、スキャナ装置駆動制御手段46を介して制御される原稿読取装置51で読み取った原稿画像データが画像処理装置38で処理され、処理後のデータに基づいて製版給版装置駆動制御手段37により制御される製版給版装置3により製版が行われるとともに印刷ドラム1A、1Bへの給版が順次行われ、給版が完了する。
本体制御装置14は、給紙装置駆動制御手段39を介して給紙装置4を駆動して給紙をスタートし、用紙挿入センサによりレジストローラ対17から用紙35が送り出されたことを検知すると、第1印圧駆動モータ67A、第2印圧駆動モータ67Bを独立に駆動することにより、印刷ドラム1A、1Bの外周面から離れた離間位置を占めていたプレスローラ2A、2Bを、用紙35が印刷部18A、18Bを通過するタイミングに合わせて、所定のタイミングで独立して印刷ドラム1A、1Bの外周面に圧接する押圧位置に移動させ、用紙35へのインキの転写を行い、印刷を行う。
このとき、印刷部18Aを通過し分離爪7Aによって印刷ドラム1Aから分離された用紙35は、搬送装置21により印刷部18Bに搬送される。印刷部18A、18Bにおいて印刷を行われた用紙35は、分離爪7Bによって印刷ドラム1Bから分離され、搬送装置22によって排紙トレイ45に搬送され、排紙トレイ45上で積載される。このとき、印刷済みの用紙35の通過が排紙チェックセンサによって検出されると、版付けが完了する。
操作者がテンキー71で印刷枚数を入力し、印刷スタートキー72を押下すると、本体制御装置14は、上述の版付けにおける排版動作、製版給版動作、原稿読み取り動作は行わないが、その他の部分は上述の版付けと同様にして印刷を開始し、印刷枚数をカウントしつつ,入力された印刷枚数に達するまで印刷を繰り返し、入力された枚数の印刷が完了すると、印刷を停止する。
シングルモードにおいては、印刷ドラム1Aまたは印刷ドラム1Bの何れか一方のみにおいて上述した排版、製版給版、版付け、印刷が行われ、プレスローラも一方のみが駆動される。
本体制御装置14が、上述した各センサ等からの情報を参照し、印刷位置調整手段や各モータを駆動し、また各制御手段を制御するなどしながら、重ね印刷、ずらし印刷を行う場合の例を、読み取った原稿を等倍で印刷するという条件のもとで説明する。
重ね印刷について説明する。重ね印刷は、重ね印刷モードにおいて行われる。孔版印刷装置100においては、上述のように、重ね印刷モードが標準のモードとなっている。
重ね印刷モードでは2色印刷を行うことが通常であるため、重ね印刷モードで印刷を行おうとしたときに第1ドラム色検知センサ48A、第2ドラム色検知センサ48Bで検知した、印刷ドラム1Aで使用するインキの色と印刷ドラム1Bで使用するインキの色とが一致していると本体制御装置14が判断すると、本体制御装置14は、印刷ドラム1A、1Bでインキの色が一致している旨の警告を、液晶表示装置77に出力する。
かかる警告はたとえば、「印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bの色を再確認してください」等の表示により行う。この点、本体制御装置14は、かかる警告を出力する重ね印刷警告出力手段としての機能を有し、液晶表示装置77は、かかる警告を表示する重ね印刷警告表示手段としての機能を有している。重ね印刷警告表示手段は、孔版印刷装置100にPCのモニタ等の外部表示手段が接続されているときにはこれを用いることもできる。
重ね印刷モードにおける版付けが開始されると、本体制御装置14は、製版給版後、給紙開始前に、第1ドラム基準ポイントセンサ47A、第2ドラム基準ポイントセンサ47Bで基準ポイント60A、60Bが検知されるタイミングに基づいて、印刷範囲95A、95Bが用紙35上において一致するように、印刷範囲95Aを基準にしてモータ81Bを駆動させ、または印刷範囲95A、95Bが相対的に移動するようにモータ81A、81Bを駆動させ、印刷ドラム1Aと印刷ドラム1Bとの間の位相を調整する。この調整は、本体制御装置14が、印刷ドラム1A、1Bの回転速度、印刷ドラム1A、1Bの配設ピッチH、給紙速度、搬送装置21による用紙35の搬送速度に基づいて、印刷範囲95A、95Bが用紙35上において一致する印刷ドラム1A、1B間の位相を算出したうえで行われる。
かかる調整後、図8(a)に示すように、矢印SAで示すマスタ31Aの印刷範囲95Aの先端すなわち製版開始ポイントが、印刷部18Aに入るタイミングで、レジストローラ対17による用紙35の印刷部18Aへの供給が行われるとともに、第1印圧駆動モータ67Aを駆動することにより、印刷ドラム1Aの外周面から離れた離間位置を占めていたプレスローラ2Aを押圧位置に移動させ、用紙35へのインキの転写を行う。
その後、図8(b)に示すように、矢印SBで示すマスタ31Bの印刷範囲95Bの先端すなわち製版開始ポイントが、印刷部18Bに入るタイミングで、用紙35が印刷部18Bに進入し、本体制御装置14はこのタイミングにあわせて第2印圧駆動モータ67Bを駆動することにより、印刷ドラム1Bの外周面から離れた離間位置を占めていたプレスローラ2Bを押圧位置に移動させ、用紙35へのインキの転写を行う。これにより重ね印刷が行われる。
図8に示したように、基準ポイント60Aは、印刷ドラム1Aの回転方向において製版開始ポイントSAの90度後方にあるように配置されている。言い換えると、製版開始ポイント60Aが、印刷ドラム1Aの回転方向において基準ポイント60Aの前方に位置するように、マスタ31Aの製版給版が行われるようになっている。また、第1ドラム基準ポイントセンサ47Aは、製版開始ポイントSAが印刷部18Aに入るタイミングで基準ポイント60Aを検知するようになっている。このため、本体制御装置14は、第1ドラム基準ポイントセンサ47Aが基準ポイント60Aを検知したときにプレスローラ2Aを押圧位置に変位させる。
また図8に示したように、基準ポイント60Bは、印刷ドラム1Bの回転方向において製版開始ポイントSBの90度後方にあるように配置されている。言い換えると、製版開始ポイント60Bが、印刷ドラム1Bの回転方向において基準ポイント60Bの前方に位置するように、マスタ31Bの製版給版が行われるようになっている。第2ドラム基準ポイントセンサ47Bは、製版開始ポイントSBが印刷部18Bに入るタイミングと180度ずれたタイミングで基準ポイント60Bを検知するようになっている。このため、本体制御装置14は、第2ドラム基準ポイントセンサ47Bが基準ポイント60Bを検知してから印刷ドラム1Bが180度回転するタイミングでプレスローラ2Aを押圧位置に変位させる。
印刷ドラム1Aと印刷ドラム1Bとの位相は、互いに180度ずれるように調整されている。これは、印刷ドラム1A、1Bの半周長が、印刷ドラム1A、1Bの配設ピッチHに等しくなるように設計されているためである。よって、本体制御装置14がプレスローラ2Bを押圧位置に変化させるタイミングにおいて、製版開始ポイントSAは真上を向いた状態となっている。
ずらし印刷について説明する。ずらし印刷は、ずらし印刷モードにおいて行われる。孔版印刷装置100においては、上述のように、重ね印刷モードが標準のモードとなっているため、ずらし印刷は、ずらし印刷モード選択キー74の押下、または、原稿読取装置51において読み取られた原稿のサイズが、用紙搬送方向Zにおいて、印刷範囲95A、95Bよりも大きいときに行われる。
ずらし印刷モードでは単色印刷を行うことが通常であるため、ずらし印刷モードで印刷を行おうとしたときに第1ドラム色検知センサ48A、第2ドラム色検知センサ48Bで検知した、印刷ドラム1Aで使用するインキの色と印刷ドラム1Bで使用するインキの色とが異なっていると本体制御装置14が判断すると、本体制御装置14は、印刷ドラム1A、1Bでインキの色が異なっている旨の警告を、液晶表示装置77に出力する。
かかる警告はたとえば、「印刷ドラム1A、印刷ドラム1Bの色を再確認してください」等の表示により行う。この点、本体制御装置14は、かかる警告を出力するずらし印刷警告出力手段としての機能を有し、液晶表示装置77は、かかる警告を表示するずらし印刷警告表示手段としての機能を有している。ずらし印刷警告表示手段は、孔版印刷装置100にPCのモニタ等の外部表示手段が接続されているときにはこれを用いることもできる。
また、重ね印刷モード下において、原稿読取装置51において読み取られた原稿のサイズが、用紙搬送方向Zにおいて、印刷範囲95A、95Bよりも大きいときには、同様のずらし警告表示手段によりずらし印刷モードに移行してもよいか、またはずらし印刷モードに移行したことを表示させるようにしても良い。ずらし印刷モードに移行してもよいかの表示をさせる場合には操作者が移行を許可したときに初めて版付けを開始するようにすることができる。ずらし印刷モードに移行したときには、LEDランプ79が消灯し、LEDランプ78が点灯する。
ずらし印刷モードにおいては、用紙搬送方向Zにおいて印刷範囲95A、95Bよりもサイズの大きな印刷を行うため、製版給版装置3は、印刷ドラム1A、1Bのそれぞれによる印刷位置に応じて、すなわち各印刷範囲95A、95Bに応じて、その印刷ドラム、印刷範囲により印刷すべき画像に対応した製版給版を行う。よって、ずらし印刷モードにおける版付けが開始されると、製版給版装置3では、読み取った原稿画像をマスタ31Aとマスタ31Bとに分割した態様での製版給版を行う。
本体制御装置14は、製版給版後、給紙開始前に、第1ドラム基準ポイントセンサ47A、第2ドラム基準ポイントセンサ47Bで基準ポイント60A、60Bが検知されるタイミングに基づいて、印刷範囲95A、95Bが用紙35上において異なる位置を占めるように、印刷範囲95Aを基準にしてモータ81Bを駆動させ、または印刷範囲95A、95Bが相対的に移動するようにモータ81A、81Bを駆動させ、印刷ドラム1Aと印刷ドラム1Bとの間の位相を調整する。この調整は、本体制御装置14が、印刷ドラム1A、1Bの回転速度、印刷ドラム1A、1Bの配設ピッチH、給紙速度、搬送装置21による用紙35の搬送速度に基づいて、印刷範囲95A、95Bが用紙35上において異なる位置を占める印刷ドラム1A、1B間の位相を算出したうえで行われる。
すなわち、具体的には、本形態のようにA4サイズに相当する印刷範囲95A、95Bによって、図6(d)に示したように、A3サイズの印刷を行うときには、印刷位置調整手段が、用紙搬送方向Zにおいて隣り合う印刷ドラム1A、1B相互間の用紙搬送方向Zにおける用紙35に対する印刷位置を、印刷範囲95Aの用紙搬送方向Zにおける長さに一致するA4サイズ分だけずらすようになっている。
また、図7に示したように、B4サイズの印刷を行うときには、印刷位置調整手段が、用紙搬送方向Zにおいて隣り合う印刷ドラム1A、1B相互間の用紙搬送方向Zにおける用紙35に対する印刷位置を、印刷範囲95Aに含まれる実際の印刷範囲97Aの用紙搬送方向Zにおける長さに一致するB5サイズ分だけずらすようになっている。なお、図7に示した例では、印刷範囲97A、97Bに等分した製版を行っているが、印刷範囲95A、95Bの何れか一方の全体に製版を行うとともに他方に残りの製版を行うようにしても良い。
かかる調整後、A3サイズの印刷を行うときには、図9に示すように、製版開始ポイントSAが印刷部18Aに入るタイミングで、レジストローラ対17による用紙35の印刷部18Aへの供給が行われるとともに、第1印圧駆動モータ67Aを駆動することにより、印刷ドラム1Aの外周面から離れた離間位置を占めていたプレスローラ2Aを押圧位置に移動させ、用紙35へのインキの転写を行う。
印刷ドラム1Aとプレスローラ2Aとの圧接およびこれらの回転により用紙35への印刷が継続して行われ、図10に示すように、用紙35の前半分の長さT:210mmの部分の印刷が行われると、本体制御装置14は、プレスローラ2Aを離間位置に移動させ、印刷ドラム1Aによる印刷を終了する。このときプレスローラ2Bは離間位置を占めた状態を維持される。
前半部分の印刷が終了した用紙35は搬送装置21によりさらに用紙搬送方向Zに搬送され、図11に示すように、製版開始ポイントSBが、印刷部18Bに入るタイミングで、用紙35の、印刷ドラム1Aによる印刷領域の後端が印刷部18Bに進入し、本体制御装置14はこのタイミングにあわせて第2印圧駆動モータ67Bを駆動することにより、印刷ドラム1Bの外周面から離れた離間位置を占めていたプレスローラ2Bを押圧位置に移動させ、用紙35へのインキの転写を行う。これにより後半部分の印刷が開始され、ずらし印刷が始まる。
印刷ドラム1Bとプレスローラ2Bとの圧接およびこれらの回転により用紙35への後半部分の印刷が継続して行われ、図12に示すように、用紙35の後半分の長さ210mmの部分の印刷が行われ、用紙35の後端が印刷部18Bに進入すると、本体制御装置14は、プレスローラ2Bを離間位置に移動させ、印刷ドラム1Bによる印刷を終了する。これによりずらし印刷が完了する。
B4サイズの印刷を行うときには、A3サイズの印刷と同様にしてプレスローラ2Aが押圧位置に変位されるが、プレスローラ2Aを離間位置に変位させるのは用紙35の前半分の長さ182mmの部分の印刷が行われたときである。前半部分の印刷が終了した用紙35は搬送装置21によりさらに用紙搬送方向Zに搬送され、製版開始ポイントSBが、印刷部18Bに入るタイミングで、用紙35の、印刷ドラム1Aによる印刷領域の後端が印刷部18Bに進入し、本体制御装置14はこのタイミングにあわせて離間位置を占めていたプレスローラ2Bを押圧位置に移動させ、用紙35へのインキの転写を行う。これにより後半部分の印刷が開始され、ずらし印刷が始まる。
印刷ドラム1Bとプレスローラ2Bとの圧接およびこれらの回転により用紙35への後半部分の印刷が継続して行われ、用紙35の後半分の長さ182mmの部分の印刷が行われ、用紙35の後端が印刷部18Bに進入すると、本体制御装置14は、プレスローラ2Bを離間位置に移動させ、印刷ドラム1Bによる印刷を終了する。これによりずらし印刷が完了する。
以上、本発明を実施するための形態として、孔版印刷装置100及びこれを用いた印刷方法を説明したが、本発明は、孔版印刷装置のみならず、他のタイプの印刷装置に適用することができる。いずれのタイプの印刷装置であっても、複数の版胴を備えていることを要するが、版胴の数は、孔版印刷装置100のように2つであるに限らず、例えば4つとしてフルカラー印刷を行うものであっても良い。
本発明にかかる印刷装置は、ずらし印刷専用機であってもよく、その場合には常にずらし印刷を行うため、ずらし印刷モード、重ね印刷モードを設ける必要はない。
ずらし印刷は、上述の説明のように、各版胴による画像を継目なく連続して印刷するに限らず、各版胴による画像を分割した態様の印刷物を得るようにしても良い。
印刷位置調整手段は、各版胴を互いに独立して回転駆動する独立した駆動手段を有しているものでなく、各版胴に共通の駆動手段を備えたものであっても良い。その構成は、天地移動手段といわれるような、たとえば印刷ドラム1Aと一体のプーリと、印刷ドラム1Bと一体のプーリと、両端にプーリを有するスライダと、スライダの両端のプーリに巻き掛けられたベルトと、スライダを移動させるモータとを有するごとき周知のものとすることができる。
また、印刷位置調整手段は、各版胴相互間の位相を調整するのでなく、各版胴相互間の距離を調整するなどするものであっても良い。
上述の説明では、原稿、用紙ともに規格化されたサイズについて説明したが、これらは必ずしも規格化されたものでなくとも良い。
上述の説明では、等倍を条件に印刷を行う例を示したが、変倍を条件に印刷を行ってもよく、この場合、変倍前は原稿のサイズが各版胴の印刷範囲より小さいが変倍後の大きさは各版胴の印刷範囲よりも大きくなるとき、または、変倍前は原稿のサイズが各版胴の印刷範囲より大きいが変倍後の大きさは各版胴の印刷範囲よりも小さくなるときが生じ得る。
これらのときは、重ね印刷からずらし印刷に変更する必要が生じることとなり、または、ずらし印刷から重ね印刷に変更してもよいこととなる。そのため、これらの変更を行うときには、上述の重ね印刷警告、ずらし印刷警告の、出力、表示と同様にして、印刷モードの変更を行った旨、変更の許可を求める旨、注意を促す旨等の出力、表示を行うようにすることができる。
用紙サイズ検知センサによって、各版胴の印刷可能範囲よりも大きいサイズの用紙がセットされていることが検知された場合には、ずらし印刷を行うようにしてもよく、この場合、上述の重ね印刷警告、ずらし印刷警告の、出力、表示と同様の出力、表示を行うようにすることができる。
本発明は、本発明の適用は、上述の説明において特に限定を行っていない限り、上述の形態に限られるものではない。