JP2005317669A - テラヘルツ波発生装置及びそれを用いた計測装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 テラヘルツ波を好適な条件で出力することが可能なテラヘルツ波発生装置、及びそれを用いた計測装置を提供する。
【解決手段】 レーザ光源10及び光分岐器11を有し、テラヘルツ波の発生に用いられる励起光を供給する励起光供給部1と、2つのテラヘルツ波発生素子21、22を有し、発生素子21、22に対して光分岐器11で分岐された励起光を入射してテラヘルツ波を発生するテラヘルツ波発生部2とを備えてテラヘルツ波発生装置を構成する。また、励起光供給部1と、テラヘルツ波発生部2との間に、光遅延器31、32を有するタイミング調整部3を設置する。タイミング調整部3は、発生素子21、22のそれぞれに対する励起光の入射タイミングを調整することによって、テラヘルツ波の出力条件を制御する。
【選択図】 図1
【解決手段】 レーザ光源10及び光分岐器11を有し、テラヘルツ波の発生に用いられる励起光を供給する励起光供給部1と、2つのテラヘルツ波発生素子21、22を有し、発生素子21、22に対して光分岐器11で分岐された励起光を入射してテラヘルツ波を発生するテラヘルツ波発生部2とを備えてテラヘルツ波発生装置を構成する。また、励起光供給部1と、テラヘルツ波発生部2との間に、光遅延器31、32を有するタイミング調整部3を設置する。タイミング調整部3は、発生素子21、22のそれぞれに対する励起光の入射タイミングを調整することによって、テラヘルツ波の出力条件を制御する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、周波数1THz(テラヘルツ)周辺の電磁波を発生させるテラヘルツ波発生装置、及びそれを用いた計測装置に関するものである。
周波数1THz(テラヘルツ)周辺の電磁波領域(テラヘルツ波領域、例えば、およそ0.1THz〜100THz、あるいはさらにその周辺領域を含んだ広い周波数領域を指す)は、光波と電波の境界に位置する周波数領域である。このようなテラヘルツ波は、非破壊検査、イメージング、通信などへの応用が期待されている。また、テラヘルツ波の利用は、環境計測やライフサイエンスの分野などへも波及しており、先端的基盤技術分野となりつつある(例えば、特許文献1、2、非特許文献1、2参照)。
特開2000−235203号公報
特開2000−352558号公報
阪井清美、「光スイッチからのテラヘルツ光発生」、OplusE、Vol.22, No.1 p.41-50 (2000)
阪井清美、谷正彦、「テラヘルツ光エレクトロニクス」、応用物理第70巻第2号 p.149-155 (2001)
テラヘルツ波の利用を進め、産業化するためには、所望の条件でテラヘルツ波を出力することが可能なテラヘルツ波光源を実現することが重要である。従来のテラヘルツ波発生装置として、光スイッチ素子(アンテナ素子)、半導体結晶、非線形光学結晶などをテラヘルツ波の発生源として用いる構成が提案されている。
このようなテラヘルツ波発生装置では、光スイッチ素子などのテラヘルツ波発生素子に対して、励起光として超短パルス光を入射することによってテラヘルツ波を発生させる。このような構成では、大パワーのパルス光を発生素子に入射させると、出力の飽和、あるいは素子の破損が発生する場合がある。したがって、テラヘルツ波の大出力化が必要な場合、発生素子に対する励起光の単位面積あたりの入射パワーを大きくする構成では、テラヘルツ波の出力強度を増大させるには限度がある。
これに対して、テラヘルツ波発生素子として大面積の発生素子を用い、ビーム径を広げたパルス励起光を入射する構成が考えられる。これにより、発生素子に対する励起光の単位面積あたりの入射パワーを低減することができる。しかしながら、発生素子として結晶を用いる場合、大面積の結晶を得ることが困難であるという問題がある。また、発生素子として光スイッチ素子を用いる場合には、印加電圧が数kV以上のオーダとなり、その取扱いが難しくなる。
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、テラヘルツ波を好適な条件で出力することが可能なテラヘルツ波発生装置、及びそれを用いた計測装置を提供することを目的とする。
このような目的を達成するために、本発明によるテラヘルツ波発生装置は、(1)テラヘルツ波の発生に用いられる励起光を供給する励起光供給手段と、(2)複数のテラヘルツ波発生素子を有し、複数のテラヘルツ波発生素子のそれぞれに対して励起光を入射してテラヘルツ波を発生するテラヘルツ波発生手段と、(3)複数のテラヘルツ波発生素子のそれぞれに対する励起光の入射タイミングを調整することによって、テラヘルツ波発生手段から出力されるテラヘルツ波の出力条件を制御するためのタイミング調整手段とを備えることを特徴とする。
上記したテラヘルツ波発生装置においては、テラヘルツ波の発生源として、複数の発生素子を用いている。このような構成によれば、個々の発生素子に対する励起光の入射パワーを抑制することができる。このとき、発生素子におけるテラヘルツ波の出力の飽和や、素子の破損等の発生が防止される。また、複数の発生素子を設けることにより、テラヘルツ波発生手段の全体としてテラヘルツ波の大出力化を実現するなど、テラヘルツ波を好適な条件で出力することが可能となる。
さらに、上記構成では、複数のテラヘルツ波発生素子のそれぞれに対する励起光の入射タイミングを、互いに所定のタイミングとなるように調整している。ここで、発生素子から出力されるテラヘルツ波は干渉性を有している。したがって、複数の発生素子のそれぞれから出力されるテラヘルツ波の相互のタイミング、位相を調整することにより、テラヘルツ波の出力条件が所望の条件となるように制御することが可能となる。
テラヘルツ波の出力条件の制御については、具体的には、タイミング調整手段は、テラヘルツ波の出力条件として、テラヘルツ波の出力方向、位相、出力空間分布、及び時間波形の少なくとも1つを制御することが好ましい。また、タイミング調整手段は、テラヘルツ波の出力条件を、複数の集光位置を有する出力空間分布となるように制御することとしても良い。また、これら以外で出力条件を制御しても良い。
また、励起光供給手段は、励起光として1ps(ピコ秒)〜1fs(フェムト秒)のパルス幅を有するパルスレーザ光を供給することが好ましい。このように、励起光としてパルス励起光を用いることにより、パルス状のテラヘルツ波を好適に発生させることが可能となる。
テラヘルツ波の発生にパルス励起光を用いる場合、励起光供給手段は、励起光として光の進行方向に対してパルスフロントが所定角度で傾いたパルスレーザ光を供給するとともに、複数のテラヘルツ波発生素子で発生するテラヘルツ波の伝搬方向と、パルスレーザ光でのパルスフロントの法線方向とが略一致している構成とすることが好ましい。さらに、励起光供給手段が、パルスフロントの方向を制御するパルスフロント制御手段を有することとしても良い。
また、励起光供給手段は、励起光として異なる2つの波長を有するレーザ光を供給することが好ましい。これにより、励起光供給手段を、2波長のレーザ光の干渉ビートによって時間的に強度変化する励起光を供給する光源として機能させて、テラヘルツ波を好適に発生させることができる。
また、テラヘルツ波発生手段は、複数のテラヘルツ波発生素子で発生するテラヘルツ波を所定の出力条件で出力させるための出力光学系を有することとしても良い。このとき、タイミング調整手段による制御とあわせて、テラヘルツ波の出力条件を好適に制御することができる。
本発明による計測装置は、所定の出力条件で出力されたテラヘルツ波を計測対象の試料に照射するための上記したテラヘルツ波発生装置と、試料から出射されたテラヘルツ波を検出するテラヘルツ波検出装置とを備えることを特徴とする。このような構成によれば、例えばテラヘルツ波を用いた試料の分光計測など、様々な計測を好適に実行することが可能となる。
また、テラヘルツ波発生装置から試料に照射されたテラヘルツ波をモニタするテラヘルツ波モニタ手段を備え、テラヘルツ波発生装置のタイミング調整手段は、テラヘルツ波モニタ手段によるモニタ結果を参照して、複数のテラヘルツ波発生素子のそれぞれに対する励起光の入射タイミングを調整することが好ましい。これにより、発生装置からのテラヘルツ波の出力条件についてフィードバック制御を行って、その出力条件を好適に制御することが可能となる。
本発明のテラヘルツ波発生装置及び計測装置によれば、テラヘルツ波の発生源として複数の発生素子を用い、複数の発生素子のそれぞれに対する励起光の入射タイミングを調整することにより、テラヘルツ波の好適な条件での出力を実現するとともに、その出力条件が所望の条件となるように制御することが可能となる。
以下、図面とともに本発明によるテラヘルツ波発生装置、及びそれを用いた計測装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
図1は、本発明によるテラヘルツ波発生装置の一実施形態の構成を模式的に示すブロック図である。本テラヘルツ波発生装置は、励起光供給部1と、テラヘルツ波発生部2と、タイミング調整部3とを備えて構成されている。
励起光供給部1は、テラヘルツ波(THz波)の発生に用いられる励起光を供給する供給手段であり、励起光源であるレーザ光源10と、光分岐器11とを有している。レーザ光源10としては、例えばフェムト秒パルスレーザ光源が用いられる。また、レーザ光源10から供給されるパルスレーザ光は、好ましくは、ある程度広がった波長スペクトルを有する。レーザ光源10からのパルス励起光は、光分岐手段として後段に設置された光分岐器11によって2つの励起光ビームE1、E2に分岐されて、テラヘルツ波発生部2へと出射される。
励起光供給部1から供給される2つの励起光ビームE1、E2に対し、テラヘルツ波発生部2は、2つのテラヘルツ波発生素子21、22と、出力光学系20とを有して構成されている。励起光供給部1からの励起光ビームE1、E2は、それぞれ対応するテラヘルツ波発生素子21、22へと入射され、発生素子21、22において、パルス励起光の入射に応じてテラヘルツ波が発生する。発生したテラヘルツ波は、出力光学系20を介して所定の出力条件で出力される。
テラヘルツ波の発生源となるテラヘルツ波発生素子21、22としては、例えば、2次の非線形感受率が高い電気光学結晶(EO結晶:Electro-Optical Crystal)などの非線形光学結晶が用いられる。あるいは、半導体結晶、光スイッチ素子、有機結晶などを発生素子21、22として用いても良い。
例として、発生素子21、22として非線形光学結晶を用いた場合、レーザ光源10からのパルス励起光が発生素子21、22へと入射されると、発生素子21、22のそれぞれにおいて光整流作用が生じる。このとき、広がった波長スペクトル内にあるパルス励起光の各周波数成分(波長成分)により、差の周波数成分に対応するテラヘルツ波が発生する。なお、光整流作用は、2次の受動非線形光学効果である差周波混合で、入射する光の周波数差を近付けた場合に相当する。また、この場合、発生素子21、22において発生されるテラヘルツ波は、例えば、周波数0.1THz〜100THz、波長3mm〜3μmの中・遠赤外光である。
図1に示したテラヘルツ波発生装置においては、励起光供給部1と、テラヘルツ波発生部2との間に、タイミング調整部3が設置されている。タイミング調整部3は、2つのテラヘルツ波発生素子21、22のそれぞれに対する励起光の入射タイミングを調整するための調整手段である。この励起光の入射タイミングの調整は、テラヘルツ波発生部2から出力されるテラヘルツ波の出力条件を制御するために行われる。
本実施形態においては、タイミング調整部3は、2つの光遅延器31、32と、遅延制御部30とを有して構成されている。第1の光遅延器31は、光分岐器11によって分岐された一方のパルス励起光である励起光ビームE1を第1の遅延時間で遅延させ、第1のテラヘルツ波発生素子21に対して所定の入射タイミングで入射させる。また、第2の光遅延器32は、光分岐器11によって分岐された他方のパルス励起光である励起光ビームE2を第2の遅延時間で遅延させ、第2のテラヘルツ波発生素子22に対して所定の入射タイミングで入射させる。
励起光ビームE1、E2に対して光遅延器31、32で与えられる遅延時間、及びそれによって設定される発生素子21、22への励起光の入射タイミングは、テラヘルツ波発生部2から出力されるテラヘルツ波についての所望の出力条件に基づいて調整される。また、図1の構成においては、光遅延器31、32による励起光ビームE1、E2の遅延時間は、タイミング制御部である遅延制御部30によって制御されている。これにより、必要に応じて、テラヘルツ波発生部2からのテラヘルツ波の出力条件が制御される。
本実施形態によるテラヘルツ波発生装置の効果について説明する。
図1に示したテラヘルツ波発生装置においては、テラヘルツ波の発生源として、2つのテラヘルツ波発生素子21、22を用いている。このような構成によれば、個々の発生素子へと入射される励起光ビームE1、E2の入射パワーを抑制することができる。このとき、発生素子21、22におけるテラヘルツ波の出力の飽和、あるいは素子の破損などを防止することができる。また、複数の発生素子を設けることにより、発生素子21、22を含むテラヘルツ波発生部2の全体としてテラヘルツ波の大出力化を実現するなど、テラヘルツ波を好適な条件で出力することが可能となる。
この場合、光分岐器11で分配されて個々の発生素子21、22へと入射される励起光ビームE1、E2の入射パワーについては、素子21、22における電磁波発生効率・変換効率の低下、あるいは素子の破損等が生じない光強度範囲、及び所望のテラヘルツ波の出力強度を考慮した上で、所定範囲内のパワーに設定することが好ましい。
ここで、図2は、テラヘルツ波発生素子において発生するテラヘルツ波の(a)時間波形、及び(b)周波数スペクトルの一例を示すグラフである。図2(a)のグラフにおいて、横軸は時間(ps)を示し、縦軸はテラヘルツ波の振幅(a.u.)を示している。また、図2(b)のグラフにおいて、横軸は周波数(THz)及び波長(μm)を示し、縦軸は振幅(a.u.)を示している。
テラヘルツ波発生部2において得られるテラヘルツ波の帯域に対してパルス幅が充分に狭いとみなせるパルス光を励起光として発生素子に入射させると、図2(a)に示すように、ほぼモノサイクルとみなせる時間波形でテラヘルツ波が発生する。また、この時間波形をフーリエ変換によって解析すると、図2(b)に示す周波数スペクトルが得られる。このスペクトルより、得られたテラヘルツ波は、およそ0.2〜3THzの周波数範囲の電磁波成分を含んでいることがわかる。
テラヘルツ波発生部2の発生素子21、22で発生する上記したテラヘルツ波成分はコヒーレントであり、干渉性を有している。このため、ある発生素子から出力されるテラヘルツ波成分を、別の発生素子から出力されるテラヘルツ波成分と干渉させることが可能である。すなわち、テラヘルツ波発生部2に複数の発生源を設け、そのそれぞれから出力されるテラヘルツ波成分を加え合わせることで、その干渉性を利用してテラヘルツ波を所望の方向へ集光し、あるいは加算により強め合うなど、テラヘルツ波の出力条件を制御することが可能である。
これに対して、図1に示した構成では、2つのテラヘルツ波発生素子21、22のそれぞれに対する励起光ビームE1、E2の入射タイミングを、タイミング調整部3によって互いに所定のタイミングとなるように調整している。このように、励起光の入射タイミングを利用して、2つの発生素子21、22のそれぞれから出力されるテラヘルツ波の相互のタイミング、位相を調整することにより、テラヘルツ波発生部2からのテラヘルツ波の出力条件が所望の条件となるように制御することが可能となる。
テラヘルツ波発生部2に設けられるテラヘルツ波発生素子については、一般には複数の発生素子を設ければ良く、その具体的な個数、配置については必要とされるテラヘルツ波の出力条件などに応じて設定することが好ましい。また、励起光供給部1及びタイミング調整部3の構成についても、テラヘルツ波発生部2における発生素子の個数、配置に対応する構成とする必要がある。また、具体的なテラヘルツ波発生素子の種類については、光スイッチ素子、半導体結晶、非線形光学結晶など様々なものを用いて良い(例えば、非特許文献1、2参照)。
また、図1においては、タイミング調整部3に遅延制御部30を設けている。このような構成では、発生素子21、22に対する励起光ビームE1、E2の入射タイミング、及びテラヘルツ波発生部2から出力されるテラヘルツ波の出力条件を可変に制御することができる。ただし、発生素子21、22に対して設定すべき励起光の入射タイミングがあらかじめ決まっており、光遅延器31、32による遅延時間が固定で良い場合には、このような制御部30を設けない構成としても良い。
また、励起光源10からテラヘルツ波発生部2へと供給される励起光としては、1ps(ピコ秒)〜1fs(フェムト秒)のパルス幅を有するパルスレーザ光を用いることが好ましい。このように、励起光としてパルス励起光を用いることにより、パルス状のテラヘルツ波を好適に発生させることが可能となる。
また、図1に示したテラヘルツ波発生装置では、テラヘルツ波発生部2において出力光学系20を設けている。これにより、タイミング調整部3による制御とあわせて、テラヘルツ波の出力条件を好適に制御することができる。ただし、このような出力光学系20については、不要であれば設けない構成としても良い。
テラヘルツ波発生装置の具体的な構成、及びテラヘルツ波の出力条件の制御について、さらに説明する。
図3は、テラヘルツ波発生装置の構成、及びテラヘルツ波の出力条件の制御の一例を示すブロック図である。本構成例においては、励起光供給部のレーザ光源10及び光分岐器11に対して、4つの光遅延器31〜34を有するタイミング調整部、及び4つのテラヘルツ波発生素子21〜24を有するテラヘルツ波発生部が設けられている。
図3においては、テラヘルツ波発生装置からみて光軸(中心軸)上に集光位置P1を設定し、この集光位置P1に対して発生素子21〜24からのテラヘルツ波の波面が均一となるように、光遅延器31〜34での遅延時間τ1〜τ4を設定している。これにより、集光位置P1において、個々の発生素子のみによる場合と比較してほぼ4倍の強度のテラヘルツ波が得られる。なお、図3では、4つのテラヘルツ波発生素子21〜24を直線状に配置しているが、テラヘルツ波を照射しようとする集光位置P1に対して等距離となるように球面状の配置としても良い。
図4は、テラヘルツ波発生装置の構成、及びテラヘルツ波の出力条件の制御の他の例を示すブロック図である。本構成例においては、図3に示した構成例と同様に、4つの光遅延器31〜34を有するタイミング調整部、及び4つのテラヘルツ波発生素子21〜24を有するテラヘルツ波発生部が設けられている。
図4においては、テラヘルツ波発生装置からみて光軸から外れた位置に集光位置P2を設定している。そして、図4中にテラヘルツ波の波面W1〜W4によって模式的に示すように、光遅延器31〜34での遅延時間をτ1>τ2>τ3>τ4とし、集光位置P2に対して発生素子21〜24からのテラヘルツ波が集光するように、出力条件を制御している。このように、光遅延器31〜34での遅延時間によって発生素子21〜24への励起光の入射タイミングを調整することにより、テラヘルツ波の集光位置を制御することができる。一般には、テラヘルツ波を照射しようとする集光位置に対して、複数の発生素子のそれぞれからの光路長差が打ち消されるように励起光の遅延時間を調整することが好ましい。
また、図4に示す構成では、発生素子21〜24に対して、出力光学系20として集光レンズ20aを設けている。テラヘルツ波の出力条件の制御については、このように集光レンズ20aによってテラヘルツ波の集光効率を上げる構成を用いても良い。また、出力光学系20を設ける場合には、その具体的な構成については集光レンズ系に限らず、例えば集光ミラーを用いる構成など、様々な構成を用いて良い。
図3及び図4に示したように、タイミング調整部3において励起光に対する遅延時間を設定して、テラヘルツ波発生素子21〜24への励起光の入射タイミングを調整することにより、テラヘルツ波発生部2から出力されるテラヘルツ波の集光位置、出力方向、あるいはさらに出力空間分布を制御することができる。また、発生素子21〜24への励起光の入射タイミングにより、テラヘルツ波の位相を制御することも可能である。一般には、図1等に示した構成において、タイミング調整部3によって制御されるテラヘルツ波の出力条件については、テラヘルツ波の出力方向、位相、出力空間分布、及び時間波形の少なくとも1つを制御することが好ましい。また、これら以外の出力条件を制御しても良い。
また、テラヘルツ波の出力空間分布については、タイミング調整部3は、複数の集光位置を有する出力空間分布となるようにテラヘルツ波の出力条件を制御することとしても良い。図5は、図3に示したテラヘルツ波発生装置の構成、及びテラヘルツ波の出力条件の制御の変形例を示すブロック図である。この例では、図中に実線で示すように、発生素子21、22からのテラヘルツ波が第1の集光位置P3に集光し、発光素子23、24からのテラヘルツ波が第2の集光位置P4に集光するように、光遅延器31〜34での遅延時間τ1〜τ4を設定している。あるいは、図中に実線及び破線で示すように、発生素子21〜24からのテラヘルツ波が第1の集光位置P3及び第2の集光位置P4の2つの位置に集光するようにしても良い。また、このような構成では、位置P3に集光するテラヘルツ波と、位置P4に集光するテラヘルツ波との間での位相差が所定の位相差となるようにテラヘルツ波の出力条件を制御することも可能である。
なお、上記した各構成例のように、複数の発生素子をテラヘルツ波の発生源として用いて干渉によってテラヘルツ波の出力条件を制御する構成では、本来の集光位置の周囲にゴースト成分が発生する場合がある。これに対して、このようなゴースト成分の発生を低減するため、個々の発生素子からのテラヘルツ波の出力強度を、所定の強度分布となるように制御しても良い。このようにテラヘルツ波の出力強度分布を制御する方法としては、具体的には、複数の発生素子に入射される励起光の強度を個々に制御する構成がある。
また、テラヘルツ波発生部2における発生素子21〜24に対して励起光を供給する励起光源10としては、例えば、パルス幅100fsのパルスレーザ光を供給するチタン・サファイアレーザを用いることができる。また、励起光供給部1に用いる励起光源を選択する際には、光スイッチ素子、半導体結晶、非線形光学結晶などのテラヘルツ波発生素子の種類、発生素子として用いられる結晶自体の周波数特性等を考慮することが好ましい。
また、レーザ光源10から供給された励起光を発生素子21〜24のそれぞれへと分配するための光分岐器11としては、発生素子21〜24のそれぞれへの光路に対応させて複数のハーフミラーを配置した構成や、発生素子21〜24のそれぞれへの光路に対応させたレンズアレイに対して励起光を広げて入射させる構成など、様々な構成を用いることができる。
また、テラヘルツ波発生部2における複数の発生素子の配置構成については、上記した構成例では、いずれも発生素子を1次元状に配置しているが、このような構成に限定されるものではない。例えば、テラヘルツ波の発生源となる複数の発生素子を2次元状に配置することにより、テラヘルツ波の集光密度を上げることができる。また、このような構成では、それぞれの発生素子に対する励起光の入射タイミングを調整することにより、テラヘルツ波の集光位置を2次元面内で制御することが可能となる。
また、図4に示した例においては、光遅延器31〜34での遅延時間τ1〜τ4を1次関数的に変化させることにより、光軸に垂直な方向でテラヘルツ波の集光位置を制御している。これに対し、テラヘルツ波の集光位置を光軸方向(奥行き方向)について制御することも可能である。例えば、1次元状に配列されているテラヘルツ波発生素子のそれぞれに対する励起光の入射タイミング(テラヘルツ波の位相に相当)を2次関数の形で与えることにより、テラヘルツ波を1点に集光させることが可能であるが、このときに2次関数の2次の項の係数を変えることにより、テラヘルツ波を集光する際の焦点距離を変えて光軸方向で集光位置を制御することができる。
また、テラヘルツ波の時間波形を制御する場合には、テラヘルツ波発生装置の構成としては、図3及び図4に示した構成等を用いることができる。ただし、時間波形を制御する上で周波数成分間の位相関係を制御する必要があるため、複数のテラヘルツ波発生素子が互いに異なる周波数のテラヘルツ波を発生する構成とすることが好ましい。このように発生素子毎に発生するテラヘルツ波の周波数を変える構成としては、例えば、個々の発生素子として異なる周波数のテラヘルツ波を発生する結晶を用いる構成がある。また、個々の発生素子に同じ結晶を用い、結晶に対する励起光の入射条件(例えば、励起光の入射方向と結晶軸方向との関係)を変えることによって発生するテラヘルツ波の周波数を変える構成がある。あるいは、発生素子の後段に周波数フィルタを配置する構成を用いても良い。
また、発生素子21〜24に対する励起光の入射タイミングを調整するための光遅延器31〜34についても、様々な構成を用いて良い。図6(a)及び(b)は、光遅延器の具体的な構成例を示す図である。
図6(a)に示す光遅延器31は、互いに逆方向に組み合わされた2つのプリズム31a、31bを有して構成されている。このようなプリズム型で透明な分散媒質中をパルス光が伝搬すると、群遅延によってパルス光が遅延する。また、その遅延時間については、プリズム31a、31bを光軸に直交する方向に移動させ、光軸上での分散媒質中の光路長を変化させることによって調整することが可能である。
このような構成における分散媒質の形状については、プリズム状以外にも、例えば板状など様々な形状を用いて良い。また、図6(b)に示す構成では、光遅延器31として導波路型の光波形整形装置31dを用いている。このように、光遅延器としては、様々な構成を用いることができる。なお、導波路型の光波形整形装置31dとしては、具体的には例えば、音響光学空間位相制御フィルタ(AOPDF:Acousto-Optic Programmable Dispersion Filter)が挙げられる。また、反射ミラーを組み合わせた遅延光学系を用いても良い。
また、励起光源10からテラヘルツ波発生部2へと供給される励起光については、上記したようにパルスレーザ光を用いる構成以外にも、例えば、励起光として異なる2つの波長を有するレーザ光を用いることとしても良い。これにより、励起光供給部を、2波長のレーザ光の干渉ビートによって時間的に強度変化する励起光を供給する光源として機能させて、テラヘルツ波を好適に発生させることができる。
例として、高精度でスペクトルが制御されたわずかに周波数が異なる光源からの2つのレーザ光を重ね合わせることを考える。2波長のレーザ光のCW光での光波を式で表記すると、以下の式(1)、(2)のようになる。
また、これらの式(1)、(2)の光を合波した光の強度波形は、式(3)
によって表される。
このとき、2波長のレーザ光の角周波数差に相当するビート周波数成分を持つ時間波形の光が得られる。そして、このような光を励起光としてテラヘルツ波発生素子へと入射すると、上記周波数に応答してテラヘルツ波を発生可能な素子を用いた場合には、この周波数成分のテラヘルツ波が発生する。
例として、波長600nmの光と、599.76nmの光とを用いた場合について考える。図7は、2波長の励起光を用いた場合の(a)励起光の時間波形、(b)テラヘルツ波の時間波形、及び(c)周波数スペクトルの一例を示すグラフである。
波長600nmの光の周波数はf=c/λ=500THzである。また、波長599.76nmの光の周波数は500.2THzである。したがって、これらの2波長の光を干渉させたときに生じる時間波形のビート周波数は、図7(a)に示すように0.2THzとなる。また、このようなビート周波数を有する励起光をテラヘルツ波発生素子に入射してテラヘルツ波に変換すると、図7(b)に示す波形のテラヘルツ波が得られる。また、この時間波形をフーリエ変換によって解析すると、図7(c)に示す特定周波数0.2THzのテラヘルツ波の周波数スペクトルが得られる。
次に、上記構成のテラヘルツ波発生装置を用いた、本発明による計測装置について説明する。
図8は、本発明によるテラヘルツ波発生装置を用いた計測装置の一実施形態の構成を模式的に示すブロック図である。本計測装置は、試料Sを計測対象として、テラヘルツ波を用いた分光計測などの試料計測を行うための装置であり、テラヘルツ波発生装置5と、テラヘルツ波検出装置6とを備えて構成されている。
テラヘルツ波発生装置5は、試料Sに対して所定の出力条件で出力されたテラヘルツ波を照射するためのものであり、励起光供給部1と、テラヘルツ波発生部2と、タイミング調整部3とを有している。テラヘルツ波発生装置5から出力されたテラヘルツ波は、例えば、図8に示すように、試料Sの表面上に設定された入射位置Pに集光しつつ試料Sへと照射される。なお、発生装置5の具体的な構成については、図1等に関して上述した通りである。
一方、テラヘルツ波検出装置6は、試料Sから出射されたテラヘルツ波を検出するためのものである。このような検出装置6では、例えば発生装置と同様に、光スイッチ素子、半導体結晶、非線形光学結晶などを用いることができる。テラヘルツ波検出装置6においては、例えば、テラヘルツ波発生装置5から試料Sに照射され、試料S中を伝搬して外部へと出射されたテラヘルツ波が検出される。本計測装置は、このような構成により、例えばテラヘルツ波を用いた試料Sの分光計測など、様々な計測を好適に実行することが可能である。
また、このような計測装置では、テラヘルツ波発生装置5から試料Sへのテラヘルツ波の照射条件(発生装置5からの出力条件)をモニタするテラヘルツ波モニタ装置を設けても良い。この場合、テラヘルツ波発生装置5のタイミング調整部3が、テラヘルツ波モニタ装置によるモニタ結果を参照して、複数のテラヘルツ波発生素子のそれぞれに対する励起光の入射タイミングを調整する構成とすることにより、発生装置5からのテラヘルツ波の出力条件をフィードバック制御することができる。図8においては、テラヘルツ波検出装置6自体をテラヘルツ波モニタ手段として機能させ、検出装置6による検出結果をタイミング調整部3へとフィードバックする構成を例示している。
テラヘルツ波発生装置を用いた計測装置の具体的な構成、及び試料計測について、さらに説明する。
図9は、計測装置の構成、及び試料計測の一例を示すブロック図である。本構成例においては、試料Sの表面上に設定された2つの入射位置A、Bのそれぞれへとテラヘルツ波が集光するとともに、入射位置A、Bでテラヘルツ波が互いに180°の位相差を持つように、テラヘルツ波発生装置5からのテラヘルツ波の出力条件を制御している。
このような構成において、試料S中の直線C1−C2(以下、ヌルラインと呼ぶ)上の位置は、テラヘルツ波の入射位置A、Bから等距離にある位置となっている。このため、所定周波数のテラヘルツ波に対する試料Sの吸収特性等が試料S内で均一な場合、ヌルラインC1−C2上の位置では、入射位置A、Bのそれぞれから同じ振幅のテラヘルツ波が到達し、上記した180°の位相差のためにテラヘルツ波同士が打ち消しあう。
ここで、ヌルラインC1−C2の近傍に吸収係数が異なる吸収物質がある場合、そのような吸収物質の存在は、テラヘルツ波検出装置6でのテラヘルツ波の検出には大きな影響は及ぼさない。一方、ヌルラインC1−C2から少しずれた位置にある吸収物質は、入射位置A、Bからみてわずかしかずれていない場合でも、媒質の吸収によるテラヘルツ波の減衰は指数関数的に作用するので、テラヘルツ波の振幅が大きく変化し、かつ、その位相も変化することとなる。
このような現象を利用して、入射位置A、Bでのテラヘルツ波の位相をスキャンしていくことにより、ヌルラインC1−C2上について試料Sの媒質内部の情報をスキャンすることができる。この方法では、試料S中での吸収体の位置を高感度で特定するなど、高精度で試料計測を行うことが可能である(S. Zhou et al., "Phased array instrumentation appropriate to high-precision detection and localization of breast tumor", SPIE Vol. 2979 p.98-106 を参照)。
図10は、計測装置の構成、及び試料計測の他の例を示すブロック図である。なお、図10では、テラヘルツ波発生装置5の励起光供給部1等については図示を省略するとともに、タイミング調整部3を構成する光遅延器と、テラヘルツ波発生部2を構成するテラヘルツ波発生素子とを一体に図示している。
本構成例においては、タイミング調整部3、テラヘルツ波発生部2を、それぞれ7つの光遅延器31〜37、テラヘルツ波発生素子21〜27によって構成している。また、ここでは、試料S内で発生装置5からみて所定の深さにある位置P5を計測位置としてテラヘルツ波を照射している。
励起光供給部からのパルス励起光は、波面WEによって模式的に示すように、平坦な状態で広げられたパルス面で1次元的に並べられた発生素子21〜27の結晶に対して入射される。そして、発生素子21〜27のそれぞれで発生したテラヘルツ波が、集光レンズ20aを介して試料Sへと照射される。
ここで、試料S内の位置P5に対してテラヘルツ波を照射する構成では、試料Sと外部との屈折率差、試料Sの表面形状の凹凸、屈折率の不均一性などによってテラヘルツ波の波面が歪み、その結果、集光位置のずれ等が生じる場合がある。これに対して、発生素子21〜27のそれぞれに対する励起光の入射タイミングを試料Sの形状等に合わせて調整することにより、試料S内の計測位置P5に対してテラヘルツ波を集光させることができる。図10においては、試料Sの表面形状に合わせて調整された発光素子21〜27からのテラヘルツ波の波面W1〜W7を示している。
このように、テラヘルツ波の出力条件を制御可能な上記構成のテラヘルツ波発生装置5を用いて計測装置を構成することにより、試料S内の吸収分布等を計測する場合に、その空間分解能を向上することが可能となる。また、発生装置5からのテラヘルツ波の出力条件を可変に制御すれば、試料S内での計測位置P5を変えていくことができる。
図11は、計測装置の構成、及び試料計測の他の例を示すブロック図である。なお、図11では、図10と同様に、テラヘルツ波発生装置5の励起光供給部1等については図示を省略するとともに、タイミング調整部3を構成する光遅延器と、テラヘルツ波発生部2を構成するテラヘルツ波発生素子とを一体に図示している。
本構成例においては、タイミング調整部3、テラヘルツ波発生部2を、それぞれ7つの光遅延器31〜37、テラヘルツ波発生素子21〜27によって構成している。また、ここでは、試料S内にある異物Rについての計測(例えば異物Rの形状測定)を行う例を示している。テラヘルツ波発生装置5を用いた計測装置では、上記したように、試料S内でのテラヘルツ波の集光位置を制御することが可能である。したがって、テラヘルツ波が照射される計測位置を可変に制御しつつ試料S内をスキャンし、テラヘルツ波検出装置6において試料Sを透過したテラヘルツ波を検出することにより、試料S内にある異物Rについての形状などの情報を取得することができる。
なお、図10及び図11の構成例におけるテラヘルツ波の集光位置の制御については、図3〜図5に関して上述したように、光軸に垂直な方向、及び光軸に平行な奥行き方向に対して集光位置を制御することが可能である。また、テラヘルツ波発生装置5でのテラヘルツ波の出力条件の制御に加えて、移動ステージなどを用いて発生装置5や試料S等を機械的に移動させる構成を併用して試料計測の自由度を向上しても良い。また、具体的な試料計測については、試料を透過したテラヘルツ波を検出する構成の他、試料で反射されたテラヘルツ波を検出する構成など、様々な構成を用いて良い。
また、図9〜図11に示した構成例では、いずれも試料Sに対して一方向からテラヘルツ波を照射して計測を行っているが、具体的な試料計測方法については、これに限定されるものではない。例えば、試料Sの周囲からテラヘルツ波を照射可能な構成、あるいは、試料Sの位置関係をテラヘルツ波発生装置5に対して回転させる構成等を用いても良い。このように、試料Sに対して複数方向からテラヘルツ波を照射することによって取得したデータをコンピュータ上で再構成することで、試料Sについてより詳細な内部情報を得ることが可能となる。
さらに、試料Sを透過、反射等したテラヘルツ波を他のテラヘルツ波と干渉させて、その位相を評価しても良い。この場合、試料Sの内部におけるテラヘルツ波の波長での光学的な長さや屈折率などの情報を取得することが可能となる。この際の試料Sからのテラヘルツ波と干渉させる他のテラヘルツ波については、例えば、試料Sに照射するテラヘルツ波の一部を分岐して得られたものを用いることができる。あるいは、試料Sに照射するテラヘルツ波と位相同期がとれている他の発生装置からのテラヘルツ波を用いても良い。
また、図1等に示したテラヘルツ波発生装置では、励起光供給部1が、励起光として光の進行方向に対してパルスフロントが所定角度で傾いたパルスレーザ光を供給することとしても良い。ここで、パルス励起光のパルスフロントとは、図12に示すように、光の進行方向に対して平面状のパルス光が空間的に伝搬していく描像を考えたときのパルス平面PFをいう。
テラヘルツ波発生素子の媒質中でテラヘルツ波の平面波を発生させる場合には、このように光の進行方向に対してパルスフロントが傾いたパルス励起光を用いる方法が効果的である。特に、この場合、複数のテラヘルツ波発生素子のそれぞれにおいて、発生素子で発生するテラヘルツ波の伝搬方向と、パルスレーザ光でのパルスフロントの法線方向とが略一致していることが好ましい。
図13は、光の進行方向に対してパルスフトントが傾いたパルス励起光を用いた場合のテラヘルツ波の発生について示す模式図である。図13のテラヘルツ波発生素子21の媒質中において、実線はパルスフロントが傾いたパルス励起光E1を示し、破線はパルス励起光E1の入射によって発生素子21で発生するパルス状のテラヘルツ波T1を示している。また、実線矢印はパルス励起光E1の進行方向を示し、破線矢印はテラヘルツ波T1の伝搬方向を示している。
図13に示すパルス励起光E1の進行方向と、テラヘルツ波T1の伝搬方向とのなす角度をθcとした場合、発生素子21の媒質に入射する前のパルス励起光のパルスフロントの傾きは、tan−1(ngtanθc)である必要がある。ここで、ngは発生素子21の媒質中でのパルス光の群屈折率である。このような構成にした場合、図13に示したように、発生素子21で発生したテラヘルツ波T1の波面は、媒質中をパルス励起光E1と同じ速度で伝搬していく。このため、パルス励起光E1からテラヘルツ波T1への高い変換効率を得ることができる。また、このように平面波としてテラヘルツ波が得られる構成では、後段の光学系で集光などの光学的な操作を行いやすい、空間的に広げられた光を使用するために媒質が光によるダメージを受けにくい、などの利点がある。
なお、励起光の制御については、図14にテラヘルツ波発生装置の構成の変形例を示すように、励起光供給部1が、パルスレーザ光のパルスフロントの方向を制御するパルスフロント制御器(制御手段)15を有することが好ましい。
パルス励起光のパルスフロントを傾けるための制御器15としては、例えば、回折格子を用いることができる。回折格子を用いた場合、入射したパルス励起光を分光して、その際の光の伝搬方向について波長依存性を与えることができる。その結果、図12に示したように、パルス光が斜めに傾いて伝搬していくような状態を作り出すことが可能である。また、パルスフロントを傾けるための光学系に用いる回折格子の個数については、必要に応じて複数個の回折格子を用いても良い。あるいは、回折格子以外の光学素子を用いてパルスフロントを制御しても良い。
また、このようにパルスフロントを傾ける場合、図14に示すように、テラヘルツ波発生素子21の媒質の形状を、その出力面を傾けた形状としておくことが好ましい。これにより、発生素子21で変換されて出力されるテラヘルツ波を均一な波面で取り出すことができる。
本発明によるテラヘルツ波発生装置及び計測装置は、上記した実施形態及び構成例に限られるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、複数のテラヘルツ波発生素子のそれぞれに対して励起光を供給する励起光供給部の構成については、単一の励起光源及び光分岐器を用いた図1の構成以外にも、互いに同期して動作する複数の励起光源を用いても良い。また、複数のテラヘルツ波発生素子のそれぞれに対する励起光の入射タイミングを調整するタイミング調整部の構成についても、複数の光遅延器を用いた構成に限らず、様々な構成を用いて良い。
本発明によるテラヘルツ波発生装置及びそれを用いた計測装置は、テラヘルツ波を好適な条件で出力することが可能なテラヘルツ波発生装置、及びそれを用いた計測装置として利用可能である。
1…励起光供給部、10…レーザ光源(励起光源)、11…光分岐器、15…パルスフロント制御器、2…テラヘルツ波発生部、20…出力光学系、20a…集光レンズ、21〜27…テラヘルツ波発生素子、3…タイミング調整部、30…遅延制御部、31〜37…光遅延器、5…テラヘルツ波発生装置、6…テラヘルツ波検出装置。
Claims (10)
- テラヘルツ波の発生に用いられる励起光を供給する励起光供給手段と、
複数のテラヘルツ波発生素子を有し、前記複数のテラヘルツ波発生素子のそれぞれに対して前記励起光を入射してテラヘルツ波を発生するテラヘルツ波発生手段と、
前記複数のテラヘルツ波発生素子のそれぞれに対する前記励起光の入射タイミングを調整することによって、前記テラヘルツ波発生手段から出力される前記テラヘルツ波の出力条件を制御するためのタイミング調整手段と
を備えることを特徴とするテラヘルツ波発生装置。 - 前記タイミング調整手段は、前記テラヘルツ波の出力条件として、前記テラヘルツ波の出力方向、位相、出力空間分布、及び時間波形の少なくとも1つを制御することを特徴とする請求項1記載のテラヘルツ波発生装置。
- 前記タイミング調整手段は、前記テラヘルツ波の出力条件を、複数の集光位置を有する出力空間分布となるように制御することを特徴とする請求項2記載のテラヘルツ波発生装置。
- 前記励起光供給手段は、前記励起光として1ps〜1fsのパルス幅を有するパルスレーザ光を供給することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のテラヘルツ波発生装置。
- 前記励起光供給手段は、前記励起光として光の進行方向に対してパルスフロントが所定角度で傾いたパルスレーザ光を供給するとともに、
前記複数のテラヘルツ波発生素子で発生する前記テラヘルツ波の伝搬方向と、前記パルスレーザ光での前記パルスフロントの法線方向とが略一致していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載のテラヘルツ波発生装置。 - 前記励起光供給手段は、前記パルスフロントの方向を制御するパルスフロント制御手段を有することを特徴とする請求項5記載のテラヘルツ波発生装置。
- 前記励起光供給手段は、前記励起光として異なる2つの波長を有するレーザ光を供給することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載のテラヘルツ波発生装置。
- 前記テラヘルツ波発生手段は、前記複数のテラヘルツ波発生素子で発生する前記テラヘルツ波を所定の出力条件で出力させるための出力光学系を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項記載のテラヘルツ波発生装置。
- 所定の出力条件で出力されたテラヘルツ波を計測対象の試料に照射するための請求項1〜8のいずれか一項記載のテラヘルツ波発生装置と、
前記試料から出射された前記テラヘルツ波を検出するテラヘルツ波検出装置と
を備えることを特徴とする計測装置。 - 前記テラヘルツ波発生装置から前記試料に照射された前記テラヘルツ波をモニタするテラヘルツ波モニタ手段を備え、
前記テラヘルツ波発生装置の前記タイミング調整手段は、前記テラヘルツ波モニタ手段によるモニタ結果を参照して、前記複数のテラヘルツ波発生素子のそれぞれに対する前記励起光の入射タイミングを調整することを特徴とする請求項9記載の計測装置。
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