JP2005225221A - 多色発色レーザーマーキング用有彩色着色剤、多色発色レーザーマーキング用組成物及びそれを含む成形品並びにレーザーマーキング方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明の有彩色着色剤は、示差熱分析により、360℃以上590℃以下の範囲に発熱ピークを有する。また、本発明のレーザーマーキング用組成物は、有彩色着色剤と、レーザー光の受光によりそれ自身が消滅する又は変色する黒色物質(カーボンブラック等)と、重合体とを含有し、有彩色着色剤及び黒色物質の含有量は、上記重合体100質量部に対し、それぞれ、0.001〜3質量部及び0.01〜2質量部である。
【選択図】 図1
Description
しかしながら、いずれの方法も、マーキング部分が単色であるため、見やすさやデザインがかなり限定されてしまっている。
即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
1.有彩色着色剤と、レーザー光の受光によりそれ自身が消滅する又は変色する黒色物質と、重合体とを含有する成形品に、異なるエネルギーを有する2以上のレーザー光を照射して、2以上の異なる色調にマーキングをするための有彩色着色剤であって、上記有彩色着色剤が、示差熱分析により、360℃以上590℃以下の範囲に発熱ピークを有することを特徴とする多色発色レーザーマーキング用有彩色着色剤。
2.上記有彩色着色剤が、フタロシアニン骨格、ジケトピロロピロール骨格、ジオキサジン骨格、キナクリドン骨格、キノフタロン骨格、ペリレン骨格及び金属錯体骨格から選ばれる骨格の少なくとも1種を含む上記1に記載の多色発色レーザーマーキング用有彩色着色剤。
3.上記フタロシアニン骨格の中心金属が銅及びアルミニウムから選ばれる1種である上記2に記載の多色発色レーザーマーキング用有彩色着色剤。
4.上記フタロシアニン骨格の中心金属が銅であり、スルホン酸アミド基を置換基として有する上記3に記載の多色発色レーザーマーキング用有彩色着色剤。
5.異なるエネルギーを有する2以上のレーザー光を照射することにより、2以上の異なる色調にマーキングされる多色発色レーザーマーキング用組成物であって、有彩色着色剤と、レーザー光の受光によりそれ自身が消滅する又は変色する黒色物質と、重合体とを含有し、上記有彩色着色剤の含有量は、上記重合体を100質量部とした場合に0.001〜3質量部であり、上記黒色物質の含有量は、上記重合体を100質量部とした場合に0.01〜2質量部であることを特徴とする多色発色レーザーマーキング用組成物。
6.上記有彩色着色剤が、上記1乃至4のいずれかに記載の多色発色レーザーマーキング用有彩色着色剤である上記5に記載の多色発色レーザーマーキング用組成物。
7.上記重合体が、レーザー光の受光により発泡しやすい重合体を含む上記5又は6に記載の多色発色レーザーマーキング用組成物。
8.上記重合体が、ゴム質重合体の存在下に、(メタ)アクリル酸エステルを含むビニル系単量体を重合して得られるゴム強化共重合樹脂、又は、該ゴム強化共重合樹脂とビニル系単量体の(共)重合体との混合物からなるゴム強化熱可塑性樹脂を含む上記5乃至7のいずれかに記載の多色発色レーザーマーキング用組成物。
9.上記重合体が熱可塑性重合体及び熱硬化性重合体を含み、該熱硬化性重合体の含有量が、該熱可塑性重合体の含有量を100質量部としたときに0.01〜20質量部である上記5乃至8のいずれかに記載の多色発色レーザーマーキング用組成物。
10.上記黒色物質が、カーボンブラック、チタンブラック及び黒色酸化鉄から選ばれる少なくとも1種である上記5乃至9のいずれかに記載の多色発色レーザーマーキング用組成物。
11.更に、難燃剤、帯電防止剤、抗菌剤、充填材及びメタリック顔料から選ばれる少なくとも1種の機能性付与剤を含有し、上記重合体を100質量部とした場合に、該難燃剤の含有量は、1〜30質量部であり、該帯電防止剤の含有量は、0.5〜10質量部であり、該抗菌剤の含有量は、0.01〜10質量部であり、該充填材の含有量は、1〜30質量部であり、該メタリック顔料の含有量は、0.1〜10質量部である上記5乃至10のいずれかに記載の多色発色レーザーマーキング用組成物。
12.上記5乃至11のいずれかに記載の多色発色レーザーマーキング用組成物を含む成形品。
13.異なるエネルギーを有する2つのレーザー光を照射した場合に、低エネルギーのレーザー光の照射により、上記5又は6に記載の有彩色着色剤に由来する色にマーキングされ、且つ、高エネルギーのレーザー光の照射により、白色に、あるいは、上記5又は6に記載の有彩色着色剤に由来する色の濃度が低下した色にマーキングされる上記12に記載の成形品。
14.上記12又は13に記載の成形品に低エネルギーのレーザー光を照射した部分のLab値と、該成形品に含まれる有彩色着色剤を含有しない以外は該組成物と同一組成である成形品に高エネルギーのレーザー光を照射した部分のLab値とから算出されるΔE1が、3以下である上記12又は13に記載の成形品。
15.上記12又は13に記載の成形品に低エネルギーのレーザー光を照射した部分のLab値と、該成形品に高エネルギーのレーザー光を照射した部分のLab値とから算出されるΔE2が3以上である上記12乃至14のいずれかに記載の成形品。
16.レーザー光を照射した部分が発泡している、上記12乃至15のいずれかに記載の成形品。
17.上記12乃至16のいずれかに記載の成形品に含まれている(成形品を構成している)組成物。
18.異なるエネルギーを有する2以上のレーザー光を、上記12乃至16のいずれかに記載の成形品に照射して、2以上の異なる色調にマーキングすることを特徴とするレーザーマーキング方法。
19.低エネルギーのレーザー光の波長と、高エネルギーのレーザー光の波長との差が、100nm以上である上記18に記載のレーザーマーキング方法。
20.低エネルギーのレーザー光の波長が1,064nmであり、高エネルギーのレーザー光の波長が532nmである上記18又は19に記載のレーザーマーキング方法。
21.上記12乃至16のいずれかに記載の成形品の製造方法。
22.白色及び有彩色を含む多色にレーザーマーキングされている成形品。
23.マーキング部の少なくとも1箇所は発泡している上記22に記載の成形品。
本発明の多色発色レーザーマーキングに用いる有彩色着色剤(以下、単に「本発明の有彩色着色剤」ともいう。)は、該有彩色着色剤、重合体及び黒色物質を含有する組成物(以下、単に「本発明の組成物」ともいう。)を用いて得られた成形品に、異なるエネルギーを有する2以上のレーザー光を照射することにより、該成形品表面に2以上の異なる色調でマーキングするために用いられる。
本発明の組成物を用いて得られた成形品にレーザー光を照射すると、レーザー光のエネルギーに応じて、黒色物質の消滅、変色等、有彩色着色剤の分解、飛散等が生じる。ここで、黒色物質の気化、変色等が生じた部分は、相対的にこれらが生じていない部分に比べ黒色物質以外の物質の色が強く現れる。更に、有彩色着色剤の分解、飛散等が生じた部分は、これらが生じていない部分に比べ相対的に有彩色着色剤に由来する色の濃度が低下した色、あるいは、白色になる。該色変化の生じる程度が、照射したレーザー光のエネルギーの違いに応じて異なるため、異なるエネルギーを有する2以上のレーザー光を照射することにより、2以上の異なる色調にマーキングされると考えられる。また、本発明の有彩色着色剤は、通常、黒色物質を気化、変色等させるエネルギーより高いエネルギーで分解、飛散等を起こすため、例えば、黒色又は暗色系の地色を呈する成形品に対し、低エネルギーのレーザー光が照射されると、その照射部が有彩色着色剤に由来する物質の影響が強く現れた色(以下、単に「有彩色着色剤に由来する色」ともいう。)に発色し、高エネルギーのレーザー光が照射されると、その照射部が有彩色着色剤に由来する色の濃度が低下した色に発色した、各マーキングをそれぞれ得ることが可能となる。以上のようにして、レーザー光の未照射部の色(地色)である黒色又は暗色系の色以外の、2以上の異なる色調にマーキングをすることができると考えられる。
本発明の有彩色着色剤は、本発明の多色発色レーザーマーキングの優れた性能を妨げるものでなければどのような着色剤でもよいが、該着色剤は、示差熱分析で360℃以上590℃以下の範囲に発熱ピークを有するものである。該発熱ピーク範囲の下限温度は、更に好ましくは380℃、特に好ましくは400℃であり、同上限温度は、更に好ましくは585℃である。温度が低すぎると、低エネルギーのレーザー光を照射した場合に、有彩色着色剤に由来する色のマーキングが不鮮明となる傾向にある。一方、温度が高すぎると、高エネルギーのレーザー光を照射した場合に、有彩色着色剤に由来する色の濃度が低下した色のマーキングが不鮮明となる傾向にある。尚、示差熱分析の測定条件は、実施例に記載の通りである。
以下に具体的に例示する。
上述のフタロシアニン骨格を有する有彩色着色剤としては、下記一般式(I)で表される化合物が挙げられる。
該フタロシアニン骨格を有する有彩色着色剤は、顔料又は染料である。
上記一般式(I)において、Mは、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)又は2つの水素原子であることが好ましく、銅(Cu)、アルミニウム(Al)又は亜鉛(Zn)が更に好ましく、銅(Cu)又はアルミニウム(Al)が特に好ましい。尚、Mが金属の場合、ハロゲン原子、OH等の配位子を有してもよい。
また、上記一般式(I)において、R1〜R16は、無置換の水素原子;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;スルホン酸アミド基(−SO2NHR)、−SO3 −・NH3R+等の置換基(式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基である。)が好ましく、R1〜R16のうちの複数の隣接するRが連結して芳香環を形成した基も好ましい。特に好ましくは、無置換の水素原子又はスルホン酸アミド基である。
(1)上記一般式(I)におけるMがCuであり、且つ、R1〜R16が無置換の水素原子である銅フタロシアニン顔料(下記式(II))。
(2)上記一般式(I)におけるMがCuであり、R1〜R16が、各々、独立して無置換の水素原子又はハロゲン原子であるハロゲン含有銅フタロシアニン顔料。尚、ハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子が好ましい。
(3)上記一般式(I)におけるMがCuであり、R1〜R16のうちの4〜8個、好ましくは4個が、上述のスルホン酸アミド基又は−SO3 −・NH3R+、好ましくはスルホン酸アミドである溶剤可溶型銅フタロシアニン染料。特に好ましい溶剤可溶型銅フタロシアニン染料の構造を、下記一般式(III)に示す。
上記一般式(III)において、各Rは、各々、独立して炭素数4〜8のアルキル基であることが特に好ましい。
(4)上記一般式(I)におけるMがAlであり、且つ、R1〜R16が無置換の水素原子であるアルミニウムフタロシアニン顔料。Alは、配位子として−OH又は−Clを有しているものが好ましく、−OHを有しているものが更に好ましい。特に好ましいアルミニウムフタロシアニン顔料の構造を、以下の式(IV)に示す。
(6)上記一般式(I)におけるMがZnであり、且つ、R1〜R16が、各々、独立して無置換の水素原子又はハロゲン原子である亜鉛フタロシアニン顔料。該亜鉛フタロシアニン顔料の構造を、下記一般式(V)に示す。
該亜鉛フタロシアニン顔料としては、上記一般式(V)におけるR1〜R16がすべて水素原子である亜鉛フタロシアニン顔料が特に好ましい。
上述のジケトピロロピロール骨格を有する有彩色着色剤としては、下記一般式(VI)で表される化合物が挙げられ、該着色剤は、通常、顔料である。
Ar及びAr’を構成する芳香族環は、芳香族性を有すれば、どのような環でもよいが、通常、5又は6員環の、単環又は2〜6縮合環からなる芳香環であり、O、S、N等のヘテロ原子を含んでいてもよい。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アンスラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、ピリジン環、チオフェン環、ピロール環、フラン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾピロール環、イミダゾール環、キノリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、チアゾール環、ジベンゾチオフェン環等が挙げられ、これらのうち、6員環が好ましく、6員環の単環が更に好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
該芳香族環は置換基を有することが好ましく、好ましい置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシル基、アミノ基、−NHCOR’、−COR’及び−COOR’(但し、R’は、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数12以下の(ヘテロ)アリール基である。)が挙げられ、このうち、ハロゲン原子、特に塩素原子が好ましい。
上述のジオキサジン骨格を有する有彩色着色剤としては、下記一般式(VII)で表される骨格を含む化合物が挙げられ、該着色剤は、通常、顔料である。
上述のジオキサジン骨格を有する有彩色着色剤としては、上記一般式(VIII)において、置換基R17及びR18を有することが特に好ましい。R17及びR18は、ハロゲン原子又は−NHCOR’が好ましく、−NHCOR’が更に好ましい。また、R19〜R22は、ハロゲン原子、−NHCOR’、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシル基等が好ましく、炭素数1〜12のアルコキシル基又は−NHCOR’が更に好ましい。
上述のキナクリドン骨格を有する有彩色着色剤としては、下記一般式(IX)で表される骨格を含む化合物が挙げられ、該着色剤は、通常、顔料である。
上述のキノフタロン骨格を有する有彩色着色剤としては、下記一般式(XI)で表される骨格を含む化合物が挙げられ、該着色剤は、顔料又は染料である。
上記一般式(XIV)で表される、キノフタロン骨格を有する有彩色着色剤としては、R28〜R30が無置換の水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシル基であり、R31及びR32が無置換の水素原子であり、且つ、R33〜R36がハロゲン原子である化合物が好ましい。
より好ましい着色剤は、R28及びR29が無置換の水素原子又はハロゲン原子であり、R30〜R32が無置換の水素原子であり、R33〜R36がハロゲン原子であり、且つ、X5〜X8がハロゲン原子である化合物である。この着色剤は、通常、顔料である。
特に好ましい着色剤は、R28及びR29が無置換の水素原子であり、R30〜R32が無置換の水素原子であり、R33〜R36がハロゲン原子(X9〜X12)であり、且つ、X5〜X8がハロゲン原子である化合物である(下記一般式(XV)参照)。
上述のアンスラキノン骨格を有する有彩色着色剤としては、下記一般式(XVII)で表される骨格を含む化合物が挙げられる。該着色剤は、下記骨格を1つのみ含む化合物であってもよいし、2つ以上を含む化合物であってもよい。
上記一般式(XVIII)で表される化合物は、通常、黄〜青色の染料である。
上述のペリレン骨格を有する有彩色着色剤としては、例えば、下記一般式(XXI)で表される化合物が挙げられ、該着色剤は、通常、顔料である。
上記一般式(XXI)で表される、ペリレン骨格を有する有彩色着色剤としては、R47及びR48が炭素数1〜12のアルキル基である着色剤が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基である着色剤が更に好ましい。
上述の金属錯体骨格を有する有彩色着色剤としては、例えば、有機色素骨格に金属イオンが配位した化合物等が挙げられる。該有機色素骨格としては、アゾ基を有するもの、アゾメチン基を有するもの等があり、アゾ基あるいはアゾメチン基のオルト位又はペリ位にヒドロキシル基、アミノ基、イミノ基等を有してもよい。金属イオンとしては、銅、ニッケル、コバルト、亜鉛等のイオンが挙げられる。
この黒色物質は、レーザー光の受光により消滅する又は変色するものであれば特に限定されない。即ち、レーザー光のエネルギーによりそれ自身が消滅する、変色する等して、本発明の組成物及びこれを用いた成形品におけるレーザー光の照射部の色が、該黒色物質以外の物質の色の影響の強く現れた色となるものであれば、どのような黒色物質でもよい。尚、上述の黒色物質の「消滅」は、気化、揮散又は分解して黒色物質が存在しなくなることを、「変色」は、物質の少なくとも一部又は全てが、分解等により受光前と異なる色(好ましくは白色)になること(例えば、黒色→水色又は白色)をそれぞれ意味する。また、黒色物質の「黒色」は、黒色を含む暗色系の色であり、例えば、赤色−黒色系(茶色−黒色系)、緑色−黒色系、青色−黒色系、紫色−黒色系、灰色−黒色系等の黒系の色を含む。
本発明の組成物(成形品)がカーボンブラックを含有する場合、レーザー光が照射されると、レーザー光を吸収して気化することが知られている。カーボンブラックが気化して無くなると、レーザー光照射部の色は、カーボンブラック由来の色(黒色又は暗色)の影響が小さく又は無くなり、本発明の組成物(成形品)に含まれるカーボンブラック以外の成分に由来する色の影響が強くなり、即ち、有彩色着色剤に由来する色に発色する。
上述のチタンブラックは、レーザー光が照射されると、白色の二酸化チタンに変化することが知られている。従って、カーボンブラックを含有する組成物にレーザー光を照射した場合と同様、照射部の色は、黒色の度合いが小さく又は無くなり、有彩色着色剤に由来する色に発色する。
上述の黒色酸化鉄は、レーザー光が照射されると、赤みがかった白色に変化することが知られている。従って、カーボンブラックやチタンブラックを含有する組成物にレーザー光を照射した場合と同様、照射部の色は、黒色の度合いが小さく又は無くなり、有彩色着色剤に由来する色に発色する。
この重合体は、レーザー光の照射による多色発色を妨げるものでなければ、どのような重合体でもよい。従って、熱可塑性、熱硬化性、光(可視光線〜紫外線の他、電子線等も含む)硬化性、室温硬化性等の重合体を含むことが好ましい。これらは、樹脂、エラストマー、ポリマーアロイ、ゴム等のいずれでもよい。また、上述のうちの1種で用いても、これらに属さない他の重合体の併用も含め2種以上を組み合わせて用いてもよい。尚、上述の「硬化性」の重合体は、硬化後に重合体となるオリゴマー等を含むものとする。
また、上述の硬化性の重合体等の硬化の時期は、特に限定されず、本発明の組成物を用いて成形品を製造した際、該成形品に対してレーザー光を照射した際等とすることができる。尚、上述の硬化性の重合体等は、本発明の有彩色着色剤、黒色物質等と混練する時点、本発明の組成物とした時点、及び、成形品を製造した時点で硬化していなくてもよい。この場合は、未硬化の重合体、オリゴマー等を示すこととする。
ポリマーアロイとしては、PA/ゴム強化熱可塑性樹脂、PC/ゴム強化熱可塑性樹脂、PBT/ゴム強化熱可塑性樹脂、PC/PMMA等が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ゴムとしては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、塩素化ポリエチレン、シリコーンゴム、エピクロルヒドリンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム等が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の組成物(成形品)にレーザー光が照射されて、その照射部が発泡部となると、レーザー光照射時の有彩色着色剤の挙動によっては、レーザー光照射部(発泡部)とその周辺の未照射部との屈折率差が大きくなり、マーキングがより鮮明となる。例えば、高エネルギーのレーザー光によって有彩色着色剤が分解、飛散等することで、白色又はその着色剤に由来する色の濃度が低下した色となった場合には、レーザー光照射部(発泡部)とその周辺の未照射部との屈折率差が大きいために、より鮮明なマーキングが形成される。
上述の通り、ゴム強化共重合樹脂(A1)及びビニル系単量体(b2)の(共)重合体(A2)の形成のために、(メタ)アクリル酸エステルを用いることが好ましいことから、ゴム質重合体(a)の存在下に、(メタ)アクリル酸エステルを含むビニル系単量体(b1)を重合して得られるゴム強化共重合樹脂(A1)、又は、該ゴム強化共重合樹脂(A1)とビニル系単量体(b2)の(共)重合体(A2)との混合物からなるゴム強化共重合樹脂が特に好ましい。尚、ゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体(b1)を重合すると、通常、ビニル系単量体(b1)がゴム質重合体にグラフト重合しているグラフト重合体成分と、グラフトしていないビニル系単量体(b1)の(共)重合体成分との混合物等が得られる。
また、上述の(共)重合体(A2)の形成に用いられるビニル系単量体(b2)としては、上述の(メタ)アクリル酸エステル;芳香族ビニル化合物;シアン化ビニル化合物;マレイミド系化合物;エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、オキサゾリン基等の官能基を有するビニル系化合物等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。尚、上述のビニル系単量体(b1)及びビニル系単量体(b2)は、同一の単量体を同量で又は異なる量で用いてもよいし、異なる種類の単量体を用いてもよい。
シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらのうち、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが好ましい。
(1)芳香族ビニル化合物を用いる場合、ビニル系単量体の全量に対する使用量の下限は、好ましくは5、更に好ましくは10、特に好ましくは20であり、同上限は、好ましくは100、更に好ましくは80である。
(2)シアン化ビニル化合物を用いる場合、ビニル系単量体の全量に対する使用量の下限は、好ましくは1、更に好ましくは3、特に好ましくは5であり、同上限は、好ましくは50、更に好ましくは40、特に好ましくは35である。
(3)(メタ)アクリル酸エステルを用いる場合、ビニル系単量体の全量に対する使用量の下限は、好ましくは1、更に好ましくは5であり、同上限は、好ましくは100、更に好ましくは95であり、特に好ましくは90である。
(4)マレイミド系化合物を用いる場合、ビニル系単量体の全量に対する使用量の下限は、好ましくは1、更に好ましくは5であり、同上限は、好ましくは70、更に好ましくは60であり、特に好ましくは55である。
(5)官能基を有するビニル系化合物を用いる場合、ビニル系単量体の全量に対する使用量の下限は、好ましくは0.1、更に好ましくは0.5、特に好ましくは1であり、同上限は、好ましくは30、更に好ましくは25である。
ビニル系単量体の使用量が上述の範囲内にあると、用いる単量体の効果が十分に発揮されるので好ましい。
乳化重合により製造する場合には、重合開始剤、連鎖移動剤(分子量調節剤)、乳化剤、水等が用いられる。
上述のゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体(b1)を乳化重合させる際の、ビニル系単量体(b1)の使用方法は、通常、以下の通りであるが、本発明でゴム質重合体(a)の存在下にビニル系単量体(b1)を重合させる際のビニル系単量体(b1)の使用方法は、この使用方法に限定されない。尚、反応系において、ゴム質重合体(a)全量の存在下に、ビニル系単量体(b1)を全量一括して添加してもよいし、分割又は連続添加してもよい。また、ゴム質重合体(a)の全量又は一部を、重合の途中で添加してもよい。
溶液重合、塊状重合による製造方法については、公知の方法を適用することができる。
ここで、グラフト率とは、ゴム強化共重合樹脂(A1)1g中のゴム成分をxg、該ゴム強化共重合樹脂(A1)1gをアセトン(但し、ゴム質重合体(a)としてアクリル系ゴムを用いる場合は、アセトニトリルを使用する)に溶解させた際の不溶分をygとしたときに、次式により求められる値である。
グラフト率(%)={(y−x)/x}×100
尚、該グラフト率(%)は、ゴム強化共重合樹脂(A1)を製造するときの、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤、溶剤等の種類や量、更には重合時間、重合温度等を変化させることにより、容易に制御することができる。
上述の(共)重合体(A2)のアセトン可溶分の極限粘度〔η〕(メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、成形加工性と耐衝撃性の物性バランスの点から、好ましくは0.1〜1.0dl/g、より好ましくは0.15〜0.7dl/gである。該極限粘度〔η〕は、上述のゴム強化共重合樹脂(A1)と同様、製造方法の調整により制御することができる。また、上述のゴム強化熱可塑性樹脂のアセトン可溶分の極限粘度〔η〕(メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、成形加工性と耐衝撃性の物性バランスの点から、好ましくは0.1〜0.8dl/g、より好ましくは0.15〜0.7dl/gである。
上述のゴム強化熱可塑性樹脂の好ましい態様の例を以下(1)〜(4)に示す。
(1)ゴム質重合体の存在下、メタクリル酸メチルを含む単量体を重合して得られたゴム強化共重合樹脂。
(2)上述の(1)と、メタクリル酸メチルを含む単量体を重合して得られた(共)重合体とを組み合わせたゴム強化熱可塑性樹脂。
(3)上述の(1)と、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含む単量体を重合して得られた(共)重合体とを組み合わせたゴム強化熱可塑性樹脂。
(4)ゴム質重合体の存在下、メタクリル酸メチルを用いず、芳香族ビニル化合物と、シアン化ビニル化合物とを含む単量体を重合して得られたゴム強化共重合樹脂と、メタクリル酸メチルを含む単量体を重合して得られた(共)重合体とを組み合わせたゴム強化熱可塑性樹脂。
従って、上述のアクリル系樹脂としては、メタクリル酸メチルを含む単量体を用いて得られた樹脂が特に好ましく、メタクリル酸メチル単量体単位を30質量%以上含む(共)重合体、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等が好ましい。
また、ジカルボン酸及びジアミンを縮重合させる場合のジカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、テレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。ジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン等が挙げられる。
尚、ポリアミド樹脂の末端は、カルボン酸、アミン等で封止されていてもよい。該カルボン酸としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等の脂肪族モノカルボン酸が挙げられる。また、該アミンとしては、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、ベヘニルアミン等の脂肪族第1級アミン等が挙げられる。
上述のポリアミド樹脂は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ジオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール等が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ジイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式ジイソシアネートが挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
尚、ジオール及びジイソシアネートの反応の際には、鎖伸長剤を用いてもよい。
本発明の多色発色レーザーマーキング用組成物(本発明の組成物)は、上述の有彩色着色剤、黒色物質及び重合体を、それぞれ、所定量で含み、該組成物に対して、異なるエネルギーを有する2以上のレーザー光を照射することにより、2以上の異なる色調にマーキングされる。
また、黒色物質の含有量の下限は、好ましくは0.03質量部、特に好ましくは0.05質量部であり、同上限は、好ましくは1質量部、特に好ましくは0.8質量部である。上述の黒色物質の含有量が多すぎると、レーザー光照射部分が黒すぎて、レーザー光照射によるマーキングの識別が困難になりやすい。尚、上述の重合体として、硬化性重合体を用いる場合は、「硬化後の重合体が100質量部」となるように原料成分が調整されているものとする。
上述の白色系物質としては、本発明のマーキングの識別を非常に困難にする等、本発明の多色発色の多色発色マーキングの優れた性能を大幅に妨げるものでなければどのような白色系の物質でもよく、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム等が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上述の白色系物質の含有量は、上述の重合体100質量部に対して、好ましくは0.001〜1質量部、より好ましくは0.001〜0.5質量部、更に好ましくは0.001〜0.1質量部である。含有量が多すぎると、コントラストの良好なマーキングが得られない場合があり、一方、少なすぎると、成形後の地色の自由度が制限される場合がある。
低分子型帯電防止剤としては、アニオン系帯電防止剤;カチオン系帯電防止剤;非イオン系帯電防止剤;両性系帯電防止剤;錯化合物;アルコキシシラン、アルコキシチタン、アルコキシジルコニウム等の金属アルコキシド及びその誘導体;コーテッドシリカ、リン酸塩、リン酸エステル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、高分子型帯電防止剤としては、分子内にスルホン酸金属塩を有するビニル共重合体、アルキルスルホン酸金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩、ベタイン等が挙げられる。更に、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー等を用いることもできる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記帯電防止剤の含有量は、上記重合体成分〔A〕を100質量部とした場合に、好ましくは0.5〜30質量部、より好ましくは0.5〜20質量部である。
有機系難燃剤としては、ブロム化ビスフェノール系エポキシ樹脂、ブロム化ビスフェノール系フェノキシ樹脂、ブロム化ビスフェノール系ポリカーボネート樹脂、ブロム化ポリスチレン樹脂、ブロム化架橋ポリスチレン樹脂、ブロム化ビスフェノールシアヌレート樹脂、ブロム化ポリフェニレンエーテル、デカブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモビスフェノールA及びそのオリゴマー、ブロム化アルキルトリアジン化合物等のハロゲン系難燃剤;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トキヘキシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート等のリン酸エステル及びこれらを各種置換基で変性した化合物、各種の縮合型のリン酸エステル化合物、リン元素と窒素元素を含むホスファゼン誘導体等のリン系難燃剤;ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
反応系難燃剤としては、テトラブロモビスフェノールA、ジブロモフェノールグリシジルエーテル、臭素化芳香族トリアジン、トリブロモフェノール、テトラブロモフタレート、テトラクロロ無水フタル酸、ジブロモネオペンチルグリコール、ポリ(ペンタブロモベンジルポリアクリレート)、クロレンド酸(ヘット酸)、無水クロレンド酸(無水ヘット酸)、臭素化フェノールグリシジルエーテル、ジブロモクレジルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上述の難燃剤の含有量は、上述の重合体を100質量部とした場合に、好ましくは1〜30質量部、より好ましくは3〜20質量部である。
無機系抗菌剤としては、銀系ゼオライト、銀・亜鉛系ゼオライト等のゼオライト系抗菌剤;錯体化銀・シリカゲル等のシリカゲル系抗菌剤;ガラス系抗菌剤;リン酸カルシウム系抗菌剤;リン酸ジルコニウム系抗菌剤;銀・ケイ酸アルミン酸マグネシウム等のケイ酸塩系抗菌剤;チタン含有抗菌剤;セラミック系抗菌剤;ウィスカー系抗菌剤等が挙げられる。
また、有機系抗菌剤としては、ホルムアルデヒド放出剤、ハロゲン化芳香族化合物、ロードプロパルギル誘導体、チオシアナト化合物、イソチアゾリノン誘導体、トリハロメチルチオ化合物、第四アンモニウム塩、ビグアニド化合物、アルデヒド類、フェノール類、ベンズイミダゾール誘導体、ピリジンオキシド、カルバニリド、ジフェニルエーテル、カルボン酸、有機金属化合物等が挙げられる。該抗菌剤の含有量は、上述の重合体を100質量部とした場合に、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部である。
メタリック調の模様を形成するためには、メタリック顔料等を用いることができ、該メタリック顔料は、平均粒径が所定の範囲にあり、且つ、金属様光沢を有する粒子を用いることが好ましい。該粒子の形状は特に限定されず、球形、略球形、角形(立方体、直方体、多面体等)、鱗片状、星形、棒状等が挙げられるが、これらのうち、金属様光沢性に優れるため多面体が好ましい。該メタリック顔料の好ましい平均粒径は1〜500μmであり、より好ましくは2〜300μmである。この範囲とすることによって、上述の成形品の模様が鮮明になりやすい。尚、メタリック顔料が球形以外の場合、上述の「平均粒径」は、最大長さを意味するものとする。
本発明の成形品は、重合体、有彩色着色剤及び黒色物質を少なくとも含み、その地色が通常、黒色又は暗色系の色である。該重合体の構成例としては、(1)熱可塑性重合体のみを含む場合、(2)熱可塑性重合体及び(熱)硬化性重合体の両方を含む場合、(3)熱可塑性重合体及び硬化重合体の両方を含む場合、(4)硬化重合体のみを含む場合等が挙げられる。上記いずれの場合も、本発明の組成物に含有される「重合体」によって形成することができる。
本発明の組成物及び成形品に対して、異なるエネルギーを有する2以上のレーザー光を照射することにより、2以上の異なる色調のマーキングを形成することができる。
一般的に、レーザー光の「エネルギー」は、レーザー光の照射条件に依存する。具体的には、照射するレーザー光の種類、波長、パルス幅、周波数、出力の他、照射時間、照射面積、光源から成形品までの距離と角度、照射方法等を変えることにより、2以上のレーザー光を照射する際の「異なるエネルギーを有する」レーザー光とすることができる。具体的には、波長の異なるレーザー光を用いる場合のみならず、同一波長のレーザー光を用い、照射時間等の他の照射条件が異なる場合も、異なるエネルギーとすることができる。また、照射条件を同一として、1回照射の場合、及び、2回以上照射の場合において、被照射物に対するエネルギーは異なり、この場合、照射時間の長い後者の方が「高いエネルギー」となる。
気体レーザーとしては、ヘリウム・ネオンレーザー、希ガスイオンレーザー、ヘリウム・カドミウムレーザー、金属蒸気レーザー、炭酸ガスレーザー等が挙げられる。固体レーザーとしては、ルビーレーザー、ネオジウムレーザー、波長可変固体レーザー等が挙げられる。半導体レーザーは、無機でも有機でもよく、無機の半導体レーザーとしては、GaAs/GaAlAs系、InGaAs系、InP系等が挙げられる。また、Nd:YAG、Nd:YVO4、Nd:YLF等の半導体レーザー励起固体レーザーを用いることもできる。上述に例示したレーザー光は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の成形品1に対し、2つの異なるエネルギーを有するレーザー光を異なる位置に照射する(図1の〔I〕)。このとき、レーザー光の照射は同時に行ってよいし、別々に行ってもよい。低エネルギーのレーザー光の照射部は、有彩色着色剤に由来する色にマーキング(図1の3a)され、一方、高エネルギーのレーザー光の照射部は、白色、あるいは、有彩色着色剤に由来する色の濃度が低下した色にマーキング(図1の3b)される(図1の〔II〕)。以上の要領で、2つの異なる色調にマーキングされた成形品(多色マーキング付き成形品)2を得ることができる。
以上のように、レーザー光の照射条件及び有彩色着色剤等を適切に選択することにより、所望の色のレーザーマーキングを得ることができる。
また、本発明のレーザーマーキング方法により得られる「有彩色着色剤に由来する色の濃度が低下した色」は、上述の『有彩色着色剤に由来する色』の濃度が低下した色」をいう。該色は、主に、レーザー光照射により有彩色着色剤が変化した結果、得られる色であり、具体的には、有彩色着色剤の分解、飛散等により有彩色着色剤の色の影響が小さくなることにより現れる色の他、本発明の有彩色着色剤が変色して色調が変化した色等も含まれる。「有彩色着色剤に由来する色の濃度が低下した色」は、白色に近い色であるほど、上述の「有彩色着色剤に由来する色」と区別しやすいため好ましい。
尚、上述の「白色」の白色度は、JIS K7105等により評価することができる。該白色度は、色の白さの度合いを意味し、ある一定光量の光を対象物に照射したときの反射率により評価される。該反射率は、ハンター白色度計等により測定することができる。ここで、該反射率は、照射する光の種類(波長等)によって異なり、ハンター白色度計の場合は、光の3原色である青色光で測定を行う。本発明の組成物及びこれを含む成形品において得られた白色マーキングの白色度(%)は、酸化マグネシウムの反射光に対する強度の割合で表すことができる。人間の視覚による白さと白色度計による白色度とは必ずしも一致しないこともあるが、本発明の組成物及びこれを含む成形品において得られた白色マーキングは、白色度が低くても人間の目に白く見えればよい。しかしながら、白色度の目安としては、好ましくは55〜100%、より好ましくは60〜100%、更に好ましくは70〜100%、特に好ましくは80〜100%である。
ΔE1=√{(L1−L2)2+(a1−a2)2+(b1−b2)2}
また、本発明のレーザーマーキング用組成物(S1)を用いて得られる成形品に、高エネルギーのレーザー光、例えば、波長532nmのレーザー光を照射した部分のLab値(L1;明度、a1;赤色度、b1;黄色度)と、該組成物(S1)に低エネルギーのレーザー光、例えば、波長1,064nmのレーザー光を照射した部分のLab値(L3;明度、a3;赤色度、b3;黄色度)とから、以下の式により算出されるΔE2は、各マーキングの色調の違いが明瞭な多色マーキングとすることができる点から、下限が好ましくは3、更に好ましくは3.5、特に好ましくは4であり、上限は、通常、50である。尚、ΔE2は、実施例に記載の方法で求めることができる。尚、ΔE2は、大きいほど色調差が明瞭であることを示す。
ΔE2=√{(L1−L3)2+(a1−a3)2+(b1−b3)2}
本発明の2以上の異なる色調にマーキングされた成形品(以下、単に「本発明の多色マーキング付き成形品」ともいう。)は、上述のレーザーマーキング用組成物を含む成形品に、異なるエネルギーを有する2以上のレーザー光を照射することにより得られる。
尚、本発明の多色マーキング付き成形品を構成する重合体の種類によっては、マーキング部が発泡している場合がある。特に、ポリアセタール樹脂、単量体成分としてメタクリル酸メチルを用いたスチレン系樹脂、単量体成分としてメタクリル酸メチルを用いたゴム強化熱可塑性樹脂等を用いた場合には発泡したマーキング部とすることができる。
マーキング部が凸部である場合の高さは、通常、1〜200μmであり、好ましくは1〜100μm、より好ましくは1〜80μmである。また、マーキング部が凹部である場合の深さは、通常、1〜200μmであり、好ましくは1〜100μmである。凸部の高さが高すぎると、マーキングの視認性が向上する一方、マーキング部が接触される用途(キーボード、点字等)においては、接触圧が高い場合、あるいは、接触圧が低くても接触が繰り返される場合に、文字潰れが起こりやすくなる。尚、これらの凹凸の程度は、レーザー光の照射条件等により調節することができる。
また、該成形品が、チタンブラックのように、レーザー光の熱による変色と同時に蓄熱が重合体の膨張を誘発するような黒色物質等を含む場合にも、マーキング部が凸部になることがある。
従って、レーザー光の受光により発泡しやすい重合体と熱硬化性重合体とを含む成形品に対してレーザー光を照射した場合であっても、発泡部の周辺部(壁等)に存在する熱硬化性重合体成分が補強材として働き、マーキング部全体として十分な強度(耐衝撃性)と耐久性が保たれる。また、熱硬化性重合体の種類、含有割合等によっては、発泡により形成された空隙に熱硬化性重合体成分が存在することもある。この場合、レーザー光の照射条件の調節により、マーキング部における発泡をできるだけ小さくして、この空隙に熱硬化性重合体成分が入り込むようにすると、本発明の多色マーキング付き成形品は、鮮明な発色と、強度と、耐久性とを備える。尚、このような効果を示す熱硬化重合体は、上述のように、本発明の多色マーキング付き成形品中において、連結状態であってよいし、粒子状等の形態であってよいし、更には、それ以外の形状で存在していてもよい。
白色及び有彩色がどのような成形品に、どのような条件でレーザー光を照射し、発色させたものであってもよいが、レーザーマーキングされていない成形品の地色は、黒色又は暗色系の色であることが好ましい。成形品の形状も特に限定されない。これによって、白色及び有彩色のマーキングがより鮮明に視認される。また、上述のレーザーマーキング用組成物を含む成形品に対してレーザー光を照射してなるものであることが好ましい。
また、マーキング部の少なくとも1箇所は発泡していることが好ましい。この場合には、白色マーキングの白色度がより向上する。
上述の保護層を備えることにより、マーキング部を保護する等だけでなく、成形品の表面の平滑性を向上させることもできる。尚、上述の保護層の形成方法は特に限定されない。
図3は、多色のマーキング部3a及び3bを有する面に、保護層4を備える多色マーキング付き成形品2bの概略断面図である。
〔I−1〕有彩色着色剤の種類及び発熱ピーク温度
以下に示す着色剤について、示差熱分析により発熱ピーク温度を測定した。測定装置は、セイコー電子社製「TG−DTA320型(横型炉)」である。3mgの試料をアルミニウム製の直径5mm×高さ2.5mmの皿型容器に均一に密に充填し、昇温速度を10℃/分として、空気中、流速200ml/分で測定した。尚、測定装置における温度の較正は、インジウム及びスズを用いて行った。また、重量の較正は、室温下、分銅を用いて行い、更に、シュウ酸カルシウムを用いて行った。発熱ピーク温度は、昇温曲線におけるピークトップにより決定した。各着色剤の昇温曲線を図5〜図16に示す。
発熱ピーク温度の結果を表1に示す。
(1)銅フタロシアニン顔料
レーザー散乱法粒径分布測定装置による平均二次粒子径が7.1μmであるβ型銅フタロシアニン顔料(下記式(XXII))を用いた。
実施例A−1
上記有彩色着色剤(1)0.2部と、黒色物質(商品名「三菱カーボン#45」、三菱化学社製)0.1部と、下記の方法で得たゴム強化共重合樹脂100部とを、ミキサーにより5分間混合した後、50mmφ押出機でシリンダー設定温度180〜220℃で溶融混練押出し、ペレットを得た。得られたペレットを十分に乾燥し、射出成形機(型名「EC−60」、東芝機械社製)により評価用の試験片(縦80mm、横55mm、厚さ2.5mm)を得た。
レーザーマーキングは、ロフィン・バーゼル社製ロフィンパワーライン「E/SHG型」及び同社製レーザーマーカー「RSM30D型」を用い、レーザー光の波長をそれぞれ532nm及び1,064nmとして、各レーザー光を、試験片の表面の異なる位置に照射した。レーザー光の波長が532nmのときの出力は23A、周波数は8kHz、走査速度は400mm/秒、ビーム径は30μmであり、1,064nmのときの出力は34A、周波数は3kHz、走査速度は400mm/秒、アパチャーφは2.0mmである。
各照射部の色を観察し、その結果を表2に示した。
還流冷却機、温度計及び撹拌機を備えたセパラブルフラスコに、イオン交換水100部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.5部、t−ドデシルメルカプタン0.1部、重量平均粒子径2400Åのポリブタジエン粒子15部(固形分換算)、スチレン4部、アクリロニトリル2部及びメタクリル酸メチル12部を入れ、攪拌しながら昇温した。原料成分の温度が45℃に達した時点で、エチレンジアミン4酢酸ナトリウム0.1部、硫酸第1鉄0.003部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシラート2水和物0.2部及びイオン交換水15部よりなる活性剤水溶液、並びに、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド0.1部を添加し、重合反応を1時間行った。
その後、イオン交換水50部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部、t−ドデシルメルカプタン0.1部、ジイソプロピルヒドロパーオキサイド0.2部、スチレン23部、アクリロニトリル7部及びメタクリル酸メチル37部からなる重合成分を3時間に渡って連続的に添加し、重合反応を続けた。上記重合成分を添加終了後、攪拌を更に1時間行い、2,2−メチレン−ビス−(4−エチレン−6−t−ブチルフェノール)0.2部を添加し、反応生成物を得た。次いで、この反応生成物を含むラテックスに塩化カルシウム2部を投入して、重合体成分を凝固し、凝固物を十分に水洗した。その後、75℃で、24時間乾燥し、白色粉末のゴム強化共重合樹脂を得た。重合転化率は98.5%、グラフト率は60%、極限粘度は0.3dl/gであった。
上記有彩色着色剤(1)に代えて有彩色着色剤(2)を用い、配合量を0.1部とした以外は、上記実施例A−1と同様にして試験片を作製し、評価した。その結果を表2に併記した。
上記有彩色着色剤(1)に代えて有彩色着色剤(3)を用いた以外は、上記実施例A−1と同様にして試験片を作製し、評価した。その結果を表2に併記した。
上記有彩色着色剤(1)に代えて有彩色着色剤(4)を用いた以外は、上記実施例A−1と同様にして試験片を作製し、評価した。その結果を表2に併記した。
上記有彩色着色剤(1)に代えて有彩色着色剤(5)を用いた以外は、上記実施例A−1と同様にして試験片を作製し、評価した。その結果を表2に併記した。
成形用重合体としてポリアセタール樹脂(商品名「ユピタールF20−03N」、三菱エンジニアリングプラスチックス社製)を用いた以外は、上記実施例A−5と同様にして試験片を作製し、評価した。その結果を表2に併記した。
成形用重合体としてポリメタクリル酸メチル樹脂(商品名「VH001」、三菱レイヨン社製)を用いた以外は、上記実施例A−5と同様にして試験片を作製し、評価した。その結果を表2に併記した。
成形用重合体としてポリアミド樹脂(商品名「NOVAMID1010」、三菱エンジニアリングプラスチックス社製)を用いた以外は、上記実施例A−5と同様にして試験片を作製し、評価した。その結果を表2に併記した。
上記有彩色着色剤(1)に代えて有彩色着色剤(6)を用いた以外は、上記実施例A−1と同様にして試験片を作製し、評価した。その結果を表2に併記した。
上記有彩色着色剤(1)に代えて有彩色着色剤(7)を用いた以外は、上記実施例A−1と同様にして試験片を作製し、評価した。その結果を表2に併記した。
上記有彩色着色剤(1)に代えて有彩色着色剤(8)を用いた以外は、上記実施例A−1と同様にして試験片を作製し、評価した。その結果を表2に併記した。
上記有彩色着色剤(1)に代えて有彩色着色剤(9)を用いた以外は、上記実施例A−1と同様にして試験片を作製し、評価した。その結果を表2に併記した。
上記有彩色着色剤(1)に代えて有彩色着色剤(10)を用いた以外は、上記実施例A−1と同様にして試験片を作製し、評価した。その結果を表2に併記した。
上記有彩色着色剤(1)に代えて有彩色着色剤(11)を用いた以外は、上記実施例A−1と同様にして試験片を作製し、評価した。その結果を表2に併記した。
上記有彩色着色剤(1)に代えて有彩色着色剤(12)を用いた以外は、上記実施例A−1と同様にして試験片を作製し、評価した。その結果を表2に併記した。
上記有彩色着色剤(1)に代えて有彩色着色剤(13)を用いた以外は、上記実施例A−1と同様にして試験片を作製し、評価した。その結果を表2に併記した。
下記の各成分を用いて、多色発色レーザーマーキング用重合体組成物を調製した。
〔II−1〕熱可塑性重合体
(1)ゴム強化熱可塑性樹脂(ゴム強化樹脂)
還流冷却機、温度計及び撹拌機を備えたセパラブルフラスコに、初期重合成分としてポリブタジエンゴムラテックスを固形分換算で40部、イオン交換水65部、ロジン酸石鹸0.35部、スチレン15部及びアクリロニトリル5部を投入し、その後、ピロリン酸ナトリウム0.2部、硫酸第1鉄7水和物0.01部及びブドウ糖0.4部をイオン交換水20部に溶解した溶液を加えた。次いで、クメンハイドロパーオキサイド0.07部を加えて重合を開始し、1時間重合を行った。その後、インクレメント成分としてイオン交換水45部、ロジン酸石鹸0.7部、スチレン30部、アクリロニトリル10部及びクメンハイドロパーオキサイド0.01部を2時間かけて連続的に添加し、更に1時間かけて重合反応を完結させ、共重合体ラテックスを得た。この共重合体ラテックスに硫酸を加えて重合体成分を凝固させ、水洗、乾燥してゴム強化共重合樹脂(P1)を得た。
一方、還流冷却器、温度計及び撹拌機を備えたセパラブルフラスコに、イオン交換水250部、ロジン酸カリウム3.0部、スチレン40部、アクリロニトリル15部、メタクリル酸メチル45部及びt−ドデシルメルカプタン0.1部を投入し、その後、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.05部、硫酸第1鉄7水和物0.002部及びナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.1部をイオン交換水8部に溶解した溶液を加えた。次いで、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.1部を加えて重合を開始し、約1時間重合させて反応を完結した。得られた共重合体ラテックスに硫酸を加えて重合体成分を凝固させ、水洗、乾燥して重合体(P2)を得た。
上記ゴム強化共重合樹脂(P1)40%と、重合体(P2)60%とを混合し、50mmφ押出機を用い、シリンダー設定温度180〜220℃で溶融混練押出してゴム強化熱可塑性樹脂(ゴム強化樹脂)をペレットとして得た。
(2)ポリアセタール樹脂(POM樹脂)
三菱エンジニアリングプラスチックス社製の「ユピタールF20−03N」(商品名)を用いた。
(3)ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA樹脂)
三菱レイヨン社製の「アクリペットVH001」(商品名)を用いた。
(4)ポリアミド樹脂(PA樹脂)
三菱エンジニアリングプラスチックス社製の「NOVAMID1010」(商品名)を用いた。
(5)ポリウレタン樹脂(PU樹脂)
大日精化社製の「レザミンP2593」(商品名)を用いた。
日本油脂社製のエポキシ基含有アクリル系重合体「マープルーフG−1005SA」(商品名)を用いた。
以下に示す着色剤を用いた。尚、上記と同条件で示差熱分析により測定された発熱ピーク温度を併記した。
(1)着色剤(a)
上記〔I−1〕における(5)ジオキサジン系顔料(紫色)を用いた。発熱ピーク温度は402℃である。
(2)着色剤(b)
上記〔I−1〕における(4)ジケトピロロピロール系顔料(赤色)を用いた。発熱ピーク温度は550℃である。
(3)着色剤(c)
上記〔I−1〕における(2)アルミニウムフタロシアニン顔料(緑色)を用いた。発熱ピーク温度は581℃である。
(4)着色剤(d)
上記〔I−1〕における(11)ペリノン系染料(橙色)を用いた。発熱ピーク温度はなかった。
(5)着色剤(e)
上記〔I−1〕における(10)アンスラキノン系染料(青色)を用いた。発熱ピーク温度はなかった。
三菱化学社製のカーボンブラック「三菱カーボン#45」(商品名)を用いた。
〔II−5〕白色物質
石原産業社製の二酸化チタン「CR−60−2」(商品名)を用いた。
〔II−6〕機能性付与剤
難燃剤として、旭電化社製の「FP500」(商品名)を用いた。
また、メタリック顔料として、日本板硝子社製の「メタシャイン」(商品名)を用いた。このメタリック顔料は、平均粒径80μm、平均アスペクト比1.3であるガラス粒子の表面に、厚さ約100nmの無電解銀メッキ膜を形成させてなるものである。
上記原料成分を用い、表3〜表9に記載の配合処方に従って、各熱可塑性重合体組成物を調製した。即ち、各原料成分をミキサーにより5分間混合した後、50mmφ押出機でシリンダー設定温度180〜220℃で溶融混練押出し、ペレットを得た。得られたペレットを十分に乾燥し、射出成形機(型名「EC−60」、東芝機械社製)により評価用の試験片(縦80mm、横55mm、厚さ2.5mm)を得た。
レーザーマーキングは、ロフィン・バーゼル社製ロフィンパワーライン「E/SHG型」及び同社製レーザーマーカー「RSM30D型」を用い、レーザー光の波長をそれぞれ532nm及び1,064nmとして、表3〜表9に示す各照射条件に従い、各レーザー光を、試験片の表面の異なる位置に照射した。
照射部の色を観察し、その結果を表3〜表9に併記した。
ΔE1=√{(L1−L2)2+(a1−a2)2+(b1−b2)2}
上記式において、L1、a1及びb1は、波長532nmのレーザー光を照射した際に形成された白色マーキング部の値であり、L2、a2及びb2は、上記着色剤を含まない配合で成形した試験片に対して波長1,064nmのレーザー光を照射した際に形成された白色マーキング部の値である。このΔE1は、小さい方がより白色度が高い。
ΔE2=√{(L1−L3)2+(a1−a3)2+(b1−b3)2}
更に、実施例B−1において得られた、有彩色及び白色の各マーキング部の断面を、透過型電子顕微鏡により撮影し、それぞれ、図17及び図18に示した。
一方、実施例B−1〜23は、ΔE1が3以下且つΔE2が3以上であり、いずれもレーザー光の照射によるマーキングが鮮明であった。熱硬化性重合体を含む組成物を用いた実施例B−8及びB−19においては、それぞれ、実施例B−1及びB−13に劣ることのない鮮明なマーキングが得られた。
機能性付与剤として、難燃剤を用いた実施例B−11においては、UL94の難燃性はV−2であり、且つ、鮮明なマーキングが得られた。また、メタリック顔料を用いた実施例B−12においては、成形外観が光輝性に優れたメタリック調を呈し、且つ、マーキングも鮮明であった。
Claims (23)
- 有彩色着色剤と、レーザー光の受光によりそれ自身が消滅する又は変色する黒色物質と、重合体とを含有する成形品に、異なるエネルギーを有する2以上のレーザー光を照射して、2以上の異なる色調にマーキングをするための有彩色着色剤であって、
上記有彩色着色剤が、示差熱分析により、360℃以上590℃以下の範囲に発熱ピークを有することを特徴とする多色発色レーザーマーキング用有彩色着色剤。 - 上記有彩色着色剤が、フタロシアニン骨格、ジケトピロロピロール骨格、ジオキサジン骨格、キナクリドン骨格、キノフタロン骨格、ペリレン骨格及び金属錯体骨格から選ばれる骨格の少なくとも1種を含む請求項1に記載の多色発色レーザーマーキング用有彩色着色剤。
- 上記フタロシアニン骨格の中心金属が銅、アルミニウム及び亜鉛から選ばれる1種である請求項2に記載の多色発色レーザーマーキング用有彩色着色剤。
- 上記フタロシアニン骨格の中心金属が銅であり、スルホン酸アミド基を置換基として有する請求項3に記載の多色発色レーザーマーキング用有彩色着色剤。
- 異なるエネルギーを有する2以上のレーザー光を照射することにより、2以上の異なる色調にマーキングされる多色発色レーザーマーキング用組成物であって、
有彩色着色剤と、レーザー光の受光によりそれ自身が消滅する又は変色する黒色物質と、重合体とを含有し、
上記有彩色着色剤の含有量は、上記重合体を100質量部とした場合に0.001〜3質量部であり、上記黒色物質の含有量は、上記重合体を100質量部とした場合に0.01〜2質量部であることを特徴とする多色発色レーザーマーキング用組成物。 - 上記有彩色着色剤が、請求項1乃至4のいずれかに記載の多色発色レーザーマーキング用有彩色着色剤である請求項5に記載の多色発色レーザーマーキング用組成物。
- 上記重合体が、レーザー光の受光により発泡しやすい重合体を含む請求項5又は6に記載の多色発色レーザーマーキング用組成物。
- 上記重合体が、ゴム質重合体の存在下に、(メタ)アクリル酸エステルを含むビニル系単量体を重合して得られるゴム強化共重合樹脂、又は、該ゴム強化共重合樹脂とビニル系単量体の(共)重合体との混合物からなるゴム強化熱可塑性樹脂を含む請求項5乃至7のいずれかに記載の多色発色レーザーマーキング用組成物。
- 上記重合体が熱可塑性重合体及び熱硬化性重合体を含み、該熱硬化性重合体の含有量が、該熱可塑性重合体の含有量を100質量部としたときに0.01〜20質量部である請求項5乃至8のいずれかに記載の多色発色レーザーマーキング用組成物。
- 上記黒色物質が、カーボンブラック、チタンブラック及び黒色酸化鉄から選ばれる少なくとも1種である請求項5乃至9のいずれかに記載の多色発色レーザーマーキング用組成物。
- 更に、難燃剤、帯電防止剤、抗菌剤、充填材及びメタリック顔料から選ばれる少なくとも1種の機能性付与剤を含有し、上記重合体を100質量部とした場合に、
該難燃剤の含有量は、1〜30質量部であり、
該帯電防止剤の含有量は、0.5〜10質量部であり、
該抗菌剤の含有量は、0.01〜10質量部であり、
該充填材の含有量は、1〜30質量部であり、
該メタリック顔料の含有量は、0.1〜10質量部である請求項5乃至10のいずれかに記載の多色発色レーザーマーキング用組成物。 - 請求項5乃至11のいずれかに記載の多色発色レーザーマーキング用組成物を含む成形品。
- 異なるエネルギーを有する2つのレーザー光を照射した場合に、低エネルギーのレーザー光の照射により、請求項5又は6に記載の有彩色着色剤に由来する色にマーキングされ、且つ、高エネルギーのレーザー光の照射により、白色に、あるいは、請求項5又は6に記載の有彩色着色剤に由来する色の濃度が低下した色にマーキングされる請求項12に記載の成形品。
- 請求項12又は13に記載の成形品に低エネルギーのレーザー光を照射した部分のLab値と、該成形品に含まれる有彩色着色剤を含有しない以外は該組成物と同一組成である成形品に高エネルギーのレーザー光を照射した部分のLab値とから算出されるΔE1が、3以下である請求項12又は13に記載の成形品。
- 請求項12又は13に記載の成形品に低エネルギーのレーザー光を照射した部分のLab値と、該成形品に高エネルギーのレーザー光を照射した部分のLab値とから算出されるΔE2が3以上である請求項12乃至14のいずれかに記載の成形品。
- レーザー光を照射した部分が発泡している、請求項12乃至15のいずれかに記載の成形品。
- 請求項12乃至16のいずれかに記載の成形品に含まれている組成物。
- 異なるエネルギーを有する2以上のレーザー光を、請求項12乃至16のいずれかに記載の成形品に照射して、2以上の異なる色調にマーキングすることを特徴とするレーザーマーキング方法。
- 低エネルギーのレーザー光の波長と、高エネルギーのレーザー光の波長との差が、100nm以上である請求項18に記載のレーザーマーキング方法。
- 低エネルギーのレーザー光の波長が1,064nmであり、高エネルギーのレーザー光の波長が532nmである請求項18又は19に記載のレーザーマーキング方法。
- 請求項12乃至16のいずれかに記載の成形品の製造方法。
- 白色及び有彩色を含む多色にレーザーマーキングされている成形品。
- マーキング部の少なくとも1箇所は発泡している請求項22に記載の成形品。
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