JP2005187215A - Wdm光フィルター用ガラス組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】WDM光フィルター用ガラス組成物において、平均熱膨張係数が誘電体薄膜とほぼ等しく、かつ耐水性に優れ、転移点が500℃以下のガラスを得たい。
【解決手段】50〜150℃における平均熱膨張係数が(120〜135)×10−7/℃であり、さらに重量%で、SiO2が50〜60%、Al2O3が1〜10%、Na2Oが1〜5%、K2Oが20〜35%、MgOが1〜5%で、(SiO2+Al2O3+Na2O+K2O+MgO)の総和が92〜97%からなるWDM光フィルター用ガラス組成物である。Li2Oが0〜4%、CaOが0〜6%、BaOが0〜6%、ZnOが0〜6%、ZrO2が0〜4%であり、(Li2O+CaO+BaO+ZnO+ZrO2)が3〜8%、95℃の蒸留水に40時間浸漬する耐水性試験におけるアルカリ溶出量が0.75mg/cm2以下である特徴も有す。
【選択図】 なし
【解決手段】50〜150℃における平均熱膨張係数が(120〜135)×10−7/℃であり、さらに重量%で、SiO2が50〜60%、Al2O3が1〜10%、Na2Oが1〜5%、K2Oが20〜35%、MgOが1〜5%で、(SiO2+Al2O3+Na2O+K2O+MgO)の総和が92〜97%からなるWDM光フィルター用ガラス組成物である。Li2Oが0〜4%、CaOが0〜6%、BaOが0〜6%、ZnOが0〜6%、ZrO2が0〜4%であり、(Li2O+CaO+BaO+ZnO+ZrO2)が3〜8%、95℃の蒸留水に40時間浸漬する耐水性試験におけるアルカリ溶出量が0.75mg/cm2以下である特徴も有す。
【選択図】 なし
Description
本発明は、光通信分野における光の波長分割多重化(Wave−length Division Multiplexing、以下WDMと呼称)に使用される、特定の波長域のみを通過させるWDM光フィルター材料としてのWDM光フィルター用ガラス組成物に関する。
光フィルターと称されるものには、特定の波長をカットするもの、透過させもの、光の透過を落とすものなどがある。前者の光フィルターには、特定の波長のみを透過するバンドパスフィルター、特定の波長のみをカットするノッチパスフィルター、特定の波長よりも短波長側の波だけを透過するローパスフィルター、特定の波長よりも長波長側の波だけを透過するハイパスフィルターなどがある。後者の光フィルターには、NDフィルターなどが代表的である。
波長多重光通信では、波長が僅かに異なる光を合波したり、逆に、複数の波長成分を含んだ光から特定波長光を選択的に取り出すために分波することが行われ、バンドパスフィルターが用いられている。
このような波長分割多重化 WDM システムの発展に伴うナローバンドパスフィルターは、WDM光フィルターと呼ばれ、その構成は、石英基板上に、SiO2、TiO2、Ta2O5などからなる誘電体多層膜を形成したものである(例えば、特許文献1参照)。
波長分割多重化 WDM システムの高精度化により、従来よりも高密度な波長多重光通信を行うために、WDM光フィルターの透過波長のバンド幅を狭くすることが求められている。透過波長のバンド幅を狭くすると、バンドの中心波長のずれの許容範囲も狭くなることから、わずかな温度変動による波長中心のずれも大きく影響することになる。このため、WDM光フィルター部材の使用温度の変動による屈折率変動を回避し、波長の温度シフトをゼロに近づけることが要求されている。
温度シフトは、ガラスと誘電体多層膜の熱膨張係数に依存することが知られている。温度シフトをゼロに近づける方法として、ガラスの熱膨張係数と誘電体多層膜の熱膨張係数との差を考慮したガラスが知られている(例えば、特許文献2参照)。このようなガラスの中には、通常よりも熱膨張係数の小さな誘電体膜に対応して、特に熱膨張係数を小さくしたものも見られる(例えば特許文献3参照)。
また、通常のガラスではなく、結晶化ガラスを使用することでこの問題を解決しようとした発明も見られる(例えば特許文献4参照)。
また、通常のガラスではなく、結晶化ガラスを使用することでこの問題を解決しようとした発明も見られる(例えば特許文献4参照)。
さらに、最近ではより性能の良いフィルターとして、誘電体多層膜の総数が増え、基体ガラスにより高い透過率及び屈折率の制御が求められて来ている。
前述した特開2001−48584号公報に記載されたような結晶化ガラスは、加工に関しては通常のガラスより有利であるが、結晶化させるために長時間の加熱が必要であり、コスト高になるという問題があった。
また、特開2001−89184号公報に記載されたガラス組成のガラスにおいては、ガラスの熱膨張係数と誘電体多層膜の熱膨張係数との差を減少させるために導入したアルカリ成分の一部が、経時変化及びガラス加工中の水分との反応で失われるという現象があった。この結果、ガラス表面の屈折率がわずかに減少し、反射率の微小な変化をもたらすという問題がある。
これらの微小な光学的係数の変化は、以前にはそれほど問題とはならないものであったが、最近のフィルターの高機能化の要求に関しては問題となるものである。すなわち、フィルターの求める性能を得るために、誘電体多層膜の屈折率と厚みを細かく設計する必要があるが、これにはパラメータとして基体ガラスの反射率が必須であり、ガラスの反射率が変化すると、もはや求めるフィルター性能は得られないという問題があった。
本発明は、表面にバンドパス用光多層膜を形成するためのWDM光フィルター用ガラスであって、50〜150℃における平均熱膨張係数が(120〜135)×10−7/℃であり、さらに重量%で表して、SiO2が50〜60%、Al2O3が1〜10%、Na2Oが1〜5%、K2Oが20〜35%、MgOが1〜5%で、(SiO2+Al2O3+Na2O+K2O+MgO)の総和が92〜97%からなるガラスであるWDM光フィルター用ガラス組成物である。
また、重量%で表して、Li2Oが0〜4%、CaOが0〜6%、BaOが0〜6%、ZnOが0〜6%、ZrO2が0〜4%であり、(Li2O+CaO+BaO+ZnO+ZrO2)が3〜8%である上記のWDM光フィルター用ガラス組成物である。
さらに、95℃の蒸留水に40時間浸漬する耐水性試験におけるアルカリ溶出量が0.75mg/cm2以下である上記のWDM光フィルター用ガラス組成物である。
上記の手段をとることにより、WDM光フィルター用に好適な物性値を有し、ガラス作製時における高温下での長時間の加熱処理を必要とせず、ガラスとした後も加工性がよく、さらには経時変化による表面形状の変化も少ないガラスを得ることができる。
本発明によれば、WDM光フィルター用に好適な物性値を有し、経時変化による表面形状の変化が少なく、さらに従来よりも低温で処理できるガラスを得ることが出来る。
本発明は、表面にバンドパス用光多層膜を形成するためのWDM光フィルター用ガラスであって、50〜150℃における平均熱膨張係数が(120〜135)×10−7/℃であり、さらに重量%で表して、SiO2が50〜60%、Al2O3が1〜10%、Na2Oが1〜5%、K2Oが20〜35%、MgOが1〜5%で、(SiO2+Al2O3+Na2O+K2O+MgO)の総和が92〜97%からなるガラスであるWDM光フィルター用ガラス組成物である。
WDM光フィルター用ガラスにおける熱膨張係数については、最適な範囲が存在することが知られている。すなわち、熱膨張係数が小さい場合は、光学多層膜に十分な圧縮応力をかけることができず、フィルターの中心波長の温度シフトは正の方向に大きくなる。また、熱膨張係数が大きい場合は、温度シフトが負の方向に大きくなり、多層膜が剥離してしまう、あるいは基板が破壊に至るなどの問題が生じる。
しかし、その適正値は対象とするフィルターによって異なる。そこで、本発明者が、蒸着法によりSiO2/Ta2O5系の3キャビティーバンドパスフィルターを作製し、確認したところ、50〜150℃における好ましい平均熱膨張係数は(120〜135)×10−7/℃であることがわかった。当該範囲内であれば多層膜に適度な圧縮応力をかけることができ、成膜方法にもよるが、フィルター特性の温度依存性を限りなくゼロに近づけることができる。よって、本発明のWDM光フィルター用ガラスの好ましい平均熱膨張係数は、50〜150℃において(120〜135)×10−7/℃である。より好ましくは、(125〜130×10−7/℃である。
本発明において、重量%で表して、SiO2が50〜60%、Al2O3が1〜10%、Na2Oが1〜5%、K2Oが20〜35%、MgOが1〜5%で、(SiO2+Al2O3+Na2O+K2O+MgO)の総和が92〜98%からなるガラスであるWDM光フィルター用ガラス組成物であることが好ましい。
SiO2は必須成分であり、ガラスの骨格を形成するためにガラス中に導入される。重量%で表して、SiO2の含有量は50〜60%であることが好ましい。SiO2のガラス組成が50%未満では、ガラス状態が不安定となって失透などが生じやすく、安定したガラスとならない。また、SiO2に替わり導入されることになるアルカリ土類成分などの付加的成分により密度が大きくなりすぎる。一方、60%を超えると、熱膨張係数が低くなりすぎる。より好ましくは、55〜58%の範囲である。
Al2O3は必須成分であり、ガラス状態を安定化させる効果があるとともに、熱膨張係数およびヤング率の調整をガラス組成の加減で行うためにガラスに導入される。重量%で表して、Al2O3の含有量は1〜10%であることが好ましい。ガラス組成が1%未満ではその効果を期待できない。一方、10%を超えると、熱膨張係数が低くなりすぎるとともに、ヤング率が大きくなりすぎる。
Na2Oは必須成分であり、熱膨張係数を高くするためにガラスに導入される。重量%で表して、Na2Oの含有量は1〜5%であることが好ましい。ガラス組成が1%未満では、ガラスの熱膨張係数を高くする効果は得られない。一方、5%を超えるとガラス状態が不安定になり、失透しやすくなるとともに、耐水性が損なわれヤケが発生しやすい。より好ましくは、2〜4.5%の範囲である。
K2Oは必須成分であり、熱膨張係数を高くするためにガラスに導入される。重量%で表して、K2Oの含有量は20〜35%であることが好ましい。ガラス組成が20%未満ではその効果は期待できない。一方、35%を超えると耐水性が損なわれるという問題が発生する。より好ましくは、25〜33%の範囲である。
MgOは必須成分であり、熱膨張係数やヤング率の調整のためにガラスに導入される。重量%で表して、MgOの含有量は1〜5%であることが好ましい。ガラス組成が1%未満ではその効果は期待できない。一方、5wt%を超えると、膨張係数が小さくなりすぎる。より好ましくは、1〜4.5%の範囲である。
さらに、(SiO2+Al2O3+Na2O+K2O+MgO)の総和が92〜98%からなるガラスであることが好ましい。(SiO2+Al2O3+Na2O+K2O+MgO)の総和が上述の範囲外であると、WDM光フィルター用ガラスに要求される物性をクリヤーすることは難しい。より好ましくは、92〜97%の範囲である。
また、重量%で表して、Li2Oが0〜3%、CaOが0〜6%、BaOが0〜6%、ZnOが0〜6%、ZrO2が0〜4%であり、(Li2O+CaO+BaO+ZnO+ZrO2)が2〜8%であることが好ましい。
Li2Oは、必ずしも必須とはしないが、熱膨張係数やヤング率の調整のために導入することが好ましい。しかし、4%を超えると、ガラスが不安定になり、失透などを発生しやすくなる。より好ましくは、0.1〜3%の範囲である。
CaOは、必ずしも必須とはしないが、熱膨張係数やヤング率の調整のためにガラスに導入することが好ましい。しかし、6%を超えると、失透傾向が強くなるとともに膨張係数が小さくなりすぎる。より好ましくは、0.1〜3%の範囲である。
BaOは、必ずしも必須とはしないが、熱膨張係数やヤング率の調整のためにガラスに導入する付加的成分である。しかし、6%を超えると、密度が大きくなりすぎるとともに、ガラスの耐水性が低下する。好ましくは、3%以下である。
ZnOは、必ずしも必須とはしないが、少量の含有量でガラスを安定化し、熱膨張係数やヤング率の調整のためにガラスに導入する付加的成分である。しかし6%を超えると、ガラスの耐水性が低下する。好ましくは、3%以下である。
ZrO2は、必ずしも必須とはしないが、少量の導入量であればガラス状態を安定化させる効果があるとともに、ガラスの耐水性を向上させるためにガラスに導入する付加的成分である。しかし、ガラス組成が4%を超えると、逆にガラスの失透傾向を大きくすると共に、熱膨張係数が小さくなりすぎる。好ましくは、2%以下である。
さらに、(Li2O+CaO+BaO+ZnO+ZrO2)が3〜8%であることが好ましい。(Li2O+CaO+BaO+ZnO+ZrO2)の総和が上述の範囲外であると、WDM光フィルター用ガラスに要求される物性をクリヤーすることは難しい。より好ましくは、3〜7%の範囲である。
さらに、95℃の蒸留水に40時間浸漬する耐水性試験におけるNa2O溶出量量が0.75mg/cm2以下であることが好ましい。耐水性については、ガラスの研磨と密接な関係にある。ガラスの研磨は、機械的に表層を除去する機械的研磨と、化学的に表層を溶解する化学的研磨が競争的に行われる。耐水性が著しく悪いと、化学的研磨が進行しすぎ、平滑な表面を得ることができない上に、研磨後の表面がヤケるといった問題が生じる。よって、本発明のWDM光フィルター用ガラスの好ましい耐水性は、95℃の蒸留水に40時間浸漬する耐水性試験におけるアルカリ量で0.75mg/cm2以下である。この重量減少量であれば、反射率の低下もほとんど発生しない。
なお、本発明のWDM光フィルター用ガラスの好ましい密度は、切削加工時の作業温度下において、2.7g/cm3以下である。
以下、実施例をあげて本発明を説明する。ガラスの各成分の原料にそれぞれ相当する酸化物、炭酸塩、硝酸塩等を使用し、得られるガラスが表1の実施例1〜5、表2の比較例1〜4に記載した組成となるように、所定の割合で秤量し混合した。
混合した前記原料を、容量2000ml、ロジウム10wt%を含有した白金製の坩堝に入れて、1400℃に昇温した電気炉内で、5時間溶融させた後、溶融ガラスに含まれる微細な泡を除去するため適切な温度まで炉内で冷却したあとグラファイト製の型枠内に流しだし、予めガラス転移点付近に保持した電気炉内に投入し、2時間保持した後、室温まで冷却することで、厚さ、30mm、サイズ200mm×300mmのガラスブロックを得た。
次いで、ガラスブロックを薄くスライスした後、円筒状に研削し、更に両面を研磨し、片方の研磨面にTa2O5とSiO2を交互に堆積させて誘電体多層膜を得た。誘電体多層膜および反射防止膜の作製方法としては、例えば、RFイオンプレーティング法、マグネトロンスパッタリング法、プラズマイオンプレーティング法、蒸着法等があるが、本例では蒸着法により行った。その後、成膜していない側から、厚み1mmになるまで研削・研磨し、さらに、多層膜と反対側の研磨面に反射防止膜を成膜した。
次いで、金属円盤にダイヤモンド粉を付着させたダイヤモンドカッターを回転させつつ、誘電体多層膜を成膜したガラス基板に非成膜面側から当てる、いわゆるダイシング加工により、厚さ、1mm、サイズ、1.5mm角のチップに切り出しを行った。
このようにして作製したガラスについて、熱膨張率、密度および耐水性について測定した。熱膨張率は、温度範囲を50℃から150℃とし、シリカガラスを標準試料とした示差熱膨張計により測定した。また、密度については蒸留水を浸液としたアルキメデス法により測定した。耐水性については、20×50×2mmtに研磨したガラスを試料に用い、95℃の蒸留水に40時間浸漬した場合の重量減少量、すなわちアルカリ溶出量により評価した。なお、この耐水性の試験条件は、JISR3502およびJOGIS06−99の概念に準じており、例えばディスプレイ基板の評価用として使われている。
透過率については、自記分光光度計(日立製作所製、U4000型)を用い、内部透過率については、日本光学硝子工業会規格(JOGIS17−82)に準じて求めた。板厚1mmにおける内部透過率が、1300nm以上の領域で99%以上であることが確認され、本系のガラスがWDMフィルター用に好適であることが確認できた。
表1は、本発明のWDM光フィルターに関わり、実施例1〜5の重量%で表したそのガラス組成、50〜150℃における平均熱膨張率(α50-150)、アルカリ溶出量及び密度を示したものである。
表2は、本発明のWDM光フィルターに関わり、比較例1〜4の重量%で表したそのガラス組成、50〜150℃における平均熱膨張率(α50-150)、アルカリ溶出量及び密度を示したものである。
Claims (3)
- 表面にバンドパス用光多層膜を形成するためのWDM光フィルター用ガラスであって、50〜150℃における平均熱膨張係数が(120〜135)×10−7/℃であり、さらに重量%で表して、SiO2が50〜60%、Al2O3が1〜10%、Na2Oが1〜5%、K2Oが20〜35%、MgOが1〜5%で、(SiO2+Al2O3+Na2O+K2O+MgO)の総和が92〜97%からなるガラスであることを特徴とするWDM光フィルター用ガラス組成物。
- 重量%で表して、Li2Oが0〜4%、CaOが0〜6%、BaOが0〜6%、ZnOが0〜6%、ZrO2が0〜4%であり、(Li2O+CaO+BaO+ZnO+ZrO2)が3〜8%であることを特徴とする請求項1に記載のWDM光フィルター用ガラス組成物。
- 95℃の蒸留水に40時間浸漬する耐水性試験における アルカリ溶出量が0.75mg/cm2以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のWDM光フィルター用ガラス組成物。
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WO2015141465A1 (ja) * | 2014-03-18 | 2015-09-24 | 日本電気硝子株式会社 | 誘電体多層膜フィルター用ガラス基板 |
-
2003
- 2003-12-24 JP JP2003426706A patent/JP2005187215A/ja not_active Abandoned
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WO2015141465A1 (ja) * | 2014-03-18 | 2015-09-24 | 日本電気硝子株式会社 | 誘電体多層膜フィルター用ガラス基板 |
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