JP2005139304A - セルロースアシレートフィルム、偏光板、および液晶表示装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下記数式で算出される25℃60%RHのRthの絶対値が25nm以下、25℃10%RHのRthと25℃80%RHのRthとの差が40nm以下のセルロースアシレートフィルム。
数式:Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
[nxは光学異方性層面内の遅相軸方向の屈折率;nyは光学異方性層面内の進相軸方向の屈折率;nzは光学異方性層の厚み方向の屈折率;dは光学異方性層面内の厚さである]。
【選択図】 なし
Description
従来、セルロースアシレートフィルムの湿度依存性を改良する手段として、(1)疎水性の高い低分子化合物を添加する方法、(2)及びセルロースアシレート自体の疎水性を高める方法が提案されている。
しかし、上記の方法は一定の効果は有するものの、依然としてレターデーションの湿度依存性が大きく改良不十分であった。
本発明の別の目的は、熱、湿度による光学特性の変化が小さいセルロースアシレートフィルムを提供することにある。
本発明の別の目的は、偏光板作成時の面状故障、性能変化がなく、加工適性に優れ、耐久性に優れた偏光板保護フィルムを提供することにある。
本発明のさらなる別の目的は、光学異方性が小さく且つ熱や湿度による光学特性の変化の小さい保護フィルムを用いた偏光板を液晶表示装置に用いることで、光漏れなどの問題を生じることなく、広視野角で表示品位の高い液晶表示装置を提供することである。
一方、上記(A)、(B)のいずれに対してもセルロースアシレートの置換基の疎水化が有効であるが、逆にこれによりセルロースアシレートフィルムのガラス転移温度(以下、「Tg」と言う)が低下し、寸度安定性は著しく悪化してしまう。
このジレンマを解決するためには、(A)に対してはセルロースアセテートの置換度を高くし、かつセルロースアシレートのTgを低下させにくい疎水化剤を組み合わせる、(B)に対してはセルロースアシレート中のアシル基の炭素数を大きくしてアシル基を疎水的にしかつ水酸基の比率も大きくする、ことが非常に有効であり、これにより湿度によるレターデーション変化を大幅に低減し、寸度安定性にも優れ、平衡含水率が低く、透湿度も低いセルロースアシレートフィルムを得られるとの知見を得た。
即ち、本発明によれば、下記構成のセルロースアシレートフィルム、偏光板、および液晶表示装置が提供され、上記本発明の目的が達成される。
1.下記数式(II)で算出される25℃60%RHのRthの絶対値が25nm以下であり、25℃10%RHのRthと25℃80%RHのRthの差が40nm以下であることを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
数式(II):Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
[式中、nxは、光学異方性層面内の遅相軸方向の屈折率であり;nyは、光学異方性層面内の進相軸方向の屈折率であり;nzは、光学異方性層の厚み方向の屈折率であり;そして、dは光学異方性層面内の厚さである]。
2.下記数式(I)で算出される25℃60%RHのReが20nm以下であり、25℃10%RHのReと25℃80%RHのReの差が20nm以下であることを特徴とする上記1に記載のセルロースアシレートフィルム。
数式(I):Re=(nx−ny)×d
[式中、nxは、光学異方性層面内の遅相軸方向の屈折率であり;nyは、光学異方性層面内の進相軸方向の屈折率であり;そして、dは光学異方性層面内の厚さである]。
3.水素結合性水素供与性基を少なくとも1つ有し、かつオクタノール−水分配係数が2以上12以下の化合物を含有し、フィルム剥ぎ取り後搬送開始時におけるフィルム中の残留溶剤のI/O比が0.65以上4以下で製造されたことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
4.下記一般式(I)で表される化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする上記3に記載のセルロースアシレートフィルム。
一般式(I)
5.下記一般式(II)で表される化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする上記3または4のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
一般式(II)
6.少なくとも1つのアルキルフタリルアルキルグリコレート系化合物を含有することを特徴とする上記3〜5のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
7.脂肪族多価アルコールと1種以上のモノカルボン酸との多価アルコールエステルを少なくとも1種含有することを特徴とする上記3〜6のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
8.セルロースアシレートに対するりん酸エステル化合物の比率が5質量%以下であることを特徴とする上記3〜7のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
9.セルロースアシレートがアセチル基の置換度が2.80以上3.00以下のセルロースアセテートであることを特徴とする上記3〜8のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
10.アシル基の置換度が1以上2.9以下であり、アセチル基の置換度が2.5未満であることを特徴とする上記3〜8のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
11.アシル基の置換度が1以上2.6以下であり、アセチル基の置換度が1.4未満であり、アシル基の平均炭素数が2.4以上5以下であることを特徴とする上記10に記載のセルロースアシレートフィルム。
12.溶剤が、メチレンクロライドとアルコールの混合溶剤であり、かつメチレンクロライドとアルコールの比率は、両者の合計を100質量%としたときにアルコールが10質量%以上40質量%以下であることを特徴とする上記3〜11のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
13.上記1または2に記載の物性を有することを特徴とする上記3〜12のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
14.25℃90%RHの雰囲気下に24hr放置後の透湿度が20g/m2以上250g/m2以下であることを特徴とする上記1〜13のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
15.25℃80%RHにおける平衡含水率が4.0%以下であることを特徴とする上記1〜14のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
16.90℃24hr経時での寸度変化率が−0.5%以上0.5%以下であることを特徴とする上記1〜15のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
17.搬送方向あるいは幅方向のいずれかひとつの弾性率が1.0GPa以上6.0GPa以下であることを特徴とする上記1〜16のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
18.偏光子の両側に保護フィルムが貼り合わされてなる偏光板において、該保護フィルムの少なくとも1枚が上記1〜17のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムであることを特徴とする偏光板。
19.偏光板に粘着剤層を設けたことを特徴とする上記18に記載の偏光板。
20.空気側保護フィルム上にアンチグレア層を設けたことを特徴とする上記18または19に記載の偏光板。
21.反射防止フィルム層を有することを特徴とする上記18〜20のいずれかに記載の偏光板。
22.位相差フィルム層またはλ/4板を有することを特徴とする上記18〜21のいずれかに記載の偏光板。
23.視野角拡大フィルム層を有することを特徴とする上記18〜22のいずれかに記載の偏光板。
24.輝度向上フィルム層を有することを特徴とする請求項18〜22のいずれかに記載の偏光板。
25.液晶セルおよびその両側に配置された二枚の偏光板からなり、少なくとも1枚の偏光板が上記18〜24のいずれかに記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
26.液晶表示装置がVAモードであることを特徴とする上記25に記載の液晶表示装置。
27.液晶表示装置がIPSモードであることを特徴とする上記25に記載の液晶表示装置。
上記の光学補償機能を有する偏光板は、VA(vertically aligned)型、IPS(in-phase switching)型の液晶表示装置に特に有利に用いることができる。
まず、本発明のセルロースアシレートについて説明する。
セルロースアシレートの置換度は、セルロースの構成単位(β1→4グリコシド結合しているグルコース)に存在している三つの水酸基がアシル化されている割合を意味する。置換度は、セルロースの構成単位質量当りの結合脂肪酸量を測定して算出することができる。測定方法は、ASTM−D817−91に準じて実施する。
本発明のセルロースアシレートはアシル基の疎水性と水酸基の親水性を適度にバランスさせることにより、レターデーションの湿度依存性と寸度安定性を両立させるものである。すなわち、アシル基中のアルキル鎖が平均的に短かすぎたり、水酸基比率が高すぎるとレターデーションの湿度依存性は大きくなる。また、アシル基中のアルキル鎖が平均的に長すぎたり、水酸基比率が高すぎるとTgが低下し、寸度安定性が悪化する。
したがって、本発明のセルロースアシレートは、アセチル基の置換度(アセチル化度)が2.80以上3.0以下で、炭素数3以上のアシル基を有しないものが好ましい。アセチル化度は2.85以上3.0以下がさらに好ましく、2.90以上3.0以下が最も好ましい。
さらに、もう一つの本発明の好ましいセルロースアシレートは、アシル基の置換度(アシル化度)が1以上2.9以下が好ましく、より好ましくは1以上2.6以下であり、1.7以上2.5以下がさらに好ましく、1.8以上2.2以下が最も好ましい。また、アシル基の平均炭素数は2以上7以下が好ましく、2.05以上5以下がより好ましく、2.4以上5以下がさらに好ましく、2.6以上4以下が最も好ましい。
また、アシル基の炭素原子数は2乃至6であることが好ましく、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基を用いることがさらに好ましい。また、本発明のセルロースアシレートフィルムがアセチル基とそれ以外のアシル基を有する場合、アセチル基の置換度は2.5未満が好ましく、1.9未満がより好ましく、1.4未満がさらに好ましく、1.1未満が最も好ましい。
本発明のセルロースアシレートは、350乃至800の質量平均重合度を有することが好ましく、370乃至600の質量平均重合度を有することがさらに好ましい。本発明のセルロースアシレートは、70000乃至230000の数平均分子量を有することが好ましく、75000乃至230000の数平均分子量を有することがさらに好ましく、78000乃至120000の数平均分子量を有することが最も好ましい。
該疎水化剤としてはできるだけ疎水的な化合物が含水率低下効果が大きくかつTg低下が小さく好ましい。しかし、疎水性が高すぎると逆にセルロースアシレートとの相溶性が悪すぎて、ブリードアウト等の問題が生じる。
水素結合性水素供与性基を有する化合物は、前記低可塑性及び含水率低下効果と、ブリードアウト防止のトレードオフの関係においてに有利であり好ましい。疎水化剤の疎水性の尺度であるlogPは2以上12以下が好ましく、2.5以上11以下がこのましく、3以上10以下が最も好ましい。水素結合性水素供与性基としては−OH基、−NH基等の官能基が特に好ましい。
本発明の疎水化剤の分子量は250以上2000以下が好ましい。また沸点は260℃以上が好ましい。沸点は市販の測定装置(例えば、TG/DTA100、セイコー電子工業(株)製))を用いて測定できる。
本発明の疎水化剤はセルロースエステル100質量部に対して、0.01乃至30質量部、好ましくは0.5乃至25量部用いられる。本発明の疎水化剤の添加方法は、アルコールやメチレンクロライド、ジオキソランの有機溶媒に溶解してから、ドープに添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。
一般式(I)
一般式(II)
上記一般式(I)において、R1およびR2の炭素原子数の総和が10以上であることが特に好ましい。
R1およびR2の置換基としては、フッ素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基およびスルホンアミド基が好ましく、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基およびスルホンアミド基が特に好ましい。
また、アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素原子数1乃至25のものが好ましく、6乃至25のものがより好ましく、6乃至20のもの(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ビシクロオクチル、ノニル、アダマンチル、デシル、t−オクチル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、ジデシル)が特に好ましい。
アリール基としては、炭素原子数が6乃至30のものが好ましく、6乃至24のもの(例えば、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフチル、ビナフチル、トリフェニルフェニル)が特に好ましい。
一般式(I)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
XはB、C−R(Rは水素原子または置換基を表す。)、N、P、またはP=Oを表す。Xとしては、好ましくはB、C−R(Rとして好ましくはアリール基、置換又は未置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、カルボキシル基であり、より好ましくはアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくはアルコキシ基、ヒドロキシ基であり、特に好ましくはヒドロキシ基である。)、N、P=Oであり、更に好ましくはC−R、Nであり、特に好ましくはC−Rである。
これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
本発明に用いられる脂肪族多価アルコールは、2価以上のアルコールで次の一般式(III)で表される。
ここで、R1はn価の脂肪族有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性水酸基を表す。
本発明の多価アルコールエステルにおけるモノカルボン酸としては、特に制限はなく公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
本発明に用いられる多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが更に好ましい。保留性の点では大きい方が好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
アルキルフタリルアルキルグリコレートのアルキルは炭素原子数1〜8のアルキル基である。アルキルフタリルアルキルグリコレートとしてはメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、プロピルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等を挙げることが出来、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレートが好ましく、特にエチルフタリルエチルグリコレートが好ましく用いられる。
本発明のセルロースアシレートフイルムは、ソルベントキャスト法により製造することが好ましい。ソルベントキャスト法では、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフイルムを製造する。
有機溶媒は、炭素原子数が3乃至12のエーテル、炭素原子数が3乃至12のケトン、炭素原子数が3乃至12のエステルおよび炭素原子数が1乃至6のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒を含むことが好ましい。
エーテル、ケトンおよびエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトンおよびエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する溶媒の上記した好ましい炭素原子数範囲内であることが好ましい。
炭素原子数が3乃至12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが含まれる。
炭素原子数が3乃至12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが含まれる。
二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが含まれる。
ハロゲン化炭化水素の炭素原子数は、1または2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25乃至75モル%であることが好ましく、30乃至70モル%であることがより好ましく、35乃至65モル%であることがさらに好ましく、40乃至60モル%であることが最も好ましい。メチレンクロリドが、代表的なハロゲン化炭化水素である。
本発明の有機溶媒はメチレンクロライドとアルコールを混合して用いることが好ましく、メチレンクロライドに対するアルコールの比率は1質量%以上50%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下が好ましく、12質量%以上30質量%以下が最も好ましい。アルコールとしてはメタノール、エタノール、n−ブタノールが好ましく、2種類以上のアルコールを混合して使用してもよい。
セルロースアシレートの量は、得られる溶液中に10乃至40質量%含まれるように調整する。セルロースアシレートの量は、10乃至30質量%であることがさらに好ましい。有機溶媒(主溶媒)中には、後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
溶液は、常温(0乃至40℃)でセルロースアシレートと有機溶媒とを攪拌することにより調製することができる。高濃度の溶液は、加圧および加熱条件下で攪拌してもよい。具体的には、セルロースアシレートと有機溶媒とを加圧容器に入れて密閉し、加圧下で溶媒の常温における沸点以上、かつ溶媒が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら攪拌する。
加熱温度は、通常は40℃以上であり、好ましくは60乃至200℃であり、さらに好ましくは80乃至110℃である。
加熱する場合、容器の外部より加熱することが好ましい。例えば、ジャケットタイプの加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設け、配管して液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。
容器内部に攪拌翼を設けて、これを用いて攪拌することが好ましい。攪拌翼は、容器の壁付近に達する長さのものが好ましい。攪拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けることが好ましい。
容器には、圧力計、温度計等の計器類を設置してもよい。容器内で各成分を溶剤中に溶解する。調製したドープは冷却後容器から取り出すか、あるいは、取り出した後、熱交換器等を用いて冷却する。
冷却溶解法では最初に、室温で有機溶媒中にセルロースアシレートを撹拌しながら徐々に添加する。
セルロースアシレートの量は、この混合物中に10乃至40質量%含まれるように調整することが好ましい。セルロースアシレートの量は、10乃至30質量%であることがさらに好ましい。さらに、混合物中には後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
冷却速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。冷却速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、冷却速度は、冷却を開始する時の温度と最終的な冷却温度との差を冷却を開始してから最終的な冷却温度に達するまでの時間で割った値である。
加温速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。加温速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、加温速度は、加温を開始する時の温度と最終的な加温温度との差を加温を開始してから最終的な加温温度に達するまでの時間で割った値である。
以上のようにして、均一な溶液が得られる。なお、溶解が不充分である場合は冷却、加温の操作を繰り返してもよい。溶解が充分であるかどうかは、目視により溶液の外観を観察するだけで判断することができる。
なお、セルロースアシレート(酢化度:60.9%、粘度平均重合度:299)を冷却溶解法によりメチルアセテート中に溶解した20質量%の溶液は、示差走査熱量計(DSC)による測定によると、33℃近傍にゾル状態とゲル状態との疑似相転移点が存在し、この温度以下では均一なゲル状態となる。従って、この溶液は疑似相転移温度以上、好ましくはゲル相転移温度プラス10℃程度の温度で保する必要がある。ただし、この疑似相転移温度は、セルロースアシレートの酢化度、粘度平均重合度、溶液濃度や使用する有機溶媒により異なる。
I/O比は、化合物の親疎水性の概念の大小を表す指標であり、三共出版刊、甲田善男、有機概念図に記載された計算方法により計算することができる。
本発明においては、溶剤AをMパーセントと溶剤Bを(100−M)パーセント含有する混合溶剤のI/O比は、溶剤AのI/O比をRa、溶剤BのI/O比をRbとした場合、
Ra×M/100+Rb×(100−M)/100
により算出するものとする。
本発明のセルロースアシレートフィルムの剥ぎ取り時の残留溶剤のI/O比は0.65以上4以下が好ましく、0.75以上3以下がさらに好ましく、0.9以上2.5以下が最も好ましい。
また、剥ぎ取り時の残留溶剤のメチレンクロライドとアルコールの比率は、両者の合計を100質量%とした場合、アルコールが10質量%以上40質量%以下が好ましく、15%質量%以上37質量%以下がさらに好ましく、20質量%以上34質量%以下が最も好ましい。
流延するセルロースアシレート溶液は同一の溶液を用いてもよいし、異なるセルロースアシレート溶液を用いてもよい。複数のセルロースアシレート層に機能をもたせるために、その機能に応じたセルロースアシレート溶液を、それぞれの流延口から押し出せばよい。さらに本発明のセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、紫外線吸収層、偏光層など)と同時に流延することもできる。
セルロースアシレートフィルムのガラス転移温度の測定はJIS規格K7121記載の方法によりおこなうことができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムのガラス転移温度は80℃以上200℃以下が好ましく、100℃以上170℃以下がさらに好ましい。ガラス転移温度は可塑剤、溶剤等の低分子化合物を含有させることにより低下させることが可能である。
また、セルロースアシレートフィルムの厚み(乾燥膜厚)は、120μm以下であり、20乃至100μmが好ましく、30乃至90μmがより好ましい。
フイルムのReレターデーション値およびRthレターデーション値は、それぞれ、下記数式(I)および(II)で定義される。
数式(I):Re=(nx−ny)×d
数式(II):Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
上記数式(I)および(II)において、nxは、フイルム面内の遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)の屈折率である。
数式(I)および(II)において、nyは、フイルム面内の進相軸方向(屈折率が最小となる方向)の屈折率である。
数式(II)において、nzは、フイルムの厚み方向の屈折率である。
数式(I)および(II)において、dは、単位をnmとするフイルムの厚さである。
この場合、視野角依存性の観点から、セルロースアシレートフィルムの25℃60%RHで測定されたRthの絶対値は、25nm以下が好ましく、20nm以下がさらに好ましく、10nm以下が最も好ましい。25℃60%RHで測定されたReは、0〜20nmが好ましく、0〜10nmがさらに好ましく、0〜5nmが最も好ましい。
また、セルロースアシレートフィルムの厚み(乾燥膜厚)は、120μm以下が好ましく、20乃至110μmがさらに好ましく、40乃至100μmが最も好ましい。
セルロースアシレートフイルムは、表面処理を施すことが好ましい。具体的方法としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理または紫外線照射処理が挙げられる。また、特開平7−333433号公報に記載のように、下塗り層を設けることも好ましい。
偏光板の透明保護膜として本発明のセルロースアシレートフイルムを使用する場合、偏光子との接着性の観点から、酸処理またはアルカリ処理、すなわちセルロースアシレートに対するケン化処理を実施することが特に好ましい。
表面エネルギーは55mN/m以上であることが好ましく、60mN/m以上75mN/m以下であることが更に好ましい。
セルロースアシレートフイルムのアルカリ鹸化処理は、フイルム表面をアルカリ溶液に浸漬した後、酸性溶液で中和し、水洗して乾燥するサイクルで行われることが好ましい。
アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられ、水酸化イオンの規定濃度は0.1乃至3.0Nの範囲にあることが好ましく、0.5乃至2.0Nの範囲にあることがさらに好ましい。アルカリ溶液温度は、室温乃至90℃の範囲にあることが好ましく、40乃至70℃の範囲にあることがさらに好ましい。
具体的には、表面エネルギーが既知である2種の溶液をセルロースアシレートフイルムに滴下し、液滴の表面とフイルム表面との交点において、液滴に引いた接線とフイルム表面のなす角で、液滴を含む方の角を接触角と定義し、計算によりフイルムの表面エネルギーを算出できる。
セルロースアシレートフィルムの吸水率は一定温湿度における平衡含水率を測定することにより評価することができる。平衡含水率は一定温湿度に24時間放置した後、平衡に達した試料の水分量をカールフィッシャー法で測定し、水分量(g)を試料質量(g)で除して算出したものである。
本発明のセルロースアシレートフィルムの25℃80%RHにおける平衡含水率は6質量%以下が好ましく、4質量%以下がさらに好ましく、3.5質量%以下が最も好ましい。
透湿度はJIS Z 0208に記載の方法により、各試料の透湿度を測定し、面積1m2あたり24時間で蒸発する水分量(g)として算出する。
セルロースアシレートフィルムの透湿度は様々な方法により調節可能である。セルロースアシレートフィルムに疎水性化合物を添加し、セルロースアシレートフィルムの吸水率を低下させることにより透湿度を低下させることができる。
また、透湿度は製膜時に搬送方向及び/あるいは幅方向に延伸し、セルロースアシレートの分子鎖の配向を密にすることによっても低下させることが可能である。
延伸は一軸延伸、二軸延伸のどちらでも可能である。
二軸延伸には、同時二軸延伸法と逐次二軸延伸法があるが、連続製造の観点から逐次二軸延伸方法が好ましく、ドープを流延した後、バンドもしくはドラムよりフイルムを剥ぎ取り、幅方向(長手方法)に延伸した後、長手方向(幅方向)に延伸される。
幅方向に延伸する方法は、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号などの各公報に記載されている。フイルムの延伸は、常温または加熱条件下で実施する。加熱温度は、フイルムのガラス転移温度以下であることが好ましい。フイルムは、乾燥中の処理で延伸することができ、特に溶媒が残存する場合は有効である。長手方向の延伸の場合、例えば、フイルムの搬送ローラーの速度を調節して、フイルムの剥ぎ取り速度よりもフイルムの巻き取り速度の方を速くするとフイルムは延伸される。幅方向の延伸の場合、フイルムの巾をテンターで保持しながら搬送して、テンターの巾を徐々に広げることによってもフイルムを延伸できる。フイルムの乾燥後に、延伸機を用いて延伸すること(好ましくはロング延伸機を用いる一軸延伸)もできる。フイルムの延伸倍率(元の長さに対する延伸による増加分の比率)は、5乃至50%の範囲にあることが好ましく、10乃至40%の範囲にあることがさらに好ましく、15乃至35%の範囲にあることが最も好ましい。
JIS Z 0208、条件A(25℃90%RH雰囲気下に24時間放置した後に測定)の方法で測定した本発明のセルロースアシレートフィルムの透湿度は、20g/m2以上250g/m2以下が好ましく、40g/m2以上225g/m2以下がさらに好ましく、100g/m2以上200g/m2以下が最も好ましい。
吸湿膨張係数は、一定温度下において相対湿度を変化させた時の試料の長さの変化量を示す。
額縁状の透過率上昇を防止するために、セルロースアシレートフィルムの吸湿膨張係数は、30×10-5/%RH以下とすることが好ましく、15×10-5/%RH以下とすることが更に好ましく、10×10-5/%RH以下とすることが最も好ましい。また、吸湿膨張係数は小さい方が好ましいが、通常は、1.0×10-5/%RH以上の値である。
吸湿膨張係数の測定方法について以下に示す。作製したポリマーフイルム(位相差板)から幅5mm、長さ20mmの試料を切り出し、片方の端を固定して25℃、20%RH(R0)の雰囲気下にぶら下げた。他方の端に0.5gの重りをぶら下げて、10分間放置し長さ(L0)を測定した。次に、温度は25℃のまま、湿度を80%RH(R1)にして、長さ(L1)を測定した。吸湿膨張係数は下式により算出した。測定は同一試料につき10サンプル行い、平均値を採用した。
吸湿膨張係数[/%RH]={(L1−L0 )/L0 }/(R1−R0)
残留溶剤を減らすための一般的手法は、高温かつ長時間で乾燥することであるが、あまり長時間であると、当然のことながら生産性が落ちる。従ってセルロースアシレートフイルムに対する残留溶剤の量は、0.01乃至1質量%の範囲にあることが好ましく、0.02乃至0.07質量%の範囲にあることがさらに好ましく、0.03乃至0.05質量%の範囲にあることが最も好ましい。
上記残留溶剤量を制御することにより、光学補償能を有する偏光板を安価に高い生産性で製造することができる。
溶液流延法では、ポリマー材料を有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフイルムを製造する。溶液流延法での乾燥は、後述するように、ドラム(またはバンド)面での乾燥と、フイルム搬送時の乾燥に大きく分かれる。ドラム(またはバンド)面での乾燥時には、使用している溶剤の沸点を越えない温度(沸点を越えると泡となる)でゆっくりと乾燥させることが好ましい。また、フイルム搬送時の乾燥は、ポリマー材料のガラス転移点±30℃、更に好ましくは±20℃で行うことが好ましい。
これらの疎水基を有する化合物の添加量は、調整する溶液(ドープ)に対して0.01乃至30質量%の範囲にあることが好ましく、0.1乃至20質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
セルロースアシレートフィルムの寸度変化率はピンゲージにより一定温度での経時前後の寸度変化を測定し、L1を経時前の寸度、L2を経時後の寸度とし、下記式により算出することができる。
寸度変化率(%)=[(L2−L1)/L1]×100
本発明のセルロースアシレートフィルムの90℃24hr経時での寸度変化率は、−0.5%以上0.5%以下が好ましく、−0.3%以上0.3%以下がさらに好ましく、−0.2%以上0.2%以下が最も好ましい。
セルロースアシレートフィルムの弾性率は引っ張り試験により求めることができる。本発明のセルロースアシレートフィルムは幅方向あるいは流延方向の少なくともひとつの方向が1.0GPa以上6.0GPa以下が好ましく、2.0Gpa以上5.5GPa以下がさらに好ましく、2.5Gpa以上5.0GPa以下が最も好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムの光弾性係数は60×10-8cm2/N以下が好ましく、20×10-8cm2以下がさらに好ましい。光弾性係数はエリプソメーターにより求めることができる。
1.偏光板の構成
まず、本発明の偏光板を構成する保護フィルム、偏光子について説明する。
本発明の偏光板は、偏光子や保護フィルム以外にも、粘着剤層、セパレートフィルム、保護フィルムを構成要素として有していても構わない。
本発明の偏光板は偏光子の両側に1ずつ合計2枚の保護フィルムを有するが、このうち少なくとも一枚は位相差フィルムとしての機能を合わせてもつことが好ましい。
本発明の保護フィルムはノルボルネン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアリレート、ポリスルフォン、セルロースアシレートなどから製造されたポリマーフィルムであることが好ましい。
このうち前記セルロースアシレートが最も好ましい。
本発明の偏光子は、ポリビニルアルコール(PVA)と二色性分子から構成することが好ましいが、特開平11−248937号公報に記載されているようにPVAやポリ塩化ビニルを脱水、脱塩素することによりポリエン構造を生成し、これを配向させたポリビニレン系偏光子も使用することができる。
PVAはフィルム化した後、二色性分子を導入して偏光子を構成することが好ましい。PVAフィルムの製造方法は、PVA系樹脂を水又は有機溶媒に溶解した原液を流延して成膜する方法が一般に好ましく用いられる。原液中のポリビニルアルコール系樹脂の濃度は、通常5〜20質量%であり、この原液を流延法により製膜することによって、膜厚10〜200μmのPVAフィルムを製造できる。PVAフィルムの製造は、特許第3342516号公報、特開平09−328593号公報、特開2001−302817号公報、特開2002−144401号公報を参考にして行うことができる。
これ以外にも、C.I.Direct Yellow 8、C.I.Direct Yellow 28、C.I.Direct Yellow 86、C.I.Direct Yellow 87、C.I.Direct Yellow 142、C.I.Direct Orange 26、C.I.Direct Orange 39、C.I.Direct Orange 72、C.I.Direct Orange 106、C.I.Direct Orange 107、C.I.Direct Red 2、C.I.Direct Red 39、C.I.Direct Red 83、C.I.Direct Red 89、C.I.Direct Red 240、C.I.Direct Red 242、C.I.Direct Red 247、C.I.Direct Violet 48、C.I.Direct Violet 51、C.I.Direct Violet 98、C.I.Direct Blue 15、C.I.Direct Blue 67、C.I.Direct Blue 71、C.I.Direct Blue 98、C.I.Direct Blue 168、C.I.Direct Blue 202、C.I.Direct Blue 236、C.I.Direct Blue 249、C.I.Direct Blue 270、C.I.Direct Green 59、C.I.Direct Green 85、C.I.Direct Brown 44、C.I.Direct Brown 106、C.I.Direct Brown 195、C.I.Direct Brown 210、C.I.Direct Brown 223、C.I.Direct Brown 224、C.I.Direct Black 1、C.I.Direct Black 17、C.I.Direct Black 19、C.I.Direct Black 54等が、さらに特開昭62−70802号、特開平1−161202号、特開平1−172906号、特開平1−172907号、特開平1−183602号、特開平1−248105号、特開平1−265205号、特開平7−261024号、の各公報記載の二色性染料等も好ましく使用することができる。
各種の色相を有する二色性分子を製造するため、これらの二色性染料は2種以上を配合してもかまわない。二色性染料を用いる場合、特開2002−082222号に記載されているように吸着厚みが4μm以上であってもよい。
偏光子の好ましい膜厚としては、5μm乃至40μmが好ましく、さらに好ましくは10μm乃至30μmである。偏光子の厚さと後述する保護膜の厚さの比を、特開2000−174727号に記載されている0.01≦A(偏光子膜厚)/B(保護膜膜厚)≦0.16範囲とすることも好ましい。
保護膜の遅相軸と偏光子の吸収軸の交差角は、任意の値でよいが、平行もしくは45±20゜の方位角であることが好ましい。
次に、本発明の偏光板の製造工程について説明する。
本発明における偏光板の製造工程は、膨潤工程、染色工程、硬膜工程、延伸工程、乾燥工程、保護膜貼り合わせ工程、貼り合わせ後乾燥工程から構成されることが好ましい。染色工程、硬膜工程、延伸工程の順序を任意に変えること、また、いくつかの工程を組み合わせて同時に行っても構わない。また、特許第3331615号明細書に記載されているように、硬膜工程の後に水洗することも好ましく行うことができる。
また、膨潤工程の温度、時間は、任意に定めることができるが、10℃以上60℃以下、5秒以上2000秒以下が好ましい。
二色性分子として高次のヨウ素イオンを用いる場合、高コントラストな偏光板を得るためには、染色工程はヨウ素をヨウ化カリウム水溶液に溶解した液を用いることが好ましい。この場合のヨウ素−ヨウ化カリウム水溶液のヨウ素は0.05〜20g/L、ヨウ化カリウムは3〜200g/L、ヨウ素とヨウ化カリウムの質量比は1〜2000が好ましい範囲である。染色時間は10〜1200秒が好ましく、液温度は10〜60℃が好ましい。さらに好ましくは、ヨウ素は0.5〜2g/L、ヨウ化カリウムは30〜120g/L、ヨウ素とヨウ化カリウムの質量比は30〜120がよく、染色時間は30〜600秒、液温度は20〜50℃がよい。
硬膜工程に用いる架橋剤としてホウ酸を用いる場合には、ホウ酸−ヨウ化カリウム水溶液に金属イオンを添加しても良い。金属イオンとしては塩化亜鉛が好ましいが、特開2000−35512号公報に記載されているように、塩化亜鉛の代わりに、ヨウ化亜鉛などのハロゲン化亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛などの亜鉛塩を用いることもできる。
(1)透過率および偏光度
本発明の偏光板の好ましい単板透過率は42.5%以上49.5%以下であるが、さらに好ましくは42.8%以上49.0%以下である。下記数式4で定義される偏光度の好ましい範囲は99.900%以上99.999%以下であり、さらに好ましくは99.940%以上99.995%以下である。平行透過率の好ましい範囲は36%以上42%以下であり、直交透過率の好ましい範囲は、0.001%以上0.05%以下である。下記数式5で定義される二色性比の好ましい範囲は48以上1215以下であるが、さらに好ましくは53以上525以下である。
上述の透過率はJISZ8701に基づいて、下記数式2で定義される。
y(λ):XYZ系における等色関数
τ(λ):分光透過率
平行透過率は、特開2001−083328号公報や特開2002−022950号公報に記載されているように波長依存性が小さくてもよい。偏光板をクロスニコルに配置した場合の光学特性は、特開2001−091736号公報に記載されている範囲であってもよく、平行透過率と直交透過率の関係は、特開2002−174728号に記載されている範囲内であってもよい。
本発明の偏光板の色相は、CIE均等知覚空間として推奨されているL*a*b*表色系における明度指数L*およびクロマティクネス指数a*とb*を用いて好ましく評価される。
L*、a*、b*は、上述のX、Y、Zを用い使って下記数式6で定義される。
偏光板をクロスニコルに配置して波長550nmの光を入射させる場合の、垂直光を入射させた場合と、偏光軸に対して45度の方位から法線に対し40度の角度で入射させた場合の、透過率比やxy色度差を特開2001−166135号公報や特開2001−166137号に記載された範囲とすることも好ましい。また、特開平10−068817号に記載されているように、クロスニコル配置した偏光板積層体の垂直方向の光透過率(T0)と、積層体の法線から60°傾斜方向の光透過率(T60)との比(T60/T0)を10000以下としたり、特開2000−139625号に記載されているように、偏光板に法線から仰角80度までの任意な角度で自然光を入射させた場合に、その透過スペクトルの520〜640nmの波長範囲において波長域20nm以内における透過光の透過率差を6%以下としたり、特開平08−248201号に記載されている、フィルム上の任意の1cm離れた場所における透過光の輝度差が30%以内とすることも好ましい。
(4−1)湿熱耐久性
特開2001−116922号公報に記載されているように60℃、90%RHの雰囲気に500時間放置した場合のその前後における光透過率及び偏光度の変化率が絶対値に基づいて3%以下であることが好ましい。特に、光透過率の変化率は2%以下、また、偏光度の変化率は絶対値に基づいて1.0%以下、更には0.1%以下であることが好ましい。また、特開平07−077608号公報に記載されているように80℃、90%RH、500時間放置後の偏光度が95%以上、単体透過率が38%以上であることも好ましい。
(4−2)ドライ耐久性
80℃、ドライ雰囲気下に500時間放置した場合のその前後における光透過率及び偏光度の変化率も絶対値に基づいて3%以下であることが好ましい。特に、光透過率の変化率は2%以下、また、偏光度の変化率は絶対値に基づいて1.0%以下、更には0.1%以下であることが好ましい。
(4−3)その他の耐久性
さらに、特開平06−167611号に記載されているように80℃で2時間放置した後の収縮率が0.5%以下としたり、ガラス板の両面にクロスニコル配置した偏光板積層体を69℃の雰囲気中で750時間放置した後のx値及びy値が特開平10−068818号に記載されている範囲内としたり、80℃、90%RHの雰囲気中で200時間放置処理後のラマン分光法による105cm-1及び157cm-1のスペクトル強度比の変化を、特開平08−094834号や特開平09−197127号に記載された範囲とすることも好ましく行うことができる。
PVAの配向度は高い程良好な偏光性能が得られるが、偏光ラマン散乱や偏光FT−IR等の手段によって算出されるオーダーパラメーター値として0.2乃至1.0が好ましい範囲である。また、特開昭59−133509号に記載されているように、偏光子の全非晶領域の高分子セグメントの配向係数と占領分子の配向係数(0.75以上)との差が少なくとも0.15としたり、特開平04−204907号に記載されているように偏光子の非晶領域の配向係数が0.65〜0.85としたり、I3やI5の高次ヨウ素イオンの配向度を、オーダーパラメーター値として0.8乃至1.0とすることも好ましく行うことができる。
特開2002−006133号に記載されているように、80℃30分加熱したときの単位幅あたりの吸収軸方向の収縮力が4.0N/cm以下としたり、特開2002−236213号公報に記載されているように、偏光板を70℃の加熱条件下に120時間置いた場合に、偏光板の吸収軸方向の寸法変化率及び偏光軸方向の寸法変化率を、共に±0.6%以内としたり、偏光板の水分率を特開2002−090546号公報に記載されているように3質量%以下とすることも好ましく行うことができる。さらに、特開2000−249832号公報に記載されているように延伸軸に垂直な方向の表面粗さが中心線平均粗さに基づいて0.04μm以下としたり、特開平10−268294号に記載されているように透過軸方向の屈折率n0を1.6より大きくしたり、偏光板の厚みと保護フィルムの厚みの関係を特開平10−111411号に記載された範囲とすることも好ましく行うことができる。
本発明の偏光板は、LCDの視野角拡大フィルム、反射型LCDに適用するためのλ/4板、ディスプレイの視認性向上のための反射防止フィルム、輝度向上フィルムや、ハードコート層、前方散乱層、アンチグレア(防眩)層等の機能層を有する光学フィルムと複合した機能化偏光板として好ましく使用される。
本発明の偏光板と上述の機能性光学フィルムを複合した構成例を図1に示した。偏光板の片側の保護膜として機能性光学フィルムと偏光子を、接着剤を介して接着しても良いし(図1(A))、偏光子の両面に保護膜を設けた偏光板に粘着剤を介して機能性光学フィルムを接着しても良い(図1(B))。前者の場合、もう一方の保護膜には任意の透明保護膜が使用できる。機能層や保護膜等の各層間の剥離強度は特開2002−311238号に記載されている4.0N/25mm以上とすることも好ましい。機能性光学フィルムは、目的とする機能に応じて液晶モジュール側に配置したり、液晶モジュールとは反対側、すなわち表示側もしくはバックライト側に配置することが好ましい。
(1)視野角拡大フィルム
本発明の偏光板は、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、OCB(Optically Compensatory Bend)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)のような表示モードに提案されている視野角拡大フィルムと組み合わせて使用することができる。
を好ましく組み合わせて使用される。
TNモード用の視野角拡大フィルムの好ましい構成は、前述の透明なポリマーフィルム上に配向層と光学異方性層をこの順に有したものである。視野角拡大フィルムは粘着剤を介して偏光板と貼合され、用いられてよいが、SID’00 Dig.、 p551(2000)に記載されているように、前記偏光子の保護膜の一方も兼ねて使用されることが薄手化の観点から特に好ましい。
本発明の偏光板は、λ/4板と積層した円偏光板として使用することができる。円偏光板は入射した光を円偏光に変換する機能を有しており、反射型液晶表示装置やECBモードなどの半透過型液晶表示装置、あるいは有機EL素子等に好ましく利用されている。
本発明に用いるλ/4板は、可視光の波長の範囲においてほぼ完全な円偏光を得るため、可視光の波長の範囲において概ね波長の1/4のレターデーション(Re)を有する位相差フィルムであることが好ましい。「可視光の波長の範囲において概ね1/4のレターデーション」とは、波長400から700nmにおいて長波長ほどレターデーションが大きく、波長450nmで測定したレターデーション値(Re450)が80乃至125nmであり、かつ波長590nmで測定したレターデーション値(Re590)が120乃至160nmである関係を満足する範囲を示す。Re590−Re450≧5nmであることがさらに好ましく、Re590−Re450≧10nmであることが特に好ましい。
λ/4板をλ/4板およびλ/2板を積層して構成する場合は、特許番号第3236304号公報や特開平10−68816号公報に記載されているように、λ/4板およびλ/2板の面内の遅相軸と偏光板の透過軸とがなす角度が実質的に75°および15゜となるように貼り合わせることが好ましい。
本発明の偏光板は反射防止フィルムと組み合わせて使用することができる。反射防止フィルムは、フッ素系ポリマー等の低屈折率素材を単層付与しただけの反射率1.5%程度のフィルム、もしくは薄膜の多層干渉を利用した反射率1%以下のフィルムのいずれも使用できる。本発明では、透明支持体上に低屈折率層、及び低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(即ち、高屈折率層、中屈折率層)を積層した構成が好ましく使用される。また、日東技報, vol.38, No.1, may, 2000, 26頁〜28頁や特開2002-301783号などに記載された反射防止フィルムも好ましく使用できる。
各層の屈折率は以下の関係を満足する。
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率
反射防止フィルムに用いる透明支持体は、前述の偏光層の保護膜に使用する透明ポリマーフィルムを好ましく使用することができる。
含フッ素化合物としては、例えば、特開平9−222503号公報段落番号[0018]〜[0026]、同11−38202号公報段落番号[0019]〜[0030]、特開2001−40284号公報段落番号[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報等に記載の化合物を好ましく使用することができる。
含シリコーン化合物はポリシロキサン構造を有する化合物が好ましいが、反応性シリコーン(例、サイラプレーン(チッソ(株)製)や両末端にシラノール基含有のポリシロキサン(特開平11−258403号公報)等を使用することもできる。シランカップリング剤等の有機金属化合物と特定のフッ素含有炭化水素基含有のシランカップリング剤とを触媒共存下に縮合反応で硬化させてもよい(特開昭58−142958号公報、同58−147483号公報、同58−147484号公報、特開平9−157582号公報、同11−106704号公報、特開2000−117902号公報、同2001−48590号公報、同2002−53804号公報記載の化合物等)。
低屈折率層には、上記以外の添加剤として充填剤(例えば、二酸化珪素(シリカ)、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム)等の一次粒子平均径が1〜150nmの低屈折率無機化合物、特開平11−3820公報の段落番号[0020]〜[0038]に記載の有機微粒子等)、シランカップリング剤、滑り剤、界面活性剤等を含有させることも好ましく行うことができる。
低屈折率層は、気相法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成されても良いが、安価に製造できる点で、塗布法で形成することが好ましい。塗布法としては、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート、マイクログラビア法を好ましく使用することができる。
低屈折率層の膜厚は、30〜200nmであることが好ましく、50〜150nmであることがさらに好ましく、60〜120nmであることが最も好ましい。
このような超微粒子は、粒子表面を表面処理剤で処理したり(シランカップリング剤等:特開平11−295503号公報、同11−153703号公報、特開2000−9908、アニオン性化合物或は有機金属カップリング剤:特開2001−310432号公報等)、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造としたり(特開2001−166104号公報等)、特定の分散剤併用する(例、特開平11−153703号公報、特許番号US6210858B1、特開2002−2776069号公報等)等の態様で使用することができる。
高屈折率層の屈折率は、1.70〜2.20であることが好ましい。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。
本発明の偏光板は、輝度向上フィルムと組み合わせて使用することができる。輝度向上フィルムは、円偏光もしくは直線偏光の分離機能を有しており、偏光板とバックライトの間に配置され、一方の円偏光もしくは直線偏光をバックライト側に後方反射もしくは後方散乱する。バックライト部からの再反射光は、部分的に偏光状態を変化させ、輝度向上フィルムおよび偏光板に再入射する際、部分的に透過するため、この過程を繰り返すことにより光利用率が向上し、正面輝度が1.4倍程度に向上する。輝度向上フィルムとしては異方性反射方式および異方性散乱方式が知られており、いずれも本発明の偏光板と組み合わせることができる。
OCSについては、日東技報, vol.38, No.1, may, 2000, 19頁〜21頁などを参考にすることができる。
本発明の偏光板には、さらに、ハードコート層、前方散乱層、アンチグレア(防眩)層、ガスバリア層、滑り層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けた機能性光学フィルムと組み合わせて使用することも好ましい。また、これらの機能層は相互に、また前述の反射防止層や光学異方性層等と同一層内で複合して使用することも好ましい。
本発明の偏光板は、耐擦傷性等の力学的強度を付与するため、ハードコート層を、透明支持体の表面に設けた機能性光学フィルムと組み合わせることが好ましく行われる。ハードコート層を、前述の反射防止フィルムに適用して用いる場合は、特に、透明支持体と高屈折率層の間に設けることが好ましい。
ハードコート層は、光及び/又は熱による硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましく、又加水分解性官能基含有の有機金属化合物は有機アルコキシシリル化合物が好ましい。ハードコート層の具体的な構成組成物としては、例えば、特開2002−144913号公報、同2000−9908号公報、WO0/46617号公報等記載のものを好ましく使用することができる。
ハードコート層の膜厚は、0.2〜100μmであることが好ましい。
ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。又、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
また、開環重合性基を含む化合物の好ましい例としては、グリシジルエーテル類としてエチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のポリグリシジルエーテルなど、脂環式エポキシ類としてセロキサイド2021P、セロキサイド2081、エポリードGT−301、エポリードGT−401、EHPE3150CE(以上、ダイセル化学工業(株)製)、フェノールノボラック樹脂のポリシクロヘキシルエポキシメチルエーテルなど、オキセタン類としてOXT−121、OXT−221、OX−SQ、PNOX−1009(以上、東亞合成(株)製)などが挙げられる。その他にグリシジル(メタ)アクリレートの重合体、或いはグリシジル(メタ)アクリレートと共重合できるモノマーとの共重合体をハードコート層に使用することもできる。
前方散乱層は、本発明の偏光板を液晶表示装置に適用した際の、上下左右方向の視野角特性(色相と輝度分布)改良するために使用される。本発明では、屈折率の異なる微粒子をバインダー分散した構成が好ましく、例えば、前方散乱係数を特定化した特開11−38208号公報、透明樹脂と微粒子の相対屈折率を特定範囲とした特開2000−199809号公報、ヘイズ値を40%以上と規定した特開2002−107512号公報等の構成を使用することができる。また、本発明の偏光板をヘイズの視野角特性を制御するため、住友化学の技術レポート「光機能性フィルム」31頁〜39頁に記載された「ルミスティ」と組み合わせて使用することも好ましく行うことができる。
アンチグレア(防眩)層は、反射光を散乱させ映り込みを防止するために使用される。アンチグレア機能は、液晶表示装置の最表面(表示側)に凹凸を形成することにより得られる。通常、アンチグレア層は、偏光板の空気側の保護フィルム上に設けられる。アンチグレア機能を有する光学フィルムのヘイズは、3〜30%であることが好ましく、5〜20%であることがさらに好ましく、7〜20%であることが最も好ましい。
フィルム表面に凹凸を形成する方法は、例えば、微粒子を添加して膜表面に凹凸を形成する方法(例えば、特開2000−271878号公報等)、比較的大きな粒子(粒径0.05〜2μm)を少量(0.1〜50質量%)添加して表面凹凸膜を形成する方法(例えば、特開2000−281410号公報、同2000−95893号公報、同2001−100004号公報、同2001−281407号公報等)、フィルム表面に物理的に凹凸形状を転写する方法(例えば、エンボス加工方法として、特開昭63−278839号公報、特開平11−183710号公報、特開2000−275401号公報等記載)等を好ましく使用することができる。
次に本発明の偏光板が使用される液晶表示装置について説明する。
図2は、本発明の偏光板が使用される液晶表示装置の一例である。
なお、ツイスト角は、ノートパソコンやパソコンモニタ、テレビ用の液晶表示装置の場合は90°近傍(85から95°)に、携帯電話などの反射型表示装置として使用する場合は0から70°に設定する。またIPSモードやECBモードでは、ツイスト角が0°となる。IPSモードでは電極が下側基板8のみに配置され、基板面に平行な電界が印加される。また、OCBモードでは、ツイスト角がなく、チルト角を大きくされ、VAモードでは液晶分子7が上下基板に垂直に配向する。
上側偏光板11の吸収軸12と下側偏光板22の吸収軸23の交差角は一般に概略直交に積層することで高コントラストが得られる。液晶セルの上側偏光板11の吸収軸12と上側基板15のラビング方向の交差角は液晶表示モードによってことなるが、TN、IPSモードでは一般に平行か垂直に設定する。OCB、ECBモードでは45°に設定することが多い。ただし、表示色の色調や視野角の調整のために各表示モードで最適値が異なり、この範囲に限定されるわけではない。
〔実施例1〕
(セルロースアシレート溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液Aを調製した。
アシル置換度2.4、ブチルリ化度1.7、アセチル化度0.7の
セルロースアシレート 100.0質量部
疎水化剤C−7 7.0質量部
疎水化剤C−10 7.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 307.0質量部
エタノール(第2溶媒) 93.0質量部
下記の組成物を分散機に投入し、攪拌して各成分を分散、溶解し、マット剤溶液を調製した。
平均粒径16nmのシリカ粒子
(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製 2.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 72.4質量部
メタノール(第2溶媒) 10.8質量部
セルロースアシレート溶液A 10.3質量部
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液を調製した。
下記紫外線吸収剤C 40質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 58.3質量部
エタノール(第2溶媒) 8.7質量部
セルロースアシレート溶液A 12.8質量部
上記セルロースアシレート溶液Aを94.6質量部、マット剤溶液を1.3質量部、紫外線吸収剤溶液2.1質量部それぞれを濾過後に混合し、バンド流延機を用いて流延した。残留溶剤のI/O比が1.5でフイルムをバンドから剥離し、130℃の条件でフイルムをテンターを用いて4%の延伸倍率で横延伸し、延伸後の幅のまま140℃で30秒間保持した。その後、クリップを外して140℃で40分間乾燥させ、セルロースアシレートフイルム1を製造した。出来あがったセルロースアシレートフィルムの残留溶剤量は0.2%であり、膜厚は80μmであった。
セルロースアシレートの種類及び疎水化剤の種類、添加量、セルロースアシレート溶液Aの溶剤組成、及び剥ぎ取り時の残留溶剤のI/O比を表1の内容に変更した以外は同様にしてセルロースアシレートフィルム2〜18を作製した。
<レターデーションの測定>
下記方法により25℃10%、25℃60%、25℃80%のそれぞれの環境下でRe及びRthを測定した。
自動複屈折率計(KOBRA-21ADH、王子計測機器(株)製)を用い、面内レターデーションRe(0)を測定した。また面内の遅相軸をあおり軸として40°および−40°あおってレターデーションRe(40)およびRe(−40)を測った。膜厚および遅相軸方向の屈折率nxをパラメータとし、これらの測定値Re(0)、Re(40)、Re(−40)にフィッティングするように進相軸方向の屈折率nyおよび厚み方向の屈折率nzを計算で求め、Rthレターデーション値を決定した。測定波長は590nmとした。
フィルムを温度25℃、相対湿度60%に調湿された部屋で4時間調湿した後、ピンゲージで長手方向のそれぞれ穴をあけ、ピンゲージで寸度(L1)を測定した。次に、90℃の恒温層中で24hrに保管したのち、再び温度25℃、相対湿度60%に調湿された部屋で4時間調湿し、ピンゲージで寸度(L2)を測定した。寸度変化率を以下の式により算出した。
寸度変化率(%)=[(L2−L1)/L1]×100
JIS Z0208に記載の方法に従い、各サンプルの透湿度を測定した。試験を行った温湿度条件は25℃90%RHである。
25℃80%RHの環境下24hr調湿後、平沼産業(株)社製AQ−2000カールフィッシャー水分測定装置で平衡含水率を測定した。
サンプルを25℃60%RHの環境下で24hr調湿し、JIS K7127に記載の方法に従って弾性率を測定した。引っ張り試験機は(株)エー・アンド・デイ製テンシロンを使用し、試験片は50mm×10mmでチャック間距離30mm、試験速度は30mm/分でおこなった。
(鹸化処理)
セルロースアシレートフイルム1を、1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で2分間浸漬した。室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。このようにして、セルロースアシレートフイルムの表面をケン化した。
延伸したポリビニルアルコールフイルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製した。
次に、ケン化したセルロースアシレートフィルムの透明支持体側を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて偏光膜の片側に貼り付けた。ケン化したセルロースアシレートフィルムの遅相軸および偏光膜の透過軸が平行になるように配置した。
市販のセルローストリアセテートフイルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)を上記と同様にケン化処理し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の反対側に貼り付けた。このようにして、偏光板(1)を作製した。
厚さ100μmのノルボルネン系樹脂フィルム(JSR社製、アートン)をテンター延伸機にて175℃延伸処理して、nx>ny>nzの屈折率特性を有して、Reが40nm、Rthが30nmの位相差フィルムを作製し、粘着剤を用いて作製した偏光板(1)のセルロースアシレートフィルム1側に貼り付けた。
VA型液晶セルを使用した22インチの液晶表示装置(シャープ(株)製)に設けられている観察者側の偏光板を剥がし、代わりに実施例3で作製した偏光板(1)を、ノルボルネン系樹脂フィルムが液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側に貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸とバックライト側の偏光板の透過軸が直交するように配置した。
本発明の偏光板はコントラスト及び色み視野角の使用環境湿度依存性が小さく変化が小さく好ましいことがわかった。
(セルロースアシレートフイルム溶液Bの調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液Bを調製した。
アシル置換度2.4、ブチルリ化度1.4、アセチル化度1.0の
セルロースアシレート 100質量部
疎水化剤A−2 7.8質量部
疎水化剤A−5 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 280質量部
メタノール(第2溶媒) 64質量部
1−ブタノール 21質量部
メチレンクロライド 80質量部
メタノール 20質量部
下記紫外吸収剤(A) 2質量部
下記紫外線吸収剤(B) 4質量部
セルロースアシレート溶液Bを474質量部に、疎水化剤溶液Cを40質量部を添加し、充分に攪拌してドープを調製した。ドープを流延口から0℃に冷却したドラム上に流延した。残留溶媒のI/O比が1.1で剥ぎ取り、フイルムの巾方向の両端をピンテンター(特開平4−1009号の図3に記載のピンテンター)で固定し、溶媒含有率が3乃至5質量%の状態で、横方向(機械方向に垂直な方向)の延伸率が3%となる間隔を保ちつつ140℃で10分間乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに150℃で20分乾燥し、厚み80μmのセルロースアシレートフイルム21を作製した。
セルロースアシレートフィルム21の作製において、セルロースアシレート、疎水化剤を表3のものに変更した以外はセルロースアシレートフィルム21と同様にしてセルロースアシレートフィルム22〜26を作製した。
(IPS液晶表示装置への実装評価)
実施例1で作製した本発明のセルロースアシレートフイルム1を用いて実施例3と同様にして作製した偏光板に対して、一軸延伸した光学補償フィルムを貼合して光学補償機能を持たせた。この際、光学補償フイルムの面内リタデーションの遅相軸を偏光板の透過軸と直交させることで、正面特性を何ら変えることなく視覚特性を向上させることができる。光学補償フィルムの面内レターデーションReは270nm、厚さ方向のレターデーションRthは0nmでNzファクターは0.5のものを用いた。
上記のようにして作製した本発明のセルロースアシレートフイルム1を用いた偏光板と光学補償フイルムの積層体、IPS型の液晶セル、本発明のセルロースアシレートフイルム1を用いた偏光板、の順番に上から重ね合わせて組み込んだ表示装置を作製した。この際、上下の偏光板の透過軸を直交させ、上側の偏光板の透過軸は液晶セルの分子長軸方向と平行(すなわち光学補償層の遅相軸と液晶セルの分子長軸方向は直交)とした。液晶セルや電極・基板はIPSとして従来から用いられているものがそのまま使用できる。液晶セルの配向は水平配向であり、液晶は正の誘電率異方性を有しており、IPS液晶用に開発され市販されているものを用いることができる。液晶セルの物性は、液晶のΔn:0.099、液晶層のセルギャップ:3.0μm、プレチルト角:5度、ラビング方向:基板上下とも75度とした。
以上のようにして作製した液晶表示装置において、装置正面からの方位角方向45度、極角方向70度における黒表示時の光漏れ率を測定したところ、本発明のセルロースアシレートフイルムにより作製した光学補償フイルムおよび偏光板は、視野角特性の使用環境湿度依存性が小さく好ましいことがわかった。
2 偏光子
3 機能性光学フィルム
4 粘着層
11 上偏光板
12 上偏光板吸収軸
13 上視野角拡大フィルム
14 上光学異方性層配向制御方向
15 液晶セル上電極基板
16 上基板配向制御方向
17 液晶分子
18 液晶セル下電極基板
19 下基板配向制御方向
20 下視野角拡大フィルム
21 下光学異方性層配向制御方向
22 下偏光板
23 下偏光板吸収軸
Claims (22)
- 下記数式(II)で算出される25℃60%RHのRthの絶対値が25nm以下であり、25℃10%RHのRthと25℃80%RHのRthの差が40nm以下であることを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
数式(II):Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
[式中、nxは、光学異方性層面内の遅相軸方向の屈折率であり;nyは、光学異方性層面内の進相軸方向の屈折率であり;nzは、光学異方性層の厚み方向の屈折率であり;そして、dは光学異方性層面内の厚さである]。 - 下記数式(I)で算出される25℃60%RHのReが20nm以下であり、25℃10%RHのReと25℃80%RHのReの差が20nm以下であることを特徴とする請求項1に記載のセルロースアシレートフィルム。
数式(I):Re=(nx−ny)×d
[式中、nxは、光学異方性層面内の遅相軸方向の屈折率であり;nyは、光学異方性層面内の進相軸方向の屈折率であり;そして、dは光学異方性層面内の厚さである]。 - 水素結合性水素供与性基を少なくとも1つ有し、かつオクタノール−水分配係数が2以上12以下の化合物を含有し、フィルム剥ぎ取り後搬送開始時におけるフィルム中の残留溶剤のI/O比が0.65以上4以下で製造されたことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
- セルロースアシレートがアセチル基の置換度が2.80以上3.00以下のセルロースアセテートであることを特徴とする請求項3に記載のセルロースアシレートフィルム
- アシル基の置換度が1以上2.9以下であり、アセチル基の置換度が2.5未満であることを特徴とする請求項3に記載のセルロースアシレートフィルム。
- アシル基の置換度が1以上2.6以下であり、アセチル基の置換度が1.4未満であり、アシル基の平均炭素数が2.4以上5以下であることを特徴とする請求項5に記載のセルロースアシレートフィルム。
- 溶剤が、メチレンクロライドとアルコールの混合溶剤であり、かつメチレンクロライドとアルコールの比率は、両者の合計を100質量%としたときにアルコールが10質量%以上40質量%以下であることを特徴とする請求項3〜6いずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
- 請求項1または2に記載の物性を有することを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
- 25℃90%RHの雰囲気下に24hr放置後の透湿度が20g/m2以上250g/m2以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
- 25℃80%RHにおける平衡含水率が4.0%以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
- 90℃24hr経時での寸度変化率が−0.5%以上0.5%以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
- 搬送方向あるいは幅方向のいずれかひとつの弾性率が1.0GPa以上6.0GPa以下であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
- 偏光子の両側に保護フィルムが貼り合わされてなる偏光板において、該保護フィルムの少なくとも1枚が請求項1〜12のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムであることを特徴とする偏光板。
- 偏光板に粘着剤層を設けたことを特徴とする請求項13に記載の偏光板。
- 空気側保護フィルム上にアンチグレア層を設けたことを特徴とする請求項13または14に記載の偏光板。
- 反射防止フィルム層を有することを特徴とする請求項13〜16のいずれかに記載の偏光板。
- 位相差フィルム層またはλ/4板を有することを特徴とする請求項13〜16のいずれかに記載の光板。
- 視野角拡大フィルム層を有することを特徴とする請求項13〜17のいずれかに記載の偏光板。
- 輝度向上フィルム層を有することを特徴とする請求項13の〜18のいずれかに記載の偏光板。
- 液晶セルおよびその両側に配置された二枚の偏光板からなり、少なくとも1枚の偏光板が請求項13〜19のいずれかに記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
- 液晶表示装置がVAモードであることを特徴とする請求項20に記載の液晶表示装置。
- 液晶表示装置がIPSモードであることを特徴とする請求項20に記載の液晶表示装置。
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