JP2007332188A - セルロースエステルフィルムの製造方法および、その方法により得られたセルロースエステルフィルム、光学補償フィルム、偏光板および液晶表示装置 - Google Patents

セルロースエステルフィルムの製造方法および、その方法により得られたセルロースエステルフィルム、光学補償フィルム、偏光板および液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】面内及び膜厚方向のレターデーションが小さく、平面性に優れるセルロースエステルフィルムを安価に、効率的に製造する方法、及びこのセルロースエステルフィルムを用いた光学補償フィルム、偏光板および液晶表示装置を提供する。
【解決手段】セルロースエステルを溶剤に溶解したドープを支持体上に流延する工程、支持体上からフィルムを剥離する工程、剥離したフィルムを乾燥する工程を含む、面内レターデーション値および膜厚方向のレターデーション値が特定の値であるセルロースエステルフィルムの製造方法であって、セルロースエステルとして少なくとも1種の綿花リンター由来のセルロースエステルと少なくとも1種の木材パルプ由来のセルロースエステルとを少なくとも用い、全セルロースエステル中の該綿花リンター由来セルロースエステル比率が5質量%以上90質量%以下であることを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、液晶表示装置に有用なセルロースエステルフィルムの製造方法に関するものである。また、さらにその方法により作製されたセルロースエステルフィルム、それを用いた光学補償フィルム、偏光板および液晶表示装置に関するものである。
従来、セルロースエステルフィルム、例えばセルロースアシレートフィルムはその強靭性と難燃性から写真用支持体や各種光学材料に用いられてきた。特に、近年は液晶表示装置用の光学透明フィルムとして多く用いられている。セルロースエステルフィルム、例えばセルロースアシレートフィルムは、光学的に透明性が高いことと、光学的に等方性が高いことから、液晶表示装置のように偏光を取り扱う装置用の光学材料として優れており、これまで偏光子の保護フィルムや、斜め方向からの見た表示を良化(視野角補償)できる光学補償フィルムの支持体として用いられてきた。
液晶表示装置用の部材のひとつである偏光板には偏光子の少なくとも片側に偏光子の保護フィルムが貼合によって形成されている。一般的な偏光子は延伸されたポリビニルアルコール(PVA)系フィルムをヨウ素または二色性色素で染色することにより得られる。多くの場合、偏光子の保護フィルムとしてはPVAに対して直接貼り合わせることができる、セルロースアシレートフィルム、なかでもトリアセチルセルロースフィルムが用いられている。偏光子の保護フィルムは、光学的等方性に優れることが重要であり、偏光子の保護フィルムの光学特性が偏光板の特性を大きく左右する。
最近の液晶表示装置においては、視野角特性の改善がより強く要求されるようになっており、偏光子の保護フィルムや光学補償フィルムの支持体などの光学的に透明なフィルムは、より光学的に等方性であることが求められている。光学的に等方性であるとは、光学フィルムの複屈折と厚みの積で表されるレターデーション値が小さいことが重要である。とりわけ、斜め方向からの表示良化のためには、正面方向のレターデーション(Re)だけでなく、膜厚方向のレターデーション(Rth)を小さくする必要がある。具体的には光学透明フィルムの光学特性を評価した際に、フィルム正面から測定したReが小さく、角度を変えて測定してもそのReが変化しないことが要求される。
そこでセルロースアシレートフィルムの代わりにポリカーボネート系フィルムや熱可塑性シクロオレフィンフィルムを用いて、Reの角度変化の小さい光学透明フィルムの提案がされた(ZEONOR(日本ゼオン社製)や、ARTON(JSR社製)など)。しかし、これらの光学透明フィルムは、偏光子の保護フィルムとして使用する場合、フィルムが疎水的なためにPVAとの貼合性に問題がある。またフィルム面内全体の光学特性が不均一であることも問題である。それに対して特許文献1ではPVAへの貼合適正に優れるセルロースアシレートフィルムを、より光学的異方性を低下させて改良し、正面のReをほぼゼロとし且つレターデーションの角度変化も小さい、すなわちRthもほぼゼロとした光学的に等方性である光学的に透明なフィルムが提案されている。該特許文献には、セルロースアシレートのアシル基置換度を大きくすることによって光学的異方性を低下できることが開示されている。
特開2005−120352号公報
また、光学フィルムとして使用するセルロースエステルフィルム、例えばセルロースアシレートフィルムに対しては、膜厚のばらつきが少なく平面性に優れたフィルムを安価に生産性よく製造することが望まれている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、面内及び膜厚方向のレターデーションが小さく、平面性に優れるセルロースエステルフィルムを安価に、効率的に製造する方法を提供することである。
本発明のさらなる目的は、この安価で、平面性、光学特性に優れたセルロースエステルフィルムを用いた光学補償フィルム、偏光板および液晶表示装置を提供することである。
本発明者らによる鋭意検討の結果、セルロースエステルの原料を調整することで、平面性に優れたセルロースエステルフィルムを安価に生産性よく製造することに成功した。具体的には、綿花リンター由来の綿をある程度用いることで製造過程におけるフィルムの支持体上からの剥離抵抗を低減しフィルム平面性を良好に保つとともに、剥離が問題にならない範囲で綿花リンターに比べコスト安な木材パルプ由来の綿を原料として使用することで製造コストを低減し安価で生産性よくフィルムを製造することに成功した。
本発明の上記目的は、下記構成により達成された。
(1)セルロースエステルを溶剤に溶解したドープを支持体上に流延する工程、支持体上からフィルムを剥離する工程、剥離したフィルムを乾燥する工程を含む、面内レターデーション値Re(590)および膜厚方向のレターデーション値Rth(590)が下記式(I)および(II)を満たすセルロースエステルフィルムの製造方法であって、セルロースエステルとして少なくとも1種の綿花リンター由来のセルロースエステルと少なくとも1種の木材パルプ由来のセルロースエステルとを少なくとも用い、全セルロースエステル中の該綿花リンター由来セルロースエステル比率が5質量%以上90質量%以下であることを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
式(I) 0≦Re(590)≦10
式(II) −25≦Rth(590)≦25
[式中、Re(λ)は25℃60%RH下、波長λnmにおける面内レターデーション値(単位:nm)である。Rth(λ)は25℃60%RH下、波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。]
(2)前記綿花リンター由来のセルロースエステル及び前記木材パルプ由来のセルロースエステルがともにアシル化エステルであり、アシル置換度(X+Y)がともに下記式(10)を満たすことを特徴とする(1)に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
式(10) 2.7<X+Y≦3.0
[式中、Xはアセチル置換度、Yはアセチル以外のアシル置換度である。]
(3)前記綿花リンター由来セルロースエステルの6%粘度と前記木材パルプ由来のセルロースエステルの6%粘度とのうち大きい方の値を小さい方の値で割った商が1.2以上であることを特徴とする(1)または(2)に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載のセルロースエステルフィルムの製造方法により作製されたセルロースエステルフィルム。
(5)前記セルロースエステルフィルムがレターデーション低減剤を含有することを特徴とする(4)に記載のセルロースエステルフィルム。
(6)前記セルロースエステルフィルムがレターデーションの波長分散調整剤を含有することを特徴とする(4)または(5)に記載のセルロースエステルフィルム。
(7)前記セルロースエステルフィルムの表面凹凸の最大高さRyが0.5μm以下であることを特徴とする(4)〜(6)のいずれかに記載のセルロースエステルフィルム。
(8)前記セルロースエステルフィルムの厚みが30〜120μmであることを特徴とする請求項(4)〜(7)のいずれかに記載のセルロースエステルフィルム。
(9)前記セルロースエステルフィルムを25℃50%RH4時間調湿後、80℃90%RH20時間処理することを10回繰り返した後の保留性が2.0%以下であることを特徴とする(4)〜(8)のいずれかに記載のセルロースエステルフィルム。
(10)(4)〜(9)のいずれかに記載のセルロースエステルフィルム上に、Re(590)=0〜200nmで、且つ|Rth(590)|=0〜400nmの光学異方性層を積層してなることを特徴とする光学補償フィルム。
(11)偏光膜の両側に保護フィルムが貼り合わされてなる偏光板において、該保護フィルムの少なくとも1枚が(4)〜(9)のいずれかに記載のセルロースエステルフィルムあるいは(10)に記載の光学補償フィルムであることを特徴とする偏光板。
(12)(4)〜(9)のいずれかに記載のセルロースエステルフィルム、(10)に記載の光学補償フィルム、及び(11)に記載の偏光板、の少なくともいずれかを用いたことを特徴とする液晶表示装置。
本発明によれば、光学的異方性(Re、Rth)が小さく実質的に光学的等方性であり、平面性に優れたセルロースエステルフィルムを安価に生産性良く製造することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
〈セルロースエステルフィルムの光学特性〉
[セルロースエステルフィルムのレターデーション]
本発明のセルロースエステルフィルムの25℃60%RH下、波長590nmでの面内レターデーション値Re(590)値は下記式(I)を満たす。この式でReの単位はnmで表す。
式(I) 0 ≦ Re(590) ≦ 10
Re(590)値のより好ましい範囲は0nm以上7nm以下であり、0nm以上5nm以下がさらに好ましく、0nm以上2nm以下が特に好ましい。
また、25℃60%RH下、波長590nmでの膜厚方向のレターデーション値Rth(590) は下記式(II)を満たす。この式でRthの単位はnmで表す。
式(II) −25 ≦ Rth(590) ≦ 25
Rth(590) 値のより好ましい範囲は、−20nm以上20nm以下であり、−15nm以上15nm以下がさらに好ましく、−10nm以上10nm以下が特に好ましい。
膜厚方向のレターデーションが小さい本発明のセルロースエステルフィルムは、フィルム厚み方向に余計な複屈折を生じないという特徴を有しており、本発明のセルロースエステルフィルムを用いることにより液晶表示装置の光学設計の自由度を著しく高めることができる。特に面内および膜厚方向のレターデーションがともに小さいセルロースエステルフィルムを偏光板保護フィルムや光学補償フィルムの支持体として用いた場合、他の部材や光学補償フィルム中の光学補償層の光学補償能を邪魔することなく、それらの部材の複屈折をそのまま利用することが可能となる。
上記式(I)及び式(II)を達成する手段としては、例えば、後述の原料セルロースエステルのエステル置換基を好ましいものとすること、原料セルロースエステルのエステル置換度を好ましい範囲とすること、さらには、原料セルロースエステルのエステル置換度、レターデーション低下剤の使用量、及びレターデーションの波長分散調製剤の使用量の組み合わせ等により達成することができる。
本発明のセルロースエステルフィルムの面内レターデーションReおよび膜厚方向のレターデーションRthはともに湿度による変化が小さいことが好ましく、下記式(III)及び下記式(IV)を満たすことが好ましい。
式(III) |Re10%−Re80%| ≦ 25
式(IV) |Rth10%−Rth80%| ≦ 35
[式(III)において、Re10%は25℃10%RH下、Re80%は25℃80%RH下、波長590nmでの面内レターデーション、式(IV)において、Rth10%は25℃10%RH下、Rth80%は25℃80%RH下、波長590nmでの膜厚方向レターデーションを表す。]
|Re10%−Re80%|のより好ましい範囲は0〜20nmであり、さらに好ましくは0〜15nmである。
また、|Rth10%−Rth80%|のより好ましい範囲は0〜25nmであり、さらに好ましくは0〜15nmである。
また、25℃10%RHで波長450nmのRe値と、25℃80%RHで波長450nmのRe値との差、|Re10%(450)−Re80%(450)|が25nm以下、25℃10%RHで波長630nmのRe値と、25℃80%RHで波長630nmのRe値との差、|Re10%(630)−Re80%(630)|が25nm以下であることが好ましい。
さらに、25℃10%RHで波長450nmのRth値と、25℃80%RHで波長450nmのRth値との差、|Rth10%(450)−Rth80%(450)|が35nm以下、25℃10%RHで波長630nmのRth値と、25℃80%RHで波長630nmのRth値との差、|Rth10%(630)−Rth80%(630)|が25nm以下であることが好ましい。
本発明のセルロースエステルフィルムは、25℃60%RH下において、波長450nmと630nmでのRe、Rthの差、|Re(450)−Re(630)|および|Rth(450)−Rth(630)|が小さいことが好ましく、|Re(450)−Re(630)|≦10かつ|Rth(450)−Rth(630)|≦35であることが好ましい。より好ましくは、|Re(450)−Re(630)|≦5かつ|Rth(450)−Rth(630)|≦25であり、|Re(450)−Re(630)|≦3かつ|Rth(450)−Rth(630)|≦15であることが特に好ましい。
また、25℃10%RH下および25℃80%RH下において、|Re(450)−Re(630)|≦15かつ|Rth(450)−Rth(630)|≦40であることが好ましい。より好ましくは、|Re(450)−Re(630)|≦10かつ|Rth(450)−Rth(630)|≦30であり、|Re(450)−Re(630)|≦5かつ|Rth(450)−Rth(630)|≦25であることが特に好ましい。
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のリターデーションおよび厚さ方向のリターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルムが1軸または2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレタデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレタデーションの値がセ゛ロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレタデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレタデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(1)及び式(2)よりRthを算出することもできる。
式(1)
Figure 2007332188
注記:上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレタデーション値をあらわす。
式(1)におけるnxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。
Rth=((nx+ny)/2 - nz) x d --- 式(2)
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレタデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値はポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHまたはWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx-nz)/(nx-ny)が更に算出される。
[レターデーションのばらつき]
レターデーション値のばらつきは、製膜したフィルムの幅方向5点(中央、端部(両端からそれぞれ全幅の5%の位置)、および中央部と端部の中間部2点)を長手方向に100mごとにサンプリングしたものの値の最大値と最小値との差であり、10nm以下であることが好ましく、5nm以下であることがより好ましく、1nm以下であることが特に好ましい。
[セルロースエステルフィルムの原料]
本発明のセルロースエステルフィルムの原料としては、以下に述べるセルロースエステルを用いることができ、後述の各種の化合物や添加剤等のその他の成分を適宜用いることができる。
〈セルロースエステル〉
セルロースを形成するグルコースユニットは、結合できる3つの水酸基を有しており、例えば、セルローストリアセテートにおいて、グルコースユニットの3個の水酸基全てがアセチル基に結合している場合には、アセチル基による置換度は3.0である。この場合、セルロースエステルの置換度は高ければ高いほど膜厚方向のレターデーションを小さくすることができ好ましい。セルロースアシレートは置換度が大きくなると固有複屈折が正から負に変わる性質を有している。高置換度で固有複屈折が負であるセルロースアシレートは延伸することによって膜厚方向のレターデーションを低下させることが可能である。
これらアシル基の置換度の測定方法は、ASTM−D817−96に準じて測定することができる。
セルロースエステルの好ましいエステル置換度は、酢酸によるアセチル置換度をX、プロピオン酸や酪酸などの酢酸以外によるエステル置換度をYとして表した場合に、下記の式(10)を満たすセルロースエステルである。
式(10) 2.7<X+Y≦3.0
これはX+Yが2.7より大きく、3.0以下の範囲のものがRthを小さくするのに好ましい。より好ましくは、2.85〜3.00であり、さらに好ましくは2.91〜2.98である。
セルロースアシレートの合成方法の基本的な原理は、右田他,「木材化学」,共立出版,1968年,180〜190頁に記載されている。代表的な合成方法は、カルボン酸無水物−酢酸−硫酸触媒による液相酢化法である。具体的には、綿花リンタや木材パルプ等のセルロース原料を適当量の酢酸で前処理した後、予め冷却したカルボン酸化混液に投入してエステル化し、完全セルロースアシレート(2位、3位および6位のアシル置換度の合計が、ほぼ3.00)を合成する。上記カルボン酸化混液は、一般に溶媒としての酢酸、エステル化剤としての無水カルボン酸および触媒としての硫酸を含む。無水カルボン酸は、これと反応するセルロースおよび系内に存在する水分の合計よりも、化学量論的に過剰量で使用することが普通である。アシル化反応終了後に、系内に残存している過剰の無水カルボン酸の加水分解およびエステル化触媒の一部の中和のために、中和剤(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムまたは亜鉛の炭酸塩、酢酸塩または酸化物)の水溶液を添加する。次に、得られた完全セルロースアシレートを少量の酢化反応触媒(一般には、残存する硫酸)の存在下で、50〜90℃に保つことによりケン化熟成し、所望のアシル置換度および重合度を有するセルロースアシレートまで変化させる。所望のセルロースアシレートが得られた時点で、系内に残存している触媒を前記のような中和剤を用いて完全に中和するか、あるいは中和することなく水または希硫酸中にセルロースアシレート溶液を投入(あるいは、セルロースアシレート溶液中に、水または希硫酸を投入)してセルロースアシレートを凝集沈殿して分離し、洗浄および安定化処理によりセルロースアシレートを得ることができる。
本発明のセルロースエステルフィルムの原料として用いられるセルロースエステルは、セルロースエステルの原料であるセルロースが、綿花リンターに由来するものを少なくとも1種、木材パルプに由来するものを少なくとも1種を含むものである。また、綿花リンターや木材パルプ以外のケナフなどに由来するセルロースエステルを含むことができる。 本発明においては、全セルロースエステル中の綿花リンターに由来するセルロースエステルの含有率(リンター比率とも呼ぶ)は5質量%以上90質量%以下である。すなわち、リンター/パルプ(ケナフを含む)比率は5質量%/95質量%〜90質量%/10質量%である。
リンター比率が5%を下回る場合、後に述べる剥離性が悪化することがあり好ましくない。また、リンター比率が90%を超える場合は、安価な木材パルプから作製されるセルロースエステルの比率が小さくならざるを得ず、コストの低減を十分はたすことができず、好ましくない。
リンター/パルプ比率は10質量%/90質量%〜75質量%/25質量%が好ましく、20質量%/80質量%〜50質量%/50質量%がより好ましい。
本発明に用いられるセルロースエステルとしては、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース(DAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、硝酸セルロース等の脂肪族のカルボン酸、無機酸のほか、芳香環を有するカルボン酸さらには、ジカルボン酸やトリカルボン酸のような多価カルボン酸や多価カルボン酸の部分エステル(セルロースアセテートベンゾエート)などのセルロースエステル類が挙げられる。
本発明に用いられるセルロースエステルは、少なくとも2種類の異なるセルロース、少なくとも1種は綿花リンター由来、少なくとももう1種は、木材パルプ由来のセルロースからなり、それぞれをメチレンクロライド91質量%、メタノール9質量%からなる混合溶媒に6質量%の濃度で溶解した溶液の粘度(6%粘度とも呼ぶ)が異なり、その商(大きい粘度値を小さい粘度値で割った値)が1.2以上6.0以下であることが好ましい。
これは、異なるセルロースエステル種、および粘度(平均重合度に関連する)を有するセルロースエステルが特別な内部構造を形成することに寄与していると考えられ、後述するドープの剥離性を悪化させない効果、添加剤の保留性を高める効果をもたらすものと推察される。
6%粘度の商のより好ましい範囲は、1.6以上4.8以下であり、2.0以上4.0以下である。
6%粘度の好ましい値は、粘度値の大きい方の値が250〜1000mPa・sであり、小さいほうが60〜830mPa・sである。
6%粘度は、市販の毛管粘度計あるいは、コーン・プレート型レオメーター、パラレルプレート型レオメーターなど各種レオメーターを用いて測定することができる。
また、本発明のセルロースエステルの重合度は、上述の6%粘度の商の条件を満たす観点から、粘度平均重合度でそれぞれ200〜800が好ましく、250〜650がより好ましい。粘度平均重合度は宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)に従い測定できる。粘度平均重合度の測定方法については、特開平9−95538号公報にも記載がある。
フィルムの分子量が大きいと弾性率が大きくなるが、分子量を上げすぎるとセルロースエステルの溶解液の粘度が高くなりすぎるため、前述の条件を満たさなくなるほか、風ムラなどが発生し、その生産性が低下しやすくなる。セルロースエステルの分子量は数平均分子量(Mn)で50,000〜200,000のものが好ましく、100,000〜200,000のものがより好ましい。本発明で用いられるセルロースエステルは、Mw/Mn比が1.6〜4.5であることが好ましく、より好ましくは2.4〜3.6である。
分子量は、セルロースのエステル化反応の温度、時間、のほか反応時の水分量などを変えて、制御することができる。
セルロースエステルの平均分子量及び分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用い測定できるので、これを用いて数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)を算出し、その比を計算することができる。
測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806,K805,K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
〈レターデーション低減剤〉
本発明のセルロースエステルフィルムはレターデーション低減剤を含有してもよい。
本発明に好ましく用いられるレターデーション低減剤は膜厚方向のレターデーションを低減させる化合物であり、具体的な例としては、下記一般式(1)や一般式(2)で表される化合物などが挙げられるがこれに限られるものではない。
一般式(1)の化合物は、いずれも既知の化合物より製造することができる。すなわち、スルホニルクロリド誘導体とアミン誘導体との置換反応により得られる。また、一般式(2)の化合物も、縮合剤を用いたカルボン酸類とアミン類との脱水縮合反応、あるいはカルボン酸クロリド誘導体とアミン誘導体との置換反応などにより得られる。
Figure 2007332188
上記一般式(1)において、R11はアルキル基またはアリール基を表し、R12およびR13は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。R11、R12およびR13の炭素原子数の総和は10以上であることが好ましい。R11、R12およびR13において、各々のアルキル基又はアリール基は置換基を有していてもよい。
上記アルキル基又はアリール基の置換基としてはフッ素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基およびスルホンアミド基が好ましく、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基およびスルホンアミド基がより好ましい。また、アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素原子数1〜25のものが好ましく、6〜25のものがより好ましく、6〜20のもの(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ビシクロオクチル、ノニル、アダマンチル、デシル、t−オクチル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、ジデシル)が特に好ましい。アリール基としては炭素原子数が6〜30のものが好ましく、6〜24のもの(例えば、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフチル、ビナフチル、トリフェニルフェニル)が特に好ましい。
一般式(1)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、これらの具体例に限定されない。
Figure 2007332188
Figure 2007332188
Figure 2007332188
次に、一般式(2)の化合物について説明する。
式中、R14はアルキル基またはアリール基を表し、R15およびR16はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。また、アルキル基およびアリール基は置換基を有していてもよい。
より好ましくは、R14、R15およびR16はそれぞれ独立にアルキル基またはアリール基を表す。ここで、アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素原子数が1〜20のものが好ましく、1〜15のものがさらに好ましく、1〜12のものが最も好ましい。環状のアルキル基としては、シクロヘキシル基が特に好ましい。アリール基は炭素原子数が6〜36のものが好ましく、6〜24のものがより好ましい。
上記のアルキル基およびアリール基は置換基を有していてもよく、置換基としてはハロゲン原子(例えば、塩素、臭素、フッ素およびヨウ素)、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、スルホニルアミノ基、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基およびアシルアミノ基が好ましく、より好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、スルホニルアミノ基およびアシルアミノ基であり、特に好ましくは、アルキル基、アリール基、スルホニルアミノ基およびアシルアミノ基である。
以下に、一般式(2)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、これらの具体例に限定されない。
Figure 2007332188
Figure 2007332188
Figure 2007332188
Figure 2007332188
Figure 2007332188
Figure 2007332188
Figure 2007332188
Figure 2007332188
これらのレターデョーション低減剤は、光学異方性を低下させる機能を有している。
このレターデョーションを低下させる化合物を含有することにより、セルロースエステルフィルム中のポリマーが面内および膜厚方向に配向するのを抑制する化合物を用いてレターデョーションおよび光学異方性を十分に低下させ、Reはゼロに近く、さらにRthは負にすることができる。レターデョーションを低下させる化合物は、ポリマーに十分に相溶し、化合物自身が棒状の構造や平面性の構造を持たないことが有利である。具体的には芳香族基のような平面性の官能基を複数持っている場合、それらの官能基を同一平面ではなく、非平面に持つような構造が有利である。
レターデーション低減剤の添加量は、セルロースエステルや他の成分と相溶する限りにおいて、定めることができる。セルロースエステルの固形分の概ね40質量%以下であることが多く、0〜30質量%であることが好ましく、0〜20質量%であることが特に好ましい。
またこれらレターデーション低減剤は、単独で用いても、2種以上化合物を任意の比で混合して用いてもよい。
(LogP値)
本発明のセルロースエステルフィルムを作製するにあたっては、上述のようにフィルム中のセルロースエステルが面内および膜厚方向に配向するのを抑制して光学異方性を低下させる化合物のうち、オクタノール−水分配係数(logP値)が0〜7である化合物が好ましい。セルロースエステルとの相溶性に富み、フィルムの白濁や粉吹きを生じにくい点で、logP値が7以下の化合物が好ましい。また、親水性が高すぎず、セルロースエステルフィルムの耐水性を悪化させにくい点で、logP値が0以上の化合物が好ましい。logP値としてさらに好ましい範囲は1〜6であり、特に好ましい範囲は1.5〜5である。
オクタノール−水分配係数(logP値)の測定は、JIS日本工業規格Z7260−107(2000)に記載のフラスコ浸とう法により実施することができる。また、オクタノール−水分配係数(logP値)は実測に代わって、計算化学的手法あるいは経験的方法により見積もることも可能である。計算方法としては、Crippen's fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987))、Viswanadhan's fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,29,163(1989))、Broto's fragmentation法(Eur.J.Med.Chem.Chim.Theor.,19,71(1984).)などが好ましく用いられるが、Crippen's fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987))がより好ましい。ある化合物のlogPの値が測定方法あるいは計算方法により異なる場合に、該化合物が本発明の範囲内であるかどうかは、Crippen's fragmentation法により判断することが好ましい。
本発明のセルロースエステルフィルムは、光学異方性を低下させる化合物(レターデーション低減剤)を、下記式(a)、(b)を満たす範囲で少なくとも1種含有することが好ましい。
(a)(Rth(A)−Rth(0))/A≦−1.0
(b)0.01≦A≦100
[式中、Rth(A)はRthを低下させる化合物をA%含有したフィルムの25℃60%RHでの波長590nmのRth値、Rth(0)はRthを低下させる化合物を含有しないフィルムの25℃60%RHでの波長590nmのRth値であり、Aは前記ポリマーの固形分質量を100としたときの化合物の質量(%)である。]
上記式(a)、(b)は
(a1)(Rth(A)−Rth(0))/A≦−2.0
(b1)0.05≦A≦50
であることがより好ましく、
(a2)(Rth(A)−Rth(0))/A≦−3.0
(b2)0.1≦A≦20
であることがさらに好ましい。
〈波長分散調整剤〉
本発明のセルロースエステルフィルムは、ReおよびRthの波長による依存性、すなわち波長分散が小さいことが望ましい。この、波長分散を低下させる手段として、本発明においてはセルロースエステルフィルムに対して波長分散を調整する化合物(以下波長分散調整剤ともいう)を添加することが有効である。
波長分散調整剤としては、下記式(c)で表されるRthの波長分散ΔRth=|Rth(400)−Rth(700)|を低下させる化合物であることが好ましく、本発明のセルロースエステルフィルムは、この化合物を下記式(d)、(e)をみたす範囲で少なくとも1種含有することが好ましい。
(c)ΔRth=|Rth(400)−Rth(700)
(d)(ΔRth(B)−ΔRth(0))/B≦−2.0
(e)0.01≦B≦30
[式中、ΔRth(B)はRthの波長分散を調整する化合物をB%含有したフィルムの25℃60%RHでのΔRth値、ΔRth(0)はRthの波長分散を調整する化合物を含有しないフィルムのΔRth値であり、Bはポリマーの固形分質量を100としたときの化合物の質量(%)である。]
上記式(d)、(e)は
(d1)(ΔRth(B)−ΔRth(0))/B≦−3.0
(e1)0.05≦B≦25
であることがより好ましく、
(d2)(ΔRth(B)−ΔRth(0))/B≦−4.0
(e2)0.1≦B≦20
であることがさらに好ましい。
上記の波長分散調整剤としては、200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、フィルムのΔRe=|Re(400)−Re(700)|およびΔRth=|Rth(400)−Rth(700)|を低下させる化合物であることがより好ましく、このような化合物を少なくとも1種含むことによって、セルロースエステルフィルムのRe、Rthの波長分散をより効果的に調整することができる。
セルロースエステルフィルムのRe、Rthの値は一般に短波長側よりも長波長側が大きい波長分散特性となる。したがって相対的に小さい短波長側のRe、Rthを大きくすることによって波長分散を平滑にすることが要求される。一方200〜400nmの紫外領域に吸収を持つ化合物は長波長側よりも短波長側の吸光度が大きい波長分散特性をもつ。この化合物自身がセルロースエステルフィルム内部で等方的に存在していれば、化合物自身の複屈折性、ひいてはRe、Rthの波長分散は吸光度の波長分散と同様に短波長側が大きいと想定される。
したがって上述したような、200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、化合物自身のRe、Rthの波長分散が短波長側ほど大きいと想定されるものを用いることによって、セルロースエステルフィルムのRe、Rthの波長分散を調製することができる。このためには波長分散を調整する化合物はポリマー固形分に十分均一に相溶することが要求される。このような化合物の紫外領域の吸収帯範囲は200〜400nmが好ましいが、220〜395nmがより好ましく、240〜390nmがさらに好ましい。
また、近年テレビやノートパソコン、モバイル型携帯端末などの液晶表示装置ではより少ない電力で輝度を高めるに、液晶表示装置に用いられる光学部材の透過率が優れたものが要求されている。よって、波長分散調整剤をセルロースエステルフィルムに添加する場合、分光透過率が優れたものを用いることが好ましい。波長分散調整剤の分光透過率としては、波長380nmにおける分光透過率が45%以上95%以下であることが好ましく、かつ波長350nmにおける分光透過率が10%以下であることがより好ましい。
波長分散調整剤は、セルロースエステルフィルム作製のドープ流延、乾燥の過程で揮散しないことが好ましいため、分子量が250〜1000であることが好ましい。より好ましくは260〜800であり、更に好ましくは270〜800であり、特に好ましくは300〜800である。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であっても良いし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でも良い。
波長分散調整剤の添加量は、ポリマーの固形分の0.01〜30質量%であることが好ましく、0.1〜20質量%であることがより好ましく、0.2〜10質量%であることが特に好ましい。
またこれら波長分散調整剤は、単独で用いても、2種以上化合物を任意の比で混合して用いてもよい。
本発明に好ましく用いられる波長分散調整剤の具体例としては、例えばベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノ基を含む化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられるが、本発明はこれら化合物だけに限定されるものではない。
ベンゾトリアゾール系化合物としては、下記一般式(101)で示されるものが好ましく用いられる。
一般式(101): Q101−Q102−OH
(式中、Q101は含窒素芳香族ヘテロ環、Q102は芳香族環を表す。)
101は、含窒素方向芳香族へテロ環を表し、好ましくは5乃至7員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは5ないし6員の含窒素芳香族ヘテロ環である。例えば、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、セレナゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾセレナゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、ナフトチアゾール、ナフトオキサゾール、アザベンズイミダゾール、プリン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、トリアザインデン、テトラザインデン等が挙げられ、更に好ましくは、5員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、具体的にはイミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、ベンズオキサゾール、チアジアゾール、オキサジアゾールが好ましく、特に好ましくは、ベンゾトリアゾールである。
101で表される含窒素芳香族ヘテロ環は更に置換基を有してもよく、置換基としては後述の置換基Tが適用できる。また、置換基が複数ある場合にはそれぞれが縮環して更に環を形成してもよい。
102で表される芳香族環は、特に限定されず、芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよいが、芳香族炭化水素環であることが好ましい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
芳香族炭化水素環としては、炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。)であることが好ましく、炭素数6〜20の芳香族炭化水素環であることがより好ましく、炭素数6〜12の芳香族炭化水素環であることがさらに好ましく、ナフタレン環、ベンゼン環であることが特に好ましく、ベンゼン環であることが最も好ましい。
芳香族ヘテロ環としては、特に限定されないが、好ましくは窒素原子あるいは硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。この芳香族ヘテロ環の具体例としては、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデン等が挙げられる。中でも、ピリジン、トリアジン、キノリンが好ましい。
102は、更に置換基を有してもよく、下記の置換基Tが好ましい。
置換基Tとしては例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニル等が挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル等が挙げられる。)、置換又は未置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ等が挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ等が挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシ等が挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイル等が挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル等が挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニル等が挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等が挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノ等が挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ等が挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノ等が挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイル等が挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイル等が挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオ等が挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオ等が挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシル等が挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニル等が挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイド等が挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミド等が挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子等が挙げられ、具体的にはイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル等が挙げられる。)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル、トリフェニルシリル等が挙げられる)等が挙げられる。
これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
一般式(101)として好ましくは下記一般式(101−A)で表される化合物である。
Figure 2007332188
(式中、R101、R102、R103、R104、R105、R106、R107およびR108はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。)
101、R102、R103、R104、R105、R106、R107、およびR108はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、置換基としては前述の置換基Tが適用できる。またこれらの置換基は更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
101およびR103として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキル基(好ましくは炭素数4〜12)である。
102、およびR104として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
105およびR108として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
106およびR107として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、ハロゲン原子であり、特に好ましくは水素原子、塩素原子である。
一般式(101)としてより好ましくは下記一般式(101−B)で表される化合物である。
Figure 2007332188
(式中、R101、R103、R106およびR107は一般式(101−A)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。)
以下に、一般式(101)で表される化合物の具体例を挙げるが、下記具体例に限定されない。
Figure 2007332188
Figure 2007332188
以上のベンゾトリアゾール系化合物の中でも、分子量が320以下のものを含まずにセルロースエステルフィルムを作製した場合、保留性の点で有利である。
また、波長分散調整剤として用いられるベンゾフェノン系化合物としては、下記一般式(102)で示されるものが好ましい。
Figure 2007332188
(式中、Q111およびQ112はそれぞれ独立に芳香族環を表す。X111は、NR110(R110は水素原子または置換基を表す。)、酸素原子又は硫黄原子を表す。)
111およびQ112で表される芳香族環は芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
111およびQ112で表される芳香族炭化水素環として好ましくは(好ましくは炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環等が挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。)更に好ましくはベンゼン環である。
111およびQ112で表される芳香族ヘテロ環として好ましくは酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のどれかひとつを少なくとも1つ含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。
111およびQ112であらわされる芳香族環として好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくは炭素数6〜10の芳香族炭化水素環であり、更に好ましくは置換または無置換のベンゼン環である。
111およびQ112は更に置換基を有してもよく、前述の置換基Tが好ましいが、置換基にカルボン酸やスルホン酸、4級アンモニウム塩を含むことはない。また、可能な場合には置換基同士が連結して環構造を形成してもよい。
111はNR110(R110は水素原子または置換基を表す。置換基としては前述の置換基Tが適用できる。)、酸素原子または硫黄原子を表す。X111がNR110である場合、R110として好ましくはアシル基、スルホニル基であり、これらの置換基は更に置換してもよい。X111として好ましくは、NR110または酸素原子であり、特に好ましくは酸素原子である。
置換基Tとしては一般式(101)と同様のものを用いることができる。
一般式(102)として好ましくは下記一般式(102−A)で表される化合物である。
Figure 2007332188
(式中、R111、R112、R113、R114、R115、R116、R117、R118およびR119は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。)
111、R112、R113、R114、R115、R116、R117、R118およびR119は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表し、置換基ととしては前述の置換基Tが適用できる。またこれらの置換基は更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
111、R112、R113、R114、R115、R116、R117、R118およびR119として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
112として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基であり、特に好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基である。
117として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくはメチル基)であり、特に好ましくはメチル基、水素原子である。
一般式(102)としてより好ましくは下記一般式(102−B)で表される化合物である。
Figure 2007332188
(式中、R120は水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、置換または無置換のアリール基を表す。)
120は水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、置換または無置換のアリール基を表し、置換基としては前述の置換基Tが適用できる。
120として好ましくは置換または無置換のアルキル基であり、より好ましくは炭素数5〜20の置換または無置換のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数5〜12の置換または無置換のアルキル基(n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、ベンジル基、などが挙げられる。)であり、特に好ましくは、炭素数6〜12の置換または無置換のアルキル基(2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、ベンジル基)である。
一般式(102)で表される化合物は特開平11−12219号公報記載の方法により合成できる。
以下に一般式(102)で表される化合物の具体例を挙げるが、下記具体例に限定されない。
Figure 2007332188
Figure 2007332188
Figure 2007332188
また、波長分散調整剤として用いられるシアノ基を含む化合物としては、下記一般式(103)で示されるものが好ましい。
Figure 2007332188
(式中、Q121およびQ122はそれぞれ独立に芳香族環を表す。X121およびX122は水素原子または置換基を表し、少なくともどちらか1つはシアノ基を表す。)
121およびQ122であらわされる芳香族環は芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
芳香族炭化水素環として好ましくは炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。)更に好ましくはベンゼン環である。
芳香族ヘテロ環として好ましくは窒素原子あるいは硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。
121およびQ122であらわされる芳香族環として好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくはベンゼン環である。
121およびQ122は更に置換基を有してもよく、後述の置換基Tが好ましい。置換基Tは一般式(101)と同様である。
121およびX122は水素原子または置換基を表し、少なくともどちらか1つはシアノ基を表す。X121およびX122で表される置換基は前述の置換基Tを適用することができる。
また、X121およびX122はで表される置換基は更に他の置換基によって置換されてもよく、X121およびX122はそれぞれが縮環して環構造を形成してもよい。
121およびX122として好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、更に好ましくはシアノ基、カルボニル基であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基(−C(=O)OR′(R′は:炭素数1〜20アルキル基、炭素数6〜12のアリール基およびこれらを組み合せたもの))である。
一般式(103)として好ましくは下記一般式(103−A)で表される化合物である。
Figure 2007332188
(式中、R121、R122、R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129およびR130は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。X121およびX122は一般式(103)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。)
121、R122、R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129およびR130はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、置換基としては前述の置換基Tが適用できる。またこれらの置換基は更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
121、R122、R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129およびR130として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
123およびR128として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12アルコキシ基であり、特に好ましくは水素原子である。
一般式(103)としてより好ましくは下記一般式(103−B)で表される化合物である。
Figure 2007332188
(式中、R123およびR128は一般式(103−A)におけるそれらと同義であり、また、好ましい範囲も同様である。X123は水素原子または置換基を表す。)
123は水素原子、または置換基を表し、置換基としては前述の置換基Tが適用でき、また、可能な場合は更に他の置換基で置換されてもよい。X123として好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、更に好ましくはシアノ基、カルボニル基であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基−C(=O)OR″(R″は:炭素数1〜20アルキル基、炭素数6〜12のアリール基およびこれらを組み合せたもの)である。
一般式(103)として更に好ましくは一般式(103−C)で表される化合物である。
Figure 2007332188
(式中、R123およびR128は一般式(103−A)におけるそれらと同義であり、また、好ましい範囲も同様である。R131は炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
131として好ましくは、R123およびR128が両方とも水素原子である場合には、炭素数2〜12のアルキル基であり、より好ましくは炭素数4〜12のアルキル基であり、更に好ましくは、炭素数6〜12のアルキル基であり、特に好ましくは、n−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルへキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基であり、最も好ましくは2−エチルへキシル基である。
131として好ましくは、R123およびR128が水素以外の場合には、一般式(103−C)で表される化合物の分子量が300以上になり、かつ炭素数20以下の炭素数のアルキル基が好ましい。
一般式(103)で表される化合物は、Journal of American Chemical Society 63巻 3452頁(1941)に記載の方法によって合成できる。
以下に一般式(103)で表される化合物の具体例を挙げるが、下記具体例に限定されない。
Figure 2007332188
Figure 2007332188
Figure 2007332188
〈フィルム性質〉
[フィルム平面性]
本発明のセルロースエステルフィルムの表面は、JISB0601−1994に基づく該膜の表面凹凸の最大高さ(Ry)が0.5μm以下であることが好ましい。より好ましくは、0.3μm以下であり、さらに好ましくは0.2μm以下である。フィルム表面の凹と凸の形状は、原子間力顕微鏡(AFM)により評価することが出来る。
また、JISB0601−1994に基づく該膜の表面凹凸の算術平均粗さ(Ra)が0.1μm以下であることが好ましく、より好ましくは、0.05μm以下である。
本発明のセルロースエステルフィルムは6%粘度の商が1.2以上の綿リンターを由来とするセルロースエステルと木材パルプ由来のセルロースエステルからなることにより、セルロースエステルの相溶性が高まったために、フィルム表面の凹凸を小さくできたものと推察している。
[フィルムの保留性]
本発明のセルロースエステルフィルムにおいては、フィルムに添加した各種化合物の保留性が高いことが好ましい。具体的には、本発明のセルロースエステルフィルムを25℃50%RH4時間調湿後、80℃90%RHにて20時間処理することを10回繰り返した後のフィルムの質量変化が2.0%以下であることが好ましい。より好ましくは0〜1.5%であり、さらに好ましくは0〜1.0%である。
本発明のセルロースエステルフィルムは6%粘度の商が1.2以上の綿リンターを由来とするセルロースエステルと木材パルプ由来のセルロースエステルからなることにより、特異な内部構造を形成し、化合物との溶解性も増し、保留性が高まったものと推察している。
〈保留性の評価方法〉
試料を10cm×10cmのサイズに断裁し、25℃、50%RHの雰囲気下で4時間放置後(処理前の質量と称する)の質量を測定して、80±5℃、90±10%RHの条件下で20時間放置する。これを10回繰り返し、処理後の試料の表面を軽く拭き、25℃、50%RHで1日放置後の質量(処理後の質量と称する)を測定して、以下の方法で保留性を計算した。
保留性(質量%)={(処理前の質量−処理後の質量)/処理前の質量}×100
[フィルムの透明性]
本発明のセルロースエステルフィルムは、透明性が高いことが好ましく、全光線透過率が80%以上のものが好ましく、より好ましくは90%以上のフィルムである。
[フィルムのカール特性]
本発明のセルロースエステルフィルムのカール値は、25℃℃10%RHから25℃80%RHの温湿度条件のすべての範囲で、MD方向及びTD方向ともに、−21〜+21/mであることが好ましく、より好ましくは−15/m〜+15/mであり、更に好ましくは−10/m〜+10/mであり、−5/m〜+5/mであることが特に好ましい。
また本発明のセルロースエステルフィルムのカールは温度や湿度によって変化しないことが好ましく、25度80%RH下でのMD方向のカール値CMD,80と25度10%RH下でのMD方向のカール値CMD,10との差(CMD,80−CMD,10)が−14/m〜+14/mであることが好ましく、かつ、25度80%RH下でのTD方向のカール値CTD,80と25度10%RH下でのTD方向のカール値CTD,10との差(CTD,80−CTD,10)が−14/m〜+14/mであることが好ましい。より好ましくは、(CMD,80−CMD,10)および(CTD,80−CTD,10)が−11/m〜11/mであり、更に好ましくは−7/m〜+7/mであり、−5/m〜+5/mであることが特に好ましい。
さらに、25℃10%RHでのカール値と45℃10%RHでのカール値の差は、MDおよびTD方向ともに−19/m〜+19/mであることが好ましい。より好ましくは−14/m〜+14/mであり、−9/m〜+9/mであることが特に好ましい。さらにまた、25℃60%RHでのカール値と45℃60%RHでのカール値の差及び25℃80%RHでのカール値と45℃80%RHでのカール値の差が、MDおよびTD方向ともに、−19/m〜+19/mであることが好ましい。より好ましくは−14/m〜+14/mであり、−9/m〜+9/mであることが特に好ましい。
本発明のセルロースエステルフィルムは、6%粘度の商が1.2以上の綿リンターを由来とするセルロースエステルと木材パルプ由来のセルロースエステルからなることにより、特異な内部構造を形成し、セルロースエステルと化合物との溶解性が増したためフィルム内の添加剤分布が厚み方向で均一となり、カール値が小さくなったものと推察している。
本発明のセルロースエステルフィルムを偏光板保護フィルムとして偏光膜との貼りあわせを行なう場合、特に、長尺の偏光膜と長尺のセルロースエステルフィルムを効率的に貼りあわせる場合のほか、セルロースエステルフィルムに表面処理、光学異方性層を塗設したりする際のラビング処理の実施や光学異方性層や様々な機能層の塗設などを長尺品で行なう際に、本発明のセルロースエステルフィルムのカール値が前述の範囲にあると、フィルムのハンドリングに支障がなく、フィルムの切断が起きるトラブルが発生しにくい。また、フィルムのエッジや中央部などで、フィルムが搬送ロールと強く接触することがないために発塵しにくく、フィルム上への異物付着が少なく、光学補償フィルムなどの光学用フィルムとして、擦れ傷、点欠陥や塗布スジの頻度が許容範囲内になる。さらにカール値を上述の範囲とすることで偏光膜貼り合せ時に気泡が入ることを防ぐことができ、光学異方性層を設置するときに発生しやすい色斑故障を低減することができる。
カール値は、アメリカ国家規格協会の規定する測定方法(ANSI/ASCPH1.29−1985)に従い測定することができる。
[フィルムの厚さ]
本発明のセルロースエステルフィルムの厚さは、30〜120μmであることが好ましく、光学補償フィルムや偏光板保護膜としては、40〜100μmであることが好ましく、60〜80μmであるがさらに好ましく、65〜75μmであることが特に好ましい。
[フィルムの平衡含水率]
本発明のセルロースエステルフィルムの平衡含水率は、偏光板の保護膜として用いる際、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーとの接着性を損なわないために、膜厚のいかんに関わらず、25℃80%RHにおける平衡含水率が、3.0%以下であることが好ましい。0.1〜2.5%であることがより好ましく、1〜2%であることが特に好ましい。3%以下の平衡含水率であると、光学補償フィルムの支持体として用いる際にレターデーションの湿度変化による依存性が大きくならず、好ましい。
含水率の測定法は、本発明のセルロースエステルフィルム試料7mm×35mmを水分測定器、試料乾燥装置(CA−03、VA−05、共に三菱化学(株))にてカールフィッシャー法で測定した。水分量(g)を試料質量(g)で除して算出できる。
[フィルムの透湿度]
本発明のセルロースエステルフィルムの透湿度は、JIS規格JISZ0208をもとに、温度60℃、湿度95%RHの条件において測定し、膜厚80μmに換算して100g/m2・24h以上、2000g/m2・24h以下であることが好ましい。200〜1200g/m2・24hであることがより好ましく、300〜1000g/m2・24hであることが特に好ましい。2000g/m2・24h以下であると、フィルムのRe値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.3nm/%RHを超える傾向が少ない。また、本発明のセルロースエステルフィルムに光学異方性層を積層して光学補償フィルムとした場合も、Re値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.3nm/%RHを超える傾向が少ないため好ましい。この光学補償フィルムや偏光板が液晶表示装置に組み込まれた場合、色味の変化や視野角の観点で好ましい。また、セルロースエステルフィルムの透湿度が100g/m2・24h以上であることで、偏光膜の両面などに貼り付けて偏光板を作製する場合に、セルロースエステルフィルムにより接着剤の乾燥が妨げられることがなく、接着不良を生じない。
セルロースエステルフィルムの膜厚が厚ければ透湿度は小さくなり、膜厚が薄ければ透湿度は大きくなる。そこでどのような膜厚のサンプルでも基準を80μmに設け換算する必要がある。膜厚の換算は、(80μm換算の透湿度=実測の透湿度×実測の膜厚μm/80μm)として求めることができる。
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4 共立出版)の285頁〜294頁:蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法を適用することができ、本発明のセルロースエステルフィルム試料70mmφを25℃、90%RH及び60℃、95%RHでそれぞれ24時間調湿し、透湿試験装置(KK−709007、東洋精機(株))にて、JIS Z−0208に従って、単位面積あたりの水分量を算出(g/m2)し、透湿度=調湿後質量−調湿前質量で求めることができる。
本発明のセルロースエステルフィルムの透湿度は、セルロースエステルのエステル基の種類、その割合、置換度、添加剤種、その量などを適宜調整して制御することができる。
[フィルムのヘイズ]
本発明のセルロースエステルフィルムのヘイズは0.01〜2.0%であることがのぞましい。よりのぞましくは0.05〜1.5%であり、0.1〜1.0%であることがさらにのぞましい。透明フィルムとしてフィルムの透明性は重要である。ヘイズの測定は、本発明のセルロースエステルフィルム試料40mm×80mmを、25℃,60%RHでヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)でJIS K−6714に従って測定できる。
本発明のセルロースエステルフィルムのヘイズは、添加剤種、その量、乾燥条件を適宜調整して、制御することができる。
〈フィルムの添加剤〉
本発明のセルロースエステルフィルムは種々の添加剤を含有させることができ、添加剤としては、膜厚方向のレターデーションを所望の範囲とできる添加量であれば制限はない。例えば、上述のレターデーション低減剤(光学異方性を低下させる化合物)、波長分散調整剤の他に、その他光学特性調整剤、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、等が挙げられる。
種々の添加剤は、製造の各段階において添加することができる。添加する時期は特に限定されない。ポリマー溶液(以下、ドープともいう)の調製工程に添加することができる。この場合、ドープ調製工程の最後の工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。
[添加剤の含有量]
本発明のセルロースエステルフィルムは、セルロースエステルの0.3質量%以上、例えば0.3質量%以上45質量%以下の添加剤を含有することが好ましい。添加剤は樹脂素材の光学特性、物理特性などのフィルムの諸特性を樹脂素材のみからなるフィルムよりも広範囲に調整することができる。より好ましくは5〜40質量%であり、さらにのぞましくは10〜30質量%である。これらの化合物としては上述したように、レターデーションを低下させる化合物、波長分散調整剤のほか、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、架橋構造を形成する化合物、セルロースエステル相溶性重合体、微粒子、剥離剤、赤外吸収剤などであり、分子量としては、3000以下が好ましく、2000以下がより好ましく、1000以下がさらに好ましい。これら化合物の総量が0.3質量%以上であると、基材樹脂素材単体の性質が出にくくなり、例えば、温度や湿度の変化に対して光学性能や物理的強度が変動しにくくなるので好ましい。またこれら化合物の総量が45質量%以下であると、セルロースエステルフィルム中に化合物が相溶する限界を超えず、フィルム表面に析出してフィルムが白濁する(フィルムからの泣き出し)などの問題が生じにくいため好ましい。
[添加剤の厚み方向分布]
本発明のセルロースエステルフィルムは、分子量が3000以下の化合物の添加物を、セルロースエステルフィルムを構成する樹脂素材質量に対して少なくとも1種類以上、0.3%以上含有し、セルロースエステルフィルムを厚み方向に10等分した領域の中で、最外層を除く8つの領域それぞれの添加剤存在量がセルロースエステルフィルム全体の平均添加剤存在量(フィルム中全添加剤量を10で割った値)の80%〜120%であることが好ましい。このように添加剤分布が均一であることにより、常温常湿、低湿、高湿の他、低温や高温でもセルロースエステルフィルムのカール値を0に近づけることができるものと考えられ、湿度変化によるカールの変動や温度変化によるカールの変動も小さく抑えられるものと考えられる。各領域の添加剤存在量はフィルム平均存在量の85%〜115%であることがより好ましく、90%〜110%であることが特に好ましい。
添加剤の厚み方向分布の評価はION―TOF社製TOF−SIMS IV(一次イオンとしてAu1 +、25keV)を用いて評価することができる。フィルム流延時の支持体面から空気表面(反支持体面)へ膜厚方向に10等分した各層の添加剤強度を算出し評価する。複数の添加剤を有する場合、それぞれの添加剤ごとに添加強度を算出し、フィルム全体に含有する添加剤量を算出し、その割合に応じて各層の添加剤量を評価することができる。
[剥離剤]
本発明に使用される樹脂素材、例えばセルロースエステルフィルムには、剥離時の荷重を小さくするために剥離剤を添加することが好ましい。
剥離剤としては、公知の界面活性剤を用いることが有効である。この界面活性剤としては、リン酸系、スルホン酸系、カルボン酸系、ノニオン系、カチオン系等の界面活性剤を用いることができ、特に限定されない。ここで用いることができる界面活性剤の例としては、例えば特開昭61−243837号公報等に記載されている。
なお、剥離剤に関しては、特開2003−055501号公報に、セルロースアシレート溶液の白濁を防止し、フィルム製造剥離性とフィルム面状を改良するため、非塩素系溶剤に溶解したセルロースアシレート溶液で、酸解離指数pKAが1.93〜4.5の多塩基酸部分エステル体、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩から選ばれる添加剤を含有するセルロースアシレート溶液について記載がある。
なお、添加剤に関しては特開2003−128838号公報には、剥ぎ取り性、面状、膜強度を良化させるために、少なくとも一種類の活性水素と反応する基を2個以上有する架橋剤をセルロースアシレートに対して0.1〜10質量%含有するセルロースアシレートドープ溶液についての記載がある。
また、特開2003−165868号公報には、添加剤を添加し、良好な透湿度を有し、寸法安定性に優れたフィルムを提案している。
本発明では、上記公報に記載されている剥離剤を用いることができる。
剥離剤の好ましい含有量は、セルロースエステルの1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下さらに好ましくは0.01質量%以下である。
[マット剤微粒子]
本発明のセルロースエステルフィルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが、濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上がさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
これらの微粒子は、通常平均粒子径が0.1〜3.0μmの2次粒子を形成し、これらの微粒子はフィルム中では、1次粒子の凝集体として存在し、フィルム表面に0.1〜3.0μmの凹凸を形成させる。2次平均粒子径は0.2μm以上1.5μm以下が好ましく、0.4μm以上1.2μm以下がさらに好ましく、0.6μm以上1.1μm以下が最も好ましい。1次、2次粒子径はフィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒径とした。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子径とした。
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でアエロジル200V、アエロジルR972Vは、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上である二酸化珪素の微粒子であり、セルロースエステルフィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
本発明において2次平均粒子径の小さな粒子を有するセルロースエステルフィルムを得るために、微粒子の分散液を調製する際にいくつかの手法が考えられる。例えば、溶剤と微粒子を撹拌混合した微粒子分散液をあらかじめ作成し、この微粒子分散液を別途用意した少量のセルロースアシレート溶液に加えて撹拌溶解し、さらにメインのセルロースアシレートドープ液と混合する方法がある。この方法は二酸化珪素微粒子の分散性がよく、二酸化珪素微粒子が更に再凝集しにくい点で好ましい調製方法である。ほかにも、溶剤に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解した後、これに微粒子を加えて分散機で分散を行ない、これを微粒子添加液とし、この微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する方法もある。本発明はこれらの方法に限定されないが、二酸化珪素微粒子を溶剤などと混合して分散するときの二酸化珪素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%が更に好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度が高い方が添加量に対する液濁度は低くなり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。最終的なセルロースエステルのドープ溶液中でのマット剤の添加量は1m2あたり0.01〜1.0gが好ましく、0.03〜0.3gが更に好ましく、0.08〜0.16gが最も好ましい。
使用される溶剤は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
[可塑剤、劣化防止剤]
上記のレターデーションを低下させる化合物、波長分散調整剤などの他に、本発明のセルロースエステルフィルムには、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、赤外吸収剤、など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に可塑剤の混合などであり、例えば特開2001−151901号公報などに記載されている。さらにまた、赤外吸収染料としては例えば特開2001−194522号公報に記載されている。またその添加する時期はドープ作製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、セルロースエステルフィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開2001−151902号公報などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。これらの詳細は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。
(ドープ溶液の透明度)
本発明のセルロースエステル溶液のドープ透明度としては85%以上であることが好ましい。より好ましくは88%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。本発明においてはセルロースエステルドープ溶液に各種の添加剤が十分に溶解していることを確認した。具体的なドープ透明度の算出方法としては、ドープ溶液を1cm角のガラスセルに注入し、分光光度計(UV−3150、島津製作所)で550nmの吸光度を測定した。溶媒のみをあらかじめブランクとして測定しておき、ブランクの吸光度との比からセルロースエステル溶液の透明度を算出した。
[セルロースエステルフィルムの製造方法]
本発明の製造方法は、セルロースエステルを溶剤に溶解したドープを支持体上に流延する工程、支持体上からフィルムを剥離する工程、剥離したフィルムを乾燥する工程を含む。
(セルロースエステル溶液の作製)
セルロースエステル溶液を用いたフィルムの製造方法について述べる。本発明のセルロースエステルフィルムを製造する方法及び設備は、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いることができる。
本発明のセルロースエステルフィルムの製造に用いるセルロースエステル溶液(ドープ)は、綿花リンター由来のセルロースエステルと木材パルプ由来のセルロースエステルをそれぞれ別々に溶解機(釜)で溶解したものを混合するか、あるいは、溶媒をあらかじめ投入した1つの溶解機(釜)にそれぞれのセルロースエステルを投入、混合して溶解したドープを貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をすることができる。また、ケナフ等、他の原料由来のセルロースエステルを同様の方法でドープに含有させてもよい。
この際、加熱溶解法や冷却溶解法のいずれの方法によっても調整できるが、綿花リンター由来のセルロースエステルと木材パルプ由来のセルロースエステル溶液を十分混合することが必要である。
本発明のセルロースエステルフィルムの原料として用いられるセルロースエステルは、前述のとおり、セルロースエステルの原料であるセルロースが、綿花リンターに由来するものを少なくとも1種、木材パルプに由来するものを少なくとも1種を含むものである。また、綿花リンターや木材パルプ以外のケナフなどに由来するセルロースエステルを含むことができる。
本発明においては、全セルロースエステル中の綿花リンターに由来するセルロースエステルの含有率(リンター比率とも呼ぶ)は5質量%以上90質量%以下である。すなわち、リンター/パルプ(ケナフを含む)比率は5質量%/95質量%〜90質量%/10質量%である。
リンター比率が5%を下回る場合、後に述べる剥離性が悪化することがあり好ましくない。また、リンター比率が90%を超える場合は、安価な木材パルプから作製されるセルロースエステルの比率が小さくならざるを得ず、コストの低減を十分はたすことができず、好ましくない。
リンター/パルプ比率は10質量%/90質量%〜75質量%/25質量%がより好ましく、20質量%/80質量%〜50質量%/50質量%がさらに好ましい。
ドープ調製の際は、使用するセルロースエステルのリンター比率が上記範囲となるように、各原料由来のセルロースエステルの濃度等を調節する。
このようにして調整したドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して送り、流延ダイの手前であらかじめ調製しておいたマット剤溶液、UV吸収剤溶液、レターデーション調整剤溶液、波長分散調整剤、剥離剤溶液あるいは可塑剤溶液などをインラインで混合する。これら添加液の混合は逐次に混合してもよい。あるいはそれらの一部あるいは全部をあらかじめ混合しておいた上でセルロースエステル溶液と混合してもよい。
また、添加剤の一部を溶解機のなかにあらかじめ添加し、他の添加剤をインラインで混合することもできる。
(流延)
溶液を支持体上に流延する方法としては、調製されたドープを加圧ダイから無端金属支持体上に均一に押し出す方法、一旦金属支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる方法、或いは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、加圧ダイによる方法が好ましい。加圧ダイにはコートハンガータイプやTダイタイプ等があるがいずれも好ましく用いることができる。また、ここで挙げた方法以外にも従来知られているセルローストリアセテート溶液を流延製膜する種々の方法で実施でき、用いる溶媒の沸点等の違いを考慮して各条件を設定することによりそれぞれの公報に記載の内容と同様の効果が得られる。本発明のセルロースエステルフィルムを製造するのに使用されるエンドレスに走行する金属支持体としては、表面がクロムメッキによって鏡面仕上げされたり、あるいは研磨によって表面粗さが0.05μm以下に仕上げされたステンレス板無端バンドやドラムが用いられる。金属支持体の表面温度は一般的には0〜35℃が使用される。また、冷却ゲル化流延法では−50〜0℃であり、−35〜−3℃が好ましく、−25〜−5℃であることが更に好ましい。本発明のセルロースエステルフィルムの製造に用いられる加圧ダイは、金属支持体の上方に1基或いは2基以上の設置でもよい。好ましくは1基又は2基である。
2基以上設置する場合には流延するドープ量をそれぞれのダイに種々な割合にわけてもよく、複数の精密定量ギヤアポンプからそれぞれの割合でダイにドープを送液してもよい。流延に用いられるセルロースエステル溶液の温度は−10〜55℃が好ましく、より好ましくは25〜50℃である。使用する溶剤の沸点よりも5ないし15℃低い温度が好ましい。工程のすべての場所でセルロースエステル溶液の温度が同一でもよく、あるいは工程の各所で異なっていてもよい。異なる場合は、流延直前で前記範囲の温度であればよい。
エンドレス金属支持体の幅は0.8から2.5m、長さは5から120m、厚さは0.8から3.5mmのものが好ましく使用できる。流延幅は40cmから2.3m、金属支持体の移動速度(すなわち流延速度)はドープの固形分濃度や出来上がりのフィルム厚さ、エンドレス金属支持体の長さ、支持体温度などにもよるが、0.5から300m/分が使用できる。
さらに特開2001−129838号、特開2000−317960号、特開2000−301555号、特開2000−301558号、特開平11−221833号、特開平07−032391号、特開平05−185445号、特開平05−086212号、特開平03−193316号、特開平02−276607号、特開平02−111511号、特開平02−208650号特開昭62−037113号、特開昭62−115035号、特開昭55−014201号および特開昭52−10362号の各公報に記載の技術を本発明では応用できる。
(重層流延)
本項目では、セルロースアシレートについて例として述べるが、他のセルロースエステルにも適用可能である。
セルロースアシレート溶液を、支持体、例えば金属支持体としての平滑なバンド上或いはドラム上に単層液として流延してもよいし、2層以上の複数のセルロースアシレート液を流延してもよい。複数のセルロースアシレート溶液を流延する場合、金属支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよく、例えば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、および特開平11−198285号の各公報などに記載の方法が適応できる。また、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延することによってもフィルム化することでもよく、例えば特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、および特開平6−134933号の各公報に記載の方法で実施できる。また、特開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高,低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出すセルロースアシレートフィルム流延方法でもよく、特にこの方法は高粘度溶液を用いる冷却ゲル化流延法においては好ましい流延方法である。更に又、特開昭61−94724号および特開昭61−94725号の各公報に記載の外側の溶液が内側の溶液よりも貧溶媒であるアルコール成分を多く含有させることも好ましい態様である。或いはまた2個の流延口を用いて、第一の流延口により金属支持体に成型したフィルムを剥離し、金属支持体面に接していた側に第二の流延を行なうことでより、フィルムを作製することでもよく、例えば特公昭44−20235号公報に記載されている方法である。流延するセルロースアシレート溶液は同一の溶液でもよいし、異なるセルロースアシレート溶液でもよく特に限定されない。複数のセルロースアシレート層に機能を持たせるために、その機能に応じたセルロースアシレート溶液を、それぞれの流延口から押出せばよい。さらにセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)を同時に流延することも実施しうる。
従来の単層液では、必要なフィルム厚さにするためには高濃度で高粘度のセルロースアシレート溶液を押出すことが必要であり、その場合セルロースアシレート溶液の安定性が悪くて固形物が発生し、ブツ故障となったり、平面性が不良であったりして問題となることが多かった。この解決として、複数のセルロースアシレート溶液を流延口から流延することにより、高粘度の溶液を同時に金属支持体上に押出すことができ、平面性も良化し優れた面状のフィルムが作製できるばかりでなく、濃厚なセルロースアシレート溶液を用いることで乾燥負荷の低減化が達成でき、フィルムの生産スピードを高めることができる。共流延の場合、内側と外側の厚さは特に限定されないが、好ましくは外側が全膜厚の1〜50%であることが好ましく、より好ましくは2〜30%の厚さである。ここで、3層以上の共流延の場合は金属支持体に接した層と空気側に接した層のトータル膜厚を外側の厚さと定義する。共流延の場合、前述のレターデーション調整剤、波長分散調整剤、マット剤、剥離剤、可塑剤、紫外線吸収剤等の添加物濃度が異なるセルロースアシレート溶液を共流延して、積層構造のセルロースアシレートフィルムを作製することもできる。例えば、スキン層/コア層/スキン層といった構成のセルロースアシレートフィルムを作ることができる。例えば、マット剤は、スキン層に多く、又はスキン層のみに入れることができる。可塑剤、紫外線吸収剤はスキン層よりもコア層に多くいれることができ、コア層のみにいれてもよい。又、コア層とスキン層でレターデーション調整剤、波長分散調整剤、可塑剤、紫外線吸収剤の種類を変更することもでき、例えばスキン層に低揮発性のレターデーション調整剤、波長分散調整剤、可塑剤及び/又は紫外線吸収剤を含ませ、コア層に可塑性に優れたレターデーション調整剤、波長分散調整剤、可塑剤、或いは紫外線吸収性に優れた紫外線吸収剤を添加することもできる。また、剥離剤を金属支持体側のスキン層のみ含有させることも好ましい態様である。また、冷却ゲル化流延法で金属支持体を冷却して溶液をゲル化させるために、スキン層に貧溶媒であるアルコールをコア層より多く添加することも好ましい。スキン層とコア層のTgが異なっていても良く、スキン層のTgよりコア層のTgが低いことが好ましい。
(剥離)
セルロースエステル溶液を、支持体、例えば無端金属支持体としての平滑なバンド上或いはドラム上に流延したのち、例えば乾燥するかあるいは冷却することによりゲル化させ、支持体上から剥離させる。
本発明のセルロースエステル溶液の剥離は、綿花リンター由来のセルロースエステルと木材パルプ由来のセルロースエステルを混合した溶液をもちいることにより、綿花リンター並みの剥離特性を実現することができる。それにより、剥離抵抗が高くならず、製造されたフィルムの良好な平面性につながると推察される。
(冷却ゲル化)
本発明で行われる冷却ゲル化は、特開昭62−115035号公報に記されている如き、冷却ゲル化流延法の使用が、流延が速く生産性に優れるため好ましい。該方法では金属支持体は0℃以下に冷却され、支持体表面温度が上昇しない程度の温度と風量の乾燥風を、2秒以上あてて乾燥することが好ましい。この方法ではフィルムは主に冷却による粘度上昇あるいは冷却ゲル化により自己保持性が付与されるため、高残留溶剤分でも剥離可能になる。剥離時の好ましい残留溶剤分は80から300%であり、更に好ましくは150から280%である。剥離時の好ましいフィルム温度は0から−50℃であり、更に好ましくは−5から−25℃である。本方法では支持体上における片面乾燥の時間を短くできるので、トータルの乾燥時間を大幅に短縮でき、コスト及び環境負荷の削減効果が大きい。冷却ゲル化流延では金属支持体としてドラムを使用することが多い。ドラム中に冷却液を封入することにより、流延液膜を効果的に冷却ゲル化できる。ドラムの好ましい外周長さは2から20mである。好ましい流延速度は毎分0.5〜300mである。ドラム外周長1mあたりの更に好ましい流延速度は毎分2〜200mであり、特に好ましくは5から150mである。
(テンター乾燥)
フィルムを支持体から剥離する時、通常フィルムは支持体速度の1.001倍から1.4倍の速度で引っ張られる。引張速度比が大きくなるほど、フィルムの流延方向弾性率を大きく出来る。剥離されたフィルムは例えば特開昭62−115035号公報に記されている如き、幅規制装置(例えばテンター装置)によりフィルム両端を保持されて、フィルムの収縮を規制しながらあるいは幅方向に延伸しながら乾燥されることが好ましい。幅規制装置の入り口と出口におけるフィルム幅の比は、0.75から1.4が好ましい。幅方向に延伸するとフィルムの幅方向弾性率を大きく出来るので好ましい。乾燥は40〜150℃の熱風を吹き込むことによって行うことが好ましい。幅規制装置の中を複数に区切り、順次乾燥風の温度を低い方から高いほうに変化させることが好ましい。
(後乾燥・巻取り)
フィルム中の残留溶剤分が20%以下になった後、フィルムを幅規制装置からはずし、更に100から150℃の温度で乾燥することが好ましい。幅規制装置によって変形している両耳部を切り落とし、両端部にナーリングを付与して巻き取ることが好ましい。ナーリングの幅は3mm〜50mmが好ましく、より好ましくは5mm〜30mm、高さは0.5〜500μmが好ましく、より好ましくは1〜200μmである。これは片押しであっても両押しであってもよい。巻き取る長さは1ロールあたり100〜10000mが好ましく、より好ましくは500〜6000mであり、さらに好ましくは1000〜4000mである。
(偏光板)
偏光板は、偏光子およびその両側に配置された二枚の透明保護膜を含んで構成される。この透明保護膜として、本発明のセルロースエステルフィルムを用いることができる。本発明のセルロースエステルフィルムを偏光子の両側に使用してもよいし、片側だけに使用してもよい。偏光子には、ヨウ素系偏光子、二色性染料を用いる染料系偏光子やポリエン系偏光子がある。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。本発明のセルロースエステルフィルムを偏光板保護膜として用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られたセルロースエステルフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号公報、特開平6−118232号公報に記載されているような易接着加工を施してもよい。保護膜処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護膜で構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。
本発明のセルロースエステルフィルムの偏光子への貼り合せ方は、偏光子の光軸との貼りあわせ角度には特に制限はない。セルロースエステルフィルムの遅相軸と偏光子の透過軸とを平行にしてもよいし、直交させてもよいし、あるいはその中間の適当な角度にしてもよい。
本発明の偏光板は、25℃60%RHにおける単板透過率TT、平行透過率PT、直交透過率CT、偏光度Pが下記式(A)〜(D)の少なくとも1つ以上を満たすことが好ましい。
(A)40.0≦TT≦45.0
(B)30.0≦PT≦40.0
(C)CT≦2.0
(D)95.0≦P
単板透過率TT、平行透過率PT、直交透過率CTはこの順でそれぞれ、より好ましくは、40.5≦TT≦45、32≦PT≦39.5、CT≦1.5であり、さらに好ましくは41.0≦TT≦44.5、34≦PT≦39.0、CT≦1.3である。偏光度Pは95.0%以上であることが好ましく、より好ましくは96.0%以上、さらに好ましくは97.0%以上である。
本発明の偏光板は、波長λにおける直交透過率をCT(λ)としたときに、CT(380)、CT(410)、CT(700)が下記式(E)〜(G)の少なくとも1つ以上を満たすことが好ましい。
(E)CT(380)≦2.0
(F)CT(410)≦1.0
(G)CT(700)≦0.5
より好ましくはCT(380)≦1.95、CT(410)≦0.9、CT(700)≦0.49であり、さらに好ましくはCT(380)≦1.90、CT(410)≦0.8、CT(700)≦0.48である。
本発明の偏光板は、60℃95%RHの条件下に500時間静置した場合の直交透過率の変化量ΔCT、偏光度変化量ΔPが下記式(J)、(K)の少なくとも1つ以上を満たすことが好ましい。
(J)−6.0≦ΔCT≦6.0
(K)−10.0≦ΔP≦0.0
(ただし、変化量とは試験後測定値から試験前測定値を差し引いた値を示す)
より好ましくは−5.8≦ΔCT≦5.8、−9.5≦ΔP≦0.0、更に好ましくは、−5.6≦ΔCT≦5.6、−9.0≦ΔP≦0.0である。
本発明の偏光板は、60℃90%RHの条件下に500時間静置した場合の直交透過率の変化量ΔCT、偏光度変化量ΔPが下記式(H)、(i)の少なくとも1つ以上を満たすことが好ましい。
(H)−3.0≦ΔCT≦3.0
(I)−5.0≦ΔP≦0.0
本発明の偏光板は、80℃の条件下に500時間静置した場合の直交透過率の変化量ΔCT、偏光度変化量ΔPが下記式(L)、(M)の少なくとも1つ以上を満たすことが好ましい。
(L)−3.0≦ΔCT≦3.0
(M)−2.0≦ΔP≦0.0
偏光板の単板透過率TT、平行透過率PT、直交透過率CTは、UV3100PC(島津製作所社製)を用い、380nm〜780nmの範囲で測定し、TT、PT、CTともに、10回測定の平均値(400nm〜700nmでの平均値)を用いる。偏光度Pは、偏光度(%)=100×{(平行透過率−直交透過率)/(平行透過率+直交透過率)}1/2で求めることができる。偏光板耐久性試験は(1)偏光板のみと(2)偏光板をガラスに粘着剤を介して貼り付けた、2種類の形態で次のように行う。偏光板のみの測定は、2つの偏光子の間に本発明のセルロースエステルフィルムが挟まれるように組み合わせて直交、同じものを2つ用意し測定する。ガラス貼り付け状態のものはガラスの上に偏光板を本発明のセルロースエステルフィルムがガラス側にくるように貼り付けたサンプル(約5cm×5cm)を2つ作成する。単板透過率測定ではこのサンプルのフィルムの側を光源に向けてセットして測定する。2つのサンプルをそれぞれ測定し、その平均値を単板の透過率とする。
[用途(光学補償フィルム)]
本発明のセルロースエステルフィルムは、様々な用途で用いることができ、液晶表示装置の光学補償フィルムとして用いると特に効果がある。なお、光学補償フィルムとは、一般に液晶表示装置に用いられ、位相差を補償する光学材料のことを指し、位相差板、光学補償シートなどと同義である。光学補償フィルムはそれぞれ特徴的な複屈折特性を有し、液晶表示装置の表示画面の着色を取り除いたり、視野角特性を改善したりする目的で用いられる。
本発明のセルロースエステルフィルムは光学的異方性が小さく、また波長分散が小さいため、余計な異方性を生じず、複屈折が零の光学補償フィルムとみなす事ができるほか、本発明のセルロースエステルフィルムに複屈折を持つ光学異方性層を塗設、併設することで光学異方性層の光学性能のみを発現させることができ、光学補償フィルムの基材として用いることができる。
このような、光学補償フィルムは、前述の偏光板の保護フィルムとして用いることもできる。
したがって本発明のセルロースエステルフィルムを液晶表示装置の光学補償フィルムとして用いる場合、併用する光学異方性層のReおよびRthはRe(590)=0〜200nmかつ|Rth(590)|=0〜400nmであることが好ましく、この範囲であればどのような光学異方性層でも良い。本発明のセルロースエステルフィルムが使用される液晶表示装置の液晶セルの光学性能や駆動方式に制限されず、光学補償フィルムとして要求される、どのような光学異方性層も併用することができる。併用される光学異方性層としては、液晶性化合物を含有する組成物から形成しても良いし、複屈折を持つポリマーフィルムから形成しても良い。
前記液晶性化合物としては、ディスコティック液晶性化合物または棒状液晶性化合物が好ましい。
(ディスコティック液晶性化合物)
本発明に使用可能なディスコティック液晶性化合物の例には、様々な文献(C.Destrade et al.,Mol.Crysr.Liq.Cryst.,vol.71,p.111(1981);日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B.Kohne et al.,Angew.Chem.Soc.Chem.Comm.,p.1794(1985);J.Zhang et al.,J.Am.Chem.Soc.,vol.116,p.2655(1994))に記載の化合物が含まれる。
光学異方性層において、ディスコティック液晶性分子は配向状態で固定されているのが好ましく、重合反応により固定されているのが最も好ましい。ディスコティック液晶性分子の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。ディスコティック液晶性分子を重合により固定するためには、ディスコティック液晶性分子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する。重合性基を有するディスコティック液晶性分子について、特開2001−4387号公報に開示されている。
(棒状液晶性化合物)
本発明において、使用可能な棒状液晶性化合物の例には、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が含まれる。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。
光学異方性層において、棒状液晶性分子は配向状態で固定されているのが好ましく、重合反応により固定されているのが最も好ましい。本発明に使用可能な重合性棒状液晶性化合物の例には、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許4683327号、同5622648号、同5770107号、世界特許(WO)95/22586号、同95/24455号、同97/00600号、同98/23580号、同98/52905号、特開平1−272551号、同6−16616号、同7−110469号、同11−80081号、および特開2001−328973号などに記載の化合物が含まれる。
(ポリマーフィルムからなる光学異方性層)
上記した様に、光学異方性層はポリマーフィルムから形成してもよい。ポリマーフィルムは、光学異方性を発現し得るポリマーから形成する。そのようなポリマーの例には、ポリオレフィン(例、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー)、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステルおよびセルロースエステル(例、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート)が含まれる。また、これらのポリマーの共重合体あるいはポリマー混合物を用いてもよい。
ポリマーフィルムの光学異方性は、延伸により得ることが好ましい。延伸は一軸延伸または二軸延伸であることが好ましい。具体的には、2つ以上のロールの周速差を利用した縦一軸延伸、またはポリマーフィルムの両サイドを掴んで幅方向に延伸するテンター延伸、これらを組み合わせての二軸延伸が好ましい。なお、二枚以上のポリマーフィルムを用いて、二枚以上のフィルム全体の光学的性質が前記の条件を満足してもよい。ポリマーフィルムは、複屈折のムラを少なくするためにソルベントキャスト法により製造することが好ましい。ポリマーフィルムの厚さは、20〜500μmであることが好ましく、40〜100μmであることが最も好ましい。
(液晶表示装置)
本発明のセルロースエステルフィルム、光学補償フィルム、及び偏光板は、液晶表示装置に好適に用いることができる。
(液晶表示装置の構成例)
セルロースエステルフィルムを光学補償フィルムとして用いる場合は、偏光素子の透過軸と、セルロースエステルフィルムからなる光学補償フィルムの遅相軸とをどのような角度で配置しても構わない。液晶表示装置は、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光素子、および該液晶セルと該偏光素子との間に少なくとも一枚の光学補償フィルムを配置した構成を有している。
液晶セルの液晶層は、通常は、二枚の基板の間にスペーサーを挟み込んで形成した空間に液晶を封入して形成する。透明電極層は、導電性物質を含む透明な膜として基板上に形成する。液晶セルには、さらにガスバリアー層、ハードコート層あるいは(透明電極層の接着に用いる)アンダーコート層(下塗り層)を設けてもよい。これらの層は、通常、基板上に設けられる。液晶セルの基板は、一般に50μm〜2mmの厚さを有する。
(液晶表示装置の種類)
本発明のセルロースエステルフィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。本発明のセルロースエステルフィルムは、いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。
(TN型液晶表示装置)
本発明のセルロースエステルフィルムを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体または偏光板保護フィルムとして用いてもよい。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置については、古くから良く知られている。TN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平3−9325号、特開平6−148429号、特開平8−50206号、特開平9−26572号の各公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.、Vol.36(1997)p.143や、Jpn.J.Appl.Phys.、Vol.36(1997)p.1068)に記載がある。
(STN型液晶表示装置)
本発明のセルロースエステルフィルムを、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体または偏光板保護フィルムとして用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(Δn)とセルギャップ(d)との積(Δnd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開2000−105316号公報に記載がある。
(VA型液晶表示装置)
本発明のセルロースエステルフィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体または偏光板保護フィルムとして特に有利に用いられる。VA型液晶表示装置に用いる光学補償シートのReレターデーション値を0乃至150nmとし、Rthレターデーション値を70乃至400nmとすることが好ましい。Reレターデーション値は、20乃至70nmであることが更に好ましい。VA型液晶表示装置に二枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRthレターデーション値は70乃至250nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置に一枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRthレターデーション値は150乃至400nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置は、例えば特開平10−123576号公報に記載されているような配向分割された方式であっても構わない。
(IPS型液晶表示装置およびECB型液晶表示装置)
本発明のセルロースエステルフィルムは、IPSモードおよびECBモードの液晶セルを有するIPS型液晶表示装置およびECB型液晶表示装置の光学補償シートの支持体、または偏光板の保護フィルムとしても特に有利に用いられる。これらのモードは黒表示時に液晶材料が略平行に配向する態様であり、電圧無印加状態で液晶分子を基板面に対して平行配向させて、黒表示する。これらの態様において本発明のセルロースエステルフィルムを用いた偏光板は視野角拡大、コントラストの良化に寄与する。この態様においては、前記偏光板の保護膜と保護膜と液晶セルの間に配置された光学異方性層のレターデーションの値は、液晶層のΔn・d(屈折率差×厚み)の値の2倍以下に設定するのが好ましい。またRth値の絶対値|Rth|は、25nm以下、より好ましくは20nm以下、さらに好ましくは15nm以下に設定するのが好ましいため、本発明のセルロースエステルフィルムが有利に用いられる。
(OCB型液晶表示装置およびHAN型液晶表示装置)
本発明のセルロースエステルフィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置あるいはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体または偏光板保護フィルムとしても有利に用いられる。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートには、レターデーションの絶対値が最小となる方向が光学補償シートの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートの光学的性質も、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質および光学的異方性層と支持体との配置により決定される。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平9−197397号公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.38(1999)p.2837)に記載がある。
(反射型液晶表示装置)
本発明のセルロースエステルフィルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償シートの支持体または偏光板保護フィルムとしても有利に用いられる。これらの表示モードは古くから良く知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号、WO9848320号、特許第3022477号の各公報に記載がある。反射型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、WO00−65384号に記載がある。
(その他の液晶表示装置)
本発明のセルロースエステルフィルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体または偏光板保護フィルムとしても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文(Kume et al.,SID98 Digest,1089(1998))に記載がある。
(ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルム)
本発明のセルロースエステルフィルムは、またハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルムへの適用が好ましく実施できる。LCD、PDP、CRT、EL等のフラットパネルディスプレイの視認性を向上する目的で、本発明のセルロースエステルフィルムの片面または両面にハードコート層、防眩層、反射防止層の何れかあるいは全てを付与することができる。このような防眩フィルム、反射防止フィルムとしての望ましい実施態様は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の54頁〜57頁に詳細に記載されており、本発明のセルロースエステルフィルムも好ましく用いることができる。
実施例に基づき本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明のセルロースエステルフィルムの特性評価は以下のようにして実施した。
面内レターデーション値Re、膜厚方向のレターデーション値Rthの評価は、フィルム幅方向に9点ずつ、長手方向に100mおきに試料を切り出して測定し、バラツキを標準偏差で表示した。試料30mm×40mmを、25℃、60%RHで2時間調湿し、自動複屈折計KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて明細書中記載の方法にて測定した。なお、測定波長は590nmとした。
平面性の評価は、JISB0601−1994に基づく膜の表面凹凸の最大高さ(Ry)を原子間力顕微鏡(AFM)により評価した。
保留性の評価は、試料を10cm×10cmのサイズに断裁し、25℃、50%RHの雰囲気下で4時間放置後の質量(処理前の質量と称する)を測定して、80±5℃、90±10%RHの条件下で20時間放置する。これを10回繰り返し、処理後の試料の表面を軽く拭き、25℃、50%RHで1日放置後の質量(処理後の質量と称する)を測定して、以下の方法で保留性を計算した。
保留性(質量%)={(処理前の質量−処理後の質量)/処理前の質量}×100
[実施例1]
(セルロースアシレート溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解した。この溶液をギアポンプで熱交換器に送り、90ないし95℃の温度に10分間保った後、冷却熱交換器にて30℃に冷却した。この溶液を平均孔径47μmのろ紙でろ過した。目詰まり進行は遅かった。更に孔径10μmの金属メッシュフィルターでろ過して、セルロースアセテート溶液(LA1)を調製した。ここで、セルロースアシレートAR1、AP1は特開2003−201301号の実施例2および実施例1に記載の方法を基に熟成時間を調整して作製した。
<セルロースアセテート溶液(LA1)組成>
セルロースアシレート(綿花リンター由来、アシル置換度:2.93、6%粘度 364mPa・s : AR1) 30質量部
セルロースアシレート(木材パルプ由来、アシル置換度:2.91、6%粘度 243mPa・s : AP1) 70質量部
メチレンクロライド 433質量部
エタノール 75質量部
レターデーションを低下する化合物(A−19) 12質量部
クエン酸エチルエステル 0.003質量部
(マット剤溶液の調製)
平均粒径16nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)20質量部及びメタノール80質量部を30分間よく攪拌混合してシリカ粒子分散液とした。この分散液を下記の組成物とともに分散機に投入し、さらに30分以上攪拌して各成分を溶解し、平均孔径20μmの不織布フィルターでろ過し、マット剤溶液(LC1)を調製した。
<マット剤溶液(LC1)組成>
平均粒径16nmのシリカ粒子分散液 12.0質量部
メチレンクロライド 68.5質量部
エタノール 11.8質量部
セルロースアシレート溶液(LA1) 11.3質量部
(添加剤溶液の調製)
下記組成の液を作成し、平均孔径47μmのろ紙でろ過し、添加剤溶液(LD1)を調製した。
<添加剤溶液(LD1)組成>
波長分散調整剤(UV−102) 7.3質量部
メチレンクロライド 55.3質量部
エタノール 9.5質量部
セルロースアシレート溶液(LA1) 12.8質量部
(本発明のセルロースエステルフィルム(F1)の作製)
上記セルロースアシレート溶液(LA1)76.2質量部、マット剤溶液(LC1)1.8質量部及び添加剤溶液(LD1)2.6質量部をそれぞれスタチックミキサーで混合し、表面温度20℃のステンレスバンド上に均一に流延した。残留溶剤分が60から80%になるまで乾燥後ステンレスバンドから45m/分の速度で剥離し、フィルムをテンター装置に固定した。この際、バンド速度に比べてテンターの搬送速度を1.02倍にした。テンター装置における乾燥温度は70℃から段階的に130℃まで変化させた。テンター装置入り口のフィルム幅に対して、出口のフィルム幅を1.01倍にした。テンター装置を出た後更に130℃から140℃で乾燥し、47/分の速度で巻き取った。このようにして膜厚81μmのセルロースエステルフィルム(F1)を得た。巻き取り時の残留溶媒量は0.04%であった。フィルムのRy(表面凹凸の最大高さ)は0.2μmであった。Re(590)は1.0±0.8nmであり、Rth(590)は−5±2nmであった。保留性は0.9%であった。
[実施例2]
(本発明のセルロースエステルフィルム(F2)の作製)
実施例1で調製したセルロースアシレート溶液(LA1)76.2質量部、マット剤溶液(LC1)1.6質量部及び添加剤溶液(LD1)2.3質量部をそれぞれスタチックミキサーで混合し、−15℃に冷却したステンレスドラム上に均一に流延した。液温が約−10℃になるまで冷却後ドラムから60m/分で剥離し、フィルムをテンター装置に固定した。この際、ドラム速度に比べてテンターの搬送速度を1.06倍にした。テンター装置における乾燥温度は70℃から段階的に130℃まで変化させた。テンター装置入り口のフィルム幅に対して、出口のフィルム幅を1.05倍にした。テンター装置を出た後更に130℃から140℃で乾燥し、65m/分の速度で巻き取った。このようにして膜厚82μmの本発明のセルロースエステルフィルム(F2)を得た。巻き取り時の残留溶媒量は0.03%であった。フィルムのRyは0.2μmであった。Re(590)は0.5±0.3nmあり、Rth(590)は−7±3nmであった。
[実施例3]
(セルロースアシレート溶液の調製)
下記の組成物を用いて、実施例1と同様の方法でセルロースアシレート溶液を調製したところ、問題なく溶解、ろ過できた。
<セルロースアセテート溶液(LA2)組成>
セルロースアシレート(綿花リンター由来、アシル置換度:2.93、6%粘度 364mPa・s : AR1) 60質量部
セルロースアシレート(木材パルプ由来、アシル置換度:2.91、6%粘度 243mPa・s : AP1) 40質量部
メチレンクロライド 438質量部
メタノール 70質量部
1−ブタノール 4質量部
レターデーションを低下する化合物(A−19) 12質量部
(マット剤溶液の調製)
分散液組成を下記に変更したほかは実施例1と同様にして、マット剤溶液(LC2)を調製した。
<マット剤溶液(LC2)組成>
平均粒径16nmのシリカ粒子分散液 12.0質量部
メチレンクロライド 76.6質量部
メタノール 3.7質量部
1−ブタノール 0.8質量部
セルロースアシレート溶液(LA2) 11.3質量部
(添加剤溶液の調製)
下記組成の液を作成し、平均孔径47μmのろ紙でろ過し、添加剤溶液(LD2)を調製した。
<添加剤溶液(LD2)組成>
波長分散調整剤(UV−102) 7.3質量部
メチレンクロライド 55.2質量部
メタノール 9.6質量部
1−ブタノール 0.6質量部
セルロースアシレート溶液(LA2) 12.8質量部
(本発明のセルロースエステルフィルム(F3)の作製)
実施例1と同様にして、セルロースアシレート溶液(LA2)、マット剤溶液(LC2)及び添加剤溶液(LD2)から本発明のセルロースエステルフィルムF3を得た。膜厚は65μm、巻き取り時の残留溶媒量は0.2%であった。フィルムのRyは0.3μmであった。Re(590)は0.8±0.4nmであり、Rth(590)は−2±3nmであった。
[実施例4]
(本発明のセルロースエステルフィルム(F4)の作製)
実施例3で調製したセルロースアシレート溶液(LA2)、マット剤溶液(LC2)及び添加剤溶液(LD2)を用いるほかは実施例2と同様にして、膜厚64μmの実施例のセルロースエステルフィルム(F4)を得た。巻き取り時の残留溶媒量は0.4%であった。フィルムのRyは0.3μmであった。Re(590)は0.2±0.7nmであり、Rth(590)は−2±2nmであった。
[実施例5]
(セルロースアシレート溶液の調製)
下記の組成物を用いて、実施例1と同様の方法でセルロースアシレート溶液を調製したところ、問題なく溶解、ろ過及び濃縮できた。
<セルロースアセテート溶液(LA3)組成>
セルロースアシレート(綿花リンター由来、アシル置換度:2.93、6%粘度 364mPa・s : AR1) 80質量部
セルロースアシレート(木材パルプ由来、アシル置換度:2.91、6%粘度 243mPa・s : AP1) 20質量部
メチレンクロライド 391質量部
メタノール 70質量部
1−ブタノール 15質量部
レターデーションを低下する化合物(A−19) 12質量部
(マット剤溶液の調製)
分散液組成を下記に変更したほかは実施例1と同様にして、マット剤溶液(LC3)を調製した。
<マット剤溶液(LC3)組成>
平均粒径16nmのシリカ粒子分散液 12.0質量部
メチレンクロライド 67.3質量部
メタノール 12.0質量部
1−ブタノール 2.4質量部
セルロースアシレート溶液(LA3) 11.3質量部
(添加剤溶液の調製)
下記組成の液を作成し、平均孔径47μmのろ紙でろ過し、添加剤溶液(LD3)を調製した。
<添加剤溶液(LD3)組成>
波長分散調整剤(UV−102) 7.3質量部
メチレンクロライド 53.8質量部
メタノール 9.7質量部
1−ブタノール 2.0質量部
セルロースアシレート溶液(LA3) 12.8質量部
(本発明のセルロースエステルフィルム(F5)の作製)
実施例1と同様にして、セルロースアシレート溶液(LA3)、マット剤溶液(LC3)及び添加剤溶液(LD3)から本発明のセルロースエステルフィルム(F5)を得た。膜厚は39μm、巻き取り時の残留溶媒量は0.4%であった。フィルムのRyは0.5μmであった。Re(590)は1.3±0.8nmであり、Rth(590)は−9±9nmであった。
[実施例6]
(本発明のセルロースエステルフィルム(F6)の作製)
実施例5で調製したセルロースアシレート溶液(LA3)、マット剤溶液(LC3)及び添加剤溶液(LD3)を用いるほかは実施例2と同様にして、膜厚44μmの実施例のセルロースエステルフィルム(F6)を得た。巻き取り時の残留溶媒量は0.4%であった。フィルムのRyは0.4μmであった。Re(590)は2.1±0.9nmであり、Rth(590)は6±8nmであった。
[実施例7]
(セルロースアシレート溶液の調製)
下記の組成物を用いて、実施例1と同様の方法でセルロースアシレート溶液を調製したところ、問題なく溶解、ろ過できた。ここで、セルロースアシレートAR2、AP2は特開2003−201301号の実施例2および実施例1に記載の方法を基に熟成時間、熟成温度等の熟成条件を調整して作製した。
<セルロースアセテート溶液(LA4)組成>
セルロースアシレート(綿花リンター由来、アシル置換度:2.86、6%粘度 856mPa・s : AR2) 80質量部
セルロースアシレート(木材パルプ由来、アシル置換度:2.89、6%粘度 191mPa・s : AP2) 20質量部
メチレンクロライド 391質量部
メタノール 70質量部
1−ブタノール 15質量部
レターデーションを低下する化合物(A−19) 12質量部
(マット剤溶液の調製)
分散液組成を下記に変更したほかは実施例1と同様にして、マット剤溶液(LC4)を調製した。
<マット剤溶液(LC4)組成>
平均粒径16nmのシリカ粒子分散液 12.0質量部
メチレンクロライド 67.3質量部
メタノール 12.0質量部
1−ブタノール 2.4質量部
セルロースアシレート溶液(LA4) 11.3質量部
(添加剤溶液の調製)
下記組成の液を作成し、平均孔径47μmのろ紙でろ過し、添加剤溶液(LD4)を調製した。
<添加剤溶液(LD4)組成>
波長分散調整剤(UV−102) 7.3質量部
メチレンクロライド 53.8質量部
メタノール 9.7質量部
1−ブタノール 2.0質量部
セルロースアシレート溶液(LA4) 12.8質量部
(希釈用混合溶剤液の調製)
下記組成の液を作成し、平均孔径44μmのろ紙でろ過し、希釈用混合溶剤液(LE4)を調製した。
<希釈用混合溶剤液(LE4)組成>
メチレンクロライド 82質量部
メタノール 15質量部
1−ブタノール 3質量部
(本発明のセルロースエステルフィルム(F7)の作製)
セルロースアシレート溶液(LA4)80質量部及び添加剤溶液(LD4)2.6質量部の割合で送液し、スタチックミキサーで混合した。この混合液を乾燥後のフィルム厚さが74μmになるように、3層重層流延用加圧ダイの中央部のスリットに送液した。一方同時に、セルロースアシレート溶液(LA4)80質量部、マット剤溶液(LC4)2.4質量部、添加剤溶液(LD4)2.6質量部及び稀釈用混合溶剤液(LE4)5質量部の割合で送液し、スタチックミキサーで混合した。この混合液を乾燥後のフィルム厚さが3μmになるように、3層重層流延用加圧ダイの両端部のスリットにそれぞれ送液した。このようにして3層重層させて、表面温度20℃のステンレスバンド上に均一に流延した。残留溶剤分が60から80%になるまで乾燥後ステンレスバンドから45m/分の速度で剥離し、フィルムをテンター装置に固定した。この際、バンド速度に比べてテンターの搬送速度を1.02倍にした。テンター装置における乾燥温度は70℃から段階的に130℃まで変化させた。テンター装置入り口のフィルム幅に対して、出口のフィルム幅を1.01倍にした。テンター装置を出た後更に130℃から140℃で乾燥し、47/分の速度で巻き取った。このようにして膜厚75μmのセルロースエステルフィルム(F7)を得た。巻き取り時の残留溶媒量は0.3%であった。フィルムのRyは0.3μmであった。Re(590)は1.6±0.7nmであり、Rth(590)は−5±2nmであった。
[実施例8]
(本発明のセルロースエステルフィルム(F8)の作製)
実施例7で調製したセルロースアシレート溶液(LA4)76.2質量部、マット剤溶液(LC4)1.6質量部及び添加剤溶液(LD4)2.8質量部をそれぞれスタチックミキサーで混合し、−15℃に冷却したステンレスドラム上に均一に流延した。液温が約−10℃になるまで冷却後ドラムから60m/分で剥離し、フィルムをテンター装置に固定した。この際、ドラム速度に比べてテンターの搬送速度を1.08倍にした。テンター装置における乾燥温度は70℃から段階的に130℃まで変化させた。テンター装置入り口のフィルム幅に対して、出口のフィルム幅を1.05倍にした。テンター装置を出た後更に130℃から140℃で乾燥し、65m/分の速度で巻き取った。このようにして膜厚72μmの本発明のセルロースエステルフィルム(F8)を得た。巻き取り時の残留溶媒量は0.3%であった。フィルムのRyは0.3μmであった。Re(590)は1.8±0.6nmであり、Rth(590)は−3±5nmであった。
[実施例9]
実施例7のセルロースアシレート(AR2、AP2)の代わりにセルロースアシレート(AR3:綿花リンター由来、酢化度2.93、6%粘度286mPa・s、AP3:木材パルプ由来、酢化度2.89、6%粘度 92mPa・s)を用いるほかは、実施例7と同じようにして本発明のフィルム(F9)を作成した。フィルム(F9)は、フィルムのRyは0.2μmであった。Re(590)は1.9±0.8nmであり、Rth(590)は4±6nmであった。
[実施例10]
実施例7のセルロースアシレート(AR2、AP2)の代わりにセルロースアシレート(AR4:綿花リンター由来、アセチル化度1.96.プロピオニル化度0.83、6%粘度358mPa・s、AP3:木材パルプ由来、酢化度2.89、6%粘度 92mPa・s)を用いるほかは、実施例7と同じようにして本発明のフィルム(F10)を作成した。フィルム(F10)は、フィルムのRyは0.3μmであった。Re(590)は7±1.8nmであり、Rth(590)は19±6nmの間であった。
[比較例1]
実施例1のセルロースアシレート(AR1)とセルロースアシレート(AP1)をそれぞれ0質量部、100質量部とするほかは、実施例1と同じようにして比較例のセルロースアシレートフィルムF11を作製した。フィルムF11の厚さは80μm、フィルムのRyは0.9μmと大きかった。Re(590)は3.4±0.8nmであり、Rth(590)は−6±3nmであった。
[比較例2]
実施例1のセルロースアシレート(AR1)とセルロースアシレート(AP1)をそれぞれ3質量部、97質量部とするほかは、実施例1と同じようにして比較例のセルロースアシレートフィルムF12を作製した。フィルムF12の厚さは79μm、フィルムのRyは0.8μmと大きかった。Re(590)は3.5±0.9nmであり、Rth(590)は−6±3nmであった。
以上の結果を表1にまとめた。保留性の結果も示した。
Figure 2007332188
[実施例11]
(偏光板の作製)
実施例1で得た本発明のセルロースアシレートフィルム(F1)を、1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で2分間浸漬した。室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。このようにして、表面をケン化したセルロースアシレートフィルム(F101)を得た。市販のセルロースアセテートフィルムTD80UF(富士写真フイルム(株)製)にも同様の表面ケン化処理を行い、フィルム(F200)を作成した。
続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して偏光膜を得た。ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、偏光膜の片面にフィルム(F101)を、反対面にフィルム(F200)を貼り合わせ、偏光板(P1)を得た。この際フィルム(F101)及び(F200)の遅相軸が偏光膜の透過軸と平行になるように貼り付けた。
同様にして本発明の実施例2〜10で作成したセルロースアシレートフィルム(F2)〜(F10)についても、それぞれ偏光板(P2)〜(P10)を作製した。本発明のセルロースアシレートフィルムはいずれも延伸したポリビニルアルコールとの貼合性は十分であり、優れた偏光板加工適性を有していた。
[実施例12]
(液晶表示装置への組込み)
<対向偏光板の作製>
偏光膜の両面に貼りあわせるフィルムを両方共に(F300)(市販のセルロースアセテートフィルムTD80UF(富士写真フイルム(株)製)をケン化したもの)にしたほかは、実施例11と同じようにして偏光板(P0)を作製した。
<IPSモード液晶セルの作製>
一枚のガラス基板上に、隣接する電極間の距離が20μmとなるように電極を配設し、その上にポリイミド膜を配向膜として設け、ラビング処理を行なった。別に用意した一枚のガラス基板の一方の表面にポリイミド膜を設け、ラビング処理を行なって配向膜とした。二枚のガラス基板を、配向膜同士を対向させて、基板の間隔(ギャップ;d)を3.9μmとし、二枚のガラス基板のラビング方向が平行となるようにして重ねて貼り合わせ、次いで屈折率異方性(Δn)が0.0769及び誘電率異方性(Δε)が正の4.5であるネマチック液晶組成物を封入した。液晶層のd・Δnの値は300nmであった。
作製したIPSモード液晶セルのバックライト側に、実施例11で作成した本発明の偏光板(P1)を、その吸収軸が液晶セルのラビング方向と平行になるよう、且つ本発明のセルロースアシレートフィルム(F101)が液晶セル側になるように貼り付けた。続いて、IPSモード液晶セルのもう一方の側に偏光板(P0)をクロスニコルの配置で貼り付けた。
このように作製した液晶表示装置の黒の色味を極角60度における全方位角方向で観察したが、色味変化が殆ど感じられなかった。
また、フィルムは左右上下に優れた視野角を有するものであった。したがって、本発明のセルロースエステルフィルムが、光学的用途として優れたものであることが判った。
また、偏光板(P1)に代えて、偏光板(P2)〜(P10)を使用して同様に液晶表示装置を作成し、評価を行った結果、いずれも偏光板(P1)を用いた場合と同様に良好な結果が得られた。

Claims (10)

  1. セルロースエステルを溶剤に溶解したドープを支持体上に流延する工程、支持体上からフィルムを剥離する工程、剥離したフィルムを乾燥する工程を含む、面内レターデーション値Re(590)および膜厚方向のレターデーション値Rth(590)が下記式(I)および(II)を満たすセルロースエステルフィルムの製造方法であって、セルロースエステルとして少なくとも1種の綿花リンター由来のセルロースエステルと少なくとも1種の木材パルプ由来のセルロースエステルとを少なくとも用い、全セルロースエステル中の該綿花リンター由来セルロースエステル比率が5質量%以上90質量%以下であることを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
    式(I) 0≦Re(590)≦10
    式(II) −25≦Rth(590)≦25
    [式中、Re(λ)は25℃60%RH下、波長λnmにおける面内レターデーション値(単位:nm)である。Rth(λ)は25℃60%RH下、波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。]
  2. 前記綿花リンター由来のセルロースエステル及び前記木材パルプ由来のセルロースエステルがともにアシル化エステルであり、アシル置換度(X+Y)がともに下記式(10)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
    式(10) 2.7<X+Y≦3.0
    [式中、Xはアセチル置換度、Yはアセチル以外のアシル置換度である。]
  3. 前記綿花リンター由来セルロースエステルの6%粘度と前記木材パルプ由来セルロースエステルの6%粘度とのうち大きい方の値を小さい方の値で割った商が1.2以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法により作製されたセルロースエステルフィルム。
  5. 前記セルロースエステルフィルムがレターデーション低減剤を含有することを特徴とする請求項4に記載のセルロースエステルフィルム。
  6. 前記セルロースエステルフィルムがレターデーションの波長分散調整剤を含有することを特徴とする請求項4または請求項5に記載のセルロースエステルフィルム。
  7. 前記セルロースエステルフィルムの表面凹凸の最大高さRyが0.5μm以下であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルム。
  8. 前記セルロースエステルフィルムの厚みが30〜120μmであることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルム。
  9. 偏光膜の両側に保護フィルムが貼り合わされてなる偏光板において、該保護フィルムの少なくとも1枚が請求項4〜8のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムであることを特徴とする偏光板。
  10. 請求項4〜8のいずれかに記載のセルロースエステルフィルム、および請求項9に記載の偏光板の少なくともいずれかを用いたことを特徴とする液晶表示装置。
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